JP6375895B2 - 深絞り成形用共押出多層フイルム - Google Patents
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Description
また、吸湿によるカールを抑制するためにポリプロピレン樹脂を外層に配する構成では、ポリプロピレン樹脂は低温時の耐衝撃性が弱いため耐ピンホール性が悪く、低温保管及び搬送に問題が残っている。
更には、様々な食品について、近年の保管及び搬送条件が冷蔵から冷凍に切り替わり、冷凍温度下の耐ピンホール性という極めて厳しい要件を、ボイル後の耐カール性と兼備する必要があり、硬質な包装用樹脂を用いる上で、課題の難度が増している。
本発明のフィルムの最外層には、単独重合体であるホモポリプロピレン樹脂を用いる。
外層にホモポリプロピレン樹脂層を配することにより、フィルムの腰が向上し、ボイルによるカールを抑制することが出来る。
ポリプロピレン樹脂の種類には、α−オレフィンとのランダムコポリマーや、ブロックコポリマーもあるが、それらを外層に配すると、フィルムの腰が保持されず、カール抑制性に欠ける。
本発明のフィルムの最外層の隣接層層は、ポリプロピレン樹脂にエチレン−ブテン共重合体を混合して構成される。エチレン−ブテン共重合体のエチレン比率は、50モル%以上である。
また、最外層の隣接層の組成をエチレン−ブテン共重合体のみにすると、原料コストが上がるうえ、最外層と隣接層との相溶性或いは層界面密着性が不十分となる。
融点が40℃未満では、常温で結晶化が進んでしまい透明性が損なわれ、また融点が150℃よりも高いと柔軟性が損なわれ、耐ピンホール性が劣ってしまう。
融点の測定は、JIS K 7121法に準じて測定できる。
混合割合が、5質量%未満の場合は耐ピンホール性が劣ってしまい、70質量%よりも高い場合はシール部のカールを抑制する効果が劣ってしまう。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、接着樹脂層を設けることができる。接着層は、一層であってもよいし、複数であってもよい。
接着樹脂層は、ポリエチレン系接着樹脂又はポリプロピレン系接着樹脂から構成することが好ましい。例えば、接着樹脂層がポリプロピレン樹脂を含む層に隣接する場合はポリプロピレン系接着樹脂、ポリエチレン樹脂を含む層に隣接する場合はポリエチレン系接着樹脂を用いると好適である。
本発明のフィルムの中間層には、耐ピンホール性を付与する目的で、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層配する。
本発明のフィルムは、酸素バリア性を向上させる目的で、中間層に少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(以下、EVOHと略記することもある)層を備えてもよい。
また、EVOHのケン化度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
EVOH層の厚み比率を3%以上とすることにより、フィルムに十分な酸素バリア性を付与することができ、また、厚み比率を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムの最内層の隣接層は、ポリエチレン樹脂で構成される。
ポリエチレン樹脂としては、種類は特に限定されないが、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、LLDPEと略記することもある)であることが好ましい。LLDPEは、引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強いという特徴がある。
最内層の隣接層のポリエチレン樹脂層厚みのフィルム総厚に対する比率を20%以上とすることにより、フィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、50%以下とすることにより、シール部のカールを防止できる。
本発明の最内層には、ヒートシール性層を配する。
ヒートシール性樹脂の種類には特に制限はないが、一般的なポリエチレン樹脂や、凝集破壊タイプのイージーピール樹脂配合や層間剥離タイプのイージーピール樹脂配合等が使用できる。
イージーピール強度が1.96N/15mm幅以上であることにより、輸送中の耐破袋性を得ることができ、また、7.84N/15mm幅以下であることにより良好な易開封性を得ることができる。
例えば、イージーピール強度を増加させたい場合は、樹脂Aの含有率を増加させ、イージーピール強度を減少させたい場合は、樹脂Aの含有率を減少させることにより達成できる。
本発明のフィルムの総厚は、60〜250μmである。フィルム総厚の下限値は、60μm以上が好ましく、80μm以上が好ましく、100μm以上が好ましい。フィルム総厚が60μm以下の場合、フィルム総厚が薄すぎるため、耐衝撃性に劣る。フィルム総厚の上限値は、250μm以下が好ましく、240μm以下がより好ましい。フィルム総厚250μm以上とすると、包材コストが上がるため、経済性に欠ける。
即ち、本発明のフィルムは、包装体に収容する収容物の重量や形状による衝撃性とコストとの案配を鑑みて、総厚を加減選定すると好適に使用できる。
本発明の深絞り成形用多層フィルムは、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等を用いることができ、特に、フィルムの層数が多い場合でも製膜工程は変わらない点や厚み制御が比較的容易である点で共押出Tダイ法を用いることが好ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(深絞り成形用多層フィルムの作製)
下記に記載の原料を用い、共押出Tダイ法により、各実施例及び表1に記した層構成である多層無延伸フィルムを作製した。
尚、表1の層順は外層側からである。また、表中の1段目は樹脂組成を略号で示し、2段目は厚み(μm)を示す。
PP1:日本ポリプロ製ノバティックPP(ポリプロピレンホモポリマー) 密度0.900
PP2:日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)に三井化学製タフマーA(エチレン−ブテン共重合体、融点98℃)を50質量%混合
PP3:日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)
PP4:日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)に三井化学製タフマーXM(プロピレン−ブテン共重合体、融点98℃)を50質量%混合
接着樹脂2:三菱化学製モディック(ポリエチレン樹脂ベース)
EVOH:クラレ製エバール エチレン含有率32mol%
LLDPE2:宇部丸善ポリエチレン製ユメリット(直鎖状低密度ポリエチレン) 密度0.918
LLDPE3:プライムポリマー製ネオゼックス(直鎖状低密度ポリエチレン) 密度:0.919
イージーピール(EP)層:LDPE(低密度ポリエチレン、60質量%)とプロピレンランダムランダムコポリマー(40質量%)との混合物
PP1(15μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、2層目以外の層厚をそれぞれ増大させた。
PP1(20μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(20μm)/Ny(40μm)/EVOH(15μm)/接着樹脂2(20μm)/LLDPE1(70μm)/LLDPE2(25μm)
実施例1において、7層目と8層目の層厚を代えて8層目をイージーピール層に代えた。
PP1(15μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(45μm)/イージーピール層(5μm)
実施例1において、4層目と5層目の層順を代えた。
PP1(15μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/EVOH(10μm)/Ny(25μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、1層目をポリエチレン樹脂に代えた。
LLDPE3(15μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、1層目のポリプロピレン樹脂をランダムコポリマーに代えた。
PP3(15μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、2層目のポリプロピレン樹脂に配合する樹脂をプロピレンーエチレン共重合体に変更した。
PP1(15μm)/PP4(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、1層目を無くし、2層目の層厚をその分厚くした。
PP2(45μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、1層目の層厚を薄くし、7層目の層厚をその分厚くした。
PP1(2μm)/PP2(30μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(53μm)/LLDPE2(10μm)
比較例5において、2層目を無くし、7層目の層厚をその分厚くした。
PP1(35μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(50μm)/LLDPE2(10μm)
実施例1において、1層目と2層目の厚みを変更した。
PP1(35μm)/PP2(10μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(25μm)/EVOH(10μm)/接着樹脂2(10μm)/LLDPE1(40μm)/LLDPE2(10μm)
最外層をナイロン樹脂とする層構成を用いた。
Ny(15μm)/接着樹脂1(10μm)/Ny(40μm)/EVOH(15μm)/接着樹脂1(15μm)/LLDPE1(50μm)/LLDPE2(10μm)
各例の多層フィルムを大森機械製深絞り包装機(FV−6300)を用い、成形加熱温度110℃。成形時間1.5秒の条件で、深絞り成形部の大きさは直径98mm、絞り深さはフィルム厚み150μm品の場合20mm、240μm品の場合40mmに成形し、縦100mm、横80mmの底材を作製した。その後、フィルム厚み150μm品には深絞り部の中に100gのハンバーグを、フィルム厚み240μm品には200gのハンバーグを収容した。
各例で得られた多層フィルムと深絞り包装体について、下記の評価を行った結果を表1及び表2に示す。
<カール抑制性評価>
作製した深絞り包装体を90℃30分のボイル殺菌処理を行った後、水分を拭き取り、冷蔵庫で5℃24時間保管し、その直後に外観を確認した。
シール部が水平より10mm以上カールしているものを「×」、10mm未満を「〇」と評価した。
作製した深絞り包装体を90℃30分のボイル殺菌処理を行った後、水分を拭き取り、段ボールに10個詰めて、冷凍庫で−30℃24時間保管し、その直後に、1.0m高さから5回落下させピンホールの有無を観察し、ピンホールがないものを「○」、あるものを「×」と評価した。
各例の多層フィルムを島津製作所製ハイドロショット機(HTM−1)を用い、恒温槽温度−20℃、突刺し速度3m/秒、撃芯径0.5インチの条件で、冷凍下の耐衝撃強度(kgf・mm)を測定した。
<カール抑制性>
実施例1〜4、比較例3、6、7は、ボイル殺菌処理後のカール抑制性が良好であった。
これに対して、比較例1は最外層をホモポリプロピレン樹脂ではなく、ポリエチレン樹脂で構成したため、また、比較例2はポロプロピレンランダムコポリマー樹脂で構成したため、高剛性に欠きカールが発生した。
比較例4は最外層にホモプロピレン樹脂層を配さなかったため、また、比較例5は最外層のホモプロピレン層厚が総フィルム厚に対して2%未満であったため、カール抑制性が悪かった。
比較例8は、フィルムの総厚みに関わらず、外層にNyを配していたため、カール抑制性が悪かった。
実施例1〜4、比較例1、2、4、5は、−30℃という厳しい冷凍条件下においても、耐衝撃性が良好であった。
比較例3は最内層の隣接層のポリプロピレン樹脂にプロピレンーエチレン共重合体を混合したため、また、
比較例6は最外層の隣接層にエチレン系共重合体を配合したポリプロピレン樹脂層を配さなかったため、比較例7は最外層のホモプロピレン層厚が、総フィルム厚みの20%以上と非常に厚かったため、耐低温衝撃性が悪く、ピンホールが発生した。
Claims (2)
- 最外層に単独重合体であるホモポリプロピレン樹脂層を配し、最外層の隣接層に、融点40℃以上150℃以下のエチレン−ブテン共重合体を5質量%以上70質量%以下の割合で配合したポリプロピレン樹脂層を配し、中間層にポリアミド樹脂層を少なくとも1層配し、最内層にヒートシール性樹脂層を配し、最内層の隣接層に密度0.920〜0.945のポリエチレン樹脂層を配し、総フィルム厚みが60μm〜250μmの範囲であり、かつ総フィルム厚に対する最外層の厚比が2%以上20%以下、最外層の隣接層の厚比が10%以上60%以下であることを特徴とする深絞り成形用共押出多層フィルム。
- 請求項1記載のフィルムを用い、内容物を包装した深絞り包装体。
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