JP2009108297A5 - - Google Patents

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液晶ポリエステル組成物及び成形体
本発明は、成形性に優れた液晶ポリエステル組成物及びその成形体に関する。
電気・電子部品の小型化や高性能化にともない、当該部品の製造用の樹脂材料には、高流動性、高耐熱性、難燃性、耐薬品性及び高強度等の諸特性が求められ、種々の熱可塑性樹脂やその組成物が開発されている。熱可塑性樹脂の中でも液晶ポリエステルは、上記の特性を高水準で達成し得るものであり、とりわけ流動性が優れるという特徴を有している。このような特徴により、液晶ポリエステルは、薄肉部を有する部品の溶融成形加工が比較的容易であり、薄肉成形体や複雑形状の成形体の製造用に広く使用されている。
ところで、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物を用いて、複雑形状の成形体を溶融成形により製造する際、溶融成形に使用した型(通常、金型が使用される。)と、型内に得られた成形体との離型性が悪く、いわゆる離型不良が生じ易いという場合がある。このような離型不良が生じると、得られる成形体に変形が生じて所望の形状の成形体が得られ難くなったり、このような変形した成形体を金型から外す作業が困難になったりして、成形体の生産性が低下する。
このような問題を解消する方法としては、金型と成形体との離型性を良好にできる特性を備えた薬剤を金型内表面にコーティングしたり、必要に応じてコーティング後に熱処理等を行って、金型内表面に保護膜を形成したり、しておくという方法が一般的に行われている。この場合、金型内表面にコーティングする薬剤は、通常「外部離型剤」という用語で呼ばれている。一方、熱可塑性樹脂に配合することで、得られる成形体の離型性を良好にし得る添加剤を用いることもある。このような添加剤は通常「内部離型剤」という用語で呼ばれている。内部離型剤を使用すると、溶融成形の所定回おきに金型内表面にコーティングする必要のある外部離型剤の使用に比して、溶融成形の生産性を低下させないという利点がある。
液晶ポリエステルを用いた溶融成形に使用される内部離型剤として、例えば特許文献1には、ペンタエリスリトールステアリン酸エステルが提案され、このような化合物を用いると、従来内部離型剤として使用されていたグリセリントリステアレート等と比較して、離型性に優れながらも、成形体の変色や溶融成形時のガス発生を抑制できることが開示されている。
特開平2−208353号公報(特許請求の範囲,実施例)
上記特許文献1に開示されている液晶ポリエステル組成物では、得られる成形体と金型との離型性は必ずしも十分とはいえなかった。また、本発明者等が検討したところ、上記特許文献1に具体的に記載されている内部離型剤であるペンタエリスリトールステアリン酸エステルを使用した場合、得られる成形体に対し半田処理を行うと、成形体表面にブリスターと呼ばれる膨れ状の形状不良(発泡)を発生し易いことが判明した。このような半田処理は表面実装部品等の電気・電子部品には必要な処理であり、ブリスターが発生し易い成形体は表面実装部品等に適用することが困難となる。
そこで、本発明の目的は液晶ポリエステル組成物の溶融成形により成形体を製造する際、溶融成形に使用する金型に対して良好な離型性を有し、ブリスター等の発生を十分防止できる成形体を製造し得る液晶ポリエステル組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記<1>を提供する。
<1>以下の成分(A)100重量部に対して、以下の成分(B)0.1〜1.0重量部を含有してなる液晶ポリエステル組成物。
(A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下の液晶ポリエステル
(B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下の多価アルコール脂肪酸エステル
また、本発明は前記<1>に係る好適な実施形態として、以下の<2>〜<6>を提供する。
<2>前記液晶ポリエステルの溶解度パラメーターと前記多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターの差分(σA−σB)が、3.8(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2以下である、<1>の液晶ポリエステル組成物。
<3>前記多価アルコール脂肪酸エステル、TGA(熱重量分析)で求められる5%重量減少温度(TB)が250℃以上の多価アルコール脂肪酸エステルである、<1>又は<2>の液晶ポリエステル組成物。
<4>前記液晶ポリエステル、以下に定義される流動開始温度(TA)が280℃以上の液晶ポリエステルである、<1>〜<3>の何れかの液晶ポリエステル組成物。
流動開始温度:内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度
<5>前記液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が全構造単位の合計に対して30〜80モル%であり、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位及びヒドロキノンに由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%であり、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%である液晶ポリエステルである、<1>〜<4>の何れかの液晶ポリエステル組成物。
さらに、本発明は前記何れかの液晶ポリエステル組成物に係る成形体として、以下の<6>を提供する。
<6><1>〜<5>の何れかの液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体。
本発明の液晶ポリエステル組成物によれば、ブリスター等の形状不良の発生を十分防止しつつ、金型に対する良好な離型性を有する成形体を製造することが可能となる。このような離型性は、目的とする成形体が、薄肉部を有したり、複雑な形状を有したりする場合に特に有効であり、本発明の液晶ポリエステル組成物からなる成形体は、電気・電子部品として特に好適に使用することができるため、工業的に極めて有用である。
以下の本発明について詳細に説明する。なお、液晶ポリエステル組成物を用いる溶融成形において、型としては通常金型が使用されるので、本発明の説明においては金型を使用した溶融成形について説明することとする。ただし、液晶ポリエステル組成物の溶融成形に係る温度条件等に十分耐久性があるのであれば、例えばセラミック製の型を使用することもできる。
<液晶ポリエステル組成物>
本発明の液晶ポリエステル組成物は既述のように、(A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下の液晶ポリエステルと、(B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下の多価アルコール脂肪酸エステルとを、含有してなり、成分(A)100重量部に対して成分(B)が0.1〜1.0重量部であることを特徴とする。
液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAが前記の範囲(13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下)である場合、溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2 未満若しくは9.5(cal/cm31/2を上回るような多価アルコール脂肪酸エステルを使用した組成物では、得られる成形体がブリスター等の形状不良が発生し易いものとなる。また、σBが9.0(cal/cm31/2を大きく下回ると、多価アルコール脂肪酸エステルが成形体表面に多量にブリードアウトするためか、ひどい場合には金型を汚染することもある。
本発明の液晶ポリエステル組成物において、前記液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσA(cal/cm31/2と前記多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターσB(cal/cm31/2との差分(σA−σB)は、3.8(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2以下であると好ましい。かかる溶解度パラメーター同士の差分を満たす液晶ポリエステル組成物は、溶融成形に使用する金型と、得られる成形体との離型性が極めて良好となり、得られた成形体はブリスター等の形状不良も十分防止できることを、本発明者等は見出した。
本発明の液晶ポリエステル組成物が高度の離型性を発現しつつ、ブリスター等の発生を防止できる理由に関しては必ずしも明らかではないが、本発明者等は以下のように推定している。内部離型剤を含む液晶ポリエステル組成物を溶融成形する場合、金型内表面に接する成形体表面に内部離型剤が偏在するようになって、成形体表面に偏在する内部離型剤が離型性を発現させると考えられる。良好な離型性を発現するためには、成形体表面に偏在する内部離型剤が、成形体と金型との接着仕事をより小さくなるようにする。多量に成形体表面に偏在しなければ良好な離型性を発現しない内部離型剤を使用したり、成形体表面にブリードアウトし易かったり、すると、成形体表面に偏在する内部離型剤がブリスターを発生し易くなり、ブリスター発生を防止し得る程度に内部離型剤の使用量を少なくすると、良好な離型性を発現し難くなる。本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルを用い、両者の重量割合と溶解度パラメーターとを前記の範囲とすることで、多価アルコール脂肪酸エステルが成形体表面に良好な離型性を発現でき、ブリスター等の形状不良を発生しない程度に偏在していると推定される。
また、このように成形体の離型性とブリスター等の発生とは互いに相反する傾向があるため、σAとσBとの差分(σA−σB)を前記の範囲(3.8(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2以下)のようにすることにより、ブリスター等の発生を十分防止しつつ、より良好な離型性を発現し得る液晶ポリエステル組成物を得ることができる。このような溶解度パラメーター同士の差分は、液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルとの相溶性に影響すると考えられる。両者の差分(σA−σB)が大きくなり過ぎると、液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルとは相溶し難くなり、得られる成形体の表面に、多価アルコール脂肪酸エステルがブリードアウトし易くなり、ブリードアウトした過剰の多価アルコール脂肪酸エステルが半田処理によって熱分解等が生じてブリスターを発生し易くなると推定される。また、ブリードアウト量が多大の場合には、金型を汚染する等の弊害も生じる。一方、両者の差分(σA−σB)が小さくなり過ぎると、液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルとが相溶し易くなって、多価アルコール脂肪酸エステルが表面に偏在し難くなり、離型性が低下する。また、ひどい場合には成形体内部に残存する多価アルコール脂肪酸エステルが多大になり、この残存した多価アルコール脂肪酸エステルが溶融成形時に熱分解して成形自身が困難になるという不都合が生じることもある。本発明のような溶解度パラメーター同士の差分を満たす液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルとの組合せは、ブリスターの発生を十分防止しながらも、良好な離型性を発現できるように、成形体表面に多価アルコール脂肪酸エステルが偏在させることができると推定される。このように、溶解度パラメーターを前記の範囲とした液晶ポリエステル及び多価アルコール脂肪酸エステルを用いること、良好な離型性とブリスター等の発生防止とが高度に両立できる成形体が得られることは、従来、主として臨界表面張力が低いことに着目して使用されてきた内部離型剤の使用からは容易に想到できないものであり、本発明者の独自の知見に基づくものである。
また、このような知見から、本発明の液晶ポリエステル組成物において、溶解度パラメーター同士の差分(σA−σB)は、4.0(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2の範囲であると、さらに好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物において、(A)液晶ポリエステルと(B)多価アルコール脂肪酸エステルとの含有重量部は、(A)100重量部に対して、(B)0.1〜1.0重量部であり、0.1〜0.5重量部であるとさらに好ましい。(A)100重量部に対して、(B)の重量部が0.1重量部を下回ると、得られる成形体表面に偏在する多価アルコール脂肪酸エステルの量が不十分になるためか、良好な離型性を発現し難くなる。一方、(A)100重量部に対して、(B)の重量部が1.0重量部を越えると、成形体表面に偏在する多価アルコール脂肪酸エステルの量が多大になり過ぎて、ブリスター等の発生を十分防止することが困難となることがある。
<溶解度パラメーター>
ここで、本発明における溶解度パラメーターについて説明する。溶解度パラメーターの定義は、物質の凝集エネルギーの大きさを表す数値であり、本発明においては、Fedorsによって提案された方法(Polym.Eng.Sci.,Vol14,P147(1974)、以下、「Fedors法」と呼ぶ。)によって算出される溶解度パラメーターを用いる。Fedors法においては、原子又は原子団の、蒸発エネルギー及びモル体積をそれぞれΔer、Δviとすると、溶解度パラメーターσは下記式(数1)により算出される。
σ=(ΣΔer/ΣΔvi)1/2 (数1)
また、液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσ A を算出する場合は、この液晶ポリエステルを構成する構造単位のそれぞれにおいて、各構造単位の溶解度パラメーターと、各構造単位の液晶ポリエステル中のモル比との積により算出できる。例えば、該液晶ポリエステルが、X,Yという2種類の構造単位(以下、それぞれ「単位X」、「単位Y」と呼ぶ。)より構成されるものと仮定したとき、単位X、単位Yの質量組成比をそれぞれ、x(質量%),y(質量%)、単位X、単位Yの式量をそれぞれ、Mx、My、単位X、単位Yの溶解度パラメーターをそれぞれ、SPx、SPyとすると、液晶ポリエステル中の各構造単位のモル比はそれぞれ、/Mx(モル%)、y/My(モル%)となる。この液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAは、下記式(数2)から算出される。
σ A =〔(SPx×/Mx)+(SPy×/My)〕 (数2)
<液晶ポリエステル樹脂>
次に、好適な液晶ポリエステルに関して詳述する。本発明に使用する液晶ポリエステルは、σAが前記の範囲(13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下)のものであれば、公知の液晶ポリエステルの中から適宜選択して使用することができる。また、σAが前記の範囲である、複数種の液晶ポリエステルを組み合せて用いてもよい。液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。例えば、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるもの、(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、(4)ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの等が挙げられる。
なお、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を使用すると、液晶ポリエステルの製造をより容易にすることができるため好ましい。ここで、エステル形成性誘導体とは、分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の場合は、当該カルボキシル基を、高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したもの、当該カルボキシル基がエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールの場合は、当該フェノール性水酸基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成しているもの等も挙げることができる。
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、前記の、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールは、その芳香環の水素原子の一部又は全部が、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基に置換されていてもよい。
本発明の液晶ポリエステルの、構造単位としては、下記のものを例示することができる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:
Figure 2009108297
前記の構造単位は、芳香環にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:
Figure 2009108297
前記の構造単位は、芳香環にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
芳香族ジオールに由来する構造単位:
Figure 2009108297
前記の構造単位は、芳香環にハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
具体的には、液晶ポリエステルを構成する構造単位の組み合わせとして、以下の(a)〜(h)が挙げられる。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)からなる組み合わせ、又は、(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)からなる組み合わせ
(b):(A2)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ、又は(A2)、(B1)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ
(c):(A1)及び(A2)からなる組み合わせ。
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部又は全部を(A2)に置きかえたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部又は全部を(B3)に置きかえたもの
(f):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部又は全部を(C3)に置きかえたもの
(g):(b)の構造単位の組み合わせにおいて、(A2)の一部又は全部を(A1)に置きかえたもの
(h):(c)の構造単位の組み合わせに、(B1)と(C2)を加えたもの
最も基本的な構造となる(a)、(b)の液晶ポリエステルについては、それぞれ、特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報に例示されている。
なお、耐熱性、機械的特性及び加工性のバランスから、特に好ましい液晶ポリエステルは、前記(A1)で表される構造単位を、全構造単位の合計に対して、少なくとも30モル%含むものである。ここで、前記の好適な液晶ポリエステルである(a)〜(h)に係る構造単位の組合わせを例にとり、σAを算出する方法を具体的に示す。この組合わせに係る構造単位の溶解度パラメーターσは、下記の表1のようになる。
Figure 2009108297
前記表1で示したような、溶解度パラメーターσと、各構造単位の式量及び質量分率から求められるモル比とから、前記式(数2)で説明したような加成式によって、液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAを求めることができる。そして、各構造単位とそのモル比によって、σAを13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下にすることができる。
液晶ポリエステルの製造方法としては、例えば、特開2002−146003号公報に記載の方法等が適用できる。この公報に記載された製造方法を簡単に説明すると、液晶ポリエステル製造用のモノマー(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール又はそれらのエステル形成用誘導体)を、溶融重合せしめ、比較的低分子量の芳香族ポリエステル(以下、「プレポリマー」と略記する)を得、次いで、このプレポリマーを粉砕して粉末とし、加熱することにより固相重合するといった方法である。このような固相重合を用いると、重合がより進行して、より高分子量の液晶ポリエステルを得ることができる。また、このような製造方法において、液晶ポリエステルを構成する各構造単位のモル比は、使用するモノマーの仕込量によって容易に制御することができる。
また、液晶ポリエステルは前記に定義した流動開始温度(TA)が280℃以上であると好ましい。このような液晶ポリエステル(A)は、耐熱性に優れた成形体が得られるという利点があるが、溶融成形に係る温度条件がより高温になるため、成形体と金型との離型性が小さくなることがある。本発明の液晶ポリエステル組成物では、より高温の流動開始温度の液晶ポリエステルを用いても、優れた離型性を発現して、耐熱性に優れた成形体を容易に得ることができる。より耐熱性に優れた成形体を得るためには、液晶ポリエステルの溶融開始温度(TA)は300℃以上であると、より好ましく、320℃以上であると、一層好ましい。なお、この流動開始温度とは、当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照、本発明においては、流動開始温度を測定する装置として、(株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500D」を用いる)。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、より良好な液晶性を発現するという観点から、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位((A1)及び(A2))の合計が、全構造単位の合計に対して30〜80mol%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位((B1)、(B2)及び(B3))の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35mol%、ヒドロキノンに由来する構造単位及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位((C1)及び(C2))の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35mol%、である液晶ポリエステルが好ましい。そして、このような構造単位とそのモル比(共重合比)を適宜最適化することにより、溶解度パラメーターσAの範囲(13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下)とする。
<多価アルコール脂肪酸エステル>
次に、成分(B)として用いる多価アルコール脂肪酸エステルに関して説明する。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル又はフルエステルであり、溶解度パラメーターσBが前記の範囲(9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下)のものである。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、このような溶解度パラメーターを満たす範囲において、一種を用いても、二種以上を組み合せて用いてもよい。なお、前記フルエステルとは、多価アルコールにある全ての水酸基がエステル化されたエステル化合物であることを意味し、前記部分エステルとは、多価アルコールの一部の水酸基がエステル化されたエステル化合物を意味する。
ここで脂肪酸としては、σBを前記の範囲にする上で、炭素原子数10〜32の高級脂肪酸が好ましい。高級脂肪酸の具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。これらの中でも、高級脂肪酸としては炭素原子数10〜22のものが好ましく、炭素原子数14〜20のものがより好ましい。前記の例示の中で、例えばステアリン酸やパルミチン酸は、通常、炭素原子数の異なる複数の脂肪酸を含む天然油脂類から製造される混合物である。かかる天然油脂類から製造された高級脂肪酸は、市場から比較的容易に入手できるので、本発明に使用する多価アルコール脂肪酸エステルを製造するうえで好ましく使用される。
一方、多価アルコールとしては、分子内にアルコール性水酸基を2個以上有するものであり、その炭素原子数が3〜32のものが好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが例示される。このような多価アルコールの種類と、前記に例示した高級脂肪酸の種類と、エステル化率(フルエステル又は部分エステル)とを適宜最適化することで、本発明に適用し得る溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下の多価アルコール脂肪酸エステルを得ることができる。また、このような多価アルコール脂肪酸エステルの中でもジペンタエリスリトールは、脂肪酸とエステル化して得られる多価アルコール脂肪酸エステルが、より高耐熱性となる傾向があるので好ましい。また、脂肪酸とのエステル化率は高い方が、σBを前記の範囲に制御し易くなり、好ましい。これらの観点からは、多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(σB:9.0(cal/cm31/2)が特に好ましい。
本発明に用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とを、公知のエステル化反応によって、エステル化させることにより得ることができる。なお、エステル化反応の際に、使用する多価アルコールの水酸基当量と、使用する脂肪酸のモル当量を適宜調整することにより、部分エステル又はフルエステルを作り分けることができる。また、市場から容易に入手できる市販品から、その溶解度パラメーターσBが前記の範囲であるものを選択して使用することができる。既述の好適なジペンタエリスリトールヘキサステアレートを主として含むものとしては、例えばコグニス・オレオケミカル・ジャパン(株)製LOXIOL VPG2571等がある。このような市販品では、比較的高純度のものを入手することができるので、そのまま使用しても差し支えないが、必要に応じて精製処理を行って使用してもよい。
成分(B)に適用される多価アルコール脂肪酸エステルは、TGA(熱重量分析)で求められる5%重量減少温度(TB)が250℃以上であることが好ましい。TBが250℃以下の場合、溶融成形温度が比較的高温の液晶ポリエステルを使用しようとすると、溶融成形の際に、多価アルコール脂肪酸エステルが熱分解し易くなって、溶融成形に係る時間が長くなった場合、離型性に対する有効量の多価アルコール脂肪酸エステルが成形体に残存しなくなるおそれがある。多価アルコール脂肪酸エステルのTBは高いほど、このような不都合を良好に回避できるので、TBが280℃以上の多価アルコール脂肪酸エステルを使用することが、本発明の液晶ポリエステル組成物には、さらに好ましい。TBが250℃以上である多価アルコール脂肪酸エステルは、450℃以下で溶融体を形成し得る液晶ポリエステルの何れと組み合わせて溶融成形したとしても、良好な離型性を発現し得る程度に十分な耐熱性を有している。既述した好適な多価アルコール脂肪酸エステルであるジペンタエリスリトールヘキサステアレートは、そのTBが290℃であり、耐熱性も十分といえる。なお、この5%重量減少温度は、熱重量測定装置を用いて測定されるものであり、詳述すると、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度500℃、昇温速度20℃/分、という条件下において熱重量分析を実施し、開始温度30℃におけるサンプル重量を100重量%とし、温度上昇によりサンプル重量が減少し、サンプル重量が95重量%まで減少した時の温度を求めたものである。
<液晶ポリエステル組成物の調製方法>
本発明の液晶ポリエステル組成物は、上述の溶解度パラメーターを満たす、(A)液晶ポリエステルと(B)多価アルコール脂肪酸エステルとを混合することで得られるものである。また、本発明の液晶ポリエステル組成物には、本発明の企図する目的を著しく損なわない範囲で、ガラス繊維などの充填剤、染料,顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。
液晶ポリエステル組成物の調製方法は特に限定されないが、液晶ポリエステル、多価アルコール脂肪酸エステル及び必要に応じて使用される充填剤や添加剤を、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合した後、押出機を用いて溶融混練することが好ましく、かかる溶融混練によってペレット化してもよい。
<成形体>
このようにして得られた液晶ポリエステル組成物は目的とする部品の形状によって好適な成形方法を選択することができるが、とりわけ、射出成形が好適である。射出成形して得られる成形体は、薄肉部を有するような複雑な形状の成形体を得ることが比較的容易であり、本発明の液晶ポリエステル組成物を用いて射出成形によって得られる成形体は、電気・電子部品等に使用するうえで特に好ましい。
射出成形に係る好適な成形条件について説明する。射出成形においては、まず本発明の液晶ポリエステル組成物を加熱溶融させる。その際の溶融温度は、液晶ポリエステルの流動開始温度(TA)を基点とするか、既述のように液晶ポリエステル組成物をペレット化して組成物ペレットにした場合は、該組成物ペレットの流動開始温度FT(℃)を基点にすればよい。組成物ペレットの流動開始温度FTを求めるには、既述の液晶ポリエステルの流動開始温度測定について説明したものと同じ方法が採用される。なお、組成物ペレット調製において液晶ポリエステルを一種のみ用いた場合は、当該組成物ペレットの流動開始温度FTと用いた液晶ポリエステルの流動開始温度(TA)は実質的に等しくなる。
ここでは、組成物ペレットの液晶ポリエステル組成物を用いた場合を例にとり、射出成形について説明する。なお、該組成物ペレットは射出成形に用いる前に乾燥させておくことが好ましい。
組成物ペレットの流動開始温度FT(℃)に対して、溶融温度は、[FT]℃以上[FT+70]℃以下が好ましい。そして溶融せしめた液晶ポリエステル組成物は所望の形状のキャビティーを有する金型へと射出する。金型温度は0℃以上の温度に設定されたものを用いることができる。溶融温度が、FT(℃)よりも低い温度で射出成形すると、流動性が低く微細な形状において完全にキャビティーに充填することができなかったり、金型面への転写性が低く成形体表面が荒れたり、する傾向があり、好ましくない。一方、溶融温度が、[FT+70]℃よりも高い温度で射出成形すると、成形機内で滞留する液晶ポリエステルの分解が生じ易くなって、得られる成形体に形状不良を生じたり、あるいは、脱ガスなどが発生しやすい成形体が得られたり、射出成形後、金型を開いて成形体を取り出す際にノズルから溶融樹脂が流れ出やすくなったり、する。このような脱ガスが発生しやすい成形体では、該成形体を種々の部品に適用するうえで、ガスが悪影響を及ぼす傾向にあり、様々な用途に適用することが困難になることがある。また、金型を開いて成形体を取り出す際にノズルから溶融樹脂が流れ出るような場合、流れ出た溶融樹脂が、いわゆるバリとなって所望の形状の成形体が得られ難くなり、後工程でバリを除去する必要があるので成形体の生産性が低下するといった問題も生じる。このような不都合を良好に回避する点と、得られる成形体の安定性と成形加工性を考慮して、溶融温度は[FT+10]℃以上[FT+60]℃以下であることが好ましく、さらに[FT+15]℃以上[FT+50]℃以下であることがより好ましい。
また、金型温度は前記のとおり、通常0℃以上に設定されるが、必ずしも限定されるものではなく、成形体の外観、寸法、機械物性、加工性や成形サイクルといった生産性を加味して決定される。一般的には40℃以上が好適である。金型温度が40℃を下回ると、連続成形した際の金型温度のコントロールが難しくなり、その温度ばらつきが成形体に悪影響を及ぼすことがある。また、金型温度は70℃以上であるとさらに好ましい。金型温度が70℃を下回ると、得られる成形体の表面平滑性が損なわれやすい傾向がある。表面平滑性を上げる観点からは、金型温度は高いほど有利であるが、高すぎると冷却効果が低下して冷却工程に要する時間が長くなるために生産性が低下するなどの問題が生じる。さらにいえば、金型温度を上げすぎると金型どうしの噛み合いが悪くなり、金型開閉時に金型が破損するという不都合が生じ易くなる。金型温度の上限も、前記組成物ペレットに含まれる液晶ポリエステルの分解を防止するために、適用する組成物ペレットの種類に応じて適宜最適化することが好ましく、50℃以上220℃以下の金型温度が好ましく、50℃以上200℃以下の金型温度がより好ましい。
<成形体の用途>
本発明の液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の用途としては、電気・電子機器用の筐体や発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、リレーケース等の電気機器部品用途に適している。また、センサー、LEDランプ、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、コネクタ、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板等)、DVD部品(光ピックアップ等)等の電子部品にも好適である。また、半導体素子、コイルなどの封止用樹脂、カメラなどの光学機器用部品、軸受けなどの高い摩擦熱が発生する部品、自動車・車両関連部品などの放熱部材や電装部品絶縁板にも適用できる。これらの中でも、比較的複雑な形状を必要とし、薄肉部を有することもある、リレーケースやコネクタを成形する上で、本発明の液晶ポリエステル組成物は特に有用である。
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
内部離型剤としては下記の離型剤1〜4を使用した。
離型剤1:ジペンタエリスリトールヘキサステアレート
溶解パラメーター:9.0(cal/cm31/2
5%重量減少温度(TB) 260℃
離型剤2:ペンタエリスリトールテトラステアレート
溶解パラメーター:8.7(cal/cm31/2
5%重量減少温度(TB) 310℃
離型剤3:グリセリントリステアレート
溶解パラメーター:6.7(cal/cm31/2
5%重量減少温度(TB) 340℃
離型剤4:ソルビタントリステアレート
溶解パラメーター:9.7(cal/cm31/2
5%重量減少温度(TB) 280℃
なお、上記の離型剤1〜離型剤4の5%重量減少温度は以下のようにして求めた。
(5%重量減少温度の測定)
熱重量測定装置(DTG−60、島津製作所(株)製)を用い、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度500℃、昇温速度20℃/分、という条件下において熱重量分析を実施し、開始温度30℃におけるサンプルの重量%を100%とし、温度上昇によりサンプル重量%が95%に達した時の温度を5%重量減少温度とした。
液晶ポリエステルの流動開始温度(TA)は以下のようにして求めた。
(流動開始温度)
内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータ((株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500D」)を用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度を求めた。
(ブリスター(発泡)評価)
実施例1〜3、比較例1〜5ではダンベル型試験片〔JIS K7113(1/2)号〕を成形して得、得られた試験片を、270℃まで5℃間隔に保温された半田浴槽に60秒浸漬した後、試験片を目視で観察し、ブリスター(発泡)無しを「○」、ブリスター(発泡)有りを「×」とした。実施例4ではダンベル型試験片〔JIS K7113(1/2)号〕を成形して得、得られた試験片を、330℃まで5℃間隔に保温された半田浴槽に60秒浸漬した後、試験片を目視で観察し、ブリスター(発泡)無しを「○」、ブリスター(発泡)有りを「×」とした。
(引張強度及び引張弾性率)
ASTM4号引張ダンベル型試験片を成形し、得られた試験片をASTM D638に準拠して、引張強度及び引張弾性率を測定した。
(曲げ強度及び曲げ弾性率)
幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を成形し、得られた試験片をASTM D790に準拠して、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
(離型抵抗測定)
得られたペレットを、射出成型機(日精樹脂工業(株)ES−400型)と図1に示す離型抵抗測定金型を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、保圧1400kg/cm2又は1700kg/cm2として、射出速度一定で、φ11×φ15×20mmでコア・キャビとも抜きテーパー0の試験片を成形し、この試験片取り出しに必要な圧力を測定し、この圧力を離型抵抗とした。
(液晶ポリエステルの製造)
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸621g(4.5モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル279g(1.5モル)、テレフタル酸149.4g(0.9モル)、イソフタル酸99.6g(0.6モル)及び無水酢酸841.5g(8.25モル)を仕込み、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、この温度を保持して30分還流させた。
その後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら3時間30分かけて315℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。得られたプレポリマー室温まで冷却し、粉砕機で粉砕して粉末とした後、この粉末を窒素雰囲気下、室温から230℃まで1時間かけて昇温し、230℃から250℃まで50分かけて昇温し、さらに250℃で10時間保持することで、固相重合を行った。このようにして得られた液晶ポリエステルをLCP1とする。LCP1の溶解パラメーターσA13.6(cal/cm31/2と算出された。また、LCP1の流動開始温度は290℃であった。
製造例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸830.7g(5.0モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル465.5g(2.5モル)、テレフタル酸394.6g(2.375モル)、イソフタル酸20.8g(0.125モル)、無水酢酸1153g(11.0モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。得られたプレポリマー室温まで冷却し、粉砕機で粉砕して粉末とした後、この粉末を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から320℃まで5時間かけて昇温し、さらに320℃で3時間保持することで、固相重合を行った。得られた液晶ポリエステルをLCP2とする。LCP2の溶解パラメーターσAは、13.6(cal/cm31/2と算出された。また、LCP2の流動開始温度は380℃であった。
実施例1〜3、比較例1〜5
製造例1で得られたLCP1、前記に示した離型剤1〜離型剤の何れか、及びガラス繊維(平均繊維長75μm、セントラル硝子(株)製)を、表2又は表3に示す組成(なお、組成はLCP1 100重量部に対する、離型剤の使用重量部、ガラス繊維の使用重量部で表す。)で、同方向2軸押出機(池貝鉄工株式会社PCM−30)を用いて340℃で溶融混練してペレット化した。
得られたペレットを、射出成型機(日精樹脂工業(株)ES−400型)を用いて、上記の各種評価に用いる試験片をそれぞれ成形し、ブリスター(発泡)評価、引張強度及び引張弾性率、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。結果を表2又は表3に示す。
実施例4
製造例2で得られたLCP2及び離型剤1、ガラス繊維(平均繊維長75μm、セントラル硝子(株)製)を表2に示す組成(なお、組成はLCP2 100重量部に対する、離型剤の使用重量部、ガラス繊維の使用重量部で表す。)で、同方向2軸押出機(池貝鉄工株式会社PCM−30)を用い、380℃で溶融混練してペレット化した。
得られたペレットを、射出成型機(日精樹脂工業(株)ES−400型)を用いて、上記の各種評価に用いる試験片をそれぞれ成形し、ブリスター(発泡)評価、引張強度及び引張弾性率、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2009108297
Figure 2009108297
(総合評価)
実施例1〜4、比較例1〜5の液晶ポリエステル組成物において、離型抵抗が100kg/cm2以下であり、ブリスター(発泡)も「○」であるものを、総合評価「○」とした。一方、離型抵抗が100kg/cm2を超えるか、ブリスター(発泡)が「×」であれば総合評価「×」とした。
表1の結果から、実施例1〜4の液晶ポリエステル組成物は、(A)液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下であり、(B)多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下であり、その差分(σA−σB)が3.8(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2以下である。結果として、当該実施例の液晶ポリエステル組成物は、離型抵抗が100kg/cm2以下であり、ブリスター(発泡)発生も認められないため、離型性及び半田に対する耐久性に極めて優れていることが判明した。
これに対して、比較例1の液晶ポリエステル組成物は(B)多価アルコール脂肪酸エステルを使用していないため、ブリスター(発泡)は発生していないが、離型抵抗が100kg/cm2を越え、成形体の金型から離型が困難であった。
比較例2の液晶ポリエステル組成物は、離型剤2の溶解パラメーターσ B 低く、LCP1と離型剤2の溶解パラメーター差が大きいため、成形体表面に離型剤2がブリードアウトするためか、ブリスター(発泡)が発生した。
比較例3の液晶ポリエステル組成物は、本発明の溶解度パラメーターσ B の範囲を満足する多価アルコール脂肪酸エステルである離型剤1を使用しているが、その添加量が多いため、成形体表面に離型剤1が必要以上に偏在し易くなるためか、ブリスター(発泡)が発生した。また、離型剤1が成形体内部にも多量に存在するためか、成形体自身の引張強度や曲げ弾性率も低下していた。
比較例4の液晶ポリエステル組成物は、離型剤3の溶解パラメーターσB低すぎ、LCP1と離型剤3の溶解パラメーター差が大きいため、成形体表面に離型剤がブリードアウトし易くなるためか、ブリスター(発泡)が発生した。
比較例5の液晶ポリエステル組成物は、離型剤4の溶解パラメーターσBが高すぎ、離型性が低下する傾向があり、LCP1と離型剤の溶解パラメーター差が小さいめか、ブリスター(発泡)が発生した。
離型抵抗測定金型を表す模式図である。

Claims (6)

  1. 以下の成分(A)100重量部に対して、以下の成分(B)0.1〜1.0重量部を含有してなる液晶ポリエステル組成物。
    (A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm31/2以上13.6(cal/cm31/2以下の液晶ポリエステル
    (B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm31/2以上9.5(cal/cm31/2以下の多価アルコール脂肪酸エステル
  2. 前記液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAと前記多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターσBとの差分(σA−σB)が、3.8(cal/cm31/2以上4.6(cal/cm31/2以下である、請求項1記載の液晶ポリエステル組成物。
  3. 前記多価アルコール脂肪酸エステル、TGA(熱重量分析)で求められる5%重量減少温度(TB)が250℃以上の多価アルコール脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
  4. 前記液晶ポリエステル、以下に定義される流動開始温度(TA)が280℃以上の液晶ポリエステルである、請求項1〜3の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物。
    流動開始温度:内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度
  5. 前記液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が全構造単位の合計に対して30〜80モル%であり、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位及びヒドロキノンに由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%であり、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%である液晶ポリエステルである、請求項1〜4の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体。
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