JP5308800B2 - 液晶ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
さらに、最近はコネクターの端子のピッチを1mm以下の狭ピッチにしたもの、またコネクターを基板に組み付けたときの厚さ(いわゆる、スタッキング高さ)が3mm以下のものが要求されている。
しかし、従来の液晶ポリマー組成物では、このような薄肉・狭ピッチのコネクター用の材料としては、成形時の流動性、成形品の寸法安定性、表面実装時のそり変形が不十分であった。特に、そり変形に関しては、リフロー時の液晶ポリマー組成物の成形品の熱膨張が大きく影響しており、この熱膨張の抑制は低そり性の観点から重要な課題である。
これらのことから、薄肉・狭ピッチコネクター用の材料としては、そり変形に大きく関与する熱膨張の抑制に加え、成形性・平面度・耐熱性の全ての特性に優れた材料の提供が待ち望まれている。
従来、コネクター用に液晶ポリマー組成物についていくつかの提案がなされ、実用化されている。
流動温度310〜400℃の液晶ポリエステル(A)100質量部に流動温度270〜370℃であって(A)との流動温度差が10〜60℃の液晶ポリエステル(B)10〜150質量部との総量を100質量部として、これに繊維状充填材または板状充填材を15〜180質量部配合して、0.2mm以下の薄肉部を有するコネクター等の製品に使用して、熱安定性、低そり性を得る組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の2種類の液晶ポリエステルの構成単位は、請求項2のモノマー組成範囲限定から計算すると全構成単位に対してパラヒドロキシ安息香酸から導かれる単位は72.5モル%以下であり、実施例では60モル%である。この組成物では、リフロー時の低そり性や耐熱性(DTUL)が不十分である。さらに、2種類の全芳香族液晶ポリエステルを用意しなければならない点で経済性に問題がある。また、実施例記載の2種ポリマーの流動温度差が40℃であり、このような場合には2種ポリマーが均一に溶け合わず、未溶融物が発生し、射出成形時にノズル詰りが生じるなどの虞がある。
コネクター等の表面実装用電子部品は、ハンダリフロープロセス(熱処理)による実装が行われるが、その際の耐ハンダ特性として、ハンダリフロープロセスによって生じる膨れ(ブリスター変形)を抑制することが求められている。これを解決する手段として、2,6−ナフチレン単位を含むヒドロキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸から誘導される構造単位からなる液晶ポリマーAとパラヒドロキシ安息香酸から誘導される成分を必須構成単位として、好ましくは40〜70モル%、含む液晶ポリマーBとを併用するものが提案されている(例えば特許文献7参照)。特許文献7に具体的に記載されている液晶ポリマーBのモノマー構成は、パラヒドロキシ安息香酸から誘導される構造単位が60モル%のものと50モル%のものである。この方法は液晶ポリマーBを単独使用するときは望ましい性能が得られないので、液晶ポリマーAを併用するというものである。実施例での2種ポリマーの流動開始温度の差が35℃以上と大きく、このような場合には2種ポリマーが均一に溶け合わず、未溶融物が発生し、射出成形時にノズル詰りが生じるなどの虞がある。また、実施例において充填剤に板状充填材を用いていないが、板状充填材を添加しないと、熱膨張抑制効果が小さくなり、FPCコネクター材料として、リフロー時の低そり性が不十分となることが多い。
さらにこの特許においてはモノマーの大半に高価な2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を用いている点や、複数の液晶ポリマーを用いる点で、原料コストが高く、経済性に問題がある。
(液晶ポリエステル)
本発明で用いる液晶ポリエステルとは、一般にサーモトロピックと呼ばれるポリエステルであり、異方性溶融体を形成するものである。全芳香族液晶ポリエステルは、これらの中で、実質的に芳香族化合物のみの重縮合反応によって得られるものをいう。
このような4種類の必須構成単位の組み合わせは、成形品の成形性、耐熱性、平面度、のすべてを満足し、さらに加熱時の熱膨張の抑制が可能なことから、優れた低そり性を達成するものである。特に、構成単位(I)が65モル%より少ない場合は、成形品の熱膨張が大きくなるので好ましくない。構成単位(I)が80モル%を超えると融点が上昇し過ぎたり、不融物が生成して、通常の成形機で成形することが困難になる。従来、一般的に成形原料としての液晶ポリエステルとして、構成単位(I)が65モル%未満の液晶ポリエステルが好ましいとされていたが、本発明はこれよりも構成単位(I)の含有量が多いことが特徴のひとつである。また、本発明の液晶ポリエステルでは芳香族ジカルボン酸から誘導される構成単位(III)と(IV)を必須成分として2種類使用することがもう一つの特徴である。2種類使用することにより、結晶性を制御し、成形性を向上できる。
本発明の液晶ポリエステルの融点は300℃〜400℃である。この温度範囲は、コネクターのような薄肉成形品の成形における流動性、成形品の低そり性を満足させるものである。融点が300℃未満である場合耐熱性が不十分である。融点が400℃を超える場合は、加熱による分解が生じるおそれがあり、加工性が困難になる。
本発明における無機板状充填材とは、長径と厚みの比が2以上のものを意味し、好ましいものとして、マイカ、タルクが挙げられるがこれらに限定されるものではない。熱膨張の抑制の点からはマイカが特に好ましい。
液晶ポリエステル樹脂組成物中の無機板状充填材の長径の数平均粒子径は、タルク・マイカ共に10〜50μmが好ましい。なお、液晶ポリエステル樹脂組成物中の無機板状充填材の数平均粒子径は、溶融混練して得られた樹脂組成物ペレットを坩堝に入れて電気炉中で灰化した後、残存した無機板状充填剤をスライドガラス上に展開して、顕微鏡で写真撮影した画像中から任意に選択される500個の粒子の長径を0.01mm間隔で読み取った結果から求めたものである。数平均粒子径がこの範囲より小さい場合は、熱膨張抑制効果が小さく、低そり性、耐熱性向上の効果が不十分となる。一方、数平均粒子径がこの範囲を超える場合は、成形品の表面状態、成形品中の分散性などに問題が生じる。成形品の熱膨張抑制効果は液晶ポリエステルの構成単位(I)の含有量が65〜80モル%以上であることが必須であるが、この範囲内で、無機板状充填材は数平均粒子径が大きい方がさらに熱膨張抑制効果が顕著である。無機板状充填材の好ましいアスペクト比は5〜200であり、さらに好ましいアスペクト比は5〜100である。アスペクト比が5未満のものでは無機板状充填剤による熱膨張抑制効果が小さく、低そり性効果が得られにくく、また、100以上のものは溶融混錬の際に割れやすくなるため、それ以上の低そり性効果が得られず、薄肉流動性も十分得られなくなる。
本発明における無機繊維状充填材とは、アスペクト比が4以上のものでありガラス繊維、ウオラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカ、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、金属繊維、炭素繊維等が挙げられるが、特に好ましいのはガラス繊維である。液晶ポリエステル樹脂組成物中の無機繊維状充填材の数平均繊維径は0.1〜20μm、数平均繊維長は50〜500μmが好ましい。繊維長がこれより短いと、耐熱性、強度向上効果が不十分となる。また、繊維長がこれより長いと成形品の表面状態、成形品中の分散性等に問題が生じる。なお、数平均繊維長は溶融混練して得られた樹脂組成物ペレットを坩堝に入れて電気炉中で灰化した後、残存したガラス繊維をスライドガラス上に展開して、顕微鏡で写真撮影した画像中から任意に選択される500本の繊維を0.01mm間隔で読み取った結果から求めたものである。
これらの、無機板状充填材および無機繊維状充填材は、それぞれ複数を組み合わせて使用することができる。
ここで、液晶ポリエステルの融点とは、以下のようにして測定した値を意味する。
示差走査熱量計によって、リファレンスとしてα−アルミナを用いて融点測定を行った。測定温度条件は、室温から20℃/分の昇温速度で昇温してポリマーを融解させて得られた吸熱ピークをTm1とし、10℃/分で150℃まで冷却して、さらに20℃/分で昇温した時に得られる吸熱ピークをTm2とし、このTm2を融点とした。
また、溶融粘度は以下のようにして測定した値を意味する。
キャピラリーレオメーターを用い、キャピラリーとして径1.0mm,長さ40mm,流入角90°のものを用い、せん断速度100sec−1で融点―30℃から+4℃/分の昇温速度で等速加熱を用いながら溶融粘度測定を行い、液晶ポリエステルの融点(Tm2)+20℃における溶融粘度を求めた。
本発明では、その効果を妨げない範囲で他の充填材、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、クレー、ケイ藻土、などのケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ、硫酸カルシウム、その他各種金属粉末、各種金属箔、フッ素系ポリマー、芳香族ポリエステル、芳香族ポリイミド、ポリアミドなどからなる耐熱性高強度の繊維のような有機充填材などが挙げられる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物から射出成形等の公知の成形方法によって所望の成形品とすることができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を使用することにより、成形品の成形性、耐熱性、平面度のすべてを満足し、さらに加熱時の熱膨張の抑制が可能なことから、低そり性に優れる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて、荷重たわみ温度(DTUL)が280℃以上の成形品を得ることができる。
特に、耐熱性に優れた薄肉・狭ピッチのコネクターを効率よく製造することができるものであり、ピッチ1mm以下であり、基板に組みつけられた際のスタッキングの高さが3mm以下であるコネクターを製造することが可能となる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、コネクター以外に次のような各種用途の成形品を製造するのに好ましく使用できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、コネクター用途に限定されるものではなく、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップなどの電気・電子部品や、OA・AV部品、自動車部品、機械部品、ハウジング部品分野で使用される部材の構成材料として優れた特性を有するものである。
(溶融重縮合)
SUS316を材質とし、ダブルヘリカル攪拌翼を有する1.7m3の反応槽にp−ヒドロキシ安息香酸(上野製薬(株)製)484.8kg(3.51kmol)、p,p’−ビフェノール(本州化学工業(株)製)108.9kg(0.585kmol)、テレフタル酸(三井化学(株)製)58.3kg(0.351kmol)、イソフタル酸(エイジーインターナショナル(株)製)38.9kg(0.234kmol)、触媒として酢酸マグネシウム(キシダ化学(株)製)46g、酢酸カリウム(キシダ化学(株)製)15gを仕込んだ。重合槽の減圧−窒素注入を2回行って窒素置換を行った後、無水酢酸(チッソ(株)製)516.0kg(5.05kmol)を添加し、攪拌翼の回転数45rpmで150℃まで1.5時間で昇温し、還流状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分の速度にて310℃まで昇温し、発生する酢酸を除去しながら重縮合反応を5時間20分行った。310℃において反応層系を密閉し、その系内を窒素で14.7N/m2(1.5kgf/cm2)に加圧し、反応槽内の溶融重縮合反応性生物である、低重合度液晶ポリエステル約600kgを後述の冷却固化装置に供給した。
冷却固化装置として、特開2002−179979に従い、直径630mmの一対の冷却ロール、ロール間隔2mm、距離1800mmの一対の堰を有する装置を用いた。該一対の冷却ロールを18rpmの回転数で対向回転させ、該一対の冷却ロールと該一対の堰とで形成された凹部に、反応槽から抜出された流動状態の低重合度液晶ポリエステルを徐々に供給し、ロール間を通過直後にシート状に冷却固化した低重合度液晶ポリエステルを、解砕機(日空工業(株)製)によりおおよそ50mm角に解砕した。
この解砕物を、ホソカワミクロン(株)製のフェザーミルを用いて、目開き1mmのメッシュを通過するまで粉砕し、固相重縮合用原料を得た。該粉砕物をロータリーキルンに収納し、15m3/hの窒素流通下、回転数2rpmにて、室温から170℃まで3時間かけて昇温した後、280℃まで5時間かけて昇温し、更に310℃まで3時間かけて昇温して、固相重縮合を行い、室温まで1時間で冷却し、液晶ポリエステルAを得た。得られたポリマーの融点は366℃であった。400℃における偏光顕微鏡観察で、溶融状態において光学異方性が観測された。
液晶ポリエステルAの原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸446.7kg(3.234kmol)、p,p’−ビフェノール129.0kg(0.693kmol)、テレフタル酸84.4kg(0.508kmol)、イソフタル酸30.7kg(0.185kmol)に変え、触媒として酢酸マグネシウム46g、酢酸カリウム15gを仕込み、以下液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合、固相重縮合をおこない、液晶ポリエステルBを得た。得られたポリマーの融点は358℃であった。400℃における偏光顕微鏡観察で、溶融状態において光学異方性が観測された。
液晶ポリエステルAの原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸409.4kg(2.964kmol)、p,p’−ビフェノール148.6kg(0.798kmol)、テレフタル酸94.7kg(0.570kmol)、イソフタル酸37.9kg(0.228kmol)に変え、触媒として酢酸マグネシウム46g、酢酸カリウム15gを仕込み、以下液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合をおこない、液晶ポリエステルCを得た。得られたポリマーの融点は355℃であった。400℃における偏光顕微鏡観察で、溶融状態において光学異方性が観測された。
液晶ポリエステルAの原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸372.9kg(2.70kmol)、p,p’−ビフェノール167.6kg(0.90kmol)、テレフタル酸112.1kg(0.675kmol)、イソフタル酸37.4kg(0.225kmol)に変え、触媒として酢酸マグネシウム67g、酢酸カリウム23gを仕込み、以下液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合をおこない、液晶ポリエステルDを得た。得られたポリマーの融点は353℃であった。400℃における偏光顕微鏡観察で、溶融状態において光学異方性が観測された。
液晶ポリエステルAの原料の配合を、p−ヒドロキシ安息香酸302.5kg(2.19kmol)、p,p’−ビフェノール203.9kg(1.095kmol)、テレフタル酸109.2kg(0.657kmol)、イソフタル酸72.8kg(0.438kmol)に変え、触媒として酢酸マグネシウム43g、酢酸カリウム14gを仕込み、以下液晶ポリエステルAと同様に溶融重縮合と固相重縮合をおこない、液晶ポリエステルEを得た。得られたポリマーの融点は305℃であった。350℃における偏光顕微鏡観察で、溶融状態において光学異方性が観測された。
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製)により、リファレンスとしてα−アルミナを用いて融点測定を行った。測定温度条件は20℃/分で室温から昇温してポリマーを融解させて得られた吸熱ピークをTm1とし、10℃/分で150℃まで冷却して、さらに20℃/分で昇温した時に得られる吸熱ピークをTm2とし、このTm2を融点とした。
以下の充填材を使用した。
マイカA:体積平均径23μm、アスペクト比90、嵩比重0.17g/ml((株)山口雲母工業所製、商品名AB−25S)
マイカB:体積平均径47μm、アスペクト比80、嵩比重0.26g/ml((株)山口雲母工業所製、商品名A−41S)
タルク:体積平均径24μm、アスペクト比7、(日本タルク(株)製、商品名MS−KY)
ガラス繊維:数平均繊維長3.5mm、数平均繊維径10μm、アスペクト比350(旭ファイバーグラス社製のチョップドガラスファイバー、商品名PX−1)
「他の配合剤」
カーボンブラック:(キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製、商品名REGAL99I)
実施例および比較例における液晶ポリエステル樹脂組成物の製造は以下のようにして行った。
液晶ポリエステルA〜Eと無機板状充填材、無機繊維状充填材およびカーボンブラックを、表2に記載した割合で配合して、二軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM30)により溶融混練してペレットを得た。その際の押出量は15kg/分、最高シリンダー温度は380℃とした。
得られた樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機工業(株)製,SG−25)を用いて、シリンダー最高温度370℃、射出速度100mm/sec、金型温度80℃で、13mm(幅)×130mm(長さ)×3mm(厚み)の射出成形体を得て、これを試験片1とした。試験片1は、荷重たわみ温度(DTUL)、熱膨張率、曲げ弾性率の測定に用いた。同様に新潟鉄工(株)製MIN7射出成形機により1mm厚のASTM D1822準拠の試験片を得てこれを試験片2とした。試験片2はブリスター測定に用いた。
また、図1に示すFPCコネクター金型を用いて、薄肉成形性を評価し、得られた成形品はそり量の測定に用いた。
1.組成物の生産性:上記製造条件で、組成物ペレットが得られたものを○、コンパウンドが困難でペレットが得られなかったものを×とした。ペレットが得られなった比較例3については他の評価試験に供しなかった。
2.液晶ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度:インテスコ(株)社製キャピラリーレオメーター(Mode12010)を用い、キャピラリーとして径1.0mm,長さ40mm,流入角90°のものを用い、せん断速度100sec−1で融点―30℃から+4℃/分の昇温速度で等速加熱を用いながら溶融粘度測定を行い、液晶ポリエステルの融点(Tm2)+20℃における溶融粘度を求めた。
3.無機繊維状充填材の数平均繊維長測定:得られた樹脂組成物ペレットを坩堝中で灰化した後、残存物のうち100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させ、その分散液をスポイトを用いて数滴ガラススライド上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影した。この写真に撮影された画像中から任意に選択した500本の無機繊維状充填材の繊維長測定を0.01mm間隔で読み取った結果から、数平均繊維長を求めた。
4.無機板状充填材の数平均粒子径測定:得られた樹脂組成物ペレットを坩堝中で灰化した後、残存物のうち100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させ、その分散液をスポイトを用いて数滴ガラススライド上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影した。この写真に撮影された画像中から任意に選択した500個の無機板状充填材のそれぞれの粒子の最も長い部分を粒子径とし、粒子径の測定を0.01mm間隔で行い、数平均粒子径を求めた。
5.荷重たわみ温度(DTUL):試験片1を用いて、ASTM D648に準拠して荷重たわみ温度を測定した。
6.曲げ弾性率:試験片1を用いて、スパン間距離50mmでASTMD−790に準拠して行った。
7.熱膨張率:試験片1を、ヒートデストーションテスター(安田精機製作所NO−148HD−500)を用いて、荷重0.25MPa下にて50〜250℃間のTD方向の膨張変位の測定を行った。50℃での膨張変位Xmm、200℃での膨張変位Ymm、50℃での試験片のTD方向幅Zから、以下の式を用いて膨張率Aとした。
9.そり量:図1の金型を用いて成形したコネクター成形品を定盤において、長手方向の端点から端点までを0.2mmごとに、定盤からの高さを三次元測定機で測定した。端点から端点を結んだ直線を基準とし、直線からの変位を測定した。この変位の最大値を求め、3個の成形品の平均値をもって「そり量(加熱前)」とした。
次に、そり量を測定したあとの成形品を、内部温度260℃雰囲気としたオーブン内に入れ、2分間熱処理を行った。熱処理後の成形品を取り出し、上記の方法にてそり量を求め、得られた値を「そり量(加熱後)」とした。
10.ブリスター測定:ハンダ耐熱性の評価として行った。試験片2を内部温度280℃の雰囲気にしたオーブン内に入れ、30分間熱処理を行った。熱処理後の成形品を取り出して、成形品の発泡、膨れの有無を検査した。結果を「有り」、「無し」で表示した。
実施例1、6、7と比較例1、2とは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位(I)の含有量が実施例1では75モル%(液晶ポリエステルA)、実施例6では70モル%(液晶ポリエステルB)、実施例7では65モル%(これは本発明の構成単位(I)の下限)(液晶ポリエステルC)であり、比較例1では60モル%(液晶ポリエステルD)、比較例2では50モル%(液晶ポリエステルE)であり、その他の配合成分および配合割合は同一である。DTUL、曲げ弾性率は実施例1、6、7が比較例1、2よりも5%以上高い値を示している。熱膨張率は、実施例1が17.2、実施例6が17.3、実施例7が18.2であるのに対し、比較例1は22.1、比較例2は25.0であり、実施例1、6、7は著しく改善されている。そり量(加熱前)は、実施例1が0.020mm、実施例6が0.028mm、実施例7が0.032mmであるのに対し比較例1、2は0.050mmおよび0.076mmであり、さらにそり量(加熱後)は、実施例1が0.070mm、実施例6が0.086mm、実施例7が0.090mmであるのに対し比較例1、2は0.122mmおよび0.154mmであり、実施例1、6、7の改善効果は著しいものであることが示されている。このことは、本発明の構成単位(I)の含有量が上限に近い75%の実施例1のみならず、中間値の70モル%である実施例6および下限の65モル%である実施例7でも、従来技術で使用されていた構成単位(I)の含有量が60モル%、50モル%の液晶ポリエステルD、Eからは到底予測できない結果である。さらに、比較例2はブリスターの発生が見られ、ハンダ耐熱性に劣るものである。
実施例2、3、4および5は、液晶ポリエステルAに対して無機板状充填材の種類と配合量およびガラス繊維の配合量を変えたものである。本発明において性能に影響を及ぼす作用が顕著な無機板状充填材については、本発明の配合範囲である15〜60質量部内の下限に近い17質量部(実施例2)、中央値に近い43質量部(実施例4、5)および上限に近い51質量部(実施例3)を用いた。無機繊維状充填材は性能に与える作用が無機板状充填材に比して少ないので、配合範囲5〜60質量部の範囲内で、無機板状充填材との合計量がほぼ同じ(68質量部又は69質量部)になるように配合量を調整した。実施例2〜5は、測定した諸性能のいずれにおいても液晶ポリエステルAを用いた実施例1と同等の結果がバランスよく得られている。
これに対して、比較例3は本発明の範囲内の構成単位(I)を含む液晶ポリエステルAを使用しているが、マイカの配合量が本発明の無機板状充填材の配合量の上限値60質量部を超えると、組成物の生産が困難であることを示しており、従来技術において液晶ポリエステル100質量部に対して60質量部を超えるような多量の無機板状充填材の配合が可能であるとされていたが、本発明の特定の液晶ポリエステルに対しては異なった結果が得られることを示している。
また、比較例4は無機板状充填材の配合量を本発明の配合量の下限値15よりも少なくすると、無機繊維状充填材との合計配合量を実施例と同等の69質量部に調整しても、DTUL、曲げ弾性率は実施例と遜色ないが、熱膨張率およびそり量が劣ることを示している。また、比較例5は、無機板状充填材の配合割合が本発明の範囲内であっても、無機繊維状充填材の配合量が本発明の上限である60質量%を超えると、DTUL,曲げ弾性率は実施例と変わらないが、溶融粘度が増加し、薄肉成形ができなくなることを示している。さらに、比較例5は薄肉成形ができなかったのでFPCモデルコネクターが得られず、そり量の測定は行わなかった。
Claims (8)
- 下記式(I)の構成単位が65〜80モル%、下記式(II)の構成単位が10〜18モル%、下記式(III)の構成単位が1〜18モル%、下記式(IV)の構成単位が1〜18モル%((I)、(II)、(III)、および(IV)合わせて、100モル%とする。)からなる融点が300℃〜400℃である液晶ポリエステル100質量部と、長径の平均粒径が23〜47μm、アスペクト比が7〜90の無機板状充填材を17〜51質量部、数平均繊維径が0.1〜20μm、アスペクト比が350以上の無機繊維状充填材を17〜51質量部とを溶融混練してなる液晶ポリエステル樹脂組成物であり、液晶ポリエステル樹脂組成物中の前記無機板状充填材の長径の数平均粒子径が10〜50μm、液晶ポリエステル樹脂組成物中の前記無機繊維状充填材の長径の数平均繊維径が0.1〜20μm、かつ、液晶ポリエステル樹脂組成物中の数平均繊維長さが50〜500μmである液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 前記無機板状充填材が、タルクもしくはマイカである請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 前記無機繊維状充填材が、ガラス繊維である請求項1又は2記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 前記液晶ポリエステル樹脂組成物が、せん断速度100sec−1、前記液晶ポリエステルの融点より20℃高い温度での溶融粘度が100〜2,000poise(10〜200Pa・s)である請求項1、2または3のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜4記載のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
- 前記成形品の荷重たわみ温度が280℃以上である請求項5記載の成形品。
- 請求項1〜4記載のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から成形されたコネクター。
- ピッチ1mm以下であり、基板に組みつけられた際のスタッキングの高さが3mm以下である請求項7記載のコネクター。
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