JP2009108297A - 液晶ポリエステル組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】[1]成分(A)100重量部に対して、成分(B)0.1〜1.0重量部を含有してなる、液晶ポリエステル組成物。
成分(A):溶解度パラメーターが13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下である、液晶ポリエステル
成分(B):溶解度パラメーターが9.0(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下である、多価アルコール脂肪酸エステル
[2][1]の液晶ポリエステル組成物を溶融成形してなる成形体。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明は下記<1>を提供する。
<1>以下の成分(A)100重量部に対して、以下の成分(B)0.1〜1.0重量部を含有してなる液晶ポリエステル組成物。
(A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下の液晶ポリエステル
(B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下の多価アルコール脂肪酸エステル
<2>前記液晶ポリエステルの溶解度パラメーターと前記多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターの差分(σA−σB)が、3.8(cal/cm3)1/2以上4.5(cal/cm3)1/2以下である、<1>の液晶ポリエステル組成物。
<3>前記多価アルコール脂肪酸エステルが、TGA(熱重量分析)で求められる5%重量減少温度(TB)が250℃以上の多価アルコール脂肪酸エステルである、<1>又は<2>の液晶ポリエステル組成物。
<4>前記液晶ポリエステルが、以下に定義される流動開始温度(TA)が280℃以上の液晶ポリエステルである、<1>〜<3>の何れかの液晶ポリエステル組成物。
流動開始温度:内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度
<5>前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が全構造単位の合計に対して30〜80モル%、
4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位及びヒドロキノンに由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%、
テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%、
からなる液晶ポリエステルである、<1>〜<4>の何れかの液晶ポリエステル組成物。
<6><1>〜<5>の何れかの液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体。
本発明の液晶ポリエステル組成物は既述のように、(A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下の液晶ポリエステルと、
(B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下の多価アルコール脂肪酸エステルとを、
含有してなり、成分(A)100重量部に対して成分(B)が0.1〜1.0重量部であることを特徴とする。
内部離型剤を含む液晶ポリエステル組成物を溶融成形する場合、金型内表面に接する成形体表面に内部離型剤が偏在するようになって、成形体表面に偏在する内部離型剤が離型性を発現させると考えられる。良好な離型性を発現するためには、成形体表面に偏在する内部離型剤が、成形体と金型との接着仕事をより小さくなるようにする。多量に成形体表面に偏在しなければ良好な離型性を発現しない内部離型剤を使用したり、成形体表面にブリードアウトし易かったり、すると、成形体表面に偏在する内部離型剤がブリスターを発生し易くなり、ブリスター発生を防止し得る程度に内部離型剤の使用量を少なくすると、良好な離型性を発現し難くなる。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと多価アルコール脂肪酸エステルを用い、両者の重量割合と溶解度パラメーターとを前記の範囲とすることで、多価アルコール脂肪酸エステルが成形体表面に良好な離型性を発現でき、ブリスター等の形状不良を発生しない程度に偏在していると推定される。
このように、溶解度パラメーターを前記の範囲とした液晶ポリエステル及び多価アルコール脂肪酸エステルを用いること、良好な離型性とブリスター等の発生防止とが高度に両立できる成形体が得られることは、従来、主として臨界表面張力が低いことに着目して使用されてきた内部離型剤の使用からは容易に想到できないものであり、本発明者の独自の知見に基づくものである。
ここで、本発明における溶解度パラメーターについて説明する。
溶解度パラメーターの定義は、物質の凝集エネルギーの大きさを表す数値であり、本発明においては、Fedorsによって提案された方法(Polym.Eng.Sci.,Vol14,P147(1974)、以下、「Fedors法」と呼ぶ。)によって算出される溶解度パラメーターを用いる。Fedors法においては、原子又は原子団の、蒸発エネルギー及びモル体積をそれぞれΔer、Δviとすると、溶解度パラメーターσは下記式(数1)により算出される。
次に、好適な液晶ポリエステルに関して詳述する。
本発明に使用する液晶ポリエステルは、σAが前記の範囲(13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下)のものであれば、公知の液晶ポリエステルの中から適宜選択して使用することができる。また、σAが前記の範囲である、複数種の液晶ポリエステルを組み合せて用いてもよい。
液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。例えば、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの等
が挙げられる。
ここで、エステル形成性誘導体とは、分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の場合は、当該カルボキシル基を、高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したもの、当該カルボキシル基がエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールの場合は、当該フェノール性水酸基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成しているもの等も挙げることができる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:
前記の構造単位は、芳香環にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)からなる組み合わせ、又は、(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)からなる組み合わせ
(b):(A2)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ、又は(A2)、(B1)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ
(c):(A1)及び(A2)からなる組み合わせ。
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部又は全部を(A2)に置きかえたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部又は全部を(B3)に置きかえたもの
(f):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部又は全部を(C3)に置きかえたもの
(g):(b)の構造単位の組み合わせにおいて、(A2)の一部又は全部を(A1)に置きかえたもの
(h):(c)の構造単位の組み合わせに、(B1)と(C2)を加えたもの
最も基本的な構造となる(a)、(b)の液晶ポリエステルについては、それぞれ、特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報に例示されている。
ここで、前記の好適な液晶ポリエステルである(a)〜(h)に係る構造単位の組合わせを例にとり、σAを算出する方法を具体的に示す。この組合わせに係る構造単位の溶解度パラメーターσ及び式量は、下記の表1のようになる。
また、このような製造方法において、液晶ポリエステルを構成する各構造単位のモル比は、使用するモノマーの仕込量によって容易に制御することができる。
より耐熱性に優れた成形体を得るためには、液晶ポリエステルの溶融開始温度(TA)は300℃以上であると、より好ましく、320℃以上であると、一層好ましい。なお、この流動開始温度とは、当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照、本発明においては、流動開始温度を測定する装置として、(株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500D」を用いる)。
p―ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位((A1)及び(A2))の合計が、全構造単位の合計に対して30〜80mol%、
テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位((B1)、(B2)及び(B3))の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35mol%、
ヒドロキノンに由来する構造単位及び4,4’―ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位((C1)及び(C2))の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35mol%、
である液晶ポリエステルが好ましい。そして、このような構造単位とそのモル比(共重合比)を適宜最適化することにより、溶解度パラメーターσAの範囲(13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下)とする。
次に、成分(B)として用いる多価アルコール脂肪酸エステルに関して説明する。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル又はフルエステルであり、溶解度パラメーターσBが前記の範囲(9.0(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下)のものである。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、このような溶解度パラメーターを満たす範囲において、一種を用いても、二種以上を組み合せて用いてもよい。なお、前記フルエステルとは、多価アルコールにある全ての水酸基がエステル化されたエステル化合物であることを意味し、前記部分エステルとは、多価アルコールの一部の水酸基がエステル化されたエステル化合物を意味する。
また、このような多価アルコール脂肪酸エステルの中でも。ジペンタエリスリトールは、脂肪酸とエステル化して得られる多価アルコール脂肪酸エステルが、より高耐熱性となる傾向があるので好ましい。また、脂肪酸とのエステル化率は高い方が、σBを前記の範囲に制御し易くなり、好ましい。これらの観点からは、多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(σB:9.0(cal/cm3)1/2)が特に好ましい。
また、市場から容易に入手できる市販品から、その溶解度パラメーターσBが前記の範囲であるものを選択して使用することができる。既述の好適なジペンタエリスリトールヘキサステアレートを主として含むものとしては、例えばコグニス・オレオケミカル・ジャパン(株)製LOXIOL VPG2571等がある。このような市販品では、比較的高純度のものを入手することができるので、そのまま使用しても差し支えないが、必要に応じて精製処理を行って使用してもよい。
なお、この5%重量減少温度は、熱重量測定装置を用いて測定されるものであり、詳述すると、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度500℃、昇温速度20℃/分、という条件下において熱重量分析を実施し、開始温度30℃におけるサンプル重量を100重量%とし、温度上昇によりサンプル重量が減少し、サンプル重量が95重量%まで減少した時の温度を求めたものである。
本発明の液晶ポリエステル組成物は、上述の溶解度パラメーターを満たす、(A)液晶ポリエステルと(B)多価アルコール脂肪酸エステルとを混合することで得られるものである。
また、本発明の液晶ポリエステル組成物には、本発明の企図する目的を著しく損なわない範囲で、ガラス繊維などの充填剤、染料,顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。
このようにして得られた液晶ポリエステル組成物は目的とする部品の形状によって好適な成形方法を選択することができるが、とりわけ、射出成形が好適である。射出成形して得られる成形体は、薄肉部を有するような複雑な形状の成形体を得ることが比較的容易であり、本発明の液晶ポリエステル組成物を用いて射出成形によって得られる成形体は、電気・電子部品等に使用するうえで特に好ましい。
射出成形においては、まず本発明の液晶ポリエステル組成物を加熱溶融させる。その際の溶融温度は、液晶ポリエステルの流動開始温度(TA)を基点とするか、既述のように液晶ポリエステル組成物をペレット化して組成物ペレットにした場合は、該組成物ペレットの流動開始温度FT(℃)を基点にすればよい。組成物ペレットの流動開始温度FTを求めるには、既述の液晶ポリエステルの流動開始温度測定について説明したものと同じ方法が採用される。なお、組成物ペレット調製において液晶ポリエステルを一種のみ用いた場合は、当該組成物ペレットの流動開始温度FTと用いた液晶ポリエステルの流動開始温度(TA)は実質的に等しくなる。
組成物ペレットの流動開始温度FT(℃)に対して、溶融温度は、[FT]℃以上[FT+70]℃以下が好ましい。そして溶融せしめた液晶ポリエステル組成物は所望の形状のキャビティーを有する金型へと射出する。金型温度は0℃以上の温度に設定されたものを用いることができる。
溶融温度が、FT(℃)よりも低い温度で射出成形すると、流動性が低く微細な形状において完全にキャビティーに充填することができなかったり、金型面への転写性が低く成形体表面が荒れたり、する傾向があり、好ましくない。一方、溶融温度が、[FT+70]℃よりも高い温度で射出成形すると、成形機内で滞留する液晶ポリエステルの分解が生じ易くなって、得られる成形体に形状不良を生じたり、あるいは、脱ガスなどが発生しやすい成形体が得られたり、射出成形後、金型を開いて成形体を取り出す際にノズルから溶融樹脂が流れ出やすくなったり、する。このような脱ガスが発生しやすい成形体では、該成形体を種々の部品に適用するうえで、ガスが悪影響を及ぼす傾向にあり、様々な用途に適用することが困難になることがある。また、金型を開いて成形体を取り出す際にノズルから溶融樹脂が流れ出るような場合、流れ出た溶融樹脂が、いわゆるバリとなって所望の形状の成形体が得られ難くなり、後工程でバリを除去する必要があるので成形体の生産性が低下するといった問題も生じる。このような不都合を良好に回避する点と、得られる成形体の安定性と成形加工性を考慮して、溶融温度は[FT+10]℃以上[FT+60]℃以下であることが好ましく、さらに[FT+15]℃以上[FT+50]℃以下であることがより好ましい。
本発明の液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の用途としては、電気・電子機器用の筐体や発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、リレーケース等の電気機器部品用途に適している。また、センサー、LEDランプ、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、コネクタ、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板等)、DVD部品(光ピックアップ等)等の電子部品にも好適である。
また、半導体素子、コイルなどの封止用樹脂、カメラなどの光学機器用部品、軸受けなどの高い摩擦熱が発生する部品、自動車・車両関連部品などの放熱部材や電装部品絶縁板にも適用できる。
これらの中でも、比較的複雑な形状を必要とし、薄肉部を有することもある、リレーケースやコネクタを成形する上で、本発明の液晶ポリエステル組成物は特に有用である。
離型剤1:ジペンタエリスリトールヘキサステアレート
溶解パラメーター:9.0(cal/cm3)1/2
5%重量減少温度(TB) 260℃
離型剤2:ペンタエリスリトールテトラステアレート
溶解パラメーター:8.7(cal/cm3)1/2
5%重量減少温度(TB) 310℃
離型剤3:トリグリセリンステアレート
溶解パラメーター:6.7(cal/cm3)1/2
5%重量減少温度(TB) 340℃
離型剤4:ソルビタントリステアレート
溶解パラメーター:9.7(cal/cm3)1/2
5%重量減少温度(TB) 280℃
(5%重量減少温度の測定)
熱重量測定装置(DTG―60、島津製作所(株)製)を用い、窒素雰囲気下、開始温度30℃、終了温度500℃、昇温速度20℃/分、という条件下において熱重量分析を実施し、開始温度30℃におけるサンプルの重量%を100%とし、温度上昇によりサンプル重量%が95%に達した時の温度を5%重量減少温度とした。
(流動開始温度)
内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータ((株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500D」)を用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度を求めた。
実施例1〜3、比較例1〜5ではダンベル型試験片〔JIS K7113(1/2)号〕を成形して得、得られた試験片を、270℃まで5℃間隔に保温された半田浴槽に60秒浸漬した後、試験片を目視で観察し、ブリスター(発泡)無しを「○」、ブリスター(発泡)有りを「×」とした。
実施例4ではダンベル型試験片〔JIS K7113(1/2)号〕を成形して得、得られた試験片を、330℃まで5℃間隔に保温された半田浴槽に60秒浸漬した後、試験片を目視で観察し、ブリスター(発泡)無しを「○」、ブリスター(発泡)有りを「×」とした。
ASTM4号引張ダンベル型試験片を成形し、得られた試験片をASTM D638に準拠して、引張強度及び引張弾性率を測定した。
幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を成形し、得られた試験片をASTM D790に準拠して、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
得られたペレットを、射出成型機(日精樹脂工業(株)ES-400型)と図1に示す離型抵抗測定金型を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃、保圧1400kg/cm2又は1700kg/cm2として、射出速度一定で、φ11×φ15×20mmでコア・キャビとも抜きテーパー0の試験片を成形し、この試験片取り出しに必要な圧力を測定し、この圧力を離型抵抗とした。
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸 621g(4.5モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル279g(1.5モル)、テレフタル酸149.4g(0.9モル)、イソフタル酸99.6g(0.6モル)及び無水酢酸841.5g(8.25モル)を仕込み、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、この温度を保持して30分還流させた。
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粉砕機で粉砕して粉末とした後、この粉末を窒素雰囲気下、室温から230℃まで1時間かけて昇温し、230℃から250℃まで50分かけて昇温し、さらに250℃で10時間保持することで、固相重合を行った。このようにして得られた液晶ポリエステルをLCP1とする。LCP1の溶解パラメーターσAは13.0(cal/cm3)1/2と算出された。また、LCP1の流動開始温度は290℃であった。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p―ヒドロキシ安息香酸830.7g(5.0モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル465.5g(2.5モル)、テレフタル酸394.6g(2.375モル)、イソフタル酸20.8g(0.125モル)、無水酢酸1153g(11.0モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持して3時間還流させた。
製造例1で得られたLCP1、前記に示した離型剤1〜離型剤5の何れか、及びガラス繊維(平均繊維長75μm、セントラル硝子(株)製)を、表2又は表3に示す組成(なお、組成はLCP1 100重量部に対する、離型剤の使用重量部、ガラス繊維の使用重量部で表す。)で、同方向2軸押出機(池貝鉄工株式会社PCM−30)を用いて340℃で溶融混練してペレット化した。
製造例2で得られたLCP2及び離型剤1、ガラス繊維(平均繊維長75μm、セントラル硝子(株)製)を表2に示す組成(なお、組成はLCP2 100重量部に対する、離型剤の使用重量部、ガラス繊維の使用重量部で表す。)で、同方向2軸押出機(池貝鉄工株式会社PCM−30)を用い、380℃で溶融混練してペレット化した。
実施例1〜4、比較例1〜5の液晶ポリエステル組成物において、離型抵抗が100kg/cm2以下であり、ブリスター(発泡)も「○」であるものを、総合評価「○」とした。一方、離型抵抗が100kg/cm2を超えるか、ブリスター(発泡)が「×」であれば総合評価「×」とした。
Claims (6)
- 以下の成分(A)100重量部に対して、以下の成分(B)0.1〜1.0重量部を含有してなる液晶ポリエステル組成物。
(A)溶解度パラメーターσAが13.0(cal/cm3)1/2以上13.5(cal/cm3)1/2以下の液晶ポリエステル
(B)溶解度パラメーターσBが9.0(cal/cm3)1/2以上9.5(cal/cm3)1/2以下の多価アルコール脂肪酸エステル - 前記液晶ポリエステルの溶解度パラメーターσAと前記多価アルコール脂肪酸エステルの溶解度パラメーターσBとの差分(σA−σB)が、3.8(cal/cm3)1/2以上4.5(cal/cm3)1/2以下である、請求項1記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記多価アルコール脂肪酸エステルが、TGA(熱重量分析)で求められる5%重量減少温度(TB)が250℃以上の多価アルコール脂肪酸エステルである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
- 前記液晶ポリエステルが、以下に定義される流動開始温度(TA)が280℃以上の液晶ポリエステルである、請求項1〜3の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物。
流動開始温度:内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPaの荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・sを示す温度 - 前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が全構造単位の合計に対して30〜80モル%、
4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位及びヒドロキノンに由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%、
テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が、全構造単位の合計に対して10〜35モル%、
からなる液晶ポリエステルである、請求項1〜4の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物。 - 請求項1〜5の何れかに記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる成形体。
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