以下、添付図面に従って本発明の画像形成方法及び画像形成装置の好ましい実施の形態について詳説する。
[I]本発明の画像形成装置の第1の実施の形態で、ドラム搬送される記録媒体に、2液凝集方法で画像を直接描画する態様である。なお、本発明の実施の形態では、画像形成装置として代表的なインクジェット記録装置の例で説明する。
(インクジェット記録装置の全体構成)
図1は、本実施の形態のインクジェット記録装置1の全体構成を示す構成図である。同図に示すインクジェット記録装置1は記録媒体22の記録面に画像を形成する装置であり、主として給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、定着部18及び排出部20で構成される。給紙部10には記録媒体22(枚葉紙)が積層されており、この記録媒体22が給紙部10から処理液付与部12に送られ、処理液付与部12で記録面に処理液が付与された後、描画部14で記録面に色インクが付与される。インクが付与された記録媒体22は、定着部18で画像が堅牢化された後、排出部20によって搬送される。記録媒体としては、最大菊半(469mm×636mm)サイズまでの搬送を可能としている。
また、インクジェット記録装置1は、各部の間に中間搬送部24、26、28を備え、この中間搬送部24、26、28によって記録媒体22の受け渡しが行われるようになっている。すなわち、処理液付与部12と描画部14との間には、第1の中間搬送部24が設けられ、この第1中間搬送部24によって処理液付与部12から描画部14への記録媒体22の受け渡しが行われる。同様に、描画部14と乾燥部16との間には、第2の中間搬送部26が設けられ、この第2中間搬送部26によって描画部14から乾燥部16への記録媒体22の受け渡しが行われる。さらに、乾燥部16と定着部18との間には、第3の中間搬送部28が設けられ、この第3中間搬送部28によって乾燥部16から定着部18への記録媒体22の受け渡しが行われる。
以下、インクジェット記録装置1の各部(給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、定着部18、排出部20、第1〜第3の中間搬送部24、26、28)について説明する。
(給紙部)
給紙部10は、記録媒体22を描画部14に供給する機構である。給紙部10には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体22が一枚ずつ処理液付与部12に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部12は、記録媒体22の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部14で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集または析出させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液は非カール性溶剤を添加することが好ましく、その非カール性溶剤の具体的な例としては、アルコール(例えば、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
なお、上記の有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの有機溶剤は、処理液中に、1〜50質量%含有されることが好ましい。
図1に示すように、処理液付与部12は、渡し胴52、処理液ドラム54、処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60を備えている。渡し胴52は、給紙部10の給紙トレイ50と処理液ドラム54の間に配置され、後述のモータドライバ142(図13参照)によってその回転が駆動制御される。給紙部10から給紙された記録媒体22は、この渡し胴52によって受け取られ、処理液ドラム54に受け渡される。なお、渡し胴52の代わりに、後述する中間搬送部を設けてもよい。
処理液ドラム54は、記録媒体22を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ142(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段(後述する図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で、処理液ドラム54を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送されるようになっている。なお、処理液ドラム54は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60が設けられる。処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60は、処理液ドラム54の回転方向(図1において反時計回り方向)に上流側から順に配設されており、記録媒体22は、まず処理液塗布装置56によって記録面に処理液が塗布される。また、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60は、処理液ドラム54によって記録媒体22が搬送される間に、処理液塗布装置56で記録媒体22上に塗布されて形成される凝集処理層の含水率を、56%以下まで下げることができる能力のものであることが必要である。
図2は、処理液塗布装置56の構成図である。図2に示すように、処理液塗布装置56は、ゴムローラ62、アニロックスローラ64、スキージ66、処理液容器68で構成される。処理液容器68には処理液が貯留され、この処理液にアニロックスローラ64の一部が浸漬される。アニロックスローラ64には、スキージ66とゴムローラ62が圧接されており、ゴムローラ62は、処理液ドラム54に保持されて回転搬送される記録媒体22に当接されるとともに、処理液ドラム54の回転方向と逆方向(同図において時計回り方向)に所定の一定速度で回転駆動される。
上記の如く構成された処理液塗布装置56によれば、処理液がアニロックスローラ64とスキージ66によって計量されながら、ゴムローラ62によって記録媒体22に塗布される。その際、処理液の膜厚は、描画部14のインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72K(図1参照)から打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体22の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
処理液塗布装置56で処理液が塗布された記録媒体22は、図3に示す温風噴出しノズル58、IRヒータ60の位置に搬送される。温風吹出ノズル58は高温(たとえば70℃)の温風を一定の風量(たとえば9m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成され、IRヒータ60は高温(たとえば180℃)に制御される。この温風吹出ノズル58とIRヒータ60による加熱によって、処理液の溶媒中の水分が蒸発され、含水率が56%以下の半固溶状の薄層な凝集処理層が記録面に形成される。このように処理液を薄層化することによって、描画部14で打滴するインクのドットが記録媒体22の記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体22の記録面に固定する作用が得られやすい。また、凝集処理層の含水率を56%以下とすることで、ドット移動(色材移動)を防止できる。なお、処理液ドラム54を所定の温度(たとえば50℃)に制御するようにしてもよい。
(描画部)
図4に示すように、描画部14は、描画ドラム70と、この描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置されたインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kで構成される。インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向(図4において反時計回り方向)に上流側から順に配置される。
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体22を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ142(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、描画ドラム70は、その外周面に爪形状の保持手段73を備え、この保持手段73によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段73によって先端が保持された状態で、描画ドラム70を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kからインクが付与される。
インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kはそれぞれ、記録媒体22における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
このように構成された各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体22の記録面に向かって吐出される。これにより、処理液付与部12で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体22上での色材流れなどが防止され、記録媒体22の記録面に画像が形成される。その際、描画部14の描画ドラム70は、処理液付与部12の処理液ドラム54に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
なお、インクと処理液の反応の一例として、処理液に酸を含有させPHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避することが考えられる。
また、各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの打滴タイミングは、描画ドラム70に配置された回転速度を検出するエンコーダ91(図13参照)に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム70のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダ91で得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム70のフレ、回転軸の精度、描画ドラム70の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
さらに、各インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのノズル面の清掃、増粘インク排出などのメンテナンス動作は、ヘッドユニットを描画ドラム70から退避させて実施するとよい。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。なお、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのより詳細な説明については、後述する。
(乾燥部)
乾燥部16は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる工程であり、図1に示すように、乾燥ドラム76と、この乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置された第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82で構成される。第1のIRヒータ78は、温風噴出しノズル80に対して、乾燥ドラム76の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側に設けられ、第2のIRヒータ82は温風噴出しノズル80の下流側に設けられる。
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ142(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、乾燥ドラム76は、その外周面に爪形状の保持手段(図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で、乾燥ドラム76を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82による乾燥処理が行われる。
温風噴出しノズル80は、所定の温度(たとえば50℃〜70℃)に制御された温風を一定の風量(12m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成され、第1のIRヒータ78と第2のIRヒータ82はそれぞれ所定の温度(たとえば180℃)に制御される。これらの第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82によって、乾燥ドラム76に保持された記録媒体22の記録面のインク溶媒に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部16の乾燥ドラム76は、描画部14の描画ドラム70に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部16の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
なお、蒸発した水分は不図示の排出手段によりエアとともに機外に排出するとよい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して、液体として回収してもよい。
また、上記の乾燥ドラム76は、その外周面を所定の温度(たとえば60℃以下)に制御するとよい。
さらに、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を乾燥ドラム76の周面に密着保持することができる。
(定着部)
図6に示すように、定着部18は、定着ドラム84、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88及びインラインセンサ90で構成される。第1定着ローラ86、第2定着ローラ88及びインラインセンサ90は、定着ドラム84の周面に対向する位置に配置され、定着ドラム84の回転方向(図6において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ142(図13参照)によってその回転が駆動制御される。また、定着ドラム84は、その外周面に爪形状の保持手段(図4の保持手段73と同様の手段)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段によって先端が保持された状態で定着ドラム84を回転させることによって、回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88による定着処理と、インラインセンサ90による検査が行われる。
第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88は、記録媒体22に形成された画像を定着させるためのローラ部材であり、記録媒体22を加圧・加熱するように構成される。すなわち、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88はそれぞれ、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体22は、第1定着ローラ86と定着ドラム84との間、及び、第2定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧(たとえば1MPa)でニップされ、定着処理が行われる。なお、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88と、定着ドラム84との一方の表面に弾性層を形成し、記録媒体22に対して均一なニップ幅を持つ構成とするとよい。
また、第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(たとえば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体22を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体22の凹凸に押し込み定着が行なわれるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
なお、上記の実施形態では、加熱と加圧の両方を行う例を示したが、一方のみを行うようにしてもよい。また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性により、複数段設けた構成でもよい。さらに、定着ドラム84の表面を所定の温度(たとえば60℃)に制御するようにしてもよい。
一方、インラインセンサ90は、記録媒体22に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
上記の如く構成された定着部18によれば、乾燥部16で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が第1定着ローラ86、第2定着ローラ88によって加圧・加熱されて溶融されるので、記録媒体22に固定定着させることができる。また、定着部18によれば、定着ドラム84が他のドラムに対して構造上分離されているので、定着部18の温度設定を、描画部14や乾燥部16と分離して自由に設定することができる。
なお、上記の定着ドラム84は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体22を定着ドラム84の周面に密着保持することができる。
(排出部)
図1に示すように、定着部18に続いて排出部20が設けられている。排出部20は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部18の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体22は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
(中間搬送部)
次に、第1の中間搬送部24の構造について説明する。なお、第2の中間搬送部26、第3の中間搬送部28は、第1の中間搬送部24と同様の構成であり、その説明を省略する。
図7(a)は第1中間搬送部24の断面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線に沿う断面図である。
これらの図に示すように、第1の中間搬送部24は主として、中間搬送体30と搬送ガイド32で構成される。中間搬送体30は、前段のドラムから記録媒体22を受け取り、回転搬送させた後、後段のドラムに受け渡すためのドラムであり、図7(b)に示すように、ベアリング35,37を介してフレーム31,33に回転自在に取り付けられている。また、中間搬送体30は、不図示のモータによって回転するようになっており、後述の中間搬送体回転駆動部141(図14参照)によってその回転が駆動制御される。
中間搬送体30の外周面には、爪形状の保持手段34(図4の保持手段73と同様の手段)が90°間隔で設けられている。保持手段34は、円軌跡を描きながら回転するようになっており、この保持手段34の動作によって記録媒体22の先端が保持される。したがって、保持手段34で記録媒体22の先端を保持した状態で中間搬送体30を回転させることによって、記録媒体22を回転搬送させることができる。その際、記録媒体22の記録面が内側、非記録面が外側を向くようにして回転搬送される。なお、本実施形態では、中間搬送体30に2つの保持手段34を設けたが、保持手段34の数はこれに限定するものではない。
中間搬送体30の表面には複数の送風口36が形成されている。また、中間搬送体30の内部はブロワ38に接続されており、このブロワ38によって中間搬送体30にエアが送気される。エアは温風とすることが好ましく、たとえば70℃の温風が風量1m3/分で送気される。これにより、中間搬送体30の表面の送風口36から温風が吹き出され、記録媒体22が浮上支持されるとともに、記録面の乾燥処理が行われる。よって、記録媒体22の記録面が中間搬送体30に接触することを防止でき、中間搬送体30への処理液の付着を回避できる。
なお、中間搬送体30の内部には、送風規制ガイド40が設けられており、記録媒体22を搬送する側の送風口36のみからエアを噴出できるようになっている。すなわち、本実施の形態では、図7(a)の中間搬送体30の下側半分で記録媒体22を搬送するので、中間搬送体30の上側半分の送風口36が送風規制ガイド40によって封止される。こ
れにより、送風口36から送り出される送風によって、記録媒体22をより確実に浮上支持することができる。
図7(a)に示すように、搬送ガイド32は、円弧形状のガイド面44を有し、このガイド面44が、中間搬送体30の下側半分の周面に沿って配置されている。したがって、中間搬送体30によって浮上支持された記録媒体22は、その記録面の反対面(以下、非記録面という)がガイド面44に接触しながら搬送される。これにより、記録媒体22に搬送方向の逆方向のテンション(以下、バックテンションという)をかけることができ、搬送中の記録媒体22に浮き皺が発生することを防止できる。
搬送ガイド32のガイド面44には、複数の吸引孔42が均等に形成されている。この吸引孔42は搬送ガイド32の内部空間(以下、チャンバー41)に連通されており、このチャンバー41はポンプ43に接続されている。したがって、ポンプ43を駆動することによって、チャンバー41を負圧にすることができ、吸引孔42からエアを吸引することができる。これにより、中間搬送体30で浮上支持される記録媒体22の非記録面をガイド面44に密着させることができ、記録媒体22へのバックテンションを確実にかけることができる。また、ポンプ43を後述の負圧制御部147で制御し、エアの吸引量を調節することによってバックテンションを調節することができる。なお、負圧制御部147は、記録媒体22の仕様(たとえば記録媒体22の厚み、空隙率、種類など)に応じてポンプ43の吸引力を制御するとよい。
上記の如く構成された第1の中間搬送部24によれば、中間搬送体30によって記録媒体22が搬送される際に、記録面を非接触で搬送することができるので、記録面が接触することによって発生する画像故障を回避することができる。また、第1の中間搬送部24によれば、非記録面を搬送ガイド32に密着させながら搬送させることができるので、記録媒体22にバックテンションを付与することができ、記録媒体22に浮き皺などの故障が発生することを防止することができる。さらに、第1の中間搬送部24によれば、中間搬送体30から温風を吹き出すようにしたので、記録媒体22を搬送しながら記録面を乾燥処理することができる。
第1の中間搬送部24によって搬送された記録媒体22は、後段のドラム(すなわち、描画ドラム70)に受け渡される。その際、中間搬送部24の保持手段34と描画部14の保持手段73を同期させることによって、記録媒体22の受け渡しが行われる。受け渡された記録媒体22は、描画ドラム70によって保持されて回転搬送される。その際、受け渡し直後の記録媒体22は、後端側が搬送ガイド32に密着して搬送されているので、受け渡しの際に浮き皺などの故障が発生することを防止できる。
なお、上述した実施形態と別のバックテンション付与手段を設けてもよい。たとえば、ガイド面44を表面処理して表面粗さを大きくしたり、ガイド面44をゴムなどの摩擦係数が大きい部材で形成したりしてもよい。
また、別のバックテンション付与手段として、後段のドラムの表面に記録媒体22を吸着するようにしてもよい。たとえば、図8に示す描画ドラム70は、その外周面に吸引孔74が形成されるとともにポンプ75に接続され、その外周面に記録媒体22を吸着できるようになっている。したがって、描画ドラム70に記録媒体22が受け渡された際に、記録媒体22の先端側を描画ドラム70で吸引して搬送する一方で、記録媒体22の後端側を第1の中間搬送部24の搬送ガイド32に吸着させるので、記録媒体22にバックテンションを作用させることができる。なお、記録媒体22の先端を描画ドラム70に静電吸着させて密着させてもよい。
(インクヘッドの構造)
次に、各インクヘッドの構造について説明する。色別のインクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号100によってインクヘッドを示すものとする。
図9(a)はインクヘッド100の構造例を示す平面透視図であり、図9(b) はその一部の拡大図である。記録媒体22上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド100におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド100は、図9(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル102と、各ノズル102に対応する圧力室104等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)108を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体22の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体22の搬送方向(図9中矢印S)と略直交する方向(図9中矢印M)に記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図9(a) の構成に代えて、図10 に示すように、複数のノズル102が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール100’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル102に対応して設けられている圧力室104は、その平面形状が概略正方形となっており(図9(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル102への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)106が設けられている。なお、圧力室104の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図11は、インクヘッド100における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル102に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図9(a) 中の11−11線に沿う断面図)である。
図11に示したように、各圧力室104は供給口106を介して共通流路110と連通されている。共通流路110はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路110を介して各圧力室104に供給される。
圧力室104の一部の面(図11において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)112には個別電極114を備えたアクチュエータ116が接合されている。個別電極114と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ116が変形して圧力室104の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル102からインクが吐出される。なお、アクチュエータ116には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ116の変位が元に戻る際に、共通流路110から供給口106を通って新しいインクが圧力室104に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル102に対応したアクチュエータ116の駆動を制御することにより、ノズル102からインク滴を吐出させることができる。記録媒体22を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル102のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体22上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット108を図12に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット108を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル102が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図12に示すようなマトリクス状に配置されたノズル102を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル102-11 、102-12 、102-13 、102-14 、102-15 、102-16 を1つのブロックとし(他にはノズル102-21 、…、102-26 を1つのブロック、ノズル102-31 、…、102-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体22の搬送速度に応じてノズル102-11 、102-12 、…、102-16 を順次駆動することで記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体22とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録媒体22の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ116の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
(制御系の説明)
図13は、インクジェット記録装置1のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置1は、通信インターフェース120、システムコントローラ122、プリント制御部124、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、インラインセンサ90、エンコーダ91、モータドライバ142、メモリ144、ヒータドライバ146、画像バッファメモリ148、吸引制御部149等を備えている。
通信インターフェース120は、ホストコンピュータ150から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース120にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ150から送出された画像データは通信インターフェース120を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、一旦メモリ144に記憶される。
システムコントローラ122は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置1の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ122は、通信インターフェース120、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、メモリ144、モータドライバ142、ヒータドライバ146、吸引制御部149等の各部を制御し、ホストコンピュータ150との間の通信制御、メモリ144の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ152やヒータ154を制御する制御信号を生成する。
メモリ144は、通信インターフェース120を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ122を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ144は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
ROM145には、システムコントローラ122のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM145は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ144は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ142は、システムコントローラ122からの指示にしたがってモータ152を駆動するドライバである。図13には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号152で図示されている。例えば、図13に示すモータ152には、図1の渡し胴52、処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、描画ドラム70の吸引孔74から負圧吸引するためのポンプ75の駆動モータ、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのヘッドユニットの退避機構のモータ、などが含まれている。
ヒータドライバ146は、システムコントローラ122からの指示にしたがって、ヒータ154を駆動するドライバである。図13には、インクジェット記録装置1に備えられる複数のヒータを代表して符号154で図示されている。例えば、図13に示すヒータ154には、給紙部10において記録媒体22を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
プリント制御部124は、システムコントローラ122の制御にしたがい、メモリ144内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ130に供給する制御部である。プリント制御部124において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部124には画像バッファメモリ148が備えられており、プリント制御部124における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ148に一時的に格納される。なお、図13において画像バッファメモリ148はプリント制御部124に付随する態様で示されているが、メモリ144と兼用することも可能である。また、プリント制御部124とシステムコントローラ122とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース120を介して外部から入力され、メモリ144に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ144に記憶される。
インクジェット記録装置1では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ144に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ122を介してプリント制御部124に送られ、該プリント制御部124において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
即ち、プリント制御部124は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部124で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ148に蓄えられる。
ヘッドドライバ130は、プリント制御部124から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ148に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド100の各ノズル102に対応するアクチュエータ116を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ130にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ130から出力された駆動信号がインクヘッド100に加えられることによって、該当するノズル102からインクが吐出される。記録媒体22を所定の速度で搬送しながらインクヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体22上に画像が形成される。
また、システムコントローラ122は、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、吸引制御部149を制御する。
処理液付与制御部126は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、処理液付与部12の処理液塗布装置56の動作を制御する。具体的には、処理液塗布装置56において、ゴムローラ62の回転を駆動するゴムローラ回転駆動部156、アニロックスローラ64の回転を駆動するアニロックスローラ回転駆動部158、処理液容器68に処理液を供給する送液ポンプ160等が処理液付与制御部126により制御される。
第1中間搬送制御部128は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、第1中間搬送部24の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。具体的には、中間搬送体30において、中間搬送体30自体の回転駆動、中間搬送体30に備わる保持手段34の回動やブロワ38の駆動などを制御する。また、搬送ガイド32においては、吸引孔42から吸引動作を行うためのポンプ43の動作などを制御する。
図14に、第1中間搬送制御部128のシステム構成を示す要部ブロック図を示す。図14に示すように、第1中間搬送制御部128は、中間搬送体回転駆動部141、送風制御部143、負圧制御部147を構成する。
中間搬送体回転駆動部141により中間搬送体30自体の回転駆動を制御する。
送風制御部143により、ブロワ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的に処理液に含まれる水分乾燥及び高沸点溶媒の低粘化や浸透を促進させるように制御させることができる。また、記録媒体22の種類に応じてブロワ38からの送風の風量を制御して、送風による正圧の大きさを制御してもよい。また、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて、ブロワ38からの送風の風量を制御して、送風による正圧の大きさを制御してもよい。また、記録媒体22の種類(例えば、上質紙、コート紙などの種類)に応じてブロワ38からの送風の温度を制御してもよい。
負圧制御部147により、ポンプ43を制御して、処理液に含まれる溶媒を浸透させるように、記録媒体22の記録面と反対側の面である非記録面から吸引する。また、ポンプ43により付与する負圧を、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。また、記録媒体22の種類に応じてポンプ43により付与する負圧の大きさを制御してもよい。
第2中間搬送制御部132と第3中間搬送制御部136は、第1中間搬送制御部128と同様なシステム構成を有し、システムコントローラ122からの指示にしたがい、各々第2中間搬送部26と第3中間搬送部28の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。
乾燥制御部134は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、乾燥部16における第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82の動作を制御する。
定着制御部138は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、定着部18における第1定着ローラ86、第2定着ローラ88の動作を制御する。
吸引制御部149は、描画部14の描画ドラム70の吸引孔74に接続されるポンプ75の動作を制御する。
また、システムコントローラ122には、インラインセンサ90から記録媒体22に付されたチェックパターンや記録媒体22の水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータの検出信号も入力される。さらに、エンコーダ91から描画ドラム70の回転速度の検出信号も入力され、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100の打滴タイミングを制御する。
[インクジェット記録装置の特有の効果]
上記の如く構成されたインクジェット記録装置1は、下記に示す特有の効果を得ることができる。
処理液付与部12では、処理液塗布装置56で記録媒体22上に塗布され処理液を、温風噴出しノズル58及びIRヒータ60で乾燥することにより、含水率が56%以下の凝集処理層を形成するようにした。これにより、凝集処理層上に打滴されたインクのドットが凝集処理層中で移動するドット移動(色材移動)を防止することができる。
乾燥部16では、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82により記録媒体22上のインク溶媒の乾燥を行うので、記録媒体22上における色材の流動による画像ムラや、複数のインクを付与することによるインク滲みや混色や、記録媒体のカール・カックルといった変形を生じることがなく、記録媒体22上に高速高品質の画像を形成することができる。
描画部14と乾燥部16との関係においては、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kと第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82が、描画ドラム70と乾燥ドラム76に構造上分離して配置されている。これにより、描画ドラム70自体が加熱されることがなく、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのメニスカスが乾燥せず、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kの不吐出現象を防止でき、記録媒体22上に高速高品質の画像を形成することができる。
描画部14と乾燥部16と定着部18との関係においては、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kと、第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82と、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88とが、ドラムごとに構造上分離して配置されている。これにより、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88による温度設定を自由に設定できる。
また、記録媒体22の記録面に中間搬送体30などの他の構造部材が接触しないので、画像故障を回避することができとともに、記録媒体22の記録面が半ウェット状態の大サイズの記録媒体であっても高精度に搬送することができ、高精度に記録媒体位置を確保することができる。さらに、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてポンプ43やブロワ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
また、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に対して送風を送出すれば、記録媒体22の記録面に打滴されたインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透をさらに促進させることができる。
また、中間搬送体30においては、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面に打滴されたインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
表1に、高沸点溶媒を含有する液体について、当該液体の温度に対する高沸点溶媒の粘度特性の評価結果を示す。表1では、高沸点溶媒の溶媒含有量を5種類設定したときに、液体の温度を3種類設定したときの評価結果を示す。粘度の単位は、mPa・s(cp)である。
表1に示すように、液体の温度が高いほど高沸点溶媒の粘度は減少する傾向にあるので、温風を送り出すことにより水性インクの温度を高くして、水性インクの高沸点溶媒を低粘化すれば、水性インクの溶媒の記録媒体22への浸透を促進させることができる。
また、中間搬送体30においては、搬送ガイド32は、描画ドラム70や乾燥ドラム76や定着ドラム84に記録媒体22を受け渡す際に記録媒体22の回転方向と逆方向の力(バックテンション)を作用させる。これにより、記録媒体22が乾燥ドラム76や定着ドラム84へ搬送された時にシワ、浮きの発生を低減できる。したがって、乾燥ドラム76上ではテンション付与して乾燥を促進するためカールカックルの低減効果、定着ドラム84上ではテンションを付与して用紙浮きを低減しつつ定着部18へ搬送するため、定着部18のシワ発生防止効果が得られる。
そして、記録媒体22にバックテンションを付与する手段としては、記録媒体22の非記録面を吸引する手段が考えられる。また、記録媒体22にバックテンションを付与する手段としては、記録媒体22の記録面に送風を送出する手段が考えられる。なお、記録媒体22の記録面に送出する送風を一部規制することにより、例えば、送風規制ガイド40によって記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制すれば、効率的に記録媒体22にバックテンションを作用させることができる。その他、搬送ガイド32のガイド面44の表面粗さを大きくしたり、ゴムなどを貼り付けて摩擦力を大きくさせたりする方法も考えられる。
また、描画ドラム70や乾燥ドラム76や定着ドラム84に、ドラム周面に記録媒体22を密着させる手段を備えれば、記録媒体22が描画ドラム70へ搬送された時に確実にシワ、浮きが生じない。ドラム周面に記録媒体22を密着させる手段としては、吸引手段や静電吸着手段などが考えられる。
また、第1の中間搬送部24において、記録媒体22の先端を中間搬送体30の保持手段34により保持して記録媒体22を回転移動させる。このとき、中間搬送体30の送風口36からの送風の送出および搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引の少なくともいずれか一方を行うことにより、記録媒体22の非記録面はガイド面44に支持されながら搬送される。そのため、記録媒体22は記録面が中間搬送体30に接触することなく搬送される。したがって、描画部14にて記録媒体の記録面に付与された水性インクにより形成された画像は、そのまま維持される。
なお、記録媒体22の記録面に送出する送風を一部規制することにより、例えば、送風規制ガイド40によって記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制すれば、効率的に記録媒体22にバックテンションを作用させることができる。
また、第1の中間搬送部24と第2の中間搬送部26において、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引および中間搬送体30の送風口36からの送風の送出の少なくともいずれか一方を行なうことにより、描画部14にて付与された水性インクに含まれる高沸点溶媒が記録媒体に浸透する。そのため、後工程の定着部18において、第1定着ローラ86,第2定着ローラ88を用いて画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、凝集色材と記録面との密着性が確保でき、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上するとともに第1定着ローラ86,第2定着ローラ88への色材オフセットを改善する効果がある。
なお、記録媒体22の非記録面を吸引する際にポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を、制御系の負圧制御部147(図10参照)により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。具体的には、記録媒体22の厚みが大きいほど、記録媒体22への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。また、記録媒体22の空隙率が小さいほど、記録媒体22への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。
また、第1の中間搬送部24と第2の中間搬送部26において、中間搬送体30の送風口36から専用紙の記録面に温風を送り出すことにより、インク中の高沸点溶媒を低粘化し記録媒体22への浸透を促進させるとともに、インク中の残留水分の乾燥を促進させる。
なお、制御系の送風制御部143(図10参照)により、ブロワ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的にインク中の高沸点溶媒の低粘化や残留水分の乾燥が促進するように制御させてもよい。
以上、本発明のインクジェット記録装置、インクジェット記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
(記録媒体)
本発明においては、印刷用コート紙等の緩浸透性の記録媒体22を好適に使用することができる。特に以下にあげる記録媒体を好適に使用することができる。
緩浸透性の記録媒体22の例として、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微コート紙、上質紙、再生紙、合成紙、感圧紙、エンボス紙、等のグロスあるいはマット紙が好適に使用される。より具体的には、OKエルカード+(王子製紙社製)、SA金藤+(王子製紙社製)、サテン金藤N(王子製紙社製)、OKトップコート+(王子製紙社製)、ニューエイジ(王子製紙社製)、特菱アート両面N(三菱製紙社製)、特菱アート片面N(三菱製紙社製)、ニューVマット(三菱製紙社製)、オーロラコート(日本製紙社製)、オーロラL(日本製紙社製)、ユーライト(日本製紙社製)、リサイクルコートT-6(日本製紙社製)、リサイクルマットT-6(日本製紙社製)、アイベストW(日本板紙社製)、インバーコートM(SPAN CORPORATION社製)、ハイマッキンレーアート(五條製紙社製)、キンマリHi-L(北越製紙社製)、Signature True(Newpage corporation社製)、Sterling Ultra(Newpage corporation社製)、Anthem(Newpage corporation社製)、Hanno ArtSilk(Sappi社製)、Hanno Art gross(Sappi社製)、Consort Royal Semimatt(Scheufelen社製)、Consort Royal Gross(Scheufelen社製)、Zanders Ikono Silk(m-real社製)、Zanders Ikono Gross(m-real社製)、の坪量60〜350g/m2のものが好適に使用される。
さらに、プラスチックフィルム等の非浸透媒体、及び中間転写媒体にも適用することができる。
[水性インク]
以下、本発明の実施の形態に使用する水性インクについて詳細に説明する。
本発明における水性インクは、樹脂分散剤(A)と、前記樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)と、自己分散性ポリマー微粒子(C)と、水性液媒体(D)とを少なくとも含む専用インクとして構成される。
(樹脂分散剤(A))
前記樹脂分散剤(A)は、水性液媒体(D)中での顔料(B)の分散剤として用いるものであり、顔料Bを分散しうる樹脂であれば如何なる樹脂でもかまわないが、樹脂分散剤(A)の構造は、疎水性構造単位(a)と、親水性構造単位(b)とを有することが好ましい。必要に応じて、樹脂分散剤(A)は、前記疎水性構造単位(a)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)を含むことができる。
前記親水性構造単位(b)及び疎水性構造単位(a)の組成としては、それぞれの親水性、疎水性の程度にもよるが、疎水性構造単位(a)が樹脂分散剤(A)全体の質量に対して80質量%を超えて含有されることが好ましく、85質量%以上がより好ましい。即ち、親水性構造単位(b)は15質量%以下にする必要があり、親水性構造単位(b)が15質量%よりも多い場合には、顔料の分散に寄与せず単独で水性液媒体(D)中に溶解する成分が増加し、顔料(B)の分散性等の諸性能を悪化させ、インクジェット記録用インクの吐出性を悪化させる原因となる。
<疎水性構造単位(a)>
本発明における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)のうち、樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)を少なくとも含む。
ここでいう「直接に結合していない」とは、芳香環と樹脂の主鎖構造を形成する原子とが、連結基を介して結合した構造となっていることを表す。このような形態を有することで、樹脂分散剤(A)中の親水性構造単位と疎水性の芳香環との間に適切な距離が維持されるため、樹脂分散剤(A)と顔料(B)とに相互作用が生じやすくなり、強固に吸着し、結果分散性が向上する。
〈芳香環を有する疎水性構造単位(a1)〉
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)は、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性の観点から、前記樹脂分散剤(A)の全質量のうち40質量%以上75質量%未満であることが好ましく、40質量%以上70質量%未満であることがより好ましく、40質量%以上60質量%未満であることが特に好ましい。
前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環が、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性の向上の点で、樹脂分散剤(A)中15質量%以上27質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
上記範囲とすることにより、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性、耐擦過性を向上することができる。
本発明においては、前記疎水性構造単位(a)における前記芳香環を含む疎水性構造単位(a1)は、下記一般式(1)で表される構造で樹脂分散剤(A)に導入された形態が好ましい。
一般式(1)中、R1は水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表し、L1は(主鎖側)−COO−、−OCO−、−CONR2−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。L2は単結合または、炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合、その好ましい範囲は好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜20の連結基である。ここで、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられるが、特に限定されない。Ar1は芳香環から誘導される1価の基を表す。
上記一般式(1)の中でも、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2がアルキレンオキシ基および/またはアルキレン基を含む炭素数1〜25の2価の連結基である構造単位の組合せが好ましく、より好ましくは、R1が水素原子またはメチル基であり、L1が(主鎖側)−COO−であり、L2が(主鎖側)−(CH2−CH2−O)n−である(nは平均の繰り返し単位数をあらわし、n=1〜6である)構造単位の組合せである。
疎水性構造単位(a1)中に含まれる前記Ar1における芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環が挙げられる。
前記炭素数8以上の縮環型芳香環とは、少なくとも二個以上のベンゼン環が縮環した芳香環、及び/又は、少なくとも一種以上の芳香環と該芳香環に縮環した脂環式炭化水素で環が構成される、炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記芳香環が縮環したヘテロ環とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが少なくとも縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は5員環または6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は複数のヘテロ原子を有していても良く、この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
以下に、前記ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を含む疎水性構造単位(a1)を形成しうるモノマーの具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例に制限されるものではない。
本発明において、前記樹脂分散剤(A)の主鎖を形成する原子と直接に結合していない芳香環を有する疎水性構造単位(a1)のなかでも、分散安定性の観点から、ベンジルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェノキシエチルメタクリレートのいずれか1以上に由来する構造単位であることが好ましい。
(アクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2))
前記樹脂分散剤(A)に含まれるアクリル酸またはメタクリル酸の、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(a2)は、樹脂分散剤(A)中に少なくとも15質量%以上であることが必要であり、好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以上50質量%以下である。
これら(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
<親水性構造単位(b)>
本発明における樹脂分散剤(A)を構成する親水性構造単位(b)について説明する。
該親水性構造単位(b)は、前記樹脂(A)の全質量に対して、0質量%超15質量%以下含有され、2質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上12質量%以下がより好ましい。
前記樹脂(A)は、親水性構造単位(b)としてアクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)を少なくとも含む。
(親水性構造単位(b1))
前記親水性構造単位(b1)の含有量は、後述の構造単位(b2)の量または疎水性構造単位(a)の量か、あるいはその両方により変更する必要がある。
即ち、本発明における樹脂分散剤(A)は、疎水性構造単位(a)として80質量%を超える量を含み、かつ親水性構造単位(b)を15質量%以下とする量とすればよく、前記疎水性構造単位(a1)と(a2)、親水性構造単位(b1)と(b2)及び構造単位(c)により決定されるものである。
例えば、樹脂分散剤(A)が、疎水性構造単位(a1)、(a2)と親水性構造単位(b1)と構造単位(b2)のみから構成される場合において、アクリル酸及び/またはメタクリル酸(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(b2)の質量%)」で求めることができる。このとき、(b1)と(b2)の和は15質量%以下でなければならない。
また、樹脂分散剤(A)が疎水性構造単位(a1)、(a2)と、親水性構造単位(b1)と、構造単位(c)とからなるとき、親水性構造単位(b1)の含有量は、「100−(疎水性構造単位(a1)・(a2)の質量%)−(構造単位(c)の質量%)」で求めることができる。
また、樹脂分散剤(A)は疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)、親水性構造単位(b1)のみから構成されることも可能である。
親水性構造単位(b1)は、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を重合することにより得ることができる。
なお、アクリル酸またはメタクリル酸は、単独で又は混合して用いることができる。
本発明における樹脂分散剤(A)の酸価は、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上、85mgKOH/g未満であることがより好ましく、50mgKOH/g以上、85mgKOH/gであることが特に好ましい。
なお、ここでいう酸価とは、樹脂分散剤(A)の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定することができる。
(前記構造単位(b2))
前記構造単位(b2)は非イオン性の親水性基を含有して成ることが好ましい。また、構造単位(b2)は、これに対応するモノマーを重合することにより形成することができるが、ポリマーの重合後、ポリマー鎖に親水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(b2)を形成するモノマーは、重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができるが、入手性、取り扱い性、汎用性の観点からビニルモノマー類が好ましい。
これらビニルモノマー類の例として、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類が挙げられる。
親水性の官能基としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基及び、後述するようなポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド重合体が挙げられる。
これらのうち、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、アルキレンオキシド重合体構造を有する親水性の構造単位を含むことが好ましい。
前記アルキレンオキシド重合体のアルキレンとしては、親水性の観点から炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜6がより好ましく、炭素数2〜4が特に好ましい。
また、前記アルキレンオキシド重合体の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
前記構造単位(b2)は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。
前記構造単位(b2)中の水酸基数としては、特に限定されず、樹脂(A)の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
<構造単位(c)>
本発明における樹脂分散剤(A)は、前述の通り、前記疎水性構造単位(a1)、前記疎水性構造単位(a2)及び前記親水性構造単位(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)(以下、単に「構造単位(c)」という。)を含有することもできる。
前記疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)及び親水性構造単位(b)とは異なる構造単位(c)とは、前記(a1)、(a2)又は(b)とは異なる構造を有する構造単位(c)を言い、該構造単位(c)は疎水性の構造単位であることが好ましい。
前記構造単位(c)は、疎水性の構造単位であるが、疎水性構造単位(a1)、疎水性構造単位(a2)とは異なる構造を有する構造単位である必要がある。
前記構造単位(c)は、前記樹脂分散剤(A)に全質量中35質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以下とすることが更に好ましい。
前記構造単位(c)はこれに対応するモノマーを重合することにより形成することができる。また、樹脂の重合後に、ポリマー鎖に疎水性官能基を導入してもよい。
前記構造単位(c)が疎水性の構造単位である場合のモノマーは、重合体を形成しうる官能基と疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができる。
前記疎水性の構造単位を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類、((メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられ、中でも、ビニルアセテートが好ましい。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明における樹脂分散剤(A)は、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構造単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
さらに、本発明で用いる樹脂分散剤(A)の分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは3万〜15万であり、より好ましくは3万〜10万であり、さらに好ましくは3万〜8万である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により顔料への吸着に時間がかからなくなる傾向の観点から好ましい。
また、本発明で用いる樹脂の分子量分布(重量平均分子量値/数平均分子量値で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることは、インクの分散安定性、吐出安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
本発明に用いられる樹脂分散剤(A)は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は再沈殿などの精製を行っても良い。
本発明における樹脂分散剤(A)として好ましい具体例を以下に示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
<顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率>
顔料(B)と樹脂分散剤(A)の比率は、重量比で100:25〜100:140が好ましく、さらに好ましくは100:25〜100:50である。樹脂分散剤が100:25以上の場合は分散安定性と耐擦性が良化する傾向となる。樹脂分散剤が100:140以下の場合も、分散安定性が良化する傾向となる。
<顔料(B)>
本発明において、顔料(B)とは化学大辞典第3版1994年4月1日発行(編集 大木道則他)の518頁に記載のように、水、有機溶剤にほとんど不溶の有色物質(無機顔料では白色も含む)の総称であり、本発明では有機顔料と無機顔料とを用いることができる。
また、本発明において、「樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)」とは、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料をいい、水性液媒体(D)に樹脂分散剤(A)を用いて分散保持されている顔料として用いることが好ましい。水性液媒体(D)中には更に分散剤を含んでいても、含んでいなくともよい。
本発明において、樹脂分散剤(A)によって分散された顔料(B)としては、樹脂分散剤(A)によって分散保持されている顔料であれば、特に限定されないが、中でも、顔料分散の安定性、吐出安定性の観点から、転相法により作製されたマイクロカプセル化顔料であることが一層好ましい。
本発明に含有される顔料(B)として、マイクロカプセル化顔料を好ましい例として挙げることができる。マイクロカプセル化顔料とは、顔料が樹脂分散剤(A)で被覆された顔料である。
マイクロカプセル化顔料の樹脂は、前記樹脂分散剤(A)を用いる必要があるが、更に、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物を樹脂分散剤(A)以外の樹脂に用いることが好ましい。
(マイクロカプセル化顔料の製造)
マイクロカプセル化顔料は、樹脂分散剤(A)等の前記成分を用いて、従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号に開示されている方法によって製造することができる。マイクロカプセル化顔料の製造方法について以下に概説する。
マイクロカプセル化顔料の製造方法としては、特開平9−151342号及び特開平10−140065号記載の転相法と酸析法等を用いることができ、中でも、転相法が分散安定性の点で好ましい。
a)転相法
本発明において、転相法とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散化(転相乳化)方法をいう。また、この混合溶融物には、前記した硬化剤または高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者の状態のいずれの状態をも含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。
b)酸析法
本発明において、酸析法とは、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、マイクロカプセル化顔料を製造する方法をいう。
酸析法は具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、又、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性または酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過および水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が含有してなるアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない樹脂のゲル化を図る工程と、を含んでなるものである。
上記の、転相法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報に記載の着色剤の製造方法も本発明において用いることができる。
本発明において好ましい製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有する樹脂またはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物水溶液とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことによって、顔料を、アニオン性基を有する樹脂で被覆した水性分散体を得ることとを含んでなるものである。
本発明において、前記における混練、分散処理は、たとえばボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザーなどを用いて行うことができる。
<顔料B>
本発明において使用可能な顔料としては、イエローインクの顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180等が挙げられる。
また、マゼンタインクの顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53:1、53、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
また、シアンインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
その他のカラーインクの顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19(キナクリドンレッド)、23、38等も挙げられる。その他顔料表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の加工顔料等も使用できる。
黒色系のものとしては、例えばカーボンブラックが挙げられる。かかるカーボンブラックの具体例としては、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B 等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Monarch700、Monarch800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等が、デグッサ社製のColor Black
FW1、ColorBlack FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、ColorBlack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U 、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black4A、Special Black4等が挙げられる。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明における水性インク中の顔料(B)の含有量としては、水性インクの分散安定性、濃度の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
<自己分散性ポリマー微粒子>
本発明に用いられる水性インクは、自己分散性ポリマー微粒子の少なくとも1種を含有する。本発明における自己分散性ポリマー微粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、pr樹脂自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの微粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、水溶性インクに含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下である樹脂をいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100である第1のポリマーを含むことが好ましい。更に前記酸価は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。酸価が25以上であることで自己分散性の安定性が良好になる。また酸価が100以下であることで、凝集性が向上する。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。本発明において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
尚、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーからなる構成単位と、解離性基含有モノマーからなる構成単位とから構成することができるが、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜90質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜100であって、重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合比率として15〜80質量%とカルボキシル基含有モノマーとアルキル基含有モノマーとを含み、酸価が25〜95であって、重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
・B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
・B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6)
・B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)
・B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
・B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
・B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5)
・B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5)
・B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8)
・B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7)
・B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5)
・B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8)
・B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5)
・B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
・B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
・B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4)
・B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6)
・B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7)
・B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8)
・B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
本発明における自己分散性ポリマー微粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度及び水性インクとしたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が20〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とする樹脂分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明における自己分散性ポリマー微粒子の製造方法は、有機溶媒中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1の樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶媒を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散ポリマー粒子を得ることができる。該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー微粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性ポリマー微粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明における自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径は、10〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散性ポリマー微粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー微粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明の自己分散性ポリマー微粒子は、例えば、水性インク組成物に好適に含有させることができ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<水性液媒体(D)>
インクジェット記録方式の水性インクにおいて、水性液媒体(D)とは、水及び水溶性有機溶媒の混合物を表す。水溶性有機溶媒(以下、「水溶性有機溶剤」ともいう。)は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で使用される。
ノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、インクジェット用インクを記録媒体(紙等)により良く浸透させる目的で浸透促進剤として、水溶性有機溶剤が好適に使用される。
水溶性有機溶剤の例として、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);ヴルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ピアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルポキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
水溶性有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性有機溶媒の含有量としては、インク中、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。
水の添加量は、インク中、特に制限は無いが、好ましくは、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
本発明における水性液媒体(D)は、インク中、分散安定性、吐出安定性の観点から、好ましくは 60質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
<界面活性剤>
本発明における水性インクには、界面活性剤(以下、表面張力調整剤ともいう。)を添加することが好ましい。界面活性剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。表面張力の調整剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、本発明における水性インクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルポコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクに添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
<その他成分>
本発明に使用される水性インクはその他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
〔処理液(凝集処理液)の説明〕
本発明の第1の実施の形態に使用する処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて画像形成体(記録媒体、中間転写体など)上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には、中間転写体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に係る処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
[II]本発明の画像形成装置の第2の実施の形態で、中間転写体に2液凝集方法で一旦画像を形成し、その画像を記録媒体に転写する中間転写方式の態様である。
図15は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。図15に示すインクジェット記録装置200は、2液凝集方式及び中間転写記録方式が適用され、インク及び凝集処理剤を用いて中間転写体202上にインク凝集体(色材凝集体)からなるインク画像を形成し、中間転写体202上に形成されたインク画像を記録媒体204に転写する記録装置である。
第2の実施の形態のインクジェット記録装置100は、図15に示すように、中間転写体202上に液体状の凝集処理剤(凝集処理液)を付与する凝集処理液付与部206と、中間転写体202上に付与された凝集処理液を加熱して乾燥させる加熱乾燥部208と、中間転写体202上に複数色のインクを液滴化して打滴する印字部(インク打滴部)210と、中間転写体202上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の液体成分)を除去する溶媒除去部212と、中間転写体202上に形成されたインク画像を記録媒体204に対して転写を行う転写部214とから主に構成される。
図15に示す中間転写体202には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)202は複数の張架ローラ(図15には7つの張架ローラ220A〜220Gを図示)に巻きかけられた構造を有し、張架ローラ220A〜220Gの少なくとも1つにモータ(図15中不図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体202は、図15において反時計回り方向(図15中、矢印Aで示す方向)に駆動される。
中間転写体(無端状ベルト)202は、印字部210と対向する表面(画像形成面)202Aの少なくとも1次画像(インク画像)が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写体202の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
なお、中間転写体202の画像形成領域を凝集処理液に対する浸透速度が遅い媒体(凝集処理液が付与されてから印字部210の直下に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が10%以下の低浸透性を有する媒体)を適用してもよい。即ち、中間転写体202には、凝集処理液が付与されてから印字部210直下の印字領域に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が1%以下の難浸透性を有する媒体や、凝集処理液の減少量が10%以下の低浸透性を有する媒体を含む非浸透性を有する媒体を適用することも可能である。
図15には、中間転写体202の一態様として無端状のベルトを示したが、本発明に適用される中間転写体はドラム形状でもよいし、平板形状でもよい。
中間転写体202の画像形成面202Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
また、中間転写体202の表面層の表面張力は10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写体202の表面層の表面張力を40mN/m以上とすると、1次画像が転写される記録媒体204との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。更に、中間転写体202の表面層の表面張力が10mN/m以下であると、凝集処理液のぬれ性を考慮した場合に、凝集処理液の表面張力を中間転写体202の表面層の表面張力よりも小さくする必要があり、凝集処理液の表面張力を10mN/m以下とすることが困難となり、中間転写体202及び凝集処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなる。
なお、中間転写体202の表面層に表面粗さ(Ra)0.3μm程度の凹凸があると、インク液滴やインク凝集体の移動が抑制される効果があり、好ましい。
凝集処理液付与部206は、中間転写体搬送方向(図15中、矢印Aで示す方向)最上流側に配置され、塗布ローラ206A、及び凝集処理液が収容される塗布液容器206Bを含んで構成される。塗布ローラ206Aは中間転写体202に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ206Aが駆動し回転制御可能となっている。このように、塗布ローラ206Aが回転することによって、塗布液容器206B内に収容される凝集処理液が中間転写体202の画像形成面202Aに塗布される。
中間転写体202に対する凝集処理液の塗布厚は、0.5〜20μmの範囲で設定することが好ましい。塗布厚0.5μm以下では液切れによる膜不均一性が生じやすく品質上の問題となる。また、塗布厚20μm以上では乾燥工程におけるエネルギー付加が大きくなり、また、面状も悪くなる。
凝集処理液の塗布厚を制御するには、塗布ローラ206Aと中間転写体202との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ206Aと中間転写体202との接触時間を相対的に長くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ206Aと中間転写体202との接触時間を相対的に短くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。
塗布ローラ206Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。
図15には、凝集処理液の付与形態の一態様として、塗布ローラ206Aを用いる態様を例示したが、凝集処理液の付与形態は本例に限定されず、ブレードによる塗布、インクジェットヘッドによる打滴など様々な方式を適用することが可能である。特に、インクジェット方式の場合、記録画像(画像データ)に応じて凝集処理液を正確にパターンニングして付与することができ、後段に配置される加熱乾燥部208の加熱時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。
凝集処理液付与部206の中間転写体搬送方向下流側に配置された加熱乾燥部208は、中間転写体202の画像形成面202Aの裏面202B側に設けられたヒータ(図15中不図示)を含んで構成され、凝集処理液が付与された中間転写体
202を裏面202B側からヒータで加熱された熱風を吹き付けることによって中間転写体202上の凝集処理液を乾燥する構成となっている。
加熱乾燥部208に配置されるヒータの加熱温度は、凝集処理液の種類、凝集処理液の付与量(厚み)、環境温度などの諸条件に応じて設定され、加熱乾燥部208を通過した中間転写体202上には含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層が形成される。
例えば、凝集処理液付与部206に配置される塗布ローラ206Aよって中間転写体202上に約10μmの膜厚で凝集処理液を塗布した後、加熱乾燥部208のヒータによる70℃の熱風乾燥を行うことにより、中間転写体202上に約4μmの半固溶状の凝集処理層を形成することができる。
本実施形態では、中間転写体202上に凝集処理液を付与して、中間転写体202上の凝集処理液を加熱により乾燥させて、中間転写体202上に半固溶状の凝集処理層を形成する態様を例示したが、本発明の実施に際して本例に限定されず、中間転写体202上に半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様もある。
中間転写体202上に半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様としては、例えば、流動浸漬法、静電煙霧法、溶射法、静電乾式吹き付け法、散布法などの公知の粉体散布方法を用いることができる。また、開閉式の蓋の設けられた開口部を有し、且つ、内部に粉体(半固溶状の凝集処理剤)を貯蔵することが可能な容器などを用いて粉体を散布することも可能である。このとき、転写体通過時のみ蓋を開き、転写体上に粉体を散布し、非使用時には蓋を閉じ、粉体が散布されないように調節する制御手段などを備えて粉体の散布を精密に制御することも可能である。
加熱乾燥部208の中間転写体搬送方向下流側に配置される印字部210は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)210C、210M、210Y、210Kが順に設けられる。各ヘッド210C、210M、210Y、210Kから中間転写体202の画像形成面202Aに対してそれぞれ対応する色インクが液滴化され打滴される。
図16に示すように、各ヘッド210C、210M、210Y、210Kは、それぞれ中間転写体202における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図16中不図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各ヘッド210C、210M、210Y、210Kが中間転写体搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
中間転写体202の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、中間転写体202の搬送方向(副走査方向)について、中間転写体202と印字部210を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写体202の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、各ヘッド210C、210M、210Y、210Kの各ノズルから吐出されるインク液滴の最小打滴量(吐出体積)は2plであり、最高記録密度(最高ドット密度)は主走査方向(中間転写体搬送方向と直交する方向)及び副走査方向(中間転写体搬送方向)のいずれも1200dpiである。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
インク貯蔵/装填部222は、各ヘッド210C、210M、210Y、210Kに対応する色インクを貯蔵するインクタンク(図15中不図示)を含んで構成され、各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部222は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
溶媒除去部212は、中間転写体搬送方向に関して印字部210より下流側に配置され、溶媒吸収ローラ212Aを含んで構成される。本例の溶媒吸収ローラ212Aは、中間転写体202を挟んでローラ220Bに対向する位置に設けられている。溶媒吸収ローラ212Aは、ローラ状の多孔質体(吸収体)で構成される。溶媒除去部212では、溶媒吸収ローラ212Aを中間転写体202上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)に接触させて、多孔質体の毛細管力により多孔質体内部に当該液体溶媒を吸収させることによって、中間転写体202上から液体溶媒を除去する。
溶媒吸収ローラ212Aは、中間転写体202の移動(搬送)に応じて従動回転させてもよいし、独立して回転させるようにしてもよい。また、中間転写体202の画像形成面202Aから離間可能となるように構成されていることが好ましい。
溶媒吸収ローラ212Aの表面(中間転写体202の画像形成面202Aと接触する面)の表面エネルギーは中間転写体202の画像形成面202Aの表面エネルギーよりも小さいことが好ましく、本例では、溶媒吸収ローラ212Aには表面エネルギーが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した表面エネルギーの条件を満たす溶媒吸収ローラ212Aを用いて溶媒除去を行うことにより、溶媒吸収ローラ212Aへの色材付着を防止しつつ、中間転写体202上の液体溶媒を吸収除去することが可能となる。
なお、溶媒吸収ローラ212Aに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体202から取り除く方式や、中間転写体202を加熱(例えば、平板加熱ヒータによる加熱)したり、乾燥風を吹き付けたりして溶媒を蒸発させ除去する方式などを適用してもよい。溶媒除去の方式としては、先に例示した何れの方式でもよいが、加熱によらない方式を用いる方がより好ましい。
中間転写体202の表面を加熱する方式や、中間転写体202上のインク凝集体に熱を付与して溶媒を蒸発させる方式では、インク凝集体の過剰加熱により溶媒を過剰除去してしまい、転写時において好ましい凝集体の粘弾性を維持できず、かえって記録媒体204への転写性が低下することがある。更にまた、過剰加熱により生じた熱が各ヘッド210C、210M、210Y、210Kの吐出性能へ影響を与えることも懸念される。
一方、溶媒吸収ローラ212Aによって中間転写体202の画像形成面202A上の溶媒を吸収除去する態様では、中間転写体202上に多くの溶媒が残存する場合でも、他の方式に比べて短時間で多量の溶媒を除去することができるため、後段の転写部214で記録媒体204に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体204として紙類が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。
また、溶媒除去部212を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これにより、転写部214による転写工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体204に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部212によって、中間転写体202上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の中間転写体202への付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
中間転写体202上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写体との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写体202への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
上述した溶媒除去の制御は、溶媒吸収ローラ212Aの中間転写体202への押圧を変化させることで可能である。溶媒除去量を相対的に多くする場合には、溶媒吸収ローラ212Aの中間転写体202への押圧を大きくし、溶媒除去量を相対的に少なくする場合には、溶媒吸収ローラ212Aの中間転写体202への押圧を小さくすればよい。
また、吸収特性の異なる複数の溶媒吸収ローラを備え、溶媒除去量に応じて使用する溶媒吸収ローラを選択的に切り替える態様も可能である。
図15に示すインクジェット記録装置200には、溶媒除去部212と転写部214の間に予備加熱部224が設けられる。予備加熱部224は、中間転写体202の画像形成面202Aの裏面202B側に設けられたヒータ(図15中不図示)を含んで構成され、1次画像(インク画像)が形成された中間転写体202を裏面202B側からヒータによって予備加熱する構成となっている。本例の予備加熱部224には、平板加熱ヒータが好適に用いられる。また、本例では、中間転写体202の外部にヒータを配置した構成を示したが、中間転写体202にヒータを内蔵する態様も可能である。
予備加熱部224に配置されるヒータの加熱温度範囲は40〜80℃であり、転写時の加熱温度よりも低く設定される。中間転写体202の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部214の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部214の転写時間を少なくすることができる。
予備加熱部224では、中間転写体202の画像形成面202Aの温度(画像が形成されている領域の温度)がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度となるように、加熱温度が設定されることが好ましい。
予備加熱部224の中間転写体搬送方向下流側に配置される転写部214は、ヒータ(図15中不図示)を有した転写加熱ローラ214Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ214Bとを含んで構成され、これらローラ214A、214B間に中間転写体202と記録媒体204とを挟み込み、所定の温度で加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧力)で加圧することにより、中間転写体202上に形成された1次画像を記録媒体204に転写する構成となっている。
転写部214による加熱温度(転写温度)は80℃〜170℃が好ましく、転写性の観点から100℃〜150℃がさらに好ましい。転写部214による加熱温度が170℃以上になると、中間転写体202の変形等の問題があり、一方、80℃以下になると転写性が悪化するという問題がある。
転写部214によるニップ圧力は1.5〜2.0MPaが好ましい。転写部214における転写時のニップ圧力を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ214Aを図15の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。即ち、転写加熱ローラ214Aを加熱対向ローラ214Bから離れる方向に移動させるとニップ圧力は小さくなり、加熱対向ローラ214Bに近づく方向に移動させるとニップ圧力は大きくなる。
記録媒体204を転写部214へ供給する給紙部226の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
本例に適用される記録媒体204は、第1の実施の形態で記載したと同様のものを使用できる。
転写部214の中間転写体搬送方向下流側に冷却部228が配置される態様が好ましい。冷却部228は、転写部214を通過して中間転写体202と記録媒体204が張り合わさった状態のものを冷却する。冷却部228には、冷却ファン等で冷気を送風する態様が適用され、冷却温度等を調整可能であることが好ましい。本例に示す冷却部228は、所望の温度まで冷却するための中間転写体202の移動時間(冷却時間)が確保されている構成となっている。中間転写体202と記録媒体204とを冷却後に剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
冷却部228の中間転写体搬送方向下流側には剥離部230が配置される。剥離部230は、中間転写体202の剥離ローラ220Eの巻き付け曲率によって、記録媒体204自身の剛性(腰の強さ)で中間転写体202から記録媒体204を剥離するように構成されている。剥離部230には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。
剥離部230の記録媒体搬送方向(図15中、矢印Bで示す方向)下流側には定着部232が配置される。定着部232は、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対232Aを含んで構成され、加熱ローラ対232Aの間に挟みこまれた記録媒体204を加熱加圧しながら、記録媒体204に転写された画像を定着させる。
定着部232の加熱温度は、インクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。本例では、定着部232の加熱温度は130℃に設定される。また、定着部232のニップ圧力は2.5〜3.0MPaとする態様が好ましい。なお、転写部214にて画像の転写と定着を両立させることができれば、定着部232を省略する態様も可能である。
剥離部230の中間転写体搬送方向下流側にはクリーニング部234が配置される。クリーニング部234は、記録媒体204への画像転写が後の中間転写体202をクリーニングする手段として、中間転写体202の画像形成面202Aに当接しながら転写後残留物(インク凝集体など)を払拭除去するブレード(不図示)と、除去された転写後残留物を回収する回収部(不図示)とを含んで構成される。
なお、中間転写体202から転写後残留物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
尚、印字部210に配置されるヘッドは、先に第1の実施の形態で説明したヘッドと共通であるため、説明を省略する。
[III]本発明の画像形成装置の第3の実施の形態で、中間転写体に2液凝集方法で一旦画像を形成し、その画像を記録媒体に転写する中間転写方式において、中間転写体上にインクの色材を凝集させる成分及び実質的に無色の微粒子を含有する1つの処理液を付与する態様である。
本発明で用いられる実質的に無色の微粒子とは、実質的に無色の微粒子であればいかなる微粒子であってもかまわない。「実質的に無色」とは、本発明の微粒子が0.1g/m2付与された場合に可視領域での吸光濃度が0.1以下であることを言う。
実質的に無色の微粒子の具体例としては、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアネートなどのポリマー微粒子、パラフィン、エステル(カルバナワックス、モンタン酸エステルワックス)、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸亜鉛などの低分子有機化合物微粒子、シリコンオイル微粒子、無色無機微粒子(TiO2、CaCO3、ZnO、SiO2、AlO3等)が挙げられ、また、ポリウレタンなどのポリマー薄膜中に有機化合物を内包したマイクロカプセル型微粒子も挙げられる。
この中では、加熱定着時に溶融又は軟化して画像の光沢性を発現するという観点から有機化合物の微粒子が好ましく、また、定着後の耐擦性の観点からポリマーであることが好ましい。また、転写時に良好な剥離性を示す必要性があるという観点から表面エネルギーの低いポリオレフィン系の微粒子が好ましく用いられる。
ポリマーの分子量は低い軟化点を持つという観点で低分子量が好ましく好ましい分子量は1000〜100000であり、1000〜5000が更に好ましい。
本発明に係る処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されるようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて中間転写体上での濡れ性を高めるのに効果がある。
処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には、中間転写体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
本発明の第3の実施の形態に使用されるインクジェット記録装置400としては、インクの色材を凝集させる成分、及び実質的に無色の微粒子を含有する処理液(凝集処理液)を用いて中間転写体上にインク凝集体(色材凝集体)からなるインク画像を形成し、中間転写体上に形成されたインク画像を記録媒体に転写する装置であればどのような装置でもよい。
図17は、本発明の第3の実施の形態に好適なインクジェット記録装置400の一例であり、基本的には図15で示した中間転写方式のインクジェット記録装置200と同様である。
インクジェット記録装置400は、図17に示すように、中間転写体412上に凝集処理液を付与する凝集処理液付与部416と、中間転写体412上に付与された凝集処理液を加熱して乾燥させる加熱乾燥部418と、中間転写体412上にシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色のインクを液滴化して打滴する印字部(インク打滴部)420と、中間転写体412上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の液体成分)を除去する溶媒除去部424と、中間転写体412上に形成されたインク画像を記録媒体414に対して転写を行う転写部426とから主に構成される。
図17に示す中間転写体412には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)412は複数の張架ローラ(図17には2つの張架ローラ428A、428B、及び転写加熱用の加熱対向ローラ426Bを図示)に巻きかけられた構造を有し、これらローラの少なくとも1つにモータ(図17中不図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体412は、図17において反時計回り方向(図17中、矢印Aで示す方向;以下、「中間転写体搬送方向」という。)に駆動される。
中間転写体(無端状ベルト)412は、印字部420と対向する表面(画像形成面)412Aの少なくとも1次画像(インク画像)が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写体412の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
なお、中間転写体412の画像形成領域を凝集処理液に対する浸透速度が遅い媒体(凝集処理液が付与されてから印字部420の直下に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が10%以下の低浸透性を有する媒体)を適用してもよい。即ち、中間転写体412には、凝集処理液が付与されてから印字部420直下の印字領域に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が1%以下の難浸透性を有する媒体や、凝集処理液の減少量が10%以下の低浸透性を有する媒体を含む非浸透性を有する媒体を適用することも可能である。
図17には、中間転写体412の一態様として無端状のベルトを示したが、本発明に適用される中間転写体はドラム形状でもよいし、平板形状でもよい。
中間転写体412の画像形成面412Aを含む表面層に用いられる好ましい材料及び中間転写体412の好ましい表面張力としては、図15で説明したインクジェット記録装置と同様である。
また、中間転写体412の表面層の表面張力は10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写体412の表面層の表面張力を40mN/m以上とすると、1次画像が転写される記録媒体414との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。更に、中間転写体412の表面層の表面張力が10mN/m以下であると、凝集処理液のぬれ性を考慮した場合に、凝集処理液の表面張力を中間転写体412の表面層の表面張力よりも小さくする必要があり、凝集処理液の表面張力を10mN/m以下とすることが困難となり、中間転写体412及び凝集処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなる。
中間転写体412の表面層は、表面粗さ(Ra)が1.0μm以下である平滑面で構成されることが好ましい。中間転写体412の表面層の表面粗さ(Ra)が1.0μmを超えると、インク層と中間転写体412の接触面積が増大してしまい、記録媒体414に対する転写性が低下する。本発明によれば、後述するように、中間転写体412の表面に凹凸を直接形成することなく、中間転写体412の表面に実質的に無色の微粒子からなる粒子層を形成するので、この粒子層によるアンカー効果によって画像縮みを抑えることができるとともに、転写性も向上させることができる。
中間転写体搬送方向(図17中、矢印Aで示す方向)最上流側には、中間転写体412上に凝集処理液を付与する凝集処理液付与部416が配置される。この凝集処理液付与部416は、塗布ローラ416A、及び凝集処理液が収容される塗布液容器(不図示)を含んで構成される。塗布ローラ416Aは中間転写体412に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ416Aが駆動し回転制御可能となっており、塗布ローラ416Aの回転に応じて、塗布液容器内に収容される凝集処理液が中間転写体412の画像形成面412Aに塗布される。
中間転写体412に対する凝集処理液の塗布厚は、0.5〜20μmの範囲で設定することが好ましく、本例では約4μmの膜厚で均一に塗布される。塗布厚0.5μm未満では液切れによる膜不均一性が生じやすく品質上の問題となる。また、塗布厚20μmを超えると乾燥工程におけるエネルギー付加が大きくなり、また、面状も悪くなる。
凝集処理液の塗布厚を制御するには、塗布ローラ416Aと中間転写体412との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ416Aと中間転写体412との接触時間を相対的に長くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ416Aと中間転写体412との接触時間を相対的に短くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。
塗布ローラ416Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。
図17には、凝集処理液の付与形態の一態様として、塗布ローラ416Aを用いる態様を例示したが、凝集処理液の付与形態は本例に限定されず、ブレードによる塗布、インクジェットヘッドによる打滴など様々な方式を適用することが可能である。特に、インクジェット方式の場合、記録画像(画像データ)に応じて凝集処理液を正確にパターンニングして付与することができ、後段に配置される加熱乾燥部418の加熱時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。
凝集処理液付与部416の中間転写体搬送方向下流側には、中間転写体412上に付与された凝集処理液の乾燥を行う加熱乾燥部418が配置される。この加熱乾燥部418は、中間転写体412の画像形成面412Aの裏面412B側に設けられたヒータ(図17中不図示)を含んで構成され、凝集処理液が付与された中間転写体412を裏面412B側からヒータで加熱された熱風を吹き付けることによって中間転写体412上の凝集処理液の乾燥が行われる。加熱乾燥部418に配置されるヒータの加熱温度は、凝集処理液の種類、凝集処理液の付与量(厚み)、環境温度などの諸条件に応じて設定される。本例では、70℃の熱風乾燥が行われる。
加熱乾燥部418による乾燥によって、中間転写体412上には凝集処理剤及び画像縮みを防止する粒子(実質的に無色の微粒子)による薄層が形成される。乾燥工程においては必ずしも処理液の水分を完全に蒸発させる必要はなく、粒子層が流動しない程度に処理液を高粘度化しておけば十分である。
加熱乾燥部418の中間転写体搬送方向下流側に配置される印字部420には、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)420C、420M、420Y、420Kが順に設けられる。画像データ(画像信号)に応じて、各ヘッド420C、420M、420Y、420Kから中間転写体412の画像形成面412Aに対してそれぞれ対応する色インクが液滴化され打滴される。
印字部420の中間転写体搬送方向下流側には溶媒除去部424が配置される。この溶媒除去部424は、溶媒吸収ローラ424Aを含んで構成され、溶媒吸収ローラ424Aを中間転写体412上の液体溶媒(インクおよび凝集処理液の溶媒成分)に接触させて、多孔質体の毛細管力により多孔質体内部に当該液体溶媒を吸収させることによって、中間転写体412上から液体溶媒を除去する。
溶媒吸収ローラ424Aは、中間転写体412の移動(搬送)に応じて従動回転させてもよいし、独立して回転させるようにしてもよい。また、中間転写体412の画像形成面412Aから離間可能となるように構成されていることが好ましい。
溶媒吸収ローラ424Aの表面(中間転写体412の画像形成面412Aと接触する面)の表面エネルギーは中間転写体412の画像形成面412Aの表面エネルギーよりも小さいことが好ましく、本例では、溶媒吸収ローラ424Aには表面エネルギーが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した表面エネルギーの条件を満たす溶媒吸収ローラ424Aを用いて溶媒除去を行うことにより、溶媒吸収ローラ424Aへの色材付着を防止しつつ、中間転写体412上の液体溶媒を吸収除去することが可能となる。
なお、溶媒吸収ローラ424Aに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体412から取り除く方式や、中間転写体412を加熱(例えば、平板加熱ヒータによる加熱)したり、乾燥風を吹き付けたりして溶媒を蒸発させ除去する方式などを適用してもよい。溶媒除去の方式としては、先に例示した何れの方式でもよいが、加熱によらない方式を用いる方がより好ましい。
中間転写体412の表面を加熱する方式や、中間転写体412上のインク凝集体に熱を付与して溶媒を蒸発させる方式では、インク凝集体の過剰加熱により溶媒を過剰除去してしまい、転写時において好ましい凝集体の粘弾性を維持できず、かえって記録媒体414への転写性が低下することがある。更にまた、過剰加熱により生じた熱が各ヘッド420C、420M、420Y、420Kの吐出性能へ影響を与えることも懸念される。
一方、溶媒吸収ローラ424Aによって中間転写体412の画像形成面412A上の溶媒を吸収除去する態様では、中間転写体412上に多くの溶媒が残存する場合でも、他の方式に比べて短時間で多量の溶媒を除去することができるため、後段の転写部426で記録媒体414に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体414として紙類が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。
また、溶媒除去部424を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これにより、転写部426による転写工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体414に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部424によって、中間転写体412上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の中間転写体412への付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
中間転写体412上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写体412との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写体412への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
上述した溶媒除去の制御は、溶媒吸収ローラ424Aの中間転写体412への押圧を変化させることで可能である。溶媒除去量を相対的に多くする場合には、溶媒吸収ローラ424Aの中間転写体412への押圧を大きくし、溶媒除去量を相対的に少なくする場合には、溶媒吸収ローラ424Aの中間転写体412への押圧を小さくすればよい。
また、吸収特性の異なる複数の溶媒吸収ローラを備え、溶媒除去量に応じて使用する溶媒吸収ローラを選択的に切り替える態様も可能である。
図17に示すインクジェット記録装置400には、溶媒除去部424と転写部426の間に予備加熱部430が設けられる。予備加熱部430は、中間転写体412の画像形成面412Aの裏面412B側に設けられたヒータ(図17中不図示)を含んで構成され、1次画像(インク画像)が形成された中間転写体412を裏面412B側からヒータによって予備加熱する構成となっている。本例の予備加熱部430には、平板加熱ヒータが好適に用いられる。また、中間転写体412の外部にヒータを配置した構成を示したが、中間転写体412にヒータを内蔵する態様も可能である。
予備加熱部430による加熱温度(予備加熱温度)は、転写時の加熱温度(転写温度)よりも低く設定されることが好ましく、本例では90℃に設定される。中間転写体412の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部426の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部426の転写時間を少なくすることができる。
予備加熱部430では、中間転写体412の画像形成面412Aの温度(画像が形成されている領域の温度)がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度となるように、加熱温度が設定されることが好ましい。
予備加熱部430の中間転写体搬送方向下流側には転写部426が配置される。この転写部426は、ヒータ(図17中不図示)を有した転写加熱ローラ426Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ426Bとを含んで構成され、これらローラ426A、426B間に中間転写体412と記録媒体414とを挟み込み、所定の温度で加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧力)で加圧することにより、中間転写体412上に形成された1次画像を記録媒体414に転写する。
転写部426による加熱温度(転写温度)は80℃〜170℃が好ましく、転写性の観点から100℃〜150℃がさらに好ましい。本例における加熱温度(転写温度)は、120℃に設定される。転写部426による加熱温度が170℃以上になると、中間転写体412の変形等の問題があり、一方、80℃以下になると転写性が悪化するという問題がある。
転写部426によるニップ圧力は1.5〜2.0MPaが好ましい。転写部426における転写時のニップ圧力を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ426Aを図17の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。即ち、転写加熱ローラ426Aを加熱対向ローラ426Bから離れる方向に移動させるとニップ圧力は小さくなり、加熱対向ローラ426Bに近づく方向に移動させるとニップ圧力は大きくなる。
記録媒体414を転写部426へ供給する給紙部432の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
本例に適用される記録媒体414の具体例としては、図15で示した中間転写方式のインクジェット記録装置の場合と同様である。
本実施形態では、転写部426のローラ426A、426B間を通過した記録媒体414は中間転写体412から剥離される構成となっているが、記録媒体414への転写が行われてから記録媒体414の剥離が行われるまでの間に一定区間を設けて、転写部426を通過して中間転写体412と記録媒体414が張り合わさった状態のものを冷却ファンや冷却部材などで冷却する態様もある。また、冷却温度等を調整可能であることが更に好ましい。中間転写体412と記録媒体414とを冷却後に剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
転写部426の記録媒体搬送方向(図17中、矢印Bで示す方向)下流側には定着部434が配置される。定着部434は、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対434Aを含んで構成され、加熱ローラ対434Aの間に挟みこまれた記録媒体414を加熱加圧しながら、記録媒体414に転写された画像を定着させる。
定着部434による加熱温度(定着温度)は、インクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。本例における加熱温度(定着温度)は、130℃に設定される。また、定着部434のニップ圧力は2.5〜3.0MPaであることが好ましい。なお、転写部426にて画像の転写と定着を両立させることができれば、定着部434を省略する態様も可能である。
転写部426の中間転写体搬送方向下流側にはクリーニング部436が配置される。クリーニング部436は、記録媒体414への画像転写が行われた後の中間転写体412をクリーニングする手段として、中間転写体412の画像形成面412Aに当接しながら転写後残留物(インク凝集体など)を払拭除去するブレード(不図示)と、除去された転写後残留物を回収する回収部(不図示)とを含んで構成される。
なお、中間転写体412から転写後残留物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
図17において、中間転写体412が中間転写体搬送方向(図17中、矢印Aで示す方向)に搬送されつつ、まず、凝集処理液付与部416の塗布ローラ416Aによって凝集処理液が中間転写体412上に塗布される(凝集処理液付与工程)。続いて、加熱乾燥部418によって、中間転写体412上の凝集処理液の乾燥が行われ、中間転写体412上に凝集処理剤及び粒子(実質的に無色の微粒子)からなる固体状又は高粘度液体状の薄層(凝集処理剤層、粒子層)が形成される(凝集処理液乾燥工程)。なお、中間転写体412上に前記薄層が形成されるプロセスについては後で説明する。
中間転写体412上に固体状又は高粘度液体状の薄層が形成された後、印字部420の各ヘッド420C、420M、420Y、420Kによって各色のインク液滴が打滴される(インク打滴工程)。前記薄層が形成された中間転写体412上にインク液滴が着弾すると瞬時にインク液滴に含まれる色材の凝集反応が開始され、中間転写体412上には所定の大きさに広がったインク凝集体(色材凝集体)が形成される。このとき、粒子層によるアンカー効果によってインクの凝集反応に伴う画像の縮みが防止される。また、色材移動による画像劣化も防止される。
次に、溶媒除去部424の溶媒吸収ローラ424Aによって中間転写体412上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)が吸収除去される(溶媒除去工程)。インク凝集体(色材凝集体)からなるドットは中間転写体412の表面に形成される粒子層との間で十分な付着力を得ることができる。これにより、溶媒吸収ローラ424Aに対する色材付着を防止することができる。
このように画像の縮みや色材の移動や付着が防止されつつ、中間転写体412上にインク凝集体からなるインク画像が形成された後、予備加熱部430により中間転写体412上のインク画像が所定の温度に加熱され(予備加熱工程)、転写部426により中間転写体412上に形成されたインク画像が記録媒体414に転写される(転写工程)。このとき、中間転写体412上に形成される固体状又は高粘度液体状の薄層(粒子層)によって中間転写体412とインク画像(インク層)との接触面積が減少し、記録媒体414への転写性が向上する。
転写後、中間転写体412から剥離された記録媒体414は定着部434の加熱ローラ対434Aによって挟まれながら加熱加圧されることによって転写されたインク画像の定着が行われる(定着工程)。
一方、転写後、記録媒体414が剥離された中間転写体412は、クリーニング部436において転写後残存物の除去が行われる(クリーニング工程)。
以後、上述した各工程が順次繰り返される。
次に、中間転写体412上に固体状又は高粘度液体状の薄層(凝集処理剤層、粒子層)が形成されるプロセスについて説明する。
図18は、本発明に係るインク液滴(ドット)が中間転写体上に着弾したときの挙動を示した模式図である(従来技術で示した図41と対比)。図18(a)は、中間転写体412上に所定の厚さの凝集処理剤302が付与された状態を表している。中間転写体412上に付与された凝集処理剤302には実質的に無色の微粒子304が分散しており、流動性をもった状態にある。図18(b)は、乾燥工程が行われた後の様子を表している。乾燥工程によって凝集処理剤302中の水分が蒸発することにより、中間転写体12上には微粒子304からなる粒子層(凹凸層)が形成される。また、乾燥過程において溶解している凝集処理剤302は表面張力により微粒子304の周囲に局在する。乾燥過程が終了して水分が蒸発すると、凝集処理剤及び粒子(微粒子304)からなる固体状又は高粘度液体状の薄層(凝集処理剤層、粒子層)306が形成される。図18(c)は、固体状又は高粘度液体状の薄層306が形成された中間転写体412上にインク液滴310が着弾した直後の挙動である。凝集処理剤302は微粒子304付近に局在しているため、微粒子304付近からインク液滴310の凝集反応が進んで粘度が上昇する。図18(d)は、凝集処理剤302の拡散が進んで、インク液滴310全体(ドット全体)で凝集が進行して増粘した状態を表している。このように凝集が局所的に進行することで基材(中間転写体412)との密着力が増し、且つ薄層(粒子層)306がアンカー効果として働くため、インク凝集体からなるドットの縮みが発生しない。
図19は、本発明に係る画像を描画した際の挙動を示した模式図である(従来技術で示した図42と対比)。図19(a)は描画直後の状態であり、入力画像データに応じて色材を有する部分(画像部)312と白地部分314が混在して形成されている様子を表している。なお、画像部312は複数のドットで形成されているものとする。図18で説明した場合と同様、凝集処理剤302は微粒子304付近に局在しているため、微粒子304付近から凝集反応が進んで粘度が上昇する。図19(b)は、凝集処理剤302の拡散が進んで、画像部312全体で凝集が進行して増粘している状態を表している。このように凝集が局所的に進行することで基材(中間転写体412)との密着力が増し、且つ薄層(粒子層)306がアンカー効果として働くため、画像の縮みが発生しない。
図20は、本発明に係る転写時の挙動を示した模式図である(従来技術で示し図43と対比)。図20(a)は、中間転写体412上に形成された画像が記録媒体414に転写加熱ローラ(図20中不図示)によって加圧されながら転写される様子を表している。符号320は、中間転写体412上に形成された画像を構成するインク層を示している。図20(b)は、記録媒体414を剥離した後の状態(即ち、転写後の状態)を表している。図20(a)に示すように、中間転写体412上には薄層(粒子層)306が形成されているため、中間転写体412とインク層320との接触面積は小さくなり、図20(a)に示すように、インク層320の一部が中間転写体412側に残存することなく、良好な転写性を得ることができる。
本発明の好ましい態様として、微粒子の大きさに関しては、平均粒子径が0.1〜10.0μmであることが好ましい。粒子径が0.1μm未満であると、微粒子からなる粒子層の表面に十分な大きさの凹凸が形成されず、アンカー効果が低下してしまい、画像縮みを抑止することができない。また、粒子径が10.0μmを超えると、粒子サイズがインク層以上に大きくなってしまうため、画像に与えるノイズ(画像のザラツキ等)が顕著になる。
また、微粒子の付与量に関しては、中間転写体412上における単位面積あたりの重量が0.01〜5.0g/m2であることが望ましい。単位面積あたりの重量が0.01g/m2未満であると、色材量に対して粒子量が少なすぎるため、画像縮みを抑止することができない。また、単位面積あたりの重量が5.0g/m2を超えると、粒子層の厚みが約5μmとなるが、この粒子層が紙に転写すると、紙の見た目の風合いに非常に違和感を生じ、品質上の問題が発生する。
[IV]本発明の画像形成装置の第4の実施の形態で、中間転写体に2液凝集方法で一旦画像を形成し、その画像を記録媒体に転写する中間転写方式において、実質的に無色の微粒子を含む第1の処理液と、インクの色材を凝集させる成分を含む第2の処理液とを別個の処理液として構成した態様である。
なお、微粒子については第3の実施の形態で説明したと同様であるので説明を省略し、インクジェット記録装置の装置構成を説明する。
図21は、本発明の第4の実施形態に係るインクジェット記録装置500を示した概略構成図である。図21中、図17と共通する部分には同一の番号を付して、その説明を省略する。
本実施形態では、実質的に無色の微粒子を含有する第1処理液、及びインク中の色材を凝集させる成分を含有する第2処理液を用いる。第1処理液は非酸性であるため、微粒子の分散状態をより安定に保つことが可能となる。
図21に示すインクジェット記録装置500には、中間転写体412上に実質的に無色の微粒子を含有する第1処理液を付与する第1処理液付与部402、中間転写体412上に付与された第1処理液を乾燥させる第1処理液乾燥部404、インク中の色材を凝集させる成分を含有する第2処理液を付与する第2処理液付与部406、及び中間転写体412上に付与された第2処理液を乾燥させる第2処理液乾燥部408が設けられる。
第1処理液付与部402及び第2処理液付与部406は、図17に示した凝集処理液付与部416と同一構成がそれぞれ適用される。また、第1処理液乾燥部404及び第2処理液乾燥部408は、図17に示した加熱乾燥部418と同一構成がそれぞれ適用される。
クリーニング部436を通過した中間転写体412上には、第1処理液付与部402において、例えば4μmの膜厚で第1処理液が均一に塗布される。上述したように、第1処理液には、実質的に無色の微粒子が分散されている。中間転写体412上に付与された第1処理液は、中間転写体搬送方向下流側の第1処理液乾燥部404において、例えば70℃の熱風乾燥により乾燥される。これにより、中間転写体412上には前記微粒子からなる粒子層が形成される。
次に、第2処理液付与部406において、粒子層が形成された中間転写体412上に約4μmの膜厚で第2処理液が均一に塗布される。上述したように、第2処理液には、インク中の色材を凝集させる成分が含有されている。中間転写体412上に付与された第2処理液は、中間転写体搬送方向下流側の第2処理液乾燥部408において、例えば70℃の熱風乾燥により乾燥される。これにより、中間転写体412上には固体状又は高粘度液体状の薄層(凝集処理剤層、粒子層)が形成される。具体的には、図18(b)に示したように、微粒子304の周囲に凝集処理剤302が局在するようになる。
他の構成については第1の実施形態のインクジェット記録装置400(図17参照)と同様であるので説明を省略する。
(実施例1)
次に、図1に示したドラム搬送による直接描画方式のインクジェット記録装置を用いて、本発明の「凝集処理層の含水率56%以下」を満足する場合と満足しない場合とで、ドット移動(色材移動)及び着弾干渉がどのように異なるかを対比した対比実験を以下に説明する。
[本発明で使用したインクジェット記録装置]
図1に示したインクジェット記録装置の給紙部10から描画ドラム70上に繰り出された記録媒体22に対して、処理液ドラム54(直径450mm)上で、処理液塗布装置56によって処理液を全面に薄膜塗布(2.5μm厚)を行った。その際、処理液塗布装置56としてグラビアローラを使用した。次いで、処理液を塗布した記録媒体22を温風噴出しノズル58(0〜90℃温風9m3/分吹き付け)とIRヒータ60(0〜200℃)によって乾燥処理し、処理液中の溶媒の一部を乾燥させることで、記録媒体22上に半固溶状の凝集処理層を形成した。
尚、処理液の乾燥条件は、後述するように6個の実験条件(実験1〜実験6)で行った。この記録媒体22を第1の中間搬送部24を介して描画部14に搬送し、画像信号に応じてCMY(シアン・マゼンダ・イエロー)のそれぞれの水性インクをヘッド72から吐出して打滴した。インク吐出体積は2plで、記録密度は主走査・副走査方向共に1200dpiでの記録と150dpiでの(間引き)記録を行った。
また、処理液ドラム54、乾燥ドラム76を描画ドラム70と別に設けたことにより、処理液の乾燥を高速で行なう場合にも、その熱や風の悪影響が描画部に及ぶ事が無く、安定吐出が達成された。次に乾燥ドラム76上で第1のIRヒータ78(表面温度180℃)、温風噴出しノズル80(70℃温風×12m3/分の風量)、第2のIRヒータ82(表面温度180℃)で乾燥させた。乾燥時間は約2秒である。
次に、画像形成された記録媒体22を50℃の定着ドラム84と、80℃の第1定着ローラ86及び第2定着ローラ88とによって、0.30MPaのニップ圧で加熱定着した。その際、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88としては、金属製の心金に硬度30°のシリコンゴムを6mmの厚さで設け、その上にソフトPFA被覆(50μm厚)を施し、インク画像に対する密着性及び剥離性に優れたものを使用した。
記録媒体22は、各ドラム54、70、76、84によるドラム搬送によって535mm/sの搬送速度で搬送されるようにした。
[水性インクの作成]
(樹脂分散剤P−1の合成)
下記スキームにしたがって、樹脂分散剤(A)の1態様である樹脂分散剤P−1(化9)を合成した。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。そして、滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥して樹脂分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(自己分散性ポリマー微粒子B−01の合成)
下記スキームにしたがって、自己分散性ポリマー微粒子(C)の1態様である自己分散性ポリマー微粒子B−01を合成した。
即ち、攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットルの三口フラスコで形成された反応容器に、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。
次に、反応容器内の温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000であり、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)を用いた。
次に、共重合体の重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去した。これにより、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
下記に自己分散性ポリマー微粒子B−01の化学構造式を示す。各構成単位の数字は質量比を表す。
(シアン顔料含有樹脂粒子の分散物の作成)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)10質量部と、表1に記載の樹脂分散剤(P−1)5質量部と、メチルエチルケトン42質量部と、1規定NaOH水溶液5.8質量部と、イオン交換水86.9質量部を混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%のシアン顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。
(シアンインク組成物C−1の調製)
次に、得られたシアン顔料含有樹脂粒子の分散物、自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を使い、以下の組成で水溶性のシアンインク組成物C−1を調製した。
・顔料含有樹脂粒子の分散物 39.2質量部
・自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物 28.6質量部
・グリセリン 20.0質量部
・ジエチレングリコール 10.0質量部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1.0質量部
・イオン交換水 1.2質量部
(マゼンタインク組成物M−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてマゼンタインク組成物M−1を調製した。
(イエローインク組成物Y−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のIrgalite Yellow GS(PY74)に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてイエローインク組成物Y−1を調製した。
(ブラックインク組成物Bk−1の調製)
シアン顔料分散物の調製の際に使用したピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を、三菱化学社製カーボンブラック MA100に代えた以外はシアンインク組成物の調製と同様にしてブラックインク組成物Bk−1を調製した。
(シアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2の調製)
また、本発明条件を満足する水性インクとして、前述のシアンインク組成物C−1、マゼンタインク組成物M−1、イエローインク組成物Y−1、ブラックインク組成物Bk−1の高沸点溶媒を、グリセリンの代わりGP−250(トリオキシプロピレングリセリルエーテル、サンニックスGP250、三洋化成工業(株)製))に半分量で置き換え、ジエチレングリコールの代わりにDEGmEE(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)に半分量で置き換え、更に差分を水で補完した。これにより、シアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2を調製した。
(シアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3の作成)
その他の実施例として、前述のシアンインク組成物C−2、マゼンタインク組成物M−2、イエローインク組成物Y−2、ブラックインク組成物Bk−2のB−01量を14.3質量部に減らし、その分水で置き換えたシアンインク組成物C−3、マゼンタインク組成物M−3、イエローインク組成物Y−3、ブラックインク組成物Bk−3を作成した。
[処理液の調製]
下記組成となるように各成分を混合することで処理液を調製した。
処理液の組成
・マロン酸(和光純薬製) :15.0%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬製) :20.0%
・イオン交換水 :65.0%
上記処理液の物性値を測定したところ、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。
[記録媒体]
記録媒体として、特菱アート両面N(三菱製紙社製)を用いた。
[実験方法]
上述のインクジェット記録装置、インク、処理液、記録媒体の条件において、記録媒体22上に処理液を塗布した後の温風吹き出しノズル58、IRヒーター60の加熱条件を変えて、処理液の乾燥の度合いを変化させた。そして、そのときの色材移動及び着弾干渉に関して評価を行った。
色材移動の評価に対しては、インクの吐出を150dpiの格子パターンでベタ画像を形成し、ライン幅、液溜りの評価に対しては、インクの吐出を1200dpiの格子パターンでベタ画像を形成した。
(色材移動の評価基準)
×…ドット間ピッチに対する平均ズレ量が7%以上(11.9μm以上)
△…ドット間ピッチに対する平均ズレ量が5%以上(8.47μm以上)
○…ドット間ピッチに対する平均ズレ量が3%以上5%未満(5.08〜8.47μm)
◎…ドット間ピッチに対する平均ズレ量が3%未満(5.08μm未満)
(着弾干渉の評価基準:ライン幅、液溜りで評価)
×…ライン幅の不均一またはライン切れ、または液溜りが発生した
○…ライン幅の不均一またはライン切れ、または液溜りの何れ発生しない
実験結果を図22の表に示す。なお、「含水率」は、凝集処理剤(又は凝集処理層)の単位面積あたりの総質量X1[g/m2]に対する凝集処理剤(又は凝集処理層)中に含まれる水の単位面積あたりの重量X2[g/m2]の比率(即ち、(X2/X1)×100)と定義する。
[実験結果]
図22の表から分かるように、凝集処理液を乾燥しない実験1(比較例)では、
凝集処理層の含水率が64.80%となり、色材移動が大きく×の評価であった。そして、実験2〜実験6に示すように、凝集処理液の乾燥度合いを徐々に大きくして凝集処理層の含水率を低減したところ、実験2の含水率59.63%では未だ色材移動が大きく×の評価であったが、実験3の含水率56.12%では色材移動が小さい○の評価となった。また、含水率を更に低下させた実験4〜6では更に色材移動の小さい◎の評価となった。このことから、実験3の含水率56.12%ん結果を目安としたときに、凝集処理層の含水率が56%以下であれば色材移動が発生しない領域となることが分かる。
一方、含水率を低下させていったときに、含水率32.82%の実験5までは着弾干渉(ライン幅、液溜り)が○の評価であったが、含水率12.87%の実験6ではライン幅、液溜り等の弊害が発生してしまう。この推定原因として、凝集処理剤がほぼ完全に固化してしまうと、インクと凝集反応する際に固化した凝集剤の溶解するための時間のロスにより、凝集反応が遅れたためと思われる。
従って、凝集処理層の含水率を32〜56%の半固溶状にすることで、色材移動の問題とライン幅、液溜りの問題の双方を解決することが可能となる。
ところで、色材移動を回避するために、記録媒体上に凝集処理液を付与した後、処理液の浸透終了を待って、処理液層が記録媒体上に存在しない状態でインク打滴する態様も考えられる。しかし、処理液が完全に記録媒体内に浸透してしまうと、記録上に着弾したインクを凝集させるために、一度浸透した凝集剤が再度、記録媒体上のインクに対して染み出す必要があり、高速凝集を実現することができない。また、処理液が完全に浸透するのを待ってインクを打滴すると、処理液付与部とインク打滴部の距離を大きく配置する必要があるので、装置が大型化する問題が発生する。
また、必要以上に凝集処理剤を乾燥すると、インク液滴がコート紙に直接着弾するので、インクの接触角の制約で、半固溶状の凝集処理液層に着弾する場合と較べてドットが拡がらない。半固溶状の状態にすることで、インクの接触角が小さくなるので、拡がり率を確保することができる。
ここで、インク拡がり率とは、吐出インクの真球換算の液滴直径d1と定着後のドット径d2との比で、d2/d1を意味する。ドット拡がり率が小さくなると、インク打滴後のインク溶媒乾燥エネルギーが大きくなってしまう。用紙搬送速度が535mm/secのような高速搬送で、且つ、菊半(469mm×636mm)サイズの用紙に打滴されたインクを蒸発させるためには、ドット拡がり率1.660の場合30kWクラスのヒーターが必要となる。ドット拡がり率が小さくなると所望の定着ドット径を得ようとするために、吐出液滴体積を大きくする必要がある。乾燥エネルギーは、液滴体積に関係するので、拡がり率が小さくなると吐出液滴径の3乗で効いてくるの。よって、拡がり率が1.660より小さくなると印刷機の消費電力が実用性を超えてしまう。この観点からも、含水率32%が下限値になる。
(実施例2)
次に、実施例2では、凝集処理剤として酸、多価金属塩、カチオンポリマーの3種類で、評価実験を行った。
色材移動の評価に対しては、インクの吐出を150dpiの格子パターンでベタ画像を形成し、ライン幅、液溜りの評価に対しては、搬送速度を215mm/secに変更して、インクの吐出を1200dpiの格子パターンでベタ画像を形成した。
実験条件及び評価結果を図23の表に示すと共に、色材移動及び着弾干渉の評価基準は実施例1と同様である。
図23の表における処理液1〜7の組成、及び各処理液で使用した酸は次の通りである。各組成の%は質量%である。
〈処理液の組成〉
・凝集剤 :15.0%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬製) :20.0%
・イオン交換水 :65.0%
上記処理液の物性値を測定したところ、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。
〈凝集剤の種類〉
・処理液1…マロン酸
・処理液2…クエン酸
・処理液3…コハク酸
・処理液4…2−ピロリドン−5−カルボン酸
・処理液5…塩化カルシウム
・処理液6…硝酸カルシウム
・処理液7…ポリエチレンイミン
[実験結果]
図23の表における色材移動の評価結果から分かるように、凝集剤の種類が変わっても、記録媒体上に付与した処理液を乾燥(凝集処理層の含水率56%以下)することで、色材移動が極めて小さい◎の評価となった。
一方、着弾干渉の評価結果をみると、搬送速度が215mm/secの高速搬送下において1200dpiで描画すると、隣接ドットの打滴インターバルは100μsecになり、極めて短くなる。このため、凝集剤として酸を使用した酸凝集方式以外の場合、凝集速度が追いつかずに、ライン幅、液溜りの評価が×となってしまう。よって、打滴インターバルが100μsec以下の高速打滴の場合には、酸処理剤を用いて、半固溶状の凝集処理液にすることが望ましい。
(実施例3)
図24は、上記実施例1における実験4(本発明)の記録画像であり、図25は実験1(比較例)の記録画像である。これらの図に示す記録画像は、いずれも撮像装置にて撮影した写真画像を拡大して模式的に表現したものである。
図24に示す実験4(本発明)の画像600では、各ドット602の形成位置の誤差はドット間ピッチの1/2以下であり、各ドット602は所定の着弾位置に固定されていることが確認された。一方、図25に示す実験1(比較例)の画像620では、凝集反応とともにドットが不安定な状態となって、明らかなドット602の移動が確認された、例えば、符号622で示すドットは、図25における横方向の位置ズレを生じており、ドット間ピッチの1/2を超える形成位置の誤差が生じている。また、符号624で示す2つのドットは位置ズレだけでなく一体化している。更に、符号626に示す位置には本来形成されるべきドットが存在していない。即ち、本発明が適用された実験4は、凝集に起因するドットの位置ズレ(色材移動)は発生せず、好ましいベタ画像が形成された。
また、図示は省略するが、上記と同一の実験条件において所定の文字を描画して、描画した文字を比較評価した。
その結果、実験4(本発明)では描画した文字は鮮明であり、当該文字を目視で正確に認識することができた。一方、実験1(比較例)では描画した文字が不鮮明であり、目視で正確に認識することができなかった。即ち、本発明が適用された実験4では凝集に起因するドットの位置ズレ(色材移動)は発生せず、好ましい文字の描画が可能である。
以下に、記録媒体上に付与した処理液(凝集処理液)を乾燥して含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成することで、打滴されたインクドットの色材移動が解消する推定モデルについて説明する。
図26(a)に示す記録媒体1000上に、処理液を塗布して乾燥することにより、記録媒体1000上に含水率が56%以下の半固溶状の凝集処理層1012を形成する(図26(b))。
次に、半固溶状の凝集処理層1012が形成された記録媒体1000に対してインク液滴1014を打滴する(図26(c))。記録媒体1000上に半固溶状の凝集処理層1012を形成してからインク液滴1014を打滴することにより、凝集処理層1012上には所定の大きさに広がったインク凝集体(色材凝集体)1016からなるドットが形成される(図26(d))。
図27は、ドット(インク凝集体)が形成される様子を詳細に示した模式図である。図27(a)に示すように、記録媒体1000上に形成された半固溶状の凝集処理層1012の上にインク液滴1014が着弾すると瞬時に凝集処理層1012との接触面から凝集反応が開始され、インク凝集体1016が形成される。その後、インク液滴1014の飛翔エネルギーや表面エネルギー(界面エネルギー)のバランス関係により、インク液滴1014は凝集処理層1012との接触面を徐々に拡大しつつ、凝集処理層1012との接触面近傍で凝集反応が行われるので、インク凝集体1016も凝集処理層1012との接触面に沿って徐々に拡大する(図27(b))。こうして、図27(c)に示すように、半固溶状の凝集処理層1012上に所定の大きさに広がったインク凝集体1016からなるドットが形成される。インク凝集体(ドット)1016は凝集処理層1012との間で所定の接触面積が確保されるので十分な付着力を得ることができる。
また、図26(e)に示すように、凝集処理層1012上に着弾したインク液滴1014Aには上述した凝集反応によってインク凝集体1016Aが既に形成されているので、先に打滴されたインク液滴1014Aに接触するように後からインク液滴1014Bが打滴される場合でも、これらインク液滴1014A、1014B同士が合一(着弾干渉)することがない。凝集処理層1012上に後から着弾したインク液滴1014Bも凝集反応によってインク凝集体1016Bが形成される(図26(f))。つまり、複数のインク液滴が隣接する位置に打滴される場合でも、これらインク液滴同士の着弾干渉が生じることなく、所望のドット形状やドットサイズを得ることができ、高品質な画像形成が可能となる。また、異なる色のインク液滴同士の場合には混色滲みを防止することもできる。
記録媒体1000上に形成された半固溶状の凝集処理層1012はインク凝集体1016と分離したインク溶媒に溶解し、インク凝集体1016を覆うようにして液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)1017が記録媒体1000上に形成される(図26(g))。このとき、インク凝集体1016は既に所定の大きさに広がった状態となっているので、インク溶媒との作用によって凝集処理層1012が溶解した後でも、図26(g)に示すように、インク凝集体(ドット)1016は記録媒体1000との間で所定の接触面積が確保されるので十分な付着力を得ることができる。よって、色材移動による画像劣化を防止することができる。
次に、記録媒体1000上の液体溶媒1017を除去する。本例では、図27(h)に示すように、表面が多孔質体(吸収体)で構成された溶媒吸収ローラ1018を記録媒体1000上の液体溶媒1017に接触させることにより、記録媒体1000上の液体溶媒17を吸収除去する方式(溶媒吸収方式)が適用される。上述したように凝集反応によって形成されたインク凝集体(ドット)1016は記録媒体1000との間で十分な付着力を得ることができるため、溶媒吸収ローラ1018に対する色材付着を防止しつつ、液体溶媒1017を吸収除去することが可能となる。
(実施例4)
実施例4は、図15に示した中間転写方式のインクジェット記録装置を用いて、本発明の「凝集処理層の含水率56%以下」を満足する場合と満足しない場合とで、ドット移動(色材移動)及び着弾干渉がどのように異なるかを対比した対比実験を以下に説明する。
実験は、ポリイミド製の中間転写体202上に凝集処理液を約10μmの膜厚で塗布し、乾燥により中間転写体202上の凝集処理層の含水率を変化させたときの色材移動及び着弾干渉について評価を行った。具体的には、加熱乾燥部208の加熱条件を適宜変更して、中間転写体202上の凝集処理層の含水率を変化させて中間転写体202上に1次画像(インク画像)を形成し、溶媒除去前の1次画像について評価を行った。なお、着弾干渉は、ライン幅と液溜まりを評価することでおこなった。
使用したインク及び凝集処理液の組成は図28の通りである。また、図29の表に示す全ての実験(A〜E)におけるインク打滴条件は同一条件であり、インク吐出量(体積)2pl、主走査方向及び副走査方向にそれぞれ打滴密度(ドット密度)1200dpiで打滴を行った。
実施例4の実験結果を図29の表に示す。色材移動及び着弾干渉(ライン幅、液溜まり)の評価基準は実施例1と同様である。
図29の表に示すように、実験A(比較例)は、中間転写体202上の凝集処理層(液体層)を乾燥させる工程を省略した場合であり、凝集処理層の含水率が87.00%であった。この結果、インクドットの位置ズレ(色材移動)が大きく、×の評価であり、画像劣化が確認された。
また、実験B(比較例)は、中間転写体202上の凝集処理層(液体層)を若干乾燥させて含水率を61.98%にした場合である。この場合にも色材移動が×の評価であり、画像劣化が確認された。
一方、実験C(本発明)は、実験Bよりも中間転写体202上の凝集処理層(液体層)を更に乾燥させて含水率を57.52%にした場合である。この結果、色材移動は若干あるが、画像品質上目立たない程度であり○の評価であった。
実験D(本発明)は、実験Cよりも中間転写体202上の凝集処理層(液体層)を更に乾燥させて含水率を28.96%にした場合である。この場合には色材移動のない◎の評価であり、良好な画像品質を得ることができた。
実験E(比較例)は、実験Dよりも中間転写体202上の凝集処理層(液体層)を更に乾燥させて含水率を15.00%まで下げた場合である。この場合には色材移動のない◎の評価が得られた反面、着弾干渉で×の評価であった。
以上の結果から、実施例4では、中間転写体202上に半固溶状の凝集処理層(含水率28〜57%)を形成してからインク液滴を打滴することによって、色材移動による画像劣化を防止しつつ、高品質な画像形成が可能となるという本発明の効果を確認することができた。
実施例1(直接描画方式)の結果と、今回の実施例4(中間転写方式)の結果を合わせると、記録媒体に直接描画する直接描画方式及び中間転写体から記録媒体に画像を転写する中間転写方式の何れの場合でも、凝集処理層の含水率を56%以下にすることで、打滴されたインクの色材移動を効果的に防止できることが分かった。なお、着弾干渉の評価を含めて凝集処理層の適切な含水率をみた場合には、実施例1及び4の結果から、56%以下、32%以上が良いと考察される。
(実施例5)
実施例5は、ベルト搬送される記録媒体に画像を直接描画する直接描画方式のインクジェット記録装置を用いて、凝集処理層の含水率と、溶媒吸収ローラ810への色材の付着程度との関係を実験したものである。
図30は、実施例5で使用したインクジェット記録装置の実験装置800である。実験装置800は、ベルト搬送される記録媒体802の搬送方向(図30の右から左へ向かう方向)の上流側から順に、処理液打滴用ヘッド804、熱風乾燥部806、インク打滴用ヘッド808、及び溶媒吸収ローラ810が配置される。
このような実験装置800を用いて行われた実施例5の実験条件や実験方法は次の通りである。
・インク打滴用ヘッド808と溶媒吸収ローラ810間の中心間距離は350mmに設定した。
・記録媒体802にはポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製カプトンHタイプ)を用いた。
・処理液打滴用ヘッド804及びインク打滴用ヘッド808の打滴条件はいずれも同一であり、インク吐出量(体積)は3pl、主走査方向及び副走査方向の打滴密度(ドット密度)は1200dpiである。
・溶媒吸収ローラ810は、色材付着の大小を見るため、多孔質体表面にケイドライ62701((株)クレシア製)を巻き付けた。
・記録媒体802の搬送速度は500mm/sとした。従って、インク打滴用ヘッド808による打滴から溶媒吸収ローラ810の接触までは0.7secである。
そして、記録媒体に付与された処理液を乾燥した場合と、乾燥処理しない場合とで、溶媒吸収ローラ810への色材の吸着程度を調べた。吸着程度の判定は、溶媒吸収ローラ810に巻き付けたケイドライ62701の表面の光学濃度を測定(Xrite社製Xrite938)し、色材付着の大小を評価した。なお、測色条件は、0/45,D50,2度視野である。
実施例5の実験結果を図31の表に示す。
・実験a…乾燥により凝集処理層の含水率を56%まで下げた場合であり、インク打滴から吸収体(溶媒吸収ローラ810)までの時間は0.7secである。
・実験b…乾燥により凝集処理層の含水率を52%まで下げた場合であり、インク打滴から吸収体(溶媒吸収ローラ810)までの時間は0.7secである。
・実験c…乾燥なしで凝集処理層の含水率が87%の場合であり、インク打滴から吸収体(溶媒吸収ローラ810)までの時間は0.7secである。
・実験d…乾燥なしで凝集処理層の含水率が87%の場合であり、インク打滴後に記録媒体の搬送を一旦停止して再び搬送することで、インク打滴から吸収体(溶媒吸収ローラ810)までの時間を30secに長くした。
その結果、図31の表から分かるように、インク打滴から吸収体までの時間が同じ実験a、b、cで対比すると、乾燥を行って凝集処理層の含水率を56%以下に下げた実験a(本発明)、実験b(本発明)は、乾燥を行わずに凝集処理層の含水率が87%と高い実験c(比較例)に比べて、溶媒吸収ローラ810に巻き付けたケイドライ62701の表面の光学濃度が顕著に小さくなった。更に、実験d(比較例)のように、インク打滴から吸収体までの時間を30secと大幅に延長して、吸収体に色材が付着しにくい条件下と比べても、実験a(本発明)、実験b(本発明)の光学濃度は小さくなった。
これにより、乾燥によって記録媒体802上に、含水率を56%以下の半固溶状の凝集処理層を形成してからインク液滴を打滴することにより、インク凝集体(ドット)は記録媒体802との間で十分な付着力を得ることができ、溶媒吸収ローラ810に対する色材付着を防止することができることが裏付けられた。
一方、実験aは、溶媒吸収ローラ810への色材付着量が多いため、経時で堆積した色材により溶媒吸収ローラ810の溶媒吸収能力が劣化する。また、実験bは非常にプロセス速度が遅くなる態様であり実用的なものではない。
(実施例6)
実施例6は、第3の実施の形態の発明の特徴である処理液に微粒子を含有させる効果を確認するために行った実験である。
実施例6の実験で用いた凝集処理剤及びインクの組成を図32に示す。
図33に示すとおり、凝集処理剤(凝集処理液)としては、有機酸(2−ピロリドンー5−カルボン酸)を溶解させた酸性溶液中に、ポリオレフィン粒子分散液を添加したものを用いた。ポリオレフィン粒子分散液としては、三菱化学(株)製ケミパール(登録商標)W400を用いた(平均粒子径4.0μm)。また、表面エネルギーの低い中間転写体に処理剤を付与する観点から、フッ素系の界面活性剤を添加した。また、インクとしては顔料色材を分散したものを用いた。
実施例6では、図21に示した中間転写方式のインクジェット記録装置500と同等のシステムを用いて、中間転写体上に所定の文字の描画を行った。中間転写体412としては、シリコーンゴム表面層を有するベルトを用いた。
本発明を満足する実施例の実験では、図32に示した凝集処理剤及びインクを用いて描画を行った。一方、本発明を満足しない比較例の実験では、図32に示した凝集処理剤からポリオレフィン粒子を除いた凝集処理剤を用いた点以外は実施例と同一条件で描画を行った。
実験方法としては、中間転写体上に「鷹」という文字を描画した場合、及び同一文字を白抜きで描画した場合のそれぞれについて比較を行った。実験結果を図33に示す。
図33から分かるように、比較例では、インクの凝集反応に伴って画像縮みが発生して、通常の文字は細く、白抜き文字は太く描画されている。
これに対して、実施例では、粒子層がアンカー効果を発揮して画像縮みを防ぎ、通常の文字及び白抜き文字をいずれも意図通りの線幅で描画でき、良好な文字画像を得られることが確認された。また、本発明においては中間転写体に平滑面を用いることが可能なため、紙に対する転写性も非常に良好な結果が得られた。
(実施例7)
実施例7では、凝集処理剤に含有される微粒子の平均粒子径や付与量(以下、「粒子付与量」と記載)を変化させたときの「画像縮み」、「画像ノイズ」、及び「印刷物風合い」について評価を行った。ここでは、微粒子として、ポリオレフィン粒子を使用した。なお、微粒子(ポリオレフィン粒子)の平均粒子径及び粒子付与量を変化させた点以外については実施例6と同一条件で実験を行った。
「画像縮み」、「画像ノイズ」、及び「印刷物風合い」の評価基準については以下に示すとおりである。
[画像縮み]
○:画像縮みなし
△:若干の画像縮みあり
×:大きな画像縮みあり
[画像ノイズ]
○:画像ノイズなし
△:若干の画像ノイズあり
×:大きな画像ノイズあり
[印刷物風合い]
○:違和感なし
△:若干の違和感あり
×:大きな違和感あり
実施例7の実験結果を図34〜図36に示す。図34は「画像縮み」、図35は「画像ノイズ」、図36は「印刷物風合い」の評価結果をそれぞれ表したものである。
「画像縮み」については、図34から分かるとおり、平均粒子径0.1〜20μm、粒子付与量0.01〜10g/m2が好ましく、より好ましくは平均粒子径1〜20μm、粒子付与量0.1〜10g/m2である。
「画像ノイズ」については、図35から分かるとおり、平均粒子径0.01〜10μm、粒子付与量0.001〜10g/m2が好ましく、より好ましくは平均粒子径0.01〜5μm、粒子付与量0.001〜10g/m2である。
「印刷物風合い」については、図36から分かるとおり、平均粒子径0.001〜20μm、粒子付与量0.001〜5g/m2が好ましく、より好ましくは平均粒子径0.001〜20μm、粒子付与量0.001〜3g/m2である。
図34〜図36に示した実験結果を総合的に評価した結果を図37に示す。図37における評価基準としては、各評価項目の評価結果に関して、○が3個である場合を「◎」、○が2個、△が1個である場合を「○」、○が1個、△が2個である場合を「△」、×が1個以上ある場合を「×」とする。例えば、平均粒子径3μm、粒子付与量0.1g/m2の場合は、「画像縮み」、「画像ノイズ」、及び「印刷物風合い」の各評価項目に対する評価結果はいずれも○であるので、この場合の総合評価は「◎」となる。一方、平均粒子径5μm、粒子付与量0.001g/m2の場合は、「画像ノイズ」及び「印刷物風合い」の評価結果は○であるが、「画像縮み」の評価結果は×であるため、この場合の総合評価は「×」となる。
図37から分かるように、「画像縮み」、「画像ノイズ」、及び「印刷物風合い」の3つの観点から凝集処理剤に含有される微粒子の粒子径及び粒子付与量の好ましい範囲としては、平均粒子径0.1〜10μm、粒子付与量0.01〜5g/m2であり、より好ましくは、前記の好ましい範囲から、平均粒子径0.1μm、粒子付与量5g/m2である場合、平均粒子径10μm、粒子付与量0.01g/m2である場合、平均粒子径10μm、及び粒子付与量5g/m2である場合を除いた範囲であり、更に好ましくは、平均粒子径3〜5μm、粒子付与量0.1〜3g/m2である。
この結果、本発明において、凝集処理剤に含有される微粒子の平均粒子径及び粒子付与量の好ましい範囲を確認することができた。
(実施例8)
実施例8では、凝集処理剤に含有される微粒子の種類を変化させたときの「画像縮み」、「転写性」、「光沢性」、及び「耐擦性」について評価を行った。なお、微粒子の種類を変化させた点以外については、上述した実施例6及び実施例7と同一条件で実験を行った。
「画像縮み」、「転写性」、「光沢性」、及び「耐擦性」の評価基準については以下に示すとおりである。
[画像縮み]
○:画像縮みなし
△:若干の画像縮みあり
×:大きな画像縮みあり
[転写性]
◎:転写性極めて良好(転写体上の残存色材なし)
○:転写性良好(転写体上の残存色材ほぼなし)
△:転写性若干不十分(転写体上の残存色材ややあり)
×:転写性不良(転写体上の残存色材多い)
[光沢性]
○:加熱定着後の画像の光沢感高い
△:加熱定着後の画像の光沢感がやや不足
×:加熱定着後の画像の光沢感低い
[耐擦性]
○:加熱定着後の画像膜強度良好
△:加熱定着後の画像膜強度やや不足
×:加熱定着後の画像膜強度不足
なお、「画像縮み」、「転写性」、及び「光沢性」に関しては、サンプルの目視観察による。「耐擦性」に関しては、用紙(記録媒体)の紙片を画像面に載せて指で擦った後の画像面破壊状況の目視観察による。
実験結果を図38に示す。
図38から分かるとおり、金属微粒子(酸化チタン微粒子:石原産業社製タイパークR980)を用いた場合は、加熱定着時に溶融しないため、「光沢性」及び「耐擦性」が若干劣る結果となった。
また、低分子有機化合物(パラフィンワックス微粒子:中京油脂(株)製トラソルPF60)を用いた場合は、靭性に劣るため「耐擦性」が若干劣る結果となった。
また、アクリル系ポリマー微粒子(日本純薬製 ジュリマーFC-30)を用いた場合は、「画像縮み」、「転写性」、「光沢性」、及び「耐擦性」ともに好ましい結果を示した。また、ポリオレフィン粒子を用いると更に好ましい「転写性」を示した。
以上の実施例6〜実施例8の実験結果から分かるように、中間転写体12上にインクを付与する前に、インク色材を凝集させる成分及び実質的に無色の微粒子を含有した凝集処理剤(凝集処理液)を中間転写体412上に付与して、前記微粒子からなる粒子層を中間転写体412上に形成することにより、この粒子層によるアンカー効果によってインクの凝集反応に伴う画像の縮みを抑えることができる。また、中間転写体412上に形成される粒子層によって、画像(インク層)と中間転写体412との接触面積が減少し、記録媒体414に対する転写性も向上する。
(実施例9)
実施例9は、第1の処理液と第2の処理液とで別個の液体としたときに、第1の処理液に含有される微粒子の効果を確認するための実験である。
実施例9で用いた第1処理液、第2処理液、及びインクの組成を図39に示す。
図39に示すとおり、第1処理液には、ポリオレフィン粒子分散液(三菱化学(株)製ケミパール(登録商標)W400)が含まれる。この第1処理液は非酸性であるため、微粒子の分散状態を安定に保つことができる。また、第2処理液には、有機酸(2−ピロリドンー5−カルボン酸)を溶解させた酸性溶液を用いた。また、表面エネルギーの低い中間転写体12に処理液を付与する観点から、各処理液にはそれぞれフッ素系の界面活性剤を添加した。
本発明の実施例として、図39に示した第1処理液、第2処理液、及びインクを用いて描画を行った。一方、比較例として、図39に示した第1処理液を中間転写体上に付与しない点以外は実施例と同一条件で描画を行った。
上述した実施例6と同様に、中間転写体上に「鷹」という文字を描画した場合、及び同一文字を白抜きで描画した場合のそれぞれについて比較を行った結果、比較例では、画像縮みが発生して描画性が良くないのに対して、実施例では、粒子層がアンカー効果を発揮して画像縮みを防ぎ、良好な画像が得られることが確認できた。また、実施例では、紙に対する転写性も非常に良好な結果が得られた。
したがって、中間転写体12上にインク色材を凝集させる成分を含有した第2処理液とインクをそれぞれ付与する前に、実質的に無色の微粒子を含有した第1処理液を中間転写体412上に付与して、前記微粒子からなる粒子層を中間転写体12上に形成することにより、この粒子層によるアンカー効果によってインクの凝集反応に伴う画像の縮みを抑えることができる。また、中間転写体412上に形成される粒子層によって、画像(インク層)と中間転写体412との接触面積が減少し、記録媒体414に対する転写性が向上する。
1…インクジェット記録装置、10…給紙部、12…処理液付与部、14…描画部、16…乾燥部、18…定着部、20…排出部、22…記録媒体、24…第1の中間搬送部、26…第2の中間搬送部、28…第3の中間搬送部、30…中間搬送体、32…搬送ガイド、34…搬送ガイド、36…送風口、38…ブロワ、40…送風規制ガイド、42…吸引孔、43…ポンプ、70…描画ドラム、72C,72M,72Y,72K…インクヘッド、73…保持手段、74…吸引孔、76…乾燥ドラム、84…定着ドラム、86…第1定着ローラ、88…第2定着ローラ、143…送風制御部、147…負圧制御部