しかし、このような方法で画像の転写を行う場合、例えば、転写前のインクについて、適切な程度にインクを半硬化させるためには、紫外線の照射の強度や照射時間を高い精度で制御することが必要になる。また、インクの分光吸収特性と、照射する紫外線の波長との関係によっては、半硬化させ得る照射条件の範囲が狭くなったり、適切に半硬化させることが困難になることも考えられる。また、照射する紫外線の波長との関係により、特定の分光吸収特性を有する紫外線硬化型インク以外を使用することが困難になるとも考えられる。
更には、紫外線硬化型インクのドットを紫外線の照射により半硬化させる場合、ドットの表面及び内部の硬化の進み方を比べると、紫外線が直接あたる表面の方が硬化が進みやすいと考えられる。そのため、例えばインクのドットの内部を転写に適した状態にまで半硬化させた場合、インクのドットの表面においては、硬化が進み過ぎるおそれがある。そして、インクのドットの表面の硬化が進み過ぎると、ドットの表面の粘着性が低下し、媒体への転写を適切に行えなくなるおそれがある。一方、インクのドットの表面を転写に適した状態にまで半硬化させた場合、インクのドットの内部の硬化が不十分になるおそれがある。そして、インクのドットの内部の硬化が不十分であると、例えば、インクの一部が液体の状態のまま転写の工程が行われ、液体状態のインクの部分でインクの分離が起こり、インクの転写不良となることや、転写後にインクの滲みが生じやすくなることも考えられる。
そのため、このような方法で画像の転写を行う場合、インクを適切に半硬化させることが困難になり、画像の転写を適切に行えないおそれもある。また、その結果、画像の転写による印刷を適切に行えないおそれがある。そのため、従来、画像の転写による印刷を、より適切な方法で行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
本願の発明者は、より適切な方法で画像を転写する方法について鋭意研究を行った。そして、紫外線硬化型インクを半硬化させるのではなく、溶媒を含むインクを用い、かつ、そのインクの溶媒の少なくとも一部を除去した状態で転写を行うことを考えた。また、溶媒を除去した状態におけるインクの粘度を十分に高めることにより、滲みの発生等の問題を抑えて適切に転写を行い得ることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)画像の転写により印刷を行う印刷装置であって、媒体へ転写される画像である被転写画像が描画される被転写画像形成用部材と、被転写画像形成用部材へインクジェット方式でインク滴を吐出することにより、被転写画像形成用部材上に被転写画像を描画するインクジェットヘッドと、被転写画像形成用部材を加熱する加熱手段と、被転写画像形成用部材に描画された被転写画像を媒体に転写する転写手段と、転写手段により媒体へ転写された画像を媒体に定着させる画像定着手段とを備え、インクジェットヘッドは、加熱手段による加熱で除去される溶媒を含むインクのインク滴を吐出し、インク滴が被転写画像形成用部材へ着弾して、溶媒が加熱手段により除去された状態において、インクの粘度は、50mPa・sec以上となるもので、インクは、バインダ樹脂と、溶媒とを含むインクであり、加熱手段は、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させることにより、被転写画像形成用部材上において、インクの粘度を高めるものであり、バインダ樹脂の粒子中には、着色剤が分散又は溶解しており、インクにおいて、バインダ樹脂は、分散質として分散溶液となる溶媒中に分散していると共に、インクが乾燥することでバインダ樹脂同士の結合により皮膜化するものである。
このインクの粘度は、例えば、室温25℃の状態のおける粘度であってよい。また、溶剤を除去する前の状態において、このインクは、例えばインクジェットヘッドによる吐出が可能な粘度を有する。より具体的に、溶剤を除去する前の状態のインクの粘度は、例えば20mPa・sec未満である。また、被転写画像形成用部材は、例えば転写ベルト又は転写ドラム等の転写に用いる部材である。加熱手段としては、例えばヒータを好適に用いることができる。また、転写手段としては、例えばローラやヒートローラ等を好適に用いることができる。
このように構成した場合、例えば、溶媒を含むことで粘度が低い状態のインクをインクジェットヘッドにより吐出することにより、高い精度で適切にインク滴の吐出を行うことができる。また、インク滴が被転写画像形成部材へ着弾した後に、加熱手段によりインクの溶媒を除去することにより、インクの粘度を高め、転写に適した状態にすることができる。更には、溶媒を除去した状態におけるインクの粘度を50mPa・sec以上とすることにより、被転写画像形成部材上等においてインクの滲みが発生することを適切に防ぐことができる。
また、媒体への転写後に、画像定着手段により画像を媒体に定着させることにより、転写を適切に完了させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェット方式で描画した画像の転写を適切に行うことができる。また、これにより、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
尚、被転写画像形成部材の着弾後、溶媒が加熱手段により除去された状態のインクの粘度は、インクの表面が粘着性を有する範囲で、十分に高くすることが好ましい。この状態におけるインクの粘度は、50mPa・sec以上、好ましくは、100mPa・sec以上、より好ましくは、500mPa・sec以上である。また、この状態におけるインクの粘度は、例えば1000mPa・sec以上であってもよい。このように構成すれば、例えば、インクの滲みの発生等の問題をより適切に抑えることができる。また、これにより、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
(構成2)インク滴が被転写画像形成部材へ着弾して、溶媒が加熱手段により除去された状態において、インクは、被転写画像形成部材上で滲まず、かつ、媒体への転写が可能な粘度を有する。このように構成すれば、例えば、インクの滲みの発生等の問題を適切に抑えることができる。また、これにより、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
尚、被転写画像形成部材上でインクが滲まないとは、例えば、印刷の解像度に応じて求められる精度において滲んでいないと判断できる状態のことであってよい。また、媒体への転写が可能な粘度を有するとは、例えば、被転写画像形成部材に対してインクが完全には定着せずに、転写手段により転写を行うことで、印刷の解像度に応じて求められる精度で適切に転写を行うことができる状態のことである。
(構成3)インクは、紫外線の照射により重合する物質と、有機溶剤とを含むソルベントUVインクであり、インクのインク滴が被転写画像形成部材へ着弾した後、有機溶剤は、加熱手段による加熱で除去され、画像定着手段は、紫外線を照射する紫外線光源であり、転写手段により媒体へ転写された画像に紫外線を照射することにより、媒体上のインクを硬化させる。
このように構成した場合、インク滴が被転写画像形成部材へ着弾した後、インク中の有機溶剤は、加熱手段により除去される。また、これにより、転写画像形成部材上において、インクの粘度が高まる。そして、このような構成においては、加熱によりインクの粘度を高めているため、例えば紫外線硬化型インクに紫外線を照射してインクを半硬化の状態にする場合と異なり、インクの表面のみの硬化が進んで転写が困難になること等の問題は生じにくい。また、インク中の有機溶剤を除去してもインクは硬化しないため、有機溶剤を十分に除去して、インクの粘度を十分に高めることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、転写画像形成部材上のインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。また、これにより、媒体への画像の転写を適切に行うことができる。
また、媒体への画像の転写後、画像定着手段により紫外線を照射することにより、媒体上のインクを適切に硬化させることができる。また、これにより、媒体に画像を適切に定着させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
尚、インク中の有機溶剤について、加熱手段による加熱で除去されるとは、必ずしも全ての有機溶剤が除去される場合に限らない。例えば、インクの粘度が転写に適した粘度になるように十分除去される場合も含んでよい。
(構成4)インクは、ラテックスインクであり、画像定着手段は、媒体を加熱することにより、媒体へ転写された画像を媒体に定着させる。この場合、加熱手段は、例えば、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させることにより、被転写画像形成部材上において、インクの粘度を高める。また、画像定着手段は、例えば、媒体を加熱することにより、媒体上のインクを乾燥させる。画像定着手段により媒体上のインクを乾燥させるとは、例えば、媒体に画像を定着させるという目的を実現できる範囲で、インクを十分に乾燥させることである。
また、ラテックスインクとは、例えば、水性ラテックスインクである。水性ラテックスインクとは、例えば、樹脂による水性エマルジョン又は水性サスペンションが形成されているインクである。また、このインクは、例えば、水又は親水性溶媒及び樹脂を含み、当該樹脂が当該水又は親水性有機溶媒に乳濁又は懸濁しているインクであってよい。
本願の発明者は、鋭意研究により、ラテックスインクについて、溶媒を完全に蒸発させない状態においても、溶媒の一部を蒸発させることにより、粘度が十分に高い状態にできることを見出した。そのため、このように構成すれば、例えば、加熱手段により、転写画像形成部材上のインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。また、これにより、媒体への画像の転写を適切に行うことができる。
また、画像の転写後において、画像定着手段により媒体を加熱することにより、例えば媒体上のインクを乾燥させ、画像を適切に定着させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
(構成5)インクは、バインダ樹脂と、溶媒とを含むインクであり、加熱手段は、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させることにより、被転写画像形成部材上において、インクの粘度を高める。このインクは、例えば公知のラテックスインクであってよい。また、上記の特徴を有するインクであれば、公知のラテックスインクと異なる構成のインクを用いることもできる。
本願の発明者は、鋭意研究により、このようなインクを用いる場合も、インクの溶媒の一部を蒸発させることにより、インクの粘度を十分に高めることができることを見出した。そのため、このように構成すれば、例えば、加熱手段により、転写画像形成部材上のインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。これにより、媒体への画像の転写を適切に行うことができる。
尚、この構成において、画像定着手段は、例えば媒体を加熱することにより、媒体に画像を定着させる。また、用いるバインダ樹脂の特性に応じて、画像定着手段は、加熱以外の方法(例えば紫外線の照射等)により、媒体に画像を定着させてもよい。これらのように構成すれば、例えば、媒体に画像を適切に定着させることができる。また、これにより、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
(構成6)インクにおいて、バインダ樹脂は、分散質として、分散溶液となる溶媒中に分散しており、バインダ樹脂の粒子中には、着色剤が分散又は溶解している。このように構成すれば、例えば、加熱手段で加熱を行うことにより、被転写画像形成部材上におけるインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。また、これにより、媒体への画像の転写を適切に行うことができる。
ここで、上記の構成5及び6に記載されているインクにおいて、バインダ樹脂の粒子の平均粒子径は、好ましくは300nm以上、より好ましくは400nm以上である。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドによるインクの吐出安定性を適切に確保しつつ、被転写画像形成部材上におけるインクの滲み、バインダ樹脂の粒子の必要以上の凝集、及び着色剤の変質等を適切に防ぐことができる。また、バインダ樹脂の粒子の平均粒子径は、例えば800nm以上とすることも考えられる。このように構成すれば、例えば、被転写画像形成部材上におけるインクの滲みをより確実に防ぐことができる。
また、このインクにおいて、バインダ樹脂の粒子の平均粒子径は、インクジェットヘッドのノズルのノズル径の1/10以下であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、吐出安定性をより適切に向上させることができる。また、このインクにおいて、バインダ樹脂粒子は、略球形状、略楕円形状、又は略円盤形状であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの吐出安定性をより適切に向上させることができる。
また、このインクにおいて、バインダ樹脂の粒子は、バインダ樹脂材料のモノマーと着色剤とを乳化重合又は懸濁重合して形成されたものであってよい。このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂の粒子を容易に略球形状又は略楕円形状にできる。また、これにより、例えば、バインダ樹脂の粒子を大径化しても吐出安定性を適切に確保できる。
また、このインクのバインダ樹脂の粒子において、バインダ樹脂と着色剤との平均含有比率は、重量比で、20:80〜95:5であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂の粒子の沈殿をより適切に抑えることができる。この比率は、より好ましくは、75:25〜95:5、更に好ましくは、65:35〜85:15である。
また、このインクにおいて、着色剤の平均粒子径は、50nm以下であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの着色性がより向上し、より高精彩な印刷が可能となる。また、着色剤は、バインダ樹脂の粒子中に内包されているため、着色剤の平均粒子径を50nm以下に小さくしても、インクの耐光性を適切に向上させることができる。
また、このインクにおいて、分散溶液には、例えば、バインダ樹脂とはガラス転移点の異なる別の樹脂が溶解していてもよい。このように構成すれば、例えば、インクの粘度をより適切に調整できる。また、例えば画像定着手段により媒体上のインクを乾燥させる場合において、インクが乾燥してバインダ樹脂同士の結合により皮膜化する際に、別の樹脂が結着材として機能し、バインダ樹脂同士を更に強力に結合させることができる。また、これにより、媒体上のインクをより適切に定着させることができる。
(構成7)バインダ樹脂は、熱により硬化する高分子化合物であり、加熱手段は、転写画像形成部材上のインクにおけるバインダ樹脂が硬化しない温度で、被転写画像形成部材を加熱し、画像定着手段は、媒体上のインクにおけるバインダ樹脂が硬化する温度以上の温度で、媒体を加熱する。
このように構成した場合、硬化しない範囲の温度で加熱手段により転写画像形成部材を加熱することにより、転写画像形成部材上のインクの粘度を、転写に適した状態に適切に高めることができる。また、媒体への転写後において、画像定着手段でより高い温度に媒体を加熱することにより、媒体へ画像を適切に定着させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
尚、画像定着手段は、例えばインクのバインダ樹脂を熱硬化させることにより、媒体へ画像を定着させる。また、画像定着手段は、更に高い温度で加熱することにより、硬化後のバインダ樹脂を溶解させて、媒体へ画像を定着させてもよい。
(構成8)加熱手段は、被転写画像形成部材上のインクを、バインダ樹脂が溶解する溶解温度未満の温度に加熱し、画像定着手段は、媒体上のインクを、溶解温度以上の温度に加熱する。このように構成すれば、例えば、画像定着手段により、画像をより強固に媒体へ定着させることができる。また、これにより、例えば、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
(構成9)バインダ樹脂は、光の照射により硬化する高分子化合物であり、画像定着手段は、媒体へ光を照射することにより、媒体上のインクにおけるバインダ樹脂を硬化させる。この光は、例えば紫外線である。
このように構成すれば、例えば、加熱手段により、転写画像形成部材上のインクについて、インクを硬化させることなく、インクの粘度を転写に適した状態に適切に高めることができる。また、媒体への転写後において、インクを硬化させることにより、媒体へ画像を適切に定着させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
(構成10)媒体は、紙である。このように構成すれば、紙の媒体に対し、所望の画像を高い精度で適切に印刷できる。
ここで、例えば紙の媒体に対して印刷を行う場合、インクジェットヘッドから媒体へインク滴を直接吐出して印刷を行うことも考えられる。また、実際、このような方法で印刷を行うことも広く行われている。しかし、高い精度での印刷を行おうとする場合、従来公知の様々なインクを用いたとしても、このような方法では、適切に印刷を行えない場合もある。
例えば、従来広く用いられているソルベントインクを用いる場合、紙の媒体へ直接インク滴を吐出すると、インクの滲みが発生する。そのため、紙の媒体に対してソルベントインクで直接印刷を行うことは困難である。また、例えば、従来広く用いられている水性インクを用いる場合、インク受容層を形成した専用紙を用いなければ、通常、媒体の皺の発生や、インクの滲みは避けられない。そのため、通常の紙の媒体(普通紙等)に対して、水性インクで直接印刷することが不適切な場合もある。
また、従来広く用いられている紫外線硬化型インクを用いる場合、紙の媒体へ直接インク滴を吐出すると、一部のモノマーが紙の繊維に浸透し、硬化しないまま残る場合がある。しかし、硬化しない状態でモノマーが残ること(残留モノマー)は、環境やユーザへの影響等の点で、好ましくない場合がある。また、紫外線硬化型インクを用いて直接印刷を行う場合、インクのドットの粒状感が目立ち、光沢感のある印刷を適切に行えない場合もある。そのため、紙の媒体に対して紫外線硬化型インクで直接印刷を行うことが不適切な場合もある。
これに対し、上記のような構成の転写により印刷を行った場合、インクの滲みを適切に抑えることができる。また、媒体の皺の発生や、残留モノマーの問題も生じにくい。更には、転写ローラ等を用いて転写により印刷を行うことにより、媒体への転写後のインクのドットを適切かつ十分に平坦化(平滑化)できる。また、これにより、光沢感のある印刷等を適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、紙の媒体に対し、所望の画像を高い精度で適切に印刷できる。
また、このように構成した場合、媒体の皺やインクの滲み等の問題を適切に防げるため、十分な量のインクを用いて、厚みのあるインク層を形成することもできる。そのため、このように構成すれば、インク層の厚みを十分に厚くし、より高濃度の印刷を行うこと等も可能となる。
(構成11)画像の転写により印刷を行う印刷方法であって、媒体へ転写される画像である被転写画像が描画される被転写画像形成用部材へ、インクジェットヘッドによりインクジェット方式でインク滴を吐出することにより、被転写画像形成用部材上に被転写画像を描画し、被転写画像形成部材を加熱手段により加熱し、被転写画像形成用部材に描画された被転写画像を転写手段により媒体に転写し、転写手段により媒体へ転写された画像を媒体に画像定着手段により定着させ、インクジェットヘッドは、加熱手段による加熱で除去される溶媒を含むインクのインク滴を吐出し、インク滴が被転写画像形成部材へ着弾して、溶媒が前記加熱手段により除去された状態において、インクの粘度は、50mPa・sec以上となる。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の構成の第1の例を示す。印刷装置10は、画像の転写により印刷を行う印刷装置であり、例えば紙の媒体50に対し、画像の転写により印刷を行う。この場合、印刷とは、例えば、媒体50上に画像(文字、図柄等)を形成することである。また、印刷装置10については、デジタル式のオフセット印刷によって媒体50上に画像を形成する画像形成装置であるとも言える。
また、紙の媒体50は、例えば普通紙の媒体である。媒体50は、例えばインク受容層が形成されていない紙の媒体50であってよい。また、媒体50としては、紙以外の媒体を用いてもよい。例えば、媒体50として、プラスチック、樹脂、又は金属等の様々な素材で形成された媒体を用いることも考えられる。
また、本例において、印刷装置10は、インクジェットヘッド12、転写ベルト14、対向位置ヒータ16、弱UV光照射器32、ベルト駆動用ローラ18、20、転写ローラ22、強UV光照射器24、28、30及び反射筒26を備える。
インクジェットヘッド12は、インクジェット方式でインク滴を吐出する印刷ヘッドである。本例において、インクジェットヘッド12は、転写ベルト14上へインク滴を吐出することにより、媒体50へ転写される画像である被転写画像を転写ベルト14上に描画する。
また、本例において、インクジェットヘッド12は、ソルベントUVインクのインク滴を吐出する。ソルベントUVインクは、加熱手段による加熱で除去される溶媒を含むインクの一例であり、紫外線の照射により重合する物質と、有機溶剤とを含む。紫外線の照射により重合する物質とは、例えば、紫外線の照射により重合するモノマー又はオリゴマーである。また、インクが含む有機溶剤は、インクの溶媒の一例である。この有機溶剤は、揮発性有機溶剤であることが好ましい。
尚、カラー印刷を行う場合、印刷装置10は、例えば、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する複数のインクジェットヘッド12を備える。複数のインクジェットヘッド12のそれぞれは、例えば、CMYKの各色のインク滴を吐出する。また、本例において、ソルベントUVインクとしては、例えば公知のソルベントUVインクのうち、以下において説明をする粘度等の特性を有するインクを好適に用いることができる。また、インクジェットヘッド12による吐出前の状態において、インクの粘度は、例えば20mPa・sec未満である。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッド12のよりインク滴を適切に吐出できる。また、インクジェットヘッド12は、例えば転写ベルト14の移動方向と直交する主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、転写ベルト14における主走査方向の各位置へ、インク滴を吐出する。
転写ベルト14は、被転写画像が描画されるベルト部材である。転写ベルト14としては、例えば、金属ベルト又はその他の高剛性のベルトの表面に離形処理を行った構成を好適に用いることができる。また、この離形処理としては、例えばフッ素、シリコン、又はポリイミド樹脂によりベルトの表面を覆う処理を好適に用いることができる。
また、本例において、転写ベルト14は、インクジェットヘッド12の主走査動作の合間に、図中の矢印で示す方向へ移動することにより、インクジェットヘッド12と対向する部分を順次変更する。これにより、転写ベルト14の各位置には、インクジェットヘッド12により、被転写画像が描画される。
尚、本例において、転写ベルト14は、被転写画像が形成される被転写画像形成用部材の一例である。印刷装置10の構成の変形例においては、被転写画像形成用部材として、転写ベルト14に代えて、例えば転写ドラム等を用いてもよい。
対向位置ヒータ16は、転写ベルト14を加熱する加熱手段であり、転写ベルト14を挟んでインクジェットヘッド12と対向する位置に設けられることにより、転写ベルト14におけるインク滴の着弾位置を加熱する。そのため、本例において、インクジェットヘッド12により吐出されたインク滴が転写ベルト14へ着弾した後、インク中の有機溶剤は、対向位置ヒータ16による加熱で除去される。
また、本例において、対向位置ヒータ16により有機溶剤が除去された状態において、インクの粘度は、50mPa・sec以上となる。このインクの粘度は、印刷装置10の使用環境における粘度であり、例えば、室温25℃の状態のおける粘度であってよい。このように構成すれば、例えば、転写ベルト14への着弾直後にインクの粘度を高めることにより、インクの滲みが発生することを適切に防ぐことができる。また、本例において用いるソルベントUVインクは、一定の強度以上の強い紫外線を照射しなければ硬化しない。そのため、対向位置ヒータ16により有機溶剤が除去された状態において、インクは、転写ベルト14上で滲まず、かつ、媒体50への転写が可能な粘度を有する状態になる。
尚、本例において、インク中の有機溶剤が対向位置ヒータ16により除去されるとは、必ずしも全ての有機溶剤が除去される場合に限らない。例えば、インクの粘度が転写に適した粘度になるように十分除去される場合も含んでよい。
また、有機溶剤が除去された状態のインクの粘度は、インクの表面が粘着性を有する範囲で、十分に高くすることが好ましい。この状態におけるインクの粘度は、好ましくは、50mPa・sec以上、より好ましくは、100mPa・sec以上である。このように構成すれば、例えば、インクの滲みの発生等の問題をより適切に抑えることができる。また、これにより、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
弱UV光照射器32は、転写ベルト14に着弾したインクに弱い紫外線を照射する光源であり、インクに弱い紫外線を照射することにより、インクをゲル状の状態にまで硬化させる。これにより、弱UV光照射器32は、転写ベルト14上のインクの粘度を更に高める。このように構成すれば、例えば、転写ベルト14上のインクを転写により適した状態にできる。弱UV光照射器32としては、例えばUVLEDを好適に用いることができる。
尚、弱UV光照射器32により照射する紫外線が強過ぎると、例えば、インクの硬化が進み過ぎ、インクが転写に適さない状態になるおそれもある。しかし、本例においては、対向位置ヒータ16によりインクの粘度を高めるため、弱UV光照射器32により照射する紫外線が弱くても、滲みの問題は生じにくい。そのため、弱UV光照射器32による紫外線の照射の強度は、インクの硬化が進み過ぎないように適切に抑えることが好ましい。また、対向位置ヒータ16のみによりインクの粘度を十分に高められる場合には、弱UV光照射器32を省略してもよい。また、弱UV光照射器32に代えて、例えば比較的長い波長(例えば波長が385〜460nm程度)の紫外線や青色光を発生するLEDを用いることも考えられる。この場合、長波長の紫外線等を用いることにより、例えば、UVインクの表面のみが硬化する問題等の発生を適切に抑えることができる。
ベルト駆動用ローラ18、20は、転写ベルト14を移動させるローラであり、転写ベルト14の環の内側に配設されて回転することにより、転写ベルト14を所定の方向へ移動させる。本例において、ベルト駆動用ローラ18は、転写ベルト14を駆動する駆動ローラである。また、ベルト駆動用ローラ20は、透光性のローラであり、内部に強UV光照射器24及び反射筒26を収容する。ベルト駆動用ローラ20としては例えば透明ローラ又はメッシュローラ等を好適に用いることができる。
尚、ベルト駆動用ローラ18及びベルト駆動用ローラ18の一方又は両方は、例えば転写ベルト14を加熱昇温する機能を更に有してもよい。また、ベルト駆動用ローラ20は、ベルト駆動用ローラ18と共に転写ベルト14を駆動する駆動ローラであってもよく、転写ベルト14の移動に従って回転する従動ローラであってもよい。
転写ローラ22は、転写ベルト14との間に媒体50を挟んで媒体50を押圧するローラである。本例において、転写ローラ22は、転写手段の一例であり、この押圧により、転写ベルト14に描画された被転写画像を媒体50に転写する。転写ローラ22は、例えば媒体50を加熱しつつ媒体50を押圧するヒートローラであってもよい。また、転写ローラ22は、ベルト駆動用ローラ20との間に転写ベルト14及び媒体50を挟む位置に配設される。このように構成すれば、例えば、媒体50をより適切に押圧できる。
強UV光照射器24は、媒体50に転写された後のインクを硬化させる紫外線を照射する光源である。本例において、強UV光照射器24は、画像定着手段の一例であり、例えば弱UV光照射器32よりも強い紫外線を媒体50に照射することにより、媒体50上のインクを硬化させる。また、これにより、強UV光照射器24は、転写ローラ22により媒体50へ転写された画像を媒体50に定着させる。強UV光照射器24としては、例えば波長350〜450nm程度の紫外線を発生するUVLEDを好適に用いることができる。
また、本例において、強UV光照射器24は、ベルト駆動用ローラ20の内部に収容されており、ベルト駆動用ローラ20及び転写ベルト14を透過させて、媒体50に紫外線を照射する。このように構成すれば、媒体50へ転写後に速やかに画像を定着させることができる。また、ベルト駆動用ローラ20内に強UV光照射器24を収容することにより、強UV光照射器24の設置に必要なスペースを適切に省略できる。
反射筒26は、強UV光照射器24が発生する紫外線を反射する筒状体であり、強UV光照射器24と共にベルト駆動用ローラ20に収容されて、強UV光照射器24が発生する紫外線を、媒体50に向けて反射する。このように構成すれば、例えば、紫外線の利用効率を適切に高めることができる。また、これにより、紫外線の強度補強を行い、媒体50に到達する紫外線の強度を適切に高めることができる。
強UV光照射器28、30は、強UV光照射器24と同様の強い紫外線を発生する光源であり、強UV光照射器24とは異なる位置から強い紫外線を照射する。例えば、本例において、強UV光照射器28は、転写ローラ22により画像が転写された後に媒体50が搬送される下流位置において、媒体50上の画像へ紫外線を照射する。また、強UV光照射器30は、媒体50において転写ローラ22により押圧される位置へ向けて、転写ローラ22の側から紫外線を照射する。これらのように構成すれば、例えば、媒体50上のインクをより確実に硬化させることができる。また、これにより、媒体50へ転写された画像を媒体50により確実に定着させることができる。
尚、上記のように、本例においては、媒体50へ紫外線を照射する光源として、複数の強UV光照射器24、28、30を用いている。しかし、印刷装置10の構成の変形例においては、これらの一部を省略してもよい。例えば、ベルト駆動用ローラ20の内部に強UV光照射器24を収容することが難しい場合には、強UV光照射器24を省略することが考えられる。この場合、例えば、強UV光照射器28、30のいずれか又は両方が、画像定着手段なる。また、画像の定着に必要な紫外線の強度に応じて、強UV光照射器28及び強UV光照射器30の一方又は両方を省略することも考えられる。更には、強UV光照射器24及び強UV光照射器30を省略して、強UV光照射器28のみを画像定着手段として用いることも考えられる。
本例によれば、例えば、有機溶剤を含むことで粘度が低い状態のソルベントUVインクをインクジェットヘッド12で吐出することにより、高い精度で適切にインク滴の吐出を行うことができる。また、インク滴が転写ベルト14へ着弾した後に、対向位置ヒータ16によりインク中の有機溶剤を除去することにより、インクの粘度を高め、転写に適した状態にすることができる。更には、有機溶剤を除去した状態におけるインクの粘度を50mPa・sec以上とすることにより、転写ベルト14においてインクの滲みが発生することを適切に防ぐことができる。
また、媒体50への転写後に、強UV光照射器24等により画像を媒体50に定着させることにより、転写を適切に完了させることができる。そのため、本例によれば、例えば、インクジェット方式で描画した画像の転写を適切に行うことができる。また、これにより、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
また、本例においては、対向位置ヒータ16を用いて加熱によりインクの粘度を高めているため、例えば紫外線硬化型インクに紫外線を照射してインクを半硬化の状態にする場合と異なり、インクの表面のみの硬化が進んで転写が困難になること等の問題は生じにくい。また、インク中の有機溶剤を除去してもインクは硬化しないため、有機溶剤を十分に除去して、インクの粘度を十分に高めることができる。
また、例えば弱UV光照射器32により弱い紫外線を照射する場合においても、ソルベントUVインクを用い、かつ、対向位置ヒータ16を用いる構成であるため、照射する紫外線の強度や照射量を十分に抑えることができる。そのため、転写前のインクの硬化が進み過ぎることを適切に防ぐことができる。従って、本例によれば、例えば、転写ベルト14上のインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。また、これにより、媒体50への画像の転写を適切に行うことができる。
更には、画像の転写により印刷を行うことにより、例えば紙の媒体を用いる場合において、溶媒の吸収により媒体50に皺が発生すること等はない。また、媒体50への転写前にインクの粘度を十分に高めることができるため、分子量の大きなオリゴマーを使うことが可能となり、残留モノマー等の問題も生じにくい。そのため、本例によれば、普通紙等の紙の媒体50に対し、高い精度で適切に印刷を行うことができる。また、媒体50として、紙ラベル等を適切に用いること等も可能となる。
また、画像の転写により印刷を行うことにより、例えば、従来のオフセット印刷等と同様に、インク層が薄く、平滑かつ高光沢化した印刷を行うこともできる。これにより、デジタル方式でのオフセット印刷を適切に実現できる。また、滲みや皺等の問題が生じにくいため、十分な量のインクを用いて、厚みのあるインク層を形成することもできる。また、これにより、高濃度の印刷を適切に行うこともできる。
また、本例によれば、画像の転写により印刷を行う構成であるため、例えば紙以外の様々な媒体(例えば非吸収性の媒体等)に対しても、適切に印刷を行うことができる。より具体的には、例えば、プラスチック、樹脂、又は金属等の様々な素材で形成された媒体50に対しても、高い精度で適切に印刷を行うことができる。
続いて、印刷装置10の構成の他の例について、説明をする。図2は、印刷装置10の構成の第2の例を示す。本例において、印刷装置10は、インクジェットヘッド12、転写ベルト14、対向位置ヒータ16、ベルト駆動用ローラ18、20、転写ローラ22、及び定着用ヒータ34を備える。尚、以下に説明をする点を除き、図2において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と同一又は同様の特徴を有する。
本例において、インクジェットヘッド12は、ラテックスインクのインク滴を吐出する。ラテックスインクは、バインダ樹脂と、溶媒とを含むインクの一例である。また、ラテックスインクとは、例えば、水性ラテックスインクである。水性ラテックスインクとは、例えば、樹脂による水性エマルジョン又は水性サスペンションが形成されているインクである。また、このインクは、例えば、水又は親水性溶媒及び樹脂を含み、当該樹脂が当該水又は親水性有機溶媒に乳濁又は懸濁しているインクであってよい。また、水又は親水性有機溶媒以外に、親水性有機溶媒に親和性がある非親水性有機溶媒を含有していてもよい。
また、本例においては、ラテックスインクに含まれる溶媒(水等)のうち、その一部が、対向位置ヒータ16による加熱で除去される溶媒に相当する。この一部の溶媒を加熱により除去する前の状態のインクの粘度は、例えば20mPa・sec未満である。また、対向位置ヒータ16は、ラテックスインクの溶媒の一部を蒸発させることにより、転写ベルト14上において、インクの粘度を、50mPa・sec以上に高める。対向位置ヒータ16による加熱後のインクの粘度は、50mPa・sec以上、好ましくは100mPa・sec以上、より好ましくは500mPa・sec以上である。また、本例においては、例えば公知のラテックスのうち、このような粘度の特性を有するインクを好適に用いることができる。
また、本例においては、定着用ヒータ34が、画像定着手段として機能する。定着用ヒータ34は、転写ローラ22により画像が転写された後に媒体50が搬送される下流位置に配設され、媒体50を加熱することにより、媒体50上のインクを乾燥させる。媒体50上のインクを乾燥させるとは、例えば、媒体50に画像を定着させるという目的を実現できる範囲で、インクを十分に乾燥させることである。定着用ヒータ34は、例えば図2に示した構成により、媒体50の両面を加熱することが好ましい。
本願の発明者は、鋭意研究により、ラテックスインクについて、溶媒を完全に蒸発させない状態においても、溶媒の一部を蒸発させることにより、粘度が十分に高い状態にできることを見出した。そのため、本例においても、例えば、対向位置ヒータ16により、転写ベルト14上のインクの粘度を適切かつ十分に高めることができる。また、これにより、媒体50への画像の転写を適切に行うことができる。
また、本例においては、画像の転写後において、定着用ヒータ34により媒体50を加熱することにより、インク中の残りの溶媒を蒸発させることができる。また、これにより、媒体50上のインクを乾燥させ、画像を適切に定着させることができる。そのため、本例においても、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
尚、一部の溶媒の蒸発によりラテックスインクの粘度が十分に高まる現象は、ラテックスインクの構成が、例えば他の種類のインク(ソルベントインク、紫外線硬化型インク、ソルベントUVインク等)と比べてサイズの大きな樹脂を含む構成であることと関連していると考えられる。より具体的には、例えば、ラテックスインクにおいては、インクに含まれる樹脂間に生じる摩擦力が比較的大きいため、溶媒の一部が蒸発した場合、溶媒が樹脂を分散させる力よりも樹脂間の摩擦力が強くなり、樹脂の集合や凝集が生じていること等が考えられる。
また、ラテックスインクに含まれる樹脂の例としては、より具体的に、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。この中でも、より好ましくは、アクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、合成ゴムであり、特に好ましくはアクリル系樹脂である。
また、ラテックスインクに含まれる樹脂は一種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。樹脂の配合量は、使用する樹脂の種類等により任意に決定できるが、例えば、水性ラテックスインクの全量に対して、1重量%以上であり、2重量%以上がより好ましく、また、20質量%以下であり、10質量%以下であることがより好ましい。
続いて、印刷装置10の構成の更なる他の例について、説明をする。図3及び図4は、印刷装置10の構成の第3の例について説明をする図である。第3の例の印刷装置10においては、以下に説明するように、分散質であるバインダ樹脂と、分散溶液である溶媒とを含むインクを含むインクを用いる。尚、以下に説明をする点を除き、本例において用いる印刷装置10の構成は、図2を用いて説明した印刷装置10と同一又は同様である。
図3は、第3の例において用いるインクの一例を示す。図3(a)は、第3の例のインクに含まれるバインダ樹脂100の構成の一例を示す。本例において、インクジェットヘッド12(図2参照)は、分散質であるバインダ樹脂100と、分散溶液である溶媒とを含むインクを吐出する。このインクにおいて、バインダ樹脂100は、溶媒中に分散しており、バインダ樹脂100の粒子中には、微粒子の一例である着色剤102が分散又は溶解している。
本例のインクにおいて用いられるバインダ樹脂100の具体的な材料としては、ビヒクルに溶けないものであれば特に限定されないが、光若しくは熱で重合して硬化するか又は硬化した高分子化合物から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。ビヒクルとは、本例のインクにおいて、着色剤102等の微粒子が内部に分散又は溶解しているバインダ樹脂100以外の成分をいい、例えば、溶媒(分散溶液)、添加物、共溶媒等が意図される。
また、バインダ樹脂100の具体的な材料は、紫外線、電子線、放射線等のエネルギー線の照射又は熱により重合反応して硬化するモノマー、オリゴマー及び低分子量樹脂であってもよい。例えば、バインダ樹脂100の粒子は、バインダ樹脂材料のモノマーと着色剤とを乳化重合又は懸濁重合して形成されたものであってよい。このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂100の粒子を容易に略球形状又は略楕円形状にできる。また、これにより、例えば、バインダ樹脂100の粒子を大径化しても、インクジェットヘッドからの吐出安定性を適切に確保できる。
より具体的に、バインダ樹脂100の例としては、水溶性のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。この中でも、より好ましくは、アクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性アクリル系樹脂であり、特に好ましくはアクリル系樹脂である。
また、バインダ樹脂100の他の例として、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンラテックス、スチレン−アクリルラテックス、ポリウレタンラテックス等が挙げられる。バインダ樹脂として、例えば、これらの樹脂の原液、当該原液が乳化重合反応したものを採用すれば、重合前の低粘度液状樹脂が水中で分散したときに球形になりやすいため、より好ましい。バインダ樹脂としてこれらの樹脂を採用する場合、分散剤が必要な高分子分散型であっても、自己分散型(参考文献:特開2001−152063号公報を参照)であってもよい。
また、硬化した高分子化合物としては、例えば、各種の合成ラテックスを用いることができる。合成ラテックスとしては、例えば、天然ゴム(天然ゴムラテックス)、ポリブタジエン(EBRラテックス)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBRラテックス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBRラテックス)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MBRラテックス)、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(VPラテックス ビニルピリジンラテックス)、ポリクロロブレン(クロロブレンラテックス)、ポリイソブレン(IRラテックス)、ポリスチレン(ポリスチレンラテックス)、ポリウレタン(ポリウレタンラテックス ポリウレタンエマルジン)、アクリレート系重合体(アクリルラテックス アクリレートエマルジョン)、ポリ酢酸ビニル(酢ビエマルジョン)、酢酸ビニル共重合体(酢ビアクリルエマルジョン等)、酢酸ビニル−エチレン共重合体(EVAエマルジョン等)、アクリレート−スチレン共重合体(アクリルスチレンエマルジョン)、ポリエチレン(ポリエチレンエマルジョン)、塩化ビニル系共重合体(塩ビラテックス)、塩化ビニリデン共重合体((塩化)ビニリデンラテックス)、エポキシ(エポキシエマルジョン)等を挙げることができる。これらは、単独又は組み合わせて使用することができる。更に、転写ベルト14(図2参照)又は媒体50(図2参照)との密着性や、低温加熱での定着性を向上させるために、ガラス転移点(TG)の小さな樹脂とTGの大きな堅牢度の高い樹脂を組み合わせて用いることも考えられる。
また、本例のインクにおいて、バインダ樹脂100の粒子の平均粒子径は、300nm以上であることが好ましく、400nm以上であることがより好ましい。バインダ樹脂100の粒子の平均粒子径とは、分散溶液中に分散する複数のバインダ樹脂100の粒子の粒子径の平均のことである。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドによるインクの吐出安定性を適切に確保しつつ、被転写画像形成部材上におけるインクの滲み、バインダ樹脂の粒子の必要以上の凝集、及び着色剤の変質等を適切に防ぐことができる。また、バインダ樹脂の粒子の平均粒子径は、例えば800nm以上とすることも考えられる。このように構成すれば、例えば、被転写画像形成部材上におけるインクの滲みをより確実に防ぐことができる。また、バインダ樹脂100の粒子の平均粒子径は、インクジェットヘッドのノズルのノズル径の1/10以下であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、吐出安定性をより適切に向上させることができる。また、バインダ樹脂100の粒子は、略球形状、略楕円形状、又は略円盤形状であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの吐出安定性をより適切に向上させることができる。
インク中におけるバインダ樹脂100の粒子の濃度については、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、バインダ樹脂100の粒子の中に着色剤102として顔料の微粒子を分散させる場合においては、インクの全量に対して、バインダ樹脂100を5体積%〜70体積%であればより好ましく、7体積%〜40体積%が更に好ましい。
また、バインダ樹脂100の粒子中に分散又は溶解している着色剤102の具体例としては、ビヒクルに溶けないものであれば特に限定されず、目的に応じて様々な着色剤を採用することができる。具体的な着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、分散染料、酸性染料、反応染料、酸化チタン、磁性粒子、アルミナ、シリカ、セラミック、カーボンブラック、金属ナノ粒子及び有機金属よりなる群から選ばれる少なくとも一種の粒子が挙げられる。金属ナノ粒子の材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。尚、酸化チタンの場合は、白色の塗料として好適に用いることができる。
また、着色剤102の平均粒子径は、50nm以下であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクの着色性がより向上し、より高精彩な印刷が可能となる。また、着色剤102は、バインダ樹脂の粒子中に内包されているため、着色剤の平均粒子径を50nm以下に小さくしても、インクの耐光性を適切に向上させることができる。また、着色剤102の平均粒子径は、20nm以下であることがより好ましい。
尚、着色剤102を上述した粒子径を有するように微粒子化する方法、又は着色剤102の微粒子の生成方法としては、例えばロールクラッシャー、ボールミル、ジェットミル、サンドグラインダーミル、エッジランナー等の機械的な粉砕法、水中結晶化法、水熱法、熱分解法、熱分解法等の結析法及びCVD(気層化学析出法、Chemical Vapor Deposition)に代表される気相法、或いは乳化重合、エマルジョン重合等の液相法から、対象とする着色剤や用途に応じて適宜選択すればよい。粒子を製造工程中で一定の粒径分布に制御するか、製造後の幅広粒度分布を有する粒子を分級することにより、一定の粒度分布を有する微粒子を得ることができる。
また、本例のインクにおいて、バインダ樹脂100の粒子中には、例えば、複数の着色剤102の粒子が分散又は溶解している。より具体的には、例えば、5個以上の着色剤102の粒子が分散又は溶解していることが好ましい。バインダ樹脂100の粒子中に分散又は溶解する着色剤102は1種類であってもよいが、複数の種類であってもよい。また、バインダ樹脂100の粒子において、バインダ樹脂100と着色剤102との平均含有比率は、重量比で、20:80〜95:5であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂の粒子の沈殿をより適切に抑えることができる。
また、溶媒の具体例としては、着色剤102を溶解しないものである限り限定されず、目的に応じて様々な分散溶液を採用することができる。具体的な分散溶液としては、例えば、水を挙げることができる。水は安全性が高く環境汚染がないという利点から、一般に使用されるインクジェットプリンタ用のインク等の用途に好適に用いることができる。水単独では乾燥速度が速く、インクジェットヘッドのノズル詰りの原因となるため、水に保湿剤を添加することがより好ましい。また、転写ベルト14上での対向位置ヒータ16(図2参照)による加熱時にすばやく蒸発させることによって、滲むことを防止するために水に有機溶剤を添加することがより好ましい。また、分散溶液として、水以外の親水性溶媒等を用いることも考えられる。また、例えば粘度調製の目的等により、非親水性の溶媒を用いてもよい。
また、分散溶液の主成分が水及び親水性溶媒の少なくとも一方である場合、バインダ樹脂100の表面は親水化処理されていることが好ましい。このように構成した場合、水又は親水性溶媒に接するバインダ樹脂100の粒子の表面は、水又は親水性溶媒に対して親和性を有するため、分散溶液中にバインダ樹脂の粒子が好適に分散される。そのため、このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂100の粒子の粒子径を大きくしても、ノズル内においてインクが分離せず、ノズルから所定量のインクを確実に吐出することができる。更に、分散溶液との親和性は、親水性のバインダ樹脂表面において確保される。そのため、バインダ樹脂100の材料及び着色剤102として、親水性のものを選択する必要がなく、種々のバインダ樹脂100の材料及び着色剤102を用いることができる。
また、この親水化処理は、例えば、乳化剤を用いて上記表面を乳化する乳化処理、又は上記表面に親水性基を導入する導入処理であることが好ましい。このように構成すれば、例えば、バインダ樹脂100の粒子の表面を適切に親水化することができる。
また、本例のインクは、着色剤102を内包したバインダ樹脂100の粒子及び分散溶液の他に、添加物を含んでいてもよい。添加物の種類としては、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、界面活性剤、カップリング剤、緩衝剤、殺生物剤、金属イオン封止剤、粘度修正剤、溶剤等が挙げられる。また、添加物は、バインダ樹脂100の粒子の中に分散していてもよく、バインダ樹脂100の粒子外であって分散溶液内に存在していてもよい。
また、バインダ樹脂100自体を染料で着色したものを、バインダ樹脂100の粒子として用いてもよい。例えば、分散染料を内包させたポリエステル樹脂を加熱して分散染料を溶解させ、分散染料により樹脂を染色したもの、酸性染料又は反応染料を混ぜたナイロン樹脂を加熱して染料を溶解させ、酸性染料又は反応染料により樹脂を染色したものを、バインダ樹脂100の粒子として使用することも考えられる。この場合、透明性の高く、滲まず、かつ高精彩なインクジェット印刷用のインクが得られる。
また、本例のインクにおいて、分散溶液には、バインダ樹脂100とは別の樹脂が溶解していてもよい。このように構成すれば、例えば、インクの粘度をより適切に調整できる。また、例えば媒体50上のインクを乾燥させる場合において、インクが乾燥してバインダ樹脂同士の結合により皮膜化する際に、例えば、少なくともラテックス粒子間を接着させることのできる樹脂や、バインダ樹脂100とはガラス転移点の異なる樹脂等である別の樹脂が結着材として機能し、バインダ樹脂100同士を更に強力に結合させることができる。また、これにより、媒体50上のインクをより適切に定着させることができる。
続いて、本例のインクの製造方法について、説明をする。図3(b)は、本例のインクの製造方法の一例を示すフローチャートであり、バインダ樹脂100が熱で硬化する高分子化合物であり、着色剤102が顔料微粒子、溶媒(分散溶液)が水である場合の製造方法の一例を示す。尚、他の構成のバインダ樹脂100等を用いる場合にも、使用するバインダ樹脂100等の種類に応じて一部を変更することにより、以下と同様にして、インクを製造できる。
本例のインクの製造方法においては、先ず、高分子化合物の原液を生成する(ステップS102)。ここでは、例えば、高分子化合物粒子の中に分散させることとなる顔料微粒子を高分子化合物の原液に加えて、分散させておく。また、目的に応じて添加物を加えておいてもよい。
尚、ステップS102の前工程として行う顔料微粒子の製造方法としては、例えばビルドアップ法が挙げられる。ビルドアップ法は気相及び液相の原子、分子、イオンのオーダーで純度の高い原料から反応、過飽和、核生成、成長を通して固相の材料(原料)を作製することにより微粒子を作製する方法である。工業的には、粒径が数nm〜数十nmまでの高純度微粒子の合成に用いられる方法である。ビルドアップ法としては特許第3936558号公報を参考文献として参照できる。
次に、高分子化合物の原液をエマルジョン化する(ステップS104)。ステップS104は、例えば、容器及び攪拌機により構成されている装置を用いて行うことができる。この場合、例えば、未反応モノマー等からなる高分子化合物の原液を容器に入れ、水及び溶剤等の高分子化合物粒子を分散させる溶媒を攪拌機に入れる。そして、例えば、ポンプにより原液を容器から配管を介して攪拌機に注入しながら攪拌翼により高速で攪拌する。この動作により、水等からなる溶媒中に分散した高分子化合物の原液において、球状の、粒径が制御された粒子からなるエマルジョン液が形成される。
尚、エマルジョン化の手段としては、機械的な各種の攪拌機や分散機以外にも超音波攪拌機等の乳化や分散に使用される装置が使用可能である。また、この原液中には顔料が予め分散しているので、このエマルジョンを構成する高分子化合物の原液の粒子中には顔料の微粒子が分散している。また、高分子化合物の原液中に存在している顔料の微粒子は原液の粘性によって凝集が抑えられている。このようにして、顔料微粒子が一様に内部で分散した高分子化合物の原液の粒子を水中に形成することができる。
次に、高分子化合物の原液を乳濁又は懸濁してインクの原液を生成する(ステップS106)。ステップS106では、例えば、この原液を加熱するか、又は原液を重合反応させてゴム化する(例えば水中に混入させた架橋剤を用いる)ことにより、乳濁又は懸濁すればよい。高分子化合物の原液を乳濁又は懸濁することにより、高分子化合物粒子中の顔料微粒子は固定化され、再凝集することは完全になくなる。また、用途によっては、高分子化合物の原液を乳濁又は懸濁は必須ではなく、原液の粒子が水中に分散した状態で、次のステップに進んでもよい。
最後に、ステップS106で得られたインクの原液を目的の濃度に希釈して、所望の濃度又は粘度のインクを得る(ステップS108)。ステップS108では、インクの表面張力を調整するために、適宜添加剤を加えてもよい。
続いて、上記のようにして製造されたインクを用いて行う印刷時のインクの状態の一例について、説明する。図4は、印刷時の各段階におけるインクの状態の一例を示す。また、この印刷は、例えば、図2に示した印刷装置10と同一又は同様の構成の印刷装置10を用いて行うことができる。図4(a)は、転写ベルト14に着弾する前のインクの状態の一例を示す。この時点のインクにおいて、インク中のバインダ樹脂100は、分散溶液中に分散している。
図4(b)は、転写ベルト14上に着弾し、対向位置ヒータ16(図2参照)による加熱がされた後のインクの状態の一例を示す。この時点において、インク中のバインダ樹脂100は、転写ベルト14上に積層された状態になる。また、対向位置ヒータ16で加熱されることにより、インクに含まれる分散溶液の少なくとも一部が蒸発し、インクの粘度が高まった状態になっている。
ここで、バインダ樹脂100として、熱で硬化する高分子化合物を用いている場合、対向位置ヒータ16は、転写ベルト14上のインクにおけるバインダ樹脂100が硬化しない温度で、転写ベルト14を加熱する。このように構成すれば、例えば、転写ベルト14上のインクの粘度を、転写に適した状態に適切に高めることができる。また、加熱により粘度が高まった後、インクにより描画された画像は、転写ローラ22(図2参照)等により、媒体50へ転写される。また、その後、定着用ヒータ34(図2参照)で媒体50を加熱することにより、媒体50に画像を定着させる。
また、バインダ樹脂100として、熱で硬化する高分子化合物を用いている場合、定着用ヒータ34は、少なくとも、媒体50上のインクにおけるバインダ樹脂100が硬化する温度以上の温度で、媒体50を加熱する。これにより、定着用ヒータ34は、インクのバインダ樹脂100を熱硬化させて、媒体50へ画像を定着させる。このように構成すれば、例えば、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
また、定着用ヒータ34による加熱時には、例えば、更に高い温度で媒体50を加熱することにより、硬化後のバインダ樹脂100を溶解させて、媒体50へ画像を定着させることも考えられる。図4(c)は、硬化後のバインダ樹脂100を溶解させる温度で定着用ヒータ34による加熱を行った後のインクの状態の一例を示す。この場合、転写前において、対向位置ヒータ16は、転写ベルト14上のインクを、バインダ樹脂100が溶解する溶解温度未満の温度に加熱する。また、転写後において、定着用ヒータ34は、媒体50上のインクを、溶解温度以上の温度に加熱する。このように構成した場合、例えば、定着用ヒータ34による加熱後において、加熱されて溶融したバインダ樹脂が一体化する。また、加熱の完了後、温度が下がった時点で、一体化したバインダ樹脂が、媒体50に定着する。そのため、このように構成すれば、画像をより強固に媒体50へ定着させることができる。また、これにより、例えば、画像の転写による印刷をより適切に行うことができる。
尚、印刷の目的等によっては、バインダ樹脂100として、熱で硬化する高分子化合物以外の樹脂等を用いることも考えられる。例えば、バインダ樹脂100を硬化させずに、乾燥により媒体50に定着させるインクを用いる場合等も考えられる。この場合、転写前において、対向位置ヒータ16は、例えば、転写ベルト14上のインクに含まれる分散溶液の一部を蒸発させることにより、転写ベルト14上のインクの粘度を高める。また、転写後において、定着用ヒータ34は、媒体50上のインクに含まれる残りの分散溶液を蒸発させることにより、画像を媒体50へ定着させる。
また、バインダ樹脂100として、例えば、紫外線等の光の照射により硬化する高分子化合物を用いることも考えられる。図5は、バインダ樹脂100として紫外線の照射により硬化する高分子化合物を用いる場合について、印刷時の各段階におけるインクの状態の一例を示す。尚、この印刷は、例えば、図1に示した印刷装置10と同一又は同様の構成の印刷装置10を用いて行うことができる。
図5(a)は、転写ベルト14上に着弾した直後のインクの状態の一例を示す。この時点において、転写ベルト14上のインクは、分散溶液である溶媒106中にバインダ樹脂100が分散した状態である。
図5(b)は、対向位置ヒータ16(図1参照)による加熱後のインクの状態の一例を示す。対向位置ヒータ16により加熱を行うことにより、インク中の溶媒106が蒸発し、着色剤102を内包するバインダ樹脂100のみが転写ベルト14上に残る。また、その結果、インクの粘度が高まった状態となる。そのため、このように構成すれば、転写ベルト14上のインクについて、対向位置ヒータ16により、インクを硬化させることなく、インクの粘度を転写に適した状態に適切に高めることができる。また、インクの粘度が高まった後、転写ベルト14上の画像は、転写ローラ22(図1参照)等により、媒体50へ転写される。
図5(c)は、強UV光照射器24等により紫外線の照射を行った時点におけるインクの状態の一例を示す。媒体50上のバインダ樹脂100へ強い紫外線を照射することにより、バインダ樹脂100は硬化し、媒体50上に強固に定着する。また、これにより、高光沢で強度の高いインクの被膜を媒体50上に定着させることができる。そのため、このように構成した場合も、画像の転写による印刷を適切に行うことができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。