以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態〕
(圧胴周面の洗浄方法の説明)
図1(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係る洗浄装置を用いた圧胴の洗浄処理の各工程を模式的に図示した説明図である。図1(a)〜(e)に図示した洗浄装置10は、塗布装置20に設けられる圧胴22の周面22Aに付着した液体を除去するものであり、圧胴周面22Aを払拭する手段としてドクターブレード12とワイパーブレード14とを具備している。媒体保持面(圧胴周面22A)に保持される媒体の移動方向上流側にドクターブレード12が配設され、媒体の移動方向下流側にワイパーブレード14が配設された構造を有している。
本明細書において、「ドクターブレード」とは、被払拭面(圧胴周面22A)とブレードの先端部との接触位置、又はブレードの先端部を被払拭面の方向へ延長した延長線との交差位置における、被払拭面の接線方向のブレードよりも被払拭面の移動方向(媒体搬送方向)上流側と、ブレードの同方向上流側面とのなす角が鈍角となるように配設されたブレードであり(図26(a)参照)、被払拭面の移動方向に対して逆らう向きにブレードを当接又は近接させ、ブレードの先端部と被払拭面との間に所定のクリアランスが許容される。
また、「ワイパーブレード」とは、被払拭面とブレードの先端部との接触位置における被払拭面の接線方向のブレードよりも被払拭面の移動方向上流側と、ブレードの同方向上流側面とのなす角が鋭角となるように配設されたブレードであり(図26(b)参照)、被払拭面の移動方向に対してならう向きにブレードを当接させ、ブレードの先端部が弾性変形する程度に被払拭面に接触するように構成されたものである。
ドクターブレード12は圧胴22の軸方向に沿って設けられ、同方向における長さは圧胴22の軸方向の長さに対応している。同様に、ワイパーブレード14は圧胴22の軸方向に沿って設けられ、同方向における長さは圧胴22の軸方向の長さに対応している。なお、ドクターブレード12の長手方向及びワイパーブレード14の長手方向と、圧胴22の軸方向とのなす角が0°を超え90°未満となるように、ドクターブレード12及びワイパーブレード14を圧胴22の軸方向に対して斜め方向に配設してもよい。また、圧胴22の軸方向の長さに満たない複数の短尺のドクターブレード12及びワイパーブレード14を圧胴22の軸方向に沿って並べて、圧胴22の軸方向の長さに対応してもよい。
ドクターブレード12及びワイパーブレード14は、圧胴周面22Aからの離間が一体に行われるように不図示の移動機構によって移動可能に構成されている。
塗布装置20は、圧胴周面22Aに不図示の媒体を保持した状態で回転して、該媒体を所定の搬送方向へ搬送する圧胴22と、圧胴22に保持された媒体に液体を塗布する塗布部24と、を備えている。塗布部24は、塗布ローラ24Aと、塗布ローラ24Aに液体を供給する供給ローラ24Bと、を含んで構成される。
塗布ローラ24Aは、軸方向(長手方向)の長さが媒体の幅(媒体の移動方向と略直交する方向の長さ)よりも大きい構造を有し、塗布ローラ24Aと媒体とを一回だけ相対移動させることで媒体の全面に液が塗布される。かかる構成では、圧胴周面22A(媒体の周囲部)に余剰液が付着してしまう。
また、圧胴周面22Aには、軸方向(図1(a)〜(e)の紙面を貫く方向)に沿ってグリッパ部28A,28Bが設けられている。グリッパ部28A,28Bは、媒体(不図示)の先端部を挟持する爪形状を有するグリッパ29A,29Bが設けられ、グリッパ29A及びグリッパ29Bの爪部は圧胴周面22Aから突出した構造を有している。図1(a)〜(e)には、圧胴22の軸に対して対称関係を有する2か所(周面の全長を二分割した位置)にグリッパ部28A,28Bが設けられる態様が例示されている。
図1(a)に図示した工程は、グリッパ部28Bからグリッパ部28Aまでの間の圧胴周面22Aに付着した液体を除去する工程(第1払拭工程)である。同図に示すように、圧胴周面22Aにドクターブレード12及びワイパーブレード14を当接させた状態で、圧胴22を所定の回転方向(図1(a)〜(e)において符号Aを付して矢印線で図示した反時計回り方向)に回転させると、先ず、ドクターブレード12よって圧胴周面22Aに付着した液26が払拭除去される。
ドクターブレード12と圧胴周面22Aとの隙間を通過して圧胴周面22Aに残留した液26は、ワイパーブレード14によって払拭除去される。ドクターブレード12による払拭処理は、比較的高粘度であり、かつ、ある程度の厚みを持つ液(液層)の除去には向いているものの、処理液のような低粘度であり、かつ、薄い液(例えば、0.1μm〜10μm程度)を完全に除去することが困難である。しかし、ドクターブレード12によって除去されなかった液によって後段のワイパーブレード14と圧胴周面22Aとの間に液が介在するので、ワイパーブレード14の磨耗や圧胴周面22Aの磨耗キズの発生が防止される。
ワイパーブレード14によって除去された液は、ワイパーブレード14の側面(媒体搬送方向の上流側の面)を滑落し、液回収部(図1中不図示、図3に符号34Bを付して図示)に一旦回収された後に、装置外部へ排出される。
図1(b)は、グリッパ部28Aがドクターブレード12の処理領域を通過するときの状態を図示している。同図に示すように、ドクターブレード12及びワイパーブレード14とグリッパ29Aとの衝突を避けるために、ドクターブレード12及びワイパーブレード14を一体に圧胴周面22Aから離間させる(離間工程)。図1(b)に符号Bを付して図示した方向は、ドクターブレード12及びワイパーブレード14の移動方向(離間方向)である。
ドクターブレード12及びワイパーブレード14を圧胴周面22Aから離間させている間に、グリッパ部28Aの媒体搬送方向下流側近傍に付着した液のうち、ドクターブレード12と圧胴周面22Aとの隙間を通過し、かつ、ワイパーブレード14の側面を滑落しきれなかった液によって液たまり26Aが発生する。
図1(c)は、グリッパ部28Aがワイパーブレード14による処理領域を通過した直後の状態を示している。グリッパ部28Aがワイパーブレード14による処理領域を通過すると、ドクターブレード12及びワイパーブレード14を圧胴周面22Aへ当接させ(当接工程)、グリッパ部28Aからグリッパ部28Bまでの間の払拭処理が行われる(第2払拭工程)。図1(c)に図示した当接工程におけるドクターブレード12及びワイパーブレード14の移動方向(当接方向)は、符号Cを付して図示した方向である。なお、グリッパ部28Aからグリッパ部28Bへの液たまり26Aは圧胴22の周面に残ったまま移動する。
グリッパ部28Aとグリッパ部28Bとの間の距離は、使用される媒体の全長(媒体搬送方向に沿う長さ)よりも大きくなっており、液たまり26Aの位置(ワイパーブレード14が離間している位置)は媒体の後端部よりも後ろ側であり、液たまり26Aが媒体と接触することはない。また、液たまり26Aが塗布ローラ24Aの塗布処理領域に到達すると、塗布ローラ24Aは圧胴22から離間され、液たまり26Aの上には処理液が塗布されないように構成されている。
図1(d)は、さらに圧胴22が回転し、グリッパ部28Bからグリッパ部28Aまでの領域に対して払拭処理が行われている状態(2回目の第1払拭工程の途中の状態)を示している。さらに圧胴22が回転して液たまり26Aの位置がドクターブレード12の払拭処理位置に到達すると、液たまり26Aの一部の液はドクターブレード12によって除去される(液たまり除去工程)。図1(e)は、ドクターブレード12によって液たまり26Aの液の一部が除去された直後(液たまり除去工程の終了直後)の状態を図示している。
本例に示す圧胴周面22Aの洗浄方法によれば、ドクターブレード12を媒体搬送方向の上流側に配設し、ワイパーブレード14を媒体搬送方向の下流側に配設して、これらを併用することで、圧胴周面22Aに形成された液たまり26Aへの液の蓄積による液だれが防止されるとともに、ドクターブレード12によって拭き取れなかった液がワイパーブレード14による払拭に作用して、ワイパーブレード14のドライ拭きによるワイパーブレード14の磨耗や圧胴周面22Aの磨耗キズが防止される。
すなわち、ドクターブレード12は、変形させない程度に圧胴周面22Aに当接させるか、圧胴周面22Aとの間にわずかな隙間が空けられるので、ドクターブレード12の磨耗が防止される。しかし、ドクターブレード12を圧胴周面22Aに当接させない場合は、圧胴周面22Aとドクターブレード12との隙間を液が通過してしまう。また、圧胴周面22Aの微小な凹凸が存在する場合も、圧胴周面22Aとドクターブレード12との隙間を液が通過してしまう。
一方、圧胴周面22Aの微小な凹凸やワイパーブレード14の先端部の微小な凹凸は、ワイパーブレード14の弾性変形によって埋めることができるので、圧胴周面22Aに付着した液が圧胴周面22Aとワイパーブレード14との間をすり抜けることがなく、圧胴周面22Aに付着した液は確実に除去される。
また、ドクターブレード12は圧胴周面22Aとの間に所定のクリアランスを有して配設される場合など、ドクターブレード12の先端部と圧胴周面22Aとの間に液が通過できる程度の隙間があると、圧胴周面22Aに付着した液の一部はドクターブレード12と圧胴周面22Aとの間を通過するので、ワイパーブレード14はウエット拭きとなり、ワイパーブレード14の磨耗が抑制され、圧胴周面22Aの磨耗キズがつきにくくなる。
ワイパーブレード14が圧胴周面22Aから離間するときに発生する液たまりは、圧胴周面22Aの回転とともに移動し、ドクターブレード12の位置に到達したときに、ドクターブレード12と接触してかき落とされ、液たまり26Aの蓄積が防止される。ドクターブレード12は、接触した液が滑落しやすいように圧胴周面22Aとのなす角(図4に符号βを付して図示)が決められている。また、圧胴22の後端エッジ(グリッパ部28A,28Bの先端部)を通過する際の液はねが大幅に低減される。
さらに、ワイパーブレード14の前段にドクターブレード12を配置することで、比較的大きな異物が付着した場合でも、該付着物がワイパーブレード14の位置に到達する前にドクターブレード12によって除去することができ、ワイパーブレード14に致命的なダメージを与えることが防止される。
さらにまた、ドクターブレード12とワイパーブレード14とを一体に移動させることで、複雑な移動機構や制御が不要となり、メンテナンス性の向上が見込まれる。
(洗浄装置の構造の説明)
次に、図1(a)〜(e)に図示した洗浄装置10の構造について詳説する。
図2は、洗浄装置10の概略構成を示す全体構成図であり、圧胴周面22Aにドクターブレード12及びワイパーブレード14を当接させた状態が図示されている。また、図3は、図2に図示した洗浄装置10を抜き出して拡大した図である。なお、図2及び図3中、図1と共通する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図3に示す洗浄装置10は、フレーム30にドクターブレード12及びワイパーブレード14が固定された構造を有し、フレーム30を移動させることでドクターブレード12とワイパーブレード14とを一体に移動させることができる。
すなわち、フレーム30は、ドクターブレード12が固定されるドクター固定部材32が固定されるとともに、ワイパーブレード14が固定されるワイパー固定部材34A、及びワイパーブレード14によって圧胴周面22Aから除去された液体が回収される液回収部34Bが固定されている。
フレーム30の媒体搬送方向下流側端部はカムフォロア36が設けられ、フレーム30の媒体搬送方向上流側端部は回転リンク38により支持される。フレーム30は不図示の付勢手段(引張バネ)によって圧胴22側へ常時付勢されている。
ドクターブレード12及びワイパーブレード14は、圧胴周面22Aに用いられる材料(圧胴周面22Aにジャケットが設けられる場合には、ジャケット面に用いられる材料)よりも親水性の高い材質が適用される。
ドクターブレード12、ワイパーブレード14の材質には、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴムなどが好適に用いられる。また、圧胴周面(ジャケット面)22Aの材質には、SUS304、SPCCなどの金属材料が好適に用いられる。
(ドクターブレード及びワイパーブレードの離間動作の説明)
図4は、図2の一部拡大図であり、洗浄装置10による洗浄処理中の状態を示す図である。同図に示すように、洗浄処理中は圧胴周面22Aにワイパーブレード14及びカムフォロア36を接触させ、ドクターブレード12は圧胴周面22Aに近接させるように、符号Dを付して図示した方向に作用する付勢力によって付勢される。
ワイパーブレード14の当接角αが40°以上60°以下となり、ドクターブレード12の当接角βが20°以上40°以下となり、かつ、ドクターブレード12と圧胴周面22Aとのクリアランス(ドクターブレード12と圧胴周面22Aとの最小距離)gが0.2mm以下となるように洗浄装置10が配設される。なお、ドクターブレード12と圧胴周面22Aとの間に0.05mm程度のクリアランスが設けられていてもよい。
ここで、ワイパーブレード14の当接角αは、ワイパーブレード14が圧胴周面22Aに当接した状態で、ワイパーブレード14と圧胴周面22Aとの接触位置における圧胴周面22Aの接線と、ワイパーブレード14の媒体搬送方向上流側の面とのなす角である。また、ドクターブレード12の当接角βは、ドクターブレード12の媒体搬送方向下流側の面を圧胴周面22Aの方へ延長したときの圧胴周面22Aと当該延長面との接触位置における圧胴周面22Aの接線と、当該延長面とのなす角である。
図5は、グリッパ部28A,28Bが洗浄装置10の処理領域を通過するときに、ドクターブレード12、ワイパーブレード14及びカムフォロア36を圧胴周面22Aから離間させた状態を示す説明図である。
カムフォロア36が圧胴22に設けられたカム部22B(破線で図示)に乗り上げると、回転リンク38を支点としてドクターブレード12及びワイパーブレード14は、符号Eを付して図示した方向へ同時に移動する。ドクターブレード12及びワイパーブレード14を圧胴周面22Aから離間させるタイミングは、ワイパーブレード14がグリッパ部28A(28B)に達する前であり、かつ、ドクターブレード12がグリッパ部28A(28B)に達した後となっている。
すなわち、カムフォロア36がカム部22Bの先頭部分22Cに達したときに(ドクターブレード12及びワイパーブレード14が離間動作を開始したときに)、ドクターブレード12はグリッパ部28Aに位置し、かつ、ワイパーブレード14はグリッパ部28Aの手前に位置するように、ドクターブレード12、ワイパーブレード14、及びカムフォロア36が配置されている。
また、離間開始タイミングにおいて、ドクターブレード12の位置とグリッパ部28Aの先頭端部との距離dを10mm以上とする態様が好ましく、ワイパーブレード14の位置と最大サイズの媒体の後端位置との距離Lを10mm以上とする態様が好ましい。
すなわち、ドクターブレード12の離間位置を圧胴22の半面の終端位置(グリッパ部28A,28Bの媒体搬送方向における最下流側位置)からグリッパ部28A,28B側に10mm以上離すことで、ドクターブレード12によって液たまり26Aの蓄積分を確実に除去することができる。また、ワイパーブレード14の離間位置を最大サイズの媒体の後端位置から10mm以上離すことで、離間時の液たまり26Aによる媒体後端部の汚れが防止される。
圧胴周面22Aにおけるワイパーブレード14との非接触部分22Dに撥液処理(撥液コート)が施される態様が好ましい。すなわち、液たまり26Aが発生し得るグリッパ部28A,28Bの媒体搬送方向下流側の近傍位置は、ドクターブレード12やワイパーブレード14と比較して、塗布部24によって塗布される液に対する撥液性が高くなる処理(撥液性処理)を施すとよい。ここでいう「撥液性処理」とは、圧胴周面22Aに対する塗布液の接触角が60°以上となる状態を示す。
撥液性処理が施されることで、ドクターブレード12による液たまり26Aの除去性が向上し、圧胴周面22Aからドクターブレード12及びワイパーブレード14への液の移動がよりスムーズになり、ドクターブレード12及びワイパーブレード14に付着した液が離れにくくなるため、液はねや圧胴周面22Aへの再付着が防止される。さらに、余剰処理液の液量が低減化され、クリーナーの負荷が低減化される。
また、ワイパーブレード14の磨耗や、圧胴周面22Aの磨耗キズを防止するために、ワイパーブレード14及びワイパーブレード14によって払拭処理が施される部分をウエット化する態様も好ましい。
図6に示す洗浄装置10’は、液回収部34Bに貯留される液を圧胴周面22Aに塗布する塗布部材40を具備している。塗布部材40は、毛細管力によって液回収部34Bに貯留されている液を吸い上げるスポンジ(多孔質部材)が好適である(図7参照)。図6及び図7に示す態様では、圧胴周面22Aから除去された液を再利用してワイパーブレード14及び圧胴周面22Aをウエット化するので、ウエット化のための専用の液体が不要となる。また、ウエット化に用いる液を補給する必要がなく、廃液量の増加も抑制される。
ワイパーブレード14及び圧胴周面22Aをウエット化する手段の他の態様として、図8に図示する洗浄装置10”のように、給水スプレー42を備える態様が挙げられる。同図に示す洗浄装置10”は、ワイパーブレード14の媒体搬送方向の上流側に、スプレー方式により圧胴周面22Aへウエット化処理を施す給水スプレー42が設けられている。
給水スプレー42は、所定の管路44を介して給水タンク46と接続され、圧力源(ポンプ)48の動作によって圧胴周面22Aへのウエット化処理が実行される。ウエット化処理に用いられる液は、洗浄機能を有する洗浄液でもよいし、純水やイオン電解水でもよい。
図8に示す態様によれば、圧胴周面22Aに付着した液を洗浄液や水に溶解させることで、より高い洗浄効果を得ることができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置を用いた圧胴の洗浄方法について説明する。
(圧胴周面の洗浄方法の説明)
図9(a)〜(d)は、洗浄装置100を用いた圧胴周面22Aの洗浄処理の各工程を模式的に図示した説明図である。なお、図9(a)〜(d)中、図1(a)〜(e)と共通する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図9(a)〜(d)に示す洗浄装置100は、圧胴周面22Aに保持される媒体(不図示)の搬送方向下流側にドクターブレード112が配設されるとともに、媒体搬送方向上流側にワイパーブレード114が配設されている。また、ドクターブレード112及びワイパーブレード114は、独立して別々に圧胴周面22Aから離間できるように構成されている。
図9(a)に図示した第1払拭工程では、ワイパーブレード114を圧胴周面22Aに当接させて、圧胴周面22Aに付着した液が除去される。ワイパーブレード114によって除去された液は、ワイパーブレード114を滑落して不図示の液回収部に回収され、不図示の排出流路を介して装置外部に排出される。
図9(b)に図示した離間工程では、ワイパーブレード114を圧胴周面22Aから離間させるとともに、ワイパーブレード114の後段に設けられたドクターブレード112を圧胴周面22Aに当接させる。
図9(c)は、液たまり26Aの一部がドクターブレード112によって除去された状態である(除去工程)。ドクターブレード112によって液たまりの一部の液が除去され、グリッパ部28Aがドクターブレード112の処理領域を通過すると、図9(d)に図示するように、ワイパーブレード114を圧胴周面22Aに当接させて第2払拭工程(グリッパ部28Aからグリッパ部28Aまでの領域の払拭)が行われる。第2払拭工程では、ドクターブレード112は圧胴周面22Aから離間される。
第2払拭工程において、ワイパーブレード114がグリッパ部28Bに到達すると、ワイパーブレード114を圧胴周面22Aから離間させて、グリッパ29Bとワイパーブレード114との衝突が回避される(図9(b)参照)。なお、2回目の離間工程では、図9(b)に図示した状態とグリッパ部28A,28Bが入れ代わる。
かかる第2実施形態によれば、第1実施形態に示した洗浄装置10と比較して、ワイパーブレード114の前段側にドクターブレード112が配設されないために、ドクターブレード112により過剰に液が除去されることがなく、ワイパーブレード114はドライ拭きにならず、ワイパーブレード114の磨耗や圧胴周面22Aに磨耗キズが付くことが防止される。
また、ワイパーブレード114が圧胴周面22Aから離間したときに液たまり26Aが形成されても、ワイパーブレード114の後段に位置するドクターブレード112によって液たまり26Aの一部の液が除去されるので、液たまり26Aの発生や液の蓄積による媒体や機内の汚れが防止される。さらに、第1実施形態と比較してドクターブレード12の使用頻度が低くなるので、ドクターブレード112の寿命を延ばすことが可能となる。
(洗浄装置の構造の説明)
次に、図9(a)〜(d)に図示した洗浄装置100の構造について詳説する。
図10は、洗浄装置100の概略構成を示す全体構成図であり、圧胴周面22Aにワイパーブレード114を当接させ、ドクターブレード112を離間させた状態(払拭処理時の状態)が図示されている。また、図11は、圧胴周面22Aからワイパーブレード114を離間させ、ドクターブレード112を当接させた状態(液たまりの除去時の状態)が図示されている。
図10及び図11に示すように、ドクターブレード112は略L字形状を有するドクターブレード支持部材132によって支持され、L字形状を構成する垂直部と水平部とのつなぎ部分に回転リンク138Aが設けられている。垂直部の端部はドクターブレード112を支持するとともに引張バネ140によって符号Gを付して図示した方向に付勢される。また、ドクターブレード支持部材132の水平部の端部にはカムフォロア136Aが設けられている。払拭処理時におけるドクターブレード112は、圧胴周面22Aから離間する方向に付勢され、圧胴周面22Aから離間している。
ワイパーブレード114は、ワイパーブレード支持部材134によって支持される。ワイパーブレード支持部材134の媒体搬送方向上流側の端部には回転リンク138Bが設けられるとともに、媒体搬送方向上流側の端部にはカムフォロア136Bが設けられている。ワイパーブレード114及びカムフォロア136Bが圧胴周面22Aに当接されるように、ワイパーブレード支持部材134は圧縮バネ142によって符号Fを付して図示した矢印線の方向に付勢される。
(ワイパーブレードの離間動作の説明)
図11に示すワイパーブレード114の離間動作では、破線で図示したカム部22Bにカムフォロア136Bが乗り上げ、符号Hを付して図示した矢印線の方向にワイパーブレード支持部材134が押し下げられ、ワイパーブレード114を圧胴周面22Aから離間
させる。また、ワイパーブレード支持部材134によってカムフォロア136Aが押し下げられると、ドクターブレード支持部材132は回転リンク138Aを回転軸として符号Iを付して図示した矢印線の方向に回転して、ドクターブレード112は圧胴周面22Aを近接させる。
ワイパーブレード14を離間させる圧胴周面22A上の位置と最大サイズの媒体の後端部との距離を10mm以上とする態様が好ましく、ドクターブレード112を近接させる圧胴周面22Aの位置とワイパーブレード114を離間させる圧胴周面22A上の位置との距離を5mm以上とする態様がこのましい。さらに、ドクターブレード112を近接状態から離間させる圧胴周面22A上の位置と、圧胴22の後端(グリッパ部28A,28Bの先端部位置)との距離を10mm以上とする態様が好ましい。
(変形例)
図12及び図13は、第2実施形態の変形例に係る洗浄装置100’の全体構成図である。図12はワイパーブレード114による圧胴周面22Aの払拭処理中の状態(図10に対応する状態)であり、図13はグリッパ部28A(28B)を回避するために、ワイパーブレード114が圧胴周面22Aから離間している状態(図11に対応する状態)である。
図12に示すように、ドクターブレード112はフレーム135の後段側端部(媒体搬送方向の下流側端部)に支持され、ワイパーブレード114はフレーム135の前段側端部(媒体搬送方向の上流側端部)に支持される。フレーム135の略中央部にはカムフォロア136が配設されるとともに、回転リンク38が設けられる。フレーム135の後段側端部は引張バネ142’によって符号Kを付して図示した矢印線の方向に力が作用するので、フレーム135は回転リンク138を回転軸として回転し、符号Jを付して図示した方向に付勢され、ワイパーブレード114は圧胴周面22Aに接触する。
グリッパ部28A(28B)がワイパーブレード114の払拭処理位置に到達すると、カムフォロア136がカム部22Bに乗り上げ、フレーム135の前段側端部は符号Lを付して図示した方向に移動し、ワイパーブレード114は圧胴周面22Aから離間する。また、フレーム135の後段側端部は符号Mを付して図示した方向に移動し、ドクターブレード112は圧胴周面22Aの近接位置(払拭処理位置)に配置される。
かかる変形例によれば、ドクターブレード112を支持するドクターブレード支持部材132とワイパーブレード114を支持するワイパーブレード支持部材134とを別々に設ける構造に比べて、ドクターブレード112及びワイパーブレード114を支持する構造や、圧胴周面22Aに対する移動構造(圧胴周面22Aからの離間構造)を簡易化することが可能である。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る洗浄装置について説明する。
(圧胴の周面の洗浄方法の説明)
図14(a)〜(d)は、洗浄装置200を用いた圧胴周面22Aの洗浄処理の各工程を模式的に図示した説明図である。なお、第1及び第2実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本例に示す洗浄装置200は、圧胴周面22Aを払拭するワイパーブレード214の後段(媒体搬送方向の下流側)に、ワイパーブレード214によって除去されなかった拭き残しの液を吸収除去するための吸収ローラ215が設けられている。また、ワイパーブレード214と吸収ローラ215とは独立に圧胴周面22Aに対して離間及び当接が可能に構成されている。
図14(a)は、ワイパーブレード214による圧胴周面22Aの払拭処理中の状態であり、ワイパーブレード214を圧胴周面22Aに当接させて、圧胴周面22Aの液体を除去している。
図14(b)は、圧胴周面22Aからワイパーブレード214を離間させて、グリッパ部28Aとの接触を回避している状態である。圧胴周面22Aからワイパーブレード214を離間させるタイミングに合わせて吸収ローラ215を圧胴周面22Aに当接させ、ワイパーブレード214が圧胴周面22Aから離間している間に生じる液たまり26Aは、吸収ローラ215によって吸収除去される。図14(c)は、吸収ローラ215によって液たまり26Aが除去された状態が図示されている。
グリッパ部28Aがワイパーブレード214の払拭処理位置を通過すると、ワイパーブレード214を圧胴周面22Aに当接させるとともに、吸収ローラ215を圧胴周面22Aから離間させる。
吸収ローラ215は、圧胴周面22Aとの接触部(表面)に不図示の吸収体が設けられ、圧胴22の回転に応じて従動回転するように構成されている。また、不図示の絞りローラが併設されており、吸収体に吸収された液は絞りローラによって直ちにしぼり取られ、不図示の液回収部を介して装置外部へ排出される。絞りローラに代わり吸収ローラを中空構造として吸収部と中空部とを連通させて、該中空部に負圧を供給することで液を回収する構造としてもよい。
第3実施形態に係る洗浄装置200によれば、先に説明した第1、第2実施形態に適用されたドクターブレード12,112に代わり吸収ローラ215用いることで、ワイパーブレード214が圧胴周面22Aから離間している間に生じる液たまりが確実に除去され、かつ、液たまり26Aを除去する際の周辺への液の飛散が低減化される。
液たまり26Aを除去するときのみに吸収ローラ215を圧胴周面22Aへ当接させることで、吸収ローラ215の寿命を延ばすことができ、さらに、吸収ローラ215から圧胴周面22Aへの液の再転写が防止される。
(洗浄装置の構造の説明)
次に、図14(a)〜(d)に示した洗浄装置200の構造について詳説する。
図15は、洗浄装置200の概略構成を示す全体構成図であり、図12におけるドクターブレード112を吸収ローラ215に置き換えた構成を有している。図15に図示した洗浄装置200は、図12におけるフレーム135、カムフォロア136、回転リンク138、引張バネ142’のそれぞれがフレーム235、カムフォロア236、回転リンク238、引張バネ242に対応し、図12において符号J,Kを付して図示した方向が図15において符号N,Oを付して図示した方向に対応している。
(ワイパーブレードの離間動作の説明)
図15に示す洗浄装置200は、圧胴周面22Aにカムフォロア236が接触している状態では、ワイパーブレード214は圧胴周面22Aに当接し、吸収ローラ215は圧胴周面22Aから離間し、ワイパーブレード214による払拭処理が行われる。
図16は、離間工程(図14(b)参照)における洗浄装置200が図示されている。
同図に示すように、グリッパ部28A,28Bに対応して圧胴22に設けられるカム部22Bにカムフォロア236が乗り上げると、ワイパーブレード214は符号Pを付して図示した方向へ移動して圧胴周面22Aから離間するとともに、吸収ローラ215は符号Qを付して図示した方向へ移動して圧胴周面22Aに当接する。グリッパ部28A(28B)がワイパーブレード214の払拭処理位置を通過すると、カムフォロア236はカム部22Bに乗り上げた状態から圧胴周面22Aに接触する状態に戻り、ワイパーブレード214を圧胴周面22Aに当接させる。
吸収ローラ215に代わり、吸収体から成るブロック体を圧胴周面22Aに押し付けて液たまり26Aを除去する態様も可能である。但し、吸収体の磨耗による劣化の観点から、ローラ形状とする態様が好ましい。
図14〜図16には、媒体搬送方向の上流側にワイパーブレード214が配設され、下流側に吸収ローラ215が配設される態様を例示したが、ワイパーブレード214と吸収ローラ215とを独立に移動(離間)させる構成では、ワイパーブレード214と吸収ローラ215との配設位置を入れ換えた態様も可能である。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る圧胴の洗浄方法について説明する。
(圧胴の周面の洗浄方法の説明)
図17(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る圧胴の洗浄方法の各工程を模式的に図示した説明図である。なお、第1〜3実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本例に示す塗布装置320は、グリッパ部28A,28Bのそれぞれに洗浄装置300のワイパーブレード314によって払拭された余剰液が流し込まれる液受部322が設けられている。
図17(a)は、ワイパーブレード314による圧胴周面22Aの払拭処理中の状態であり、ワイパーブレード314を圧胴周面22Aに当接させて、圧胴周面22Aの液体を除去している。
図17(b)は、圧胴周面22Aからワイパーブレード214を離間させて、グリッパ部28Aとの接触を回避している状態である。グリッパ部28Aの媒体搬送方向下流側端部には液受部322が設けられ、ワイパーブレード314によって圧胴周面22Aから拭き取られた液は液受部322へ流し込まれる。
液受部322は、下向きになった状態でも液が落ちないように構成されている。液受部322の内部構造の一例として内部に吸収体が設けられる態様が挙げられる。この吸収体は定期的に交換される。
ワイパーブレード314を圧胴周面22Aから離間させるタイミングは、グリッパ部28Aの媒体搬送方向下流側端部がワイパーブレード314の払拭処理位置を通過した直後から、液受部322の媒体搬送方向上流側端部がワイパーブレード314の払拭処理位置に到達する直前までであればよい。すなわち、液受部322がワイパーブレード314の払拭処理位置に位置する間に、ワイパーブレード314を圧胴周面22Aから離間させる。
図17(c)は、液受部322の中間位置がワイパーブレード314の払拭処理位置に到達したタイミングでワイパーブレード314を圧胴周面22Aから離間させる態様が図示されている。
グリッパ部28Aがワイパーブレード314の払拭処理位置を通過すると、ワイパーブレード314を圧胴周面22Aに当接させてグリッパ部28Aからグリッパ部28Bまでの間の払拭処理(第2払拭工程)が実行される(図17(d))。
第4実施形態に係る圧胴の洗浄方法によれば、グリッパ部28A,28Bに設けられた液受部322がワイパーブレード314の払拭処理位置に到達するまで、ワイパーブレード314を圧胴周面22Aから離間させないように構成し、ワイパーブレード314によって圧胴周面22Aから拭き取られた液を液受部322へ流し込むように構成することで、ワイパーブレード314が圧胴周面22Aから離間している間に圧胴周面22Aに液たまりが発生しない。また、上述した第1〜3実施形態と比較して、洗浄部材がワイパーブレード314のみであり、構造が簡素化されるとともにメンテナンスが軽減化される。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、上述した洗浄装置10(10’,10”,100,100’,200,300)及び塗布装置20,320を記録媒体にカラー画像を形成するインクジェット記録装置へ適用した構成例について説明する。以下に説明するインクジェット記録装置は、記録媒体に凝集処理剤を塗布する処理液塗布部へ上述した塗布装置20,320を適用し、塗布処理部の圧胴周面の洗浄装置へ洗浄装置10(10’,10”,100,100’,200,300)を適用したものである。
(インクジェット記録装置の全体構成)
図18は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置410は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体414の記録面に画像を形成する二液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置410は、主として、給紙部420、処理液塗布部430、描画部440、乾燥処理部450、定着処理部460、及び排出部470を備えて構成される。処理液塗布部430、描画部440、乾燥処理部450、定着処理部460の前段に搬送される記録媒体414の受け渡しを行う手段として渡し胴432,442,452,462が設けられるとともに、処理液塗布部430、描画部440、乾燥処理部450、定着処理部460のそれぞれに記録媒体414を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴434,444,454,464が設けられている。
渡し胴432〜462及び圧胴434〜464は、外周面の所定位置に記録媒体414の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパ480A,480Bが設けられている。グリッパ480Aとグリッパ480Bにおける記録媒体414の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパとの間で記録媒体414の受け渡しを行う構造を同一であり、かつ、グリッパ480Aとグリッパ480Bは、圧胴434の外周面の圧胴434の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパ480A,480Bにより記録媒体414の先端部を狭持した状態で渡し胴432〜462及び圧胴434〜464を所定の方向に回転させると、渡し胴432〜462及び圧胴434〜464の外周面に沿って記録媒体414が回転搬送される。
なお、図18中、圧胴434に備えられるグリッパ480A,480Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパの符号は省略する。
給紙部420に収容されている記録媒体(枚葉紙)414が処理液塗布部430に給紙されると、圧胴434の外周面に保持された記録媒体414の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体414の記録面」とは、圧胴434〜464の保持された状態における外側面であり、圧胴434〜464に保持される面と反対面である。
その後、凝集処理液が付与された記録媒体414は描画部440に送出され、描画部440において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体414は乾燥処理部450に送られ、乾燥処理部450において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部460に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体414上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体414の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体414の記録面に定着した後に、排出部470から装置外部に搬送される。
以下、インクジェット記録装置410の各部(給紙部420、処理液塗布部430、描画部440、乾燥処理部450、定着処理部460、排出部470)について詳細に説明する。
(給紙部)
給紙部420は、給紙トレイ422と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体414は給紙トレイ422から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ422から送り出された記録媒体414は、渡し胴(給紙胴)432のグリッパ(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。
(処理液塗布部)
処理液塗布部430は、給紙胴432から受け渡された記録媒体414を外周面に保持して記録媒体414を所定の搬送方向へ搬送する圧胴(処理液ドラム)434と、処理液ドラム434の外周面に保持された記録媒体414の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置436と、含んで構成されている。処理液ドラム434を図18における反時計回りに回転させると、記録媒体414は処理液ドラム434の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
図18に示す処理液塗布装置436は、処理液ドラム434の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布装置436の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体414上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液ドラム434の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、該塗布ローラとグリッパ480A,480Bとの衝突を回避可能に構成する態様が好ましい。
処理液塗布部430により記録媒体414に付与される処理液は、描画部440で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体414上で処
理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
処理液塗布装置436は、記録媒体414に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体414上の処理液の膜厚は、描画部440から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
本発明に係る塗布装置(液供給装置)は、処理液塗布部430(処理液塗布装置436)に適用される。
(描画部)
描画部440は、記録媒体414を保持して搬送する圧胴(描画ドラム)444と、記録媒体414を描画ドラム444に密着させるための用紙抑えローラ446と、記録媒体414にインクを付与するインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yを備えている。なお、描画ドラム444の基本構造は、先に説明した処理液ドラム434と共通しているので、ここでの説明は省略する。
用紙抑えローラ446は、描画ドラム444の外周面に記録媒体414を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム444の外周面に対向し、渡し胴442と描画ドラム444との記録媒体414の受渡位置よりも記録媒体414の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yよりも記録媒体414の搬送方向上流側に配置される。
渡し胴442から描画ドラム444に受け渡された記録媒体414は、グリッパ(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙抑えローラ446によって押圧され、描画ドラム444の外周面に密着する。このようにして、記録媒体414を描画ドラム444の外周面に密着させた後に、描画ドラム444の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム444の回転方向(図18における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yのインク吐出面(ノズル面、図18中不図示、図19に符号500Aを付して図示する。)が描画ドラム444に保持された記録媒体414の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体414の記録面と対向するインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図19に符号402を付して図示する。)が形成される面である。
また、図18に示すインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、描画ドラム444の外周面に保持された記録媒体414の記録面とインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、記録媒体414における画像形成領域の最大幅(記録媒体414の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体414の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yのノズル面(液体吐出面、図19に符号500Aを付して図示する。)には、記録媒体414の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
記録媒体414がインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yから記録媒体414の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム444の外周面に保持された記録媒体414の記録面に向かって吐出されると、記録媒体414上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体414上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色ムラ)が防止される。
また、描画部440の描画ドラム444は、処理液塗布部430の処理液ドラム434に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥処理部)
乾燥処理部450は、画像形成後の記録媒体414を保持して搬送する圧胴(乾燥ドラム)454と、該記録媒体414上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す溶媒乾燥装置456を備えている。なお、乾燥ドラム454の基本構造は、先に説明した処理液ドラム434及び描画ドラム444と共通しているので、ここでの説明は省略する。
溶媒乾燥装置456は、乾燥ドラム454の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体414に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部440により記録媒体414にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体414上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
溶媒乾燥装置456は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体414上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体414上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体414に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体414上に残留する水分量、記録媒体414の種類、及び記録媒体414の搬送速度(干渉処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
溶媒乾燥装置456による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部450の乾燥ドラム454は、描画部440の描画ドラム444に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
記録媒体414のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥ドラム454の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥ドラム454の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
また、乾燥ドラム454の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体414の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥ドラム454の外周面に記録媒体414を密着させる手段を具備すると、さらに効果的である。記録媒体414を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
なお、乾燥ドラム454の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム454の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
このように構成された乾燥ドラム454の外周面に、記録媒体414の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体414の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体414のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
(定着処理部)
定着処理部460は、記録媒体414を保持して搬送する圧胴(定着ドラム)464と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体414に加熱処理を施すヒータ466と、該記録媒体414を記録面側から押圧する定着ローラ468と、を備えて構成される。なお、定着ドラム464の基本構造は処理液ドラム434、描画ドラム444、及び乾燥ドラム454と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ466及び定着ローラ468は、定着ドラム464の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム464の回転方向(図18において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部460では、記録媒体414の記録面に対してヒータ466による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ468による定着処理が施される。ヒータ466の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
定着ローラ468は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体414を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ468は、定着ドラム464に対して圧接するように配置されており、定着ドラム464との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体414は、定着ローラ468と定着ドラム464との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
定着ローラ468の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体414を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体414の記録面に加圧を施すと、記録媒体414の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ468を複数段設けた構成も好ましい。
また、定着ローラ468の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ468の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体414の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体414の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
図18に示すインクジェット記録装置410は、定着処理部460の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ482が設けられている。インラインセンサ482は、記録媒体414に形成された画像(又は記録媒体414の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
本例に示すインクジェット記録装置410は、インラインセンサ482の読取結果に基づいてインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの吐出異常の有無が判断される。また、インラインセンサ482は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部450の処理温度や定着処理部460の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
(排出部)
図18に示すように、定着処理部460に続いて排出部470が設けられている。排出部470は、張架ローラ472A,472Bに巻きかけられた無端状の搬送ベルト474と、画像形成後の記録媒体414が収容される排出トレイ476と、を備えて構成されている。
定着処理部460から送り出された定着処理後の記録媒体414は、搬送ベルト474によって搬送され、排出トレイ476に排出される。
(インクジェットヘッドの構造)
次に、描画部440に具備されるインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの構造について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号400によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
図19はヘッド500の構造例を示す平面透視図である。以降、本明細書において、先に説明した図と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
図19に示すように、ヘッド500のノズル面には、記録媒体414の全幅Wmに対応する長さにわたって複数のノズル502が並べられた構造を有するフルライン型ヘッドである。なお、記録媒体414の搬送方向Sは副走査方向と呼ばれることがあり、記録媒体414の搬送方向Sと直交する方向Mは主走査方向と呼ばれることがある。
記録媒体414上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド500におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド500は、図19に示すよ
うに、インク吐出口であるノズル502と、各ノズル502と連通する圧力室504と、不図示の共通流路と各圧力室504とを連通させる供給口506等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)508をマトリクス配置した構造を有し、これにより、ヘッド500の長手方向である主走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(図20に符号Pnを付して図示する投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
ノズル502と連通する圧力室504は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル502が設けられ、他方に供給口506が設けられている。なお、圧力室504の形状は本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図20は、図19に図示したヘッド500の一部を拡大した拡大図である。同図に示すように、ノズル502及び圧力室504等からなるインク室ユニット508を、主走査方向(符号Mを付して図示)に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θ(0°<θ<90°)を有する斜めの列方向(符号S’を付して図示)に沿って一定の配列パターンでマトリクス配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θをなす方向に沿ってインク室ユニット508を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルの投影ノズルピッチPnはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル502が一定のピッチPnで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列は、1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度配置を実現することが可能になる。
なお、記録媒体414の全幅Wmに対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図19の構成に代えて、図21に示すように、複数のノズル502が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール500’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体414の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
また、図22に示すように、記録媒体414の全幅に満たない短尺のヘッドモジュール500”を一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。同図において、列方向(図20参照)に沿って並べられたノズル502は斜めの実線で図示されている。
図23は、図19に示すヘッド500(インク室ユニット508)の立体構造を示す断面図(図19中A−A線に沿う断面図)である。
ノズル502と連通する圧力室504は、供給口506を介して共通流路510と連通している。共通流路510はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、該インクタンクから供給されるインクは共通流路510を介して各圧力室504に供給される。
圧力室504の上面を構成する振動板512には、個別電極514と共通電極516とを具備し、個別電極514と共通電極516との間に圧電体部518がはさまれた構造を有する圧電素子520が接合されている。また、図23に示すヘッド500は、圧力室504、供給口506、及び共通流路510などの流路構造が形成された構造体に、ノズル502の開口部522が形成されるノズル板524を接合した構造を有している。
個別電極514と共通電極516との間に所定の駆動電圧を印加することによって圧電素子520及び振動板512が変形し、これに伴い圧力室504の容積が変化する。圧力室504の容積変化により圧力室504内部のインクに圧力変化が生じ、圧力室504の容積変化に対応する体積のインクがノズル502から吐出される。インクが吐出された後は、圧電素子520及び振動板512が元の状態に戻る際に、共通流路510から供給口506を通って新しいインクが圧力室504に充填される。
本例では、ヘッド500に設けられたノズル502から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子520を適用したが、圧力室504内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
(制御系の説明)
図24は、インクジェット記録装置410の制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置410は、通信インターフェース540、システム制御部542、搬送制御部544、画像処理部546、ヘッド駆動部548を備えるとともに、記憶部(メモリ)550、一次記憶部552を備えている。
通信インターフェース540は、ホストコンピュータ554から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース540は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース540は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システム制御部542は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置410の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、記憶部550及び一次記憶部552のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部542は、通信インターフェース540、搬送制御部544等の各部を制御し、ホストコンピュータ554との間の通信制御、記憶部550及び一次記憶部552の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
ホストコンピュータ554から送出された画像データは通信インターフェース540を介してインクジェット記録装置410に取り込まれ、画像処理部546によって所定の画像処理が施される。
画像処理部546は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをヘッド駆動部548に供給する制御部である。画像処理部546において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッド駆動部548を介してヘッド500の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図24に示すヘッド駆動部548には、ヘッド500の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
また、搬送制御部544は、画像処理部546により生成された印字制御用の信号に基づいて記録媒体414(図18参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図24における搬送駆動部356は、図18の圧胴434〜464を回転させるモータや、渡し胴432〜462を回転させるモータ、給紙部420における記録媒体414の送出機構のモータ、排出部470の張架ローラ472A(472B)を駆動するモータなどが含まれ、搬送制御部544は上記のモータのドライバーとして機能している。
記憶部550は、システム制御部542のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部542を通じてデータの読み書きが行われる。記憶部550は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
一時記憶部(一次記憶メモリ)552は、通信インターフェース540を介して入力された画像データを一旦格納する一次記憶手段としての機能や、記憶部550に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部546の作業領域)としての機能を有している。一時記憶部552には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
さらに、このインクジェット記録装置410は、処理液付与制御部560、乾燥処理制御部562、定着処理制御部564、及び洗浄処理制御部566を備えており、システム制御部542からの指示にしたがって、それぞれ、処理液塗布部430、乾燥処理部450、定着処理部460、及び洗浄処理部568の各部の動作を制御する。
処理液付与制御部560は、画像処理部546から得られた印字データに基づいて、処理液付与のタイミングの制御を制御するとともに、処理液の付与量を制御する。また、乾燥処理制御部562は、乾燥処理のタイミングを制御するとともに、処理温度、送風量等を制御し、定着処理制御部564は、定着処理部460のヒータ466の温度を制御するとともに、定着ローラ468の押圧を制御する。
洗浄処理制御部は、システム制御部542の指令信号に応じて洗浄処理部568の動作を制御する。洗浄処理部568は、上述した洗浄装置10(10’,10”,100,100’,200,300)が適用される。
検出部570は、図18に示したインラインセンサ482と、インラインセンサ482から出力される読取信号にノズル除去や増幅、波形整形などの所定の信号処理を施す信号処理部を含む処理ブロックである。システム制御部542は、検出部570により得られた検出信号に基づいて、ヘッド500の吐出異常の有無を判断する。
なお、洗浄装置10(10’,10”,100,100’,200,300)は、処理液塗布部430の圧胴434以外の圧胴444,454,464の洗浄装置としても適用することが可能である。また、洗浄対象の圧胴に付着する液や圧胴の構造に応じて洗浄装置10,10’,100,100’,200,300を適宜組み合わせることも可能である。さらに、インクジェット記録装置410に設けられる圧胴434〜464に共通の洗浄装置を備え、移動機構によって各部間を移動させるように構成することも可能である。
上述した他の装置構成例では、記録媒体にカラーインクを吐出してカラー画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、マスクパターンの形成やプリント配線基板の配線描画など基板に樹脂液等により所定のパターン形状を形成する他の画像形成装置にも、本発明に係る塗布装置(液供給装置)を適用可能である。
以上、本発明に係る塗布装置(液供給装置)を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):液が塗布される媒体を保持して所定の方向へ搬送する圧胴の軸方向に沿って配設されるとともに、前記圧胴の周面との接触位置よりも前記媒体搬送方向上流側と、前記圧胴の周面を払拭する面とのなす角が90度未満となるように前記接触位置における前記周面の法線方向に対して傾けられて配設され、前記周面に付着した液を払拭除去するワイパーブレードと、前記媒体の端部を挟持するために前記圧胴に設けられた挟持部材が前記ワイパーブレードによる払拭処理位置を通過する際に、前記ワイパーブレードを前記圧胴から離間させるように前記ワイパーブレードを移動させる移動手段と、前記ワイパーブレードが前記周面から離間する直前に前記ワイパーブレードにより払拭され、前記ワイパーブレードを滑落しきれなかった液によって形成される液たまりの少なくとも一部の液を除去する液たまり除去手段と、を備えたことを特徴とする洗浄装置。
本発明によれば、圧胴に設けられる媒体の端部を挟持する挟持部材がワイパーブレードによる払拭処理領域を通過する際にワイパーブレードを圧胴周面から離間させることに起因して圧胴周面に形成される液たまりが除去され、液たまりへの液の蓄積が防止される。
液たまり除去手段は、液たまりへの液の蓄積を抑制し、液たまりから圧胴周面への液の防止できればよく、液たまりに含まれるが移動しない程度に液たまりを除去できればよい。
(発明2):発明1に記載の洗浄装置において、前記液たまり除去手段は、前記圧胴の軸方向に沿って配設されるとともに、前記周面の媒体搬送方向上流側と、前記圧胴の液を除去する面とのなす角が90度を超えるように前記周面の法線方向に対して傾けられて配設され、前記周面に対して接触させた状態又は前記周面に近接させた非接触の状態で前記液たまりの少なくとも一部の液を除去するドクターブレードを含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、液たまりの少なくとも一部の液が除去されることで、液たまりへの液の蓄積による液だれが防止される。
周面とドクターブレードとを接触させる態様が好ましい。周面とドクターブレードとの間には所定範囲内のクリアランスが許容される。例えば、周面とドクターブレードの最短距離は0.05mm以上0.2mm以下とする態様が挙げられる。
(発明3):発明2に記載の洗浄装置において、前記ドクターブレードは、前記ワイパーブレードの前記媒体搬送方向上流側に設けられ、前記移動手段は、前記ワイパーブレードと前記ドクターブレードとを一体に前記周面から離間させる構造を有することを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードの媒体搬送方向上流側にドクターブレードが配設されることで、ドクターブレードの先端部を通過した液がワイパーブレードによる払拭処理位置へ到達するので、ワイパーブレードの磨耗が抑制されるとともに圧胴周面に磨耗キズが付くことが防止される。この効果は、特に低粘度の液体により形成された薄層の液体を除去する場合において有効である。
かかる態様の一例として、ワイパーブレードを支持するワイパーブレード支持部材、及びドクターブレードを支持するドクターブレード支持部材が共通のフレームに固定され、該フレームを移動機構によって移動させる態様が挙げられる。
該移動機構として、圧胴周面及び圧胴周面に設けられたカム部の移動に従動するカムフォロアをフレームに配設し、該カムフォロアが圧胴周面を従動するときには、所定の付勢力によってフレーム全体が圧胴周面の方へ付勢され、該カムフォロアがカム部を従動するときには、フレーム全体が圧胴周面から離れる構造が挙げられる。
(発明4):発明3に記載の洗浄装置において、前記移動手段は、前記ドクターブレードによる払拭処理位置に前記挟持部材が配設される前記周面に形成される凹部が到達し、かつ、前記ワイパーブレードによる払拭処理位置に前記凹部が到達する前に前記ワイパーブレード及び前記ドクターブレードを前記周面から離間させることを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードと挟持部材との衝突が回避され、ワイパーブレードや挟持部材の破損が防止される。
(発明5):発明4に記載の洗浄装置において、前記移動手段は、前記凹部が前記ワイパーブレードによる払拭処理位置を通過した後に前記ワイパーブレードを前記周面に接触させるとともに、前記ドクターブレードを前記周面に接触又は近接させるように前記ワイパーブレード及び前記ドクターブレードを移動させることを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードによる払拭処理位置及びドクターブレードによる払拭処理位置を通過した液たまりの少なくとも一部の液は、圧胴が略一周回転した後のドクターブレードによる払拭によって除去され、液たまりへの液の蓄積が確実に防止される。
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載の洗浄装置において、前記周面は、最大サイズの媒体の後端部よりも媒体搬送方向上流側に撥液処理が施されることを特徴とする。
かかる態様によれば、液たまりが形成される位置に撥液処理を施すことで、液たまりの除去が容易になる。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の洗浄装置において、前記ワイパーブレードの前記媒体搬送方向上流側に前記周面を湿潤化させる湿潤化手段を備えたことを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードによる払拭処理時にワイパーブレードと周面との間に液が介在し、ウエットワイピングとすることができる。
湿潤化手段の一例として、ワイパーブレードによって除去された液が収容される液溜部から液を吸い上げて周面に供給する態様が挙げられる。また、スプレー方式などによって洗浄液を周面に付与してもよい。
(発明8):発明2に記載の洗浄装置において、前記ドクターブレードは、前記ワイパーブレードの前記媒体搬送方向下流側に設けられ、前記移動手段は、前記ワイパーブレードと前記ドクターブレードを別々に前記周面から離間させる構造を有するとともに、前記ワイパーブレードによる払拭処理位置に前記挟持部材が配設される前記周面に形成される凹部が到達したタイミングで前記ワイパーブレードを前記周面から離間させ、かつ、前記ドクターブレードを前記周面に接触又は近接させて前記ドクターブレードによって前記液たまりの少なくとも一部の液を除去することを特徴とする。
かかる態様によれば、液たまりが形成された直後にドクターブレードによる払拭処理が施されるので、液たまりへの液の蓄積が確実に防止される。また、ドクターブレードは液たまりの除去時のみに使用されるので、ドクターブレードの長寿命化が見込まれる。
(発明9):発明2に記載の洗浄装置において、前記ドクターブレードは、前記ワイパーブレードの前記媒体搬送方向下流側に設けられ、前記移動手段は、前記ワイパーブレードと前記ドクターブレードを一体に移動させ、かつ、前記ワイパーブレードによる払拭処理位置に前記挟持部材が配設される前記周面に形成される凹部が到達したタイミングで前記ワイパーブレードを前記周面から離間させるとともに、前記ドクターブレードを前記周面に接触又は近接させる構造を有することを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードを移動させる手段とドクターブレードを移動させる手段とを別々に備える態様に比べて移動手段の構成や、該移動手段の制御が簡素化される。
(発明10):発明1に記載の洗浄装置において、前記液たまり除去手段は、前記ワイパーブレードの前記媒体搬送方向下流側に設けられ、前記周面に接触して前記液たまりの液を吸収除去する吸収手段を含むことを特徴とする。
吸収手段の一例として、圧胴の回転に応じて周面を従動回転するローラ形状とする態様が挙げられる。
(発明11):発明10に記載の洗浄装置において、前記移動手段は、前記ワイパーブレードと前記吸収手段を一体に移動させ、かつ、前記ワイパーブレードによる払拭処理位置に前記挟持部材が配設される前記周面に形成される凹部が到達したタイミングで前記ワイパーブレードを前記周面から離間させるとともに、前記吸収手段を前記周面に接触させる構造を有することを特徴とする。
かかる態様によれば、ブレード等による払拭に比べて周囲への液の飛散が抑制される。また、吸収手段を液たまりの除去のみに使用することで、吸収手段の長寿命化が見込まれる。
(発明12):媒体を保持して所定の方向へ搬送する圧胴と、前記媒体に液を塗布する塗布部と、を具備し、前記圧胴の軸方向に沿って配設されるとともに、前記圧胴の周面との接触位置よりも前記媒体搬送方向上流側と、前記圧胴の周面を払拭する面とのなす角が90度未満となるように前記周面の法線方向に対して傾けられて配設され、前記周面に付着した液を払拭除去するワイパーブレードと、前記媒体の端部を挟持するために前記圧胴に設けられた挟持部材が前記ワイパーブレードによる払拭処理位置を通過する際に、前記ワイパーブレードを前記圧胴から離間させるように前記ワイパーブレードを移動させる移動手段と、前記ワイパーブレードが前記周面から離間する直前に前記ワイパーブレードにより払拭され、前記ワイパーブレードを滑落しきれなかった液によって形成される液たまりの少なくとも一部の液を除去する液たまり除去手段と、を含む洗浄部を備えたことを特徴とする塗布装置。
(発明13):発明12に記載の塗布装置において、前記液たまり除去手段は、前記挟持部材が配設される前記周面に形成される凹部の内部に設けられる液受手段を含み、前記ワイパーブレードの払拭処理位置に前記液受部が到達したタイミングで前記ワイパーブレードを前記周面から離間させるように前記移動手段を制御する移動制御手段を備えたことを特徴とする。
かかる態様によれば、ワイパーブレードを圧胴周面から離間させている間液たまりが形成されることが防止される。また、簡単な構造で圧胴周面に付着した液を確実に除去することができ、さらに、メンテナンス作業が容易になる。
かかる態様における液受部は、内部に液を吸収する吸収部材が設けられる態様が好ましい。
(発明14):圧胴の周面に保持されて所定の方向へ搬送される媒体に処理液を塗布する塗布部と、前記処理液が塗布された媒体に画像を形成する画像形成部と、を具備し、前記圧胴の軸方向に沿って配設されるとともに、前記圧胴の周面との接触位置よりも前記媒体搬送方向上流側と、前記圧胴の周面を払拭する面とのなす角が90度未満となるように前記周面の法線方向に対して傾けられて配設され、前記周面に付着した液を払拭除去するワイパーブレードと、前記媒体の端部を挟持するために前記圧胴に設けられた挟持部材が前記ワイパーブレードによる払拭処理位置を通過する際に、前記ワイパーブレードを前記圧胴から離間させるように前記ワイパーブレードを移動させる移動手段と、前記ワイパーブレードが前記周面から離間する直前に前記ワイパーブレードにより払拭され、前記ワイパーブレードを滑落しきれなかった液によって形成される液たまりの少なくとも一部の液を除去する液たまり除去手段と、を含む洗浄部を備えたことを特徴とする画像形成装置。
本発明に係る画像形成装置には、インクジェット方式により記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置が含まれる。また、本発明における処理液は、インクに含有する色材を凝集又は不溶化させる機能を有する酸性液が含まれる。