以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態〕
<装置構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、中間転写ベルト12の画像領域(図1中不図示、図10に符号100で図示)に記録画像の鏡像となる1次画像を形成した後に、当該1次画像を記録媒体14に転写記録する転写記録方式を適用した画像形成装置である。
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、1次画像が形成される中間転写ベルト12と、1次画像を形成する前に中間転写ベルト12に付着するインク等の付着物を除去するクリーニングブレード16A及びクリーニング処理時の中間転写ベルト12にクリーニング液16Bを供給するクリーニング液供給部16Cを含むクリーニング処理部16と、クリーニング処理部16の中間転写ベルト搬送方向(図1に符号Aで図示)下流側に設けられ、中間転写ベルト12の画像領域にインクと反応してインクを増粘又は凝集(不溶化)させる処理液を塗布する処理液塗布部18と、処理液塗布部18の中間転写ベルト搬送方向の下流側に設けられ、中間転写ベルト12に塗布された処理液を乾燥させる乾燥処理部20と、乾燥処理部20の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられ、画像データに応じて打滴されるY(イエロー),M(マゼンダ),C(シアン),K(黒)の各色インクに対応するインクジェットヘッド22Y,22M,22C,22Kを含む印字部22と、印字部22の中間転写ベルト搬送方向下流側に設けられ、ヒータ24Aが内蔵される対向ローラ(加熱ローラ)24B及び転写ローラ24Cの間に中間転写ベルト12と記録媒体14を挟み込んだ状態でこれらを押圧するとともに、対向ローラ24Bに内蔵されたヒータ24Aによって中間転写ベルト12(1次画像)及び記録媒体14を所定の転写温度に加熱して、1次画像を記録媒体14に転写記録する転写記録部24と、を備えて構成されている。
また、図示は省略するが、印字部22と転写記録部24との間には、1次画像が形成された後に中間転写ベルト12上の溶媒を除去する溶媒除去部と、溶媒除去後の中間転写ベルト12(1次画像)を予備加熱する予備加熱部と、を備え、更に、転写記録部24の後段に転写記録後の記録媒体14と中間転写ベルト12を冷却する冷却部を備え、冷却部の後段側に転写記録後の記録媒体14と中間転写ベルト12を剥離する剥離部を備えるとともに、剥離部の後段側に記録媒体14に転写記録された画像を定着させる定着部と、画像定着処理後の記録媒体14をインクジェット記録装置10の外部に排出する排出部と、を備えている。
更にまた、記録媒体14を収容する供給トレイ(不図示)と、記録媒体14を供給トレイから転写記録部24に供給する給紙部と(記録媒体14の搬送方向を符号Bで図示)、を備えている。なお、長尺の記録媒体を所定のサイズにカットして使用する場合には、記録媒体を所定のサイズにカットするカッターを備えている。
クリーニング処理部16は、印字前(転写記録後)の中間転写ベルト12上に残留するインク液滴や処理液などを払拭除去するクリーニングブレード16Aと、クリーニング処理時の中間転写ベルト12にクリーニング液16Bを供給するクリーニング液供給部16Cと、クリーニングブレード16Aによって除去されたインク等の付着物を回収する回収部16Dと、回収部16Dと回収チューブ16Eを介して連通される回収タンク16Fと、を含んで構成されている。
図1に示すように、クリーニング処理部16の処理領域において、中間転写ベルト12の画像面が斜め下方向を向いており、転写記録後の中間転写ベルト12は斜め上方向に搬送される。なお、本発明は、水平方向に搬送される中間転写ベルト12の下側を向いた面のクリーニングにも適用可能である。
クリーニングブレード16Aは、中間転写ベルト12の下側から中間転写ベルト12に当接され、中間転写ベルト12の全幅(中間転写ベルト搬送方向Aと直交する方向の長さ)を超える長さを有し、中間転写ベルト12にクリーニングブレード16Aを当接させながら中間転写ベルト12を一方向に移動させることで、中間転写ベルト12の全幅にわたって一度にクリーニングすることが可能である。
図1に示すクリーニング液供給部16Cは、中間転写ベルト12の下側からクリーニング液16Bをスプレー状に噴射させる噴射方式が適用される。また、図示は省略するが、クリーニング液供給部16Cは中間転写ベルト12の全幅に対してクリーニング液を一度に供給可能な構造を有している。言い換えると、クリーニング液供給部16Cを中間転写ベルト12の幅方向に移動させることなく中間転写ベルト12の全幅に対してクリーニング液が供給される構造を有している。また、クリーニング液供給部16Cは、ポンプ32及びクリーニング液供給路34を介してクリーニング液タンク36と連通する構造を有し、ポンプ32の圧力を上げるとクリーニング液の供給量(噴射量)が多くなるように構成されている。
クリーニング液の流量(供給量)制御の詳細は後述するが、記録媒体14の記録媒体搬送方向(矢印線Bで図示)下流側には記録媒体14の先端部及び後端部を検出する記録媒体検出センサ38が設けられ、記録媒体検出センサ38の検出信号が画像領域判断部40に送られると、画像領域判断部40では当該検出信号に基づいてクリーニング処理部16のクリーニング処理対象領域が画像領域であるか非画像領域(図10に符号102で図示)であるかを判断し、クリーニング処理対象領域が画像領域であると判断されると、クリーニング液流量制御部42は非画像領域に対してクリーニング処理を行う場合に比べてポンプ32の圧力を下げて、クリーニング液の供給量を減少させるようにクリーニング液供給部16Cの噴射を制御する。
即ち、記録媒体検出センサ38によって記録媒体14の先端部が検出されると、中間転写ベルト12の画像領域の先端がクリーニング処理部16の処理領域に到達するように記録媒体検出センサ38の配置やクリーニング処理部16の配置、中間転写ベルト12搬送速度等が決められており、記録媒体検出センサ38によって記録媒体14の先端部が検出されると、図1に示すポンプ32の圧力を弱めてクリーニング液の供給量を減少させ、記録媒体検出センサ38によって記録媒体14の後端部が検出されると、ポンプ32の圧力を強めて(元に戻して)クリーニング液の供給量を増加させる(元に戻す)。
クリーニング処理部16の処理領域において、中間転写ベルト12の裏側(画像領域を含む画像面の反対側)を支持するプラテン26を備え、クリーニング処理時の中間転写ベルト12の剛性を確保している。なお、クリーニングブレード16Aに代わりローラ形状の払拭部材やブラシ状の払拭部材などの様々な形態の払拭部材を適用することも可能である。
図1に示す中間転写ベルト12には無端状ベルトが適用され、中間転写ベルト12は複数のローラ(張架ローラ28A、28B及び対向ローラ24B)に巻きかけられた構造を有し、張架ローラ28A、28Bの少なくとも1つにモータ(図1中不図示、図7に符号88として図示)の動力が伝達されることにより、中間転写ベルト12は、図1において反時計回り方向に所定の搬送速度で駆動される。本例では、中間転写ベルト12の搬送速度(最大値)は500mm/sとなっている。
中間転写ベルト12の画像面を含む表面層には、ポリイミド系樹脂などの非浸透性を有する材料が好適に用いられる。なお、非浸透性を有する材料(媒体)に代わりまたは併用して、処理液に対する浸透速度が遅い媒体を適用することも可能である。「浸透速度が遅い媒体」とは、処理液が付与されてから印字部22の直下に移動するまでに処理液の量(厚み)の減少が1%を超え10%以下の低浸透性を有する媒体や、処理液が付与されてから印字部22の直下に移動するまでに処理液の量(厚み)の減少が1%以下の緩浸透性を有する媒体をいう。
中間転写ベルト12の画像面を含む表面層に用いられる好ましい材料としては、ポリイミド系樹脂の他に、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
また、中間転写ベルト12の表面層の表面張力は10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写ベルト12の表面層の表面張力を40mN/mを超える値とすると、1次画像が転写記録される記録媒体14との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、1次画像(インク凝集物)の転写性が悪化する。
また、中間転写ベルト12の表面層の表面張力が10mN/m未満であると、処理液のぬれ性を考慮した場合に、処理液の表面張力を中間転写ベルト12の表面層の表面張力未満にする必要があるが、処理液の表面張力を10mN/m未満とすることは処理液の組成上困難である。したがって、中間転写ベルト12の表面層の表面張力を10mN/m未満とすると、中間転写ベルト12及び処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなってしまう。
なお、中間転写ベルト12の表面層に表面粗さRa0.3μm程度の凹凸があると、インク液滴やインク凝集物の移動が抑制される効果があり、より好ましい。
処理液塗布部18は、塗布ローラを用いて中間転写ベルト12の画像領域の全面にわたって(実際には、画像領域よりも広い領域に)均一に処理液を塗布する塗布方式や、インクジェットヘッドから液滴化された処理液を打滴するインクジェット方式が好適に用いられる。
塗布方式では、多孔質材料や表面に凹凸がある材料を用いた塗布ローラが好ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。なお、塗布ローラは中間転写ベルト12の全幅に対応する長さを有していてもよいし、中間転写ベルト12の全幅よりも短い長さの塗布ローラを中間転写ベルト12の幅方向に複数並べて(例えば、千鳥状に並べて)、中間転写ベルト12の全幅に対応してもよい。
処理液塗布部18による処理液の塗布量を制御するには、塗布ローラと中間転写ベルト12との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラと中間転写ベルト12との接触時間を相対的に長くすると処理液の塗布量は相対的に大きくなり、塗布ローラと中間転写ベルト12との接触時間を相対的に短くすると処理液の塗布量は相対的に小さくなる。なお、中間転写ベルト12に対する塗布ローラの押圧制御を併用する態様がより好ましい。
処理液塗布部18によって塗布される処理液は、印字部22(ヘッド22Y,22M,22C,22K)から付与されるインク液滴を増粘または凝集(不溶化)させる機能を有している。
本例に適用可能な処理液として、ポリエチレン微粒子あるいはパラフィン微粒子、リン酸、オルフィン等の界面活性剤、純水を含む処理液が挙げられる。本例の処理液の塗布厚の好ましい範囲は3μm以上10μm以下である。
乾燥処理部20には赤外線ヒータが好適に用いられ、処理液塗布後の中間転写ベルト12を加熱して中間転写ベルト12上の水分(溶媒成分)を蒸発させている。本例では、加熱温度は70℃以上120℃以下の範囲であり、加熱時間は0.5秒以上5.0秒以下(加熱時間は中間転写ベルト12の搬送速度で決められる)である。なお、加熱温度及び加熱時間の設定は、環境温度、使用される処理液の物性やインクの物性に応じて適宜変更される。
印字部22の各ヘッド22Y,22M,22C,22Kは、中間転写ベルト12における画像領域の最大幅に対応する長さを有し(図2参照)、そのインク吐出面には画像領域の全幅にわたりノズル(図1中不図示、図3(a)に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド22Y,22M,22C,22Kは、中間転写ベルト12の搬送方向に沿って上流側から黒(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の色順に配置され、それぞれのヘッド22Y,22M,22C,22Kが中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
中間転写ベルト12の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを各色インク及び処理液に対してそれぞれ設ける構成によれば、中間転写ベルト12の搬送方向(副走査方向、図3参照)について、中間転写ベルト12と印字部22を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写ベルト12の画像領域に1次画像を形成することができる。これにより、ヘッド22Y,22M,22C,22Kが中間転写ベルト12の搬送方向と直交する主走査方向(図3(a)参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例に示すインクジェット記録装置10には、水性顔料インクが好適に用いられる。インクには、顔料の他にグリセリン・ジエチレングリコール等の高沸点溶媒、界面活性剤、ペーハー調整剤、純水等が含まれる。転写記録後の中間転写ベルト12には上記の成分がすべて残留し、特に、ポリエチレン微粒子或いはパラフィン微粒子はほとんどの量が中間転写ベルト12に残留する。
本例では、KYMCの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
なお、図1に示すように、処理液塗布部18から印字部22にわたる領域には、中間転写ベルト12を裏側面から支持するプラテン30が設けられ、当該領域における中間転写ベルト12の剛性を確保している。
図1に示す各ヘッド22Y,22M,22C,22Kに供給する各色のインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部(不図示)は、各ヘッド22Y,22M,22C,22Kに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク(図6に符号60で図示)を有し、各色のインクタンクは所要の流路を介して各色のヘッド22Y,22M,22C,22Kと連通されている。また、インク貯蔵/装填部は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。処理液ヘッドについても、インク貯蔵/装填部と同様の構成を有する処理液貯蔵/装填部を備えている。
予備加熱部は、中間転写ベルト12の画像面の裏側に平板加熱ヒータ(図1中不図示、図7に複数の種類のヒータを代表して符号89で図示)が配置されており、1次画像が形成された中間転写ベルト12を50℃以上70℃以下の範囲で加熱可能に構成されている。なお、平板加熱ヒータを中間転写ベルト12に内蔵する態様も好ましい。
また、予備加熱における中間転写ベルト12の温度は、転写時の加熱温度よりも低く設定することが好ましい。更に、予備加熱温度は処理液やインクに含有する微粒子(樹脂微粒子)の溶解温度やガラス転移点温度に応じて設定すると、転写記録時の転写性向上を図ることができ好ましい。
このように、中間転写ベルト12の画像領域を予備加熱しておくことで、予備加熱を行わない場合に比べて、転写記録部24において所定の転写温度になるまでの時間を短縮することができ、転写記録部24における転写工程の全体に要する時間を短縮可能である。
本例に適用される記録媒体14の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
転写記録部24は、ヒータ24Aを内蔵した対向ローラ(背面ローラ)24Bと、対向ローラ24Bに対向して設けられる転写ローラ24Cと、を含み、対向ローラ24Bと転写ローラ24Cによって中間転写ベルト12と記録媒体14とを挟み込み、所定の転写温度(例えば、インクに含有する樹脂微粒子の軟化点以上の温度)に加熱しながら、所定の転写圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写ベルト12上に形成された1次画像を記録媒体14に転写する構成となっている。
転写記録部24による転写時の加熱温度は70℃以上90℃以下が好ましい。転写記録部24による転写時の加熱温度が90℃以上になると、中間転写ベルト12の変形等の問題があり、一方、70℃以下になると転写性が悪化するという問題がある。
転写記録部24におけるニップ圧は0.5MPa以上3.0MPa以下とする態様が好ましい。なお、転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、転写ローラ24Cを図1の上下方向に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
不図示の冷却部は、転写記録部24を通過して中間転写ベルト12と記録媒体14が張り合わさった状態のものを冷却する。冷却部には、冷却ファン等で冷気を送風する態様が適用され、冷却温度等を調整可能であることが好ましい。本例の冷却部は、中間転写ベルト12及び記録媒体14を所望の温度まで冷却するための中間転写ベルト12の移動時間(冷却時間)が確保されている構成となっている。所望の温度に冷却した後に中間転写ベルト12と記録媒体14と剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
不図示の剥離部は、中間転写ベルト12の剥離ローラ(不図示)の巻き付け曲率によって、記録媒体14自身の剛性(腰の強さ)で中間転写ベルト12から記録媒体14を剥離するように構成されている。剥離部には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。
不図示の定着部は、50℃以上200℃以下の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対を含んで構成され、所定の定着温度において0.5MPa以上3.0MPa以下の加圧力を付与して記録媒体14に本画像を定着させる。
本例では、処理液及びインクの少なくとも何れか一方にポリマー微粒子を含有しているので、当該ポリマー微粒子を造膜させる(画像の最表面にポリマー微粒子が溶解した薄膜が形成される)ことで、定着性・耐擦過性を向上させることができる。転写記録部24にて転写性と造膜化が両立することができれば、定着部を省略する態様も可能である。
<ヘッドの構造>
次に、図1及び図2に示すヘッド22Y,22M,22C,22Kの構造について詳説する。インクヘッド22Y,22M,22C,22Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。
図3(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図3(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a),(b)中の4−4線に沿う断面図)である。
中間転写ベルト12上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する副走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
中間転写ベルト12の搬送方向と略直交する方向に中間転写ベルト12の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写ベルト12の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図4中不図示、図6に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、中間転写ベルト12の幅方向(中間転写ベルト12の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図3(a),(b)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11、51-12、51-13、51-14、51-15、51-16を1つのブロックとし(他にはノズル51-21、…、51-26を1つのブロック、ノズル51-31、…、51-36を1つのブロック、…として)、中間転写ベルト12の搬送速度に応じてノズル51-11、51-12、…、51-16を順次駆動することで中間転写ベルト12の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと中間転写ベルト12とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、中間転写ベルト12の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する中間転写ベルト12の幅方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表される圧電素子58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写ベルト12の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写ベルト12の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写ベルト12を幅方向と直交する方向に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写ベルト12の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写ベルト12の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
<供給系の構成>
図6は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、先に説明したインク貯蔵/装填部に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図6に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてメンテナンスブレード66が設けられている。
これらキャップ64及びメンテナンスブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
なお、中間転写ベルト12に向けてインクを打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク(処理液)吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
中間転写ベルト12に予備吐出を行う場合には、転写ローラ24C等の画像面側に配設される部材に予備吐出によるインクが付着しないように、当該部材を中間転写ベルト12の画像面から離して、溶媒除去ローラや転写ローラ24Cと中間転写ベルト12との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
メンテナンスブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、メンテナンスブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
<制御系の説明>
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、転写記録制御部79、プリント制御部80、処理液塗布制御部81、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図7には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図7に示すモータ88には、図1のローラ28A、28Bのうち駆動ローラを駆動するモータや、溶媒除去ローラの移動機構のモータ、転写ローラ24Cの移動機構のモータ、メンテナンスブレード66の移動機構のモータ、クリーニング液供給部16Cの移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って、ヒータ89を駆動するドライバである。図7には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図7に示すヒータ89には、図1に示す乾燥処理部20の赤外線ヒータや、予備加熱部の加熱ヒータ、定着部のヒータ、図14に示す加熱装置232のヒータなどが含まれている。
転写記録制御部79は、転写記録部24の転写ローラ24Cの押圧制御やヒータ24Aの温度制御を行う。記録媒体14の種類やインクの種類ごとに、転写ローラ24Cの押圧最適値やヒータ24Aの温度最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ74)に記憶され、記録媒体14の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写ローラ24Cの押圧やヒータ24Aの加熱温度が制御される。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
処理液塗布制御部81は、図1に示す処理液塗布部18における処理液の塗布量及び塗布領域を制御する。例えば、塗布ローラを用いて中間転写ベルト12に処理液を塗布する態様では、中間転写ベルト12の搬送路における画像領域の位置を検出する手段を備え、画像領域が処理液塗布部18の処理領域に入るタイミングで処理液の塗布を開始し、画像領域が処理液塗布部18の処理領域から抜け出すタイミングで処理液の塗布を終了するように制御される。なお、画像データに応じて当該画像に使用されるインクの総量を判断し、該インク総量が相対的に多い場合には処理液塗布量を相対的に増やし、該インク総量が相対的に少ない場合には処理液塗布量を相対的に減らすように処理液の塗布量が制御される。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図7に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
なお、中間転写ベルト12上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体14に形成される本画像の鏡面画像としなければならない。即ち、インクヘッド22Y,22M,22C,22Kに供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部80にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記憶手段(不図示)と兼用してもよい。
図7には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のセンサを代表して符号92で図示している。センサ92には、図1に示す記録媒体14を検出する記録媒体検出センサ38や、中間転写ベルト12の搬送路上における位置を検出するセンサ(図22に符号402、404で図示)、記録媒体14の種類を検出するセンサ、転写記録部24における記録媒体14と1次画像の位置合わせに用いられるセンサ(記録媒体14の位置を検出するセンサ、中間転写ベルト12(1次画像)の位置を検出するセンサ)、乾燥処理部20、転写記録部24及び予備加熱部の温度センサなどが挙げられる。
また、図1に示すクリーニング液タンク36の残量センサを備え、クリーニング液の残量が所定量以下になると、その旨を報知する態様も好ましい。
システムコントローラ72には機能ブロックとして図1に示す画像領域判断部40が含まれている。図1の記録媒体検出センサ38(図7のセンサ92)から記録媒体14の検出信号が画像領域判断部40に送られると、画像領域判断部40は当該検出信号に基づいてクリーニング処理対象領域が画像領域であるか非画像領域であるかを判断し、判断結果に応じた指令信号がクリーニング液流量制御部42に送出される。クリーニング液流量制御部42は当該指令信号に基づいてクリーニング液供給部16Cから供給するクリーニング液の供給量を制御する。
なお、図7に図示した機能ブロックのうち、複数の機能ブロックを共通のデバイス(プロセッサー)で構成することも可能である。また、ある機能ブロックの一部と他の機能ブロックの一部を共通のデバイスで構成することも可能である。例えば、システムコントローラ72とプリント制御部80を共通のプロセッサで構成してもよいし、システムコントローラ72に付随するメモリ74と、プリント制御部80に付随する画像バッファメモリ82と、を共通のメモリデバイスで構成してもよい。
<クリーニング処理部の説明>
次に、図1に示すクリーニング処理部16に構成及び中間転写ベルト12のクリーニング処理ついて詳説する。
先に説明したように、本例に示す中間転写ベルト12のクリーニング処理では、画像領域(非画像領域と比べてインクの残存量が少ない領域)をクリーニングするときには、非画像領域をクリーニングするときよりもクリーニング液の供給量を減少させるように、クリーニング液の供給量が制御される。
ここで「画像領域」とは、1次画像が形成される領域を含み、記録媒体14が接触する領域と当該領域の中間転写ベルト12の幅方向の余白部分が含まれる。即ち、画像領域に付着したインクの大部分は記録媒体に移るので、転写記録後の画像領域にはほとんどインクが残留していない。一方、「非画像領域」」は画像領域を除いた記録媒体14と接触しない領域であり、転写記録後の非画像領域には乾燥した処理液(インクと反応しないもの)や凝集したインク(飛び散ったものや記録媒体の外縁近傍に打滴されたもの)がそのまま残留している。なお、「画像領域」及び「非画像領域」は図10に図示する。
図8には画像領域をクリーニングするときの状態を模式的に図示し、図9には非画像領域をクリーニングするときの状態を模式的に図示する。例えば、幅300mmの中間転写ベルト12を用いる場合には、図8に示す画像領域のクリーニング時のクリーニング液の供給量を6〜16(cc/m2)とし、図9に示す非画像領域のクリーニング時のクリーニング液の供給量を65〜100(cc/m2)とする例が挙げられる。即ち、画像領域のクリーニング時におけるクリーニング液の供給量は非画像領域のクリーニング時におけるクリーニング液の供給量の9%〜16%とすることが好ましい。
なお、クリーニング液の供給時間は、記録媒体14の中間転写ベルト搬送方向に対応する方向の長さと中間転写ベルト12の搬送速度に基づいて設定される。上記の例では、中間転写ベルト12の搬送速度は500(mm/s)であり、A4たて方向の印刷の場合にはクリーニング液の供給時間は略0.6(sec)となる。ただし、マージンを見込んで0.7〜0.8(sec)とするとよい。
図10には、画像領域100と非画像領域102の構成例を図示する。本例に適用される中間転写ベルト12は、1次画像が形成される画像領域100が所定の配置間隔で複数設けられている。図10に示す中間転写ベルト12には、最初の画像領域100−1と2番目の画像領域100−2の間に非画像領域102−1が設けられている。このようにして中間転写ベルト12の画像面には、画像領域100、非画像領域102、画像領域100、…、のように画像領域100と非画像領域が交互に配置されている。また、図10に示すように、画像領域100の中間転写ベルト搬送方向の長さは100Aであり、非画像領域102の中間転写ベルト搬送方向の長さは102Aとなっている。
本例では、非画像領域102のサイズは一定(非画像領域102の中間転写ベルト搬送方向の長さ102A及び幅方向の長さは一定)とし、画像領域100の中間転写ベルト搬送方向の長さは使用される記録媒体14のサイズに応じて適宜決められ、画像領域100の中間転写ベルト12の幅方向の長さは記録媒体14のサイズによらず一定(画像領域100の中間転写ベルト12の幅方向の長さは、ヘッド50の描画領域の幅(縁なし印刷に対応する幅)及び記録媒体14の幅のうち何れか大きいほう)とする。
即ち、図10に示すように、中間転写ベルト12には幅方向の両端部に非画像領域102が設けられている。かかる構成を適用することで、ベルトの蛇行による問題や、クリーニング液の裏回りによる問題が防止される。
なお、画像領域100の中間転写ベルト搬送方向の長さ100Aは、中間転写ベルト12と記録媒体14との位置ズレ等を考慮して、記録媒体14の中間転写ベルト搬送方向に対応する方向の長さよりも5%から10%程度大きくするとよい。また、画像領域100を使用可能な最大サイズの記録媒体14に対応して設定し、画像領域100のサイズ100Aを固定値としてもよいし、非画像領域102の中間転写ベルト搬送方向の長さを記録媒体14のサイズに応じて適宜変更(記録媒体14のサイズが相対的に小さくなるときには、画像領域100の間隔を短くする)してもよい。
次に、クリーニング液供給部16Cから供給されるクリーニング液の供給量を変更する具体例について説明する。
図1の装置構成では、ポンプ32にロータリーポンプを適用し、クリーニング液供給部16Cにクリーニング液を供給するポンプ32の回転数によりクリーニング液の供給量を制御することができる。先に述べたように、クリーニング液の制御例として、幅300mmの中間転写ベルト12を用いる場合には、画像領域100のクリーニング時(図8参照)のクリーニング液の供給量を6〜16(cc/m2)とし、非画像領域のクリーニング時(図9に参照)のクリーニング液の供給量を65〜100(cc/m2)とする例が挙げられる。
また、クリーニング液の供給量は、クリーニング液供給部16Cに付与される圧力に比例しているので、クリーニング液供給部16Cと連通するクリーニング液供給路34に配設されるポンプ32の圧力を変更することで、クリーニング液の供給量を変更することができる。
図11に示すように、クリーニング液供給部16Cと連通するクリーニング液タンク36内の圧力を検出する圧力センサ110と、圧力センサ110から得られる圧力検出信号に基づいてポンプ32を制御する圧力制御部112と、を備え、クリーニング液タンク36内の圧力検出値と既知の圧力値との差分を演算し、クリーニング液タンク36に空気を送入するポンプの流量を変更することで、クリーニング液供給部16Cに付与する圧力を変更する。
即ち、本例では、圧力センサ110の検出値に基づき圧力制御部112はフィードバック制御を行うように構成されている。例えば、圧力検出値とクリーニング液の供給量の関係を実験等によって予め求めておき、目標のクリーニング液の供給量に対する圧力検出値と実際の圧力検出値との差分を圧力調整値とする制御が挙げられる。
更に具体的には、圧力検出値とクリーニング液の供給量の関係をデータベース化して記憶しておき、画像領域100のクリーニングを行うときには、当該データベースから画像領域100(または、非画像領域102)のクリーニングに対応する圧力値を読み出し、圧力センサ110の検出値との差分(圧力調整値)を求め、ポンプ32の流量(回転数)を適宜変更する。
なお、図11に図示した圧力制御部112は、図7に図示した制御系に含まれる機能ブロックである。図11に示す態様は、制御信号に対する圧力変化の応答性がよく、供給量の誤差が小さいという特徴があり、クリーニング液の供給量を細かく変更する場合に好ましい構成である。
図12に示すように、クリーニング液供給部16Cの数量を変更する態様も好ましい。同図に示す態様では、クリーニング液供給部16Cを複数(3つ)備え、各クリーニング液供給部16Cのクリーニング液の供給量は一定として、クリーニング液の供給量を増やす場合には、クリーニング液を供給するクリーニング液供給部16Cの数を増やせばよい。
図12に示す態様では、各クリーニング液供給部16Cに連通するクリーニング液供給路34に電磁弁120を備え、電磁弁120の開閉によって各クリーニング液供給部16Cをオンオフさせることが可能である。本例では、複数のクリーニング液供給部16Cの選択手段として電磁弁を例示したが、各クリーニング液供給部16Cと連通するクリーニング液供給路34を選択的に開閉することが可能な構成であれば、他の構成を適用可能である。図12に示す態様は、クリーニング液の噴射量の変動が大きい場合により好ましい態様である。
また、図12に示す構成例は、各クリーニング液供給部16Cに異なるクリーニング液を充填することで複数種類のクリーニング液を切り換えて使用する場合や、複数種類のクリーニング液を併用する場合に適した構成である。
ここで、本例に適用されるクリーニング液の組成例を示す。
グリセリン 20w%
ジエチレングリコール 10w%
オルフィン 1w%
純水 残量
クリーニング処理部16は、先に説明した処理液及びインクの成分を除去し中間転写ベルト12を初期状態に戻す必要があるので、ポリチレン微粒子またはパラフィン微粒子が分散可能な液を用いることが好ましい。なお、上述したクリーニング液はインク及び処理液の種類等に応じて適宜変更可能である。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、インク等の付着量が相対的に少ない画像領域100のクリーニングは少量のクリーニング液を供給し、インク等の付着量が相対的に多い非画像領域102のクリーニングは多量のクリーニング液を供給するように構成したので、クリーニングブレード16Aに付着したインク等の異物をクリーニングブレード16Aから容易に滑落(除去)させることができるとともに、画像領域100をクリーニングする際のクリーニング液の量が最小となり、クリーニング液の消費量を抑えることができ、廃液を最小とすることができる。更に、クリーニングブレード16Aを中間転写ベルト12に当接させた状態でクリーニングブレード16Aのクリーニングを行えるので、記録動作中でもクリーニングブレード16Aのクリーニングを実行することができ、中間転写ベルト12からクリーニングブレード16Aを離間させる際に生じる中間転写ベルト12上への液残りを防止できる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図13には、第2実施形態に係るインクジェット記録装置200のクリーニング処理部216の概略構成を図示する。なお、第2実施形態中、先に説明した第1実施形態と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図13に示すクリーニング処理部216は、第1のクリーニング液供給部202と、第2のクリーニング液供給部204と、を備え、第1のクリーニング液供給部202と第2のクリーニング液供給部204からはそれぞれ異なる性質を持つクリーニング液が噴射される。
即ち、第1のクリーニング液供給部202は、第1のクリーニング液供給路206、第1のポンプ208を介して第1のクリーニング液210が収容される第1のクリーニング液タンク212と連通し、第2のクリーニング液供給部204は、第2のクリーニング液供給路217、第2のポンプ218を介して第2のクリーニング液220が収容される第2のクリーニング液タンク222と連通している。
本例のクリーニング処理では、画像領域(図10に符号100で図示)のクリーニングには第1のクリーニング液210のみを使用し、非画像領域(図10に符号102で図示)のクリーニングには第2のクリーニング液220が用いられる。第1実施形態と同様に、第2のクリーニング液220の供給量は第1のクリーニング液210の供給量の略5倍から略10倍程度(第2のクリーニング液の供給量に対する第1のクリーニング液の供給量は9%から16%)とすることが好ましい。なお、非画像領域のクリーニングでは、第1のクリーニング液210と第2のクリーニング液220を併用してもよい。
本例では、第1のクリーニング液210としてオルフィン等界面活性剤水溶液が適用され、例えば、オルフィン水溶液が挙げられる。また、第2のクリーニング液220には、第1のクリーニング液210よりも界面活性剤の濃度が低い水溶液や界面活性剤を含んでいない水溶液が用いられる。
界面活性剤の濃度が低い水溶液の具体例として、第1のクリーニング液の界面活性剤濃度は1〜5重量%の場合に界面活性剤濃度が0.1重量%以下の水溶液が挙げられる。また、界面活性剤を含んでいない水溶液の具体例として純水が挙げられる。
画像領域のクリーニングでは、中間転写ベルト12に付着したインクや異物などの汚れをクリーニングブレード16Aに移動させることを主たる目的にしているため、界面活性剤を含む水性液体が好ましい。しかし、界面活性剤はクリーニングブレード16Aに付着しやすく、クリーニングを長時間行うことによってクリーニングブレード16A上の界面活性剤の濃度が増加してしまい、クリーニングブレード16Aの中間転写ベルト搬送方向下流側の中間転写ベルト12上に界面活性剤の泡が発生してしまう。この界面活性剤の泡が消えずにクリーニングブレード16Aを通過して、処理液塗布部18以降の工程の処理領域に達すると、泡に起因する画像欠陥を生じるおそれがある。
本例に示すクリーニング処理は、非画像領域に対して界面活性剤の濃度が低い(または、界面活性剤を含んでいない)第2のクリーニング液220を供給することにより、クリーニングブレード16A上の界面活性剤の濃度を低減させ、泡の発生を抑止する効果がある。
一方、第1のクリーニング液210は中間転写ベルト12の表面に付着しやすく、かつ、クリーニングブレード16Aに付着した後にすぐに滑落せず、クリーニングブレード16A上に一定の液量を保持することが好ましい。また、クリーニングブレード16A上で第1のクリーニング液210を保持することで、クリーニングブレード16A上で第1のクリーニング液210の対流が生じ、汚れを確実に除去することが可能になる。
なお、クリーニングブレード16A上で第1のクリーニング液210を保持することで、第1のクリーニング液210の噴射液量(供給量)にばらつきが生じた場合でも、中間転写ベルト12を均一にクリーニングすることができる。
しかし、クリーニングブレード16Aに付着した汚れを除去する場合には、クリーニングブレード16Aに付着した第1のクリーニング液210及び第2のクリーニング液220が滑落しやすいとよく、更に、当該液体は粘度が低いことが好ましい。よって、画像領域のクリーニングではグリセリン等の高粘度液体成分を含む第1のクリーニング液210を用いて、クリーニングブレード16A上に第1のクリーニング液210を保持しやすくするとともに、非画像領域のクリーニングでは純水等の低粘度液体成分をより多く含む第2のクリーニング液220を用いて、クリーニングブレード16Aに付着している第1のクリーニング液210及び第2のクリーニング液220をクリーニングブレード16Aから滑落しやすくすることが好ましい。
本例では、第2のクリーニング液220の「低粘度液体成分」は記録用に用いられるインクの粘度以下の粘度とすることが好ましい。例えば、記録用のインクの粘度が5cPの場合には、低粘度液体成分の粘度は1cP以上5cP以下とするとよい。
一方、第1のクリーニング液210「高粘度液体成分」は、中間転写ベルト12の材質や表面の形状などによっても影響されるので、サンプルテスト等によって粘度の範囲を求めることが好ましい。なお、高粘度液体成分の粘度が大き過ぎると低粘度液体成分を噴射させても高粘度液体成分がクリーニングブレード16Aから滑落せず、中間転写ベルト12やクリーニングブレード16Aに高粘度液体成分が残留することがあるため、低粘度液体成分の材質によっても変化する。即ち、高粘度液体成分の粘度は、低粘度液体成分に応じて決めるとよい。例えば、クリーニングブレード16Aにフッ素ゴム、中間転写ベルト12の表面にシリコンゴムを適用し、低粘度液体成分(第2のクリーニング液220)に純水を用いる場合には、高粘度液体成分(第1のクリーニング液210)の粘度は5cP以上20cP以下とするとよい。
また、第1のクリーニング液210及び第2のクリーニング液220の粘度は温度によっても変化するため、加熱によって低粘度化し、冷却によって高粘度化して上記粘度範囲に調整することも可能である。
図14には、第1のクリーニング液210と第2のクリーニング液220の粘度を変える構成の一例を図示する。図14に示すクリーニング処理部216’は、第1のクリーニング液供給部202と連通する第1のクリーニング液供給路206に冷却装置230を備えるとともに、第2のクリーニング液供給部204と連通する第2のクリーニング液供給路217に加熱装置232を備えている。
なお、図14に示す構成では、第1のクリーニング液210と第2のクリーニング液220に同じ液体を用いることができる。例えば、図14に示すように、第1のクリーニング液タンク212と第2のクリーニング液タンク222を共通化しておき、共通クリーニング液タンク212’からクリーニング液供給流路を2つに分枝し、流路の途中で加熱または冷却して粘度の異なる液体とすることが可能である。
上記の如く構成された第2実施形態によれば、2種類のクリーニング液(第1のクリーニング液210及び第2のクリーニング液220)を備え、画像領域のクリーニング処理には相対的に粘度の高い第1のクリーニング液210を適用して、中間転写ベルト12に付着した付着部をクリーニングブレード16Aに移動させ、非画像領域のクリーニング処理には相対的に粘度の低い第2のクリーニング液220を用い、更に、第2のクリーニング液220の供給量を第1のクリーニング液210の供給量よりも多くすることで、クリーニングブレード16Aに付着した付着物を除去するので、中間転写ベルト12上の付着物は好適に除去されるとともに、クリーニングブレード16Aの付着物も好適に除去することができる。
また、第1のクリーニング液210に界面活性剤を含有する場合には、第2のクリーニング液を用いることで、クリーニングブレード16A上の界面活性剤の濃度を低下させて、泡の発生を抑止することができる。更にまた、第1のクリーニング液210と第2のクリーニング液220を共通化することで、装置(クリーニング処理部216’)の構成を小型化することができ、コストダウンが可能となる。
本例では、2種類のクリーニング液を用いる構成例を示したが、3種類以上のクリーニング液を選択的に使い分けることも可能である。
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において先に説明した第1、第2実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第3実施形態では、記録動作(1次画像形成から転写記録までの一連の処理)後の経過時間を計測し、規定の時間を経過しても次の記録動作が開始されなかった場合には、中間転写ベルト12を所定の搬送方向に搬送させながら液量の多いクリーニングの動作(非画像領域に適用されるクリーニング処理)が行われる。なお、「液量が多いクリーニング」はクリーニング動作全体の中の一部の間としてもよい。例えば、規定の時間を10分とし、クリーニング動作全体の時間が1分のときに、液量が多いクリーニングの時間を10秒とする態様が挙げられる。
例えば、連続して印刷ジョブが実行される場合には、先の印刷ジョブ終了時から所定の時間経過した場合には、次の印刷ジョブが実行されるときに非画像領域のクリーニング処理と同じ条件で中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行し、その後、次の印刷ジョブが開始される。
また、同一印刷ジョブ内において、先の記録動作の後に印刷以外の処理の割り込みが発生し当該印刷ジョブが一時停止されると、当該印刷ジョブの再開時には非画像領域のクリーニング処理と同じ条件で中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行され、その後、次の記録動作が開始される。
クリーニングブレード16Aにインク等の異物が付着した状態で放置すると、クリーニングブレード16A上の水分が蒸発しインクや異物が増粘または固化してしまい、クリーニング液量を多くしたとしてもクリーニングブレード16Aに付着した付着物の除去が困難になる。よって、クリーニングブレード16Aの付着物の除去が困難になる前にクリーニングブレード16Aから付着物を除去してしまい、クリーニングブレード16Aの付着物に起因する中間転写ベルト12のクリーニング不良を防止する。
また、閑散処理のように印字動作と次の印字動作の時間間隔が空いている場合には、記録動作終了ごとに中間転写ベルト12のクリーニング処理を行うように構成すると比較的汚れの少ない中間転写ベルト12を汚れが多いときと同じ条件でクリーニングすることになり必要以上のクリーニング液を消費してしまう。
図15には、第3実施形態に適用される画像記録処理及びクリーニング処理のフローチャートを示す。図15に示すように、記録処理が開始され(ステップS10)、1次画像形成から転写記録までの一連の記録動作処理が実行され(ステップS11)、当該画像記録処理が終了される(ステップS12)。その後、ステップS14に進み、当該画像記録処理終了からの経過時間が計測される。経過時間を計測する手段には、記録媒体14(図1参照)が転写記録部24を抜け出したことを検出するセンサと、該センサの検出タイミングからの経過時間を計測するタイマー(カウンタ)と、を備える構成を適用することができる。
具体的には、図1の記録媒体検出センサ38で記録媒体14の後端部を検出し、記録媒体検出センサ38による記録媒体14の後端部検出信号をトリガ信号として図7に示す制御系に備えられるカウンタによって経過時間を計測する態様が挙げられる。
ステップS16では、記録動作終了からの経過時間(カウンタのカウント値)が予め決められた規定時間(クリーニングブレード16A上の水分の蒸発が少なく、クリーニング動作によりクリーニングブレード16A上の付着物の除去が可能である時間であり、予め実験やシュミレーションなどによって求められる時間)と比較され、経過時間が規定時間を超えていない場合には(NO判定)、次の記録動作を開始する命令があるか否かが判断される(ステップS18)。ステップS18において次の記録動作開始命令を取得している場合には(YES判定)、次の画像データに基づく記録動作が実行された後にステップS11に進む。一方、ステップS18において、次の記録動作開始命令を取得していない場合(閑散処理時のインターバル中や他の処理の割り込みが発生している場合)には(NO判定)、経過時間の計測が継続される(ステップS16)。
ステップS16において、経過時間が規定時間を超えた場合には(YES判定)、クリーニング液の液量が多い条件(非画像領域のクリーニング条件)に基づいて中間転写ベルト12のクリーニング処理が実行される(ステップS20)。中間転写ベルト12のクリーニング処理が開始されると、クリーニング開始からの経過時間が計測されるとともに経過時間が所定のクリーニング時間を超えているか否かが判断される(ステップS22)。即ち、当該クリーニング処理は開始からの経過時間によって管理される.
ステップS22において、経過時間が所定のクリーニング時間を超えていない場合には(NO判定)、ステップS24に進み、次の記録動作開始命令を取得しているか否かが判断される。ステップS24において、次の記録動作開始命令を取得している場合には(YES判定)、クリーニング動作を停止させて(ステップS25)、ステップS11に進む。
一方、ステップS22において、経過時間が所定のクリーニング時間を超えた場合には(YES判定)、当該クリーニング動作(処理)を終了するとともに、クリーニング動作に関連するパラメータをリセットし(ステップS26)、次の記録動作開始命令の取得待機状態に遷移する(ステップS28)。
上記の如く構成された第3実施形態によれば、連続的に画像記録処理が行われる場合には、前回の記録動作終了からの経過時間に基づいて中間転写ベルト12のクリーニング処理の条件を変えるので、常に適切なクリーニング処理が実行され、画像記録処理前の中間転写ベルト12は好ましい状態が維持される。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態中、第1〜第3実施形態と同一又は類似する部分には同一の符合を付し、その説明は省略する。
本発明の第4実施形態では、クリーニング処理対象領域が画像領域と判断されたときは、クリーニング液はクリーニングブレード16Aと中間転写ベルト12が当接していないエリアの中間転写ベルト12の表面に供給され、その後、クリーニング液は中間転写ベルト12とクリーニングブレード16Aの相対移動によってクリーニングブレード16Aと中間転写ベルト12が当接しているエリアに供給されることを特徴とするとともに、クリーニング処理対象領域が画像領域ではないと判断されたときは、少なくとも中間転写ベルト12とクリーニングブレード16Aが当接しているエリアに対してクリーニング液を供給することを特徴としている。なお、クリーニング液供給部16Cは複数設けられていてもよい。
即ち、クリーニング液供給部16Cを中間転写ベルト搬送方向に対応して(平行に)移動させる移動機構を備え、画像領域をクリーニングする場合には、クリーニング液供給部16Cによるクリーニング液の供給位置を中間転写ベルト12とクリーニングブレード16Aとの当接位置(以下、「ブレード位置」と記載する。)から中間転写ベルト搬送方向上流側の離れた所定の位置(以下、「画像領域供給位置」と記載する。)に固定し、非画像領域をクリーニングする場合には、クリーニング液供給部16Cによるクリーニング液の供給位置を画像領域供給位置からブレード位置に移動させて、少なくともブレード位置にクリーニング液を供給するように構成されている。
図16には、画像領域(図10に符号100で図示)に対してクリーニング処理が行われている状態を図示する。同図に示すように、次のクリーニング対象領域が画像領域と判断された場合には、画像領域供給位置302にクリーニング液16Bが供給される。画像領域供給位置302とブレード位置300との距離は、中間転写ベルト12の搬送速度と中間転写ベルト12の付着物がクリーニング液に溶解(分散)するまでの時間に応じて適宜設定される。
中間転写ベルト12上に残留したインク等を除去する場合、クリーニング液を付与してから短時間の内に払拭すると除去しきれず残留する場合がある。例えば、インク中に樹脂ポリマーが含有されていた場合、樹脂ポリマーはクリーニング液に溶解(分散)する速度が遅いため、クリーニング液を付与してから短時間のうちに払拭すると当該インクを中間転写ベルト12から除去することが困難であり、図16に示すように、ブレード位置300から離れたエリアにクリーニング液を供給し、当該画像領域供給位置302からブレード位置300まで中間転写ベルト12が搬送される間に樹脂ポリマーをクリーニング液に溶解(分散)させ、その後、クリーニングブレード16Aによって中間転写ベルト12を払拭することで、中間転写ベルト12に付着した付着物を確実に除去することが可能となる。
また、画像領域において噴射時に発生するミストがクリーニングブレード16Aの下流側へ移動し、中間転写ベルト12に付着することを防止できる利点がある。言い換えると、画像領域のクリーニングでは、少量のクリーニング液をブレード位置300から離れた画像領域供給位置302に供給するので、クリーニング液がブレード位置300の中間転写ベルト搬送方向下流側に回り込むことが防止される。
一方、次のクリーニング対象領域が非画像領域(図10に符号102で図示)と判断されると、図17に示すように、ブレード位置300に対してクリーニング液を供給可能な位置(ブレード位置の真下)にクリーニング液供給部16Cを移動させて、少なくともブレード位置300にクリーニング液が供給される。
図16に示すように、クリーニングブレード16Aから離れた位置で大量の(非画像領域のクリーニング液量の)クリーニング液を供給すると、クリーニングブレード16Aの表面張力が働かず液滴が中間転写ベルト12から滑落または滴下しやすくなるという問題が起こるので、大量のクリーニング液を用いる非画像形領域のクリーニング処理では、少なくともブレード位置300にクリーニング液を供給することで、非画像領域では中間転写ベルト12からのクリーニング液の滑落等を生じることなく、クリーニングブレード16Aに付着したインクや異物を除去することが可能となる。
また、非画像領域のクリーニング処理では、クリーニングブレード16Aにクリーニング液を直接吹き付けることにより噴射圧力が付与され、クリーニングブレード16Aに付着したインクや異物をより確実に除去することが可能となる。なお、画像領域のクリーニング処理から非画像領域のクリーニング処理に切り換える際に、画像領域供給位置302からブレード位置300にわたってクリーニング液を連続的に供給してもよい。
ここで、図16及び図17に示す態様におけるクリーニング液供給部16Cの移動機構の一例を挙げると、クリーニング液供給部16Cを支持する支持部材と、該支持部材を所定の移動方向に移動させるボールねじ等の直動機構と、該直動機構の駆動源となるモータと、を含む構成が挙げられる。
本例では、クリーニング液供給部16Cを中間転写ベルト搬送方向と平行方向に移動させる態様を例示したが、クリーニング液供給部16Cを水平方向に移動させる態様も可能である。かかる態様では、クリーニング液供給部16Cの移動に伴いクリーニング液の噴射距離が変わるので、クリーニング液の供給距離に応じて供給圧力を変えるとよい。例えば、供給距離が短い場合には供給圧力を小さくし、供給距離が長い場合には供給圧力を大きくする。
図18には、クリーニング液供給部16Cの移動機構の他の態様を示す。図18に示す態様では、クリーニング液供給部16Cは中間転写ベルト12の画像領域を含む面に対して首振り動作が可能に構成されている。即ち、図18に示すクリーニング液供給部16Cは、中間転写ベルト搬送方向と直交するとともに中間転写ベルト12の画像領域(非画像領域)を含む面と平行方向(図18中、紙面と垂直方向)の回転軸の周りを回転可能に構成され、振り動作を行うことによってクリーニング液の供給位置を変えることができる。
図18に一点破線で示す状態は画像領域のクリーニング処理が実行される状態であり、図16に示す状態と同様にブレード位置300から離れた画像領域供給位置302にクリーニング液を供給している。一方、図18に実線で示す状態は非画像領域のクリーニング処理が実行される状態であり、図18に一点破線で示す状態から所定の角度だけ図18における時計周り方向にクリーニング液供給部16C(クリーニング液の供給方向)を回転させて、図17に示す状態と同様にブレード位置300にクリーニング液を供給している。
図18に示す態様は、インクに含まれる成分のクリーニング液に対する溶解速度または分散速度が遅い場合であっても、1台の装置で実現可能であり、装置を大型化することなく、簡素、かつ、安価な構成で確実なクリーニング処理が可能となる。言い換えると、中間転写ベルト搬送方向に沿ってクリーニング液供給部16Cを移動させる態様と比較して、クリーニング液供給部16Cの移動機構をコンパクトに構成することができ、装置全体の大型化抑制に寄与する。
なお、図18に示す態様では、ブレード位置300と画像領域供給位置302ではクリーニング液の供給距離が変わるので、図16及び図17に示す態様と同様に、供給距離に応じて供給圧力を変えるとよい。
次に、図18に示す態様における具体的なクリーニング液供給位置の切換制御について説明する。図19は、図18において中間転写ベルト12を右斜め下から見た図(画像領域を含む面を対向する側から見た図)である。
図19において、ブレード位置を符号300、画像領域100(100−1、100−2、…)のクリーニング処理時にクリーニング液が供給される画像領域供給位置を符号302とし、ブレード位置300と画像領域供給位置302の中間転写体搬送路における距離をLとする。
また、中間転写ベルト搬送方向における先の非画像領域102−1の後端位置(非画像領域の先端位置)を符号304、当該先の画像領域100−1の次の画像領域100−2の先端位置(非画像領域102−1の後端位置)を306とし、画像領域100−1の後端位置304から画像領域100−2の先端位置306の間の間隔(非画像領域102−1の中間転写体搬送路における距離)をdとする。
ブレード位置300と画像領域供給位置302との距離Lが、非画像領域102−1の長さd未満の場合、即ち、d>Lの関係が成り立つときには、図18で説明したクリーニング液の供給方向の変更を行うことが好ましい。一方、d≦Lの関係が成り立つときには、当該クリーニング液の供給方向の変更は行わず、非画像領域102も画像領域100と同じ動作でクリーニング処理が行われる。言い換えると、d≦Lの場合には、非画像領域102のクリーニング処理時のクリーニング液の供給位置は、画像領域100のクリーニング処理時と同じ画像領域供給位置302とし、クリーニング液の供給量を変更して非画像領域102のクリーニング処理が実行される。
このようにクリーニング液の供給位置(方向)の変更及びクリーニング液の供給量の変更を制御することで、画像領域100のクリーニングを損ねることなく、クリーニングブレード16Aに付着した汚れを除去することができる。
「d>Lの関係が成り立つとき」とは、例えば、ヘッド50の吐出不良回復動作時や、中間転写ベルト12の継目部分に印字するのを避けるため印字タイミングをずらした時などの非定常動作時が挙げられる。
一方、「d≦Lの関係が成り立つとき」とは、例えば、通常印刷時のように画像領域100の間隔dが最短に設定されているときが挙げられる。通常印刷時には、印刷処理時間を短縮するためや、クリーニング液の消費量を低減させるために、画像領域100の間隔dはできるだけ短い距離に設定される。
意図的に距離dを変動するように構成してもよい。距離dを可変可能に構成する態様では、クリーニングブレード16A上の汚れを光学センサ等で検出し、検出された汚れ量が予め規定された汚れの基準を超える場合には、d>Lの関係が成り立つように距離dを通常の設定(通常印刷時の最短設定)よりも長く設定して、図18に示すようにクリーニング液供給部16Cを首振り動作させて中間転写ベルト12のクリーニングを行うと、印刷処理時間を最小限に抑えつつ確実なクリーニングを行うことができる。
なお、d>Lの関係が成り立つ場合(クリーニング液の供給方向の変更を行う場合)には、画像領域100−1の後端位置304がブレード位置300に移動したタイミングに合わせてクリーニング液の供給方向の変更が行われる。
図20には、画像領域100−1の後端位置304がブレード位置300に移動した状態を図示する。図20に図示する状態では、ブレード位置300と画像領域100−1の後端位置304が一致しており、このタイミングに合わせてクリーニング液の供給方向を変更して、クリーニング液16Bを破線で示す画像領域供給位置302からクリーニング液16Bを実線で示すブレード位置300に変更する。図20にはクリーニング液の供給位置の変更方向を矢印線Kで示す。
また、クリーニング液の供給量の変更は、クリーニング液の供給方向の変更と同時に行うことが好ましい。
その後、図21に図示するように、非画像領域102−1の後端部(次の画像領域100−2の先端部)306が画像領域供給位置302に移動したタイミングに合わせて、クリーニング液の供給位置をブレード位置300(クリーニング液16Bを破線で図示)から画像領域供給位置302(クリーニング液16Bを実線で図示)に戻すようにクリーニング液の供給方向が変更される。図21にはクリーニング液の供給位置の変更方向を矢印線K’で図示する。また、クリーニング液の供給量の変更もクリーニング液の供給方向の変更と同時に行われる。
このようにして、図19、図20、図21に図示する状態を繰り返し、中間転写ベルト12(画像領域100と非画像領域102)の移動に応じてクリーニング液の供給方向とクリーニング液の供給量が適宜変更され、好ましい中間転写ベルト12のクリーニング処理を行うことが可能となる。
なお、図19〜図21では、非画像領域102のクリーニング処理から当該クリーニング処理を開始する態様を例示したが、画像領域100のクリーニング処理から当該クリーニング処理を開始することも可能である。また、装置立ち上げ時や装置の終了時には、画像形成を行わずに中間転写ベルト12を搬送することがある。このときにもクリーニング液の供給位置をブレード位置300に変更し、クリーニング液16Bをクリーニングブレード16Aに直接供給することで、クリーニングブレード16Aの汚れを除去する態様も好ましい。更にまた、クリーニング液16Bをクリーニングブレード16Aに直接供給することで、クリーニングブレード16Aをクリーニング液16Bで湿潤させることでクリーニングブレード16Aの摺動性が良化し、その結果、中間転写ベルト12の搬送負荷低減や、中間転写ベルト12及びクリーニングブレード16Aの耐久性の向上等の効果が見込まれる。なお、上述したクリーニング液の供給方向の変更とクリーニング液の供給量の変更は、図16及び図17で説明した平行移動にも適用可能することが可能である。
本例では、記録媒体14の検出結果に基づいて画像領域100と非画像領域102を判断する態様を例示したが、クリーニング処理における画像領域100と非画像領域102はクリーニング処理後に形成(設定)される画像領域を基準に判断してもよい。
中間転写ベルト12上の画像領域100が1周ごとに変動するような場合(例えば、記録媒体14のサイズが1枚ごとまたは数枚ごとに変わる場合等)には、クリーニング後に設定される画像領域に基づいて画像領域100を判断すると、クリーニング処理後の中間転写ベルト12に設定される画像領域にクリーニング液の拭き残りが存在せず、良好な画像形成が可能となる。また、クリーニング前に形成された画像領域100とクリーニング後に形成される画像領域の両方の情報に基づいてクリーニング処理時の非画像領域102を判断し、更に、図19〜図21に示したようにd>Lの条件を満たす場合において、クリーニング液の供給方向(供給位置)を変更してもよい。このように構成することで、印字動作前(転写記録後)の中間転写ベルト12のクリーニングを確実に行うことができ、かつ、クリーニング処理後に形成される画像にも影響しない中間転写ベルト12のクリーニングが可能となる。
更にまた、画像領域及び非画像領域の判断方法として、中間転写ベルト12の移動距離をエンコーダなどによって検出し、画像データから画像の長さを判断し、そして画像と画像の間隔を予め設定した値から読み出して画像領域及び非画像領域を判断することも可能である。
図22には、中間転写ベルト12の移動距離と画像データに基づいて画像領域及び非画像領域を判断する構成を備えたインクジェット記録装置400を図示する。なお、図22中、図1と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図22に示すインクジェット記録装置400は、中間転写ベルト12の裏面側(画像面と反対面側)にエンコーダセンサ402と、ホームポジションセンサ404と、を備え、中間転写ベルト12の移動距離及びホームポジション(原点位置)を把握可能に構成されている。
また、図23に示すように、中間転写ベルト12の裏側面には、エンコーダパターン410と、ホームポジションパターン412が設けられている。エンコーダパターン410は、中間転写ベルト12の幅方向の一方の端部に設けられるとともに、中間転写ベルト搬送方向Aに沿って、中間転写ベルト12の搬送分解能の対応する配置ピッチで並べられた構造を有している。
また、ホームポジションパターン412は、エンコーダパターン410の反対側の端部に1つ設けられ、ホームポジションパターン412をホームポジションセンサ404が検出した位置(状態)を中間転写ベルト12のホームポジションとして決められている。
なお、エンコーダパターン410及びホームポジションパターン412は中間転写ベルト12の表面側(像領域及び非画像領域を含む面)に設けられていてもよい。また、エンコーダパターン410及びホームポジションパターン412は、穴形状のもの、濃度の異なるもの(濃、淡、濃、淡、…、のように並べられたパターン)、反射率の異なるものなども適用可能である。
図23に示すエンコーダパターン410を用い、エンコーダセンサ402に反射型光学センサを用い、エンコーダセンサ402に入射される光量が予め決められたしきい値を超える場合にはオン、入射光量がしきい値以下の場合にはオフとして、オンオフのパターンをカウントすることによって当該カウント値から中間転写ベルト12の移動距離が求められる。
また、ホームポジションセンサ404によってホームポジションパターン412が検出されると、エンコーダのカウント(エンコーダパターン410をカウントするカウンタ)を0にリセットする。このリセット処理は通常印刷開始直後に1度のみ行われる。このようにして、上述したカウント値に基づいて、ホームポジションを基準とした中間転写ベルト12の移動距離を判断することが可能となる。
また、画像データに基づいて画像の長さ(中間転写ベルト搬送方向Aにおける画像のサイズ)が計算可能であり、当該画像の長さはカウント値に換算される。同様に、画像と画像の間隔(非画像領域の中間転写ベルト搬送方向Aにおける長さ)も既知であり、カウント値に換算される。更に、中間転写ベルト12の周長がカウント値に換算されるとともに、ホームポジションセンサからクリーニングブレード16Aまでの距離がカウント値に換算される。
まず、記録動作を開始すると、最初の画像における画像領域の開始位置と終了位置がホームポジションからのカウント値として計算され、記憶装置(所定のメモリ)に記憶される。この処理は当該記録動作におけるすべての記録枚数について実行してもいいし、例えば、中間転写ベルト12の2回転分の画像領域を計算し、中間転写ベルト12が1回転したら最初の1回転分のデータを消去し、次の1回転分のデータを計算し記憶するといったように、記録動作の進行に合わせて適宜計算してもよい。記録動作の進行に合わせて画像領域及び非画像領域の位置を適宜計算する方法では、メモリの記憶容量が少量でよく、記憶装置を高速に処理でき、かつ、安価にできる利点がある。
図24(a)には、メモリ内に記憶される画像領域開始位置の情報と画像領域終了位置の情報の一例を図示する。
次に、図19等に示すブレード位置300上での中間転写ベルト12の画像領域(非画像領域)を判断する場合には、図24(a)に示す画像領域開始位置の情報と画像領域終了位置の情報にホームポジションセンサ404からブレード位置300までの距離を加算する。図24(b)には、ホームポジションからブレード位置300までのカウント値が20000カウントの場合の例を図示する。
即ち、図22に示す画像領域判断部40は、カウント値とメモリに記憶されている画像領域及び非画像領域の情報とを照合し、カウント値が20000から25000の間はブレード位置300の直下に最初(1枚目)の画像領域が位置し、カウント値が25000から25050間はブレード位置300の直下に1枚目の画像領域と2枚目の画像領域の間の非画像領域が位置するというように、当該カウント値に基づいてブレード位置300の直下における画像領域と非画像領域を把握することが可能である。2枚目以降の画像領域及び2枚目の画像領域と3枚目の画像領域の間の非画像領域以降の非画像領域も同様にして把握される。
図19等に示す画像領域供給位置302の直下における画像領域と非画像領域を判断する場合には、ブレード位置300と画像領域供給位置302との間の距離をホームポジションからブレード位置300までの距離から減算して求めることができる。
なお、クリーニング後の画像領域を考慮する場合には、中間転写ベルト12の1回転分のカウント数を更に減算する。但し、1枚目の画像領域100がブレード位置300に移動するまではクリーニング動作は不要であり、クリーニング動作は実施されない。図24(c)には、ホームポジションからブレードの位置300までのカウント値が20000カウント、中間転写ベルト12の1回転が300000カウントの場合の例を図示する。また、図24(c)以外にも1枚目の画像領域100がブレード位置300に移動するまでのカウント値(20000カウント)をメモリに記憶する。
即ち、カウント値が20000まではクリーニング動作を実施せず、カウント値が20000から25300の間はブレード位置300の直下に5枚目の画像領域100(−5)が位置し、カウント値20250から20350の間はブレード位置300の直下に5枚目の画像領域100(−5)と6枚目の画像領域100(−6)との非画像領域102を把握することが可能である。7枚目以降の画像領域100(−7,8,9,…)および非画像領域102も同様にした把握される。
なお、中間転写ベルト12の駆動モータに取り付けされたエンコーダの出力信号をカウントして中間転写ベルト12の移動距離を把握することも可能である。
上述した第1〜第4実施形態において、中間転写ベルト12が水平(垂直)方向と所定角度をなす斜め方向に搬送される領域に中間転写ベルト12のクリーニング処理領域が設定される態様を例示したが、中間転写ベルト12が水平方向に搬送される領域に中間転写ベルト12のクリーニング処理領域を設定する態様も適用可能である。
また、上述した第1〜第4実施形態では、インクと反応してインクを増粘または凝集させる処理液を用いる2液凝集方式のインクジェット記録装置を例示したが、1次画像を中間転写ベルト12に仮固定する方法は2液凝集方式に限定されず、加熱や冷却などの相変化を用いる方式や、紫外線等のエネルギーを付与する方式など様々な方式を適用可能である.
更にまた、上述した第1〜第4実施形態では、ベルト形状の中間転写体を例示したが、本発明はドラム形状や平板形状の中間転写体を備えるインクジェット記録装置にも適用可能である。
10,200,400…インクジェット記録装置、12…中間転写ベルト、14…記録媒体、16,216…クリーニング処理部、16A…ブレード、16C,202,204…クリーニング液供給部、22…印字部、24…転写記録部、34…クリーニング液供給路、38…センサ、40…画像領域判断部、42…クリーニング液流量制御部、100…画像領域、102…非画像領域、120…電磁弁