A.第1実施例:
A−1.システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷システム100の概略構成を示す説明図である。印刷システム100は、印刷装置10と前加工機20と後加工機30とコンピューター40とを備えている。本実施例の印刷システム100では、印刷媒体としてのロール状の印刷用紙Pが、前加工機20、印刷装置10、後加工機30内を、この順に通って搬送される。そのため、本実施例の印刷システム100では、印刷用紙P上に、複数部数の印刷を連続して行うことができる。
印刷装置10は、コンピューター40から受信した画像データに基づいて印刷用紙Pに印刷を行う装置である。前加工機20は、印刷装置10による印刷に先立って印刷用紙Pの所定の位置に対して加工(以下、「前加工」ともいう)を行う装置である。前加工機20は、例えば、印刷用紙Pに対して切り抜き加工やミシン目加工を行う機構を備えている。後加工機は、印刷装置10による印刷後に印刷用紙Pに対して加工(以下、「後加工」ともいう)を行う装置である。後加工機30は、例えば、印刷用紙Pに対して裁断加工や折り曲げ加工を行う機構を備えている。
印刷装置10と前加工機20と後加工機30とは、所定の通信路15で接続されている。印刷装置10で印刷不良が検出された場合には、印刷装置10は、この通信路15を通じて前加工機20および後加工機30に停止信号を送信する。こうすることで、印刷装置10は、前加工機20や後加工機30における加工や印刷用紙Pの搬送を停止させることができる。
以上のように構成された印刷システム100は、広義の「印刷装置」として捉えることが可能である。
図2は、印刷装置10の概略構成を示す説明図である。本実施例の印刷装置10は、インクジェット式のカラープリンターであり、ヘッドユニット200と、搬送部300と、読取部400と、制御回路500と、を備えている。印刷装置10は、搬送部300によって搬送される印刷用紙Pに対し、ヘッドユニット200からインク滴を噴射して画像の印刷を行う機能を有する。また、印刷装置10は、印刷用紙P上に印刷された画像(以下、単に「印刷画像」ともいう)を読取部400によって読み取る機能を有する。
ヘッドユニット200は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色のインク毎のインク吐出ノズルを含む噴射ヘッドを備える。噴射ヘッドは、図示しないピエゾ素子の電圧調整によってインク吐出ノズルからインクを噴射する。本実施例では、印刷装置10は、4色のインクにより印刷をおこなうが、使用する色の種類や色の数ついては上記と異なっていてもよい。
図3は、インク吐出ノズルの配置構成を例示した説明図である。ヘッドユニット200は、印刷用紙Pと対向する面(下面)に複数のインク吐出ノズル210を備えている。インク吐出ノズル210には、搬送部300による印刷用紙Pの搬送方向(以後、単に「搬送方向」とも呼ぶ)に、各色のインク吐出ノズル210が並んで配置されている。各色のインク吐出ノズル210は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)ごとにそれぞれ千鳥状に並んで配置されている。千鳥状に配置された各色の複数のインク吐出ノズル210は、搬送方向と直交する方向(以後、単に「原稿幅方向」とも呼ぶ)において、印刷用紙Pの印刷可能領域と幅が等しくなるように構成されている。すなわち、本実施例に係る印刷装置10は、いわゆるラインプリンターとして構成されている。各色のインク吐出ノズル210は、原稿幅方向において、所定の印刷解像度(例えば、720dpi)でインク滴を吐出できるように配置されている。
図3に示すように、本実施例では、ヘッドユニット200には、各色のインク吐出ノズル210に加えて、予備ノズル220が配置されている。予備ノズル220は、原稿幅方向において、他のインク吐出ノズル210と同様の間隔で千鳥状に配置されている。予備ノズル220は、各色のインク吐出ノズル210のうちのいずれかにノズル詰まりが生じた場合に、そのインク吐出ノズル210に換えて、そのインク吐出ノズル210と同色のインクを原稿幅方向における同じ位置から吐出することができる。なお、予備ノズル220は、インク吐出ノズル210の色毎にそれぞれ用意されていてもよい。
搬送部300(図2)は、2つの搬送ローラ310、320と、搬送ローラ310、320の間に架設された搬送ベルト330と備える。搬送部300は、図示しない駆動モーターにより搬送ベルト330を駆動させることにより、搬送ベルト上の印刷用紙Pを搬送方向に搬送する。搬送部300は、ヘッドユニット200によるインクの吐出により、原稿幅方向と垂直な方向である搬送方向において所定の印刷解像度(例えば、1440dpi)でドットが形成されるよう、搬送速度が調整されている(例えば、254mm/秒)。
読取部400は、ヘッドユニット200の搬送方向下流側に配置され、搬送部300により搬送される印刷用紙P上の印刷画像の読み取りをおこなう。読取部400は、図示しない受光部と光源部とミラーとを含んでいる。受光部は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)などのイメージセンサーと、光をイメージセンサー上に集めるレンズにより構成されている。光源部は、例えば、基板上に複数の白色LEDが配置された構成を有する。なお、イメージセンサーとしては、CCD以外にも、CMOSセンサーを用いることが可能である。
図4は、読取部による画像の読取単位を示す説明図である。読取部400は、所定のスキャンレートで印刷画像の読み取りを行う。スキャンレートとは、原稿搬送方向の1ライン分を読み取るのに必要な時間のことをいい、例えば、7msとすることができる。1ラインとは、印刷解像度(例えば、720dpi×1440dpi)における1ドット幅のことではなく、イメージセンサーによって読取可能な幅のことをいう。例えば、印刷用紙Pの搬送速度が254mm/秒でスキャンレートが7msであれば、読取部400によって画像を読み取っている間に、印刷用紙Pは、1.78mm搬送される。そのため、1ラインとは、この1.78mmに相当する幅をいう。図4に示すように、例えば、搬送方向の印刷解像度が1440dpiであれば、1.78mmの幅は、およそ印刷画像の100ドット幅分に相当する。
制御回路500(図2参照)は、CPU、ROM、RAMからなる汎用コンピューター、および、AFE(Analog Front End)や画像処理チップなどの図示しない専用処理回路を備え、印刷装置10の全体の動作を制御する。図2に示すように制御回路500は、汎用コンピューターおよび専用処理回路により実現される機能ブロックとして、ヘッドユニット200および搬送部300の駆動を制御する印刷制御部510と、読取部400を制御する読取制御部520と、コンピューター40や前加工機20、後加工機30と通信するための通信部530と、画像処理部540と、印刷不良検出部550と、回復処理部560と、記憶部570と、を含んでいる。
画像処理部540は、コンピューター40等から取得した画像データに対して、RGB値からCMYK値への色変換処理やハーフトーン処理を施して、印刷画像を形成するためのデータ(以下、「印刷画像データ」という)を生成する。画像処理部540は、印刷画像データを記憶部570内の印刷画像バッファ572に格納する。
印刷制御部510は、搬送部300を制御して印刷用紙Pを下流に搬送させながら、印刷画像バッファ572に記憶されている印刷画像データに基づき、ヘッドユニット200を制御して、画像の印刷を行う。
読取制御部520は、読取部400を制御して、上流側から搬送されてくる印刷用紙P上の印刷画像の読み取りを行う。読取制御部520は、読み取った画像を、読取画像データとして、記憶部570内の読取画像バッファ571に記録する。
印刷不良検出部550は、読取画像バッファ571内の読取画像データと、印刷画像バッファ572内の印刷画像データとを用いて、印刷に不良が生じているか否かを判定する。印刷不良を検出するための具体的な処理内容については後述する。
回復処理部560は、印刷不良検出部550によって、印刷不良が検出された場合に、回復処理を実行する機能を有する。回復処理とは、印刷不良を改善するための処理であり、本実施例では、回復処理部560は、複数種類の回復処理を実行することができる。具体的には、「クリーニング処理」と、「フラッシング処理」と、「予備ノズル代替処理」と、「画像補正処理」と、「面付け変更処理」と、が回復処理として実行可能である。
「クリーニング処理」とは、インク吐出ノズル210内のインクを吸引してノズル中のインクの詰まりを解消する処理である。「フラッシング処理」とは、多量のインクをインク吐出ノズル210から吐出してノズル中のインクの詰まりを解消する処理である。「予備ノズル代替処理」とは、インクの詰まったノズルに換えて、そのノズルに対応する位置の予備ノズル220をその後の印刷で使用する処理である。「画像補正処理」とは、入力画像に対して、印刷位置の移動や回転処理等の画像補正処理を施すことにより、印刷不良を改善する処理である。「面付け変更処理」とは、割付印刷時において、割り付ける面を変更することで印刷不良を改善する処理である。なお、本実施例では、印刷不良改善のために何も行わないことを意味する「無回復処理」も、回復処理の一つとして扱う。上述した画像補正処理と面付け変更処理とは、本願の「印刷位置変更処理」に相当する。
図5は、上述した回復処理のうちの画像補正処理の概要を示す説明図である。図5(a)には、印刷用紙P上に三角形の画像F1が印刷されている例を示している。この画像F1上には、ノズル詰まりに伴う筋状の不良箇所が生じている。図5(b)には、画像補正処理により、画像F1の印刷位置を原稿幅方向に移動させた例を示している。この図5(b)に示すように、不良箇所の発生位置に応じて、印刷される画像の印刷位置を移動させれば、インク吐出ノズル210内のインクの詰まりを解消しなくても、印刷不良を改善することができる。
図6は、上述した回復処理のうちの面付け変更処理の概要を示す説明図である。図6(a)には、印刷用紙P上の右半分の割付面に三角形と丸を表す画像F2,F3が印刷されている例を示している。これらの画像F2,F3上には、ノズル詰まりに伴う筋状の不良箇所が生じている。図5(b)には、面付け変更処理により、画像F2,F3が印刷される割付面を印刷用紙Pの左半分に変更させた例を示している。この図6(b)に示すように、不良箇所の発生位置に応じて印刷される画像の割付面を変更すれば、画像補正処理と同様に、インク吐出ノズル210内のインクの詰まりを解消しなくても、印刷不良を改善することができる。
上述した複数種類の回復処理のうち、クリーニング処理やフラッシング処理、予備ノズル代替処理、については周知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
記憶部570(図2参照)は、読取画像バッファ571と、印刷画像バッファ572と、印刷条件データ573と、回復特性データベース574、を含んでいる。読取画像バッファ571には、読取制御部520により生成された読取画像データが格納される。印刷画像バッファ572には、画像処理部540により生成された印刷画像データが格納される。
図7は、印刷条件データの一例を示す説明図である。印刷条件データ573は、例えばコンピューター40によって印刷ジョブ毎に設定されるデータであり、印刷装置10による印刷処理の種々の条件が規定されている。本実施例では、このような条件として、「要求画質」、「印刷基準」、「前加工」、「後加工」、「メディアコスト」という項目が用意されている。「要求画質」とは、その印刷ジョブに要求される画質を表す。「印刷基準」は、その印刷ジョブを時間優先で実行するか、コスト優先で実行するかを表す。「前加工」は、その印刷ジョブが前加工機20による前加工を伴うジョブであるか否かを示す。「後加工」は、その印刷ジョブが後加工機30による後加工を伴うジョブであるか否かを示す。「メディアコスト」は、その印刷ジョブで用いられる印刷媒体の単価(単位長さあるいは単位面積当たりの価格)を示す。なお、本実施例では、印刷条件データ573は、印刷ジョブ毎に設定されることとするが、印刷ジョブとは無関係に、印刷装置10の印刷モードとして設定されることとしてもよい。また、本実施例では、印刷条件データには印刷の条件が規定されていることとしたが、回復処理の条件が規定されていることとしてもよい。つまり、「要求画質」とは、回復処理後に要求される画質を表していても良く、また、「印刷基準」とは、回復処理を時間優先かコスト優先のどちらかで行うかを示す基準であっても良い。
図8は、回復特性データベースの一例を示す説明図である。この回復特性データベース574には、上述した回復処理のそれぞれの特性が規定されている。本実施例では、このような特性として、「画質」、「回復時間」、「メディア使用量」、「インク使用量」、「メディア追加」、「位置変更」という項目が用意されている。「画質」とは、その回復処理によって実現される回復後の印刷画質を表す。「回復時間」は、その回復処理に要する時間を表す。「メディア使用量」は、その回復処理に利用される印刷媒体の使用量をあらわす。「インク使用量」は、その回復処理に使用されるインクの使用量を表す。「メディア追加」は、その回復処理に対して印刷媒体の追加が必要であるか否かを表す。「位置変更」とは、その回復処理によって印刷位置が変更されるか否かを表す。
A−2.印刷処理:
図9は、印刷装置10によって実行される印刷処理のフローチャートである。この印刷処理が開始されると、まず、印刷画像バッファ572に記憶された印刷画像データに基づき、印刷制御部510によって1部数毎、印刷用紙P上に画像の印刷が行われる(ステップS100)。画像の印刷が行われると、印刷不良検出部550により、ステップS100による印刷に不良が発生したか否かを判定するための印刷不良検出ルーチンが実行される(ステップS200)。この印刷不良検出ルーチンは、上流側から搬送されてきた印刷用紙P上の1部数に相当する印刷範囲の読み取りが読取部400によって開始されるタイミングで開始される。処理内容の詳細については後述する。
印刷不良検出ルーチンにより、ステップS100による印刷の結果が印刷不良であると判定されると(ステップS300:YES)、回復処理部560によって、上述した複数の回復処理の中から現在の印刷条件に適した回復処理を選択するための回復処理選択ルーチンが実行される(ステップS400)。回復処理選択ルーチンの詳細については後述する。回復処理選択ルーチンによって回復処理が選択されると、回復処理部560は、選択された回復処理を実行することで、印刷不良の改善を図る(ステップS500)。ステップS300において、印刷不良ではないと判定された場合には、ステップS400とステップS500の処理はスキップされる。なお、ステップS500では、後述する回復処理選択ルーチンによって印刷位置の変更を伴う回復処理(画像補正処理および面付け変更処理)が選択された場合には、回復処理部560は、後加工機30に対して、変更後の印刷位置を表す情報を通知する。
最後に、印刷制御部510によって必要部数の印刷が完了したか否かが判定され(ステップS600)、印刷が完了すれば、当該印刷処理は終了する。一方、印刷が完了していなければ、処理がステップS100に戻され、上述した一連の処理が繰り返される。
A−3.印刷不良検出ルーチン:
図10は、図9のステップS200で実行される印刷不良検出ルーチンのフローチャートである。この印刷不良検出ルーチンが実行されると、まず、印刷不良検出部550は、読取画像バッファ571から1ライン分の読取画像データを取得する(ステップS210)。
続いて、印刷不良検出部550は、印刷画像データから1ライン分の比較画像データの生成を行う(ステップS220)。具体的には、印刷不良検出部550は、印刷画像バッファ572に格納されている印刷画像データから、ステップS210において取得した1ライン分の読取画像データに相当する位置および幅の印刷画像データを取得し、これを読取画像の解像度に合わせて解像度変換することにより1ライン分の比較画像データを生成する。例えば、読取画像データの1ラインが、印刷画像データの100ドット幅に相当する場合には、搬送方向の解像度を1/100に圧縮し、画素値を平均化する。また、印刷画像データの搬送幅方向の解像度についても、印刷解像度とイメージセンサーの解像度の相違に応じて解像度変換を行う。
読取画像データを1ライン分取得し、比較画像データを1ライン分生成すると、印刷不良検出部550は、これら1ライン分について、読取画像データを構成する画素と比較画像データを構成する画素の画素値の差分をすべての画素について算出する(ステップS230)。この画素値は、輝度値であってもよいし、R,G,Bのいずれかの値であってもよい。
読取画像データと比較画像データとの画素値の差分を算出すると、印刷不良検出部550は、印刷不良が生じている不良箇所の検出をおこなう(ステップS240)。具体的には、ステップS230において算出された1ライン分の各画素の差分値と閾値とそれぞれを比較し、閾値よりも差分値が大きい画素を不良箇所として検出する。印刷不良検出部550は、こうして不良箇所として検出された画素の位置を記憶部570に記録する。
印刷不良検出部550は、上記のステップS210〜S240を読取画像データの全ラインについておこなう(ステップS250)。全ラインとは、印刷用紙P上の1部数に対応する印刷範囲内の全てのラインのことをいう。全ラインについて処理が完了すると(ステップS250)、印刷不良検出部550は、不良箇所の集計をおこなう(ステップS260)。
図11は、不良箇所の集計の例を示す図である。上記ステップS260では、印刷不良検出部550は、ステップS240で検出されたライン毎の不良箇所を、全ラインについて搬送方向に合計することで集計を行う。このように、全ラインについて合計すれば、図11に示すように、不良が発生している部分の合計値は、他の部分と比べると有意に大きな値になる。
不良箇所の集計を行うと、印刷不良検出部550は、その集計結果に基づき、印刷不良が発生しているか否かを判定する(ステップS270)。具体的には、印刷不良検出部550は、不良箇所のそれぞれの合計値と所定の閾値とを比較し、閾値よりも大きい合計値となった読取画像上の画素位置に印刷不良が発生していると判定する。印刷不良検出部550は、印刷不良が発生していると判定した場合には、印刷不良が発生している画素位置を、原稿幅方向におけるノズルの位置に変換して記憶部570に記録する。以下では、印刷不良が発生しているノズルのことを「不良ノズル」という。
A−4.回復処理選択ルーチン:
図12は、図9のステップS400において実行される回復処理選択ルーチンのフローチャートである。この処理は、上述した印刷不良検出ルーチンによって印刷不良が発生していると判定された場合に実行される処理である。
この回復処理選択ルーチンが実行されると、まず、回復処理部560は、図7に示した印刷条件データ573を記憶部570から読み込む(ステップS405)。印刷条件データ573を読み込むと、回復処理部560は、この印刷条件データ573内の画質設定に応じて、複数の回復処理の中から現在の印刷ジョブに適用可能な回復処理の候補を絞り込む(ステップS410)。具体的には、回復処理部560は、記憶部570に記憶された回復特性データベース574(図8)を参照し、この回復特性データベース574に記録されている回復処理の中から、印刷条件データ573内の「要求画質」を満足する回復処理を選択する。例えば、印刷条件データ573内の「要求画質」が「良」であれば、図8に示した回復特性データベース574からは、「クリーニング処理」と、「フラッシング処理」と、「予備ノズル代替処理」と、「面付け変更処理」とが回復処理の候補として選択されることになる。
画質設定による回復処理の候補の絞り込みを行うと、回復処理部560は、絞り込まれた回復処理の候補の中に「画像補正処理」が含まれているか否かを判定する(ステップS415)。「画像補正処理」が含まれている場合には、回復処理部560は、画像補正処理による印刷不良改善の効果を評価する(ステップS420)。具体的には、回復処理部560は、上述した印刷不良検出ルーチンによって記憶部570に記録された印刷不良位置を読み込み、現在の印刷画像データの印刷時に、不良ノズルが何回使用されるかを計算する。そして、回復処理部560は、その使用回数を基準として、不良ノズルが使用される回数が最も少なくなる印刷位置を求めることで評価を行う。回復処理部560は、こうして、不良ノズルが使用される回数が最も少なくなる印刷位置を求めると、画像補正処理によってその印刷位置に印刷画像を移動させたと仮定した場合に、その印刷結果が印刷条件データに規定された要求画質を満足するか否かを判断する(ステップS425)。具体的には、画像補正後の印刷画像データの印刷時に不良ノズルが使用される回数と、要求画質毎に予め定められた閾値とを対比することで、要求画質を満足するか否かを判断する。
上記ステップS425において、画像補正後の印刷画像が要求画質を満足しないと判断された場合には、回復処理部560は、「画像補正処理」を、上記ステップS410で絞り込まれた回復処理の候補の中から除外する(ステップS430)。これに対して、画像補正後の印刷画像が要求画質を満足すると判断された場合には、回復処理部560は、ステップS430の処理をスキップして、上記ステップS410で絞り込まれた回復処理の候補の中に画像補正処理を残存させる。なお、ステップS415において、上記ステップS410で絞り込まれた回復処理の候補の中に画像補正処理が含まれていないと判定された場合には、回復処理部560は、上述したステップS420〜430をスキップする。
続いて、回復処理部560は、印刷条件データ573中の「前加工」の有無に応じて回復処理の候補の更なる絞り込みを行う(ステップS435)。具体的には、印刷条件データ573に、「前加工あり」と規定されていれば、回復処理部560は、現在選択されている回復処理の候補の中から、「画像補正処理」と「面付け変更処理」とを除外する。これは、切り抜き加工やミシン目加工といった前加工が予め行われている印刷用紙Pに対して印刷位置の変更を伴う回復処理(画像補正処理および面付け変更処理)を実行すると、印刷位置がずれてしまい、正常な印刷物を生成できないためである。
前加工の有無に応じた絞り込みを行うと、回復処理部560は、現時点で選択されている回復処理のすべてについて、回復処理に要する時間を算出し(ステップS440)、更に、回復処理に要するコストを算出する(ステップS445)。回復処理に要する時間は、回復特性データベース574中の「回復時間」に基づき算出することができる。一方、回復処理に要するコストは、回復特性データベース574中の「メディア使用量」、「インク使用量」、「メディア追加」および、印刷条件データ573中の「メディアコスト」に基づき算出することができる。なお、インクのコストを算出するためのインクの単価は、予め記憶部570に記憶されていても良いし、印刷条件データ573に記録されていても良い。
回復処理にかかる時間およびコストを算出すると、回復処理部560は、印刷条件データ573に記録された「印刷基準」が、「時間優先」であるか「コスト優先」であるかを判断する(ステップS450)。印刷基準が時間優先であれば、回復処理部560は、現時点で選択されている回復処理を、回復処理時間、コストの優先順でソート(並び替え)する(ステップS455)。一方、印刷基準がコスト優先であれば、回復処理部560は、現時点で選択されている回復処理を、コスト、回復処理時間の優先順でソートする(ステップS460)。つまり、これらの処理では、印刷条件データ573中の印刷基準に応じて、各回復処理が選択される順位を決定している。こうして、印刷基準に応じた回復処理のソートが完了すると、回復処理部560は、ソートによって最も上位になった回復処理を、図9のステップS500で実行する回復処理として選択する(ステップS470)。なお、図9のステップS500では、印刷条件データに、「後加工あり」と記録されており、かつ、ステップS470において選択された回復処理が「画像補正処理」や「面付け変更処理」であれば、これらの処理によって変更された印刷位置を後加工機30に通知する。こうすることで、後加工機30は、変更後の印刷位置に基づいて、後加工を行うことができる。
以上で説明した本実施例の印刷システム100では、印刷ジョブ毎に設定された印刷条件データ573に基づいて、複数用意された回復処理の中から、その印刷条件に適した回復処理を選択する。そのため、印刷不良発生時において、印刷の条件あるいはユーザの要求に適した回復処理を自動的に実行することが可能になる。また、本実施例では、実行可能な回復処理の特性が回復特性データベース574に規定されているので、その特性値を変更することで、システム構成の変更に柔軟に対応することが可能になる。更に、本実施例では、回復処理に要する時間やコストだけではなく、前加工や後加工の有無に応じて適用可能な回復処理を選択することができるので、例えば、前加工によって予め切り抜き加工やミシン目加工が行われた印刷用紙に対して、画像補正や面付け補正が行われることがない。そのため、回復処理によって更なる印刷不良が発生してしまうことを抑制することが可能になる。
B.第2実施例:
上述した第1実施例では、読取部400によって印刷用紙Pから読み取った読取画像と、印刷画像データから生成された比較画像とを対比することで、不良ノズルの検出を行った。これに対して第2実施例では、検査用パターンを印刷用紙Pの所定の位置に印刷し、この検査用パターンを読取部400によって読み取ることで印刷不良の検出を行う。なお、本実施例の印刷システム100および印刷装置10の構成は第1実施例と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図13は、本実施例において印刷用紙上に印刷される検査用パターンの一例を示す説明図である。本実施例では、印刷装置10は、ロール状の印刷用紙Pに印刷を行い、後加工機30によって、この印刷用紙Pの裁断を行う。そのため、印刷装置10は、裁断の際の基準となるマークMK(トンボ)を印刷用紙Pに印刷する。このマークMKで囲まれる領域A1には、印刷画像が形成され、マークMK外の領域A2は最終的に裁断される。本実施例では、このマークMK外の領域に、横縞状の検査用パターンPTを印刷する。印刷用紙Pはロール状であるため、印刷用紙Pには、一定間隔で検査用パターンPTが印刷されることになる。
図14は、検査用パターンの詳細な構成を示す説明図である。図14には、検査用パターンPTが印刷されている印刷用紙Pと、検査用パターンPTを形成するインクのドット記録位置と各ドットを形成するインク吐出ノズル210の位置とを対応させたヘッドユニット200の一部を示している。図14には、理解の便のため、インク吐出ノズル210の左側から順に♯1〜♯16の番号(以後、「ノズル番号」とも呼ぶ)を付している。図14に示すように、検査用パターンPTは、4つのパターンが搬送方向に並んで構成されている。以後、下流側のパターンから順に、第1列目パターン、第2列目パターン、第3列目パターン、第4列目パターンと呼ぶ。
印刷装置10は、すべてのインク吐出ノズル210からインクを吐出させて検査用パターンPTを形成する。具体的には、印刷装置10は、ブラック(K)のインク吐出ノズル210のうち、ノズル番号が偶数のインク吐出ノズル210からインクを吐出させて、第1列目パターンを形成する。次に、印刷装置10は、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のそれぞれのインク吐出ノズル210のうち、ノズル番号が偶数のインク吐出ノズル210からそれぞれのインクが重なるように吐出させて第2列目パターンを形成する。次に、印刷装置10は、ブラック(K)のインク吐出ノズル210のうち、ノズル番号が奇数のインク吐出ノズル210からインクを吐出させて、第3列目パターンを形成する。次に、印刷装置10は、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のそれぞれのインク吐出ノズル210のうち、ノズル番号が奇数のインク吐出ノズル210からそれぞれのインクが重なるように吐出させて第4列目パターンを形成する。
印刷装置10は、第1実施例と同様に、印刷用紙Pの搬送方向の印刷解像度が1440dpiとなるように設定されている。印刷装置10は、搬送方向にそれぞれ100dotずつインクを吐出することにより、第1〜4列目パターンをそれぞれ形成する。よって、第1〜4列目パターンの搬送方向における幅(ライン幅)は、それぞれ1.78mmとなっている。また、上述のとおり、各色のインク吐出ノズル210は、原稿幅方向において、720dpiでインクを吐出できるように配置されているため、第1〜4列目パターンを構成するドットライン同士の間隔は70.6μmとなっている。
図15は、色抜けが生じている検査用パターンの一例を示す説明図である。図15に示すように、ブラック(K)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合、不良ノズルのノズル番号が偶数であれば、第1列目パターンに色抜けによる白線が生じる。不良ノズルのノズル番号が奇数であれば、第3列目パターンに色抜けによる白線が生じる。
シアン(C)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合、不良ノズルのノズル番号が偶数であれば、第2列目パターンに色抜けによる赤線が生じる。不良ノズルのノズル番号が奇数であれば、第4列目パターンに色抜けによる赤線が生じる。マゼンタ(M)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合、不良ノズルのノズル番号が偶数であれば、第2列目パターンに色抜けによる緑線が生じる。不良ノズルのノズル番号が奇数であれば、第4列目パターンに色抜けによる緑線が生じる。イエロー(Y)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合、不良ノズルのノズル番号が偶数であれば、第2列目パターンに色抜けによる青線が生じる。不良ノズルのノズル番号が奇数であれば、第4列目パターンに色抜けによる青線が生じる。
第2列目パターンおよび第4列目パターンは、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のそれぞれのインクが重なってグレーに近い色(以後、「コンポジットブラック」とも呼ぶ)が形成されている。そのため、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の3色のうち、1色が抜けると、抜けた部分は抜けた色の補色の色となる。すなわち、シアン(C)が抜けた部分は、シアン(C)の補色の赤色となり、マゼンタ(M)が抜けた部分は、マゼンタ(M)の補色の緑色となり、イエロー(Y)が抜けた部分は、イエロー(Y)の補色の青色となる。
図16は、第2実施例において実行される印刷不良検出ルーチンのフローチャートである。この印刷不良検出ルーチンは、検査用パターンPTの読取が読取部400によって開始される一定のタイミング毎に実行される。なお、検査用パターンPTが印刷された位置は、他の印刷位置よりも暗いため、例えば、読取画像データを所定の箇所でサンプリングして、読取画像が暗くなったと判定された場合に、印刷不良検出ルーチンを開始するようにしてもよい。
この印刷不良検出ルーチンが実行されると、まず、印刷不良検出部550は、読取画像バッファ571から検査用パターンPTの1ライン分の読取画像データを読み込む(ステップS1210)。本実施例に係る印刷装置10も、第1実施例と同様に、スキャンレートが7ms、印刷用紙Pの搬送速度が254mm/秒、となるように設定されている。そのため、読取部400が読み取る印刷画像の1ライン分の幅は、1.78mmとなる。すなわち、検査用パターンPTを構成する第1〜4列目パターンは、それぞれ、読取部400が読み取る印刷画像の1ライン分に相当する。
印刷装置10は、第1〜4列目パターンのそれぞれを構成する搬送方向約100ドット分が1画素となるように検査用パターンPTを読み取る。読取画像のうち、第1〜4列目パターンのいずれかのパターンと対応する各画素(以後、「パターン対応画素」とも呼ぶ)の画素値は、それぞれ、そのパターンの搬送方向約100ドット分の平均値となっている。なお、画素値は、RGBそれぞれの値をいう。以後、読取画像のうち、第N列目パターンと対応する各画素を「第N列目パターン対応画素」とも呼ぶ。
印刷不良検出部550は、読取画像の中からパターン対応画素の特定を行う(ステップS1220)。具体的には、検査用パターンPTの原稿幅方向における幅は、読取部400の受光部の原稿幅方向の幅より小さいため、読取画像には、印刷用紙Pの余白領域を読み取った画素と、パターン対応画素とが含まれている。印刷不良検出部550は、取得した読取画像を構成する各画素の画素値から、検査用パターンPTと印刷用紙Pの余白部分との境界となる画素を判定する。具体的には、印刷用紙Pの余白領域を読み取った画素の画素値と、パターン対応画素の画素値との差分値から境界を判定することができる。境界を判定することにより、読取画像から、パターン対応画素を特定することができる。印刷不良検出部550は、特定した複数のパターン対応画素と、各色の複数のインク吐出ノズル210と、をそれぞれ対応付けるため、読取画像の解像度変換をおこなう。
読取画像の中からパターン対応画素の特定を行うと、印刷不良検出部550は、パターン対応画素の画素値の基準となる基準値の算出をおこなう(ステップS1230)。具体的には、印刷不良検出部550は、すべてのパターン対応画素の画素値を用いて、基準値として、パターン対応画素の画素値の平均値と標準偏差とを算出する。印刷不良検出部550は、算出したパターン対応画素の画素値の平均値および標準偏差を用いて、後述する不良ノズル検出に用いる閾値をRGBごとにそれぞれ設定する。
基準値の算出を行うと、印刷不良検出部550は、読取画像に対してノイズの除去をおこなう(ステップS1240)。具体的には、印刷不良検出部550は、平滑化フィルタにより読取画像に含まれるノイズを除去する。なお、このノイズの除去は省略することも可能である。
ノイズの除去後、印刷不良検出部550は、パターン対応画素の画素値を用いて不良ノズルの検出をおこなう(ステップS1250)。具体的には、印刷不良検出部550は、パターン対応画素のRGBごとの値(画素値)と、ステップS1230において設定した閾値とを比較することにより不良ノズルの検出をおこなう。図16〜図18を用いてさらに具体的に説明する。
図17は、ブラック以外の1色について不良ノズルが発生したときのパターン対応画素の画素値を説明するための図である。図17に示すグラフの横軸は、読取画像における各パターン対応画素の配置位置と対応している。縦軸は、パターン対応画素のRGBごとの値(画素値)を示している。パターン対応画素とインク吐出ノズル210とは対応しているため、横軸は、インク吐出ノズル210のノズル番号とも対応している。
図17(a)は、シアン(C)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。図17(b)は、マゼンタ(M)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。図17(c)は、イエロー(Y)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。
印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素の画素値が図17(a)〜(c)に示す状態である場合、不良ノズルが存在する色のノズル番号が偶数のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとして検出する。また、印刷不良検出部550は、第4列目パターン対応画素の画素値が図17(a)〜(c)に示す状態である場合、不良ノズルが存在する色のノズル番号が奇数のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとして検出する。
図18は、ブラック以外の2色について不良ノズルが発生したときのパターン対応画素の画素値を説明するための図である。図18に示すグラフの横軸および縦軸は、図17と同様である。図18(a)は、シアン(C)およびマゼンタ(M)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。図18(b)は、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。図18(c)は、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。
印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素もしくは第4列目パターン対応画素の画素値が図18(a)に示す状態である場合、シアン(C)およびマゼンタ(M)のそれぞれのインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するそれぞれのインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとしてそれぞれ検出する。印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素もしくは第4列目パターン対応画素の画素値が図18(b)に示す状態である場合、マゼンタ(M)のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯j、および、イエロー(Y)のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iをそれぞれ不良ノズルとして検出する。印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素もしくは第4列目パターン対応画素の画素値が図18(c)に示す状態である場合、シアン(C)のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯j、マゼンタ(M)のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯k、イエロー(Y)のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iをそれぞれ不良ノズルとして検出する。
図19は、ブラックについて不良ノズルが発生したときのパターン対応画素の画素値を説明するための図である。図19に示すグラフの横軸および縦軸は、図17と同様である。図19(a)は、ブラック(K)のインク吐出ノズル210の一部に不良ノズルが存在する場合のパターン対応画素の画素値を示している。図19(b)は、ブラック(K)のインク吐出ノズル210に不良ノズルが存在しない場合のパターン対応画素の画素値を示している。
印刷不良検出部550は、第1列目パターン対応画素の画素値が図19(a)に示す状態である場合、ブラック(K)のノズル番号が偶数のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとして検出する。また、印刷不良検出部550は、第3列目パターン対応画素の画素値が図19(a)に示す状態である場合、ブラック(K)のノズル番号が奇数のインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとして検出する。印刷不良検出部550は、第1列目パターン対応画素もしくは第3列目パターン対応画素の画素値が図19(b)に示す状態である場合、ブラック(K)のインク吐出ノズル210について不良ノズルを検出しない。
なお、印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素もしくは第4列目パターン対応画素の画素値が図19(a)に示す状態である場合、シアン(C)、マゼンタ(M)、および、イエロー(Y)のそれぞれのインク吐出ノズル210のうち、画素値が閾値より大きい画素と対応するそれぞれのインク吐出ノズル♯iを不良ノズルとしてそれぞれ検出する。また、印刷不良検出部550は、第2列目パターン対応画素もしくは第4列目パターン対応画素の画素値が図19(b)に示す状態である場合、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インク吐出ノズル210について不良ノズルを検出しない。
印刷不良検出部550は、上述した方法により不良ノズルを検出すると、不良ノズルを特定するための情報を記憶部570に記憶する。不良ノズルを特定するための情報とは、例えば、不良ノズルが吐出する色や、ノズル番号などをいう。
図16に戻り、印刷不良検出部550は、記憶部570から次のラインの読取画像を取得し(ステップS1260)、検査用パターンPTの読取が終了したか否かを判断する(ステップS1270)。印刷不良検出部550は、ステップS1260で取得された読取画像が余白領域に該当する画像である場合には、検査用パターンPTの読取が終了したと判断することができる。検査用パターンPTの読取が終了していないと判断した場合には、処理をステップS1230に戻して、読み取ったライン(第2〜4列目パターンのいずれか)に基づいて、ステップS1230〜1270までの処理を繰り返し実行する。
検査用パターンPTの読取が終了したと判断した場合には、印刷不良検出部550は、不良ノズルが存在したか否かの結果、および、不良ノズルが存在した場合にはそのノズルの位置を記憶部570に出力し(ステップS1280)、当該印刷不良検出ルーチンを終了する。
以上で説明した第2実施例によっても、第1実施例と同様に不良ノズルの検出を行うことができる。また、本実施例によれば、印刷画像ではなく、専用の検査用パターンPTに基づいて不良ノズルの検出を行うため、印刷画像の形態に影響されることなく精度良く不良ノズルの位置を検出することができる。この結果、不良ノズルに対する回復処理を的確に行うことが可能になる。
C.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。そのほか、以下のような変形が可能である。
上記実施例では、複数種類の回復処理の中から実行する回復処理を一つだけ選択する例を示したが、回復処理を複数選択してこれらを組み合わせて実行することとしてもよい。
上記実施例では、印刷条件データ573および回復特性データベース574は、印刷装置10内の記憶部570に記憶されていることとした。しかし、これら印刷条件データ573や回復特性データベース574は、コンピューター40から取得することとしても良いし、所定の記憶媒体を介して読み込むこととしても良い。
上記実施例の回復処理選択ルーチンでは、例えば、印刷不良発生時における残り部数に応じて回復処理を選択しても良い。具体的には、残り部数が少ない場合に、無回復処理を選択したり、画質の低い回復処理を選択することなどが可能である。
上記実施例では、印刷用紙に印刷された画像を光学的に読み取ることで印刷不良を検出した。これに対して、例えば、インクの飛翔状態を光学的に検出することで印刷不良を検出しても良いし、インク吐出後のノズル内の振動状態によって印刷不良を検出しても良い。
上記実施例では、印刷装置10はラインプリンターであることとしたが、シリアルプリンターでもよい。また、印刷装置10は、インクジェット方式に限られず、レーザー方式や熱転写方式であってもよい。
上記実施例では、印刷システム100は前加工機20と後加工機30とを備えているが、これら前加工機20や後加工機30は省略しても良い。また、図7に示した印刷条件データ573中の各項目や図8に示した回復特性データベース574中の各項目は、例示であり、他の項目を含んでいたり、一部が省略されていてもよい。
上記実施例では、印刷媒体としてロール状の印刷用紙Pを用いたが、印刷媒体は、A4サイズやA3サイズなど、予め裁断された用紙であっても良い。また、印刷媒体は紙に限られず、フィルム状の印刷媒体や樹脂製の印刷媒体など、種々の印刷媒体を適用可能である。
上記実施例における印刷解像度やスキャンレート、搬送速度、ノズル間隔等はすべて例示であり、種々の値を設定可能である。