JP2009091437A - アクリルゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
加硫物とした際に、常態物性を損なわず、耐熱性、特に熱老化後の引張強さの残留率と伸びの残留率のバランスに優れるアクリルゴム組成物とその加硫物、およびこれを用いたホース部品、シール部品、防振ゴム部品を提供する。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部と、酢酸ビニル1〜10質量部と、架橋席モノマー1〜3質量部を共重合させて得られるアクリルゴム組成物。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、エチルアクリレート100質量部に対して、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の化合物50〜200質量部を配合させたものであることが好ましく、さらに、エチレンを15質量部以下の割合で共重合させたものが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクリルゴム組成物に関する。より詳しくは、耐熱性を向上させたアクリルゴム組成物に関する。
アクリルゴムやその加硫物は、耐熱性や耐油性、機械的特性、圧縮永久歪み特性等の物性に優れているため、自動車のエンジンルーム内のホース部材やシール部材、防振ゴム部材などの材料として多く使用されている。
これら部材については、近年の排ガス対策やエンジンの高出力化等の影響を受け、より耐熱性を有するものが望まれている。
耐寒性と耐熱性のバランスに優れるエチレン−アクリルゴム組成物として、エチレン−アクリルゴム組成物に特定のポリテトラメチレングリコール化合物を配合させたエチレン−アクリルゴム組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたエチレン−アクリルゴム組成物は、加工性、加硫速度、機械的特性、圧縮永久歪み特性、耐熱性などのバランスを兼ね備えた材料であり、通常の使用ではなんら問題ないものであるが、上記のような使用条件の苛酷化から、更なる耐熱性の改良が求められており、中でも熱老化後の切断時伸びと伸びの残留率の低下が少ないものが要望されている。
特開2006−036826号公報
本発明は、加硫物とした際に、常態物性を損なわず、耐熱性、特に熱老化後の切断時伸びと伸びの残留率に優れるアクリルゴム組成物とその加硫物、およびこれを用いたホース部品、シール部品、防振ゴム部品を提供することを主な課題とする。
本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部と、酢酸ビニル1〜10質量部と、架橋席モノマー1〜3質量部を共重合させて得られるアクリルゴム組成物である。
アクリルゴム組成物の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、エチルアクリレート100質量部に対して、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の化合物50〜200質量部を配合させたものであることが好ましい。
アクリルゴム組成物の架橋席モノマーは、モノ−n−ブチルマレートまたはグリシジルメタクリレートから選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
アクリルゴム組成物は、さらに、エチレンを15質量部以下の割合で共重合させたものが好ましい。
また、本発明は、アクリルゴム組成物を加硫して得られた加硫物及び加硫物からなるホース部品、シール部品、防振ゴム部品をも提供するものである。
本発明により、加硫物とした際に、常態物性を損なわず、耐熱性、特に熱老化後の切断時伸びと伸びの残留率に優れるアクリルゴム組成物とその加硫物、およびこれを用いたホース部品、シール部品、防振ゴム部品を得ることができる。
アクリルゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの不飽和モノマーと、酢酸ビニル、架橋席モノマーを共重合させて得られるものである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの不飽和モノマーは、重合して得られるカルボキシル基含有アクリルゴムの骨格となるものであり、その種類を選択することにより、得られるアクリルゴム組成物の常態物性や耐寒性、耐油性などの基本特性を調整できるものである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの不飽和モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、があり、これら単体だけでなく2種類以上のものを併用してもよい。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレートから、選ばれる少なくとも一種を用いることで、熱老化後の引張強さの残留率と伸びの残留率を少なくできるため好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの不飽和モノマーとして、エチルアクリレートと、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートを併用する場合は、エチルアクリレート100質量部に対して、これらの不飽和モノマーを50〜200質量部、好ましくは60〜170質量部、更に好ましくは70〜160質量部の範囲で併用することが好ましい。
これらの不飽和モノマーの配合量を調整することで、得られるアクリルゴム組成物やその加硫物の、耐寒性や耐油性を調整することができる。例えば、n−ブチルアクリレートの配合量を多くすることで耐寒性を向上させることができ、エチルアクリレートの配合量を多くすることで耐油性を向上させることができる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの不飽和モノマーは、これらと共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルを共重合させてもよい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、シアノメチル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、1−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノオクチル(メタ)アクリレートなどがある。
更に、1,1−ジヒドロペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,5−トリヒドロペルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレートなどの含フッ素(メタ)アクリル酸エステル、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの第3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどを共重合させてもよい。
酢酸ビニルは、アクリルゴム組成物が熱老化した際に、その分子間を再度架橋させてアクリルゴム組成物の伸びなどの機械的特性を維持させるために用いるものである。酢酸ビニルの配合量を調整することにより、得られるアクリルゴム組成物の分子間架橋の架橋点の数を調整できる。
アクリルゴム組成物は、熱や紫外線などの影響により、その主鎖が切断して引張強さや破断伸びといった機械的特性が急激に低下してしまうものである。
アクリルゴム組成物中に共重合させた酢酸ビニル単位は、その末端水素が引き抜かれて架橋点が生成されるという特殊な効果を有する。
そこで、酢酸ビニルをアクリルゴム組成物の主鎖に共重合させておくことで、アクリルゴムの主鎖が切断しても、酢酸ビニル単位が架橋点となってアクリルゴム組成物の分子間を再度架橋させ、機械的強度の低下を抑えることができる。
酢酸ビニルの配合量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、1〜10質量部の範囲、好ましくは1〜5質量部の範囲である。酢酸ビニルの配合量が1質量部より少ないと、アクリルゴム組成物の主鎖切断が支配的になってしまい、機械的特性の低下を抑制できない。10質量部を超えて配合してしまうと、分子間架橋が支配的になってしまい、アクリルゴム組成物が硬化してゴム弾性を失ってしまう。
架橋席モノマーは、アクリルゴム組成物を加硫物とする際に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの分子間同士を架橋させるために配合するものであり、エポキシ基を含有するもの、活性塩素基、カルボン酸基、エポキシ基とカルボン酸基の両方を含有するもの等がある。
架橋席モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、2−クロルエチルビニルエーテル、2−クロルエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルアセテートなどの活性塩素基を有するもの、また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、桂皮酸などのカルボン酸基を含有するもの、また、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含有するものがある。
これらの化合物のなかでも、カルボキシル基を有する架橋席として、モノ−n−ブチルマレート、エポキシ基を有する架橋席モノマーとして、グリシジルメタクリレートを用いると、その他の化合物を用いた場合に比べて、より耐熱性が向上したアクリルゴム組成物の加硫物が得られるため好ましい。
架橋席モノマーの添加量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、1〜3質量部の範囲である。架橋席モノマーの添加量が1質量部より少ないと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを架橋させる効果が少なく、得られた加硫物の強度が不足してしまう。3質量部を超えて添加してしまうと、得られた加硫物が硬化してゴム弾性を失ってしまう。
アクリルゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で上記のモノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合させることもできる。共重合可能な他のモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、メチルビニルケトンのようなアルキルビニルケトン、ビニルエチルエーテル、アリルメチルエーテルなどのビニル及びアリルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルニトリル、アクリルアミド、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピオン酸ビニルなどのエチレン性不飽和化合物がある。
特に、アクリルゴム組成物にエチレンやプロピレンを共重合させる場合には、15質量部以下、より好ましくは10質量部以下とすることが好ましい。これらのモノマーを共重合させることによって、耐寒性を向上させたアクリルゴムを得ることができる。
アクリルゴム組成物は、これらのモノマーを乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などの公知の方法により共重合させて得られるものである。重合条件は、それぞれ一般的な条件で行えばよい。
アクリルゴム組成物は、さらに、加硫剤や加硫促進剤を添加して加硫させることにより、加硫ゴムとすることができる。
加硫剤は、アクリルゴム組成物の加硫に通常用いられるものであればよく、特に限定するものではないが、架橋席モノマーとしてカルボキシル基を有するものにはポリアミン化合物が適当であり、これにグアニジン系化合物を加えた加硫系が好適に用いられる。また、架橋席モノマーとしてエポキシ基を有するものにはイミダゾール化合物が好適に用いられる。
ポリアミン化合物としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4−3−アミノフェノキシ)フェニルサルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンなどの芳香族ポリアミン化合物、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミン化合物などがある。
グアニジン系化合物としては、グアニジン、テトラメチルグアニジン、ジブチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチル−5−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール・トリメリット酸塩、1−アミノエチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシル−イミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1)’〕エチル−s−トリアジン・イソシアヌール酸付加物、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ−(シアノエトキシメチル)イミダゾール、N−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)尿素、N,N’−ビス−(2−メチルイミダゾリル−1−エチル)尿素、1−(シアノエチルアミノエチル)−2−メチルイミダゾール、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−アジボイルジアミド、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−ドデカンジオイルジアミド、N,N’−〔2−メチルイミダゾリル−(1)−エチル〕−エイコサンジオイルジアミド、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1)’〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’〕−エチル−s−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロライドなどが挙げられる。
加硫剤の添加量は、特に限定するものではないが、アクリルゴム組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。この範囲にすることで必要十分な加硫処理が行える。
加硫促進剤は、加硫速度を調整するため、エポキシ樹脂の硬化剤、例えば熱分解アンモニウム塩、有機酸、酸無水物、アミン類、硫黄及び硫黄化合物等の加硫促進剤を本発明の効果を減退しない範囲で添加してもよい。
アクリルゴム組成物の加硫物は、これらの化合物を加硫温度以下の温度で混練した後に所望する各種の形状に成形された後に加硫して加硫物としたり、加硫させた後に各種の形状に成形したりして得られるものである。加硫温度はゴム組成物の配合や加硫剤の種類によって適宜設定でき、通常は130〜200℃で、1〜8時間処理すればよい。
アクリルゴム組成物を混練、成形、加硫する装置、およびアクリルゴム組成物の加硫物を混練、成形する装置は、通常ゴム工業で用いるものを使用することができる。
アクリルゴム組成物は、実用に供するに際してその目的に応じ、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、安定剤、シランカップリング剤等を添加してもよい。
充填剤、補強剤としては、通常のゴム用途に使用されている充填剤や補強剤を添加することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤、補強剤がある。これら添加剤の添加量は、合計で、アクリルゴム組成物100質量部に対して20〜100質量部の範囲が好ましい。
可塑剤としては、通常のゴム用途に使用されている可塑剤を添加することができ、例えば、エステル系可塑剤、ポリオキシエチレンエーテル系可塑剤、トリメリテート系可塑剤などがある。可塑剤の添加量は、アクリルゴム組成物100質量部に対して、50質量部程度までの範囲が好ましい。
アクリルゴム組成物及びその加硫物は、特に、ゴムホースや、ガスケット、パッキング等のシール部品及び防振ゴム部品として好適に用いられる。
ゴムホースとしては、例えば、自動車、建設機械、油圧機器等のトランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料系統用ホース、ドレイン系統用ホース等がある。
ゴムホースの構成としては、アクリルゴム組成物及びその加硫物から得た単層のホースだけでなく、アクリルゴム組成物及びその加硫物からなる層に、例えば、フッ素ゴム、フッ素変性アクリルゴム、ヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム等を内層、中間層、あるいは外層として組み合わせた多層のホースでもよい。また、一般的に行われているように補強糸あるいはワイヤーをホースの中間あるいは、ゴムホースの最外層に設けたものでもよい。
シール部品としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O−リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材及びラックアンドピニオンブーツ材等がある。
防振ゴム部品としては、例えば、ダンパープーリー、センターサポートクッション、サスペンションブッシュ等がある。
<実施例1>
内容積40リットルの反応容器に、エチルアクリレート5.5kg、n−ブチルアクリレート5.8kg、酢酸ビニル340g、モノ−n−ブチルマレート170g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、槽内を55℃に保持した後、別途注入口よりt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を投入して重合を開始させた。反応中槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応が終了した。生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液を添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムはモノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。モノ−n−ブチルマレート単量体単位の定量は、共重合体の生ゴムをトルエンに溶解し、水酸化カリウムを用いた中和滴定により測定した。その他の単量体単位成分は核磁気共鳴スペクトルを採取し、各成分を定量した。
<実施例2>
酢酸ビニルの投入量を560gにした以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはモノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル5質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。
<実施例3>
酢酸ビニルの投入量を900g、エチルアクリレート5.4kg、n−ブチルアクリレート5.9kgにした以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはモノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル8質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。
<実施例4>
酢酸ビニルの投入量を340g、モノ−n−ブチルマレートの代わりにグリシジルメタクリレート170gを投入した以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはグリシジルメタクリレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。グリシジルメタクリレート単量体単位の定量は、共重合体の生ゴムをクロロホルムに溶解し、過塩素酸酢酸溶液を用いた滴定により測定した。その他の単量体単位成分は核磁気共鳴スペクトルを採取し、各成分を定量した。
<実施例5>
モノ−n−ブチルマレートの投入量を280gにした以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムはモノ−n−ブチルマレート単量体単位2.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。
<実施例6>
内容積40リットルの耐圧反応容器に、エチルアクリレート5.5kg、n−ブチルアクリレート5.8kg、酢酸ビニル340g、モノ−n−ブチルマレート170g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、エチレンを槽内上部に圧入し、圧力を35kg/cmに調整した。攪拌を続行し、槽内を55℃に保持した後、別途注入口よりt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を圧入して重合を開始させた。反応中槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応が終了した。生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液を添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。
<実施例7>
酢酸ビニルの投入量を900gにした以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル単量体単位8質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。
<実施例8>
エチルアクリレートの投入量を4.4kg、n−ブチルアクリレートの投入量を4.5kg、メチルアクリレートの投入量を2.4kgにした以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位39質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位40質量部と、メチルアクリレート21質量部の共重合体組成であった。
<実施例9>
エチルアクリレートの投入量を5.3kg、n−ブチルアクリレートの投入量を5.4kg、メチルアクリレートの投入量を0.6kgにした以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位47質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位48質量部と、メチルアクリレート5質量部の共重合体組成であった。
<実施例10>
エチルアクリレートの投入量を6.5kg、n−ブチルアクリレートの投入量を4.2kg、n−デシルメタクリレートの投入量を0.6kgにした以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位58質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位37質量部と、n−デシルメタクリレート5質量部の共重合体組成であった。
<実施例11>
エチルアクリレートの投入量を6.5kg、n−ブチルアクリレートの投入量を4.2kg、n−デシルメタクリレートの投入量を0.6kg、モノ−n−ブチルマレートの代わりにグリシジルメタクリレート170gを投入した以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、グリシジルメタクリレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位58質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位37質量部と、n−デシルメタクリレート5質量部の共重合体組成であった。
<実施例12>
内容積40リットルの耐圧反応容器に、エチルアクリレート5.5kg、n−ブチルアクリレート5.8kg、酢酸ビニル340g、モノ−n−ブチルマレート170g、部分ケン化ポリビニルアルコール4質量部の水溶液17kg、酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、エチレンを槽内上部に圧入し、圧力を55kg/cmに調整した。攪拌を続行し、槽内を55℃に保持した後、別途注入口よりt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を圧入して重合を開始させた。反応中槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応が終了した。生成した重合液に硼酸ナトリウム水溶液を添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位4質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル単量体単位3質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部の共重合体組成であった。モノ−n−ブチルマレート単量体単位の定量は、共重合体の生ゴムをトルエンに溶解し、水酸化カリウムを用いた中和滴定により測定した。その他の単量体単位成分は核磁気共鳴スペクトルを採取し、各成分を定量した。
<比較例1>
モノ−n−ブチルマレートの投入量を560gにした以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位5質量部と、エチルアクリレート単量体単位70質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位30質量部の共重合体組成であった。
<比較例2>
酢酸ビニル、モノ−n−ブチルマレートを投入しないこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチルアクリレート単量体単位50質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位50質量部との共重合体組成であった。
<比較例3>
酢酸ビニルを投入しないこと以外は、実施例1と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチレン単量体単位2質量部と、モノ−n−ブチルマレート単量体単位1.5質量部と、エチルアクリレート単量体単位48質量部と、酢酸ビニル単量体単位13質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位52質量部との共重合体組成であった。
<比較例4>
酢酸ビニルの投入量を1.5kgにした以外は、実施例6と同様の方法でアクリルゴムを製造した。このアクリルゴムは、エチルアクリレート単量体単位50質量部と、n−ブチルアクリレート単量体単位50質量部との共重合体組成であった。
このようにして得たアクリルゴムに、表1〜表3に示した各材料を、8インチオープンロールを用いて混練し、アクリルゴム組成物とした。
また、各実施例、各比較例において、加硫剤には、ジ−o−トリルグアニジン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド、トリメチルチオ尿素及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールを用いた。なお、カーボンブラックは東海カーボン株式会社製のシースト116、流動パラフィンはカネダ株式会社製のハイコールK−230、ステアリルアミンは花王株式会社製のファーミン80、老化防止剤は白石カルシウム株式会社製ナウガード445、ステアリン酸は花王株式会社製ルナックS−90を用いた。その他の試薬は市販品を使用した。
アクリルゴム組成物を、スチーム加熱式の熱プレスにて170℃×20分間加熱処理して一次加硫物とした後、熱空気(ギヤーオーブン)にて170℃×4時間加熱処理してアクリルゴム組成物の加硫物を得た。
得られたアクリルゴム組成物の加硫物について、引張強さ、破断時伸び、硬さ、耐寒性、および耐熱性を以下の条件で評価した。評価結果を表1〜表3に示した。
(1)引張強さ・破断時伸び
JIS K6251に準拠して測定した。
(2)硬さ
JIS K6253に準拠してデュロメータ硬さ計を用いて測定した。
(3)耐寒性試験
JIS K6261に準拠してT100の温度を測定した。
(4)耐熱性試験
JIS K6257に準拠し、190℃×288時間の熱処理を行った後の試験片の引張強さと切断時伸びを測定した。この過酷な評価条件下での切断時伸びの絶対値が大きいと耐熱性が優れているといえる。また、一般式(数1)を用いてそれぞれの残留率を求めた。残留率は、その値が100に近いほど耐熱性が良いことを示す。
実施例と比較例の対比で示すように、本発明のアクリルゴム組成物は、常態物性を損なわず、耐熱性、特に熱老化後の切断時伸びと伸びの残留率に優れたものであった。

Claims (9)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部と、酢酸ビニル1〜10質量部と、架橋席モノマー1〜3質量部を共重合させて得られるアクリルゴム組成物。
  2. (メタ)アクリル酸アルキルエステルが、エチルアクリレート100質量部に対して、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の化合物50〜200質量部の割合で共重合させたものであることを特徴とする請求項1記載のアクリルゴム組成物。
  3. 架橋席モノマーが、カルボキシル基を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載したアクリルゴム組成物。
  4. 架橋席モノマーが、エポキシ基を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載したアクリルゴム組成物。
  5. さらに、エチレンを15質量部以下の割合で共重合させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載したアクリルゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載したアクリルゴム組成物を加硫して得られる加硫物。
  7. 請求項6記載の加硫物からなるホース部品。
  8. 請求項6記載の加硫物からなるシール部品。
  9. 請求項6記載の加硫物からなる防振ゴム部品。
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