JP2009087781A - エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 - Google Patents

エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、量子ドットを含有する発光層を容易にパターニングすることが可能なEL素子の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、第1電極層が形成された基板上に、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する層を用いて、量子ドットを含有する発光層のパターニングを行うエレクトロルミネッセンス(以下、ELと略す場合がある。)素子の製造方法、およびそれにより得られるEL素子に関するものである。
EL素子は、対向する2つの電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の発光材料を励起し、発光材料に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。
一般に、EL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、発光層のパターニングがなされている。発光層のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗り分け方法、紫外線照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等の種々のパターニング方法が提案されている。また、インクジェットによる塗り分け方法では、高精細な微細パターンを得るために、パターン状の隔壁(バンク)を形成して、隔壁表面を撥インク処理することが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。さらに、発光層のパターニング方法として、高精細なパターンの形成を可能とする光触媒を用いる方法も提案されている(例えば、特許文献3〜特許文献6参照)。
この光触媒を用いる発光層のパターニング方法は、光触媒を含有する層、または光触媒を含有する層に近接する層がエネルギー照射されると、それに伴う光触媒の作用から、これらの層の濡れ性が変化することを利用したものである。すなわち、この濡れ性の違いによるパターンを利用することにより、発光層をパターン状に形成するのである。このように光触媒を用いる発光層のパターニング方法は、エネルギーの照射のみで濡れ性の違いによるパターンを形成することができることから、発光層のパターニングに要する手間を大幅に省略することができる点で有用な方法である。
また、近年、半導体からなる量子ドットを用いた発光層を有する発光素子が提案され、開発されている。量子ドットは、半導体の原子が複数集まって数nm〜数十nm程度の結晶を構成するものであり、結晶がこのようなナノサイズまで小さくなると、連続的なバンド構造ではなく、離散的なエネルギー準位を構成するようになる。すなわち、量子サイズ効果が顕著に現れるようになるので、量子ドットよりサイズの大きいバルク結晶に比べ電子の閉じ込め効果が高まり、励起子が再結合する確率を高めることができる。
さらに、量子ドットを用いた発光素子では、発光素子の構成を変更することなく、発光周波数を整調することができる。量子ドットは、量子閉じ込め効果により、大きさに依存した光学特性を示す。例えば、CdSeからなる量子ドットの発光色を、単に量子ドットの大きさを変えることにより、青色から赤色へと変化させることができる。さらに、量子ドットは、比較的狭い半値幅で発光し、例えば半値幅を30nm未満とすることができる。したがって、量子ドットは、発光層の材料として優れているといえる。
なお、量子ドットは、ナノクリスタル、微粒子、コロイドあるいはクラスターなどと呼ばれることもあるが、量子サイズ効果が生ずるものはここでは量子ドットと同じものを示す。
このような量子ドットを用いた発光層の成膜方法としては、例えば、表面にトリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)等の配位子が付着した量子ドットを含有するコロイド溶液を用いたスピンコート法およびディップコート法などが知られている(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。この配位子は、量子ドットの表面に付着し、量子ドットの分散安定性を良好なものとしている。
特許第3601716号公報 特許第3646510号公報 特開2001−257073号公報 特開2002−231446号公報 特開2004−71286号公報 特開2005−300926号公報 特表2005−522005号公報 特表2006−520077号公報
しかしながら、上記の量子ドットを用いて成膜された発光層をパターニングする方法については、ほとんど提案されていない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、量子ドットを含有する発光層を容易にパターニングすることが可能なEL素子の製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、量子ドットを用いた発光層をパターニングするためには、基板上に親疎液パターンを形成して所望の位置に塗工液を保持することが必要であり、光触媒と撥液性を示すオルガノポリシロキサンとから構成され、正孔輸送機能を示し得る濡れ性変化層、およびこの濡れ性変化層の光触媒機能を応用することにより、量子ドットを用いた発光層のパターニングが達成できることを見出した。また、配位子としてシランカップリング剤を用いることで、発光層内の材料間や、発光層と第1電極層もしくは正孔注入輸送層との間での密着性の向上により、EL素子の寿命特性の改善が図れることを見出した。さらに、配位子としてシランカップリング剤を用いることで、発光層を溶媒に対して不溶化し、発光層形成工程の次工程にて塗布を導入することが可能となることを見出した。
すなわち、本発明は、第1電極層が形成された基板上に、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、濡れ性変化パターンを形成し、この濡れ性変化パターンの濡れ性の違いを利用することにより、発光層を容易にパターニングすることが可能である。
また本発明は、第1電極層が形成された基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層基板を、上記濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、光触媒処理層を介して濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、濡れ性変化パターンを形成し、この濡れ性変化パターンの濡れ性の違いを利用することにより、発光層を容易にパターニングすることが可能である。また、光触媒は光触媒処理層に含まれており、この光触媒処理層を有する光触媒処理層基板は濡れ性変化パターン形成工程後に濡れ性変化層から取り外されるため、濡れ性変化層には光触媒が含まれておらず、濡れ性変化層と発光層との界面での障壁を低減して、発光特性を向上させることができる。
上記発明においては、上記配位子が、シランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤を含有する発光層形成用塗工液を用いることにより、発光層を硬化させることができ、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることができるからである。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することができる。さらに、後述するように濡れ性変化層がオルガノポリシロキサンを含有する場合には、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。
上記の場合、上記シランカップリング剤が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物であってもよい。このようなケイ素化合物は、分子設計が比較的容易であるので、上記X,Yを適宜選択することにより、縮合度等を制御することができる。これにより、発光層内での量子ドットの安定性を所望のものとすることができる。
また、上記の場合、上記シランカップリング剤が、YSiX(4−n)(ここで、Yは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物であってもよい。このようなケイ素化合物は、分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するものとすることができ、寿命特性を改善することができるからである。
さらに、上記の場合、上記発光層形成工程にて、上記発光層形成用塗工液を塗布した後、硬化することが好ましい。これにより、上述したように発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることができるからである。また、後述するように濡れ性変化層がオルガノポリシロキサンを含有する場合には、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができるからである。さらには、発光層の熱安定性(Tg:ガラス転移温度)を向上させることもできる。
さらに本発明においては、上記量子ドットが、半導体微粒子からなるコア部と、上記コア部を被覆し、上記半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料からなるシェル部とを有することが好ましい。このような構成とすることにより、量子ドットが安定化されるからである。
また本発明においては、上記発光層形成用塗工液が、さらに正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方を含有していてもよい。量子ドットにこれらの材料を組み合わせることにより、EL素子の製造工程を簡略化できたり、発光層への電荷輸送および、正孔と電子の再結合により生成した励起子のエネルギー移動を効率良く行うことが可能となり、EL素子の寿命特性の向上が図れたりするからである。
さらに本発明においては、上記発光層形成用塗工液の塗布方法が、吐出法であることが好ましい。吐出法では、濡れ性変化パターンを利用して、高精細なパターンを形成することができるからである。
また本発明においては、上記濡れ性変化層が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。濡れ性変化層に用いられる材料としては、光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、かつ、光触媒の作用により分解されない程度の結合エネルギーが必要であることから、上記のようなオルガノポリシロキサンが好ましいのである。
また本発明は、基板と、上記基板上にパターン状に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、表面に、上記第1電極層のパターン上に配置され、ポリシロキサンを含有する親液性領域、および、上記第1電極層のパターンの開口部上に配置され、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有する撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを有する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層の親液性領域上に形成された発光層と、上記発光層上に形成された第2電極層とを有し、上記発光層に、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いることを特徴とするEL素子を提供する。
ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものである。本発明においては、濡れ性変化層表面の親液性領域がポリシロキサンを含有し、撥液性領域がフッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有しているので、親液性領域および撥液性領域を比べると、親液性領域の方が臨界表面張力が大きくなるといえる。本発明によれば、この撥液性領域および親液性領域の濡れ性の違いを利用して、親液性領域上にのみ発光層を形成することができ、発光層を容易にパターニングすることが可能なEL素子とすることができる。
また、発光層に周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いるので、発光層を硬化されたものとすることができ、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることが可能である。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することが可能である。さらに、濡れ性変化層がオルガノポリシロキサンを含有するので、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。
上記発明においては、上記発光層が、上記シランカップリング剤の加水分解縮合物を含有し、硬化されたものであることが好ましい。これにより、上述したように発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることができるからである。また、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。さらには、発光層の熱安定性(Tg:ガラス転移温度)を向上させることもできる。
上記の場合、上記シランカップリング剤の加水分解縮合物が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであってもよい。このようなオルガノポリシロキサンは、分子設計が比較的容易であるので、上記X,Yを適宜選択することにより、縮合度等を制御することができる。これにより、発光層内での量子ドットの安定性を所望のものとすることができる。
また、上記の場合、上記シランカップリング剤の加水分解縮合物が、YSiX(4−n)(ここで、Yは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであってもよい。このようなオルガノポリシロキサンは、分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するものとすることができ、寿命特性を改善することができるからである。
また本発明においては、上記量子ドットが、半導体微粒子からなるコア部と、上記コア部を被覆し、上記半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料からなるシェル部とを有することが好ましい。このような構成とすることにより、量子ドットが安定化されるからである。
本発明によれば、濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、濡れ性変化パターンを形成し、この濡れ性変化パターンの濡れ性の違いを利用することにより、発光層を容易にパターニングすることが可能であるという効果を奏する。
以下、本発明のEL素子およびその製造方法について詳細に説明する。
A.EL素子の製造方法
本発明のEL素子の製造方法は、濡れ性変化層の構成および濡れ性変化パターン形成工程により、2つの実施態様に分けることができる。以下、各実施態様に分けて説明する。
I.第1実施態様
本発明のEL素子の製造方法の第1実施態様は、第1電極層が形成された基板上に、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程とを有することを特徴とするものである。
本実施態様のEL素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施態様のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、基板1上に第1電極層2をパターン状に形成し、この第1電極層2のパターンの開口部に絶縁層3を形成し、第1電極層2および絶縁層3の上に濡れ性変化層4を形成する(図1(a)、濡れ性変化層形成工程)。
次に、フォトマスク11を介して濡れ性変化層4に紫外線12を照射する(図1(b))。紫外線12の照射により、濡れ性変化層4に含有される光触媒の作用から、濡れ性変化層4の照射部分では、濡れ性が液体との接触角が低下するように変化する(図1(c))。この液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した領域を親液性領域5とする。未照射部分では、濡れ性が変化しない。この濡れ性が変化しない領域を撥液性領域6とする。これにより、濡れ性変化層4表面に、親液性領域5と撥液性領域6とからなる濡れ性変化パターンが形成される。図1(b)および(c)は濡れ性変化パターン形成工程である。
濡れ性変化層4は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、照射部分である親液性領域5と、未照射部分である撥液性領域6とでは、濡れ性に違いがある。
次に、この濡れ性の違いを利用して、親液性領域5と撥液性領域6とからなる濡れ性変化パターン上に、発光層形成用塗工液を塗布して、親液性領域5上にのみ発光層7を形成する(図1(d)、発光層形成工程)。
上記発光層形成用塗工液には、図2に例示するような周囲に配位子21が配置された量子ドット22が用いられている。すなわち、配位子21が量子ドット22の表面に付着しており、このような配位子21が表面に付着された量子ドット22が発光層形成用塗工液に用いられている。
次に、発光層7上に第2電極層8を形成する(図1(e)、第2電極層形成工程)。この際、例えば、第2電極層8を透明電極とした場合には、トップエミッション型のEL素子が得られ、第1電極層2を透明電極とした場合には、ボトムエミッション型のEL素子が得られる。
本実施態様においては、光触媒を含有する濡れ性変化層に、パターン状にエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する。そして、この濡れ性変化層表面に形成された濡れ性変化パターンを利用して発光層のパターニングを行う。したがって、複雑なパターニング工程や、高価な真空設備を要することなく、発光層を容易にパターニングすることが可能である。
また本実施態様において、後述するように、量子ドットの表面に付着している配位子はシランカップリング剤であることが好ましい。これにより、発光層を硬化されたものとすることができ、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることが可能である。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することが可能である。
さらに、後述するように、濡れ性変化層は、オルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。この場合、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。それにより、EL素子駆動時等における層間剥離等による寿命特性の低下を防ぐことが可能である。
以下、EL素子の製造方法における各工程ついて説明する。
1.濡れ性変化層形成工程
本実施態様における濡れ性変化層形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する工程である。
以下、濡れ性変化層、濡れ性変化層の形成方法、基板および第1電極層について説明する。
(1)濡れ性変化層
本実施態様における濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであれば特に限定されるものではない。例えば、濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する単一の層であってもよく(第1態様)、光触媒を含有する層と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様について説明する。
(i)第1態様
本態様の濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する単一の層である。この濡れ性変化層は、濡れ性変化層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、効率的に濡れ性変化パターンを形成することができる。
本態様の濡れ性変化層は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであれば特に限定されるものではなく、通常は、光触媒と、光触媒の作用により濡れ性が変化する材料とを含有するものである。
上記光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができる。これらの光触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり、いずれも使用することができる。中でも、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
アナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製 STS−02(平均粒径:7nm)、石原産業(株)製 ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製 TA−15(平均粒径:12nm))等を挙げることができる。
粒径が小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので、光触媒の粒径は小さい方が好ましい。具体的には、光触媒の平均粒径は50nm以下であることが好ましく、20nm以下が特に好ましい。
上記二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、エネルギーの照射によって光触媒が酸化還元反応を引き起こし、スーパーオキサイドラジカル(・O )やヒドロキシラジカル(・OH)などの活性酸素種を発生し、この発生した活性酸素種が有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、この活性酸素種が濡れ性変化層中の有機物に作用を及ぼしていると思料される。
濡れ性変化層中の光触媒の含有量は、5質量%〜90質量%の範囲内で設定することができ、好ましくは20質量%〜70質量%の範囲内である。
なお、濡れ性変化層中の二酸化チタンの含有量、結晶型等は、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱分光法、核磁気共鳴分光法、または質量分析法を用いて、あるいはこれらの方法を組み合わせて確認することができる。
また、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料としては、光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。Yで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、Xで示されるアルコキシル基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。上記式で示されるケイ素化合物としては、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているもの等を用いることができる。
特に、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンを好ましく用いることができる。フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンとしては、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンを用いることにより、濡れ性変化層の撥液性が大きく向上するので、濡れ性が変化しない撥液性領域への発光層の成膜を妨げることでき、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した親液性領域のみに発光層を成膜することが可能となる。
なお、濡れ性変化層中にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが含有されていることは、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱分光法、核磁気共鳴分光法、または質量分析法を用いて確認することができる。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記化学式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
Figure 2009087781
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R,Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
このように、オルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるが、中でも、濡れ性変化層がフッ素を含有していることが好ましい。この場合、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、この濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、エネルギー照射前に比較して少なくなることが好ましい。
フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであるので、フッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。このため、フッ素の含有量が多い部分の表面の臨界表面張力に比較して、フッ素の含有量が少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。
上記のような濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、エネルギー照射部分であるフッ素含有量の少ない部分(親液性領域)と、エネルギー未照射部分であるフッ素含有量の多い部分(撥液性領域)とからなる濡れ性変化パターンを形成することができるからである。このように、濡れ性変化層がフッ素を含有する場合には、濡れ性変化パターンの形成に有利となる。
また、濡れ性変化層には、上述した材料以外に、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様の界面活性剤や、添加剤等を含有させてもよい。
このような濡れ性変化層は、上述した材料を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤に溶解もしくは分散させて濡れ性変化層形成用塗工液を調製し、この濡れ性変化層形成用塗工液を電極層上に塗布することにより形成することができる。
この際、濡れ性変化層形成用塗工液に使用することができる溶剤としては、上述した材料等と混合するものであり、白濁その他の現象によるパターニング特性に影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチルグリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、エチレングリコール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ピリジン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリジノン等が挙げられる。これらの溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
また、濡れ性変化層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法、キャスト法、LB法、ディスペンサー法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
上記濡れ性変化層形成用塗工液の塗布後、塗膜を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、均一な濡れ性変化層を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばホットプレート、赤外線ヒーター、オーブン等を用いることができる。
濡れ性変化層の膜厚としては、濡れ性変化パターンの形成が可能であり、かつ、正孔または電子の輸送を阻害しないような膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的には、10nm〜500nmであることが好ましく、中でも10nm〜200nm、特に10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。濡れ性変化層が薄すぎると、均一に成膜することが困難となるからである。逆に、濡れ性変化層が厚すぎると、正孔または電子の移動を阻害する可能性があるからである。
(ii)第2態様
本態様の濡れ性変化層は、光触媒を含有する層と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する層(以下、濡れ性が変化する層と略す場合がある。)とが積層されたものである。この濡れ性変化層は、機能毎に層が分かれているので、層構成や材料の組み合わせ等を容易に変更することができる。以下、濡れ性変化層の各構成について説明する。
(光触媒を含有する層)
本態様に用いられる光触媒を含有する層は、光触媒を含有するものであり、この層中の光触媒が、積層されている濡れ性が変化する層の濡れ性を変化させるようなものであれば特に限定されるものではない。
また、光触媒を含有する層はさらにバインダを含有していてもよい。これにより、成膜が容易になるからである。本態様に用いられるバインダとしては、主骨格が光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、アルキルシリケートを用いることができる。アルキルシリケートとしては、一般式:Sinn-1(OR)2n+2(ただし、Siはケイ素、Oは酸素、Rはアルキル基を示す。)で表される化合物が挙げられる。ここで、nは1〜6の範囲内、Rは炭素数が1〜4のアルキル基であるものがケイ素の割合が多い点で好ましい。また、上記第1態様に記載したエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ生が変化する材料も用いることができる。
さらに、光触媒を含有する層表面の濡れ性は親液性であっても撥液性であってもよい。
光触媒を含有する層の厚みは、正孔または電子の移動を妨げない厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には10nm〜500nmであることが好ましく、中でも10nm〜200nm、特に10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。光触媒を含有する層が薄すぎると、濡れ性が変化する層の濡れ性を変化させることが困難となる場合があるからである。逆に、光触媒を含有する層が厚すぎると、正孔または電子の移動を阻害する可能性があるからである。
(濡れ性が変化する層)
本態様に用いられる濡れ性が変化する層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであれば特に限定されるものではなく、通常はエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料を含有するものである。なお、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、濡れ性が変化する層には、上記第1態様と同様に、界面活性剤や添加剤等を含有させてもよい。
濡れ性が変化する層の厚みは、濡れ性変化パターンの形成が可能であり、かつ、正孔または電子の輸送を阻害しないような厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.5nm〜20nmであることが好ましく、中でも0.5nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。濡れ性変化層が薄すぎると、濡れ性の違いが明確に発現しなくなる可能性があるからである。逆に、濡れ性変化層が厚すぎると正孔または電子の輸送を阻害する可能性があるからである。
(2)基板
本実施態様に用いられる基板は、透明性を有していても有さなくてもよい。例えば図1(e)に示すEL素子においてボトムエミッション型とする場合、基板1は透明性を有することが好ましい。一方、例えば図1(e)に示すEL素子においてトップエミッション型とする場合、基板1に透明性は要求されない。また、例えば図1(e)に示すEL素子において両面から光を取り出す場合には、基板1は透明性を有することが好ましい。
透明性を有する基板には、例えば、ガラス等の無機材料や、透明樹脂などを用いることができる。
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高いことが好ましい。このような透明樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。
(3)第1電極層
本実施態様に用いられる第1電極層は、陽極であってもよく陰極であってもよい。一般に、EL素子を製造する際には、陽極側から積層する方が安定してEL素子を作製することができることから、第1電極層が陽極であることが好ましい。
陽極には、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましく用いられる。一方、陰極には、電子が注入し易いように仕事関数の小さな導電性材料が好ましく用いられる。導電性材料としては、一般に金属材料が用いられるが、有機物や無機化合物を用いてもよい。また、第1電極層には、複数の材料を混合して用いてもよい。
また、第1電極層は、透明性を有していても有さなくてもよく、光の取り出し面に応じて適宜選択される。例えば図1(e)に示すEL素子においてボトムエミッション型とする場合、第1電極層2は透明性を有することが好ましい。一方、例えば図1(e)に示すEL素子においてトップエミッション型とする場合、第1電極層2に透明性は要求されない。また、例えば図1(e)に示すEL素子において両面から光を取り出す場合には、第1電極層2は透明性を有することが好ましい。
透明性を有する導電性材料としては、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等を好ましいものとして例示することができる。また、透明性が要求されない場合、導電性材料としては、金属を用いることができ、具体的にはAu、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、あるいは、Al合金、Ni合金、Cr合金等を挙げることができる。
第1電極層が陽極および陰極のいずれであっても、抵抗が比較的小さいことが好ましい。
第1電極層の成膜方法としては、一般的な電極の成膜方法を用いることができ、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等を挙げることができる。また、第1電極層のパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法を挙げることができる。
2.濡れ性変化パターン形成工程
本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程は、上記濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する工程である。
エネルギー照射に用いる光の波長は、通常、450nm以下の範囲で設定され、好ましくは380nm以下の範囲で設定される。これは、上述したように、濡れ性変化層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上記の波長の光が好ましいからである。
エネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
また、パターン状にエネルギーを照射する方法としては、これらの光源を用い、フォトマスクを介してパターン照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることもできる。
エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、濡れ性変化層中の光触媒の作用により濡れ性変化層表面の濡れ性が変化するのに必要な照射量とする。
この際、濡れ性変化層を加熱しながらエネルギー照射することが好ましい。感度を上昇させことができ、効率的に濡れ性を変化させることができるからである。具体的には、30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
エネルギー照射方法は、濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能な方法であれば特に限定されるものではない。また、エネルギーの照射は、目的とするパターンが形成された、例えばフォトマスク等のマスクを用いて行ってもよい。これにより、目的とするパターン状にエネルギーを照射することが可能となり、濡れ性変化層の濡れ性をパターン状に変化させることができるからである。この際、用いられるマスクの種類としては、目的とするパターン状にエネルギーが照射可能であれば特に限定されるものではなく、エネルギーを透過する素材に遮光部が形成されたフォトマスク等であってもよく、また目的とするパターン状に孔部が形成されているシャドウマスク等であってもよい。また、これらのマスクの材料として、具体的には金属、ガラスやセラミック等の無機物、またはプラスチック等の有機物等を挙げることができる。
エネルギー照射方向としては、基板側および濡れ性変化層側のいずれの方向から行ってもよい。フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。
本発明において、親液性領域とは、撥液性領域よりも液体との接触角が小さい領域をいい、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性の良好な領域である。また、撥液性領域とは、親液性領域よりも液体との接触角が大きい領域をいい、発光層形成用塗工液等に対する濡れ性が悪い領域である。なお、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1°以上低い場合には親液性領域、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1°以上高い場合には撥液性領域とする。
撥液性領域においては、発光層形成用塗工液等が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が21°超であることが好ましく、より好ましくは30°以上、さらに好ましくは40°以上である。撥液性領域は撥液性が要求される部分であるため、上記液体との接触角が小さすぎると、撥液性が十分でなく、撥液性領域にも発光層形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
また、親液性領域においては、発光層形成用塗工液等が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角が20°以下であることが好ましく、より好ましくは15°以下、さらに好ましくは10°以下である。上記液体との接触角が高すぎると、発光層形成用塗工液等が濡れ広がりにくくなる可能性があり、発光層等が欠ける等の可能性があるからである。
なお、液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして求めることができる。この測定に際しては、種々の表面張力を有する液体として、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いることとする。
また、濡れ性変化層がフッ素を含有する場合、親液性領域中のフッ素含有量としては、撥液性領域中のフッ素含有量を100とした場合に、50以下であることが好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。なお、この比率は重量を基準としたものである。フッ素含有量の比率を上記範囲とすることにより、撥液性領域および親液性領域の濡れ性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、上述したように、濡れ性変化層上に発光層を形成する際には、フッ素含有量が少ない親液性領域のみに正確に発光層を形成することができ、高精細な発光層のパターンを得ることができる。
なお、フッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることができ、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法を用いることができる。
3.発光層形成工程
本実施態様における発光層形成工程は、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する工程である。
本実施態様における発光層形成工程は、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を用いて、単一の発光層を形成する工程(第3態様)であってもよく、周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方とを含有する発光層形成用塗工液を用いて、単一の発光層を形成する工程(第4態様)であってもよく、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料とを含有する発光層形成用塗工液用いて、発光層および正孔輸送層を一括して形成する工程(第5態様)であってもよい。以下、各態様に分けて説明する。
(1)第3態様
本態様における発光層形成工程は、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、単一の発光層を形成する工程である。以下、発光層形成用塗工液および発光層の形成方法について説明する。
(i)発光層形成用塗工液
本態様に用いられる発光層形成用塗工液は、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有するものであり、通常は周囲に配位子が配置された量子ドットが溶媒に分散されたものである。以下、発光層形成用塗工液の各構成について説明する。
(量子ドット)
本態様に用いられる量子ドットとしては、蛍光または燐光を発するものであれば特に限定されるものではない。中でも、量子ドットは、いわゆる化合物半導体を含むことが好ましい。化合物半導体としては、例えば、IV族の化合物、I-VII族の化合物、II−VI族の化合物、II−V族の化合物、III−VI族の化合物、III−V族の化合物、IV−VI族の化合物、I−III−VI族の化合物、II−IV−VI族の化合物、II−IV−V族の化合物等が挙げられる。具体的には、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、GaSe、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、汎用性および光学特性の観点から、CdSeが好ましい。
量子ドットは、半導体微粒子からなるコア部のみからなっていてもよく、半導体微粒子からなるコア部と、コア部を被覆し、半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料からなるシェル部とを有するものであってもよい。中でも、量子ドットは、上記コア部と上記シェル部とを有するものであることが好ましい。すなわち、量子ドットは、コアシェル構造を有し、コアシェル型量子ドットであることが好ましい。量子ドットの安定性が向上するからである。
コア部に用いられる半導体微粒子としては、上記化合物半導体の微粒子が好ましく用いられる。
また、シェル部に用いられる材料としては、上記半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料であれば特に限定されるものではないが、上記半導体微粒子と同様に、上記化合物半導体であることが好ましい。この場合、シェル部に用いられる化合物半導体は、コア部に用いられる化合物半導体と同一であってもよく異なっていてもよい。
上記コアシェル型量子ドットとしては、例えば、コア部/シェル部とすると、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、CdTe/CdS、InP/ZnS、GaP/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、GaInP/ZnSe、GaInP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、GaInP/ZnSTe、GaInP/ZnSSe等が挙げられる。中でも、汎用性および光学特性の観点から、CdSe/ZnSが好ましい。
また、量子ドットの形状としては、例えば、球形、棒状、円盤状等を挙げることができる。
なお、量子ドットの形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
量子ドットの粒径は、20nm未満であることが好ましく、中でも1nm〜15nmの範囲内、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。量子ドットの粒径が大きすぎると、量子サイズ効果が得られない可能性があるからである。
量子ドットは、その粒径により異なる発光スペクトルを示すことから、目的とする色に応じて量子ドットの粒径が適宜選択される。例えばCdSe/ZnSからなるコアシェル型量子ドットの場合、粒径が大きくなるにつれて発光スペクトルが長波長側にシフトし、粒径が5.2nmの場合は赤色を示し、粒径が1.9nmの場合は青色を示す。
また、量子ドットの粒径分布は比較的狭いことが好ましい。
なお、量子ドットの粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、粉末X線回折(XRD)パターン、またはUV/Vis吸収スペクトルにより確認することができる。
発光層形成用塗工液中の、周囲に配位子が配置された量子ドットの含有量としては、発光層形成用塗工液中の全固形分を100質量%とすると、50質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましく、中でも60質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、上記含有量が多すぎると、発光層の成膜が困難となる場合があるからである。
量子ドットの合成方法としては、特表2005-522005号公報、特表2006-520077号公報、特開2007-21670号公報等を参照することができる。
また、量子ドットの表面に付着している配位子を、他の配位子に交換することが可能である。例えば、表面にTOPO等が付着した量子ドットを多量のシランカップリング剤と混合することで、TOPO等をシランカップリング剤に置換することができる。配位子を置換する際の温度は、室温程度とするのがよい。
なお、配位子の置換方法については、特開2007-21670号公報等を参照することができる。
TOPO等の配位子が付着した量子ドットの市販品としては、例えば、evident TECHNOLOGIES社製の蛍光性半導体ナノクリスタル「エヴィドット」等を用いることができる。
(配位子)
本態様に用いられる配位子としては、一般的に量子ドットの配位子として使用されるものを用いることができる。例えば、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)等のアルキルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)等のアルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、トリス−ヒドロキシルプロピルホスフィン(tHPP)等のアルキルホスフィン酸、ピリジン、フラン、ヘキサデシルアミン等が挙げられる。
また本態様においては、配位子としてシランカップリング剤を用いることができる。この場合、量子ドットとシランカップリング剤とは配位結合している。量子ドットが化合物半導体である場合、一般に無機材料の表面は新液性であるので、加水分解されたシランカップリング剤のSi-OH基の-OH基は量子ドットに配位することができる。
配位子としては、上述の中でも、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤を含有する発光層形成用塗工液を用いることにより、発光層を硬化させることができる。これにより、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることができるからである。さらには、発光層の熱安定性(Tg:ガラス転移温度)を向上させることもできる。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することができる。
さらに、上記濡れ性変化層がオルガノポリシロキサンを含有する場合には、配位子としてシランカップリング剤を用いることにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。
また、発光層を硬化させた場合には、発光層上に塗工液を用いて正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を形成する際、正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を形成するための塗工液中の溶媒に発光層が溶解等することなく、安定して発光層上に正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を積層することができる。
本態様に用いられるシランカップリング剤としては、量子ドットに配位し、量子ドットを安定化させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、(1)クロロまたはアルコキシシラン等、(2)反応性シリコーンを挙げることができる。
上記(1)のクロロまたはアルコキシシラン等としては、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示されるケイ素化合物が好ましく用いられる。このケイ素化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記式で示されるケイ素化合物において、Xは、末端部および、量子ドットに配位結合する配位結合部となる。なお、末端部は、縮合反応が起こる部位であり、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドット間を結合したり、発光層を不溶化させたり、発光層と濡れ性変化層との密着性向上に寄与したりする部位である。
Xで示されるアルコキシル基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
また、上記式で示されるケイ素化合物において、Yは機能性部となる。
例えば、Yがアルキル基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、溶解性に寄与する部位となる。Yがフルオロアルキル基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、撥液性を示す部位となる。Yがビニル基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、π共役系を示す部位となる。Yがアミノ基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、親液性を示す部位となる。Yがフェニル基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、撥水性を示す部位となる。Yがエポキシ基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、硬化性に寄与する部位となる。
Yで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましい。
上記式で示されるケイ素化合物としては、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているもの等を用いることができる。
また、上記(1)のクロロまたはアルコキシシラン等としては、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示されるケイ素化合物も好ましく用いられる。このケイ素化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記式で示されるケイ素化合物において、Xは、末端部および、量子ドットに配位結合する配位結合部となる。なお、末端部は、縮合反応が起こる部位であり、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドット間を結合したり、発光層を不溶化させたり、発光層と濡れ性変化層との密着性向上に寄与したりする部位である。
Xで示されるアルコキシル基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
また、上記式で示されるケイ素化合物において、Yは機能性部となる。
例えば、Yが、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、正孔輸送性を示す部位となる。Yが直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、電子輸送性を示す部位となる。Yが直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基の場合、量子ドット間のスペーサーとなり、正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る部位となる。
Yが、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基の場合、中でも、ビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基であることが好ましい。ビニル基およびフェニル基はπ共役系を示す部位だからである。
正孔輸送性を示す官能基としては、例えば、N原子を1つ以上含む芳香族アミン基、置換もしくは未置換の炭素数6〜16のアリール基が挙げられる。
N原子を1つ以上含む芳香族アミン基としては、N原子を1つ以上含む芳香族第3級アミン基が好ましい。具体的には、N,N´−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N´−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)や、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等のトリフェニルアミンが挙げられる。トリフェニルアミンとしては、下記式で示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2009087781
また、炭素数6〜16のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
Yが、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基の場合、ビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基であることが好ましい。ビニル基およびフェニル基はπ共役系を示す部位だからである。
電子輸送性を示す官能基としては、例えば、フェナントロリン、トリアゾール、オキサジアゾール、アルミキノリノール等を挙げることができる。具体的には、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム(Alq)等が挙げられる。オキサジアゾール、トリアゾールとしては、下記式で示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2009087781
また、電子輸送性を示す官能基としては、置換もしくは未置換の炭素数6〜16のアリール基も例示される。なお、炭素数6〜16のアリール基については、上記と同様である。
Yが、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基の場合、ビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基であることが好ましい。ビニル基およびフェニル基はπ共役系を示す部位だからである。
正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基としては、例えば、ジスチリルアレーン、多芳香族、芳香族縮合環、カルバゾール、複素環等を挙げることができる。具体的には、下記式で示される4,4'-bis(2,2-diphenyl-ethen-1-yl)diphenyl(DPVBi)、4,4'-bis(carbazol-9-yl)biphenyl(CBP)、4,4''-di(N-carbazolyl)-2',3',5',6'-tetraphenyl-p-terphenyl(CzTT)、1,3-bis(carbazole-9-yl)-benzene(m-CP)、9,10-di(naphtha-2-yl)anthracene(DNA)等が挙げられる。
Figure 2009087781
Figure 2009087781
また、下記式で示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2009087781
また、正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基としては、置換もしくは未置換の炭素数6〜16のアリール基も例示される。なお、炭素数6〜16のアリール基については、上記と同様である。
また、上記(2)の反応性シリコーンとしては、下記化学式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
Figure 2009087781
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R,Rがメチル基のものが好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
また、上記シランカップリング剤は、電荷輸送性を有していてもよい。電荷輸送性を有するシランカップリング剤とするためには、上記(1)の場合の上記式におけるYを、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基とすればよい。
また、発光層形成用塗工液は、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を含有していてもよい。
(溶媒)
本態様に用いられる発光層形成用塗工液に使用することができる溶媒としては、上記の周囲に配位子が配置された量子ドットと混合するものであれば特に限定されるものではない。配位子がシランカップリング剤である場合、中でも、白濁その他の影響を及ぼさないものであることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく混合して用いてもよい。
(その他)
本態様に用いられる発光層形成用塗工液には、種々の添加剤を添加することができる。例えば、インクジェット法により発光層を形成する場合には、吐出性を向上させる目的で、界面活性剤等を添加してもよい。
また、本態様において、例えば赤色、緑色および青色の三原色の発光層を形成する場合は、赤色、緑色および青色の各色発光層形成用塗工液が用いられる。上述したように、量子ドットは、その粒径により異なる発光スペクトルを示すことから、各色に応じて量子ドットの粒径が調整される。
(ii)発光層の形成方法
本態様においては、上記親液性領域上に、上記発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する。
発光層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、あるいは、ディスペンサーやインクジェットを用いる吐出法などが挙げられる。中でも、吐出法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法が好ましく用いられる。特に吐出法が好ましく、さらにはインクジェット法が好ましい。この方法では、濡れ性変化パターンを利用して、高精細なパターンを形成することができるからである。
上記発光層形成用塗工液の塗布後、塗膜を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、均一な発光層を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばホットプレート、赤外線ヒーター、オーブン等を用いることができる。
中でも、配位子がシランカップリング剤である場合は、上記発光層形成用塗工液の塗布後、硬化することが好ましい。上記の乾燥を行うことにより、加水分解されたシランカップリング剤の縮合反応が進行し、発光層が硬化される。
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜500nm程度とすることができる。
(2)第4態様
本態様における発光層形成工程は、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方とを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、単一の発光層を形成する工程である。
本態様においては、発光層に、発光機能だけでなく、正孔輸送機能や電子輸送機能をもたせることができる。それにより、EL素子の製造工程を簡略化できるとともに、発光層への電荷輸送および、正孔と電子の再結合により生成した励起子のエネルギー移動を効率良く行うことができ、寿命特性の向上が図れる。
なお、発光層の形成方法については、上記第3態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、発光層形成用塗工液について説明する。
(i)発光層形成用塗工液
本態様に用いられる発光層形成用塗工液は、周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方とを含有するものであり、通常は周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方とが、溶媒に分散もしくは溶解されたものである。
発光層形成用塗工液は、周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方とを含有するものであればよいが、中でも、周囲に配位子が配置された量子ドットと、正孔輸送材料と、電子輸送材料とを含有することが好ましい。量子ドットへの電荷輸送および、正孔と電子の再結合により生成した励起子のエネルギー移動を効率良く行うことができるからである。
なお、配位子については、上記第3態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、発光層形成用塗工液の他の構成について説明する。
(量子ドット)
発光層形成用塗工液中の、周囲に配位子が配置された量子ドットの含有量としては、発光層形成用塗工液中の全固形分を100質量%とすると、10質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、中でも30質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、上記含有量が多すぎると、発光層の成膜が困難となったり、発光層に正孔輸送機能や電子輸送機能等を付与することが困難となったりする場合があるからである。
なお、量子ドットのその他の点については、上記第3態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(正孔輸送材料)
本態様に用いられる正孔輸送材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を挙げることができる。具体的には、4,4´−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(α−NPD)、N,N´−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N´−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、4,4´,4´´−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(MTDATA)、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、4,4−N,N´−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層形成用塗工液が、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料とを含有する場合、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料との混合比は、(周囲に配位子が配置された量子ドット):(正孔輸送材料)=1:0.1〜2程度であることが好ましい。量子ドットの混合比が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、量子ドットの混合比が多すぎると、発光層の成膜が困難となったり、発光層に正孔輸送機能を付与することが困難となったりする場合があるからである。
(電子輸送材料)
本態様に用いられる電子輸送材料としては、例えば、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)等のフェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)等のアルミキノリノール錯体などを挙げることができる。
発光層形成用塗工液が、周囲に配位子が配置された量子ドットと電子輸送材料とを含有する場合、周囲に配位子が配置された量子ドットと電子輸送材料との混合比は、(周囲に配位子が配置された量子ドット):(電子輸送材料)=1:0.1〜2程度であることが好ましい。量子ドットの混合比が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、量子ドットの混合比が多すぎると、発光層の成膜が困難となったり、発光層に電子輸送機能を付与することが困難となったりする場合があるからである。
さらに、発光層形成用塗工液が、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する場合、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料と電子輸送材料との混合比は、(周囲に配位子が配置された量子ドット):(正孔輸送送材料):(電子輸送送材料)=1:0.1〜2:0.1〜2程度であることが好ましい。量子ドットの混合比が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、量子ドットの混合比が多すぎると、発光層の成膜が困難となったり、発光層に正孔輸送機能や電子輸送機能を付与することが困難となったりする場合があるからである。
(溶媒)
本態様に用いられる発光層形成用塗工液に使用することができる溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく混合して用いてもよい。
(その他)
発光層形成用塗工液は、まず、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方を溶媒に溶解させ、さらにこの溶液に周囲に配位子が配置された量子ドットを分散させて、調製することができる。
なお、発光層形成用塗工液のその他の点については、上記第3態様と同様である。
また、本態様の発光層形成工程にて形成される発光層については、特表2005-522005号公報等に詳しく記載されている。
(3)第5態様
本態様における発光層形成工程は、上記周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料と溶媒とを含有する上記発光層形成用塗工液を用い、上記発光層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成した後に、上記塗膜中の上記溶媒を除去しつつ、上記正孔輸送材料を上記第1電極層側に、上記周囲に配位子が配置された量子ドットを上記塗膜の最表面側に分離して、正孔輸送層と上記発光層とを一括して形成する工程である。
本態様においては、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料と溶媒とを含有する発光層形成用塗工液を、フォトレジスト層がパターン状に形成された基板上に塗布し、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料とを相分離(垂直相分離)させることにより、図3に例示するように、正孔輸送層9と発光層7とを一括して形成することができる。この場合には、正孔輸送層9と発光層7とが相分離したものとなり、正孔輸送層9と発光層7との間に相分離界面23を有することになる。
正孔輸送層と発光層との間に相分離界面を有する場合、図3に例示するように、巨視的には、その相分離界面23が第1電極層2の表面とほぼ平行となり、図4に例示するように、微視的には、発光層7および正孔輸送層9が互いに凹凸状に入り込んだ(重なり合った)状態となる。このため、正孔輸送層と発光層との接触面積が大きくなり、電子と正孔との再結合サイトが広がる。そして、この再結合サイトは、第1電極層から離れた部分に存在するので、結果として発光するサイトが広がる(発光に寄与する分子の数が増加する)。このため、発光効率の向上や、さらなる長寿命化を図ることができる。
また、正孔輸送層と発光層との界面が均一(平坦)でなく、凹凸状であるため、駆動電圧量を上昇させても、一斉に正孔と電子とが励起、結合するのを防止して、発光の強度が急峻に上昇するのを防止することができる。したがって、駆動電圧量に応じて輝度を穏やかに上昇させることができるので、発光輝度のコントロールや、低輝度の階調コントロールを容易に行うことができる。また、駆動電圧を細かく制御するための複雑な周辺回路が不要になるという利点がある。
以下、発光層形成用塗工液および発光層の形成方法について説明する。
(i)発光層形成用塗工液
本態様に用いられる発光層形成用塗工液は、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料と溶媒とを含有するものである。
なお、量子ドットおよび配位子については、上記第3態様に記載したものと同様であり、正孔輸送材料および溶媒については、上記第4態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本態様において、発光層形成用塗工液中の、周囲に配位子が配置された量子ドットの含有量としては、発光層形成用塗工液中の全固形分を100質量%とすると、10質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、中でも30質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、上記含有量が多すぎると、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料とを相分離させることが困難となるからである。
また、発光層形成用塗工液中の、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料との混合比は、(周囲に配位子が配置された量子ドット):(正孔輸送材料)=1:0.1〜2程度であることが好ましい。上記量子ドットの混合比が少なすぎると、充分な発光が得られない可能性があるからである。また、上記量子ドットの混合比が多すぎると、上記量子ドットと正孔輸送材料とを相分離させることが困難となるからである。
本態様に用いられる発光層形成用塗工液は、まず、正孔輸送材料を溶媒に溶解させ、さらにこの溶液に周囲に配位子が配置された量子ドットを分散させて、調製することができる。
なお、発光層形成用塗工液のその他の点については、上記第3態様と同様である。
(ii)発光層の形成方法
本態様においては、上記親液性領域上に、上記発光層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成した後に、上記塗膜中の上記溶媒を除去しつつ、上記正孔輸送材料を上記第1電極層側に、上記周囲に配位子が配置された量子ドットを上記塗膜の最表面側に分離して、正孔輸送層と上記発光層とを一括して形成する。
なお、発光層形成用塗工液の塗布方法については、上記第3態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記発光層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成した後は、塗膜中から溶媒を除去する。溶媒が除去されると、塗膜中では、図4に例示するように、正孔輸送材料(図示なし)が第1電極層2側に、周囲に配位子(図示なし)が配置された量子ドット22が塗膜の最表面側に、上下方向に分離し、塗膜が固化される。このようにして正孔輸送層9および発光層7が一括して形成される。すなわち、相分離により、正孔輸送層および発光層が一括して形成される。
このとき、溶媒の種類、正孔輸送材料の重量平均分子量、発光層形成用塗工液中の正孔輸送材料の含有量、発光層形成用塗工液中の量子ドットおよび配位子の含有量、溶媒を除去する速度、溶媒を除去する際の雰囲気、発光層形成用塗工液を塗布する下地層の表面性状態等のうち、少なくとも1つの条件を適宜設定することにより、正孔輸送材料と周囲に配位子が配置された量子ドットとの相分離の状態を制御することができる。
例えば、溶媒を除去する際の雰囲気を、極性溶媒の蒸気を含有する雰囲気とすることができる。これにより、周囲に配位子が配置された量子ドットをより確実に塗膜中において上側に集めることができる。この極性溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類等が挙げられる。
また、上記発光層形成用塗工液の塗布後、塗膜を乾燥させてもよい。なお、乾燥方法については、上記第3態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
中でも、配位子がシランカップリング剤である場合は、上記発光層形成用塗工液の塗布後、塗膜を硬化させることが好ましい。上記の乾燥を行うことにより、加水分解されたシランカップリング剤の縮合反応が進行し、発光層が硬化される。
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜500nm程度とすることができる。
4.正孔注入輸送層形成工程
本実施態様においては、上記発光層形成工程前に、上記親液性領域上に正孔注入輸送層を形成する正孔注入輸送層形成工程を行ってもよい。正孔注入輸送層を設けることにより、発光層への正孔の注入が安定化したり、正孔の輸送が円滑になったりするため、発光効率を高めることができる。
正孔注入輸送層形成工程および発光層形成工程の順に行う場合には、まず、親液性領域上にのみ正孔注入輸送層を形成する。正孔注入輸送層表面は親液性であり、正孔注入輸送層が形成されていない領域は撥液性領域であるので、この濡れ性の違いにより、発光層も親液性領域上にのみ形成することができる。
正孔注入輸送層は、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ注入する正孔注入機能を有する正孔注入層であってもよく、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔輸送機能を有する正孔輸送層であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、正孔注入機能および正孔輸送機能の両方を有する単一の層であってもよい。
なお、上記発光層形成工程にて、周囲に配位子が配置された量子ドットと正孔輸送材料とを含有する発光層形成用塗工液を用いて、単一の発光層を形成する場合や、正孔輸送層と発光層とを一括して形成する場合には、本工程においては、正孔注入輸送層として正孔注入層を形成することが好ましい。
正孔注入層に用いられる正孔注入材料としては、発光層内への正孔の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、フェニルアミン類、スターバースト型アミン類、フタロシアニン類、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンおよびこれらの誘導体等の導電性高分子などを挙げることができる。上記導電性高分子は、酸によりドーピングされていてもよい。具体的には、4,4´−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(α−NPD)、4,4´,4´´−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA)、4,4´,4´´−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
正孔注入層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmの範囲内である。
また、正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「3.発光層形成工程」の項に記載した正孔輸送材料を用いることができる。
正孔輸送層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmの範囲内である。
本工程においては、発光層形成用塗工液の溶媒に対して不溶となるように、正孔注入輸送層を形成してもよい。これにより、正孔注入輸送層上に発光層を形成する際に、発光層形成用塗工液の溶媒が正孔注入輸送層に接触しても、正孔注入輸送層は溶解されないので、安定して発光層を積層することができるからである。また、正孔注入輸送層の特性が低下するのを抑制することができる。
正孔注入輸送層を発光層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするために、正孔注入輸送層に、光開始剤等を含有させることができる。例えば、Applied physics letter, Vol 81, (2002)に記載されているような光開始剤等を、導電性高分子に混合することにより、紫外線照射によって硬化させることができる。
中でも、正孔注入輸送層を発光層形成用塗工液の溶媒に対して不溶なものとするには、正孔注入輸送層に、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料を用いることが好ましい。すなわち、正孔注入輸送層形成用塗工液が、正孔注入材料または正孔輸送材料等と、硬化性バインダ、または、熱エネルギーもしくは放射線の作用により溶解性が変化する材料とを含有することが好ましい。
特に、正孔注入材料または正孔輸送材料等と、硬化性バインダとを含有する正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布し、硬化して、正孔注入輸送層を形成することが好ましい。
以下、正孔注入材料または正孔輸送材料等と、硬化性バインダとを含有する正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布し、硬化して、正孔注入輸送層を形成する場合(第6態様)と、熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有する正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布し、熱エネルギーを付与または放射線を照射して、正孔注入輸送層を形成する場合(第7態様)とに分けて説明する。
(1)第6態様
本態様における正孔注入輸送層形成工程は、正孔注入材料または正孔輸送材料等と、硬化性バインダとを含有する正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布し、硬化して、正孔注入輸送層を形成する工程である。
なお、正孔注入材料および正孔輸送材料については、上述したとおりである。
本態様においては、正孔注入輸送層形成工程が、正孔注入材料および硬化性バインダを含有する正孔注入層形成用塗工液を塗布し、硬化して、正孔注入層を形成する正孔注入層形成工程であることが好ましい。
本態様に用いられる硬化性バインダとしては、熱エネルギーまたは放射線の作用により硬化するものであることが好ましく、例えば、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。なお、ゾルゲル反応液とは、硬化後にゲル化する反応液をいう。
中でも、硬化性バインダは、オルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。このオルガノポリシロキサンとしては、例えば特開2000−249821号公報に記載されているもの等を用いることができる。
正孔注入輸送層形成用塗工液は、上記の正孔注入材料または正孔輸送材料等と、硬化性バインダとを溶媒に分散もしくは溶解して調製される。例えば、硬化性バインダがオルガノポリシロキサンを含む場合には、溶媒としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系が好ましく用いられる。
正孔注入輸送層形成用塗工液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法等が挙げられる。
正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布した後は、硬化する。硬化の方法としては、熱エネルギーの付与、または放射線の照射が挙げられる。
(2)第7態様
本態様における正孔注入輸送層形成工程は、熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有する正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布し、熱エネルギーを付与または放射線を照射して、正孔注入輸送層を形成する工程である。
ここで、材料の溶解性が変化するとは、材料の主成分が溶解もしくは分散する溶媒の極性が変化することをいう。熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料を含有する層に対して、熱エネルギーを付与または放射線を照射することにより、材料の溶解性を変化させると、正孔注入輸送層形成用塗工液の溶媒と、熱エネルギー付与または放射線照射後の正孔注入輸送層が溶解する溶媒とでは、極性が異なるものとなる。
材料の溶解性が変化する程度としては、熱エネルギー付与または放射線照射後の正孔注入輸送層が、正孔注入輸送層形成用塗工液に用いた溶媒に、実質的に溶解したり混和したりしない程度であればよい。具体的には、熱エネルギー付与または放射線照射後の正孔注入輸送層が正孔注入輸送層形成用塗工液に不溶であればよい。
本態様に用いられる、熱エネルギーまたは放射線の作用により溶解性が変化する材料としては、例えば、親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換されたものであり、かつ、熱エネルギーまたは放射線の作用により親油性基の一部または全部が親水性基に戻るものが好適に用いられる。
上記の材料においては、親水性有機材料の親水性基のすべてが親油性基に変換されている必要はない。親水性基が親油性基に変換されている割合としては、一般的な非水系有機溶剤に対して、所望の濃度以上の溶解性を保持し得る程度であればよい。具体的には、水、アルコール系溶剤に溶解もしくは分散する親水性有機材料が、一般的な非水系溶剤である、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に0.5質量%以上溶解する程度に、親水性基が親油性基に変換されていることが好ましい。
また、上記の材料においては、親油性基のすべてが親水性基に戻る必要はない。親油性基が親水性基に戻る割合としては、正孔注入輸送層が発光層形成用塗工液の溶媒に溶解しない程度であればよい。具体的には、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に0.5質量%以上溶解する材料が、トルエン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン等に不溶もしくは難溶になる程度に、親油性基が親水性基に戻ることが好ましい。この際、完全に当初の親水性有機材料に戻らなくてもよい。
上記親水性有機材料としては、親水性基を有し、水に分散もしくは溶解するものであり、正孔注入輸送層に求められる機能を発揮するものであれば特に限定されるものではない。正孔注入輸送層が正孔注入層である場合には、例えば、特開2006−318876号公報に記載されているもの等を挙げることができる。
親水性有機材料における親水性基を親油性基に変換する方法としては、熱エネルギーまたは放射線の作用により親油性基の一部または全部が親水性基に戻ることから、保護反応を利用する方法であることが好ましい。ここで、保護反応とは、親水性基を誘導体化して、一時的に親水性基に保護基を導入する反応をいう。保護反応としては、例えば特開2006−318876号公報に記載されているもの等を挙げることができる。
正孔注入輸送層形成用塗工液は、上記の親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換された材料を、溶媒に分散もしくは溶解することにより調製することができる。この際、溶媒としては、親油性の材料を分散もしくは溶解できるものが用いられる。このような溶媒としては、例えば特開2006−318876号公報に記載されているもの等を用いることができる。
また、正孔注入輸送層形成用塗工液中の、親水性有機材料の親水性基の一部または全部が親油性基に変換された材料の濃度としては、材料の成分または組成によって異なるものではあるが、通常、0.1質量%以上で設定され、好ましくは1質量%〜5質量%程度である。
正孔注入輸送層は、上記正孔注入輸送層形成用塗工液を塗布して得られる塗膜に、熱エネルギーを付与または放射線を照射して、塗膜の溶解性を変化させることにより、形成することができる。上記正孔注入輸送層形成用塗工液の塗布後には、乾燥を行ってもよい。熱エネルギーの付与および放射線の照射については、例えば特開2006−318876号公報に記載されている条件とすることができる。
なお、熱エネルギーまたは放射線の作用により材料の溶解性が変化するメカニズムについては、特開2006−318876号公報に詳しく記載されている。
5.電子注入輸送層形成工程
本実施態様においては、上記発光層形成工程後に、上記発光層上に電子注入輸送層を形成する電子注入輸送層形成工程を行ってもよい。電子注入輸送層を設けることにより、発光層への電子の注入が安定化したり、電子の輸送が円滑になったりするため、発光効率を高めることができる。
電子注入輸送層は、陰極から注入された電子を安定に発光層内へ注入する電子注入機能を有する電子注入層であってもよく、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子輸送機能を有する電子輸送層であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層であってもよい。
なお、上記発光層形成工程にて、周囲に配位子が配置された量子ドットと電子輸送材料とを含有する発光層形成用塗工液を用いて、単一の発光層を形成する場合には、本工程においては、電子注入輸送層として電子注入層を形成することが好ましい。
電子注入層に用いられる電子注入材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ba、Ca、Li、Cs、Mg、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の単体、アルミリチウム合金等のアルカリ金属の合金、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機錯体などを挙げることができる。また、Ca/LiFのように、これらを積層して用いることも可能である。
電子注入層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には0.1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜100nmの範囲内である。
また、電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、陰極から注入された電子を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記「3.発光層形成工程」の項に記載した電子輸送材料を用いることができる。
電子輸送層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜50nmの範囲内である。
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層の形成材料としては、Li、Cs、Ba、Sr等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属がドープされた電子輸送材料を挙げることができる。電子輸送材料としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bpehn)等のフェナントロリン誘導体が挙げられる。また、電子輸送材料とドープされる金属とのモル比率は、1:1〜1:3の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:2の範囲内である。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属がドープされた電子輸送材料は、電子移動度が比較的大きく、金属単体に比べて透過率が高い。
電子注入機能および電子輸送機能の両方を有する単一の層の膜厚としては、その機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されるものではないが、具体的には0.1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1nm〜50nmの範囲内である。
電子注入輸送層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法等のドライプロセスであってもよく、スピンコート法等のウェットプロセスであってもよい。本実施態様においては、配位子としてシランカップリング剤を用いることにより発光層を硬化することができるので、ウェットプロセスの場合であっても安定して発光層上に電子注入輸送層を形成することができる。
6.第2電極層形成工程
本実施態様においては、通常、上記発光層工程後に、発光層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程が行われる。上記電子注入輸送層形成工程が行われる場合には、上記電子注入輸送層形成工程後に、発光層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程が行われる。
第2電極層は、第1電極層と対向する電極であればよく、陽極であってもよく陰極であってもよい。
第2電極層を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。例えば、第2電極層側から光を取り出す場合には、第2電極層は透明性を有することが好ましい。一方、第1電極層側から光を取り出す場合には、第2電極層に透明性は要求されない。なお、導電性を有する材料については、上記第1電極層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、第2電極層の成膜方法およびパターニング方法については、上記第1電極層の成膜方法およびパターニング方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
7.絶縁層形成工程
本実施態様においては、上記濡れ性変化層形成工程前に、基板上の第1電極層のパターンの開口部に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行ってもよい。絶縁層は、隣接する第1電極層のパターン間での導通や、第1電極層および第2電極層間での導通を防ぐために設けられるものである。この絶縁層が形成された部分は、非発光領域となる。
絶縁層は、基板上の第1電極層のパターンの開口部に形成されるものであり、通常は第1電極層のパターンの端部を覆うように形成される。
この絶縁層の形成材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、無機材料等を用いることができる。
また、絶縁層の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
8.その他の工程
本実施態様においては、発光層等を酸素および水蒸気の影響から保護するバリア層や、光取り出し効率を向上させる低屈折率層を、第2電極層上に形成する工程を行ってもよい。
II.第2実施態様
本発明のEL素子の製造方法の第2実施態様は、第1電極層が形成された基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層基板を、上記濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程とを有することを特徴とするものである。
本実施態様のEL素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施態様のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、基板1上に第1電極層2をパターン状に形成し、この第1電極層2のパターンの開口部に絶縁層3を形成し、第1電極層2および絶縁層3の上に濡れ性変化層4を形成する(図5(a)、濡れ性変化層形成工程)。
次に、図5(b)に示すように、基体32と、この基体32上にパターン状に形成された遮光部33と、遮光部33を覆うように基体32上に形成された光触媒処理層34とを有する光触媒処理層基板31を準備する。次いで、光触媒処理層基板31の光触媒処理層34と、濡れ性変化層4とが向かい合うように配置し、紫外線12を照射する。紫外線12の照射により、図5(c)に示すように、光触媒処理層34に含有される光触媒の作用から、濡れ性変化層4の照射部分では、濡れ性が液体との接触角が低下するように変化する。この液体との接触角が低下するように濡れ性が変化した領域を親液性領域5とする。未照射部分では、濡れ性が変化しない。この濡れ性が変化しない領域を撥液性領域6とする。そして、光触媒処理層基板31を、濡れ性変化層4から取り外す。これにより、濡れ性変化層4表面に、親液性領域5と撥液性領域6とからなる濡れ性変化パターンが形成される。図5(b)および(c)は濡れ性変化パターン形成工程である。
濡れ性変化層4は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、照射部分である親液性領域5と、未照射部分である撥液性領域6とでは、濡れ性に違いがある。
次に、この濡れ性の違いを利用して、親液性領域5と撥液性領域6とからなる濡れ性変化パターン上に、発光層形成用塗工液を塗布して、親液性領域5上にのみ発光層7を形成する。(図5(d)、発光層形成工程)。
上記発光層形成用塗工液には、図2に例示するような周囲に配位子21が配置された量子ドット22が用いられている。すなわち、配位子21が量子ドット22の表面に付着しており、このような配位子21が表面に付着された量子ドット22が発光層形成用塗工液に用いられている。
次に、発光層7上に第2電極層8を形成する(図5(e))。この際、例えば、第2電極層8を透明電極とした場合には、トップエミッション型のEL素子が得られ、第1電極層2を透明電極とした場合には、ボトムエミッション型のEL素子が得られる。
本実施態様においては、濡れ性変化層に、光触媒を含有する光触媒処理層を介してエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する。そして、この濡れ性変化層表面に形成された濡れ性変化パターンを利用して発光層のパターニングを行う。したがって、複雑なパターニング工程や、高価な真空設備を要することなく、発光層を容易にパターニングすることが可能である。
また、本実施態様においては、光触媒を含有する光触媒処理層を介して濡れ性変化層にエネルギーをパターン照射することにより、光触媒を含有していない濡れ性変化層に対して、光触媒の作用により濡れ性を変化させることができる。さらに、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成した後は、光触媒処理層を有する光触媒処理層基板を濡れ性変化層から取り外すため、EL素子自体に光触媒が含まれることがない。すなわち、光触媒は、光触媒処理層に含まれており、濡れ性変化層には含まれていない。したがって、濡れ性変化層の平滑性を向上させることができ、濡れ性変化層と発光層との界面における障壁を低減することができる。これにより、駆動電圧を低減させ、輝度や発光効率を高めるなど、発光特性を向上させることが可能である。また、電極間の短絡を防止することも可能である。
さらに本実施態様において、量子ドットの表面に付着している配位子はシランカップリング剤であることが好ましい。これにより、発光層を硬化されたものとすることができ、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることが可能である。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することが可能である。
さらに、濡れ性変化層は、オルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。この場合、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。それにより、EL素子駆動時等における層間剥離等による寿命特性の低下を防ぐことが可能である。
なお、発光層形成工程については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、EL素子の製造方法における他の工程ついて説明する。
1.濡れ性変化層形成工程
本実施態様における濡れ性変化層形成工程は、第1電極層が形成された基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する工程である。
本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギーに対して不活性である。ここで、エネルギーとは、光触媒を作用させる際に照射されるエネルギーをいい、具体的には紫外線等が挙げられる。また、濡れ性変化層がエネルギーに対して不活性であるとは、紫外線等が濡れ性変化層に照射された際に、濡れ性変化層の構成材料が何ら反応しないことをいう。
上述したように、本実施態様における濡れ性変化層は、光触媒の作用によって反応し得るものであり、光触媒の存在がなければ、エネルギーを照射されても反応しない。すなわち、濡れ性変化層がエネルギーに対して不活性であるとは、具体的には、濡れ性変化層が実質的に光触媒を含有しないことをいう。
なお、濡れ性変化層が実質的に光触媒を含有しないとは、濡れ性変化層中の光触媒の含有量が1重量%以下であることをいう。
このように、本実施態様における濡れ性変化層は実質的に光触媒を含有しないので、平滑性が良好であり、濡れ性変化層と発光層等との界面における障壁を低減することができる。これにより、駆動電圧を低減させ、輝度や発光効率を高めるなど、発光特性を向上させることが可能である。また、電極間の短絡を防止することも可能である。
濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであれば特に限定されるものではない。濡れ性変化層に用いられる材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
なお、オルガノポリシロキサンについては、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
このように、オルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるが、中でも、濡れ性変化層がフッ素を含有していることが好ましい。
なお、濡れ性変化層がフッ素を含有する場合については、上記第1実施態様に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、濡れ性変化層には、上述した材料以外に、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様の界面活性剤や、添加剤等を含有させてもよい。
なお、濡れ性変化層の形成方法および膜厚等については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.濡れ性変化パターン形成工程
本実施態様における濡れ性変化パターン形成工程は、基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層基板を、上記濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギー照射することにより、上記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する工程である。
以下、光触媒処理層基板、光触媒処理層基板および濡れ性変化層の配置、エネルギー照射、ならびに濡れ性変化パターンについて説明する。
(1)光触媒処理層基板
本実施態様においては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成する際、濡れ性変化層に光触媒の作用を及ぼすために、光触媒を含有する光触媒処理層を有する光触媒処理層基板を用いる。この光触媒処理層基板を濡れ性変化層に対して所定の間隙をおいて配置し、エネルギーをパターン状に照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成することができる。
本実施態様に用いられる光触媒処理層基板は、基体と、この基体上に形成された光触媒処理層とを有するものである。また、この光触媒処理層基板には、遮光部がパターン状に形成されていてもよい。以下、光触媒処理層、基体および遮光部について説明する。
(i)光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、光触媒を含有するものである。光触媒処理層としては、光触媒処理層中の光触媒が濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させるような構成であれば特に限定されるものではない。光触媒処理層は、例えば、光触媒とバインダとから構成されるものであってもよく、光触媒単体で構成されるものであってもよい。光触媒のみからなる光触媒処理層の場合は、濡れ性変化層表面の濡れ性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。また、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の場合は、光触媒処理層の形成が容易であるという利点を有する。
なお、光触媒については、上記第1実施態様の濡れ性変化層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、光触媒処理層が光触媒とバインダとからなるものである場合、用いられるバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましい。このようなバインダとしては、例えば上述のオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
さらに、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体としては、一般式SiXで表され、Xがハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、あるいは平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
光触媒処理層が光触媒とバインダとからなるものである場合、光触媒処理層中の光触媒の含有量は、5質量%〜60質量%の範囲内で設定することができ、好ましくは20質量%〜50質量%の範囲内である。
また、光触媒処理層は、上記の光触媒およびバインダの他に、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様の界面活性剤や、添加剤等を含有していてもよい。
光触媒処理層の厚みは、0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、光触媒処理層表面の濡れ性は、親液性であっても撥液性であってもよい。
光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法としては、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜法を挙げることができる。真空成膜法であれば、均一な膜で、かつ光触媒のみを含有する光触媒処理層を形成することができる。これにより、濡れ性変化層表面の濡れ性を均一に変化させることが可能となる。また、光触媒処理層が光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して、効率的に濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができる。
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを成膜し、次いで焼成により無定形チタニアを結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。
無定形チタニアは、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩を加水分解および脱水縮合する、あるいは、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解および脱水縮合することによって得ることができる。次いで、無定形チタニアを、400℃〜500℃で焼成することによってアナターゼ型チタニアに変性させ、600℃〜700℃で焼成することによってルチル型チタニアに変性させることができる。
光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の形成方法としては、バインダとしてオルガノポリシロキサンを用いた場合には、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散させて光触媒処理層形成用塗工液を調製し、この光触媒処理層形成用塗工液を基体上に塗布する方法を用いることができる。また、バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合には、塗布後に、紫外線を照射して硬化処理を行ってもよい。
この際に使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布方法としては、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の一般的な方法を用いることができる。
また、光触媒とバインダとからなる光触媒処理層の形成方法としては、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いた場合には、光触媒の粒子と無定形シリカ前駆体とを非水性溶媒中に均一に分散させて光触媒処理層形成用塗工液を調製し、この光触媒処理層形成用塗工液を基体上に塗布し、無定形シリカ前駆体を、空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させ、常温で脱水縮重合させる方法を用いることができる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上させることができる。
光触媒処理層の形成位置としては、例えば図6(a)に示すように、基体32上の全面に光触媒処理層34が形成されていてもよく、例えば図6(b)に示すように、基体32上に光触媒処理層34がパターン状に形成されていてもよい。
光触媒処理層がパターン状に形成されている場合には、光触媒処理層を濡れ性変化層に対して所定の間隙をおいて配置し、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射する必要がなく、全面に照射することにより、濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができる。また、実際に光触媒処理層に面する濡れ性変化層表面のみ、濡れ性が変化するので、エネルギーの照射方向としては、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。さらには、照射されるエネルギーも、平行光等の平行なものに限定されない。
この光触媒処理層のパターニング方法としては、特に限定されるものではなく、例えばフォトリソグラフィー法等が挙げられる。
(ii)基体
光触媒処理層基板に用いられる基体は、後述するエネルギーの照射方向や、得られるEL素子の光の取り出し方向により透明性が適宜選択される。
例えば、図5(e)に示すEL素子がトップエミッション型であり、かつEL素子における基板または第1電極層が不透明である場合は、エネルギー照射方向は必然的に光触媒処理層基板側からとなる。また例えば、図5(b)に示すように光触媒処理層基板31に遮光部33がパターン状に形成されており、この遮光部33を用いてパターン状にエネルギー照射する場合も、光触媒処理層基板側からエネルギーを照射する必要がある。そのため、これらの場合には、基体は透明性を有する必要がある。
一方、例えば図5(e)に示すEL素子がボトムエミッション型である場合には、EL素子における基板側からエネルギーを照射することが可能である。そのため、この場合には、基体に透明性は要求されない。
また、基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
基体としては、特に限定されるものではないが、光触媒処理層基板は繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒処理層との密着性が良好であるものが好適に用いられる。具体的には、基体を構成する材料としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
また、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層が形成されていてもよい。アンカー層の形成材料としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
(iii)遮光部
本実施態様に用いられる光触媒処理層基板には、遮光部がパターン状に形成されていてもよい。パターン状の遮光部を有する光触媒処理層基板を用いた場合には、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行ったりする必要がない。したがって、この場合には、光触媒処理層基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることができ、また描画照射に必要な高価な装置も不要であることから、コスト的に有利となる。
遮光部の形成位置としては、例えば図5(b)に示すように、基体32上に遮光部33がパターン状に形成され、この遮光部33上に光触媒処理層34が形成されていてもよい。また、例えば図7に示すように、基体32上に光触媒処理層34が形成され、この光触媒処理層34上に遮光部33がパターン状に形成されていてもよい。さらに、図示しないが、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に遮光部がパターン状に形成されていてもよい。
上記の基体上に遮光部が形成されている場合、および、光触媒処理層上に遮光部が形成されている場合は、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層と濡れ性変化層とが間隙をおいて配置される部分の近傍に、遮光部が配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができる。このため、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
さらに、光触媒処理層上に遮光部が形成されている場合は、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、この遮光部の膜厚をこの間隙の距離と一致させておくことにより、間隙を一定のものとするためのスペーサとして、遮光部を用いることができる。すなわち、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、遮光部と濡れ性変化層とを密着させた状態で配置することにより、所定の間隙を保つことができる。そして、この状態で光触媒処理層基板からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを精度良く形成することができる。
また、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に遮光部が形成されている場合は、例えばフォトマスクを遮光部の表面に着脱可能な程度に密着させることができるので、EL素子の製造を小ロットで変更するような場合に好適である。
遮光部の形成方法としては、特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択される。
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により、厚み1000Å〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより、遮光部を形成することができる。このパターニング方法としては、一般的なパターニング方法を用いることができる。
また例えば、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターニングすることにより、遮光部を形成することもできる。樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また、樹脂バインダとしては、感光性樹脂、あるいは、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。パターニング方法としては、フォトリソ法、印刷法等、一般的なパターニング方法を用いることができる。
樹脂バインダを用いた遮光部の厚みとしては、0.5μm〜10μmの範囲内で設定することができる。
(iv)プライマー層
本実施態様において、上述したように基体上に遮光部がパターン状に形成され、その遮光部上に光触媒処理層が形成されている場合には、例えば図8に示すように、遮光部33と光触媒処理層34との間にプライマー層35が形成されていることが好ましい。
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、プライマー層は、光触媒の作用による濡れ性変化層の濡れ性変化を阻害する要因となる遮光部および遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を有していると考えられる。したがって、遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、高感度で濡れ性変化の処理が進行し、その結果、高解像度の濡れ性変化パターンを得ることができる。
プライマー層は、遮光部のみならず遮光部間の開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響を及ぼすのを防止すると考えられるので、パターン状の遮光部および遮光部間の開口部を覆うように全面に形成されていることが好ましい。また、プライマー層は、光触媒処理層と遮光部とが物理的に接触しないように配置されていればよい。
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。無機材料としては、例えば無定形シリカを挙げることができる。この無定形シリカの前駆体としては、一般式SiXで示され、Xがハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、あるいは、平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましく用いられる。
また、プライマー層の膜厚は、0.001μm〜1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
(2)光触媒処理層基板および濡れ性変化層の配置
本実施態様においては、光触媒処理層基板を、濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置する。通常は、光触媒処理層基板の光触媒処理層と、濡れ性変化層とを、濡れ性変化層にエネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置する。
なお、間隙とは、光触媒処理層および濡れ性変化層が接触している状態も含むものとする。
光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔は、具体的には、200μm以下であることが好ましい。光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隔をおいて配置することにより、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔が上記範囲より広い場合には、光触媒作用により生じた活性酸素種が濡れ性変化層に届き難くなり、濡れ性の変化速度を遅くしてしまう可能性がある。逆に、光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔を狭くしすぎると、酸素、水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しにくくなり、結果的に濡れ性の変化速度を遅くしてしまう可能性がある。
上記間隔は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、濡れ性変化の効率が良好である点を考慮すると、0.2μm〜20μmの範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。
一方、例えば300mm×300mmといった大面積のEL素子を製造する場合には、上述したような微細な間隙を光触媒処理層基板と濡れ性変化層との間に設けることは極めて困難である。したがって、比較的大面積のEL素子を製造する場合は、上記間隙は、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10μm〜75μmの範囲内である。上記間隙を上記範囲とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下を抑制することができ、また光触媒の感度が悪化して濡れ性変化の効率が悪化するのを抑制することができるからである。
また、上記のような比較的大面積に対してエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層基板と濡れ性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。上記間隙の設定値を上記範囲とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層基板と濡れ性変化層とを接触させずに配置することができるからである。
本実施態様においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
このような極めて狭い間隙を均一に設けて光触媒処理層と濡れ性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。スペーサを用いる方法では、均一な間隙を設けることができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した濡れ性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、濡れ性変化層表面に所定の濡れ性変化パターンを形成することが可能となる。
本実施態様においては、スペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、光触媒処理層基板の光触媒処理層上にスペーサが形成されていることが好ましい。この場合、上記遮光部の項に記載したような利点を有する。
スペーサは、濡れ性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように、濡れ性変化層表面を保護する作用を有していればよい。このため、スペーサは、照射されるエネルギーに対して遮蔽性を有していなくてもよい。
(3)エネルギー照射
本実施態様においては、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーをパターン照射することにより、濡れ性変化層表面に濡れ性変化パターンを形成する。
なお、エネルギー照射に用いる光の波長および光源については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、光触媒処理層中の光触媒の作用により濡れ性変化層表面の濡れ性が変化するのに必要な照射量とする。
この際、光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することが好ましい。感度を上昇させことができ、効率的に濡れ性を変化させることができるからである。具体的には、30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
エネルギー照射方向は、光触媒処理層基板に遮光部が形成されているか否か、あるいは、EL素子の光の取り出し方向等により決定される。
例えば、光触媒処理層基板に遮光部が形成されており、光触媒処理層基板の基体が透明である場合は、光触媒処理層基板側からエネルギー照射が行なわれる。また、この場合、光触媒処理層上に遮光部が形成されており、この遮光部がスペーサとして機能する場合には、エネルギー照射方向は光触媒処理層基板側からであってもよく基板側からであってもよい。
また例えば、光触媒処理層がパターン状に形成されている場合には、エネルギー照射方向は、上述したように、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、いかなる方向であってもよい。
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、光触媒処理層と濡れ性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されれば、エネルギー照射方向はいかなる方向であっってもよい。
さらに例えば、フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合、フォトマスクが配置された側が透明である必要がある。
エネルギー照射後は、光触媒処理層基板は、濡れ性変化層から取り外される。
(4)濡れ性変化パターン
本実施態様における濡れ性変化パターンは、濡れ性変化層表面に形成されるものであり、親液性領域および撥液性領域からなるものである。
なお、親液性領域および撥液性領域における液体との接触角については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.その他の工程
本実施態様においても、上記第1実施態様と同様に、正孔注入輸送層形成工程、電子注入輸送層形成工程、絶縁層形成工程等を行うことができる。
また、上記第1実施態様と同様に、通常、第2電極層形成工程が行われる。
B.EL素子
本発明のEL素子は、基板と、上記基板上にパターン状に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、表面に、上記第1電極層のパターン上に配置され、ポリシロキサンを含有する親液性領域、および、上記第1電極層のパターンの開口部上に配置され、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有する撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを有する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層の親液性領域上に形成された発光層と、上記発光層上に形成された第2電極層とを有し、上記発光層に、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いることを特徴とするものである。
図1(e)に例示するEL素子においては、基板1上に、第1電極層2がパターン状に形成され、この第1電極層2のパターンの開口部に絶縁層3が形成され、第1電極層2および絶縁層3の上に濡れ性変化層4が形成され、濡れ性変化層4の表面に親液性領域5および撥液性領域6からなる濡れ性変化パターンが形成され、親液性領域5上に発光層7が形成され、発光層7上に第2電極層8が形成されている。濡れ性変化層4表面の親液性領域5は、ポリシロキサンを含有しており、第1電極層2のパターン上に配置されている。また、濡れ性変化層4表面の撥液性領域6は、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有しており、第1電極層2のパターンの開口部上、すなわち絶縁層3上に配置されている。
ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものである。このため、フッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。すなわち、フッ素の含有量が多い部分の表面の臨界表面張力に比較して、フッ素の含有量が少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。
本発明においては、濡れ性変化層表面の親液性領域はポリシロキサンを含有し、濡れ性変化層表面の撥液性領域はフッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有しているので、撥液性領域のフッ素含有量は、親液性領域のフッ素含有量に比べて多いということができる。したがって、撥液性領域の臨界表面張力に比較して、親液性領域の臨界表面張力は大きくなるということができる。
このように、撥液性領域と親液性領域とでは臨界表面張力が異なり、すなわち濡れ性が異なるので、この撥液性領域および親液性領域の濡れ性の違いを利用して、親液性領域上にのみ発光層を形成することができる。したがって、複雑なパターニング工程や、高価な真空設備を要することなく、発光層を容易にパターニングすることが可能なEL素子とすることができる。
また発明においては、発光層に周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いるので、発光層を硬化されたものとすることができ、発光層内での量子ドットの安定性を良好にすることができ、寿命特性を向上させることが可能である。さらには、発光層の熱安定性(Tg:ガラス転移温度)を向上させることもできる。また、シランカップリング剤は分子設計が比較的容易であるので、種々の機能性を示す官能基を有するシランカップリング剤を用いることにより、寿命特性を改善することが可能である。
さらに、濡れ性変化層表面の親液性領域がポリシロキサンを含有し、かつ、濡れ性変化層表面の撥液性領域がフッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有しており、発光層が周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いたものであるので、濡れ性変化層中のオルガノポリシロキサンが第1電極層と結合し、発光層中のシランカップリング剤が濡れ性変化層と結合することにより、第1電極層と濡れ性変化層と発光層との密着性を向上させることができる。それにより、EL素子駆動時等における層間剥離等による寿命特性の低下を防ぐことが可能である。
なお、「発光層に、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いる」とは、発光層において、量子ドットの周囲に配置されたシランカップリング剤が、シランカップリング剤自体である場合、シランカップリング剤の加水分解物となっている場合、および、シランカップリング剤の加水分解縮合物となっている場合、のいずれをも含むものである。すなわち、発光層において、量子ドットの周囲には、シランカップリング剤自体が配置されていてもよく、シランカップリング剤の加水分解物が配置されていてもよく、シランカップリング剤の加水分解縮合物が配置されていてもよい。また、シランカップリング剤自体、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物が混在していてもよい。
発光層がシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有する場合には、発光層を硬化されたものとすることができる。これにより、発光層上に塗工液を用いて正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を形成する際、正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を形成するための塗工液中の溶剤に発光層が溶解等することなく、安定して発光層上に正孔注入輸送層または電子注入輸送層等を積層することができる。
なお、基板、第1電極層、発光層および第2電極層については、上記「A.EL素子の製造方法」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明のEL素子の他の構成について説明する。
1.濡れ性変化層
本発明における濡れ性変化層は、第1電極層上に形成されるものであり、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものである。また、濡れ性変化層は、表面に、第1電極層のパターン上に配置され、ポリシロキサンを含有する親液性領域と、第1電極層のパターンの開口部上に配置され、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有する撥液性領域とからなる濡れ性変化パターンを有している。
なお、親液性領域および撥液性領域については、上記「A.EL素子の製造方法」の第1実施態様の濡れ性変化パターン形成工程の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
撥液性領域はフッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有するものであり、親液性領域はポリシロキサンを含有するものである。上述したように、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであるので、フッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、撥液性領域のフッ素含有量は、親液性領域のフッ素含有量に比べて多く、撥液性領域の臨界表面張力に比較して、親液性領域の臨界表面張力は大きくなるといえる。濡れ性変化層は、表面に、このような撥液性領域および親液性領域からなる濡れ性変化パターンを有するので、濡れ性変化層上に発光層を形成する際には、撥液性領域および親液性領域の濡れ性の違いを利用して、親液性領域上のみに発光層を形成することができるのである。
なお、親液性領域中および撥液性領域中のフッ素含有量については、上記「A.EL素子の製造方法」の第1実施態様の濡れ性変化パターン形成工程の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
撥液性領域を構成する、フッ素を含有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。このようなフッ素を含有するオルガノポリシロキサンは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料であり、かつ、光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであるため、撥液性領域に好適に用いることができるのである。
上記(1)の場合、フッ素を含有するオルガノポリシロキサンとしては、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Yがフルオロアルキル基である場合、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示し、Yがアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基である場合、Xはフッ素を示す。nは0〜3までの整数である。)
で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であることが好ましい。Yで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましい。また、Xで示されるアルコキシル基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。上記式で示されるケイ素化合物としては、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているもの等を用いることができる。
特に、フッ素を含有するオルガノポリシロキサンは、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンとしては、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンを用いた場合には、撥液性領域の撥液性が大きく向上するので、撥液性領域への発光層の成膜を妨げることでき、親液性領域のみに発光層を成膜することが可能となる。
なお、撥液性領域中にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが含有されていることは、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱分光法、核磁気共鳴分光法、または質量分析法を用いて確認することができる。
また、上記の(2)の場合、フッ素を含有するオルガノポリシロキサンに用いられる反応性シリコーンとしては、下記化学式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
Figure 2009087781
ここで、nは2以上の整数であり、R、Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がフッ化フェニルである。また、R、Rがメチル基であるものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
さらに、撥液性領域は、上記のフッ素を含有するオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を含有していてもよい。
親液性領域は、撥液性領域よりもフッ素含有量が少ない領域である。例えば図1(b),(c)および図5(b),(c)に示すように、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、濡れ性変化層4の照射部分では、フッ素を含有するオルガノポリシロキサンのフッ素を含む側鎖が分解されて、フッ素含有量が低下し、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する。このように、親液性領域を構成するポリシロキサンとしては、上記のフッ素を含有するオルガノポリシロキサンのフッ素を含む側鎖が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解されたものを例示することができる。
また、親液性領域は、撥液性領域と同様に、上記ポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を含有していてもよい。
さらに、撥液性領域および親液性領域は、上述したフッ素を含有するオルガノポリシロキサンやポリシロキサン以外に、例えば特開2000−249821号公報に記載されているものと同様の界面活性剤や、添加剤等を含有していてもよい。
撥液性領域および親液性領域の形成位置としては、撥液性領域が第1電極層のパターンの開口部上に配置され、親液性領域が第1電極層のパターン上に配置されていればよい。
また、撥液性領域および親液性領域のパターン形状としては、第1電極層のパターン形状に応じて適宜選択される。例えば、第1電極層がストライプ状に形成されている場合、この第1電極層のストライプパターンに対応して、親液性領域もストライプ状に形成される。また例えば、画素に対応して、第1電極層がモザイク状に形成されている場合、親液性領域はストライプ状に形成されていてもよくモザイク状に形成されていてもよい。いずれも場合においても、濡れ性変化層表面において、親液性領域以外の領域は、撥液性領域となる。
濡れ性変化層は、表面に、上述した撥液性領域および親液性領域からなる濡れ性変化パターンを有するものであればよい。通常、濡れ性変化層においては、表面の親液性領域以外の部分は、表面の撥液性領域と同様の構成になっている。すなわち、濡れ性変化層においては、表面の親液性領域以外の部分は、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有するものとなる。
また、濡れ性変化層は、光触媒を含有していてもよく含有していなくてもよい。光触媒を含有する濡れ性変化層は、「A.EL素子の製造方法」の第1実施態様における濡れ性変化層と同様である。また、光触媒を含有しない濡れ性変化層は、「A.EL素子の製造方法」の第2実施態様における濡れ性変化層と同様である。
なお、濡れ性変化層が光触媒を含有する場合、濡れ性変化層の形成方法等については、「A.EL素子の製造方法」の第1実施態様に詳しく記載し、濡れ性変化層が光触媒を含有しない場合、濡れ性変化層の形成方法等については、「A.EL素子の製造方法」の第2実施態様に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
また、濡れ性変化層の膜厚等については、上記「A.EL素子の製造方法」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.その他の層
本発明においては、第1電極層と発光層との間に正孔注入輸送層が形成されていてもよい。
また、正孔注入輸送層が正孔輸送層である場合には、正孔輸送層と発光層とが相分離していてもよい。これにより、発光効率および寿命特性がより向上するからである。
なお、正孔注入輸送層、および正孔輸送層と発光層とが相分離している場合については、上記「A.EL素子の製造方法」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
また、本発明においては、発光層と第2電極層との間に電子注入輸送層が形成されていてもよい。なお、電子注入輸送層については、上記「A.EL素子の製造方法」に記載したので、ここでの説明は省略する。
さらに、基板上の第1電極層のパターンの開口部に、絶縁層が形成されていてもよい。なお、絶縁層については、上記「A.EL素子の製造方法」に記載したので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(透明電極の形成)
洗浄したガラス基板上に透明電極としてITO膜をスパッタリング法により1500Åの膜厚で成膜した。その後、ライン幅:300μm、ピッチ:100μmとなるようにフォトリソグラフィー法によりITO膜をパターニングした。
(絶縁層の形成)
ITO膜がパターン状に形成された基板に、ネガ型レジスト(新日鉄化学社製、V259PA)を乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコート法にて塗布した後、120℃で1時間ベーキングした。その後、ITO膜のないピッチ部分を中心に100μmの幅で、フォトマスクを介して365nmのUV光を500mJの露光量で露光した。このとき、フォトマスクと基板とを1mmのギャップを設けて露光した。これを有機アルカリの現像液(新日鉄化学社製、V259OD)で40秒間現像した後、160℃で1時間ベーキングすることにより、絶縁層を形成した。
(濡れ性変化層の形成)
下記の成分を混合することにより、濡れ性変化層形成用塗工液を調製した。
<濡れ性変化層形成用塗工液の組成>
・二酸化チタンゾル液(石原産業(株)製 STS−01) 3重量部
・テトラエトキシシラン 1重量部
・2規定の塩酸 40重量部
・イソプロピルアルコール 75重量部
・フルオロアルコキシシラン(トーケムプロダクツ(株)製 MF−160E) 7.5重量部
上記基板上に、この濡れ性変化層形成用塗工液をスピンコーターで塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行い、膜厚60nmの透明な濡れ性変化層を形成した。濡れ性変化層上にフォトマスクを介して、高圧水銀灯(254nm、365nm)を用いて70mW/cm2の照度で50秒間光照射し、親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成した。
(発光層の形成)
上記親液性領域上に、赤色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Maple-Red Orange)、緑色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Adirondack Green)、青色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Lake Placid Blue)をそれぞれ、インクジェット法にて塗布し、80℃で30分間乾燥させ、3色の発光層をパターン状に形成した。
(電子輸送層の形成)
上記発光層上に、真空蒸着法により、TAZを20nm形成し、続いてAlq3を20nm形成した。
(金属電極の形成)
その後、真空蒸着によりLiF膜(膜厚5nm)およびAl膜(膜厚1000Å)をマスク蒸着法により形成した。この際、ITO膜のパターンと直交するようにパターン状にLiF膜およびAl膜を形成した。以上により、EL素子を作製した。
(評価)
ITO電極およびAl電極は端子を備えており、これらを電圧源に接続した。5Vを上回る電圧を印加すると、赤色発光層では620nm、緑色発光層では520nm、青色発光層では490nmに、それぞれピークを有する発光が得られた。これは、TOPOで保護された各色のCdSe/ZnS量子ドットのフォトルミネッセンススペクトラムと同様の発光を示していた。また、得られたEL素子では、良好な安定性、効率および輝度が得られ、良好なパターニング適正を確認した。
[実施例2]
実施例1において、発光層を次のようにして形成した以外は、実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
(発光層の形成)
1.赤色発光層形成用塗工液の調製
赤色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Maple-Red Orange)に、シランカップリング剤を添加し、配位子を置換した。
具体的には、まず、テトラメトキシシラン(LS-540、信越化学工業製)5gと、フェニルトリメトキシシラン(LS-2750、信越化学工業製)1gと、0.01NのHCl 2gとを室温にて12時間攪拌し、共重合化合物(シランカップリング剤)を得た。この共重合化合物にトルエンを加えて攪拌して溶解させ、シランカップリング剤の10wt%トルエン溶液を得た。
次に、アルゴンガス雰囲気で、上記量子ドットの分散液1gを攪拌しながら、室温(26℃)で上記シランカップリング剤の10wt%トルエン溶液2gを滴下した。この反応液を12時間攪拌した後、アルゴンガス雰囲気から大気雰囲気へ変更し、蒸発飛散した量のトルエンを添加した後、エタノールを8g滴下した。次いで、遠心分離によって沈殿物を反応液から分離した後、下記に示す手順で再沈殿による精製を行った。
すなわち、沈殿物をトルエン4gと混合して分散液とし、この分散液にエタノール10gを滴下することにより精製された沈殿物を得た。
このようにして得られた再沈殿液を遠心分離することにより、シランカップリング剤で保護された量子ドットの精製物を得た。
次いで、上記シランカップリング剤で保護された量子ドットをトルエンに分散させた赤色発光層形成用塗工液を調製した。
2.緑色発光層形成用塗工液の調製
緑色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Adirondack Green)を用いて、上記の赤色発光層形成用塗工液の調製と同様にして、緑色発光層形成用塗工液を調製した。
3.青色発光層形成用塗工液の調製
青色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Lake Placid Blue)を用いて、上記の赤色発光層形成用塗工液の調製と同様にして、青色発光層形成用塗工液を調製した。
4.発光層の形成
上記の赤色発光層形成用塗工液、緑色発光層形成用塗工液、青色発光層形成用塗工液をそれぞれ、インクジェット法にて塗布し、100℃で30分間乾燥させ、硬化させ、3色の発光層をパターン状に形成した。
(評価)
ITO電極およびAl電極は端子を備えており、これらを電圧源に接続した。4Vを上回る電圧を印加すると、赤色発光層では620nm、緑色発光層では520nm、青色発光層では490nmに、それぞれピークを有する発光が得られた。これは、TOPOで保護された各色のCdSe/ZnS量子ドットのフォトルミネッセンススペクトラムと同様の発光を示していた。また、得られたEL素子では、良好な安定性、効率および輝度が得られ、良好なパターニング適正を確認した。
[実施例3]
(絶縁層の形成)
まず、ガラス基板上に、第1電極層としてITO膜が、線幅80μm、スペース幅20μm、ピッチ100μmでパターニングされた基板を準備した。
次に、ポジ型感光性材料(OFPR-800、東京応化社製)を基板全面にスピンコート法により膜厚が1.5μmとなるように塗布し、絶縁膜を形成した。次に、ITO膜のパターンに合わせて、遮光部の開口部が横幅70μm、縦幅70μmの矩形になるように設計されたフォトマスクを用いて、露光を行い、アルカリ現像液(NMD-3、東京応化社製)により現像を行った。次に、250℃、30分間の加熱硬化処理を行い、絶縁層とした。
(濡れ性変化層の形成)
次に、下記組成の濡れ性変化層形成用塗工液を調製した。
<濡れ性変化層形成用塗工液の組成>
・オルガノアルコキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113) 0.4質量部
・フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8233) 0.3質量部
・イソプロピルアルコール 480質量部
この濡れ性変化層形成用塗工液を、スピンコート法により上記基板上に塗布し、150℃、10分間の加熱・乾燥処理を施し、加水分解・重縮合反応を進行させて硬化させ、膜厚10nmの濡れ性変化層を形成した。
(光触媒処理層基板の調製)
次に、ITO膜のパターンに合わせて、遮光部の開口部が横幅85μm、縦幅85μmの矩形となるように設計されたフォトマスクを準備した。このフォトマスク上に下記組成の光触媒処理層形成用塗工液をスピンコータにより塗布し、150℃、10分間の加熱・乾燥処理を施し、加水分解・重縮合反応を進行させて硬化させ、光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定された、膜厚2000Åの透明な光触媒処理層を形成した。
<光触媒処理層形成用塗工液の組成>
・二酸化チタン(石原産業(株)製、ST-K01) 2質量部
・オルガノアルコキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8113) 0.4質量部
・イソプロピルアルコール 3質量部
(濡れ性変化パターンの形成)
次に、光源として高圧水銀灯をもち、光触媒処理層基板および上記基板の位置調整機構をもつ紫外線露光装置により、光触媒処理層基板の遮光部の開口部と、上記基板のITO膜のパターンとが対向するように、光触媒処理層基板および上記基板の位置を調整し、光触媒処理層と濡れ性変化層との間の距離が20μmとなるように調整した後、光触媒処理層基板の裏面側から253nmの光の露光量が200mJ/cm2となるように露光した。
濡れ性変化層の露光部分および未露光部分の液体との接触角を接触角計(協和界面科学社製)により測定した。露光部分(親液性領域)ではトルエンに対して20°未満であり、未露光部分(撥液性領域)ではトルエンに対して35°以上であった。
(発光層の形成)
濡れ性変化層の露光部分である親液性領域上に、実施例2で用いた青色発光層形成用塗工液、緑色発光層形成用塗工液、赤色発光層形成用塗工液をそれぞれインクジェット法により塗布し、大気中で80℃、30分間乾燥させ、3色の発光層をパターン状に形成した。
(電子輸送層の形成)
上記発光層上に、真空蒸着法により、TAZを20nm形成し、続いてAlq3を20nm形成した。
(金属電極の形成)
その後、真空蒸着によりLiF膜(膜厚5nm)およびAl膜(膜厚1000Å)をマスク蒸着法により形成した。この際、ITO膜のパターンと直交するようにパターン状にLiF膜およびAl膜を形成した。以上により、EL素子を作製した。
(評価)
ITO電極およびAl電極は端子を備えており、これらを電圧源に接続した。5Vを上回る電圧を印加すると、赤色発光層では620nm、緑色発光層では520nm、青色発光層では490nmに、それぞれピークを有する発光が得られた。これは、TOPOで保護された各色のCdSe/ZnS量子ドットのフォトルミネッセンススペクトラムと同様の発光を示していた。また、得られたEL素子では、良好な安定性、効率および輝度が得られ、良好なパターニング適正を確認した。
[実施例4]
実施例3において、発光層の形成前に、濡れ性変化層の露光部分である親液性領域上に、正孔注入層を形成した以外は、実施例3と同様にしてEL素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
次に、ポリ(3,4−アルケンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との塩(PEDOT/PSS)の水分散体(Baytron P CH-8000、スタルク社製)をイソプロピルアルコールで希釈し、正孔注入層形成用塗工液を調製した。この正孔注入層形成用塗工液の粘度および表面張力を測定したところ、粘度が7mPa・s、表面張力が37dyn/cmであった。濡れ性変化層の露光部分である親液性領域上に、正孔注入層形成用塗工液をインクジェット法により乾燥後の膜厚が80nmとなるように塗布し、大気中で150℃、10分間乾燥させ、正孔注入層を形成した。
(評価)
ITO電極およびAl電極は端子を備えており、これらを電圧源に接続した。4Vを上回る電圧を印加すると、赤色発光層では620nm、緑色発光層では520nm、青色発光層では490nmに、それぞれピークを有する発光が得られた。これは、TOPOで保護された各色のCdSe/ZnS量子ドットのフォトルミネッセンススペクトラムと同様の発光を示していた。また、得られたEL素子では、良好な安定性、効率および輝度が得られ、良好なパターニング適正を確認した。
[実施例5]
実施例3において、発光層を次のようにして形成し、電子輸送層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にしてEL素子を作製した。
(発光層の形成)
1.赤色発光層形成用塗工液の調製
上記実施例2において赤色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Maple-Red Orange)を用いて調製されたシランカップリング剤で保護された量子ドットと、トリアゾール(電子輸送材料)と、TPD(正孔輸送材料)とをトルエンに分散させた赤色発光層形成用塗工液を調製した。この際、各材料の混合比を、シランカップリング剤で保護された量子ドット40質量部、トリアゾール30質量部、TPD 30質量部とした。
2.緑色発光層形成用塗工液の調製
上記実施例2において緑色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Adirondack Green)を用いて調製されたシランカップリング剤で保護された量子ドットを用いて、上記の赤色発光層形成用塗工液と同様にして、緑色発光層形成用塗工液を調製した。
3.青色発光層形成用塗工液の調製
上記実施例2において青色発光の量子ドットの分散液(エビデントテクノロジー社製 Lake Placid Blue)を用いて調製されたシランカップリング剤で保護された量子ドットを用いて、上記の赤色発光層形成用塗工液と同様にして、青色発光層形成用塗工液を調製した。
4.発光層の形成
濡れ性変化層の露光部分である親液性領域上に、上記の青色発光層形成用塗工液、緑色発光層形成用塗工液、赤色発光層形成用塗工液をそれぞれインクジェット法により塗布し、大気中で80℃、30分間乾燥させ、3色の発光層をパターン状に形成した。
(評価)
ITO電極およびAl電極は端子を備えており、これらを電圧源に接続した。6Vを上回る電圧を印加すると、赤色発光層では620nm、緑色発光層では520nm、青色発光層では490nmに、それぞれピークを有する発光が得られた。これは、TOPOで保護された各色のCdSe/ZnS量子ドットのフォトルミネッセンススペクトラムと同様の発光を示していた。また、得られたEL素子では、良好な安定性、効率および輝度が得られ、良好なパターニング適正を確認した。
本発明のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。 周囲に配位子が配置された量子ドットを示す模式図である。 本発明のEL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明のEL素子における正孔輸送層および発光層の相分離を説明するための模式図である。 本発明のEL素子の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明に用いられる光触媒処理層基板の一例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる光触媒処理層基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる光触媒処理層基板の他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 基板
2 … 第1電極層
3 … 絶縁層
4 … 濡れ性変化層
5 … 親液性領域
6 … 撥液性領域
7 … 発光層
8 … 第2電極層
9 … 正孔輸送層
31 … 光触媒処理層基板
32 … 基体
33 … 遮光部
34 … 光触媒処理層

Claims (15)

  1. 第1電極層が形成された基板上に、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
    前記濡れ性変化層にパターン状にエネルギー照射することにより、前記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
    前記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程と
    を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 第1電極層が形成された基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
    基体上に少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層が形成されている光触媒処理層基板を、前記濡れ性変化層に対して、エネルギー照射に伴う光触媒の作用が及び得る間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギー照射することにより、前記濡れ性変化層表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
    前記親液性領域上に、周囲に配位子が配置された量子ドットを含有する発光層形成用塗工液を塗布して、発光層を形成する発光層形成工程と
    を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記配位子が、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記シランカップリング剤が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 前記シランカップリング剤が、YSiX(4−n)(ここで、Yは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  6. 前記発光層形成工程にて、前記発光層形成用塗工液を塗布した後、硬化することを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  7. 前記発光層形成用塗工液が、さらに正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  8. 前記量子ドットが、半導体微粒子からなるコア部と、前記コア部を被覆し、前記半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料からなるシェル部とを有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  9. 前記発光層形成用塗工液の塗布方法が、吐出法であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  10. 前記濡れ性変化層が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  11. 基板と、前記基板上にパターン状に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するものであり、表面に、前記第1電極層のパターン上に配置され、ポリシロキサンを含有する親液性領域、および、前記第1電極層のパターンの開口部上に配置され、フッ素を含むオルガノポリシロキサンを含有する撥液性領域からなる濡れ性変化パターンを有する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層の親液性領域上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2電極層とを有し、
    前記発光層に、周囲にシランカップリング剤が配置された量子ドットを用いることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記発光層が、前記シランカップリング剤の加水分解縮合物を含有し、硬化されたものであることを特徴とする請求項11に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
  13. 前記シランカップリング剤の加水分解縮合物が、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項12に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記シランカップリング剤の加水分解縮合物が、YSiX(4−n)(ここで、Yは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性を示す官能基、直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した電子輸送性を示す官能基あるいは直接またはビニル基もしくはフェニル基を介して結合した正孔輸送性および電子輸送性の両方を示し得る官能基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるケイ素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項12に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
  15. 前記量子ドットが、半導体微粒子からなるコア部と、前記コア部を被覆し、前記半導体微粒子よりもバンドギャップが大きい材料からなるシェル部とを有することを特徴とする請求項11から請求項14までのいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子。
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