JP4724980B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents

エレクトロルミネッセント素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(以下、ELと略称する場合がある。)層を有するEL素子であって、この有機EL層が印刷法によりパターン状に形成されているEL素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
有機EL素子における発光層の形成方法としては、低分子材料を蒸着法で成膜させる方法と高分子材料を塗布する方法が主に開発されている。カラー化の手段としては低分子系材料を用いる場合、所定パターンのマスク越しに異なる発光色の発光材料を所望の画素対応部分に蒸着し形成する方法が行われている。一方高分子系材料を用いる場合は印刷による方法が提案されている。
【0004】
このような印刷法による発光層のパターニングは、効率的でありコストダウンに繋がるため、好ましいものであるが、高精細なパターンを形成する場合に、精度の面で問題が生じる場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、印刷法で有機EL層を形成するEL素子の製造方法であって、高精細なパターンであっても不具合無く効率的に製造することが可能なEL素子の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、
上記親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、上記付着された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0007】
本発明においては、このように有機EL層をパターン状に形成する場合に、濡れ性可変層が表面に形成され、所定の親水性パターンを有する印刷版を用いて形成することが可能であるので、高精細なパターンの有機EL層であっても精度良くかつ効率的に形成することが可能である。
【0008】
また、本発明は、請求項2に記載するように、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された転写体を用い、印刷版上に有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、上記印刷版上に付着した有機EL層形成用塗工液を、上記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、上記転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、転写体を用いた印刷法の場合に、濡れ性可変層が表面に形成され、所定の親水性パターンを有する転写体を用いるものであるので、印刷版から転写体への有機EL層形成用塗工液の転写、および転写体から基材上への有機EL層形成用塗工液の印刷を精度良く行うことが可能となる。
【0010】
さらに、本発明は請求項3に記載するように、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、上記親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、上記親水性領域上に付着した有機EL層形成用塗工液を転写体に転写する工程と、上記転写体上に転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、転写体を用いた印刷法の場合に、濡れ性可変層が表面に形成され、所定の親水性パターンを有する印刷版を用いるものであるので、印刷版から転写体への有機EL層形成用塗工液の転写を精度良く行なうことが可能となり、結果的に転写体から基材上への有機EL層形成用塗工液の印刷を高精度で行うことが可能となる。
【0012】
さらにまた、本発明は請求項4に記載するように、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版および転写体を用い、上記印刷版の親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、上記印刷版の親水性領域に付着した有機EL層形成用塗工液を、上記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、上記転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、転写体を用いた印刷法の場合に、印刷版および転写体のいずれにも、所定の親水性パターンを有する濡れ性可変層が表面に形成されているので、印刷版上への有機EL層形成用塗工液の付着、転写体上への転写、さらには基材上への印刷の全てについて精度良く行うことが可能となることから、高品質のEL素子を製造することが可能となる。
【0014】
上記請求項2から請求項4までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項5に記載するように、上記転写体が平版であることが好ましい。転写体を用いて印刷する場合は、転写体が平版であることが有機EL層形成用塗工液の印刷版から転写体への転写、および転写体から基材上への印刷に際して好適であるからである。
【0015】
また、上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記印刷版が凹版であることが好ましい。印刷版が凹版であれば、最終的に得られる有機EL層の膜厚の制御等が容易であるからである。
【0016】
上記請求項4に記載された発明によれば、請求項7に記載するように、上記転写体上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記印刷版上の親水性領域のものより小さいことが好ましい。印刷版から転写体に有機EL層形成用塗工液を転写する際に、転写される転写体上の親水性領域が印刷版と比較して大きい場合は、転写後に必要とされる領域まで塗工液が濡れ広がらない可能性があり、結果的に短絡等の不具合を生じる可能性があるからである。
【0017】
上記請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、上記濡れ性可変層表面には、有機EL層が形成される部位に親水性領域が形成され、上記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記印刷版および上記転写体の少なくとも一方の上記親水性領域のものより小さいことが好ましい。
【0018】
上記基材上の親水性領域が、上記印刷版および上記転写体の少なくとも一方の上記親水性領域のものより小さければ、基材上に有機EL層形成用塗工液を印刷する際に、親水性領域内に有機EL層の欠損が生じることが無く、短絡等の不具合が生じることがないからである。
【0019】
上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記有機EL層が発光層であることが好ましい。EL素子において、発光層は必須の層であり、例えばフルカラーのEL素子を形成する場合には、発光層を高精細なパターンで形成する必要があるからである。
【0020】
上記請求項9に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記発光層を複数種類形成する場合、先に塗布された全ての発光層形成用塗工液が固化する前に、発光層形成用塗工液を塗布することが好ましい。複数種類の発光層を形成する場合に、先に形成された発光層が完全に固化した後に次ぎの発光層を印刷すると、印刷に際して印刷版もしくは転写体が接触した際に先に形成された発光層が傷つく可能性があるからである。
【0021】
上記請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項11に記載するように、上記濡れ性可変層は、少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層であることが好ましい。光等のエネルギーをパターン状に照射することにより、高精細な親水性領域パターンを形成することが可能であるからである。
【0022】
上記請求項11に記載された発明においては、請求項12に記載されるように、上記光触媒含有層は、エネルギーが照射されていない部分における水との接触角が、エネルギーが照射された部分における水との接触角より1度以上大きい接触角となる光触媒含有層であることが好ましい。1度以上の接触角の差があれば、その上に有機EL層形成用塗工液のパターンを形成することが可能となるからである。
【0023】
上記請求項11または請求項12に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記光触媒は、酸化チタンであることが好ましい。二酸化チタンは、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0024】
上記請求項11から請求項13までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項14に記載するように、上記バインダが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、エネルギーが照射された場合であっても、光触媒を光触媒含有層内の強力に保持することが可能となるからである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。本発明のEL素子の製造方法は、転写体を用いるか否か、および印刷版および転写体のいずれの表面に濡れ性可変層が形成されるかにより、4つの実施態様を挙げることができる。以下、それぞれの実施態様について説明する。
【0026】
1.第1実施態様
本発明のEL素子の製造方法における第1実施態様は、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、
上記親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、上記付着された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0027】
本実施態様について図1を用いて具体的に説明する。図1は本実施態様の一例を示すものであり、まず図1(a)に示すように、第1発光層形成用塗工液1aが付着した印刷版2を準備する。この印刷版2上には外部刺激により濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成されている。この濡れ性可変層は、第1発光層形成用塗工液1aを付着させる領域のみ、親水性領域とされ、他の領域は撥水性領域とされている。また、別にシート状の基材3がその表面に巻回された円筒状の支持材4を準備する。
【0028】
そして、上記基材3をその表面に有する支持材4を印刷版2に対して接するようにして回転させることにより、基材3上の所定の位置に第1発光層形成用塗工液1aが印刷されて第1発光層5aが得られる。なお、通常この基材3上には電極層が形成されており、必要に応じてバッファー層等が形成されていてもよい。
【0029】
次に、同様の印刷版2に第2発光層形成用塗工液1bを付着させ、上記第1発光層形成用塗工液の場合と同様にして基材3上に第2発光層5bを形成する(図1(b))。そして、さらに同様の印刷版2に第3発光層形成用塗工液1cを付着させ、上記第1発光層形成用塗工液の場合と同様にして基材3上に第3発光層5cを付着させる(図1(c))。
【0030】
そして、支持材4から基材3を取り外すことにより、基材3上に第1発光層5a、第2発光層5b、および第3発光層5cが印刷された基材3を得ることができる(図1(d))。
【0031】
このようにして発光層5が形成された基材上に電極層や保護層等を形成することによりEL素子とすることができるのである。
【0032】
以下、上述した例に示す本発明の第1実施態様について詳細に説明する。
【0033】
(印刷版)
本発明の第1実施態様は、上述したように表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、かつ上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成されている印刷版を用いるところに特徴を有するものである。
【0034】
本実施態様に用いる印刷版としては、凹版、凸版、および平版のいずれの版であっても用いることができるが、実際に印刷される有機EL層形成用塗工液の量を制御することが可能であり、発光層の膜厚の制御が比較的容易である凹版を用いることが好ましい。
【0035】
このような印刷版には、その表面に刺激により表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成されている。そして、有機EL層形成用塗工液が付着する部分の濡れ性可変層を親水性とし、他の領域は撥水性となるように、パターン状に外部刺激が加えられることにより、所定のパターン、すなわち有機EL層形成用塗工液を付着させる必要がある領域パターンの親水性領域が形成されている。
【0036】
例えば、図1に示すように印刷版が凹版の場合は、その凹部の部分に相当する領域が親水性とされ、他の領域が撥水性とされる。
【0037】
このように、有機EL層形成用塗工液が付着する部分のみ親水性とすることにより、実際に有機EL層形成用塗工液を付着させる際に、他の領域に有機EL層形成用塗工液が付着することを防止することが可能であり、これにより地汚れ等の不具合を防止することが可能となる。
【0038】
なお、上記図1の例に示すように、印刷版が凹版の場合の有機EL層形成用塗工液が付着する領域の親水性の程度としては、有機EL層形成用塗工液を印刷版に付着させる際には、周囲の撥水性領域より親水性であり、他の領域に有機EL層形成用塗工液が濡れ広がらない程度の親水性であることが必要であると同時に、基材上に印刷する際には、有機EL素子形成用塗工液が基材上に印刷させることができる程度の親水性である必要がある。
【0039】
また、上記図1に示す例においては、印刷版として板状の印刷版を示したが、本実施態様はこれに限定されるものではなく、円筒状の印刷版を用いても良い。
【0040】
(濡れ性可変層)
本実施態様においては、上述したように印刷版上に濡れ性可変層が形成される。この濡れ性可変層としては、その表面の濡れ性を、外部刺激、例えば物理的刺激、化学的刺激等により変化させることができる層であれば特に限定されるものではない。例えば、酸またはアルカリ等により表面の粗さの状態が変化し、濡れ性が変化する層等であってもよいし、また紫外線や可視光、さらには熱等のエネルギーの照射により濡れ性可変層内の物質が変化して濡れ性が変化する層等であってもよい。
【0041】
また濡れ性の変化に関しては、刺激が加えられる前が水との接触角が大きく(濡れ性が悪く)、刺激が加えられた後に水との接触角が小さくなる(濡れ性が向上する)ように変化するような濡れ性可変層であってもよいし、また逆に刺激が加えられる前が水との接触角が小さく(濡れ性が良好であり)、刺激が加えられた後に水との接触角が大きく変化する(濡れ性が悪化する)ような濡れ性可変層であってもよい。
【0042】
(光触媒含有層)
本実施態様においては、この濡れ性可変層が、エネルギーの照射により水との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層であることが好ましい。このように、露光(本実施態様においては、光が照射されたことのみならず、エネルギーが照射されたことをも意味するものとする。)により水との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層を設けることにより、エネルギーのパターン照射等を行うことにより容易に濡れ性を変化させ、水との接触角の小さい親水性領域とすることができ、有機EL層形成用塗工液を付着させる領域のみ容易に親水性領域とすることが可能である。
【0043】
本実施態様でいうエネルギーとは、光触媒含有層を親水性領域にし得るエネルギーであれば特に限定されるものではないが、一般的には紫外光を含む光が好適に用いられる。
【0044】
また、親水性領域とは、水との接触角が小さい領域であり、有機EL層形成用塗工液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥水性領域とは、水との接触角が大きい領域領域であり、有機EL層形成用塗工液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。なお、本実施態様においては、その領域が、隣接する領域よりも水との接触角が1度以上小さければ親水性領域ということとし、逆にその領域が隣接する領域よりも水との接触角が一度以上大きければ撥水性領域とすることとする。
【0045】
本実施態様における光触媒含有層は、エネルギーが照射されていない部分における水との接触角が、エネルギーが照射された部分における水との接触角より1度以上大きい接触角となる光触媒含有層であることが好ましく、特に好ましくは5度以上、最も好ましくは10度以上となる光触媒含有層が用いられる。
【0046】
エネルギーが照射されていない部分における水との接触角と、エネルギーが照射された部分における水との接触角との差が所定の範囲未満である場合は、濡れ性の差を利用して有機EL層形成用塗工液をパターン状に付着させることが難しく、本実施態様特有の作用効果を得ることが難しくなるからである。
【0047】
このような光触媒含有層における具体的な水との接触角としては、露光していない部分における水との接触角が30度以上、特に60度以上、中でも90度以上であることが好ましく、このような水との接触角を有する光触媒含有層が好適に用いられる。これは、露光していない部分は、本実施態様においては撥水性が要求される部分である。したがって、水との接触角が小さい場合は撥水性が十分でなく、有機EL層形成用塗工液等が、不必要な部分にまで残存する可能性が生じる可能性があるからである。
【0048】
また、光触媒含有層を露光した場合の水との接触角としては、具体的には、30度未満、特に20度以下、中でも10度以下となるような光触媒含有層であることが好ましい。露光した部分の水との接触角が高いと、この部分での有機EL層形成用塗工液等の広がりが劣る可能性があり、印刷精度を低下させる可能性があるからである。
【0049】
なお、ここでいう水との接触角は、水との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)し、その結果から得たものである。
【0050】
上記光触媒含有層は、少なくとも光触媒とバインダとから構成されていることが好ましい。このような層とすることにより、エネルギー照射によって光触媒の作用で臨界表面張力を高くすることが可能となり、水との接触角を低くすることができるからである。
【0051】
本実施態様において濡れ性可変層として光触媒含有層を用いた場合、光触媒により、バインダの一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親水性とし、未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、有機EL層形成用塗工液などとの受容性(親水性)および反撥性(撥水性)を高めることによって、精度良く有機EL層形成用塗工液を印刷版上に付着させることが可能となる。
【0052】
本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
本実施態様においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0054】
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0055】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径は50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の撥水性が低下し、また露光部の親水性の発現が不十分となるため好ましくない。
【0056】
本実施態様において、光触媒含有層に使用するバインダは、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0057】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0058】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、フルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。このようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥水性が大きく向上し、固定化層形成用塗工液の付着を妨げる機能を発現する。
【0059】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0060】
【化1】
Figure 0004724980
【0061】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0062】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0063】
本実施態様において光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0064】
また、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0065】
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0066】
上記光触媒含有層は、光触媒とバインダを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0067】
(基材)
本実施態様のEL素子の製造方法に用いられる基材としては、透明性が高いものであれば特に限定されるものではなく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料を用いることができる。
【0068】
なお、上記図1に示す例では、基材3を支持材4表面に巻回して印刷に供したことから、基材が可撓性を有するフィルムである必要があったが、本実施態様がこれに限定されるものでないことはいうまでもなく、上述したガラス等の可撓性を有さない材料であっても基材として用いることができる。
【0069】
しかしながら、用途が広範にわたる等の理由により、本実施態様においては、基材が可撓性を有する透明樹脂であることが好ましい。このような透明樹脂としては、フィルム状に成形が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエステルナフタレン(PEN)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。高分子基材はガスバリア性を有している方が好ましく、基材自体がガスバリア性を有してもよく、また基材上にガスバリア層を設けてもよい。通常、基材上には透明電極、絶縁層等がパターン状に設けらているが、ここでは、ガラスあるいは高分子樹脂上にガスバリア層、電極層、絶縁層を含めて基材と称することとする。
【0070】
さらに、本実施態様においては、上記基材上にも濡れ性可変層が形成されていてもよく、この場合の濡れ性可変層としては、上述した光触媒含有層が好ましい。なお、基材上に光触媒含有層を形成する場合は、例えばバッファー層等の有機EL層としての機能を持たせてもよい。
【0071】
このように、基材上に濡れ性可変層を形成した場合は、その表面の有機EL層が形成される部分が親水性領域とされ、他の領域は撥水性とされる。濡れ性可変層が上述した光触媒含有層である場合は、パターン状にエネルギーを照射することにより、容易に有機EL層を形成する部分のみ親水性領域とすることができる。
【0072】
そして、基材上に親水性領域が形成される場合は、この親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記印刷版の相当する親水性領域のものよりも小さく形成されていることが好ましい。なお、「相当する」とは、印刷版の親水性領域上の有機EL層形成用塗工液が塗布される基材上の親水性領域を意味するものである。
【0073】
すなわち、印刷版上の親水性領域に付着した有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷する際に、印刷された有機EL層形成用塗工液が基材の親水性領域に印刷されない部分が形成されないように印刷されていることが好ましいのである。基材上の親水性領域、すなわち有機EL層が形成されるべき領域に有機EL層形成用塗工液が印刷されない場合は、その部分において短絡等の不具合が生じる可能性があるからである。
【0074】
ここで、幅および長さの少なくとも一方が小さいとは、幅が同じで長さが小さい場合、長さが同じで幅が小さい場合、および幅および長さが小さい場合のいずれかを意味するものである。
【0075】
このように、基材上の親水性領域の幅および長さのいずれか一方が、上記印刷版の該当する親水性領域のものより小さい場合は、基材の親水性領域上に印刷版から有機EL層形成用塗工液が印刷された際に、撥水性領域にまで印刷されてしまうことになるが、基材上の撥水性領域に印刷された有機EL層形成用塗工液は、容易に親水性領域内に取り込まれることが可能であるので、地汚れ等の不具合を生じることはない。
【0076】
印刷版および基材上の親水性領域をこのように構成することにより、印刷の際の位置合わせが比較的低い精度でも可能となることから、印刷を比較的容易に効率的に行うことができる。
【0077】
(有機EL層形成用塗工液)
本実施態様における有機EL層とは、発光層、バッファー層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等を挙げることができ、これらの各層を形成する際の塗工液が本実施態様でいう有機EL層形成用塗工液となる。しかしながら、EL素子において有機EL層をパターン状に形成する必要があるものとしては、一般的にはバッファー層および発光層を挙げることができるため、本実施態様でいう有機EL層形成用塗工液としては、発光層形成用塗工液およびバッファー層形成用塗工液が主たるものであるといえる。
【0078】
(発光層形成用塗工液)
EL素子において、発光層は必須の層であり、かつフルカラーおよびマルチカラーのディスプレイを製造する際には、必ずパターニングを必要とする層である。したがって、本実施態様においては、有機EL層形成用塗工液が発光層形成用塗工液である場合が、発明の有効性の面で最も好ましい態様であるといえる。
【0079】
また、EL素子をカラー化する等の場合には、複数種類の発光層を形成する必要がある。このような場合は、複数種類の発光層形成用塗工液が用いられる。そして、このように複数種類の発光層形成用塗工液を用いる場合は、先に基材上に印刷された全ての発光層形成用塗工液が固化する前に、次に印刷する発光層形成用塗工液が印刷されることが好ましい。完全に固化した後に次の発光層形成用塗工液を印刷すると、印刷版が接触することにより先に形成された発光層を損傷させる可能性があり、短絡等の不具合を生じる可能性があるからである。
【0080】
なお、本発明でいう固化する前とは、塗工液中の溶媒が見かけ上蒸発し、発光層が固体膜として成膜された状態を表し、固体膜が残留溶媒を吸着している状態も含まれることを意味するものである。
【0081】
本実施態様に用いられる発光層形成用塗工液は、通常、発光材料、溶媒、およびドーピング剤等の添加剤により構成されるものである。なお、フルカラー化等を行なう場合は、複数色の発光層が形成されるものであるので、複数種類の発光層形成用塗工液が通常用いられる。以下、これら発光層形成用塗工液を構成する各材料について説明する。
【0082】
A.発光材料
本実施態様に用いられる発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0083】
▲1▼色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0084】
▲2▼金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0085】
▲3▼高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0086】
本実施態様においては、発光層形成用塗工液を用いた印刷方式により発光層を精度よく形成することができるという利点を活かすという観点から、発光材料として上記高分子系材料を用いたものがより好ましい。
【0087】
B.溶媒
上述した発光材料を溶解もしくは分散させ、発光層形成用塗工液とする溶媒としては、上述した発光材料を溶解もしくは分散し、かつ所定の粘度とすることができる溶媒であれば特に限定されるものではない。
【0088】
具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0089】
C.添加剤
本実施態様に用いられる発光層形成用塗工液には、上述したような発光材料および溶媒に加えて種々の添加剤を添加することが可能である。例えば、発光層中の発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料が添加される場合がある。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0090】
また印刷適正を向上させる目的で、界面活性剤等を添加する場合もある。
【0091】
(バッファー層形成用塗工液)
本実施態様でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられ、有機物、特に有機導電対などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子とすることができる。
【0092】
このようなバッファー層は、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐためにパターニングされていることが望ましいことから、本実施態様の製造方法を用いて印刷法によりパターニングされることが好ましい。
【0093】
本実施態様に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等を挙げることができ、これらを、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解もしくは分散させたものが本実施態様でいうバッファー層形成用塗工液である。
【0094】
(EL素子)
本実施態様のEL素子の製造方法は、このような有機EL層形成用塗工液を用いて基材上にパターン状に有機EL層を形成し、EL素子を製造するものである。そして、このようにして形成されるEL素子には、上述した基材、有機EL層以外に、代表的には電極層や絶縁層等が形成される。
【0095】
A.電極層
本実施態様で得られるEL素子は、基材上に形成される第1電極層、および上述した発光層等の有機EL層上に形成される第2電極層を有するものである。このような電極層は、陽極および陰極からなり、陽極および陰極のどちらか一方が、透明または、半透明であり、陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
【0096】
好ましい陽極材料としては、例えば、ITO、酸化インジウム、金が挙げられる。好ましい陰極材料としては、例えばマグネシウム合金(MgAg他)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg他)、金属カルシウムおよび仕事関数の小さい金属が挙げられる。
【0097】
B.絶縁層
本実施態様により得られるEL素子には、基材上に形成されている第一電極層のパターニングしたエッジ部分および素子の非発光部分を覆い、発光に不要な部分での短絡を防ぐために、絶縁層を発光部分が開口となるように予め設けておいてもよい。このようにすることにより、素子の短絡等による欠陥を低減し、長寿命で安定発光する素子が得られる。
【0098】
このような絶縁層は、通常知られている通り、例えば、UV硬化性の樹脂材料等を用いてパターン形成することができる。
【0099】
2.第2実施態様
本発明のEL素子の製造方法における第2実施態様は、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された転写体を用い、
印刷版上に有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、
上記印刷版上に付着した有機EL層形成用塗工液を、上記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、
上記転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0100】
本実施態様の特徴は、印刷に際して転写体を用いる点と、この転写体表面に濡れ性可変層が形成されている点にある。以下本実施態様について図2および図3を用いて具体的に説明する。
【0101】
図2は、本実施態様の一例を示すものである。本実施態様においては、まず図2(a)に示すように、第1発光層形成用塗工液1aが付着した印刷版2を準備する。また、別に表面に外部刺激により濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成されている転写体6を準備する。この濡れ性可変層は、第1発光層形成用塗工液1aが転写させる領域のみ、親水性領域とされ、他の領域は撥水性領域とされている。
【0102】
そして、上記転写体6を印刷版2に対して接するようにして回転させることにより、転写体6の上述した親水性領域に第1発光層形成用塗工液1aが転写される。
【0103】
次いで、転写体6上の第1発光層形成用塗工液1aが転写された転写体6を基材3上に接するように回転させることにより、基材3上に上記第1発光層形成用塗工液1aを印刷して第1発光層5aを形成する(図2(b))。なお、通常この基材3上には電極層が形成されており、必要に応じてバッファー層等が形成されていてもよい。
【0104】
さらに、転写体6に同様にして第2発光層形成用塗工液1bを転写させ、これを同様にして基材3上に印刷して第2発光層5bを形成する(図2(c))。そして最後に、同様にして転写体6上に第3発光層形成用塗工液1cを転写させ、これを同様にして基材3上に印刷して第3発光層5cを形成することにより、第1発光層5a、第2発光層5b、および第3発光層5cが形成された基材3を得ることができる(図2(d))。
【0105】
このようにして発光層5が形成された基材上に電極層や保護層等を形成することによりEL素子とすることができるのである。
【0106】
また、図3は転写体6を用いた本実施態様のEL素子製造方法における他の例を示すものである。
【0107】
この例においても、図2に示す例と同様に第1発光層形成用塗工液1aが付着した印刷版2と、表面に外部刺激により濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成されている転写体6とを準備する。この濡れ性可変層も上記図2に示す例と同様に、第1発光層形成用塗工液1aが転写させる領域のみ、親水性領域とされ、他の領域は撥水性領域とされている。そして、図2に示す例と同様に、上記転写体6を印刷版2に対して接するようにして回転させることにより、転写体6の上述した親水性領域に第1発光層形成用塗工液1aが転写される。
【0108】
図3に示す例が上記図2に示す例と異なる点は、上記転写体6上に転写された発光層形成用塗工液1aを基材3上に印刷する前に、第2発光層形成用塗工液1bを転写体6上に転写する点にある(図3(b))。すなわち、図3に示せす例においては、第1発光層形成用塗工液1a、第2発光層形成用塗工液1b、および第3発光層形成用塗工液1cを全て転写体6上に転写した後(図3(c))、これを基材3上に印刷して第1発光層5a、第2発光層5b、および第3発光層5cを形成する点にある(図3(d))。
【0109】
上記図2および図3に示すように、転写体を用いる本実施態様においては、有機EL層が発光層であり、かつ複数の発光層を形成する場合は、印刷版に付着している発光層形成用塗工液を、一色づつ転写体に転写して基材上に印刷する方法を採ってもよく、また全ての色の発光層形成用塗工液を転写体上に転写した後、一度に基材上に印刷する方法を採ってもよい。
【0110】
また、本実施態様においては、転写体上に濡れ性変化層が形成されている点に特徴を有するものである。ここで、用いられる転写体の種類に関しては特に限定されるものでなく、平版状のもの、凸版上のもの、および凹版状のもののいずれであっても用いることができるが、印刷版からの転写性、および転写された有機EL層形成用塗工液の基材への印刷性を考慮すると、平版であることが好ましい。
【0111】
本実施態様で用いられる転写体は、通常の印刷法において用いられている転写体を用いることが可能であり、上記図2および図3に示す例では筒状のものを例示したが、これに限定されるものではなく板状のものであってもよい。
【0112】
本実施態様においては、転写体上に濡れ性可変層が形成され、この濡れ性可変層上の有機EL層形成用塗工液が転写される部位が親水性領域となるようにパターン状に刺激が加えられている。ここで、この転写体上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、印刷版上の有機EL層形成用塗工液の付着領域のものより小さいことが好ましい。これは、上述した第1実施態様において説明した理由と同様の理由であり、親水性領域内に有機EL層が形成されない領域があると、これを基材上に印刷した場合に、欠損となる可能性が生じ、結果として短絡等の不具合を生じる可能性が生じるからである。なお、ここでいう「親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が小さい」が示す意味合いについては第1実施態様のものと同様である。
【0113】
また、本実施態様においても、基材上に濡れ性可変層が形成されていてもよい。この場合の基材に形成された濡れ性可変層上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記転写体の親水性領域のものより小さいことが好ましい。これは上記第1実施態様で説明した理由と同様の理由によるものである。また、「親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が小さい」が示す意味合いについても上記第1実施態様と同様である。
【0114】
本実施態様のその他の事項、すなわち、上記第1実施態様において説明した各項目の事項、すなわち、印刷版、濡れ性可変層、光触媒含有層、基材、有機EL層形成用塗工液、発光層形成用塗工液、バッファー層形成用塗工液、EL素子の各項目の事項については、本実施態様においても同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
3.第3実施態様
本発明のEL素子の製造方法における第3実施態様は、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、
上記親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、
上記親水性領域上に付着した有機EL層形成用塗工液を転写体に転写する工程と、
上記転写体上に転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0116】
本実施態様が、上記第2実施態様と異なるのは、濡れ性可変層が転写体ではなく印刷版表面に形成されている点にある。
【0117】
本実施態様における印刷方法は、上記第2実施態様において説明した図2に示す例および図3に示す例により行なうことができる。
【0118】
本実施態様においても、上記第2実施態様と同様に、基材上に濡れ性可変層が形成されていてもよい。この場合の基材に形成された濡れ性可変層上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記印刷版の親水性領域のものより小さいことが好ましい。これは上記第1実施態様で説明した理由と同様の理由によるものである。また、「親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が小さい」が示す意味合いについても上記第1実施態様と同様である。
【0119】
本実施態様のその他の事項、すなわち、上記第1実施態様において説明した各項目の事項、すなわち、印刷版、濡れ性可変層、光触媒含有層、基材、有機EL層形成用塗工液、発光層形成用塗工液、バッファー層形成用塗工液、EL素子の各項目の事項、さらには第2実施態様において説明した転写体についての説明については、本実施態様においても同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
4.第4実施態様
本発明のEL素子の製造方法における第4実施態様は、表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、上記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版および転写体を用い、
上記印刷版の親水性領域に、有機EL層を形成するための有機EL層形成用塗工液を付着させる工程と、
上記印刷版の親水性領域に付着した有機EL層形成用塗工液を、上記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、
上記転写された有機EL層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0121】
本実施態様が、上記第2実施態様および第3実施態様と異なる点は、本実施態様が印刷版および転写体のいずれにも濡れ性可変層が形成されている点にある。このような濡れ性可変層上の親液性領域の形成位置等に関しては、上記第2実施態様および第3実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0122】
また、本実施態様においては、転写体上の親液性領域の幅および長さの少なくとも一方が、上記印刷版上の親水性領域のものより小さいことが好ましい。これは、上述したように有機EL層形成領域に有機EL層形成用塗工液が付着しない部位が生じると短絡等の不具合が生じるからである。なお、「親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が小さい」が示す意味合いについては第1実施態様のものと同様である。
【0123】
本実施態様においても、上述した実施態様と同様に、基材上に濡れ性可変層が形成されていてもよい。この際、基材上の濡れ性可変層における親液性領域の大きさと転写体における濡れ性可変層の大きさに関しては、上記第2実施態様において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
本実施態様においては、このように印刷版、転写体、および基材の全てに濡れ性可変層を形成することが可能であり、そして各濡れ性可変層上の親水性領域の大きさを、印刷版、転写体、および基材の順で徐々に小さくすることが可能である。したがって、上述した理由から、位置合わせ等の精度が若干悪い場合でも、短絡等の不具合が生じることなく、EL素子を製造することが可能となるという利点を有する。
【0125】
本実施態様のその他の事項、すなわち、上記第1実施態様において説明した各項目の事項、すなわち、印刷版、濡れ性可変層、光触媒含有層、基材、有機EL層形成用塗工液、発光層形成用塗工液、バッファー層形成用塗工液、EL素子の各項目の事項、さらには第2実施態様において説明した転写体についての説明については、本実施態様においても同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0126】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0127】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0128】
[実施例1]
(基材の作製)
200μmの厚さのPET上にITOをスパッタにより成膜し、80μmの線幅のITOを20μmの間隔でパターニングした後、ITOパターンのエッジを被うようにITOの間を厚さ1μmの絶縁層をフォトリソグラフィー法により形成した。絶縁層にはレジストとしてZPP−1850(日本ゼオン(株))を用いた。
【0129】
次いで、上記基材上にバッファー層用塗布液として、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート(PEDT/PSS)(BaytronP:Bayer社製、下記化学式(1)にその構造を示す。)を、スピン塗布により、乾燥時700オングストロームになるように塗布し、100℃で真空乾燥を1時間行った。
【0130】
【化2】
Figure 0004724980
【0131】
(光触媒含有層について)
1.光触媒含有層用塗布液の調整
まず、下記組成の光触媒含有層用の塗布液を調整した。
Figure 0004724980
2.光触媒含有層の成膜
上記の光触媒含有層塗液を洗浄したガラス基板上にスピンコーターで塗布し、150℃、10分間の乾燥処理後、加水分解、重縮合反応を進行させて、光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定された透明な光触媒含有層を厚み20nmに形成した。
【0132】
3.光触媒含有層における濡れ性の相違によるパターンの形成
上記の光触媒含有層にマスクを介して水銀灯(波長365nm)により70mW/cmの照度で50秒間パターン照射を行い、照射部位と非照射部位との水に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定した結果(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)、非照射部位における水の接触角は142°であるのに対し、照射部位における水の接触角は10°以下であり、照射部位と非照射部位との濡れ性の相違によるパターン形成が可能なことが確認された。
【0133】
(印刷版の調製)
凹版上に上記光触媒含有層を形成し、上記と同様にして凹版の凹部のみが露光するように、水銀灯により露光を行った。
【0134】
次いで下記組成の発光層形成用塗工液を凹部に充填した。この際、凹部のみが親水性であることから、凹部のみに塗工液を充填することができた。
【0135】
(発光層形成用塗工液)
下記の組成の塗工液を調整した。
・ポリビニルカルバゾール 7重量部
・発光色素(R、G、B) 0.1重量部
・オキサジアゾール化合物 3重量部
・トルエン 5050重量部
ここで、ポリビニルカルバゾールの構造式を以下の化学式(2)に示す。また、オキサジアゾール化合物の構造式を化学式(3)に、発光色素(G) クマリン6の構造式を化学式(4)に、発光色素(R) ナイルレッドの構造式を化学式(5)に、発光色素(B) ペリレン化合物の構造式を以下の化学式(6)にそれぞれ示す。
【0136】
【化3】
Figure 0004724980
【0137】
(発光層の形成)
上記印刷版を用い、基板上にパターン状に上記発光層形成用塗工液(R)、(G)、および(B)を順次印刷し、真空オーブンで80℃、80分乾燥することにより、乾燥時の膜厚で700オングストロームの3色の発光層を得た。
【0138】
(カソードの成膜)
発光層が形成された基板上に、ITOおよび発光層のパターンと直交するように、上部電極としてAlLi合金を500nmの膜厚で80μm線幅、20μm間隔に蒸着してEL素子とした。
【0139】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれは無かった。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時にラインパターンで均一に発光が認められた。
【0140】
[実施例2]
上記実施例1と同様にして、表面に光触媒含有層が形成された転写体を準備し、発光層形成用塗工液が転写される部分のみパターン露光を行った。
【0141】
次いで、光触媒含有層が形成されていない凹版、上記転写体、および実施例1で用いたものと同様の基材を用い、実施例1と同様の発光層形成用塗工液を用いて、基材上への印刷を行った。
【0142】
印刷版から転写体への転写は、転写体上に親水性のパターンが形成されているので、精度よく転写することができた。そして精度良く転写された発光層形成用塗工液(R)、(G),および(B)をこの順で基材上に印刷し、実施例1と同様にして発光層を形成した。そしてカソードも実施例1と同様にして形成して、EL素子とした。
【0143】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれは無かった。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時にラインパターンで均一に発光が認められた。
【0144】
[実施例3]
光触媒含有層が形成されていない転写体を用いた点以外は、実施例1と同様にして基材上に発光層を印刷により形成し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0145】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれは無かった。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時にラインパターンで均一に発光が認められた。
【0146】
[実施例4]
実施例2で用いた転写体を用いた以外は、実施例3と同様にして基材上に発光層を印刷し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0147】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれは無かった。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時にラインパターンで均一に発光が認められた。
【0148】
[実施例5]
基材上に、実施例1において用いたものと同様の光触媒含有層を形成し、発光層形成用塗工液が印刷される部分のみ親水性となるように、実施例1と同様にして露光を行った後、実施例1と同様にして発光層形成用塗工液を基材上に印刷し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0149】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれは無かった。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した。10V印加時にラインパターンで均一に発光が認められた。
【0150】
[比較例1]
凹版上に光触媒含有層を形成しなかった点を除いて、実施例1と同様にして発光層形成用塗工液を基材上に印刷し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0151】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれが生じた。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加したが発光は認められず、混色および短絡も発生した。
【0152】
[比較例2]
転写体に光触媒含有層が形成されなかった点を除いて、実施例2と同様にして発光層形成用塗工液を基材上に印刷し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0153】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれが生じた。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した際に、発光は認められたが、混色が生じていた。
【0154】
[比較例3]
凹版を平版にした以外は、比較例2と同様にして、発光層形成用塗工液を基材上に印刷し、カソードを成膜してEL素子とした。
【0155】
(評価)
印刷結果を確認したところ、アライメントずれが生じた。また、得られたEL素子に対して、ITO電極側を正極、AlLi合金電極側を負極に接続し、ソースメーターにより、直流電流を印加した際に、発光は認められたが、混色が生じていた。
【0156】
【発明の効果】
本発明によれば、有機EL層をパターン状に形成する場合に、濡れ性可変層が表面に形成され、所定の親水性パターンを有する印刷版等を用いて形成することが可能であるので、高精細なパターンの有機EL層であっても精度良くかつ効率的に形成することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施態様の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の第2実施形態の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態の他の例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 … 発光層形成用塗工液
2 … 印刷版
3 … 基材
5 … 発光層
6 … 転写体

Claims (14)

  1. 表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、前記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、
    前記親水性領域に、有機エレクトロルミネッセント層を形成するための有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を付着させる工程と、
    前記付着された有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機エレクトロルミネッセント層をパターン状に形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
    前記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、前記濡れ性可変層表面には、有機エレクトロルミネッセント層が形成される部位に親水性領域が形成され、前記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記印刷版の親水性領域のものより小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  2. 表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、前記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された転写体を用い、
    印刷版上に有機エレクトロルミネセント層を形成するための有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を付着させる工程と、
    前記印刷版上に付着した有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を、前記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、
    前記転写された有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機エレクトロルミネッセント層をパターン状に形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
    前記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、前記濡れ性可変層表面には、有機エレクトロルミネッセント層が形成される部位に親水性領域が形成され、前記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記転写体の親水性領域のものより小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  3. 表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、前記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版を用い、
    前記親水性領域に、有機エレクトロルミネッセント層を形成するための有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を付着させる工程と、
    前記親水性領域上に付着した有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を転写体に転写する工程と、
    前記転写体上に転写された有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機エレクトロルミネッセント層をパターン状に形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
    前記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、前記濡れ性可変層表面には、有機エレクトロルミネッセント層が形成される部位に親水性領域が形成され、前記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記印刷版の親水性領域のものより小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  4. 表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、前記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版および転写体を用い、
    前記印刷版の親水性領域に、有機エレクトロルミネッセント層を形成するための有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を付着させる工程と、
    前記印刷版の親水性領域に付着した有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を、前記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、
    前記転写された有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機エレクトロルミネッセント層をパターン状に形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
    前記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、前記濡れ性可変層表面には、有機エレクトロルミネッセント層が形成される部位に親水性領域が形成され、前記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記印刷版および前記転写体の少なくとも一方の親水性領域のものより小さいことを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  5. 表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が表面に形成され、前記濡れ性可変層表面には、所定のパターンで形成された親水性領域が形成された印刷版および転写体を用い、
    前記印刷版の親水性領域に、有機エレクトロルミネッセント層を形成するための有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を付着させる工程と、
    前記印刷版の親水性領域に付着した有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を、前記転写体表面の親水性領域に転写する工程と、
    前記転写された有機エレクトロルミネッセント層形成用塗工液を基材上に印刷することにより基材上に有機エレクトロルミネッセント層をパターン状に形成する工程とを有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
    前記転写体上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記印刷版上の親水性領域のものより小さいことを特徴とするエレクトロルミネセント素子の製造方法。
  6. 前記転写体が平版であることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  7. 前記印刷版が凹版であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  8. 前記基材上に表面の濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層が形成され、前記濡れ性可変層表面には、有機エレクトロルミネッセント層が形成される部位に親水性領域が形成され、前記基材上の親水性領域の幅および長さの少なくとも一方が、前記印刷版および前記転写体の少なくとも一方の親水性領域のものより小さいことを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  9. 前記有機エレクトロルミネッセント層が発光層であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  10. 前記発光層を複数種類形成する場合、先に塗布された全ての発光層形成用塗工液が固化する前に、発光層形成用塗工液を塗布することを特徴とする請求項9に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  11. 前記濡れ性可変層は、少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載されたエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  12. 前記光触媒含有層は、エネルギーが照射されていない部分における水との接触角が、エネルギーが照射された部分における水との接触角より1度以上大きい接触角となる光触媒含有層であることを特徴とする請求項11に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  13. 前記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  14. 前記バインダが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項11から請求項13までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
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