JP2003100454A - 転写シート - Google Patents

転写シート

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JP2003100454A
JP2003100454A JP2001292047A JP2001292047A JP2003100454A JP 2003100454 A JP2003100454 A JP 2003100454A JP 2001292047 A JP2001292047 A JP 2001292047A JP 2001292047 A JP2001292047 A JP 2001292047A JP 2003100454 A JP2003100454 A JP 2003100454A
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transfer sheet
photocatalyst
releasability
pattern
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JP2001292047A
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English (en)
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Daigo Aoki
大吾 青木
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Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、EL素子の有機EL層を転写法で
パターニングする際に、レーザ転写法を用いることなく
高精細な転写を可能とする転写シートを提供することを
主目的とするものである。 【解決手段】 本発明は、基材と、上記基材上に形成さ
れ、離型性の異なるパターンを有する離型性変化層と、
上記離型変化層上に形成され、熱により被転写体上に溶
融転写する有機EL層とを有することを特徴とする転写
シートを提供することにより上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機エレクトロル
ミネッセント(以下ELと略称する場合がある。)層を
転写法によりパターン形成する際に用いられる転写シー
トに関するものである。
【0002】
【従来の技術】EL素子は、対向する電極から注入され
た正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギー
で発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の
発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注
目されている。その中でも、有機物質を発光材料として
用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V
弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高
く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを
発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレ
イへの応用が期待されている。
【0003】このようなEL素子を用いたディスプレイ
の製造にあっては、電極層や有機EL層のパターニング
が通常なされている。このEL素子のパターニング方法
としては、形成材料をシャドウマスクを介して蒸着する
方法、インクジェットによる塗りわけ方法等がある。し
かしながら、これらの方法では、製造工程の簡便さ、材
料の利用効率の低さ、最適膜厚への薄層化に問題が残
る。
【0004】このような問題点を解決する方法として、
転写法を用いたパターニングが提案されており(例えば
特開平9−167684号公報)、このような転写法を
用いて高精細なパターニングを行うためには、通常レー
ザ転写法と称される転写シートの裏面側からレーザ光を
照射し、これを光−熱変換層で熱に変換して、この部分
の有機EL層材料を転写する方法が用いられる。
【0005】しかしながら、このようなレーザ転写法を
用いる場合は、レーザを用いて正確に描画できる装置が
必要となり、設備にかかる費用が膨大となるといった問
題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
に鑑みてなされたもので、EL素子の有機EL層を転写
法でパターニングする際に、レーザ転写法を用いること
なく高精細な転写を可能とする転写シートを提供するこ
とを主目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は請求項1において、基材と、上記基材上に
形成され、離型性の異なるパターンを有する離型性変化
層と、上記離型性変化層上に形成され、熱により被転写
体上に溶融転写する有機EL層とを有することを特徴と
する転写シートを提供する。
【0008】本発明においては、離型性変化層を用いる
ものであるので、予め離型性変化層上の有機EL層に対
する離型性をパターン状に変化させておき、この上に溶
融転写する有機EL層を形成した状態で全面に熱を加え
ることにより、パターン状に形成された離型性が良好な
領域上の有機EL層のみを被転写体上に転写することが
できる。よって、転写に際して、単に全面に熱を加える
ことにより容易に高精細な転写を行なうことができる。
【0009】上記請求項1に記載された発明において
は、請求項2に記載するように、上記離型性変化層が、
表面の濡れ性がパターン状に変化されている濡れ性変化
層であることが好ましい。濡れ性が良好な領域上に形成
された有機EL層は、密着性が高いため離型しにくく、
濡れ性の悪い領域上に形成された有機EL層は離型し易
い。よって、予め濡れ性の異なるパターンを形成してお
くことにより、高精細な転写を行なうことができる。
【0010】上記請求項2に記載された発明において
は、請求項3に記載するように、上記濡れ性変化層は、
少なくとも光触媒およびバインダから成り、かつエネル
ギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ
性が変化する光触媒含有層であることが好ましい。この
ような光触媒含有層を用いれば、パターン露光を行なう
ことにより、容易に濡れ性の異なるパターン、すなわち
離型性の異なるパターンを形成することが可能である。
よって、容易に高精細な転写が可能となるからである。
【0011】上記請求項3に記載された発明において
は、請求項4に記載するように、上記光触媒含有層は、
エネルギーが照射されていない部分における水との接触
角が、エネルギーが照射された部分における水との接触
角より10度以上大きい接触角となる光触媒含有層であ
ることが好ましい。接触角が10度以上異なれば、有機
EL層との離型性の差も大きくなり、この結果良好なパ
ターン状の転写を行なうことができるからである。
【0012】上記請求項3または請求項4に記載の発明
においては、請求項5に記載するように、上記光触媒
が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸
化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrT
iO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス
(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択
される1種または2種以上の物質であることが好まし
く、さらに請求項6に記載するように、中でも上記光触
媒が酸化チタン(TiO)であることが好ましい。こ
れは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高い
ため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒
性もなく、入手も容易だからである。
【0013】上記請求項3から請求項6までのいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項7に記載
するように、上記バインダが、YSiX
(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキ
ル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ
基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。
nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物
の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水
分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが
好ましい。
【0014】光触媒含有層に含まれるバインダは光触媒
の作用により分解されない程度の結合エネルギーが必要
である点、およびバインダ自体が光触媒の作用による光
触媒含有層の濡れ性の変化を起こさせるものであること
が好ましい点から上記オルガノポリシロキサンが好まし
いのである。
【0015】一方、上記請求項1に記載された発明にお
いては、請求項8に記載するように、上記離型性変化層
が、離型性変化層を構成する樹脂の硬化度がパターン状
に変化されている硬化度変化層であることが好ましい。
硬化度が異なる領域をパターン状に形成することによ
り、未硬化部分の有機EL層の転写を阻止し、完全に硬
化が完了している領域のみ転写することができるからで
ある。
【0016】上記請求項8に記載された発明において
は、請求項9に記載するように、上記硬化度変化層が、
活性放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなり、パ
ターン状に硬化度が変化されている層であることが好ま
しい。このような硬化性樹脂であれば、活性放射線もし
くは熱をパターン状に加えることにより容易に硬化領域
のパターンを形成することができるからである。
【0017】また、上記請求項1に記載された発明にお
いては、請求項10に記載するように、上記離型性変化
層が、離型層がパターン状に形成された層であることが
好ましい。離型層をパターン状に形成することにより、
離型層が形成されている部分の離型性は良好であり、他
の部分は基材等の他の層と接触することになるので離型
性は低下する。したがって、全面に熱を加えて転写する
際に、離型層が形成された部分のみ転写することが可能
となる。
【0018】上記請求項1から請求項10までいずれか
の請求項に記載された発明においては、請求項11記載
するように、上記有機EL層が、発光層であることが好
ましい。有機EL層の中で、発光層は必須の層であり、
またフルカラー化の場合は高精細なパターニングを必要
とする。したがって、有機EL層が発光層の場合に、本
発明の効果を最大限に発揮することができるからであ
る。
【0019】また、上記請求項1から請求項11までの
いずれかの請求項に記載された発明においては、請求項
12に記載するように、上記離型性変化層と基材との間
に、アンカー層を有することが好ましい。このようにア
ンカー層を形成することにより、離型性変化層まで離型
されてしまうといった過剰転写を防止することができる
からである。
【0020】さらに、上記請求項1から請求項12まで
のいずれかの請求項に記載された発明においては、請求
項13に記載するように、上記転写シートが、光−熱変
換層を有することが好ましい。このように光−熱変換層
を有することにより、基材側から全面に光を照射するこ
とにより、パターン状の転写を行なうことが可能であ
り、より簡便な工程でパターン転写を行なうことができ
るようになるからである。
【0021】上記請求項13に記載された発明において
は、請求項14に記載するように、上記光−熱変換層
が、基材、アンカー層、もしくは離型性変化層のいずれ
かであることが好ましい。光−熱変換層を別に形成する
場合は、その層と他の層との界面での剥離や光−熱変換
層中における層内剥離等が生じる可能性があり、この結
果過剰転写の可能性が生じる。光−熱変換層を、基材、
アンカー層、もしくは離型性変化層のいずれかと兼用さ
せることにより、上述した過剰転写の可能性を低減させ
ることができるからである。
【0022】本発明はまた、請求項15に記載するよう
に、請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に
記載された転写シート、および少なくとも第1電極層が
形成された基板を調製する工程と、上記転写シートおよ
び基板を、転写シートの有機EL層と基板の第1電極層
とが接触するように配置する工程と、上記転写シートの
基材側から全面に熱を加える工程と、上記転写シートと
基板とを剥離する工程とを有すること特徴とするEL素
子の製造方法を提供する。
【0023】本発明によれば、転写シートが上述したよ
うなパターン状に離型性が異なる層であることから、全
面に熱を加えることにより、容易にパターン状に有機E
L層を被転写体上に転写することができる。したがっ
て、レーザ光を描画する等の手間がなく、製造工程が簡
便となり、コスト面で有利な製造方法とすることができ
る。
【0024】一方、本発明はさらに請求項16に記載す
るように、請求項13または請求項14に記載された転
写シート、および少なくとも第1電極層が形成された基
板を調製する工程と、上記転写シートおよび基板を、転
写シートの有機EL層と基板の第1電極層とが接触する
ように配置する工程と、上記転写シートの基材側から全
面に光を加える工程と、上記転写シートと基板とを剥離
する工程とを有すること特徴とするEL素子の製造方法
を提供する。上述した光−熱変換層を有する転写シート
を用いることにより、転写シートの裏面側から単に光を
照射することのみで、パターン状の転写を行なうことが
できる。
【0025】上記請求項15または請求項16に記載さ
れた発明においては、請求項17に記載するように、上
記基板上にさらにバッファー層が形成されていることが
好ましい。バッファー層を形成することにより、その上
の形成される発光層の発光効率を向上させることができ
る。また、バッファー層を設けた場合、この層に転写適
正を向上させる材料を添加させることにより、転写シー
トからの有機EL層のパターン転写を好適に行なうこと
ができるからである。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明について説明する
が、まず本発明の転写シートについて説明した後、この
ような転写シートを用いたEL素子の製造方法について
説明する。
【0027】A.転写シート 本発明の転写シートは、基材と、上記基材上に形成さ
れ、離型性の異なるパターンを有する離型性変化層と、
上記離型性変化層上に形成され、熱により被転写体上に
溶融転写する有機EL層とを有することを特徴とするも
のである。
【0028】本発明の転写シートは、このように離型性
の異なるパターンを有する離型性変化層を有するもので
あるので、この離型性変化層上に形成された有機EL層
を溶融転写する際、転写シートの裏面、すなわち基材側
から全面に熱を加えることにより、上述した離型性変化
層上の離型性の良好な部分のみ被転写体であるEL素子
の基板上に転写され、離型性の悪い領域の有機EL層は
離型性変化層上に残る。これにより、基板上に有機EL
層をパターン状に転写することができる。したがって、
転写に際して例えばレーザ装置等の転写シートの裏面側
にパターンを描く装置を必要としないという利点を有す
るものである。
【0029】このような本発明の転写シートは、離型性
変化層の性質から3つの実施態様に分けられる。以下、
各実施態様に分けて説明する。
【0030】1.第1実施態様 本発明の転写シートの第1実施態様は、離型性変化層が
濡れ性変化層である転写シートである。このような転写
シートの一例を図1を用いて説明する。
【0031】図1は、本実施態様の転写シートの一例を
示すものである。図1に示す例の転写シート1は、基材
2上にアンカー層3を介して濡れ性変化層としての光触
媒含有層4が形成されている。ここで、このアンカー層
3はカーボンブラックが含有されており光−熱変換層と
しての機能も有するものである。この光触媒含有層4上
には被転写体上に溶融転写される有機EL層5が形成さ
れている。そしてこの光触媒含有層4の有機EL層5側
の界面には親水性領域6がパターン状に形成されてい
る。
【0032】このような転写シート1の製造方法につい
て、図2を用いて簡単に説明する。まず、アンカー層3
および光触媒含有層4がこの順に積層されて形成された
基材2を調製する(図2(a))。次いで、この光触媒
含有層4側から、最終的に有機EL層を転写する領域が
露光されないように形成されたフォトマスク7を用いて
露光する。これにより、光触媒含有層4の露光された表
面領域が親水性領域6とされ、露光されていない表面領
域が撥水性領域8とされる(図2(b))。そして、露
光後の光触媒含有層4上に有機EL層5を塗布形成する
ことにより図1に示す転写シート1を形成することがで
きる(図2(c))。
【0033】このようにして製造された転写シート1を
用いたEL素子の製造方法についても簡単に触れてお
く。まず、図3に示すように、被転写体である基板11
上の第1電極層12と、転写シート1の有機EL層5と
が向かい合うように配置される(図3(a))。次い
で、第1電極層12と有機EL層5とを密着させた後、
転写シート1の背面、すなわち基材2側から全面に光1
3を照射する(図3(b))。この光13は転写シート
1の光−熱変換層であるアンカー層3において熱に変換
され光触媒含有層4上の有機EL層5に達する。そし
て、転写シート1と基板11とを剥離することにより、
転写シート1の光触媒含有層4上の撥水性領域8上に配
置された有機EL層5は基板11の第1電極層12上に
転写され、親水性領域6上の有機EL層5は転写シート
1側に残り(図3(c))、これによりフォトマスク7
で決定された撥水性領域のパターンで、有機EL層5を
基板11の第1電極層12上にパターン転写することが
できる。
【0034】これは、撥水性領域8および親水性領域6
における有機EL層5に対する密着度の差から生じるも
のであり、親水性領域6上に形成された有機EL層5
は、光触媒含有層4との密着度が高いことから転写され
ずに転写シート側に残るものと考えられる。これによ
り、基板11の第1電極層12上には、有機EL層5の
パターンが高精細に形成される。
【0035】この例に示すように、本実施態様において
は、濡れ性の差を転写の際に利用することにより、予め
基材上の濡れ性変化層上に濡れ性の異なる領域のパター
ンを形成することのみで、容易に高精細なパターン状の
転写を可能とするものであり、転写に際してのレーザ光
をパターン状に照射する等の高価な装置が必要とされる
工程を省略することができ、コスト面で利点を有するも
のである。
【0036】以下、このような利点を有する本実施態様
の転写シートについて、具体的に説明する。
【0037】a.濡れ性変化層 本実施態様の特徴は、濡れ性変化層を用いている点にあ
り、有機EL層を転写するパターンと同じ濡れ性のパタ
ーンを濡れ性変化層に形成することにより、有機EL層
の高精細なパターン状の転写を可能とするものである。
【0038】本実施態様で用いられる濡れ性変化層は、
その表面の濡れ性を、外部刺激、例えば物理的刺激、化
学的刺激等により変化させることができる層であれば特
に限定されるものではない。例えば、酸またはアルカリ
等により表面の粗さの状態が変化し、濡れ性が変化する
層等であってもよいし、また紫外線や可視光、さらには
熱等のエネルギーの照射により濡れ性変化層内の物質が
変化して濡れ性が変化する層等であってもよい。
【0039】また濡れ性の変化に関しては、刺激が加え
られる前が液体との接触角が大きく(濡れ性が悪く)、
刺激が加えられた後に液体との接触角が小さくなる(濡
れ性が向上する)ように変化するような濡れ性変化層で
あってもよいし、また逆に刺激が加えられる前が液体と
の接触角が小さく(濡れ性が良好であり)、刺激が加え
られた後に液体との接触角が大きく変化する(濡れ性が
悪化する)ような濡れ性変化層であってもよい。
【0040】(光触媒含有層)本実施態様においては、
この濡れ性変化層が、エネルギーの照射により水との接
触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層で
あることが好ましい。このように、露光(本実施態様に
おいては、光が照射されたことのみならず、エネルギー
が照射されたことをも意味するものとする。)により水
との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含
有層を設けることにより、エネルギーのパターン照射等
を行うことにより容易に濡れ性を変化させ、水との接触
角の小さい親水性領域とすることができ、有機EL層を
残す必要のある領域のみ容易に親水性領域とすることが
可能となる。したがって、転写に際してレーザをパター
ン状に照射するレーザ転写法と比較して、効率的に有機
EL層のパターン転写を行うことができるからである。
なお、この場合のエネルギーとしては、通常紫外光を含
む光が用いられる。
【0041】ここで、親水性領域とは、水との接触角が
小さい領域であり、後述する有機EL層の転写に際して
基材側に有機EL層が残存する領域をいうこととする。
また、撥水性領域とは、水との接触角が大きい領域領域
であり、後述する有機EL層の転写に際して被転写体側
に有機EL層が転写される領域をいうこととする。
【0042】本実施態様における光触媒含有層は、エネ
ルギーが照射されていない部分における水との接触角
が、エネルギーが照射された部分における水との接触角
より10度以上大きい接触角となる光触媒含有層である
ことが好ましく、特に好ましくは20度以上、最も好ま
しくは30度以上となる光触媒含有層が用いられる。
【0043】エネルギーが照射されていない部分におけ
る水との接触角と、エネルギーが照射された部分におけ
る水との接触角との差が所定の範囲未満である場合は、
後述する転写に際して、パターン状の転写を行うことが
できず、結果として転写による高精細なパターニングが
困難となるからである。
【0044】このような光触媒含有層における具体的な
水との接触角としては、露光していない部分における水
との接触角が30度以上、特に60度以上、中でも90
度以上であることが好ましく、このような水との接触角
を有する光触媒含有層が好適に用いられる。これは、露
光していない部分は、本実施態様においては撥水性が要
求される部分である。したがって、水との接触角が小さ
い場合は撥水性が十分でなく有機EL層との離型性が不
十分となり、後述する転写工程において転写不良等の不
具合が生じる可能性があるからである。
【0045】また、光触媒含有層を露光した場合の接触
角としては、具体的には、20度以下、特に10度以
下、中でも5度以下となるような光触媒含有層であるこ
とが好ましい。露光した部分の水との接触角が高いと、
転写に際して有機EL層との密着性に欠ける可能性があ
り、後述する転写工程において良好なパターニングがで
きない可能性があるからである。
【0046】なお、ここでいう水との接触角は、水との
接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z
型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下し
て30秒後)し、その結果から得たものである。
【0047】上記光触媒含有層は、少なくとも光触媒と
バインダとから構成されていることが好ましい。このよ
うな層とすることにより、エネルギー照射によって光触
媒の作用で臨界表面張力を高くすることが可能となり、
水との接触角を低くすることができるからである。
【0048】このような光触媒含有層における、後述す
るような酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、
必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成
したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるい
は、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有
機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。
【0049】本実施態様において濡れ性変化層として光
触媒含有層を用いた場合、光触媒により、バインダの一
部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用い
て、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親水性と
し、未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることが
できる。よって、転写に際しての有機EL層との密着性
(親水性)および離型性(撥水性)を高めることによっ
て、精度が良好でかつコスト的にも有利なEL素子とす
ることができる。
【0050】また、本実施態様においてこのような光触
媒含有層を用いた場合、この光触媒含有層が少なくとも
光触媒とフッ素とを含有し、さらにこの光触媒含有層表
面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを
照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射
前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成さ
れていてもよい。
【0051】このような特徴を有する光触媒含有層にお
いては、エネルギーをパターン照射することにより、容
易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形
成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面
エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く
含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくな
る。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨
界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨
界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有
量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親
水性領域となっていることを意味する。よって、周囲の
表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパタ
ーンを形成することは、撥水性領域内に親水性領域のパ
ターンを形成することとなる。
【0052】したがって、このような光触媒含有層を用
いた場合は、エネルギーをパターン照射することによ
り、撥水性領域内に親水性領域のパターンを容易に形成
することができるので、この親水性領域の部分のみ、後
述する転写工程において転写されないことから、精度が
良好なパターン状の転写を行なうことができる。
【0053】エネルギーが照射されて形成されたフッ素
含有量が低い親水性領域におけるフッ素含有量は、エネ
ルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100と
した場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましく
は1以下であることが好ましい。
【0054】このような範囲内とすることにより、エネ
ルギー照射部分と未照射部分との親水性に大きな違いを
生じさせることができる。したがって、このような光触
媒含有層上に有機EL層を形成することにより、転写に
際してフッ素含有量が低下した親水性領域のみ強度に密
着することが可能となり、精度良く有機EL層の転写を
行なうことができるからである。なお、この低下率は重
量を基準としたものである。
【0055】このような光触媒含有層中のフッ素含有量
の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いるこ
とが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Phot
oelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscop
y for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線
分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測
定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0056】本実施態様で使用する光触媒としては、光
半導体として知られる例えば二酸化チタン(Ti
)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、
チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タング
ステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、およ
び酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらか
ら選択して1種または2種以上を混合して用いることが
できる。
【0057】本実施態様においては、特に二酸化チタン
が、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で
毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用され
る。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本
実施態様ではいずれも使用することができるが、アナタ
ーゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタ
ンは励起波長が380nm以下にある。
【0058】このようなアナターゼ型酸化チタンとして
は、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル
(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、
石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナタ
ーゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平
均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0059】光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効
果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が
好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好
ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された
光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光
触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心
線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の
撥水性が低下し、また露光部の親水性の発現が不十分と
なるため好ましくない。
【0060】本実施態様において、光触媒含有層に使用
するバインダは、主骨格が上記の光触媒の光励起により
分解されないような高い結合エネルギーを有するものが
好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロ
またはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大き
な強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水
牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガ
ノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0061】上記の(1)の場合、一般式: YSiX(4−n) (ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニ
ル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、
Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示
す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化
合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共
加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであるこ
とが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は
1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示
されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロ
ポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0062】また、バインダとして、特にフルオロアル
キル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いること
ができ、具体的には、一般にフッ素系シランカップリン
グ剤として知られたものを使用することができる。
【0063】上記のようなフルオロアルキル基を含有す
るポリシロキサンをバインダとして用いることにより、
光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥水性が大きく向
上し、転写に際しての有機EL層との離型性を向上させ
る。
【0064】また、上記の(2)の反応性シリコーンと
しては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げ
ることができる。
【0065】
【化1】
【0066】ただし、nは2以上の整数であり、R
はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換の
アルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキ
ル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェ
ニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、R
メチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので
好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが
好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に
少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0067】また、上記のオルガノポリシロキサンとと
もに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしな
い安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合して
もよい。
【0068】本実施態様においては、このようにオルガ
ノポリシロキサン等の種々のバインダを光触媒含有層に
用いることができる。本実施態様においては、上述した
ように、このようなバインダおよび光触媒を含む光触媒
含有層にフッ素を含有させ、エネルギーをパターン照射
することにより光触媒含有層表面のフッ素を低減させ、
これにより撥水性領域内に親水性領域を形成するように
してもよい。この際、光触媒含有層中にフッ素を含有さ
せる必要があるが、このようなバインダを含む光触媒含
有層にフッ素を含有させる方法としては、通常高い結合
エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比
較的弱い結合エネルギーで結合させる方法、比較的弱い
結合エネルギーで結合されたフッ素化合物を光触媒含有
層に混入させる方法等を挙げることができる。このよう
な方法でフッ素を導入することにより、エネルギーが照
射された場合に、光触媒の作用によりまず結合エネルギ
ーが比較的小さいフッ素結合部位が分解され、これによ
りフッ素を光触媒含有層中から除去することができるか
らである。
【0069】上記第1の方法、すなわち、高い結合エネ
ルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的
弱い結合エネルギーで結合させる方法としては、上記オ
ルガノポリシロキサンにフルオロアルキル基を置換基と
して導入する方法等を挙げることができる。
【0070】また、上記(2)に示す方法では、撥水牲
や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋することによ
りオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この場合
も同様に、上述した一般式中のR,Rのいずれかも
しくは両方をフルオロアルキル基等のフッ素を含有する
置換基とすることにより、光触媒含有層中にフッ素を含
ませることが可能であり、またエネルギーが照射された
場合に、シロキサン結合より結合エネルギーの小さいフ
ルオロアルキル基の部分が分解されるため、エネルギー
照射により光触媒含有層表面におけるフッ素の含有量を
低下させることができる。
【0071】一方、後者の例、すなわち、バインダの結
合エネルギーより弱いエネルギーで結合したフッ素化合
物を導入させる方法としては、例えば、低分子量のフッ
素化合物を導入させる方法が挙げられ、具体的にはフッ
素系の界面活性剤を混入する方法等を挙げることができ
る。また、高分子量のフッ素化合物を導入させる方法と
しては、バインダ樹脂との相溶性の高いフッ素樹脂を混
合する等の方法を挙げることができる。
【0072】本実施態様において光触媒含有層には上記
の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させるこ
とができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NI
KKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭
化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、
旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本
インキ化学工業(株)製メガファックF−141、14
4、ネオス(株)製フタージェントF−200、F25
1、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、4
02、スリーエム(株)製フロラードFC−170、1
76等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面
活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性
剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いるこ
ともできる。
【0073】また、光触媒含有層には上記の界面活性剤
の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステ
ル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレー
ト、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹
脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポ
リカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイ
ミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポ
リプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸
ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイ
ミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリ
ン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマ
ー、ポリマー等を含有させることができる。
【0074】光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜
60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定
することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.
05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0075】上記光触媒含有層は、光触媒とバインダを
必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布
液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成する
ことができる。使用する溶剤としては、エタノール、イ
ソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好まし
い。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコ
ート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法
により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型
の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理
を行うことにより光触媒含有層を形成することかでき
る。
【0076】(親水性領域・撥水性領域のパターン)本
実施態様においては、上述したような濡れ性変化層上
に、親水性領域および撥水性領域のパターンが形成され
ており、撥水性領域上の有機EL層が被転写体であるE
L素子の基板上に転写されることになる。したがって、
濡れ性変化層上の撥水性領域のパターン(すなわち、親
水性領域のパターン)は、転写される有機EL層のパタ
ーンと同一のパターンで形成されることになる。
【0077】上述したように、濡れ性変化層が光触媒含
有層である場合は、図2(b)に示すように、パターン
露光により光触媒含有層上に親水性領域6のパターン
(すなわち、撥水性領域8のパターン)を形成する際に
用いられるフォトマスク7の遮光部のパターンが、有機
EL層の転写部分のパターンとなる。
【0078】本実施態様においては、特にこのように光
触媒含有層を濡れ性変化層とする場合は、有機EL層を
転写するパターンで形成されたフォトマスクを用いて光
触媒含有層をパターン露光することにより、容易に有機
EL層の基板上へのパターン状の転写を行なうことがで
きるのである。
【0079】b.基材 本実施態様においては、図1に示すように、上記濡れ性
変化層である光触媒含有層4は、必要に応じて形成され
るアンカー層3等を介して基材2上に形成される。
【0080】このような基材としては、透明なものであ
っても不透明なものであっても特に限定されるものでは
ないが、通常は熱伝導率の良好な材料が好適に用いられ
る。転写に際して通常は裏面側からすなわち基材表面か
ら熱を加えるため熱伝導性の良好な材料が好ましいので
ある。また、後述するように、全面に光を照射する方法
を用い、かつ基材自体を光−熱変換層として用いない場
合は、透明な材料を用いることが好ましい。このような
場合は、基材とは別に光−熱変換層が形成され、その上
に濡れ性変化層が形成される。したがって、基材は光を
透過する材料で形成されている必要があるからである。
【0081】このような観点から、熱伝導性を重視した
場合の基材としては、具体的には、銅等の金属の薄膜等
を挙げることができる。一方透明性を重視した場合は、
透明でかつ耐熱性のあるポリエチレンテレフタレート
(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポ
リブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイ
ド、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン等のポリエス
テル、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、酢酸セ
ルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチ
ルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィル
ム等を挙げることができる。また、これらの材料を2種
類以上積層した複合フィルムも使用することができる。
【0082】c.有機EL層 本実施態様においては、図1に示すように、親水性領域
のパターン6が形成された濡れ性変化層である光触媒含
有層4上に有機EL層5が形成される。
【0083】この有機EL層としては、発光層、バッフ
ァー層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注
入層等を挙げることができるが、主要な層でありかつパ
ターニングが必要である点から、発光層もしくはバッフ
ァー層が好適であり、特にEL素子に必須の層であり、
フルカラー化を行うためには高精細なパターニングが要
求される点から発光層を離型性変化層上に形成したもの
が最も好ましい例であるといえる。
【0084】このような発光層に用いることができるも
のとしては、ポリフルオレンとその誘導体、ポリビニル
カルバゾール(PVK)とその誘導体、ポリパラフェニ
レンビニレン(PPV)とその誘導体、ポリチオフェン
とその誘導体、ポリパラフェニレン(PPP)とその誘
導体、ポリアセチレン(PA)とその誘導体等のπ共役
系ポリマー、ポリシラン、ポリシロール等のσ共役系ポ
リマー、発光色素をPVK等のポリマーに分散させた色
素含有ポリマーなどを挙げることができる。
【0085】なお、有機EL層の膜厚としては、有機E
L層の種類により異なるものであり、例えば、発光層の
場合は通常、膜厚が10nm〜200nmの範囲内に形
成される。
【0086】d.アンカー層 本実施態様においては、上記基材と濡れ性変化層との間
にアンカー層が形成されていることが好ましい。
【0087】本実施態様においては、上記基材上に濡れ
性変化層を設けるのであるが、基材および濡れ性変化層
の種類によっては、両者の接着性が悪く、転写時に濡れ
性変化層と基材の界面において剥離が生じ、有機EL層
と共に濡れ性変化層までもが転写されてしまう過剰転写
といった不具合が生じる可能性がある。この際、このよ
うなアンカー層を形成することにより、基材および濡れ
性変化層に対しても十分な接着力を有し、過剰転写等の
不具合を十分に低減させることができる。
【0088】本実施態様で用いられるアンカー層として
は、基材および濡れ性変化層に対して十分な接着力を有
し、かつ層内剥離等が生じない程度の強度を有するもの
であることが望ましく、具体的にはアクリル系樹脂、ウ
レタン系樹脂等を挙げることができる。
【0089】このようなアンカー層の好適な膜厚として
は0.05μm〜5μm程度に形成されることが好まし
い。
【0090】e.光−熱変換層 本実施態様においては、後述するように最終的に全面に
光を照射することにより転写する方法が、効率面から好
ましい場合がある。このように、光を用いて転写を行う
ためには、転写シートに光を熱に変換する光−熱変換層
を形成する必要がある。
【0091】このような光−熱変換層を形成する材料と
しては、光を効率的に熱に変換することができる材料で
あれば特に限定されるものではないが、具体的には、カ
ーボンブラックを練りこんだ樹脂、チタンブラックを練
りこんだ樹脂等を挙げることができる。
【0092】本実施態様においては、この光−熱変換層
が、基材、濡れ性変化層、もしくはアンカー層の機能を
有する、逆にいえば、基材、濡れ性変化層、もしくはア
ンカー層が光−熱変換層としての機能を有するものであ
ることが好ましい。
【0093】これらの層とは別個に光−熱変換層を設け
ると、この光−熱変換層の界面での剥離による過剰転写
を防止する必要があることから、他の層との接着性向上
を考慮する必要が生じ、また一層別に設けるのは工程上
不利だからである。
【0094】具体的には、アンカー層が光−熱変換層と
しての機能を有することが、有機EL層に対する熱伝導
性の面を考慮すると好ましいといえる。
【0095】f.転写シートの製造方法 最後に、本実施態様に用いられる転写シートの好適な製
造方法を簡単に説明する。まず、図2(a)に示すよう
に、基材上にカーボンブラックが練り込まれたアンカー
層形成用材料を塗布することにより、光−熱変換層の機
能を有するアンカー層を必要に応じて形成する。次い
で、このアンカー層上に濡れ性変化層を形成する。
【0096】ここで、濡れ性変化層が光触媒含有層であ
る場合は、光触媒、およびバインダを必要に応じて他の
添加剤とともに溶剤中に分散して光触媒含有層形成用塗
工液を調製し、この塗工液を上記基材上に塗布すること
により形成することができる。使用する溶剤としては、
エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機
溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコー
ト、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の
公知の塗布方法により行うことができる。バインダとし
て紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照
射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成す
ることかできる。
【0097】上記、光触媒含有層形成用塗工液中の光触
媒の含有量は、固形分の5〜60重量%、好ましくは2
0〜40重量%の範囲で設定することができる。
【0098】そして、この濡れ性変化層上に、例えば図
2(b)に示す方法等により撥水性領域のパターンを形
成する。この際、濡れ性変化層が光触媒含有層である場
合は、エネルギーをパターン状に照射することにより、
親水性領域のパターン(すなわち撥水性領域のパター
ン)を形成する。
【0099】ここで用いられるエネルギーとしては、光
触媒含有層に用いられている光触媒を励起することがで
きるエネルギーであれば特に限定されるものではない
が、通常光が好適に用いられる。
【0100】本実施態様において用いられる光触媒は、
そのバンドギャップによって触媒反応を生じさせる光の
波長が異なる。例えば、硫化カドニウムであれば496
nm、また酸化鉄であれば539nmの可視光であり、
二酸化チタンであれば388nmの紫外光である。した
がって、光であれば可視光であれ紫外光であれ本実施態
様で用いることができる。しかしながら、上述したよう
にバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有
効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容
易といった理由から光触媒としては二酸化チタンが好適
に用いられる関係上、この二酸化チタンの触媒反応を生
じさせる紫外光を含む光であることが好ましい。
【0101】このような紫外光を含む光源としては、例
えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンラ
ンプ等を挙げることができる。この露光に用いる光の波
長は400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下
の範囲から設定することができ、また、露光に際しての
光の照射量は、露光された部位が光触媒の作用により親
水性を発現するのに必要な照射量とすることができる。
【0102】本実施態様においては、このようなエネル
ギーをパターン状に照射する必要がある。パターン状に
照射する方法としては、特に限定されるものではない
が、通常フォトマスクを用いる方法により行われる。
【0103】このフォトマスクを用いる方法以外の方法
としては、レーザ等を用いてエネルギーを描画照射する
ような方法でエネルギーのパターン照射を行っても良
い。具体的には、エキシマ、YAG等のレーザーを用い
てパターン状に描画照射する方法を挙げることができ
る。
【0104】そして、このように撥水性領域のパターン
が形成された濡れ性変化層上に有機EL層が形成される
(図2(c)参照)。この有機EL層の形成方法は、有
機EL層を適当な溶媒に溶解させた塗工液を均一に塗布
することにより形成される。
【0105】塗布方法としては、特に限定されるもので
はなく、スピンコーティング法、キャスティング法、デ
ィッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロー
ルコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプ
レーコート法等の塗布方法が用いられる。
【0106】このような有機EL層形成用塗工液を均一
に塗布した後、乾燥・固化させることにより有機EL層
が濡れ性変化層上の形成され、これにより本実施態様の
転写シートが形成される。
【0107】2.第2実施態様 本発明の転写シートの第2実施態様は、離型性変化層
が、離型性変化層を構成する樹脂の硬化度がパターン状
に変化されている硬化度変化層であることを特徴とする
ものである。
【0108】このように硬化度をパターン状に変化させ
ることにより、硬化が進んだ、好ましくは硬化が完全に
終了した硬化領域は、その上に形成される有機EL層と
の離型性が良好である。一方、硬化が進んでいない未硬
化領域においては、その上に有機EL層を形成した場合
は、EL層と極めて高い密着性を有することになる。こ
のように、硬化領域と未硬化領域のパターンを有する硬
化度変化層上に有機EL層を形成して形成した転写シー
トを用いて転写する場合、硬化度変化層における硬化領
域上の有機EL層は、被転写体上に離型性良く転写され
ることになり、一方、未硬化領域上に形成された有機E
L層は、硬化度変化層上に強度に密着していることか
ら、転写シート上に残る。これにより、転写シートの裏
面側から全面に熱を加えることにより、容易に基板上に
有機EL層をパターン状に転写することができる。
【0109】a.硬化度変化層 本実施態様に用いられる硬化度変化層は、用いる樹脂の
硬化度をパターン状に変化させることができる樹脂等に
より形成されるものである。このような樹脂としては、
紫外線、X線、電子線等の活性放射線(本実施例におい
ては、樹脂を硬化させる機能を有する放射線の総称を
「活性放射線」とすることとする。)により硬化する活
性放射線硬化性樹脂や、熱により硬化する熱硬化性樹脂
等が好適に用いられる。
【0110】また、本実施態様に用いられる硬化度変化
層を構成する樹脂は、硬化領域において有機EL層に対
して良好な離型性を有するものが好適に用いられる。
【0111】本実施態様においては、中でも硬化度のパ
ターン化が容易であり、汎用されていることから入手も
容易である点でUV硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0112】本実施態様において、上記硬化度変化層を
構成する樹脂として好適に用いられる樹脂としてはEB
硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、熱硬化樹脂としてエポキ
シ樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリイミ
ド樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0113】b.その他の層 本実施態様の他の層、すなわち基材、有機EL層、アン
カー層および光−熱変換層に関する記載は、上記第1実
施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0114】c.転写シートの製造方法 本実施態様においては、上記第1実施態様と同様にし
て、必要であればアンカー層が形成された基材を調製す
る。そして、この基材上に硬化度変化層を形成する。本
実施態様においては、硬化度変化層上に形成される硬化
領域と未硬化領域が予め形成された硬化度変化層をアン
カー層上に接着するようにしてもよいし、未硬化状態の
硬化度変化層を構成する樹脂を塗布した後、パターン状
に例えば紫外線等を照射することにより、硬化領域をパ
ターン状に形成するようにしてもよい。
【0115】このようにして形成された硬化度変化層上
に上記第1実施態様と同様にして有機EL層を形成する
ことにより、本実施態様の転写シートを形成することが
できる。
【0116】3.第3実施態様 本発明の第3実施態様は、離型性変化層が、離型層がパ
ターン状に形成された層であるところに特徴を有する。
本実施態様においては、離型層が形成された領域上の有
機EL層は、離型層との離型性が良好であるので、被転
写体である基板上に転写されるが、離型層が形成されて
いない領域においては、基材もしくはアンカー層上に有
機EL層が形成されることになる。これらの層に対する
有機EL層の離型性は悪いことから、離型層が形成され
ていない領域の有機EL層は転写されない。したがっ
て、このように離型層がパターン状に形成された離型性
変化層を用いることによっても、転写シートの裏面側全
面に熱を加えるかもしくは光を照射することにより、転
写シートから有機EL層をパターン状に転写することが
できる。したがって、高価なレーザ光の描画システム等
の装置が無くても、高精細な有機EL層のパターンを転
写法により形成することができる。
【0117】a.離型層 本実施態様において、パターン状に形成される離型層
は、通常離型層に用いられている材料が好適に用いられ
る。具体的には、ポリビニルアルコール、EB硬化性樹
脂、UV硬化性樹脂、熱硬化樹脂、2液硬化性樹脂等を
挙げることができる。
【0118】b.その他の層 本実施態様の他の層、すなわち基材、有機EL層、アン
カー層および光−熱変換層に関する記載は、上記第1実
施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0119】c.転写シートの製造方法 本実施態様においては、上記第1実施態様と同様にし
て、必要であればアンカー層が形成された基材を調製す
る。そして、この基材上に離型層をパターン状に形成す
る。
【0120】この離型層をパターン状に形成する方法と
しては、一般的に用いられるフォトリソグラフィー法を
好適に用いることができるが、これに限定されるもので
はなく、パターン形成が可能な方法であれば特に限定さ
れるものではない。
【0121】また、離型層のパターンの形成に関して
も、基材(もしくはアンカー層)上においてパターン化
したものであってもよく、また予めパターン化された離
型層を用い、これを基材もしくはアンカー層上に付着さ
せることにより形成してもよい。
【0122】このようにしてパターン状に形成された離
型層を形成した後、その上に有機EL層を形成すること
により、本実施態様の転写シートを得ることができる。
なお、有機EL層の形成方法に関しては、上記第1実施
態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0123】B.EL素子の製造方法。
【0124】次に、本発明のEL素子の製造方法につい
て詳細に説明する。図3は本発明のEL素子の製造方法
の一例を示すものである。この例においては、図3
(a)に示すように、まず第1電極層12が形成された
基板11を準備する。次いで、上述したような転写シー
ト1を上述したような方法により調製する(調製工
程)。
【0125】次いで、図3(b)に示すように、上記基
板11上に形成された第1電極層12に転写シート1の
有機EL層5が接触するように配置した後、例えば水銀
ランプ等を用いて基材2側から全面に光13を照射する
(転写工程)。
【0126】そして、図3(c)に示すように、基板1
1と転写シート1とを引き剥がすことにより、有機EL
層5がパターン状に基板11の第1電極層12上に転写
する。フルカラーのEL素子を製造する場合は、有機E
L層として発光層を用い、この操作を3回繰り返すこと
により3色の発色層を第1電極層12上に転写した後、
もう一方の電極層等を形成し、封止等を行なうことによ
り、EL素子を製造することができる(剥離工程)。
【0127】本発明のEL素子の製造方法は、上記図3
の例に示すように、転写シート1に離型性変化層が形成
されているので、有機EL層を被転写体である基板上の
第1電極層に密着させて、パターン状に転写する際、熱
もしくは光をパターン状に加える必要がなく、単に全面
に加えることにより、離型性変化層の作用により、パタ
ーン状の有機EL層を基板上に転写することができる。
【0128】このような本発明のEL素子の製造方法に
ついて、上述した例で示すような各工程に分けて、詳細
に説明する。
【0129】1.調製工程 本発明においては、図3(a)に示すように、まず被転
写体と転写シートとを調製する。本発明に用いられる転
写シートは、上記転写シートの項で詳細に説明したもの
と同様であるので、ここでの転写シートの説明は省略す
る。したがって、本発明に用いられる被転写体について
のみここでは説明する。
【0130】本発明に用いられる被転写体は、EL素子
の基板であって、少なくともその上に第1電極層が形成
されたものである。
【0131】a.基板 本発明に用いられる基板としては、透明性が高いものが
好ましく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等の有機材
料を用いることができる。
【0132】上記透明樹脂としては、フィルム状に成形
が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性
が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好
ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチ
レンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(P
C)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ
フッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、
ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶
質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられ
る。
【0133】b.電極層 本発明において上記基板上に形成される電極層は第1電
極層とすることができ、これとは他に、発光層を含む有
機EL層を形成した後に形成する第2電極層が別に形成
される。通常第1電極層はこの電極層が形成された面か
ら発光される場合が多いことから透明もしくは半透明な
材料が好適に用いられる。
【0134】そして、第1電極層もしくは第2電極層の
いずれかが陽極となり、他方が陰極となる。陽極として
は、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材
料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。
いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ま
しく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物ある
いは無機化合物を用いてもよい。
【0135】好ましい陽極材料としては、例えば、IT
O、酸化インジウム、金が挙げられる。好ましい陰極材
料としては、例えばマグネシウム合金(MgAg他)、
アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg
他)、金属カルシウムおよび仕事関数の小さい金属が挙
げられる。
【0136】c.その他の有機EL層 本発明におていは、転写シートで転写される有機EL層
以外の有機EL層が予め基板上に形成されていてもよ
い。具体的には、発光層を転写する際に予めバッファー
層が形成されている場合等が考えられる。このようなそ
の他の有機EL層としては、上述した転写シートの項で
説明した有機EL層が全て該当する。
【0137】本発明においては、特に発光層の発光効率
を向上させることを目的として、予め基板に形成された
第1電極層上にバッファー層が形成されたものが好まし
い。この場合、転写される有機EL層は発光層である。
【0138】このように、バッファー層を形成すること
により、バッファー層内に、転写適正向上物質を添加す
ることが可能となる。このように転写適正向上物質を添
加することにより、転写される発光層とバッファー層と
の密着性を向上させることが可能であり、転写品質を向
上させることができる。
【0139】本発明に用いられる転写適正向上物質とし
ては、水分散系の材料と溶剤系の材料とに分けることが
できる。まず、水分散系の材料としては、ポリエステル
のエマルジョン(例えば、東洋紡社製バイロナールシリ
ーズ)、アイオノマーのエマルジョン(例えば、三井化
学製ケミバールシリーズ)、エチレンと酢酸ビニル共重
合体のエマルジョン(例えば、中央理化工業製アクアテ
ックスシリーズ)等を挙げることができる。一方、溶剤
系の材料としては、エチレンと酢酸ビニル共重合体系
(例えば、三井デュポン・ポリケミカル製EVA15
0、EVA250)、アクリルポリオール系(例えば、
綜研化学製U230−T、SU−28)等を挙げること
ができる。
【0140】d.絶縁層 上記基板には、上述したような第1電極層の他、第1電
極層のパターニングしたエッジ部分および素子の非発光
部分を覆い、発光に不要な部分での短絡を防ぐために、
絶縁層を発光部分が開口となるように予め設けておいて
もよい。このようにすることにより、素子の短絡等によ
る欠陥を低減し、長寿命で安定発光する素子が得られ
る。
【0141】このような絶縁層は、通常知られている通
り、例えば、UV硬化性の樹脂材料等を用いてパターン
形成することができる。
【0142】2.転写工程 本発明においては、図3(b)に示すように、上記調製
工程において調整された転写シートとEL素子用基板と
を、転写シート上に形成された有機EL層と、基板上に
形成された第1電極層とが接触するようにして配置した
後、転写シート側から全面にわたって熱を加えることに
より、転写シート上の有機EL層をパターン状に、EL
素子を形成する基板上に転写する転写工程が行われる。
【0143】この際、転写シートを加熱する方法として
は、全面にわたって均一に加熱することができる方法で
あれば特に限定されるものではない。例えば、熱プレス
等が好適に用いられる。
【0144】一方、転写シートに光−熱変換層が形成さ
れている場合は、図3(b)に示すように、転写シート1
の裏面側から紫外光等の光を全面に照射することにより
転写を行なうことができる。
【0145】熱を加える方法と比較して、均一に光照射
することの方が容易である点を考慮すると、このように
転写シートに光−熱変換層を設けておき、転写工程にお
いては、光を全面に照射する方法を採用することが好ま
しいといえる。
【0146】この際、用いることができる光源としては
基本的には限定されないが、光熱変換層が吸収し、かつ
基材が吸収しない波長の光が照射できる光源が望まし
い。具体的には、ハロゲンランプ、キセノンランプ、U
Vランプ、固体レーザー(YAGレーザー)、半導体レ
ーザー等を用いることができる。
【0147】本発明においては、このように転写シート
側から全面に熱もしくは光を照射することのみで、有機
EL層を被転写体である基板上にパターン状に転写する
ことができる。したがって、転写工程における設備や手
間等の観点から、従来の転写工程のようにパターン状に
熱もしくは光を加える方法と比較して効果的であるとい
える。
【0148】3.剥離工程 本発明においては、図3(c)に示すように、上述した
転写工程を行った後、転写シートを基板上から剥離する
ことにより、少なくとも第1電極層が形成された基板上
に、有機EL層のパターンが形成される。
【0149】そして、さらに必要な有機EL層を形成
し、第2電極層を形成し、さらに必要であれば保護層を
形成した後、封止することによりEL素子とすることが
できる。
【0150】なお、本発明は、上記実施形態に限定され
るものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の
特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一
な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかな
るものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0151】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに説明す
る。
【0152】[実施例1] <転写シートの作製>厚さ25μmのポリエチレンテレ
フタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー)に
変性ポリエステル樹脂10重量部とカーボンブラック7
重量部とからなる厚さ0.5μmのカーボンブラックか
らなる光・熱変換層の機能をアンカー層としてバーコー
ターにより塗布し、乾燥させた。その後、光触媒含有層
を以下のようにして形成した。
【0153】まず、下記組成の光触媒含有層用の塗布液
を調整した。 ・光触媒含有層組成物(石原産業(株)製ST−K01) 2重量部 ・オルガノアルコキシラン(東芝シリコーン(株)製TSL8113) 0.4重量部 ・フルオロアルコキシラン(トーケムプロダクツ(株)MF−160E) 0.3重量部 ・イソプロピルアルコール 3重量部 次いで、上記の光触媒含有層塗液を洗浄したガラス基板
上にスピンコーターで塗布し、150℃、10分間の乾
燥処理後、加水分解、重縮合反応を進行させて、光触媒
がオルガノシロキサン中に強固に固定された透明な光触
媒含有層を厚み20nmに形成した。
【0154】このような光触媒含有層に対し、30μm
のラインを100μmの間隔で露光し(水銀灯:波長3
65nm、70mW/cm、50秒)濡れ性のパター
ンを形成した。このとき、未露光部における水の接触角
は142°、露光部における水の接触角は、10°以下
であった。この上に発光層として、下記の組成の塗工液
を調整し、これを塗布して乾燥させた層を形成した。 ・ポリビニルカルバゾール 7重量部 ・緑色発光色素 0.1重量部 ・オキサジアゾール化合物 3重量部 ・トルエン 5050重量部 ここで、ポリビニルカルバゾールの構造式を以下の化学
式(1)に示す。また、オキサジアゾール化合物の構造
式を化学式(2)に、緑色発光色素 クマリン6の構造
式を化学式(3)にそれぞれ示す。
【0155】
【化2】
【0156】<基板の作製>100μmのラインのIT
Oを30μmの間隔でパターニングしたガラス基板上
(絶縁層としてポリイミドをITOのない部分に形成)
にバッファー層としてPEDOT/PSS(ポリ(3,
4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフ
ォネート)の分散液を乾燥膜厚で70nmになるように
スピン塗布した。
【0157】<発光層のパターン転写>転写シートの発
光層側と基板のバッファー層側を光触媒層の未露光部と
基板のITOのパターンが重なるように接触させて、転
写シート側から全面を半導体レーザーで露光した(17
0mW、50μsec)。その後、転写シートと基板を
剥離したところ、未露光部の発光層のみが基板に転写さ
れた。この上にカソードとしてMgAgを1000オン
グストロームの厚さで全面に形成し、有機EL素子を形
成した。ITO側をプラスにしてITOとカソード間に
15Vの電圧を印加することでライン状の発光パターン
が得られた。
【0158】[実施例2]実施例1において、アンカー
層にカーボンブラックを混合しないこと以外は同様にし
て転写シートを作製した。実施例1で半導体レーザーで
露光する代わりに、全面をヒートロールで140℃に加
熱すること以外は同様にして、有機EL素子を形成し
た。ITO側をプラスにしてITOとカソード間に15
Vの電圧を印加することでライン状の発光パターンが得
られた。
【0159】
【発明の効果】本発明においては、離型性変化層を用い
るものであるので、予め離型性変化層上の離型性をパタ
ーン状に変化させておき、この上に溶融転写する有機E
L層を形成した状態で全面に熱を加えることにより、パ
ターン状に形成された良離型領域上の有機EL層のみを
被転写体上に転写することができる。よって、転写に際
して、単に全面に熱を加えることにより容易に高精細な
転写を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写シートの一例を示す概略断面図で
ある。
【図2】本発明の転写シートにおける製造方法の一例を
示す工程図である。
【図3】本発明のEL素子の製造方法の一例を示す工程
図である。
【符号の説明】
1 … 転写シート 2 … 基板 3 … アンカー層 4 … 光触媒含有層 5 … 有機EL層 6 … 親水性領域 8 … 撥水性領域 11 … 基板 12 … 第1電極層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H05B 33/14 B41M 5/26 J H Fターム(参考) 2H111 AA26 AA33 AA34 AA35 BA03 BA07 BA09 BA13 BA32 BA38 BA53 BA74 BA76 CA26 CA28 3B005 EA14 EB01 EB05 EC25 FA02 FA12 FB26 FB61 FE22 FE23 FE31 FG10 GA02 GA05 GA09 GB01 GB03 3K007 AB04 AB18 CA01 CA05 CB01 DA00 DB03 EB00 FA00 FA01

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、前記基材上に形成され、離型性
    の異なるパターンを有する離型性変化層と、前記離型性
    変化層上に形成され、熱により被転写体上に溶融転写す
    る有機エレクトロルミネッセント層とを有することを特
    徴とする転写シート。
  2. 【請求項2】 前記離型性変化層が、表面の濡れ性がパ
    ターン状に変化されている濡れ性変化層であることを特
    徴とする請求項1に記載の転写シート。
  3. 【請求項3】 前記濡れ性変化層は、少なくとも光触媒
    およびバインダから成り、かつエネルギーの照射により
    液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触
    媒含有層であることを特徴とする請求項2に記載の転写
    シート。
  4. 【請求項4】 前記光触媒含有層は、エネルギーが照射
    されていない部分における水との接触角が、エネルギー
    が照射された部分における水との接触角より10度以上
    大きい接触角となる光触媒含有層であることを特徴とす
    る請求項3に記載の転写シート。
  5. 【請求項5】 前記光触媒が、二酸化チタン(Ti
    )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、
    チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タング
    ステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、およ
    び酸化鉄(Fe )から選択される1種または2種
    以上の物質であることを特徴とする請求項3または請求
    項4に記載の転写シート。
  6. 【請求項6】 前記光触媒が二酸化チタン(TiO
    であることを特徴とする請求項5記載の転写シート。
  7. 【請求項7】 前記バインダが、YSiX(4−n)
    (ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニ
    ル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、
    Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3
    までの整数である。)で示される珪素化合物の1種また
    は2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物
    であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする
    請求項3から請求項6までのいずれかの請求項に記載の
    転写シート。
  8. 【請求項8】 前記離型性変化層が、離型性変化層を構
    成する樹脂の硬化度がパターン状に変化されている硬化
    度変化層であることを特徴とする請求項1に記載の転写
    シート。
  9. 【請求項9】 前記硬化度変化層が、活性放射線硬化性
    樹脂または熱硬化性樹脂からなり、パターン状に硬化度
    が変化されている層であることを特徴とする請求項8に
    記載の転写シート。
  10. 【請求項10】 前記離型性変化層が、離型層がパター
    ン状に形成された層であることを特徴とする請求項1に
    記載の転写シート。
  11. 【請求項11】 前記有機エレクトロルミネッセント層
    が、発光層であることを特徴とする請求項1から請求項
    10までのいずれかの請求項に記載の転写シート。
  12. 【請求項12】 前記離型性変化層と基材との間に、ア
    ンカー層を有することを特徴とする請求項1から請求項
    11までのいずれかの請求項に記載の転写シート。
  13. 【請求項13】 前記転写シートが、光−熱変換層を有
    することを特徴とする請求項1から請求項12までのい
    ずれかの請求項に記載の転写シート。
  14. 【請求項14】 前記光−熱変換層が、基材、アンカー
    層、もしくは離型性変化層のいずれかであることを特徴
    とする請求項13記載の転写シート。
  15. 【請求項15】 請求項1から請求項12までのいずれ
    かの請求項に記載された転写シート、および少なくとも
    第1電極層が形成された基板を調製する工程と、 前記転写シートおよび基板を、転写シートの有機エレク
    トロルミネッセント層と前記基板の第1電極層とが接触
    するように配置する工程と、 前記転写シートの基材側から全面に熱を加える工程と、 前記転写シートと基板とを剥離する工程とを有すること
    特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項13または請求項14に記載さ
    れた転写シート、および少なくとも第1電極層が形成さ
    れた基板を調製する工程と、 前記転写シートおよび基板を、転写シートの有機エレク
    トロルミネッセント層と基板の第1電極層とが接触する
    ように配置する工程と、 前記転写シートの基材側から全面に光を加える工程と、 前記転写シートと基板とを剥離する工程とを有すること
    特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記基板上にさらにバッファー層が形
    成されていることを特徴とする請求項15または請求項
    16に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方
    法。
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