JP2009055079A - 信号処理装置、信号処理方法、プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】入力オーディオ信号の低周波数帯域信号を抽出する低域信号抽出部と、上記低周波数帯域信号の高調波信号を生成する高調波生成部と、上記低周波数帯域信号のレベルを検出するレベル検出部と、さらに、上記低周波数帯域信号のレベルと上記高調波信号のレベルを、上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルに応じて調整制御する調整制御部を備える。これにより、低域信号の検出レベルが所定レベルとなるまではブースト量を増加させて自然な音質による低域増強を行い、それよりも大きなレベルによる低域信号入力時には仮想信号による低域増強によって引き続き低域の増強を行うことができる。すなわちこのような構成によって、ブースト方式と仮想信号増強方式との相互の不利点を補って低域の増強を行うことができるという、相乗的な効果を得ることができる。
【選択図】図2
Description
図25は、大型スピーカと小型スピーカの周波数特性(周波数−振幅特性)の比較を示しているが、図25(a)に示す大型スピーカの場合では、図中における下限周波数である50Hzにおいても振幅の下降は見られないが、図25(b)に示す小型スピーカの場合では、200Hz以下の周波数で振幅が下降しているのがわかる。
1つには、低域成分をブーストするということが行われている。一般に、小型スピーカであっても、低域成分の信号が全く再生されないわけではなく、図25(b)に示した如く、大型スピーカと比較して減衰した音量にて再生音が得られることになる。そこで、低域成分のゲインを上げてブーストすることにより、低域まで延びた再生音を得ることができる。
このような処理を行うことで、実際には低域信号が再生されていなくても、その高調波の存在により、聴取者には低域信号があるように知覚させることができる。この現象は、いわゆる「ミッシングファンダメンタル」として一般的に知られている。
しかしながら、上記手法のうち、低域信号をブーストする手法を採る場合には、非線形歪が問題となる。すなわち、スピーカへの入力信号レベルが所定の許容値以上となってしまった場合には、それ以上低域の量感が増すといったことはなくなり、またこれに加えて音質の劣化も招いてしまうものとなる。
但し、入力レベルがスピーカの許容範囲内に収まる限りにおいては、良好な音質により低域の量感を増すことができる。
つまり、入力オーディオ信号の低周波数帯域信号を抽出する低域信号抽出部を備える。
また、上記低域信号抽出部により抽出された低周波数帯域信号の高調波信号を生成する高調波生成部を備える。
また、上記低域信号抽出部により抽出された低周波数帯域信号のレベルを検出するレベル検出部を備える。
さらに、上記低域信号抽出部により抽出された上記低周波数帯域信号のレベルと上記高調波生成部により生成された上記高調波信号のレベルを、上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルに応じて調整制御する調整制御部を備えるものである。
ここで、先に述べたようにしてブースト方式は、仮想信号増強方式に比して聴感上より自然な音質で低域の増強を行うことができるが、非線形歪の問題から、スピーカへの入力信号レベルが所定以上となる場合には低域の増強が困難となり、またその場合の音質劣化も問題となる。一方、仮想信号増強方式は、このような低音再生について非線形歪についての問題は回避できるが、あくまで仮想信号による低域増強であるため、ブースト方式に比して低音の自然な再現性の面で劣るものとなる。
上記本発明によれば、低域信号の検出レベルに応じて、低域のブースト量と高調波信号のレベルとを調整制御することができる。つまりこれによれば、例えば入力される低域信号レベルが所定レベルとなるまではブースト量を増加させて自然な音質による低域増強を行い、それよりも大きなレベルによる低域信号入力時には仮想信号による低域増強によって引き続き低域の増強を行うといったことができるようになる。
つまり、このような本発明によれば、ブースト方式と仮想信号増強方式との相互の不利点を補って低域の増強を行うことができるという、相乗的な効果を得ることができる。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態の信号処理装置としての、テレビジョン受像機1の内部構成を示したブロック図である。
このテレビジョン受像機1は、デジタルテレビジョン放送を受信して受信信号に応じた映像表示・音響再生を行うデジタルテレビジョン受像機とされる。先ず、図中の端子Tinからは、図示されないアンテナによって受信されたデジタルテレビジョン放送による放送信号が入力される。
上記ビデオ信号及びオーディオ信号を圧縮した圧縮データは、ES(Elementary Stream)として多重化される。また、放送側が挿入する付加情報としては、PAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)などのテーブルを格納するPSI(Program Specific Information:番組特定情報)や、SI(Service Information:番組配列情報)などが挙げられる。なお各情報の多重化は、TSを188バイトのトランスポートストリーム・パケット(TSパケット)により形成するようにして、このTSパケットに対して、上記したES及び各種付加情報を格納することにより行われる。
ここでは、上記TSにて多重化される各種の付加情報についての処理は周知であるものとしてその説明は省略し、圧縮ビデオ信号・オーディオ信号についての処理系の構成について説明を行うものとする。
放送信号処理部3は、上記TSに対するデスクランブル処理、デマルチプレクッス処理、上記デマルチプレックス処理により得られたMPEG圧縮データについてのデコード処理を行って、放送コンテンツとしてのビデオ信号(デジタルビデオ信号:図中ではVideoと表記)、オーディオ信号(デジタルオーディオ信号:図中ではAudioと表記)を得る。
放送信号処理部3で得られたデジタルビデオ信号は映像信号処理部4に、デジタルオーディオ信号はDSP(Digital Signal Processor)7に対して供給される。
ドライバ5は、映像信号処理部4からの出力信号に基づき表示部6を表示駆動する。
なお、表示部6が例えば液晶ディスプレイとされる場合は、液晶表示パネルと共にバックライトが含まれるものとなる。この場合、ドライバ5は液晶表示パネルについての表示駆動と共にバックライトの発光駆動も行うものとなる。
この図に示されるようにして、DSP7としては、低域増強処理部7aと特性付与フィルタ処理部7bとしての機能動作をデジタル信号処理により実現するようにプログラミングされている。
先ず、低域増強処理部7aとしては、さらにその機能を詳細化すると、図示するようにしてLPF(Low Pass Filter)処理部15、加算処理部16、ゲイン調整処理部17、レベル検出処理部18、高調波生成処理部19、ゲイン計算処理部20、ゲイン調整処理部21、加算処理部22に分けることができる。
なお、以下では説明の便宜上、各処理機能ブロックをハードウエアとして扱うようにして動作説明を行うが、これら処理機能ブロックとしての動作は、DSP7が音声信号処理プログラム8aに基づきハードウエアリソースを用いたデジタル信号処理を行うことによって実現する動作となる。
LPF処理部15は、入力オーディオ信号の低周波数帯域の信号を抽出するフィルタ処理を行う。図3は、横軸を周波数(Hz)、縦軸をゲイン(dB)としてLPF処理部15によるフィルタ処理のフィルタ特性を示している。この図からも理解されるように、LPF処理部15では、入力オーディオ信号の所定以下の周波数帯域のみを抽出するようにしてフィルタ処理を行う。具体的にこの場合は、図のように最低周波数から或る周波数まではゲインを一定とし、それ以降、上記所定の周波数にかけてはゲインを減衰させていくようにしてオーディオ信号の低周波数帯域信号(以下、単に低域信号や低域成分とも呼ぶ)を抽出するようにされている。
LPF処理部15では、このようなIIRフィルタとしての構成で表すことのできるデジタルフィルタ処理を行うことで、図3に示すような特性によるフィルタ処理を行う。
また、上記高調波生成処理部19は、上記LPF処理部15により得られた低域信号の高調波信号を生成する。
基本的に、n次の高調波信号を生成するにあたっては、乗算器によって入力信号をn回乗算すればよい。この図に示す例では、2次、及び3次の高調波を生成する場合の構成を示している。具体的には、入力信号(この場合は上記低域信号)を2回乗算するようにされた乗算器19aと、入力信号を3回乗算するようにされた乗算器19bとが備えられる。さらに、上記乗算器19aの出力レベルを調整するためのゲイン調整器19c、上記乗算器19bの出力レベルを調整するためのゲイン調整器19dが設けられる。そして、上記ゲイン調整器19cを介して出力される2次高調波信号、及び上記ゲイン調整器19dを介した3次高調波信号が、加算器19eにて加算されて出力されるようになっている。
さらに、このように加算処理部22で得られる、それぞれゲイン調整の施された低域信号と高調波信号とが加算された信号(第1加算信号とする)は、先に述べた加算処理部16に供給され、ここにおいて入力オーディオ信号と加算される。
当該加算処理部16による加算結果は、第2加算信号として、上述した特性付与フィルタ処理部7bに供給される。そして、当該特性付与フィルタ処理部7bを介した第2加算信号は、図示するようにしてDSP7の出力信号として図1に示したD/A変換器9に対して供給されるようになっている。
その上で、本実施の形態では、これら低域信号、高調波信号のレベルを、低域信号の検出レベルに応じて制御するための構成を設けるものとしている。具体的には、レベル検出処理部18と、ゲイン調整制御処理部20を設けている。
この場合、ゲイン調整制御処理部20では、検出される低域信号レベルが或る閾値に達するまでは低域信号がブーストされ、且つ検出される低域信号レベルが上記閾値よりも大となるときには低域信号のブーストを行わず、逆に低域信号の出力レベルが入力レベル(検出レベル)に関わらず一定となるようにして、ゲイン調整処理部17におけるゲインを制御する。
一方、高調波信号については、検出される低域信号レベルが或る閾値に達するまでは信号出力が行われないよう(つまりゲインを「0」とする)にし、この閾値よりも大となる場合は、入力レベルに比例したレベルによる信号出力が行われるようにしてゲイン調整処理部21のゲインを制御する。
このことを踏まえ、先ず図7(a)の低域信号については、或る閾値th-rに達するまでは「1」よりも大なるゲインが与えられ、入力レベルが当該閾値th-rに達した(入力レベル=閾値th-r)ときに、ゲイン=1となるようにされていることが確認できる。
そしてこの場合、入力レベルが上記閾値th-rに至るまでの間の具体的なゲイン特性としては、入力レベルが低いほどゲインの値が大きくなるようにされている。換言すれば、入力レベルが大きくなるに従ってゲインが小さくなるようにして設定されることがわかる。
さらに、入力レベルが閾値th-rに達した以降(つまり入力レベル>閾値th-rの条件)では、出力レベルが一定となるようにされている。つまり、ゲインとしては、このように出力レベルが一定となるようにして、入力レベルが大きくなるに従ってその値が小さくなるように制御することになる。
そして、入力レベルが上記閾値th1を超える場合には、閾値th1よりも大なる閾値th2に至るまでの範囲内で、入力レベルの上昇に比例して出力レベルが上昇するようにしてゲインを制御する。具体的にこの場合は、上記閾値th1から上記閾値th2までの入力レベルの上昇に対し、出力レベルの傾きが一定となるようにゲインを制御するものとしている。なおかつ、この場合は、上記閾値th1、th2を、先の図7(a)にて説明した閾値th-rとの関係で「th1<th-r<th2」となるように設定するものとしており、入力レベルが上記閾値th-rに至るときにゲイン=1となるようにしている。すなわち、ブースト系により低域信号の出力レベルが一定とされた以降には、高調波信号の出力レベルが「1」より大なるゲインによって徐々に上昇していくようにされているものである。
また、入力レベルが上記閾値th2より大となる場合には、図示するようにして入力レベルの上昇に関わらず出力レベルが一定となるようにしてゲインが制御されることになる。
なお、この説明からも理解されるように、閾値th-rに達したときの具体的な低域信号の出力レベルは、少なくともスピーカ11の非線形歪を生じさせないレベルに抑えられるように設定すべきものとなる。ここでは、例えば非線形歪を生じさせない限界のレベルとなるように設定するものとしている。これにれば、非線形歪を発生させない範囲内で最大限、低域信号をブーストさせることができる。
このように高調波信号の出力をオーバーラップさせているのは、非線形歪を考慮して、低域信号の入力レベルが閾値th-rに近づくにつれて低域信号のブースト量を徐々に減少させる傾向としなければならないことに対応させるためである。すなわち、このようにブースト量が閾値th-rに近づくにつれて減少してしまう関係から、この部分で高調波信号をオーバーラップさせて出力させることで、低域の増強量の不足を効果的に補うことができるものである。
なお、この点について特段考慮しないのであれば、閾値th1=閾値th-rとして、高調波信号のオーバーラップ出力は行わないようにすることもできる。
本例の場合、このような高調波信号の一定レベルとしては、音質劣化を招かない限界付近のレベルを設定するものとしている。このように限界レベル付近まで高調波信号のレベルが達していれば、高調波信号レベルが他の帯域の信号レベルに対し相対的に低くなったとしても、聴感上は低域の増強感は充分に得られるものとなる。すなわち、低域の不足が知覚される虞はほぼないといえる。
DSP7では、上記により説明した低域増強処理部7aとしてのデジタル信号処理を行うと共に、さらに、特性付与フィルタ処理部7bとしてのデジタル信号処理を行う。
この特性付与フィルタ処理部7bとしては、加算処理部16による加算処理によって得られる第2加算信号に対し、スピーカ11の特性(スピーカ特性)の逆特性に相当する信号特性を付与するフィルタ処理を行う。
先ず、一般にオーディオ信号をスピーカにて音響再生する場合、スピーカとしては個々に特有の特性、すなわち周波数特性や時間応答特性を有するため、同じ入力オーディオ信号についてスピーカ毎に異なる聞こえ方で再生音を出力することになる。このことは、特徴の異なる様々なすぐれた音楽性を持つスピーカが存在する要因の一つとなっている。
このような逆特性の付与が行われることにより、結果としてスピーカから音響再生される再生音としては、周波数特性が平坦で、直線位相特性、すなわちインパルス応答の揺らぎの少ない特性により出力されるものとなる。
以下、この点について図10〜図12を参照して説明する。
先の説明によれば、単に周波数特性の平坦化を図るにあたっては、この図10(a)に示される特性Hの逆特性を測定信号成分に対して与えればよいものとなるが、本実施の形態では、測定信号に対して、予め図10(b)に示されるような周波数−振幅特性を付与することで、低域信号をブーストさせた状態でスピーカ11による音響再生を行わせ、スピーカ11の特性を測定するものとしている。
図11は、このように低域をブーストさせた状態で測定されたスピーカ11の周波数−振幅特性(Hbとする)を表しているが、この場合は低域がブーストされることに伴い、通常のスピーカ11の特性H(図中破線)よりも低域部分が持ち上げられた特性となっていることが確認できる。
このことで、特性付与フィルタ処理部7bとしてのFIRフィルタのタップ長は、通常の逆特性1/Hを付与するとした場合と比較して格段に減少させることができる。この場合、LPF処理部15を実現するためのIIRフィルタに必要なハードウエアリソースが比較的少なくて済むことを考慮すれば、上記のように低域におけるゲイン付与を簡略化できることによるFIRフィルタのタップ長の削減が図られることに伴っては、DSP7全体で必要なハードウエアリソースの大幅な削減が図られることが理解できる。
また、先に説明したように、本例の場合においては、入力信号レベルが閾値th-rよりも大となった場合は、低域の増強は主に高調波信号によって為されることから、入力信号レベルが上記閾値th-rより大きくなることに伴い低域信号の特性が厳密に平坦にならないとしても(具体的には低域信号レベルが他の中・高域の信号のレベルに対し相対的に低下しても)、聴感上は、低域の不足感が知覚されることはないものとなる。
つまり、これらのことより、上述のようなDSP7の平坦化のためのハードウエアリソース・処理負担の削減を図る構成とした場合であっても、聴感上は、厳密な平坦化が行われる場合とほぼ同等の効果を得ることができるものとなる。
先の説明から理解されるように、高調波信号は、LPF処理部15によって抽出された低域信号に基づき、その整数倍の周波数による信号が生成されたものとなる。図13(a)(b)ではそれぞれ、100Hzの信号の2次高調波(200Hz)と3次高調波(300Hz)の位置を実線矢印により指し示しているが、これら図13(a)(b)の比較から理解されるように、特性の異なるスピーカ間では、同じ高調波信号について、その再生レベルが異なるものとなってしまう。すなわち、スピーカ特性が異なることで、高調波信号によって知覚される低域成分の量感にバラツキが生じてしまうものである。
また、スピーカA、スピーカBをそれぞれ単独で見た場合、2次高調波と3次高調波の関係においても、その再生レベルに差が与えられてしまうことがわかる。この図の例では、スピーカA、スピーカBで共に、2次高調波、3次高調波の信号のレベル差が約5dB近くあるものとなっている。このことによると、仮想的に知覚される低域成分の音質の悪化を助長することになる。
また、このように同じ周波数信号を基とした2次、3次高調波の関係のみならず、それぞれ異なる周波数の信号に基づく高調波の関係について見ても、同様に再生レベルの差が生じることになる。例えば、100Hzの信号に基づく2次高調波(200Hz)と60Hzの低域信号に基づく2次高調波(120Hz)とを比較した場合にも、それらの再生レベルには相応の差が生じるものとなる。このことで、聴感上知覚されるレベルとしても、60Hzと100Hzで相応の差が生じることになる。
なお、図示による説明は省略したが、実際にスピーカにより再生される高調波の位相関係としても、使用されるスピーカの上記高調波に相当する周波数応答により異なるものとなる。すなわち、知覚される低域成分の量感・音質は、スピーカの位相特性にも依存するものである。
この結果、上述のようなスピーカ特性の影響による低域の量感・音質の劣化の防止を図ることができ、仮想信号による低域の増強感が安定して得られるようにすることができる。
このような構成とすれば、中・高域におけるスピーカ本来の特性は残したまま、低域再生において、仮想信号による低域増強をバラツキなく良好に実現することができる。
続いて、第2の実施の形態について説明する。
図14は、第2の実施の形態としての信号処理装置の構成について説明するための図である。第2の実施の形態は、上記により説明した第1の実施の形態としての音声信号処理系の動作を、CPU(Central Processing Unit)の処理動作によって実現するものである。
なお、図14では、このようなCPUが設けられる信号処理装置を備えて構成された電子機器の内部構成を示している。このような電子機器としては、例えばパーソナルコンピュータなどを想定している。
CPU25に対しては、当該CPU25によるデータの読み出し/書き込みが可能とされるメモリ部26が設けられ、当該メモリ部26は、CPU25によるワーク領域として利用されたり、またCPU25が各種処理を行う上で必要となるパラメータなどが格納される。特に本実施の形態の場合、上記メモリ部26には、CPU25によって後の図15に示す実施の形態としての音声信号処理を実行させるための、音声処理プログラム26aが格納されている。
なお、この場合、CPU25では入力オーディオ信号を所定のフレーム単位で扱うものとされている。すなわち、この図においてオーディオ信号を扱うステップS101〜S107までの各処理は、オーディオ信号中の同フレームを対象として行われるものである。
続くステップS102では、高調波信号を生成する。つまり、上記ステップS101の処理により抽出した低域信号について、例えば先の図5にて説明したものと同様の手法で高調波信号を生成する。
図16は、第3の実施の形態としてのテレビジョン受像機の構成について説明するための図である。なお、第3の実施の形態のテレビジョン受像機としては、DSP7にて行われる処理内容が異なる以外は、先の第1の実施の形態の場合のテレビジョン受像機1の構成と同様となることから、図16では、この場合のDSP7により実現される処理機能ブロックのみについて主に示す(この場合もDSP7外部のD/A変換器9も併せて示す)。
また、確認のために述べておくと、第3の実施の形態のテレビジョン受像機においては、この図に示される各処理機能を実現するためのデジタル信号処理がDSP7により実行されるようにして、メモリ8内に格納される音声処理プログラム8aの内容が変更されるものとなる。
なお、この図16において、既に先の図2にて説明した処理機能ブロックについては同一符号を付して説明を省略する。
先ず、この場合も平坦化・直線位相化のための特性の設定にあたっては、先の図8で説明したようにスピーカ11による再生音についてインパルス応答、周波数特性の測定を行って、逆特性を算出する。なお、この場合の特性付与はあくまで高調波が付与される帯域を対象とするので、測定にあたって先の図10に示したような低域のブーストを行う必要はない。
対高調波特性付与処理部30に対しては、このように算出した逆特性の少なくとも一部帯域の特性のみを設定する。
図17では、算出された逆特性における一部帯域の特性のみを抽出して示している。この図では一例として、例えば75Hzの信号の2倍から13倍の高調波が存在する帯域、すなわち150Hz〜1kHzの帯域の特性を抽出している。なお、実施の形態の場合、高調波信号としては3次高調波までを生成するものとされるので、低域信号における上限周波数をf0としたとき、f0<f<f0×3の帯域の逆特性のみが設定されるようにすればよい。
図19は、第4の実施の形態としての信号処理装置の構成について説明するための図である。なお、第4の実施の形態においても、テレビジョン受像機の構成は、DSP7にて行われる処理内容が異なる以外は先の第1の実施の形態の場合のテレビジョン受像機1の構成と同様となることから、図19では、この場合のDSP7により実現される処理機能ブロックを主に示す(この場合もD/A変換器9を併せて示す)。
また、この場合としても、この図に示される各処理機能を実現するためのデジタル信号処理がDSP7により実行されるようにして、メモリ8内に格納される音声処理プログラム8aの内容が変更される。
また、この図19では、既に先の図2、及び図16にて説明した処理機能ブロックについては同一符号を付して説明を省略する。
この場合も上記特性付与フィルタ処理部7bは、加算処理部16により得られる第2加算信号に対し、先の第1の実施の形態で説明した逆特性1/Hb(s)を与える。
また、EQ処理部7cは、上記特性付与フィルタ処理部7bによって特性付与された第2加算信号に対し、所要の等化目標特性を与えるためのフィルタ処理を行う。この場合のD/A変換器9に対しては、このようにEQ処理部7cによるフィルタ処理が施された第2加算信号が供給されることになる。
これら特性付与フィルタ処理部7bとEQ処理部7cとが設けられることで、この場合の高調波信号を除くオーディオ信号成分については、第1の実施の形態の場合と同様にスピーカ11の特性が補正されて周波数特性の平坦化・直線位相化が図られた上で、所要のイコライジング処理が施されて出力されることになる。
例えば、EQ処理部7cにおける目標特性として、次の図20(a)に示すように高調波帯域のゲインを上げるような特性が設定されたとすると、加算処理部16で得られる第2加算信号に対しては、特性付与フィルタ処理部7bによる逆特性付与によって平坦化・直線位相化のための特性が付与されたにも関わらず、その後のEQ処理部7cによるイコライジングによって、高調波帯域の特性の平坦なものではなくなるようにされてしまう。すなわち、このように高調波帯域の特性が平坦ではなくなることで、この場合も高調波信号による低域の増強感の安定性が損なわれてしまうものである。
このとき、EQ処理部7cに設定される目標特性は、固定であってもよいし可変とされてもよい。可変とする場合、例えばユーザ操作に応じてEQ処理部7cに設定される目標特性が変更されるようにすればよい。この場合、目標特性の変更は、いわゆるグラフィックイコライザのように所定の周波数帯域ごとのゲインの変更が可能となるようにしてもよいし、プリセットによる複数の特性の中から選択するようにしてもよい。
また、第4の実施の形態としてもHPF処理については省略することもできる。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、簡単のため、実施の形態としての音声信号処理を1チャンネル分のオーディオ信号について行う場合を例示したが、例えばLチャンネルとRチャンネルによるステレオ再生を行う場合、或いは5.1チャンネルなどのマルチチャンネル再生を行う場合には、各チャンネルの入力オーディオ信号ごとにこれまでに説明した音声信号処理を行う構成を設けるものとすればよい。
なお、実施の形態で例示したように位相特性も付与するものとして直性位相化を図ることができれば、音像の定位感を増すことができる。
このように高調波信号のみで低域を増強する構成とした場合は、低域信号の出力は不要であるので、HPF処理部31によるHPF処理は、図のように加算処理部16による加算後の信号に対して行うようにすることもできる。
また、この場合は、低域信号の入力レベル(検出レベル)が比較的低い場合にも高調波信号による低域増強感が得られるように、ゲイン調整制御処理部20におけるゲイン制御特性を変更することになる。つまりこの場合、図7(b)に示したような、低域信号の入力レベルが低い場合における高調波信号の出力されない部分が形成されないように、ゲイン制御特性を変更する。
Claims (21)
- 入力オーディオ信号の低周波数帯域信号を抽出する低域信号抽出部と、
上記低域信号抽出部により抽出された低周波数帯域信号の高調波信号を生成する高調波生成部と、
上記低域信号抽出部により抽出された低周波数帯域信号のレベルを検出するレベル検出部と、
上記低域信号抽出部により抽出された上記低周波数帯域信号のレベルと上記高調波生成部により生成された上記高調波信号のレベルを、上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルに応じて調整制御する調整制御部と
を備えることを特徴とする信号処理装置。 - さらに、上記調整制御部によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算部と、
上記加算部によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、所定の信号特性を与える第1のフィルタ部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 上記調整制御部は、
上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが所定の閾値より大となるときは、上記低周波数帯域信号の出力レベルが一定レベルに抑制されるように上記低周波数帯域信号のレベルを調整制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 上記調整制御部は、
上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが所定の閾値以下のときは、上記高調波信号が出力されないようにし、上記低周波数帯域信号のレベルが上記所定の閾値より大となるときは、上記高調波信号の出力レベルが上記低周波数帯域信号の検出レベルに比例したレベルとなるように調整制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 上記調整制御部は、
上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが第1の閾値より大となるときは、上記低周波数帯域信号の出力レベルが一定のレベルに抑制されるように上記低周波数帯域信号のレベルを調整制御し、
上記レベル検出部により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが、上記第1の閾値よりも小なる第2の閾値以下のときは上記高調波信号が出力されないようにし、上記低周波数帯域信号のレベルが上記第2の閾値より大となるときは、上記高調波信号の出力レベルが上記低周波数帯域信号の検出レベルに比例したレベルとなるように調整制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 上記第1のフィルタ部は、上記信号特性として、当該信号処理装置による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を与える
ことを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。 - 上記逆特性は、
予め上記低域信号抽出部で抽出対象とする低周波数帯域をブーストした測定信号を、上記スピーカにより出力させて測定された上記スピーカの特性に基づき算出されたものである
ことを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。 - 上記調整制御部によりレベル調整される前の上記高調波信号に対して所要の信号特性を与える第2のフィルタ部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 上記調整制御部によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算部を備えると共に、
上記第2のフィルタ部は、上記信号特性として、当該信号処理装置による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を上記高調波信号に対して与える
ことを特徴とする請求項8に記載の信号処理装置。 - さらに、上記調整制御部によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算部と、
上記加算部によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、当該信号処理装置による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を与える第1のフィルタ部と、
上記加算部によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、所要の信号特性を目標特性とした等化処理を行う等化処理部とを備えると共に、
上記第2のフィルタ部は、上記信号特性として、上記等化処理部の目標特性の逆特性としての信号特性を上記高調波信号に対して与える
ことを特徴とする請求項8に記載の信号処理装置。 - 入力オーディオ信号の低周波数帯域信号を抽出する低域信号抽出手順と、
上記低域信号抽出手順により抽出した低周波数帯域信号の高調波信号を生成する高調波生成手順と、
上記低域信号抽出手順により抽出した低周波数帯域信号のレベルを検出するレベル検出手順と、
上記低域信号抽出手順により抽出した上記低周波数帯域信号のレベルと上記高調波生成手順により生成した上記高調波信号のレベルを、上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルに応じて調整制御する調整制御手順と
を備えることを特徴とする信号処理方法。 - さらに、上記調整制御手順によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算手順と、
上記加算手順によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、所定の信号特性を与える第1のフィルタ手順とを備える
ことを特徴とする請求項11に記載の信号処理方法。 - 上記調整制御手順は、
上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが所定の閾値より大となるときは、上記低周波数帯域信号の出力レベルが一定レベルに抑制されるように上記低周波数帯域信号のレベルを調整制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の信号処理方法。 - 上記調整制御手順は、
上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが所定の閾値以下のときは、上記高調波信号が出力されないようにし、上記低周波数帯域信号のレベルが上記所定の閾値より大となるときは、上記高調波信号の出力レベルが上記低周波数帯域信号の検出レベルに比例したレベルとなるように調整制御を行う
ことを特徴とする請求項11に記載の信号処理方法。 - 上記調整制御手順は、
上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが第1の閾値より大となるときは、上記低周波数帯域信号の出力レベルが一定のレベルに抑制されるように上記低周波数帯域信号のレベルを調整制御し、
上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルが、上記第1の閾値よりも小なる第2の閾値以下のときは上記高調波信号が出力されないようにし、上記低周波数帯域信号のレベルが上記第2の閾値より大となるときは、上記高調波信号の出力レベルが上記低周波数帯域信号の検出レベルに比例したレベルとなるように調整制御を行う
ことを特徴とする請求項11に記載の信号処理方法。 - 上記第1のフィルタ手順は、上記信号特性として、当該信号処理方法による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を与える
ことを特徴とする請求項12に記載の信号処理方法。 - 上記逆特性は、
予め上記低域信号抽出手順で抽出対象とする低周波数帯域をブーストした測定信号を、上記スピーカにより出力させて測定された上記スピーカの特性に基づき算出されたものである
ことを特徴とする請求項16に記載の信号処理方法。 - 上記調整制御手順によりレベル調整される前の上記高調波信号に対して所要の信号特性を与える第2のフィルタ手順をさらに備える
ことを特徴とする請求項11に記載の信号処理方法。 - 上記調整制御手順によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算手順を備えると共に、
上記第2のフィルタ手順は、上記信号特性として、当該信号処理方法による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を上記高調波信号に対して与える
ことを特徴とする請求項18に記載の信号処理方法。 - さらに、上記調整制御手順によりレベル調整された上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記入力オーディオ信号とを加算する加算手順と、
上記加算手順によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、当該信号処理方法による出力信号に基づく音響再生を行うスピーカの特性の逆特性としての信号特性を与える第1のフィルタ手順と、
上記加算手順によって上記低周波数帯域信号と上記高調波信号と上記オーディオ信号とが加算された信号成分に対して、所要の信号特性を目標特性とした等化処理を行う等化処理手順とを備えると共に、
上記第2のフィルタ手順は、上記信号特性として、上記等化処理手順の目標特性の逆特性としての信号特性を上記高調波信号に対して与える
ことを特徴とする請求項18に記載の信号処理方法。 - 入力オーディオ信号の低周波数帯域信号を抽出する低域信号抽出処理と、
上記低域信号抽出処理により抽出した低周波数帯域信号の高調波信号を生成する高調波生成処理と、
上記低域信号抽出処理により抽出した低周波数帯域信号のレベルを検出するレベル検出処理と、
上記低域信号抽出処理により抽出した上記低周波数帯域信号のレベルと上記高調波生成処理により生成した上記高調波信号のレベルを、上記レベル検出手順により検出される上記低周波数帯域信号のレベルに応じて調整制御する調整制御処理と
を信号処理装置に実行させるプログラム。
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