JP2009045216A - 車両用のシート固定具及び車両用シートクッション - Google Patents

車両用のシート固定具及び車両用シートクッション Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、シートクッションの床パネルに対する確実な固定を実現するにも拘らず、取り外しが容易に行うことができるシート固定具を提供することにある。また、金属製のフレームの有無に拘らずパッド部材に埋設して用いることができ、パッド部材の軽量化を可能とする合成樹脂製シート固定具を提供することにある。
【解決手段】本発明のシート固定具24は、全体を合成樹脂により形成し、その基体をなすピラー部31の先端部には先端側に基部35aを有する板状の可動片35が設けられている。その可動片35には車両の床パネル27の下面に掛止される爪部36が設けられ、また、可動片35は基部以外の部分がピラー部31とスリット34を介して離間している。そして、可動片35は、爪部36が形成された位置から更に延長され、そこに受圧部20が形成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両用シートのシート固定具及び車両用シートクッションに係り、詳しくは車両用リアシートのシート固定具及び車両用リアシートクッションに関する。
従来、車両用シートクッションのパッドとしては、ポリウレタン原料を成形型を用いて発泡成形した軟質ウレタンフォームのパッド部材が利用されている。このパッド部材を成形する際に、金属線等を枠状に折曲形成したフレームをインサートし、フレームを埋設して一体成形していた。また、このシートクッションを車体の床パネルに固定するためのU字形状のフックを、フレームの所定個所に溶接付けして下方に突出するように設けていた。前記シートクッションの車両の床パネルに対する固定は、床パネルに設けられた受け具の内部にフックを弾発的に嵌め込むことにより行われ、シートクッションは着脱可能となっている(特許文献1参照)。
また、どちらかといえば車両用フロントシートクッションに関わるものではあるが、弾性金属板材をプレス成形した弓形の係止部を有する固定クリップを、保形用ワイヤーにスポット溶接し、そのワイヤーを埋設してパッド部材を一体発泡成形した技術が開示されている(特許文献2参照)。このシートクッションの車両の床に設けられたフレームに対する固定は、前記固定クリップを、その弾性変形を利用してフレームのストッパー部に係合されることにより行われる。また、シートクッションをフレームから取外す際は、シートクッションの裏側からストッパー部を内側に撓ませて係合を解くことになる。この裏側からの作業が可能となる場合は、リアシートについては裏側からの作業は通常不可能なので、一般的にはフロントシートに限る。
実開昭62−17961号公報(図2参照) 実開平3−122741号公報(図2、3参照)
ところが、上記特許文献1に開示されている従来技術においては、シートクッションの床面に対する固定が、床パネルに設けられた受け具の内部にフックを弾発的に嵌め込むことにより行われるため、予期せぬ外力の作用で外れることの不安が拭い切れない。また、床パネルに専用の受け具を設置しなければならず、部品点数の増加といった問題もある。
その点、特許文献2に開示されている固定クリップを用いた固定方法は、前記フレームのストッパー部を意図的に撓ませることにより初めて係合が解かれるので、上記不安は極めて小さいといえる。しかし、リアシートクッションに用いた場合、床面からの取り外しについては、その方法が見つからない。
また、いずれの特許文献に開示されている技術も、パッド部材の中に金属製のフレームを埋設し、そのフレームに固着したフックや固定クリップを用いてシートクッションを床面に固定している。一般にフレームを形成する金属について、ポリウレタン原料は高い接着性を発揮する。そのため、使用済みのシートクッションの解体に伴うパッド部材の廃棄処理に際して、金属フレームとウレタン発泡体との分離は多大な工数が伴う作業となり問題となっている。
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、シートクッションの床パネルに対する確実な固定を実現するにも拘らず、取り外しが容易に行うことができるシート固定具を提供することにある。
また、金属製のフレームの有無に拘らずパッド部材に埋設して用いることができ、パッド部材の軽量化を可能とする合成樹脂製シート固定具を提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に記載のシート固定具の発明は、全体を合成樹脂により形成し、シートクッションを車体の床面に固定する為の固定具であって、その固定具の基体をなすピラー部の先端部には先端側に基部を有する板状の可動片が設けられ、その可動片には前記床面の一部をなす床パネルの下面に掛止される爪部が設けられ、また、前記可動片は、前記基部以外の部分が前記ピラー部とスリットを介して離間しており、前記爪部が形成された位置から前記先端側とは逆方向へ延長されて受圧部が形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシート固定具において、前記ピラー部の外周面には、そのピラー部の軸方向に前記爪部から前記床パネルの厚さに相当する間隔を隔てて、フランジ部が形成されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシート固定具において、前記フランジ部とピラー部の外周面との間にガイドリブが設けられたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載のシート固定具において、前記ピラー部の基端部には、前記シートクッションのパッド内に埋設される板状のアンカー部が設けられ、そのアンカー部に透孔が設けられたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のシート固定具において、前記アンカー部とフランジ部の間において、前記ピラー部の外周面にはその軸方向に対して直交する方向に延在する蓋板部が形成されたことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載のシート固定具において、前記ピラー部は、筒状に形成されると共にその内部には両端開口間を閉鎖するための閉鎖板部が設けられたことを特徴とするものである。
請求項7に記載の車両用シートクッションの発明は、シートクッションのパッドの底部に、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載のシート固定具のピラー部が、少なくとも前記可動片及び先端部が露出状態となるように埋設されたことを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両用シートクッションにおいて、前記シートクッションは車両のリアシートのシートクッションであって、前記可動片が車両前部を向くように配置されていることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の車両用シートクッションにおいて、前記シートクッションのパッドの底部には、前記可動片の受圧部に工具を案内する案内溝が形成されていることを特徴とする。
(作用)
本発明のシート固定具は、全体を合成樹脂により形成し、その基体をなすピラー部の先端部には先端側に基部を有する板状の可動片が設けられている。その可動片には車体の床面の一部をなす床パネルの下面に掛止される爪部が設けられている。また、前記可動片は前記基部以外の部分が前記ピラー部とスリットを介して離間している。そのため、前記シート固定具を用いてシートクッションを車体の床面に固定する際、爪部は前記床パネルの下側に隠れるが、爪部より先に延長されて形成される受圧部は床パネルより上に突出する。工具等を用いてその受圧部を、爪部と床パネルとの係合が解かれる方向に押せば、基部のみがピラー部と連結している可動片は撓んで、爪部と床パネルとの係合が容易に解かれる。更に、可動片の爪部の先が延長されて受圧部が形成されていれば、その受圧部を押すことにより、支点である基部と力点である受圧部の間に存在する作用点である爪部は、床パネルとの係合をより一層容易に解かれることになる。
本発明によれば、シートクッションの床パネルに対する確実な固定を実現するにも拘らず、取り外しが容易に行うことができるシート固定具及びそのシート固定具の一部が埋設された車両用シートクッションを提供することができる。また、金属製のフレームの有無に拘らずパッド部材に埋設して用いることができ、パッド部材の軽量化を可能とする合成樹脂製シート固定具を提供することができる。
(第1の実施形態)
以下に、この本発明を具体化したシート固定具及び車両用シートクッションの一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の車両用シートクッション21は、ウレタンフォームよりなるパッド22と、そのパッド22の外面に被覆された表皮23とを備えている。前記表皮23は、図示はしないが、表面側のファブリックや皮革等よりなる表皮材と、裏面側に発泡ウレタン等よりなるスラブがラミネートされたものとにより二層の積層体である。
パッド22の底部前縁における左右両側の2箇所には、凹部22aが形成されている。これらの凹部22aの内底面の位置において、パッド22にはそれぞれ合成樹脂製,例えば一般的なオレフィン系(ポリプロピレン等)の合成樹脂よりなるシート固定具24が基端部である上端部において埋設されている。凹部22aとパッド22の底部前端との間には後述する可動片35の受圧部20に工具を案内する案内溝22bが形成されている。
パッド22の後部下端であって、その中央部には、合成樹脂製,例えばポリプロピレン製のシート補助固定具25が基端部である前端部において埋設されている。図4に示すように、前記シート補助固定具25は、下面を開放した逆チャンネル状に形成されている。このシート補助固定具25の基端部には、複数の透孔26が形成されている。そして、シート補助固定具25の基端部がパッド22の後部に埋設成形される際に、図2に示すように、パッド22のウレタンフォームが各透孔26内に進入する。この進入により、シート補助固定具25がパッド22に対して抜け止め固定される。
そして、図2及び図3に示すように、車両用シートクッション21が車体の床パネル27上に載置されたとき、各シート固定具24の先端部が床パネル27上の掛止部としての固定孔28に嵌合される。この嵌合により、車両用シートクッション21の前部が床パネル27に対して固定保持される。それとともに、シート補助固定具25がシートバック29にて押圧されることにより、車両用シートクッション21の後部の浮き上がりが抑制される。なお、27aは床パネル27上に敷設されるカーペットを示す。
次に、前記シート固定具24の構成及びそれと関連する部分の構成について詳細に説明する。
図5〜図8に示すように、このシート固定具24には、両端を開口し、基端部においてパッド22内に埋設され、シート固定具24の基体をなす四角筒状のピラー部31が設けられている。ピラー部31の基端縁には、そのピラー部31の延長方向と直交する方向に延びる板状のアンカー部32が一体に形成されている。アンカー部32には、複数の透孔33が形成されている。そして、シート固定具24のピラー部31の基端部がパッド22の底部に埋設成形された状態においては、図3に示すように、アンカー部32がパッド22のウレタンフォーム内にほぼ水平な面内に位置するように埋設されるとともに、各透孔33内にウレタンフォームが進入する。従って、このアンカー部32の埋設状態では、アンカー部32によるアンカー効果が発揮されて、シート固定具24のピラー部31がパッド22に対して強固に抜け止め固定される。
図3〜図8に示すように、前記ピラー部31の先端部の前壁には、ほぼ逆U字状のスリット34を形成することにより、ピラー部31の先端側に基部35aを有する可動片35が切り抜き形成されている。可動片35の外面には、爪部36が突出形成されるとともに、その下部には案内斜面36aが形成されている。可動片35は爪部36よりも先(先端側とは逆方向)に延長されてその延長部分に受圧部20が形成されている。図8に示すように、この爪部36の上方において、同爪部36に対してピラー部31の軸方向に所定間隔Lをおいて対応するように、ピラー部31の可動片35を除いた部分の外周面には前記アンカー部32と平行をなすフランジ部37が一体に形成されている。前記所定間隔Lは、前記床パネル27の厚さに相当する。フランジ部37は、前記アンカー部32より小面積である。また、フランジ部37の下面とピラー部31の外周面との間には、斜面38aを有する複数のガイドリブ38が一体形成されている。このガイドリブ38は、シート固定具24におけるピラー部31の先端部が床パネル27の固定孔28内に挿入されるとき、固定孔28の内縁部に斜面38aが当接摺動して、同先端部を固定孔28の所定位置に案内することができる。そして、図3に示すように、車両用シートクッション21が床パネル27上に載置されて、各シート固定具24におけるピラー部31の先端部が床パネル27の固定孔28内に挿入されたとき、前記案内斜面36aが固定孔28の内縁部に当接し摺動する。このため、その案内斜面36aの作用により、可動片35が自身の弾性に抗して変形して、シート固定具24の固定孔28内の通過が許容される。次いで、その固定孔28の開口周縁においてフランジ部37が床パネル27の上面に当接されるとともに、爪部36が前記可動片35の弾性により床パネル27の下面に着脱可能に掛止される。従って、この状態においては、床パネル27が前記爪部36とフランジ部37との間に挟持される。
図3〜図8に示すように、前記アンカー部32と爪部36との間においてピラー部31には、アンカー部32と平行をなす蓋板部39が一体に形成されている。この蓋板部39はアンカー部32より小さく、前記フランジ部37より広い面積を有している。蓋板部39の外周縁には、3つのほぼ半円状の位置決め凹部40が形成されている。この位置決め凹部40は、蓋板部39の前縁左右に2箇所,後縁中央に1箇所形成されている。位置決め凹部40は、蓋板部39の対向辺において非対称状に配置されている。蓋板部39と対応するようにピラー部31の内周面には、閉鎖板部39aが形成され、この閉鎖板部39aによりピラー部31の内部が両端開口間において区画されて閉鎖されている。そして、パッド22にシート固定具24を埋設して一体成形するに際して、図9〜図12に示すように、後述する成形用金型41の成形面41aにシート固定具24をセットする場合に、この蓋板部39上の位置決め凹部40が成形面41a上の3つの位置決めピン43に係合される。この状態においては、成形用金型41の凹所42の開口が蓋板部39及び閉鎖板部39aにより閉鎖されて、ピラー部31の内外において凹所42内,すなわちピラー部31の先端部側へのウレタンフォームの流入が抑制される。
次に、前記シート固定具24をパッド22に埋設成形するための金型の構成及び成形方法について説明する。なお、シート固定具24は発泡成形型の上型にセットされることが一般的であるが、各図においては理解しやすいように上下逆にして描いている。
図9に示すように、成形用金型41の成形面41aにおいて、パッド22の凹部22aを成形する箇所には、シート固定具24をセットするための凹所42が形成されている。凹所42の開口周縁において成形用金型41の成形面41a上には、シート固定具24の蓋板部39上の位置決め凹部40に係合可能な3つの位置決めピン43が突出形成されている。
そして、成形用金型41の凹所42にシート固定具24をセットする場合には、図10に示すように、シート固定具24のピラー部31の先端部を凹所42内に挿入する。その後、シート固定具24側の各位置決め凹部40を成形面41a側の各位置決めピン43に係合させると、図11に示すように、シート固定具24がピラー部31の先端部を凹所42内に突出させた所定のセット位置に係止保持される。この状態においては、シート固定具24の蓋板部39により、成形用金型41の凹所42の開口端部が閉鎖される。
この場合、3箇所の位置決め凹部40と、それと対応する位置決めピン43とが前部側に2箇所,後部側に1箇所配置されて、前後において非対称配置になっている。このため、シート固定具24が成形用金型41の凹所42に所定の向き(可動片35の爪部36が車両前部を向く方向)で位置決めされ、凹所42に対してシート固定具24が誤った取付方向にセットされることを防止することができる。また、3つの位置決めピン43と位置決め凹部40との係合により、シート固定具24が成形用金型41の成形面41aに対して3点支持で係止されるため、シート固定具24を所定のセット位置に安定状態で保持することができる。
そして、この状態で、成形用金型41の成形面41aを閉じた後に、図11に鎖線で示すように、成形用金型41内でウレタンフォームを発泡させて、パッド22を成形すると、そのパッド22の凹部22aの部分において、シート固定具24のピラー部31の基端部がパッド22内に埋設される。この場合、成形用金型41側の凹所42の開口端部がシート固定具24の蓋板部39により閉鎖されるとともに、ピラー部31の内部が閉鎖板部39aにより閉鎖されているため、ウレタンフォームがシート固定具24のピラー部31の先端部側に流入する虞はない。よって、図12に示すように、シート固定具24をパッド22に対して、ピラー部31の先端部がパッド22の底部から外方に突出した状態で埋設成形することができる。そして、この状態では、蓋板部39の一側面がパッド22の凹部22aの内底面の一部を形成する。ここで、パッド22の凹部22aを成形するために、成形用金型41のパッド凹部成形面は、凸状となっている。そして、この凸状をパッド前端部まで連続させることでパッドに案内溝22bを形成する。
また、この成形時においては、図12に示すように、シート固定具24のアンカー部32がパッド22のウレタンフォーム内に埋設されるとともに、各透孔33内にウレタンフォームが進入した状態で成形される。このため、シート固定具24のピラー部31をパッド22に対して強固に抜け止め固定することができる。
その後、図12に示すように、パッド22を成形面41aから脱型させると、シート固定具24側の各位置決め凹部40が成形面41a側の各位置決めピン43から離脱される。この場合、各位置決め凹部40が半円形状に形成されているため、例えば成形用金型41が図12において下方位置を中心に脱型回動された場合でも、各位置決めピン43が位置決め凹部40内から逃げるようにして脱出する。よって、各位置決め凹部40を各位置決めピン43から容易に離脱させることができる。
ちなみに、シート固定具24側に位置決め凹部40ではなく、複数の位置決め孔を形成して、それらの位置決め孔を成形面41a側の各位置決めピン43に係合させるように構成した場合には、前記位置決め孔と各位置決めピン43との干渉により、成形用金型41の脱型回動時に、各位置決め孔を各位置決めピン43から離脱させることが困難になる。そして、その離脱時に合成樹脂よりなるシート固定具24が位置決めピン43とのこじれによって傷付くおそれがある。これを防止するためには、前記位置決め孔を位置決めピン43の径よりも大きくする必要があるが、このようにすると、シート固定具24の位置精度を確保できない。
なお、表皮23は、成形用金型41(下型)内にセットされて、その表皮23内においてパッド22が成形されることにより、パッド22の外面に装着されるようにしても、あるいはパッド22の成形後にそのパッド22に被せるようにしてもよい。
このようにして、作製された車両用シートクッション21は、シート固定具24を床パネル27の固定孔28内に挿入すれば、フランジ部37が床パネル27の上面に当接するとともに、可動片35の爪部36が床パネル27の下面に係合して、フランジ部37と爪部36との間に床パネル27が挟持される。従って、この状態では、車両用シートクッション21は車室内の所定位置にセットされる。
また、車両用シートクッション21の清掃等のために、車両用シートクッション21を床パネル27から取り外す場合には、パッド22に形成された案内溝22bにドライバ等の道具を差し込んで可動片35の受圧部20を押してその弾力に抗して撓ませれば、爪部36が床パネル27の下面から外れる。このとき、受圧部20を押すことにより、支点である基部35aと力点である受圧部20の間に存在する作用点である爪部36は、床パネルとの係合を比較的小さな力で解かれる。従って、この状態でシート固定具24を固定孔28から引き抜けば、車両用シートクッション21を床パネル27上から取り外すことができる。
そして、この実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1)ピラー部31の先端部の前壁に、その先端側に基部35aを有し、その基部35a以外の部分がスリットにより前壁と離間している可動片35が形成されている。その可動片35の外面には、爪部36が突出形成される。更に、可動片35は爪部36よりも先に延長されて受圧部20が形成されている。従って、シート固定具24を用いて車両用シートクッション21を車体の床パネル27に固定する際、可動片35の受圧部20が床パネル27より上に位置する。そのため、シート固定具24を床パネル27から取り外す際、工具を用いて受圧部20を押すことにより、可動片35を比較的小さな力で撓ませることができる。
(2)ピラー部31の基端部に形成されたアンカー部32が車両用シートクッション21のパッド22の底部に埋設されている。そして、ピラー部31の先端部には、床パネル27の固定孔28に係止可能な爪部36が形成されている。このため、シート固定具24を固定孔28に挿入することにより、床パネル27側に合成樹脂製の受け部材等を設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
(3)パッド22内に金属製の枠状ワイヤを埋設する必要がないため、車両用シートクッション21全体の重量を軽減することができる。
(4)シート固定具24を、一般的なポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を用いれば、シート固定具24をウレタンフォームよりなるパッド22から容易に剥離させることができる。従って、パッド22を廃棄処理する際には、分別処理が容易になり、廃棄処理に要する手間を軽減できる。
(5)アンカー部32をピラー部31の延長方向と直交する方向に延びる板状に形成するとともに、そのアンカー部32に透孔33を形成しているため、そのアンカー部32がアンカー効果を有効に発揮する。このため、シート固定具24をパッド22に対して適切な強度で固定できる。
(6)アンカー部32と爪部36との間において、ピラー部31にその延長方向に対して直交する方向に延びる蓋板部39が形成されている。このため、パッド22の成形に際して、この蓋板部39が成形用金型41の凹所42を閉鎖する。このため、シート固定具24の先端部がパッド22内に埋設されることなく、その先端部をパッド22の底面から突出させて、車両用シートクッション21の固定機能を発揮させることができる。
(7)爪部36と蓋板部39との間に床パネル27の厚さに相当する間隔Lを隔ててフランジ部37が形成されている。このため、フランジ部37が床パネル27の上面に当接するとともに、その床パネル27がフランジ部37と爪部36との間に挟持されるため、シート固定具24を床パネル27に対して強固に固定できる。
(8)フランジ部37とピラー部31の外周面との間にガイドリブ38が設けられている。従って、シート固定具24の先端部を床パネル27の固定孔28に挿入する際、ガイドリブ38の斜面38aが固定孔28の内縁部に当接摺動して、シート固定具24を固定孔28の所定位置に案内できる。
(9)ピラー部31を筒状に形成するとともに、そのピラー部31内にはその両端開口間を遮断するための閉鎖板部39aが形成されている。従って、シート固定具24を軽量化できるとともに、パッド22の成形に際して、ウレタンフォームがピラー部31の内側から外部に漏洩することを防止できる。
(10)閉鎖板部39aは蓋板部39と対応する位置に設けられているため、蓋板部39との協働によりピラー部31の強度を高めることができる。
(11)ピラー部31の壁部にスリット34を形成することにより爪部36を有する可動片35を形成し、閉鎖板部39aがスリット34よりもアンカー部32側に配置されている。このため、スリット34により可動片35を形成されていても、パッド22の成形に際してウレタンフォームがスリット34から漏洩することを防止できる。
(12)蓋板部39の外周縁に位置決め凹部40が形成されているため、シート固定具24を成形用金型41の所定位置に対して、位置決め凹部40と位置決めピン43との係合を利用して正確に位置決めできる。
(13)前記位置決め凹部40が蓋板部39の対向する2箇所の外周縁に非対称状に形成されているため、シート固定具24の装着方向の間違えを未然に防止できる。
(14)パッド22の底部に凹部22aを形成し、シート固定具24がその凹部22aの箇所に設けられている。このため、蓋板部39が凹部22aの内底面に露出していても、その蓋板部39が床パネル27と接触することを防止でき、床パネル27との接触による蓋板部39の割れ等の損傷を防止できる。
(15)パッド22の底部に、その前端から凹部22aまで連続した案内溝22bが設けられている。その案内溝22bにより差し込まれた工具が案内されるため、受圧部20に対して工具を容易に当接させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化したシート固定具の第2実施形態を図13〜図17を用いて説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態のシート固定具24において蓋板部39及び閉鎖板部39aを設けないように変更したことのみが異なる構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図13〜15に示すように、本実施形態のシート固定具50のピラー部31には、成形用金型41の凹所42へセットしシートクッション21を一体発泡成形する際、ウレタンフォームが流入しないための蓋板部39及び閉鎖板部39aが設けられていない。従って、シート固定具50を、その先端部を露出した状態でパッド22に埋設されるように一体成形するためには、図16及び17に示すようにシール材51を用いる必要がある。このシール材51は、例えばシリコンゴムのようにポリウレタン原料に対して非接着性又は難接着性を有する弾性体であればいずれのものも用いることができる。成形用金型41へのセットに先立ってシート固定具50の所要個所にシール材51を装着し、図16に示すように、そのシール材51が装着されたシート固定具50を成形用金型41の凹所42へセットすれば、ポリウレタン原料はシール材51より先の凹所42内へ侵入することがない。
シート固定具50の成形用金型41に対する位置決めは、凹所42の底部に立設された位置決めピン52に対しシート固定具50のピラー部31の内周面を嵌合させることにより行われる。位置決めピン52とピラー部31の内周面とのシールは必要に応じて行うことになる。仮に、薄くバリが入ったとしても、シート固定具50としては機能上の問題にはならない。当然のことながら、位置決めピン52の表面は離型剤の塗布等の処理が必要となる。また、シート固定具50の方向性に関わる位置決めは、凹所42に設けられた位置決めリブ53を用いて行われる。シート固定具50の凹所42に対するセットが、間違った方向を向いて行われようとしても、ガイドリブ38と位置決めリブ53とが互いに干渉して、シート固定具50は凹所42の底部に達する深さまで挿入されることがない。
シール材51は、パッド22が脱型された際、シート固定具50から外し再利用することになる。シート固定具50に対するシール材51の着脱は工数がかかるものではあるが、シート固定具50を成形するための型構造が簡略化され型製造費が節約できる利点もあり、トータルコストは必ずしも増大するとは限らない。
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(16)シート固定具50には蓋板部39及び閉鎖板部39aを設けないことにして、代わりにシール材51を用いている。シート固定具50をセットした凹所42へポリウレタン原料が浸入することをシール材51により防止するようにした。従って、シート固定具50を成形するための成形型の構造が複雑にならないため、成形型製作費を低減化することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化したシート固定具の第3実施形態を図18〜図20を用いて説明する。なお、第3実施形態は、第1実施形態のシート固定具24及び第2実施形態のシート固定具50が合成樹脂の一体成形品であるのに対し、シート固定具60を二つの成形品の組立品であるように変更したことが異なる。そのため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図18に示すように、本実施形態のシート固定具60は、シート固定具50のピラー部31を分割し互いに嵌合組立ができるようにした構成であり、上半体61と下半体62とからなる。上半体61と下半体62とは、下半体62の爪部64aが上半体61の爪受け部65に掛止されることにより係合されている。この嵌合組立は、パッド22に埋設された上半体61のピラー部69の内部に対して下半体62のピラー部67を挿入して行われる。
図19(a)に示すように、上半体61は板状のアンカー部32と下半体62に外嵌されるピラー部69とからなっている。ピラー部69の所定個所には下半体62の爪部64aが掛止される爪受け部65が形成されている。図19(b)及び図20に示すように、下半体62には、シート固定具24が備えていた閉鎖板部39aは存在しないが、蓋板部39は全く存在しないわけではなく、上半体61の下端を受けて位置決めする段部63としてその一部を残している。爪部64aは、上半体61のピラー部69に内嵌するピラー部67の一部にスリット68で離間して設けられた掛止片64の上部に形成され、掛止片64は、ピラー部69の対辺の位置の二ヶ所に設けられている。そのため、ピラー部67がピラー部69に挿入される場合、掛止片64は容易に撓むことができて、爪部64aが爪受け部65に臨む位置まできたとき、爪部64aが爪受け部65に対し適切に掛止される。
シートクッション21の成形について説明する。パッド22にシート固定具60を埋設状態に一体成形する場合は、組立されたシート固定具60ではなく、上半体61のみが成形用金型41にセットされシートクッション21が発泡成形される。そのセットは、ピラー部69の内周面とほぼ同一形状のピン(図示せず)を成形面41aから突出するように立設し、そのピンにピラー部69を外嵌し、ピラー部69の先端部66を成形面41aの内底面に当接させて行われる。そして、パッド22に埋設された上半体61はアンカー部32とピラー部69の外周面が発泡体で覆われる。シートクッション21の成形後、上半体61に下半体62が組み付けられる。その際、爪受け部65が発泡体で充填されていても、発泡体と爪受け部65の壁面との接着力は強くないので、上半体61と下半体62の組立時に爪部64aが発泡体を押し退けることになり、爪部64aの掛止に発泡体が障害となることはない。
従って、第3の実施形態によれば、第1及び第2の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(17)シート固定具60を上半体61と下半体62とからなる組立品とし、上半体61の構造を簡単なものとした。そのため、上半体61をセットする成形用金型41の構造も極めて簡単なものとなり、上半体61のセットが容易にできるばかりか、成形用金型41の製作費の低減化もできる。
(変更例)
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・凹部22aとパッド22の底部前端との間に可動片35の受圧部20に工具を案内する案内溝22bを形成したが、案内溝22bはドライバーの挿入を許容する程度の左右幅あるいは上下幅のスリットであってもよい。また、案内溝22b自体が形成されなくてもよい。案内溝22bがないときは、パッド22の前側底部の一部を押し上げて工具を差し込むことができるからである。
・シート固定具50およびシート固定具60において、それぞれのアンカー部32は、ピラー部31の内側及びピラー部69の内側を全開放するようにしたが、ピラー部31の内側の一部が開放されるようにアンカー部32をピラー部31の内側に延在させてもよい。その際、ピラー部31及びピラー部69を位置決めする成形型のピンの高さを適宜低くすれば、ポリウレタン原料がピラー部31及びピラー部69の内側に侵入し発泡体で充填する。そのため、アンカー部32のアンカー効果が高められ、シート固定具50及びシート固定具60のパッド22に対する固定力が強められる。
・ピラー部31及びピラー部69が四角筒状に形成されているが、四角筒状に代えて円形筒状、あるいは四角形以外の六角筒形状等、他の多角形筒状等に形成してもよい。
第1実施形態のシート固定具を備えた車両用シートクッションを示す斜視図。 図1の車両用シートクッションの一部断面として示す側面図。 床パネルに対する車両用シートクッションの固定状態を示す部分断面図。 同車両用シートクッションに設けられたシート押圧具を示す斜視図。 第1実施形態のシート固定具を上部前側方から見て示す斜視図。 同シート固定具を下部後側方から見て示す斜視図。 同シート固定具を下部前側方から見て示す斜視図。 同シート固定具の断面図。 車両用シートクッションのパッドを成形する成形型の一部を示す斜視図。 同成形型にシート固定具をセットする際の状況を示す部分断面図。 同成形型にシート固定具をセットした状態を示す部分断面図。 シート固定具を埋設したパッドを成形型から脱型する状況を示す一部断面図。 第2実施形態のシート固定具を下部後側方から見て示す斜視図。 同シート固定具を下部前側方から見て示す斜視図。 同シート固定具の断面図。 同シート固定具を成形型にセットした状態を示す一部断面図。 同シート固定具を埋設したパッドを成形型から脱型する状況を示す一部断面図。 第3実施形態のシート固定具の断面図。 (a)は同シート固定具の上半体を示す断面図、(b)は同シート固定具の下半体を示す断面図。 図19のA矢視図。
符号の説明
20…受圧部、21…車両用シートクッション、22…パッド、22b…案内溝、24、50、60…シート固定具、27…床パネル、31…ピラー部、32…アンカー部、34…スリット、35…可動片、35a…基部、36…爪部、37…フランジ部、38…ガイドリブ、39…蓋板部、39a…閉鎖板部

Claims (9)

  1. 全体を合成樹脂により形成し、シートクッションを車体の床面に固定する為の固定具であって、その固定具の基体をなすピラー部の先端部には先端側に基部を有する板状の可動片が設けられ、その可動片には前記床面の一部をなす床パネルの下面に掛止される爪部が設けられ、また、前記可動片は、前記基部以外の部分が前記ピラー部とスリットを介して離間しており、前記爪部が形成された位置から前記先端側とは逆方向へ延長されて受圧部が形成されていることを特徴とするシート固定具。
  2. 前記ピラー部の外周面には、そのピラー部の軸方向に前記爪部から前記床パネルの厚さに相当する間隔を隔てて、フランジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート固定具。
  3. 前記フランジ部とピラー部の外周面との間にガイドリブが設けられたことを特徴とする請求項2に記載のシート固定具。
  4. 前記ピラー部の基端部には、前記シートクッションのパッド内に埋設される板状のアンカー部が設けられ、そのアンカー部に透孔が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載のシート固定具。
  5. 前記アンカー部とフランジ部の間において、前記ピラー部の外周面にはその軸方向に対して直交する方向に延在する蓋板部が形成されたことを特徴とする請求項4に記載のシート固定具。
  6. 前記ピラー部は、筒状に形成されると共にその内部には両端開口間を閉鎖するための閉鎖板部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載のシート固定具。
  7. シートクッションのパッドの底部に、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載のシート固定具のピラー部が、少なくとも前記可動片及び先端部が露出状態となるように埋設されたことを特徴とする車両用シートクッション。
  8. 前記シートクッションは車両のリアシートのシートクッションであって、前記可動片が車両前部を向くように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車両用シートクッション。
  9. 前記シートクッションのパッドの底部には、前記可動片の受圧部に工具を案内する案内溝が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の車両用シートクッション。
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