以下、本発明を、電子写真方式の画像形成本プリンタ装置であるカラーレーザープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ドラム状の感光体4の周囲に、帯電装置5、現像ユニット、転写ユニット24、ドラムクリーニング装置15、除電器22、帯電装置5などを備えている。また、感光体4に対して光走査を行う光書込装置2も備えている。
ドラム状の感光体4は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。このようにして回転駆動される感光体4は、帯電装置5との対向位置で後述するトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめられる。そして、一様帯電後の感光体4の表面には、図示しないレーザー半導体、ポリゴンミラー、集光レンズ、折り返しミラー等を有する光書込装置2によって画像情報に基づいて周知の光走査が行われる。感光体4における光書込装置2による光照射箇所の電位は、一様帯電電位よりも減衰する。これにより、感光体4の周面に、後述するトナーの帯電極性と同極性で且つ一様帯電電位よりも絶対値の低い静電潜像が形成される。
現像ユニットは、静電潜像を黒(以下、Kと記す)トナー、シアン(以下、Cと記す)トナー、マゼンタ(以下、Mと記す)トナー、イエロー(以下、Yと記す)トナーによってそれぞれ現像する4つの現像装置(6K,C,M,Y)を有している。なお、図中の符号の末尾に付されたK,C,M,Yという添字は、K,C,M,Y用の部材であることを意味している。
K,C,M,Y用の現像装置(6K,C,M,Y)には、それぞれ、トナー(K,C,M,Yトナー)と、磁性キャリアとを含有する現像剤が内包されている。そして、これら現像装置はそれぞれ、図示しない駆動手段によって回転駆動される筒状の現像スリーブ(12K,C,M,Y)、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラ(13K,C,M,Y)などを有している。また、内部の現像剤を撹拌するための図示しない撹拌パドルなども有している。撹拌パドルによって撹拌される現像剤は、マグネットローラの発する磁力により、回転駆動される筒状の現像スリーブの表面に汲み上げられる。そして、スリーブ表面上で穂立ちして磁気ブラシを形成しながら、スリーブの回転に伴って感光体4との対向領域である現像領域に搬送される。現像スリーブには、トナーの帯電極性と同極性であって、絶対値が感光体4の地肌部(一様帯電部)と静電潜像との間にある現像バイアスが印加されている。これにより、スリーブ回転に伴って感光体4に接触する磁気ブラシ中のトナーが、磁気ブラシ中から感光体4の静電潜像に転移して、静電潜像がトナー像として現像される。
なお、感光体4には、まず、Y用の静電潜像が形成され、これはY用の現像装置6Yによって現像されてYトナー像となる。これに先立って、K,C,M用の現像装置6K,C,Mにおいては、現像スリーブ上の磁気ブラシをスリーブ表面から離脱させるための穂切り動作が行われた後、現像スリーブの回転駆動が停止される。よって、Y用の静電潜像が、K,C,M用の現像装置6K,C,Mによって現像されることはない。他色用の静電潜像が現像される際にも、その現像に先立って、現像色以外の現像装置で穂切り動作が行われる。
感光体4の図中右側方に配設された転写ユニット24は、ベルト部材たる無端状の中間転写ベルト25、これをループ内周面で支えながら張架する複数の張架ローラ、ベルトループ内側に配設されたホームポジションセンサHsなどを有している。また、ベルトループ外側に配設されたベルトクリーニング装置32、2次転写バイアスローラ31、第1パッチ検知センサPs1、第2パッチ検知センサPs2なども有している。
中間転写ベルト25を張架している複数の張架ローラのうちの1本は、図示しない転写電源によってトナーの帯電極性とは逆極性の1次転写バイアスが印加される1次転写バイアスローラ26となっている。また、他の1本は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられるのに伴って、中間転写ベルトを図中時計回り方向に無端移動させる駆動ローラ27となっている。
1次転写バイアスローラ26は、感光体4との間に中間転写ベルト25を挟み込んでいる。これにより、感光体4と中間転写ベルト25とが当接する1次転写ニップが形成されており、この1次転写ニップ内にはトナーを感光体4側からベルト側に静電移動させる1次転写電界が作用している。感光体4上に形成されたYトナー像は、感光体4の回転に伴って1次転写ニップに進入すると、ニップ圧や、1次転写電界の作用によって中間転写ベルト25のおもて面に1次転写される。
1次転写ニップを通過した後の感光体4の表面には、ベルト上に1次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、クリーニングブレードの自由端側のエッジを感光体4に当接させているドラムクリーニング装置15によって感光体4の表面から除去される。
ドラムクリーニング装置15によるクリーニング処理が施された感光体4の表面は、例えば除電ランプなどからなる除電装置22によって除電された後、帯電装置によって再び一様帯電せしめられる。なお、同図においては、帯電装置として、コロトロンチャージャーあるいはスコロトロンチャージャーからなるものを示したが、帯電バイアスを印加した帯電ローラや帯電ブラシとの間に放電を生じせしめて感光体4を一様帯電せしめる方式など、他の方式のものを採用してもよい。
転写ユニットの中間転写ベルト25の内周面には、周方向の所定の位置にホームポジションマーク25aが付されている。このホームポジションマーク25aは、ベルトループ内側に配設された反射型フォトセンサ等からなるホームポジションセンサHsによってベルト周回毎に検知される。中間転写ベルト25は、自らのホームポジションマーク25aをホームポジションセンサHsに検知させる姿勢となっているときを、無端移動におけるホームポジションとしている。
本プリンタは、機内の各種機器の全体的な駆動の制御を司る図示しない制御部を有している。この制御部は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)、データ記憶手段たる(Random Access Memory)などを有しており、ROM内に記憶されている制御プログラムに基づいて各種の機器の駆動を制御する。そして、中間転写ベルト25にYトナー像が1次転写された後には、ホームポジションマーク25aがホームポジションセンサHsによって検知されたタイミングに基づいて、図示しない書込制御回路に書込開始信号を送る。書込制御回路は、この書込開始信号に基づいて、光書込装置2の駆動を制御して、感光体4にM用の静電潜像を形成するための光走査を開始させる。これによって感光体4に形成されたM用の静電潜像は、M用の現像装置6Mによって現像されてMトナー像となる。そして、1次転写ニップにおいて、ベルト1周分の無端移動によって再び1次転写ニップに戻ってきたYトナー像の上に、感光体4上のMトナー像が重ね合わせて1次転写される。
以降、Mトナー像と同様のプロセスにより、感光体4上にCトナー像、Kトナー像が順次形成され、それらは中間転写ベルト25上のYMトナー像に順次重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト25が約4周する間に、ベルト上に4色重ね合わせトナー像が形成される。
中間転写ベルト25のループ内側でベルトを張架している駆動ローラ27は、ループ外側に配設された2次転写バイアスローラ31との間に中間転写ベルト25を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、2次転写バイアスローラ31とが当接する2次転写ニップが形成されている。また、2次転写バイアスローラ31には、図示しない転写電源によってトナーの帯電極性とは逆極性の2次転写バイアスが印加されており、これによって2次転写ニップには2次転写電界が形成されている。
2次転写ニップの図中右側方には、図示しないレジストローラ対が配設されており、これは記録部材たる記録紙Pをベルト上の4色重ね合わせトナー像に重ね合わせ得るタイミングで2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップ内で4色重ね合わせトナー像に重ね合わされた記録紙Pには、ニップ圧や2次転写電界の作用によってベルト上の4色重ね合わせトナー像が一括2次転写される。これにより4色重ね合わせトナー像は、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過した後、図示しない定着装置内でフルカラー画像が定着せしめられた後、機外へと排出される。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト25の表面には、記録紙Pに2次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルトにクリーニングブレードを当接させているベルトクリーニング装置32によってベルト表面から除去される。かかるベルトクリーニング装置32が、各色トナー像の重ね合わせ1次転写工程の際にも中間転写ベルト25に当接していると、せっかくベルト上に1次転写された各色のトナー像がベルトクリーニング装置32によって除去されてしまう。そこで、本プリンタでは、ベルトクリーニング装置32をベルトに対して接離させる図示しない接離機構を備えており、各色の重ね合わせ1次転写工程の際には、ベルトクリーニング装置32をベルトから離間させるようになっている。
中間転写ベルト25としては、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を主材料とした単層ベルトを例示することができる。また、多層構造のベルトの全層又は一部の層を弾性材料から形成した多層ベルトでもよい。中間転写ベルト25に限らず、画像形成装置に用いられるベルト部材には、複数の機能が要求されるのが一般的である。かかる要求を満足するために、近年においては、ベルト部材として、多層構造のものが主流となりつつある。例えば、中間転写ベルト25では、その表面にトナー離型性、耐久性、耐摩耗性、所定の表面抵抗性などの機能が要求される一方で、ベルトの全厚に対して、抗張性、所定の体積固有抵抗率、良好な弾性変形性などが要求される。
中間転写ベルト25の表面におけるトナー離型性は、ベルト表面から記録紙Pへのトナー像の2次転写性の向上や、ベルト表面からの転写残トナー像のクリーニング性の向上を図る上で、必要な機能である。また、中間転写ベルト25の表面における耐久性は、経時使用に伴う亀裂や磨耗を抑えて長寿命化を図る上で、必要な機能である。また、中間転写ベルト25のおもて面においては、感光体4や2次転写バイアスローラ31との間の滑りを抑えつつ、それらとの摺擦に耐え得るだけの耐摩擦性が要求される。また、中間転写ベルト25の裏面においては、駆動ローラ27との滑りによるベルトスリップを防止しつつ、駆動ローラ27との摩擦に耐え得るだけの耐摩耗性が要求される。また、中間転写ベルト25の全層に対しては、感光体4や2次転写バイアスローラ31に向けての押圧に伴う柔軟な弾性変形によって幅広いニップを形成するような良好な弾性変形性が要求される。更には、ベルト周方向における伸縮を抑えてベルト移動速度やベルト移動位置を高精度に制御できるように、抗張性も要求される。これらの機能を全て満足するためには、多層構造にするのが有利なのである。
図2は、本プリンタに使用される中間転写ベルト25の一例を示す部分分解斜視図である。同図において、中間転写ベルト25は、全層のうちで最も厚みの大きい基層25b、これのおもて面側に順次積層された表面側中間層25c,表面層25d、基層25bの裏面側に順次積層された裏面側中間層25e,裏面層25fからなる5層構造になっている。ベルトの全層を含めた厚みtは、500〜700[μm]である。
ベルトの最もおもて面側に形成された表面層25dは、フッ素を含有するポリウレタン樹脂からなる層であり、表面側中間層25cの上に被覆されている。フッ素を含有するポリウレタン樹脂からなることで、感光体4や2次転写バイアスローラ31に対して良好な耐摩耗性を発揮するとともに、良好なトナー離型性を発揮することができる。
表面層25dの下に形成された表面側中間層25cは、シリコン−アクリル共重合体からなる層であり、基層25bのおもて面側に被覆されている。表面層25dの耐久性を向上させたり、基層25bの経時劣化を抑えたりする役割を担っている。
基層25bは、クロロプレンゴムからなる弾性層であり、厚みが約400〜500[μm]になっている。また、ヤング率が1〜20[Mpa]になっている。良好な弾性を発揮することで、1次転写ニップや2次転写ニップにおいて押圧に伴って柔軟に弾性変形する。これにより、幅広いニップを形成したり、表面平滑性に劣る記録紙Pの表面の微妙な凹凸による間隙形成を回避したりすることで、過剰にニップ圧を高めることなく、文字の中抜けの発生などを抑えることができる。また、表面平滑性に劣る記録紙Pに対しても良好なベルト密着性を発揮させることで、均一性の優れた転写画像を得ることができる。
裏面側中間層25eは、ポリフッ化ビニリデンからなる層であり、厚みが約100[μm]になっている。また、ヤング率が500〜1000[Mpa]になっている。そして、中間転写ベルト25のベルト周方向の伸縮を抑える役割を担っている。
裏面層25fは、裏面側中間層25eのベルト裏面側に被覆されたポリウレタンからなる層であり、駆動ローラ(27)に対する高摩擦性と耐摩耗性とを実現する役割を担っている。なお、図1に示したホームポジションマーク25aは、この裏面層25fの上に形成されている。
中間転写ベルト25の表面層25dや表面側中間層25cについては、弾性変形による感光体4へのトナー汚染を抑えたり、低表面摩擦抵抗によってトナーとの付着力を小さくしてトナークリーニング性を向上させたりする目的で、次の材料を使用してもよい。即ち、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂を1種類又は2種類以上混合した材料である。また、表面エネルギーを小さくして潤滑性を高めるために、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体や粒子を、1種類あるいは2種類以上混合したものを素材樹脂中に分散させた材料を使用してもよい。また、前述の粉体や粒子として、互いに粒径が異なる同種のものを素材樹脂中に分散させた材料でもよい。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成し、表面エネルギーを小さくしたものを使用してもよい。
また、中間転写ベルト25の基層25bの材料としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することもできる。
また、中間転写ベルト25の裏面側中間層25eとしては、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することもできる。
なお、ベルトの伸びを抑える目的で、裏面側中間層25eの材料として上述したような伸びの少ないものを用いる他に、素材樹脂中に、伸びを抑えるための芯材を入れてもよい。伸びを抑えるための芯材としては、綿、絹などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維などの無機繊維、鉄繊維、銅繊維などの金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、これらを織布状あるいは糸状にしたものを用いることができる。もちろん、それらの材料以外のものを使用してもよい。芯材となる糸は、1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸など、どのような撚り方のものであってもよい。また、先に掲げた繊維を混紡してもよい。もちろん、糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。また、織布は、メリヤス織りなど、どのような織り方の織布でもよく、交織した織布であってもよい。更には、それらの織布に導電処理を施すこともできる。
素材樹脂中に芯材を入れる方法としては、筒状に織った織布を金型等に被せてその上から素材樹脂を流し込む方法、筒状に織った織布を素材樹脂に浸漬する方法、糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付けてその上から素材樹脂を流し込む方法などを例示することができる。
中間転写ベルト25を構成する各層の材料には、必要に応じて電気抵抗値を調整するための導電材を含有させる。カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物などからなる導電材である。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。その他の導電材を用いることも、もちろん可能である。
中間転写ベルト25として、単層ベルトからなるものを用いた場合には、ベルトの内周面と外周面とで伸縮度が同じになる。このため、ベルトの移動速度の測定基準となるベルトピッチ線が、図3に点線で示すようにベルト厚み方向の中央の位置になる。しかし、多層構造のベルトを用いた場合には、ベルトピッチ線がベルト厚み方向の中央位置にはならないこともある。多層構造のベルトにおいては、全層のうちに、他の層に比べてヤング率が著しく大きくなっている層がある場合には、ベルトピッチ線がその層の厚み方向の中央位置となるからである。これは、ベルト周方向の伸縮防止のために高いヤング率をもつ層(以下、「抗張層」という。)が芯線となり、他の層が伸縮して張架ローラに巻き付くからである。
先に図2に示した中間転写ベルト25においても、抗張層である裏面側中間層25eが他の層に比べてヤング率が著しく大きくなっているので、この裏面側中間層25eの内部にベルトピッチ線が存在することになる。かかる構成では、裏面側中間層25eのベルト周方向における厚みムラが、ベルト厚み方向における駆動ローラ27の表面からベルトピッチ線までの距離であるピッチ線距離(以下、PLD(Pitch Line Distance)という。)をベルト周方向に不均一にする原因となる。つまり、多層構造のベルトでは、PLDが主に、ベルトを構成する全層のうち、ヤング率が比較的大きい層の影響を受けるのである。
また、抗張層である裏面側中間層25eのベルト厚み方向における相対位置がベルト周方向に不均一になっていることによっても、PLDがベルト周方向において変動する。例えば、裏面側中間層25eと駆動ローラ(27)との間に存在する裏面層25fにベルト周方向における厚みムラがあると、その厚みムラに応じて前述の相対位置がベルト周方向において変化して、PLDを変動させる。また、ベルト周方向において繋ぎ目のあるシームベルトの場合、繋ぎ目の箇所におけるPLDが、他の箇所のPLDとは大きく異なってしまうことがある。これは次に説明する理由による。即ち、シームベルトは、裏面側中間層25eの前駆体であるポリフッ化ビニリデンなどからなるシートに対して種々の処理を施すことで、最終的に多層構造のベルトを得るという方法で製造されるのが一般的である。具体的には、まず、そのシートの長手方向の両端部を互いに2[mm]ほど重ね合わせて溶融接着して、シートを無端状にする。次いで、その無端状のシートの両面にそれぞれ各層を順次被覆していくことで、多層構造のシームベルトを得るのである。かかるシームベルトでは、シート(裏面側中間層25e)の溶融接着部分(繋ぎ目部分)が、溶融による物性変化によって他の部分と伸縮性を異ならせるため、他の部分と同じ厚みであっても、そのPLDが他の部分のPLDから大きく外れる。よって、たとえ裏面側中間層25eや裏面層25fに厚みムラが殆どなくても、PLDが変動する。駆動ローラ(27)が一定線速で回転しても、PLDの変動があればベルトの速度変動が発生してしまう。
なお、繋ぎ目のあるシームベルトには、ベルト周長が互いに異なる製品ごとに固有の金型が必要となる繋ぎ目のないシームレスベルトに比べて、製品毎の金型が必要なく、ベルト周長の調整が自由であるため、製造コストを低減することができるという利点がある。
また、単層ベルトの場合には、上述したようにPLDがベルト厚みの半分となるが、その単層にベルト周方向の厚みムラがある場合には、当然ながらPLDがベルト周方向において変動するため、ベルトの速度変動が発生する。
図4は、単層ベルトにおけるベルト周方向の厚み偏差と、ベルトの周方向における位置との関係の一例を示すグラフである。このグラフの横軸で示される位置は、ベルト1周分の長さ(ベルト周長)を2π[rad]の角度に置き換えたものである。縦軸は、ベルト周方向におけるベルト平均厚み(100[μm])を基準(偏差=0)とした場合のベルト厚みの偏差値を示している。以下、ベルト周方向における厚みムラのあるベルトにおいて、ベルト周方向における1周分の厚み偏差の分布をベルトの「厚み変動」という。この「厚み変動」は、既に述べたように、複数の張架ローラに張架された状態のベルトにおいて、駆動ローラ(27)が等しい回転角速度で回転していても、その「厚み変動」に応じてベルトの速度を変動させてしまう。なお、ベルトの厚みムラとは、膜厚計測器等で測定されたベルトの厚み偏差分布のことであり、ベルト周方向(表面移動方方向)における厚みムラの他、幅方向における厚みムラがある。
PLDは、駆動ローラ(27)に対するベルト巻付角によっても変化することがある。つまり、ベルトの速度変動は、ベルト巻き付き角によっても生ずることがある。PLDについては、次式によって表すことが可能である。
この式中におけるPLDaveは、ベルト1周あたりにおけるPLDの平均を示しており、例えば周方向の平均厚みが100[μm]の単層ベルトの場合、PLDaveは50[μm]となる。また、f(d)は、ベルト1周あたりにおけるPLDの変動を示す関数である。更に、f(d)におけるdは、ベルト周方向における基準点からの位置を、ベルト1周を2πとしたときの位相で示している。f(d)は、図4に示したグラフにおけるベルト厚み偏差値と高い相関を示すベルト1周を周期とする周期関数である。ベルト周方向においてPLDが変動していると、駆動ローラの回転角速度や回転角変位が一定であっても、ベルトループ内でベルトを張架しながらベルトに連れ回る従動ローラの回転角速度や回転角変位が変動する。
ベルト移動速度Vと駆動ローラの回転角速度ωとの間には、次式で示される関係が成立する。
この式中のrは、駆動ローラの半径である。PLDの変動を示しているf(d)がベルトの移動速度(又はベルト移動距離)と駆動ローラの回転角速度(回転角変位)との関係に影響する度合いは、駆動ローラに対するベルトの接触状態や巻付き量によって変化する場合がある。式中のκは、その影響度を反映するPLD変動実効係数を表している。式中における{}内は、ベルトピッチ実効半径であり、その定常部分(r+PLDave)は、ベルトピッチ定常半径である。また、以下、f(d)をPLD変動という。
数2に示した式から、PLD変動f(d)が存在すると、ベルト移動速度Vと駆動ローラの回転角速度ωとの関係が変化することがわかる。駆動ローラが一定の回転角速度(ω=一定)で回転していても、ベルト移動速度VはPLD変動f(d)によって変化するのである。例えば単層ベルトの場合、ベルトの平均厚みよりも厚いベルト箇所が駆動ローラに巻き付いている時には、ベルトの厚み偏差と高い相関を示すPLD変動f(d)が正の値をとり、ベルトピッチ実効半径が増加する。このため、その駆動ローラが一定の回転角速度(ω=一定)で回転していても、ベルト移動速度Vが増加する。逆に、ベルトの平均厚みよりも薄いベルト箇所が駆動ローラに巻き付いている時には、PLD変動f(d)が負の値をとり、ベルトピッチ実効半径が減少する。このため、駆動ローラが一定の回転角速度(ω=一定)で回転していても、ベルト移動速度Vが減少する。従って、駆動ローラの回転角速度ωを一定にしても、PLD変動f(d)によってベルト移動速度Vは一定にならないのである。
また、ベルト移動速度Vと従動ローラの回転角速度との関係も、上述したベルト移動速度Vと駆動ローラ105の回転角速度ωとの関係と同様である。すなわち、従動ローラの回転角速度を回転型エンコーダ等により検出し、フィードバック制御により従動ローラの回転角速度を一定にしても、PLD変動f(d)によりベルト10の移動速度は一定にならない。そのため、フィードバック制御により、駆動ローラの偏心や駆動伝達系のベルト10の速度変動を抑制できても、ベルトPLD変動によるベルト速度変動は抑制することはできない。
上述した特許文献2に記載の画像形成装置においては、ベルトの表面に速度変動検出用のパターン像を転写する際のベルト速度変動の影響と、パターン像をセンサによって検知する際のベルト速度変動の影響とを考慮して、ベルト速度変動を算出している。具体的には、パターン像内のトナーパッチ像の検知間隔に基づいて算出されるパッチ位置変動データΔXsに基づいて、ベルト上に生じた位置ずれΔXを算出している(特許文献2の段落番号0060)。そして、その算出結果に基づいて駆動ローラの駆動速度を制御している(以下、第1手法という)。位置ずれΔXを算出するアルゴリズムは、ベルトの厚み変動による位置変動(又は速度変動)が1次の正弦波形又は、既知の多次の三角関数である場合に適用可能である。
また、特許文献2に記載の画像形成装置においては、ベルトの厚み変動に伴う位置変動を示す波形がベルト1周に対する1次(1周期)の正弦波ではなく、多次(複数周期)である場合に好適な方法として、第2手法が提案されている。この第2手法では、ベルト周長をL、トナー像の転写位置から検知位置までの距離をLy、パターン像におけるトナーパッチ像の間隔をdでそれぞれ表した場合に、L=n×d、Ly=m×dとし、且つ、nとmとを互いに素となる整数とする(特許文献2の段落番号0073〜0084)。
ベルトの製造方法の違いにより、ベルトの厚み偏差分布は様々な形態をとる。また、同じ材質、同じ製法で製造したベルトであっても、製造環境によって厚み偏差分布特性は異なってくる。このため、ベルトの厚み変動パターンを予め知ることは困難である。また、実際にベルトの厚み偏差分布を計測すると、例えば図4に示したような複雑な分布となることがある。このような厚み偏差分布では、ベルト1周を基本周期として高次の複数の周期に分布しているので、1次の正弦波形や、特定の多次の正弦波形のみでは誤差が生じてしまう。さらに、転写性がよいことで用いられる多層構造のベルトでは、ベルト厚み偏差に加えて、基層(芯材)の形成状態でベルト速度変動が複雑に変化する。このため、上記第1手法を適用することができない。
また、ベルト表面に付された目印の検知間隔に基づいてベルト(駆動ローラ)の駆動速度を制御する特許文献1に記載の画像形成装置では、ベルト製造時、特に目印付きの樹脂テープをベルトに接着する際のテープの保持力や接着動作が影響しているため、ベルト全周における目印の間隔の誤差量分布は複雑な特性を示す。よって、上記第1手法を適用することができない。
一方、上記第2手法を用いて、ベルトの移動位置ずれを算出するには、トナーパッチ像の転写位置から検知位置までの距離や、パッチ形成間隔に制約があるため、装置の設計自由度を大きく低下させる。また、ベルトの厚み変動ではない他の変動成分が含まれていると、算出結果が他の変動成分の影響を大きく受けてしまうため、上記第2手法を適用することは難しい。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
本プリンタにおいては、ベルト回転周期を基本周期とした周期が異なる複数の三角関数項を用いてベルト上の位置ずれを算出し、これを基にベルト速度変動(位置変動)による画像形成位置変動を高精度に補正制御する。そこで、設定する三角関数項の数、つまり、ベルト厚み変動の補正周波数帯域を決定する必要がある。
平均厚み0.1[mm]、周長900[mm]の単層ベルトを、直径30[mm]の駆動ローラで駆動した場合における厚み変動の全振幅PPとベルト位置変動振幅との関係の一例を図5に示す。このグラフは、平均厚み、周長及び駆動ローラ直径を基に、駆動ローラを一定角速度で駆動した際のベルト厚み変動によって発生するベルト位置変動の振幅を試算した結果に基づいて作成されたものである。
転写する画像と転写材上の所望の位置を1ヶ所、例えば先頭ラインを合わせても、ベルト速度変動により、他の画像部分は所望の位置より試算された変動量分ずれる可能性があることを示している。ベルトのピッチ線は単層ベルトの場合、厚さ方向中央部になるので、PLD変動は、ベルトの厚み変動の全振幅PPの半分と考えられる。同図には、5本のグラフがあり、それぞれ、ベルト周期における1次から5次成分の正弦波状の全振幅PPと、ベルト位置変動の振幅との関係を示している。図示のように、ベルト周期成分の高次になるほど、ベルト厚み変動に対するベルト位置ずれ量が減少することがわかる。
以下、ベルト周期変動に対する位置ずれの許容配分値を15[μm]とし、後述する駆動速度制御により、各周期の変動成分を厚み変動の全振幅PPで2[μm]相当のベルト位置変動と同等以下までに留め得ることを想定して、検出及び補正する変動周期を1次〜3次成分までとする場合について説明する。1次〜3次成分までを厚み変動の全振幅PPで2[μm]相当のベルト位置変動と同等以下にすると、1次〜3次成分のベルト移動位置における変動振幅の合計は約[9μm]となる。4次以上の周期の変動成分で極端に大きな数値が見られないことを確認して、4次以上の高次の変動成分によって残るベルト移動位置のずれ量は、6[μm]以上にならないと判断した。したがって、本プリンタが実施する後述のベルト駆動速度制御により、合計のベルトの位置変動について許容配分以内に留めることが保証される。
このように、試算されたベルトの周期毎の変動成分によるベルト移動位置ずれ量と、目標値から配分された許容値とに基づいて、検出する変動成分の周期を決定することができる。これによって、無闇に高次成分まで検出することによる高い演算負荷や複雑な補正制御動作を招くことなく、ベルトの速度変動を精度良く検出することが期待できる。
図6は、中間転写ベルト25と感光体4と光走査装置2の一部とを示す斜視図である。同図では、便宜上、第1パッチ検知センサPs1と第2パッチ検知センサPs2とを比較的近い距離関係で示しているが、実際には両センサ間の距離は図示の態様よりも大きくなっている。
像検知手段としての第1パッチ検知センサPs1、第2パッチ検知センサPs2は、照明用光源たるLED素子、ベルト表面上での反射光を受光する受光素子、1対の集光レンズなどを具備する反射型フォトセンサからなる。そして、両センサは互いにベルト周方向の異なる位置でパターン像900内の各トナーパッチ像を検知する。LED素子は、中間転写ベルト25上に向けて光りを照射する。また、受光素子は、中間転写ベルト25上のトナーパッチ像で反射した光が集光レンズ通過後に入射され得る位置に配設されており、多数の受光画素を直線状に配列したライン型受光素子としてのCCDからなる。
なお、第1パッチ検知センサPs1と第2パッチ検知センサPs2との対を、ベルト幅方向の両端部にそれぞれ設け、ベルト両端部にそれぞれパターン像を形成するようにしてもよい。このようにすれば、主走査方向(感光体4や中間転写ベルト25の表面移動方向に対して直交する方向)のレジスト調整、副走査方向(感光体4や中間転写ベルト25の表面移動方向)のレジスト調整、主走査方向の倍率誤差の調整、主走査方向に対する走査ラインの傾きの調整等が可能となる。
図8は、上述した中間転写ベルトの位置変動を検出するために用いる速度変動検知用パターン像の一例を示す模式図である。この速度変動検知用パターン像は、黒、シアン、マゼンタ、イエローのうち、何れか1色のトナーパッチ像を主走査方向に延在させる姿勢で、副走査方向に沿って所定ピッチで複数並べてパターンになっている。かかる速度変動検知用のパターン像における各トナーパッチ像を第1パッチ検知センサPs1や第2パッチ検知センサPs2で順次検知していき、任意の基準タイミングからの検知時間tk00,tk01,tk02,・・・を順次計測していく。
本プリンタでは、中間転写べルト25上のパターン像900における各トナーパッチ像901を、ベルト周方向において互いに異なる位置に配置された第1パッチ検知センサPs1、第2パッチセンサPs2の両方で検知する。任意の基準タイミングとしては、先頭のトナーパッチ像を検知したタイミングなどが挙げられる。具体的には、tk00=0として、検知時間tk01、tk02、tk03…を求める。また、互いに隣接するトナーパッチ像の検知間隔を計測してもよい。例えば、検知時間tk00とtk01との差分、tk01とtk02との差分・・・というように、検知間隔を順次計測していくのである。
図9は、制御部における要部回路を示すブロック図である。制御部は、CPU200に対して、データバスライン230と、I/Oポート205とを介して接続された制御目標値出力部206、第1データ処理部207、第2データ処理部214を有している。第1パッチ検知センサPs1から出力される検知信号は、第1データ処理部207によって処理される。具体的には、検知信号は、AMP209によって増幅された後、パターン像における個々のトナーパッチ像に対応する信号成分のみがフィルタ210を通過する。通過後の信号は、A/D変換回路211によってアナログデータからデジタルデータへと変換される。データのサンプリングは、サンプリング制御部213によって制御され、サンプリングされたデータはFIFOメモリ212に格納される。パターン像の検知が終了すると、FIFOメモリ212に格納されたデータが、I/Oポート205とデータバスライン230を介して、CPU200やROM204にロードされる。そして、ロードされたデータに基づいて、CPU200によって速度変動パターンを解析するための演算処理が行われる。
本プリンタのように、副走査方向に並べた2つのパッチ検知センサ(Ps1、Ps2)によってパターン像の各トナーパッチ像を検知するものにおいては、2つのパッチ検知センサが同時に動作する。このため、第1パッチ検知センサPs1からの出力信号を専用に処理するための第1データ処理部207の他、第2パッチ検知センサPs1からの出力信号を専用に処理するための第2データ処理部214が設けられている。なお、第2データ処理部214内における回路構成の図示を省略しているが、その回路構成は第1データ処理部207と同様である。
制御部は、速度変動パターン検知用のパターン像における個々のトナーパッチ像を検知した結果から、ベルト1周あたりにおける速度変動パターンを求める。そして、その結果に基づいて、トナー像の位置ずれを補正するためのずれ補正データを算出し、算出結果を制御目標値出力部206にロードする。制御目標値出力部206は、その位置ずれ補正データに基づいて、駆動ローラ27の駆動速度を逐次微調整する制御を行うなどしてベルト速度変動を抑えるか、あるいは、光書込タイミングを逐次微調整する制御を行うなどしてベルト速度変動が起こっても、位置ずれを発生させないようにする。
発光量制御部208は、第1パッチ検知センサPs1からの出力信号を適当なタイミングでモニタしており、中間転写ベルト25の表面やパッチ検知センサのLED素子の劣化によってベルト上での光反射性が変動しても、トナーパッチ像を確実に検知し得るように、LED素子の発光量を適宜調整する。これにより、受光素子からの受光信号のレベルが常に一定となるようにしている。また、ROM204には、種々のずれ量を演算するためのプログラムを始め、各種のプログラムが格納されている。また、CPU200は、アドレスバスライン201によって、ROMアドレス、RAMアドレス、各種入出力機器などの指定を行っている。
本プリンタでは、速度変動パターン検知用のパターン像として、図8に示したものを形成する。このパターン像900は、中間転写ベルト25の表面移動方向に沿ってベルト周長よりも長い大きさで形成される。即ち、中間転写ベルト25の表面移動方向におけるサンプリングパターン長Plは、中間転写ベルト25の周長以上になっている。
各トナーパッチ像901の形成間隔であるパッチ間隔Piについては、中間転写ベルト25上にトナーパッチ像を1次転写したり、それを検知したりする際に発生するベルト以外の速度変動の周期を考慮して設定する必要がある。ここで言うベルト以外の速度変動の周期としては、駆動ローラ27の回転周期、駆動ローラ27に駆動力を伝達する歯車のピッチ誤差や偏心成分、感光体4の回転周期、感光体4に駆動を伝達する歯車の回転周期などが挙げられる。パッチ検知センサによる検知データには、それらの周波数の全てが重畳されており、その中から、中間転写ベルト25の速度変動に由来するものだけを検出する必要がある。
ベルトの速度変動や位置変動(移動位置が本来の移動位置からずれること)を高精度に検出するためには、パッチ間隔Piをできるだけ短くすることが望ましい。また、サンプリングパターン長Plは、ベルト以外の検知誤差となり得る変動成分のうち、変動量の比較的大きいものの周期に対して整数倍となるように、且つ、パッチ間隔Piは、同周期内に等間隔になるように設定することが望ましい。このようにすることで、その変動によって生じたパッチ間隔Piの変動分を、後述するずれ補正データによる補正で低減することができるからである。
中間転写ベルトの速度変動成分の他に、感光体や駆動ローラの回転速度変動による変動成分がトナー像の位置ずれに大きく影響する場合には、その回転速度変動を考慮してサンプリングパターン長Plとパッチ間隔Piとを設定するとよい。本プリンタでは、感光体4として、直径が40[mm]であるものを用い、駆動ローラ27として、直径が30[mm]であるものを用い、且つ、中間転写ベルト25として、周長が900[mm]であるものを用いている。すると、ベルト表面移動距離に換算した感光体4の回転周期、駆動ローラ27の回転周期は、それぞれ、125.7[mm]、94.2[mm]になる。そこで、これらの回転周期の公倍数で、且つ中間転写ベルト25の周長以上をサンプリングパターン長Plとして設定している。具体的には、最小公倍数377[mm]の倍数となる1131[mm]をサンプリングパターン長Plとして設定した。このサンプリングパターン長Pl内で、各トナーパッチ像を間隔で並べるように、パッチ間隔Piを設定した。これにより、感光体4や駆動ローラ27の回転速度変動の影響を受けずに、後述する中間転写ベルトの速度変動分を検出することができる。これは、サンプリングパターン長Plが感光体4の回転速度変動成分と駆動ローラ27の回転速度変動成分との整数倍周期にあって、後述のずれ補正データによる補正で低減されるからである。なお、駆動ローラ27の駆動源であるモータ回転周期の変動成分のように、ベルトの無端移動周期と大きく離れている変動成分については、検知データのデジタル処理時にローパスフィルタによって除去することが可能である。
中間転写ベルト25を無端移動せしめる駆動ローラ27の駆動源となっているベルト駆動モータの駆動速度を、ベルト速度変動に応じてフィードバック制御することは、ベルト速度変動の検出精度を高める上で有効である。例えば、中間転写ベルト25を張架する複数の張架ローラのうち、ベルトの表面移動に伴って従動回転する従動ローラの回転軸にロータリーエンコーダを設ける。このロータリーエンコーダから出力される回転角速度の情報を基に、ロータリーエンコーダからの出力(回転角速度)が一定となるように、ベルト駆動モータの駆動速度を制御する。かかる構成では、駆動ローラ27や駆動伝達系の回転ムラや、駆動ローラ27上でベルトスリップによるベルト速度変動を大幅に低減することができる。
本プリンタでは、出荷初期時から存在するトナー像の位置ずれだけでなく、その後に出現してくる位置ずれによる画質劣化の発生も抑えることが可能である。具体的には、中間転写ベルト25を強い張力のもとで長時間放置すると、ベルトのローラに対する巻き掛け箇所に曲がり癖がついて、PLD変動量を変化させることがある。また、機内温度が大きく変化したり、プリンタ本体に大きな外力が加わったりすると、ベルトの大きさや位置が微妙に変化して、ベルトとローラとの接触状態が変化することがある。機内温度の変化や外力は避けられないものである。例えば、紙詰まりの復帰、メインテナンス(保守点検作業)による部品交換、プリンタの移動などといった日常的な作業の際に、プリンタ本体に外力を加えてしまうことがある。機内温度の変化や外力が作用すると、中間転写ベルト25の搬送状態が変化することで、初期時では発生していなかった位置ずれが発生する。
そこで、装置の電源投入時、紙詰まりの復帰動作後、プリントジョブの開始前、プリントジョブ間などといった所定のタイミングで、中間転写ベルト25上にパターン像を形成して、新たにベルトの速度変動パターンを検出する。そして、検出結果に基づいて、位置ずれ補正データを更新するようになっている。装置の電源投入直後(又は保守点検作業後)には、必ずかかる補正を行うようになっている。中間転写ベルト25の1周あたりに発生する位置ずれの変動成分は、ベルトのPLD変動に起因するもので、電源投入後の短時間の環境や経時変化に伴う非定常的な位置ズレの変動成分には殆ど変化がないことから、前述のタイミングだけ位置ずれ補正データを更新するようにしてもよい。なお、タンデム方式では、パターン像における各トナーパッチ像の検知サンプリング動作や、これに基づく補正動作については、そのパターン像の全体の副走査方向における位置が所望の位置に正確にポジショニングさせる目的で、後述するレジスト補正の実行後に行うことが望ましい。
速度変動パターンを検出する際には、図9に示したCPU200によって、所定タイミングで各部に指令が出され、ROM204内に格納されているパターン像の画像データに基づいて、パターン像が感光体4上に形成され始める。このとき、通常のプリントジョブと同じ条件で各機器が駆動される。中間転写ベルト25上のパターン像900における個々のトナーパッチ像901をパッチ検知センサによって検知した結果は、上述したようにサンプリング制御部213によって設定された所定のサンプリング周期でサンプリングされる。そして、AD変換回路211でデジタル変換された離散データとして、FIFO212に格納される。FIFO212に格納されたデータは、受光素子のパターン反射光量に応じた値となっている。この値は、トナーの色やトナーパッチ像に対するトナー付着量に応じて変化する。そこで、予め設定した閾値に基づいてトナーパッチ像であるか否かを判別するのではなく、前述の値のピークに基づいてトナーパッチ像であるか否かを判別する。かかる構成では、1次転写時に中間転写ベルト25が速度変動を起こしてトナーパッチ像のトナー層が崩れることで、トナーパッチ像に対する単位面積あたりのトナー付着量にベルト移動方向のムラが発生しても、最もトナー付着量の多い箇所をパッチ像検知タイミングとして検知する。これにより、トナーパッチ像の濃度ムラに起因するパッチ像の誤検知の発生を抑えることができる。
図10(a)は、1次転写ニップを拡大して示す模式図である。また、図10(b)は、感光体上のトナーパッチ像に対するトナー付着量を示す棒グラフである。(c)は、中間転写ベルト上のトナーパッチ像に対するトナー付着量の第1例を示す棒グラフである。また、(d)は、中間転写ベルト上のトナーパッチ像に対するトナー付着量の第2例を示す棒グラフである。感光体4と中間転写ベルト25とが当接する1次転写ニップにおいては、両者が互いに接触しながらも、トナーや潤滑剤の影響でベルトが感光体4に対してスリップしながら、それぞれ独立した速度Vo,Vbで移動する。図10(b)本プリンタでは、一定のトナー濃度になるように、パッチ間隔初期値PiNが設定されている。
感光体4の速度Voが中間転写ベルト25の速度Vbに対して速い場合(Vo>Vb)、図10(b)に示したトナーパッチ像は、1次転写後に図10(c)に示すような状態になる。1次転写ニップにおいて感光体4の表面が中間転写ベルト25の表面を追い越すような条件で1次転写されるため、中間転写ベルト25上におけるパッチ間隔は、パッチ間隔初期値PiNよりも短いパッチ間隔PiHとなる。なお、図中Twで示した矢印は、感光体4と中間転写ベルト25との速度差によるパターン崩れによる低トナー付着領域を示している。これは、1次転写ニップにおいて、感光体4と中間転写ベルト25とが高いトナー転写率を実現すべく2[mm]程度という比較的長いニップとなっているため、トナーパッチ像が両者にこすれるように転写される際にトナー層が速度差に応じて崩されるからである。
一方、感光体4の速度Voが中間転写ベルト25の速度Vbに対して遅い場合(Vo<Vb)、ベルト上の各トナーパッチ像は、図10(d)に示す状態になる。この場合、中間転写ベルト25上におけるパッチ間隔は、パッチ間隔初期値PiNよりも広いパッチ間隔PiLになる。Twで示すように、擦れによる広がり部分も発生する。
中間転写ベルト25の速度変動によって変動するパッチ間隔PiHやパッチ間隔PiLについては、高精度に検知することが望まれる。中間転写ベルト25の速度変動により、感光体4との速度差が周期的に変化するので、トナーパッチ像の広がりも周期的に変化する。上述した閾値に基づいてパッチ先端を認識する方法では、トナー崩れの影響で、先端でない部分を先端であると誤検知したり、パッチ濃度が閾値を超えず先端を認識できなかったりすることがある。
そこで、本プリンタでは、パッチ濃度(トナー付着量)のピーク値を検知したタイミングを、トナーパッチ像の検知タイミングとするのである。具体的には、CPU200は、既定のサンプリング周期で格納されたパッチ濃度と相関の高いFIFO212内のデータ群から、パッチ濃度のピークを認識して、そのタイミング(データ番号)をRAM203に格納する。これによって、より正確にパッチ間隔PiH、PaLを検出することができる。
このようにして得たパッチ間隔の検知データ(以下、検知間隔データという。)は、RAM203に格納される。本プリンタでは、RAM203内の検知間隔データに基づいて、ベルト1周に渡る速度変動パターン内の変動量や位相を解析する。解析法としては、全データの平均値をゼロとして、変動値のゼロクロス又はピーク値から、その変動成分の変動量と位相とを解析する方法が挙げられる。しかし、この方法では、ノイズの影響を大きく受けたり、同時に含まれる高次成分の認識が困難になったりするため、解析精度を高めるには限界がある。
そこで、本プリンタでは、検知間隔データに基づいて、ベルト1周に渡って発生する速度変動成分によるパッチ間隔Piの変動データから、その変動量や位相を直交検波によるデータ処理(直交検波処理)で解析する方法を用いる。直交検波処理とは、通信分野の復調回路に用いられている公知の信号解析技術である。
図11は、制御部における直交検波処理部の回路を示すブロック図である。上述した検知間隔データは、先頭パターン検知タイミングから形成されたパターン順に検知した時刻までの経過時間(tk01,tk02,tk03,・・・)に基づくデータである。かかる検知間隔データは、変動成分が重畳している単調増加のデータ群となる。そこで、検知間隔データから増加傾向(傾き)分を除いてパッチ間隔Piの変動データとする。増加傾向(傾き)分については、データ群から最小二乗法により求めることができ、倍率補正数値として扱われる。このパッチ間隔Piの変動データが入力信号として用いられる。直交検波処理部の発振器240は、中間転写ベルト25の1周に相当する周波数(ωo/2π)の同期信号を、且つ、先頭のトナーパッチ像の検知タイミングに基づくタイミング(位相)で発振する。発振された同期信号は、第1乗算器241と、90°位相シフト器242とに出力する。中間転写ベルト25の周回周期(2π/ωo)については、中間転写ベルト25に付されたホームポジションマーク(25a)を検知したホームポジションセンサHsから発せられるマーク検知信号の発生時間間隔を計測することで、正確に求めることができる。また、発信器240から発せられる同期信号の位相については、マーク検知信号の発生時としてもよい。マーク検知信号の発生時とすることで、後述するベルトポジション検出結果(数4式以降のβに相当する)に関する処理が不要となる。
第1乗算器241は、入力信号と発振器240から出力される同期信号とを乗算し、第2乗算器243は、入力信号と、90°位相シフト器242から出力される信号とを乗算する。すなわち、第1乗算器241、第2乗算器243により、入力信号を中間転写ベルト25の同相成分(I成分)の信号と直交成分(Q成分)の信号とに分離する。第1乗算器241からの出力がI成分であり、第2乗算器243からの出力がQ成分である。
第1LPF244は、第1乗算器241によって乗算された信号のうち、低周波帯域の成分のみを通過させる。一般的には、ベルト周期の基本成分を検出するので、ベルト1周分のデータを平滑化する第1LPF(第1ローパスフィルタ)244や、後述の第2LPF245が用いられる。本プリンタにおいては、駆動ローラ27や感光体4の回転周期に対して高い平滑特性を発揮するように各ローパスフィルタが設計されている。
サンプリングパターン長Piやパッチ間隔Piは、除去したい変動成分の周期に合せて設定されているため、ローパスフィルタによるフィルタリングで高い平滑特性が得られる。よって、ローパスフィルタにより、誤差要因となる感光体4や駆動ローラ27の回転周期の変動成分は平滑化処理で除去される。そして、振幅演算部246は、2つの入力(I成分とQ成分)に基づいて中間転写ベルト25の周回周期(2π/ωo)の変動量a(t)を算出する。この変動量a(t)が、ベルトの周回周期(2π/ωo)で発生した速度変動成分によるパッチ間隔の変動量(変動振幅)である。また、位相演算部247は、2つの入力に基づく位相b(t)を算出する。この位相b(t)が先頭のトナーパッチ像が検知されたタイミングを基準とした変動成分の初期位相角である。
本プリンタにおいては、中間転写ベルト25の1周あたりで2次(ベルト1周あたりに2周期)の割合で発生する速度変動成分や、3次(ベルト1周あたりに3周期)の割合で発生する速度変動成分についても、同変動量及び位相を検出する。発信器240の発振周波数が2次、3次(2ωo、3ωo)にも設定され、ローパスフィルタの平滑化特性がその周波数に合わせて設定されているのである。これら2次、3次の速度変動成分についての信号に対しても、それぞれ直交検波処理が施される。
検知間隔データに基づいて解析した各速度変動成分の変動量及び位相(速度変動パターン)に基づいて、適切な位置ずれ補正データを構築するためには、検知間隔データのベルト上における位相(ベルト1周を2πとしたときの位相)を把握する必要がある。また、プリントジョブ中にベルトを駆動する際にもベルトの位相を逐次認識して、位置ずれ補正データとの整合性を図る必要がある。
ベルトの位相を把握する方法としては、ホームポジションマーク(25a)をホームポジションセンサHsで検知してからの経過時間情報、ベルト駆動モータの回転角情報、上述したロータリーエンコーダ出力による回転角情報の何れかに基づいて把握する方法が挙げられる。本プリンタでは、前記経過時間情報に基づいて把握している。
図1に示したホームポジションマーク25aとしては、ベルトの幅方向の一端部に貼り付けられた金属膜からなるものを用い、ホームポジションセンサHsとして、支持部材に固定された反射型フォトセンサからなるものを用いている。このホームポジションセンサHsは、ホームポジションマーク25aが検知領域を通過するときにパルス信号を出力する(ホームポジション検知信号)。ホームポジションマーク25aや、ホームポジションセンサHsのセンサ面には、トナーなどの異物が付着することがある。すると、ホームポジションマーク25aを適切に検知することができなくなるおそれが出てくる。そこで、ホームポジションセンサHsには、発射光量や光発射間隔を必要に応じて補正する機能を付加するのが望ましい。なお、ベルトの位相をより高精度に把握するために、ホームポジションマーク25aをベルト周方向の互いに異なる位置に複数設けてもよい。
CPU200は、解析した変動量及び位相と、現在のベルト位相とを関連付けて速度変動パターンを構築する。そして、その速度変動パターンに基づいて、位置ずれ補正データを構築する。この位置ずれ補正データとして、本プリンタでは、感光体4に対する光書込タイミングの逐次の微調整により、各ドットの光書込位置を副走査方向に逐次微調整することで、ベルト速度変動によって位置ずれしたトナー像の各ドットを、結果として正規の位置に1次転写するためのデータを構築するようになっている。制御目標値出力部206は、かかる位置ずれ補正データに基づいて、光書込装置2に対して適切な補正信号を出力する。なお、後述する変形例では、かかるデータに代えて、感光体駆動速度の逐次の微調整により、ベルト速度変動によって位置ずれしたトナー像の各ドットを、結果として正規の位置に1次転写するためのデータや、ベルト駆動モータの駆動速度を逐次微調整してベルト速度を安定化させるための位置ずれ補正データを構築するようになっている。
検知間隔データから算出される変動量や位相のデータには、1次転写時におけるベルト速度変動と、パッチ像検知時におけるベルト速度変動とが反映された値になっている。本プリンタでは、1次転写位置TPとトナーパッチ像の検知位置(DP1あるいはDP2)との位相差角度φが、図12(a)に示すようにφa、φbとなっている。ベルト位相差角度φaは、1次転写位置TPと、第1パッチ検知センサPs1による検知位置DP1との位相差角度である。また、ベルト位相差角度φbは、1次転写位置TPと、第2パッチ検知センサPs2による検知位置DP2との位相差角度である。なお、参考までに、後述する第3変形例に係る複写機におけるベルト位相差角度φa、φbを図12(b)に示す。
トナーパッチ像を1次転写する際におけるベルト速度V
bT‘は次の数3の式によって求められる。
但し、△V
b0:ベルト平均速度
V
b:ベルト速度変動量(添字はベルト周期変動次数)
ω
b0:転写ベルト平均回転角速度
a:ホームポジション検出時(t
0=0)の変動成分初期位相(添字はベルト周期変動次数)
時間t0は、中間転写ベルト25のホームポジションマークがセンサによって検知された時点を基準(t0=0)とした経過時間を示している。数3の式における第2項が、ベルト速度変動の1次成分、第3項、第4項はそれぞれ2次成分、3次成分を示している。なお、以下、2次成分、3次成分の変動量や位相の検出については、1次成分と同様の数式展開となるため、説明を省略する。
検知間隔データは、直交検波処理にて、ホームポジション検知時を基準するのではなく、先頭のトナーパッチ像が検知された時点を基準にして速度変動パターンの解析を行う場合を想定して、先頭のトナーパッチ像が1次転写され始めた時点を基準とした時間tに基づいて処理される。この時間tにおけるベルト速度V
bTは次式によって求められる。
但し、β:先頭のトナーパッチ像が1次転写される時点とベルトホームポジション検知時との位相差
この位相差βは、先頭のトナーパッチ像が1次転写された時点からホームポジション検知時までの時間をベルトの位相に変換したものである。
仮に、微小時間間隔δtをもって感光体4上に形成された2つのトナーパッチ像は、1次転写位置TPに所定の時間間隔で到達する。但し、ベルト速度の影響を受けるため、1次転写後のパッチ間隔は、次式で示されるδP
0となる。
1次転写後のパッチ間隔は、検知位置(DP1又はDP2)で計測される。つまり、ベルト上のトナーパッチ像の間隔は、1次転写後、ベルトの位相差角度φa、φbに相当するT
φ時間が経過した後に計測される。間隔が計測されるときのベルト速度V
bMは、次式によって求められる。
上記数4の式における1次転写位置TPの速度変動に対し、Tφ時間後の位相差角度φを反映した式になっている(式中のφは、φa又はφb)。検知位置においては、ベルト速度が平均より速いときにはパッチ間隔が実際よりも短く検出され、ベルト速度が平均よりも遅いときには実際よりも長く検出される。このように検出したパッチ間隔δPは、次式によって求められる。
ベルト速度変動成分△V
bは、平均速度V
b0に対して十分小さいことから、この式は次式とほぼ同じ結果になる。
また、この式は、括弧内の2つの正弦関数項を合成して、次式のように変換することができる。
この式は、パッチ間隔に相当する微小時間間隔δtをもって形成された2つのトナーパッチ像が1次転写された後、検知位置で検知された結果を想定したものである。
実際に検出されるトナーパッチ像の間隔を求めるには、上記数9式を実際のトナーパッチ形成時間間隔に応じて積分すればよい。つまり、実際のトナーパッチ像が感光体4上で一定時間間隔Teで形成された場合、パッチ検知センサによって実際に計測されるパッチ間隔P
aNは、次式によって得られる。ただし、間隔P
aNは、先頭のトナーパッチ像が1次転写される時点を基準(0)にして、時間TeN(N:自然数)に1次転写されたN番目のトナーパッチ像までの間隔を示している。
この式におけるCは積分定数であり、次式によって求めることができる。
上記数4の式で求められるベルト速度V
bTに基づいて、パッチ検知センサで計測されるパッチ間隔を上記数11の式から得ることができる。検出されたパッチ間隔の変動データは、上記数11の第2項に相当するため、両式の関係から、ベルトの速度変動量や位置変動を算出する。パッチ間隔の変動の1次成分を直交検波により解析した結果を変動量Amp
1、位相Pha
1とすると、上記数11の式との関係は次の2つの式によって表される。
これら2つの式を用いて、ホームポジション検知時を基準としたベルト速度変動の1次成分の変動量ΔV
b1と、位相α
1とを算出することができる。更に、位置変動量については、上記数3の式のベルト速度変動量V
bを積分して位置変動量とした次式と、パッチ間隔を示す上記数11の式との関係を導出すればよい(数3の式を積分して余弦関数に変換している。)
よって、ベルトの位置変動量(△V
b1/ω
b0)や位相(α
1+3π/2)については、変動量Amp
1、位相Pha
1を用いた次式によって導出することができる。
上記数11の式で示される検知間隔データは、先頭のトナーパッチ像からN番目のトナーパッチ像までの間隔、つまり、累積パッチ間隔となっている。別の検知間隔データとしては、隣り合う2つのパッチ間隔、つまり、隣接パッチ間隔がある。パッチ間隔の計測は微少時間単位のカウンタで計測される。例えば1[MHz]のカウンタでパッチ間隔を計測する。本プリンタのようにベルト1周以上に渡ってパターン像を形成し、累積パッチ間隔のデータとすると膨大なカウント値となる。そして、その後の、最小二乗演算や直交検波処理において、オーバーフローによる誤差が発生したり、大量の演算メモリ領域が必要になったりしてしまう。これに対し、隣接パッチ間隔とすれば、かかる不具合の発生を回避することができる。
しかし、検知間隔データを隣接パッチ間隔とした場合、ベルトの位置変動量を算出する際に平均パッチ間隔を考慮しなくてはならない。隣接パッチ間隔とした場合の変動量、位相の変換は以下に説明する通りである。
N番目の隣接パッチ間隔P
nNは、P
aNと、一つ前のP
a(N−1)との差分から求められるので、上記数11の式を隣接パッチ間隔用に変換すると、次式のようになる。
隣接パッチ間隔の感光体回転周期で発生する変動成分を直交検波処理によって解析した結果を変動量Amp
1n、位相Pha
1nとすると、上記数16の式との関係は次式のようになる。
さらに、上記数22の式のベルトの位置変動量(△V
b1/ω
b0)や、位相(α
1+3π/2)については、パターン解析結果(変動量Amp
1、位相Pha
1)を用いて、次式のようにして導出することができる。
パターン平均間隔を考慮したこれら2つの式を用いて、変動量、位相を求めてベルトの位置変動量を算出することができる。ベルト1周あたりの2次成分、3次成分についても同様の変換式を適用することができる。変換式のωb0に2ωb0、3ωb0、を代入して、φは2次、3次の変動周期に応じて変換した値を代入すればいよい。
上記数22や上記数23に示した式は、スリップトランスファーを前提とした式であるが、1次転写条件によっては、スリップトランスファーよりもタックトランスファーの傾向を示す場合がある。スリップトランスファーとは、図10に示したモデルのように感光体4と中間転写ベルト25とがニップ内で滑りながらそれぞれ独立した速度で移動している状態で、トナー像が転写される現象である。中間転写ベルト25の速度変動によってトナー像の1次転写位置が変動する。一方、タックトランスファーとは、感光体4と中間転写ベルト25とがニップ内で滑ることなく密着して、互いに同じ速度で移動しながらトナー像が転写される現象である。かかるタックトランスファーでは、中間転写ベルト25の速度変動が小さく、転写時の位置変動が発生しない。よって、スリップトランスファーとタックトランスファーとの違いでパッチ間隔は大きく異なる。実際の1次転写プロセスでは、スリップトランスファーとタックトランスファーとが共存するような状態となっており、感光体4と中間転写ベルト25との密着度、トナー特性、潤滑剤の塗布量などによって状態が変化する。そこで、より高精度にベルトの位置変動量を導出するために、変換式に変動量補正係数κaと位相補正値κbを導入することが望ましい。上記数16の式と、上記数22の式とに、上記数17の式における変動量補正係数κaと、上記数23の式における位相補正値κbとを与えるのである。変動量補正係数κaや位相補正値κbの導出については、感光体4上におけるパッチ間隔と、ベルト上のパッチ間隔の変動とを計測して比較した結果に基づいて、求めればよい。
図13は、パターン像の各トナーパッチ像を第1パッチ検知センサPs1によって検知した結果に基づいて求められるパッチ間隔変動量と時間との関係を示すグラフである。また、図14は、トナーパッチ像を第2パッチ検知センサPs2によって検知した結果に基づいて求められるパッチ間隔変動量と時間との関係を示すグラフである。これらのグラフにおける縦軸は、累積パッチ間隔データの変動量となっており、横軸は先頭のトナーパッチ像の検知時を基準とした経過時間になっている。G1、G3はそれぞれ累積パッチ間隔データの傾き分を除去した変動量を示している。G1、G3の変動量には、ベルトの周期的な速度変動成分の他に、感光体4や駆動ローラ27等による周期的な速度変動成分が含まれている。中間転写ベルト25の1回転周期は約5秒である。直交検波処理によって得られたベルトの変動成分(1〜3次成分)の変動量と、位相に基づいたパッチ間隔の変動とを示しているのがG2、G4である。これらは、検知間隔データの変動量(G1、G3)に含まれるベルトの周期変動成分を示している。図13と図14とを比較すると、同じベルトの変動成分に対して大きく異なる変動波形を検出しているのがわかる。
この理由を1次成分に着目して説明する。例えば、第2パッチ検知センサPs2によって検出されるトナーパッチ像が、ベルト速度の比較的速いときに1次転写されたものであるとする。1次転写異には、パッチ間隔が広くなる。そして、第2パッチ検知センサPs2による検知位置Dp2まで移動する。
本プリンタでは、図12に示したように、第2パッチ検知センサPs2による検知位置DP2と、1次転写位置TPとの距離は440[mm]になっている。これは、ベルト周長(900mm)の約半分の値である。よって、トナーパッチ像を検知位置DP2で検知するときには、1次転写時よりもベルト速度が遅くなっており、パッチ間隔は実際の間隔よりも広く検知される。これにより、1次転写位置TPにおけるベルトの速度変動が増幅して検知される(以下、増幅割合を変動量増幅率という)。
一方、第1パッチ検知センサPs1による検知位置DP1で検知されるトナーパッチ像が、1次転写位置TPでベルト速度の比較的速いときに1次転写されたものであるとする。1次転写時には、パッチ間隔が広くなる。1次転写位置TPから検知位置DP1までの距離は220[mm]である。1次転写位置TPから検知位置DPまでのベルト移動時間が比較的短いため、ベルトの速度はまだ速い状態である。すると、第1パッチ検知センサPs1によって検知されるパッチ間隔は実際よりも狭くなるため、1次転写位置TPにおけるベルト速度変動量に応じたパッチ間隔のずれが、検知位置DP1における検知間隔の誤差によって打ち消されてしまう。
このように1次転写位置TPから検知位置DPまでの距離の違いにより、第2パッチ検知センサPs2では、1次の変動成分が感度よく検出されるのに対し、第1パッチ検知センサPs1では、1次の変動成分の検出感度が著しく低下する。つまり、それぞれのパッチ検知センサによる検知間隔データでは、1次の変動成分の変動量増幅率が互いに異なっている。
それぞれのパッチ検知センサによる検知間隔データに含まれるノイズ成分は、互いに同程度と考えられるので、前述の変動量増幅率が高いほど、検出感度が高いことになる。2次、3次の速度変動成分においても、同様にして、両センサにおける変動量増幅率が互いに異なる。変動量の変換式である上記数16の式や上記数22の式に含まれる2sin(φ/2)に応じて変動量増幅率が異なってくるのである。
本プリンタにおいて、各パッチ検知センサの検知間隔データにおけるベルト1周期あたりの変動成分(1次〜3次)の変動量増幅率及び位相変化量を次の表1に示す。
表1より、第2パッチ検知センサPs2における1次成分の位相変化量が1.54であることがわかる。実際のベルトの位置変動量に対して、その2倍の変動量で、且つ、実際のベルト位置変動の位相に対して、1.54[rad]遅れた変動が検知間隔データに基づいて検出されるのである。一方、第2パッチ検知センサPs2における2次成分の変動量増幅率は0.14である。実際の位置変動量に対して、その0.14倍の変動量しか検出されないのである。3次成分の変動量増幅率は、−1.99である。マイナスの符号は、変動の向き(増速、減速)が反転(逆位相)していることを表している。
なお、表1には、第1パッチ検知センサPs1(パッチ検知センサ番号1)や第2パッチ検知センサPs2(番号2)の変動量増幅率に加えて、本プリンタには設けられていない第3パッチ検知センサ(番号3)や第4パッチ検知センサ(番号4)の変動量増幅率も参考として記してある。第3パッチ検知センサの配設位置は、1次転写位置TPと検知位置DP1との中間位置(図12(a)のDP3)である。また、第4パッチ検知センサの配設位置は、検知位置DP1と検知位置DP2との中間位置(図12(a)のDP4)である。
第1パッチ検知センサPs1の変動量増幅率は、2次の変動成分に対して高い一方で、1次や3次の変動成分に対して低くなる。また、第2パッチ検知センサPs2の変動量増幅率は、1次や3次の変動成分に対して高い一方で、2次の変動成分に対しては低くなる。このような変動量増幅率の違いから、図13や図14に示した検知間隔データの違いが生じているのである。
従来では、1つのパッチ検知センサによって検知した検知間隔データから、ベルトの位置変動量を算出すればよいとが考えられていた。しかしながら、かかる構成では、図13や図14のグラフで明らかになったように、ある特定の周期の変動成分しか高感度に検出することができないため、ベルト1周あたりの速度変動パターンを高精度に検出することが難しい。そこで、本プリンタにおいては、表1に示した各パッチ検知センサの変動量増幅率の特性に鑑みて、複数のパッチ検知センサを設けているのである。
ベルトの位置変動量の演算方法としては、2つの方法が考えられる。第1演算方法は、複数のパッチ検知センサによるそれぞれの検知間隔データのうち、検知対象となる周期の変動成分を最も高い変動量増幅率で検知し得るデータを用いて位置変動量を算出する方法である。また、第2演算方法は、複数のパッチ検知センサによるそれぞれの検知間隔データから、変動量増幅率や位相変化量を考慮した位置変動量の平均値を演算する手法である。変動量増幅率の範囲は0〜2である。
第2パッチ検知センサPs2では、1次、3次の変動成分に対する変動量増幅率がそれぞれ「2」、「−1.99」であり、4つのセンサの中で最も高い(実施形態に係るプリンタでは2つのセンサの中で最も高い)。また、第1パッチ検知センサPs1では、2次の変動成分に対する変動量増幅率が「2」であり、4つのセンサの中で最も高い(実施形態に係るプリンタでは2つのセンサの中で最も高い)。そこで、第1パッチ検知センサPs1による検知間隔データに基づいて、2次の変動成分を検出する。各検出結果(変動量と位相値)については、上記数16の式や上記数17の式、又は、上記数22の式や上記数23の式を用いてベルトの位置変動量に変換する。これにより、2次の変動成分を最も高感度に検出し得るデータに基づいた速度変動パターンの解析とベルトの位置変動量の算出とを行うことができる。
本プリンタにおける2つのパッチ検知センサのうち、一方における1次転写位置TPから検知位置までの距離がベルト周長の約半分に設定され、他方における1次転写位置TPから検知位置までの距離がベルト周長の約ベルト周長の1/4に設定されている構成では、特に優れた検知精度を実現することができる。奇数周期の変動成分を一方のセンサで高感度に検出するとともに、偶数周期の変動成分を他方のセンサで高感度に検出するからである。
変動量増幅率は、1次転写位置TPと検知位置DPとの距離に依存するため、算術によって求めることが可能である。即ち、複数の検知間隔データに対して直交検波処理する周波数を予め特定しておくことが可能である。これにより、演算回路も必要最小限の構成に留めることができる。
第2演算法では、例えば次のような処理を行う。即ち、検知間隔データから求めた変動成分の変動量値(Amp)をベルトの位置変動量に変換するには、上記数16の式より、変動量増幅率(2sin(φ/2))で除算する。複数の検知間隔データに基づいてこのようにベルトの位置変動量を算出したら、それらを加算した後、データ数で除算することで位置変動量の平均値を求める。但し、検知間隔データには、得たい変動成分の他に、ノイズNが含まれている。変動量増幅率の低い変動成分では、含まれるノイズNも前述の除算処理で増大してしまう。そこで、複数の検知間隔データから、同じ周期の変動成分を加算してから、変動量増幅率、位相変化量を考慮した値で除算する。これにより、低い変動量増幅率によるノイズNの影響を避けて平均値を算出することが可能となる。つまり、第1パッチ検知センサPs1による検知間隔データをSa+Nとする。また、第2パッチ検知センサPs2による検知間隔データをSb+Nとする。検出される信号はそれぞれ異なるが、同じベルト上で同じ構成のセンサによってパッチ間隔を検出するため、含まれるノイズNの大きさは同じである。第1パッチ検知センサPs1、第2パッチ検知センサPs2の変動量増幅率をAa、Abとすると、前者の平均値は、次式によって求められる。
ノイズNを含む項に着目すると、次式の関係が成立する。
そこで、本プリンタでは、後者の平均値を算出する処理を行うようになっている。実際の加算処理は位相値も考慮する必要があるため、後述するように極座標系に変換して各周期成分の加算及び除算演算を行う。
具体的は、まず、2つのパッチ検知センサの検知間隔データから、直交検波処理で各データのベルト1次成分検出データ(変動量、位相値)を算出する。次に、データの位相値を先頭のパッチ検知時を基準にしたものから、ホームポジション検知時を基準にしたものに変換する。ホームポジション基準への変換処理は、上記数17の式より、位相値にβを加算すればよい。そして、同径が変動量で、且つ偏角がホームポジション基準の変動位相となる極座標系に変換する。極座標に変換された複数の検知間隔データに、1次の変動成分検出データを加算する。一方、表1に示した1次の変動成分に対する複数の変動量増幅率、位相変化量をそれぞれ同様にして極座標に変換する。そして、変換後の変動量増幅率、位相変化量のデータを加算する。極座標系において、先に算出した1次成分の検出データの加算結果を、変換後の変動量増幅率、位相変化量の加算結果で除算する。そして、この除算結果を極座標系から三角関数表示(変動量、位相値)に変換する。その後、位相値については、上記数17の式における残りの処理である「π/2」の加算を行う。これによって、複数の検知間隔データに基づき、低い変動量増幅率によるノイズNの増大を招くことなく、平均値を算出してベルトの位置変動量を高精度に検出することができる。2次、3次の変動成分においても同様の処理を実施する。
以上のように、各周期の変動成分の速度変動量(変動量△Vbn、位相α1n nは次数)、あるいは位置変動量(変動量△Vbn/nωb0、位相αn+3π/2n nは次数)を算出する。この変動量に基づいて、上記数3の式のよう発生するベルト速度変動を打ち消すように各種の補正制御を実施する。
ベルトの位置変動によって生じる画像の位置ずれを補正する方法の1つとして、感光体4に対する光書込装置2による副走査方向の光書込位置を逐次微調整する方法が挙げられる。本プリンタでは、かかる方法に用いるための位置ずれ補正データを構築し、プリントジョブ中には、ホームポジション検知タイミングと、この位置ずれ補正データとに基づいて、光書込装置2による副走査方向の光書込位置を逐次微調整することで、ベルト速度変動に起因する画像の位置ずれを抑えるようになっている。
先に示した図6において、光書込装置2は、具備する光源ユニット2aに具備される1対の半導体レーザーからそれぞれ画像情報に基づいたレーザー光Lを出射する。1対の半導体レーザーからそれぞれレーザー光Lを出射するのは、感光体4に対して、副走査方向に互いに並ぶ2つの走査ライン上に同時に光走査を行っていくためである。
半導体レーザーから出射されたレーザー光Lは、傾斜ガラス板2b、シリンダレンズ2cを順次透過した後、ポリゴンミラーユニット2dに到達する。シリンダレンズ2cは、ポリゴンミラーユニット2dにおけるポリゴンミラーの偏向点までの光路長を等しくする位置に配設されている。入射側が平面となっているのに対し、出射側が副走査方向に湾曲する偏向面となっており、レーザー光Lを偏向面で主走査方向に線状に収束せしめる。また、傾斜ガラス板119は、何れか一方の面を副走査方向にわずかに傾けたガラス板であり、光軸周りに回転駆動することで、走査位置を安定的に保持する役割を担っている。
ポリゴンミラーユニット2dは、図示しないポリゴンモータによって互いに同じ回転軸を中心にして回転する正六面体の2つのポリゴンミラーを有しており、それぞれのミラー面で2つのレーザー光Lを回転しながら反射させる。これにより、レーザー光Lが主走査方向に偏向せしめられる。2つのポリゴンミラーの回転位相は互いに同じである。これらポリゴンミラーの間には溝が設けられており、これによって回転に伴う風の発生を低減している。ミラー面の高さは約2[mm]である。
主走査方向に偏向せしめられるレーザー光Lは、2つのレーザー光Lにそれぞれ対応するように上下に接合された2層のfθレンズ2eを透過する。このfθレンズ2eは、主走査方向に偏向せしめられるレーザー光Lの感光体4表面上における走査速度を等速にするように非円弧面形状となっている。
fθレンズ2eの上層や下層を通過した2つのレーザー光Lは、第1折り返しミラー2fで折り返し反射した後、トロイダルレンズ2gを通過することで、感光体4の表面上にスポット状に結像するための集光がなされる。その後、第2折り返しミラー2h、第3折り返しミラー2iで順次折り返し反射した後、感光体4の表面上に結像して、静電潜像用のドットを記録する。
半導体レーザーとして、面発光型のものを用いている場合、発光レーザーの選択によって副走査方向の光書込位置を容易に補正することができるが、光源ユニット2aが非常にコスト高になってしまう。そこで、本プリンタでは、傾斜ガラス板2bの回転駆動によって副走査方向の光書込位置を補正するようになっている。傾斜ガラス板2bは、回転に伴って光軸位置を変化させることで、光書込位置を補正することが可能である。
図15(a)は、光走査装置2における光軸変更手段である傾斜ガラス板2bの支持部300を示す分解斜視図である。また、図15(b)は、支持部300を示す斜視図である。これらの図において、傾斜ガラス板2bは円筒状のホルダー部材301に設けられた枠内に固定される。このホルダー部材301は筒状の係合部301aを有しており、この係合部301が、ホルダー部材301とは別体の支持部材310に回転可能に係合せしめられる。具体的には、支持部材310に設けられた円状の開口310aにホルダー部材301の筒状の係合部301aが回転可能に係合することで、ホルダー部材301が支持部材310に回転可能に保持される。ホルダー部材301の筒状の係合部301aからは、一対の鍔部302が突出しており、これらは支持部材310の円状の開口310aに設けられた一対の切り欠き310bを貫通して、支持部材310の裏面側に至る。この状態でホルダー部材301が回転されると、鍔部302が支持部材310の裏面に引っ掛かることで、支持部材310からのホルダー部材301の脱落が防止される。
支持部材310は、底板310cが図示しない光書込装置のハウジングにねじ止めされる。円状の開口310aの中心軸を上述した半導体レーザーの射出軸に合わせるように高さHが設定されており、ホルダー部材310とともに保持している傾斜ガラス板2bの回転によって射出軸をわずかに傾けることができる。
ホルダー部材301の一端にはレバー部303が形成され、これには送りネジが螺号している。この送りネジは、支持部材310に固定されたステッピングモータ320の軸先端に形成されたものであり、ステッピングモータ320の軸の回転に伴う送りネジの上下動により、傾斜ガラス板2bが回動せしめられる。この際のバックラッシュを回避するために、ホルダー部材301に設けられたピン304と支持部材310に設けられたピン311との間に、スプリング321の張架による引張力をかけて、ホルダー部材301を支持部材310の開口310a内で片寄せするようになっている。
図15(b)に示した傾斜ガラス板2bの回転角をγ、傾斜ガラス板2bの頂角をε、カップリングレンズの焦点距離をfc、光学系全系の副走査倍率をζとすると、感光体4表面上におおける副走査位置の変化は、次の数27で示される。なお、式中の「n」は、傾斜ガラス板の屈折率である。
微小回転角の範囲では回転角γにほぼ比例して副走査位置を変化させ得ることがわかる。本プリンタでは、傾斜ガラス板2bの頂角εは、約2[°]である。感光体4表面上での副走査位置の変化Δyは、そのまま、1次転写位置の変化量として捉えることができる。よって、解析された速度変動パターンに基づくベルトの位置変動量[μm]を打消すように反転させた数値を、副走査位置の変化Δyに代入して回転角γを算出し、算出結果に応じて傾斜ガラス板2bを回動させることで、トナー像の副走査方向の各箇所における1次転写位置を補正することができる。上記数22に示した式における傾斜ガラス板2bの頂角ε、カップリングレンズの焦点距離fc、光学系全系の副走査倍率ζは、予め決定された定数となる。副走査位置の変化Δyと回転角γとの対応を関連付けたデータテーブルを参照するように制御部を構成すれば、演算時間を短くすることができる。
トナー像の副走査方向における各箇所の1次転写位置を調整する方法として、書込光の光軸を変化させる方法を例示したが、他の方法によって調整することも可能である。例えば、ポリゴンミラーの回転速度と半導体レーザーの発光タイミングとを逐次微調整することによっても、1次転写位置を逐次微調整することが可能である。また、光源ユニット2aとして、1ライン分の発光素子(LED)群を具備するライン型のものを用いれば、発光素子の発光タイミングの調整により、1次転写位置を逐次微調整することが可能である。
[第1変形例]
第1変形例に係るプリンタにおいては、位置ずれを補正する手段として、感光体4の回転速度または回転角変位の微調整による補正を行うものを用いる。
図16は、本プリンタの感光体4を、駆動装置の一例とともに示す斜視図である。同図において、感光体4の回転軸(ドラム軸)は、図示しないプリンタ筐体のフレームに回転自在に軸支されている。本プリンタのドラム駆動装置は、ステッピングモータやDCサーボモータ等からなるドラム駆動モータ330、これのモータ軸に設けられたモータ軸ギヤ331、モータ軸ギヤ331と噛み合うドラム駆動ギヤ332、ドラム駆動ギヤ332とドラム軸とを連結するカップリング333等を有している。
本プリンタでは、減速機構がモータ軸ギヤ331とドラム駆動ギヤ332とからなる1段減速機構となっている。部品点数を少なくし低コスト化を図ったり、ギヤ伝達における歯形誤差や偏心による伝達誤差の要因を少なくしたりするためである。また、1段減速機構としたことで、高い減速比を設定すると必然的に感光体4のドラム軸上にあるドラム駆動ギヤ332が、感光体4の径より大きな大口径ギヤとなる。かかる大口径ギヤを用いることにより、感光体4上で換算したドラム駆動ギヤ332の単一ピッチ誤差が小さくなり、副走査方向の画像濃度ムラ(バンディング)を低減することもできる。なお、減速比は、感光体4の目標回転速度やモータ特性に応じて、高効率で高回転精度が得られる速度領域から決定される。本プリンタにおけるモータ軸ギヤ331とドラム駆動ギヤ332との間の減速比は1:20である。
ドラム駆動モータ330のモータ軸には、ロータリーエンコーダ334が取り付けられている。このロータリーエンコーダ334によってドラム駆動モータ330の回転角速度を検出する。そして、その検出信号を制御部のコントローラ215を介してドラム駆動モータ330のモータ駆動回路216にフィードバックすることで、ドラム駆動モータ330の回転速度が所望の速度となるように制御している。なお、ドラム駆動モータ330として速度センサ又はエンコーダを内蔵したものを用いれば、ロータリーエンコーダ334を省略することができる。モータ内蔵型の速度センサとしては、例えばプリントコイル式の周波数発電機(FG)を用いることができ、内蔵型エンコーダとしては、例えばMRセンサ等を用いることができる。
モータ駆動回路216は、ドラム駆動モータ330に所定の駆動電流を出力する。ロータリーエンコーダ334はモータの回転角速度(あるいは回転角変位)を検知し、その検知結果をコントローラ215に出力する。本プリンタのドラム駆動モータ330は、DCブラシレスモータであるDCサーボモータを採用している。このDCサーボモータは、U、V、Wの3相にスター結線されたコイルとロータとを有する。さらに、ロータの位置検出部として、ロータの磁極を検知する3個のホール素子を備え、それらの出力端子はモータ駆動回路216に接続されている。なお、MRセンサを内蔵したDCサーボモータの場合には、ロータの周上に着磁した磁気的パターンとMRセンサとからなる回転速度検知部(速度情報検知部)を有し、その出力端子がコントローラ215に接続される。
モータ駆動回路216は、ハイ側トランジスタとロー側トランジスタとを3個ずつ有し、それぞれコイルのU、V、Wに接続されている。そして、ホール素子から発せられるロータ位置信号に基づいてモータのロータの位置を把握して相切替信号を生成する。この相切替信号は、モータ駆動回路216の各トランジスタをオンオフ制御して励磁する相を順次切り替えることにより、ロータを回転させる。
また、コントローラ215は、ロータリーエンコーダ334(MRセンサ内蔵型の場合には回転速度検知部)によって検知される回転速度情報と目標回転速度情報とを比較しながら、モータの回転速度を目標回転速度に一致させるようにPWM信号を生成して出力する。このPWM信号はアンドゲートによってモータ駆動回路216の相切替信号とアンドされ、駆動電流のチョッピングを行ってドラム駆動モータ330の回転速度を制御する。
かかるコントローラ215については、ロータリーエンコーダ334(又は回転速度検知部)の出力パルス信号と制御目標値出力部206の出力パルス信号の位相や周波数とを比較する公知のPLL制御回路系で構成することができる。制御目標値出力部206は、予め設定された感光体4の一回転周期の回転速度変動成分を補正する目標回転速度に応じて周波数変調したパルス信号を出力する。コントローラ215は、アナログ回路ではなくデジタル回路でもよい。デジタル回路の場合、ロータリーエンコーダ334(又は回転速度検知部)の出力波形の周期を計測して回転角速度を算出する。あるいは、ロータリーエンコーダ334(又は回転速度検知部)の出力パルス数をカウントし、任意の時間内に計測されたカウント値に基づいて回転角速度を算出する。
なお、回転角速度ではなく回転角変位を制御する位置制御系を採用する場合、ロータリーエンコーダ334(又は回転速度検知部)の出力パルス数をカウントし、カウント結果に基づいて回転角の変位量を算出する。そして、制御目標値出力部206からの目標データとの差分を算出し、その差分を小さくするようにドラム駆動モータ330の駆動速度を制御する。一般に、PID制御器などが組込まれ、制御対象の感光体4を偏差、オーバーシュート、発振などを生ずることなく目標回転速度に追従させるように、モータ駆動回路216へのPWM信号が出力される。
以上のようなドラム駆動装置を用いて、中間転写ベルトの速度変動パターンに合わせて感光体4の回転角速度又は回転角変位を変動させる。なお、制御目標値出力部206から出力される信号を、以下、目標値(ref)という。
感光体4の回転角速度又は回転角変位を変動させることで、中間転写ベルト25上のパッチ間隔(1次転写位置)を調整することが可能である。図8に示したようなラダーパターンの各トナーパッチ像を一定間隔で感光体4上に形成するための光書込処理が行われた場合、感光体4上のパッチ間隔は書込み時における感光体4の回転角速度に依存する。このため、感光体4の速度が比較的速いと感光体4上のパッチ間隔は本来よりも広がる一方で、速度が比較的遅いとパッチ間隔が本来よりも狭くなる。
中間転写ベルト25上に1次転写されたトナーパッチ像のパッチ間隔は、既に説明したように、感光体4と中間転写ベルト25との線速に依存する。感光体4と中間転写ベルト25とは互いに独立した速度で回転しているので、感光体4の回転角速度による影響のみに着目した場合、中間転写ベルト25上のトナーパッチ像は、感光体4の速度が比較的速いとパッチ間隔が本来よりも狭くなる。この一方で、感光体4の速度が比較的遅いと、パッチ間隔が本来よりも広くなる。このような現象が起こるため、光書込み時と1次転写時とで感光体4の回転角速度を変化させれば、中間転写ベルト25上のパッチ間隔を変化させることができる。例えば、感光体4の回転角速度を、光書込み時よりも1次転写時で速くすれば、パッチ間隔を狭くすることができる。
以下、図17に示す感光体4のモデルに基づいて、感光体4の回転角速度変動とそれに応じて変化するベルト上のパッチ間隔との関係や、適切な制御目標値の演算方法について説明する。光書込位置SPでにおける感光体4の回転角速度変動ω
pは次式によって算出される。
この式において、ωp0は感光体4の平均速度、右辺第2項のΔωp1cos(ωb0t0+αp1)は、ベルトのホームポジション検知時を基準とした、任意の時間t0における感光体4の回転角速度の変動量を示している。また、ωb0はベルトの平均回転角速度であり、変動量Δωp1の感光体回転角速度変動がベルト1周期内で発生することを示している。αp1はホームポジション検知時を基準とした初期位相を示している。本プリンタでは、第3項、第4項に2次成分、3次成分に対応した項が含まれているが、以下、同様の数式展開となるため説明を省略している。
感光体4上のパターン像の各トナーパッチ像は、感光体4が角度φpだけ回転した後に中間転写ベルト25上に1次転写される。ここで言う角度φpは、図17に示すように、感光体4の回転中心と光書込位置SPとを結ぶ仮想線と、感光体4の回転中心と1次転写位置TPとを結ぶ仮想線とのなす角(書込−転写角)である。
トナーパッチ像が1次転写位置TPにて中間転写ベルト25に1次転写されるときの感光体4の回転角速度ω
pφは、次式によって求められる。
この式において、φ
p‘は、角度φ
pを転写ベルト回転周期に対応した位相角に変換した値である。上述した中間転写ベルト25上におけるパッチ間隔の計測値の解析と同様に、2つの速度変動を考慮したパッチ間隔を算出する。感光体4に対する一定時間間隔Te(N:自然数)での光書込による複数のパッチ潜像が前駆体となっている複数のトナーパッチ像が中間転写ベルト25上に1次転写された時のパッチ間隔は次式によって求められる。
これらの式により、一定時間間隔Teにて書込まれたパッチ潜像を前駆体とするトナーパッチ像における、感光体4の回転角速度変動とベルト上でのパッチ間隔変動との関係が明確に示されている。上述した直交検波によるベルトの1次の変動成分を解析した結果である変動量Amp
1、位相Pha
1と、次の2つの式とにより、同等のの間隔変動を発生させるための、感光体4の回転角速度変動値(変動量Δωp1、位相αp1)を算出することができる。
感光体4の回転角速度変動値(変動量Δωp1、位相αp1)を反転させた値(変動量に係数−1を与える)と平均速度分とを加算した値が、制御目標値出力部206から出力される目標値(ref)となる。
本プリンタの制御部は、ベルト速度変動による画像の位置ずれを発生させないような、感光体4の回転角速度変動を生起させるように、ドラム駆動モータ330の駆動速度を微調整する制御を実施する。なお、平均速度分については、感光体4の直径変化などの理由から値を変更してもよい。また、ドラム形状の感光体4に関する具体例を示したが、それに限るものではなく、回転するベルト形状の感光体4でも同様の制御を実施することができる。
[第2変形例]
第2変形例に係るプリンタにおいては、ベルトの位置変動(速度変動)によって生じる画像の位置ずれを補正する手段として、中間転写ベルト25の駆動速度(ベルト駆動モータの駆動速度)の微調整によって位置ずれを補正するものを用いる。かかる微調整を実現し得る構成としては、次の3つが挙げられる。第1の構成は、駆動ローラ27に内蔵されたエンコーダから送られてくるローラ回転速度に基づいて、駆動ローラ27の駆動速度を微調整する構成である。第2の構成は、ベルトに連れ回る従動ローラに設けたロータリーエンコーダからの出力に基づいて、駆動ローラ27の駆動速度を微調整する構成である。第3の構成は、中間転写ベルト25の表面に全周に渡って設けられた一定間隔の目印を具備するスケールと、個々の目印を検知する目印検知センサとを設け、目印検知センサによる目印検知間隔の情報に基づいて、駆動ローラ27の駆動速度を微調整する構成である。
第1の構成においては、予め算出されたベルト速度の周期変動成分を打ち消すように、ベルト駆動モータの回転速度を調整すればよい。
図18は、従動ローラ21の回転軸に設けられたロータリーエンコーダ220によってベルト移動速度を検知するようにした転写ユニット24と、制御部の一部とを示す模式図である。
ベルト駆動モータ340の回転駆動力は、モータ軸に固定された駆動ギヤ341と、駆動ローラ27の回転軸に固定された駆動受入ギヤ27aとを介して、駆動ローラ27に伝達される。これによって駆動ローラ27が回転すると、中間転写ベルト25が図中時計回り方向に無端移動する。すると、中間転写ベルト25を張架している従動ローラ21がベルトの移動に伴って従動回転する。従動ローラ21のローラ部表面には、ローラ上でのベルトのスリップを防止するための表面処理が施されており、且つ、従動ローラ21に対するベルトの巻き付き角はベルトのスリップを防止するために十分大きくなっている。従動ローラ21の回転軸には、ロータリーエンコーダ220が設けられており、これによって従動ローラ21の回転角速度が検知される。この検知信号は制御部の角速度検出部221に出力される。
角速度検出部221は、ロータリーエンコーダ220からの検知信号に基づいて従動ローラ220の回転角速度を演算する。一方、制御目標値出力部206は、従動ローラ220の回転角速度が所定の制御目標値ωref0に維持されるように、ベルト駆動モータ340を駆動させる。従動ローラ220の回転角速度が一定になったら、予め解析されたベルトの速度変動パターンに基づく位置ずれ補正データと、ホームポジションセンサHsからのパルス信号とに基づいて、適切な補正制御目標値ωref1を生成して出力する。
このようにして制御目標値出力部206から出力された補正制御目標値ωref1は、比較器222によって従動ローラ220の回転角速度と比較され、その偏差信号が比較器222から出力される。偏差信号は、ゲイン(K)223と、位相補償器224と、DA変換機225とを介してサーボアンプ226に入力され、サーボアンプ226はその制御信号に応じてベルト駆動モータ340の駆動速度を制御する。
ゲイン(K)223に入力される偏差信号は、中間転写ベルト25の周期的な速度変動分に基づいた制御目標値ωref1と、検出された従動ローラ回転角速度との偏差である。本プリンタにおいて、この偏差信号は、駆動ローラ27と中間転写ベルト25との間におけるスリップ、駆動ギヤ341や駆動受入ギヤ27aの偏心等による駆動伝達誤差、駆動ローラ27の偏心によるベルト移動速度変動などによって生まれる。ベルト駆動モータ340の駆動速度の微調整により、その偏差を小さくしてベルトを等速移動させるように、ベルト駆動モータ340の駆動速度を微調整するのである。例えば、PID制御器を用いてその偏差を減らし、且つ、オーバーシュートや発振を低減するような制御信号がサーボアンプ226から出力される。
図19は、スケールを付した中間転写ベルト25を用いる転写ユニット24を示す模式図である。また、図20は、中間転写ベルト25のおもて面における幅方向の一端に設けられたスケール25hと、目印検知センサ228とを示す模式図である。このスケール25hは、トナーや紙粉の付着を防止するためにベルト内面に設けてもよい。目印検知センサ228については、パターン像の1次転写が行われる1次転写ニップにできるだけ近づけて配設することが望ましい。
目印検知センサ228は、図20に示すように、例えば一対の発光素子228a及び受光素子228bを具備する反射型フォトセンサからなり、発光素子228aからスケール25hに向けて照射した光の反射光を受光素子228bによって受光する。この際に、スケール25hの目印25gと、目印間の箇所とで異なる反射光量が検出される。目印検知センサ228からの出力値は、目印25gの検知時には高い値となり、目印間通過時には低い値となる2値信号となる。
制御部の移動速度検出部227は、目印検知センサ228から出力される2値信号の周期の計測結果に基づいて、ベルトの移動速度を把握する。また、制御目標値出力部206は、移動速度検出部227によって得られたベルト移動速度が所定の制御目標値Vref0に維持されるように、ベルト駆動モータ340の駆動速度を調整する。
このようにして移動速度検出部227による計測結果に基づいてベルト駆動モータ340をフィードバック制御しても、ベルト全周に渡る目印ピッチ誤差、ベルト伸縮率の不均による目印ピッチ誤差などに起因して、ベルト速度が十分に安定化しない。また、スケール25の基材は樹脂テープからなり、ベルトに貼付されると長手方向両端の繋ぎ目部分で目印間隔ばらつく。更に、トナーや紙粉等によるスケール25gの汚れにより、目印の誤検知が発生する。
検知間隔データに基づいて算出されたベルトの速度変動量から求められる位置ずれ補正データは、これらの誤差を補正する数値となる。そして、ホームポジション検知時を基準として、位置ずれ補正データに応じた適切な補正制御目標値Vref1が制御目標出力部から出力される。このようにして出力された補正制御目標値Vref1は、図18の構成と同様の経路を辿り、サーボアンプ226から制御信号として出力される。
かかる構成では、目印の検知結果に基づくベルト速度制御で課題となっていた目印間隔誤差や不連続スケール部の問題を解消し、より高精度なベルト移動速度制御を行うことができる。
[第3変形例]
図21は、第3変形例に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部1と、白紙供給装置40と、原稿搬送読取ユニット50とを備えている。原稿搬送読取ユニット50は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置たるスキャナ150と、これに支持される原稿搬送装置たるADF51とを有している。
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから転写紙を送り出す送出ローラ43、送り出された転写紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部1の給紙路37に転写紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の転写紙をプリンタ部1内の給紙路37内に給紙する。
図22は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。プリンタ部1は、光書込装置2や、K,Y,M,C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の1次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15なども有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
図23は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
ドラムクリーニング装置15としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャー等を用いてもよい。
先に示した図22において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ27と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の駆動ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の駆動ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙を中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙に一括2次転写され、転写紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで転写紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
定着装置34に搬送された転写紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
先に示した図21において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
プリンタ部1の上に固定されたスキャナ150は、原稿MSの画像を読み取るための読取手段として、固定読取部151と、移動読取部152とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
一方、移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下であって、固定読取部151の図中右側方に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサ153で受光する。これにより、光学系を移動させながら、原稿を走査する。
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。そして、スキャナ150に固定された図示しない蝶番によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図21に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADFによって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150の固定読取部151に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの画像がスキャナ150の固定読取部151によって読み取られる。
本複写機を用いて原稿MSのコピーをとるときには、ADF51の原稿載置台53上に原稿をセットする。あるいは、ADF51を開いてスキャナ150の第2コンタクトガラス上に原稿をセットした後、ADF51を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しない操作部のスタートスイッチを押すと、ADF51によって複数の原稿MSが順次搬送されながら、固定読取部151によって読み取られる。あるいは、第2コンタクトガラス上の原稿MSが移動読取部152によって読み取られる。その後、操作部でのモード設定、あるいは操作部で自動モード選択が設定されている場合には、原稿MSの読み取り結果に応じて、フルカラーモードまたは白黒モードで画像形成動作が開始される。
フルカラーモードが選択されている場合には、各色の感光体4K,Y,M,Cが図中反時計回り方向にそれぞれ回転する。そして、上述したプロセスによって各色の感光体4K,Y,M,CにK,Y,M,Cトナー像が形成され、それらが中間転写ベルト25のおもて面に重ね合わせて1次転写される。一方、給紙カセット42からは記録紙が送り出され、分離ローラ45、給紙路44、搬送ローラ対47を経由した後、レジストローラ対33のローラ間に挟み込まれる。あるいは、手差しトレイから送り出された記録紙がレジストローラ対33のローラ間に挟み込まれる。そして、中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期し得るタイミングでレジストローラ対33から送り出されて、2次転写ニップに進入する。この2次転写ニップで中間転写ベルト25から記録紙に2次転写された4色トナー像は、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。この後、上述したような経路を辿って機外へと排出される。2枚以上の原稿MSが読み取られるときには、同様の作像プロセスが繰り返される。
記録紙に対する作像動作が終了した後には、後処理動作が行われる。この後処理動作では、各色の感光体4K,Y,M,Cをそれぞれ1周以上回転させながら、それら感光体に対して除電処理を施す。そして、全周に渡る除電処理が終了してから、各色の感光体4K,Y,M,Cや中間転写ベルト25の駆動を停止させる。
白黒モードが選択されている場合には、転写ユニット24の図示しないブラケットを移動させて、4つの感光体のうち、Y,M,C用の感光体4Y,M,Cから中間転写ベルト25を離間させる。そして、K用の感光体4Kのみを図中反時計回り方向に回転させながら、K用のプロセスユニット3Kにおいて、上述したプロセスによって感光体4K上にKトナー像を形成した後、中間転写ベルト25上に1次転写する。この際、白黒モードでは必要のない感光体4Y,M,Cや、現像装置6Y,M,Cを停止させておくことで、感光体や現像剤の不要な消耗を回避する。
図7は、中間転写ベルト25に形成される転写位置調整用のパターン像であるレジスト調整用パターン像910を示す模式図である。このレジスト調整用パターン像910は、図示のように、黒パッチ像911K、シアンパッチ像911C、マゼンタパッチ像911M、イエローパッチ像911Yをそれぞれ副走査方向に対して約45°傾けて所定ピッチで並列させたシェブロンパッチと呼ばれるパターンになっている。そして、中間転写ベルトの画像形成可能領域におけるベルト幅方向の両端部分にそれぞれ形成される。このようなレジスト調整用パターン像の各パッチ像をパッチ検知センサで検知することで、中間転写ベルトの表面移動に応じて基準色である黒と残り3つのカラー色との検知時間差を検出する。具体的には、図中右から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、黒、黒、シアン、マゼンタ、イエローの順に形成したラインパターンを、センサで順次読み取ることで、基準色である黒の検知時刻と残り3つのカラー色との検知時刻との差(検知時間差)tky,tkm,tkcを求める。そして、求めた各検知時間差と理想値との差より、黒に対する各カラー色の副走査レジストのズレ量を求める。また、パターンセンサ216の検知結果から、同じ色について傾き角の異なる2つのラインパターンの検知時間差tk,tc,tm,tyを求め、求めた各検知時間差と理想値との差より、各色の主走査レジスト(画像全体の相対的な位置)のズレ量を求める。
走査ラインの傾き量は、ベルト幅方向両端部分にそれぞれ形成した1組の検知用パターン74間における副走査レジスト差から求めることができる。このように求めた走査ラインの傾き量に基づいて、トロイダルレンズの傾き調整手段を駆動して走査ラインの傾きを補正する。副走査レジストを補正する場合、各検出値の平均から副走査レジストのズレ量を求め、ポリゴンミラー1面おき、つまり一走査ラインピッチを単位として副走査方向における書出しタイミングを合わせる。または、感光体の駆動モータの平均回転角速度を調整し、感光体の表面上における書込位置と転写位置との間のドラム回転所要時間を調整することで補正する。
制御部は、図7に示した転写位置調整用パターン74の検知信号から求めた各種補正量に基づき、スキュー補正、主走査レジストの変更、副走査レジストの変更及び倍率誤差に基づく画像周波数の変更を実行すべく、中間転写ベルト25の駆動源である図示しないステッピングモータの駆動及び書込制御に対してその設定変更を行う。書込制御は、主走査レジスト及び副走査レジストの制御と共に、出力周波数を非常に細かく設定できるデバイス、例えばVCO(voltage controlled oscillator)を利用したクロックジェネレータ等を各色について備えている。本プリンタの画像形成装置では、その出力を画像クロックとして用いている。
図24は、本複写機の中間転写ベルト25上のK−Y間における(Kトナー像とYトナー像とにおける)色ずれ量と、ベルト厚み変動の全振幅PPとの関係の一例を示すグラフである。このグラフは、先に図5に示したグラフと同様に、平均厚み0.1[mm]、周長900[mm]の単層ベルトのパラメータを基に、駆動ローラを一定角速度で駆動した際のベルト厚み変動によって発生するベルト位置変動変動量を試算した結果に基づいて作成されたものである。各色の感光体4Y,M,C,Kは110[mm]のピッチで等間隔に配設されている。図示のように、より高次の周期で出現する速度変動成分ほど、色ずれ量が少なくなることがわかる。
以上の構成の本複写機において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cのうち、C用のプロセスユニット3Cによってベルト速度変動パターン検知用のパターン像を形成する。そして、それの各トナーパッチ像を図22に示した第1パッチ検知センサPs1、第2パッチ検知センサPs2によって順次検知した結果に基づいて、ベルト1あたりにおける速度変動パターンを検出する。
[第4変形例]
図25は、第4変形例に係る複写機のプリンタ部における転写ユニット24とその周囲構成とを示す拡大構成図である。この複写機は、各感光体4Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像を、ベルト部材たる無端状の紙搬送ベルト25’のおもて面に保持されながら搬送される記録紙Pに直接重ね合わせて1次転写する点の他が、第3変形例に係る複写機と同様の構成になっている。
次に、本発明を適用した画像形成装置として、複写機の第2実施形態について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態の第3変形例に係る複写機と同様である。
図26は、本複写機のY用のプロセスユニット3Yによって中間転写ベルト25上に形成された速度変動検知用のパターン像の検知データに基づいて作成されたYパッチ間隔変動量と、時間との関係を示すグラフである。また、図27は、K用のプロセスユニット3Kによって中間転写ベルト25上に形成された速度変動検知用のパターン像の検知データに基づいて作成されたKパッチ間隔変動量と、時間との関係を示すグラフである。図中G5、G7で示されるグラフは、それぞれイエローとブラックパターンの累積パッチ間隔データの傾き分を除去した変動量を示している。101、103の変動には、ベルト周期変動成分の他に、感光体ドラム、駆動ローラ等の変動成分が含まれている。中間転写ベルト10の回転周期は約5秒である。同図中に、直交検波処理によって得られたベルト周期変動成分(1〜3次成分)の変動量、位相値を基にパッチ間隔の変動を示したのがG6、G8である。これは、検知間隔データの変動(G5、G7)に含まれるベルト周期の変動成分を示している。
図26と図27とを比較すると同じベルト周期変動に対して大きく異なるベルト周期変動が得られている。この理由を先に説明した現象をベルト周期変動の1次成分に着目して説明する。例えば、イエローパターンは、ベルト速度が速い時に1次転写位置TPで転写したとする。パッチ間隔は広くなりベルト上に形成される。このパターン群は検知ポイントDPまで搬送される。
本複写機において、各感光体は110[mm]の間隔で配設されている。本複写機は、像検知手段たるパッチ検知センサを1つしか備えておらず、Kトナーパッチ像の1次転写位置TPkからパッチ検知センサPsによる検知位置DPまでのベルト移動距離が110[mm]になっている。また、Yトナーパッチ像の1次転写位置TPyから検知位置DPまでのベルト移動距離が440[mm]になっている。中間転写ベルト25の周長が900[mm]となっているため、Yトナーパッチ像の1次転写位置TPyから検知位置DPまでのベルト移動距離はベルト周長の約半分である。従って、ベルト1周あたりに1周期で出現する速度変動成分の場合、ベルトがプラス側の変動ピークの速度で移動している際に中間転写ベルト25上に1次転写されたYトナーパッチ像が検知位置DPで検知されるときには、ベルトが概ねマイナス側の変動ピークの速度で移動する。これにより、変動成分が増幅して検知されるため、僅かな速度変動でも敏感に検知される。
一方、K用のパターン像の場合、ベルト1周あたりに1周期で出現する速度変動成分に着目してみると、次のようなことがわかる。即ち、ベルトがプラス側の変動ピークの速度で移動している際に中間転写ベルト25上に1次転写されたKトナーパッチ像は、その後、ベルトの無端移動に伴って110[mm]移動した時点で、パッチ検知センサPsによって検知される。Yトナーパッチ像に比べて移動距離が短いため、ベルトの速度はまだプラス側の偏差をもっている。これにより、1次転写時におけるプラス側のベルト速度変動によるパッチ間隔の広がりが、検知時のプラス側のベルト速度変動によって打ち消されてしまうため、1周期の速度変動成分を敏感に検知することができなくなる。但し、ベルト1周あたりに2周期で出現する速度変動成分については、1周期で出現する速度変動成分よりも敏感に検知することができる。
このように、感光体4Y,M,C,Kのトナーパッチ像の検知間隔データそれぞれに異なるベルト周期変動1次成分の変動量増幅率が存在する。検知間隔データに含まれるノイズ成分は、各感光体ドラムのパターンにおいて同程度と考えられるので、この変動量増幅率は変動の検知精度として扱うことができる。ベルト周期変動2次成分、3次成分においても同様に異なる変動量増幅率が存在する。これは、ベルトの速度変動量とパッチ間隔の変動量の関係式である上記数13の式、上記数20の式に含まれる2sin(φ/2)に相当する。位相も同様に、1次転写位置TPから検出ポイントDP間の距離に従い変化する。この位相変化量は、位相の関係式である上記数14の式、数21の式に含まれるφ/2に相当する。本実施形態において、各色の検知間隔データの各ベルト周期変動成分(1次〜3次)の変動量増幅率及び位相変化量を表2に示す。
表2より、イエローパターンのベルト1次成分の変動量増幅率は2である。これは、実際のベルト位置変動(速度変動)変動量の2倍の変動変動量が検知間隔データから検出されることを示している。一方、イエローパターンのベルト2次成分の変動量増幅率は0.14である。実際の変動に対して0.14倍の変動が検知間隔データより検出される。同様に3次成分の変動量増幅率は、−1.99である。これは、変動量が1.99倍で反転(逆位相)することを示している。ブラックパターンの変動量増幅率は、2次、3次成分が高く、1次成分が比較的低い。このような各周期に対する変動量増幅率から、図26と図27とに示した検知間隔データの違いが生じている。よって、イエローパターンは1次と3次成分の検知精度が高く、2次成分の検知精度が低い。2次成分は、ばらつきの大きいデータとなる。
そこで、本複写機においては、速度変動パターン検知用のパターン像として、Y用のプロセスユニット3Yと、K用のプロセスユニットとによってそれぞれベルト移動方向に並ぶように形成された複数のYトナーパッチ像及びKトナーパッチ像からなるもの、を形成するようになっている。そして、Yトナーパッチ像の検知間隔に基づいて、ベルト1周あたりに1周期の割合で出現する速度変動成分や、3周期の割合で出現する速度変動成分を検出するとともに、Kトナーパッチ像の検知間隔に基づいて、ベルト1周あたりに1周期の割合で出現する速度変動成分を検出する。あるいは、YトナーパッチとKトナーパッチの検知間隔データから、同じ周期の変動成分同士を加算してから、変動量増幅率、位相変化量を考慮した値で除算する。これにより、低い変動量増幅率によるノイズNの影響を避けて平均値を算出することが可能となる。
なお、先に説明した第4変形例のように、各色の感光体上のトナー像を、紙搬送ベルト上の記録紙Pに直接重ね合わせて1次転写させるようにしてもよい。
これまで、電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置について説明してきたが、直接記録方式によって画像を形成する画像形成装置にも、本発明の
適用が可能である。
以上、第1実施形態に係るプリンタにおいては、複数の像検知手段たる複数のパッチ検知センサ(Ps1、Ps2)を、互いにベルト表面移動方向の異なる位置でパターン像における個々のトナーパッチ像を検知させるように配設するとともに、それぞれのパッチ検知センサによるトナーパッチ像の検知結果に基づいて、それぞれ異なる周期で発生する速度変動又は位置変動の変動量を演算させるように、変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、既に説明したように、互いに中間転写ベルト25の表面移動方向の異なる位置に配設された複数のパッチ検知センサにより、ベルト周方向におけるトナーパッチ像の1次転写位置と、検知位置との距離を複数の値に設定した状態で、それぞれベルト速度変動を検知する。そして、それぞれの距離に応じて、ベルトの速度変動パターンに含まれる様々な周期の速度変動成分うち、特定周期のものをそれぞれ敏感に検出することで、従来に比べて、より多くの速度変動成分を敏感に検出することができる。
また、第1実施形態の第3変形例や第4変形例に係る複写機においては、各色のプロセスユニット、光書込装置2、転写ユニット24等からなる作像手段として、互いにベルト表面移動方向の異なる位置で、中間転写ベルト25の表面、あるいは紙搬送ベルトの表面に保持される記録紙P、にトナー像を形成する複数のプロセスユニットを有するもの、を用いている。かかる構成では、ベルト速度変動に起因して発生する各色の色ずれ量を従来よりも低減することができる。
また、第1実施形態に係るプリンタの速度変動パターンの第1演算法においては、互いに異なる周期で発生する複数のベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ、複数のパッチ検知センサのうちでその変動量を最も感度良く検出し得るものによる検知結果に基づいて演算するように、変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、最も感度良く検出した変動量に基づいて速度変動パターンを演算することで、ベルトの速度変動を効果的に抑えることができる。
また、第1実施形態に係るプリンタの速度変動パターンの第2演算法においては、互いに異なる周期で発生する複数のベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ、複数のパッチ検知センサによる検知結果の平均値に基づいて演算するように、変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、平均値を採用することで、検知感度の低いデータによる感度低下を抑えて、ベルト速度変動を精度良く検知することができる。
また、第1実施形態に係るプリンタにおいては、互いに異なる周期で発生する複数のベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ、その変動量を最も感度良く検出し得るパッチ検知センサによる検知結果、あるいは、第2演算法における上記平均値、に加えて、トナーパッチ像の1次転写位置と検知位置との相対位置関係によって決まる変動量増幅率にも基づいて演算するように、変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、増幅して検知した変動量を、1次転写位置から検知位置までの距離によって決まる変動量増幅率によって補正することで、ベルト速度変動量を高精度に求めることができる。
なお、第1実施形態に係るプリンタにおいては、複数のパッチ検知センサのうち、第2パッチ検知センサPs2つについては、中間転写ベルト25の周面上におけるトナーパッチ像の1次転写位置と、第2パッチ検知センサPs2による検知位置との距離がベルト周長の半分になる位置に配設するとともに、第1パッチ検知センサPs1については、1次転写位置と検知位置との距離がベルト周長の4分の1になる位置に配設することが望ましい。このようにすることで、第2パッチ検知センサPs2によってベルト1周あたりに奇数周期で出現するベルト速度変動成分を高感度に検知するとともに、第1パッチ検知センサPs1によってベルト1周あたりに偶数周期で出現するベルト速度変動成分を高感度に検知することが可能になるからである。
また、第2実施形態に係る複写機においては、速度変動小パターン検知用のパターン像として、作像手段におけるY用のプロセスユニット3YとK用のプロセスユニット3Kとによってそれぞれベルト表面移動方向に複数並べたトナーパッチ像からなるもの、を形成する制御を実施させるようにパターン像形成制御手段たる制御部を構成している。そして、パターン像にて互いに異なるプロセスユニットによって形成された互いに異なる色のトナーパッチ像のパッチ検知センサPsによる検知タイミングに基づいて、それぞれ異なる周期で発生する速度変動又は位置変動の変動量を演算させるように変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、互いに中間転写ベルト25の表面移動方向の異なる位置に配設されたプロセスユニットによってそれぞれパターン像内のトナーパッチ像を形成することで、ベルト周方向におけるトナーパッチ像の1次転写位置と検知位置との距離を複数の値に設定した状態で、それぞれベルト速度変動を検知する。これにより、それぞれの距離に応じて、ベルトの速度変動パターンに含まれる様々な周期の速度変動成分うち、特定周期のものをそれぞれ敏感に検出することで、従来に比べて、より多くの速度変動成分を敏感に検出することができる。
なお、第2実施形態に係る複写機においては、互いに異なる周期で発生する複数のベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ、Y用やK用のプロセスユニットによってそれぞれ形成されるYトナーパッチ像やKトナーパッチ像のうちで変動量を最も感度良く検出し得るトナーパッチ像のパッチ検知センサによる検知結果に基づいて演算するように、変動量演算手段たる制御部を構成すればよい。かかる構成では、上述した第1演算法と同様に、最も感度良く検出した変動量に基づいて速度変動パターンを演算することで、ベルトの速度変動を効果的に抑えることができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、Y用やK用のプロセスユニットによってそれぞれ形成されるYトナーパッチ像やKトナーパッチ像をパッチ検知センサPsによってそれぞれ検知した結果の平均値に基づいて、互いに異なる周期で発生するベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ演算するように、変動量演算手段たる制御部を構成してもよい。かかる構成では、上述した第2演算法と同様に、平均値を採用することで、検知感度の低いデータによる感度低下を抑えて、ベルト速度変動を精度良く検知することができる。
また、第2実施形態に係るにおいては、互いにに異なる周期で発生する複数のベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量をそれぞれ、その変動量を最も感度良く検出し得る色のトナーパッチ像のパッチ検知センサによる検知結果、又は、前述の平均値、に加えて、トナーパッチ像の1次転写位置と検知位置との相対位置関係によって決まる変動量増幅率にも基づいて演算するように、制御部を構成している。かかる構成では、増幅して検知した変動量を、1次転写位置から検知位置までの距離によって決まる変動量増幅率によって補正することで、ベルト速度変動量を高精度に求めることができる。
なお、第2実施形態に係る複写機においては、Y用、K用の2つのプロセスユニットのうち、一方については、中間転写ベルト25の周面上におけるトナー像の1次転写位置と検知位置との距離がベルト周長の半分になる位置に配設するとともに、他方については、1次転写位置と検知位置との距離がベルト周長の4分の1になる位置に配設することが望ましい。このようにすることで、一方のプロセスユニットによって形成したトナーパッチ像の検知結果に基づいてベルト1周あたりに奇数周期で出現するベルト速度変動成分を高感度に検知するとともに、他方のプロセスユニットによって形成したトナーパッチ像の検知結果に基づいてベルト1周あたりに偶数周期で出現するベルト速度変動成分を高感度に検知することが可能になるからである。
また、各実施形態に係るプリンタや複写機においては、ベルト速度変動又はベルト位置変動の変動量と、ベルト速度変動又はベルト位置変動の位相とを直交検波処理によって演算させるように、変動量演算手段たる制御部を構成している。かかる構成では、ゼロクロスピークやピークに基づいて変動量を検知する構成に比べて、変動量と位相とを精度良く検出することができる。特に、1次〜3次などといった具合に、互いに周期の異なる複数の変動成分を検出する本発明においては、他の変動成分の影響を受けることなく、それぞれの周期の変動成分の変動量と位相とを精度良く検出することができる。
なお、各実施形態や各変形例に係るプリンタや複写機においては、速度変動パターン検知用のパターン像として、ベルトの周長以上であって且つ像担持体たる感光体の円周面周長の整数倍の長さに渡って複数のトナーパッチ像を並べたもの、を形成させることが望ましい。このようにすることで、直交検波による各周期の変動成分の変動量を算出する上で、感光体の速度変動の影響を受けずに、その変動量を高精度に算出することができるからである。これは、感光体とベルトとの変動成分が互いに整数倍の周期となって打ち消し合うことによる。
また、各実施形態や各変形例に係るプリンタや複写機においては、速度変動パターン検知用のパターン像として、ベルトの周長以上であって且つ駆動ローラのローラ周面における周長の整数倍の長さに渡って複数のトナーパッチ像を並べたもの、を形成させることが望ましい。このようにすることで、直交検波による各周期の変動成分の変動量を算出する上で、感光体の速度変動の影響を受けずに、その変動量を高精度に算出することができるからである。これは、感光体と駆動ローラ27との変動成分が互いに整数倍の周期となって打ち消し合うことによる。
また、各実施形態や各変形例に係るプリンタや複写機においては、速度変動パターン検知用のパターン像内における互いに隣り合うトナーパッチ像のパッチ検知センサによる検知時間間隔に基づいて上記変動量を演算するように、制御部を構成している。かかる構成では、数個おき、あるいは数十個おき毎のトナーパッチ像の検知時間間隔に基づいて変動量を演算する場合に発生する計時データのメモリ量の増大を回避することができる。