以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式によって画像を形成する複写機の第1実施形態について説明する。
まず、第1実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図2は、第1実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部1と、白紙供給装置400と、原稿搬送読取ユニット500とを備えている。原稿搬送読取ユニット500は、プリンタ部1の上に固定された原稿読取装置たるスキャナ502と、これに支持される原稿搬送装置たるADF501とを有している。
白紙供給装置400は、ペーパーバンク401内に多段に配設された2つの給紙カセット402、給紙カセットから記録紙を送り出す送出ローラ403、送り出された記録紙を分離して給紙路404に供給する分離ローラ405等を有している。また、プリンタ部1の給紙路37に記録紙を搬送する複数の搬送ローラ406等も有している。そして、給紙カセット内の記録紙をプリンタ部1内の給紙路37内に給紙する。
図3は、プリンタ部1の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。プリンタ部1は、K,Y,M,C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着ユニット60等を備えている。また、これらの他、先に図2に示した光書込装置2、カール除去ローラ群34、排紙ローラ対35、スイッチバック装置36、給紙路37等も備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、図3に示したように、それぞれ、潜像担持体たる感光体と、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の1次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15なども有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
図4は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。なお、現像装置6として、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクターブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクターブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクターブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。
ドラムクリーニング装置15としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
先に示した図3において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら、駆動ローラ27aの回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
転写ユニット24の図中下方には、送りローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、中間転写ベルト25のループ内で中間転写ベルト25を掛け回している駆動回転体としての駆動ローラ27aとの間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の中間転写ベルト25のループ内で、中間転写ベルト25が掛け回されている駆動ローラ27aは、接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ記録紙を中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括2次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着ユニット60へと搬送される。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置32によって掻き取り除去される。
定着ユニット60に搬送された記録紙は、定着ユニット60内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着ユニット60から送り出される。そして、図2に示したカール除去ローラ群34によって形成されるニップと、排紙ローラ対35によって形成されるニップとを経由した後、機外へと排出される。
紙搬送ユニット22および定着ユニット60の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録紙が、切換爪で記録紙の進路を記録紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
プリンタ部1の上に固定されたスキャナ502は、原稿MSの画像を読み取るための読取手段として、固定読取部503と、移動読取部504とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する固定読取部503は、原稿MSに接触するようにスキャナ502のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF501によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSを走査する。
一方、移動読取部504は、原稿MSに接触するようにスキャナ502のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下であって、固定読取部503の図中右側方に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサで受光する。これにより、光学系を移動させながら、原稿を走査する。
プリンタ部1内には、シート状の記録部材である記録紙Pを搬送するための搬送路が形成されている。そして、プリンタ部1内では、上述した光書込装置2と、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cと、転写ユニット24との組合せにより、搬送路内を搬送される記録部材たる記録紙Pにトナー像を形成するトナー像形成手段が構成されている。上述した給紙路37は、この搬送路の一部であり、白紙供給装置400から受け取った記録紙Pを、これに対するトナー像形成位置である2次転写ニップの直前まで搬送するための記録前経路となっている。そして、2次転写ニップ以降が、トナー像形成後の記録紙Pを搬送するための記録後経路となっている。この記録後経路は、2次転写ニップと、紙搬送ベルト29の上部張架面と、定着ユニット60内と、カール除去ローラ群34によるニップと、レジストローラ対35によるニップとを順に辿る経路である。
中間転写ベルト25としては、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を主材料とした単層ベルトや、ベルトの全層又はベルトの一部を弾性部材とした複数層弾性ベルトなどが使用される。中間転写ベルトに限らず、一般に、画像形成装置に用いられるベルトには複数の機能が要求される。
近年、要求される複数の機能を同時に達成するために、ベルト厚さ方向に複数の層を有する複数層ベルトが多く用いられる。例えば、中間転写ベルト25については、トナー離型性、感光体ニップ性、耐久性、抗張性、対駆動ローラ高摩擦性、対感光体低摩擦性などの複数の機能が要求される。
トナー離型性は、中間転写ベルト25から記録用紙への転写性の向上や当該中間転写ベルト上に残った転写残トナーに対するクリーニング性の向上を図る上で必要な機能である。感光体ニップ性は、各感光体4Y,M,C,Kに密着して中間転写ベルト25への転写性を向上させる上で必要な機能である。
また、耐久性は、経時使用によって亀裂や磨耗が少なく長期的な使用を可能にし、ランニングコストを低減する上で必要な機能である。抗張性は、ベルト駆動時のベルト周方向における伸縮を防止して高精度なベルト移動速度やベルト移動位置の制御を行う上で必要な機能である。
中間転写ベルト25の耐駆動ローラ高摩擦性は、駆動ローラ27aと中間転写ベルト25との間の滑りを防止して安定かつ高精度な駆動を実現する上で必要な機能である。耐感光体低摩擦性は、感光体4Y,M,C,Kと中間転写ベルト25との間に速度差が生じてもこれらの間で滑りを発生させて負荷変動を抑制する上で必要な機能である。
図5は複数層構造の中間転写ベルト25の1例を示す拡大破断斜視図である。これまで列記した機能を高い水準で同時に実現するためには、図示のような複数層構造の中間転写ベルト25を用いるとよい。図示の中間転写ベルト25は、厚みが500〜700[μm]以下となるように形成されたものである。なお、ベルト表面側(感光体ドラムと接触する面側)から順に、第1層25a、第2層25b、第3層25c、第4層25d、第5層25eになっている。
第1層25aはフッ素が充填されたポリウレタン樹脂のコート層である。この第1層25aにより、感光体4Y,M,C,Kと中間転写ベルト25との間の低摩擦性(対感光体低摩擦性)と、良好なトナー離型性とが実現される。
第2層25bはシリコン−アクリル共重合体のコート層であり、第1層の耐久性の向上と第3層25cの経時劣化を防止する役割を果たしている。
第3層25cは、厚みが約400〜500[μm]のクロロプレンからなるゴム層(弾性層)で、ヤング率が1〜20[Mpa]の範囲になっている。2次転写ニップにおいてトナー像や平滑性の悪い記録用紙などによる局部的な凹凸に応じて変形する。このため、トナー像に対して過度に転写圧を高めることがなく、文字の中抜けの発生が抑制される。また、平滑性の悪い記録用紙に対して良好な密着性が得られので、均一性の優れた転写画像を得ることができる。
第4層25dは、厚みが約100[μm]のポリフッ化ビニリデンの層であり、ベルト周方向の伸縮を防止する役割を果たしている。そのヤング率は500〜1000[Mpa]である。第5層25eは、ポリウレタンのコート層があり、駆動ローラ27aとの高摩擦性係数を実現している。
各層の他の材料としては、次のものが挙げられる。即ち、第1層25aや第2層25bでは、弾性材料による感光体への汚染防止と、中間転写ベルト25の表面への表面摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくすることによるクリーニング性の向上と、記録用紙への2次転写性の向上と図るために、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等を1種類あるいは2種類以上使用してもよい。また、表面エネルギーを小さくして潤滑性を高めるために、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体若しくは粒子を1種類あるいは2種類以上、又は、互いに粒径が異なる同種の粉体若しくは粒子を分散させてもよい。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成し、表面エネルギーを小さくした材料を使用してもよい。
第3層25cの弾性層としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマ等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。また、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。さらには、熱可塑性エラストマ(例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。
第4層25dとしては、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。また、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。
弾性ベルトとして伸びを防止する方法として、第4層25dのように伸びの少ない芯体樹脂層にゴム層を形成する方法、芯体層に伸びを防止する材料を入れる方法等があるが、とくに製法に関わるものではない。伸びを防止する芯体層を構成する材料は、例えば、綿、絹などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維などの無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、これらを織布状あるいは糸状にした繊維を用いることができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば、上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん、糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方、織布は、メリヤス織り等、どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、当然、導電処理を施すこともできる。
芯体層を設ける製造方法はとくに限定されるものではない。例えば、筒状に織った織布を金型等に被せてその上に被覆層を設ける方法、筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬して芯体層の片面あるいは両面に被覆層を設ける方法、糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付けてその上に被覆層を設ける方法等を挙げることができる。
また、層によっては、抵抗値調節用導電剤が含まれる。例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、これら上記材料に限定されるものではない。
次に、第1実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
図6は中間転写ベルト25における駆動ローラ27aに対する掛け回し箇所を拡大して示す拡大模式図である。中間転写ベルト25として、均一なベルト材質の単層ベルトでありかつ、その内周面側と外周面側との伸縮度の絶対値がほぼ一致するものを用いた場合には、そのベルト厚み方向の中央位置と駆動ローラ27a表面との距離がPLDとなる。これに対し、図5に示したような複数層からなるものを用いた場合には、複数の層のうち、硬質な層の膜厚方向の位置や、硬質な層と軟質な層のとの間における互いの層の伸縮性の違いなどにより、ベルト厚み方向の中央位置からずれた位置と、駆動ローラ27a表面との距離がPLDとなる。このPLDについては、次の数3の数式によって求めることができる。
この数式中の「PLDave」は、ベルト1周におけるPLDの平均値を示している。例えば、ベルト平均厚みが100[μm]の単層ベルトの場合、PLDaveは概ね50[μm]程度となる。また、数式中の「f(d)」は、ベルト1周におけるPLDの変動を示す関数である。更に、「d」は、ベルト周上の基準となる地点からの位置(ベルト1周を2πとした時の位相)を示す。「f(d)」はベルト1周を周期とする周期関数である。ベルト周方向においてPLDが変動していると、駆動ローラ25aの回転角速度や回転角変位に対するベルト移動速度やベルト移動距離が変動することになる。中間転写ベルト25が掛け回された状態で、中間転写ベルト25の移動に伴って従動回転する従動ローラ27cについても同様のことが言える。ベルト移動速度やベルト移動距離に対する従動ローラ27cの回転角速度や回転角変位が変動するのである。
ベルト移動速度Vと駆動ローラ27aの回転角速度ω
1との関係は、次の数4の数式で表される。この式中の「r」は、駆動ローラ27aの半径を示している。また、κ
1は、中間転写ベルト25の駆動ローラ27aに対する掛け回し箇所におけるPLD変動量実効係数を示している。
PLDは、ローラとベルトの接触状態や、ローラに対するベルト巻き付き量などによって変化する。また、それらは、個々の画像形成装置によって誤差があるので、PLD変動量実効係数κ1も個々の画像形成装置によって誤差がある。なお、以下、数4の式中のf(d)をPLD変動という。
数4の数式から、PLD変動f(d)が存在して、ベルト移動速度Vと駆動ローラ27aの回転角速度ω1との関係が変化することが分かる。従って、駆動ローラ27aが一定の回転角速度(ω1=一定)で回転している場合、中間転写ベルト25の移動速度VはPLD変動f(d)により変化する。
便宜上、中間転写ベルト25のPLDが0.5である、即ち、ベルト厚みの中央がベルトピッチ線になると仮定して考えてみると、次のようになることがわかる。即ち、中間転写ベルト25の周方向における様々な箇所のうち、ベルト1周の平均厚みよりも厚い箇所が駆動ローラ27aに巻き付いている時には、PLD変動f(d)が正の値を採り、ローラ実効半径Rが増加する。そして、駆動ローラ27aが一定の回転角速度(ω1=一定)で駆動していても、ベルト移動速度Vはベルト1周あたりの平均速度よりも速くなる。逆に、ベルト1周の平均厚みよりも薄い箇所が駆動ローラ27aに巻き付いている時には、厚み変動f(d)が負の値を採り、ローラ実効半径Rが減少する。そして、駆動ローラ27aが一定の回転角速度(ω1=一定)で駆動していても、ベルト移動速度Vはベルト1周あたりの平均速度よりも遅くなる。従って、中間転写ベルト25の移動速度Vは、駆動ローラ27aの回転角速度ωを一定にしても、PLD変動f(d)により一定にならない。そのため、駆動ローラ27aの回転角速度ω1を検知し、その検知結果だけに基づいて中間転写ベルト25の駆動を制御しようとしても、中間転写ベルト25を所望の移動速度で駆動させることはできない。ベルト移動速度Vと従動ローラ27cとの関係においても、同様のことが言える。従動ローラ27cの回転角速度ω2を検知し、その検知結果だけに基づいて中間転写ベルト25の駆動を制御しようとしても、中間転写ベルト25を所望の移動速度で駆動させることはできないのである。
中間転写ベルトとして、材質が均一な単層ベルトを用いた場合、ベルトの内周面と外周面の伸縮度が一致するため、ベルトの移動速度を決定するベルトピッチ線は、概ねベルト厚み方向の中央位置となる。しかし、図5に示したような複数層ベルトを用いた場合、ベルトピッチ線は、ベルト厚み方向の中央位置とはならない。複数層ベルトにおいて、複数の層の中にヤング率が他の層よりも大幅に大きい層が存在する場合には、ベルトピッチ線がその層のほぼ中央位置になる。これは、高いヤング率を有する層(以下、「抗張層」という)が芯線となりながら、他の層が伸縮してローラに巻き付くからである。
図5に示した中間転写ベルト25の場合、抗張層である第4層25dのヤング率が他の層に比べて大幅に大きいので、この第4層25dの内部にベルトピッチ線が存在することになる。そして、このようにヤング率が大幅に大きい抗張層がある場合に、その抗張層のベルト周方向における厚みムラが、PLDの変動に大きく影響することになる。つまり、複数層ベルトにおいて、PLDは、主に、ベルトを構成する複数の層のうち、ヤング率が最も大きい層の影響を受けて決定される。
このほか、第4層25d(抗張層)の位置がベルト1周にわたってベルト厚み方向に変位している場合も、PLDが変動する。例えば、第4層25dとローラとの間に存在する第5層25eに厚みムラがあると、その厚みムラに応じて第4層25dのベルト厚み方向の位置が変化し、PLDが変動するのである。
図7は、第1実施形態に係る複写機のメイン制御部における回転処理部107を、中間転写ベルト25などとともに示すブロック図である。同図において、駆動源としてDCモータからなる駆動モータ201の回転軸には、駆動ギヤ202が固定されており、この駆動ギヤ202は、駆動ローラ27aの回転軸部材に固定された駆動受入ギヤ203に噛み合っている。これにより、駆動モータ201の回転駆動力が駆動ローラ27aに伝達される。そして、中間転写ベルト25が図中矢印Aの方向に無端移動すると、従動ローラ27cが従動回転する。
駆動モータ201としては、そのモータ軸の回転角速度を検知するエンコーダ内蔵タイプのものを用いている。駆動モータ201のモータ軸の回転角速度と、このモータ軸に対してギヤを介して繋がっている駆動ローラ27aの回転各速度とには、比例関係が成立する。よって、第1回転検知手段としての、駆動モータ201のエンコーダからの出力に基づいて、駆動ローラ27aの回転角速度(ω1)を把握することができる。つまり、駆動モータ201のエンコーダは、駆動回転体たる駆動ローラ27aの回転角速度を検知する第1回転検知手段として機能している。
中間転写ベルト25を掛け回した状態でベルト移動に伴って従動回転する従動ローラ27cの回転軸歩合には、図示しないロータリーエンコーダ(以下、従動エンコーダという)が取り付けられている。第2回転検知手段としての従動エンコーダからの出力値に基づいて、従動ローラ27cの回転角速度(ω2)を把握することができる。つまり、従動エンコーダは、従動回転体たる従動ローラ27cの回転角速度を検知する第2回転検知手段として機能している。
エンコーダとしては、公知の光学エンコーダを用いることができる。光学エンコーダは、例えば、透明のガラス又はプラスチック等の透明部材で作られた円盤上の同心円上に一定間隔で形成された複数のタイミングマークを有している。そのタイミングマークをモータ軸やローラの回転軸に固定して、光学的に検知するようにしたものである。例えば、磁性体からなる円盤上の同心円上に磁気的にタイミングマークを記録し、これをモータ軸やローラ回転軸に固定し、そのタイミングマークを磁気ヘッドで検出するような構成の磁気エンコーダを用いることもできる。また、公知のタコジェネレータを用いることもできる。
回転角速度については、例えば、エンコーダから連続的に出力されるパルスの時間間隔を計測し、その逆数に基づいて算出することができる。なお、エンコーダから連続的に出力されるパルスの数をカウンして回転角変位を算出し、その算出結果を用いてもよい。
第1実施形態に係る複写機では、駆動モータ201のモータ軸に取り付けたエンコーダからの出力に基づいて駆動ローラ27aの回転角速度(又は回転角変位)を求めるようにしたが、駆動ローラ27aの回転軸に取り付けたエンコーダからの出力に基づいて同回転角速度を求めるようにしてもよい。なお、駆動モータ201としてステッピングモータを用いた場合には、駆動モータ201に対する駆動パルスに基づいて、駆動ローラ27aの回転角速度や回転角変位を求めることも可能である。また、DCサーボモータを用いた場合には、駆動モータ201自体が回転検出器を備える構成のものが多く、低コストに回転検出が可能である。駆動ローラ27aや従動ローラ27cとしては、それらの表面上でベルトのスリップが生じないように、表面処理を施したものを用いており、且つ、それらローラに対するベルト巻き付き量を十分に確保している。
メイン制御部の一部である回転処理部107は、コントローラ108、従動角速度(ω2)検出部109、第2比較回路110、第1比較回路111、駆動角速度(ω1)検出部112、第1ゲイン回路113、第1位相補償器114、第2ゲイン回路115、第2位相補償器116等を有している。
駆動モータ201のエンコーダからの出力は、回転処理部107の駆動角速度(ω1)検出部112に入力される。また、従動エンコーダからの出力は、回転処理部107の従動角速度(ω2)検出部109に入力される。
回転処理部107は、駆動モータ201の駆動速度を調整するモードとして、第1条件モードと、第2条件モードと、プリントジョブモードと具備しており、これらモードを必要に応じて切り替えるようになっている。第1条件モードは、駆動モータ201のエンコーダからの出力を一定にする、即ち、駆動ローラ27aの回転角速度を一定にする、という第1条件を満足させるように、駆動モータ201の駆動速度を調整するモードである。また、第2条件モードは、従動エンコーダからの出力を一定にする、即ち、従動ローラ27cの回転角速度を一定にする、という第2条件を満足させるように、駆動モータ201の駆動速度を調整するモードである。また、プリントジョブモードは、制御手段としてのメイン制御部がエンコーダからの出力を後述する制御目標値ωrefに一致させるように駆動モータ201の駆動速度を調整するベルト駆動速度調整処理を実施して、中間転写ベルト25の移動速度の安定化を図るモードである。
回転処理部107の第1位相補償器114や第2位相補償器116は、から出力されるモータ制御信号を出力は、切替スイッチSW1を介して、DA変換器204に出力される。そして、サーボアンプ205を経由して、駆動モータ201に入力される。
回転処理部107内において、駆動角速度(ω1)検出部112は、駆動モータ201のエンコーダからの出力信号に基づいて、駆動ローラ27aの回転角速度ω1を算出する。また、従動角速度(ω2)検出部109は、従動エンコーダからの出力信号に基づいて、従動ローラ27cの回転角速度ω2を算出する。
コントローラ108は、後述するCPUからの制御モード指令に応じて、第1条件モードの場合には第1条件制御目標値ωref1を、第2条件モードの場合には第2条件制御目標値ωref2を出力する。同時に、切替信号を切替スイッチSW1に出力する。具体的には、第1条件モードの場合には、第1位相補償器114とDA変換器204とを短絡させるスイッチ切替動作を実現させる内容の切替信号を切替スイッチSW1に出力する。また、第2条件モードの場合には、第2位相補償器116とDA変換器204とを短絡させるスイッチ切替動作を実現させる内容の切替信号を切替スイッチSW1に出力する。
コントローラ108から出力された第1条件制御目標値ωref1は、第1比較器111によって駆動モータ201の回転角速度ω1と比較され、第1比較器111を両者の差の信号を出力する。この信号は、第1ゲイン回路113と第1位相補償器114とを経由して、DA変換器204に出力される。これにより、負荷変動に影響されることなく、駆動モータ201が一定速度に駆動される。そのために、例えば、第1ゲイン回路113及び第1位相補償器114でPID制御系を構成し、制御対象の駆動モータ201が目標速度に対して偏差を減らし、且つ、オーバーシュートや発振を生ずることのないような内容にモータ制御信号が構築される。
第2条件モードの場合bには、切替スイッチSW1に対して第2位相補償器116とDA変換器204とを短絡させる動作を行わせる切替信号がコントローラ108から出力される。また、コントローラ108から出力された第2条件制御目標値ωref2は、第2比較器110によって従動ローラ27cの回転角速度ω2と比較され、その差の信号が第2比較器110から出力される。第2ゲイン回路115や第2位相補償器116は、負荷変動や駆動伝達歯車の伝達誤差に影響されることなく、従動ローラ27cを一定速度に制御するようなモータ制御信号を構築する。
第1条件モードでは、駆動モータ201の回転角速度がほぼ一定に維持される。また、駆動伝達歯車の伝達誤差があるものの、駆動ローラ27aの回転角速度ω
1もほぼ一定に維持される。このときの中間転写ベルト25の速度V
1は、数5の数式に示すように、PLD変動f(d)や、駆動ローラ27a上におけるPLD変動量実効係数κ
1によって決定される。なお、数5において、R
1は駆動ローラ27a上のベルト実効半径としての「駆動ローラ半径r
1+PLD
ave」を意味している。
また、第2条件モードでは、従動ローラ27cの回転角速度w
2がほぼ一定になる。このときの中間転写ベルト25の速度V
2は、数6の数式に示すように、PLD変動f(d)や、従動ローラ27c上におけるPLD変動量実効係数κ
2によって決定される。なお、同式中におけるR
2は従動ローラ27c上のベルトの実効半径としての「従動ローラ半径r
2+PLD
ave」を意味している。
第1実施形態に係る複写機のメイン制御部は、ユーザーのもとで初めて実施する初期運転時、あるいは中間転写ベルト25、ベルトを張架するローラ、ベルト駆動伝達系の部品等が交換された直後など、所定のタイミングで、実効係数算出処理を実施する。そして、この実効係数算出処理において、次のようなルーチンを行う。即ち、まず、第1条件モードを実施しながら、中間転写ベルト25上のパッチパターンを形成する。ピッチ検知用パターン像としてのパッチパターンは、ベルト移動方向に一定のピッチで並ぶ複数のパッチトナー像からなるものである。そして、それらパッチトナー像を、後述するパッチ検知センサ206によって順次検知していき、各パッチの検知タイミング時間間隔のずれに基づいて、各パッチ間のピッチずれ量を算出する。次いで、第2条件モードを実施しながら、中間転写ベルト25上のパッチパターンを形成する。そして、パッチパターンにおける、複数の目印としての複数のパッチトナー像を、目印検知手段としてのパッチ検知センサ206によって順次検知していき、各パッチの検知タイミング時間間隔のずれに基づいて、各パッチ間のピッチずれ量を算出する。第1条件モードや第2条件モードで得られたピッチずれ量の情報は、それぞれ中間転写ベルト25の速度変動量を表している。メイン制御部は、それらピッチずれ量に基づいて、第1条件と第2条件とにおける同一のベルト箇所についての速度変動比を求めた後、その速度変動比に基づいて、中間転写ベルト25における駆動ローラ27a上でのPLD変動量実効係数κ1と、従動ローラ27c上でのPLD変動量実効係数κ2との比を算出する。そして、算出結果と、PLD変動量実効係数κ1及びPLD変動量実効係数κ2のうち、予め所定値に設定された何れか一方とに基づいて、他方を求める。より詳しくは、第1実施形態に係る複写機においては、PLD変動実効係数κ1として、所定値としての「1」を用いるようになっており、この「1」を前述の比に代入することで、PLD変動量実効係数κ2の値を求めるようになっている。
図8は、中間転写ベルト25の一部を示す斜視図である。上述したパッチパターンPaは、中間転写ベルト25の幅方向の一端部に形成される。この一端部に対しては、目印検知手段としてのパッチ検知センサ206がベルトおもて面側から対向している。パッチ検知センサ206は、ベルトおもて面に照射する光を放つ発光素子206aと、ベルトおもて面で反射した光を受光する受光素子206cと、集光レンズ206bとを有している。発光素子206aは、LED等からなり、中間転写ベルト25上のパッチパターンPaの各パッチを検出するために必要な発光量で発光するものである。また、受光素子206cは、中間転写ベルト25のおもて面で反射した光の集光レンズ206bによる焦点となる位置に配設されている。パッチパターンPa内のパッチがパッチ検知センサ206との対向位置を横切るときには、反射光量が急激に変化する。この反射光量の急激な変化に基づいて、各パッチを検知することができる。
図9(a)は、パッチパターンPaの第1例を示す模式図である。同図において、パッチパターンPaは、Y,M,C,Kの4色のうち、何れか1色のトナーによって形成された複数のパッチからなる。これら複数のパッチは、ベルト移動方向における配設ピッチがPsになるように形成され、パッチパターンPa全体のベルト移動方向における長さがPiになっている。複数のパッチは、それぞれベルト移動に伴って上述したパッチ検知センサ206との対向位置を通過する際に、パッチ検知センサ206によって検知される。先頭のパッチが検知されたときの基準時刻からの経過時間をtk00とする。また、2つ目、3つ目、・・・パッチが検知されたときの基準時刻からの経過時間をtk01、tk02・・・とする。そして、先行する経過時間と、後続の経過時間との差に基づいて、各パッチ間のピッチずれ量が求められる。
図9(b)は、パッチパターンPaの第2例を示す模式図である。このパッチパターンPaは、光書込ユニット(1YM,1CK)内の光学系部品の温度変化に伴う各色トナー像の相対的な位置ずれを検知するためのものであり、本来は実効係数算出処理のためのものではない。但し、これを利用して、前述の位置ずれを検知するための処理と並行して実効係数算出処理を実施することも可能である。この場合、次のようにしてピッチずれ量を求めればよい。即ち、図示のパッチパターンPaは、Yのパッチ、Mのパッチ、Cのパッチ,Kのパッチが、この順で繰り返し並べられたものである。このようなパッチパターンPaにおいて、4色のうち、何れか1色のパッチについてだけ、その検知タイミングを先頭から順にtk00、tk01、tk002として取得すれば、図9(a)のパッチパターンと同様にして、その1色についてのパッチ間のピッチずれ量を求めることができる。
図10は、メイン制御部の一部をパッチ検知センサ206とともに示すブロック図である。パッチ検知センサ206で得られた信号は、増幅回路131によって増幅された後、フィルタ回路132によってノイズ成分が除去される。その後、A/D変換回路133によってアナログデータからデジタルデータに変換される。パッチ検知センサ206からの出力信号のサンプリングは、サンプリング制御部145によって制御され、所定のタイミング毎に、A/D変換回路133からの出力がFIFO(First−In−First−Out)メモリ144に格納される。格納されたデータは、I/Oポート106とデータバス105とを介してCPU101やRAM103にロードされる。CPU101は、ロードされたデータに基づいて、PLD変動量実効係数比を算出するための演算処理を行う。
また、CPU101は、上述したパッチ検知センサ206からの出力信号を適当なタイミングでサンプリングしている。中間転写ベルト25やパッチ検知センサ206の発光素子に劣化等が起こっても、上述したパッチパターンを確実に検知することができるように、発光量制御部130により、パッチ検知センサ206の発光素子の発光量を制御して、パッチ検知時のパッチ検知センサ206からの出力が所定のレベルになるようにしている。
メイン制御部のROM102には、種々のプログラムが格納されている。アドレスバス104により、ROMアドレス、RAMアドレス、各種入出力機器の指定が行われる。
パッチ検知センサ206からの出力信号には、様々なノイズ成分が重畳されているため、そのままでは、ベルト周回の周期で発生した位置変動を検出するのが困難である。そこで、第1実施形態に係る複写機においては、ベルト周回の周期で発生した位置変動を高精度に検出するのではなく、上述した第1条件モードと第2条件モードとにおける変動量の比を解析するようになっている。このとき、感光体の回転周期で発生するベルト速度変動などのノイズ成分をローパスフィルタ処理等で除去することで、変動量の比を高精度に求めることができる。これに対し、速度変動量だけを検出しようとすると、フィルタ処理により、ノイズ成分だけでなく、ベルト周回の周期で発生する速度変動も平滑化してしまうため、ノイズ除去とベルト周期の検出精度は、トレードオフの関係となってしまう。
中間転写ベルト25の表面移動方向に沿って並ぶ複数のパッチからなる上述したパッチパターンとして、図9(a)に示したもの、図9(b)に示したもの、のどちらを採用してもよい。パッチパターンのベルト移動方向における長さPiについては、ベルト1周以上の長さとする。
各パッチの間隔Psについては、様々な部材の周期的な回転速度変動を考慮して設定する。この回転速度変動としては、駆動ローラ27aの回転速度変動、駆動ローラ27aの駆動伝達系の歯車の回転速度変動、感光体の回転速度変動、感光体の駆動伝達系の歯車の回転速度変動などである。パッチ検知センサ206からの出力信号が示すパッチ検知タイミングには、それらの回転速度変動のすべてが重畳された結果であり、その中から、ローパスフィルタを利用してベルト回転周期で発生する速度変動のみを抽出する必要がある。個々のパッチの間隔Psについては、ベルト以外の回転速度変動のうち、最も大きいものに対して等間隔になるように設定されている。このようにすることで、ローパスフィルタ処理において、その変動を高精度に除去することが可能になる。また、ベルトの速度変動を高精度に検出するためには、間隔Psを比較的短く設定することが望ましい。
例えば、駆動モータ27aの回転角速度を一定にする第1条件モードにおいて、中間転写ベルト25の周回の周期で発生する速度変動成分の他に、感光体や駆動ローラの回転周期で発生する速度変動成分が比較的大きな割合で混入する場合には、その回転周期を考慮して間隔Psを設定する。感光体の直径=40[mm]、駆動ローラ27aの直径=30[mm]で、中間転写ベルト25の周長=900[mm]とすると、ベルト表面移動距離に換算した感光体、駆動ローラの回転周期は、それぞれ125.7[mm]と94.2[mm]になる。この場合、それらの回転周期の公約数である377[mm]内で複数のパッチを等間隔に配設するような値に間隔Psを設定する。そして、長さ377[mm]において複数回得られたパッチ検知タイミングの間隔の平均値を算出する際にローパスフィルタ(移動平均)処理を行うことで、感光体及び駆動ローラの速度変動成分を高精度に除去することができる。移動平均によるローパスフィルタ処理において、感光体や駆動ローラの速度変動成分がちょうど整数倍周期となり同変動成分値が打ち消し合って微少値になるからである。
駆動ローラ27aの駆動源である駆動モータ201の回転速度変動のように、中間転写ベルト25の回転周期とは大きくかけ離れている変動成分については、パッチ検知データをデジタル処理する過程において、ローパスフィルタ処理で除去することが可能となる。パッチパターン長Piについては、ローパスフィルタ処理後のデータが中間転写ベルト25の周長の整数倍になるように設定する。上述した例では、中間転写ベルト25の1周の長さ(900mm)について移動平均処理をするためには、長さ377[mm]分のデータが余分に必要になるため、パッチパターン長Piを1277[mm]以上にする。また、従動ローラ27cの回転角速度を一定にする第2条件モードにおいては、駆動ローラ27aの代わりに従動ローラ27cの周期変動を考慮して間隔Psやパッチパターン長Piを設定する。
パッチパターン内の各パッチをパッチ検知センサ206で検知する場合、CPU101によって、所定タイミングで各部に指令が出され、ROM102内に格納されているパッチパターンデータに基づいて、各色のプロセスユニットに制御信号が送られる。このとき、通常のプリントジョブモードと同じ条件で制御信号が生成される。これにより、各プロセスユニットは、パッチパターンの構成要素となる複数のパッチを感光体上に形成する。
パッチ検知センサ206からの出力信号は、サンプリング制御部145によって設定される所定のサンプリング周期でサンプリングされながら、A/D変換回路133によってディジタルデータに変換された後、離散データとしてFIFOメモリ144に格納される。FIFOメモリ144に格納されたデータは、パッチ検知センサ206の受光素子の受光量に応じた数値(以下、パッチセンサ出力値という)になっている。このパッチセンサ出力値は、トナー色やパッチに対する単位面積あたりのトナー付着量によって変化する。第1実施形態に係る複写機では、各パッチについてパッチ検知センサ206による被検位置を通過するタイミングを精度良く認識することが望まれる。そこで、パッチセンサ出力値が所定の閾値を超えたこと(あるいは下回ったこと)に基づいてパッチの通過タイミングを認識するのではなく、パッチセンサ出力値の変化の波形における立ち上がり又は立ち下がりのピークの出現タイミングをパッチの通過タイミングを認識するようになっている。このような認識により、中間転写ベルト25の速度変動に起因するパッチ内のトナー濃度のバラツキによる各パッチにおける被検位置のバラツキを抑えて、各パッチの間隔Psを高精度に検出することができる。このことについて、より詳しく説明すると、パッチセンサ出力値と所定の閾値との比較に基づいてパッチの通過タイミングを認識する方法において、ベルト速度変動に起因するベルトと感光体との線速差によってパッチ内に濃度ムラが発生したとする。すると、パッチの端部でない部分の通過タイミングを端部の通過タイミングと認識してしまったり、パッチ通過中のセンサ出力値が閾値を超えずにパッチが認識されなかったりすることがある。これに対し、パッチセンサ出力値の変化の波形における立ち上がり又は立ち下がりのピークの出現タイミングをパッチの通過タイミングとする方法では、パッチについてベルト移動方向における最高画像濃度箇所を確実に検出することができる。かかる方法を実現するために、CPU101は、所定のサンプリング周期で取得したパッチセンサ出力値に基づいて、前述のピークを認識して、その出現タイミングの(データ番号)データをRAM103内に格納する。これによって、より正確な間隔Psを認識することができる。
間隔Psのデータは、RAM103に格納される。CPU101は、次にローパスフィルタ処理を実施する。このローパスフィルタ処理は、検知データの低周波帯域の信号のみを通過させる。上述したように駆動ローラや感光体の周期のデータ変動に対して高い平滑特性を発揮するようにローパスフィルタを設計している。間隔Psの検知データと、それをローパスフィルタ処理に通した後のデータとの関係を図11(a)、図11(b)に示す。なお、図11(a)は、パッチパターン内におけるYパッチについての同関係を示している。また、図11(b)は、パッチパターン内におけるCパッチについての同関係を示している。また、それぞれのグラフの横軸は、パッチが形成された時間を示している。また、縦軸は、パッチの被検位置に対する通過タイミングに基づいて算出される隣接パッチとの間隔の変動量を示している。これらグラフが得られたときのベルト1周期の条件は、5秒である。ローパスフィルタ処理により、駆動ローラや感光体の周期などのノイズ成分が確実に除去され、ベルト周期成分が有効に抽出されていることがわかる。
CPU101は、ローパスフィルタ処理後のデータをRAM103に格納した後、格納データの2乗値の累積値(変動2乗和値)を算出する。このような算出を第1条件モード、第2条件モードのそれぞれで実施して、それぞれの累積値をS
1、S
2とする。ベルト1周期内における同累積値は、中間転写ベルト25の速度変動量の累積であることから、次の数7の数式が成立する。
CPU101は、この数式に基づいてPLD変動量実効係数比を算出して結果をROM102に記憶させる。そして、必要に応じてPLD変動量実効係数比をROM102から読み込んで、結果を上述した回転処理部107に送信する。なお、第1条件モードと第2条件モードとにおけるベルト周期変動量の比については、振幅量比あるいは累積値の比などに基づいて求める手法もある。
図11(a)と図11(b)とを比較すると、変動量の異なるベルト周期変動が検出されている。この理由をベルト周期変動の1次成分に着目して説明する。例えば、ベルト速度が比較的速い時に、あるYパッチが感光体4Yから中間転写ベルト25に1次転写されたとする。このとき、そのYパッチと、隣接パッチとの間隔は比較的大きくなる。ここで、Y,M,C,K用の4つの感光体は等間隔で配設されている。その間隔は、例えば110[mm]である。また、K用の感光体4Kと中間転写ベルト25との当接によるK用の1次転写ニップのベルト移動方向の中心から、パッチ検知位置に至るまでのベルト移動距離は50[mm]である。また、Y用の感光体4Yと中間転写ベルト25との当接によるY用の1次転写ニップのベルト移動方向の中心から、パッチ検知位置に至るまでのベルト移動距離は380[mm]である。また、中間転写ベルト25の周長は900[mm]であり、前述の380[mm]という距離は概ねベルト周長の半分程度である。このため、前述したYパッチがパッチ検知位置に到達したときには、ベルト速度が比較的遅くなっている。このため、そのYパッチと、隣接パッチとの間隔は本来よりも大きく検出される。また、ベルト速度が比較的遅いときに1次転写されたYパッチと、隣接パッチとの間隔は本来よりも小さく検出される。一方、ベルト速度が比較的速い時に、あるCパッチが感光体4Cから中間転写ベルト25に1次転写されたとする。このCパッチがC用の1次転写ニップからパッチ検知位置に至るまでの移動距離は160[mm]である。これはベルト周長の5分の1よりも小さな値であるため、ベルト速度はまだ比較的速いままである。このため、そのCパッチと、隣接パッチとの間隔は本来よりも小さく検出される。また、ベルト速度が比較的遅いときに1次転写されたCパッチと、隣接パッチとの間隔は本来よりも大きく検出される。これらのことから、各色のパッチでそれぞれ変動量の異なるベルト周期変動が検出されるのである。
Y,M,C,Kのパッチの検知データそれぞれに、ベルト周期変動1次成分に対して異なる変動の検出感度が存在する。また、ベルト周期変動2次成分、3次成分においても同様に異なる検出感度が存在する。したがって、PLD変動量実効係数比の導出は、上述した累積値が最も大きくなる色のデータを採用するのがよい。あるいは、上述した2乗和値の大きさに応じて重み付けを行い、4色のパターンデータから平均値を算出してもよい。これらにより、検出感度が低いことによる精度低下を防ぐことができる。
なお、上記数7の数式における「√S1」や「√S2」は、厳密には、パッチを感光体からベルトに1次転写するときに発生したベルト速度変動量のベルト1周分の累積積ではなく、次の累積積を反映している。即ち、同ベルト速度変動量に対して、ベルト上のパッチをパッチ検知センサ206で検知するときに発生したベルト速度変動量を減じた値のベルト1周分の累積である。但し、「√S1」と「√S2」との比は、第1条件モードと第2条件モードとについての、パッチを感光体からベルトに1次転写するときに発生したベルト速度変動量についてのベルト1周分の累積積の比とほぼ同じ値になる。
図12は、メイン制御部の演算処理部120の内部構成を示すブロック図である。駆動モータ(201)のモータ軸の回転角速度と、この回転角速度によって得られる、従動ローラ(27c)の回転角速度とには、比例関係が成立する(ギヤの減速比や駆動ローラと従動ローラとの径比などによって決まる)。そこで、変換部121は、予め調査されているその比例関係に基づいて、駆動モータ(201)のエンコーダから出力されたモータ回転角速度を示す信号を、従動ローラ(27c)の回転角速度に相当する信号に変換する。比較器122は、従動エンコーダから出力される、従動ローラ27cの回転角速度ω2を示す信号と、変換部121から出力される信号とを比較し、両者の差分をフィルター部123に送る。
フィルター部123は、第1フィルター回路123a、第2フィルター回路123b、DC除去回路123c等を具備している。第1フィルター回路123aは、比較器122から送られてくる信号から、100Hz以上の成分を除去する。このとき、折返し成分を発生させたり、ベルト周回周期の速度変動波形を変化させたりしないようにすることが望ましい。それらの発生を防止し得るフィルターとして、FIRローパスフィルタを例示することができる。
第2フィルター回路123bは、ローラやギヤ等の回転部材の回転ムラに起因するベルトの周期変動成分を除去するFIRローパスフィルタである。第2フィルター回路123bによって除去される周期変動成分は、主に、駆動ローラ27a、これに関連するギア(202、203)、従動ローラ27c等の回転部材の偏心に起因して発生する周期変動成分である。第2フィルター回路123bを通過した後の信号には、ベルトの厚みムラに起因する速度変動成分だけが含まれる。この信号からは、DC除去回路123cにて、定常偏差分が除去される。この定常偏差分は、定常的なベルトスリップ、ローラ(27a、27c)の径の誤差などによって平均角速度が変化することによって発生する。
フィルター部123を通過した信号は、ベルトのPLD変動に起因した変動成分を含んでおり、周期変動サンプル部124に入力される。周期変動サンプル部124は、ベルト1周期分についての同信号をメモリに記憶する回路である。周期変動サンプル部124には、その信号の他に、ベルトホームポジション信号が入力される。このベルトホームポジション信号は、中間転写ベルト25の周方向における所定箇所がベルト周方向における所定位置に進入したときに発せられる、即ち、ベルトが1周する毎に発せられる信号である。周期変動サンプル部124は、ベルトホームポジション信号を検知すると、前述の信号をメモリに記憶し始める。そして、再びベルトホームポジション信号を検知した時点でメモリへの記憶を停止する。これにより、ベルト1周期分の速度変動成分がメモリに記憶される。
なお、フィルター部123で除去し切れないランダムな速度変動成分を除去することを目的に、周期変動サンプル部805として、同期加算と呼ばれる処理を実施するものを採用してもよい。具体的には、ベルトホームポジション信号を基準にベルト複数周回分のサンプリングデータを加算して平均する。これにより、ランダムに発生する速度変動成分を減少させて、ベルト1回転周期の速度変動成分を強調することができる。
周期変動サンプル部124に記憶されたベルト1周期分の速度変動成分のデータは、変動振幅・位相検出部125に入力される。変動振幅・位相検出部125は、そのデータから基本波及び高調波の振幅及び位相を検出する回路である。変動値のゼロクロス若しくはピーク値、又は変動値に対して直交検波を施した結果、に基づいて、既定周期の変動成分の振幅及び位相を検出する。ゼロクロス等に基づく方法にするのか、直交検波に基づく方法にするのかについては、CPU101やDSPの演算負荷、メモリ等のハード構成、変動振幅、入力情報のSN比などに基づいて選択するとよい。
変動振幅・位相検出部125で処理されたデータは、PLD変動補正値算出部126に入力される。PLD変動補正値算出部126は、変動振幅・位相検出部125によって検出された基本波、速度変動成分の振幅および位相と、次の数8の数式によって表される振幅補正係数ηと、次の数9の数式によって表される位相補正値Tとを用いて、ベルト速度を一定にするための従動ローラ27cのPLD変動補正値を演算する。
数8の数式におけるKは、次の数10の数式によって予め判明している定数である。また、数9の数式におけるβは、次の数11の数式によって予め判明している定数である。
数9の数式におけるτは、従動ローラ27cに対する掛け回し位置から駆動ローラ27aに対する掛け回し位置までのベルト移動距離に基づく位相差(ラジアン)を示している。ベルト1周を2πとしたときの値である。n次の高調波成分を演算する場合は、ベルト1周を2nπとしたときの値とする。
なお、数8、数10、数11における、従動ローラ27c上でのPLD変動量実効係数κ2については、次の値を採用する。即ち、先に示した数7の数式等に基づいて算出した「κ2/κ1」におけるPLD変動量実効係数κ1を「1」であると仮定して、「κ2/κ1」の解をκ2とする。また、数10、数11における、駆動ローラ27a上でのPLD変動量実効係数κ1については、「1」を採用する。
PLD変動補正値算出部126は、変動振幅・位相検出部125によって求められた各サンプリング時点におけるベルトの速度変動成分の振幅Am及び位相Pと、次の数12の数式とに基づいて、ベルト速度を一定にするための従動ローラ27cのPLD変動補正値ω
ref2_bを演算する。なお、この数式において、θ
bはベルトの移動位相を示している。
制御目標値算出部127は、PLD変動補正値算出部126によって求められたPLD変動補正値ωref2_bに基づいて、従動エンコーダから出力される回転角速度ω2の信号と、比較するための制御目標値ωref2を算出する。この制御目標値ωref2は、当然ながらベルトの位相位相に応じて異なってくるので、制御目標値算出部127は、上述したサンプリング周期で制御目標値ωref2を算出する。この算出結果は、図7に示した第2比較回路110で用いられる。そして、従動ローラ27の回転角速度ω2を制御目標値ωref2に一致させるように駆動モータ201の駆動速度がフィードバック制御されることで、ベルト速度の安定化が図られる。
図13は、制御目標値算出部127によって実施される処理を説明するためのブロック図である。同図において、波形Pxは、CPU101から送られてくる、ベルト駆動速度に基づく従動ローラ27cの平均角速度V0の波形を示している。また、波形Pyは、PLD変動補正値算出部126によって算出された従動ローラ27cのPLD変動補正値ωref2_bの波形である。制御目標値算出部127は、上述したベルトホームポジション信号を受信したときからの経過時間に基づいて、現時点でのベルトの移動位相を把握する。そして、その位相位相に対応するPLD変動補正値ωref2_bに対して、加算器127aにより、平均角速度V0を加算する。この処理をベルト1周分について行うことで、ベルト1周における制御目標値ωref2の変動を示す波形Pzを得る。各波形の縦軸は変位情報であり、ここでは回転角ラジアンを採用している。また、横軸は時刻を示している。
以上の構成の本複写機においては、κ1として、従来と同様に全ての製品に共通の例えば「1」を採用するものの、κ2については、個々の製品に固有の値を正確に反映している「κ2/κ1」に基づいて求めた値を用いている。これにより、κ1、κ2ともに、全ての製品に共通の値を使用していた従来に比べて、ベルト速度変動量の算出精度を向上させることができる。
なお、これまで、駆動ローラ27a上におけるPLD変動量実効係数κ
1と、従動ローラ27c上におけるPLD変動量実効係数κ
2とに基づいて、制御目標値ω
ref2を求める複写機について説明してきたが、次のような画像形成装置にも本発明の適用が可能である。即ち、特許文献1に記載のように、駆動ローラ27a上におけるPLD実効係数κ
dと、従動ローラ27c上におけるPLD実効係数κ
eとに基づいて、制御目標値ω
ref2を求める画像形成装置である。この場合、次の数13の数式に基づいて、「κ
e/κ
d」を求めるようにすればよい。
次に、第1実施形態に係る複写機の変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係る複写機の構成は第1実施形態と同様である。
変形例に係る複写機は、図12に示したブロック図の点線で囲まれた変動振幅・位相検出部125、及びPLD変動補正値算出部126の代わりに、図14に示す回路を具備している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
図14に示す回路は、複数のFIFOsys151を有しており、それぞれのFIFOsys151は、図15に示すように、G
q(n)回路151aと、Z
−q(n)τd回路151bとを具備している。FIFOsys151のG
q(n)回路151aは、FIFOsys151に送られてきたデータと、次の数14の数式で求められるゲインGとの積を求める。デジタル信号処理を採用しているため、G
q(n)回路151aに対する入力データは離散データとなる。
FIFOsys151のZ−q(n)τd回路151bは、Gq(n)回路151aによる算出結果を、従動ローラ27cと駆動ローラ27aとのPLD変動の位相差τに相当する位相遅れ後に相当するデータに変換して、加算機153に出力する。入力されたデータを記憶し、位相差分過去のデータを出力する。従って、Z−q(n)τd回路151bは、位相差τに相当するFIFO(First−In−First−Out)メモリである。このようにFIFOsys151は、1つのFIFOメモリと1つのゲインとで構成される。
入力データのサンプリング周期をTsで表すと、τ=τd×Ts(τdは自然数である)という関係が成立する。図14に示した回路では、FIFOsys151と加算器153との組合せ(一点鎖線で示した152)が、複数直列に接続されている。それら組合せのうち、最も入力側に位置するもの(152−1)は、後述する第1ステップを実行する。また、それ以降、2、3、4、5番目・・・・の組合せは、後述する第2、3、4、5・・・ステップを実行する。
中間転写ベルト25が1周するのに要する時間TbをNt×Ts(Ntは自然数である)とすると、ベルトが1周する間のサンプリング数はNt個となる。よって、PLD変動補正値をωref2_b2(t)で表すと、ωref2_b2(t)は、サンプリング時間Tsごとに得られるNt個のPLD変動補正値ωref2_b2(t)のデータ列からなる。
図14で示した回路では、上述した組合せ(152)をNd個設けている(152−1〜152−Nd)。総加算器154は、上述したNd個の組合せ(152、153)からそれぞれ出力されるデータと、初めの組合せに対する入力データとを加算する。演算器155は、総加算機154による加算結果を「Nd+1」で除算する。これにより、PLD変動補正値ωref2_b2(t)が算出される。
このような構成により、図12に示した周期変動サンプル部124から出力される速度変動成分のデータgf(t)から、PLD変動補正値ωref2_b2(t)を次のようにして求める。
[第1ステップ]
周期変動サンプル部124から出力される速度変動成分のデータgf(t)をG(ゲイン)倍して遅れ時間τだけ遅延させた場合のデータに変換した後、変換後のデータと前述のデータgf(t)とを加算した値であるg1(t)を求める。
[第2ステップ]
上記g1(t)をG倍して遅れ時間τだけ遅延させた場合のデータに変換した後、変換後のデータと上記gf(t)とを加算した値であるg2(t)を求める。
[第3ステップ]
上記g2(t)をG倍して遅れ時間τだけ遅延させた場合のデータに変換した後、変換後のデータと上記gf(t)とを加算した値であるg3(t)を求める。
[第Ndステップ]
第Nd−1ステップで求めたgn−1(t)をG倍して遅れ時間τだけ遅延させた場合のデータに変換した後、変換後のデータと上記gf(t)とを加算した値値であるgn(t)を求める。
[最終ステップ]
上記gf(t)と、第1ステップから第Ndステップまでのそれぞれにおける算出結果とを加算した後、加算結果を「Nd+1」で除算して得たデータをPLD変動データPLD変動補正値ωref2_b2(t)とする。
ステップ数Ndについては、次のようにして決定することが望ましい。即ち、まず、上述した速度変動成分のデータgf(t)が次の数15の数式を満足するとする。この数式において、従動エンコーダからの出力値の変動(gf(t))は、ベルトの厚みムラに起因するベルト速度変動成分と、ベルトの厚みムラに起因する従動ローラの回転速度変動との2つ(数15の数式ではf(t9で表記)が重畳している。
上述した最終ステップの後におけるPLD変動ω
ref2_b2(t)を算出すると、次の数式を得ることができる。
PLD変動成分の理想値f(t)に対し、この数式における第2項がPLD変動成分f(t)を抽出する際に生ずる誤差成分である。この第2項が十分に小さくなるようにステップ数Ndを決定する。例えば、第2項は、Nd個のステップそれぞれで得られた位相がτずつ異なるNd+1個の速度変動成分が重畳されたものであるから、第2項の各変動成分の初期位相については、ベルト移動位相(ベルト1回転2πラジアン)において、均等に分散することが望ましい。均等分散によって、第2項の各変動成分において、互いに打ち消し合う関係を有する組み合せを生じせしめて誤差成分を相殺することができるからである。Nd+1で除する減少効果に、相殺効果を加えて誤差を微小にすることができる。2つのローラ間位相差がτ’ラジアンである場合、均等分散するステップ数Ndは、次の数17の数式によって求めることができる。
この数式において、mは自然数を示している。例えば、τ’が0.52ラジアンである場合には、m=1で、Ndは11となる。
なお、制御目標値ωref2算出以降の処理は、第1実施形態と同様である。この制御目標値ωref2によって駆動制御が実施されることにより、ベルトPLD変動に影響されることなく、ベルトが一定搬送速度となる。
次に、本発明を適用した複写機の第2実施形態について説明する。なお、以下に特筆しない限り、第2実施形態に係る複写機の構成は、第1実施形態と同様である。
第2実施形態に係る複写機は、パッチ検知センサを備えていない。そして、第1条件モード、第2条件モードにおいて、それぞれ中間転写ベルト25に形成したパッチパターンを、記録紙Pに転写する(以下、その記録紙Pをパッチパターン出力紙という)。そして、パッチパターン出力紙における各パッチをスキャナ502で読み取った結果に基づいて、上述した間隔Psを求める。
図16は、第2実施形態に係る複写機における間隔解析装置の回路構成を示すブロック図である。ピッチずれ検知手段としての間隔解析装置は、スキャナ入力部511、カラー画像抽出部512、ワークメモリ513、パターン切り出し部514、パターン位置計測部515、相対位置算出部516、LPF(ローパスフェイルター)処理部517、テーブルメモリ518等を具備している。
スキャナ入力部501は、図2に示したスキャナ502、あるいは別のスキャナ装置で読み取られたパッチパターンの画像情報を取り込んでカラー画像抽出部512に出力する。パッチパターンとしては、例えば図17に示すようなラダーパターンが形成される。このラダーパターンは、Y,M,C,K用の4つの感光体4Y,M,C,K上に形成されたY,M,C,Kパターンを、ベルト幅方向に並べたものである。そして、前記Y,M,C,Kパターンは、Y,M,C,Kパッチをベルト移動方向に所定間隔で並べたものである。各パッチは、図示のような矩形状のものに限られず、L字型、山形、傾斜型などであってもよい。
カラー画像抽出部512は、取り込んだパッチパターンの画像情報をR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の色成分に分解してワークメモリ513に出力する。ワークメモリ513は記録装置に確保されたデータの一時格納領域である。パターン切り出し部514は、ワークメモリ513内のデータをR,G,B毎に読み込んでパターン位置計測部515に出力する。パターン位置計測部515は、パターン位置計測部515から送られてくるデータに基づいて、各パッチのベルト移動方向における相対位置を求める。この相対位置については、ベルト移動方向の先頭パッチを基準とした位置に基づいて決定してもうよいし、スキャナの読取開始位置を基準とした位置に基づいて決定してもよいし、前後の隣接パッチ間隔としてもよい。相対位置算出部516は、求められた相対位置と、予め記憶されているパッチの理想位置を比較して、偏差量を算出する。
この偏差量は、主に、感光体速度変動、ベルト速度変動、2次転写時の記録紙のスリップ、スキャナ502のスキャン特性などに起因して発生する。相対位置算出部516は、2次転写時の記録紙のスリップとスキャナ502のスキャン特性とに起因した偏差量を除去する。2次転写時に記録紙Pの搬送速度に変動が生じると記録紙上のパッチ位置に変動が発生する。また、スキャナ502の走行体の速度に変動が生じても、パッチ位置位置に変動が発生する。これらの変動は、Y,M,C,Kのパターンに共通して発生する変動である。そこで、相対位置算出部516は、主走査方向(ベルト移動方向)に並ぶY,M,C,Kのパターンにおいて、互いにベルト移動方向に一直線上に並ぶべきそれぞれのY,M,C,Kパッチ(以下、これらを4色パッチ組という)のベルト移動方向における位置の平均値を算出し、その平均値に基づいてその4色パッチ組におけるY,M,C,Kパッチの位置についての偏差量をそれぞれ算出する。全ての4色パッチ組について、それぞれ同様にしてY,M,C,Kパッチの偏差量をそれぞれ算出する。そして、それぞれの偏差量を、Y,M,C,Kパッチについての間隔Psとする。このようにすることで、記録紙Pの2次転写ニップ内でのスリップによるパッチ間隔変動成分を除去することができる。Y,M,C,Kにおいて、パッチ間隔の変動パターンは、それぞれの色でパッチの1次転写タイミングが異なることから互いに異なったパターンになるのに対し、記録紙Pの2次転写ニップ内でのスリップに起因するパッチ間隔の変動は、それら4色で共通の変動パターンとなるからである。
LPF処理部517は、各色についてそれぞれ、感光体の速度変動に起因した偏差量を除去する。これはベルト上のトナーパターン解析と同様に感光体回転周期に応じた移動平均処理を行うことによって実現する。
図18は、A3サイズの記録紙1枚に対して出力したパッチパターンにおけるKパッチに対するY,M,Cパッチの色ずれ量とベルト搬送距離との関係を示すグラフである。縦軸は、パッチパターン内におけるKパターンの各パッチの位置を基準として、Y,M,Cの各パッチの位置との差を示している。横軸は、任意のタイミングを基準としたベルト累積搬送距離であり、記録紙上のパッチの1次転写タイミングを意味している。LPF処理部517で移動平均処理を実施した結果を同じ2次元座標上にプロットしている。各プロット点により、感光体の速度変動に起因した偏差分が除去されていることがわかる。
A3サイズの記録紙9枚に対して出力したパッチパターンにおけるKパッチに対するY,M,Cパッチの色ずれ量をベルト搬送距離との関係をLPF処理によって把握した結果を図19に示す。9枚の記録紙は、互いに所定の間隔をおいて複写機内で搬送される。このため、同図のグラフの横軸方向においてプロット点の空白区間が出現している。ベルト周回周期で発生するベルト速度変動成分を高精度に解析するためには、この例のように、ベルトの複数周分に相当する枚数の記録紙にそれぞれパッチパターンを出力することが望ましい。中間転写ベルト25としては、周長が900[mm]であるものを用いている。LPF処理後のKパッチに対するY,M,Cパッチの相対位置偏差量が900[mm]周期、つまり、ベルト周回周期で発生していることがわかる。第2実施形態に係る複写機は、このように、トータルでベルト1周期分(900mm)以上の長さのパッチパターンを形成し、LPF(ローパスフィルター)処理後におけるKパッチのY,M,Cパッチの相対位置偏差量をテーブルメモリ518に記憶する。メイン制御部の図示しないCPUは、テーブルメモリ518に保存されたデータの2乗値の累積値(変動2乗和値)を算出する。パッチパターンの出力を、第1条件モードと第2条件モードとでそれぞれ行い、それぞれをスキャンした結果から得られたそれぞれの変動2乗和値をS1‘、S2’とする。それら変動2乗和値S1’,S2’は、中間転写ベルト25の速度変動に起因していることから、上記数7と同様の数式が成立する(数7の数式の左辺が「√S2’/S1’」に置き換わるだけ)ので、κ2/κ1を算出することができる。算出されたκ2/κ1は、テーブルメモリ518に保存される。CPUは、必要に応じてそのκ2/κ1を読み込んで、演算処理部120に送信する。
特許文献1に記載のように、駆動ローラ27a上におけるPLD実効係数κdと、従動ローラ27c上におけるPLD実効係数κeとに基づいて、制御目標値ωref2を求めるようにしてもよい。
以上、第1実施形態に係る複写機においては、作像手段としてのプロセスユニット及び転写ユニット24により、所定のピッチ検知用可視像であるパッチを中間転写ベルト25に対してその表面移動方向に沿って並べて複数形成したものを、それぞれ目印として用いるようにしている。かかる構成では、中間転写ベルト25として、複数の目印を周方向に所定間隔で並べたスケールを具備する高価なものではなく、スケールを具備しない安価なものを用いて、低コスト化を図ることができる。
また、第1実施形態に係る複写機においては、第1条件モードや第2条件モードにおける中間転写ベルト25の速度変動について、高周波の速度変動成分を除去するローパスフィルタ処理を実施するように、制御手段としてのメイン制御部を構成している。かかる構成では、検出した様々なベルト速度変動成分の中から、各ローラやギヤ等の回転部材の回転ムラに起因する速度変動成分を除去して、ベルトの厚みムラに起因する速度変動成分を高精度に検出することができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、各色のプロセスユニットや転写ユニット24等からなる作像手段として、互いに異なる色のトナー像を形成するための複数の感光体4Y,M,C,Kと、それぞれの感光体に個別に対応し、それぞれの感光体上の潜像を現像する複数の現像装置6Y,M,C,Kと、それぞれの感光体上で現像されたY,M,C,Kトナー像を中間転写ベルト25に転写する転写ユニット24とを備えるものを用いている。そして、感光体4Y,M,C,Kにより、ベルト搬送方向に並ぶ複数のパッチからなるパッチパターンを、中間転写ベルト25に対してベルト搬送方向に直交する方向である主走査方向に並べて形成し、それぞれのパッチパターンにおける同一の主走査線上に形成されるべきパッチの組からなる複数の4色パッチ組(主走査線上可視像組)について、それぞれパッチの理論位置からのずれ量の平均値を求め、その平均値と、4色パッチ組内における各パッチの理論位置からのずれ量との差分に基づいて、速度変動量を算出するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、既に説明したように、記録紙Pの2次転写ニップ内でのスリップによるパッチ間隔変動成分を除去することができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、第1条件モード、第2条件モードでそれぞれ、中間転写ベルト25の1周分以上の長さに相当する数のパッチを形成するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、それらパッチのピッチずれに基づいて、少なくともベルト1周におけるベルト速度変動パターン(速度変動波形)を検出することができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、第1条件モード、第2条件モードでそれぞれ、中間転写ベルトを1周以上無端移動させながら、複数の記録紙Pに対して複数のパッチを形成し、それら複数の記録紙Pについての配置ピッチずれに基づいて中間転写ベルト25の速度変動を把握するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、中間転写ベルト25の周方向の全領域のうち、ある周回で紙間領域となってしまった領域に対して、別の周回でパッチを形成して、その紙間領域の速度変動を検出することが可能になる。
また、第1実施形態に係る複写機においては、駆動ローラ27aの回転角速度と従動ローラ27cの回転角速度との差を、κ2/κ1によって補正した結果に基づいて、中間転写ベルトの1周あたりにおける速度変動パターンを把握し、プリントジョブモードにて、把握結果に基づいて駆動モータ201の駆動速度を調整するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、変形例に係る複写機とは異なり、複数のFIFOsys回路を直列に接続した複雑な回路構成を採用しなくても、ベルト1周あたりにおける速度変動パターンを把握することができる。
また、変形例に係る複写機においては、駆動ローラ27aの回転角速度と従動ローラ27cの回転角速度との差を、κ2/κ1によって補正した結果に基づいて、ゲインGを求め、このゲインGに基づいてベルト速度変動量を算出するように、メイン制御部を構成している。かかる構成では、複数のFIFOsys回路を直列に接続した複雑な回路構成を採用し、その接続数を十分に多くすることで、第1実施形態に係る複写機に比べてPLD変動量を精度良く検出することが可能になる。