JP2009024081A - 結晶性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、結晶核剤(B)0.03〜5質量部と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)5〜50質量部とを含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.01〜20質量部と、過酸化物(E)0.02〜20質量部とを溶融混練してなり、ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部に対して、ガラス繊維(C)を5〜50質量部を含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
このため、ポリ乳酸の結晶化が充分に進行していた場合でも、成形品突き出し・取り出し時においてその剛性が低いので、成形サイクルをとりわけ長く設定する必要があり、ポリ乳酸成形体を製造する際の生産性は、従来の樹脂成形体の場合に比較して低くならざるを得なかった。このことが、ポリ乳酸樹脂やその成形体を広範囲な用途へ普及させる上で、大きな妨げとなっていた。
また、金型温度を90〜120℃に設定するため、金型温度と室温との温度差が大きくなり、その結果、ポリ乳酸成形体の収縮率は大きくならざるを得なかった。したがって、ポリ乳酸成形体を、高い寸法精度が求められる用途に適用することには限界があり、また、既存樹脂用の成形金型を使用することができないので、金型の共用が不可能であった。
しかしながら、例えばポリ乳酸樹脂の射出成形においては、通常、L体が98〜99%であるポリ乳酸が使用されており、この範囲のL体含有量のポリ乳酸と、前記の結晶核剤等とを組み合わせても、成形する際には、金型温度を90〜120℃に設定しなければならなかった。すなわち、これより低い温度の金型を使用すると、ポリ乳酸の結晶化速度が著しく小さく、実用上可能な射出成形サイクルにおいて充分な耐熱性を有するポリ乳酸成形体を得ることができなかった。
しかしながら、生分解性を有するポリ乳酸を使用して、前述したような耐熱性や成形性に加えて、剛性や耐衝撃性にも優れた成形体を得ることができなかった。
(1)D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、結晶核剤(B)0.03〜5質量部と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)5〜50質量部とを含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(2)D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.01〜20質量部と、過酸化物(E)0.02〜20質量部とを溶融混練してなり、ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部に対して、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)を5〜50質量部を含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(3)D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.01〜20質量部と、過酸化物(E)0.02〜20質量部とを溶融混練してなり、ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部に対して、結晶核剤(B)を0.03〜5質量部と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)を5〜50質量部とを含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(4)結晶核剤(B)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)または(3)記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(5)結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)または(3)記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(6)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(F)0.1〜10質量部を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を成形してなる成形体。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形してなる薄肉成形品。
本発明の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物は、(1)ポリ乳酸樹脂(A)と結晶核剤(B)とガラス繊維(C)とを含有する組成物、(2)ポリ乳酸樹脂(A)と(ポリ)アクリル酸エステル化合物(D)と過酸化物(E)とを溶融混練してなり、ガラス繊維(C)を含有する組成物、さらに(3)ポリ乳酸樹脂(A)と(ポリ)アクリル酸エステル化合物(D)と過酸化物(E)とを溶融混練してなり、結晶核剤(B)とガラス繊維(C)とを含有する組成物である。
本発明において、D体含有量が0.6%以下であるポリ乳酸樹脂(A)を使用する際に、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が0.08%未満のものを入手あるいは作製することが困難になることがあるが、本発明においては、D体含有量が0.08%未満のポリ乳酸樹脂も使用することもできる。同様に、D体含有量が99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)を使用する際に、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が99.92%を超えるものを入手あるいは作製することが困難になることがあるが、本発明においては、D体含有量が99.92%を超えるポリ乳酸樹脂も使用することもできる。
また、ポリ乳酸樹脂(A)として、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量の充分低いL−ラクチド、または、L体含有量の充分低いD−ラクチドを原料に用いて、作製したものを使用することもできる。
さらに、本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)として、2種以上のポリ乳酸樹脂を組み合わせてもよい。この場合、D体含有量が本発明で規定する範囲外であるポリ乳酸樹脂、たとえば、D体含有量が0.6%を超えるポリ乳酸樹脂を併用してもよく、このようなポリ乳酸樹脂と、本発明で規定するD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂とを組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が0.6%以下であればよい。同様に、ポリ乳酸樹脂(A)を構成するポリ乳酸樹脂として、D体含有量が99.4%未満のポリ乳酸樹脂を併用してもよく、組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が99.4%以上であればよい。
結晶核剤として用いる化合物については特に限定されず、種々のものを用いることができる。市販品の結晶核剤としては、例えば、川研ファインケミカル社製WX−1、新日本理化社製TF−1、アデカ社製T−1287N、トヨタ社製マスターバッチKX238Bなどが挙げられる。具体的な化合物としては、その結晶化促進効果の点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
R1−(CONH−R2)a (1)
[式中、R1は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、飽和あるいは不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R2は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、あるいは、式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表し、1つ以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されてもよい。aは2〜6の整数を表す。]
R9−(NHCO−R10)f (2)
[式中、R9は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R10は前記のR2と同義である。fは2〜6の整数を表す。]
R11−(CONHNHCO−R12)h (3)
[式中、R11は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R12は前記のR2と同義である。hは2〜6の整数を表す。]
体を用いることが好ましく、中でも、銅フタロシアニンが結晶化促進効果の点から好ましい。
メラミン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、結晶化促進効果の点から、メラミンシアヌレートを用いることが好ましい。
有機ホスホン酸塩としては、フェニルホスホン酸塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。そのうち、特にフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
結晶核剤(B)としては、これらのものを単独、あるいは、2種以上を併用して配合することができる。なお、これら有機系の結晶核剤(B)に対して、無機系の各種結晶核剤を併用しても構わない。
本発明で使用するガラス繊維(C)は、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるため、その断面は扁平形状であり、具体的な扁平断面形状としては、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらに類似する形状が挙げられる。
また、ガラス繊維(C)における繊維断面の長径は、10〜50μmであることが好ましく、15〜40μmであることがより好ましく、20〜35μmであることがさらに好ましい。
さらに、ガラス繊維(C)の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は、2〜200であることが好ましく、2.5〜150であることがより好ましく、3〜120であることがさらに好ましい。アスペクト比が2未満であると機械的強度の向上効果が小さく、一方、200を超えると異方性が大きくなる他、成形品外観も悪化するようになる。なお、扁平断面を有するガラス繊維の平均繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。
また、本発明に使用するガラス繊維(C)の組成は、Eガラスのような一般的なガラス繊維と同じ組成でよく、またガラス繊維にできるものであればどのような組成でも使用可能であり、特に限定されるものではない。
具体的な化合物としては、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
過酸化物(E)の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
本発明において反応性化合物(F)は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上である。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有していないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N′−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N′−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N′−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N′−フェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4′−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部位が、イソシアネート基等の官能基を有する、あるいは、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていても構わない。
無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、マグネシア、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、層状珪酸塩などが例示される。層状珪酸塩を配合することにより、樹脂組成物のガスバリア性を改善することができる。
植物繊維としては、例えば、ケナフ繊維、竹繊維、ジュート繊維、その他のセルロース系繊維などが例示される。
強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維などの有機強化繊維などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、脂肪族エステル誘導体または脂肪族ポリエーテル誘導体から選ばれた1種以上の可塑剤などが挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレートなどが挙げられる。可塑剤を配合することにより、結晶核剤(B)のポリ乳酸樹脂(A)への分散を促進することができる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、中でも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが、好適に用いられる。
耐衝撃剤としては、特に限定されず、コアシェル型構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤など、種々のものを用いることが出来る。具体的な市販の商品としては、例えば、三菱レイヨン製メタブレンシリーズなどが挙げられる。
相溶化剤としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系共重合樹脂を主鎖に持つグラフト共重合体が挙げられ、具体的な化合物としては、例えば、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリメチルメタクリレートグラフト共重合体、あるいは、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリ(アクリロニトリル/スチレン)グラフト共重合体などが挙げられる。具体的な市販の商品としては、例えば、日本油脂製モディパーシリーズなどが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂(A)のアロイ相手材となる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタールなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、などが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6Tなどが挙げられる。
ポリエステルとしては、各種芳香族ポリエステル、各種脂肪族ポリエステルをはじめ多くのものが挙げられる。芳香族ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどが挙げられ、脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。
この他のポリエステル系のものとしては、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等などが挙げられる。
また本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品、中空成形品等とすることもできる。その例としては、農業用マルチフィルム、工事用シート、各種ブロー成形ボトルなど多数挙げられる。
(1)D体含有量:
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物の約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
(2)メルトフローレート(MFR):
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物をJIS K7210に準拠し、190℃におい
て測定した。
(3)成形サイクル:
厚み0.8mm、幅50mm、長さ85mmの平板成形品を射出成形機において所定の成形条件で成形した際、成形品が変形なく取り出せる、最短の所要時間(射出時間+保圧時間+冷却時間)を成形サイクルとした。なお、成形サイクルが80秒を上回る場合は、成形作業性が著しく劣るだけでなく、シリンダ内に滞留する溶融樹脂の劣化の影響も大きくなり、実用上成形困難であるため、成形サイクルの見極めにおいては上限80秒とした。
(4)熱変形温度:
ISO準拠の試験片を射出成型機において所定の成形条件で成形し、ISO75に準拠し、熱変形温度を荷重1.8MPaで測定し、熱変形温度が100℃を超えるものを◎、80〜100℃を○、70〜80℃を△、70℃未満を×として評価した。
(5)曲げ弾性率:
ISO準拠の試験片を射出成型機において所定の成形条件で成形し、ISO178に準拠して測定した。
(6)シャルピー衝撃値:
ISO準拠の試験片を射出成型機において所定の成形条件で成形し、ISO179に準拠して測定した。
(7)耐久性:
成形したISO試験片を50℃50%RHの高温高湿度環境に72h曝して、ISO178に準拠して曲げ強度を測定し、暴露前の値に対する保持率が、95%以上であれば◎、80〜95%であれば○、50〜80%であれば△、50%以下であれば×として評価した。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・S−06:トヨタ社製、D体含有量=0.2%、MFR=4
・S−09:同社製、D体含有量=0.1%、MFR=6
・S−12:同社製、D体含有量=0.1%、MFR=8
・S−17:同社製、D体含有量=0.1%、MFR=11
・A−1:同社製、D体含有量=0.6%、MFR=2
・TE−4000:ユニチカ社製、D体含有量=1.4%、MFR=10
・合成例1:
D体含有量0.08%のL−ラクチド2,000g、ヘキサンジオール1.4gをガラ
ス製重合管内に入れ、窒素気流下、加熱融解した後、ジオクチル錫0.4gを加え、撹拌しながら180℃で1時間反応させた。30分後、5hPaにした後、生成したポリL−
乳酸樹脂を払い出した。得られたポリL−乳酸樹脂について、前記の測定方法によって測
定したところ、D体含有量は0.08%、MFRは15であった。
・トヨタ社製KX238B(ポリ乳酸ベースの結晶核剤10%含有マスターバッチ)
・N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド:川研ファインケミカル社製WX−1
・N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド:新日本理化社製TF−1
・5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム:東京化成工業社製
・オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド:アデカ社製T−1287N
・日東紡績社製CSG 3PA−830S(繊維断面の長径=28μm、繊維断面の短径=7μm、繊維断面の長径/短径=4、断面形状=楕円、アスペクト比=100)
・日東紡績社製CSG 3PA−820S(繊維断面の長径=28μm、繊維断面の短径=7μm、繊維断面の長径/短径=4、断面形状=楕円、アスペクト比=100)
・日東紡紡績社製CSH 3PA−850(繊維断面の長径=20μm、繊維断面の短径=10μm、繊維断面の長径/短径=2、断面形状=まゆ型、アスペクト比=100)
・オーエンスコーニング社製03JAFT592(円形断面チョップドガラス繊維、繊維径=10μm)
・エチレングリコールジメタクリレート:日本油脂社製ブレンマーPDE−50
(5)過酸化物(E)
・ジ−t−ブチルパーオキサイド:日本油脂社製パーブチルD
(6)反応性化合物(F)
・イソシアネート変性カルボジイミド:日清紡社製LA−1(イソシアネート基含有率1〜3%)
・カルボジイミド:松本油脂製薬社製EN−160
(7)架橋剤
・ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HMDIと称す。)
ポリ乳酸樹脂(A)としてS−12を50質量部、結晶核剤(B)としてKX238B(結晶核剤10%含有)を20質量部(結晶核剤量:2質量部)、ガラス繊維(C)としてCSG 3PA−830Sを30質量部用いて、これらをドライブレンドして二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)の根元供給口から供給し、また、混練機途中から(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.1質量部、過酸化物(E)0.2質量部を混合した溶液を注入し、バレル温度180℃、スクリュー回転数200rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。
得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、金型表面温度を80℃に調整し、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製した。試験片作製の際、成形サイクルを測定した。その後、作製した試験片を各種測定に供した。また、試験片の一部は、50℃50%RHの高温高湿度環境に100h曝し、曲げ物性を測定した。
ポリ乳酸樹脂、結晶核剤、ガラス繊維、(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物、あるいは、反応性化合物の配合の有無、種類、量を変えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。
得られたペレットを乾燥後、射出成形によって、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製し、同時に、成形サイクルを測定した。作製した試験片を各種測定に供した。
また、実施例7、8においては、カルボジイミド化合物が反応性化合物として配合されているため、優れた耐久性が得られた。
なお、実施例3においては、結晶核剤配合量が5質量部と特に高いが、他の実施例と比較して、成形性における顕著な効果は、みとめられなかった。
比較例1〜4においては、ガラス繊維が配合されていないか、配合されてもその量が少ないため、いずれも、剛性、耐衝撃性に劣り、また耐熱性や成形性にも劣る結果となった。
比較例5においては、ガラス繊維の配合量が多いため、混練時の操業に支障をきたし、樹脂組成物をサンプリングすることができなかった。
比較例6、7においては、使用したガラス繊維の断面が本発明で規定する形状でないため耐衝撃性が劣り、また成形性もやや劣る結果となった。
比較例8においては、結晶核剤が規定量を満たさなかったため、また、比較例2においては、結晶核剤、(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物の配合をしていないため、耐熱性や成形性に劣る結果となった。
比較例1、9、10においては、ポリ乳酸樹脂のD体含有量が規定量を超えたため、いずれも耐熱性や成形性に劣る結果となった。
Claims (8)
- D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、結晶核剤(B)0.03〜5質量部と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)5〜50質量部とを含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.01〜20質量部と、過酸化物(E)0.02〜20質量部とを溶融混練してなり、ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部に対して、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)を5〜50質量部を含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- D体含有量が0.6%以下である、または99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)0.01〜20質量部と、過酸化物(E)0.02〜20質量部とを溶融混練してなり、ポリ乳酸樹脂(A)95〜50質量部に対して、結晶核剤(B)を0.03〜5質量部と、繊維断面の長径/短径が1.5〜10であるガラス繊維(C)を5〜50質量部とを含有することを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- 結晶核剤(B)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または3記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- 結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または3記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(F)0.1〜10質量部を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形してなる薄肉成形品。
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