JP2009016256A - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、電解液とを備える。本発明の鉛蓄電池において、正極板には、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹が正極活物質原料に対して10〜30質量%含まれているので、鉛丹無添加の電池よりも放電容量が高い。また、正極板と負極板との間に存在する電解液の量L1と、正極板内に存在する電解液の量L2との比(L2/L1比)が、0.5以上1.0以下に設定されるので、鉛丹無添加の電池以上の寿命性能を有している。
【選択図】なし
Description
そこで、このような問題を解決するために、正極活物質原料に鉛丹化率が90質量%以下の鉛丹を添加した鉛蓄電池が提案されている(特許文献1を参照)。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放電容量が高く、かつ、寿命性能に優れた鉛蓄電池を提供することを目的とする。
本発明において、電槽としては、一般的な電槽、例えば、その内部が複数のセルに区画されたものを用いることができ、この電槽の各セルには並列接続された複数の正極板、並列接続された複数の負極板、正極板と負極板との間に配されるセパレータおよび電解液が収納される。
本発明において用いられる鉛粉としては、特に限定はないが、例えば、ボールミル法で製造したものなどを用いる。
なお、本明細書において、鉛丹化率とは、鉛粉を焼成して鉛丹化した時の焼成物中のPb3O4の割合(質量%)のことをいい、具体的には焼成物中のPb3O4の質量を焼成物の質量で除した値に100を乗じた値で表される。
L2/L1比が、0.5未満であると、正極活物質の軟化が生じやすくなり、L2/L1比が1を超えると、絶対的な硫酸量が不足するため充分な放電容量が得られなくなるからである。
なお、「前記空間内に存在するセパレータの固形分(ガラス繊維)が占める体積」とは、「前記空間内に存在するセパレータの見かけ上の体積(縦×横×厚さ)」と、水銀圧入式細孔分布測定器を用いて測定した、極板群を各セル内に収納した状態における「前記空間内に存在するセパレータの全細孔体積」との差により算出される。
正極板内に存在する電解液の量L2は、「各セル内に収納される複数の正極板の全細孔体積」であり、水銀圧入式細孔分布測定器を用いて測定することができる。
なお、セパレータの多孔度は、ガラス繊維の径や密度を変えることにより容易に調整することができる。
まず、鉛粉と鉛丹とを混合して、これを水及び硫酸で練り合わせ、正極活物質ペーストを作製し、この正極活物質ペーストを鉛合金格子に充填した後、熟成乾燥して未化成の正極板を作製する。
そして極板群を電槽に挿入した後、希硫酸を注液し、電槽化成することで、本発明の鉛蓄電池が得られる。
以下、本発明を具体的に適用した実施例について説明する。
(1)鉛蓄電池用正極板の作製
まず、ロータリーキルンを用いて、420℃の温度条件下、鉛粉を所定の鉛丹化率に達するまで焼成して、鉛丹化率が10質量%、20質量%、50質量%、80質量%、98質量%の鉛丹をそれぞれ作製した。
ここで、例えば鉛丹の添加量がA質量%の正極活物質ペーストを作製する場合には、鉛粉(100−A)kg、所定の鉛丹化率の鉛丹をAkg、水13kg、硫酸10kgを用いる。
なお、正極板作製の際に使用した鉛丹の鉛丹化率、正極活物質原料(鉛粉と鉛丹との混合物)に対する鉛丹の添加量の詳細は、各実施例群中において示す。
(1)で作製した未化成の正極板と、常法により作製した負極板とをセパレータを介して交互に組み合わせて極板群を作製し、この極板群をB24サイズの電槽に挿入した。
種々のL2/L1比のものを作製するために、同じ大きさの電槽を用い、極間の距離を変えたものを作製した。
上記の方法により作製した電池について、以下の手順で電池性能試験を行った。
(1)5時間率容量試験(容量試験)
放電温度JIS D 5301に準拠して、電池を放電温度25℃、放電電流7.2A、放電終始電圧10.5Vとして、5時間率容量を測定した。
JIS D 5301に準拠して、電池を、温度40℃の水槽中で、放電電流20Aで1時間放電し、充電電流5Aで5時間充電して、これを1サイクルとして25サイクルごとに20Aで10.2Vまでの放電持続時間を測定した。
寿命回数は容量が18Ahとなったときの回数とし、この寿命回数は回数と容量の関係線から求める。
鉛丹の鉛丹化率および鉛丹の添加量が、電池の放電容量および寿命性能に与える影響を調べるために、種々の鉛丹化率の鉛丹を種々の添加量で鉛粉に混合して作製した正極板を用いて、L2/L1比を0.3に設定した比較例の電池(試験番号2〜26)を作製した。なお、鉛粉のみを用いて作製した正極板を備え、L2/L1比を0.3に設定した鉛丹無添加の電池も作製した(試験番号1)。
まず、試験番号1〜26の電池について、容量試験を行った。
表1には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、L2/L1比を示した。なお、表1には後述する寿命性能試験の結果も併せて示した。
(1)の放電容量試験の結果が良好であった電池(試験番号8〜11、13〜16、18〜21、23〜26)と、鉛丹無添加の電池(試験番号1)について寿命試験を行った。
表1に示すように、鉛丹を使用したすべての電池において鉛丹無添加の電池よりも寿命性能は劣っていた。
一般に、鉛蓄電池の正極板においては、pHが低いとβ型のPbO2が発生し易く、pHが高いとα型のPbO2が発生しやすい。
そして、α型のPbO2とβ型のPbO2とを比較するとα型のほうが構造的に安定しており活物質同士の結合が強くなっているので、正極板においてα型PbO2が多いと長寿命であり、β型PbO2が多いと短寿命である。
前述したようにpHの低い状態においては、β型のPbO2が発生しやすいため、活物質同士の結合が弱くなって軟化脱落が起こりやすくなると考えられる。
実施例群1で作製した比較例の電池では、寿命性能が不十分だったので、本実施例群においてはL2/L1比を0.5、1.0、1.1に設定した電池について検討を行った。
まず、本実施例群で作製した試験番号27〜77の電池について容量試験を行った。
表2および表3には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、L2/L1比を示した。なお、表2には後述する寿命性能試験の結果も併せて示した。
試験番号28〜43、45〜60の電池は、鉛丹化率が20質量%以上の鉛丹を正極活物質全体に対して10質量%以上含有する正極板を備えるから、活物質の利用率を向上させることができ、これにより、活物質使用量を削減し、かつ、放電容量の高い電池を得ることができたのではないかと考えられる。
(1)の放電容量試験の結果が良好であった電池(試験番号28〜43、45〜60)と、鉛丹無添加の電池であってL2/L1比が0.5、1.0の電池(試験番号27、44)について寿命性能試験を行った。
寿命性能が高かった電池では、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹を適量(10〜30質量%)使用することで、鉛丹化率が98%以上の高鉛丹化率鉛丹を使用する電池や鉛丹を40質量%以上使用する電池よりも、正極活物質間の結合が強化されて活物質の軟化・脱落を起こり難くし、寿命性能を向上させることができるからではないかと考えられる。
本実施例群の結果より、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹を、正極活物質原料に対して10〜30質量%添加して作製した正極板を備える電池であって、かつ、L2/L1比が0.5〜1.0である本発明の電池は、放電容量が高く、かつ寿命性能に優れているということがわかった。
L2/L1比を0.7に設定し、種々の鉛丹化率の鉛丹を種々の添加量で鉛粉に混合して作製した正極板を備える電池(試験番号79〜94)を作製した。比較のために、鉛粉のみを使用して作製した正極板を備える鉛丹無添加の電池であって、L2/L1比を0.7に設定した電池も作製した(試験番号78)。
本実施例群で作製した試験番号78〜94の電池について寿命性能試験を行った。
表4には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、L2/L1比を示した。なお、表4には後述するα型PbO2量とβ型PbO2量の比(表中では、α/β比と記載)も併せて示した。
(1)の寿命性能試験の結果が特に良好であった電池(試験番号83〜86)と、試験番号78の鉛丹無添加の電池については、上記の寿命性能試験に供する電池とは別の電池を用意し、化成後の正極活物質をX線回折法により(Rigaku社製、X線回折装置を使用)、α型のPbO2量とβ型のPbO2量の比(α/β比)を分析し、その結果を表4に示した。
次に、電解液濃度について検討を行った。
鉛丹化率が50質量%の鉛丹を、正極活物質原料全体に対して10質量%添加して作製した正極板を用い、L2/L1比を1.0に設定して、種々の濃度の電解液を使用して電池(試験番号95〜100)を作製した。
まず、本実施例群で作製した試験番号95〜100の電池について容量試験を行った。
表5には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、L2/L1比、電解液濃度を示した。なお、表5には後述する寿命性能試験の結果も併せて示した。
(1)の放電容量試験の結果が特に良好であった電池(試験番号97〜100)について寿命性能試験を行った。
表5に示すように、電解液濃度が高くなるに従い寿命サイクル比は低下したが、もっとも電解液濃度の高い試験例100の電池でも寿命サイクル比は104であり、鉛丹無添加でかつL2/L1比が1.0の試験番号44の電池よりも寿命性能は高かった。
寿命性能に優れるという観点から、電解液濃度は1.33g/cm3以下であることが好ましいと考えられる。
本実施例群の結果より、電解液の濃度が1.25g/cm3以上、1.33g/cm3以下であると放電容量が高く、寿命性能に優れた電池が得られるので好適であるということがわかった。
以上より、本発明によれば、放電容量が高く、かつ寿命性能に優れる鉛蓄電池を提供することができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例群においては、L2/L1比が0.5、0.7、1.0のものを示したが、L2/L1比が0.6、0.8と設定したものであってもよい。
Claims (2)
- 正極板と、負極板と、電解液とを備える鉛蓄電池であって、
前記正極板には、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹が正極活物質原料に対して10〜30質量%含まれ、
前記正極板と前記負極板との間に存在する電解液の量L1と、前記正極板内に存在する電解液の量L2との比(L2/L1比)が、0.5以上1.0以下であることを特徴とする鉛蓄電池。 - 前記電解液の濃度が1.25g/cm3以上、1.33g/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
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