JP2009009568A - 航空・宇宙用転がり軸受の品質管理方法および航空・宇宙用転がり軸受 - Google Patents

航空・宇宙用転がり軸受の品質管理方法および航空・宇宙用転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】各要素品の材料購入から完成後の検査内容まで、詳細な履歴情報を、航空・宇宙用機械要素商品と1対1の関係で容易に管理することのできる航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法を提供する。
【解決手段】管理対象とする航空・宇宙用機械要素商品1は、材料購入Slから、鍛造工程S2、熱処理工程S3、研削工程S4、および表面処理工程S5を経て製造されるものである。各工程Sl〜S2の情報を、その工程のロット番号と共に、ICタグ4に記録する。要素品2を航空・宇宙用機械要素商品1に組立てた後は、各要素品2に対するICタグ4の記録情報を、管理コンピュータシステム11に、製造番号または製造ロット番号に対応して記録しておく。航空・宇宙用機械要素商品1には別のICタグ10を取付け、製造番号またはロット番号を記録する。また、このICタグ10には、鍛造、熱処理、研削、表面処理の各工程の加工条件情報を記録する。
【選択図】図1

Description

この発明は、航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法および航空・宇宙用軸受に関し、例えば固定翼,回転翼およびミサイル等の飛翔体を含む航空機や、ロケット,ロケットエンジン,人工衛星等を含む宇宙機器に使用される転がり軸受および滑り軸受等の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法および航空・宇宙用軸受に関する。
航空機は、近年益々大型化してきており、座席数も数百に及ぶ機体が実用化されている。このような航空機が墜落事故等を起こすと大勢の人命が奪われることになるため、航空機の製造過程では厳密な品質管理が行われている。このような品質管理は、航空機の機体の製造工程のみならず、航空機のエンジン等に含まれている各機械要素商品についても厳重に行われている。
また、航空・宇宙機器はもともと、トレーサビリティの要求、つまり考慮の対象となっているものの履歴、適用または所在の追跡ができることの要求がある。これは航空機や宇宙機器等が事故を起こした場合には、その原因究明を迅速化し、もし各機械要素商品に不具合あれば同種不具合を持つ対象品の特定と交換を迅速に行う必要があるからである。
航空機用の各機械要素商品に関して、例えばジェットエンジンに使用する軸受についてはジェットエンジンメーカにより、各機械要素ごとに使用する材料,工作機械,技術者の技量等に関して認定が定められており、この認定を満たしていない限り機械要素商品について納品が認められない。
このような品質管理は、例えば固定翼,回転翼およびミサイル等の飛翔体を含む航空機のみならず、ロケット,ロケットエンジン,人工衛星等を含む宇宙機器においても同様に行われている。
機械要素商品に関して、主として以下に説明する管理が行われている。
まず、材料に関しては、材料の成分やどの炉で製造されたか等を示す材料チャージ番号,仕様書番号および改訂符号等である。改訂符号は当初の仕様が改訂されたときにおける番号である。旋削/鍛造に関しては、何時,どこでどの設備で行われたかおよび加工条件等がある。
熱処理に関しては、温度条件等を定めた仕様の仕様書番号および改訂符号,熱処理条件等である。研削については、何時,いずれの機械を用いて行われたか、またその条件が管理されている。表面処理に関しては、表面処理の種類、仕様書番号および改訂符号等が管理されている。検査では主として非破壊検査が行われており、非破壊検査の種類や仕様書番号および改訂符号等が管理される。防錆,包装に関しても、防錆油や包装の種類や仕様書番号および改訂符号等が管理されている。
上記各機械要素商品の品質管理は、軌道輪,転動体,保持器等の部品の旋削,鍛造,熱処理,研削はロット単位で行われることもあるが、機械要素商品の完成品についてはロットごとに管理されるのではなく、1対1の個別管理が行われている。
このような製造履歴を明確にする品質管理方法として、従来は、紙に記録して書類として保管しておくのが一般的であり、もし納入先から情報の提供が求められた場合には、迅
速に提供できるように書類を管理しておかなければならない。しかも、該当する機械要素商品が使用されている間は、書類も長期間にわたって保管しておかなければならず、製造メーカでは品質管理部門の保管書類が膨大になり、書類を保管しておく場所を確保しておかなければならない。
書類を減らすために、工程毎に発生した情報をデータベースの端末への入力を行う等して対処する方法取り入れられているが、データの消滅の危険性を考慮してバックアップのためにやはり書類として保管しているのが現状である。
一方、物流管理や在庫管理で、ICタグが用いられつつあり、例えば自動車等の物品の製造においてもICタグを用いた製造から廃棄までの管理が例えば、特開2002−169858号公報(特許文献1)において提案されている。ICタグは、非接触で情報の記録および読取りが可能であり、また記憶容量が大きいことから、高度の管理が期待されている。
特開2002−169858号公報
従来のICタグを用いた品質管理方法の提案例では、機械要素商品に取付けられたICタグに機械要素商品に関する各種の情報を直接に記録し、またはICタグには識別情報を記録しておいて、データベースと照合することで、機械要素商品の材質やロット管理情報、各種履歴データ等がわかるようにされている。
しかし、機械要素商品に関する情報だけでは、機械要素商品に生じた支障の原因が解明できない場合がある。例えば、各工程の加工条件の違い等によっても、品質に差が生じることがあり、このような加工条件の違いによる差は、検査結果からでは認識することができないことがある。転がり軸受等の機械要素商品は、複数の要素品で構成されており、組立後の機械要素商品自体の検査結果等が分かっても、個々の要素品の品質の違いによる不具合までは特定できない。
特に、転がり軸受等の転動体を有する機械要素商品では、わずかな材質や精度の違いが機械要素商品として大きな性能の差となるため、従来のICタグを用いた品質管理方法の提案例では対応が難しい。
また、工程管理においても、従来の工程毎に伝票記入や端末入力を行う管理方法では、記入や入力に手間がかかるため、多数の情報をきめ細かく記録することが難しい。特に、転がり軸受等のように複数の要素品を組立ててなる機械要素商品であって、各要素品が材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て、工程毎にロット生産されるものでは、各要素品の製造工程における管理が煩雑であり、情報の手書きによる記録や入力操作に手間がかかる。そのため、機械要素商品の詳細な履歴情報の要求に十分に応じることが難しく、また管理にコストがかかる。
そのため、ICタグの適用を考えられるが、上記のような機械要素商品では、自動車等の物品のような管理を適用することができない。上記特許文献1の提案例では、管理対象となる物品である自動車にICタグを取付け、各工程の情報を記録している。ICタグはフレーム等に取付ける。
しかし、転がり軸受等の機械要素商品では、自動車におけるフレーム等のように完成した基準となる要素品がなく、製造過程では各要素品が鍛造や熱処理等を経て製造されるため、機械要素商品自体にICタグを取付けることができない。また、転がり軸受等の機械
要素商品では、内輪、外輪、転動体等のそれぞれが材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程等を経て管理されるため、ICタグを品質管理に適用しようとした場合に具体的にどのように用いるかが問題であり、効率的なICタグの適用が難しい。
そこで、この発明の目的は、個別に検査される航空・宇宙用機械要素商品であって、鍛造工程や熱処理工程等を経てそれぞれが製造される複数の要素品を組立ててなる航空・宇宙用機械要素商品につき、各要素品の材料購入から機械要素商品の完成後の検査内容まで、詳細な履歴情報を、機械要素商品と1対1の関係で容易に管理することのできる航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法を提供することである。
この発明の目的は、トレーサビリティの程度を高め、鍛造工程、熱処理工程、研削工程等の加工条件情報の確認が、出荷後あるいは客先納入後においても1対1の関係で容易に確認することのできる航空・宇宙用軸受を提供することである。
この発明は、航空・宇宙用機械要素商品にICタグを取付け、このICタグの記録情報だけから品質管理に関するトレーサビリティを可能にした方法である。すなわち、情報の記録および読取りが可能なICタグを用い、航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報のいずれかを記録して管理する航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、航空・宇宙用機械要素商品の製造時または製造完了時にICタグを当該航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品のいずれかに取付ける過程と、複数の要素商品のいずれかに取付けられたICタグに、顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報を記録するとともに、その航空・宇宙用機械要素商品についての鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報および材料情報のいずれかを各要素商品毎に記録する過程と、出荷後の任意時に、ICタグの記録情報を読取ってその読取り情報から、特定情報、加工条件情報および材料情報のいずれかの確認を行う情報読取り利用過程とを含む。
この方法によると、出荷後の任意時の情報読取り利用過程で、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程等のいずれかの加工条件情報または材料情報を確認することができる。また、加工条件情報等まで確認できるため、航空・宇宙用機械要素商品のように厳しい品質,精度が求められる機械要素商品においても、不具合が生じた場合の原因解明等を容易に行うことができる。この方法の場合、別のデータベースを用いることなく、ICタグのみで情報を管理することができるため、加工条件情報等を確認する施設において、データベースへの通信設備やアクセス権限等の有無にかかわらずに加工条件情報等の読取が行える。なお、この明細書において、「航空・宇宙用機械要素商品」とは、例えば航空機および宇宙機器等に使用される機械要素であって、単独で商取引の対象となるものである。
この発明の1つの実施形態では、顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報との特定情報を記憶するとともに航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の加工条件情報および材料情報を識別情報に関連付けて記憶し、記憶内容を識別情報により抽出可能なデータベースを含み、識別情報に基づいて、データベースに記憶されている特定情報、加工条件情報および材料情報を抽出してICタグに記録する過程を含む。
この実施形態では、出荷後の任意時の情報読取り利用過程で、鍛造工程、熱処理工程、
研削工程、表面処理過程等のいずれかの加工条件情報または材料情報を確認することができる。そのため、航空・宇宙用機械要素商品のように厳しい品質,精度が求められる商品においても、不具合が生じた場合の原因解明等を容易に行うことができる。また、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグには、識別情報を記録し、データベースに識別情報に対応して各種の情報を記録するため、限りあるICタグの記憶容量に頼らずに、多量の情報をデータベ−スから引き出すことができる。また、ICタグの残りの記憶容量を、出荷後や客先納入後の各種の履歴管理等に利用することができる。
この発明の他の局面は、航空機・宇宙機器のための複数の要素品からなる航空・宇宙用機械要素商品に関して、識別情報に関連付けてその航空・宇宙用機械要素商品について顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報、および材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を記憶し、記憶内容を識別情報により抽出可能なデータベースと、情報の記録および読取りが可能なICタグとを用いて航空・宇宙用機械要素商品を管理する航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、航空・宇宙用機械要素商品の製造時または製造完了時にICタグを当該航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品のいずれかに取付ける過程と、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、データベースに従い出荷時、または客先納入時までに、当該航空・宇宙用機械要素商品についての識別情報を書き込み、かつその航空・宇宙用機械要素商品についての顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報と、製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、品質保証期間、防錆/包装の情報、取扱いに関する注意事項のうち、少なくとも1つの情報を航空・宇宙用機械要素商品毎に記録する過程と、出荷後の任意時に、ICタグの記録情報を読取ってその読取り情報から、または読取り情報をデータベースと照合してその照合により得られた情報から、顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報の確認と、購入材料の確認、製造工程の確認、その加工条件および材料情報の少なくとも一方の確認、および検査成績の確認のいずれかを行う情報読取り利用過程とを含む。
この方法の場合、出荷後の任意時における情報読取り利用過程で、ICタグの記録情報を読取ってその読取り情報から、または読取り情報をキーとしてデータベースと照合してその照合により得られた情報から、購入材料の確認、製造工程の確認、その加工条件の確認、および検査成績の確認のいずれかを行うことができる。
また、ICタグに記録された製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、品質保証期間、防錆/包装の情報、取扱いに関する注意事項のいずれかが確認できる。これら製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、品質保証期間、防錆/包装の情報、取扱いに関する注意事項等は、各種の場面において即座に知りたいことが多く、データベースと照合することなく、ICタグから直接に読み取れることが、設備面や手間の面で便利である。
グリースには、高温用や低温用等、用途に応じた各種のものがあり、外見からでは分かり難いため、ICタグから読み採れると便利である。また、グリースは、経時的に品質が劣化するため、製造年月日と共に封入グリース銘柄が分かると、客先納入時等に、そのまま使用できるか、グリース交換が必要であるか等の確認が容易に行え、誤って古いグリースの封入部品を客先へ納める懸念が解消できる。要素品間隙間は、転がり軸受におけるラジアル隙間等でなる。
この発明において、いずれの航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法においても、次の過程を含めてもよい。すなわち、航空・宇宙用機械要素商品の要素品の材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程に至る所定の製造情報を、各工程毎に要素
品のロット番号別に準備された製造過程用のICタグに記録する過程と、製造過程用のICタグに記録した情報を読取ってその読取り情報の一部または全体を航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに記録する過程とを含み、製造過程用のICタグに記録する製造情報として、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報および材料情報の少なくとも一方を含む。
このように、要素品毎の製造過程で、その製造過程用のICタグに、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理過程に至る製造情報を、要素品のロット番号別に準備された製造過程用のICタグに各工程毎に記録するようにすると、手書き伝票に記録する場合に比べて詳細な情報の記録が行え、また例えば端末からデータベースに入力する場合と異なり、情報を入力するべき箇所がICタグであるために視覚的に認識できて、入力作業が明確となり、誤りが生じにくい。
また、要素品の材料購入から研削工程の各工程にわたる種々雑多な全ての情報をデータベースに記録するものと異なり、これらの記録情報をICタグで持っておくため、データベースの負担が軽く、管理が容易になる。このため、容易に、より詳細な情報の管理することができる。要素品のロット番号別に準備されるICタグは、工程毎にロット区分が変わる場合は、その変わる各ロット毎に準備する。
好ましくは、航空・宇宙用機械要素商品の要素品の材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を、製造時管理用のデータベースに要素品のロット番号または要素品個別の識別番号に関連付けて記録する過程と、記録した情報を、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに記録する過程とを含むようにしてもよい。
この発明のさらに他の局面における航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、個別に検査される航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法である。すなわち、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て製造される要素品を複数種類含んで組立てられる航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、各要素品について、次の各過程(1)〜(6)を含み、各要素品を組立てた航空・宇宙用機械要素商品について、後述の過程を採る。
(1) 各要素品の材料購入時に、材料ロット別に準備されたICタグに、対応する材料ロットについての材料ロット番号および購入材料に関する情報を記録する過程。
(2) 鍛造工程で、材料ロット別のICタグまたはこの材料ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを鍛造ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する鍛造ロットについての鍛造ロット番号および鍛造工程で得られる情報を記録する過程。
(3) 熱処理工程で、鍛造ロット別のICタグまたはこの鍛造ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを熱処理ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する熱処理ロットについての熱処理ロット番号および熱処理工程で得られる情報を記録する過程。
(4) 表面処理工程で、研削ロット別のICタグ、またはこの研削ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを表面処理ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する表面処理ロットについて表面処理の情報を記録する過程。
(5) 表面処理工程の後の検査工程で、表面処理ロット別のICタグまたはこの表面処理ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを、要素品毎または検査の単位となる同種類の要素品の組毎に準備し、これらICタグに、対応する表面処理ロット番号および検査工程で得られる情報を記録する過程。
(6) 防錆/包装に関する情報を記録する過程。
各要素品を組立てた各航空・宇宙用機械要素商品には、組立前から組立後に至る間にI
Cタグを取付け、この航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、個別の航空・宇宙用機械要素商品特有の製造番号、および航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の検査工程後におけるICタグの記録情報のうち、少なくとも製造番号を記録する。データベースには製造番号に対応して、航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の検査工程後におけるICタグの記録情報、および航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査情報を記録する。
なお、材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程の各工程は、材料購入から要素品の完成までを、大別した各区分のことであり、各工程が複数の工程からなる場合や、さらに工程名称に該当しない工程を含むものであってもよい。例えば、鍛造後に旋削し、熱処理を行うような場合、旋削工程は鍛造工程に含むものとする。また、上記(2)〜(5)の鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程の各工程で得られる情報を記録する過程では、これら鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程の加工条件情報を含めて記録してもよい。また、上記(2)〜(5)鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程の各工程で得られる情報を記録する過程では、これら鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程の加工条件情報を含めて記録してもよい。
この品質管理方法によると、各要素品の材料購入から航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査内容までの履歴情報が、データベースに記憶され、航空・宇宙機械要素商品に取付けられたICタグには製造番号が記録されているため、製造番号をデータベースと照合することで、履歴情報を航空・宇宙用機械要素商品と1対1の関係管理することができる。各要素品の工程毎に発生する情報は、工程毎にその工程のロット別に準備したICタグにロット番号と共に記録するため、詳細な履歴情報を管理することができる。
したがって、不良品が発生した場合の、交換、不良品混入範囲の特定、将来の改善等の対処が容易となり、寿命診断や、機械故障につながる事前の交換も容易となる。工程毎の情報は、その工程のロット毎に準備したICタグに記録するため、手書き伝票に記録する場合に比べて詳細な情報の記録が行え、また例えば端末からコンピュータに入力する場合と異なり、情報を入力するべき箇所がICタグであるために視覚的に認識できて、入力作業が明確となり、誤りが生じにくい。
また、要素品の材料購入から研削工程の各工程にわたる種々雑多な全ての情報をコンピュータに記録するものと異なり、これらの記録情報をICタグで持っておくため、コンピュータの負担が軽く、管理が容易になる。このため、容易に、より詳細な情報の管理することができる。また、航空・宇宙用機械要素商品の製造番号は、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに記録するので、このICタグを、製造後の各種の用途、例えば出荷管理、流通管理、顧客管理、メンテナンス管理等に用いることができる。
この発明において、材料ロット別に準備されるICタグ、鍛造ロット別に準備されるICタグ、熱処理工程別に準備されるICタグおよび表面処理ロット別に準備されるICタグは、同じ材料ロットの材料を複数入れた容器類、同じ鍛造ロットの要素品を複数入れた容器類、同じ熱処理ロットの要素品を入れた容器類および同じ表面処理ロットの要素品を入れた容器にそれぞれ取付けてもよい。
ICタグの容器類への取付けは、直接に行ってもよく、また容器に取付けられて視覚的に認識させるためのタグに取付けてもよい。ICタグの容器類への取付けは着脱自在な取付けであってもよい。ICタグを容器類に取付けておくことで、ロット毎に準備されるICタグを、常に要素品と共に移動させることができ、ICタグの取扱いが容易である。また、要素品の搬送経路でICタグへの情報の記録を行うことができる。
この発明において、航空・宇宙用機械要素商品が、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て製造される要素品とは別の要素品を含むものであって、この別要素品についての情報は、宇宙・航空用機械要素商品の組立て後にデータベースに製造番号またはロット番号に対応させて記録するようにしてもよい。これより、別要素品についての情報も、航空・宇宙用機械要素商品の完成後に知ることができる。航空・宇宙用機械要素商品は、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て製造される要素品を複数種類含んで組立てられるものであればよく、例えば転がり軸受等が該当する。
転がり軸受の場合、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て製造される要素品は、内輪、外輪、および転動体である。これらの工程を経ない別要素品としては、保持器、シール等がある。
航空・宇宙用機械要素商品は組立時にグリースが封入されるものであってもよく、その場合、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、その航空・宇宙用機械要素商品の組立て年月日を記録することが好ましい。グリース封入する航空・宇宙用機械要素商品としては、転がり軸受等が該当する。
グリースは、経時的に劣化するため、組立て年月日が分かれば管理が容易になる。
この発明において、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、その宇宙・航空用機械要素商品の出荷から客先納入までの所在等の情報を記録してもよい。これにより、出荷管理、流通管理、顧客管理、メンテナンス管理等が容易になる。
この発明における航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報および材料情報の少なくとも一方を記録するようにしたため、転動体を有し複数の要素品からなる航空・宇宙用機械要素商品について、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程等の加工条件情報または材料情報の確認が、客先納入後においても容易に確認することができ、不具合発生時の原因解明等を容易に行うことができる。
この発明における他の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、ICタグに、さらに航空・宇宙用機械要素商品の識別情報を記録し、データベースを別に準備したため、より多くの情報を容易に知ることができる。
この発明におけるさらに他の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、個別に検査される航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、航空・宇宙用機械要素商品の各要素品の材料購入から表面処理工程にわたる各工程において、ロット別にICタグを準備し、ロット番号およびその工程で得た情報を記録し、各要素品を組立てた航空・宇宙用機械要素商品にICタグを取付けて、このICタグに、少なくとも個別の航空・宇宙用機械要素商品特有の製造番号を記録し、管理コンピュータシステムに製造番号と対応して、航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の検査工程後におけるICタグの記録情報、および航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査情報を記録するため、各要素品の材料購入から航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査内容まで、詳細な履歴情報を、航空・宇宙用機械要素商品と1対1の関係で容易に管理することができる。
この発明におけるさらに他の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、各要素品の
材料購入から航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査内容まで、詳細な履歴情報を、航空・宇宙用機械要素商品の製造ロット別に容易に管理することができる。
この発明は航空機や宇宙機器に使用される転がり軸受等の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理に向けられたものであり、第1の実施形態を図1とともに説明する。図1は、航空・宇宙用機械要素商品1の製造から廃棄までの流れの各段階と、その各段階でのICタグ10を利用した品質管理過程を示す図である。
この航空・宇宙機械要素商品1の品質管理方法は、航空・宇宙用機械要素商品1にICタグ10を取付け、このICタグ10に航空・宇宙用機械要素商品1に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を記録し、ICタグ10から読取った記録情報から、航空・宇宙用機械要素商品1の品質管理に関するトレーサビリティを可能にする方法である。
ICタグ10は、非接触で情報の記録および読取が可能なものである。管理対象となる航空・宇宙用機械要素商品1は、複数種類の要素品2を組立てて構成され、その要素品2の1つが転動体となるものである。
この航空・宇宙用機械要素商品1の品質管理方法は、次のICタグ取付け過程R1、製造情報の記録過程R2、および情報読取り利用過程R3を含む。
(ICタグ取付過程Rl)
この過程では、航空・宇宙用機械要素商品1の製造時または製造完了時にICタグ10を航空・宇宙用機械要素商品1に取付ける。この場合に、要素品2の1つにICタグ10を取付けてから、航空・宇宙用機械要素商品1を組立ててもよく、また航空・宇宙用機械要素商品1の組立が完了してから航空・宇宙用機械要素商品1にICタグ10を取付けてもよい。
(製造情報の記録過程R2)
この過程では、この航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に、出荷時または客先納入時までに、その航空・宇宙用機械要素商品1についての材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を記録する。この記録する製造情報には、鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報を含ませる。航空・宇宙用機械要素商品1についての材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程は、航空・宇宙用機械要素商品1の各要素品2についての材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程のことである。
加工条件情報は、例えば鍛造工程ではプレス圧やサイクルタイム等であり、熱処理工程では仕様書番号および改訂符号、熱処理温度、熱処理時間、熱処理方法等であり、研削工程では砥石回転速度や切り込み速度、送り速度等であり、表面処理工程は表面処理の種類や仕様書番号および改訂符号等である。製造情報として、加工条件の他に、それぞれ担当した認定を受けている技術者の名前や、航空・宇宙用機械要素商品1についての製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、品質保証期間、防錆/包装の情報、取扱いに関する注意事項を記録する。また、各種検査結果も記録する。
各種検査結果には各要素品2毎の検査結果と、完成品としての検査結果とが含まれる。検査結果には非破壊検査の種類や仕様書番号および改訂符合等が含まれており、その他に防錆,包装に関する情報も記録される。防錆,包装に関する情報には、防錆油,包装の種
類や仕様書番号および改訂符号等が記録される。
また、これらの製造情報の他に、航空・宇宙用機械要素商品1の識別情報を記録する。航空・宇宙用機械要素商品1の識別情報として、顧客の部品番号、顧客の仕様図の改訂符号および/またはエンジニアリングオーダー等の付随文書の改訂符号、製造メーカの品名および部品番号/シリアルナンバー/納入仕様書の図番および改訂符号/製作図の図番および改訂符号等が記録される。
製造情報の記録は、1度に行っても、また何回かに分けて行ってもよい。例えば、航空・宇宙用機械要素商品1の組立が完了して完成品検査をしたときに、検査結果や検査条件にかかる情報を記録し、後に残りの製造情報を記録してもよく、また検査の情報を含めて全ての製造情報を一度に記録してもよい。
(情報読取り利用過程R3)
この過程は、出荷後の任意時に、前記ICタグ10の記録情報を読取ってその読取り情報から、少なくとも前記加工条件情報の確認を行う過程である。
航空・宇宙用機械要素商品1の完成から廃棄までの一般的な流れとしては、図1のように、航空・宇宙用機械要素商品1の組立完成から、完成品検査、出荷、倉庫での保管、営業所での保管、客先納入(顧客による購入、航空機等への航空・宇宙用機械要素商品1の組み込み)、顧客での使用、廃棄、という流れとなる。特注品の場合は、出荷後に直接に客先に納入される。ICタグ10に記録された情報の読取りおよび利用は、出荷後の任意の段階で、必要に応じて行われ、その読取り情報から必要な情報の確認が行われる。
例えば客先での使用の段階で、航空・宇宙用機械要素商品1に不具合が発生したときは、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10から、その航空・宇宙用機械要素商品1についての材質や性能等の各種の情報が読取られ、原因の解明が行われる。このときに、記録情報に各要素品2の材質や検査結果だけでなく、加工条件情報や検査結果が含まれていると、原因解明が容易にかつ精度よく行われる。
情報読取り利用過程R3における付加的な利用として、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10におけるメモリの空き容量部分が、出荷管理や、在庫管理、流通管理、メンテナンス管理等に適宜用いられる。
この航空・宇宙用機械要素商品1の品質管理方法によると、出荷後の任意時の情報読取り利用過程R3で、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程等のいずれかの加工条件情報を確認することができるため、例えば、転がり軸受等のように、転動体2Aを有し複数の要素品2からなり、厳しい品質,精度が求められる航空・宇宙用機械要素商品1においても、不具合が生じた場合の原因解明等を容易に行うことができる。
また、この方法の場合、別のデータベースを用いることなく、ICタグ10のみで情報を管理することができるため、加工条件情報を確認する施設において、データベースへの通信設備やアクセス権限等の有無にかかわらずに加工条件情報の読取りが行える。
1つの実施形態として、ICタグ10にできるだけの製造情報を記録しておいて、その記録情報により品質管理を行う方法であるが、データベース11と併用してもよい。
すなわち、データベ−ス11として、航空・宇宙用機械要素商品1の識別情報に関連付けてその宇宙・航空用機械要素商品1に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を記憶し、記憶内容を識別情報に
より抽出可能なものを準備しておく。このデータベース11と、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10とを用いて品質管理を行う。この場合、各過程Rl〜R3では次の処理を行う。
(ICタグ取付け過程Rl)
この過程Rlは、前記実施形態と同じである。
(製造情報の記録過程R2)
この過程では、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に、データベース11に従い、出荷時、または客先納入時までに、その航空・宇宙用機械要素商品1についての製造番号の識別情報を記録し、かつその航空・宇宙用機械要素商品1についての製造情報を記録する。この記録する製造情報には、各要素品2の鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報を含ませる。データベース11を併用するため、ICタグ10へ記録する製造情報は、ICタグ10から直接に読取ることが便利な情報だけに限ってもよい。例えば、航空・宇宙用機械要素商品1についての製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、品質保証期間、防錆/包装の情報、取扱いに関する注意事項等は、ICタグ10に記録しておくことが好ましい。
(情報読取り利用過程R3)
この過程では、出荷後の任意時に、ICタグ10の記録情報を読取って、その読取り情報から、または読取られた識別情報をデータベ−ス11と照合してその照合により得られた情報から、購入材料の確認、製造工程の確認、その加工条件情報の確認、および検査成績の確認等のいずれかを行う。ICタグ10やデータベース11に記録されているその他の各種の利用を行ってもよい。
この管理方法においても、出荷後の任意時の情報読取り利用過程Rlで、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程等のいずれかの加工条件情報を確認することができる。そのため、転がり軸受等のように、転動体を有し複数の要素品2からなる厳しい品質,精度が求められる航空・宇宙用機械要素商品1においても、不具合が生じた場合の原因解明等を容易に行うことができる。
また、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10には、識別情報を記録し、データベース11に識別情報と対応して各種の情報を記録するため、限りあるICタグ10の記憶容量に頼らずに、多量の情報をデータベース11から引き出すことができる。またICタグ10の残りの記憶容量を、出荷後や客先納入後の各種の履歴管理等に利用することができる。
この管理方法およびデータベース11の詳細は、後に図2以降の各図と共に説明する。
上記各実施形態において、製造情報の記録過程R2で記録するための各種の製造情報の収集は、製造時管理用のデータベース15に記録しておいて、航空・宇宙用機械要素商品1のICタグ10に記録するようにしてもよく、また航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられるICタグ10とは別の製造過程用のICタグ4を利用して行ってもよい。
製造時管理用のデータベース15に記録しておく方法では、航空・宇宙用機械要素商品1の要素品2の材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を、製造時管理用のデータベース15に要素品2の要素品個別の識別番号に関連付けて記録する過程と、この記録した情報を、または複数台のコンピュータ(図示せず)に設けられる。
製造過程用のICタグ4を利用する方法は、後に図2以降の各図と共に詳述するが、概略を示すと次のとおりである。この方法では、航空・宇宙用機械要素商品1のように要素品2の材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程に至る所定の製造情報を、要素品2のロット番号別に準備された製造過程用のICタグ4に各工程毎に記録する過程と、この記録した情報を読取ってその読取り情報の一部または全体を航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に記録する過程とを含む。製造過程用のICタグ4に記録する製造情報として、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報を含むようにする。
図2は、この発明の一実施形態における航空・宇宙用機械要素商品の管理のためにICタグ4を利用する方法を示す図である。
図2において、品質管理方法の管理対象とする航空・宇宙用機械要素商品1は、複数種類の要素品2((1)〜(3))を組立てたものであって、それら複数種類の要素品2((1)〜(3))が、材料購入Slから、鍛造工程S2、熱処理工程S3、研削工程S4、および表面処理工程S5を経て製造されるものである。これに該当する航空・宇宙用機械要素商品1として、例えば、転がり軸受がある。
上記要素品2((1)〜(3))は、航空・宇宙用機械要素商品1が後述の図10〜図12に示すような転がり軸受の場合、内輪51、外輪52、および転動体53,56である。航空・宇宙用機械要素商品1は、前記材料購入Slから、鍛造工程S2、熱処理工程S3、研削工程S4、表面処理工程S5を経て製造される要素とは別の要素品3を含むものであってもよい。航空・宇宙用機械要素商品1が転がり軸受の場合、図示しない保持器およびシールは、上記の別要素品3となる。
図3は、材料購入Slから、鍛造工程S2、熱処理工程S3、研削工程S4、および表面処理工程S5の各工程における区分を示す図である。この区分は、材料購入から要素品の完成までを、大別したものであり、各工程が複数の工程からなる場合や、さらに工程名称に該当しない工程を含むものであってもよい。各工程Sl〜S5の名称は、その区分した工程を代表する処理の名称である。
この管理方法は、上記各要素品2((1)〜(3))について、次の各過程(1)〜(5)を含み、各要素品2を組立てた航空・宇宙用機械要素商品1について、後述の過程を採る。なお、各工程のロットは、製造工程の下流側で分かれることがあるが、併合はしない。
(1) 材料購入(Sl)時の管理過程。
各要素品2の材料購入時に、材料ロット5別に準備されたICタグ4に、対応する材料ロット5についての材料チャージ番号、材料仕様書番号および改訂符号に関する情報を記録する。
(2) 鍛造工程(S2)の管理過程。
材料ロット5別のICタグ4、またはこの材料ロット5別のICタグ4の記録情報を引き継いだICタグ4を鍛造ロット6別に準備し、これらICタグ4に、対応する鍛造ロット6についての鍛造ロット番号、および鍛造工程で得られる情報を記録する。
(3) 熱処理工程(S3)の管理過程。
鍛造ロット6別のICタグ4、またはこの鍛造ロット6別のICタグ4の記録情報を引
き継いだICタグ4を熱処理ロット7別に準備し、これらのICタグ4に、対応する熱処理ロット7についての仕様書番号および改訂符号、熱処理ロット番号、および熱処理工程で得られる情報を記録する。
(4) 研削工程(S4)の管理過程。
熱処理ロット7別のICタグ4、またはこの熱処理ロット7別のICタグ4の記録情報を引き継いだICタグ4を、研削ロット8別に準備し、これらのICタグ4に、対応する研削ロット8についての加工条件の記録を行う。
(5) 表面処理工程(S5)およびその後の検査工程時の管理過程。
研削ロット8別のICタグ4、またはこの研削ロット8別のICタグ4の記録情報を引き継いだICタグ4を表面処理ロット9別に準備し、これらのICタグ4に、対応する表面処理ロット9について表面処理の種類、仕様書番号および改訂符号等の情報を記録する。
また、表面処理ロット9別のICタグ4、またはこの表面処理ロット9別のICタグ4の記録情報を引き継いだICタグ4を、要素品2毎または検査の単位となる同種類の要素品2の組毎に準備し、これらICタグ4に、対応する検査工程で得られる情報や防錆,包装に関する情報を記録する。
上記各要素品2((1)〜(3))を組立てた各航空・宇宙用機械要素商品1には、組立前から組立後に至る間に、完成後使用のためのICタグ10を取付け、この航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に、個別の航空・宇宙用機械要素商品1に特有の製造番号、および航空・宇宙用機械要素商品1に用いられた各要素品2((1)〜(3))の前記検査工程後におけるICタグ4の記録情報のうち、少なくとも製造番号を記録する。データベ−ス11には製造番号と対応して、航空・宇宙用機械要素商品1に用いられた各要素品2((1)〜(3))の検査工程後のICタグ4の記録情報、および航空・宇宙用機械要素商品1の完成後の検査情報や包装に関する情報を記録する。
上記各工程(Sl)〜(S5)で用いられるICタグ4は、各工程を通じて同じものであってもよく、工程によって別のICタグ4を用い、前工程におけるICタグ4の記録情報の転記をしてもよい。下流側の工程でロットが別れる場合は、新たなICタグ4を準備し、前の工程における記録情報の転記をしてもよく、また予め、ロット分かれるロット数分だけICタグ4を準備しておき、各工程を通じて同じICタグ4に情報を追加記録するようにしてもよい。
各工程(Sl)〜(S5)において、ICタグ4に記録される各ロット番号および各工程の情報は、図3のように工程毎に追加されることになる。
各工程において、ICタグ4は、図2に示すように例えば要素品2を入れる運搬用の容器類12に取付けておく。容器類12は、例えば、かご、箱、またはパレット等である。この場合に、ICタグ4の容器類12への取付けは、直接に行ってもよく、また図9に示すように、容器類12に取付けられる視覚による識別用のタグ13に取付けてもよい。容器類12にはICタグ4を着脱自在に取付けてもよい。ICタグ4を容器類12に取付けておくことで、ロット毎に準備されるICタグ4を、常に要素品2と共に移動させることができ、ICタグ4の取扱いが容易である。また、要素品2のコンベヤ等による搬送経路14において、ICタグ4への情報の記録を行うことができる。
上記各管理過程の詳細を説明する。
(1) 材料購入(Sl)時の管理過程。
材料は、鋼材の塊、銅板、鋼管、鋼線等の形態で購入される。購入した材料は例えば材料ロット単位で各種の品質検査を行う。この管理過程でICタグ4に記録する購入材料の情報は材料の出所情報と品質情報とに分けられる。出所情報としては、材料の販売元の会社名や、その会社の工場所在地等である。品質情報は、組織硬さ、非金属介在物の情報等である。品質情報は、材料購入後に行った材料検査の結果をICタグ4に記録するが、販売元から得た情報を記録しても、両方を記録してもよい。この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、例えば購入管理コンピュータ(図示せず)等から得た情報を記録用の端末を介して行う。
(2) 鍛造工程(S2)の管理過程。
鍛造工程(S2)は、航空・宇宙用機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。図6は、航空・宇宙用機械要素商品1が転がり軸受である場合の各要素品2の工程を示す。内輪および外輪となる要素品2では、鍛造工程として(S2)、これら内輪や外輪の粗形状に形成する鍛造と、その鍛造品を旋削する工程とを含む。鋼球等の転動体となる要素品2では、鍛造工程として(S2)として、型打ち、ブラッシング、および生研磨の工程等が含まれる。
鍛造工程(S2)でのICタグ4への情報の記録は、鍛造工程(S2)の全体で1回としてもよく、また鍛造工程(S2)の中の各工程毎に行うようにしてもよい。例えば、要素品2が転がり軸受の内輪または外輪であって、図6のように鍛造および旋削が行われる場合、旋削後に測定した幅寸法,内径寸法、溝寸法、面取寸法等の情報をICタグ4に記録する。要素品2が転動体であって、図6の各工程で加工される場合、型打ちの後に寸法、歪、外観等の情報を記録し、ブラッシング後、および生研磨の後に、それぞれ測定を行って寸法、真球度、外観等の情報を記録する。また、加工条件情報を記録する。
この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、例えばこれらの鍛造工程(S2)等の各工程毎に用いられる工程管理用または検査管理用等の製造時管理用のデータベース15により、端末16を介して行うようにする。オペレータによる手入力が必要な情報については、図4に示すようにキーボード等の入力手段17により、製造時管理用のデータベース15を介して、または直接に端末16から記録する。
前工程の材料ロット5よりも鍛造ロット6のほうが多くなる場合は、新たなICタグ4を準備し、これにICタグ複製手段18を用いて材料ロット5のICタグ4の記録情報を転記し、この転記よって情報を受け継いだICタグ4に対して鍛造工程の情報を記録する。以下の各工程においても、ロット数が増える場合は、上記と同様にして新たなICタグ4に転記する。
(3) 熱処理工程(S3)の管理過程。
熱処理を行ったときは、後に検査を行う。要素品2が転がり軸受の内輪や外輪の場合は、硬さ、変形、組織等の検査を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、硬さ、組織等の検査を行う。熱処理工程の情報としては、これらの検査結果を記録する。この他に熱処理条件等を記録しても良い。
(4) 研削工程(S4)およびその後の検査工程時の管理過程。
研削工程(S4)は、航空・宇宙用機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。要素品2が転がり軸受の内輪または外輪である場合、研削工程(S4)として、図6のように幅研削、外径研削、溝研削、内径研削、溝超仕上げ等を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、粗研磨、中研磨、精研磨、ラッピング等を行う。これらの各工程では、その工程の完了品の検査を行う。ICタグ4に記録する情報は、研削工程(S4)における上記の各工程毎の加工条件の情報等である。この加工条件の情報は、例えば砥石の種類や加工速度等である。
研削工程が完了した後、検査を行い、その結果をICタグ4に記録する。検査結果情報としては、各種の寸法、例えば、内外輪の幅研削では、寸法、幅不同、外観等であり、外輪の外径研削では外径寸法、真円度、円筒度、外観等である。内外輪の溝研削では、研削対象箇所の寸法、真円度、ラジアル振れ、アキシアル振れ、溝心差等である。内輪の内径研削では、内径寸法、真円度等である。内外輪の溝超仕上げでは寸法、外観等である。要素品2が転動体の場合は、研削工程(S4)における粗研削やその他の各工程後における検査結果の寸法や真円度等、研削工程(S4)の完了品である完成状態の要素品2の検査結果となる外観、寸法、真球度、径の相互差、硬さ、音響、顕微鏡検査結果等である。
(5) 表面処理工程(S5)およびその後の検査工程時の管理過程。
表面処理工程(S5)は、要素品2が転がり軸受の内輪または外輪である場合、それぞれの表面に膜圧が所定の表面処理方法により形成される。
表面処理工程(S5)では、特注品であるため全数検査が行われる。全数検査の場合、ICタグ4は要素品2の個数だけ準備され、そのICタグ4に対応する要素品2の研削ロット番号と、個々の検査結果等の情報を記録する。研削ロット番号に加えて、個々の要素品2を識別する番号を付加して記録してもよい。要素品2が転がり軸受における転動体等のように1つの航空・宇宙用機械要素商品1に多数用いられる場合は、1つの航空・宇宙用機械要素商品1に用いられる要素品2の組、または1つの航空・宇宙用機械要素商品1の同じ箇所(例えば複列軸受における各列)に用いられる要素品2の組を1つの要素品2とみなして1つのICタグ4を準備し、その組毎の情報を記録してもよい。
航空・宇宙用機械要素商品1の組立、およびその後の管理過程。
上記のように製造された各要素品2は、組立工程で1つの航空・宇宙用機械要素商品1に組立てられる。この航空・宇宙用機械要素商品1に、組立前から組立後に至る間にICタグ10を取付ける。すなわち、要素品2の単独の状態でICタグ10を取付けても、組立の完了後に取付けてもよい。また、この取付けは、航空・宇宙用機械要素商品1の内部に行っても、表面に行ってもよい。航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられるICタグ10は、航空・宇宙用機械要素商品1の機能や取扱いの障害にならない程度に小型のものであることが必要である。実用化されているICタグは、1mm未満の大きさのものがあり、例えばこのような寸法のものが使用される。
各航空・宇宙用機械要素商品1は、組立が完了すると、完成品検査として各種の検査を行う。この検査は、例えば上記ICタグ10の取付け後に行うが、取付け形態によっては取付け前に行ってもよい。完成品検査として、航空・宇宙用機械要素商品1が転がり軸受の場合、外輪、内径、外径、幅寸法、真円度、円筒度、ラジアル振れ、アキシャル振れ、横振れ、隙間、音響等の各要因につき検査を行う。完成品検査は、特注品等の個別検査品の場合は、航空・宇宙用機械要素商品1の全数につき行う。
航空・宇宙用機械要素商品1を組立てる過程で、その航空・宇宙用機械要素商品1を構成する各要素品2のICタグ4の記録情報は、図6のように、データベース11により製造番号に対応して記録される。また、完成品検査の検査結果についても、製造番号に対応して記録される。製造番号は個別の航空・宇宙用機械要素商品1特有の番号であり、例えばシリアル番号とされる。航空・宇宙用機械要素商品1が上記のような工程を経過しない別要素品(例えば保持器)3を含むものである場合、その別要素品3の情報もデータベース11に記録する。
航空・宇宙用機械要素商品1に上記のように取付けられたICタグ10には、少なくとも上記の製造番号を記録する。このICタグ10には、製造番号の他に、各要素品2のICタグ4の記録情報や、完成品検査の結果等を記録してもよい。航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に、完成品検査の結果を記録する場合、検査工程でICタグ10に検査結果を記録し、このICタグ10からデータベ−ス11に情報を転記してもよい。また、航空・宇宙用機械要素商品1だけでなく、航空・宇宙用機械要素商品1の梱包1A(図1)にもこのICタグ10を取付け、製造番号等を記録してもよい。
データベース11は、図5に示すようにコンピュータネットワーク19上に設けられた管理コンピュータシステム21に設けられる。このデータベース11の記憶部11aには、各航空・宇宙用機械要素商品1についての上記の記録情報Fが記録される。コンピュータネットワーク19は、例えばインターネット等の広域ネットワークや、この広域ネットワークに工場内のローカルエリアネットワークが結合したものである。データベース11は、記憶部11aとこの記憶部11aに対する入出力や検索の管理を行うデータベース管理部11bとでなる。
データベース11は、概念的に1つの品質管理用のデータベースとして認識できるものであればよく、物理的には複数に分かれたデータベースの集まりであっても、また他の各種の目的のデータベースと情報を共有するものであってもよい。例えば、データベース11は、コンピュータネットワーク19上に分散して設けられた複数のコンピュータで構成されるものであっても、また上記製造時管理用のデータベース15や技術情報管理用等のデータベースと記録情報を共有するものであってもよい。
データベース11は、ネットワーク19を介して、航空・宇宙用機械要素商品製造工場内の各情報処理機器の他に、ネットワーク18を介して技術部門や、倉庫、営業所、顧客企業の事業所の情報処理機器40、および携帯端末等に接続されたものである。
この品質管理方法によると、各要素品2の材料購入から航空・宇宙用機械要素商品1の完成後の検査内容までの履歴情報が、管理コンピュータシステム11に記憶され、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10には製造番号が記録されているため、製造番号を管理コンピュータシステム11と照合することで、上記履歴情報を航空・宇宙用機械要素商品1と1対1の関係管理することができる。例えば、出荷後の任意の段階で、その航空・宇宙用機械要素商品1の使用者や、保守サービスを行うもの等が、航空・宇宙用機械要素商品1の履歴情報を知ることができる。
航空・宇宙用機械要素商品1の各要素品2の製造工程毎に発生する情報は、工程毎にその工程のロット別に準備したICタグ4にロット番号と共に記録するため、詳細な履歴情報を管理することができる。したがって不良品が発生した場合の、交換、不良品混入範囲の特定、将来の改善等の対処が容易となり、寿命診断や、機械故障につながる事前の交換も容易となる。
前記工程毎の情報は、その工程のロット毎に準備したICタグ4に記録するため、手書
き伝票に記録する場合に比べて詳細な情報の記録が行え、また例えば端末からコンピュータに入力する場合と異なり、情報を入力するべき箇所がICタグ4であるために視覚的に認識できて、入力作業が明確となり、誤りが生じにくい。また、要素品2の材料購入から研削工程の各工程にわたる種々雑多な全ての情報をコンピュータに記録するものと異なり、生産工程ではこれらの記録情報をICタグ4で持っておくため、コンピュータの負担が軽く、管理が容易になる。このため、容易に、より詳細な情報の管理することができる。
また、航空・宇宙用機械要素商品1の製造番号は、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10に記録するので、このICタグ10の残った記憶領域を自由に使用でき、製造後の各種の用途、例えば出荷管理、流通管理、顧客管理、メンテナンス管理等に用いることができる。
すなわち、航空・宇宙用機械要素商品1は、図1と共に前述したように、組立完成、検査、出荷の後、一般的に倉庫に配送され、営業所から顧客へ納品される。特注品の場合は、出荷の後、直接に顧客に納品されることもある。顧客では、航空・宇宙用機械要素商品1を機器に組み込んで使用し、耐久年数等で廃棄することになる。このような各過程で、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けられたICタグ10の製造番号を読取って履歴情報を知る他に、ICタグ10の残りの記憶領域を利用した各種の利用が図れる。
次に、図7を参照して、前記各管理方法で用いられるICタグ4,10につき説明する。ICタグ4,10に対する情報の記録および読取りは、ICタグリーダ/ライタ20によって行われる。ICタグリーダ/ライタ20は、ICタグ4,10に対向させるアンテナ21を有している。ICタグ4,10は、非接触で情報の記録および読取りが可能なものであり、ICチップ(集積回路のチップ)25と、アンテナ26とで構成される。これらICチップ25とアンテナ26は、樹脂(図示せず)で一体に包囲される。
ICタグは種々の形式,形状,大きさのものがあり、板状の物の他、例えば1mm未満の大きさの角状や球状の物等があり、また記憶容量も種々異なるが、取付け対象に応じて大きさや種類等に応じて適宜選択すればよい。
要素品2の管理に用いるICタグ4は、容器類12に取付けるため、比較的大きなものでよいが、航空・宇宙用機械要素商品1に取付けるICタグ10は、小さなものが好ましい。ICタグ4,10としては、例えば、RFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したFRIDタグが利用できる。FRID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光等を用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いてもよいが、例えば電磁誘導形式のものが用いられる。また、ICタグは、周辺に金属があっても使用可能なものがあり、航空・宇宙用機械要素商品1に取付ける場合、このようなものが好ましい。
図8はICタグ4の具体的回路例を示す。このICタグ4,10は、中央処理装置(CPU)27、メモリ28、送受信回路29、および電源回路30を有しており、電源回路30はアンテナ26から供給される高周波信号から電源を得る。メモリ28は、情報の記憶に電源が不要な不揮発性メモリが用いられ、アンテナ26を介して送受信回路29によってICタグリーダ/ライタ20との間で情報を伝達する。
なお、前記各実施形態では、航空・宇宙用機械要素商品1が転がり軸受である場合につき主に説明したが、この発明の管理方法は、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程を経て製造される要素品2を複数種類含んで組立てられ航空・宇宙用機械要素商品1であれば、適用できる。
図10はこの発明が適用されるICタグが取付けられた航空・宇宙用機械要素商品の一例の航空・宇宙用玉軸受を示す図であり、(a)は部分断面図であり、(b)は要部平面図である。内輪51と、外輪52との間に転動体としての玉53が設けられており、外輪52にはリング状のフランジ部54が設けられている。フランジ部54には周囲に取付け孔55が形成されている。これらの取付け孔55は航空機のエンジン等に正確に位置決めして取付けるために複数形成されている。
ICタグ10はフランジ部54に形成された取付け孔(図示せず)内に埋め込まれ、樹脂等によってモールドされることで取付けられている。図10に示した軸受は、アキシャル方向へは余り荷重が加わらない箇所に設けられるものであり、そのためにフランジ部54の厚みは比較的薄く形成されている。
ICタグ10の取付けは、例えば外輪52の研削工程(S4)の完了後で、外輪52の単独の状態で行われる。なお、ICタグ10は、フランジ部54に取付ける代わりに、内輪51や図示しない保持器またはシール等に取付けてもよい。
図11はICタグが取付けられた航空・宇宙用軸受の他の例における円筒ころ軸受を示す図であり、(a)は部分断面図であり、(b)は要部平面図である。図11において、内輪51と、外輪52との間に転動体としての円筒ころ56を設けたものであり、外輪52にはリング状で幅広のフランジ部54が形成されていて、2箇所に取付け孔55が形成されている。ICタグ10はこのフランジ部54に取付けられている。なお、図11に示した円筒ころ軸受もアキシャル方向へは余り荷重が加わらない箇所に設けられるものであり、そのためにフランジ部54の厚みは比較的薄く形成されている。
図12はICタグが取付けられた航空・宇宙用軸受の他の例における軸受を示す図であり、(a)は玉軸受の断面図であり、(b)は円筒ころ軸受を示す断面図である。
図12(a)に示した例は、内輪51と、外輪52と、玉53とを含み、内輪51には引抜き部57が形成されている。この引き抜き部57には、例えば航空機のエンジン等に装着されたときに取外すために、工具が嵌め込まれる溝が形成されている。ICタグ10はこの引抜き部57に取付けられている。
図12(b)において、内輪51と、外輪52との間に転動体としての円筒ころ56を含み、内輪51には引抜き部57が形成されており、この引き抜き部57にICタグ10が取付けられている。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法は、固定翼,回転翼およびミサイル等の飛翔体を含む航空機や、ロケット,ロケットエンジン,人工衛星等を含む宇宙機器に使用される転がり軸受等の品質管理に利用できる。
この発明の第1の実施形態にかかる航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法の説明図である。 航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法における要素品の管理にかかる説明図である。 各ICタグの記録内容の変化を示す説明図である。 要素品の製造工程中におけるICタグへの記録形態の概念説明図である。 データベ−スとICタグの関係を示す説明図である。 航空・宇宙用機械要素商品の組立構成の説明図である。 ICタグとタグリーダ/ライタの関係を示す説明図である。 ICタグの回路図である。 要素品の容器類とそのICタグへの書き込み形態の概念を示す説明図である。 この発明が適用されるICタグが取付けられた航空・宇宙用玉軸受を示す図である。 ICタグが取付けられた航空・宇宙用軸受の他の例における円筒ころ軸受を示す図である。 航空・宇宙用軸受の他の例の軸受を示す図である。
符号の説明
1 航空・宇宙用機械要素商品、2 要素品、3 別要素品、4,10 ICタグ、5
材料ロット、6 鍛造ロット、7 熱処理ロット、8 研削ロット、9 表面処理ロット、10 ICタグ、11 データベ−ス、12 容器類、15 データベース、16 端末、20 ICタグリーダ/ライタ、51 外輪、52 内輪、53 玉 54,57
フランジ部、56 円筒ころ、55 取付け孔。

Claims (13)

  1. 情報の記録および読取りが可能なICタグを用い、航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報のいずれかを記録して管理する航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、
    前記航空・宇宙用機械要素商品の製造時または製造完了時にICタグを当該航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品のいずれかに取付ける過程と、
    前記複数の要素商品のいずれかに取付けられたICタグに、顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報を記録するとともに、その航空・宇宙用機械要素商品についての鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報および材料情報のいずれかを前記各要素商品毎に記録する過程と、
    出荷後の任意時に、前記ICタグの記録情報を読取ってその読取り情報から、前記特定情報、前記加工条件情報および材料情報のいずれかの確認を行う情報読取り利用過程とを含む、航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  2. さらに、前記顧客に関する情報と、前記顧客からの要求に関する情報と、前記製造元に関する情報との特定情報を記憶するとともに前記航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品に関する材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の加工条件情報および材料情報を識別情報に関連付けて記憶し、記憶内容を前記識別情報により抽出可能なデータベースを含み、
    前記識別情報に基づいて、前記データベースに記憶されている特定情報、加工条件情報および材料情報を抽出して前記ICタグに記録する過程を含む、請求項1に記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  3. 複数の要素品からなる航空・宇宙用機械要素商品に関して、識別情報に関連付けてその航空・宇宙用機械要素商品について顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報、および材料購入から、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を記憶し、記憶内容を前記識別情報により抽出可能なデータベースと、
    情報の記録および読取りが可能なICタグとを用いて前記航空・宇宙用機械要素商品を管理する航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、
    前記航空・宇宙用機械要素商品の製造時または製造完了時に前記ICタグを当該航空・宇宙用機械要素商品を構成する複数の要素品のいずれかに取付ける過程と、
    前記航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、前記データベースに従い出荷時、または客先納入時までに、当該航空・宇宙用機械要素商品についての識別情報を書き込み、かつその航空・宇宙用機械要素商品についての顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報と、製造年月日、製造場所、封入グリース銘柄、要素品間隙間、防錆や包装の情報、品質保証期間、取扱いに関する注意事項のうち、少なくとも1つの情報を前記航空・宇宙用機械要素商品毎に記録する過程と、
    前記出荷後の任意時に、前記ICタグの記録情報を読取ってその読取り情報から、または読取り情報を前記データベースと照合してその照合により得られた情報から、顧客に関する情報と、顧客からの要求に関する情報と、製造元に関する情報とを含む特定情報の確認と、購入材料の確認、製造工程の確認、その加工条件および材料情報の少なくとも一方の確認、および検査成績の確認のいずれかを行う情報読取り利用過程とを含む、航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  4. さらに、前記航空・宇宙用機械要素商品の前記要素品の材料購入から鍛造工程、熱処理
    工程、研削工程、表面処理工程に至る所定の製造情報を、各工程毎に前記要素品のロット番号別に準備された製造過程用のICタグに記録する過程と、
    前記記製造過程用のICタグに記録した情報を読取ってその読取り情報の一部または全体を前記航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに記録する過程とを含み、
    前記製造過程用のICタグに記録する製造情報として、鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程のうちの少なくとも1つの工程における加工条件情報および材料情報の少なくとも一方を含む、請求項1から3のいずれかに記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  5. さらに、前記航空・宇宙用機械要素商品の前記要素品の材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、表面処理工程および検査に至る所定の製造情報を、製造時管理用のデータベースに要素品のロット番号または要素品個別の識別番号に関連付けて記録する過程と、
    前記記録した情報を、前記航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに記録する過程とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  6. 材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理過程を経て製造される要素品を複数種類含んで組み立てられ、個別に検査される航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、
    前記各要素品について、
    これら各要素品の材料購入時に、材料ロット別に準備されたICタグに、対応する材料ロットについての材料ロット番号および購入材料に関する情報を記録する過程と、
    前記鍛造工程で、前記材料ロット別のICタグまたはこの材料ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを鍛造ロット別に準備し、これらICタグに、対応する鍛造ロットについての鍛造ロット番号および鍛造工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記熱処理工程で、鍛造ロット別のICタグまたはこの鍛造ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを熱処理ロット別に準備し、これらICタグに、対応する熱処理ロットについての熱処理ロット番号および熱処理工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記研削工程で、熱処理ロット別のICタグまたはこの熱処理ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを研削ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する研削ロットについての加工条件の記録を行う過程と、
    前記表面処理工程で、研削ロット別のICタグ、またはこの研削ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを表面処理ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する表面処理ロットについて表面処理の情報を記録する過程と、
    前記表面処理工程の後の検査工程で、表面処理ロット別のICタグまたはこの表面処理ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを、要素品毎または検査の単位となる同種類の要素品の組毎に準備し、これらICタグに、対応する表面処理ロット番号および検査工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記各要素品を組み立てた各航空・宇宙用機械要素商品に、組立前から組立後に至る間にICタグを取付け、この航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、個別の航空・宇宙用機械要素商品特有の製造番号、および前記航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の前記検査工程後のICタグの記録情報のうち、少なくとも製造番号を記録し、前記データベースに前記記製造番号と対応して、前記航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の前記検査工程後のICタグの記録情報、および航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査情報を記録する過程、とを含む航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  7. 材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程、および表面処理工程を経て製造される
    要素品を複数種類含んで組み立てられ、ロット別に検査される航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法であって、
    前記各要素品について、各要素品の材料購入時に、材料ロット別に準備されたICタグに、対応する材料ロットについての材料ロット番号および購入材料に関する情報を記録する過程と、
    前記鍛造工程で、前記材料ロット別のICタグまたはこの材料ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを鍛造ロット別に準備し、これらICタグに、対応する鍛造ロットについての鍛造ロット番号および鍛造工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記熱処理工程で、鍛造ロット別のICタグまたはこの鍛造ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを熱処理ロット別に準備し、これらICタグに、対応する熱処理ロットについての熱処理ロット番号および熱処理工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記研削工程で、熱処理ロット別のICタグまたはこの熱処理ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを研削ロット別に準備し、これらICタグに、対応する研削ロットについての研削ロット番号および検査工程で得られる情報を記録する過程と、
    前記表面処理工程で、研削ロット別のICタグ、またはこの研削ロット別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを表面処理ロット別に準備し、これらのICタグに、対応する表面処理ロットについて表面処理の情報を記録する過程と、
    前記表面処理工程後の検査工程で、前記表面処理別のICタグまたはこの表面処理別のICタグの記録情報を引き継いだICタグを、要素品毎または検査の単位となる同種類の要素品の組毎に準備し、これらICタグに、対応する表面処理ロット番号および検査工程で得られる情報を記録する過程とを含み、かつ
    前記各要素品を組み立てた各航空・宇宙用機械要素商品に、組立前から組立後に至る間にICタグを取付け、このICタグに製造ロット番号、および前記航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の前記検査工程後におけるICタグの記録情報のうち、少なくとも製造ロット番号を記録し、前記データベースに前記製造ロット番号に対応して、前記航空・宇宙用機械要素商品に用いられた各要素品の前記検査工程後のICタグの記録情報および航空・宇宙用機械要素商品の完成後の検査情報を記録する過程とを含む、航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  8. 前記材料ロット別に準備されるICタグ、前記鍛造ロット別に準備されるICタグ、前記熱処理工程別に準備されるICタグ、および前記表面処理工程別に準備されるICタグは、同じ材料ロットの材料を複数入れた容器、同じ鍛造ロットの要素品を複数入れた容器類、同じ熱処理ロットの要素品を入れた容器類、および同じ表面処理ロットの要素品を複数入れた容器類にそれぞれ取付ける、請求項6または7に記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  9. 前記航空・宇宙用機械要素商品は、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程を経て製造される要素品とは別の要素品を含み、前記別の要素品に関する情報は、前記航空・宇宙用機械要素商品の組立後に前記データベースに製造番号またはロット番号に対応させて記録する、請求項6または7に記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  10. 前記航空・宇宙用機械要素商品は転がり軸受であり、前記材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程および表面処理工程を経て製造される要素品として、内輪、外輪、および転動体を含む、請求項1から9のいずれかに記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  11. 前記航空・宇宙用機械要素商品は、組立時にグリースが封入されるものであり、前記航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、その航空・宇宙用機械要素商品の組
    立年月日を記録する、請求項1から10のいずれかに記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  12. 前記航空・宇宙用機械要素商品に取付けられたICタグに、その航空・宇宙用機械要素商品の出荷から客先納入までの所在の情報を記録する、請求項1から11のいずれかに記載の航空・宇宙用機械要素商品の品質管理方法。
  13. 内輪と、外輪と、前記内輪および外輪の間に配置される転動体とを含み、航空機または宇宙機器に使用される航空・宇宙用軸受であって、
    前記外輪の外周面に形成されたフランジ部または前記内輪からアキシャル方向に形成された引抜き部に設けられ、当該航空・宇宙用軸受の品質に関する情報が記録されたICタグを備える、航空・宇宙用軸受。
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