以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する防振装置の一例としての自動車用エンジンマウントが、その縦断面形態と上面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のエンジンマウントは、図1の上下方向に所定距離を隔てて対向配置された第一の取付プレートとしての下側取付プレート10及び第二の取付プレートとしての上側取付プレート12と、それらの間に介装されて、かかる両取付プレート10,12が加硫接着せしめられたゴムブロック14とからなる一体加硫成形品18に対して、ストッパプレート16が組み付けられてなる構造を有している。そして、防振連結されるべき二つの部材たるエンジンとフレーム(車体)のうちの何れか一方に、下側取付プレート10が、また、それらのうちの何れか他方に、上側取付プレート12が、それぞれ取り付けられて、使用されるようになっている。なお、以下からは、便宜上、上側取付プレート側10を上側乃至は上方と言い、また、下側取付プレート12側を下側乃至は下方と言うこととする。
より具体的には、下側取付プレート10と上側取付プレート12とゴムブロック14とからなる一体加硫成形品18の上面形態と切断方向が互いに異なる二つの縦断面形態とを示す図3乃至図5に示される如く、下側取付プレート10は、所定厚さを有する略長手矩形状の金属板が、その長さ方向両端部において、上側取付プレート12側に向かってそれぞれ略直角に屈曲せしめられてなるコ字状の全体形状をもって構成されている。
すなわち、下側取付プレート10は、略長手矩形状の平板形態を呈する固着部20を有し、この固着部20の長さ方向の両端部に対して、矩形平板形態を呈する、第一のストッパ部としての二つの板状ストッパ部22,22が、上方に向かって延び且つ固着部20の長さ方向において互いに対向位置せしめられた状態で、一体的に立設されている。また、かかる固着部20の幅方向両側の端部には、略三角形状を呈する取付部24,24が、それぞれ側方に突出するように一体形成されており、更に、それら各取付部24には、下側取付プレート10をエンジン又はフレームに取り付けるための取付ボルト(図示せず)が挿通されるボルト挿通孔26が、それぞれ一つずつ設けられている。
また、上側取付プレート12は、下側取付プレート10と同じか又はそれよりも所定寸法薄い肉厚を有し、外周面28が高さの低い円筒面とされた円形の金属板からなっている。また、この円板状の上側取付プレート12にあっては、その直径が、下側取付プレート10の固着部20の長さと幅の何れの寸法よりも小なる大きさとされて、上面(下面)の面積が、かかる固着部20の上面(下面)の面積よりも小さくされている。
さらに、上側取付プレート12においては、その中心部に、T字状の取付ボルト30が、ねじ部が刻設された脚部を上方に突出位置させた状態で固定されている。また、その外周部には、T字状の位置決めピン32が、取付ボルト30と同様に、脚部を上方に向かって突出させた状態で固定されている。
そして、このような上側取付プレート12が、下側取付プレート10の固着部20の上方に、各板状ストッパ部22の高さ寸法よりも所定寸法大きな距離を隔て、且つ固着部20の長さ方向の中心部から長さ方向一方側に所定距離だけ偏寄した位置において、固着部20と対向して、平行に配置されている。
一方、そのように配置された下側取付プレート10と上側取付プレート12との間に介装されたゴムブロック14にあっては、上側取付プレート12側となる上側端面34が、円形状を呈し、その径が、上側取付プレート12の外径よりも大きく、且つ下側取付プレート10の固着部20の幅と長さの両方の寸法よりも小さな大きさとされている。また、下側取付プレート10側の下側端面36は、長円乃至は楕円形状を呈し、その短軸寸法が、上側端面34の径より大きく且つ下側取付プレート10の固着部20の幅寸法と略同じ大きさとされる一方、長軸寸法が、上側端面34の径よりも大きく且つ固着部20の長さよりも所定寸法小さな大きさとされている。そして、かかるゴムブロック14の上面視(平面視)で、上側端面34が、下側端面36内において、下側端面36の中心:Oから長軸方向の一方の側に偏寄して、位置せしめられている。
また、そのようなゴムブロック14では、その外周面における上側取付プレート12側の部分が、上側端面34と同一の外径を有して軸方向(上下方向)に延びる円筒面とされている一方、下側取付プレート10側の外周面部分が、長円乃至は楕円状の軸直角断面を有すると共に、上方に向かって次第に小径となるように湾曲する湾曲テーパ面とされている。
かくして、かかるゴムブロック14においては、上側取付プレート12側の部分(以下、上側部分と言う)が、その中心軸:Pを、下側端面36の中心:Oから軸直角方向一方側に所定距離:D(図4参照)だけ偏寄させた位置で、上側取付プレート12よりも大なる径をもって軸方向に延びる円柱形状を有すると共に、かかる上側部分を除く、下側取付プレート10側の部分(以下、下側部分と言う)が、長円乃至は楕円状の軸直角断面を有し、且つ上方に向かうに従って、軸直角断面の面積が次第に小さくなる略円錐台形状を有して、構成されている。これによって、ゴムブロック14が、全体として、上側端面34の面積が下側端面36の面積よりも小さくされた、上方に向かって先細りとなる略山形形状、つまり、下側及び上側取付プレート10,12との一体加硫成形するに際して、金型を上下方向に型割りしたときに、アンダーカットとなる部分(アンダーカット部)が存在しない形状とされているのである。
そして、ここでは、かくの如きゴムブロック14の下側端面36に対して、下側取付プレート10の固着部20が加硫接着されて、かかる下側端面36の全面が、下側取付プレート10の固着部20に固着されている。また、このゴムブロック14の下側部分の端部(以下、下側端部と言う)には、下側取付プレート10の固着部20に固着した状態で、かかる固着部20の長さ方向の両側に向かって延びる薄肉の連結ゴム部38,38が一体的に設けられており、更に、それら各連結ゴム部38は、固着部20の長さ方向両側に一体形成された二つの板状ストッパ部22,22の全面を所定厚さで被覆するストッパゴム部40a,40bに対して、一体的に連結されている。
なお、本実施形態では、前述せるように、ゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pが、下側端面36の中心:Oから軸直角方向一方側に所定距離:Dだけ偏寄せしめられているところから、二つのストッパゴム部40a,40bのうち、ゴムブロック14の上側部分の偏心側に位置する一方のストッパゴム部40aの内側面からゴムブロック14の上側部分の軸心:Pまでの距離:L1 が、それらのうちの他方のストッパゴム部40bの内側面からゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pまでの距離:L2 に比して、軸心:Pと中心:Oとの間の距離:Dの2倍の寸法だけ小さくされている(図4参照)。
また、ゴムブロック14の上側端面34には、その中央部に、上方に向かって開口する円形の凹部42が、上側取付プレート12の外径と略同一の内径と、その厚さと略同じ深さとを有して形成されている。そして、この凹部42内に、上側取付プレート12が嵌入されて、凹部42の側面と底面とに加硫接着されている。
これによって、上側取付プレート12が、ゴムブロック14の上側部分の端部43(以下、上側端部43と言う)に埋入せしめられて、前記取付ボルト30と位置決めピン32の各脚部が突出する、平坦面からなる上面を上方に露呈させた状態で、ゴムブロック14の上側端面34に加硫接着されており、以て、上側取付プレート12の外周面28の全面が、ゴムブロック14の上側端部43の、凹部42の側壁部を構成する上端外周部にて被覆されている。そして、ここでは、そのような上側取付プレート12の外周面28の全面を被覆するゴムブロック14部分が、上側取付プレート12の厚さと同一の高さと所定の厚さとを有する円筒状の被覆ゴム部44とされている。また、この被覆ゴム部44においては、その先端の外側角部46が、前記ストッパプレート16の後述する内側角部58に対応した軸方向外方に凸となる湾曲面からなる湾曲角部とされている(図1参照)。
かくして、本実施形態においては、上側取付プレート12と下側取付プレート10とが、それらの間に介装されたゴムブロック14にて、相互に連結されて、それらが一体加硫接着されてなる一体加硫成形品18が、構成されているのである。
一方、そのような一体加硫成形品18に組み付けられるストッパプレート16は、図1及び図2に示されるように、全体として、略矩形の筐体形状を呈し、取付板部48と第二のストッパ部としての枠状ストッパ部50とを一体的に有する、例えば金属製のプレス成形品等にて、構成されている。
そして、このストッパプレート16の取付板部48は、全体として、略矩形平板形態を呈し、一体加硫成形品18の全長(下側取付プレート10の二つの板状ストッパ部22,22をそれぞれ被覆するストッパゴム部40a,40bの外側面同士の間の距離)よりも所定寸法大きな長さと、各ストッパゴム部40a,40bの幅よりも十分に大きく、更にゴムブロック14の前記下側端部の幅よりも所定寸法だけ大きな幅とを有している。
また、この取付板部48の中央部分には、下方に向かって開口する円形凹所52が、形成されている。この円形凹所52は、円形の底部54と、この底部54の外周縁部において周方向に連続して延びる円筒状の周壁部56とを備えており、また、それら底部54の内側底面と周壁部56の内周面との間で形成される内側角部58が、ゴムブロック14における被覆ゴム部44(上側端部43)の外側角部46に対応した凹状湾曲面を有する湾曲角部とされている。そして、かかる円形凹所52の底部54における内側底面の平面部分、つまり、底部54の内側底面のうちで、内側角部58の凹状湾曲面部分を除いた部分の内径が、前記一体加硫成形品18の上側取付プレート12の外径と略同じか又はそれよりも僅かに大なる大きさとされている。
また、ここでは、かかる円形凹所52の内径、つまり周壁部56の内径が、ゴムブロック14の円柱状の上側部分のうちで、円筒状の被覆ゴム部44とそれよりも下側に所定高さをもって位置する円柱状部分とを含む部分からなる上側端部43の外径よりも僅かに大なる大きさとされている。更に、円形凹所52の深さ、つまり周壁部56の高さは、一体加硫成形品18におけるゴムブロック14の上側部分の高さ寸法の半分に満たない程度の大きさ、具体的には、ゴムブロック14の上側端部43の高さ寸法に相当する大きさとされている。
また、このような円形凹所52の底部54には、その中心部に、上側取付プレート12に固定された取付ボルト30の脚部が挿通可能な中心孔60が設けられており、更に、かかる底部54の外周部には、上側取付プレート12に取付ボルト30と並んで固定された位置決めピン32の脚部が挿通可能な位置決め孔62が、取付板部48の長さ方向において中心孔60と並んで位置するように穿設されている。
一方、枠状ストッパ部50は、取付板部48の下面の外周縁部に、下方に向かって所定高さで突出し且つ周方向に連続して延びる略矩形枠状形態をもって、一体的に立設されている。
すなわち、この枠状ストッパ部50は、取付板部48の長さ方向において互いに対向位置する二つのストッパ部50a,50bと幅方向において互いに対向位置する二つのストッパ部50c,50dとからなっている。そして、かかる枠状ストッパ部50においては、取付板部48の長さ方向に対向する二つのストッパ部50a,50bのうちの一方のストッパ部50aが、一体加硫成形品18の高さの半分を所定寸法だけ超える高さを有している一方、それらのうちの他方のストッパ部50bが、一体加硫成形品18の高さと略同一の高さを有している。また、取付板部48の幅方向に対向する残りの二つのストッパ部50c,50dの長さ方向の中央部の下端部には、略矩形状の切欠部64が、ゴムブロック14の下側端部の幅寸法よりも大なる長さと取付板部48の近傍にまで達する深さとをもって、形成されている。
そして、ここでは、かくの如き構造とされたストッパプレート16の取付板部48の円形凹所52内に、一体加硫成形品18の上端部、つまり上側取付プレート12とそれが加硫接着されたゴムブロック14の上側端部43とが突入せしめられると共に、上側取付プレート12に固定された取付ボルト30と位置決めピン32のそれぞれの脚部が、取付板部48の円形凹所52の底部54に穿設された中心孔60と位置決め孔62とに対してそれぞれ挿通せしめられた状態で、円形凹所52の底部54が、平坦な内側底面において、上側取付プレート12の平坦な上面の全面に重ね合わされている。これによって、ストッパプレート16が、一体加硫成形品18に対して、ゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pと同軸的に且つ軸直角方向への相対変位が阻止されるように位置決めされた状態で、組み付けられている。
また、そのようなストッパプレート16の一体加硫成形品18への組付状態下で、ゴムブロック14の被覆ゴム部44の外側角部46が、取付板部48の円形凹所52の内側角部58の内側に位置せしめられて、かかる被覆ゴム部44を含むゴムブロック14の上側端部43が、円形凹所52の周壁部56にて、かかる周壁部56との間に僅かな隙間を隔てつつ、外側から全周に亘って包囲されている。
更に、一体加硫成形品18のうちで、ストッパプレート16の円形凹所52内に突入位置せしめられたゴムブロック14の上側端部43を除く部分の全体が、ストッパプレート16の枠状ストッパ部50a〜dにて、四方から囲まれている。換言すれば、枠状ストッパ部50a〜dのうちで取付板部48の長さ方向に対向する二つのストッパ部50a,50bのそれぞれの内側面が、下側取付プレート10の二つの板状ストッパ部22,22を各々被覆する各ストッパゴム部40a,40bのそれぞれの外側面(板状ストッパ部22同士の対向方向外側に位置する面)に対して、所定距離を隔てて対向位置せしめられている一方、取付板部48の幅方向に対向する二つのストッパ部50c,50dのそれぞれの内側面が、各板状ストッパ部22を被覆する各ストッパゴム部22の外側面に隣り合う左右の側面に対して、各々、所定距離を隔てて対向位置せしめられている。更に、ゴムブロック14の下側端部が、取付板部48の幅方向に対向する二つのストッパ部50c,50dにそれぞれ設けられた切欠部64を通じて、側方に露呈せしめられている。
なお、ここでは、前述せるように、ゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pが、下側端面36の中心:Oから軸直角方向一方側に偏寄せしめられているため、取付板部48の長さ方向に対向する二つのストッパ部50a,50bのうち、ゴムブロック14の上側部分の偏寄側に位置する一方のストッパ部50aの内側面とそれに対向するストッパゴム部40aの外側面との間の距離が、他方のストッパ部50bの内側面とそれに対向するストッパゴム部40bの外側面との間の距離よりも大きくされている。
而して、本実施形態のエンジンマウントが、上述の如くして組み付けられた一体加硫成形品18とストッパプレート16との組付品にて構成されている。そして、かかる組付品からなるエンジンマウントが、従来と同様に、エンジンとフレームとの間において斜めに傾けられて配置された状態で、一体加硫成形品18の下側取付プレート10の取付部24に設けられるボルト挿通孔26内に挿通された固定ボルト(図示せず)が、例えば、フレームに固定されることにより、下側取付プレート10がフレームに取り付けられる一方、上側取付プレート12に固定された取付ボルト30がエンジンに固定されることにより、上側取付プレート12が、ストッパプレート16の取付板部48を介してエンジンに取り付けられて、自動車に装着されるようになっている。このとき、ストッパプレート16は、上側取付プレート12とエンジンとの間で挟持されて、移動不能とされる。
また、ここでは、そのようなエンジンとフレームへの取付状態下で、エンジン荷重のゴムブロック14への入力により、ゴムブロック14が剪断圧縮変形せしめられて、ゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pが、下側端面36の中心:Oと略一致するようになり、以て、二つのストッパゴム部40a,40bの各内面からゴムブロック14の上側部分の中心軸:Pまでの距離:L1 ,L2 が、互いに略同じ様な大きさとされる(図4参照)。更に、枠状ストッパ部50a〜dのうちで、ストッパプレート16の長さ方向に対向位置する二つのストッパ部50a,50bと各ストッパゴム部40a,40bの間の距離も、略同じ様な大きさとされることとなる。また、エンジン荷重により、ゴムブロック14の上側端部43が圧縮せしめられて、かかる上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面との間の僅かな隙間が消失されて、それらゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面とが密接せしめられる。
かくして、本実施形態のエンジンマウントにあっては、自動車への装着下において、自動車の上下方向や左右方向、前後方向等への振動が入力された際に、所定のばね定数を有するゴムブロック14の、主に圧縮方向の弾性変形に基づいて、所望の防振特性が発揮され得るようになっている。そして、ここでは、特に、そのようなゴムブロック14の圧縮変形時において、ストッパプレート16の周壁部56に密接された状態で、かかる周壁部56により包囲されたゴムブロック14の上側端部43が、周壁部56にて拘束されて、かかるゴムブロック14の上側端部43の体積変化が阻止されることにより、ゴムブロック14の上側端部43の圧縮変形が規制されるようになっている。
また、上下方向や左右方向、前後方向等への入力振動が一定以上の大きさとなったときには、下側取付プレート10の二つの板状ストッパ部22,22と、ストッパプレート16の枠状ストッパ部50a〜dとが、各ストッパゴム部40a,40bを介して互いに接触せしめられて、上側取付プレート12と下側取付プレート10との過剰な相対的変位、更にはエンジンとフレームとの過剰な相対的変位が規制され、以て、ゴムブロック14、ひいてはエンジンマウント全体の耐久性が、確保され得るようになっている。
そして、かかるエンジンマウントにおいては、特に、ゴムブロック14が、全体として、下側端面36の面積よりも上側端面34の面積が小さくされた、アンダーカット部のない略先細りの形状とされているところから、例えば、一体加硫成形品18を金型成形する際に、ゴムブロック14の軸方向の一方向だけでの型割りが可能となる。これによって、二方向での型割りが必要とされる従来の防振装置に比して、金型やそれを開閉させるための設備等の製作費やランニングコスト等の低減が、有利に図られ得る。
また、本実施形態では、ゴムブロック14の上側端部43の圧縮変形が、周壁部56の拘束により規制されるようになっているため、振動入力時において、実質的に、ゴムブロック14の上側端部43を除く部分だけが圧縮変形せしめられるようになり、それによって、そのような圧縮変形による歪みが、ゴムブロック14の上側端部43では殆ど乃至は全く生ずることなく、主に、かかる上側端部43を除くゴムブロック14部分において生ぜしめられることとなる。それ故、従来装置とは異なって、上側取付プレート12に対するゴムブロック14の固着部分を含む上側端部43の外周面形状が円筒面形状とされているに拘わらず、ゴムブロック14の圧縮変形時に、ゴムブロック14の上側端部に大きな歪みが集中的に発生して、耐久性が低下するようなことが、有利に回避され得る。
しかも、ゴムブロック14が上方に向かって先細りとなる形状とされて、上側端部43を除くゴムブロック14部分のボリュームが、かかる上側端部43よりも十分に大きくされているため、圧縮変形によって生ずる歪みが、そのようなボリュームが大なるゴムブロック14部分において分散せしめられるようになる。これによって、本実施形態のエンジンマウントでは、所望の防振特性を確保し得る範囲内においてゴムブロック14が小型化されたとしても、圧縮変形による歪みが、ゴムブロック14の一部に集中したり、或いはその全体において極端に大きくなったりすることが、効果的に防止され得る。
また、かかるエンジンマウントにおいては、ゴムブロック14の上側端部43の外周面形状が単純な円筒面形状とされているのであって、従来装置とは異なって、ゴムブロック14の上側端部43の外周面形状が、軸直角方向内方に向かって凸となる湾曲面形状とされていないため、ゴムブロック14が小型化されたときに、湾曲面からなる外周面の曲率が増大して、ゴムブロック14の上側端部43における圧縮変形による歪み量が著しく増加し、それによって、耐久性が低下するといった不具合が惹起されることも、有利に回避又は低減され得る。
従って、かくの如き本実施形態のエンジンマウントにあっては、所望の防振性能とより十分な耐久性を確保しつつ、製造コストの削減とゴムブロック14の小型化が有利に達成されて、更なる低コスト化とマウント全体のコンパクト化とが、極めて有利に実現され得るのである。
また、本実施形態においては、上側取付プレート12が円形状を有すると共に、ゴムブロック14の上側端部43(被覆ゴム部44を含む)の外周面が円筒面形状を呈し、更に、ストッパプレート16の周壁部56が円筒形状を有している。そのため、それら上側取付プレート12とゴムブロック14の上側端部とストッパプレート16の周壁部56における周方向の寸法精度を、それぞれ容易に高めることが出来、また、ゴムブロック14の上側端部43に角部が存在するために、圧縮変形時において、そのような角部で大きな歪みが集中的に生ずるようなことが有利に回避又は低減され、これによっても、耐久性の向上が有利に図られ得る。
また、本実施形態のエンジンマウントにおいては、上側取付プレート12の外周面28が、ゴムブロック14の上側端部43の一部からなる被覆ゴム部44にて被覆されると共に、ストッパプレート16の内側角部58の内側に位置する被覆ゴム部44の外側角部46が、凹状湾曲面形状を呈する内側角部58に対応した凸状湾曲面形状を有しており、更に、ストッパプレート16の円形凹所52の底部54の内側底面が、上側取付プレート12の上面の全面に接触せしめられている。そのため、例えば、上側取付プレート12の上面と外周面28との間で形成される、角張った外側角部が、ストッパプレート16の周壁部56における内側角部58の凹状湾曲面からなる内周面に乗り上げるように接触して、、ストッパプレート16の円形凹所52の底部54の内側底面と上側取付プレート12の上面とが非接触となるようなことが回避されて、それらストッパプレート16と上側取付プレート12とが、確実に密接せしめられる。その結果、例えば、上側取付プレート12を、それに固定された取付ボルト30によって、ストッパプレート16を間に挟んでエンジンに取り付ける際に、上側取付プレート12とストッパプレート16との間に存在する隙間によって取付ボルト30の軸力が低下して、取付後に、取付ボルト30の締付けに緩みが生ずる恐れが、有利に回避され得る。
さらに、本実施形態のエンジンマウントにおいては、自動車への装着下で、エンジン荷重によるゴムブロック14の上側端部43の圧縮により、ゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面とが密接せしめられるようになっている。そのため、振動入力時に、ゴムブロック14の上側端部43が、ストッパプレート16の周壁部56にて、より確実に拘束されて、かかるゴムブロック14の上側端部43の圧縮変形が更に一層確実に阻止され、それによって、ゴムブロック14の上側端部43での歪みの発生が、より効果的に防止され得る。そして、その結果、ゴムブロック14の上側端部43の外周面が、円筒面形状とされているにも拘わらず、ゴムブロック14、ひいてはエンジンマウント全体の十分な耐久性が、より効果的に確保され得る。
更にまた、かかるエンジンマウントでは、ストッパプレート16の枠状ストッパ部50a〜dのうちで、ストッパプレート16の幅方向に対向する二つのストッパ部50c,50dに切欠部64が設けられて、この切欠部64を通じて、ゴムブロック14の下側端部が外部に露呈せしめられているため、ゴムブロック14の圧縮変形時に各ストッパ部50c,50dに接触して、ゴムブロック14のばね特性が変化してしまうようなことが、有利に防止され得る。
次に、図6には、前記実施形態とは一部の構造が異なる別の実施形態が示されている。なお、本実施形態のエンジンマウントについては、図1乃至図5に示された前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1乃至図5と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明は省略した。
すなわち、図6から明らかな如く、本実施形態のエンジンマウントにおいては、ゴムブロック14の上側端部66の外周面が、下方に向かって(上側取付プレート12の側から下側取付プレート10の側に向かって)、次第に大径化するテーパ面形状とされている。
また、ストッパプレート16の周壁部68が、ゴムブロック14の上側端部66の外周面形状に対応した、下方に向かうに従って次第に大径となるテーパ筒形状とされている。このテーパ筒状とされたストッパプレート16の周壁部68は、その高さが、前記実施形態のエンジンマウントのストッパプレート16における円筒状の周壁部56と同一高さとされている。そのため、そのようなテーパ筒状の周壁部68の内周面の面積が、前記実施形態における円筒状の周壁部56の内周面の面積よりも大きくされ、また、特に、かかるテーパ筒状の周壁部68の内周面のうちで、縦断面において傾斜して真っ直ぐに延びる部分、つまり、底部54との間に形成される角部58の内側面や取付板部48との間に形成される角部70の外側面を除く部分の面積が、前記実施形態における円筒状の周壁部56の内周面のうちで、縦断面において軸方向に真っ直ぐに延びる部分の面積よりも、有利に大きくされている。
そして、そのようなストッパプレート16の周壁部68の内周面の略全面が、ゴムブロック14の上側端部66の外周面の略全面に重ね合わされた状態で、ゴムブロック14の上側端部66の全周が、ストッパプレート16の周壁部68にて、外側から包囲されている。
また、ここでは、ゴムブロック14の上側端部66から、その下側端部に設けられた連結ゴム部38,38に至るまでのゴムブロック14の軸方向中間部分の外周面が、さらに、軸直角方向内方に向かって凹陥する凹状湾曲面とされている。換言すれば、連結ゴム部38,38とストッパゴム部40a,40bを除くゴムブロック14部分が、全体として、鼓形状とされている。
そして、かくの如き本実施形態のエンジンマウントにあっても、従来と同様に、エンジンとフレームとの間において斜めに傾けられて配置された状態で、上側取付プレート12がエンジンに取り付けられる一方、下側取付プレート10がフレームに取り付けられることにより、自動車に装着されるようになっている。また、かかる装着状態下で、エンジンとフレームとの間への上下方向や左右方向の入力振動に対して、ゴムブロック14の弾性的な圧縮変形に基づいて、所望の防振性能が発揮され得るようになっているのである。
このように、本実施形態のエンジンマウントにおいては、ストッパプレート16の周壁部68とゴムブロック14の上側端部66の外周面とが、下方に向かって次第に大径となるテーパ筒形状とされているところから、例えば、ゴムブロック14の上側端部66の外周面とストッパプレート16の周壁部68の内周面との互いに同一の高さ位置に位置する部分同士の間で、それらの外径寸法と内径寸法とが多少異なっていても、特に、かかる外径寸法が内径寸法よりも多少大きくされていても、ストッパプレート16の周壁部68の内側に、ゴムブロック14の上側端部66を嵌入することにより、ゴムブロック14の上側端部66をストッパプレート16の周壁部68にて外側から包囲した状態で、それらゴムブロック14とストッパプレート16とを組み付けることが出来る。そのため、ゴムブロック14やストッパプレート16の作製時における寸法精度の要求が有利に緩和され得る。そして、その結果として、エンジンマウント全体の製作性の向上が、効果的に高められ得ることとなる。
また、かかるエンジンマウントにあっては、ストッパプレート16の周壁部68がテーパ筒形状とされていることで、周壁部68の内周面、特に、縦断面において傾斜して真っ直ぐに延びる内周面部分の面積が有利に大きくされている。そのため、自動車に対して傾斜配置された状態で、上下方向の振動荷重が入力されたときに、ストッパプレート16の周壁部68にて包囲されるゴムブロック14の上側端部66に対して、振動荷重が、より大きな面積を有する部分から、ゴムブロック14の軸直角方向内方に可及的に近似した方向に向かって加えられるようになる。それによって、そのようなゴムブロック14の上側端部66が、ストッパプレート16の周壁部68の、より大きな面積を有する部分にて、更に確実に拘束されて、ゴムブロック14の上側端部66の圧縮変形が、より効果的に規制される。そして、その結果、ゴムブロック14の上側端部66に大きな歪みが集中的に発生して、耐久性が低下するようなことが、更に一層有利に回避され得ることとなる。
さらに、本実施形態では、ゴムブロック14の軸方向中間部分の外周面が、軸直角方向内方に向かって凹陥する凹状湾曲面とされているところから、かかる外周面が、円筒面等の縦断面において軸方向に真っ直ぐに延びる面にて構成される場合に比して、ゴムブロック14の外周面の自由長が有利に長くされ得る。その結果、ゴムブロック14の圧縮変形時に生ずる歪みが有利に分散され、以て、耐久性の向上が有利に図られ得ることとなる。
また、ゴムブロック14の軸方向中間部分の外周面が、例えば、軸直角方向外方に向かって凸となる凸状湾曲面とされている場合等に比して、上下方向への振動荷重の入力時に、ゴムブロックの軸方向中間部が、軸直角方向外方に大きく膨出すること等に起因して、ストッパプレート16の周壁部68との密接性が低下するようなことが可及的に防止され得る。これによっても、ゴムブロック14の上側端部66が、ストッパプレート16の周壁部68にて、より確実に拘束されて、ゴムブロック14の上側端部66の圧縮変形が、更に効果的に規制され、以て、耐久性の向上が図られ得る。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、ゴムブロック14の上側端部43,66の外周面とストッパプレート16の周壁部56,68のそれぞれの形状は、例示される円筒形状やテーパ筒形状等に、何等限定されるものではなく、ストッパプレート16の周壁部56,68が、ゴムブロック14の上側端部43,66を外側から包囲し得る形状であれば、各種の形状が採用され得る。
また、前記第一及び第二の実施形態では、何れも、ゴムブロック14の上側端部43,66の全周が、ストッパプレート16の周壁部56,68にて外側から包囲されるようになっていたが、ゴムブロック14の上側端部43,66の一部分が、ストッパプレート16の周壁部56,68にて外側から包囲されないような構造とされていていも良い。
さらに、ゴムブロック14全体の形状も、例示のものに、特に限定されるものではなく、例えば、ゴムブロック14に要求されるばね特性等を考慮して、適宜に決定される。
更にまた、かかるゴムブロック14の上側端面34や下側端面36の形状、或いはゴムブロック14の軸直角断面形状も、適宜に変更可能である。
また、上側取付プレート12の外周面28を被覆する被覆ゴム部44を省略することも出来る。
さらに、前記第一の実施形態では、一体加硫成形品18に対するストッパプレート16の組付状態、つまり、ストッパプレート16を間に挟んで、上側取付プレート12をエンジン等に取り付ける前の状態では、ゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面との間に僅かな隙間が形成されて、上側取付プレート12をエンジン等に取り付けたときに、エンジン荷重等による圧縮変形に基づいて、ゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面とが互いに接触せしめられるようになっていたが、例えば、ストッパプレート16の周壁部56内に、ゴムブロック14の上側端部43を圧入するような大きさにおいて、それら周壁部56やゴムブロック14の上側端部43の大きさを設定し、上側取付プレート12をエンジン等に取り付ける前の状態(一体加硫成形品18に対するストッパプレート16の組付状態)で、ゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56の内周面とが互いに接触せしめられるように構成しても良い。これによって、振動入力時に、ゴムブロック14の上側端部43が、ストッパプレート16の周壁部56にて、更に一層確実に拘束されて、かかるゴムブロック14の上側端部43の圧縮変形が、より一段と確実に阻止され、以て、ゴムブロック14の上側端部43での歪みの発生が、更に効果的に防止され得る。
更にまた、前記第一の実施形態に係るエンジンマウントのように、ゴムブロック14の上側端部43の外周面とストッパプレート16の周壁部56とを、それぞれ円筒形状とする場合にあっても、ゴムブロック14の軸方向中間部の外周面を、軸方向直角方向の内方に向かって凹陥する凹状湾曲面としても良い。
また、前記第二の実施形態に係るエンジンマウントのように、ゴムブロック14の上側端部66(第二の取付プレート側の端部)の外周面とストッパプレート16の周壁部68とを、下方に向かって(第二の取付プレート側から第一の取付プレート側に向かって)次第に大径化するテーパ筒形状とする場合にあっても、テーパ筒形状の大きさやテーパ角度等は、例えば、ゴムブロック14の大きさやばね特性等を考慮して、適宜に決定されるところである。なお、かかるテーパ角度については、エンジンマウントが自動車等に傾斜状態で設置されたときに、ゴムブロック14の上側端部66の外周面とストッパプレート16の周壁部68とが、水平方向に可及的に近似した方向に延出せしめられる部分が存在するような角度とされていることが望ましい。そにれよって、上下方向への振動荷重の入力時に、ゴムブロック14の上側端部66が、ストッパプレート16の周壁部68にて、より確実に拘束され得るようになり、以て、ゴムブロック14の耐久性の向上が、更に有利に図られ得ることとなる。
また、ゴムブロックの第二の取付プレート側の外周面とストッパプレートの周壁部とを、第二の取付プレート側から第一の取付プレート側に向かって次第に大径化するテーパ筒形状とする場合には、ゴムブロックを、その下側の端面の面積よりも上側の端面の面積が小さくされた、アンダーカット部のない形状とすることも出来る。
さらに、ゴムブロックにおける第二の取付プレート側端部の外周面の一部だけを、第二の取付プレート側から第一の取付プレート側に向かって次第に大径化するテーパ面の一部からなる形状とし、且つ外周面がテーパ面の一部からなる形状とされたゴムブロックの第二の取付プレート側端部部分を外側から包囲するストッパプレートの周壁部部分のみを、かかるゴムブロックの第二の取付プレート側端部部分の外周面形状に対応したテーパ筒形状と為すことも出来る。つまり、ゴムブロックにおける第二の取付プレート側端部の外周面の一部を、テーパ面が周方向に分割されてなる分割テーパ面形状(テーパ面形状が軸方向の延びる切断線にて切断されて、径方向に分割された分割テーパ面形状)とすると共に、それを包囲するストッパプレートの周壁部部分を、かかる分割テーパ面形状に対応した分割テーパ筒形状とすることも可能なのである。
なお、このような構造とされた防振装置にあっては、例えば、自動車等に傾斜状態で設置されたときに、ゴムブロックにおける第二の取付プレート側端部のうちで、上方に位置する部分の外周面と、それに対してゴムブロックの中心軸を間に挟んで径方向の反対側に位置する部分の外周面とが、上記の如きテーパ面の一部からなる形状とされ、且つそのようなテーパ面の一部からなる形状とされた外周面を有するゴムブロックの第二の取付プレート側端部部分を外側から包囲するストッパプレートの周壁部部分が、テーパ筒形状とされることが、望ましい。それによって、上下方向の振動荷重が入力されたときに、テーパ面状の外周面を有するゴムブロックの第二の取付プレート側端部部分が、テーパ筒状のストッパプレートの周壁部部分にて、より確実に拘束され、以て、ゴムブロックの耐久性が、より効果的に高められ得ることとなる。
また、ストッパプレートの周壁部の構造も、何等限定されるものではなく、例えば、ストッパプレートを与える平板の一方の面(第二の取付プレートに重ね合わされる側とは反対側の面)に凹溝を形成することにより、かかる平板の他方の面に突条等を設け、そして、この突条を、ストッパプレートの周壁部とすることも出来る。
さらに、第一の取付プレートとしての下側取付プレート10やストッパプレート16にそれぞれ形成される第一のストッパ部(板状ストッパ部22)や第二のストッパ部(枠状ストッパ部50a〜d)の形状等も、適宜に変更され得るものであることは、言うまでもないところである。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、自動車用エンジンマウント以外の各種の防振装置の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。