本発明はc−METに結合する単量体ドメインを含むポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、単量体ドメインは30〜50個のアミノ酸を含む非天然型の単量体ドメインであり、かつ少なくとも1個のジスルフィド結合を含み、場合によってイオンと結合する。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインはLDL受容体クラスA単量体ドメインである。いくつかの実施形態において、単量体ドメインは以下の配列:
EFXCXNGXCIPXXWXCDGXDDCGDXSDE
(式中、Xは任意のアミノ酸である。)
を含むLDL受容体クラスA単量体ドメインである。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドはc−METと結合する少なくとも1個、及び6個以下の単量体ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドはc−METと結合する少なくとも2個の単量体ドメインを含む。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドはさらに第2の単量体ドメインを含み、この第2の単量体ドメインは血中因子への結合特異性を有し、それによって動物へのポリペプチド注入時に、血中因子に結合する単量体ドメインを欠くポリペプチドの血中半減期と比較して、ポリペプチドの血中半減期が延長される。いくつかの実施形態において、血中因子は血清アルブミン、免疫グロブリン又は赤血球である。いくつかの実施形態において、第2の単量体ドメインは免疫グロブリン(IgG)に結合し、第2の単量体ドメインは以下、
CXSSGRCIPXXWVCDGXXDCRDXSDE、及び
CXSSGRCIPXXWLCDGXXDCRDXSDE、
(式中、Xは任意のアミノ酸である。)
から選択される配列を含むLDL受容体クラスA単量体ドメインである。
いくつかの実施形態において、第2の単量体ドメインは免疫グロブリン(IgG)に結合し、第2の単量体ドメインは以下の配列
[EQ]FXCRX[ST]XRC[IV]XXXW[ILV]CDGXXDCXD[DN]SDE、
(式中、Xは任意のアミノ酸であり、かつ括弧内のアミノ酸は単一位置での代替アミノ酸である。)
を含むLDL受容体クラスAの単量体ドメインである。いくつかの実施形態において、第2の単量体ドメインはCHPTGQFRCRSSGRCVSPTWVCDGDNDCGDNSDEENCSAPASEPPGSLを含む。いくつかの実施形態において、第2の単量体ドメインはCHPTGQFRCRSSGRCVSPTWVCDGDNDCGDNSDEENCを含む。
いくつかの実施形態において、c−METに少なくとも1個の単量体ドメインが結合することでMETの二量体化が阻止される。いくつかの実施形態において、少なくとも1個の単量体ドメインがc−METのSemaドメインに結合し、これによってMETリガンドのc−METへの結合が防止される。
いくつかの実施形態において、このポリペプチドは少なくとも1個、及び6個以下の単量体ドメインを含む。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは少なくとも2個の単量体ドメインを含み、単量体ドメインはリンカーによって連結されている。いくつかの実施形態において、このリンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、このリンカーはアミノ酸4〜12個の長さである。
いくつかの実施形態において、この単量体ドメインは各々35〜45個のアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、各単量体ドメインは2個のジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態において、各単量体ドメインは3個のジスルフィド結合を含む。
いくつかの実施形態において、イオンは金属イオンである。いくつかの実施形態において、イオンはカルシウムイオンである。
いくつかの実施形態において、この単量体ドメインの少なくとも1個はLDL受容体クラスAドメイン由来である。いくつかの実施形態において、この単量体ドメインの少なくとも1個はEGF様ドメイン由来である。
いくつかの実施形態において、この単量体は、配列中のアミノ酸の少なくとも10%がシステインでありおよび/またはアミノ酸の少なくとも25%が非天然型のアミノ酸であるアミノ酸配列を含む。
本発明は、c−METに結合するポリペプチドを特定する方法も提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、
c−METへの親和性についてポリペプチドライブラリーをスクリーニングすること、及び
c−METに結合する少なくとも1個の単量体ドメインを含むポリペプチドを選択すること、
を含み、単量体ドメインは
非天然型の単量体ドメインであり、
少なくとも1個のジスルフィド結合を含み、および
イオンに結合する。
いくつかの実施形態において、選択されたポリペプチドは以下のうちのいずれかを含む単量体ドメインを含む。
いくつかの実施形態において、前記選択段階は、HGFが介在する細胞の増殖および/または移動を低減するポリペプチドの選択を含む。いくつかの実施形態において、この方法は動物において腫瘍増殖を阻害するポリペプチドの選択を更に含む。
いくつかの実施形態において、この単量体ドメインは、配列中のアミノ酸の少なくとも10%がシステインでありおよび/またはアミノ酸の少なくとも25%が非天然型のアミノ酸であるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、この方法はさらに、
選択されたポリペプチド中の単量体ドメインを第2の単量体ドメインに結合させて、各多量体が少なくとも2個の単量体ドメインを含む多量体のライブラリーを形成すること、
c−METへの結合能について前記多量体ライブラリーをスクリーニングすること、及び
c−METと結合する多量体を選択することを含む。
いくつかの実施形態において、この方法はさらに、
選択されたポリペプチド中の単量体ドメインを第2の単量体ドメインに結合させて、各多量体が少なくとも2個の単量体ドメインを含む多量体のライブラリーを作成すること、
c−MET以外の標的分子への結合能について前期多量体ライブラリーをスクリーニングすること、及び
標的分子に結合する多量体を選択すること、を含む。
いくつかの実施形態において、この方法はさらに、少なくとも1個の単量体ドメインを変異させ、それによって変異単量体ドメインを含むライブラリーを提供する段階を含む。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインライブラリーをファージディスプレイ、リボソームディスプレイ又は細胞表面ディスプレイとして発現させる。
いくつかの実施形態において、このポリペプチドは少なくとも2個の単量体ドメインを含み、この単量体ドメインはリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態において、このリンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、このリンカーはアミノ酸4〜12個の長さである。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインは各々35〜45個のアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、各単量体ドメインは2個のジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態において、各単量体ドメインは3個のジスルフィド結合を含む。
いくつかの実施形態において、イオンは金属イオンである。いくつかの実施形態において、イオンはカルシウムイオンである。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインのうちの少なくとも1個はLDL受容体クラスAドメイン由来である。いくつかの実施形態において、単量体ドメインの少なくとも1個はEGF様ドメインから誘導される。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインは、配列中のアミノ酸の少なくとも10%がシステインでありおよび/またはアミノ酸の少なくとも25%が非天然型のアミノ酸であるアミノ酸配列を含む。
本発明はc−METに結合する単量体ドメインを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供し、この単量体ドメインは30〜50個のアミノ酸を含む非天然型の単量体ドメインであり、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む。
本発明は免疫グロブリン−G(IgG)に結合する単量体ドメインを含むポリペプチドも提供し、この単量体ドメインは以下:
CXSSGRCIPXXWVCDGXXDCRDXSDE、
CXSSGRCIPXXWLCDGXXDCRDXSDE、及び
[EQ]FXCRX[ST]XRC[IV]XXXW[ILV]CDGXXDCXD[DN]SDE、
(式中、Xは任意のアミノ酸であり、および括弧内のアミノ酸は単一位置での代替アミノ酸である。)
から選択される配列を含むLDL受容体クラスA単量体ドメインであり、動物へのポリペプチドの注入時に、このポリペプチドはIgGに結合する単量体ドメインを欠くポリペプチドの血中半減期と比較して、増加した血中半減期を有する。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインはCHPTGQFRCRSSGRCVSPTWVCDGDNDCGDNSDEENCSAPASEPPGSLを含む。いくつかの実施形態において、単量体ドメインはCHPTGQFRCRSSGRCVSPTWVCDGDNDCGDNSDEENCを含む。
いくつかの実施形態において、このポリペプチドはIgG以外の分子に対する結合特異性を有する第2の単量体ドメインを含み、この第2の単量体ドメインは、
30〜100個のアミノ酸を有し、
非天然型の単量体ドメインであり、
少なくとも1個のジスルフィド結合を含む。
いくつかの実施形態において、第2の単量体ドメインは非天然型のLDL受容体クラスAドメインである。
本発明は上記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。
定義
特に指示しない限り、以下の定義が従来技術の定義に取って代わる。
“MET”は別名“c−MET”であり、肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)結合受容体チロシンキナーゼを示す。HGF処理に応答して、一連の活性(受容体のリン酸化、シグナル伝達系の媒介物Gab−1/Grb2の結合、PI3K、ERK1及び2、及びAKTなどのキナーゼの活性化を最大にする。)が認められる。これらの活性は、細胞の増殖、生存、移動、および新血管形成に役立つ。例えばBirchmeier et al., Mol. Cell Biol. 4: 915−925 (2003) を参照すること。METのアミノ酸配列は判明しており、配列番号1に示されている。例えばPark et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(18): 6379 (1987) を参照すること。
「単量体ドメイン」又は「単量体」という用語は互換性を持って使用され、本明細書中ではタンパク質又はポリペプチド中に見出されるはっきり区別される部位を指す。単量体ドメインは、野生型の側面アミノ酸配列の不存在下で溶液中で天然の3次元構造を形成する。この発明の単量体ドメインは標的分子に結合することが多い。例えば、標的分子に結合する3次元構造を形成するポリペプチドは単量体ドメインである。本明細書中で使用されているように、「単量体ドメイン」という用語は抗体の相補性決定領域(CDR)を含まない。
「ループ」という用語は単量体ドメインの骨格構造の会合によって一般に環境に暴露される単量体ドメインの一部を示し、標的への結合に関与する。本発明は、ジスルフィド結合能、タンパク質の二次構造間の架橋、分子力学(即ち、柔軟性)などの特定の特性によって特定される3種のループを提供する。この3種のループ配列は、システイン規定ループ配列、構造規定ループ配列およびB因子規定ループ配列である。
本明細書中で使用されるように、「システイン規定ループ配列」という用語は、同じファミリーの少なくとも1個の別の天然型の単量体ドメインについて保存されたシステイン残基によって各末端が結合している天然型の単量体ドメインのコード配列の部分配列を示す。システイン規定ループ配列は天然型の単量体ドメインの多重配列配列比較によって特定され、保存されたシステイン残基を特定するための配列解析が続く。保存されたシステイン残基の各隣接対間の配列がシステイン規定ループ配列である。システイン規定ループ配列には各末端に隣接したシステイン残基は含まれない。ステイン規定ループ配列を有する単量体ドメインには、LDL受容体Aドメイン、EGF様ドメイン、sushiドメイン、フィブロネクチンI型ドメインなどが含まれる。このように、例えば、共通配列CX6CX4CX6CX5CX8Cで表されるLDL受容体Aドメインの場合、X6、X4、X5、X8は各々が指定数のアミノ酸を含むシステイン規定ループ配列を示す。
本明細書中で用いられるように、「構造規定ループ配列」という用語は、それぞれが二次構造を形成する部分配列に各末端で結合する、単量体ドメインのコード配列の部分配列を示す。既知の三次元構造を有するタンパク質の二次構造は、Frishman, D. and Argos, P. (1995), “Knowledge−based secondary structure assignment,” Proteins, 23(4): 566−79(www//hgmp.mrc.ac.uk/Registered/Option/stride.htmlも参照)に記載されているタンパク質の二次構造の割り当て用アルゴリズムSTRIDEに従って特定される。未知の、又は特性付けされていない三次元構造を有するタンパク質の二次構造は、Jones, D.T. (1999), “Protein secondary structure prediction based on position−specific scoring matrices,” J. Mol. Biol., 292: 195−202(McGuffin, L.J., Bryson, K., Jones, D.T. (2000), “The PSIPRED protein structure prediction server,” Bioinformatics, 16: 404−405及びwww//bioinf.cs.ucl.ac.uk/psipred/も参照)に記載されているアルゴリズムに従って特定される。例えば、二次構造にはプリーツシート、ヘリックスなどが含まれる。構造規定ループ配列を有する単量体ドメインの例としては、C2ドメイン、Igドメイン、ファクター5/8Cドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン等が挙げられる。
「B因子規定ループ配列」という用語は、単量体ドメイン・コード配列の少なくとも3個のアミノ酸残基の部分配列を示し、この中でB因子規定ループ中のα炭素に関するB因子は、単量体ドメイン全体でα炭素B因子分布最高値より下25%内にある。一般に、部分配列の平均α炭素B因子は少なくとも65前後である。本明細書中で使用されているように、「B因子」(又は「温度因子」又は「Debye−Waller因子」)という用語はX線散乱のデータから誘導される。B因子は、各原子、原子群に関するX線散乱の項に適用可能な因子であり、電子密度の広がり程度を述べており、本発明の実施において使用されるB因子から電子密度が広がる程度が等方性であるか又は異方性であるかを述べるものである。「平均α炭素B因子」は
を示す。
ここでnはループ内の残基数に相当し、少なくとも3個であり、B factor
Cαiはループのアミノ酸残基iのα炭素に対するB因子である。
「多量体」という用語は、本明細書中では少なくとも2個の単量体ドメインを含むポリペプチドを示すために使用される。この多量体中の別々の単量体ドメインはリンカーで結合可能である。多量体は組み合わせモザイクタンパク質又は組み換えモザイクタンパク質の別名でも知られている。
「ファミリー」及び「ファミリークラス」という用語は互換性を持って使用され、アミノ酸配列の類似性に基づいてグループ化されるタンパク質群を示す。これらの類似した配列は、タンパク質の機能および/またはタンパク質の三次元構造の維持に重要であるため一般に保存されている。このようなファミリーの例としては、LDL受容体Aドメインファミリー、EGF様ファミリーなどが挙げられる。また、同じ標的分子に結合する関連する配列は、共通の配列モチーフに基づいてファミリーに分けることができる。
「リガンド」という用語はここでは「標的分子」とも呼ばれ、単純な分子から複雑な標的にまで及ぶ多種多様な物質や分子を含む。この標的分子は、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、又はポリペプチドドメインによる認識が可能な他の分子であり得る。例えば、標的分子には、化合物(即ち、有機分子、無機分子、有機・無機両方の原子を有するが、ポリヌクレオチドやタンパク質のない分子といった非生物学的化合物)、化合物の混合物、空間的に局在する一連の化合物、生体高分子、バクテリオファージ・ペプチド・ディスプレイ・ライブラリー、ポリソーム・ペプチド・ディスプレイ・ライブラリー、(細菌、植物、カビ、動物(例、哺乳動物)細胞又は組織などの生体物質から調製される)抽出物、タンパク質、毒素、ペプチドホルモン、細胞、ウイルスなどが含まれる。他の標的分子には、例えば全細胞、全組織、関連・非関連タンパク質の混合物、ウイルス又は菌株の混合物などが含まれる。標的分子は、本明細書中に記載されているスクリーニング分析への関与、若しくは特定タンパク質の相互作用の促進又は阻害(即ち、所定の2個のポリペプチド間での結合相互作用の選択的阻害剤)によっても定義できる。
「リンカー」という用語はここでは2個以上の別々に分離された単量体ドメインを連結又は結合させる構成成分又は構成成分群を示すために用いられる。このリンカーによって、別々に分離された単量体ドメインが共に結合して多量体となる際にこれら単量体ドメインを分離されたままにしておくことができる。リンカーの構成成分は、一般に、ほぼ直線状の構成成分である。適切なリンカーには、ポリペプチド、ポリ核酸、ペプチド核酸などが含まれる。適切なリンカーには場合によって、炭素主鎖内に組み込まれた1つ以上の酸素原子を有する置換アルキレン部分も含まれる。一般に、リンカーの分子量は約2,000ダルトン未満である。より一般に、リンカーの分子量は約1,500ダルトン未満であり、一般に、約1,000ダルトン未満である。リンカーは別々に分離された単量体ドメインが、例えば多量体中の別々に分離された各単量体ドメインが分離された結合部位を介して同じ標的分子に結合するなどの協力をすることが可能となるように十分に小さいことが可能である。典型的なリンカーには、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アミノ酸のポリペプチド及び他の非天然型の構成成分が含まれる。このリンカーは野生型配列の一部、その変異体又は合成配列であることができる。リンカーは、例えば天然型、非天然型のアミノ酸又はその両方の組み合わせを含むことができる。
「分離された」という用語は、本明細書中では独立していて、例えば他の単量体ドメインなどの他の構成成分と複合体を形成した場合でも独立したままであるという特性を示すために用いられる。単量体ドメインは認識されてタンパク質から分離されることのできる独立した特性を有するため、タンパク質中の分離されたドメインである。例えば、LDLR中のAドメインのリガンド結合能は独立した特性である。「分離された」の他の例には、リンカーによって多量体中で共に複合体を形成するか又は結合する場合でも分離されて独立したドメインのままである多量体中の分離された単量体ドメインが含まれる。分離された特性のもう1つの例は多量体中の分離されたリガンド結合部位である。
本明細書中で用いられるように、「定方向進化」は、繰り返し過程においてポリヌクレオチド変異体が生成・発現され、活性(例、結合活性を有するポリペプチド)についてスクリーニングされる過程を示す。スクリーニングでの1つ以上の候補を選択して、次に選択された候補をコードするポリヌクレオチドを用いて過程を繰り返し、新しい変異体を生成する。定方向進化には少なくとも2ラウンドの変異体生成が含まれ、3、4、5、10、20ラウンド以上の変異体の生成・選択を含むことができる。変異体は当業者には周知の方法、例えば誤りがちなPCR法、遺伝子組み換え法、化学的変異導入法などによって生成できる。
「シャッフリング」という用語は本明細書中では同一ではない配列間での組み換えを示す。いくつかの実施形態において、シャッフリングには、例えばcre/loxシステムおよび/またはflp/frtシステムを介するなどの相同組み換え又は非相同組み換えを介するクロスオーバーを含めることができる。シャッフリングは、他の同様の組み換え方式の他、例えばインビトロ及びインビボシャッフリング方式、コンピュータでのシャッフリング方式、二本鎖又は一本鎖テンプレートを使用したシャッフリング方式、プライマーに基づくシャッフリング方式、核酸断片化に基づくシャッフリング方式、オリゴヌクレオチドを介したシャッフリング方式などの様々な異なる方式を用いて実施することができる。上記全てのシャッフリング方式は、同一ではない配列間での組み換えに基づいており、以下で詳述され、参考文献が載せられている。本明細書中で用いられる「ランダム」という用語は、2個以上のアミノ酸を含み、確率論的又はランダムな過程によって構築されるポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を示す。ランダムなポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列にはフレームワーク又は骨格モチーフを含むことができ、これらは不変配列を含むことができる。
本明細書中で用いられる「偽ランダム」という用語は、限られた可変性を有するため、いくつかの部位では残基の可変性の程度が限られるが、偽ランダム部位では少なくともある程度の残基の変化が可能であるような一組の配列、ポリヌクレオチド、ポリペプチドを指す。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」という用語は本明細書中では互換性を持って用いられ、2個以上のアミノ酸のアミノ酸配列を指す。
「アミノ酸」という用語は、天然型のアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物の他、天然型の及び合成のアミノ酸を示す。天然型のアミノ酸は、後に修飾を受けるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、O−ホスホセリンなどの他、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸である。アミノ酸類似体は天然型のアミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、即ち水素、カルボキシル基、アミノ基、R基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン・スルホキシド、メチル・メチオニン・スルホニウム)に結合するα炭素を示す。このような類似体は修飾R基(例、ノルロイシン)又は修飾ペプチド主鎖を有するが、天然型のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」はアミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが、天然型のアミノ酸と同様に機能する構造を有する化合物を示す。
「保存的アミノ酸置換」は同様の側鎖を有する残基の互換性を示す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群はセリン及びスレオニン、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギン及びグルタミン、芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、ヒスチジン、イオウ含有側鎖を有するアミノ酸群はシステイン及びメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換群は、バリン‐ロイシン‐イソロイシン、フェニルアラニン‐チロシン、リジン‐アルギニン、アラニン‐バリン、アスパラギン‐グルタミンである。
「核酸配列」という語句は、5’→3’末端に読まれたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖のポリマー、又はその類似体を示す。
「コード化」という用語は、1個以上のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を示す。この用語は開始/停止コドンを必要としない。アミノ酸配列はポリヌクレオチド配列がもたらす異なる6個の読み枠のいずれかによってコード可能である。
「プロモーター」という用語は、転写を開始するRNAポリメラーゼなどのタンパク質の認識・結合に関与する、転写の開始から上流および/または下流に位置する領域〜配列を示す。
「ベクター」は、宿主染色体から独立している場合に宿主生物内で複製可能なポリヌクレオチドを示す。ベクターの例としてプラスミドが挙げられる。ベクターは一般に、複製開始点を有する。ベクターは、例えば転写・翻訳ターミネーター、転写・翻訳開始配列、及び特定の核酸の発現調節に有用なプロモーターを含むことができる。
「組み換え」という用語は、例えば細胞、核酸、タンパク質、ベクターと関連して用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質、ベクターが異種の核酸やタンパク質の導入あるいは天然の核酸又はタンパク質の改変によって修飾を受けた、又は細胞がそのような修飾を受けた細胞由来であることを示す。したがって、例えば組み換え型細胞は、天然型(非組み換え型)の細胞内では認められない遺伝子を発現する、又は本来ならば発現の異常な、発現量の低い、又は全く発現しない天然の遺伝子を発現する。
単量体又は多量体について触れる場合、ポリペプチドに「特異的(又は選択的)に結合する」という語句は、タンパク質(例、細胞又は組織の可溶化液)や他の生物製剤の不均一集団中のポリペプチドの存在を決定し得る結合反応を指す。したがって、抗体結合アッセイで用いられる標準的条件又は分析法においては、特定の単量体又は多量体はバックグラウンド以上(例、2X、5X、10X以上のバックグラウンド以上)の特定の標的分子に結合し、サンプル中に存在する他の分子に多量に結合することはない。
2個以上の核酸又はポリペプチドの配列の文脈における「同一である」又はパーセント「同一性である」という用語は、2個以上の配列又は部分配列が同一であることを示す。「ほぼ同一である」とは、比較ウィンドウ上の、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるか手動配列比較及び目視検査により測定して指定した領域上の、最高コレスポンデンスに対して比較及び配列比較したとき、同一である(即ち、特定領域上で、領域が特定されない場合は全配列上で60%同一性、場合によって65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%同一性である。)アミノ酸残基又はヌクレオチドの特定パーセンテージを有する2個以上の核酸又はポリペプチド配列を指す。場合によって、同一性、又はほぼ同一性は少なくとも約50個のヌクレオチドの長さの領域上、より好ましくは100〜500個又は1,000個以上のヌクレオチド又はアミノ酸の長さの領域上に存在する。
2個の配列が天然型の配列で認められるのと同様には関連付けられない場合、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列は第2の配列に対して「異種」である。例えば、異種のコード配列と機能的に関連付けられるプロモーターは、天然型の対立遺伝子変異型とは異なるコード配列を指す。「異種のリンカー」という用語は、多量体と関連して用いられる場合、多量体がリンカー、及び事実上互いに同じ関係にあるとは認められない単量体を含むこと(例えば、それらは非天然型の融合タンパク質を形成する。)を指す。
タンパク質配列中の「非天然型のアミノ酸」は、比較ウィンドウがクエリーされた単量体ドメインの長さである場合、本明細書中に記載されているように、BLAST 2.0を用いたGenbankの非冗長(“nr”)データベース内の天然型の配列と比較して、最低最小確率和で、天然型のポリペプチドとの配列比較時に対応する位置に現れるアミノ酸以外の全てのアミノ酸を指す。
「配列の同一性の割合」は、比較ウィンドウ上で至適に配列比較された2個の配列を比較することで決定され、その際比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2個の配列を至適に配列比較するために参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較したとき、付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含むことができる。この割合は、両配列中において同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が現れる位置の数を決定して対応部位数を求め、対応部位数を比較ウィンドウ内の部位総数で割り、結果に100を掛けて配列の同一性の割合を求めることで算出する。
2個以上の核酸又はポリペプチドの配列の文脈における「同一である」、又はパーセント「同一性である」という用語は、比較ウィンドウ上の、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるか手動配列比較及び目視検査により測定して指定した領域上の、最高コレスポンデンスに対して比較及び配列比較したとき、同一である、又は同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージを有する2個以上の配列又は部分配列を指す。このような配列は「ほぼ同一である」という。この定義は又、試験配列の補体も指す。場合によって、同一性は少なくとも約50個のアミノ酸又はヌクレオチドの長さの領域、より好ましくは75〜100個のアミノ酸又はヌクレオチドの長さの領域に存在する。
配列比較では、一般に、1つの配列が参照配列としての役割を果たし、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験/参照配列をコンピュータに入力して、必要ならば部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズム・プログラム・パラメータを指定する。デフォルト・プログラム・パラメータを用いるか又は代替パラメータを指定することが可能である。次に、プログラム・パラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムにより参照配列と比較した試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
本明細書中で用いられる「比較ウィンドウ」は、20〜600、一般に約50〜約200、より一般に約100〜約150を含むグループから選択される隣接部位数のいずれか1つの数のセグメントに対する参照を含み、2つの配列を至適に整列した後、配列を隣接部位と同じ番号の参照配列と比較され得る。比較のための配列の整列方法はこの分野で周知である。比較のための配列の至適な整列は例えば、局所的相同性アルゴリズム(Smith and Waterman(1970) Adv. Appl. Math. 2:482c)により、相同性配列比較アルゴリズム(Needleman and Wunsch(1970) J. Mol. Biol. 48:443)により、類似性探索方法(Pearson and Lipman(1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444)により、これらのアルゴリズムのコンピュータを用いた実行(GAP, BESTFIT, FASTA and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., ウィスコンシン州マディソン)]により、または手作業配列比較及び目視検査[例、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)参照]によって実施することができる。
有用なアルゴリズムの一例はBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはそれぞれAltschul et al.(1990) J. Mol. Biol. 215:403−410に記載されている。BLAST解析実施用ソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、最初にクエリー配列内の長さWのショートワードの特定によるハイスコア配列ペア(HSP:high scoring sequence pair)を同定することを含み、これはデータベース配列内の同じ長さのワードと整列させた場合に一致し又は一部の正値閾値スコアTを満たす。Tは隣接ワード・スコア閾値と呼ばれる(Altschul et al., supra)。これら当初の隣接ワードのヒットは、これらを含むより長いHSPを見つけ出すための探索開始シードとして作用する。ワード・ヒットは、累積配列比較スコアが上昇可能な限り、各配列に沿って両方向に拡張される。ヌクレオチド配列に対してパラメータM(一致する残基対に関する報酬スコア:常に>0)及びN(不一致な残基対に関する制裁・スコア:常に<0)を使用して累積スコアを算出する。アミノ酸配列について、スコアリング・マトリクスを使用して累積スコアを算出する。各方向へのワード・ヒットの拡張は、累積配列比較スコアが最高達成値からX量だけ低下した場合、1つ以上の負のスコアリング残基整列の蓄積のために累積スコアが0以下になった場合、又はいずれかの配列の末端に達した場合に停止する。BLASTアルゴリズム・パラメータW、T、Xによって配列比較の感度及び速度が決まる。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対する)では初期設定としてワード長(W)=11、期待値(E)=10、M=5、N=−4、両鎖の比較を利用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムにおいて初期設定としてワード長(W)=3、期待値(E)=10、BLOSUM62スコアリング・マトリクス(Henikoff and Henikoff(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)配列比較(B)=50、M=5、N=−4、両鎖の比較を利用する。
BLASTアルゴリズムによって2個の配列間での類似性の統計分析も実施する(例、Karlin and Altschul(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5787参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性に関する測定値の1つは最小確率和(P(N))であり、これによって2個のヌクレオチド又はアミノ酸配列間で偶然一致する確率が示される。例えば、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小確率和が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると見なされる。
(発明の詳細な説明)
I.概要
本発明はc−METに結合する非天然型のタンパク質を提供する。全般的に、本発明のタンパク質はc−METに結合するドメインを含む。これらのドメインは、種々のポリペプチド骨格を用いて複数のポリペプチド変異体を生成し、c−Metに結合する変異体を選択することで容易に特定できる。したがって、本発明はc−METに結合するタンパク質の選択方法も提供する。c−METに結合するタンパク質は、例えばc−METを発現する固形腫瘍を患う人の治療などに有用である。本発明のポリペプチドはMetが発現している組織の検出にも有用であり、これらの組織を分子の標的とするために用いることができる。
c−METは静止している単量体の状態では不活性であり、二量体形成によって受容体は活性化する(多くの場合、リガンドの未結合時でも)。成熟型の受容体は、細胞外ドメインの残部を取り囲む全く細胞外のα鎖及び長めのβ鎖、膜貫通ドメイン、細胞質側末端部を含む。細胞質側末端部は膜近傍ドメイン、キナーゼ・ドメイン、シグナル伝達中間体のドッキング部位を含む。α鎖及びβ鎖の一番めの212個のアミノ酸はセマ(ホリン)ドメイン(Kong−Beltran, et al., Cancer Cell 6:75−84(2004))としても知られており、HGFへの結合に十分である。β鎖の残りの細胞外部分は、システインに富むCドメイン及び異常な免疫グロブリン・ドメインの4個の反復を含む。従って、いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、c−METα/β鎖の二量体化を阻害するおよび/またはc−METのリガンドがc−METに結合する/および/または活性化することを防止する拮抗薬として機能する少なくとも1個の単量体ドメインを含む。
本発明は単一ドメインを含むポリペプチドを提供する一方、ドメインの多量体を合成して用いることもできる。いくつかの実施形態において、多量体の全ドメインがc−METと結合する。これらの実施形態の一部では、各ドメインは同一であり、c−METの同じ部位(即ち、「抗原決定基」)に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、単量体ドメインはc−METのセマ(ホリン)ドメインに結合する。別の実施形態において、多量体中のドメインの少なくとも一部はc−METの異なる部位に結合する。さらに別の実施形態において、ポリペプチドのドメインの少なくとも一部はc−MET以外の分子又は分子群(例えば血清アルブミン、免疫グロブリン、赤血球などの血中因子)に結合する。
II.単量体
単量体ドメインは任意のサイズのポリペプチド鎖であることができる。いくつかの実施形態において、単量体ドメインは約25〜約500、約30〜約200、約30〜約100、約35〜約50、約35〜約100、約90〜約200、約30〜約250、約30〜約60、約9〜約150、約100〜約150、約25〜約50、約30〜約150個のアミノ酸を有する。同様に、本発明の単量体ドメインは例えば約30〜約200、約25〜約180、約40〜約150、約50〜約130、約75〜約125個のアミノ酸を含むことができる。単量体ドメインは一般に、溶液中で安定な立体構造を維持することができ、例えば95℃で少なくとも10分間結合親和性を失うことなく少なくとも安定であるなど、熱に対してしばしば安定である。時折、単量体ドメインは自主的に安定な立体構造に折りたたまれることができる。1つの実施形態において、安定な立体構造はイオン(例えば、金属イオン又はカルシウムイオンなど)によって安定化される。安定な立体構造は場合によってジスルフィド結合、例えば少なくとも1、2又は3以上のジスルフィド結合を含むことができる。ジスルフィド結合は、場合によって2個のシステイン残基間で形成することができる。いくつかの実施形態において、単量体ドメイン又は単量体ドメインの変異体は例示された配列とほぼ同一である。
A.c−MET結合剤
いくつかの態様において、本発明はc−METポリペプチド又はその一部に結合する単量体ドメインを提供する。ポリペプチドの一部分は、例えばポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、30、50、100個又はそれ以上の近接したアミノ酸であることができる。
Aドメイン骨格を有する多数のc−MET結合配列が生成された。実施例で詳しく述べるように、c−METに結合する単量体ドメインの10ファミリー(即ち、ファミリー1〜10又は“Fam 1−10”)が特定された。これらのファミリーに基づいて生成されたコンセンサス・モチーフは、c−MET結合剤間に共通したアミノ酸残基を示している。モチーフを含む保存された残基の隣接配列はモチーフから取り除かれているが、Aドメイン構造を含む全ての残基が、以下のファミリーに基づくいずれの結合ドメインにも存在すると推測される。当業者には、コンセンサスのない部位(“X”の印が付いている)が任意のアミノ酸であり得ることが判る。いくつかの実施形態において、“X”部位のアミノ酸は、同じファミリー又は異なるファミリーの例示されたc−MET結合剤の1つにおける類似部位内のアミノ酸から選択される。
ファミリー1は以下のコンセンサス・モチーフを有する:
Cxxx[EQ]FxCxSTxRC[IV]xxxWxCDGDNDCEDxSDEx。
c−METファミリー1モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー1配列を含む。
ファミリー2は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FECxSTxRC[IV]xxxWxCDGxNDCEDxSDEx。
c−METファミリー2モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー2配列を含む。
ファミリー3は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FxCxSTxRC[ILV]PxxWxCDGxxDCEDxSDExx。
c−METファミリー3モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー3配列を含む。
ファミリー4は以下のモチーフを有する:
Cxxx[EQ]FQCxSTxRC[IV]PxxWxCDGxNDCEDSSDExxC。
c−METファミリー4モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー4配列が含む。
ファミリー5は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FxCxxxxxC[ILV]xxxxxxxxxxDCxDxSDEx。
c−METファミリー5モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー5配列を含む。
ファミリー6は以下のモチーフを有する:
Cxxx[EQ]FxCxSTGRCxPxxWxCxGxNDCEDxSDEx。
c−METファミリー6モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー6配列を含む。
ファミリー7は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FxCxSTxRC[ILV]xxxWxCxxxxDCxDxSDxxxxxCx。
c−METファミリー7モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー7配列を含む。
ファミリー8は以下のモチーフを有する:
Cxxx[EQ]FxCxxxxxC[ILV]xxxWxCDGxNDCxDxSxExxxxC。
c−METファミリー8モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー8配列を含む。
ファミリー9は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FxCxSTxRC[ILV]PxxWxCxGxxDCxDxSDEx。
c−METファミリー9モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー9配列を含む。
ファミリー10は以下のモチーフを有する:
Cxxxx[EQ]FxCxxxxxC[ILV]xxxWxCDGxxDCxDxSDEx。
これはさらに以下のように縮合できる:
EFXCXNGXCIPXXWXCDGXDDCGDXSDE。
c−METファミリー10モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。c−METに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー10配列を含む。
B.IgG結合剤及び血中半減期の延長
本発明はさらに血中因子(例、血清アルブミン、免疫グロブリン、又は赤血球)に結合する単量体ドメインを提供する。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインは免疫グロブリンポリペプチド又はその一部に結合する。
免疫グロブリンに結合する単量体ドメインの2個のファミリー(即ち、Aドメインファミリー2及び3)が特定されている。
ファミリー2は以下のモチーフを有する:
[EQ]FXCRX[ST]XRC[IV]XXXW[ILV]CDGXXDCXD[DN]SDE。
IgGファミリー2モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。IgGに結合する単量体又は多量体に関する参照は、実施例に例示されている各ファミリー2配列を含む。
ファミリー3は以下の2個のモチーフのいずれかを有する:
CXSSGRCIPXXWVCDGXXDCRDXSDE
又は
CXSSGRCIPXXWLCDGXXDCRDXSDE。
IgGファミリー3モチーフを含む典型的配列を実施例に示す。IgGに結合する単量体又は多量体に関する基準には、実施例に例示されている各ファミリー3配列を含む。
赤血球(RBC)又は血清アルブミン(CSA)に結合する単量体ドメインは、米国特許出願第2005/0048512号に記載されており、例として以下を含む:
本発明は、例えば本発明の多量体又は動物内の対象のタンパク質などを含むタンパク質の血中半減期を延長させる方法を提供する。対象のタンパク質は、治療、予防、又はその他の望ましい機能性を有するいずれかのタンパク質であることができる。この方法はまず、血清アルブミン(例、ヒト血清アルブミン)、IgG、赤血球などの血液が担持する分子又は細胞といった半減期延長剤に特異的に結合する結合タンパク質として特定されている単量体ドメインの提供を含む。半減期延長剤に結合する単量体は、次に対象のタンパク質(例、c−MET又は異なる標的)に対して結合親和性を有するもう1つの単量体ドメインに共有結合する。この複合体形成によって、多量体および/またはタンパク質(単数又は複数)のタンパク分解性劣化および/または他の除去から多量体および/または結合タンパク質を保護する半減期の延長の結果となり、これによってタンパク質および/または多量体の半減期を延長させる。本発明のこの使用の変法の1つに、対象タンパク質に共有結合により連結された半減期延長剤結合単量体が含まれる。対象タンパク質には、単量体ドメイン、単量体ドメインの多量体又は合成製剤が含まれる。代わりに、上記の方法を用いて免疫グロブリン又は赤血球のいずれかに結合する単量体を生成して、半減期延長に用いることも可能であろう。
半減期延長剤結合多量体は一般に、少なくとも2個のドメイン、キメラのドメイン、変異されたドメインの多量体である(即ち、Metに結合するドメイン、及び血液が担持する分子又は細胞に結合するドメイン)。適したドメインには本明細書中に記載されている全てのドメインが含まれ、これらはさらに半減期延長剤への結合についてスクリーニングされ、選択される。半減期延長剤結合多量体は、例えば半減期延長剤への結合活性について予めスクリーニングされた単量体ドメインを用いて、本明細書中に記載の多量体の生成方法に従って生成される。分子の血中半減期は、例えば少なくとも1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、400、500時間以上まで延長可能である。
C.単量体ドメインに関する考察
本発明の実施に用いるのに特に適した単量体ドメインは、ジスルフィド結合を含むシステインに富むドメインである。本発明の実施に用いられるシステインに富むドメインは概してαヘリックス、βシート、βバレル構造を形成しない。概してジスルフィド結合はドメインの三次元構造への折りたたみを促進する。一般にシステインに富むドメインは少なくとも2個のジスルフィド結合を、より一般に少なくとも3個のジスルフィド結合を有する。いくつかの実施形態において、単量体ドメイン中のアミノ酸の少なくとも5、10、15、又は20%がシステインである。
ドメインは任意の数の特徴を有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、このドメインは動物(例えば、ヒト)内で免疫原性はほとんど又は全くない。このドメインは小さいサイズを有することができる。いくつかの実施形態において、このドメインは十分小さいので皮膚又はその他の組織に浸透することができる。このドメインはインビボ半減期又は安定性に幅を持つことができる。
本発明の実施に用いるのに適した単量体ドメインの実例として、例えばEGF様ドメイン、クリングルドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、Kunitz/Bovine膵臓トリプシン阻害剤ドメイン、Kazal型セリンプロテアーゼ阻害剤ドメイン、Trefoil(P型)ドメイン、フォンウィルブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、チログロブリン・I型反復、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォン・ウィルブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4ジスルフィド核ドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGFドメイン、C2ドメイン、及び当業者に周知のその他同様のドメイン、並びにこれらの誘導体および/または変異体が挙げられる。
いくつかの実施形態において、適した単量体ドメイン(例えば、独力で又はわずかな補助で折りたたむことのできる能力を有するドメイン)は、Simple Modular Architecture Research Tool(SMART)(Shultz et al., SMART:a web−based tool for the study of genetically mobile domains,(2000) Nucleic Acids Research 28(1):231−234参照)又はCATH(Pearl et al., Assigning genomic sequences to CATH,(2000) Nucleic Acids Research 28(1):277−282参照)などのコンピュータ配列解析ツールによって決定されるβ−サンドイッチ又はβ−バレルの三次元構造を含むタンパク質ドメインのファミリーから選択可能である。
もう1つの実施形態において、本発明の単量体ドメインは、フィブロネクチンIII型ドメイン、アンチカリンドメイン及びCTLA−4からのIg様ドメイン以外のドメインを含む。これらのドメインの一部の態様が、国際特許出願第WO01/64942号(Lipovsekら、「抗体擬態及びその他の結合タンパク質のためのタンパク質骨格」、2001年9月7日出願、国際特許出願第WO99/16873号(Besteら、「アンチカリン」、1999年4月8日出願)、及び国際特許出願第WO00/60070号(Desmetら、「骨格として用いるためのポリペプチド構造」、2000年10月12日出願)に記載されている。
上に記述されているように、単量体ドメインは場合によってシステインに富む。適したシステインに富む単量体ドメインの例として、例えばLDL受容体クラスAドメイン(「Aドメイン」)又はEGFドメインが挙げられる。単量体ドメインは、負電荷残基のクラスターを有することもできる。
単量体ドメインのその他の特徴として、リガンド結合能やイオン結合能(例えば、LDL受容体AドメインによるCa2+結合)が挙げられる。イオンと結合して二次構造を維持する単量体ドメインの例として、例えばAドメイン、EGFドメイン、EFハンド(例えば、カルモジュリンやトロポニンC中に見出されるものなど)、カドヘリンドメイン、C型レクチン、C2ドメイン、アネキシン、Glaドメイン、トロンボスポンジン3型ドメイン(以上は全てカルシウムと結合する)、及び亜鉛と結合する亜鉛フィンガー(例えば、C2H2型C3HC4型(リングフィンガー)、インテグラーゼ亜鉛結合ドメイン、PHDフィンガー、GATA亜鉛フィンガー、FYVE亜鉛フィンガー、Bボックス亜鉛フィンガー)が挙げられる。本発明を制限する意図なしに、イオン結合は一次配列に応じて多数の結合立体配座を可能にする十分な柔軟性を付与しながら二次構造に安定性を与えると考えられる。
本明細書中に記述されているように、単量体ドメインは、類似の天然型ドメインが結合し得る標的以外の標的への結合能のあるものを選択することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は標的、又はほぼ同一の天然型ドメインが結合し得る標的たんぱく質のクラス又はファミリーには結合しない単量体ドメイン(及びこのような単量体を含む多量体)を提供する。
単量体ドメインの特徴として、独力での折りたたみ能及び安定構造の形成能を挙げることができる。したがって、単量体ドメインの構造は保存されている場合が多いが、単量体をコードするポリヌクレオチド配列が保存される必要はない。例えば、Aドメイン構造はAドメインファミリーのメンバー間で保存されているが、Aドメインの核酸配列は保存されていない。したがって、例えば、単量体ドメインはそのシステイン残基及びカルシウムに対する親和性によってAドメインに分類されるが、核酸配列によっては必ずしも分類されない。図1、2を参照。
具体的には、Aドメイン(「補体型反復」又は「LDL受容体型又はクラスAドメイン」と呼ばれる場合がある)は約30〜50個又は30〜65個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、このドメインは約35〜45個のアミノ酸を含み、約40個のアミノ酸を含む場合もある。30〜50個のアミノ酸内において、6個前後のシステイン残基が存在する。この6個のシステインの内、一般に、ジスルフィド結合が次のシステイン間で見出される:C1とC3、C2とC5、C4とC6。このドメインのシステイン残基はジスルフィド結合によって小型で安定な機能的に独立した部分を形成する。図3を参照。これらの反復のクラスターはリガンド結合ドメインを形成し、異なるクラスター形成はリガンド結合に対して特異性を与えることができる。
典型的なAドメイン配列及び共通配列を図1、2に図示する。Aドメインを特定するために有用な1つの典型的な共通配列は以下である:C−[VILMA]−X(5)−C−[DNH]−X(3)−[DENQHT]−C−X(3,4)−[STADE]−[DEH]−[DE]−X(1,5)−C、式中、括弧内の残基は1つの位置だけで可能な残基を示す。「X(♯)」は残基数を示す。これらの残基は任意のアミノ酸残基であることができる。2個の数字を含む括弧はその位置を占め得る一連のアミノ酸を示している(例えば、「[DE]−X(1,5)−C」は、アミノ酸DEの後に1、2、3、4、又は5個の残基が続き、その後にCが続くことを意味する。)。この共通配列は3番目のシステインで始まるAドメインの一部分のみを示している。第二の共通配列は以下である:C−X(3−15)−C−X(4−15)−C−X(6−7)−C−[N,D]−X(3)−[D,E,N,Q,H,S,T]−C−X(4−6)−D−E−X(2−8)−C。第二の共通配列は、6個のシステイン残基全てに橋を架けているアミノ酸残基を予測する。いくつかの実施形態において、Aドメインの変異体が、上記の配列のいずれかとほぼ同一な配列を含む。「LDL受容体クラスA」ドメインの参照は、本発明の目的のためにドメインの起源又は結合特性を示すことが目的ではないことに注意されたい。
さらなる典型的なAドメインには以下の配列が含まれる:
CaX3−15CbX3−15CcX6−7Cd(D,N)X4CeX4−6DEX2−8Cf
式中、Cはシステイン、Xn−mはnとmの間の個数の独立して選択されたアミノ酸を示し、(D,N)はその位置がD又はNのいずれかになり得ることを示し、Ca−Cc、Cb−Ce、及びCd−Cfはジスルフィド結合を形成する。
今日までに、少なくとも190の天然型のヒトAドメインがcDNA配列に基づいて特定されている。例えば図6を参照されたい。天然型のAドメインを含む典型的なタンパク質としては、例えば補体成分(例えば、C6、C7、C8、C9、因子I)、セリン・プロテアーゼ(例えば、エンテロペプチダーゼ、マトリプターゼ、コリン)、膜貫通タンパク質(例えば、ST7、LRP3、LRP5、LRP6)、及びエンドサイトーシス受容体(例、Sortilin関連受容体、LDL受容体、VLDLR、LRP1、LRP2、ApoER2)が挙げられる。Aドメイン及びAドメイン変異体は、本発明の実施に際して、単量体ドメイン及びその変異体として容易に用いることができる。Aドメインに関するさらなる記述は、以下の論文及びそこで引用されている参考文献において見出だすことができる:Howell and Hertz, The LDL receptor gene family:signaling functions during development,(2001) Current Opinion in Neurobiology 11:74−81;Herz(2001), supra;Krieger, The “best” of cholesterols, the “worst” of cholesterols:A tale of two receptors,(1998) PNAS 95:4077−4080;Goldstein and Brown, The Cholesterol Quartet,(2001) Science, 292:1310−1312;Moestrup and Verroust, Megalin−and Cubilin−Mediated Endocytosis of Protein−Bound Vitamins, Lipids, and Hormones in Polarized Epithelia,(2001) Ann. Rev. Nutr. 21:407−28.
c−MET結合単量体ドメインを作成するために、他の多数のドメイン型も用いることができる。
典型的なEGF単量体ドメインは以下の配列を含む:
CaX3−14CbX3−7CcX4−16CdX1−2CeX8−23Cf
式中、Cはシステイン、Xn−mはnとmとの間の個数の独立して選択されたアミノ酸を示し、Ca−Cc、Cb−Ce、及びCd−Cfはジスルフィド結合を形成する。
下記の各ドメインは典型的なモチーフ(即ち、骨格)を用いている。ある位置にxの印を付け、どのアミノ酸がその位置を占めることができるかを示している。これらの位置には多数の種々のアミノ酸がくる可能性があり、これによって配列の多様性ひいては種々の標的分子に対する親和性が可能となる。モチーフ内の括弧は、1つの位置内において可能な代わりのアミノ酸を示している(例えば、「[ekq]」はE、K、Qのいずれかがその位置にくることができることを示している。)。モチーフ内の括弧は括弧内の位置にアミノ酸が在か不在かを示す(例えば、「([ekq])」はその位置が不在か、又はE、K、Qのいずれかがその位置にあり得ることを示している。)。2個以上の「x」が丸括弧内に用いられる場合(例えば、「(xx)」)、各xはアミノ酸の存在が可能な位置を示している。したがって、「(xx)」は0、1、又は2個のアミノ酸がその位置(単数又は複数)にあり得ることを示しており、各アミノ酸は任意のアミノ酸から独立して選択される。αは、例えばW、Y、F、及びLなどの芳香族/疎水性アミノ酸を示し、βは、例えばV、I、L、A、M、及びFなどの疎水性アミノ酸を示し、χは、例えばG、A、S、及びTなどの小さい又は極性のアミノ酸を示し、δは、例えばK、R、E、Q、及びDなどの荷電アミノ酸を示し、εは、例えばV、A、S、及びTなどの小さなアミノ酸を示し、φは、例えばD、E、及びNなどの負電荷アミノ酸を示す。
適したドメインとして、例えばトロンボスポンジン1型ドメイン、トレフォイルドメイン、チログロブリンドメインが挙げられる。
トロンボスポンジン1型(「TSP1」)ドメインは約30〜50個又は約30〜65個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、このドメインは約35〜55個のアミノ酸を含み、約50個のアミノ酸を含む場合もある。35〜55個のアミノ酸内には、概して約4個から約6個のシステイン残基が存在する。この6個のシステインの内、一般にジスルフィド結合は以下のシステインの間で見出される:C1とC5、C2とC6、C3とC4。このドメインのシステイン残基はジスルフィド結合によって、小型で安定な機能的に独立したゆがんだ、βストランドを含む部分を形成する。これらの反復のクラスターはリガンド結合ドメインを形成し、種々のクラスター形成によりリガンド結合に対して特異性を与えることができる。
典型的なTSP1ドメイン配列及び共通配列は以下の通りである:
いくつかの実施形態において、トロンボスポンジン1型ドメイン変異体は上記の配列のいずれかとほぼ同一の配列を含む。
今日までに、少なくとも1,677の天然型のトロンボスポンジンドメインがcDNA配列に基づいて特定されている。天然型のトロンボスポンジンドメインを含む典型的なタンパク質としては、例えば補体活性化経路中のタンパク質(例えば、プロパージン、C6、C7、C8A、C8B、及びC9)、細胞外基質タンパク質(例えば、ミンジン、F−スポンジン、SCO−スポンジン)、スポロゾイト周囲表面タンパク質2、マラリア原虫のTRAPタンパク質などが挙げられる。トロンボスポンジン1型ドメインについては、例えば、Roszmusz et al., BBRC 296:156(2002);Higgins et al., J. Immunol. 155:5777−85(1995);Schultz−Cherry et al., J. Biol. Chem. 270: 7304−7310(1995);Schultz−Cherry et al., J. Biol. Chem. 269:26783−8(1994);Bork, FEBS Lett 327:125−30(1993);Leung−Hagesteijn et al., Cell 71:289−99(1992)に詳述されている。
本発明の実施に用いるのに適したもう1つのの典型的な単量体ドメインはトレフォイルドメインである。トレフォイル単量体ドメインは一般に、約30〜50又は約30〜65個のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、ドメインは約35〜55個のアミノ酸を含み、約45個のアミノ酸を含む場合もある。35〜55個のアミノ酸内には、一般に約6個のシステイン残基が存在する。この6個のシステインの内、一般にジスルフィド結合が以下のシステイン間で見出される:C1とC5、C2とC4、C3とC6。
今日までに、少なくとも149の天然型のトレフォイルドメインがcDNA配列に基づいて特定されている。天然型のトレフォイルドメインを含む典型的なタンパク質としては、例えばタンパク質pS2(TFF1)、鎮痙薬ペプチドSP(TFF2)、腸トレフォイル因子(TFF3)、腸内surcease−isomaltase、上皮の保護による微生物感染防御に関与し得るタンパク質(例えば、アフリカツメガエルxP1、xP4、外皮ムチン A.1及びC.1)が挙げられる。トレフォイルドメインについては、例えばSands and Podolsky, Annu. Rev. Physiol. 58:253−273(1996);Carr et al., PNAS USA 91:2206−2210(1994);DeA et al., PNAS USA 91:1084−1088(1994);Hoffman et al., Trends Biochem Sci 18:239−243(1993))に詳述されている。
典型的なトレフォイルドメイン配列及び共通配列は以下の通りである:
本発明に用いるのに適したもう1つの典型的な単量体ドメインはチログロブリンドメインである。チログロブリン単量体ドメインは、一般に約30〜85又は約30〜80個のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、このドメインは約35〜75個のアミノ酸を含み、一部の場合約65個のアミノ酸を含む。35〜75個のアミノ酸内には、一般に約6個のシステイン残基が存在する。この6個のシステインの内、一般にジスルフィド結合が以下のシステイン間で見出される:C1とC2、C3とC4、C5とC6。
今日までに、少なくとも251の天然型のチログロブリンドメインがcDNA配列に基づいて特定されている。TgのN末端部は、Tg1型反復で知られる、約65個のアミノ酸ドメインの10反復を含む(パブメド:3595599、パブメド:8797845)。天然型のチログロブリンドメインを含む典型的なタンパク質としては、例えばHLAクラスII関連不変鎖、ヒト膵癌マーカータンパク質、ニドゲン(エンタクチン)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)、サクシフィリン、サケ卵システイン・タンパク質分解酵素阻害剤、equistatinが挙げられる。Thyr−1及び関連するドメインはMEROPSタンパク質分解酵素阻害剤ファミリーI31、clan IXに属する。チログロブリンドメインについては例えばMolina et al., Eur. J. Biochem. 240:125−133(1996);Guncar et al., EMBO J 18:793−803(1999);Chong and Speicher, DW 276:5804−5813(2001)に詳述されている。
典型的なチログロブリンドメイン配列及び共通配列としては以下の通りである:
本発明に用いることができるもう1つの典型的な単量体ドメインはラミニンEGFドメインである。ラミニンEGFドメインは一般に約30〜85又は約30〜80個のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、このドメインは約45〜65個のアミノ酸を含み、約50個のアミノ酸を含む場合もある。45〜65個のアミノ酸内には、一般に約8個のシステイン残基が存在し、相互作用して4個のジスルフィド結合を形成する。ラミニンは細胞の接着、増殖、移動、分化に仲介する基底膜の主要な非コラーゲン成分である。これらは、異なるが関連するα、β、γ鎖を含む。この3本の鎖は1本の長腕と3本の球状の短腕を含む十字型分子を形成する。長腕は3本全ての鎖が寄与して鎖間のジスルフィド結合によって架橋されるコイルドコイル構造を含む。
典型的なラミニンEGFドメイン配列及び共通配列は以下の通りである:
いくつかの実施形態において、単量体ドメインはノッチ/LNR単量体ドメイン、DSL単量体ドメイン、アナト単量体ドメイン、インテグリンβ単量体ドメイン、Ca−EGF単量体ドメインである。
いくつかの実施形態において、Ca−EGF単量体ドメインは以下の配列を含む:
DxdEC1xx(xx)xxxxC2x(xx)xxxxxC3xNxxGxfxC4x(xxx)xC5xxgxxxxxx(xxxxx)xxxC6。
いくつかの実施形態において、ノッチ/LNR単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xx(xx)xxxC2xxxxxnGxC3xxxC4nxxxC5xxDGxDC6。
いくつかの実施形態において、DSL単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xxx YygxxC2xxfC3xxxxdxxxhxxC4xxxGxxxC5xxGWxGxxC6。
アナト単量体ドメインは以下の配列を含む:C1C2xdgxxxxx(x)xxxxC3exrxxxxxx(xx)xxC4xxxfxxC5C6。
いくつかの実施形態において、インテグリンβ単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xxC2xxxxpxC3xwC4xxxxfxxx(gx)xxxxRC5dxxxxLxxxgC6
式中、「x」は任意のアミノ酸である。
いくつかの実施形態において、ノッチ/LNR単量体ドメインのC1−C5、C2−C4、C3−C6はジスルフィド結合を形成する。DSL単量体ドメインのC1−C5、C2−C4、C3−C6はジスルフィド結合を形成する。
いくつかの実施形態において、Ca−EGF単量体ドメインは以下の配列を含む:
D[β][Dn]EC1xx(xx)xxxxC2[pdg](dx)xxxxxC3xNxxG[sgt][α]xC4x(xxx)xC5xx[Gsn][αs]xxxxxx(xxxxx)xxxC6。
いくつかの実施形態において、ノッチ/LNR単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xx(x[βα])xxxC2x[Φs]xxx[Φ][Gk]xC3[nd]x[Φsa]C4[Φs]xx[aeg]C5x[α]DGxDC6。
いくつかの実施形態において、DSL単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xxx[α][αh][Gsna]xxC2xx[α]C3x[pae]xx[Da]xx[χ1][Hrgk][αk]xC4[dnsg]xxGxxxC5xxG[α]xGxxC6。
いくつかの実施形態において、アナト単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1C2x[Dhtl][Ga]xxxx[plant](xx)xxxxC3[esqdat]x[Rlps]xxxxxx([gepa]x)xxC4xx[avfpt][Fqvy]xxC5C6。
いくつかの実施形態において、インテグリンβ単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xxC2[β]xx[ghds][Pk]xC3[χ][α]C4xxxx[α]xxx([Gr]xx)x[χ]xRC5[Dnae]xxxxL[βk]xx[Gn]C6
式中、αはw、y、f、lから選択され、βはv、I、l、a、m、fから選択され、χはg、a、s、tから選択され、δはk、r、e、q、dから選択され、εはv、a、s、tから選択され、φはd、e、nから選択される。
いくつかの実施形態において、Ca−EGF単量体ドメインは以下の配列を含む:
D[vilf][Dn]EC1xx(xx)xxxxC2[pdg](dx)xxxxxC3xNxxG[sgt][fy]xC4x(xxx)xC5xx[Gsn][αs]xxxxxx(xxxxx)xxxC6。
いくつかの実施形態において、Notch/LNR単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xx(x[yiflv])xxxC2x[dens]xxx[Nde][Gk]xC3[nd]x[densa]C4[Nsde]xx[aeg]C5x[wyf]DGxDC6。
いくつかの実施形態において、DSL単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1xxx[Ywf][Yfh][Gasn]xxC2xx[Fy]C3x[pae]xx[Da]xx[glast][Hrgk][ykfw]xC4[dsgn]xxGxxxC5xxG[Wlfy]xGxxC6。
いくつかの実施形態において、アナト単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1C2x[adehlt]gxxxxxxxx(x)[derst]C3xxxxxxxxx(xx[aersv])C4xx[apvt][fmq][eklqrtv][adehqrsk](x)C5C6。
いくつかの実施形態において、インテグリンβ単量体ドメインは以下の配列を含む:
C1[aegkqrst][kreqd]C2[il][aelqrv][vilas][dghs][kp]xC3[gast][wy]C4xxxx[fl]xxxx(xxxx[vilar]r)C5[and][dilrt][iklpqrv][adeps][aenq]l[iklqv]x[adknr][gn]C6。
単量体ドメインをコードするポリヌクレオチドは、一般に発現を介して単量体ドメインを作成するために用いられる。単量体ドメインをコードする核酸は種々の異なる出所由来であり得る。単量体ドメインのライブラリーは天然型の単量体ドメイン、変異単量体ドメイン(即ち、単量体ドメイン変異体)、又はこれらの組み合わせをコードする複数の異なる核酸の発現によって調製することができる。例えば、ライブラリーはアミノ酸の骨格を一定のままにして(例、LDLA受容体ドメイン、EGFドメイン)、骨格内に介在するアミノ酸がランダムに生成されたアミノ酸を含むように設計できる。
本発明は、選択された又は望ましいリガンド又はリガンドの混合物に結合する単量体ドメインの特定方法を提供する。いくつかの実施形態において、単量体ドメインは望ましい特性(例えば、結合親和性)について特定され又は選択され、この単量体ドメインは多量体を形成する。例えば図4を参照。これらの実施形態において、望ましい特性(例えば、特異的な結合特性)を有するドメインの選択をもたらす任意の方法を用いることができる。例えば、この方法は、各核酸が単量体ドメインをコードする複数の異なる核酸の提供;複数の種々の核酸の翻訳であって、これによって複数の種々の単量体ドメインを提供する翻訳;望ましいリガンド又はリガンドの混合物を結合するための複数の種々の単量体ドメインのスクリーニング;及び望ましいリガンド又はリガンドの混合物を結合する複数の種々の単量体ドメインのメンバーの特定を含むことができる。
単量体ドメインは天然型ドメイン又は改変ドメイン(非天然型の変異体)であることができる。「天然型」という用語は本明細書中では目的物が天然に見出されることを示すために用いられる。例えば、天然の単量体ドメインは、ヒトの単量体ドメイン、又は場合によって例えば哺乳動物、霊長類、げっ歯類、魚類、鳥類、爬虫類、植物などの種々の種又は原料から得られるドメインを含む。天然型の単量体ドメインは、例えばゲノムDNA又はcDNAのPCR増幅などの多数の方法によって得ることができる。
本発明の単量体ドメインは天然型又は非天然型の変異体であることができる。本発明の実施に用いられる単量体ドメインのライブラリーは、天然型の単量体ドメイン、非天然型の単量体ドメインの変異体、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
単量体ドメインの変異体として、祖先型ドメイン、キメラのドメイン、ランダム化ドメイン、変異型ドメインなどが挙げられる。例えば、祖先型ドメインは系統発生解析に基づくことができる。キメラのドメインは、1つ以上の領域が同じファミリーの他のドメイン由来の対応する領域で置換されたドメインである。例えば、キメラのドメインは同じファミリーの複数の関連するドメイン由来のループ配列を組み合わせて、免疫原性が潜在的に低い新しいドメインを形成させて構築することができる。当業者は、ランダムなアミノ酸配列を作成するよりも、同じファミリーの関連する種々のドメイン由来のループ領域を組み合わせることで改変結合ドメイン単量体を構築することの免疫学的な利点を認識する。例えば、複数のループ配列を組み合わせて、又はヒトLDL受容体クラスAドメイン中の多数の天然型ループ配列さえも組み合わせて変異型ドメインを構築することにより、得られたドメインは新しい結合特性を有し得るが、暴露される全てのループがヒト由来であるため免疫原性のタンパク質配列を全く含まない。内在的状況におけるループアミノ酸配列の組み合わせは本発明の単量体構造の全てに適用することができる。このように本発明はヒトタンパク質由来のキメラ単量体ドメインのライブラリーの生成方法を提供し、この方法は、ヒトタンパク質の少なくとも2個の異なる天然型の各変異体由来の少なくとも1つのループに対応するループ配列の提供であって、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列であるループ配列の提供;及び少なくとも2個の異なるキメラ配列のライブラリーを生成するためのループ配列の共有結合による結合であって、各キメラ配列が少なくとも2個のループを有するキメラ単量体ドメインをコードするループ配列の共有結合による結合;を含む方法である。通常、キメラドメインは少なくとも4個のループと、一般に少なくとも6個のループを有する。上記の通り、本発明は、例えばジスルフィド結合能、二次タンパク質構造間での架橋、及び分子力学(即ち、柔軟性)などの特定の特徴によって特定される3種類のループを提供する。3種類のループ配列は、システイン規定ループ配列、構造規定ループ配列、及びB因子規定ループ配列である。
ランダム化されたドメインは、1つ以上の領域がランダム化されたドメインである。ランダム化は、完全ランダム化、又は場合によって配列の多様性の自然分布に基づく部分的ランダム化に基づいている。
本発明は又、c−METに結合する1つ又は複数の単量体ドメインを含む1つ以上のポリペプチドをコードする組み換え型核酸も提供する。例えば、ポリペプチドは非天然型ドメインを含むように、EGF様ドメイン、クリングルドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、Kunitz/Bovine膵臓トリプシン阻害剤ドメイン、Kazal型セリンプロテアーゼ阻害剤ドメイン、Trefoil(P型)ドメイン、フォン・ウィレブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、サイログロブリンI型反復、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免役グロブリン様ドメイン、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォン・ウィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4スルフィド核ドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGF様ドメイン、C2ドメイン、及びこれらの1つ以上の変異体から成る群から選択することができる。もう1つの実施形態において、天然型のポリペプチドは、Pfarmデータベースおよび/またはSMARTデータベースで見出される単量体ドメインをコードする。
本発明の方法によって製造されるすべての組成物、例えば単量体ドメインおよび/または免疫ドメインと並びにこれらの多量体及びライブラリーを含む本発明の組成物は、場合によって親和性物質のマトリクスに結合され得る。親和性物質の例として、ビーズ、カラム、固形担体、マイクロアレイ、試薬担体の他のプールなどが挙げられる。
III.多量体
多量体の生成方法は本発明の特徴である。多量体は少なくとも2個の単量体ドメインを含む。例えば、本発明の多量体は2〜約10個の単量体ドメイン、2〜約8個の単量体ドメイン、約3〜10個の単量体ドメイン、約7個の単量体ドメイン、約6個の単量体ドメイン、約5個の単量体ドメイン、約4個の単量体ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態において、この多量体は3個の又は少なくとも3個の単量体ドメインを含む。いくつかの実施形態において、この多量体は2、3、4、5、6、7、8個以下の単量体ドメインを含む。単量体ドメインのサイズの可能な範囲を考えると、本発明の多量体は、例えば100kDa未満、90kDa未満、80kDa未満、70kDa未満、60kDa未満、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、25kDa未満、20kDa未満、15kDa未満、10kDa未満、又はより小さいか又はより大きい。一部の場合、単量体ドメインは対象の標的分子(例えば、Met)に結合するために予め選択されている。
いくつかの実施形態において、各単量体ドメインは1個の標的分子(例えば、c−Met)へ特異的に結合する。これらの実施形態のいくつかにおいて、各単量体は標的分子の異なる位置(抗原決定基に類似)に結合する。同じ標的分子に結合する多数の単量体ドメインは、各個々の単量体の親和性と比較して、標的分子に対する多量体の親和性の向上をもたらす結合活性効果を生じる。いくつかの実施形態において、多量体は単量体単独の結合活性の少なくとも約1.5、2、3、4、5、10、20、50、100、200、500、又は1000倍の結合活性を有する。いくつかの実施形態において、多量体の少なくとも1、2、3、4個以上(例、全部)の単量体が、例えばカルシウムや他のイオンなどのイオンに結合する。多量体は単量体ドメインの多様な組み合わせを含むことができる。例えば単一の多量体において、選択された単量体ドメインは同一であるか又は異なっていてよい。加えて、選択された単量体ドメインは、同一の単量体ドメインファミリーの中の種々の異なる単量体ドメイン、又は種々のドメインファミリーのうちの種々の単量体ドメイン、又は場合によってこれらの組み合わせを含むことができる。例えば、単量体ドメインはc−Met結合単量体ドメインのファミリー1〜10から選択することができる。いくつかの実施形態において、単量体ドメインの少なくとも1個がc−Met結合単量体ドメインのファミリー10から選択される。典型的なc−MET結合二量体(2個のc−MET結合単量体を含む。)を実施例中に収載する。
本発明の実施において生成する多量体は以下のいずれかであり得る。
(1)ホモ多量体(同一ドメインの多量体、即ち、A1−A1−A1−A1)
(2)同一ドメインクラスの種々のドメインのヘテロ多量体(例えば、A1−A2−A3−A4)。例えば、ヘテロ多量体は、A1、A2、A3及びA4が特定のLDL受容体クラスAドメインの種々の非天然型変異体であるか又はA1、A2、A3、及びA4の一部がLDL受容体クラスAドメインの天然型変異体である多量体を含む。
(3)種々の単量体ドメインクラス由来のドメインのへテロ多量体、例えばA1−B2−A2−B1。例えば、A1及びA2はLDL受容体クラスA由来の2個の異なる単量体ドメイン(天然型又は非天然型のいずれか)であり、B1、B2はクラスEGF様ドメイン由来の2個の異なる単量体ドメイン(天然型又は非天然型のいずれか)である。
もう1つの実施形態において、多量体は種々の標的分子(例えば、血清アルブミン、免疫グロブリン、赤血球などの血中因子)に対して特異性を有する単量体ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の多量体は、Metに結合する1、2、3個又はそれ以上の単量体ドメイン及び第二の標的分子に結合する少なくとも1個の単量体ドメインを含む。典型的な標的分子としては、例えば多量体の血中半減期を延長させる血清分子(例えば、免疫グロブリン又は血清アルブミン)、EGFR遺伝子ファミリーメンバー、VEGF受容体、PDGF受容体、他の受容体チロシンキナーゼ、インテグリン、腫瘍形成に関与する他の分子、又は腫瘍組織のマーカーが挙げられる。多量体の血中半減期を延長させる典型的な分子としては、例えば赤血球、IgG、HASなどの血清アルブミンが挙げられる。典型的な多量体は、c−MET結合単量体ドメインのファミリー10からの単量体ドメイン及び免疫グロブリン結合単量体ドメインのファミリー2又は3からの単量体ドメインを含む。
本発明の実施に際して使用される多量体ライブラリーは、ホモ多量体、同じ単量体クラスの種々の単量体ドメイン(天然又は非天然)のヘテロ多量体、種々の単量体クラスからの単量体ドメイン(天然又は非天然)のヘテロ多量体、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
本明細書中に記載のように、単量体ドメインも又、免役ドメイン含有ヘテロ多量体(即ち、少なくとも1個の免役ドメイン変異体及び1個の単量体ドメイン変異体を有する多量体)において容易に使用される。このように本発明の多量体は、ミニボディ、単一ドメイン抗体、単鎖可変領域断片(ScFv)、Fab断片といった少なくとも1個の免役ドメイン、及び例えばEGF様ドメイン、クリングルドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、Kunitz/Bovine膵臓トリプシン阻害剤ドメイン、Kazal型セリンタンパク質分解酵素阻害剤ドメイン、トレフォイル(P型)ドメイン、フォン・ウィレブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、チログロブリンI型反復、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォン・ウィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4ジスルフィド核ドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGFドメイン、C2ドメイン、およびこれらの変異体などの少なくとも1個の単量体ドメインを有することができる。
ドメインが結合して多量体を形成するまで、ドメインを選択する必要はない。一方、ドメインは、結合して多量体を形成する前に標的分子への結合能により選択することができる。このように、例えば、多量体は1個の標的分子に結合する2個のドメイン及び第二の標的分子に結合する第三のドメインを含むことができる。
本発明の多量体は以下の性質を有することができる:多価、多特異性、一本鎖、熱安定性、血中半減期および/または保存半減期の延長。さらに、単量体ドメインの少なくとも1個、1個以上、又は全てがイオン(例、金属イオン又はカルシウムイオン)に結合する;単量体ドメインの少なくとも1個、1個以上、又は全てがLDL受容体Aドメインおよび/またはEGF様ドメインから誘導される;単量体ドメインの少なくとも1個、1個以上、又は全てが非天然型である;および/または単量体ドメインの少なくとも1個、1個以上、又は全てが単量体ドメイン1個当たり1、2、3、又は4個のジスルフィド結合を含むことができる。いくつかの実施形態において、多量体は少なくとも2個(又は少なくとも3個)の単量体ドメインを含み、この場合、少なくとも1個の単量体ドメインは非天然型であり、この単量体ドメインはカルシウムと結合する。いくつかの実施形態において、多量体は少なくとも4個の単量体ドメインを含み、この場合、少なくとも1個の単量体ドメインは非天然型であり、さらに
a.各単量体ドメインは30〜100個のアミノ酸であり、各単量体ドメインは少なくとも1個のジスルフィド結合を含む;又は
b.各単量体ドメインは30〜100個のアミノ酸であり、細胞外タンパク質から誘導される;又は
c.各単量体ドメインは30〜100個のアミノ酸であり、標的タンパク質に結合する。
いくつかの実施形態において、多量体は少なくとも4個の単量体ドメインを含み、この場合、少なくとも1個の単量体ドメインは非天然型であり、さらに
a.各単量体ドメインは35〜100個のアミノ酸である;又は
b.各ドメインは少なくとも1個のジスルフィド結合を含み、ヒトのタンパク質および/または細胞外タンパク質から誘導される。
いくつかの実施形態において、多量体は少なくとも2個の単量体ドメインを含み、この場合、少なくとも1個の単量体ドメインは非天然型であり、さらに各ドメインは:
a.アミノ酸25〜50個の長さであり、少なくとも1個のジスルフィド結合を含む;又は
b.アミノ酸25〜50個の長さであり、細胞外タンパク質から誘導される;又は
c.アミノ酸25〜50個の長さであり、標的タンパク質に結合する;又は、
d.アミノ酸35〜50個の長さである。
いくつかの実施形態において、多量体は少なくとも2個の単量体ドメインを含み、この場合、少なくとも1個の単量体ドメインは非天然型であり、さらに:
a.各単量体ドメインは少なくとも1個のジスルフィド結合を含む;又は
b.少なくとも1個の単量体ドメインは細胞外タンパク質から誘導される;又は、
c.少なくとも1個の単量体ドメインは標的タンパク質に結合する。
特定された単量体ドメインおよび/または多量体は、少なくとも選択された又は望ましいリガンドに対する特異的な結合親和性を含めた意味での、及び一部の例ではさらに、他の化合物の結合を遮断する能力、代謝経路を刺激する又は阻害する能力、シグナル又はメッセンジャーとして作用する能力、細胞活性を刺激する又は阻害する能力などを含めた生物活性を有することができる。単量体ドメインを、受容体に対する天然のリガンドが未特定である受容体(オーファン受容体)に対するリガンドとして機能するように作成することができる。これらのオーファン・リガンドを作成して、これらが結合する受容体の先端を遮断ないし活性化することができる。
単一のリガンド、又は場合によって種々のリガンドを用いて、単量体ドメインおよび/または多量体を選択できる。本発明の単量体ドメインは単一又は種々のリガンドと結合できる。本発明の多量体は単一のリガンドに対する複数の別々の結合部位を、場合によって種々のリガンドに対する複数の結合部位を有することができる。
いくつかの実施形態において、多量体は種々のタンパク質に対する特異性を有する単量体ドメインを含む。この種々のタンパク質は互いに相関関係があってもなくてもよい。関連のあるタンパク質の例として、タンパク質ファミリーのメンバー及びウイルスの種々の血清型が挙げられる。代わりに、多量体の単量体ドメインは生理学的経路中の種々の分子(例えば、種々の血液凝固タンパク質)を標的にしうる。更に他の実施形態において、単量体ドメインは無関係な経路中のタンパク質に結合する(例えば、2個のドメインが血液因子に結合し、他の2個のドメインが炎症関連タンパク質に結合し、5番目のドメインが血清アルブミンに結合する)。もう1つの実施形態において、多量体は対象の種々の病原体又は汚染物質に結合する単量体ドメインを含む。このような多量体はいかなる多数の病原体又は汚染物質の存在をも検出可能な単一検出試薬として有用である。
いくつかの実施形態において、本発明の多量体は同一の又は異なる多量体に結合して凝集物を形成する。凝集は、例えば2個の単量体ドメイン上の疎水性ドメインの存在により媒介されることができ、その結果2個の単量体ドメイン間の非共有結合が形成される。代わりに、凝集はもう1つの多量体中の単量体に対する結合特異性を有する多量体中の1個以上の単量体ドメインにより促進することができる。凝集は又、単量体ドメイン又は多量体上の親和性ペプチドの存在によっても形成させることができる。凝集は単一の多量体よりもより多くの標的分子結合ドメインを含む事ができる。
細胞表面の標的及び第2の標的の両方に対して親和性を有する多量体は、増大した結合活性効果を提供することができる。いくつかの場合において、膜流動性は、相互作用のスペーシング及び結合価の最適化(自己集合による)時に、タンパク質リンカーよりも柔軟であることができる。いくつかの場合において、多量体は、各々が異なる細胞上の又は1個が細胞上で、もう1個が多数結合部位を伴う分子上にある2個の異なる標的に結合する。)。
いくつかの実施形態において、本発明の単量体又は多量体はもう1つのポリペプチドに結合して、融合タンパク質を形成する。この分野のいかなるポリペプチドも融合相手として使用できるが、多量体を形成する融合相手が有用である。例えば、本発明の単量体又は多量体は抗体の以下の部位又は部位の組み合わせに融着することができる:
1.VH1および/またはVL1ドメインのN末端、場合によってリーダーペプチドの直後でドメインの開始前(フレームワーク領域1)、
2.CH1又はCL1ドメインのN末端、VH1又はVL1ドメインを置換して融着、
3.重鎖のN末端、場合によってCH1ドメインの後でヒンジ中のシステイン残基の前(Fc融合)、
4.CH3ドメインのN末端、
5.CH3ドメインのC末端、場合によって短リンカーを介して最後のアミノ酸残基に付加、
6.CH2ドメインのC末端、CH3ドメインを置換して融着、
7.CL1又はCH1ドメインのC末端、場合によって鎖間ジスルフィド結合を形成するシステインの後、又は
8.VH1又はVL1ドメインのC末端、例えば図7参照。
いくつかの実施形態において、本発明の1個以上の単量体又は多量体ドメインを医薬品として有用な分子(例えば、タンパク質、核酸、有機小分子など)に結合させる。典型的な薬剤タンパク質として、例えばサイトカイン、抗体、ケモカイン、成長因子、インターロイキン、細胞表面タンパク質、細胞外ドメイン、細胞表面受容体、細胞毒素などが挙げられる。典型的な小分子医薬品として毒素又は治療薬が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属が本発明のポリペプチドに結合できる。これは、例えばMRIなどの造影剤として有用である。
いくつかの実施形態において、単量体又は多量体は組織/疾患特異的な標的タンパク質に結合するように選択される。組織特異的タンパク質とは、動物の他の組織と比較して、1種類又は数種類の組織においてのみ、又はこれらの組織で有意に高いレベルで発現されるタンパク質である。c−METは肝臓において有意なレベルで発現されるため、Metに結合する単量体ドメインを用いて、肝臓を他の単量体ドメインを含む他の分子の標的にできる。これを用いて、例えば肝臓を治療又は毒性分子の標的にすることで、肝臓特異的疾患を標的にできる。治療可能な肝臓疾患の一例は肝細胞癌である。同様に、疾患特異的タンパク質とは、動物の他の非罹患細胞又は組織と比較して、1種類又は数種類の罹患細胞又は組織においてのみ、又はこれらの組織で有意に高いレベルで発現されるタンパク質である。
いくつかの実施形態において、標的タンパク質に結合する単量体又は多量体は医薬品タンパク質又は小分子に結合させて、標的タンパク質(例、c−MET)が発現される特定組織又は疾患関連細胞(複数又は単数)を、得られた複合体又は融合体の標的とする。このような複合体又は融合体に用いるための単量体又は多量体は、先ず標的タンパク質に結合させるために選択することができ、続いて他の細胞又は組織対するネガティブ選択(例えば、薬物毒性の下限値を設定している骨髄又はその他の組織が標的となることを避けるための)により選択できるが、非標的細胞又は組織のために薬剤を減らす又は除くことが望ましい。薬剤を感受性組織に近づけないことで治療濃度域を拡大させ、高用量を安全に投与可能である。もう1つの代替法において、単量体又は多量体のライブラリーを動物に注入し、その後、対象の特定の組織又は細胞に結合する単量体又は多量体を単離することにより、動物に対するインビボパニングを行うことができる。
上記の融合タンパク質は、また医薬品タンパク質と単量体又は多量体との間のリンカー・ペプチドを含むことができる。ペプチド・リンカー配列を用いて、例えば各ポリペプチドが確実に二次及び三次構造に折りたたまれる十分な距離にポリペプチド成分を離すことができる。融合タンパク質は一般に化学結合などの標準法を用いて調製できる。融合タンパク質は標準法による発現系において組み換え型タンパク質として発現させることもできる。
本発明の多量体又は単量体ドメインは従来技術において公知の任意の方法に従って製造できる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドをコードするpET誘導プラスミドを含む大腸菌(E.coli)を誘発してタンパク質を発現させる。大腸菌を回収後、溶解し、遠心分離によって清澄化することができる。ポリペプチドはNi−NTAアガロース溶出を用いて精製し、透析によって再び折り畳むことができる。ミスフォールドされたタンパク質は遊離のスルフヒドリル基をヨード酢酸でキャップ形成することで中和できる。Qセファロース溶出、ブチル・セファロース溶出、SPセファロース溶出、DEAEセファロース溶出、および/またはCMセファロース溶出を用いてポリペプチドを精製することができる。等価な陰イオンおよび/または陽イオン交換精製ステップも用いることができる。
いくつかの実施形態において、本発明の単量体又は多量体を含むポリペプチドは、例えばタンパク質の安定化のために、それ自体に連結(C末端をN末端に)される。
IV.リンカー
単量体ドメインをリンカーで連結させて多量体を形成することができる。例えば、リンカーは多量体内で分離されて離れた各単量体ドメイン間に位置付けることができる。
選択された単量体ドメインのリンカーを介した結合は、この分野において知られる種々の技術を用いて行うことができる。例えば、選択された単量体ドメインをコードするポリヌクレオチドのコンビナトリアルアセンブリーは、PCR法に基づく自己プライミング重複反応又は他の遺伝子組み換え法による制限消化及び再連結により行うことができる。リンカーは、標的多量体への結合能によって単量体が特定される前、又は標的多量体への結合能によって単量体が選択された後に、単量体に付加することができる。
リンカーは、天然型、合成型又は両方の組み合わせであることができる。例えば、合成リンカーは、例えば配列及びサイズの両方においてランダム化されたリンカーであることができる。一つの態様において、ランダム化リンカーは完全にランダム化された配列を含み、又は場合によってランダム化リンカーは天然型リンカー配列に基づくことができる。リンカーは、例えば非ポリペプチド部分、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどを含む。
リンカーはたわまない、たわむ、又は両方の組み合わせであることができる。リンカーの柔軟性は、リンカー及びリンカーが相互作用する単量体ドメインの両方の組成の機能であることができる。リンカーは選択された2個の単量体ドメインを連結して、分離された離れた単量体ドメインとしての単量体ドメインを維持する。リンカーによって、分離された離れた単量体ドメインが共働して、例えば多量体中の同じリガンドに対する複数に分離された結合部位、又は多量体中の異なるリガンドに対する複数に分離された結合部位などの分離された特性を維持できる。
2個以上の単量体ドメイン(即ち、ポリペプチド鎖)を連結すべきであるような特定の場合に適したリンカーの選択は、例えば単量体ドメインの性質、ポリペプチド多量体が結合すべき標的の構造と性質、および/またはペプチドリンカーのタンパク質分解及び酸化に対する安定性などの多様なパラメータに依存する。
本発明は、望ましい単量体ドメイン/変異体が特定された場合のリンカーの選択を最適化する方法を提供する。一般に、単量体ドメインの組成に従って固定さる一方、リンカーの組成及び長さが可変である組成を有する多量体のライブラリーは、上記の通り、容易に調製し、スクリーニングできる。
リンカーに関するより詳細な考察は、例えば米国特許公報第2005/0048512号に見ることができる。
V.標的分子に対して親和性を有する単量体又は多量体の特定
当業者であれば、望ましい特性(例えば、結合親和性)を有する単量体ドメインを容易に特定できる。これらの実施形態において、望ましい特性(例えば、特異的な結合特性)を有するドメインを選択することができる任意の方法を用いることができる。例えば、この方法は、各核酸が単量体ドメインをコードする複数の異なる核酸の提供;複数の種々の核酸の翻訳であって、これによって複数の種々の単量体ドメインを提供する核酸の翻訳;望ましいリガンド又はリガンドの混合物の結合のための複数の種々の単量体ドメインのスクリーニング;及び望ましいリガンド又はリガンドの混合物を結合する複数の種々の単量体ドメインのメンバーの特定;を含むことができる。
加えて、部位特異的変異導入法及びランダム変異導入法(例えば、化学的変異導入法)などの変異導入のいかなる方法も、例えば単量体ドメインライブラリー用の単量体ドメインの製造に用いることができる。いくつかの実施形態において、誤りがちなPCRを用いて変異体を生成する。追加の方法は、複数の天然型単量体ドメイン内に保存されたアミノ酸を整列させることによる複数の天然型単量体ドメインの整列;及び、保存されたアミノ酸を維持し、保存されたアミノ酸周辺のアミノ酸を挿入、削除、改変することで非天然型単量体ドメインを作成することによる非天然型単量体ドメインの設計;を含む。1つの実施形態において、保存されたアミノ酸はシステインを含む。もう1つの実施形態において、挿入段階で任意のアミノ酸を用いるか、又は場合によって、挿入段階で天然型の単量体ドメインの一部分を用いる。一部分は同じファミリーのドメイン由来のループをコードできることが理想的である。アミノ酸は、合成オリゴヌクレオチドを用いて、又はシャッフリングにより、又は制限酵素にに基づく組み換えにより挿入又は置換する。本発明のヒトのキメラドメインは、できるかぎり少ない免疫原性が望まれる治療への応用に有用である。本発明はヒトのキメラドメインライブラリーの作成方法を提供する。ヒトのキメラ単量体ドメインライブラリーは、上記の通り、ヒトの単量体ドメインの種々の変異体由来のループ配列を結合させることによって作成することができる。結合されるループ配列は、配列特異的ループ、構造特異的ループ、B因子特異的ループ又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせである。
別の方法として、ヒトのキメラドメインライブラリーは、ループレベルと比べて、アミノ酸レベルで天然型のヒトの単量体ドメインを修飾することで生成することができる。いくつかの実施形態において、潜在的な免疫原性をできるかぎり少なくするために、ヒトの単量体ドメインの同じファミリー由来のタンパク質配列中の天然型残基だけを用いてキメラ配列を作成する。これは、単量体ドメインの同じファミリー由来の少なくとも2個以上のヒト単量体ドメインの配列整列の提供;ヒトの単量体ドメイン間で異なるヒトの単量体ドメイン配列中における対応する位置のアミノ酸残基の特定;2個以上のヒトのキメラ単量体ドメインの生成であって、ヒトの各キメラ単量体ドメイン配列が、同じ単量体ドメインファミリー由来の少なくとも2個以上のヒト単量体ドメイン由来の残基と種類・位置が一致するアミノ酸残基を含む、ヒトのキメラ単量体ドメインの生成;によって達成することができる。ヒトのキメラ単量体ドメインライブラリーは、標的分子への結合のためのヒトのキメラ単量体ドメインのライブラリーのスクリーニング;及び標的分子に結合するヒトのキメラ単量体ドメインの特定;により対象の標的物に結合するヒトのキメラ単量体ドメインを特定するのに用いることができる。初回の配列整列化段階で用いられる適切なヒトの天然型単量体ドメイン配列は、本明細書中に記載されている天然型の単量体ドメインのいずれかに対応する配列を含む。
本発明のヒトの単量体変異体ライブラリーのドメイン(様々なループによる生成又は単一のアミノ酸残基による生成を問わず)は当業者には既知の方法によって調製する事ができる。これらのライブラリー生成に特に適した方法は国際特許出願第01/23401号に記載の分割プール形式及びトリヌクレオチド合成形式である。
いくつかの実施形態において、本発明の単量体ドメインは、
候補タンパク質配列の提供、
候補タンパク質配列のヒトのタンパク質配列のデータベースとの比較、
データベース記載のヒトのタンパク質配列の部分に対応する候補タンパク質配列の部分の特定、及び
候補タンパク質配列とデータベース記載のヒトのタンパク質配列との間の一致度の測定、
により、あり得る免疫原性についてスクリーニングする。
一般に、候補タンパク質配列とデータベース記載の1つ以上のヒトタンパク質配列との間の一致度が高いほど、データベース記載の任意のヒトタンパク質配列との一致度がほとんどない候補タンパク質と比較して、予測される免疫原性の可能性は低くなる。候補タンパク質のスクリーニングのための本発明の方法の実施に用いるのに適したヒトタンパク質配列のデータベースはワールドワイド・ウェブのサイトncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで検出することができる(加えて、以下のウェブ・サイトが短く、ほぼ正確な一致の検索のために用いることができる:cbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi?CMD=Web&LAYOUT=TwoWindows&AUTO_FORMAT=Semiauto&ALIGNMENTS=50&ALI GNMENT_VIEW=Pairwise&CLIENT=web&DATABASE=nr&DESCRIPTIONS=100&ENTREZ_QUERY=(none)&EXPECT=1000&FORMAT_OBJECT=Alignment&FORMAT_TYPE=HTML&NCBI_GI=on&PAGE=Nucleotides&PROGRAM=blastn&SERVICE=plain&SET_DEFAULTS.x=29&SET_DEFAULTS.y=6&SHOW_OVERVIEW=on&WORD_SIZE= 7&END_OF_HTTPGET=Yes&SHOW_LINKOUT=)。この方法は、例えばキメラ単量体ドメインなどのキメラタンパク質内の交差配列が免疫原性のイベントを生じる可能性があるのか否かを決定するのに特に有用である。交差配列がヒトタンパク質配列のデータベース中に見出される配列の一部分に一致する場合、交差配列が免疫原性のイベントを生じる可能性は低いと考えられる。
データベースに記載のヒトタンパク質配列の一部分に関する情報はヒト様キメラタンパク質のタンパク質ライブラリーを設計するために用いることができる。そのようなライブラリーは天然型ヒトタンパク質中に存在する「交差配列」に関する情報を用いることにより生成することができる。「交差配列(crossover sequence)」の用語は本明細書中では、その全体が少なくとも1個の天然型ヒトタンパク質中に見出される配列を指し、その配列の一部分が2つ以上の天然型タンパク質中に見出される。従って、後者の2個以上の天然型タンパク質の組み換えによって、配列のキメラ部分がもう1つの天然型タンパク質中に見出される配列に実際に一致するようなキメラタンパク質を生成するであろう。交差配列は、1番目のアミノ酸部位が、1番目と2番目の天然型ヒトタンパク質配列中に見出され種類及び位置において同一の、しかしながら3番目のそれにおいては同一でないアミノ酸残基によって占められるような2個の連続したアミノ酸残基のキメラ接合部を含む。2番目のアミノ酸の位置は、2番目と3番目の天然型ヒトタンパク質配列中に見出される種類及び位置において同一の、しかしながら1番目のそれにおいては同一でないアミノ酸残基で占められる。すなわち、「2番目の」天然型ヒトタンパク質配列は、上述したように、交差配列の全体が現れる天然型ヒトタンパク質に一致する。
いくつかの実施形態において、ヒト様キメラタンパク質のライブラリーは:同じタンパク質ファミリー由来のタンパク質と一致する、データベース中に記載のヒトタンパク質配列の特定;同じタンパク質ファミリーに由来するヒトタンパク質配列の基準タンパク質配列との比較;同じファミリーの種々のヒトタンパク質配列から誘導される一組の部分配列の特定であって、各部分配列が、1つの異なる天然型ヒトタンパク質配列から誘導される少なくとも1つの別の部分配列と同一性の部分を共有するような、一組の部分配列の特定;1番目、2番目及び3番目の部分配列由来のキメラ接合部の特定であって、各部分配列が1つの異なる天然型ヒトタンパク質配列から誘導され、キメラ接合部が、1番目のアミノ酸位置が1番目と2番目の天然型ヒトタンパク質配列とは共通であるが3番目の天然型ヒトタンパク質配列とは共通でないようなアミノ酸残基によって占められ、2番目のアミノ酸位置が2番目と3番目の天然型ヒトタンパク質配列で占められるような2個の連続したアミノ酸残基の位置から成るような、キメラ接合部の特定;及び、各々が配列において上記部分配列の組から由来の2つ以上の部分配列と一致し、各々が特定されたキメラ接合部の1つ以上を含むようなヒト様キメラタンパク質分子の生成;によって生成される。を含む。
従って、例えば、1番目の天然型ヒトタンパク質配列がA−B−C、2番目の配列がB−C−D−E、3番目がD−E−Fの場合、キメラ接合部はC−Dである。あるいは、1番目の天然型ヒトタンパク質配列がD−E−F−G、2番目の配列がB−C−D−E−F、3番目がA−B−C−Dの場合、キメラ接合部はD−Eである。ヒト様キメラタンパク質分子は多様な方法で生成できる。例えば、キメラ接合部をコードする配列を含むオリゴヌクレオチドは、上記の部分配列の組から由来の2個以上の部分配列と配列の一致するオリゴヌクレオチドでもって組み換えて、ヒト様キメラタンパク質及びそのライブラリーを生成する事ができる。天然型ヒトタンパク質を整列させるために用いる基準配列は、ヒト天然型タンパク質の同じファミリーから由来する配列、又はそのファミリーのキメラ又はタンパク質の他の変異体である。
天然型単量体ドメインの断片をコードする核酸は、混合されておよび/または組み換えられて(例えば、化学的又は酵素的に生成された断片を用いて)全長の修飾された単量体ドメインを生成することもできる。断片及び単量体ドメインは、それらのドメイン又は断片をコードする核酸を操作することで組み換えることもできる。例えば、単量体ドメインの断片をコードする核酸作成物の連結は、改変単量体ドメインを生成するために用いることができる。
改変単量体ドメインは、後に連結により単量体ドメインをコードするポリヌクレオチド内の所定の部位に挿入されるペプチド配列の保存された、ランダムな、擬ランダムな、又は規定された配列をコードする合成オリゴヌクレオチド(例えば、重複オリゴヌクレオチド)の収集物を提供することにより生成することができる。同様に、1個以上の単量体ドメインの配列の多様性は、部位特異的変異原性による単量体ドメイン(単数又は複数)への変異導入、ランダム変異導入、疑似ランダム変異導入、規定されたケルナル変異導入、コドンに基づく変異導入などによって拡大することができる。得られた核酸分子は、クローニング及び増幅のために宿主内で増殖させることができる。いくつかの実施形態において、核酸はシャッフリングされる。
本発明は又、単量体ドメインをコードする複数の核酸を組み換えるための方法、及び結果として得られる、望ましいリガンド又はリガンドの混合物などに結合する単量体ドメインについてライブラリーをスクリーニングするための方法も提供する。選択された単量体ドメインの核酸は、中立配列(即ち、結合に対して実質的な機能効果を有しない)をコードするポリヌクレオチド配列とシャッフリングすることで戻し交配して、例えば選択された配列とほぼ同一な野生型又は天然型の配列と戻し交配して、機能的な天然様の単量体ドメインを調製することができる。一般に、戻し交配中には、引き続く選択を適用して、例えばリガンドへの結合などの特性を保持する。
いくつかの実施形態において、単量体ライブラリーはシャッフリングによって調製する。このような場合、単量体ドメインを単離し、シャッフルして、単量体ドメインをコードする核酸配列をコンビナトリアル組み換えを行う。(単量体ドメイン間、ドメイン内又はその両方で組み換えが生じる)。第一段階は望ましい特性、例えば一定のリガンドに対する親和性を有する単量体ドメインの特定を含む。組み換え中に保存されたアミノ酸を維持しながら、単量体ドメインをコードする核酸配列を組み換えて又は組み換え及び結合して多量体にすることができる。
本発明の重要な利点は、既知のリガンド又は未知のリガンドを用いて、単量体ドメインおよび/または多量体を選択できることである。対象の単量体ドメイン又は対象の多量体を単離するためのリガンドの構造に関する事前の情報は必要ない。特定された単量体ドメインおよび/または多量体は、選択された又は望ましいリガンドに対する少なくとも特異的な結合親和性を含む意味での、及び一部の例では、さらに他の成分の結合を遮断する能力、代謝経路を刺激し又は阻害する能力、シグナル又はメッセンジャーとして作用する能力、細胞活性を刺激し又は阻害する能力などを含む生物活性を有することができる。受容体に対する天然のリガンドが未だかって特定されていない場合(オーファン受容体)、単量体ドメインを生成して、受容体に対するリガンドとして機能させることができる。これらのオーファン・リガンドを創成して、これらが結合する受容体を遮断するか又は活性化することができる。
単一のリガンドを用いて又は場合によって多様なリガンドを用いて、単量体ドメインおよび/または多量体を選択することができる。本発明の単量体ドメインは単一のリガンド又は多様なリガンドを結合することができる。本発明の多量体は1つのリガンドに対して複数の別々の結合部位を有することができ又は場合によって多様なリガンドに対して複数の結合部位を有することができる。
本発明は又、本発明の方法によって調製される組成物も含む。例えば、本発明は本発明の方法によって生成された単量体ドメインを含むライブラリー(単数および/または複数)から選択又は特定された単量体ドメインを含む。
本発明は又、単量体ドメインのライブラリー及び単量体ドメインをコードする核酸のライブラリーも提供する。複数のライブラリーは、例えば約100個、250個、500個又はそれ以上の、単量体ドメインをコードする核酸が含むことができる。又、このライブラリーは、例えば約100個、250個、500個又はそれ以上の、単量体ドメインをコードするポリペプチドを含むことができる。このライブラリーは同じシステインフレームを含む単量体ドメイン、例えばAドメイン又はEGF様ドメインを含むことができる。
いくつかの実施形態において、変異体を、例えばLDL受容体クラスAドメインなどの単量体ドメインの同じファミリー由来の2個以上の種々の配列を組み換えることにより生成する。別の方法として、種々のファミリー由来の2個以上の種々の単量体ドメインを組み合わせて多量体を形成することができる。いくつかの実施形態において、多量体は以下のファミリー・クラスの少なくとも1個の単量体又は単量体変異体から形成する:EGF様ドメイン、クリングルドメイン、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、Glaドメイン、SRCRドメイン、Kunitz/Bovine膵臓トリプシン阻害剤ドメイン、Kazel型セリンプロテアーゼ阻害剤ドメイン、トレフォイル(P型)ドメイン、フォン・ウィレブランド因子C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、チログロブリンI型反復、LDL受容体クラスAドメイン、Sushiドメイン、Linkドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォン・ウィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4ジスルフィド核ドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシンドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGF様ドメイン、C2ドメイン、及びこれらの誘導体。もう1つの実施形態において、単量体ドメイン及び種々の単量体ドメインはPfamデータベースおよび/またはSMARTデータベースで見出される1個以上のドメインを含むことができる。上記の方法により生成されたライブラリー、ライブラリーの1つ以上のメンバーを含む1個以上の細胞およびライブラリーの1つ以上のメンバーを含む1つ以上のディスプレイも本発明に含まれる。
場合によって、単量体をコードする核酸の文字列のデータ・セットは、例えば単量体ドメインをコードする第1の文字列を別の単量体ドメインをコードする1個以上の文字列と混合させることによって生成し、それによって、本明細書中に記載のものを含めた、単量体ドメインをコードする核酸の文字列のデータセットを生成する。もう1つの実施形態において、単量体ドメイン及び異なる単量体ドメインはPfamデータベースおよび/またはSMARTデータベース中に見出される1個以上のドメインを含むことができる。この方法はさらに、単量体ドメインをコードする第1文字列及び別の単量体ドメインをコードする1個以上の第2の文字列のコンピュータ中への挿入、及びコンピュータでの多量体の文字列又はそのライブラリーの生成を含むことができる。
このライブラリーは、例えば望ましいリガンド又はリガンドの混合物の結合などの望ましい特性についてスクリーニングされ得る。例えば、単量体ドメインのライブラリーのメンバーは、既知又は未知のリガンド又はリガンドの混合物への結合について、ディスプレイし及びプレスクリーニングすることができる。この単量体ドメイン配列は次いで変異導入する(例えば、組み換えする、化学的に改変する、など)、でなければ改変することができ、新しい単量体ドメインは、親和性の向上したリガンド又はリガンドの混合物への結合について再度スクリーニングすることができる。選択された単量体ドメインを組み合わせて、又は連結させて多量体を形成することができ、次にこれを、改善された親和性又は結合活性について又はリガンド若しくはリガンドの混合物に対する改変された特異性についてスクリーニングすることができる。改変された特異性とは、特異性が拡大する(例えば、複数の関連ウイルスの結合など)ことを意味し、又は場合によって、特異性が縮小する(例えば、リガンドの特定部位内への結合)を意味することができる。当業者であれば、結合活性を計算するために利用可能な多数の方法を認識している。Mammen et al., Angew Chem Int. Ed. 37:2754−2794(1998);Muller et al., Anal. Biochem. 261:149−158(1998)を参照されたい。
VI.c−METと結合する単量体ドメインの選択
予備スクリーニングは、c−METに結合可能な薬剤のスクリーニングによって実施可能であり、何故ならば、このようにして特定された薬剤の少なくとも一部はc−MET修飾物質(例えば、拮抗薬又は作用薬)である可能性が高いためである。結合実験は、通常、c−METタンパク質(又は、SEMAドメイン又はα鎖を含む断片などの断片)の1つ以上の試験薬(即ち、本発明の単量体又は多量体)との接触;及びタンパク質と1つ以上の試験薬が結合複合体を形成するために十分な時間の反応;が含まれる。形成されたいかなる結合複合体も、多数の確立された分析技術のいずれかを用いて検出することができる。タンパク質結合実験は、免疫組織化学的結合実験、流動細胞計測法、又はその他の分析法を含むが、これらに限定されない。これらの分析法で用いられるc−METタンパク質は、天然で発現、クローン化又は合成することができる。同様の方法を用いて、IgGと結合する単量体ドメイン又は多量体を特定することができる。
本発明のスクリーニング方法は、インビトロ分析又は細胞に基づく分析として実施することができる。細胞に基づく分析は、c−METを発現する任意の細胞で実施できる。細胞に基づく分析にはc−MET受容体を含む全細胞又は細胞画分が含まれ、薬剤の結合又は薬剤によるc−MET活性の調節についてスクリーニングする。本発明の方法に従って用いることのできる典型的な細胞種としては、例えば、哺乳類細胞の他、酵母を含む真菌性細胞、細菌性細胞が挙げられる。細胞は初代培養細胞又は腫瘍細胞または他の種類の不死化細胞株であってよい。無論、c−METは内因的にc−METを含まない細胞中に発現させることができる。
c−MET活性測定はc−METの修飾物質(拮抗薬又は作用薬)を特定するためにも用いることができる。これらの実施形態において、1つ以上の試験薬をc−MET発現細胞に接触させて、c−METの活性を試験する。典型的なc−MET活性としては、HGF依存性キナーゼ活性又は構成的キナーゼ活性が挙げられる。例えば、Christensen et al., Cancer Res. 63:7345−7355(2003)を参照されたい。その他の実施形態において、下流の分子現象をモニターして、シグナル伝達活性を測定することができる。例えば、c−METは細胞増殖(増殖及び生存)、細胞運動性、浸潤および形態の変化を誘発する。加えて、c−METは特にGab−1、Akt、トランスクリプション3のシグナルトランスデューサー及び活性化薬、ホスホリパーゼCγ、局所接着キナーゼのリン酸化を間接的に媒介する。例えば、Christensen et al., Cancer Res. 63:7345−7355(2003)を参照されたい。
いくつかの実施形態において、活性測定は、特定された拮抗薬単量体又は多量体(即ち、HGFと競合する)に作用薬活性のないこと(即ち、HGF又は他の作用薬の非存在下でc−METを活性化しないこと)を確認するためにも用いる。
前述のスクリーニング方法のいずれかによって最初に特定された薬剤をさらに試験して、見掛け上の活性を確証することができる。このような試験は適切な動物モデルを用いて実施することができる。このような方法の基本形式は、ヒトのモデルとして役立つ動物への初回スクリーニングで特定された鉛化合物の投与、及びc−METが実際に調節され、および/または疾患又は症状が改善されるか否かの判定を含む。確証試験で使用される動物モデルは一般に任意の種類の哺乳動物である。適切な動物の具体例として、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。
多様な手法によって、ドメインのライブラリーからc−METに結合する単量体ドメインを選択することができる。例えば、望ましい特性(例えば、c−MET又はIgGへの結合)を有する単量体ドメインを特定する1つの方法は、各核酸が単量体ドメインをコードする、複数の核酸の翻訳;複数の核酸によってコードされるポリペプチドのスクリーニング;及び例えば望ましいリガンド又はリガンドの混合物に結合する単量体の特定であって、これによって選択された単量体ドメインを生成する、単量体の特定;が含まれる。各核酸によって発現される単量体ドメインは、この分野において公知の方法(即ち、パニング、アフィニティー・クロマトグラフィー、FACS分析)によってリガンドに結合する能力について試験することができる。
上記のように、単量体の選択は、c−METなどのリガンドもしくはその断片、または他の標的分子(例えば、脂質、炭水化物、核酸など)への結合に基づいて行うことができる。場合によって他の分子が、標的、例えばCa+2などのイオンと共にこの方法に含めることができる。
単量体ドメインがリガンドへの結合能に基づいて選択される場合、選択基準として遅い解離速度が挙げられ、これは通常、高い親和性を予測するものである。リガンドの結合価数を変えて、選択された単量体ドメインの平均的な結合親和性を制御することもできる。競合化合物を含有させることにより、希釈により、又は当業者には公知の他の方法によって、リガンドを多様な密度で表面又は基質に結合させることができる。高い密度(結合価数)の所定のリガンドを用いることにより、比較的低い親和性を有する単量体ドメインの濃縮が可能であるが、親和性の高い単量体ドメインに対しては低い密度(結合価数)での濃縮が好ましい。
多様なレポーティング・ディスプレイ・ベクター又はシステムを用いて、本発明の単量体ドメインおよび/または多量体をコードする核酸の発現させ、望ましい活性についての試験をすることができる。例えば、ファージディスプレイシステムは、単量体ドメインをファージの表面上で融合タンパク質として発現させるシステムである(ファルマシア、ウィスコンシン州ミルウォーキー)。ファージディスプレイは、一般にバクテリオファージのコートタンパク質との融合としての、線状ファージの表面上における単量体ドメインをコードするポリペプチド配列の提示を含み得る。
一般にこれらの方法において、各ファージ粒子又は細胞は、天然ファージ又は細胞タンパク質配列に加えて、表示されたポリペプチドの単一種を表示するライブラリーの個々のメンバーとして役立つ。核酸は融合タンパク質の転写をもたらす部位においてファージDNAへクローン化され、融合タンパク質の部分は複数の核酸によってコードされる。核酸分子を含むファージは細胞内で複製及び転写される。融合タンパク質のリーダー配列により、融合タンパク質はファージ粒子の先端への輸送に導かれる。このように、核酸によって部分的にコードされる融合タンパク質は、上記及び下記の方法で検出及び選択するためにファージ粒子上にディスプレイされる。例えば、ファージ・ライブラリーを、例えばc−MET又はその断片などの所定のリガンドとともにインキュベートすることが可能であり、それによりリガンドに結合する融合タンパク質配列を提示するファージ粒子を所定のリガンドに結合するポリペプチド配列を提示しないファージ粒子とは差別的に分けることができる。例えば、分離は所定のリガンドを固定することによりおこなうことができる。固定されたリガンドに結合したファージ粒子(即ち、ライブラリー・メンバー)は回収され複製されて、親和性濃縮及びファージ複製に引き続くラウンドのために、選択されたファージの亜集団を増幅させる。親和性濃縮及びファージ複製のいくつかのラウンドの後、このようにして選択されたファージライブラリーのメンバーを単離し、ディスプレイされたポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を決定し、これによって所定のリガンドに結合するポリペプチドの配列(単数又は複数)を特定する。これらの方法はPCT特許公報第91/17271、91/18980、及び91/19818及び93/08278号に詳述されている。
他のディスプレイシステムの例として、リボソームディスプレイ、ヌクレオチド結合ディスプレイ(例えば、米国特許第6,281,344、6,194,550、6,207,446、6,214,553、6,258,558号参照)、ポリソームディスプレイ、細胞表面ディスプレイなどが挙げられる。細胞表面ディスプレイは多様な細胞、例えば大腸菌、酵母、および/または哺乳動物細胞を含む。細胞がディスプレイとして用いられる場合、例えばPCR増幅及びその後の消化により得られる核酸を細胞中に導入して翻訳させる。場合によって、本発明の単量体ドメイン又は多量体をコードするポリペプチドを、例えば注入により細胞内に導入することができる。
本発明の単量体及び多量体ライブラリーは、例えば望ましいリガンド(例えば、c−MET)又はリガンドの混合物の結合といった望ましい特性についてスクリーニングすることができる。例えば、単量体ドメインのライブラリーのメンバーをディスプレイさせて、既知又は未知のリガンド又はリガンドの混合物への結合についてプレスクリーニングすることができる。次に単量体ドメイン配列に変異導入(例えば、組み換えするか、化学的に改変するなど)するか、又は別の方法で改変して、新しい単量体ドメインを、改善された親和性でのリガンド又はリガンドの混合物への結合について再びスクリーニングできる。選択された単量体ドメインを結合又は連結させて多量体を形成することができ、次にこれらを、リガンド又はリガンドの混合物に対する改善された親和性又は結合活性について又は改変された特異性についてスクリーニングすることができる。改変された特異性というのは、特異性が拡大されること、例えば、多座配位のリガンドの結合又は場合によって特異性が縮小されること、例えばリガンドの特定領域内だけでの結合、を意味する。当業者は、結合活性を計算するための利用できる多数の方法があることを理解している。例えば、Mammen et al., Angew Chem Int. Ed.37:2754−2794(1998);Muller et al., Anal. Biochem. 261:149−158(1998)を参照されたい。
当業者は、変異生成及び望ましい特性のためのスクリーニングの段階を反復して(即ち、循環的に行う)結果を最適化できることを理解している。例えば、ファージディスプレイライブラリー又はその他同様の型式において、ライブラリーの1番目のスクリーニングは比較的低い厳密性で実施することができ、これによって標的分子を伴う可能な限り多くの粒子が選択される。次に選択された粒子を単離して、単量体又は多量体をコードするポリヌクレオチドを粒子から単離することができる。次に、追加の変異体をこれらの配列から生成して、引き続き高い親和性でスクリーニングすることができる。
本発明の全ての組成物(例えば、単量体ドメイン並びに多量体及びそのライブラリー)は場合によって親和性物質のマトリクスに結合され得る。親和性物質の例としては、ビーズ、カラム、固形支持体、マイクロアレイ、他の試薬支持体プールなどが挙げられる。
比較的大きな標的と結合できる多量体が望ましい場合、それら多量体は「ウォーキング」選択法によって生成することができる。この方法は、単量体ドメインライブラリーを提供し、この単量体ドメインライブラリーを第1標的分子に対する親和性についてスクリーニングすることによって実施される。標的に結合する少なくとも1個の単量体が特定されれば、その単量体を新しいライブラリー又は元の単量体ドメインライブラリーの残りの各メンバーに共有結合させる。次に、この多量体(二量体)の新しいライブラリーをより高い親和性で標的に結合する多量体についてスクリーニングして、より高い親和性で標的に結合する多量体を特定することができる。「ウォーキング」単量体選別法では、リンカー長さの制限された互いが付加的に、さらには相乗的にさえも作用することのできる単量体から成る多量体の組立方法を提供する。このウォーキング技術は、高い親和性でもって大きな標的タンパク質に結合することのできる多量体の選択及び組立時に非常に有用である。ウォーキング方法を繰り返して、より多くの単量体を付加することができ、それによって2、3、4、5、6、7、8個又はそれ以上の単量体が互いに結合して成る多量体が得られる。
いくつかの実施形態において、選択された多量体は2個を超えるドメインを含む。そのような多量体は段階的に、例えば、新しい各ドメインを個別に試験して、ドメインの効果を連続的に試験して、生成することができる。例えば、図5を参照されたい。1つの代替えの実施形態において、ドメインを連結して2個を超えるドメインを含む多量体を形成させ、いかに小さな多量体が結合しているか、又は各ドメインがいかに結合しているかに関する予備的知識なしに結合について選択する。
本発明の方法は又、単量体又は多量体を進化させる方法も含む。ドメイン内組み換えを単量体全体にわたって導入するか、又は種々の単量体の一部分を取って、新しい組み換え型ユニットを形成することができる。ドメイン間組み換え(例えば、種々の単量体を多量体中へ、又は多量体間で組み換える。)又は各要素の組み換え(例えば、多量体内の複数の単量体)が達成できる。ライブラリー間での組み換えも検討される。
単量体又は多量体の進化方法は、以下の段階:各核酸が単量体ドメインをコードする、複数の異なる核酸の提供;複数の種々の単量体ドメインを提供する、複数の種々の核酸の翻訳;望ましいリガンド、例えばc−MET又はリガンドの混合物の結合についての複数の種々の単量体ドメインのスクリーニング;選択された単量体ドメインが提供される、望ましいリガンド又はリガンドの混合物に結合する複数の種々の単量体ドメインのメンバーの特定;少なくとも1個の多量体を生成するための、選択された単量体ドメインと少なくとも1個のリンカーとの結合であって、それによって少なくとも1個の多量体が選択された少なくとも2個の単量体ドメイン及び少なくとも1個のリンカーを含む、単量体ドメインとリンカーとの結合;及び望ましいリガンド又はリガンドの混合物のために、選択された単量体ドメインと比較して改善された親和性又は結合活性又は改変された特異性についての少なくとも1個の多量体のスクリーニング;のいずれか、又は全てを含むことができる。
単量体、多量体のいずれにも変異を導入することができる。単量体の改良例としてはドメイン内組み換えが挙げられ、この場合、2個以上(例えば、3、4、5個、又はそれ以上)の単量体部分が、得られる増幅生成物中に変異を導入する(例えば、シャッフリング又はその他の組み換え方法により)ための条件下で別々に増幅されて、それによって単量体の種々の部分について変異体ライブラリーが合成される。中間プライマーの5’末端を、PCR断片の両方が共有する「中間」配列又は「オーバーラップ」配列中に配置することにより、得られた「左」側及び「右」側ライブラリーはオーバーラップPCRにより結合されて、単量体の元のプールの新しい変異体が生成される。次にこれらの新しい変異体は望ましい特性について、例えば、標的に対するパニングを又は機能効果について、スクリーニングを行う。「中間」プライマー(単数又は複数)は、単量体のいずれのセグメントにも一致するように選択することができ、一般には単量体内の骨格又は1つ以上の共通アミノ酸(例えば、Aドメイン中に見出されるようなシステイン)に基づく。
同様に、多量体は、単量体レベルで変異を導入して、次に単量体の変異ライブラリーを組み換えることにより生成される。より大規模には、望ましい特性を有する多量体(単一又はプール)を組み換えて、より長い多量体を形成することができる。一部の例において、単量体又はリンカーに変異を導入して(一般に合成により)ライブラリーを形成する。これは、例えば2個の異なる標的に結合する2個の異なる多量体を用いて得られ、これによって1つの標的に結合する部分と第2の標的と結合する部分とを有する多量体を最終的に選択することができる。
追加の変異が、ドメイン間で長さと組成の異なるリンカーを挿入することで導入することができる。これによってドメイン間の最適なリンカーの選択が可能となる。いくつかの実施形態において、最適な長さ及び組成のリンカーによって、ドメインの最適な結合が可能となる。いくつかの実施形態において、特定の結合親和性(単数又は複数)を有するドメインが種々の異なるリンカーを介して連結され、最適なリンカーが結合試験により選択される。例えば、ドメインは望ましい結合特性について選択され、その後多様なリンカーを含むライブラリーに形成される。次にライブラリーをスクリーニングして、最適なリンカーを特定することができる。あるいは、標的分子に対するドメイン又はリンカーの効果が不明な場合、多量体ライブラリーが形成され得る。
本発明の方法は、複数の単量体ドメインの提供による1個以上の選択された多量体の生成も含む。複数の単量体ドメインは望ましいリガンド又はリガンドの混合物の結合についてスクリーニングされる。望ましいリガンド又はリガンドの混合物と結合する複数のドメインのメンバーを特定して、それによって望ましい親和性を有するドメインを提供する。特定されたドメインを少なくとも1個のリンカーと結合させて多量体を生成するが、この場合、各多量体は選択された少なくとも2個のドメイン及び少なくとも1個のリンカーを含み、この多量体は、望ましいリガンド又はリガンドの混合物について、選択された単量体ドメインと比較して改善された親和性又は結合活性又は改変された特異性についてスクリーニングして、これによって1個以上の選択された多量体を特定する。
いくつかの実施形態において、多量体ライブラリーは、レコンビナーゼに基づく方法で、2つ以上のライブラリー、単量体又は多量体を組み合わせて生成することができ、この場合、各ライブラリーのメンバーは組み換え部位(例えば、lox部位)として含む。原則として、分子的に多様なライブラリーメンバーのより大きなプールは、例えばより高い標的結合親和性や機能活性といった望ましい特性を有するより多くの変異体が存在する。ライブラリーがファージベクターで構築される場合、これを大腸菌に形質転換することができ、ライブラリーのサイズ(109〜1010)は大腸菌の形質転換効率よって制限される。レコンビナーゼ/組み換え部位システム(例、Cre−loxPシステム)及びインビボ組み換えを利用して、大腸菌の形質転換効率によってサイズの制限を受けないライブラリーを生成することができる。
例えば、Cre−loxPシステムを用いて、1010、1011、1012、1013又はそれ以上の多様性を有する二量体ライブラリーを生成することができる。いくつかの実施形態において、1つの未処理の単量体ライブラリー用宿主としての大腸菌及び第2の未処理の単量体ライブラリーを担持する線状ファージが用いられる。この場合、ライブラリーのサイズは、感染性ファージ(1つのライブラリーを保有する)の数及び感染性大腸菌細胞(他のライブラリーを保有する)の数によってのみ制限される。例えば、1012個のファージを1012個の大腸菌細胞(OD600=1にて1L)に感染させることで、1012個もの二量体の組み合わせが生じ得る。
多量体の選択は、単量体の特定について上述した方法を含め、多様な方法を用いて達成する事ができる。他の選択方法は、例えば、リガンドのために選択された単量体ドメインと比較して、改善された親和性又は結合活性若しくは改変された特異性に基づいた選択を含む。例えば、選択は、特定の細胞型への又は一連の関連細胞又はタンパク質型(例えば、種々のウイルス血清型)への選択的結合に基づくことができる。次に、例えばリガンドの結合活性などについて選択された特性の最適化は、本発明で記述の通り、ドメインの組み換えによって、および個々の単量体ドメイン又はリンカードメインのアミノ酸配列又はこれらのドメインをコードするヌクレオチド配列の処理によって、達成できる。
多量体を特定する1つの方法は多量体をディスプレイすることによって達成できる。単量体ドメインと同様に、多量体は場合によって、例えば上述したように、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、ポリソームディスプレイ、ヌクレオチド結合ディスプレイ(例えば、米国特許第6,281,344、6,194,550、6,207,446、6,214,553、6,258,558号参照)および/または細胞表面ディスプレイなどの多様なディスプレイシステム上で発現又はディスプレイされる。細胞表面ディスプレイには大腸菌、酵母又は哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。加えて、複数の結合部位を有する多量体のディスプレイライブラリーは1つのリガンド又は複数のリガンドのための結合活性又は親和性又は改変された特異性についてパニングすることができる。
単量体又は多量体は、二重ハイブリッド法分析を用いて、酵母細胞内での標的結合活性についてスクリーニングすることができる。この種のスクリーニングにおいては、スクリーニングされる単量体又は多量体ライブラリーは、ライブラリーの各単量体又は多量体と酵母の転写活性化因子断片(即ち、Gal4)との融合タンパク質形成を指示するベクターにクローニングされる。「標的」タンパク質をコードする配列は、標的とGal4タンパク質の残部(DNA結合ドメイン)との融合タンパク質を生成するベクターにクローニングされる。第3のプラスミドは、Gal4結合部位のDNA配列の下流にレポーター遺伝子を含む。標的タンパク質に結合できる単量体はGal4活性化ドメインを伴い、それによって機能的なGal4タンパク質を再構成する。レポーター遺伝子上流の結合部位に結合したこの機能的Gal4タンパク質は標的結合タンパク質として、レポーター遺伝子を発現させ、単量体又は多量体を選択する結果となる(Chien et. al.(1991) Proc. Natl. Acad. Sci(USA) 88:9578;Fields S. and Song O.(1989) Nature 340:245参照)。ライブラリー・スクリーニングのための二重ハイブリッド法システムの使用は米国特許第5,811,238号に詳述されている(Silver S.C. and Hunt S.W.(1993) Mol. Biol. Rep. 17:155;Durfee et al.(1993) Genes Devel. 7:555;Yang et al.(1992) Science 257:680;Luban et al.(1993) Cell 73:1067;Hardy et al.(1992) Genes Devel. 6:801;Bartel et al.(1993) Biotechniques 14:920;and Vojtek et al.(1993) Cell 74:205参照)。本発明を実施するためのもう1つの有用なスクリーニングシステムは、大腸菌/BCCP相互作用スクリーニングシステムである(Germino et al.(1993) Proc. Nat. Acad. Sci.(USA) 90:993;Guarente L.(1993) Proc. Nat. Acad. Sci.(USA) 90:1639)。
他のバリエーションは多数の結合化合物の使用を含むので、単量体ドメイン、多量体又はこれらの分子のライブラリーは、異なる結合特異性を有するリガンド又は化合物の多重度について、同時にスクリーニングされ得る。複数の所定のリガンド又は化合物は単一ライブラリーにおいて、又は多数の単量体ドメイン又は多量体に対する連続スクリーニングにおいて、同時にスクリーニングされ得る。1つのバリエーションにおいて、それぞれ別のビーズ(又はビーズのサブセット)上にコードされた複数のリガンド又は化合物を混合して、適切な結合条件下で単量体ドメイン、多量体又はこれらの分子のライブラリーと共にインキュベーションすることができる。次に多数のリガンド又は化合物を含むビーズの収集物を用いて、親和性選択によって、選択された単量体ドメイン、選択された多量体又はライブラリーのメンバーを単離することができる。一般に、続きの親和性スクリーニングのラウンドは、ビーズの同じ混合物、そのサブセット又は1つ又は2つの個々のリガンド又は化合物だけを含むビーズを含むことができる。このやり方は効率的スクリーニングを提供し、実験室のオートメーション化、バッチ処理、ハイスループット・スクリーニング法に対応する。
もう1つの実施形態において、多量体を多数のリガンドへの結合能について同時にスクリーニングすることができ、この場合各リガンドは異なるラベルを含む。例えば、各リガンドは異なる蛍光ラベルで標識されて、多量体又は多量体ライブラリーと同時に接触される。次に、望ましい親和性を有する多量体を望ましいラベルに結合したラベルの有無に基づいて特定する(例えば、FACS選別により)。
単量体ドメイン又は多量体(以下の考察においては便宜上「親和性薬剤」と称する。)いずれかのライブラリーは、多数の異なる型式において多数のリガンドに対して同時にスクリーニング(即ち、パニング)され得る。例えば、多数のリガンドは単純な混合物中で、一列に並べて細胞又は組織上(例えば、細胞又は組織は本発明の単量体ドメイン又は多量体が結合できる多数の分子を提供する)でディスプレイしておよび/または固定してスクリーニングできる。親和性薬剤のライブラリーは場合によって酵母又はファージディスプレイシステム上にディスプレイできる。同様に、望むならばリガンド(例えば、cDNAライブラリー中にコードされる)は酵母又はファージ・ディスプレイ・システム中にディスプレイできる。
最初に、親和性薬剤ライブラリーを複数のリガンドに対してパニングする。場合によって、得られた「ヒット」をリガンドに対して1回以上パニングして、得られた親和性薬剤の集団を濃縮する。
望むならば、個々の親和性薬剤および/またはリガンドの同一性を測定できる。いくつかの実施形態において、親和性薬剤をファージ上にディスプレイする。初回スクリーニングにおいて結合として特定された親和性薬剤を第1部及び第2部に分割する。第1部を細菌に感染させて、用いるファージの種類に依り、プラーク又は細菌コロニーのいずれかを得る。発現したファージを固定化させて、下記に述べるように選択されたファージにディスプレイしたリガンドでもって探索する。
第2部分をビーズと結合させ又は固定化させて、元の混合物中リガンドの少なくとも一部を含むファージディスプレイライブラリーを固定化した第2部分に接触させる。第2部分に結合したファージを引き続き溶出させ、前の段落に記載されている固定化されたファージに接触させる。ファージ−ファージ間相互作用を検出して(例えば、リガンド発現ファージに特異的な単クローン抗体を用いて)、得られたファージポリヌクレオチドを単離することができる。
いくつかの実施形態において、親和性薬剤−リガンドのペアの同一性を測定する。例えば、親和性薬剤とリガンドの両方をファージ又は酵母上にディスプレイする場合、ペア由来のDNAを単離し、配列決定できる。いくつかの実施形態において、リガンド及び親和性薬剤に特異的なポリヌクレオチドを増幅させる。各反応の増幅プライマーは相補的な5’配列を含むことができるので、得られた増幅生成物を融合させて、それによって親和性薬剤の少なくとも一部分及びリガンドの少なくとも一部分をコードするポリヌクレオチドを含むハイブリッドポリヌクレオチドを形成させる。得られたハイブリッドを用いて、親和性薬剤又はリガンド(例えば、cDNAにコードされる)ポリヌクレオチドライブラリーを探索し、親和性薬剤及びリガンドの両方を特定することができる。
上記の方法は「ウォーキング」と容易に組み合わせることができ、それによって、各々がリガンド混合物中の1つのリガンドに結合する複数の多量体を同時に生成し、特定することができる。これらの実施形態において、親和性薬剤(単量体ドメイン又は多量体)の第1ライブラリーを複数のリガンドに対してパニングして、溶出される親和性薬剤を親和性薬剤の第1又は第2ライブラリーと結合させ、多量体の親和性薬剤(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9個又はそれ以上の単量体を含む)のライブラリーを形成し、続いてこれらを複数のリガンドに対してパニングする。この方法を繰り返すことにより、より大きな多量体の親和性薬剤の生成を続けることができる。単量体ドメインの数を増加することにより、特定の標的に対する親和性及び結合活性を増大させることができる。例えば、発明者らは、CD28と結合する単量体ドメインの三量体が二量体よりも高い親和性を有することを見出しており、二量体は単一のCD28結合単量体ドメイン単独よりも高い親和性を有する。無論、各段階で、パニングを場合によって繰り返して、重要な結合剤に濃縮させる。いくつかの場合、ウォーキングは、単量体の末端に組み換え部位(例えば、lox部位)を挿入し、レコンビナーゼ媒介のイベントにより単量体ライブラリーを組み換えることで促進される。
上記の方法で選択された多量体は、例えば選択された多量体の組み換え又はシャッフリング(組み換えは多量体間又は多量体内又は両方で起こり得る)、選択された多量体への変異導入などによって、さらに処理することができる。この結果改変多量体が生成し、これは次にスクリーニングされ、選択された多量体と比べて向上した特性を有するメンバーについて選択されることができ、これによって選択された改変多量体が生成する。
本明細書の記述を考慮すれば、以下のプロセスが次に続き得ることは明らかである。天然型又は非天然型の単量体ドメインを組み換えるか又は変異体を形成することができる。場合によって、ドメインは目的とする宿主内で免疫原性となる可能性の低いこれらの配列について初め又は後に選択される。場合によって、組み換えられたドメインを含むファージライブラリーは目的の親和性についてパニングする。ファージによって発現された単量体ドメイン又は多量体は標的に対するIC50についてスクリーニングされ得る。ヘテロマー多量体又はホモマー多量体を選択できる。選択されたポリペプチドは、例えばヘテロ多量体又はホモ多量体の標的を含む任意の標的に対するそれらの親和性について選択され得る。
上記及び下記の方法により生成したリンカー、多量体又は選択された多量体は、本発明の特徴である。多量体を含むライブラリー、例えば本発明の方法により調製され又は選択された約100、250、500個又はそれ以上のメンバーを含むライブラリーが提供される。いくつかの実施形態において、ライブラリーのメンバーを含む1つ又はそれ以上の細胞もまた含まれる。組み換え型ポリペプチドのライブラリー、例えば約100、250、500個又はそれ以上の種々の組み換え型ポリペプチドを含むライブラリーもまた本発明の特徴である。
本発明の組成物は、例えば組み換え型のポリペプチドなどの親和性物質のマトリクスに結合することができる。親和性物質の例としては、例えばビーズ、カラム、固形支持体などが挙げられる。
VII.治療的処置法及び予防的処置法
本発明は、また、上記の本発明の1つ以上の核酸又はポリペプチド(又は薬剤的に受容できる賦形剤及び1つ以上のそのような核酸又はポリペプチドを含む組成物)をインビボ又はエキソビボで、例えばヒト、霊長類、マウス、豚、雌ウシ、ヤギ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、ヒツジを含む哺乳動物、鳥類(例えば、ニワトリ又はアヒル)、魚類などの非哺乳類の脊椎動物、及び無脊椎動物を含む対象に投与することによる、疾患又は障害を治療的に又は予防的に処置する方法も含む。
本発明のc−MET結合単量体ドメイン又は多量体を含むc−MET拮抗薬は、c−METを発現するヒトの癌の治療に有用である。c−METおよび/またはそのリガンドであるHGFを発現することで知られるヒトの癌の概要は“Birchmeier, C., Birchmeier, W., Gherardi. E.&Vande Woude, G. F. Met, metastasis, motility and more. Nat Rev Mol Cell Biol 4, 915−925(2003)”のP922表1中に見出だすことができる。c−MET拮抗薬はこれら全ての癌において治療的価値がある。より具体的には、c−MET拮抗薬は、膵臓癌、中皮腫、骨髄腫、頭頚部癌、肺癌(NSCLC)、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、神経膠芽腫および骨肉腫において、未だ対処されていない重要な医療上の必要性を満たす際に有用である。他の典型的な癌としては、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、胆嚢癌、前立腺癌又は甲状腺癌、骨肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、MFH/線維肉腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、リンパ腫、成人T細胞白血病、神経膠芽腫、星状細胞腫、メラノーマおよびウィルムス腫瘍が挙げられる。
個々の癌は、例えば本発明のc−MET結合単量体ドメイン又は多量体から成るc−MET拮抗薬の可溶性製剤を、場合によって例えば生物学的又は化学療法用の1つ以上の追加治療単位との組み合わせで、週1回静脈注射することで処置することができる。
本発明の1つの態様において、エキソビボの方法において、目的の対象の1つ以上の細胞又は細胞集団(例えば、腫瘍細胞;腫瘍組織サンプル;臓器細胞;血液細胞;皮膚、肺、心臓、筋肉、脳、粘膜、肝臓、腸、脾臓、胃、リンパ系、子宮頚部、膣、前立腺、口腔、舌などの細胞)を採取して又は対象から摘出して、疾患、障害、又は他の症状を予防的又は治療的に処置する際に有効である、これらを、一定量の本発明の選択された単量体ドメインおよび/または多量体と接触させる。次にこの接触させた細胞を、対象の採取部位又は処置を受ける対象の別の目的となる部位(例えば、上記で規定した部位を含む)に戻す又は送達する。望むならば、この接触された細胞は対象中の目的となる組織、器官、又は系統の部位(上記の部位全てを含む)に標準的およびよく知られた移植方法を用いて移植することができる、又は例えば、標準的な送達又は輸血技術を用いて血液系又はリンパ系へ送達することができる。
本発明は又、対象中の目的の1つまたはそれ以上の細胞又は細胞集団を、疾患、障害又は他の症状を、予防的又は治療的に処置する際に有効である、一定量の本発明の選択された単量体ドメインおよび/または多量体と直接又は間接的に接触させるインビボの方法も提供する。直接的な接触/投与形式において、選択された単量体ドメインおよび/または多量体は、一般に、局所投与、注射(例えば、注射針や注射器を用いて)又はワクチン又は遺伝子銃送達により、組織、器官又は皮膚部位内へ押し込むなどの多様な形式のいずれかにより、処置される細胞又は目的の組織部位(例えば、腫瘍細胞;、腫瘍組織サンプル;臓器細胞;血液細胞;皮膚、肺、心臓、筋肉、脳、粘膜、肝臓、腸、脾臓、胃、リンパ系、子宮頚部、膣、前立腺、口腔、舌などの細胞)へ直接、投与又は移殖される。選択された単量体ドメインおよび/または多量体は、例えば筋内投与、皮内投与、真皮下投与、皮下投与、経口投与、腹腔内投与、髄腔内投与、静脈内投与もしくは体腔内留置(例えば、外科手術中などを含む)により、又は吸入投与もしくは膣内投与もしくは直腸投与により送達することができる。
インビボの間接的な接触/投与形式において、選択された単量体ドメインおよび/または多量体は、一般に、1つまたはそれ以上の細胞又は細胞集団に、処置が促進される本発明のポリペプチドを直接に接触又は投与することにより、上述の部位(例えば、皮膚細胞、臓器系、リンパ系、血液細胞系など)を含む目的の処置される細胞又は組織部位に間接的に投与又は移殖される。例えば、対象の体内の腫瘍細胞は、血液又はリンパ系、皮膚又は臓器を十分な量の選択された単量体ドメインおよび/または多量体と接触させ、選択された単量体ドメインおよび/または多量体を目的の部位(例えば、体内の組織、器官、目的の細胞、血液、リンパ系)に送達して、有効な予防的又は治療的な処置の結果となるように処置することができる。このような接触、投与、移殖は一般に、上記の投与経路又は投与方法の1つ以上を用いて実施される。
もう1つの態様において、本発明は、対象の目的の1つまたはそれ以上の細胞又は細胞集団(例えば、腫瘍細胞;腫瘍組織サンプル;臓器細胞;血液細胞;皮膚、肺、心臓、筋肉、脳、粘膜、肝臓、腸、脾臓、胃、リンパ系、子宮頚部、膣、前立腺、口腔、舌などの細胞)を採取して又は被検者から摘出して、1つまたはそれ以上の細胞又は細胞集団を、疾患、障害又は他の症状を予防的又は治療的に処置する際に有効な生物活性を有する目的のポリペプチド(例えば、選択された単量体および/または多量体)をコードする本発明の核酸配列を含むポリヌクレオチドと接触させて形質転換させるエキソビボの方法を提供する。1つまたはそれ以上の細胞又は細胞集団を十分量のポリヌクレオチドコンストラクト及び前記核酸配列の発現を制御するプロモーターと接触させ、それによってポリヌクレオチドコンストラクト(及びプロモーター)を細胞(単数又は複数)内へ取り込ませ、本発明の標的核酸配列を十分に発現させて、その結果、疾患、障害又は他の症状を予防的又は治療的に処置する際に有効である、選択された単量体ドメインおよび/または多量体をコードする生物活性を有するポリペプチドの一定量を生成させる。ポリヌクレオチドコンストラクトは、本発明の核酸配列の発現を制御するプロモーター配列(例えば、CMVプロモーター配列)および/または、望むなら本発明のもう1つのポリペプチドの少なくとも1個またはそれ以上、サイトカイン、アジュバント、同時刺激分子又は目的の他のポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の追加のヌクレオチド配列を含むことができる。
形質移入後、形質転換された細胞はそれらが採取された、対象中の組織部位又は系統、又は対象中の処置を受ける別の部位(例えば、腫瘍細胞;腫瘍組織サンプル;臓器細胞;血液細胞;皮膚、肺、心臓、筋肉、脳、粘膜、肝臓、腸、脾臓、胃、リンパ系、子宮頚部、膣、前立腺、口腔、舌などの細胞)に戻す、送達する又は移殖する。望むならば、標準的なおよび公知の移植技術を用いて、対象中の目的とする組織、皮膚、器官又は身体系に細胞を移植するか又は標準的な送達又は移入技術を用いて、血液又はリンパ系に送達できる。形質転換された細胞のこのような送達、投与又は移殖は、一般に、上記の投与経路又は投与方法の1つまたはそれ以上を用いて実施される。標的の核酸分子の発現は自然に生じ得又は誘発することができ(以下で詳述するように)、コードされたポリペプチドの発現量は部位又は組織系の疾患又は症状の処置のために十分かつ有効である。
もう1つの態様において、本発明は、1つ以上の対象の、目的の細胞又は細胞集団(例えば、上記の、細胞、細胞系及び対象)が対象の体内で、細胞(単数又は複数)又は細胞集団と、被検者の生物活性なポリペプチド(例えば、選択された単量体および/または多量体)をコードし疾患、障害又は他の症状を予防的又は治療的に処置する際に有効である本発明の核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトとを接触させることにより形質転換される、インビボでの方法を提供する。
ポリヌクレオチドコンストラクトは疾患又は障害を被っている細胞に直接投与し又は移植することができる(例えば、上記の1つ以上の投与経路又は方法を用いる直接接触により)。あるいは、ポリヌクレオチドコンストラクトは、上記の1つまたはそれ以上の投与経路又は方法を用いて、最初直接に、疾患のない細胞(単数又は複数)又はその他の疾患を被っている細胞を生物活性なポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクト及び核酸配列の発現を制御するプロモーターの十分な量と接触させることにより、疾患又は障害を被っている細胞(単数又は複数)に間接的に投与又は導入することができ、それによってポリヌクレオチドコンストラクト(及びプロモーター)が細胞(単数又は複数)中に取り込まれ、本発明の核酸配列の十分な発現の結果、疾患又は障害を予防的又は治療的に処置するために効果的な量の生物活性なポリペプチドが生成し、その際ポリヌクレオチドコンストラクト又は発現されたポリペプチドが自然に又は自動的に対象の身体の最初のデリバリー部位、系、組織又は器官から対象の身体の罹患部位、組織、器官、系に移動する(例えば、血液又はリンパ系を介して)。ポリペプチドの発現量が部位又は組織系での疾患又は症状の処置に十分であり有効であるように、標的核酸の発現は自然に生じ得、又は誘発することができる(下記で詳述するように)。ポリヌクレオチドコンストラクトは、核酸配列の発現を制御するプロモーター配列(例えば、CMVプロモーター配列)および/または、望むなら本発明のもう1つのポリペプチドの少なくとも1個またはそれ以上、サイトカイン、アジュバント、同時刺激分子又は目的の他のポリペプチドをコードする1つ以上の追加のヌクレオチド配列を含むことができる。
上記のインビボおよびエキソビボでの各処置方法において、賦形剤及び本発明のポリペプチド又は核酸を含む組成を投与又は送達することができる。1つの態様において、薬剤的に受容可能な賦形剤及び本発明のポリペプチド又は核酸を含む組成物を、上記のような対象に疾患又は障害を処置するための有効量を投与又は送達する。
もう1つの態様において、上記のin vivo、ex vivoでの各処置方法において、細胞(単数又は複数)又は被検者に投与されるポリヌクレオチドの量は、被検者の1つ以上の細胞に前記ポリペプチドが取り込まれて、前記核酸配列が十分に発現する結果、免疫原(例えば、抗原)により誘発される免疫応答を含む、対象における免疫応答を高めるために有効な量の生物活性なポリペプチドが生成するような量であることができる。もう1つの態様においては、そのような方法の各々に対して、細胞(単数又は複数)又は被検者に投与されるポリペプチドの量は、免疫原(例えば、抗原)により誘発される免疫応答を含む、対象中の免疫応答を高めるために十分な量であることができる。
さらにもう1つの態様において、ポリヌクレオチドコンストラクト(又はポリヌクレオチドコンストラクトを含む組成物)を、生理的に活性なポリペプチドを対象に送達するために用いるインビボ又はエキソビボでの処置方法において、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現は、誘発可能なオンジーン及びオフジーン発現システムを用いて誘発することができる。このようなオンジーン及びオフジーン発現システムの例として、Tet−OnTM Gene Expression System及びTet−OffTM Gene Expression Systemが各々挙げられる(各システムの詳細な記述はClontech Catalog 2000、110−111ページを参照されたい)。その他の制御可能又は誘発可能なオンジーン及びオフジーン発現システムは当業者に公知である。このようなシステムによって、ポリヌクレオチドコンストラクトの標的核酸の発現は、正確、可逆的および定量的に制御することができる。標的核酸の遺伝子発現は、例えば標的核酸を含むポリヌクレオチドコンストラクトを含む、安定な形質移入された細胞が目的の組織部位、器官又は系に接触させるために送達又は移殖された後に、誘発することができる。このようなシステムは、標的核酸の発現を遅らせる、又は正確に制御することが有利であるような処置方法や形式において特に有利である(例えば、手術の完了および/または手術後の治癒に時間の余裕を与えるために;標的核酸を含むポリヌクレオチドコンストラクトが処置される部位、細胞、系、又は組織に到達するための時間の余裕を与えるために;コンストラクトで形質転換された細胞を含む移植片が、それがスプライスされた又は付着された組織又は器官に取り込まれるための時間の余裕を与えるために、など)。
VIII.付加的な多量体の使用
本発明の多量体の可能な応用は多様であり、親和性物質が望ましい場合のいかなる使用をも含む。
いくつかの場合において、単量体又は多量体のペアを選択して、同じ標的に結合させる(即ち、サンドイッチに基づく分析中における使用のために)。適合する単量体又は多量体のペアを選択するために、一般に2つの異なる単量体又は多量体を標的タンパク質に同時に結合させることができる。そのようなペアを特定するための1つのアプローチには以下
(1)前もって標的タンパク質と結合させるために選択されたファージ又はタンパク質混合物の固定化、
(2)固定化されたファージ又はタンパク質への標的タンパク質の接触及び洗浄、
(3)結合した標的へのファージ又はタンパク質混合物の接触及び洗浄、及び
(4)固定化されたファージ又はタンパク質の溶出なしでの、結合したファージ又はタンパク質の溶出、
が含まれる。
本発明の多量体又は単量体ドメインの1つの使用は、検出又は他の親和性に基づくアッセイにおける抗体又は他の親和性薬剤の置換のための使用である。このように、いくつかの実施形態において、単量体ドメイン又は多量体は、混合物中の標的以外の成分に結合する能力に対して選択される。一般的なアプローチは、アッセイの間のサンプル組成の模倣を含む、アッセイの条件に非常によく似た条件下での親和性選択の実施を含み得る。このように、選択の段階は、標的リガンドを含まない混合物への単量体ドメイン又は多量体の接触、及び混合物に結合する任意の単量体ドメイン又は多量体に対する選択を含み得る。このように、アッセイのサンプル(血清、血液、組織、細胞、尿、精液など)を代表する混合物(抗体、単量体ドメイン又は多量体を用いて枯渇させることができる標的リガンドを含まない)は遮断薬として用いることができる。このようなサブトラクションは、例えば標的には結合するが他の血清タンパク質又は非標的組織には結合しない医薬品タンパク質の生成に有用である。
例えば、本発明は拮抗薬生成への応用に用いることができ、その場合選択された単量体ドメイン又は多量体が2つのタンパク質、例えばMetのα鎖とβ鎖との間のおよび/またはMetとHGFとの間の相互作用を遮断する。場合によって、本発明は作用薬を生成することができる。例えば、2つの異なるタンパク質(例えば酵素と基質)を結合させる多量体は、例えば酵素活性および/または基質転換を含むタンパク質機能を高めることができる。
いくつかの実施形態において、単量体ドメインはリガンドの阻害、リガンドのクリアランス又はリガンドの刺激のために用いる。これらの方法において可能なリガンドには、例えばHGFが含まれる。
受容体に結合するリガンドの阻害が望ましい場合、単量体ドメインとして、リガンド(例えば、HGF)の受容体に接触するリガンドの部分でリガンドに結合するもの、又はリガンドに接触する受容体の部分で受容体に結合するものが選択され、それによってリガンド−受容体の相互作用を防止する。単量体ドメインは、場合によって、望むならば半減期延長剤に結合することができる。
リガンドのクリアランスとは、体液中の可溶性リガンドの半減期を調節することを指す。例えば、半減期延長剤を欠く殆んどの単量体ドメインは短い半減期を有する。このように、単量体ドメインがリガンドへ結合することによってリガンドの半減期が短縮され、それによって複合体が腎臓を通過できる最大サイズ以下(約50又は40kD未満)である限り、腎臓を介してリガンドを排除することによって、リガンドの濃度が低下する。単量体ドメインが結合するリガンド(例えば、HGF)の部分は一般に問題にならないが、リガンドがその受容体(例えば、Met)に結合する部分でリガンドに結合することが有益であり、それによってリガンドの効果をさらに阻害する。この方法は、血流中の任意の分子の濃度を低下させるために有用である。
あるいは、半減期延長剤に結合する第1の単量体ドメイン、及びリガンドの受容体には結合しないリガンドの部分に結合する第2の単量体ドメインを含む多量体を用いて、リガンドの半減期を延長することができる。
他の実施態様において、リガンドに結合する第1の単量体ドメインおよび受容体に結合する第2の単量体ドメインを含む多量体は、受容体に対するリガンドの有効な親和性を増大するために用いることができる。
他の実施態様において、受容体に結合する少なくとも2つの単量体を含む多量体は、二つの受容体が多量体に結合することによって2つの受容体を隣接させるために用いられ、それによって受容体が活性化する。
本発明の可能性ある用途の更なる例は、薬物結合(例えば、標的化のための放射性ヌクレオチドの結合、薬物の半減期延長のための医薬物結合、過量服用治療に対する制御された薬物結合および薬物中毒治療法)、免疫機能の調節(例えば、CTLA−4のような受容体に結合することによる免疫原性の阻止、CD80のような受容体に結合することによる免疫原性の亢進、またはFc型結合による補体活性化)および特異な送達(例えば、リンカーによる分割による徐放、電子伝達ドメイン、二量体化ドメイン、または下記との特異的結合:細胞侵入機構ドメイン、FcRのようなクリアランス受容体、経粘膜輸送のためのplgRのような経口送達受容体、および、トランスフェリンRのような血液脳輸送受容体)が可能である単量体ドメインおよびその多量体を含む。
更なる実施態様において、単量体または多量体は、検出可能ラベル(例えばCy3、Cy5、その他)に連結できまたはリポータ遺伝子生成物(例えば、CAT、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスホターゼ、GFP、その他)に連結できる。
Metに結合する本発明の単量体または多量体は、更にMetの検出が有用な診断および予測の用途に使用し得る。例えば、Metの検出は乳癌の予後を予測するために用いることができ、正常組織よりも高いMetの量は予後不良を示す。米国特許第6,673,559号を参照されたい。
IX.単量体ドメインおよび/または多量体の核酸およびポリペプチドの更なる処理
上記のように、本発明のポリペプチドは、変化させることができる。これらのポリペプチドをコードしている修飾あるいは変化した核酸配列を生成するための多様な生成手順についての説明は、本願明細書において記載されており、参照文献が引用されている。
本発明のもう1つの態様は、単量体ドメイン、選択された単量体ドメイン、多量体および/または選択された多量体をコードする核酸のクローニングおよび発現を含む。このように、多量体ドメインは、当技術分野で公知の発現系を用いて単一タンパク質として合成することができる。ベクター、プロモータおよび単量体ドメイン、選択された単量体ドメイン、多量体および/または選択された多量体のような核酸を発現することに関連する多くの他の主題の用途を包含する、本願明細書において有用な分子生物学的な技術を記載する一般文献は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger);Sambrook et al., Molecular Cloning − A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989(“Sambrook”) and Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley&Sons, Inc.,(supplemented through 1999) (“Ausubel”)を含む。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Q−レプリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼ媒介技術(例えばNASBA)を含む、単量体ドメインおよび多量体ドメインをコードする核酸の識別、単離およびクローニングに有用なインビトロ増幅方法を介する、当業者を指導するのに十分な技術の例は、次の文献:Berger, Sambrook, and Ausubel, as well as Mullis et al,(1987) 米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA(1990) (Innis);Arnheim&Levinson(October 1, 1990) C&EN 36−47;The Journal Of NIH Research(1991) 3, 81−94;(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 1173;Guatelli et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874;Lomell et al.(1989) J. Clin. Chem 35, 1826;Landegren et al,(1988) Science 241, 1077−1080;Van Brunt(1990) Biotechnology 8, 291− 294;Wu and Wallace,(1989) Gene 4, 560;Barringer et al.(1990) Gene 89, 117, and Sooknanan and Malek(1995)Biotechnology 13:563−564に見られる。インビトロで増幅された核酸のクローニングの改良方法は、Wallace et al.、米国特許第5,426,039号に記載されている。PCRによる大きな核酸の増幅の改良方法は、Cheng et al.(1994) Nature 369:684−685およびそこで引用される最高40kbのPCRアンプリコンが発生する文献に要約されている。当業者は、本質的にすべてのRNAが、制限分解、PCR拡大および逆転写酵素およびポリメラーゼを使用するシーケンシングに適した二本鎖DNAに変えられ得ることを認識する。前述のAusubel、Sambrook およびBergerを参照されたい。
本発明はまた、宿主細胞への本発明のベクターの導入および組み換え技術による、本発明の単量体ドメイン、選択された単量体ドメイン、多量体および/または選択された多量体の産生に関する。宿主細胞は、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターといった本発明のベクターによって遺伝子組み換え(すなわち、形質導入されるか、形質転換されるかまたは形質移入される)が行われる。ベクターは、例えばプラスミド、ウィルス粒子、バクテリオファージ、その他の形態で存在し得る。遺伝子組み換えが行われた宿主細胞は、プロモータの活性化、形質転換体の選択または単量体ドメイン、選択された単量体ドメイン、多量体および/または目的の選択された多量体遺伝子を増幅するために適切に改良された従来の栄養媒体で培養され得る。培養条件、例えば温度、pHなどは発現のために選択された宿主細胞に以前に使用されたものであって、当業者および本明細書の引例、例えば、Freshney(1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley−Liss, New York、およびそこに引用される文献において明らかである。
上記のように、本発明のポリペプチドは、また、非動物細胞(例えば植物、イースト、真菌、バクテリアなど)において生産できる。実際、ずっと述べた様に、ファージディスプレー表示はこの種のポリペプチドを生成するための特に適切な技術である。Sambrook、BergerおよびAusubelに加えて、細胞培養に関する詳細は、Payne et al.(1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley& Sons, Inc. New York, NY;Gamborg and Phillips(eds) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York) and Atlas and Parks(eds) The Handbook of Microbiological Media(1993) CRC Press, Boca Raton, FL.において見られる。
本発明はまた、薬理特性を改良するための、免疫抗原性を減らすためのもしくは細胞または組織(例えば、血液脳関門によるまたは経皮による)に多量体および/または単量体ドメインの輸送を容易にするための、単量体ドメイン、イムノ−ドメインおよび/または多量体の変更を含む。変更のこれらの型は、様々な修飾(例えば砂糖−基の付加またはグリコシル化)、PEGの付加、特定のタンパク(例えばHSAまたは他の血清蛋白質)に結合するタンパク・ドメインの付加、細胞内外への移動または輸送をシグナリングする蛋白破片または配列の付加である。追加的な成分が、また、多量体および/または単量体ドメインの性質を処理するために、多量体および/または単量体ドメインに加えられ得る。様々な成分もまた加えることができ、これらには、例えば、周知の受容体(例えばFc受容体を結合するFc−部位タンパクドメイン)に結合するドメイン、毒素または毒素部分、多量体または単量体ドメインを活性化するために場合によって切断することができるプロドメイン、リポータ分子(例えば緑の蛍光性タンパク)、リポータ分子(例えば放射線療法のための放射性核種、ビオチンまたはアビジン)に結合する成分または修飾の組み合わせが含まれる。
X.動物モデル
本発明の別の態様は、単量体または多量体ドメインの免疫抗原性を試験する特定の非ヒト動物モデルの開発である。そのような特定の非ヒト動物モデルを作成する方法は、以下を含む:タンパクの同じファミリーからの複数のヒトタンパク質をコードしている遺伝子を含むベクターをレシピエントである非ヒト動物の少なくともいくつかの細胞に導入し、ここで少なくともいくつかの細胞で機能的なプロモータに遺伝子が操作可能な状態で連結され、タンパク質の同じファミリーから複数のヒト蛋白を発現することができる遺伝子が組み換えられた非ヒト動物が得られるようにベクターが細胞に導入される。
本発明の実施において使用される適切なヒト以外の動物は、ヒトを除く(例えばハツカネズミ、ラット、ウサギ、ヒツジ、など)全ての脊椎動物を含む。通常、タンパクのファミリーのメンバーの複数には、そのファミリーおよび通常少なくとも10のファミリーメンバーの少なくとも2つのメンバーを含む。いくつかの実施形態において、その複数はタンパクのファミリーの全ての周知のメンバーを含む。使用可能な典型的な遺伝子は、本明細書において記載されている他のドメイン・ファミリーと同様にそれらのコード化単量体ドメイン、例えばLDL受容体クラスA−ドメイン・ファミリーのメンバー、EGF様ドメイン・ファミリーを含む。
本発明の非ヒト動物モデルは、非ヒト動物モデルによって発現されるタンパクの同じファミリーに由来する単量体または多量体ドメインの免疫原性をスクリーニングするために使うことができる。本発明は、上記の方法に従って作られる非ヒト動物モデルおよび、その体細胞および細菌細胞がタンパク(例えば本明細書において記載されている単量体ドメイン)の同じファミリーからの複数のヒト蛋白をコードしているDNA分子を含み、発現するトランスジェニック非ヒト動物を含み、このDNA分子は胎生期にトランスジェニック非ヒト動物に導入され、このDNA分子はこのDNA分子が導入された少なくともいくつかの細胞で、プロモーターに操作可能な状態で連結される。
LDL受容体クラスA−ドメイン由来の結合蛋白質のスクリーニングに役立つマウスモデルの例は、次のように記載される。野生型ヒトLDL受容体クラスA−ドメイン単量体をコードしている遺伝子クラスターは、PCRを使用してヒト細胞から増幅される。200の異なるA−ドメインのほぼ全ては、それぞれ約7kbの3つの別のPCR増幅反応によってのみ増幅できる。これらのフラグメントは、上記の方法に従ってトランスジェニックマウスを作成するために用いる。トランスジェニックマウスはヒトA−ドメインを「自己」と認識し、したがってA−ドメインに関してヒトの「自己」を模倣する。個々のA−ドメイン由来の単量体または多量体は、これらのマウスにA−ドメイン由来の単量体あるいは多量体を注入し、ついで発生する免疫反応(または反応の欠如)を分析することで試験される。マウスは、マウス抗ヒト反応(MAHR)を呈したかどうか測定するために試験される。MAHRの発生をもたらさない単量体および多量体は、ヒトに投与されるときに非免疫原性であると考えられる。
歴史的に、トランスジェニックマウスのMAHR検査は、その単一タンパク質についてトランスジェニックであるマウスの個体タンパクを試験するために用いる。対照的に、上記の方法は、ヒト・タンパクの全てのファミリーを「自己」として認識し、また、各々が非常に多様な結合活性および使用が可能な莫大な数の変種タンパクを評価するために用いることができる非ヒト動物モデルを提供する。
XI.キット
本方法(概して純粋な形態の)で必要な成分および成分を保つためのキット成分(包装物質、成分を使用するための指示および/または方法、一つ以上の容器(反応管、カラム、その他))を含むキットは、本発明の特徴である。本発明のキットは、単量体または多量体の多量体ライブラリーまたは単一の型を含むことができる。このキットはまた、検出ラベルをつけた分子を含む、例えば緩衝剤または試薬のような検出を容易にする標的分子結合を促進することに適している試薬を含むことができる。単量体ドメイン等へのリガンド結合を校正するための標準は、また、本発明のキットに含めることができる。
本発明はまた、アッセイを実施するために商業上価値ある結合アッセイおよびキットを提供する。本発明のいくつかのアッセイにおいて、単量体ドメイン、イムノ−ドメインおよび/または多量体の結合を検出するために、一つ以上のリガンドを使用する。このようなアッセイは、技術、例えばフローサイトメトリ、蛍光顕微鏡検査法、プラズモン共振等の単量体ドメインおよび/または多量体へのリガンドの結合を検出するための当技術分野の方法に基づく。
アッセイに基づくキットも提供される。このキットは、通常容器および一つ以上のリガンドを含む。このキットは、場合によって、アッセイ、追加的な検出試薬、緩衝剤またはこれらの成分のいずれかの使用のための指示等を含む。あるいは、本発明の単量体ドメインおよび/または多量体の発現のために、このキットは細胞、ベクター(例えば、本発明のポリペプチドを含む発現ベクター、分泌ベクター)を含むことができる。
更なる態様において、本発明は本明細書にけるすべての組成物、単量体ドメイン、イムノ−ドメイン、多量体、細胞、細胞培養、装置、装置構成部分またはキットの用途、または本明細書におけるすべての方法またはアッセイの実施、および/または本明細書におけるアッセイまたは方法を実施するためのすべての装置またはキットの使用、および/または本明細書における細胞、細胞培養、組成物または他の特徴の治療製剤としての使用を提供する。本明細書において記載されている治療のための治療製剤としてのすべての成分の製造もまた提供される。
XII.統合システム
本発明は、単量体ドメイン、選択された単量体ドメイン、多量体および/または選択された多量体およびポリペプチドをコードしている核酸に対応する文字列を含む、コンピューターおよび、コンピューター可読媒体および統合システムを提供する。これらの配列は、コンピューター内での組み換え操作によって、または標準的な配列アライメントもしくはワープロソフトによって操作することができる。
例えば、類似性の相違するタイプおよび、さまざまな厳密性の検討および、文字列長は、本明細書の統合システムの中で検出され、認識することができる。例えば、多くの相同性の決定方法が、バイオポリマーの配列の比較解析、ワープロのスペルチェック、およびさまざまなデータベースのデータ検索のために設計されている。天然のポリヌクレオチドの4つの主な核酸塩基間の、二重らせんペアワイズ補完の相互作用についての知見によって、相補的に同一のポリヌクレオチド文字列のアニーリングをシュミレートするモデルが、配列アライメントの基礎として、または本明細書に記載の配列に対応する文字列について通常実施される他の操作としてもまた使用することができる(例 ワープロ操作、配列または部分配列文字列を含む図の作成など)。配列の類似性を算出するための遺伝的アルゴリズムを有するソフトウェアパッケージの例として、ブラスト(BLAST)があり、配列の中で対応する文字列を入力することにより本発明に適合できる。
ブラスト(BLAST)は、Altschul et al,(1990) J. MoI. Biol. 215:403−410に記載されている。ブラスト(BLAST)解析を行うソフトウェアは、米国生物工学情報センター(NCBI)を通して公的に利用できる(www.ncbi.nlm.nih.govにて利用可能)。このアルゴリズムは、クエリ配列中で長さWの短いワードを識別することにより、ハイスコアの配列ペア(HSPs)を第一に識別し、データベース配列の同じ長さのワードと位置がそろった時、正の閾値Tに一致するかまたはそれを満たす。Tは、近隣ワードスコア閾値を指す(Altschul et al, 上記)。これらの最初の近隣ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPsを見つけるための開始検索の種として機能する。ついでワードヒットは、累積するアライメントスコアが増加しうる限りそれぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関してパラメーターM(一致する残基ペアのためのリワードスコア;通常>0)とN(一致しない残基のためのペナルティスコア;通常<0)を使って算出される。アミノ酸配列に関して、累積スコアを算出するためにスコアリングマトリックスが用いられる。累積アラインメントスコアがその最大到達量から分量X減少する時、累積アラインメントスコアが、一つ以上の負のスコアの残余アライメントの蓄積のためにゼロまたはそれを下回った時、またはどちらか一方の配列が終点に達した時、それぞれの方向のワードヒットの延長が停止する。ブラスト(BLAST)アルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アライメントの感度とスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチドの配列のための)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=―4および両方のストランドの比較を初期値として使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、初期値としてワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915参照)。
有用な配列アライメントアルゴリズムの付加的な例に、PILEUPがある。PILEUPは、連続的なペアワイズアライメントを使用して、関連する配列のグループから多重配列アライメントを作成する。アライメントを作成するために使用された、クラスタリング関係を示すツリーもまた、プロットすることができる。PILEUPは、Feng&Doolittle,(1987)J.Mol.Evol.35:351−360の連続的アライメント法の簡易化手法を使用する。使用された手法は、Higgins&Sharp,(1989)CABIOS 5:151−153により記述された方法に類似する。このプログラムは、例えば最大で5,000文字の最大長の300配列までを、整列することができる。マルチプルアライメントの手順は、2つの最も類似した配列のペアワイズアライメントから始まり、2つの整列された配列のクラスターを作る。このクラスターは、ついで次の最も関連する配列または整列された配列に整列することができる。配列の2つのクラスターは、2つの個々の配列のペアワイズアライメントの単純伸長により整列することができる。最終アライメントは、一連の連続的なペアワイズアライメントにより達成される。このプログラムはまた、クラスタリング関係のデンドグラムまたは系統樹を描くために使われうる。このプログラムは配列比較領域に対して特定の配列とそれらのアミノ酸またはヌクレオチドの座標を指定し実行される。例えば、単量体ドメインのファミリーの中で保存されたアミノ酸を決定するために、またはファミリーの中で単量体ドメインの前記配列を比較するために、本発明の前記配列またはコードしている核酸は、構造機能情報を提供するように整列される。
一つの態様において、コンピュータシステムは、単量体ドメインに対応する文字列のコンピューター内で配列の組み換えまたは入れ替えを行うために使用される。そのような方法の種々は、1999年2月5日に提出されたSelifonovとStemmerによる「Methods For Making Character Strings, Polynucleotides&Polypeptides Having Desired Characteristics」(USSN 60/118854)と、1999年10月12日に提出されたSelifonovとStemmerによる「Methods For Making Character Strings, Polynucleotides&Polypeptides Having Desired Characteristics」(USSN 09/416,375)の中で説明されている。要するに、遺伝的オペレーターは、例えば、変異、組み換え、死などの遺伝的事象を模倣することにより、遺伝的アルゴリズムの中で一定の配列を変換するために用いられる。例えば出願375で記載されているように、配列を最適化するための多次元解析もまた、コンピュータシステムの中で行われうる。
デジタルシステムもまた、オリゴヌクレオチドを合成するためのオリゴヌクレオチドシンセサイザーに指示をする。例えば、遺伝子再構成または組み換えのために、または商業的供給源からオリゴヌクレオチドを注文するために使われる(例えば、適当な注文フォームを印刷することによって、または前記インターネットの注文フォームへリンクすることによって)。
このデジタルシステムはまた、核酸合成をコントロールするアウトプット要素を含みうる(例えば組み換え体の配列またはアライメントに基づいて、例えば組み換えられた、本明細書に記載の単量体ドメイン)。すなわち、本発明の統合システムは、場合によってオリゴヌクレオチドシンセサイザーまたはオリゴヌクレオチド合成コントローラーを含む。本システムは、アライメントからダウンストリームに生じる他の操作、または、例えばアッセイを参照して上記のような配列に対応する文字列を使用して行われる他の操作を含みうる。
下記の実施例は例示のためであり、請求された発明を制限するものでない。
(実施例1)
本実施例は、単量体ドメインの選択と、多量体の作成を記述する。
選択された単量体ドメインから単量体ドメインを特定し、多量体を作成するための開始材料と手順は、さまざまなヒトおよび/またはヒト以外の配列から得られる。例えば、目的のリガンドまたはリガンド混合物へ特異的に結合する選択された単量体ドメインを作成するために、一つまたはそれ以上の単量体ドメイン遺伝子があるリガンドに結合する単量体ドメインのファミリーより選択される。一つまたはそれ以上の単量体ドメイン遺伝子をコードしている核酸配列は、ゲノムDNAまたはcDNAのPCR増幅により得ることができる、または場合によって、重複するオリゴヌクレオチドを合成的に使用することによって作成することができる。
通常、これらの配列は、ついで発現とスクリーニングのために、細胞表面のディスプレイ形式(すなわち、バクテリア、イースト、哺乳類(COS)の細胞表面ディスプレイ;ファージディスプレイ)の中にクローン化される。組み換え体配列は、細胞表面に発現されディスプレイされる適切な宿主細胞中に形質移入され(形質導入、または形質転換される)。例えば、細胞は、標識された(例えば蛍光標識された)目的リガンドで染色することができる。染色された細胞は、フローサイトメトリーにより選別され、遺伝子をコードしている選択された単量体ドメインが、陽性細胞から回収される(例えば、プラスミド単離、PCRまたはエクスパンジョンおよびクローニング)。染色とソーティングのプロセスは多数回繰り返すことができる(例えば、目的の濃縮レベルが得られるまで目的のリガンドの連続的に減少する濃度を用いて)。あるいは、この分野において知られているスクリーニングまたは検出方法が、目的リガンドまたはリガンド混合物と結合する細胞を識別するために使用され、採用することができる。
目的のリガンドまたはリガンド混合物より回収された遺伝子をコードしている選択された単量体ドメインは、場合によって、本明細書または引用参考文献の中に記載されたいずれかの方法により、組み換えることができる。この多様化の過程中で作成された組み換え体配列は、ついで目的のもしくは標的のリガンドへの親和性が向上した組み換え体遺伝子を識別するために、同じまたは異なる方法によってスクリーニングされる。多様化と選択の過程は、場合によって、目的の親和性が得られるまで繰り返される。
この方法により選択された単量体ドメイン核酸は、例えば、DNA連結による、または場合によってPCRベースのセルフプライミングの重複反応による、選択された単量体ドメインをコードしている核酸配列のコンビナトリアルアセンブリーにより、多量体を作成するためにリンカー配列を介して共に連結することができる。多量体をコードしている前記核酸配列は、発現とスクリーニングに関して、細胞表面のディスプレイ形式(すなわち、バクテリア、イースト、哺乳類(COS)の細胞表面ディスプレイ;ファージディスプレイ)中にクローン化される。組み換え体配列は、それが細胞表面に発現されディスプレイされる適切な宿主細胞中に形質移入(形質導入、または形質転換)される。例えば、細胞は、標識された例えば蛍光標識された目的リガンドまたはリガンド混合物により染色することができる。染色された細胞は、フローサイトメトリーにより選別され、遺伝子をコードしている選択された多量体が、陽性細胞から回収される(例えば、PCRまたは拡張およびクローニング)。陽性細胞は、選択された単量体ドメインと比較して、目的リガンドまたはリガンド混合物に対して、結合活性や親和性が改善された多量体を含む。染色や選択の過程は、多数回繰り返すことができる(例えば、濃縮の目的レベルまで、目的リガンドまたはリガンド混合物の濃度を連続的に減少する方法)。あるいは、目的リガンドまたはリガンド混合物を結合する細胞を識別するために使用することができる当技術分野で知られるスクリーニングと検出方法が使用できる。
目的リガンドまたはリガンド混合物から回収された遺伝子をコードしている選択された多量体は、場合によって、本明細書または引用参考文献の中に記載された任意の方法によって、組み換えることができる。この多様化の過程中で生産された組み換え配列は、次いで目的リガンドまたはターゲットリガンドに関して、改善された結合活性、または親和性または改変特異性を持つ組み換え遺伝子を識別するための同一のまたは異なる方法によりスクリーニングされる。多様化と選択の過程は、場合によって目的の結合活性または親和性または改変特異性が得られるまで繰り返される。
(実施例2)
本実施例は、より大きい多様性のライブラリーを作成するために、インビボ内部タンパク質組み換えを記述する。
オーソロガスloxPサイトが側面に位置する単量体をコードしているプラスミドベクター(pCK由来のベクター、下記参照)を、適合するloxPサイトを介して、Creに依存する方法でファージ・ベクターを用いて組み換えられた。組み換えファージ・ベクターは、組み換えコンストラクトに対して特異的なプライマーを使用し、PCRにて検出した。DNA配列決定は正しい組み換え産物を産生することを示した。
試薬および実験手順
pCK−cre−lox−Monomer−loxP 本ベクターは、2つの特に適切な特徴を持つ。第一に、Pla制御の下で、サイト特異的DNAリコンビナーゼCreをコードしているcre遺伝子を有する。Creは、PCR産物の末端にXbaI(5’)とSfiI(3’)を組み込んだcre特異性プライマーでp705−cre(GeneBridgesより)からPCR増幅された。本産物は、XbaIとSfiIで分解されpCKの同一サイト,abla−,pCK110919−HC−Bla(pACYC ori)のCmR派生物の中へクローニング化され、pCK−creを得た。
二つ目の特徴は、Creにより触媒されたサイト特異性のDNA組み換えに必要な2つのオーソロガスloxPサイト、loxP(野生型)とloxP(FAS)が両側に位置する未処理のAドメインライブラリーである。例、Siegel,R.W.ら FEBS Letters505:467−473(2001)参照。これらのサイトが他と再結合することは稀である。loxPサイトは、連続してpCK−creの中に構築された。分解されたEcoRIとHinDIII分解pCKへの連結を可能にするためにloxP(WT)およびEcoRIおよびHinDIIIと適合性のあるオーバーハングを有する5’リン酸化オリゴヌクレオチドloxP(K)とloxP(K−rc)はともにハイブリダイズされ、標準的なライゲーション反応(T4リガーゼ;16℃で一晩)においてpCK−creに連結された。
生じたプラスミドは、EcoRIとSphIで分解され、loxP(FAS)およびEcoRIおよびSphIと適合性のあるオーバーハングを有する、ハイブリダイズされた5’リン酸化オリゴloxP(L)およびloxP(L−rc)に連結された。ライブラリー構成を準備するために、pCK−cre−lox−P(wt)−loxP(FAS)の大規模な精製(Qiagen MAXI Prep)が、Qiagenのプロトコールに準じて行われた。Qiagenで精製したプラスミドは、さらなる精製のためにCsCl勾配遠心分離にかけられた。このコンストラクトは、SphIとBglIIで分解され、既に存在するAドメインライブラリープールのPCR増幅により得られた分解された未処理のAドメインライブラリーインサートに連結された。デザインによって、loxPサイトと単量体はインフレームであり、それはloxPをコードしているリンカー有する単量体を生成する。本ライブラリーは、下記に詳述するように、インビボ組み換え手順の中で活用された。
fUSE5HA−Monomer−lox−loxIベクター。本ベクターは、ジョージ・スミス(George Smith)の研究室(ミズーリ大学/University of Missouri)からのfUSE5の誘導体である。免疫検出試験のためのHAタグを有するようにその後修正された。loxPサイトは、順次fUSE5HAの中に構築された。5’リン酸化オリゴヌクレオチドloxP(I)とloxP(I)−rc、loxP(WT)を有する停止コドンの列およびXmalIおよびSfiIと適合性のあるオーバーハングがともにハイブリダイズされ、標準的なライゲーション反応(New England Biolabs T4リガーゼ;16℃で一晩)においてXmalIとSfiI分解fUSE5HAに連結された。
生じたファージベクターは、次にXmalIとSphIで分解され、loxP(FAS)およびXmalIおよびSphIと適合性のあるオーバーハングを有するハイブリダイズされたオリゴloxP(J)とloxP(J)−rcに連結された。このコンストラクトは、XmalI?SfiIで分解され、ついでプレカット(XmalI?SfiI)未処理のAドメインライブラリーインサート(PCR産物)へ連結された。停止コドンは、loxPサイト間に位置され、gIIIの発現とその結果として、感染性ファージの生産を妨げた。
下記で詳述するように、連結されたベクター?ライブラリーは、次いでfUSE5HA−Monomer−lox−loxファージのレスキューを可能にするgIII発現プラスミドを有する大腸菌宿主に形質転換された。
pCK−gIII。本プラスミドは、元来のプロモーターの制御下で、gIIIを有する。これはPCRで増幅されたgIIIと、gIII Promoter_EcoRIとgIII Promoter_HinDIIIのプライマーをもつVCSM13ヘルパーファージI(Stratagene)からのプロモーターにより構成された。本生成物は、EcoRIとHinDIIIで分解され、pCK110919−HC−Blaの同サイト中にクローニングされた。gIIIが自身のプロモーターの制御下であるので、gIIIの発現はおそらく構成的である。pCK−gIIIは、大腸菌EC100(Epicentre)に形質転換された。
インビボ組み換え手順。要約すれば、この手順は以下の重要段階を含む:a)プラスミドから大腸菌宿主発現のgIIIをもつfUSE5HA−Monomer−lox−loxライブラリーの感染性(すなわち、レスキュー)の生成;b)第二ライブラリーのクローニングとF+TG1大腸菌中への形質転換;c)レスキューしたfUSE5HA−Monomer−lox−loxファージライブラリーによる第二ライブラリーを保有する培養の感染。
a.ファージベクターのレスキュー。pCK−gIIIを保有するエレクトロコンピーテント細胞を、標準的なプロトコールで調製した。これらの細胞は、4×108/μgDNAの形質転換の発生頻度を持ち、fUSE5HA−lox−loxベクターの大規模な連結(〜5μgベクターDNA)と未処理のAドメインライブラリーインサートで同時に電気穿孔した。〜70μL細胞/キュベットで単独電気穿孔(100ngDNA/電気穿孔)後、930μLの温かいSOC培地を加え、細胞を37℃で1時間振盪して回収した。次に、テトラサイクリンを最終濃度0.2μg/mLまで加え、細胞を、37℃で45分間まで振盪した。本培養のアリコートを除去し、10倍に連続希釈し、結果としてライブラリーサイズ(1.8×107)を測定するためにプレーティングした。残存している培養は、2×500mL 2×YT(それぞれ、pCK−gIIIとfUSE5HAベースのベクターを選ぶために、20μg/mLクロラムフェニコールと20μg/mLテトラサイクリンで)に、希釈し30℃で一晩生育した。
レスキューされたファージは、標準的なPEG/Nacl沈殿プロトコールを用いて採取した。力価はおおよそ1×1012形質導入単位/mLであった。
b.第二ライブラリーのクローニングと大腸菌宿主中への形質転換。連結されたpCK/未処理のAドメインライブラリーは、バクテリアのF+宿主に、約108の予測ライブラリーサイズで電気穿孔される。振盪しながら37℃で1時間の回復期間の後、電気穿孔された細胞は、2×YT(20μg/mLクロラムフェニコール付加)中でOD600〜0.05まで希釈し、fUSEHA−Monomer−lox−loxによる感染の前に37℃で中期対数期まで成長させる。
c.レスキューされたfUSE5HA−Monomer−lox−loxライブラリーによる第二ライブラリーを保有する培養の感染。組み換え体の生成を最大にするために、培養内での大腸菌の高感染率(>50%)が望ましい。大腸菌の感染力は、F繊毛の発現と成長状態を含む多くの要素に依存する。大腸菌バックグランドTG1(F’を保有する)とK91(Hfr株)は組み換えシステムの宿主であった。
(実施例6)
本実施例は、EGFベース単量体の構成を記載する。
CaEFGドメインライブラリー、E3は、以下のパターンを持つ36−43アミノ酸のタンパク質ドメインをコードしている。
X(5)C1−X(4/6)−C2−X(4,5)−C3−X(8)−C4−X(1)−C5−X(8/12)−C6
下表は、アミノ酸がカルシウム結合性ヒトEGFドメインの自然の多様性に基づいたライブラリー中にコードしているそれぞれの位置に関して記す。
カルシウム結合性単量体EGFドメインをコードしているDNA配列のライブラリー、E3、をStemmerら,Gene164:49−53(1995)に記載されたPCRアセンブリーにより作成した。本PCR反応において使用されるオリゴヌクレオチドは、次の2つのグループ、1と2である。
グループ1と2オリゴヌクレオチドの個別のPCRに続いて、グループ1PCRフラグメントをBpmIより分解し、グループ2PCRフラグメントをBsrDIにより分解した。分解産物は、Qiagen Qiaquickカラムを用いて精製し、ついで共に連結した。連結したDNAは、次の2つのプライマーを用いてPCRで増幅した。
PCR産物は、Qiagen Qiaquickカラムを用いて精製し、SfiIにより分解した。この分解産物は、Qiagen Qiaquickカラムを用いて精製した。DNAフラグメントをイン−フレームHAエピトープとグリシン、セリン可撓性リンカーを保有するfuse5の誘導体であるファージディスプレイベクターfuse5−HA(G4S)4のSfiI制限サイト中に連結した。連結混合物は、トランスファーMaxTMEC100TMエレクトロコンピーテント細胞に電気穿孔した。形質転換された大腸菌細胞を20μg/mLテトラサイクリンを含む2×YT培地で37℃で一晩培養した。生じたライブラリーは、2×109の独立したクローンを含んだ。ファージ粒子は、PEG沈殿法により培養培地より精製した。ファージの力価は、1.3×1012/mlであった。24の個々のクローンの配列を決定し、これらはライブラリーデザインと一致した。
(実施例3)
本実施例は、EGFに基づく単量体ライブラリーの構築を記載する。
組み換えを、ドメイン内の最適化のために使用することができる。例えばPCRオーバーラップ反応を、互いに関連する単一ドメインの2つ以上のセグメントを組み換えるために、使用可能である。2、3、4、5またはそれ以上の断片オーバーラップ反応を説明と同じ方法で使用することができる。この組み換えプロセスは多くの応用を有する。1つの応用は、配列情報無しで、数百のあらかじめ選択されたクローンの大きなプールを組み換えることである。それぞれのオーバーラップが機能するのに必要なのは、各クローン内の同じ位置(固定部位へのアプローチ)に存在する、(相対的に)一定の配列の一つの公知の領域である。Aドメインに関して、通常これらのクローンは、ランダム化された全ての5つのシステイン内セグメントにわたって分布する20〜25のアミノ酸から誘導されていたであろう。ドメイン内の組み換え方法はまた、ランダム断片化に基づく標準DNA組み換え(例えば、Stemmer, Nature 370:389〜391(1994))およびDNA配列相同性に基づく再構成によって、配列関連単量体ドメインのプールで行うことができ、これは組み換えられるべき全てのクローンにおける固定されたオーバーラップ部位を必要としない。
このプロセスの他の応用は、それぞれのライブラリー内の異なるループをランダム化するために、それぞれにおいて唯一のシステイン間ループがランダム化されている、多数の分離した、未処理(パニングされていないという意味)ライブラリーを作製することである。標的に対して別々にパニングした後、ついで選択したクローンを組み換える。それぞれのパニングされたライブラリーから、ランダム化されたセグメントのみがPCRによって増幅され、多数のランダム化セグメントはついで単一のドメインに結合され、増大した効力についてパニングおよび/またはスクリーニングされるシャッフリングライブラリーを作製する。このプロセスは公知の配列の少数のクローンのシャッフリングにも使用可能である。
任意の共通の配列を、クロスオーバーポイントとして使用することができる。Aドメインまたは他のシステイン含有単量体について、システイン残基はクロスオーバーのための論理的な場所である。しかしながら、最適なクロスオーバー部位を決定する他の方法、コンピュータモデリングなどが存在する。あるいは、最も高いエントロピーを有する残基、または分子間接触の最小の数も、クロスオーバーについての優良な部位であり得る。
ランダム化システイン間ループを有するタンパク質を含むライブラリーを生成する例示的方法を以下に述べる。本実施例において、上記の分離ループ、分離ライブラリーアプローチとは対照的に、多数のシステイン間ループは、同一ライブラリー内で同時にランダム化される。
以下のパターンを有する39〜45アミノ酸のタンパク質ドメインをコードする、AドメインNNKライブラリーを構築した:
C1−X(4,6)−E1−F−R1−C2−A−X(2,4)−G1−R2−C3−I−P−S1−S2−W−V−C4−D1−G2−E2−D2−D3−C5−G3−D4−G4−S3−D5−E3−X(4,6)−C6;
ここで、
C1〜C6:システイン;
X(n):それぞれの位置で任意の残基を有するnアミノ酸の配列;
E1〜E3:グルタミン;
F:フェニルアラニン;
R1〜R2:アルギニン;
A:アラニン;
G1〜G4:グリシン;
I:イソロイシン;
P:プロリン;
S1〜S3:セリン;
W:トリプトファン;
V:バリン;
D1〜D5:アスパラギン酸;および
C1〜C3、C2〜C5およびC4−C6形状ジスルフィド
である。
Stemmer et.al., Gene 164:49〜53(1995)に記載のアセンブリPCRにより、チロシンコドン(TAT)または様々な非保存コドン(NNK)を含むDNA配列のライブラリーを作製することによって、ライブラリーを構築した。野生型A−ドメイン骨格およびライブラリーA1コンストラクト(前記)に使用した設計と比較して、このアプローチは:1)非常に重要な可能性のある残基の位置をランダム化するのではなく、所定の位置に存在するこれらの残基をより多くそのままの位置に保持し、および2)システイン間の残基の平均数が天然AドメインまたはA1ライブラリーを超えて伸長するような、20個の全てのアミノ酸(NNKコドン)の様々な長さのアミノ酸配列を挿入する。チロシン残基の比率はオリゴヌクレオチドにチロシンコドンを含めることにより増加した。なぜならばチロシンは抗体結合部位に過剰表現していることが見出されたからであり、それはおそらくはチロシンがなしうる多数の異なる接触のためであろう。このPCR反応で使用されるオリゴヌクレオチドは以下である。
それぞれのプールが400pmolのDNAを含む、オリゴヌクレオチドの4つのプールの混合物を使用するPCR増幅の10サイクルの初期ラウンドを通じてライブラリーを構築した。プール1は、オリゴヌクレオチド1〜9を含み、プール2は10〜17を含み、プール3は18のみを含み、プール4は19〜27を含んだ。完全に組み立てられたライブラリーは、プール1および4を使用する追加PCRの8サイクルを通じて得られた。ライブラリー断片をXmaIおよびSfiIで分解した。ファージディスプレイベクターfuse5−HA、フレーム内HAエピトープを保有するfuse5誘導体に、これらDNA断片を連結した。ライゲーション混合物をTransforMax(登録商標)EC100(登録商標)エレクトロコンピーテント大腸菌細胞中に電気穿孔し、2×109の個別クローンのライブラリーとした。形質転換された大腸菌細胞を、20μg/mlのテトラサイクリンを含む2xYT培地内、37℃で一晩成長させた。ファージ粒子をPEG沈殿によって培養培地から精製し、1.1×1013/mlの力価を決定した。24のクローンの配列を決定し、ライブラリー設計の期待値と一致した。
(実施例4)
本実施例は、標的への結合のための単量体および/またはリンカーを最適化することによる多量体の最適化を記載する。
標的に結合する多量体を最適化するための一手法は、単量体、多量体およびリンカーの最適化を含む。第一に、単量体のライブラリーを、標的(例えば、Met)に結合するためにパニングする。しかしながら、いくつかの単量体は、お互いから離れた標的上の位置で結合する可能性があり、これらの部位に結合するドメインはリンカーペプチドによる接続が不可能なようになる。従って、単量体の最適化の前に、これらの単量体からホモまたはヘテロ三量体の大きなライブラリーを作製しスクリーニングすることが有用である。これらの三量体ライブラリーを、例えば、ファージスクリーニング(通常、単量体の大きなプールから作製されるヘテロ三量体のため)、または製造しおよび別々にアッセイできる(例えば、ホモ三量体のため)。この方法により、最良の三量体を特定する。該アッセイは、標的への結合アッセイまたは機能性タンパク質もしくは細胞に基づくアッセイにおける多量体の、アゴニストまたはアンタゴニスト効力決定を含むことができる。
ついで、単一の最良三量体の単量体的ドメインを、第二の工程として最適化する。ヘテロ多量体も合成可能であるが、1つのドメイン配列のみ存在するのでホモ多量体が最も最適化し易い。ホモ多量体について、単量体対比の多量体による結合増加は、結合力効果である。
ドメイン配列自身の最適化(例えば、組み換えまたはNNKのランダム化による)およびファージパニング後、改良した単量体を、リンカーライブラリーでの二量体構築に使用した。リンカーライブラリーは、例えば、NNK組成物および/または不定配列長を有するリンカーから形成ることができる。
このリンカーライブラリーのパニング後、最良のクローン(例えば、阻害の効力または他の機能性アッセイによって決定された)を、多様な(例えば、2、3、4、5、6、7、8など)配列最適化ドメインならびに長さおよび配列最適化リンカーからなる多量体に変換する。
(実施例5)
本実施例は、Aドメインの構造的分析を記載する。
事実上全てのタンパク質と同様に、Aドメインの総表面の小さな分画だけが、単一標的の結合に関与している。ドメインの溶液構造に基づいて、所与の標的への結合において協同できるであろう隣接した複数の残基の位置を特定できる。ここで、隣接した残基のこのような群を、構造的区と称する。例として、4つのこのような区分を、Aドメイン構造の検査を通して特定し、Top、Bottom、Loop1およびLoop2と命名した。所与の区分内での多様性を可能にするのみのライブラリーを設計することにより、ライブラリーによって可能となった理論的な配列空間を有意に減少させることができ、物理的ライブラリーによる理論的な空間のより良いカバー範囲を可能にする。更に、TopおよびBottom区分などの非オーバーラップ区分の場合、異なる標的に対して選択した半ドメイン配列を、選択された標的に同時にまたは二者択一的に結合できるであろう単一配列中に結合させることが可能である。いずれの場合でも、半分のドメインのみを占める結合部位の作製は、大きさが半量でありおよび免疫原性エピトープの数が半分であろう分子の作製を可能にし、免疫原性のリスクを減少させる。
(実施例6)
本実施例は、c−MET(HGFRとしても知られている。)に結合する単量体または多量体のスクリーニングを記載する。
ファージライブラリーを、固体支持体(例えばNunc Maxisorpプレート)上または溶液(例えばDynal StreptavidinまたはProtein Aビーズ)中のいずれかで、いくつかのラウンドを通じてパニングした。(a)c−METに結合する個別のファージクローンの最も高い頻度をおよび(b)結合陽性ファージクローン間の高い配列多様性を有する出力ファージプールが、タンパク質スクリーニングのために選択された。
I.ラウンド1(MaxisorpプレートまたはDynalビーズ)
1.被覆標的
A.被覆プレート:TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中に希釈した5μg/mL c−MET−ECDの100μL/ウェルを使用し、c−MET細胞外ドメイン(ECD)/Fcキメラ(0.5μg/ウェル)で、6ウェル/ライブラリーを直接被覆した。標的としてc−MET−ECD/Fc融合物(R&D Systems;キャリヤフリー)を使用する場合、プレートを振盪しながら室温で1時間、Protein Aでプレコートした。C−MET ECD/Fcのビオチン化形状を使用する場合、プレートを振盪しながら室温で1時間、ストレプトアビジンでプレコートした。更に、1つの陰性対照ウェル/ライブラリーを、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2のみで被覆した。プレコーティングの完了後、c−MET−Fc(+/−ビオチン)を加え、プレートを振盪しながら室温で1.5時間インキュベートした。
B.被覆ビーズ:20μL Dynalストレプトアビジン(M−280;Dynal ASA)またはDynal Protein Aビーズ(Dynal ASA)をそれぞれ、500μLのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2中、5μgビオチン化c−MET/Fcまたは非−ビオチン化c−MET/Fcでインキュベートし、Eppendorfチューブ内で、室温で1時間回転した。陰性対照として、標的無しで、20μLのDynalストレプトアビジンまたはProtein Aビーズを、500μLのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2中でインキュベートし、室温で1時間回転した。標的を加える前に、DynalビーズをTBS[pH7.5]/2mM CaCl2で少なくとも2回洗浄したこと、およびビーズをバルク内で被覆したことに注意。
2.ブロッキング
A.ブロッキングプレート:コーティング溶液を取り除き、ウェルを200μL/ウェルのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2で、1度洗浄した。TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中の250μl/ウェルの1%BSA(プロテアーゼフリー)を加え、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。代替の試薬(例えばカゼインまたはミルク)を、ブロッキングのために使用することができる。
B.ブロッキングビーズ:コーティング溶液を取り除き、ビーズをTBS[pH7.5]/2mM CaCl2で2回洗浄した。500μlの1%BSA(プロテアーゼフリー)をTBS[pH7.5]/2mM CaCl2中に加え、室温で1時間回転した。上記のように、代替のブロッキング試薬を使用することができる。
3.洗浄
A.洗浄プレート:200μL/ウェルのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2でウェルを3回洗浄し、過剰な標的を取り除いた。
B.洗浄ビーズ:1000μLのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2でビーズを3回洗浄し、過剰な標的を取り除いた。それぞれの洗浄後に数分間、磁石でビーズを収集し、ビーズの損失を防止した。
4.ファージ添加
A.プレートへのファージ添加:約1000ライブラリー当量(A1ドメイン未処理ファージライブラリー)を、ファージ添加緩衝液(1%非脂肪乾燥ミルク/0.2%BSA(プロテアーゼフリー)、または他の適切なブロッキング剤、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中)中に加え、振盪しながら室温で2時間インキュベートした。2〜3ラウンド中、100μL総量の収集したファージを7つのウェル(6標的+1陰性対照)に加え、ファージ添加緩衝液中に希釈した。
B.プレートへのファージ添加:約1000ライブラリー当量(A1ドメイン未処理ファージライブラリー)を、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中100μL、1%BSA(プロテアーゼフリー)および500μlの1%非脂肪乾燥ミルク中に加え、室温で2時間、回転しながらインキュベートした。2〜3ラウンド中、100μL総量の収集したファージをビーズに加えた。
5.洗浄
A.洗浄プレート:プレートを、10分の期間にわたって、200μl/ウェルのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2/0.1%Tween−20で、8〜12回洗浄した。
B.洗浄ビーズ:プレートを、30〜45分の期間にわたって、800μlのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2/0.1%Tween−20で、8〜12回洗浄した。収集したビーズ上に直接洗浄緩衝液を分配することによりまたは上下にピペッティングすることにより(渦巻撹拌することによっでなく)、ビーズ再懸濁を容易にした。代替的に、KingFisher装置(Thermo LabSystems)または同等のものをビーズ洗浄にたいして使用することができる。
緊縮洗浄に対する条件(任意)
a.37℃で800μlのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2/0.1%Tween−20;
b.室温で800μlのTBS[450mM NaCl,pH7.5]/2mM CaCl2/0.1%Tween−20;
c.ビーズを、通常6〜8回洗浄し、1μgの非標識c−MET−ECDを、室温または37℃で、1時間加えた。この洗浄の後に結合したまま残ったファージを、溶出/感染のために保持した;
d.1%ミルク/0.2%BSA/1Mの尿素でまたは無しで/37℃(高緊縮)
6.競合(任意):
A.プレート上の競合:ファージを、振盪しながら室温で1時間、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中のHGF(c−METリガンド)の50μg/mL(5μg/ウェル)の100μL/ウェルでインキュベートした。
B.ビーズ上の競合:ファージを、振盪しながら室温で1時間、500μLのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2中の、0μg HGFでインキュベートした。HGF溶出液を、BlueKan K91 大腸菌の感染のために保持した。
7.ファージ溶出
A.プレートの溶出:TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中の10mg/mLトリプシンの100μL/ウェルを加え、プレートを、振盪しながら37℃で30分間インキュベートした。
B.ビーズの溶出:100μLの10mg/mlトリプシン TBS[pH7.5]/2mM CaCl2をビーズに加え、ついで、振盪しながら37℃で(Eppendorfラック内で)30分間インキュベートした。
C.代替の溶出/感染:OD600〜0.5にて、200μLのログ相BlueKan K91大腸菌細胞を、それぞれのウェルに(プレートについて)または吸引したビーズに加えた。感染を、振盪無しで37℃で30分間、進行させた。次に、200μL容量を貯留し、3mLまでの2xYT/0.2μg/mLテトラサイクリンに加え、37℃で15分間振盪した。
8.感染(プレートおよびビーズについて同じプロトコル)
適切な容量のlog相BlueKan K91 大腸菌(2xYT/40μg/mLカナマイシン中)を、0.5〜0.6までのOD600まで成長させた。培養物がOD600に到達したとき、使用前に氷上にそれを置いた。しかし、氷上の時間を、概して最小にした。
A.50mLの減菌コニカルチューブ内で、溶出したファージを、5mLのlog相BlueKan K91 大腸菌培養物と混合し、振盪無しで37℃で25分間インキュベートした。減菌コニカルチューブを、AirPoreテープ(Qiagen)で被覆し、通気を容易にした。
B.テトラサイクリンを0.2μg/mLの最終濃度で加え、37℃で15分間振盪した。
C.10μLの分割量を、力価測定のためにサンプルとし、2xYT中の10−フォールド(10−1〜10−6)で段階希釈し、2xYT/20μg/mlのテトラサイクリンプレート上の8μL/希釈物スポットに平板接種し、30℃または37℃で一晩インキュベートした。10−2〜10−4の希釈物の残容量を平板接種し、続くファージELISAのために単一のコロニーを得た。
D.感染した5mLの培養物を、50mLの2xYT/20μg/mLテトラサイクリン中に、10倍まで希釈し、飽和まで30℃で一晩振盪しながらインキュベートした。
9.力価測定入力ファージをパニング当時のラウンドにおいて使用した(プレートおよびビーズについて同じプロトコル)。
A.収集したファージの100倍段階希釈物(10−4〜10−10)を、2xYT内で作製した。
B.OD6000.5〜0.6での100μL/ウェルのlog相Blue Kan K91 大腸菌培養物を、6ウェルの96−ウェルポリプロピレンプレートに加えた。
C.10μLの希釈ファージを、100μLのBlueKan K91 大腸菌を含むウェルに加えた。
D.ファージ/細胞混合物を、振盪無しで37℃で25分間インキュベートし、プレートを、AirPoreテープ(Qiagen)で被覆し、通気した。
E.テトラサイクリンを、0.2μg/mLの最終濃度で加え、プレートを37℃で15分間振盪した。
F.8μLの各希釈物(10−4〜10−10)を、乾燥2xYT寒天/20μg/mLのテトラサイクリンプレート上で平板接種した。
G.プレートを30℃または37℃で一晩インキュベートした。
10.ファージの収集(プレートおよびビーズについて同じプロトコル)
A.一晩培養物を、使い捨て50mLチューブ内で、7000rpmで25分間遠心分離し、細胞をペレット化した。
B.培養物上澄みに20%PEG/15% NaClストックの1/5容量を加えることにより、標準PEG/NaClファージ沈殿手順を行った。これを、くり返しひっくり返してよく混合し、氷上で45分間〜1時間インキュベートした。
C.培養物を、7000rpmで40分間遠心分離してファージをペレット化し、上澄みを廃棄した。
D.このファージペレットを、1mLのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2中に再懸濁し、Eppendorfチューブに移し、13Krpmで少なくとも2分間遠心分離して、不溶物質をペレット化した。
E.上澄みを新鮮なチューブに移し、PEG/NaClの1/5容量を加えて混合し、氷上で5分までインキュベートした。
F.次いで、混合物を13000rpmで少なくとも2分間遠心分離し、上澄みを取り除いた。ペレット化し、精製したファージを、1mL TBS[pH7.5]/2mM CaCl2中に再懸濁して、4℃で保存した。
II.ラウンド2およびラウンド3パニング
第二および第三のラウンドパニング条件は、被覆標的(すなわちc−MET−ECD)量が各後続ラウンドについて2〜4倍少なくしたことおよびプレート(またはビーズ)が選別の各後続パニングラウンドにおいて2〜4回追加の洗浄がなされたことを除き、上記のラウンド1中と概して同じであった。
III.任意のドメイン内組み換え
ファージディスプレイ−で選択されたファージプール内の単量体配列を、以下の手順で組み換えた。このプロセスは所与のプール内の開始単量体選択の混合された半量から誘導されたハイブリッド単量体を生じた。Al−ドメインに基づいたファージライブラリーについて、プライマー対SHF1(ATTATGCCCCGGGTCTGGAGGCGTC)/SHBオーバーラップ(CGCCGTCGCAA)およびSHFオーバーラップ(TTGCGACGGCG)/B3(TCGGCCCCAGAGGCCTGCAATG)を使用し、単量体の二分量をPCR増幅させた。二分量をLA Taqポリメラーゼ(Takara)と共に融合させた。ついで、融合ハイブリッドコーディング配列を、プライマーSHF2(CCGGATTATGCCCCGGGTCTGGA)およびSHB4(AACAGTTTCGGCCCCAGAGGCCTGC)により増幅させた。精製PCR生成物をSfiI(NEB)により分解し、Sfil−分解fUSE5HAファージベクターと連結し、組み換え単量体ライブラリーを作製した。組み換えライブラリーを、c−MET ECD/Fcに対する少なくとも2つの更なるラウンドでパニングし、下記のようにスクリーニングした。組み換えウンドで単量体の特性決定からのデータを表1および2に記載する。
IV.パニングにより得られた物の分析(プレートおよびビーズについて同じプロトコル)
ファージELISA:分析すべき、それぞれの得られた「ファージプール」(もしあれば、通常ラウンド2、3および4)について、独立クローンをCostar−96ウェルポリプロピレンディープ−ウェルプレート内で成長させた1mL(2xYT/20μg/mL テトラサイクリン)の培養物内に接種した。接種する先端を置いたままにし、プレートを37℃で一晩振盪した。細胞を15分間、3600rpmで遠心法でペレット化した。培養上澄みを貯留し、ELISAを以下に記載のように行った。
非−ビオチン化c−MET ECD/Fc(0.1μg/ウェル)を、Nunc Maxisorpプレート上に直接被覆した。しかしながら、ビオチン化c−MET ECD/Fc(96−ウェルNunc Maxisorpプレート)を、第一に50μL/ウェルの50μg/mL(2.5μg/ウェル)のストレプトアビジンにより被覆し、第二にTBS[pH7.5]/2mM CaCl2内で希釈すべきである。このプレートを、37℃で1時間、振盪しインキュベートした。このプレートを200μL/ウェルのTBS[pH7.5]/2mM CaCl2で、3回洗浄した。ウェルを、1%BSA(分画V)の200μL/ウェルによりブロックし、被覆したプレートを室温で1時間、振盪しインキュベートした。このプレートをTBS[pH7.5]/2mM CaCl2で3回洗浄した。ついで、96−ウェルMaxisorpプレートを、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2または100μL/ウェル緩衝液のみで希釈した100μL/ウェルの1μg/mL(0.1μg/ウェル)ビオチン化c−MET−ECDで被覆した。このプレートを振盪し、室温で1時間インキュベートした。このプレートを、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2で3回洗浄した。ついで、30μLのそれぞれのファージ上澄みを、70μLの1%ミルク/0.2%BSA[pH7.5]/2mM CaCl2/0.02%Tween−20の存在下、ウェル中に加える。被覆したプレートを室温で1.5時間、振盪しながらインキュベートした。
プレートをTBS[pH7.5]/2mM CaCl2/0.02%Tween−20で4回洗浄した。ついで、TBS[pH7.5]/2mM CaCl2+0.02%Tween−20中で1:5000に希釈した、100μL/ウェルのα−M13−HRPモノクローナル抗体(Amersham Pharmacia)を加えた。プレートを4℃で1時間、振盪しインキュベートした。プレートを、冷TBS[pH7.5]/2mM CaCl2/0.02%Tween−20で、3回洗浄した。1:1で希釈した、100μL/ウェルのTMB/H2O2混合物(Pierce)を、ELISAディベロップメントに対して加えた。
この反応物を、最も強いOD650シグナルが〜1.0になるまで青色になるようにさせた。この反応を100μL/ウェル2N H2SO4で停止させ、陽性のウェルは青から黄へ変色した。反応が停止したら、SoftMaxProソフトウェアを使用するELISAプレートリーダー上で、OD450で読み取った。
ファージELISA−陽性ファージプールが(a)c−MET ECD/Fcに結合した個別のファージクローンの高い頻度および(b)結合−陽性ファージクローン間配列の高い多様性を有していれば、発現ベクター中へのサブクローニングのために、それらを選択した。これらの基準を満たすプールを、以下に述べるプロセスのタンパク質スクリーニングのために選択した。所与のファージプールからの単量体または多量体配列を、発現ベクター、pEve中にサブクローンするために、およそ108〜1010ファージを、以下のようにPCRの25サイクルにより増幅させた。
PCR 処方箋
0.5〜1μL 精製ファージ
5μL 10X 緩衝液
8μL 2.5mM dNTPs
5μL 10uM VS−Forプライマー(5’−ATCATCTGGCCGGTCCGGCCTACCCGTATGATGTTCCGGA−3’)
5μL 10uM EveNutプライマー(5’−AAAAGGCCCCAGAGGCCTTCTGCAATGAC−3’)
26μL H2O
0.5μL LA Taqポリメラーゼ(1単位)(Takara)
サイクル:25X[94℃/10秒、−45℃/30秒、−72℃/30秒]
PCR生成物について3%のアガロースゲルの分析を行った。単量体または多量体生成物(およそ200bp)をQIAquickスピンカラム(Qiagen)により精製し、Sfi I(NEB)で分解し、再びQIAquickカラムにより精製し、ついでT4DNAリガーゼ(NEB)を使用し、Sfi I分解ベクター(pEve)に連結した。連結物によりエレクトロコンピーテントBL21(DE3)E.coliを形質転換し、40μg/mLのカナマイシンを含む2xYTプレート上にプレートした。一晩の成長の後、およそ6000の個別のクローンを、2xYT/カナマイシン中に接種し、一晩成長させた。陽性および陰性の対照もプレート上にインキュベートされた。
V.1mLの細胞溶解産物中の数千の単量体タンパク質のスクリーニング
1mLの加熱した溶解産物のタンパク質生産(1日目):個別のクローンを、400μL/ウェルの2xYT/40μg/mLカナマイシンを含む96−ウェル Costarディープ−ウェルプレートのウェル中に接種した。37℃で300rpmで振盪しながら、培養物を一晩成長させた(先端をウェル中に接種させたまま)。このプロセスにより細胞溶解産物レベルにおける数千の個別の、部分的に精製した単量体の選別ができた。
(2日目)100μLの1晩培養物を、1mL/ウェルの2xYT/40μg/mLカナマイシン+1mM CaCl2を含む新しい96−ウェル Costarディープ−ウェル中に接種した。(残っている1晩培養物は、25%最終グリセロール濃度の添加により保存し、ついで後の使用のために−80℃で貯蔵した。)プレートをAirPore Tape(Qiagen)で被覆し、培養物を、0.8〜1.0のOD600になるまで、37℃で375rpmで振盪し成長させた。所望のOD600まで到達したら、37℃、375rpmで振盪しながら、培養物を3時間、1mM IPTGにより誘導した。ついで、誘導した培養物を含むプレートを、4℃、3600rpmで15分間遠心分離し、細胞をペレット化した。上澄みを取り除いて廃棄し、残った細胞ペレットを100μLのTBS[pH7.5]/1mM CaCl2中に再懸濁した。再懸濁した細胞を、96−ウェル ディープ−ウェルプレートから96−ウェル ポリプロピレンPCRプレートに移し、PCR機械内で65℃で5分間加熱した。ついで、加熱/溶解した細胞を、4℃で3600rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後、タンパク質生成を完了し、加熱した溶解産物は、結合ELISAおよび/または競合AlphaScreenアッセイによる一次スクリーニングの特性分析のための準備が整えられた。
C−Met ECD/Fc Protein ELISA:96−ウェル Maxisorp プレートを、100μL/ウェルの1μg/mL(0.1μg/ウェル)c−MET ECD/Fc(R&D Systems)で被覆し、TBS[pH7.5]/1mM CaCl2中に希釈し、プレートを振盪しながら4℃で一晩または室温で1.5時間インキュベートした。ウェルを空にし、ついで200μL/ウェルの1%BSA(分画V)/TBS[pH7.5]/1mM CaCl2でブロックした。被覆したプレートを、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。このプレートを、TBS[pH7.5]/1mM CaCl2で3回洗浄した。100μL/ウェルの単量体タンパク質を、TBS[pH7.5]/1mM CaCl2/0.1%BSA/0.02%Tween−20中に希釈したプレートに加えた。1mLの加熱した溶解調製物からのタンパク質を、1:10に希釈した単一濃度としてウェルに加えた。被覆したプレートを、振盪しながら室温で1.5時間インキュベートした。プレートをTBS[pH7.5]/1mM CaCl2/0.02%Tween−20で3回洗浄した。TBS[pH7.5]/1mM CaCl2/0.1%BSA/0.02%Tween−20中に1:2000で希釈し100μL/ウェルの抗HA−HRP検出抗体(Roche)を加えた。被覆したプレートを、振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。プレートをTBS[pH7.5]/1mM CaCl2/0.02%Tween−20で3回洗浄した。1:1に希釈した100μL/ウェルのTMB/H2SO4混合物を加えた。最も強いOD650シグナルが〜1.0に達するまで、色を青に変えた。反応を100μL/ウェルの2N H2SO4で停止させた。停止したら、プレートをOD450でELISAプレートリーダーにて読み取った。
AlphaScreen c−Met/Fc−ビオチン化(bn)HGF相同競合アッセイ:すべてのアッセイ成分を、AlphaScreen Buffer:40mM HEPES[pH7.4]w/NaOH、1mM CaCl2、0.1%BSA(w/v)、0.05%Tween−20、100mM NaCl中に希釈した。3つの添加物を、添加物間でインキュベート時間のない、白色、384−ウェル、減縮容量、Greinerマイクロ力価アッセイプレートに作った。第一に、単量体または非標識組み換えヒトHGF(rhHGF)(陽性対照として)を、2μL/ウェルでプレートに加えた。1mLの加熱溶解調製物からの単量体を、単一濃度(非希釈(すなわち1:4の最終アッセイ希釈物)または1:100希釈物(1:400最終アッセイ希釈物)までのいずれか)で、ウェルに加えた。陽性対照として、単量体タンパク質の代わりに2μL/ウェルの非標識rhHGF(PeproTech)を、400nM(すなわち100nM最終アッセイ濃度)から開始し、ついでその後は1:4連続希釈で最終ポイントの緩衝液だけの12ポイント濃度曲線としてプレートに加えた。第二に、4μL/ウェルのc−MET ECD/Fcを0.6nM(すなわち0.3nM最終アッセイ濃度)、プレートに加えた。AlphaScreenビーズは感光性であり、アッセイの残部は緩和されたまたは緑−フィルター光にて行なわれたことに注意して欲しい。第三に、1nM(すなわち0.25nM最終アッセイ濃度)の2μL/ウェルのbn−HGFの混合物およびいずれも40μg/mL(すなわち10μg/mL最終アッセイ濃度)まで希釈したAlphaScreen Streptavidin「ドナービーズ」およびProtein A「受容体ビーズ」(PerkinElmer)をプレートに加えた。ついで、アッセイプレートをトップシールで被覆し、800rpmで30秒まで遠心沈殿した。ついで、プレートを一晩、暗所で室温でインキュベートし、翌日Fusion Plateリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。
VI.ファージディスプレイ−選択された単量体の多量体化および組み替え
pEve(pEve/単量体)中にサブクローンした単量体は、以下の方法で多量体化した。pEve/単量体プラスミド(個別にまたはプールで)をBsrDIまたはBpmI(NEB)のいずれかで分解した。〜1.1kb BsrDIおよび〜2.9BpmI分画を、1%アガロースゲルから単離し、Qiagen QIAquickスピンカラムで精製した。2つの分画のそれぞれのプールを、T4DNAリガーゼ(NEB)を使用して連結し、その後、連結物をQiagen QIAquickスピンカラムで精製した。上のファージサブクローニングセクションに記載のプライマーVS−ForおよびEveNutを使用し、多量体コーディング配列を連結物からPCR−増幅した。PCR産物を精製し、SfiI(NEB)で分解し、ついでpEveと連結およびBL21(DE3)E.coliの形質転換を行った。この方法は、開始単量体の異なる組み合わせから成る二量体を作製した。この方法を三量体など他の多量体の生成のために使用することができる。三量体を作製する場合、pEve/二量体(例えば上の実施例中)およびpEve/単量体(開始回収物)のプールが開始物質である。これらは、上のように処理する。「ウォーキングライブラリー」を作るための、以下に記載のものと類似の分子生物学的手順も使用し、多量体を生成した。すべての場合において、タンパク質を発現させ、精製させ、上のようにスクリーニングした。
ファージディスプレイ−選択単量体と未処理単量体ライブラリーの完全な表現物との連結により、追加のライブラリー(「ウォーキングライブラリー」と称する)を生成した。これらのライブラリーは、以下の方法により構築した。2つの別の反応a)pETF(ACCCGTATGATGTTCCGGATTA)/pETB2r(GATGTATTCGGCCCCAGA GGCCTGCAATGAC)の選択単量体のコーディング配列;およびb)21new1(GAAATTCACCTCGAAAGCAA)/23(ATGGGTTCCTATTGGGCT)の単量体ライブラリーにおける未処理単量体のコーディング配列において、増幅のためにPCRを使用した。〜200bp産物を、3%アガロースゲルから単離し、Qiagen QIAquickスピンカラムで精製した。上記(a)および(b)からのそれぞれの産物を、別々の反応で、BsrDIまたはBpmI(NEB)のいずれかで分解した。BpmI−分解単量体は、BsrDI−分解単量体と連結しうるオーバーハングを有する。精製した分解産物は、T4DNAリガーゼ(NEB)を使用し、もう一方と連結した。BsrDI−カット未処理単量体とBpmI−カット選択単量体の連結は、C末端選択単量体に融着したN末端未処理単量体から成るウォーキング二量体ライブラリーを生成する。BpmI−カット未処理単量体とBsrDI−カット選択単量体の連結は、N末端選択単量体に融着したC末端未処理単量体から成るウォーキング二量体ライブラリーを生成する。プライマーpETF/pETB2rを使用してライゲーションからの連結二量体コーディング配列をPCR−増幅し、精製した産物をSfiIで、ついでXmaIで分解した。ファージディスプレイ二量体「ウォーキングライブラリー」(通常108〜109の特有の成員を有する。)の生成のために、分解産物をファージベクターfUSE5HAと連結した。開始物質が二量体(またはより大きい)および未処理単量体であることを除いて、三量体(またはより大きい多量体)「ウォーキングライブラリー」は、同様の様式で生成可能である。ウォーキングライブラリーは、c−MET ECD/Fcに対してパニングし、上記のようにスクリーニングした。
VII.結合および競合アッセイにおける精製単量体の特性決定
いったんタンパク質を加熱タンパク質溶解産物レベルで特性決定し、最良の単量体を更なる特性決定のために選択した。個別のクローンのより大量の培養物を調製し、6Hisタグを有する単量体を、Ni−NTA樹脂を介して精製した。これらのニッケル−精製単量体を、結合ELISAおよびAlphaScreen競合アッセイにて分析した。精製した単量体の特性決定からのタンパク質配列データおよび生化学的データを表1および2に記載する。
NiNTAに対するタンパク質精製500mL培養物:(1日目)3mLの2xYT+40μg/mLカナマイシンを含む15mL培養チューブ内で、グリセロール貯留保有の適切な「一次ヒットウェル」を接種した。培養物を37℃で300rpmで一晩振盪した。
(2日目)2mLの一晩培養物を、500mLの2xYT+40μg/mLカナマイシンを含む、1L Erlenmeyer振盪フラスコ中に接種した。培養物を0.8〜1.0のOD600に到達したら、37℃で375rpmで振盪し成長させた。所望のOD600まで到達すると、375rpmで振盪しながら、培養物を3時間、IPTGの1mM最終濃度で誘導した。3時間の誘導後、500mLの培養物を清潔/加熱殺菌したSorvallチューブに移し、4℃で8000rpmで8分間遠心分離し、細胞をペレット化した。
細胞をペレット化されたら、上澄みを取り除いて廃棄し、20mLの音波処理緩衝液(10%スクロース/20mM Tris[pH7.5]/150mM NaCl/0.2mM CaCl2)をそれぞれのチューブに加えた。10mLの血清学的ピペットを有する音波処理緩衝液内で、可視集塊がなくなるまでペレットを再懸濁し、ついで再懸濁した細胞(30mLまで)を35mLのOakridge Tubes中に移し、16パワーまでの出力で8分間音波処理した。音波処理後、音波処理した細胞を含む温かいOakridge Tubeを、氷/水浴上に10分まで置き、冷却した。冷却されたら、チューブを4℃で18000rpmで30分間遠心分離し、溶解した細胞をペレット化した。
溶解した細胞を含むチューブを遠心分離する間、NiNTA樹脂(Qiagen)をMilli−Q水で洗浄しエタノールを取り除いた。3mLの1:1希釈NiNTA樹脂/タンパク質を使用した(すなわち実際に1.5mLの樹脂/タンパク質を使用した)。3mLの樹脂/水混合物をそれぞれ適切に標識した(タンパク質IDで)清潔な50mLのスクリューキャップチューブに加えた。音波処理した細胞をペレット化した後、タンパク質上澄みを取り除き、1.5mLの洗浄したNiNTA樹脂を有する50mLのチューブに加えた。タンパク質を0.5時間、室温で穏やかに振動し、NiNTA樹脂に結合させた。NiNTA樹脂とのインキュベーション後、NiNTAを有する遠心分離50mLチューブを、1500rpmまでにて10分間、タンパク質に結合させた。上澄みを穏やかに注ぎ出し、廃棄した。
NiNTA樹脂+結合タンパク質を1mLのNiNTA Wash Buffer(20mM Tris[pH7.5]、200mM NaCl、0.1mM CaCl2、20mMイミダゾール)を樹脂を含む50mLのチューブに加えることにより、適切に標識した15mLのClontechカラムに移し、旋回して再懸濁し、ついで真空多岐管上に取り付けたカラム中に、混合物をピペットで移した。NiNTA樹脂+結合タンパク質を、少なくとも10カラム容量(15mL)のNiNTA洗浄緩衝液で洗浄した。NiNTA樹脂+結合および洗浄タンパク質を含む15mLのカラムを、清潔な15mLスクリューキャップ収集チューブに移した。4mLのNi Elution緩衝液(20mM Tris[pH7.5]、200mM NaCl、0.1mM CaCl2、200mMイミダゾール)をそれぞれのカラムに加え、タンパク質を15mL収集チューブ中に溶出した。ついでそれを重力により溶出した。
溶出したタンパク質を、18.5ゲージ針および5mLシリンジを使用してスライド−A−ライザー(lyzer)カセット(適切なMWカットオフ−3.5KDaカットオフを使用した単量体のため、および10kDaカットオフを使用した二量体および三量体のための)に移し、カセットを負荷した。溶解タンパク質を含むスライド−A−ライザーを、レドックス試薬(20mM Tris[pH7.5]、100mM NaCl、1mM CaCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.25mM 2−ヒドロキシエチルジスルフィド)を含む透析緩衝液中に一晩置いた。
(3日目)一晩透析したタンパク質を含むスライド−A−ライザーカセットを、レドックス無しで透析緩衝液中に移した(20mM Tris[pH7.5]、100mM NaCl、1mM CaCl2)。3時間の透析後、スライド−A−ライザーカセットを、もう3時間、レドックス無しで新鮮なTBS/CaCl2中に移した。第二の透析変化後、18.5ゲージ針および5mLシリンジを使用てスライド−A−ライザーカセットからタンパク質を取り除き、0.2ミクロンシリンジフィルターを使用する濾過により、タンパク質を適切に標識した15mLのポリプロピレンチューブ中に移した。
AlphaScreen競合アッセイで「最良の阻害因子」として選ばれた抗c−MET NiNTA精製タンパク質を、更にQ−セファロースアニオン交換により精製し、不純物を取り除いた。Q−セファロース精製:1mLのQ−セファロース Fast−Flow Resin(Amersham Biosciences)を15mL Clontechカラムに加えた。15カラム容量(または15mL)の20mM Tris[pH7.5]、50mM NaCl、1mM CaCl2を有する樹脂を平衡化した。2mL(5mgまで)の濾過したNiNTA−精製タンパク質を樹脂に加え、タンパク質を重力により樹脂に結合させた。96−ウェルプレートの第一のカラム中への流量を収集した。タンパク質で負荷したカラムを15mL収集チューブに移し、樹脂/結合タンパク質を10カラム容量(または10mL)の20mM Tris[pH7.5]、50mM NaCl、1mM CaCl2で洗浄した。洗浄したら、タンパク質のNaCl勾配溶出を開始した。NaCl濃度を下記の通り勾配中で変化させた:20mM Tris[pH7.5]、1mM CaCl2の塩基に対して100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、500mM、および最終的に1M NaCl。分画を、1mL増分中の、96−ウェルディープ−ウェルポリプロピレンプレート―2mL分画中に収集した。タンパク質を含む分画を、Brandfordにより試験し、SDS PAGEにより分析した。分画を、続く変化により上記の結合ELISAおよび競合アッセイにて試験した。500mLのNiNTA精製調整物またはNiNTA+Q−セファロース精製調整物からのタンパク質を、1:5〜1:100の第一の希釈から開始し、ついでその後は1:4連続希釈で最終ポイントの緩衝液だけの12ポイント濃度曲線としてプレートに加えた。精製単量体の特性分析からのタンパク質配列データおよび生化学的データを表1および2に記載する。
(実施例7)
本実施例は、c−MET−結合単量体によるHGF−誘導細胞増殖の阻害を実証する実験を記載する。
HGFは、上皮細胞増殖の強力な刺激物質である。HGFおよび/またはc−MET阻害因子の効能を決定するための、HGF−誘導増殖のアッセイにおけるA549ヒト肺腺癌細胞の使用は、この分野で良く確立されている。これらの実験の目的のために、A549細胞株の単一細胞クローン(A549−SCと称される)を、限界希釈により誘導した。A549−SCクローンを、HGFの存在下、細胞の強力な散乱応答の基準において選択した。
A549−SC細胞を、ウェルにつき100μlの無血清F−12培地内のコラーゲン被覆96ウェルプレート(1×104細胞数/ウェル)上に平板接種し、ついで5%CO2内で37℃で48時間インキュベートした。48時間後、培地をウェルから取り除き、ウェルにつき50μlの無血清F−12培地容量の単量体希釈液と取り替えた。5%CO2内、37℃での1時間のインキュベーション後、40ng/mlの組み換えヒトHGFを補充した50μlの無血清F−12培地を加え、20ng/ml HGF(HGFについてのEC50)の最終濃度が得られた。プレートを、5%CO2内、37℃で更に48時間インキュベートし、ついで更に15時間、ウェルにつき2μCiトリチウムメチルチミジンでパルスした。パルス後、培地を取り除き、ウェルにつき200μlの0.05%トリプシンと取り換え、プレートを37℃で5分間インキュベートした。ついで標識細胞を、Tomtec Harvester 96を使用し、グラスファイバー濾過器に収集した。ついで取り込まれた標識をシンチレーション検出により測定した。
ヒトc−METの細胞外ドメインと免疫グロビンFcドメイン(c−METFc)の組み換え融解物を、これらの実験(R&D Systems)の陽性対照として使用した。c−METFcの滴定を組み換えヒトHGFと混合し20ng/ml HGFの最終濃度とし、37℃で1時間インキュベートした。ついでこのc−METFcとHGFの混合物を、96ウェルプレート内の血清欠乏A549−SC細胞に加えた。ついで、単量体または多量体について処理したものと同様の様式で、これらの細胞を処置した。
図9は、血清欠乏A549−SCヒト肺腺癌細胞のHGF−誘導増殖をブロックする相対的能力について、c−METFc、c−MET−特異的単量体(M26)およびc−MET−特異的二量体(RM12;RecM12)間の比較を示す。
二量体RM12についてIC50は0.32nMである。c−METFcについてIC50は1.73nM(すべてのデータポイントついてn=3)である。単量体M26は、この細胞に基づくアッセイにおいて、検出可能な抑制活性を少ししか示さなかった。
このアッセイは、ヒト細胞を使用するインビトロバイオアッセイにおいて抗c−MET活性に関する単量体または多量体のスクリーニング方法を提供する。試験された多量体または単量体についてのIC50値を決定することにより、最適な分子を特定しそれらの生物学的活性の基準により順位付けすることができる。
(実施例8)
この実施例は、c−MET発現ヒト細胞株に結合する単量体を示す実験を記載する。
インフルエンザ赤血球凝集素(HA)エピトープタグを含むように単量体を構築した。これは、二次検出物質として使用する蛍光タグ抗HA二次抗体により、単量体を一次フローサイトメトリー検出剤として使用することを可能にする。
c−METに対するパニングにより選択した15単量体を、A549ヒト肺腺癌細胞、c−MET−発現細胞株に結合する能力について試験した。ジャーカット(Jurkat)T細胞をC−MET陰性制御細胞株として使用した。
リン酸緩衝食塩水(pH7.4)中の10mMのEDTAを使用し、付着性A549細胞を組織培養プレートから収集した。ジャーカットT細胞を遠心分離法により培養培地から取り除いた。単量体結合を決定するために、2.5X105細胞を、氷上で30分間、100μlのフローサイトメトリー染色緩衝液(「FACS緩衝液」PBS pH7.4、5%ウシ胎児血清、0.01%アジ化ナトリウム)中のc−MET単量体10μMにより染色した。細胞を4ml氷冷FACS緩衝液で1度洗浄し、ついで0.2μgのFITC複合抗HAモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)を加えた100μlのFACS緩衝液中で再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を4ml氷冷FACS緩衝液で一度洗浄し、ついで200μlのFACS緩衝液中で再懸濁し、FACSCalibur Flow Cytometer(BD Biosciences)を使用して分析した。データを収集し、CellQuest Pro(BD Biosciences)を使用して分析した。幾何平均蛍光をA549およびジャーカットT細胞の両方について決定し、FITC複合抗HAモノクローナル抗体のみで染色した細胞株に対する幾何平均蛍光に対して基準化した。
以下は、c−MET陰性ジャーカットT細胞に対するよりむしろc−MET陽性A549細胞に対しての、c−MET特異的単量体の優先的な結合を示す。
これらのデータは、抗c−MET単量体がA549ヒト肺腺癌(c−MET陽性細胞株)には結合するが、ジャーカットT細胞(c−MET陰性細胞株)には結合しないことを示す。このフローサイトメトリーに基づく方法は、他の細胞表面タンパク質の状況における標的に対する特異的単量体結合を確認することについて有用である。野生型c−METへの単量体結合を示すことに加え、この方法はまた、単量体が、細胞への非特異的結合を少ししかまたは全く表さないことを示す。
(実施例9)
この実施例は、HGF誘導細胞散乱の単量体阻害を示すために設計した実験を記載する。
HGFは、上皮細胞における運動性の表現型を誘導する「散乱因子」として特定した。HGFを添加すると、上皮細胞クラスターはばらばらに砕け、細胞はそれぞれから離れて移動しまたは散乱する。
組み換えヒトHGF添加後24時間の過程にわたって散乱する詰まったクラスターの形成基準の限界希釈により、A549ヒト肺腺癌の単一細胞クローン(A549−SCと称する)を単離した。このクローンを、全ての後続の実験において使用した。
A549−SCを、10%FBSを補充したF−12培地内の96ウェルプレート中に25細胞数/ウェルで平板接種した。20〜30の細胞のクラスターが認識できるまで、およそ4日間、細胞を培養した。
4日後、培地を細胞から取り除き、50μl/ウェルの容量の無血清F−12培地内の単量体希釈液と取り換えた。更に、ヒトc−METの細胞外ドメインと免疫グロブリンFcドメイン(c−METFc)の組み換え溶解タンパク質を、これらの実験(R&D Systems)の陽性対照として使用した。5%CO2内、37℃で1時間インキュベーション後に、無血清F−12培地内のウェルにつき50μlの40ng/mlの組み換えHGFを加え、20ng/ml HGFの最終濃度が得られた。HGFが欠けている対照ウェルも含めた。ついで、プレートを5%CO2内、37℃で24時間インキュベートした。24時間後、培地をプレートから取り除き、細胞を室温で15分間、100%メタノールで固定化し、ついで室温で1時間、30%エタノール中0.2%クリスタルバイオレットで染色した。染色した細胞をリン酸緩衝食塩水で洗浄し、ついで写真撮影した。
20ng/ml(およそEC50)のc−METリガンドは、A549−SC細胞において細胞散乱応答を誘導する。予想したような不適切な特異性の単量体(陰性対照)は、この散乱応答を阻害しなかった。対照的に、0.5μMのc−MET−Fc(陽性対照)および1μMの抗c−MET単量体Avimerの両方は、HGF−誘導散乱応答を部分的に逆転させた。これらのデータは、抗c−MET単量体が、陽性対照阻害因子c−MET−Fcの匹敵する濃度と少なくとも同程度の散乱応答を阻害できることを示している。
c−MET結合単量体および二量体
以下は、特定し、配列相同性により集団化したc−MET単量体の概要を提供する。10のファミリーが存在し、ここで同じファミリーの成員は関連する配列を有する。
情報は以下のように要約することができる。ブラケットの配列(「[]」)は、1つの位置の交互のアミノ酸を示す。
ファミリー10アライメントに基づき、本発明はc−METに結合し、Aドメイン骨格内の第3システインに直接先行するGRまたはKR配列を有する、非天然単量体ドメインを含むポリペプチドを提供する。
それぞれのc−MET結合ファミリーの詳細は以下のとおりである。ダッシュ(「−」)はアラインメントの目的のために挿入されており、タンパク質内の位置を表してはいない。
Fam10単量体ドメインを、更にサブファミリーに分割することができる(「10A」、「10B」等と示す)。以下に様々なサブファミリーに関するコンセンサスモチーフを列挙する。
全てのFam10サブファミリーのいくつかのコンセンサス配列を生じた。
10A−E CpaxEFxCxNGrCIPxxWxCDGddDCGDxSDExxC
10A−E CxxxEFxCxNGxCIPxxWxCDGxdDCGDxSDExxC
したがって、Aドメイン骨格を有し、配列:
EFXCXNGXCIPXXWXCDGXDDCGDXSDE
を含むc−MET−結合単量体ドメインは、本発明に含まれる。
以下のものは、c−MET結合二量体、すなわち、それぞれc−METに結合する2つの単量体ドメインを含むポリペプチドを提供する。二量体のそれぞれのファミリーに続く表は、ファミリー成員のアラインメントに基づくコンセンサスモチーフを表す。下の名称「Fam」は、二量体ファミリーを指し、これは上に列挙した単量体ファミリーとは異なる。
下のコンセンサス配列は、疑問符(「?」)を含む。これらは、存在し得るまたは存在し得ない位置を示す。
(実施例11)
ヒトIgG、および/またはカニクイザルIgGを含む他の種からのIgG(総称してIgGと呼ぶ)と結合する単量体または多量体を、本質的に実施例7で記載の方法により特定した。
以下のIgG−結合単量体を特定した。二量体のそれぞれのファミリーに続く表は、ファミリー成員のアラインメントに基づくコンセンサスモチーフを表す。
Aドメイン単量体に結合するファミリー2 IgGを要約するモチーフは以下。
Aドメイン単量体に結合するファミリー3 IgGを要約する2つのモチーフは以下。
ファミリー3アラインメントに基づいて、本発明は、IgGと結合しAドメイン骨格内の第3のシステインに直接先行の配列SSGRを有する、非天然単量体ドメインを含むポリペプチドを提供する。
(実施例10)
この実施例は、様々な動物種からのIgGについてIgG−結合単量体の結合親和性を示す。
表示の種からの全てのIgG分画を0.2ug、96−ウェルMaxisorpプレート(Nunc)の二重ウェル内に固定化し、1%BSAでブロックした。ついで精製ドメインの段階希釈を加え、結合タンパク質の量をHRP連結高親和性抗HA二次抗体により標準ELISA方法を使用して定量した。データは、非線形ベストフィットアルゴリズムを使用して、1:1結合モデルに合わせKD(親和性)を決定した。
(実施例11)
本実施例は、IgG結合Avimerドメイン(Ig−M02)の存在により多量体に与えられた薬物動態学的半減期を示すために設計された実験を記載する。
AvimerコンストラクトC242は、Avimerドメイン(〜15KDa)の三量体である。N末端AvimerドメインはIg−M02である。3匹のカニクイザルに、125Iで痕跡−標識した1mg/kg一回用量のAvimerC242を注射した。サル1および2は静脈内投与を受け;サル3は筋肉内投与を受けた。血清試料が得られ、図10で示した時間(288時間まで)125I cpmについて評価した。
この実験内で観察された末端血清半減期は53時間までであり、これは相対的に、ヒトにおいて予想される106時間までの半減期に相当する。マウスにおける同様の実験において、7〜9時間の末端半減期が観察され、より小さいサイズのげっ歯動物と一致する。更に、i.m.注射したおよびi.v.注射した動物についてのプロットが収束し、注射前約12時間以降はほぼ同じになるので、本発明者は、単量体がインビボで高い生物学的利用能を表すことを推論する。
53時間は、このサイズのタンパク質に関して予測以上に有意に長い。例えば、マーモセットにおける20KDaのサイトカインインターロイキン6の血清半減期は、4〜6時間である(Ryffel,B.et al., Blood 83, 2093−102(1994))。したがってIgG−結合Ig−M02ドメインは、ヒト被験者において少なくとも週1回の投与を可能にするように、充分に長い半減期を与える。
前述の発明を、明快さおよび理解のためにいくらか詳細に記載したが、本発明の真の範囲からはずれることなく、形態および詳細の様々な変更がされうることは、この開示の読解によりこの分野の当業者にとって明白である。例えば、上記の全ての技術、方法、組成、装置およびシステムは、様々な組み合わせで使用することができる。ここで引用した全ての出版物、特許、特許出願または他の文書があたかもそれぞれの個別の出版物、特許、特許出願または他の文書が全ての目的のために参照により個別に組み込まれるとそれぞれ指示されたかのように、全ての目的のために同程度に、これらの全体を、参照により組み込まれる。