本発明の詳細な説明
定義
本発明がより容易に理解されるよう、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明全体を通して示される。
本明細書において用いる“免疫応答”の語句は、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の、侵入性病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌細胞、または自己免疫もしくは病的炎症の場合には正常なヒト細胞もしくは組織を、選択的に傷害し、破壊し、または人体から除去する作用をいう。
本明細書において用いる“シグナル伝達経路”または“シグナル伝達活性”の語句は、一般的にタンパク質-タンパク質相互作用、例えば受容体への成長因子の結合によって開始され、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達をもたらす生化学的因果関係をいう。LRP6 に関して、該伝達は、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における1以上のタンパク質上の1以上のチロシン、セリンまたはスレオニン残基の特異的リン酸化を含む。最後から2番目のプロセスは通常、核の事象を含み、遺伝子発現の変化をもたらす。
本明細書において用いる“Wnt シグナル伝達経路”の語句は、分泌型タンパク質リガンドの Wnt ファミリーのメンバーが LRP および Frizzled(FZD)の受容体複合体に結合し、それによりβ-カテニンが核内に移動し、LEF/TCF 転写因子と相互作用し、標的遺伝子の発現を活性化することができる、古典的 Wnt 経路をいう。Wnt シグナル伝達経路は、Wnt レポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載される Wnt に指揮されるシグナル伝達の他の基準(例えば LRP6 のリン酸化、β-カテニンの安定化および核移行、細胞の増殖/生存)を用いて測定することができる。
“Wnt 1 シグナル伝達経路”の語句は、Wnt1 リガンドおよび Wnt1 結合リガンドのクラス、例えば Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt9a、Wnt10a または Wnt10b と相互作用する LRP6 によって活性化される古典的 Wnt 経路をいう。
“Wnt 3 シグナル伝達経路”の語句は、Wnt3 または Wnt3a リガンドと相互作用する LRP6 によって活性化される古典的 Wnt 経路をいう。
“LRP6”の用語は、受入番号NP002327において定義されるヒト LRP6 をいう。
本明細書において用いる“抗体”の用語は、(例えば結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって) LRP6 エピトープと相互作用し、シグナル伝達を阻害する抗体全体(whole antiboy)をいう。天然の“抗体”は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において VH と略す)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2 および CH3 で構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において VL と略す)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CL で構成される。VH および VL 領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各々の VH および VL は、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順番で並んだ3つの CDR および4つの FR で構成される: FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。“抗体”の用語は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体、キメラ抗体、Fab 断片、F(ab')断片、および抗イディオタイプ(抗-Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗-Id抗体を含む)、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合性断片を含む。抗体は、いかなるアイソタイプ(例えば IgG、IgE、IgM、IgD、IgA および IgY)、クラス(例えば IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1 および IgA2)またはサブクラスのものであってもよい。
軽鎖および重鎖は共に、構造上および機能上の相同性の領域に分けられる。“定常”および“可変”の用語は、機能的に用いられる。この点に関し、軽鎖(VL)および重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することが理解される。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2 または CH3)の定常ドメインは、重要な生物学的特性、例えば分泌、経胎盤移動性、Fc 受容体結合、補体結合等を与える。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、それが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠く離れるにつれて大きくなる。N-末端は可変領域であり、C-末端は定常領域である; CH3 および CL ドメインは、それぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。特に、“抗体”の用語は、図12A-Dに示される IgG-scFv 形式を具体的に含む。
“受容体結合ドメイン”または“RBD”の用語は、(例えば結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)標的受容体上の結合部位と特異的に相互作用する、結合分子(例えば抗体)の部分をいう。RBD はまた、(例えば結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって) LRP6 エピトープと特異的に相互作用し、シグナル伝達を阻害する能力を保持している、抗体の1以上の断片をもいう。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、scFv、Fab 断片、VL、VH、CL および CH1 ドメインからなる一価の断片; F(ab)2 断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つの Fab 断片を含む二価の断片; VH および CH1 ドメインからなる Fd 断片; 抗体の単一のアームの VL および VH ドメインからなる Fv 断片; VH ドメインからなる dAb 断片 (Ward et al.、(1989) Nature 341:544-546); および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
さらに、Fv 断片の2つのドメインである VL および VH は別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え方法を用いて、VL および VH 領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる; 例えば Bird et al., (1988) Science 242:423-426; および Huston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883 を参照)として作成されることを可能にする合成リンカーによって連結することができる。かかる単鎖抗体も、“抗体断片”の用語の中に包含されることを意図されている。これらの抗体断片は当業者に公知の常套の方法を用いて得られ、該断片はインタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
抗体断片は、“単一ドメイン抗体”、“マキシボディ(maxibody)”、“ミニボディ(minibody)”、“ダイアボディ(diabody)”、“トリアボディ(triabody)”、“テトラボディ(tetrabody)”、“v-NAR”および“ビス-scFv”(例えば、Hollinger and Hudson、(2005) Nature Biotechnology 23: 1126-1136 を参照)の中に組み込むこともできる。抗体断片は、ポリペプチド、例えばフィブロネクチンIII型(Fn3)に基づく足場(フィブロネクチンポリペプチドモノボディ(monobody)を記載する米国特許第6,703,199号を参照)の中に移植することができる。
抗体断片は、相補的軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域のペアを形成するタンデムな Fv セグメントのペア(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子の中に組み込むことができる(Zapata et al.、(1995) Protein Eng. 8:1057-1062; および米国特許第5,641,870号)。
RBD は、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ユニボディ(unibody)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR およびビス-scFv (例えば Hollinger and Hudson、(2005) Nature Biotechnology 23: 1126-1136 を参照)、二特異性単鎖ダイアボディ、すなわち2つの別個のエピトープに結合するよう設計された単鎖ダイアボディ、をも包含する。RBD は、エピトープに特異的に結合する抗体様分子または抗体模倣物をも含み、これらに限定されないが、ミニボディ、マキシボディ、Fn3 に基づくタンパク質足場、アンキリンリピート(Ankrin repeat)(DARpinとしても知られる)、VASP ポリペプチド、トリ膵臓ポリペプチド(aPP)、テトラネクチン、アフィリリン(Affililin)、ノッチン(Knottin)、SH3 ドメイン、PDZ ドメイン、テンダミスタット(Tendamistat)、ネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin)、プロテインAドメイン、リポカリン、トランスフェリンおよびクニッツ(Kunitz)ドメインが挙げられ、これらは本発明の範囲内である。
“多価抗体”の用語は、1より大きい価数を有する単一の結合分子をいい、ここで“価数”とは、1分子の抗体構造につき存在する抗原結合部分の数として説明される。そのため、該単一の結合分子は、標的受容体上の1より多くの結合部位に結合することができる。多価抗体の例としては、これらに限定されないが、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体等、ならびに二特異性抗体および二パラトープ抗体が挙げられる。例えば、LRP6 受容体に関して、多価抗体(例えば LRP6 二パラトープ抗体)は、LRP6 のそれぞれβ-プロペラ 1 ドメイン結合部位に対する結合部分およびβ-プロペラ 3 ドメイン結合部位に対する結合部分を有する。
“多価抗体”の用語は、2つの別々の標的受容体に対する1より多くの抗原結合部分を有する単一の結合分子をもいう。例えば、LRP6 標的受容体および LRP6 ではない第二の標的受容体(例えば ErbB、cmet、IGFR1、Smoothened、Notch 受容体)の両方に結合する抗体。一つの態様において、多価抗体は、4つの受容体結合ドメインを有する四価抗体である。四価の分子は、二特異性であってその標的受容体上の各結合部位に対して二価であるものであってもよい。
多価抗体は、例えば、(例えば細胞表面受容体に結合し、活性化または抑制シグナルの伝達または阻害をもたらすことによって)細胞活性化を調節するか、(例えば細胞シグナルに誘導される経路によって)細胞死をもたらすか、または(例えば細胞殺傷を媒介もしくは促進することによって、または生体が利用可能な物質の量を調節することによって)対象における疾患または障害を調節する生物学的作用を媒介する。
本明細書において用いる“単離された抗体”の語句は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(例えば、LRP6 に特異的に結合する単離された抗体は、LRP6 以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まないものである)。しかし、LRP6 に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の種の LRP6 分子に対する交差反応性を有するものであってもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まないものであってもよい。
本明細書において用いる“一価抗体”の用語は、標的受容体、例えば LRP6 上の、単一のエピトープに結合する抗体をいう。
本明細書において用いる“二価抗体”の用語は、少なくとも2つの同一の標的受容体上の2つのエピトープに結合する抗体(例えば、2つの LRP6 受容体のβ-プロペラ 1 ドメインに結合する抗体、あるいは、2つの LRP6 受容体のβ-プロペラ 3 ドメインに結合する抗体)をいう。二価抗体は、標的受容体を互いに架橋することもできる。“二価抗体”は、少なくとも2つの同一の標的受容体上の2つの異なるエピトープに結合する抗体をもいう。
本明細書において用いる“二パラトープ抗体”の用語は、同じ標的受容体上の2つの異なるエピトープに結合する抗体、例えば、単一の LRP6 受容体上のβ-プロペラ 1 ドメインおよびβ-プロペラ 3 ドメインに結合する抗体をいう。該用語は、少なくとも2つの LRP6 受容体のβ-プロペラ 1 およびβ-プロペラ 3 ドメインの両方に結合する抗体、例えば四価の二パラトープ抗体をも含む。
本明細書において用いる“二特異性抗体”の用語は、少なくとも2つの異なる標的受容体(例えば LRP6 受容体と LRP6 受容体ではない受容体)上の2以上の異なるエピトープに結合する抗体をいう。
本明細書において用いる“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”の語句は、実質的に同一のアミノ酸配列を有するか又は同じ遺伝源(genetic source)に由来する、抗体、抗体断片、二特異性抗体等を含むポリペプチドをいう。かかる用語は、単一の分子構成の抗体分子の調製物をも含む。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
本明細書において用いる“ヒト抗体”の語句は、フレームワークおよび CDR 領域の両方がヒト起源の配列に由来するものである可変領域を有する抗体を含む。さらに、該抗体が定常領域を含む場合、該定常領域もかかるヒト配列、例えばヒト生殖系列配列に由来するものであるか、またはヒト生殖系列配列の突然変異したバージョンであるか、あるいは、該抗体は、例えば Knappik、et al. (2000. J Mol Biol 296、57-86)に記載されるヒトフレームワーク配列の解析から得られるコンセンサスフレームワーク配列を含むものである。免疫グロブリン可変ドメイン、例えば CDR の構造および位置は、周知の番号付け体系、例えば、Kabat 番号付け体系、Chothia 番号付け体系、または Kabat および Chothia の組み合わせを用いて定義することができる(例えば Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services (1991), eds. Kabat et al.; Al Lazikani et al., (1997) J. Mol. Bio. 273:927 948; Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th edit., NIH Publication no. 91-3242 U.S. Department of Health and Human Services; Chothia et al., (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al., (1989) Nature 342:877-883; および Al-Lazikani et al., (1997) J. Mol. Biol. 273:927-948 を参照されたい)。
本発明のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムなもしくは部位特異的突然変異誘発によって又はインビボの体細胞突然変異によって導入される突然変異、または安定性もしくは製造を促進するための保存的置換)を含んでもよい。しかし、本明細書において用いる“ヒト抗体”の用語は、別の哺乳類の種、例えばマウスの生殖系列に由来する CDR 配列がヒトのフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことを意図していない。
本明細書において用いる“組換えヒト抗体”の語句は、組換えの手段によって調製、発現、作成または単離される全てのヒト抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックまたは染色体導入である動物(例えばマウス)または該動物から調製されたハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離される抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、および、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全てまたは一部を他の DNA 配列へスプライスすることを含む他のいずれかの手段によって調製、発現、作成または単離される抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、フレームワークおよび CDR 領域がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来するものである可変領域を有する。しかし、特定の態様においては、かかる組換えヒト抗体は、インビトロの突然変異誘発(または、ヒト Ig 配列に関してトランスジェニックである動物を用いる場合には、インビボの体細胞突然変異誘発)に供することができ、それにより、該組換え抗体の VH および VL 領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列の VH および VL 配列に由来し且つ関連するが、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然には存在しない可能性がある配列となり得る。
本明細書において用いる“リンカー”の用語は、scFv と IgG を連結するために用いられる、グリシンおよびセリン残基からなるペプチドリンカーをいう。例示的な Gly/Ser リンカーは、アミノ酸配列(Gly-Gly-Ser)2、即ち (Gly2 Ser)n (n は 1 以上の正の整数である)を含む。例えば、n=1、n=2、n=3。n=4、n=5 および n=6、n=7、n=8、n=9 および n=10。一つの態様において、リンカーとしては、これらに限定されないが、(Gly4 Ser)4 または (Gly4 Ser)3 が挙げられる。別の態様において、リンカーは、より良い可溶性のために Glu および Lys 残基が Gly-Ser リンカー内に散在したものである。別の態様において、リンカーは、複数の (Gly2Ser)、(GlySer) または (Gly3Ser) の繰り返しを含む。別の態様において、リンカーは、(Gly3Ser)+(Gly4Ser)+(GlySer) の組み合わせおよび重複を含む。別の態様において、Ser は Ala で置換することができ、例えば、(Gly4Ala) または (Gly3Ala) である。別の態様において、リンカーは Gly、Ser および Pro のいずれかの組み合わせを含む。別のさらなる態様において、リンカーは、モチーフ (GluAlaAlaAlaLys)n を含むものであり、ここで n は 1 以上の正の整数である。
本明細書において用いる“Fc 領域”の用語は、抗体の CH3、CH2、および定常ドメインのヒンジ領域の少なくとも一部を含むポリペプチドをいう。所望により、Fc 領域は、いくつかの抗体クラスに存在する CH4 ドメインを含んでもよい。Fc 領域は、抗体の定常ドメインのヒンジ領域全体を含むものであってもよい。一つの態様において、本発明は、抗体の Fc 領域および CH1 領域を含む。一つの態様において、本発明は、抗体の Fc 領域 CH3 領域を含む。別の態様において、本発明は、抗体の定常ドメインの Fc 領域、CH1 領域および Cカッパ/ラムダ領域を含む。一つの態様において、本発明の結合分子は、定常領域、例えば重鎖定常領域を含む。一つの態様において、かかる定常領域は、野生型の定常領域と比較して改変される。即ち、本明細書に記載される本発明のポリペプチドは、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2 または CH3)および/または軽鎖定常領域ドメイン(CL)の1以上に対する変更または改変を含み得る。例示的な改変としては、1以上のドメインにおける1以上のアミノ酸の付加、欠失または置換が挙げられる。かかる変更は、エフェクター機能、半減期等を最適化するために含めることができる。
本明細書において用いる“結合部位”の用語は、抗体または抗原結合性断片が選択的に結合する標的受容体上の領域を含む。例えば、LRP6 上の結合部位は、β-プロペラ 1 結合ドメイン、β-プロペラ 2 結合ドメイン、β-プロペラ 3 結合ドメイン、およびβ-プロペラ 4 結合ドメインを含む。
本明細書において用いる“エピトープ”の用語は、高い親和性で免疫グロブリンと結合することができるいずれかの決定基(determinant)をいう。エピトープは、ある抗原を特異的に標的とする抗体が結合する該抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗体と直接接触する特定のアミノ酸を含む。もっとも多くの場合、エピトープはタンパク質上に存在するが、いくつかの場合においては、他の種類の分子上、例えば核酸上に存在し得る。エピトープ決定基は、化学的に活性な分子の表面基、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基を含み得、特定の3次元構造特徴、および/または特定の電荷特性を有しうる。
一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または高分子の複雑な混合物中において、標的抗原上のエピトープと結合する。
所与のポリペプチドのエピトープを含む領域は、当該技術分野において周知のエピトープマッピング手法のいずれかを用いて同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66 (Glenn E.Morris、Ed.、1996) Humana Press、Totowa、New Jersey を参照されたい。例えば、直線状エピトープは、例えばタンパク質分子の部分に相当する多数のペプチドを固体支持体上で同時に合成し、該ペプチドが支持体に付着している間に該ペプチドを抗体と反応させることによって、決定し得る。かかる手法は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号; Geysen et al.、(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8:3998-4002; Geysen et al.、(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:78-182; Geysen et al.、(1986) Mol. Immunol. 23:709-715 に記載されている。同様に、立体構造的エピトープは、例えば x 線結晶学および二次元核磁気共鳴によってアミノ酸の空間的高次構造を決定することにより、容易に同定される。例えば、前掲の Epitope Mapping Protocols を参照されたい。タンパク質の抗原性領域も、標準的な抗原性および疎水性プロット、例えば Oxford Molecular Group から入手可能な Omiga version 1.0 ソフトウェアプログラムを使用して計算されるプロットを用いて同定することができる。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルの決定のために Hopp/Woods 法、Hopp et al.、(1981) Proc. Natl. Acad. Sci USA 78:3824-3828 を採用し; 疎水性プロットのために Kyte-Doolittle 法、Kyte et al.、(1982) J.MoI. Biol. 157:105-132 を採用している。
2つの実体間の“特異的結合”の用語は、少なくとも 102M-1、少なくとも 5x102M-1、少なくとも 103M-1、少なくとも 5x103M-1、少なくとも 104M-1、少なくとも 5x104M-1、少なくとも 105M-1、少なくとも 5x105M-1、少なくとも 106M-1、少なくとも 5x106M-1、少なくとも 107M-1、少なくとも 5x107M-1、少なくとも 108M-1、少なくとも 5x108M-1、少なくとも 109M-1、少なくとも 5x109M-1、少なくとも 1010M-1、少なくとも 5x1010M-1、少なくとも 1011M-1、少なくとも 5x1011M-1、少なくとも 1012M-1、少なくとも 5x1012M-1、少なくとも 1013M-1、少なくとも 5x1013 M-1、少なくとも 1014M-1、少なくとも 5x1014M-1、少なくとも 1015M-1、または少なくとも 5x1015M-1 の平衡定数(KA)(kon/koff)での結合を意味する。
LRP6 多価抗体(例えば二パラトープ抗体)と“特異的に(または選択的に)結合する”との語句は、タンパク質および他の生物学的物質(biologics)の異種性集団中における同族の抗原(例えばヒト LRP6)の存在を決定する結合反応をいう。平衡定数(KA)に加えて、本発明の LRP6 多価抗体は、通常、約 5x10-2M未満、10-2M未満、5x10-3M未満、10-3M未満、5x10-4M未満、10-4M未満、5x10-5M未満、10-5M未満、5x10-6M未満、10-6M未満、5x10-7M未満、10-7M未満、5x10-8M未満、10-8M未満、5x10-9M未満、10-9M未満、5x10-10M未満、10-10M未満、5x10-11M未満、10-11M未満、5x10-12M未満、10-12M未満、5x10-13M未満、10-13M未満、5x10-14M未満、10-14M未満、5x10-15M未満、もしくは 10-15M未満またはそれより小さい解離速度定数(KD)(koff/kon)をも有し、非特異的抗原(例えば HSA)に対するその結合親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で LRP6 と結合する。一つの態様において、LRP6 多価抗体は、本明細書に記載される方法または当業者に公知の方法(例えば BIAcore アッセイ、ELISA、FACS、SET) (Biacore International AB、Uppsala、Sweden)を用いて評価される 3000 pM未満、2500 pM未満、2000 pM未満、1500 pM未満、1000 pM未満、750 pM未満、500 pM未満、250 pM未満、200 pM未満、150 pM未満、100 pM未満、75 pM未満、10 pM未満、1 pM未満の解離定数(Kd)を有する。
本明細書において用いる“Kassoc”または“Ka”の用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度をいい、他方、本明細書において用いる“Kdis”または“Kd”の用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度をいう。本明細書において用いる“KD”の用語は、Ka に対する Kd の比(即ち Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数をいう。抗体についての KD 値は、当該分野において十分に確立された方法を用いて決定することができる。抗体の KD を決定する方法は、表面プラズモン共鳴法を用いること、またはバイオセンサー系、例えば Biacore(登録商標) システムを用いることである。
本明細書において用いる“親和性”の用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原の間の相互作用の強さをいう。各々の抗原性部位内において、抗体“アーム”の可変領域は、多数の部位において弱い非共有結合的力を介して抗原と相互作用する; 相互作用が大きければ大きいほど、親和性は強くなる。
本明細書において用いる“アビディティー”の用語は、抗体-抗原複合体の全体的安定性または強度の有益な尺度をいう。それは3つの主な要因: 抗体エピトープ親和性; 抗原および抗体両方の価数; および相互作用する部分の構造的配置によって制御される。究極的に、これらの要因は、抗体の特異性、即ち、特定の抗体が正確な(precise)抗原エピトープに結合している可能性を規定する。
本明細書において用いる“Wnt 1”の用語は、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt9a、Wnt10a、または Wnt10b をいう。
本明細書において用いる“Wnt 3a”の用語は、Wnt3a および Wnt3 をいう。
本明細書において用いる“増強する”の用語は、Wnt リガンドの存在下における抗体の断片の全長 IgG LRP6 抗体への変換により Wnt シグナルが活性化され、亢進する過程をいう。
“有意な増強が無い”または“増強を回避する”の用語は、同じエピトープに結合する対照抗体またはそれらの断片と比較して活性化も亢進もされていない Wnt シグナルをいう。有意な増強が無いことは、対照抗体またはそれらの断片よりも、少なくとも 10%、少なくとも 20%、少なくとも 30%、少なくとも 40%、少なくとも 50%、少なくとも 60%、少なくとも 70%、少なくとも 80%、少なくとも 90%、少なくとも 100% 低いものであり得る。
本明細書において用いる“クラスター”の用語は、LRP6 受容体と共に集合し又は集団となり、Wnt シグナル伝達を増強するあらゆるタンパク質をいう。かかるタンパク質の例としては、これらに限定されないが、Wnt1 リガンド、Wnt3a リガンドおよび Wnt3 リガンドが挙げられる。これらのタンパク質は、多量体化、例えば2つの内在性 LRP6 受容体の二量体化を引き起こし得る。かかる二量体化は、LRP6 の増大した相互作用に起因する増大したアビディティーをもたらし得、Wnt リガンドの存在下において Wnt シグナルを増強し得る。
“保存的に改変された変異体”の語句は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関し、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいうか、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列をいう。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が所与のタンパク質をコードする。例えば、コドン GCA、GCC、GCG および GCU はすべてアミノ酸アラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが特定されるあらゆる位置において、該コドンは、コードされるポリペプチドを変化させることなく、記載した対応するコドンのいずれかに変更することができ、かかる核酸変異は“サイレント変異”であり、保存的に改変された変異の一種である。本明細書における、ポリペプチドをコードするすべての核酸配列は、該核酸のあらゆる可能なサイレント変異をも表す。当業者は、核酸中の各々のコドン(通常メチオニンの唯一のコドンである AUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンである TGG を除く)を改変して機能的に同一の分子を生み出し得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント変異が、記載された各々の配列中に潜在している。
ポリペプチド配列に関し、“保存的に改変された変異体”は、アミノ酸の、化学的に類似するアミノ酸による置換をもたらす、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加を含む。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は当該技術分野において周知である。かかる保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログおよび対立遺伝子に対して追加的なものであり、これらを除外しない。以下の8つのグループは、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む: 1) アラニン(A)、グリシン(G); 2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E); 3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q); 4) アルギニン(R)、リジン(K); 5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V); 6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W); 7) セリン(S)、スレオニン(T); および 8) システイン(C)、メチオニン(M) (例えば Creighton、Proteins (1984)を参照)。いくつかの態様において、“保存的配列改変”の用語は、あるアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を与えず、また有意に変化もさせないアミノ酸改変をいうために用いられる。
“交差遮断する(cross-block)”、“交差遮断される”および“交差遮断”の用語は、標準的な競合結合アッセイにおいて他の抗体または結合物質と LRP6 との結合に干渉する多価抗体の能力を意味するために本明細書において互換的に用いられる。
多価抗体が別の抗体または結合分子と LRP6 との結合に干渉することができる能力または程度、およびそれを本発明による交差遮断と言えるか否かは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。1つの適切なアッセイとしては、表面プラズモン共鳴の技術を用いて相互作用の程度を測定することができる Biacore テクノロジー(例えば BIAcore 3000 装置 (Biacore、Uppsala、Sweden)を用いることによる)の使用が挙げられる。交差遮断を測定するための別のアッセイは、ELISAに基づくアプローチを用いるものである。
本明細書において用いる“最適化された”の用語は、産生細胞または生物、一般的には真核細胞、例えばピキア(Pichia)の細胞、トリコデルマ(Trichoderma)の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞において好適なコドンを用いたアミノ酸配列をコードするよう変更されたヌクレオチド配列をいう。最適化されたヌクレオチド配列は、“親”配列としても知られる出発ヌクレオチド配列によって元々コードされていたアミノ酸配列を完全に又は可能な限り多く保持するよう、操作される。
様々な種の LRP6 に対する多価抗体の結合能力を評価するための標準的なアッセイは、当該技術分野において公知であり、例えば ELISA、ウエスタンブロットおよび RIA が挙げられる。適切なアッセイは、実施例において詳細に記載されている。多価抗体の結合動態(例えば結合親和性)も、当該技術分野において公知の標準的なアッセイ、例えば Biacore(商標) 解析によって評価することができる。LRP6 の機能的特性に対する多価抗体の効果を評価するためのアッセイ(例えば、受容体結合アッセイ、Wnt 経路の調節、または IgG 産生)は、実施例においてさらに詳細に記載されている。
したがって、当該技術分野において公知の方法および本願明細書に記載される方法によって決定される、これら LRP6 の機能的特性(例えば、生化学的、免疫化学的、細胞性、生理学的または他の生物学的活性等)の1以上を“阻害する”多価抗体は、該多価抗体の非存在下(例えば、または無関係の特異性を有する対照抗体が存在する場合)において見られる活性と比較した、特定の活性の統計的に有意な減少に関連すると理解される。LRP6 の活性を阻害する多価抗体は、かかる統計的に有意な減少を、測定されるパラメータの少なくとも 10%、少なくとも 50%、80% または 90% もたらし、特定の態様においては、本発明の抗体は、LRP6 の機能的活性の 95% より多く、98% より多く、または 99% より多くを阻害し得る。
2以上の核酸またはポリペプチド配列に関し、“パーセント同一”または“パーセント同一性”の語句は、同一である2以上の配列または部分配列(subsequence)をいう。以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または手動アラインメントおよび目視検査によって測定される比較ウィンドウまたは指定した領域にわたる最大の対応(maximum correspondence)に対して比較および整列された場合に、2つの配列が同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定されたパーセンテージ(即ち、特定された領域にわたる 60% の同一性、所望により 65%、70%、75%、80%、85%、90%、95% または 99%、あるいは、特定されていない場合には、配列全体にわたる)を有していれば、2つの配列は“実質的に同一”である。所望により、同一性は、長さが少なくとも約 50 ヌクレオチド(または 10 アミノ酸)である領域にわたって、またはより好ましくは長さが 100 から 500 または 1000 またはそれ以上のヌクレオチド(または 20、50、200 またはそれ以上のアミノ酸)である領域にわたって存在する。
配列比較に関し、通常は1つの配列が参照配列としての役割を果たし、試験配列は該参照配列と比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列の座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを用いてもよく、あるいは代替のパラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
本明細書において用いる“比較ウィンドウ”は、2つの配列(ある配列と参照配列)が最適に整列された後、ある配列を同じ数の連続する位置の参照配列と比較し得る、20 から 600、通常約 50 から約 200、より通常には約 100 から約 150 からなる群より選択される連続する位置の数のいずれかのセグメントへの言及を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith および Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482c の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman および Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443 の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson および Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI における GAP、BESTFIT、FASTA、および TFASTA)によって、または、手動アラインメントおよび目視検査(例えば Brent et al.、(2003) Current Protocols in Molecular Biology を参照)によって、行うことができる。
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの2つの例は、それぞれ Altschul et al.、(1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402; および Altschul et al.、(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410 に記載されている、BLAST および BLAST 2.0 アルゴリズムである。BLAST 解析を行うためソフトウェアは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列した場合に一致するかまたはいくつかの正の値の閾値スコア T を満たすクエリー配列中の長さ W の短いワードを同定することにより、最初に高スコア配列ペア(HSP)を同定することを含む。T は、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(前掲の Altschul et al.)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含むより長い HSP を見出す検索を開始するための種としての役割を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増大させ得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータ M (一致する残基のペアに対する報酬スコア; 常に > 0) および N (ミスマッチ残基に対するペナルティスコア; 常に < 0) を用いて算出される。アミノ酸配列については、累積スコアを算出するためにスコアリングマトリックスが用いられる。各方向におけるワードヒットの伸長は、以下の場合に停止される: 累積アラインメントスコアがその最大達成値から数(quantity) X だけ減少するとき; 1以上の負のスコアを与える残基アラインメントの蓄積のため、累積スコアがゼロ以下となるとき; または、いずれかの配列の末端に到達するとき。BLAST アルゴリズムのパラメータ W、T および X は、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTN プログラム(ヌクレオチド配列用)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4 および両鎖比較をデフォルトとして用いている。アミノ酸配列に関して、BLASTP プログラムは、3のワード長、および 10の期待値(E)、および BLOSUM62 スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 を参照)、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖比較をデフォルトとして用いている。
BLAST アルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析をも実行する(例えば Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 を参照)。BLAST アルゴリズムによって提供される類似性の一つの尺度は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる可能性の指標を提供する最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約 0.2 未満、より好ましくは約 0.01 未満、最も好ましくは約 0.001 未満であるとき、核酸は参照配列と類似すると考えられる。
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性も、ALIGN プログラム(バージョン 2.0)に組み込まれている E. Meyers および W. Miller のアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci. 4:11-17 (1988))を使用し、PAM120 重み付き残基表、12のギャップ長ペナルティおよび 4のギャップペナルティを用いて決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCG ソフトウェアパッケージ(www.gcg.com において入手可能)中の GAP プログラムに組み込まれている Needleman および Wunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970)) アルゴリズムを使用し、Blossom 62 マトリックスまたは PAM250 マトリックスのいずれか、および 16、14、12、10、8、6 または 4 のギャップ重みおよび 1、2、3、4、5 または 6 の長さ重みを用いて決定することができる。
上記した配列同一性のパーセンテージ以外の、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載する通り、第一の核酸にコードされるポリペプチドが、第二の核酸にコードされるポリペプチドに対して作成された抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換のみによって異なる場合、ポリペプチドは通常、第二のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載する通り、該2つの分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらなる別の指標は、同じプライマーを用いて該配列を増幅できることである。
本明細書において、“核酸”の語句は、“ポリヌクレオチド”の用語と互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよび一本鎖または二本鎖いずれかの形態におけるその重合体をいう。該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、かつ、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される、合成、天然および非天然の、既知のヌクレオチド類似体または改変された骨格残基または結合を含む核酸を包含する。かかる類似体の例としては、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、メチルホスホナート、キラル-メチルホスホナート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
特に断りの無い限り、特定の核酸配列は、明示される配列のみならず、その保存的に改変された変異体(例えば縮重コドン置換)および相補配列をも黙示的に包含する。具体的には、以下において詳細に記載する通り、縮重コドン置換は、1以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基(mixed-base)および/またはデオキシイノシン残基によって置換されている配列を生成することによって達成し得る(Batzer et al., (1991) Nucleic Acid Res. 19:5081; Ohtsuka et al., (1985) J. Biol. Chem. 260:2605-2608; および Rossolini et al., (1994) Mol. Cell. Probes 8:91-98)。
“作動可能に連結”の語句は、2以上のポリヌクレオチド(例えばDNA)のセグメント間の機能的関係をいう。通常、それは転写調節配列と転写される配列との機能的関係をいう。例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞または他の発現系においてコード配列の転写を刺激または調節する場合、該コード配列に作動可能に連結している。一般的に、転写される配列に作動可能に連結しているプロモーター転写調節配列は、該転写される配列と物理的に連続しており、即ち、それはシス作用性である。しかし、いくつかの転写調節配列、例えばエンハンサーは、それが転写を増強するコード配列と物理的に連続しているかまたは近接して位置している必要がない。
本明細書において、“ポリペプチド”および“タンパク質”の用語は、アミノ酸残基の重合体をいうために互換的に用いられる。該用語は、天然アミノ酸の重合体および非天然アミノ酸の重合体のみならず、1以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学的模倣物であるアミノ酸重合体に適用される。特に断りのない限り、特定のポリペプチド配列は、その保存的に改変された変異体をも黙示的に包含する。
“対象”の用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類および非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類を含む。特記した場合を除き、本明細書において“患者”または“対象”の用語は互換的に用いられる。
“抗癌剤”の用語は、細胞増殖性障害、例えば癌を処置するために用いることができるあらゆる物質を意味し、細胞傷害性物質、化学療法剤、放射線治療および放射線治療剤、標的化された抗癌剤、および免疫治療剤を含む。
“腫瘍”とは、悪性であるか良性であるかに関わらず、腫瘍性の細胞成長および増殖、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織をいう。
“抗腫瘍活性”の用語は、腫瘍細胞の増殖速度、生存度または転移活性の低下を意味する。抗腫瘍活性を示す一つの可能な方法は、治療の間に生じる異常細胞の増殖速度の低下、または腫瘍サイズ安定性または減少を示すことである。かかる活性は、これらに限定されないが、異種移植モデルを含む受け入れられたインビトロまたはインビボの腫瘍モデルを用いて評価することができる。
“悪性腫瘍(malignancy)”の用語は、非良性腫瘍または癌をいう。本明細書において用いる場合、“癌”の用語は、調節解除された又は制御されない細胞増殖に特徴付けられる悪性腫瘍を含む。例示的な癌としては、以下が挙げられる: 癌腫、肉腫、白血病およびリンパ腫。“癌”の用語は、原発性悪性腫瘍(例えば、その細胞が対象の体における元の腫瘍の部位以外の部位へ移動していないもの)および二次悪性腫瘍(例えば、転移、即ち元の腫瘍の部位とは異なる二次的部位への腫瘍細胞の移動から生じるもの)を含む。
本発明の様々な側面を、以下のセクションおよびサブセクションにおいてさらに詳細に説明する。
LRP6 および Wntシグナル伝達経路
本発明は、LRP6 多価抗体およびその使用に関する。LRP6 に向けられた分子による Wnt シグナル伝達の阻害は、古典的 Wnt シグナル伝達の喪失をもたらす。したがって、多価抗体による LRP6 受容体機能の拮抗作用は Wnt リガンドシグナル伝達を阻害し、異常な古典的 Wnt シグナル伝達に関連する疾患、例えば癌を助けるものとなる。特に、LRP6 多価抗体は、様々な疾患環境において、Wnt1 または Wnt3a クラスのタンパク質によって媒介されるシグナル伝達を特異的に増大または減少させることができる。
Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の誤調節は、様々なヒト疾患、例えば癌および骨障害と関連している。これらの疾患において Wnt シグナル伝達のバランスを回復させる分子は、治療的可能性を有し得る。ファージに基づくパニングを用いて、Wnt シグナル伝達を阻害または増強する LRP6 抗体が同定された。注目すべきことに、2つのクラスの LRP6 拮抗性抗体が同定された。1つのクラスの抗体は Wnt1 によって表される Wnt タンパク質を特異的に阻害し、他方、第2のクラスは Wnt3a によって表される Wnt タンパク質を特異的に阻害する。エピトープマッピング実験により、Wnt1 特異的 LRP6 抗体および Wnt3a 特異的 LRP6 抗体がそれぞれ LRP6 の1番目のβ-プロペラおよび3番目のβ-プロペラに結合することが示され、Wnt1 および Wnt3a タンパク質は LRP6 の異なるβ-プロペラ領域に結合することが示唆される(その内容全体が参照により本明細書に取り込まれている、2008年10月31日出願の国際出願番号PCT/EP2008/064821を参照されたい)。
LRP6 のプロペラ 3 ドメインのさらなる特徴決定により、抗体との相互作用に関与するかかるドメイン中の残基が同定された。水素-重水素交換(HDx)質量分析(MS)を用いてプロペラ 3 の YWTD-EGF 領域内の抗体結合部位が同定され、該部位はプロペラ 3 ドメインのブレード(blade) 1 および 6 間の凹面に相当するものであった。
Wnt シグナル伝達経路は、胚発生および出生後の組織維持において重要である。これは、細胞の増殖、運動および細胞生存の時間的および空間的調節を制御する特定の遺伝子セットを指揮することによって達成される(Barker and Clevers (2006) Nature Rev. 5:997 において概説されている)。この経路の適切な調節は、組織恒常性を維持するために重要である。この経路の慢性的活性化は、制御されない細胞増殖および生存を促進し、その結果、細胞増殖性疾患、例えば癌の発生を駆動し得る。あるいは、この経路の異常な阻害は、多くの疾患状態、例えば骨量の減少および他の骨疾患をもたらし得る。Wnt タンパク質は、Frizzled 受容体および、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)関連タンパク質(LRP)のメンバーである2つの細胞表面受容体: LRP5 および LRP6 のうち一方と相互作用することによって、下流のシグナル伝達を開始する(He et al.,(2004) Development 31:1663-1677 において概説されている)。
古典的 Wnt シグナル伝達における LRP6 の役割は、遺伝的研究を通じて明らかにされた。LRP6 を欠く突然変異体マウスは、いくつかの個々の Wnt 遺伝子における突然変異と同様の複合的表現型を示した(Pinson et al.、(2000) Nature 407:535-538)。アフリカツメガエル胚において、ドミナントネガティブの LRP6 がいくつかの Wnt タンパク質によるシグナル伝達を遮断した一方、LRP6 の過剰発現は Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化した(Tamai et al.、(2000) Nature 407:530-535)。さらに、細胞が古典的 Wnt シグナル伝達に応答するために LRP6 または LRP5 のいずれかの発現が必要であることが示されている(前掲の He et al.、2004 において概説されている)。
LRP5 と LRP6 は相同性が高く、その細胞外および細胞内ドメインにおいてそれぞれ 73% および 64% の同一性を有する。それらは胚形成の間および成熟組織において広く共発現しており、いくらかの機能的冗長性を有する。
LRP5 および LRP6 の細胞外ドメインは、3つの基本的ドメインを含む: 1) YWTD(チロシン、トリプトファン、スレオニン、アスパラギン酸)型β-プロペラ領域、2) EGF(上皮成長因子)様ドメイン、および 3) LDLRタイプA(LA)ドメイン。
YWTD型β-プロペラ領域は、各々 43-50 アミノ酸残基の6つの YWTD リピートを含み、6枚羽根のβ-プロペラ構造を形成する。LRP5 および LRP6 の中には、各々の後に保存されたシステイン残基を有する約 40 アミノ酸残基を含む EGF様ドメインが続き、次いで3つの LA ドメインが続く、4つの YWTD型β-プロペラ領域が存在する。(Springer et al.、(1998) J. Mol. Biol. 283:837-862; Jeon et al.、(2001) Nat. Struct. Biol. 8:499-504)。β-プロペラ-EGF様ドメインは、細胞外リガンドと結合するようである。LRP6 の細胞外ドメインは、アミノ酸残基 19 から 1246 によって規定され、それぞれβ-プロペラ領域 1、2、3 および 4 に対応する、アミノ酸残基 43-324、352-627、654-929 および 957-1250 における4つのβ-プロペラドメインを含む。プロペラドメイン 1-2 はアミノ酸 19-629 を含み、プロペラドメイン 3-4 はアミノ酸 631-1246 を含む。
LRP6 抗体
本発明は、LRP6(例えばヒト LRP6、カニクイザル LRP6)に特異的に結合する抗体を提供する。いくつかの態様において、本発明は、ヒトおよびカニクイザルの両方の LRP6 に特異的に結合する抗体を提供する。
β-カテニンシグナル伝達を活性化することができる Wnt タンパク質は2つのクラスに分けることができ、それらは、内容全体が参照により本明細書に取り込まれている2008年10月31日出願の国際出願番号PCT/EP2008/064821において記載される通り、シグナル伝達のために LRP6 の異なるβ-プロペラ領域を必要とする。加えて、二量体 LRP6 抗体(例えば IgG)は、例えば内在性 LRP6 の二量体化を通じて、細胞を Wnt シグナル伝達に対して強く感作させる。これらの結果は、β-プロペラ 1 およびβ-プロペラ 3 が Wnt1 および Wnt 3 のシグナル伝達活性に異なって必要とされることを示唆する。これらの知見は、Wnt に誘導される LRP6 活性化に関する新たな見識を提供し、様々な疾患において Wnt シグナル伝達を調節する LRP6 抗体の開発のための道を開くものである。さらに、LRP6 抗体の断片の IgG 形式への変換は、LRP6 受容体をクラスター化させ、リガンドタンパク質の存在下において Wnt シグナルを増強することができる抗体をもたらす。
一つの態様において、抗体は Wnt シグナルを増強するが、但し、本発明の二パラトープ抗体によっては増強が生じないことを条件とする。かかる態様において、Wnt シグナルは、Wnt リガンドの存在下において、抗体の断片の全長 IgG LRP6 抗体への変換によって活性化および増強される。例えば、Wnt 1 Fab は LRP6 受容体のβ-プロペラ 1 ドメインに結合し、Wnt リガンド、例えば Wnt 3 の非存在下において Wnt 1 経路を遮断する。Wnt リガンド、例えば Wnt 3 の存在下では、Wnt 1 Fab は Wnt 1 経路を介するシグナル伝達を遮断するが、Wnt 3 経路を介してシグナル活性化が生じ得、それによりシグナルが産生される。Wnt 1 Fab が全長 Wnt 1 IgG に変換されると、該 Wnt 1 IgG は2つの LRP6 受容体のβ-プロペラ 1 ドメインに結合し、Wnt リガンド、例えば Wnt 3 の存在下において Wnt 1 経路を遮断するが; シグナル活性化が Wnt 3 経路を介して生じ、それが増強される。作用の理論を提供する必要はないが、1つの可能なメカニズムは、IgG クラスターが各 LRP6 受容体のβ-プロペラ 1 ドメインに結合することによって2以上の LRP6 受容体を一緒にし、それが Wnt 3 リガンドの存在下において Wnt 3 経路を介するより強いシグナルをもたらすというものである。LRP6 受容体の二量体化は、おそらくは LRP6 を含む様々な相互作用のアビディティーの増大を通じて、Wnt シグナル伝達を促進する。
LRP6 受容体のβ-プロペラ 3 ドメインに結合し、Wnt 3 経路を遮断する Wnt 3 Fab を用いて、逆の結果が得られる。Wnt 1 リガンドの存在下において、Wnt 3 Fab は Wnt 3 経路を遮断するが、Wnt 1 経路を活性化してシグナルを生成する。Wnt 3 Fab が全長 Wnt 3 IgG に変換されると、該 Wnt 3 IgG は2つの LRP6 受容体のβ-プロペラ 3 領域に結合し、Wnt 1 リガンドの存在下において、Wnt 1 経路を介するシグナル伝達を阻害する。一つの態様において、抗体は、Wnt シグナルの増強を回避する。いくつかの態様において、本発明は、ヒトおよびカニクイザル両方の LRP6 に特異的に結合する抗体を提供する。一つの態様において、LRP6 抗体は拮抗性抗体である。別の態様において、LRP6 抗体は作動性抗体である。
異なる Wnt タンパク質がシグナル伝達のために LRP6 の異なるβ-プロペラドメインを必要とし、かつ、LRP6 のクラスター化または二量体化が Wnt シグナル伝達を増強するため、LRP6 抗体を用いる治療は、様々な抗体の組合せを用いることによって制御および“微調整”することができる。
一つの態様において、LRP6 抗体は、単量体の抗体またはそれらの断片、例えば単鎖抗体、ユニボディ等として用いられる。一つの態様において、LRP6 のβ-プロペラ 1 領域に結合する単量体の LRP6 抗体が、LRP6 のβ-プロペラ 3 領域に結合する単量体の LRP6 抗体と組み合わせて用いられる。別の態様において、LRP6 抗体は多量体の抗体またはそれらの断片、例えば二特異性、二パラトープ性 LRP6 抗体として用いられる。
Wnt リガンドに加えて、LRP6 プロペラ 1 抗体は、他のプロペラ 1 結合性リガンド(例えばスクレロスチン、Dkk1)との相互作用を阻害すると期待される。同様に、プロペラ 3 抗体は、他のプロペラ 3 結合性リガンド(例えば Dkk1)との相互作用を阻害すると期待される。さらに、プロペラ 1 および 3 結合性抗体は、他の Wnt シグナル伝達モジュレーター、例えば R-スポンジンの活性に影響を及ぼすと期待し得る。
本発明はまた、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルのLRP6)に特異的に結合する抗体であって、以下の表 1 に示す VH CDR のいずれかのアミノ酸配列を有する VH CDR を含む抗体を提供する。特に、本発明は、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルのLRP6)に特異的に結合する抗体であって、以下の表 1 に示す VH CDR のいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の VH CDR を含む(あるいは該VH CDRからなる)抗体を提供する。
本発明は、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルの LRP6)に特異的に結合する抗体であって、配列番号 14、34、36、44、60 および 62 のアミノ酸配列を有する VH ドメインを含む抗体を提供する。本発明は、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルの LRP6)に特異的に結合する抗体であって、配列番号 13、33、35、43、59 および 61 のアミノ酸配列を有する VL ドメインを含む抗体を提供する。
本発明は、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルの LRP6)に特異的に結合する抗体であって、配列番号 82、89、106、108、128、130 および 138 のアミノ酸配列を有する VH ドメインを含む抗体を提供する。本発明は、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルの LRP6)に特異的に結合する抗体であって、配列番号 81、90、105、107、127 および 129 のアミノ酸配列を有する VL ドメインを含む抗体を提供する。
本発明の他の抗体は、突然変異しているが、CDR 領域において、表 1 に記載される配列中に示される CDR 領域と少なくとも 60%、70%、80%、90%、95% または 98% の同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様において、それは、表 1 に記載される配列中に示される CDR 領域と比較した場合に CDR 領域においてわずか 1、2、3、4 または 5 個のアミノ酸が突然変異しているが、元の抗体のエピトープに対するその特異性を依然として維持している突然変異体アミノ酸配列を含む。
本発明の他の抗体は、突然変異しているが、フレームワーク領域において、表 1 に記載される配列中に示されるフレームワーク領域と少なくとも 60%、70%、80%、90%、95% または 98% の同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様において、それは、表 1 に記載される配列中に示されるフレームワーク領域と比較した場合に、フレームワーク領域においてわずか 1、2、3、4、5、6 または 7 個のアミノ酸が突然変異しているが、元の抗体のエピトープに対するその特異性を依然として維持している突然変異体アミノ酸配列を含む。
本発明はまた、LRP6 タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルの LRP6)に特異的に結合する抗体の VH、VL、全長重鎖および全長軽鎖をコードする核酸配列を提供する。かかる核酸配列は、哺乳類細胞における発現のために最適化することができる(例えば、β-プロペラ 1 抗体についての MOR08168、MOR08545 および MOR06706、ならびにβ-プロペラ 3 抗体についての MOR06475、MOR08193 および MOR08473 に関する表1)。
本発明の LRP6 抗体は、別個の LRP6 β-プロペラ領域に結合する。プロペラ 1 抗体は、β-プロペラ 1 ドメインに結合し、プロペラ 1 依存性の Wnt、例えば Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt9、Wnt10A、Wnt10B を遮断する。プロペラ 3 抗体は、β-プロペラ 3 ドメインに結合し、プロペラ 3 依存性の Wnt、例えば Wnt3a および Wnt3 を遮断する。
本発明の他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が変異されているが、表1に記載の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%の同一性を有するものを含む。いくつかの実施形態では、表1に記載の配列に示されている可変領域と比較した場合、可変領域において1、2、3、4または5以下のアミノ酸が変異されているが、実質的に同一の治療活性を保持している変異アミノ酸配列を含む。
これらの抗体の各々はLRP6に結合できるので、VH、VL、全長軽鎖および全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードする配列)を「組み合わせて適合させ」て、本発明の他のLRP6抗体を作成できる。かかる「組み合わせて適合させ」たLRP6抗体は、当該技術分野で知られている結合アッセイ(例えばELISA、および実施例の節に記載の他のアッセイ)を用いて試験してもよい。これらの鎖が組み合わせて適合されている場合、特定のVH/VL対の対由来のVH配列は、構造的に類似したVH配列で置換されるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖の対由来の全長重鎖配列は、構造的に類似した全長重鎖配列で置換されるべきである。同様に、特定のVH/VLの対由来のVL配列は、構造的に類似したVLで置換されるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖の対由来の全長軽鎖配列は、構造的に類似した全長軽鎖配列で置換されるべきである。したがって、一態様では、本発明は:配列番号14、34、36、44、60および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号13、33、35、43、59および61からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;配列番号82、106、108、128、130および138からなる群から選択される重鎖;ならびに配列番号81、90、105、107、127、129および137からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有し;LRP6(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)に特異的に結合するものである、単離されたモノクローナル抗体またはそれらの断片を提供する。
別の態様では、本発明は、表1に記載の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはそれらの組合せを含む、LRP6のβプロペラ1ドメインに結合する、LRP6抗体を提供する。該抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号1、21および47に示される。該抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号2、22および48に示される。該抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号3、23および49に示される。該抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号4、24および50に示される。該抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号5、25および51に示される。該抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号6、26および52に示される。CDR領域は、Kabat系を用いて描写される(Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No. 91−3242;Chothia et al.,(1987)J. Mol. Biol. 196:901−917;Chothia et al.,(1989)Nature 342:877−883;およびAl−Lazikani et al.,(1997)J. Mol. Biol. 273,927−948)。
他の態様では、本発明は、表1に記載の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはそれらの組合せを含む、LRP6のβプロペラ3ドメインに結合する、LRP6抗体を提供する。該抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号69、93および115に示される。該抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号70、94および116に示される。該抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号71、95および117に示される。該抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号72、96および118に示される。該抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号73、97および119に示される。該抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号74、98および120に示される。CDR領域は、Kabat系を用いて描写される(Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No. 91−3242;Chothia et al.,(1987)J. Mol. Biol. 196:901−917;Chothia et al.,(1989)Nature 342:877−883;およびAl−Lazikani et al.,(1997)J. Mol. Biol. 273,927−948)。
これらの各抗体がLRP6に結合でき、抗原結合特異性がCDR1、2および3領域により主として与えられることに鑑みると、VH CDR1、2および3配列ならびにVL CDR1、2および3配列を「組み合わせて適合させ」てよい(すなわち、異なる抗体由来のCDRを組み合わせて適合させることができる)が、各抗体は、本発明の他のLRP6結合分子を作成するために、VH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含有しなければならない。かかる「組み合わせて適合させ」たLRP6抗体は、当該技術分野で知られている結合アッセイおよび実施例に記載のもの(例えばELISA)を用いて試験してもよい。VH CDR配列が組み合わせて適合されている場合、特定のVH配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換されるべきである。同様に、VL CDR配列が組み合わせて適合されている場合、特定のVL配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換されるべきである。一以上のVHおよび/またはVL CDR領域配列を、本発明のモノクローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列由来の構造的に類似した配列で置換することにより、新たなVHおよびVL配列が構築できることを、当業者は容易に理解する。
したがって、本発明は、配列番号1、21および47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号2、22および48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号3、23および49からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号4、24および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号5、25および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;ならびに、配列番号6、26および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含み;LRP6に結合するものである、単離されたLRP6 β−プロペラ1モノクローナル抗体またはそれらの断片を提供する。
したがって、本発明は、配列番号69、93および115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号70、94および116からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号71、95および117からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号72、96および118からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号73、97および119からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;ならびに、配列番号74、98および120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含み;LRP6に結合するものである、単離されたLRP6 β−プロペラ3モノクローナル抗体またはそれらの断片を提供する。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号2の重鎖可変領域CDR2;配列番号3の重鎖可変領域CDR3;配列番号4の軽鎖可変領域CDR1;配列番号5の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号6の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号21の重鎖可変領域CDR1;配列番号22の重鎖可変領域CDR2;配列番号23の重鎖可変領域CDR3;配列番号24の軽鎖可変領域CDR1;配列番号25の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号26の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号47の重鎖可変領域CDR1;配列番号48の重鎖可変領域CDR2;配列番号49の重鎖可変領域CDR3;配列番号50の軽鎖可変領域CDR1;配列番号51の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号52の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号69の重鎖可変領域CDR1;配列番号70の重鎖可変領域CDR2;配列番号71の重鎖可変領域CDR3;配列番号72の軽鎖可変領域CDR1;配列番号73の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号74の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号93の重鎖可変領域CDR1;配列番号94の重鎖可変領域CDR2;配列番号95の重鎖可変領域CDR3;配列番号96の軽鎖可変領域CDR1;配列番号97の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号98の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号115の重鎖可変領域CDR1;配列番号116の重鎖可変領域CDR2;配列番号117の重鎖可変領域CDR3;配列番号118の軽鎖可変領域CDR1;配列番号119の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号120の軽鎖可変領域CDR3を含む。
具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号14のVHおよび配列番号13のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号34のVHおよび配列番号33のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号35のVHおよび配列番号36のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号43のVHおよび配列番号44のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号60のVHおよび配列番号59のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号62のVHおよび配列番号61のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号82のVHおよび配列番号81のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号90のVHおよび配列番号89のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号106のVHおよび配列番号105のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号108のVHおよび配列番号107のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号128のVHおよび配列番号127のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号130のVHおよび配列番号129のVLを含む。具体的な実施形態では、LRP6に結合する抗体は、配列番号138のVHおよび配列番号137のVLを含む。
一実施形態では、LRP6抗体はアンタゴニスト抗体である。一実施形態では、LRP6抗体はアゴニスト抗体である。特定の実施形態では、LRP6に結合する抗体は表1に記載の抗体である。
本明細書で用いる場合、抗体の可変領域または全長鎖がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を用いる系から獲得される場合、該ヒト抗体は、特定の生殖系列配列「の産物」であるかまたはそれ「に由来する」、重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。かかる系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを対象とする抗原で免疫するか、あるいは対象とする抗原でファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはそれ「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較して、ヒト抗体配列と配列において最も近い(すなわち、最大の同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより、それ自体同定できる。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはそれ「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異あるいは部位特異的突然変異の意図的導入のために、生殖系列配列と比較した場合、アミノ酸の相違を含有してもよい。しかしながら、VHまたはVLフレームワーク領域において、選択されたヒト抗体は典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、かつ、他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較した場合、ヒトであるとヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含有する。場合によっては、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%同一でありうる。典型的には、組換えヒト抗体は、VHまたはVLフレームワーク領域においてヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、10以下のアミノ酸の相違を示すだろう。場合によっては、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、5以下、または4、3、2あるいは1以下のアミノ酸の相違を示しうる。
本明細書に開示される抗体は、一本鎖抗体、二重特異性抗体(diabody)、ドメイン抗体、ナノ抗体(nanobody)およびユニボディ(unibody)の誘導体でありうる。「一本鎖抗体」(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインが対合して一価分子を形成する、Vドメインに連結したVLドメインを含む、単一のポリペプチド鎖からなる。一本鎖抗体は、当該技術分野で知られている方法により調製できる(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423−426およびHuston et al.,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照)。「disbud」は2つの鎖からなり、各鎖は、短いペプチドリンカーにより結合され、同一ポリペプチド鎖上で軽鎖可変領域に結合された重鎖可変領域を含み、同一鎖上の2つの領域はお互いに対合しないが、他方の鎖の相補ドメインと二重特異性分子を形成するものである。二重特異性抗体の調製方法は、当該技術分野で知られている(例えば、Holliger et al.,(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448,およびPoljak et al.,(1994)Structure 2:1121−1123を参照)。ドメイン抗体(dAbs)は、抗体の重鎖あるいは軽鎖のいずれかの可変領域に相当する、抗体の小さい機能的結合単位である。ドメイン抗体は、細菌、酵母およびほ乳類細胞系で良好に発現する。ドメイン抗体およびそれらの産生方法のさらなる詳細は、当該技術分野で知られている(例えば、米国特許第6,291,158号;同第6,582,915号;同第6,593,081号;同第6,172,197号;同第6,696,245号;欧州特許第0368684号および同第0616640号;国際公開第05/035572号,同第04/101790号,同第04/081026号,同第04/058821号,同第04/003019号および同第03/002609号を参照)。ナノ抗体は抗体の重鎖に由来する。ナノ抗体は典型的に、単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメイン(C2およびC3)を含み、元の抗体の抗原結合能を保持する。ナノ抗体は当該技術分野で知られている方法により調製できる(例えば、米国特許第6,765,087号,同第6,838,254号,国際公開第06/079372号を参照)。ユニボディはIgG4の1つの軽鎖および1つの重鎖からなる。ユニボディはIgG4抗体のヒンジ領域の除去により作製できる。ユニボディおよびそれらの調製方法のさらなる詳細は、国際公開第2007/059782号に見出される。
Wntリガンドに加えて、LRP6プロペラ1抗体は、他のプロペラ1結合リガンド(例えば、スクレロスチン、Dkk1)との相互作用を阻害することが期待される。同様に、プロペラ3抗体は、他のプロペラ3結合リガンド(例えば、Dkk1)との相互作用を阻害することが期待される。さらに、プロペラ1および3結合抗体は、他のWntシグナル修飾因子(modulator)、例えばR−spondin、の活性に影響を及ぼすことが期待される。
相同抗体(homologous antibody)
さらに別の実施形態では、本発明は、表1に記載の配列と相同なアミノ酸配列であって、LRP6タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)に結合し、表1に記載の抗体の所望の機能的特性を保持している抗体またはそれらの断片を提供する。
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体(またはその機能的断片)であって、該重鎖可変領域は配列番号14、34、36、44、60および62からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み;該軽鎖可変領域は配列番号13、33、37、43、59および61からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み;LRP6(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)のβ−プロペラ1に結合し、Wntレポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載のWnt指向性(directed)シグナル伝達(LRP6のリン酸化反応、β−カテニンの安定化および核移行ならびに細胞増殖/生存)の他の測定において測定できる、β−プロペラ1依存性Wntタンパク質のシグナル伝達活性を阻害する抗体を提供する。具体的な例では、かかる抗体は、馴化培地を用いるまたはトランスフェクトされた細胞を用いる場合、Wnt1アッセイにおいて10nM未満のEC50値を有する。
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体(またはその機能的断片)であって、該重鎖可変領域は配列番号82、89、106、108、128、130および138からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み;該軽鎖可変領域は配列番号81、90、105、107、127、129および137からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含み;LRP6(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)のβ−プロペラ3に結合し、Wntレポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載のWnt指向性シグナル伝達(LRP6のリン酸化反応、β−カテニンの安定化および核移行ならびに細胞増殖/生存)の他の測定において測定できる、β−プロペラ3依存性Wntタンパク質のシグナル伝達活性を阻害する抗体を提供する。具体的な例では、かかる抗体は、馴化培地を用いるまたはトランスフェクトされた細胞を用いる場合、Wnt3aアッセイにおいて10nM未満のEC50値を有する。
さらにプロペラ1抗体に関して、可変重鎖親ヌクレオチド配列は配列番号16、38および64に示されている。可変軽鎖親ヌクレオチド配列は配列番号15、37および63に示されている。ほ乳類細胞での発現のために最適化された全長重鎖配列は、配列番号20、42および68に示されている。ほ乳類細胞での発現のために最適化された全長軽鎖配列は、配列番号19、41および67に示されている。本発明の他の抗体は、変異されたアミノ酸または核酸を含むが、上述の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%同一性を有する。いくつかの実施形態では、上述の配列に示される可変領域と比べると1、2、3、4または5以下のアミノ酸が可変領域においてアミノ酸欠失、挿入または置換により変異している、変異アミノ酸配列を含む。
さらにプロペラ3抗体に関して、可変重鎖親ヌクレオチド配列は配列番号84、110および132に示されている。可変軽鎖親ヌクレオチド配列は配列番号83、109および131に示されている。ほ乳類細胞での発現のために最適化された全長重鎖配列は、配列番号88、91、114、136および140に示されている。ほ乳類細胞での発現のために最適化された全長軽鎖配列は、配列番号87、92、113、135および139に示されている。本発明の他の抗体は、変異されたアミノ酸または核酸を含むが、上述の配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%同一性を有する。いくつかの実施形態では、上述の配列に示される可変領域と比べると1、2、3、4または5以下のアミノ酸が可変領域においてアミノ酸欠失、挿入または置換により変異している、変異アミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に記載の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4または5以下のアミノ酸位置でのアミノ酸置換を除き同一でありうる。
表1に記載のプロペラ1抗体のVHおよびVL領域と高い(すなわち、80%以上の)同一性を有するVHおよびVL領域を有する抗体は、それぞれ配列番号14、34、60、13、33および59をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば部位特異的またはPCR介在突然変異誘発)により得ることができ、次いで本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持される機能について、コードされる変化された抗体を試験できる。
表1に記載のプロペラ3抗体のVHおよびVL領域と高い(すなわち、80%以上の)同一性を有するVHおよびVL領域を有する抗体は、それぞれ配列番号82、106、128、81、105および127をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば部位特異的またはPCR介在突然変異誘発)により得ることができ、次いで本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持される機能について、コードされる変化された抗体を試験できる。
他の実施形態では、重鎖および/または軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域は、上記の配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。
本明細書で用いる場合、2つの配列間の「同一性パーセント」は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入することが必要なギャップ数、および各ギャップの長さを考慮に入れて、当該配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%は同一位置の数/位置の総数×100に等しい)。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、下記非限定的な例に記載の通り、数学的なアルゴリズムを用いて実施できる。
さらにまたはあるいは、本発明のタンパク質配列はさらに「クエリー配列」として用いて、公開データベースに対する検索を実行し、例えば関連配列を同定できる。例えば、かかる検索は、Altschul et al.(1990)J.Mol. Biol. 215:403−10のBLASTプログラム(version 2.0)を用いて実行することができる。
保存的修飾を有する抗体
特定の実施形態では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、これらのCDR配列の一以上は、本明細書に記載の抗体に基づいて特定されるアミノ酸配列またはその保存的修飾を有し、そして本発明のLRP6抗体の所望の機能的特性を保持するものである。
したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる、単離されたプロペラ1モノクローナル抗体またはその機能的断片であって:該重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号1、21および47ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号2、22および48ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号3、23および49ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号4、24、50ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号5、25および51ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号6、26および52ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;LRP6に特異的に結合し、Wntレポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載のWnt指向性シグナル伝達(例えば、LRP6のリン酸化反応、β−カテニンの安定化および核移行ならびに細胞増殖/生存)の他の測定において測定できる、Wntシグナル伝達経路を阻害することによりLRP6活性を阻害するものである、抗体またはそれらの断片を提供する。
したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる、単離されたプロペラ3モノクローナル抗体またはその機能的断片であって:該重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号69、93および115ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号70、94および116ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号71、95および117ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号72、96および118ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号73、97および119ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;該軽鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号74、98および120ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され;LRP6に特異的に結合し、Wntレポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載のWnt指向性シグナル伝達(例えば、LRP6のリン酸化反応、β−カテニンの安定化および核移行ならびに細胞増殖/生存)の他の測定において測定できる、Wntシグナル伝達経路を阻害することによりLRP6活性を阻害するものである、抗体またはそれらの断片を提供する。
同じエピトープに結合する抗体
本発明は、表1に記載のLRP6抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。さらなる抗体はそれゆえ、LRP結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合する(例えば、統計的に有意に競合的に結合を阻害する)能力に基づいて同定できる。LRP6タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)と本発明の抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がLRP6への結合について当該抗体と競合できることを示し;かかる抗体は、理論に縛られないが、それが競合する抗体とLRP6タンパク質上の同じまたは関連する(例えば、構造的に類似する、または空間的に近接した)エピトープに結合しうる。ある実施形態では、本発明の抗体とLRP6上の同じエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。かかるヒトモノクローナル抗体は、本明細書に記載の通りに調製し、単離できる。
操作および修飾された抗体
本発明の抗体はさらに、修飾された抗体を設計するための出発物質として、本明細書に示される一以上のVHおよび/またはVL配列を有する抗体を用いて調製でき、この修飾された抗体は、出発抗体とは異なる特徴を有しうる。一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)、例えば一以上のCDR領域および/または一以上のフレームワーク領域における一以上の残基を修飾することにより、抗体を操作できる。さらにまたはあるいは、例えば抗体のエフェクター機能を変化させるために、定常領域内の残基を修飾することにより、抗体を操作できる。
実施できる可変領域操作の一種が、CDR移植(CDR grafting)である。抗体は、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基によって主として標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用に関与するため、異なる特徴を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に移植した特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特徴を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann et al.,(1998)Nature 332:323−327;Jones et al.,(1986)Nature 321:522−525;Queen et al.,(1989)Proc. Natl. Acad.,U.S.A. 86:10029−10033;Winterの米国特許第5,225,539号,ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照)。
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号1、21および47からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号2、22および48からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号3、23および49からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列をそれぞれ含む重鎖可変領域;ならびに、配列番号4、24および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号5、25および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号6、26および52からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列をそれぞれ有する軽鎖可変領域を含む、単離されたプロペラ1モノクローナル抗体またはそれらの断片に関する。それゆえ、かかる抗体は、モノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含有するが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含有しうる。
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号69、93および115からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号70、76、100および116からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号71、95および117からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列をそれぞれ含む重鎖可変領域;ならびに、配列番号72、96および118からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号73、97および119からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号74、98および120からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列をそれぞれ有する軽鎖可変領域を含む、単離されたプロペラ3モノクローナル抗体、またはそれらの断片に関連する。それゆえ、かかる抗体はモノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含有するが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含有しうる。
かかるフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子のための生殖系列DNA配列は、「Vase]ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc− cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で入手可能)、ならびに、それぞれの内容が出典明示により本明細書に明確に組み込まれる;Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No. 91−3242;Chothia et al.,(1987)J. Mol. Biol. 196:901−917;Chothia et al.,(1989)Nature 342:877−883;およびAl−Lazikani et al.,(1997)J. Mol. Biol. 273:927−948;Tomlinson et al.,(1992) J. fol. Biol. 227:776−798;およびCox et al.,(1994)Eur. J Immunol. 24:827−836において、見出しうる。
本発明の抗体に使用するためのフレームワーク配列の例は、選択された本発明の抗体により用いられるフレームワーク配列、例えば、コンセンサス配列および/または本発明のモノクローナル抗体により使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のものである。VH CDR1、2および3配列ならびにVL CDR1、2および3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植でき、あるいは該CDR配列は、生殖系列配列と比較して一以上の変異を含有するフレームワーク領域上に移植できる。例えば、場合によっては、抗体の抗原結合能力を維持または向上するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であるということが見出されている(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照)。
別の種類の可変領域修飾は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることにより、対象とする抗体の一以上の結合特性(例えば親和性)を改善することであり、「親和性成熟」として知られる。部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発を実施して変異を導入でき、抗体結合または他の対象とする機能的特徴に対する効果は、本明細書に記載され、実施例に提供される通り、インビトロおよびインビボアッセイで評価できる。(上記に議論されるような)保存的修飾を導入してもよい。突然変異は、アミノ酸置換、付加または欠失でありうる。さらにCDR領域内の典型的には1、2、3、4または5以上の残基が変化される。
したがって、別の実施形態では、配列番号1、21および47を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号1、21および47と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号2、22および48からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号2、22および48と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号3、23および49からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号3、23および49と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号4、24および50からなる群から選択されるアミノ酸配列または4、24および50と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号5、25および51からなる群から選択されるアミノ酸配列または5、25および51と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;ならびに配列番号6、26および52からなる群から選択されるアミノ酸配列または6、26および52と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる、単離されたプロペラ1モノクローナル抗体またはそれらの断片を提供する。
したがって、別の実施形態では、配列番号69、93および115を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号69、93および115と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号70、94および116からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号70、94および116と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号71、95および117からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号71、95および117と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号72、96および118からなる群から選択されるアミノ酸配列または72、96および118と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号73、97および119からなる群から選択されるアミノ酸配列または73、97および119と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;ならびに配列番号74、98および120からなる群から選択されるアミノ酸配列または74、98および120と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる、単離されたプロペラ3モノクローナル抗体またはそれらの断片を提供する。
別のフレームワークまたはスキャフォールド(scaffold)への抗体断片の移植
生じるポリペプチドが少なくとも一つのLRP6に特異的に結合する結合領域を含む限り、多種多様の抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドが使用できる。かかるフレームワークまたはスキャフォールドは、ヒト免疫グロブリンの5種の主なイディオタイプまたはそれらの断片を含み、また、好ましくはヒト化性状(aspect)を有する、他の動物種の免疫グロブリンを含む。新たなフレームワーク、スキャフォールドおよび断片が、当業者により発見および開発され続けている。
一態様では、本発明は、本発明のCDRが移植できる非免疫グロブリンスキャフォールドを用いた、非免疫グロブリンをベースとする抗体を生成することに関する。標的LRP6タンパク質(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)に特異的な結合領域を含む限り、既知または将来的な非免疫グロブリンフレームワークおよびスキャフォールドが使用できる。既知の非免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドには、フィブロネクチン(Compound Therapeutics,Inc.,Waltham,MA)、アンキリン(Molecular Partners AG,Zurich,Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd.,Cambridge,MA,およびAblynx nv,Zwijnaarde,Belgium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG,Freising,Germany)、小モジュラー免疫医薬(small modular immuno−pharmaceuticals)(Trubion Pharmaceuticals Inc.,Seattle,WA)、マキシボディ(maxybodies)(Avidia,Inc.,Mountain View,CA)、プロテインA(Affibody AG,Sweden)、およびアフィリン(ガンマクリスタリン(crystalline)またはユビキチン)(Scil Proteins GmbH,Halle,Germany)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フィブロネクチンスキャフォールドはフィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型ドメインの第10モジュール(10Fn3ドメイン))に基づく。フィブロネクチンIII型ドメインは、それら自体が互いをパックしてタンパク質のコアを形成する、2つのベータシート間に分布する7または8個のβ鎖を有し、さらにベータ鎖と互いに結合し、溶媒に曝されるループ(CDRに類似する)を含む。ベータシートサンドイッチの各端に、かかるループが少なくとも3個存在し、該端はベータ鎖の方向に垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,818,418号を参照)。これらのフィブロネクチンをベースとするスキャフォールドは、免疫グロブリンではないが、全体的な折りたたみ(fold)は、最も小さな機能的抗体フラグメントであり、ラクダおよびラマIgGの全抗原認識ユニットを含む、重鎖可変領域のものと極めて関連している。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は、抗体のものと性質および親和性において類似する抗原結合特性を模倣する。これらのスキャフォールドは、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスと類似の、インビトロでのループランダム化およびシャッフル戦略において用いることができる。これらのフィブロネクチンをベースとする分子は、該分子のループ領域が標準的なクローニング技術を用いる本発明のCDRで置換する場合に、スキャフォールドとして用いることができる。
アンキリン技術は、異なる標的に結合するために用いることができる可変領域を保持するためのスキャフォールドとして、アンキリン由来反復モジュールを備えるタンパク質を用いることに基づく。アンキリン反復モジュールは、2つの逆平行αヘリックスおよびβターンからなる33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、多くの場合、リボソームディスプレイを用いて最適化される。
アビマーは、LRP6などの天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらのドメインは、本来タンパク質間相互作用のために用いられ、ヒトでは250種以上のタンパク質が構造的にAドメインに基づいている。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合した多数の異なる「Aドメイン」モノマー(2〜10個)からなる。標的抗原に結合しうるアビマーは、例えば米国特許出願公開第20040175756号、同第20050053973号、同第20050048512号および同第20060008844号に記載された方法論を用いて作成できる。
アフィボディ(Affibody)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1個のスキャフォールドに基づいた3ヘリックスバンドルからなる、小さく単純なタンパク質である。プロテインAは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の表面タンパク質である。このスキャフォールドドメインは58アミノ酸からなり、そのうち13個がランダム化されて、多数のリガンド変異体を有するアフィボディライブラリーを生じる(例えば、米国特許第5831012号参照)。アフィボディ分子は抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、それらは6kDaの分子量を有する。その小さなサイズにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は抗体のものと同様である。
アンチカリンは、Pieris ProteoLab AG社により開発された製品である。それらは、化学的に感受性または不溶性の化合物の生理学的輸送または貯蔵に通常関与する広範なグループの小さく強固なタンパク質であるリポカリンに由来する。多様な天然リポカリンがヒト組織または体液中に生じる。タンパク質構造は免疫グロブリンに類似しており、強固なフレームワークの上端に超可変ループを有する。しかしながら、抗体またはその組換え断片とは異なり、リポカリンは、単一免疫グロブリンドメインよりも僅かに大きな160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチド鎖からなる。結合ポケットを構成する4個のループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、多様な側鎖に耐容性である。したがって結合部位は、高い親和性および特異性で異なる形の所定の標的分子を認識するため、特許方法で再形成してよい。リポカリンファミリーの一タンパク質である、Pieris Brassicaeのビリン結合タンパク質(BBP)は、4個のループのセットを変異させてアンチカリンを開発するために使用されている。アンチカリンについて記載する特許出願の一例は、PCT国際公開第199916873号である。
アフィリン分子は、タンパク質および低分子に対する特異的親和性について設計されている、小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新たなアフィリン分子は、各々異なるヒト由来スキャフォールドタンパク質に基づく、2個のライブラリーから極めて速やかに選択しうる。アフィリン分子は免疫グロブリンタンパク質に対して何ら構造的相同性を示さない。現在、2種のアフィリンスキャフォールドが使用されており、一方はヒトの構造的眼レンズタンパク質であるガンマクリスタリンであり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒトスキャフォールドも極めて小さく、高い温度安定性を示し、pH変化および変性剤にほぼ耐性である。この高い安定性は、主として該タンパク質の伸長ベータシート構造のためである。ガンマクリスタリン由来タンパク質の例は国際公開第200104144号に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は国際公開第200410638号に記載されている。
タンパク質エピトープ模倣物(Protein Epitope Mimetic)(PEM)は、タンパク質間相互作用に関与する主な二次構造である、タンパク質のベータヘアピン二次構造を模倣する、中間サイズの環状ペプチド様分子(MW 1−2kDa)である。
いくつかの実施形態では、Fc領域を変えることにより、FabがサイレントIgG1形態に変換される。例えば、表1における抗体MOR08168、MOR08545、MOR06706、MOR06475、MOR08193およびMOR08473は、アミノ酸配列:
CDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号209)
を付加すること、および、軽鎖がラムダである場合:CSで、あるいは軽鎖がカッパである場合:Cで軽鎖を置換することにより、IgG1形態に変換されうる。本明細書で用いる場合、「サイレントIgG1」とは、Fcを介するエフェクター機能(例えばADCCおよび/またはCDC)を低下させるようにアミノ酸配列が変化されたIgG1 Fc配列である。かかる抗体は、典型的にFc受容体への結合性の低下を呈するだろう。いくつかの実施形態では、FabがIgG2形態に変換される。例えば、表1における抗体MOR08168、MOR08545、MOR06706、MOR06475、MOR08193およびMOR08473は、定常配列をIgG2の重鎖に関する定常配列:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号210)で置換することにより、IgG2形態に変換されうる。
ヒトまたはヒト化抗体
本発明は、LRP6(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)に特異的に結合する完全ヒト抗体を提供する。キメラ抗体またはヒト化抗体と比較して、本発明のヒトLRP6抗体は、ヒト対象に投与した時、さらに低下した抗原性を有する。
ヒトLRP6抗体は、当該技術分野で知られている方法を用いて生成できる。例えば、非ヒト抗体を操作された(engineered)ヒト抗体に変換するために用いられるヒト化(humaneering)技術。米国特許出願公開番号第20050008625号は、非ヒト抗体のものに対して同じ結合特性を維持しあるいはより良い結合特性を提供しながら、抗体中のヒト可変領域で非ヒト抗体可変領域を置換するためのインビボでの方法について記載している。この方法は、完全ヒト抗体による非ヒト参照抗体の可変領域のエピトープガイド置換(epitope guided replacement)に依存する。得られるヒト抗体は、一般に、参照非ヒト抗体と構造的に関連しないが、参照抗体と同じ抗原上の同じエピトープと結合する。簡潔には、試験抗体と抗原の結合に応答するレポーター系の存在下で、限定量の抗原との結合について、「コンペティター」と参照抗体(試験抗体)の多様なハイブリッドのライブラリーとの間の細胞における競合を設定することによって、連続エピトープガイド相補性置換(serial epitope guided complementarity replacement)アプローチが可能となる。該コンペティターは、一本鎖Fv断片などの、参照抗体またはその誘導体でありうる。コンペティターはまた、参照抗体と同じエピトープに結合する抗原の天然または人工リガンドであってもよい。コンペティターに唯一要求されることは、それが参照抗体と同じエピトープと結合し、抗原結合について参照配列と競合することである。試験抗体は、非ヒト参照抗体と共通する1つの抗原結合V領域およびヒト抗体のレパートリーライブラリーのような多様な供給源からランダムに選択された他のV領域を有する。参照抗体と共通のV領域は、抗原上の同じエピトープに同じ配向で試験抗体を配置するガイドとして作用し、したがって選択は参照抗体に対して最も高い抗原結合忠実度に偏向している。
多様なレポーターシステムを用いて、試験抗体と抗原間の所望の相互作用を検出できる。例えば、相補レポーター断片は、抗原および試験抗体とそれぞれ連結して、試験抗体が抗原に結合する場合にのみ、断片相補性によるレポーター活性化が生じる。試験抗体−および抗原−レポーター断片融合体がコンペティターと共に発現される場合、レポーター活性化は、抗原に対する試験抗体の親和性と比例する、コンペティターと競合する試験抗体の能力に依存することとなる。他の用いられるレポーターシステムは、米国特許出願番号第10/208,730号(公開番号第20030198971号)に開示される再アクチベーターの自己阻害レポーター再活性化システム(RAIR)、あるいは米国特許出願番号第10/076,845号(公開番号第20030157579号)に開示される競合活性化を含む。
連続エピトープガイド相補性置換システムにより選択を行い、コンペティター、抗原およびレポーター成分とともに試験抗体を単独で発現する細胞を同定する。これらの細胞において、各試験抗体は、限定量の抗原との結合について、コンペティターと一対一で競合する。レポーターの活性は、試験抗体と結合する抗原の量に比例し、したがって抗原に対する試験抗体の親和性および試験抗体の安定性に比例する。試験抗体は、試験抗体として発現した場合の参照抗体の活性と比較したその活性に基づいてまず選択される。1回目の選択の結果は、「ハイブリッド」抗体のセットであり、これはそれぞれ、参照抗体由来の同じ非ヒトV領域およびライブラリー由来のヒトV領域を含み、そして参照抗体と同じ抗原上のエピトープに結合する。1回目で選択した一以上のハイブリッド抗体は、参照抗体のものと同等またはそれ以上の抗原に対する親和性を有する。
第2のV領域置換工程において、第1段階で選択したヒトV領域は、同種ヒトV領域の多様なライブラリーでの残留非ヒト参照抗体V領域のヒト置換の選択のためのガイドとして用いられる。1回目で選択したハイブリッド抗体は、2回目の選択のためのコンペティターとして用いてもよい。2回目の選択の結果は、参照抗体とは構造的に異なるが、同じ抗原への結合に関して参照抗体と競合する、完全ヒト抗体のセットである。選択したヒト抗体のいくつかは、参照抗体と同じ抗原上の同じエピトープに結合する。これらの選択したヒト抗体のうち、一以上が参照抗体のものと同等またはそれ以上の親和性で同じエピトープと結合する。
上記のマウスまたはキメラLRP6抗体の1つを参照抗体として用いて、この方法は、同じ結合特異性および同じまたはより良い結合親和性を有する、ヒトLRP6に結合するヒト抗体を生成するために容易に使用できる。加えて、かかるヒトLRP6抗体はまた、通常ヒト抗体を製造している企業、例えばKaloBios,Inc.(Mountain View,CA)から商業的に入手可能である。
ラクダ抗体
ラマ種(Lama paccos、Lama glamaおよびLama vicugna)などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)ファミリーのメンバーから得た抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑性およびヒト対象に対する抗原性について、特徴付けられている。天然に見出されるほ乳類のこのファミリー由来の特定のIgG抗体は軽鎖を欠き、それゆえ、他の動物由来の抗体における2つの重鎖および2つの軽鎖を有する典型的な4鎖の四次構造とは構造的に異なる。国際特許出願第PCT/EP93/02214号(1994年3月3日公開の国際公開第94/04678号)を参照されたい。
VHHと同定される小さな1個の可変ドメインであるラクダ抗体の領域を遺伝子操作によって入手して、標的に高い親和性を有し、「ラクダナノ抗体」として知られる低分子量抗体由来タンパク質を得ることができる。1998年6月2日公開の米国特許第5,759,808号を参照されたい:Stijlemans et al.,(2004)J Biol Chem 279:1256−1261;Dumoulin et al.,(2003)Nature 424:783−788;Pleschberger et al.(2003)Bioconjugate Chem 14:440−448;Cortez−Retamozo et al.(2002)Int J Cancer 89:456−62;およびLauwereys et al.(1998)EMBO J 17:3512−3520も参照されたい。ラクダ抗体および抗体断片の操作されたライブラリーは、例えばAblynx,Ghent,Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体として、ラクダ抗体のアミノ酸配列を組換え的に変化させて、ヒト配列により似た配列を得てもよい、すなわち、ナノ抗体を「ヒト化」してよい。したがって、ヒトに対するラクダ抗体の天然の低い抗原性をさらに低下させうる。
ラクダナノ抗体はヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、該タンパク質はわずか数ナノメートルの物理的直径を有する。小さなサイズの一つの帰結は、より大きな抗体タンパク質には機能的に不可視の抗原部位に結合するというラクダ抗体の能力であり、すなわちラクダナノ抗体は、従来の免疫学的技術を用いると隠される抗原を検出する試薬として、そして可能性のある治療薬物として、有用である。したがって、小さなサイズのさらに別の帰結は、ラクダナノ抗体、標的タンパク質の溝または小さな割れ目の特定の部位に結合することの結果として、阻害でき、したがって伝統的な抗体のものよりも伝統的な低分子量薬物の機能により似た能力を提供できることである。
低分子量およびコンパクトなサイズは、さらに、極めて熱安定であり、極端なpHおよびタンパク分解に安定であり、かつ低い抗原性をラクダナノ抗体にもたらす。別の帰結は、ラクダナノ抗体は循環系から組織に容易に移動することおよび血液脳関門を通過して神経組織に作用する障害を処置しうることである。ナノ抗体はさらに、薬物の血液脳関門通過を促進しうる。2004年8月19日公開の米国特許番号第20040161738号を参照されたい。ヒトへの低抗原性と組み合わさったこれらの特徴は、大きな治療的可能性を示す。さらに、これらの分子は、大腸菌などの原核生物において十分に発現され、バクテリオファージで融合タンパク質として発現され、かつ機能的である。
したがって、本発明の特徴は、LRP6に対する高い親和性を有するラクダ抗体またはナノ抗体である。本明細書における特定の実施形態では、ラクダ抗体またはナノ抗体はラクダ科動物において天然に生産され、すなわち他の抗体について本明細書に記載の技術を用いて、LRP6またはそのペプチド断片でラクダを免疫して産生される。あるいは、LRP6ラクダナノ抗体が操作される、すなわち例えば、本明細書の実施例に記載の通り、標的としてLRP6を用いるパニング手法を用いて、適切に変異誘発したラクダナノ抗体タンパク質を提示する、例えばファージディスプレイライブラリーから選択して産生される。操作されたナノ抗体は、45分から2週間の受容対象における半減期を有するように、さらに遺伝子工学操作によりカスタマイズしてもよい。特定の実施形態では、ラクダ抗体またはナノ抗体は、例えば国際特許出願第PCT/EP93/02214号に記載の通り、本発明のヒト抗体の重鎖または軽鎖のCDR配列を、ナノ抗体またはシングルドメイン抗体フレームワーク配列内に移植することにより、獲得される。
多価抗体
本発明は、一以上の標的受容体上の2つの異なる結合部位に対する、少なくとも2つの受容体結合ドメインを含む多価抗体(例えば、二パラトープ(biparatopic)、二重特異性の抗体)を特徴づける。1つの抗体内での二以上の結合特異性の結合により、臨床的利点が提供される(Morrison et al.,(1997)Nature Biotech. 15:159−163;Alt et al.(1999)FEBS Letters 454:90−94;Zuo et al.,(2000)Protein Engineering 13:361−367;Lu et al.,(2004)JBC 279:2856−2865;Lu et al.,(2005)JBC 280:19665−19672;Marvin et al.,(2005)Acta Pharmacologica Sinica 26:649−658;Marvin et al.,(2006)Curr Opin Drug Disc Develop 9:184−193;Shen et al.,(2007)J Immun Methods 218:65−74;Wu et al.,(2007)Nat Biotechnol. 11:1290−1297;Dimasi et al.,(2009)J. Mol Biol. 393:672−692;およびMichaelson et al.,(2009)mAbs 1:128−141)。
本発明は、多価抗体(例えば、単一のLRP6二パラトープあるいは二重特異性の抗体)が、プロペラ1(例えばWnt1)およびプロペラ3(例えばWnt3)リガンドを介するシグナル伝達の両方を阻害する能力を有する、という発見に基づく。またさらに、予想外に、多価抗体(例えば、単一のLRP6二パラトープあるいは二重特異性の抗体)はWntシグナルの著しい増強作用(potentiation)を全く提示しない。多価抗体は異なるLRP6 βプロペラ領域に結合する。プロペラ1抗体はβプロペラ1ドメインに結合し、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt9、Wnt10A、Wnt10Bなどのプロペラ1依存性Wntを阻止し、Wnt1シグナル伝達経路を阻害する。プロペラ3抗体はβプロペラ3ドメインに結合し、Wnt3aおよびWnt3などのプロペラ3依存性Wntを阻止し、Wnt3シグナル伝達経路を阻害する。LRP6抗体はプロペラ1およびプロペラ3リガンドを2つの分離したクラスに区別し、LRP6標的受容体の異なるエピトープに結合する。LRP6抗体の断片(例えばFab)の、全長IgG抗体への変換は、Wnt1またはWnt3リガンドなどの別のタンパク質の存在下で、Wntシグナルを増強(強化)させる抗体をもたらす。
多価抗体は、従来の抗体を超える利点、例えば、標的のレパートリーの拡大、新たな結合特異性を有すること、増大した有効性、およびシグナル増強が全く無いこと、を提供する。単一のLRP6多価抗体は、同じ細胞の単一のLRP6標的受容体上の多重のプロペラ領域に結合することができ、Wntシグナル伝達を阻害することができる。一実施形態では、多価抗体は、プロペラ1、プロペラ2、プロペラ3およびプロペラ4からなる群から選択されるβプロペラ領域の任意の組合せに結合する。一実施形態では、多価抗体は、LRP6のプロペラ1およびプロペラ3ドメインに結合する。それゆえ、単一のLRP6多価抗体は、多重のβプロペラ領域に結合し、各ドメインにより介されるWntシグナル伝達を阻害することにより、作用の増大した有効性を有する。例えば、単一のLRP6多価抗体は、プロペラ1およびプロペラ3の両方に結合することにより、それぞれ、プロペラ1およびプロペラ3に介されるWntシグナル伝達の両方を阻害する。作用の増大した有効性は、LRP6多価抗体の増大した結合力あるいはより良好な結合に起因しうる。
一実施形態では、多価抗体は、scFvをIgG抗体に連結することにより産生される。scFvを作製するために用いられるVHおよびVLドメインは、同一または異なる抗体に由来しうる。scFvは少なくとも1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。
IgG抗体のFc領域およびscFv断片は、多くの異なる配向で共に連結されてもよい。一実施形態では、scFvはFc領域のC末端に連結される。他の実施形態では、scFvはFc領域のN末端に連結される。他の実施形態では、scFv(複数)はFc領域のN末端およびC末端の両方に連結される。別の実施形態では、scFvは抗体の軽鎖に連結されうる。本発明の多価抗体は、標的受容体の多重の結合部位に同時に結合することができる。本発明の多価抗体の受容体結合ドメインは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8以上の結合部位に結合することができる。各受容体結合ドメインは、同一結合部位に対して特異的でありうる。本発明の多価抗体は、同一の標的受容体上の異なるエピトープ、例えばLRP6のβプロペラ1ドメインまたはβプロペラ3ドメイン、に対して特異的である、一以上の受容体結合ドメインを含む。あるいは、本発明の多価抗体は、異なる標的受容体、例えば、LRP6、ならびにErb、cmet、IGFR1、SmoothenedおよびNotch受容体などのLRP6ではない受容体上のエピトープに対して特異的である、一以上の受容体結合ドメインを含む。
本発明の多価抗体内の各受容体結合ドメインはまた、従来の抗体と比較して抗原に対する異なる(すなわち、より高いあるいはより低い)親和性を有することができる。
一実施形態では、本発明の多価抗体は、LRP6標的受容体上の第一のエピトープに対する少なくとも一つの受容体結合ドメイン、および同一のLRP6標的受容体上の第二のエピトープに対する第二の受容体結合ドメインを含む、二パラトープな抗体である。
本発明の多価抗体は、ある抗体の少なくとも1つのCDR、ある抗体の少なくとも2つのCDR、ある抗体の少なくとも3つのCDR、ある抗体の少なくとも4つのCDR、ある抗体の少なくとも5つのCDR、またはある抗体の少なくとも6つのCDRを含む。本発明の多価抗体は、ある抗体の少なくとも1つのVHドメイン、ある抗体の少なくとも1つのVLドメイン、またはある抗体の少なくとも1つのVHドメインおよび1つのVLドメインを含む。scFv分子は、VH−リンカー−VL配向またはVL−リンカー−VH配向で構築できる。
本発明のscFv分子またはそれらを含む融合タンパク質の安定性は、従来の対照のscFv分子または全長抗体の生物物理学的特性(例えば、熱安定性)を参照して評価されうる。一実施形態では、本発明の多価抗体は、対照の結合分子(例えば、従来のscFv分子)よりも、セ氏約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約2.5、約約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10度、約11度、約12度、約13度、約14度、または約15度大きい熱安定性を有する。
scFv分子は、最適化された長さおよび/またはアミノ酸組成を有するscFvリンカーを含む。本発明の好ましいscFvリンカーは、従来の抗体に比べて少なくとも約2℃または3℃、本発明の多価抗体の熱安定性を改善する。一実施形態では、本発明の多価抗体は、従来の抗体に比べて1℃改善された熱安定性を有する。別の実施形態では、本発明の多価抗体は、従来の抗体に比べて2℃改善された熱安定性を有する。別の実施形態では、本発明の多価抗体は、従来の抗体に比べて4、5、6、7、8、8、10、11、12、13、14、15℃改善された熱安定性を有する。例えば、本発明のscFv分子と従来技術を用いて作製されたscFv分子の間、あるいは、scFv分子とscFv VHおよびVLが由来した抗体のFab断片の間で、比較がなされうる。熱安定性は当該技術分野で知られている方法を用いて測定できる。例えば、一実施形態では、Tmが測定されうる。Tmを測定するための方法およびタンパク質安定性を決定する他の方法は、以下に詳細に記載される。
一実施形態では、該scFvリンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)3からなる、または(Gly4Ser)4配列を含む。他の例示的なリンカーは、(Gly4Ser)5および(Gly4Ser)6を含む、または、からなる。本発明のscFvリンカーは、長さを変化させることができる。一実施形態では、本発明のscFvリンカーは、長さにおいて約5から約50アミノ酸である。別の実施形態では、本発明のscFvリンカーは、長さにおいて約10から約40アミノ酸である。別の実施形態では、本発明のscFvリンカーは、長さにおいて約15から約30アミノ酸である。別の実施形態では、本発明のscFvリンカーは、長さにおいて約15から約20アミノ酸である。リンカー長におけるバリエーションは活性を維持または増強することができ、活性試験において優れた有効性を生じさせる。scFvリンカーは、当該技術分野で知られている技術を用いてポリペプチド配列内に導入できる。例えば、PCR突然変異誘発が用いられうる。修飾はDNA配列解析により確認できる。プラスミドDNAを用いて、産生されるポリペプチドの安定な産生のために宿主細胞を形質転換させることができる。
一実施形態では、本発明のscFv分子は、VHドメインとVLドメインの間に挿入された(Gly4Ser)3または(Gly4Ser)4のアミノ酸配列を有し、該VHおよび該VLドメインはジスルフィド結合により連結されるものである、scFvリンカーを含む。
本発明のscFv分子はさらに、VLドメインにおけるアミノ酸をVHドメインにおけるアミノ酸と連結する、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む。ジスルフィド結合を提供するために、システイン残基が必要である。ジスルフィド結合は、例えば、VLのFR4とVHのFR2を連結するため、またはVLのFR2とVHのFR4を連結するために、本発明のscFv分子に含まれうる。ジスルフィド結合するための例示的な位置には:Kabatの番号付けで、VHの43、44、45、46、47、103、104、105および106、ならびにVLの42、43、44、45、46、98、99、100および101が挙げられる。VHおよびVLドメインをコードする遺伝子の修飾は、当該技術分野で知られている技術、例えば部位特異的突然変異誘発、を用いて実施されうる。
scFvにおける変異は、scFvの安定性を変化させ、scFvにおいて変異の無い多価抗体と比べて、変異scFvを含む抗体の全体の安定性を改善する。scFvへの変異は、実施例で示されるように生成できる。変異scFvの安定性は、実施例で示される通り、Tm、変性(denaturation)温度、凝集温度などの測定を用いて、変異無しのscFvに対して比較される。変異scFvの結合能力はELISAなどのアッセイを用いて決定できる。
一実施形態では、本発明の多価抗体は、変異scFvが多価抗体に改善された安定性を授けるように、scFvにおいて少なくとも1つの変異を含む。別の実施形態では、本発明の多価抗体は、変異scFvが多価抗体に改善された安定性を授けるように、scFvにおいて少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の変異を含む。別の実施形態では、本発明の多価抗体は、変異scFvが多価抗体に改善された安定性を授けるように、scFvにおいて変異の組み合わせを含む。
本発明の二パラトープな抗体などの多価抗体が本明細書において開示される。これらの二パラトープな抗体はLRP6の一以上のエピトープに結合する。scFvは、GlySerリンカーなどのリンカーを用いて、例えばヒンジ領域でFc領域に連結される。一実施形態では、本発明は、FcのCH3領域に並べられた(GlyGlySer)2リンカーを用いて、LRP6のβプロペラ3ドメインに結合するscFVに連結された、LRP6のβプロペラ1ドメインに結合する、抗体または抗原結合断片に関する。一実施形態では、LRP6 βプロペラ1ドメインに結合する全長IgG抗体を用いて、LRP6 βプロペラ3ドメインに結合する抗体のscFv断片を結合させる(attach)ことができる。
本発明の二パラトープな抗体などの多価抗体は、表2に示される重鎖および軽鎖配列の任意の組合せを用いて構築できる。
したがって、本発明はプロペラ1IgG抗体およびプロペラ3scFvを用いて構築される二パラトープな抗体に関する。一実施形態では、二パラトープな抗体は、配列番号166、171、173、175、195、201および207からなる群から選択される任意の重鎖配列;ならびに配列番号170、193、199および205からなる群から選択される任意の軽鎖配列を用いて構築される。一実施形態では、二パラトープな抗体は、配列番号166/170、171/170、173/170、175/170、201/199、207/205および195/193からなる群から選択される重鎖および軽鎖配列を含む。
一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号166および軽鎖配列番号170を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号171および軽鎖配列番号170を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号173および軽鎖配列番号170を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号175および軽鎖配列番号170を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号201および軽鎖配列番号199を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号207および軽鎖配列番号105を含む。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号195および軽鎖配列番号193を含む。
別の実施形態では、二パラトープな抗体は、scFvがIgGの軽鎖に結合されることによる、「代替の二パラトープな抗体」である。一実施形態では、二パラトープな抗体は、重鎖配列番号177および軽鎖配列番号181を含む。
別の実施形態では、LRP6 βプロペラ3ドメインに結合する全長IgG抗体を用いて、LRP6 βプロペラ1ドメインに結合する抗体のscFv断片を結合し、「逆二パラトープ」といわれる。一実施形態では、本発明の逆二パラトープな抗体は、プロペラ3IgG抗体およびプロペラ1scFvを用いて構築される。一実施形態では、逆二パラトープな抗体は、配列番号187および189からなる群から選択される任意の重鎖配列;ならびに配列番号185の軽鎖配列を用いて、構築される。一実施形態では、逆二パラトープな抗体は、重鎖配列番号187および軽鎖配列番号185を含む。一実施形態では、逆二パラトープな抗体は、重鎖配列番号189および軽鎖配列番号185を含む。
本発明はまた、それぞれ、配列番号1、21および47からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号2、22および48からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号3、23および49からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域;配列番号4、24および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号5、25および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号6、26および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し;それぞれ、配列番号69、93および115からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号70、94および116からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号71、95および117からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域;配列番号72、96および118からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号73、97および119からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号74、98および120からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む軽鎖可変領域と結合された二パラトープな抗体であって;LRP6(例えば、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)に結合し、Wntレポーター遺伝子アッセイまたは本明細書に記載のWnt指向性シグナル伝達(例えば、LRP6のリン酸化反応、β−カテニンの安定化および核移行ならびに細胞増殖/生存)の任意の他の測定において測定できる、LRP6生物活性を阻害するものである抗体に関する。
本発明の多価抗体で用いることができる抗体は、ヒト、マウス、キメラ、およびヒト化モノクローナル抗体である。
本発明の多価抗体は、当該技術分野で知られている方法を用いて、構成要素である受容体結合ドメインをコンジュゲートすることにより調製されうる。例えば、多価抗体の各受容体結合ドメインは別々に生成でき、次いで互いにコンジュゲートできる。受容体結合ドメインがタンパク質あるいはペプチドである場合、様々なカップリングまたは架橋剤が共有結合コンジュゲーションのために使用できる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロへキサン−l−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al.,(1984)J. Exp. Med. 160:1686;Liu et al.(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照)。他の方法は、Paulus(1985)Behring Ins. Mitt. No. 78:118−132;Brennan et al.,(1985)Science 229:81−83およびGlennie et al.,(1987)J. Immunol. 139:2367−2375に記載のものを含む。コンジュゲート剤はSATAおよびスルホ−SMCCであり、両者ともPierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能である。
受容体結合ドメインが抗体である場合、それは2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によりコンジュゲートされうる。特定の実施形態では、コンジュゲーションより前に、奇数、例えば1個のスルフヒドリル残基を含有するようにヒンジ領域が修飾される。
あるいは、受容体結合ドメインは同じベクター内でコードされ、同じ宿主細胞で発現されそして組み立てられてもよい。この方法は、多価抗体が、mAbxmAb、mAbxFab、FabxF(ab’)2またはリガンドxFab融合タンパク質である場合に特に有用である。多価抗体を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号に記載されている。
多価抗体とそれらの標的との結合は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)またはウェスタンブロットアッセイにより確認できる。これらのアッセイはそれぞれ、一般に、対象とする複合体に特異的な標識付き試薬(例えば、抗体)を用いることにより、特定の対象とするタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
別の態様では、本発明は、LRP6に結合する本発明の抗体の少なくとも2つの異なる受容体結合ドメインを含む多価抗体を提供する。該受容体結合ドメインは、タンパク質融合または共有もしくは非共有結合によって一体に連結されうる。例えば、本発明の抗体を、本発明の抗体の定常領域、例えばFcまたはヒンジ領域に結合する抗体と架橋することにより、四価抗体が獲得できる。
多価抗体の配向
本発明は、例えば、抗体可変領域、抗体断片(例えば、Fab)、scFv、一本鎖二重特異性抗体またはIgG抗体を含む、多重の受容体結合ドメイン(「RBD」)を有する多価抗体に関する。RBDの例は、Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片;VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の一本のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546);ならびに単離された相補性決定領域(CDR)の構成要素である。RBDはまた、シングルドメイン抗体、マキシボディ、ユニボディ、ミニボディ、二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、v−NARおよびビス−scFvの構成要素である(例えば、Hollinger and Hudson,(2005)Nature Biotechnology 23:1126−1136を参照)。
本発明の多価抗体は、生じた多価抗体が機能的活性を保持する(例えば、Wntシグナル伝達を阻害する)限り、少なくとも1つの受容体結合ドメイン(例えば、scFv、一本鎖二重特異性抗体、抗体可変領域)を用いて、任意の配向で生成される。任意の数の受容体結合ドメインが、生じた多価抗体が機能的活性を保持する(例えば、Wntシグナル伝達を阻害する)限り、FcのC末端および/またはN末端に付加されうることが理解されるべきである。ある実施形態では、1、2、3以上の受容体結合ドメインがFc領域のC末端に連結される。他の実施形態では、1、2、3以上の受容体結合ドメインがFc領域のN末端に連結される。他の実施形態では、1、2、3以上の受容体結合ドメインがFc領域のN末端およびC末端の両方に連結される。例えば、本発明の多価抗体は、Fc領域のC末端および/またはN末端に連結される同じ種類の1より多くの受容体結合ドメイン、例えばscFv−scFv−Fc−IgGを含みうる。あるいは、本発明の多価抗体は、Fc領域のC末端および/またはN末端に連結される異なる種類の1より多くの受容体結合ドメイン、例えばscFv−二重特異性抗体−Fc−IgGを含みうる。別の実施形態では、1、2、3より多くの受容体結合ドメイン(例えば、scFv)が、IgGのC末端に連結される。別の実施形態では、1、2、3より多くの受容体結合ドメイン(例えば、scFv)が、IgGのN末端に連結される。別の実施形態では、1、2、3より多くの受容体結合ドメイン(例えば、scFv)が、IgGのN末端およびC末端に連結される。
他の実施形態では、本発明の多価抗体は、C末端に連結される異なる種類の1より多くの受容体結合ドメイン、例えば、scFv−二重特異性抗体−Fc−IgG;二重特異性抗体−scFv−Fc−IgG;scFv−scFv−二重特異性抗体−Fc−IgG;scFv−二重特異性抗体−scFv−Fc−IgG;二重特異性抗体−scFv−scFv−Fc−IgG;抗体可変領域−scFv−二重特異性抗体−Fc−IgG;などを用いて生成される。任意の数の受容体結合ドメインの置換(permutation)を有する多価抗体が生成されうる。これらの多価抗体は、ここに記載される方法およびアッセイを用いて、機能性について試験できる。
他の実施形態では、本発明の多価抗体は、N末端に連結される異なる種類の1より多くの受容体結合ドメイン、例えば、IgG−Fc−scFv−二重特異性抗体;IgG−Fc−二重特異性抗体−scFv;IgG−Fc−scFv−scFv−二重特異性抗体;IgG−Fc−scFv−二重特異性抗体−scFv;IgG−Fc−二重特異性抗体−scFv−scFv;IgG−Fc−抗体可変領域−scFv−二重特異性抗体;などを用いて生成される。
さらに他の実施形態では、本発明の多価抗体は、Fc領域のC末端およびN末端に連結される単一の受容体結合ドメイン(例えば、scFv、一本鎖二重特異性抗体、抗体可変領域)を用いて生成される。別の実施形態では、多重の受容体結合ドメインは、例えば、Fc領域のC末端およびN末端に連結される少なくとも1、2、3、4、5、5、7、8より多くの受容体結合ドメインFc領域のN末端に連結される。例えば、本発明の多価抗体は、Fc領域のC末端およびN末端に連結される1より多くのscFv、例えば、scFv−Fc−scFv−scFv;−scFv−scFv−Fc−scFv−scFvなどを含むことができる。他の実施形態では、本発明の多価抗体は、N末端に連結される異なる種類の1より多くの受容体結合ドメイン、例えば、scFv−Fc−scFv−二重特異性抗体;scFv−Fc−二重特異性抗体−scFv;scFv−Fc−scFv−scFv−二重特異性抗体;scFv−Fc−scFv−二重特異性抗体−scFv;scFv−Fc−二重特異性抗体−scFv−scFv;scFv−Fc−抗体可変領域−scFv−二重特異性抗体;などを用いて生成される。任意の数の受容体結合ドメインの置換(permutation)を有する多価抗体が生成されうる。これらの多価抗体は、ここに記載される方法およびアッセイを用いて、機能性について試験できる。
リンカーの長さ
リンカーの長さが、scFvの可変領域がどのようにして折りたたまれ、相互作用するかということに、大きな影響を及ぼすことが知られている。実際、短いリンカーが用いられる場合(例えば、5−10アミノ酸の間;5−20アミノ酸の間)、鎖内の折りたたみは妨げられ、鎖間の折りたたみは、機能的エピトープ結合部位を形成するために2つの可変領域を集めることを必要とする。リンカーの配向および大きさの例に関しては、出典明示により本明細書に組み込まれる、Hollinger et al. 1993 Proc Natl Acad. Sci. U.S.A. 90:6444−6448、米国特許出願公開第2005/0100543号、同第2005/0175606号、同第2007/0014794号、ならびにPCT国際公開第2006/020258号および同第2007/024715号を参照のこと。
受容体結合ドメインが様々な長さのリンカー領域により離されてもよいことも理解される。受容体結合ドメインは、リンカー配列により、お互い、Ckappa/lambda、CH1、ヒンジ、CH2、CH3またはFc領域全体から、離されうる。かかるリンカー配列は、アミノ酸の無作為な組合せ(assortment)または制限されたアミノ酸の組を含んでもよい。かかるリンカー配列は、可動性でも強固でもよい。
本発明の多価抗体は、その受容体結合ドメイン、Ckappa/lambdaドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはFc領域の一以上の間に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75以上のアミノ酸残基のリンカー配列を含む。リンカー配列は任意の天然に存在するアミノ酸から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸グリシンおよびセリンはリンカー配列内のアミノ酸を含む。別の実施形態では、リンカー領域の配向はグリシンリピート(Gly4Ser)nのセットを含み、ここにnは1以上の正の整数である。
一実施形態では、リンカーには(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施形態では、より良好な溶解度のため、Gly−Serリンカー内にGluおよびLys残基を散在させることができる。別の実施形態では、リンカーには(Gly2Ser)、(GlySer)または(Gly3Ser)の多重の繰り返しが挙げられる。別の実施形態では、リンカーには(Gly3Ser)+(Gly4Ser)+(GlySer)の組み合わせおよび倍数が挙げられる。別の実施形態では、SerがAlaで交換されうる、例えば(Gly4Ala)または(Gly3Ala)。また別の実施形態では、リンカーはモチーフ(GluAlaAlaAlaLys)nを含み、ここにnは1以上の正の整数である。
ヒンジ領域
本発明の多価抗体は、抗体ヒンジ領域の全部または少なくとも一部分を含みうる。該ヒンジ領域またはその部分は、受容体結合ドメイン、CH1、Ckappa/lambda、CH2またはCH3に直接結合されてもよい。一実施形態では、ヒンジ領域またはその部分は、可変長リンカー領域を介して、受容体結合ドメイン、CH1、Ckappa/lambda、CH2またはCH3に結合されてもよい。
本発明の多価抗体は、1、2、3、4、5、6以上のヒンジ領域またはそれらの部分を含むことができる。該ヒンジ領域またはそれらの部分は、同一あるいは異なりうる。一実施形態では、本発明の多価抗体は、ヒトIgG1分子由来のヒンジ領域またはその部分を含む。さらなる実施形態では、ヒンジ領域またはその部分は、天然に存在するシステイン残基を除去するため、天然に存在しないシステイン残基を導入するため、または天然に存在する残基を天然に存在しないシステイン残基で置換するために、操作されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の多価抗体は、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号211)またはEPKSC(配列番号212)を含む以下のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つのヒンジ領域またはその部分を含有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヒンジ領域またはその部分を操作して、少なくとも一つの天然に存在するシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの天然に存在するシステイン残基がセリンで置換される。
部位特異的コンジュゲーションに有用な天然に存在しないシステイン残基は、本発明の多価抗体内に操作されうる。かかるアプローチ、組成物および方法は、あらゆる目的のために出典明示により本明細書に組み込まれる、2008年1月18日に出願された米国仮特許出願第61/022,073号、発明の名称「部位特異的コンジュゲーションのためのシステイン操作された抗体(Cysteine Engineered Antibodies for Site−Specific Conjugation)」および2005年9月22日に出願された米国特許出願公開第20070092940号に例示される。
タンパク質安定性を評価するための方法
多価抗体の安定性を評価するために、マルチドメインタンパク質の最も安定性の悪いドメインの安定性を、本発明の方法および以下に記載のものを用いて予測した。
かかる方法は、最も安定性の悪いドメインが最初に変性(unfold)するか、協調的に変性するマルチドメインユニット(すなわち、単一の変性転移を示すマルチドメインタンパク質)の全体の安定性閾値を制限する場合の、多重の熱変性転移の決定を可能にさせる。最も安定性の悪いドメインは多くのさらなる方法で同定されうる。突然変異誘発を実行して、どのドメインが全体の安定性を制限するのか精査(probe)できる。さらに、マルチドメインタンパク質のプロテアーゼ耐性を、最も安定性の悪いドメインが、DSCまたは他の分光法を介して、本来変性されるだろうと知られている条件下で実行することができる(Fontana,et al.,(1997)Fold. Des.,2:R17−26;Dimasi et al.(2009)J. Mol. Biol. 393:672−692)。一旦、最も安定性の悪いドメインが同定されれば、このドメイン(またはその部分)をコードする配列を、本発明の方法での試験配列として用いることができる。
a)熱安定性
本発明の組成物の熱安定性は、当該技術分野で知られている多数の非限定的な生物物理学的または生化学的技術を用いて解析できる。特定の実施形態では、熱安定性は分析分光測定により評価される。
例示的な分析分光測定方法は示差操走査型熱量測定(DSC)である。DSCは、ほとんどのタンパク質またはタンパク質ドメインの変性に伴って起こる熱吸収(heat absorbance)に感受性である熱量計を用いる(例えばSanchez−Ruiz,et al.,Biochemistry,27:1648−52,1988を参照)。タンパク質の熱安定性を決定するために、タンパク質のサンプルを熱量計に挿入し、FabまたはFvが変性するまで温度を上昇させる。該タンパク質が変性する温度がタンパク質全体の安定性を示す。
別の例示的な分析分光測定方法は円二色性(CD)分光測定である。CD分光測定は、組成物の光学活性を、温度上昇の関数として測定する。円二色性(CD)分光測定は、構造的非対称により上昇する左旋偏光−対−右旋偏光の吸収の差を測定する。無秩序なまたは変性された構造が、秩序立ったまたは折りたたまれた構造のものとは非常に異なるCDスペクトルを生じる。CDスペクトルは温度上昇の変性(denaturing)効果に対するタンパク質の感度を反映し、それゆえ、タンパク質の熱安定性を示す(van Mierlo and Steemsma,J. Biotechnol.,79(3):281−98,2000を参照)。
熱安定性を測定するための別の例示的な分析分光測定方法は蛍光発光分光測定である(van Mierlo and Steemsma,supraを参照)。熱安定性を測定するためのさらに別の例示的な分析分光測定方法は、核磁気共鳴(NMR)分光測定(例えばvan Mierlo and Steemsma,supraを参照)。
本発明の組成物の熱安定性は生化学的に測定できる。熱安定性を評価するための例示的な生化学的方法は、熱挑戦アッセイ(thermal challenge assay)である。「熱挑戦アッセイ」において、本発明の組成物は一定期間、様々な温度上昇に供される。例えば、一実施形態では、試験scFv分子またはscFv分子を含む分子は、例えば1−1.5時間、様々な温度上昇に供される。次いで、タンパク質の活性が関連する生化学的アッセイにより評価される。例えば、もしタンパク質が結合タンパク質(例えば、本発明のscFvまたはscFv含有ポリペプチド)であれば、該結合タンパク質の結合活性が、機能的あるいは定量的ELISAにより決定されうる。
かかるアッセイは、ハイ−スループット形式、ならびに大腸菌およびハイ−スループットスクリーニングを用いる、実施例で開示されるものにおいて実行されうる。scFv変種(variant)のライブラリーは当該技術分野で知られている方法を用いて構築されうる。scFv発現は誘導することができ、scFvは熱挑戦に付すことができる。挑戦された試験サンプルは、結合に関してアッセイすることができ、安定であるscFvはスケールアップし、さらに特徴付けすることができる。
熱安定性は、上記技術のいずれか(例えば分光分析技術)を用いて、本発明の組成物の融解温度(Tm)を測定することにより評価される。融解温度は、組成物の分子の50%が折りたたまれた状態にある、熱転移曲線の中点における温度である(例えば、Dimasi et al.(2009)J. Mol Biol. 393:672−692を参照)。一実施形態では、scFvのためのTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。一実施形態では、IgGのためのTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。一実施形態では、多価抗体のためのTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。
熱安定性はまた、分析熱量測定技術(例えば、DSC)を用いて、本発明の組成物の比熱または熱容量(Cp)を測定することにより評価される。組成物の比熱は、1molの水の温度を1℃上昇させるために必要な(例えば、kcal/molで表した)エネルギーである。大きなCpは変性したまたは不活性なタンパク質組成物の顕著な特徴である。組成物の熱容量における変化(ΔCp)は、その熱転移の前および後に組成物の比熱を決定することにより測定される。熱安定性はまた、変性のギブス自由エネルギー(ΔG)、変性のエンタルピー(ΔH)、または変性のエントロピー(ΔS)を含めた熱力学安定性の他のパラメーターを測定または決定することにより評価することができる。
前記生化学的アッセイ(例えば熱挑戦アッセイ)の一以上を用いて、組成物の50%がその活性(例えば結合活性)を保持する温度(すなわちTc値)を決定する。
さらに、scFvへの変異は、未変異のscFvに比べてscFvの熱安定性を変化させる。変異scFvが多価抗体に組み込まれる場合、該変異scFvは多価抗体全体に熱安定性を授ける。一実施形態では、scFvは、該scFvに熱安定性を授ける単一突然変異(single mutation)を含む。別の実施形態では、scFvは、該scFvに熱安定性を授ける多重突然変異(multiple mutations)を含む。一実施形態では、scFvにける多重突然変異は該scFvの熱安定性に相加効果がある。
b)%凝集
本発明の組成物の安定性は、その凝集傾向を測定することによって決定される。凝集は、非限定的な生化学的あるいは生物物理学的技術により測定できる。例えば、本発明の組成物の凝集は、クロマトグラフィー、例えばサイズ−排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて評価することができる。SECはサイズに基づいて分子を分離する。カラムには、イオンおよび小さな分子をその内部に受け入れるが、大きなものは受け入れないポリマーゲルの半個体ビーズが充填される。タンパク質組成物がカラムの頂部にアプライされると、コンパクトな折りたたまれたタンパク質(すなわち非凝集タンパク質)は、大きなタンパク質凝集体が利用できるよりも大きな容量の溶媒を通って分布する。その結果、大きな凝集体はカラムを通ってより迅速に移動し、このようにして、混合物はその成分に分離でき、または分画することができる。各画分はそれがゲルから溶出されるにつれ、(例えば、光散乱によって)別々に定量することができる。したがって、本発明の組成物の%凝集は、画分の濃度を、ゲルにアプライされたタンパク質の全濃度と比較することにより、決定することができる。安定な組成物は実質的に単一の画分としてカラムから溶出され、溶出プロフィールまたはクロマトグラムにおいては実質的に単一のピークとして出現する。
c)結合親和性
本発明の組成物の安定性は、その標的結合親和性を決定することにより評価することができる。結合親和性を決定するための種々の方法が当該技術分野で知られている。結合親和性を決定するための例示的な方法は、表面プラズモン共鳴を使用する。表面プラズモン共鳴は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を用いる、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出による、リアルタイムの生物特異的相互作用の解析を可能とする、光学的現象である。さらなる説明に関しては、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann. Biol. Clin. 51:19−26;Jonsson,U.,i(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson,B.,et al.(1995)J. Mol. Recognit. 8:125−131;およびJohnnson,B.,et al.(1991)Anal. Biochem. 198:268−277を参照のこと。
延長された半減期を有する抗体
本発明は、インビボで延長された半減期を有する、LRP6タンパク質の特異的に結合する抗体および多価抗体を提供する。多くの要因がインビボでのタンパク質の半減期に影響しうる。例えば、腎臓ろ過、肝臓における代謝、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による分解および免疫原性応答(immunogenic response)(例えば、抗体によるタンパク質中和ならびにマクロファージおよび樹状細胞による取り込み)。多様な戦略を用いて本発明の抗体の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体スキャフォールド、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合リガンドおよび糖質障壁との化学的結合;アルブミン、IgG、FcRnおよびトランスフェリンなどの血清タンパク質と結合するタンパク質との遺伝的融合;ナノ抗体、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディおよびアンチカリンなどの血清タンパク質と結合する他の結合部分とのカップリング(遺伝的または化学的);rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合タンパク質およびFcとの遺伝的融合;またはナノ担体、遅延放出製剤または医薬デバイスへの導入による。
インビボでの抗体の血清循環を延長するため、多機能リンカー有りまたは無しで、高分子量PEGなどの不活性ポリマー分子を本抗体に、抗体のNもしくはC末端またはリシン残基のイプシロンアミノ基とPEGの部位特異的コンジュゲーションにより結合してもよい。抗体をペグ化するため、本抗体は、典型的には、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と、一以上のPEG基が抗体またはそれらの断片に結合するような条件下で、反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または同様の反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応により実施できる。本明細書で用いる場合、用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために用いられているあらゆる形態のPEGを含む。特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、非グリコシル化(aglycosylated)抗体である。生物学的活性の最小限の損失をもたらす直鎖または分枝鎖ポリマー誘導体化が用いられる。コンジュゲーションの程度は本抗体とPEG分子の適切なコンジュゲーションを確保するために、SDS−PAGEおよび質量分析により密接にモニターできる。未反応のPEGは、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより抗体−PEGコンジュゲートから分離できる。PEG誘導体化抗体は、当業者によく知られている方法を用いて、例えば本明細書に記載のイムノアッセイにより、結合活性およびインビボでの有効性を試験してもよい。タンパク質をペグ化する方法は、当該技術分野において知られており、本発明の抗体に適用できる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
他の修飾されたペグ化技術は、tRN合成酵素およびtRNAを含む再構成系を介して生合成タンパク質に化学的に特定された側鎖を導入する、再構成化学的直交操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering technology、ReCODE PEG)を含む。この技術は、大腸菌、酵母および哺乳類細胞において30個を超える新しいアミノ酸の取り込みを可能とする。tRNAは非天然アミノ酸をアンバーコドンが位置する任意の位置で取り込み、アンバーを終止コドンから化学的に特定したアミノ酸の取り込みを伝達するものに変換する。
組換えペグ化技術(rPEG)も血清半減期延長のために用いることができる。この技術は、既存の医薬タンパク質の末尾に300〜600アミノ酸の構造不定の(unstructured)タンパク質を遺伝的に融合することを含む。かかる構造不定のタンパク質鎖の見かけの分子量は、その実際の分子量よりも約15倍大きいため、該タンパク質の血清半減期は大きく延長される。化学的コンジュゲーションおよび再精製を必要とする従来のPEG化と対照的に、製造工程がかなり単純化され、産物が均一である。
ポリシアル化がもう一つの技術であり、これは天然ポリマーポリシアル酸(PSA)を用いて活性時間を延長し、本発明の抗体などの治療ペプチドおよびタンパク質の安定性を改善する。PSAはシアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療ペプチド薬物送達に用いられる場合、ポリシアル酸は、コンジュゲーションにより保護的な微小環境を提供する。これは循環中の治療タンパク質の活性時間を延長し、免疫系により認識されるのを防ぐ。PSAポリマーは人体において天然に見出される。これはある種の細菌によって採用されており、それらの細胞壁を覆うために数百万年にわたって進化させてきた。これらの天然ポリシアル化細菌は、分子擬態のおかげで、体の防御システムの追跡を免れることができる。天然の究極のステルス技術であるPSAは、かかる細菌から大量に、あらかじめ定められた物理的特徴で容易に産生できる。細菌のPSAは、人体におけるPSAと化学的に同一であるため、タンパク質と結合させても、完全に非免疫原性である。
別の技術は抗体に連結したヒドロキシエチルデンプン(HES)誘導体の使用を含む。HESはロウトウモロコシ(waxy maize)デンプン由来の修飾された天然ポリマーであり、体の酵素により代謝できる。HES溶液は通常、不充分な血液量を代替し、血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性の上昇により、ならびに腎クリアランスの低下によって循環半減期の延長を可能とし、増加した生物学的活性をもたらす。HESの分子量などの様々なパラメーターを変化させることにより、広範なHES抗体コンジュゲートを設計できる。
インビボでの延長された半減期を有する抗体は、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合断片(好ましくはFcまたはヒンジFcドメイン断片)に、一以上のアミノ酸修飾(すなわち置換、挿入または欠失)を導入して生成してもよい。例えば国際公開第98/23289号;同第97/34631号;および米国特許第6,277,375号を参照されたい。
さらに、インビボでより安定であるかまたはインビボでより延長された半減期を有する抗体または抗体フラグメントを作成するために、抗体をアルブミンとコンジュゲートさせてもよい。本技術は当該技術分野でよく知られており、例えば国際公開第93/15199号、同第93/15200号および同第01/77137号;ならびに欧州特許413,622を参照されたい。
抗体結合体(Antibody Conjugates)
本発明は、異種(heterologous)タンパク質またはポリペプチド(またはそれらの、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸の断片)に組換え技術によって融合された、または化学的に結合(conjugate)され(共有および非共有の結合を含む)て融合タンパク質を生成するLRP6タンパク質に特異的に結合する抗体およびそれらの多価抗体を提供する。特に、本発明は、ここに記載される抗体の抗原結合断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)、および異種タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む融合タンパク質を提供する。タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを融合または結合(conjugate)するための方法は、当業者に公知である。例えば、米国特許番号5,336,603号、5,622,929号、5,359,046号、5,349,053号、5,447,851号、および5,112,946号明細書;欧州特許番号EP307,434号およびEP367,166号明細書;国際公開番号WO96/04388およびWO91/06570号公報;Ashkenazi et al.,(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535−10539; Zheng et al.,(1995) J. Immunol. 154:5590−5600;およびVil et al.,(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337−11341を参照のこと。
追加の融合タンパク質は遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング(motif−shuffling)、エクソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(まとめて「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技術を経て生成されてもよい。DNAシャッフリングは、発明の抗体(例えば、高い親和性および低い解離速度の多価、二重パラトピック(biparatopic)または二重特異性抗体またはそれらの断片)の活性を改変するために用いられ得る。一般に、米国特許番号5,605,793号;5,811,238号;5,830,721号;5,834,252号;および5,837,458号;Patten et al., (1997) Curr. Opinion Biotechnol. 8:724−33;Harayama, (1998) Trends Biotechnol. 16(2):76−82;Hansson et al., (1999) J. Mol. Biol. 287:265−76;およびLorenzo and Blasco, (1998) Biotechniques 24(2):308−313を参照(各々の特許および出版物はその全体が出展明示として本明細書に組み込まれる)。抗体またはそれらの断片、またはコード化抗体またはそれらの断片は、組換の前にエラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入または他の方法によってランダム変異導入に供されて改変され得る。LRP6タンパク質に特異的に結合する多価抗体またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドは、1個以上の異種分子の、1個以上の成分、モチーフ、片(section)、部分(part)、ドメイン、断片等と再結合し得る。
さらに、抗体またはそれらの断片は、精製を促進するペプチドのような、マーカー配列と融合し得る。一の実施形態において、マーカーアミノ酸配列はヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、多数のものが市販されている中でも、とりわけpQEベクター(QIAGEN、Inc、9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)で提供されるタグのようなものである。Gentz et al.,(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821−824に記載のように、例えば、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質(Wilson et al., (1984) Cell 37:767)由来のエピトープに相当するヘマグルチニン(”HA”)タグ、および「フラッグ(flag)」タグを含むが、これらに限定されるものではない。
他の実施形態において、本発明の抗体またはそれらの断片は診断または検出剤と結合(conjugate)する。このような抗体は、特定の治療の有効度を測定するといった、臨床試験手順の一部として、発現、成長、発育および/または疾病もしくは疾患の重症度を監視または予見するために有用となり得る。そのような診断および検出は抗体に、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどのような、しかしこれらに限定されない様々な酵素;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンのような、しかしこれらに限定されない補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン フルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンなどのような、しかしこれらに限定されない蛍光物質;ルミノールなどのような、しかしこれらに限定されない発光物質;ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンなどのような、しかしこれらに限定されない生物発光体;ヨウ素(131I、125I、123Iおよび121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、三重水素(3H)、インジウム(115In、113In、112Inおよび111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117すずなどのような、しかしこれらに限定されない放射性物質;および様々な陽電子放射断層撮影に使用する陽電子放出金属、および放射性でない常磁性金属イオン、などを含むがこれらに限定されない検出可能な物質を組み合わせることによって達成できる。
本発明はさらに、治療的部分(therapeutic moiety)と結合(conjugate)した抗体またはそれらの断片の使用を包含する。抗体またはそれらの断片は、細胞毒素、例えば細胞増殖抑制剤または細胞破壊剤、治療剤、または放射性金属イオン、例えばアルファ放射体などの治療的部分、と結合(conjugate)し得る。細胞毒素または細胞毒性薬は細胞に有害ないかなる剤を含む。
さらに、抗体またはそれらの断片は、既知の生物学的応答を変更する治療的部分または薬物部分(drug moiety)と結合(conjugate)し得る。治療的部分または薬物部分は古典的な化学治療薬に制限されると解釈されるものではない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を有するタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、血管新生阻害剤などのタンパク質;または例えばリンフォカインなどの生物反応修飾物質、を含み得る。
一の実施形態において、抗体、またはそれらの断片は、細胞毒素、薬物(例えば免疫抑制剤)または放射性毒素などの治療的部分と結合(conjugate)する。このような結合体(conjugate)は本明細書において「免疫結合体(immunoconjugate)」と称する。1つ以上の細胞毒素を含む免疫結合体は、「免疫毒素(immunotoxin)」と称する。細胞毒素または細胞毒性薬は細胞に有害(例えば、死滅させる)ないかなる剤を含む。例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、tコルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体または相同体が含まれる。治療剤にはまた、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(5-fluorouracil decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アンスラマイシン(AMC)、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も含まれる。
本発明の抗体と結合(conjugate)できる治療的細胞毒素の他の例として、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシンおよびアウリスタチン、ならびにこれらの誘導体が含まれる。カリケアマイシン抗体結合体の一例は、市販される(MylotargTm;Wyeth−Ayerst)。
細胞毒素は当分野で利用できるリンカー技術を用いて、本発明の抗体と結合(conjugate)できる。細胞毒素を抗体に結合(conjugate)させるために用いられているリンカーの型の例として、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。リンカーは、例えば、リソソームコンパートメント(lysosomal compartment)内で低いpHにより開裂されやすい、または、カテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの、腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどの、プロテアーゼにより開裂されやすい、ものから選ぶことができる。
抗体への治療剤の結合(conjugate)のための細胞毒素の型、リンカーおよび方法のさらなる考察のために、Saito et al., (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199−215; Trail et al., (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328−337; Payne, (2003) Cancer Cell 3:207−212; Allen, (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750−763; Pastan and Kreitman, (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089−1091; Senter and Springer, (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247−264を参照のこと。
本発明の抗体はまた、放射性同位体と結合(conjugate)して、放射性免疫結合体とも呼ばれる、細胞毒性放射性医薬品を生成することができる。診断または治療の用途のために抗体と結合(conjugate)できる放射性同位体の例は、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム177を含むが、これらに限定されるものではない。放射性免疫結合体を調製する方法は当分野にて確立されている。放射性免疫結合体の例は商業的に利用可能であり、Zevalin登録商標(DEC Pharmaceuticals)およびBexxar登録商標(Corixa Pharmaceuticals)を含み、さらに類似の方法も本発明の抗体を用いる放射性免疫結合体の調製のために使用できる。いくらかの実施形態において、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体と付着できる1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は当分野において周知であり、それぞれの全体が出展明示により組み込まれる、Denardo et al., (1998) Clin Cancer Res. 4(10):2483−90; Peterson et al., (1999) Bioconjug. Chem. 10(4):553−7;およびZimmerman et al., (1999) Nucl. Med. Biol. 26(8):943−50に記載される。
抗体に治療的部分を結合(conjugating)させるための技術は周知であり、例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243−56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623−53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475−506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303−16 (Academic Press 1985),およびThorpe et al., (1982) Immunol. Rev. 62:119−58を参照のこと。
抗体はまた、特に免疫測定法または標的抗原の精製に有用な固相担体(solid support)に付着させ得る。このような固相担体はガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンを含むが、これらに限定されるものではない。
抗体の作成方法
(i)抗体をコードする核酸
本発明は、上記LRP6抗体鎖のセグメントまたはドメインを含む多価エピトープ結合タンパク質、例えば抗体およびそれらの抗原結合断片をコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明の核酸のいくつかは、配列番号14、19、34および60に示されるプロペラ1抗体重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、および/または配列番号13、20、33および59に示される軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、核酸分子は、表1に同定されたものである。他の本発明の核酸分子のいくつかは、表1に同定されたもののヌクレオチド配列と実質的に(例えば少なくとも65、80%、95%または99%)同一であるヌクレオチド配列を含む。本発明の核酸のいくつかは、配列番号82、106および128に示される重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、および/または配列番号81、105および127に示される軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、核酸分子は、表1に同定されたものである。他の本発明の核酸分子のいくつかは、表1に同定されたもののヌクレオチド配列と実質的に(例えば少なくとも65、80%、95%または99%)同一であるヌクレオチド配列を含む。適切な発言ベクターから発現される場合、これらのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、LRP6抗原結合能を示しうる。
上記LRP6抗体の重鎖または軽鎖由来の少なくとも1個のCDR領域、および通常3個全てのCDR領域をコードするポリヌクレオチドも、本発明において提供される。他のポリヌクレオチドのいくつかは、上記LRP6抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域の全てまたは実質的に全てをコードする。コードの縮重のため、多様な核酸配列が各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。
本発明の核酸分子は、抗体の可変領域および定常領域の両方をコードし得る。本発明の核酸配列のいくつかは、配列番号14、19、34および60に記載の成熟重鎖可変領域配列と実質的に(例えば少なくとも80%、90%または99%)同一の成熟重鎖可変領域配列をコードするヌクレオチドを含む。他の核酸配列のいくつかは、配列番号13、20、33および59に記載の成熟軽鎖可変領域配列と実質的に(例えば少なくとも80%、90%または99%)同一の成熟軽鎖可変領域配列をコードするヌクレオチドを含む。
本発明の核酸分子は、抗体の可変領域および定常領域の両方をコードし得る。本発明の核酸配列のいくつかは、配列番号82、106および128に記載の成熟重鎖可変領域配列と実質的に(例えば少なくとも80%、90%または99%)同一の成熟重鎖可変領域配列をコードするヌクレオチドを含む。他の核酸配列のいくつかは、配列番号81、105および129に記載の成熟軽鎖可変領域配列と実質的に(例えば少なくとも80%、90%または99%)同一の成熟軽鎖可変領域配列をコードするヌクレオチドを含む。
ポリヌクレオチド配列は、新たな(novo)固相DNA合成またはLRP6抗体またはその結合断片をコードする既存の配列(例えば下記実施例に記載の配列)のPCR変異導入法によって作成できる。核酸の直接化学合成は、当分野で既知の、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のジエチルホスホラミダイト法;および米国特許4,458,066の固相担体法などの方法によって実施できる。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異の導入は、例えばPCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990; Mattila et al.,(1991) Nucleic Acids Res. 19:967,;およびEckert et al.,(1991) PCR Methods and Applications 1:17に記載のとおりに実施できる。
上記抗体を製造するための発現ベクターおよび宿主細胞も本発明において提供される。それらの抗体断片をコードするポリヌクレオチドを発現するため、多様な発現ベクターが使用できる。ウイルス性および非ウイルス性発現ベクターのどちらも、哺乳類宿主細胞において抗体を製造するために使用することができる。非ウイルス性ベクターおよび系は、プラスミド、典型的にはタンパク質もしくはRNAを発現するための発現カセットを有する、エピソームベクターおよびヒト人工染色体(例えばHarrington et al., Nat Genet 15:345, 1997を参照)を含む。例えば、抗体ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの哺乳類(例えばヒト)細胞での発現に有用な非ウイルス性ベクターは、pThioHis A、B&C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B&C、(Invitrogen, San Diego, CA)、MPSVベクターおよび他のタンパク質を発現するために当分野で既知の多様な他のベクターを含む。有用なウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBP Epstein Barrウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびSemliki Forestウイルス(SFV)を含む。Brent et al.,(1995) supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807;およびRosenfeld et al.,(1992) Cell 68:143を参照のこと。
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される、意図する宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、抗体またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチドと作動可能に連結しているプロモーターおよび他の調節配列(例えばエンハンサー)を含む。いくつかの態様において、誘導性プロモーターを用いて、誘導条件下以外での挿入配列の発現を防止する。誘導性プロモーターは、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターを含む。形質転換された生物の培養は、発現産物が宿主細胞によってより耐容性である配列をコードするために集団に圧力を加えることなしに、非誘導性条件下で拡大されうる。プロモーターに加えて、抗体またはそれらの断片の効果的な発現のために、他の調節要素も要求または所望される。これらの要素は典型的には、ATG開始コドンおよび隣接リボソーム結合部位または他の配列を含む。加えて、発現の効率は、使用する細胞系に適切なエンハンサーを含めることで向上し得る(例えばScharf et al.,(1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125,;およびBittner et al.,(1987) Meth. Enzymol., 153:516を参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して、哺乳類宿主細胞における発現を増加させ得る。
発現ベクターは、挿入されたLRP6抗体配列によってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成する挿入シグナル配列位置も提供し得る。非常に多くの場合、挿入されたLRP6抗体配列は、ベクターに含まれる前にシグナル配列と連結される。LRP6抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする配列を受け取るために使用されるベクターは、定常領域またはそれらの一部をコードする場合もある。このようなベクターは定常領域を有する融合タンパク質として可変領域の発現が可能であり、それにより無傷の(intact)抗体またはそれらの断片の製造を導く。典型的には、かかる定常領域はヒトである。
抗体を有し、そして発現する宿主細胞は、原核または真核細胞であってよい。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングおよび発現するのに有用な原核宿主の一つである。使用に適した他の微生物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、およびサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)および多様なシュードモナス属(Pseudomonas)などの他の腸内細菌、を含む。これらの原核宿主において、典型的には宿主細胞に適合性の発現調節配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターも作成できる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系またはファージラムダ由来のプロモーター系などの、任意の数の多様な周知のプロモーターが存在している。典型的には、プロモーターは、任意にはオペレーター配列で、発現を制御し、転写および翻訳を開始し完了するためのリボソーム結合部位などを有する。酵母のような他の微生物もまた、本発明のLRP6抗体を発現するために使用できる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用できる。
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体を発現、製造するために、哺乳類宿主細胞が使用される。例えば、それは内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系(例えば実施例に記載の1D6.C9骨髄腫ハイブリドーマクローン)または外因性発現ベクターを有する哺乳類細胞系(例えば以下に例示するSP2/0骨髄腫細胞)であってよい。これらはあらゆる通常の死に至るものかあるいは通常もしくは異常な不死動物またはヒト細胞系を含む。例えば、CHO細胞系、多様なCos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞およびハイブリドーマを含む、無傷な免疫グロブリンを分泌できる多数の好適な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチドを発現するための哺乳類組織細胞培養の使用は、一般に、例えばWinnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987に記載されている。哺乳類宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサー(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49−68, 1986を参照)などの発現制御配列ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列などの必要なプロセッシング情報部位を含み得る。これらの発現ベクターは、通常、哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルス由来のプロモーターを含む。好適なプロモーターは、構造性、細胞型特異的、発生段階特異的(stage−specific)、および/または調節可能もしくは制御可能であり得る。有用なプロモーターは、メタロチオネインプロモーター、構造性アデノウイルス後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構造性MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えばヒト初期CMVプロモーター)、構造性CMVプロモーターおよび当分野で既知のプロモーターとエンハンサーの組合せを含むが、これらに限定されない。
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の型に依存して変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般に、原核細胞について利用されるが、一方で、リン酸カルシウム処置またはエレクトロポレーションは他の細胞宿主に使用できる(一般に、Sambrook, et al., supraを参照)。他の方法は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処置、リポソーム介在形質転換、インジェクションおよびマイクロインジェクション、弾道法、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸複合体、裸DNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合体(Elliot and O’Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤向上取り込みおよびエクスビボ形質導入、を含む。組換えタンパク質の長期間高収率生産のために、安定な発現がしばしば所望される。例えば、抗体ドメインまたは結合断片を安定的に発現する細胞系は、ウイルス性複製起点または内因性発現要素および選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを用いて製造できる。ベクターの導入後、富化培地中で細胞を1〜2日間増殖させた後、選択培地に移す。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであり、その存在が選択培地中で導入した配列の発現に成功している細胞の増殖を可能とする。耐性で、安定な、トランスフェクトされた細胞は、細胞型に適切な組織培養技術を用いて増殖できる。
(ii)抗体の生成
モノクローナル抗体は実施例に記載される方法を用いて作成される。これらの抗体またはそれらの断片は、実施例の項にて開示される多価抗体(例えば、二重特異性/二重パラトピック)を生成するために使用できる。例えば、二重パラトピックなLRP6抗体はscFv、例えばLRP6のプロペラ3ドメインと結合するscFv、と全長IgGモノクローナル抗体を連結することにより生成できる。
あるいは、モノクローナル抗体は、慣用的なモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein, 1975 Nature 256: 495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む多様な技術によって作成できる。モノクローナル抗体を作成するための多くの技術、例えばBリンパ球のウイルス性または発がん性遺伝子による形質転換が使用できる。
ハイブリドーマを調製するための動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ作成は、十分に確立された方法である。融合体についての免疫化プロトコルおよび
免疫した脾細胞の単離のための技術は、当分野で既知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手法も既知である。
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上記のとおりに調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製できる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のマウスハイブリドーマから得られ、非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように、標準的な分子生物学の技術を用いて操作できる。例えばキメラ抗体を作成するために、当分野で既知の方法を用いて、マウス可変領域をヒト定常領域と連結させることができる(例えばCabilly et al.の米国特許第4,816,567号を参照)。ヒト化抗体を作成するために、当分野で既知の方法を用いて、マウスCDR領域をヒトフレームワークに挿入できる。例えばWinterの米国特許第5225539号およびQueen et al.の米国特許5530101;5585089;5693762および6180370を参照のこと。
いくらかの実施形態において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。このような、LRP6に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりもヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソームマウスを用いて生成できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソームマウスは、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと本明細書において称するマウスを含み、集合的に、「ヒトIgマウス」と称する。
HuMAbマウス登録商標(Medarex, Inc.)は、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異と共に、再配列されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子小座を含む(例えばLonberg, et al., (1994) Nature 368(6474): 856−859を参照)。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの低下した発現を示し、免疫化に応答して、導入したヒト重鎖および軽鎖トランスジーンがクラススイッチおよび体細胞変異を起こして、高い親和性のヒトIgGκモノクローナルを作成する(Lonberg et al., (1994) supra; reviewed in Lonberg, (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101; Lonberg and Huszar, (1995) Intern. Rev. Immunol.13: 65−93,およびHarding and Lonberg, (1995) Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536−546)。HuMAbマウスの作成および使用ならびにこのようなマウスによって担持されるゲノム修飾は、出展明示により全体が本明細書に組み込まれる、Taylor et al., (1992) Nucleic Acids Research 20:6287−6295; Chen et al., (1993) International Immunology 5: 647−656; Tuaillon et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720−3724; Choi et al., (1993) Nature Genetics 4:117−123; Chen et al., (1993) EMBO J. 12:821−830; Tuaillon et al., (1994) J. Immunol. 152:2912−2920; Taylor et al., (1994) International Immunology 579−591;およびFishwild et al., (1996) Nature Biotechnology 14: 845−851にさらに記載される。さらに、LonbergおよびKayの米国特許第5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;および5,770,429号、Surani et al.の米国特許第5,545,807号、LonbergおよびKayのPCT公開WO92103918、WO93/12227、WO94/25585、WO97113852、WO98/24884およびWO99/45962およびKorman et al.のPCT公開WO01/14424を参照のこと。
他の実施形態において、本発明のヒト抗体は、ヒト重鎖トランスジーンおよびヒト軽鎖トランスクロモソームを担持するマウスのようなトランスジーンおよびトランスクロモソーム上にヒト免疫グロブリン配列を担持するマウスを用いて、産生できる。このようなマウスは、本明細書において「KMマウス」と称し、Ishida et al.のPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスジェニック動物系が当分野で利用可能であり、本発明のLRP6抗体の産生に使用できる。例えば、Xenomouse(Abgenix, Inc.)と称される別のトランスジェニック系が使用できる。このようなマウスは、例えばKucherlapati et al.の米国特許第5,939,598;6,075,181;6,114,598;6,150,584および6,162,963号に記載されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスクロモソーム動物系が当分野で利用可能であり、本発明のLRP6抗体の産生に使用できる。例えば、「TCマウス」と称されるヒト重鎖トランスクロモソームおよびヒト軽鎖トランスクロモソームの両方を担持するマウスが使用でき;このようなマウスはTomizuka et al., (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722−727に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖トランスクロモソームを担持するウシが当分野で既知であり(Kuroiwa et al., (2002) Nature Biotechnology 20:889−894)、本発明のLRP6抗体の産生に使用できる。
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のスクリーニングライブラリーのファージディスプレイ法を用いて調製してもよい。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当分野で確立されており、下記実施例に記載されている。例えばLadner et al.の米国特許第5,223,409;5,403,484および5,571,698号;Dower et al.の米国特許第5,427,908および5,580,717号;McCafferty et al.の米国特許第5,969,108および6,172,197号;Griffiths et al.の米国特許第5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915および6,593,081を参照のこと。
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト抗体応答が免疫化によって発生され得るようにヒト免疫細胞が再構築されているSCIDマウスを用いて調製できる。このようなマウスは、例えばWilson et al.の米国特許第5,476,996および5,698,767号に記載されている。
(iii)フレームワークまたはFc操作
操作された本発明の抗体は、例えば抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾が施されているものを含む。典型的には、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば一つのアプローチは、1個以上のフレームワーク残基を対応する生殖系配列(germline sequence)に「復帰変異(back mutation)」することである。より具体的には、体細胞変異を起こした抗体が、その抗体から由来する生殖系配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列と抗体に由来する生殖系配列を比較することで同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系配置に戻すため、体細胞変異は、例えば部位特異的変異誘発による生殖系配列への「復帰変異」であり得る。このような「復帰変異」された抗体も、本発明に含まれる。
他の型のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去するための、フレームワーク領域内または1個以上のCDR領域内の1以上の残基での突然変異を含み、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させる。このアプローチは「脱免疫化(deimmunization)」とも称され、Carr et al.の米国特許公開20030153043号により詳細に記載されている。
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加えてまたはそれとは別に、本発明の抗体は、典型的には、血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合および/または抗原依存的細胞毒性などの、抗体の1個以上の機能的特徴を変化させるための、Fc領域内の修飾を含むように操作し得る。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾(例えば1個以上の化学的部分を抗体に付着させることができる)させるかまたはその糖鎖形成を変化させ、再度抗体の1個以上の機能的特徴を変化させるために、修飾し得る。これらの実施形態の各々については以下にさらに詳細に記載する。Fc領域での残基の番号は、Kabat(上記)によるものである。
CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基数が変化、例えば増加または減少するように修飾され得る。このアプローチはBodmer et al.の米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基数を変化させて、例えば、軽鎖と重鎖の会合を促進し、あるいは抗体の安定性を上昇または低下させる。
多価抗体のFcヒンジ領域を修飾してその生物学的半減期を上昇させることができる。多様なアプローチが可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載のとおり、下記変異の1つ以上を導入できる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を上昇させるために、Presta et al.の米国特許第5,869,046および6,121,022号に記載のとおり、CH1またはCL領域内で抗体を変化させて、IgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから得たサルベージレセプター結合エピトープを含める。多価抗体のFcヒンジ領域を修飾して、例えば、それにより投与量の調整を経る良好な臨床管理を認める、投与量、毒性およびクリアランスの調整のために、その生物学的半減期を低下させることができる。
少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換してFc領域を変化させて、抗体のエフェクター機能を変化させることができる。例えば、1個以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換して、抗体がエフェクターリガンドについて変化した親和性を有するが親抗体の抗原結合能を保持するようにできる。親和性が変化されたエフェクターリガンドは、例えばFcレセプターまたは補体のC1成分であり得る。このアプローチは、Winter et al.の米国特許第5,624,821および5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
1個以上のアミノ酸は、抗体が変化したC1q結合および/または低下もしくは消滅した補体依存的細胞傷害性(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。このアプローチはIdusogie et al.の米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
1個以上のアミノ酸残基が変化させて抗体の補体を固定化する能力を変化させることができる。このアプローチは、Bodmer et al.のPCT公開WO94/29351にさらに詳細に記載されている。
Fc領域は、1個以上のアミノ酸を修飾することにより修飾して、抗体の抗体依存的細胞傷害性(ADCC)を仲介する能力を向上しおよび/またはFcγレセプターに対する多価抗体の親和性を向上させることができる。このアプローチはPrestaのPCT公開WO00/42072にさらに詳細に記載されている。さらに、FcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、改善された結合を有する変異体が記載されている(Shields, R.L. et al., (2001)J. Biol. Chen. 276:6591−6604を参照)。
抗体のグリコシル化を修飾できる。例えば、非グリコシル化抗体を作成する(すなわち抗体がグリコシル化を欠く)ことができる。グリコシル化は、例えば抗体の抗原に対する親和性を上昇させるために、変化されうる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1個以上のグリコシル化部位を変化することによって実施できる。例えば、1個以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の削除をもたらし、それによってこの部位でのグリコシル化を削除する、1個以上のアミノ酸置換が行われ得る。このような非グリコシル化は、抗体の抗原に対する親和性を上昇させ得る。このようなアプローチは、Co et al.の米国特許第5,714,350および6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
さらにまたはあるいは、フコシル残基の量が減少している低フコシル化抗体または増加した二分GlcNac構造を有する抗体などの、グリコシル化の型が変化した抗体を作成できる。このような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能を増加することが示されている。このような炭水化物修飾は、例えば、変化されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することによって、達成できる。変化されたグリコシル化機構を有する細胞は、当分野において記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それによって変化したグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用できる。例えば、Hang et al.のEP1,176,195は、細胞系で発現される抗体が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されている細胞系を記載する。PrestaによるPCT公開WO03/035835は、Asn(297)結合糖にフコースを結合させる能力が低下し、また宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化をもたらすCHO細胞系変異体であるLecl3細胞を記載する(Shields, R.L. et al., (2002) J. Biol. Chem. 277:26733−26740も参照)。UmanaらによるPCT公開WO99/54342は、細胞系で発現される抗体が増加した二分(bisecting)GlcNac構造を示し、抗体の増加したADCC活性をもたらすように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えばベータ(1,4))−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GntIII))を発現するように操作された細胞系を記載する(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176−180も参照)。
抗体を修飾してその生物学的半減期を上昇させることができる。多様なアプローチが可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載のとおり、下記変異の1つ以上を導入できる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を上昇させるために、Presta et al.の米国特許第5,869,046および6,121,022号に記載のとおり、CH1またはCL領域内で抗体を変化させて、IgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから得たサルベージレセプター結合エピトープを含める。
(iv)改変された抗体を操作する方法
上記のとおり、本明細書に示すVHおよびVL配列または全長重鎖および軽鎖配列を有する抗体を用いて、全長重鎖および/または軽鎖配列、VHおよび/またはVL配列、またはそれに結合した定常領域を修飾して、新たな抗体を作成できる。したがって、本発明の他の態様において、本発明の抗体の構造的特徴を用いて、ヒトLRP6との結合およびLRP6の1個以上の機能的特徴の阻害(例えばWntシグナル伝達活性)などの、本発明の抗体の少なくとも1個の機能的特徴を保持する、構造的に関連した抗体を作成する。
例えば、本発明の抗体またはその変異体の1個以上のCDR領域を既知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換え的に結合して、上記のとおり、本発明のさらなる組換え操作された抗体を作成できる。他の型の修飾は、前節に記載のものを含む。操作方法の出発物質は、本明細書で提供されるVHおよび/またはVL配列の1個以上またはそのCDR配列の1個以上である。操作された抗体を作成するためには、本明細書で提供されるVHおよび/またはVL配列の1個以上またはそのCDR配列の1個以上を有する抗体を実際に作成する(すなわちタンパク質として発現する)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報を出発物質として用いて、元の配列に由来する「第二世代」配列を作成し、当該「第二世代」配列が調製され、タンパク質として発現される。
したがって、他の実施形態において、本発明は、配列番号1、21および47からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号2、22および48からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号3、23および49からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列;ならびに配列番号4、24および50からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号5、25および51からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号6、26および52からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列からなるプロペラ1 LRP6抗体を作成する方法であって;重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を変化させて、少なくとも1個の変化した抗体配列を作成し;そして変化した抗体配列をタンパク質として発現させる、方法を提供する。
したがって、他の実施形態において、本発明は、配列番号69、93および115からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号70、94および116からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号71、95および117からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列;ならびに配列番号91、107および118からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号73、97および121からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号74、98および120からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列からなるプロペラ3 LRP6抗体を作成する方法であって;重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を変化させて、少なくとも1個の変化した抗体配列を作成し;そして変化した抗体配列をタンパク質として発現させる、方法を提供する。
したがって、他の実施形態において、本発明は、配列番号1、21、47、69、93および115からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号2、22、48、70、94および116からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号3、23、49、71、95および117からなる群から選択されるCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列;ならびに配列番号4、24、50、72、96および118からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号5、25、51、73、97および119からなる群から選択されるCDR2配列、および/または配列番号6、26、52、74、98および120からなる群から選択されるCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列からなる多価特異的(例えば、二重パラトピック) LRP6抗体を作成する方法であって;重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を変化させて、少なくとも1個の変化した抗体配列を作成し;そして変化した抗体配列をタンパク質として発現させる、方法を提供する。変化した抗体配列はまた、固定されたCDR3配列または米国公開US20050255552号に記載の最小必須結合決定部分およびCDR1およびCDR2配列の多様性を有する抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても調製できる。スクリーニングは、ファージディスプレイ技術などの、抗体ライブラリーから抗体をスクリーニングするための適切ないかなるスクリーニング技術に従って、実施できる。
標準的な分子生物学技術を用いて、変化した抗体配列を調製し、発現させることができる。変化した抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に記載の抗体の1個、数個または全ての機能的特性を保持するものであり、ここで該機能的特性は、ヒトおよび/またはカニクイザルLRP6との特異的結合;抗体がLRP6と結合し、Wnt遺伝子アッセイにおける標準的な(canonical)Wntシグナル伝達活性の阻害によってLRP6の生物活性を阻害すること、を含むがこれらに限定されない。
変化した抗体の機能的特性は、当分野において利用可能でありそして/または本明細書に記載の標準的なアッセイ、例えば実施例に記載のもの(例えばELISA)を用いて、評価できる。
本発明の抗体を操作する方法のある実施形態において、抗体コーディング配列の全部または一部にわたってランダムにまたは選択的に変異を導入でき、そして得られた修飾抗体は、結合活性および/または本明細書に記載の他の機能的特性についてスクリーニングされ得る。変異方法は当分野において記載されている。例えば、ShortによるPCT公開WO 02/092780は、飽和変異誘発、合成ライゲーションアセンブリまたはそれらの組合せを用いた抗体変異体の作成およびスクリーニング法を記載する。あるいは、Lazar et al.によるPCT公開WO 03/074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するための計算スクリーニング法を用いる方法を記載する。
抗体の特徴づけ
本発明の抗体および多価抗体は多様な機能的アッセイによって特徴付けられる。例えば、本明細書に記載されるWnt遺伝子アッセイにおける標準的なWntシグナル伝達活性の阻害による生物活性を阻害する能力、LRP6タンパク質(例えばヒトおよび/またはカニクイザルLRP6)との親和性、エピトープ結合、タンパク質分解に対する耐性、およびWnt経路を阻止する能力によって、特徴付けられる。加えて、抗体はFab断片との交差結合の後のアゴニスト作用を高める能力によって特徴付けられる。
多価抗体(例えば、単一の二重パラトピックまたは二重特異性抗体)は、プロペラ1(例えばWnt1)およびプロペラ3(例えばWnt3)リガンドの両方を阻害する能力を有する。さらに、そして予想外なことに、多価抗体(例えば、単一の二重パラトピックまたは二重特異性抗体)はWntシグナルの顕著な相乗作用を全く示さない。多価抗体は異なるLRP6 β−プロペラ領域と結合する。例えば、二重パラトピック抗体は、LRP6のβ−プロペラ1ドメインと結合するレセプター結合ドメインを含み、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt9、Wnt10A、Wnt10Bなどのプロペラ1依存Wntを阻止してWnt1シグナル伝達を阻害し、さらにまたLRP6のβ−プロペラ3ドメインと結合するエピトープ結合ドメインを有し、Wnt3aおよびWnt3などのプロペラ3依存Wntを阻止してWnt3シグナル伝達を阻害する。
多価抗体は、例えば、標的のレパートリーを拡大する、新たな結合特異性、増加した効力を有する、およびシグナル効力(signal potency)を有さない、などによる、従来の抗体からの利点を提供する。単一のLRP6多価抗体は、同一細胞の単一のLRP6標的条の複数のβ−プロペラ領域に結合して、Wntシグナル伝達を阻害できる。一の実施形態において、多価抗体はプロペラ1、プロペラ2、プロペラ3およびプロペラ4からなる群から選択されるβ−プロペラ領域のいかなる組合せとも結合する。一の実施形態において、多価抗体はLRP6のプロペラ1およびプロペラ3ドメインに結合する。従って、単一のLRP6多価抗体は、複数のβ−プロペラ領域と結合して、各々の領域を介するWntシグナル伝達を阻害する作用の増加した効力を有する。例えば、LRP6二重パラトピック抗体はβ−プロペラ1およびβ−プロペラ3ドメインの両方にそれぞれ結合することによりプロペラ1を介するおよびプロペラ3を介するWntシグナル伝達の両方を阻害する。単一特異性抗体と比べて、作用の増加した効力は、二重パラトピック抗体の増加した親和性か、より良い結合によるものであり得る。
様々な方法を用いてLRP6−介在Wntシグナル伝達を測定できる。例えば、Wntシグナル伝達経路は、(i)β−カテニンの存在量および局在の測定、(ii)LRP6または他の下流Wntシグナル伝達タンパク質(例えばDVL)のリン酸化反応の測定、および(iii)特異的な遺伝子の特徴または遺伝子標的(例えば、c−myc、Cyclin−D、Axin2)の測定、によって監視できる。
LRP6と結合する抗体の能力は、目的の抗体を直接ラベルして検出でき、あるいは該抗体はラベルされていなくてもよく、当分野で既知の多様なサンドイッチアッセイ形式を用いて間接的に検出できる。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、参照LRP6抗体とLRP6ポリペプチドの結合を阻止しまたはそれと競合する。これらは上記完全ヒト抗体であり得る。これらはまた、参照抗体と同じエピトープと結合する他のマウス、キメラまたはヒト化t抗体であってもよい。参照抗体結合を阻止しまたはそれと競合する能力は、試験下の抗体が参照抗体によって定義されるものと同じまたは類似のエピトープと、あるいは参照LRP6結合抗体が結合するエピトープと十分に近接しているエピトープと結合することを示す。このような抗体は、参照抗体について同定された有利な特性を共有している可能性が特に高い。参照抗体を阻止しまたはそれと競合する能力は、例えば競合結合アッセイによって測定できる。競合結合アッセイにより、試験下の抗体は、LRP6ポリペプチドなどの共通の抗原と参照抗体の特異的結合を阻害する能力について試験される。過剰の試験抗体が実質的に参照抗体の結合を阻害する場合、試験抗体は抗原との特異的結合について参照抗体と競合する。実質的阻害は、試験抗体が参照抗体の特異的結合を通常少なくとも10%、25%、50%、75%または90%低下させることを意味する。
LRP6タンパク質との結合について、参照LRP6抗体と抗体との競合を評価するために使用できる多数の既知の競合結合アッセイが存在する。例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al.,(1983) Methods in Enzymology 9:242−253を参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al.,(1986) J. Immunol. 137:3614−3619を参照);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow & Lane, 上記を参照);I−125ラベルを用いた固相直接ラベルRIA(Morel et al.,(1988) Molec. Immunol. 25:7−15を参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al.,(1990) Virology 176:546−552);および直接標識化RIA(Moldenhauer et al.,(1990) Scand. J. Immunol. 32:77−82)を含む。典型的には、このようなアッセイは、固体表面と結合した精製抗体または未標識化試験抗体および標識化参照抗体のいずれかを有する細胞の使用を含む。競合阻害は試験抗体の存在下での固体表面または細胞と結合したラベルの量を測定して測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する。抗体、例えば、競合アッセイによって同定された二重特異性または二パラトープLRP6抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープと結合する抗体および参照抗体が結合するエピトープと立体障害が起こる程度に十分に近接している隣接エピトープと結合する抗体を含む。
選択した抗体が固有のエピトープと結合するかを決定するため、商業的に入手可能な試薬(例えばPierce, Rockford, ILからの試薬)を用いて各抗体をビオチニル化できる。未標識抗体およびビオチニル化抗体を用いた競合試験は、LRP6ポリペプチド被覆ELISAプレートを用いて実施できる。ビオチニル化抗体は、ストレプ−アビジン−アルカリフォスファターゼプローブで検出できる。精製された抗体のアイソタイプを決定するため、アイソタイプELISAを実施できる。例えば、マイクロタイタープレートのウェルを1μg/mlの抗ヒトIgGで、4℃で一夜被覆できる。1%のBSAでブロックした後、プレートを1μg/ml以下の抗体または精製したアイソタイプコントロールと、周囲温度で1〜2時間反応させる。次いでウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリフォスファターゼ複合化プローブと反応できる。次いでプレートを現像し、分析して、精製した抗体のアイソタイプを決定できる。
抗体とLRP6ポリペプチドを発現する生きた細胞との結合を示すため、フローサイトメトリーが使用できる。簡潔には、0.1%のBSAおよび10%の胎児ウシ血清を含むPBS中の多様な濃度の抗体とLRP6を発現する細胞系(標準的な成長条件下で増殖する)を混合し、37℃で1時間インキュベートできる。洗浄後、細胞を一次抗体染色と同じ条件下でフルオレセイン標識化抗ヒトIgG抗体と反応させる。1個の細胞を通過させる光および側面散乱特性を用いるFACScanによって試料を分析できる。蛍光顕微鏡を用いる別のアッセイを、フローサイトメトリーアッセイに加えてまたはそれと代えて使用してもよい。細胞は、上記の通り正確に染色でき、蛍光顕微鏡で試験できる。この方法は、個々の細胞の可視化が可能であるが、抗原の密度に依存する感受性が消え得る。
抗体はさらに、ウェスタンブロッティングによってLRP6ポリペプチドまたは抗原性断片との反応性について試験できる。簡潔には、精製したLRP6ポリペプチドもしくは融合タンパク質またはLRP6を発現する細胞由来の細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、10%胎児ウシ血清でブロックし、試験抗体で探索する。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリフォスファターゼを用いて検出でき、BCIP/NBT基質錠(Sigma Chem. Co., St. Louis, MO)で現像できる。
機能的アッセイの例は、下記実施例にも記載されている。
本発明の抗体の結合特性
(i)結合特異性
本発明は1個以上の標的レセプターの異なる結合部位に特異性を有する多重レセプター結合ドメイン(例えば、scFv、一本鎖二重特異性抗体、抗体可変領域)を含む抗体および多価抗体を提供する。
一の実施形態において、本発明の多価抗体は、同一の結合特異性の、レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)を含む。他の実施形態において、本発明の多価抗体は非同一の結合特異性の、レセプター結合ドメインを含む。
(ii)結合親和性
本発明の抗体または多価抗体はその1個以上の同種抗原と高い結合親和性を有し得る。例えば、本明細書に記載されるエピトープ結合タンパク質は、少なくとも2×105M1s−1、少なくとも5×105M1s−1、106M1s−1、少なくとも5×106M1s−1、少なくとも107M1s−1、少なくとも5×107M1s−1、または少なくとも108M1s−1の会合速度定数またはKon速度(エピトープ結合タンパク質(RBP)+抗原−>RBP−Ag)を有し得る。
一の実施形態において、抗体または多価抗体は5×10−1s−1未満、10−1s−1未満、5×10−2s−1未満、10−2s−1未満、5×10−3s−1未満、10−3s−1未満、5×10−4s−1未満、または10−4s−1未満のKoff速度(RBP−Ag−>RBP+Ag)を有し得る。抗体または多価抗体は、5×10−5s−1未満、10−5s−1未満、5×10−6s−1未満、10−6s−1未満、5×10−7s−1未満、10−7s−1未満、5×10−8s−1未満、10−8s−1未満、5×10−9s−1未満、10−9s−1未満、または5×10−10s−1未満のKoff速度を有し得る。
他の実施形態において、抗体または多価抗体は、少なくとも102M−1、少なくとも5×102M−1、少なくとも103M−1、少なくとも5×103M−1、少なくとも104M−1、少なくとも5×104M−1、少なくとも105M−1、少なくとも5×105M−1、少なくとも106M−1、少なくとも5×106M−1、少なくとも107M−1、少なくとも5×107M−1、少なくとも108M−1、少なくとも5×108M−1、少なくとも109M−1、少なくとも5×109M−1、少なくとも1010M−1、少なくとも5×1010M−1、少なくとも1011M−1、少なくとも5×1011M−1、少なくとも1012M−1、少なくとも5×1012M−1、少なくとも1013M−1、少なくとも5×1013M−1、少なくとも1014M−1、少なくとも5×1014M−1、少なくとも1015M−1、または少なくとも5×1015M−1の親和性定数またはKa(Kon/Koff)を有し得る。
さらに他の実施形態において、抗体または多価抗体は、5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満、または10−15M未満の解離定数またはKd(Koff/Kon)を有し得る。
本明細書に記載の方法に基づいて用いられる抗体または多価抗体は、本明細書で記載される方法または当業者に既知の方法(例えば、BIAcoreアッセイ、ELISA、FACS、SET)(Biacore International AB, Uppsala, Sweden)を用いる評価として、3000pm未満、2500pM未満、2000pM未満、1500pM未満、1000pM未満、750pM未満、500pM未満、250pM未満、200pM未満、150pM未満、100pM未満、75pM未満、10pM未満、1pM未満の解離定数(Kd)を有し得る。本明細書に記載の方法に基づいて用いられる抗体または多価抗体は、本明細書で記載される方法または当業者に既知の方法(例えば、BIAcoreアッセイ、ELISA、FACS、SET)を用いる評価として、25から3000pm、25から2500pM、25から2000pM、25から1500pM、25から1000pM、25から750pM、25から500pM、25から250pM、25から100pM、25から75pM、25から50pMの解離定数(Kd)を有し得る。本明細書に記載の方法に基づいて用いられる抗体または多価抗体は、本明細書で記載される方法または当業者に既知の方法(例えば、BIAcoreアッセイ、ELISA、FACS、SET)を用いる評価として、500pM、100pM、75pM、50pMの解離定数(Kd)を有し得る。
(iii)多価抗体の相対的結合親和性
本発明は、単離された状態で、タンパク質内で同様のまたはよりよい機能性を示す(すなわち、独立して発現または単離されたドメインと比較して、レセプター結合ドメインは多価抗体の一部としての類似した特性を示す)機能性を保持し得る多重レセプター結合ドメインを担持するタンパク質を提供することが理解される。例えば、単離されたエピトープY特異性scFvは結合親和性、アゴニストまたはアンタゴニスト機能を含む特異的な機能特性を示す。本発明の多価抗体内のレセプター結合ドメインとして発現される同じscFvは、単離されたscFvと比べて同様の結合親和性またはより良いおよび/またはアゴニストまたはアンタゴニスト特性を示すであろうことが理解される。
一の実施形態において、本発明の多価抗体は同一の単離(多価抗体の他の成分の無い)レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)より低い結合親和性を有するレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)を含む。他の実施形態において、本発明の多価抗体は同一の単離(多価抗体の他の成分の無い)レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)より高い結合親和性を有するレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)を含む。他の実施形態において、本発明の多価抗体は対応する単離(多価抗体の他の成分の無い)レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)と本質的に同じ結合親和性を有するレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)を含む。
結合親和性は、ELISA、BiaCore登録商標、KinExA登録商標、細胞表面レセプター結合、結合アッセイの競合阻害、SETなどの、当分野で既知の多くの技術によって規定どおりに分析できる。本発明の多価抗体の結合親和性は、実施例に提示される技術によって分析できる。
多価抗体のレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)は、当分野で既知のいかなるアッセイによって計測されるものとして、同一の機能的な単離レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)よりも、99%未満、95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満の、固有のエピトープに対する結合親和性を示す。他の実施形態において、多価抗体のレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)は、いかなる実施例に提示される技術によって計測されるものとして、同一の機能的な単離レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)よりも、99%未満、95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満の、固有のエピトープに対する結合親和性を示す。
多価抗体のレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)は、当分野で既知のいかなるアッセイによって計測されるものとして、同一の機能的な単離レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)よりも、99%より大きい、95%より大きい、90%より大きい、80%より大きい、70%より大きい、60%より大きい、50%より大きい、40%より大きい、30%より大きい、20%より大きい、または10%より大きい、固有のエピトープに対する結合親和性を示す。他の実施形態において、多価抗体のレセプター結合ドメイン(例えば、scFv)は、いかなる実施例に提示される技術によって計測されるものとして、同一の機能的な単離レセプター結合ドメイン(例えば、scFv)よりも、99%より大きい、95%より大きい、90%より大きい、80%より大きい、70%より大きい、60%より大きい、50%より大きい、40%より大きい、30%より大きい、20%より大きい、または10%より大きい、固有のエピトープに対する結合親和性を示す。
(iv)エピトープ結合および活性のためのアッセイ
本発明の抗体および多価抗体について、当分野で既知のいかなる方法により、特異的(すなわち、免疫特異的)結合の測定を行い得る。使用できる免疫アッセイは、いくつかを挙げれば、ウエスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA(酵素免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル内沈降反応免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの技術を用いる競合および非競合アッセイ系を含むが、これらに限られるものではない。このようなアッセイは所定のものであり、当業者に既知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。模範的な免疫アッセイは下記に簡潔に(しかし、制限することを意図せずに)説明される。
免疫沈降法は、一般に、タンパク質ホスファターゼおよび/またはプロテアーゼインヒビター(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)で補足されたRIPAバッファー(1% NP-40またはTriton X-100、1% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、0.01M リン酸ナトリウム(pH 7.2)、1% Trasylol)のような細胞溶解バッファー中で細胞集団を細胞溶解し、関心のあるエピトープ結合性タンパク質を該細胞ライセートに加え、4℃で或る時間(例えば、1〜4時間)にわたってインキュベートし、プロテインAおよび/またはプロテインGセファロースビーズを該細胞ライセートに加え、4℃で約1時間またはそれ以上インキュベートし、細胞溶解バッファー中で該ビーズを洗浄し、該ビーズをSDS/サンプルバッファーに再懸濁させることを含む。関心のあるタンパク質が特定の抗原を免疫沈降させる能力を、例えばウエスタンブロット分析によりアッセイすることが可能である。抗原への該エピトープ結合性タンパク質の結合を増強しバックグラウンドを減少させる(例えば、該細胞ライセートをセファロースビーズで予め清澄化する)ために修飾されうるパラメーターに関しては、当業者に認識可能であろう。免疫沈降法に関する更なる考察に関しては、例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York, 10.16.1を参照のこと。
ウエスタンブロット分析は、一般に、タンパク質サンプルを調製し、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じた8%〜20%のSDS-PAGE)における該タンパク質サンプルの電気泳動を行い、該ポリアクリルアミドゲルからのタンパク質サンプルをニトロセルロース、PVDFまたはナイロンのような膜へトランスファーし、該膜をブロッキング溶液(例えば、3% BSAまたは脱脂乳を含有するPBS)中でブロッキングし、該膜を洗浄バッファー(例えば、PBS-Tween20)中で洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈された一次抗体で該膜をブロッキングし、該膜を洗浄バッファー中で洗浄し、ブロッキングバッファー中で希釈された酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pまたは125I)に結合(conjugate)された二次抗体(これは該一次抗体を認識する)で該膜をブロッキングし、該膜を洗浄バッファー中で洗浄し、該抗原の存在を検出することを含む。検出されるシグナルを増加させるためおよびバックグラウンドノイズを減少させるために修飾されうるパラメーターに関しては、当業者に認識可能であろう。ウエスタンブロット法に関する更なる考察は、例えば、Ausubel et al.,eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York, 10.8.1を参照のこと。
ELISAは、抗原を調製し、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを該抗原でコートし、検出可能な化合物、例えば酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼ)のような結合(conjugate)された関心のあるエピトープ結合性タンパク質を該ウェルに加え、ある時間にわたってインキュベートし、該抗原の存在を検出することを含む。ELISAにおいては、関心のあるエピトープ結合性タンパク質は、検出可能な化合物に結合(conjugate)される必要はなく、その代わりに、検出可能な化合物に結合(conjugate)された二次抗体(これは、関心のあるタンパク質を認識する)が該ウェルに加えられ得る。さらに、該抗原で該ウェルをコートする代わりに、関心のあるタンパク質で該ウェルをコートすることが可能である。この場合、関心のある抗原を該コート化ウェルに加えた後で、検出可能な化合物に結合(conjugate)された二次抗体を加えることが可能である。検出されるシグナルを増強するために修飾されうるパラメーターおよび当技術分野で公知のELISAにおける他の変数に関しては、当業者に認識可能であろう。ELISAに関する更なる考察は、例えば、Ausubel et al.,eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New York, 11.2.1を参照のこと。
抗原への抗体または多価抗体の結合親和性および他の結合特性は、例えば平衡法(例えば、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)または放射免疫アッセイ(RIA))または動力学(例えば、BIACORE登録商標分析)および他の方法、例えば間接結合アッセイ、競合結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)、FACSを含む当技術分野で公知の種々のin vitroアッセイ法により決定され得る。これらおよび他の方法においては、検査されている1以上の成分上の標識を利用することが可能であり、および/または、色素原標識、蛍光標識、発光標識または同位体標識(これらに限定されるものではない)を含む種々の検出方法を利用することが可能である。結合アフィニティおよび動力学の詳細な説明は、抗体-免疫原相互作用を中心に説明しているPaul, W.E.eds, Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott−Raven, Philadelphia (1999)において見出され得る。競合結合アッセイの一例としては、漸増量の未標識抗原の存在下、関心のあるエピトープ結合性タンパク質と共に標識抗原をインキュベートし、標識抗原に結合したエピトープ結合性タンパク質を検出することを含む放射免疫アッセイが挙げられる。特定の抗原に対する、関心のあるエピトープ結合性タンパク質のアフィニティ、および結合オフ速度(binding off−rate)は、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定されうる。また、二次抗体との競合は、ラジオイムノアッセイを用いて決定されうる。この場合、漸増量の未標識二次抗体の存在下、標識化合物に結合(conjugate)された関心のあるエピトープ結合性タンパク質と共に該抗原をインキュベートする。
予防的および治療的使用
本発明はまた、本発明の抗体または多価抗体の、癌、炎症および自己免疫疾患を含むが、それに限定されない疾患、疾患の障害、障害に関連する1以上の症状の予防、診断、管理、治療、改善のための、単独または他の治療との組み合わせでの使用を包含する。本発明はまた、癌、炎症および自己免疫疾患を含むが、それに限定されない疾患、疾患の障害、障害に関連する1以上の症状の予防、診断、管理、治療、改善のための部分(例えば、治療剤または治療薬)と結合(conjugate)または融合した本発明の抗体の、単独または他の治療との組み合わせでの使用を包含する。
多数の細胞型が様々な通常の細胞表面抗原を発現し、それは細胞の定義されたサブセットを区別する抗原の特定の組み合わせである。本発明の抗原を使用して、細胞の無関係な他の集団と交差反応なしに、細胞の特異的サブセットを標的とすることが可能である。さらに、本発明の多価抗体は1から数個(2、3、4、5、6、7、8、9、10等)の非−標的細胞集団に存在する細胞表面抗原に結合するレセプター結合ドメインを含むが、それはレセプター結合ドメインのセットの組み合わせられた親和性を有し、有効なレベルの標的細胞集団への結合(すなわち、治療的に有効なレベルの結合)をもたらす。言い換えると、いくつかのレセプター結合ドメインは特定の細胞型の標的化の促進に関与しており、それは個々の単離されたドメイン(例えば、多価抗体から単離されたもの)との結合によっては達成されないであろうものであり、または多価抗体の一部としてではない1以上の、しかし全てではない(例えばサブセット)レセプター結合ドメイン(コントロールペプチド)を同じ細胞にさらすことによっても達成されないであろう。各々のレセプター結合ドメインの相対的な親和性寄与は、関心のある特異的な細胞集団を標的とするためだけに調整されることが予想される。そのような親和性の改変は、親和性成熟、部位特異的変異、および当分野で既知の他のものなどの、当分野で受け入れられた技術で実施され得る。各々のレセプター結合ドメインの相対的な親和性寄与が多価抗体におけるレセプター結合ドメインの相対的な配向(orientation)を変えることによって変化され得ることもまた、期待される。
従って、一の実施形態において本明細書で記載されることは、本発明の多価抗体を用いて、細胞集団(例えば、哺乳類(例えば、ヒト)におけるin vivoおよび/またはin vitro)を同定、枯渇、調節(例えば、活性化、阻害)させる方法である。いくつかの実施形態において、in vitroでの標的細胞集団に対する、または哺乳類(例えば、ヒト)に投与した時の、本発明の多価抗体によって示される増加する親和性は、多価抗体から単離されたレセプター結合ドメインの1以上の、しかし全てではない(例えば、サブセット)を含む「コントロールエピトープ結合タンパク質」と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、または少なくとも25倍である。いくつかの実施形態において、本発明の多価抗体によって示される増加する親和性は、「コントロールエピトープ結合タンパク質」の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも150%である。
いくつかの実施形態において、本発明の多価抗体は、多価抗体から単離されたレセプター結合ドメインの1以上の、しかし全てではない(例えば、サブセット)を含むコントロールレセプター結合ドメインと比較して、特定の抗原への増加する親和性を有する。いくつかの実施形態において、本発明の多価抗体によって示される増加する親和性は、コントロールレセプター結合ドメインの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、または少なくとも100倍、または少なくとも1000倍である。いくつかの実施形態において、本発明の多価抗体によって示される増加する親和性は、コントロールレセプター結合ドメインの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。
他の実施形態において、X個のレセプター結合ドメイン(ここで、Xは2から6の任意の正の整数)を含む本発明の多価抗体は、(抗体、scFVなどの、しかしそれに限定されない)コントロールレセプター結合タンパク質に比較して特定の抗原に対して(in vitroにてまたは哺乳類(例えば、ヒト)に投与した時に)増加する親和性を示す、ここで、コントロールレセプター結合タンパク質はX−Y(ここで、XおよびYは2から6までの任意の正の整数であり、XはYより大きい)個のレセプター結合ドメインを含み、コントロールレセプター結合ドメインタンパク質の少なくとも一つのレセプター結合ドメインは本発明のタンパク質に存在するレセプター結合ドメインと同じエピトープに特異的である。言い換えると、本発明は、少なくとも一つのレセプター結合ドメインが本発明のタンパク質と共通の抗原に特異的であるところの、より多いまたはより少ないレセプター結合ドメインを有するコントロールレセプター結合タンパク質と比較して、特定の標的に対して増加した親和性を有する多価抗体を提供する。
多価抗体におけるこのような親和性の変化は、このような治療的タンパク質(例えば、表1に記載の任意の抗体)の毒性の減少を許容する。本発明のタンパク質が、「仕立てられて適合した(tailor−fit)」親和性および/またはin vivoにて毒性を減少するための親和性を示し得ることが理解される。また、そういうものとして、本発明は動物に、コントロール受容体結合タンパク質より、低い毒性を示す本発明の多価抗体を提供する。
親和性の変化は、コントロールレセプター結合ドメインタンパク質の、(サイトカイン発現/放出/結合、遺伝子発現、形態変化、走化性、カルシウム流出など、成長およびシグナル伝達、を含むがそれらに限定されない)機能アッセイ、BIAcoreにより決定される結合測定、またはKinExa測定などの、すぐに利用できるin vitroでの方法で評価され得ることが理解される。いくつかの実施形態において、コントロールレセプター結合タンパク質は本発明の多価抗体から単離された少なくとも1個以上のレセプター結合ドメインを含み得る。例えば、8エピトープ結合ドメインを有する本発明のタンパク質に対して、コントロールレセプター結合タンパク質は、本発明のタンパク質およびコントロールタンパク質の両方に認識される抗原に特異的な少なくとも1のレセプター結合ドメインを有する、1、2、3、4、5、または6のレセプター結合ドメイン、を含み得る。
一の実施形態において、本発明の多価抗体は特に、多重細胞表面抗原の発現により決定される中和細胞の同定、枯渇、活性化、阻害、または標的化のために用いられる。
特定の実施形態において、本発明は、乳癌、肺癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、胃癌、前立腺癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮癌、黒色腫を含むがこれらに限定されない、Wntシグナル伝達経路に関連する癌の治療の方法を提供する。
抗体はまた、骨粗鬆症、骨関節炎、腎多嚢胞病、糖尿病、統合失調症、血管系の病気、心臓病、非発癌の増殖性病、繊維症、およびアルツハイマー病などの神経変性疾患を含むがこれらに限定されない、Wntシグナル伝達の以上または血管に関連する他の障害の治療または予防に使用できる。Wntシグナル伝達経路は組織修復と再生における重要な役割を果たす。Wntシグナル伝達に細胞を感作させる剤は、骨疾患、粘膜炎、急性および慢性の腎疾患および他のものなどの多くの症状の組織再生を促進するために使用できる。
LRP6抗体との併用療法に好適な剤は、標準的な(canonical)Wntシグナル伝達経路の活性を調節できる、当分野で既知の標準治療剤(例えば、PI3キナーゼ剤)を含む。
診断的使用
一の態様において、本発明は、生物学的サンプル(例えば血液、血清、細胞、組織)または癌に罹患しているかまたは癌を発症するリスクを有する個体由来のサンプルにおける、LRP6タンパク質および/または核酸発現ならびびにLRP6タンパク質機能を測定するための、診断アッセイを含む。
競合アッセイなどの診断アッセイは、共通の結合パートナー上の限られた数の結合部位について試験サンプルと分析物が競合するラベルアナログ(トレーサー)の能力に依存する。結合パートナーは一般に、競合の前または後に非可溶化され、次いで結合パートナーに結合しているトレーサーおよび分析物を結合していないトレーサーおよび分析物から分離する。この分離は傾斜法(結合パートナーが予め非可溶化された場合)または遠心分離法(競合反応後に結合パートナーを沈殿させる場合)によって実施される。試験サンプル分析物の量は、マーカー物質の量によって測定したとき、結合したトレーサーの量に反比例する。既知量の分析物で用量応答曲線を作成し、試験結果と比較して、試験サンプル中に存在する分析物の量を定量的に決定する。これらのアッセイは、検出マーカーとして酵素が使用される場合にはELISAと呼ばれる。この形態のアッセイにおいて、抗体とLRP6抗体間の競合的結合は、血清サンプル中の抗体、より具体的には血清サンプル中の抗体の物差しである結合LRP6タンパク質をもたらす。
このアッセイの重要な利点は、測定が抗体を直接中和することで行われることである(すなわち、LRP6タンパク質、特にエピトープの結合と干渉するもの)。このようなアッセイ、特にELISA試験の形態のアッセイは、臨床的環境および通常の血液スクリーニングに相当に利用される。
本発明はまた、個体がLRP6に関連した障害を発症するリスクを有するかどうかを決定するための予後(予測)アッセイを提供する。例えば、LRP6遺伝子における変異が生物学的サンプルにおいてアッセイされ得る。このようなアッセイは、予後または予測目的のために使用され、それによってLRP6タンパク質、核酸発現または活性によって特徴付けられるかまたはそれに関連した障害の発症前に、予防的に処置できる。
本発明の別の態様は、個体におけるLRP6核酸発現またはLRP6タンパク質活性を測定するための方法であって、それによってその個体に適切な治療または予防薬を選択する方法を提供する(本明細書において「薬理ゲノミクス」と称する)。薬理ゲノミクスは、個体の遺伝子型(例えば特定の剤に応答する個体の能力を測定するために試験した個体の遺伝子型)に基づいて、個体の治療または予防処置のための剤(例えば薬物)を選択できる。
本発明のさらに別の態様は、臨床試験におけるLRP6タンパク質の発現または活性に対する剤(例えば薬物)の影響を監視することに関する。
医薬組成物
本発明の抗体または多価抗体を含む医薬組成物または無菌組成物を製造するためには、医薬上許容される担体または賦形剤と混合する。組成物は追加的に癌(乳癌、肺癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、胃癌、前立腺癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨肉腫、扁平上皮癌および、黒色腫)の治療または予防に好適な1以上の治療剤を含めることができる。
治療および診断剤の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、ローションまたは懸濁液の形態で、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより製造され得る(例えば、Hardman et al., (2001) Goodman and Gilman‘s The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw−Hill, New York, N.Y.; Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, N.Y.; Avis et al., (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman et al., (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman et al.,(eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y.を参照のこと)。
治療のための投与計画の選択は、該物質の血清または組織ターンオーバー速度、症状のレベル、該物質の免疫原性、および生物学的マトリックスにおける標的細胞の接近性を含む幾つかの要因に左右される。ある実施形態においては、投与計画は、許容される副作用レベルと調和させて、患者に送達される治療用物質の量を最大にする。したがって、送達される生物学的製剤の量は、部分的には、個々の物質および治療される状態の重症度に左右される。抗体、サイトカインおよび小分子の適当な用量を選択する際の指針は入手可能である(例えば、Wawrzynczak (1996) Antibody Therapy, Bios Scientific Pub. Ltd, Oxfordshire, UK; Kresina (ed.) (1991) Monoclonal Antibodies, Cytokines and Arthritis, Marcel Dekker, New York, N.Y.; Bach (ed.) (1993) Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases, Marcel Dekker, New York, N.Y.; Baert et al., (2003) New Engl. J. Med. 348:601−608; Milgrom et al., (1999) New Engl. J. Med. 341:1966−1973; Slamon et al., (2001) New Engl. J. Med. 344:783−792; Beniaminovitz et al., (2000) New Engl. J. Med. 342:613−619; Ghosh et al., (2003) New Engl. J. Med. 348:24−32; Lipsky et al., (2000) New Engl. J. Med. 343:1594−1602を参照のこと)。
適当な用量の決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことまたは治療に影響を及ぼすと予想されることが当分野で既知であるまたは疑われるパラメーターおよび要因を用いて、臨床医によってなされる。一般に、投与は、最適用量より若干少ない量から開始され、ついで、いずれかの負の副作用との対比において所望のまたは最適な効果が達成されるまで、少しずつ投与量を増加させる。重要な診断尺度には、例えば炎症の症状の尺度、または産生される炎症サイトカインのレベルが含まれる。
本発明の医薬組成物における有効成分の実際の投与レベルは、患者にとって毒性となることなく個々の患者、組成物および投与方法に関する所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分量が得られるよう様々なレベルとなり得る。選択される投与レベルは、使用される本発明の個々の組成物またはそれらのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時点、使用される個々の化合物の排泄速度、治療の持続期間、使用される個々の組成物と組合せて使用される他の薬物、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態および既往歴ならびに医学分野で公知の他の要因を含む種々の薬物動態学的要因に左右される。
本発明の抗体を含む組成物は、連続的注入により、または例えば1日、1週間または週1〜7回の間隔での投与により投与され得る。投与は、静脈内、皮下、局所、経口的、鼻腔内、直腸、筋肉内、脳内に、または吸入により行われ得る。特定の投与プロトコルは、有意な望ましくない副作用を回避する最大用量または投与頻度を含むものである。週当たりの合計用量は、少なくとも0.05μg/kg体重、少なくとも0.2μg/kg、少なくとも0.5μg/kg、少なくとも1μg/kg、少なくとも10μg/kg、少なくとも100μg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも1.0mg/kg、少なくとも2.0mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも25mg/kg、または少なくとも50mg/kgであり得る(例えば、Yang et al., (2003) New Engl. J. Med. 349:427−434; Herold et al., (2002) New Engl. J. Med. 346:1692−1698; Liu et al., (1999) J. Neurol. Neurosurg. Psych. 67:451−456; Portielji et al., (20003) Cancer Immunol. Immunother. 52:133−144を参照のこと)。多価抗体の所望の用量は、モル/kg体重に基づいた抗体またはポリペプチドの場合とほぼ同じである。多価抗体の所望の血漿濃度は、モル/kg体重に基づいた抗体の場合とほぼ同じである。該用量は、少なくとも15μg、少なくとも20μg、少なくとも25μg、少なくとも30μg、少なくとも35μg、少なくとも40μg、少なくとも45μg、少なくとも50μg、少なくとも55μg、少なくとも60μg、少なくとも65μg、少なくとも70μg、少なくとも75μg、少なくとも80μg、少なくとも85μg、少なくとも90μg、少なくとも95μg、または少なくとも100μgであり得る。対象に投与される投与回数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12またはそれ以上であり得る。
本発明の抗体の場合、患者に投与される投与量は0.0001mg/kg〜100mg/kg(患者の体重1kg当たりのmg)であり得る。該投与量は、0.0001mg/kg〜20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.0001mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg/kg、または0.01〜0.10mg/kg(患者の体重1kg当たりのmg)であり得る。
本発明の抗体の投与量は、キログラム(kg)単位の患者の体重とmg/kg単位の投与用量とを掛け算することにより算出され得る。本発明の抗体の投与量は、150μg/kg未満、125μg/kg未満、100μg/kg未満、95μg/kg未満、90μg/kg未満、85μg/kg未満、80μg/kg未満、75μg/kg未満、70μg/kg未満、65μg/kg未満、60μg/kg未満、55μg/kg未満、50μg/kg未満、45μg/kg未満、40μg/kg未満、35μg/kg未満、30μg/kg未満、25μg/kg未満、20μg/kg未満、15μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、2.5μg/kg未満、2μg/kg未満、1.5μg/kg未満、1μg/kg未満、0.5μg/kg未満、または0.5μg/kg(患者の体重1kg当たりのμg)であり得る。
本発明の抗体の単位用量は0.1mg〜20mg、0.1mg〜15mg、0.1mg〜12mg、0.1mg〜10mg、0.1mg〜8mg、0.1mg〜7mg、0.1mg〜5mg、0.1〜2.5mg、0.25mg〜20mg、0.25〜15mg、0.25〜12mg、0.25〜10mg、0.25〜8mg、0.25mg〜7mg、0.25mg〜5mg、0.5mg〜2.5mg、1mg〜20mg、1mg〜15mg、1mg〜12mg、1mg〜10mg、1mg〜8mg、1mg〜7mg、1mg〜5mg、または1mg〜2.5mgであり得る。
本発明の抗体の投与量は、対象において少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも6μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも175μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも225μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも275μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも325μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも375μg/mlまたは少なくとも400μg/mlの血清力価を達成し得る。あるいは、本発明の抗体の投与量は、対象において少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも6μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも175μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも225μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも275μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも325μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも375μg/mlまたは少なくとも400μg/mlの血清力価を達成し得る。
本発明の抗体の投与は反復可能であり、それらの投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間または少なくとも6ヶ月間、隔てられ得る。
個々の患者に対する有効量は、治療される状態、患者の全身健康状態、投与の方法、経路および用量ならびに副作用の重症度などの要因によって様々となり得る(例えば、Maynard et al., (1996) A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice, Interpharm Press, Boca Raton, Fla.; Dent (2001) Good Laboratory and Good Clinical Practice, Urch Publ., London, UKを参照のこと)。
投与の経路は、例えば、皮膚適用、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、脳脊髄内、病変内への注射または注入、あるいは徐放系またはインプラントによるものであり得る(例えば、Sidman et al., (1983) Biopolymers 22:547−556; Langer et al., (1981) J. Biomed. Mater. Res. 15:167−277; Langer, (1982) Chem. Tech. 12:98−105; Epstein et al., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688−3692; Hwang et al., (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030−4034;米国特許第6,350,466および6,316,024号を参照のこと)。必要に応じて、該組成物は、可溶化剤、および注射部位の疼痛を低減するための局所麻酔薬、例えばリドカインをも含み得る。また、例えば吸入器またはネブライザーの使用およびエアゾール化剤の配合により、肺投与も行われうる。例えば、米国特許第6,019,968、5,985,320、5,985,309、5,934,272、5,874,064、5,855,913、5,290,540および4,880,078号;ならびにPCT公開番号WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346およびWO99/66903号公報(各々の全体を出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
また、本発明の組成物は、当技術分野で公知の種々の方法の1以上を用いて、1以上の投与経路で投与されうる。当業者に理解されるとおり、投与の経路および/または方法は、所望の結果に応じて様々となろう。本発明の抗体に関する選択される投与経路には、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路、例えば注射または注入が含まれる。非経口投与は経腸および局所投与以外の投与方法に相当しうるものであり、通常は注射によるものであり、限定的なものではないが静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を包含する。一の実施形態において、本発明の抗体は注入により投与される。他の実施形態において、本発明の抗体は皮下に投与される。
本発明の抗体が制御放出または徐放系で投与される場合には、制御放出または徐放を達成するためにポンプが使用され得る(例えば、Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照のこと)。本発明の治療用物質の制御放出または徐放を達成するためには、高分子物質が使用され得る(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照のこと; また、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 7 1:105; 米国特許第5,679,377号; 米国特許第5,916,597号; 米国特許第5,912,015号; 米国特許第5,989,463号; 米国特許第5,128,326号; PCT公開番号WO99/15154号公報;およびPCT公開番号WO99/20253号公報も参照のこと)。徐放製剤において使用される重合体の具体例には、限定的なものではないが以下のものが含まれる:ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセタート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステル。1の実施形態において、徐放製剤において使用される高分子は不活性であり、浸出性不純物を含有せず、貯蔵時に安定であり、無菌であり、生分解性である。制御放出または徐放系は予防または治療標的に接近して配置され、したがって、全身投与量のごく一部を要するに過ぎない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115−138 (1984)を参照のこと)。
制御放出系はLanger ((1990), Science 249:1527−1533)による総説において考察されている。本発明の1以上の抗体を含む徐放製剤を製造するためには、当業者に既知の任意の技術が用いられ得る。例えば、米国特許第4,526,938号,PCT公開WO91/05548号公報,PCT公開WO96/20698号公報, Ning et al., (1996), ”Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained−Release Gel,” Radiotherapy & Oncology 39:179−189, Song et al., (1995), ”Antibody Mediated Lung Targeting of Long−Circulating Emulsions,” PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372−397, Cleek et al., (1997), ”Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,” Pro. Int’l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853−854, およびLam et al., (1997), ”Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,” Proc. Int’l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759−760(各々の全体を出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
本発明の抗体を局所投与する場合、それは、軟膏剤、クリーム剤、経皮パッチ、ローション剤、ゲル剤、シャンプー、噴霧剤、エアゾール剤、溶液剤(水剤)、乳剤または当業者によく知られた他の形態で製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 19th ed., Mack Pub. Co., Easton, Pa. (1995)を参照のこと。非噴霧可能局所剤形の場合、局所適用に適しており幾つかの場合には水より大きな粘性率を有する担体または1以上の賦形剤を含む粘性ないし半固体または固体形態が典型的に使用される。適当な製剤には、溶液剤(水剤)、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、リニメント剤、ロウ剤などが含まれるがこれらに限定されるものではなく、これらは、所望により、滅菌され、または例えば浸透圧のような種々の特性に影響を及ぼすための補助物質(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、バッファーまたは塩)と混合される。他の適当な局所剤形には、噴霧可能なエアゾール剤が含まれ、この場合、有効成分は、いくつかの場合には固体または液体不活性担体と組合されており、加圧揮発性物質(例えば、気体プロペラント、例えばフレオン)との混合物として、またはスクィーズボトル内に充填される。所望により、医薬組成物および剤形に保湿剤または湿潤剤も加えられうる。そのような追加的成分の具体例は当分野で周知である。
抗体を含む組成物を鼻腔内に投与する場合には、それは、エアゾール形態、噴霧剤、ミストまたは滴剤の形態で製剤化され得る。
第2の治療剤、例えばサイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質または放射線による共投与または治療のための方法は当分野で既知である(例えば、Hardman et al., (eds.) (2001) Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10.sup.th ed., McGraw−Hill, New York, N.Y.; Poole and Peterson (eds.) (2001) Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., Pa.; Chabner and Longo (eds.) (2001) Cancer Chemotherapy and Biotherapy, Lippincott, Williams & Wilkins, Phila., Pa.を参照のこと)。治療用物質の有効量は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも約30%、少なくとも40%または少なくとも50%、症状を軽減し得る。
本発明の抗体と組合せて投与されうる追加的な療法(例えば、予防または治療剤)は、本発明の抗体から5分未満を隔てて、30分未満を隔てて、1時間未満を隔てて、約1時間を隔てて、約1〜約2時間を隔てて、約2時間〜約3時間を隔てて、約3時間〜約4時間を隔てて、約4時間〜約5時間を隔てて、約5時間〜約6時間を隔てて、約6時間〜約7時間を隔てて、約7時間〜約8時間を隔てて、約8時間〜約9時間を隔てて、約9時間〜約10時間を隔てて、約10時間〜約11時間を隔てて、約11時間〜約12時間を隔てて、約12時間〜18時間を隔てて、18時間〜24時間を隔てて、24時間〜36時間を隔てて、36時間〜48時間を隔てて、48時間〜52時間を隔てて、52時間〜60時間を隔てて、60時間〜72時間を隔てて、72時間〜84時間を隔てて、84時間〜96時間を隔てて、または96時間〜120時間を隔てて投与され得る。それらの2以上の療法は患者の1回の同じ来院時に投与され得る。
本発明の抗体およびその他の療法は周期的に投与されうる。周期的(cycling)療法は、ある期間にわたる第1療法(例えば、第1の予防または治療剤)の投与、およびそれに続く、ある期間にわたる第2療法(例えば、第2の予防または治療剤)の投与、および場合によってはそれに続く、ある期間にわたる第3療法(例えば、予防または治療剤)などの投与、ならびにこの連続的投与の反復を含み、該周期は、それらの療法の1つに対する耐性の発生を低減するため、および/またはそれらの療法の1つの副作用を回避または軽減するため、および/またはそれらの療法の効力を改善するためのものである。
ある実施形態において、本発明の多価抗体は、in vivoにおける適切な分布が確保されるよう製剤化され得る。例えば、血液−脳関門(BBB)は多数の高親水性化合物を排除する。本発明の治療用化合物が(所望により)BBBを通過することを保証するために、それらは例えばリポソーム中に製剤化されうる。リポソームの製造方法に関しては、例えば、米国特許第4,522,811、5,374,548および5,399,331号を参照のこと。リポソームは、標的化薬物送達を促進するよう特定の細胞または器官へ選択的に輸送される1以上の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。典型的な標的化部分には、ホラートまたはビオチン(例えば、Low et alの米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al., (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)(K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照のこと)が含まれる。
本発明は、本発明の抗体を含む医薬組成物を、単独でまたは他の療法と組合せて、それを要する対象に投与するための方法を提供する。本発明の組合せ療法の療法(例えば、予防または治療剤)は同時または連続的に対象に投与され得る。本発明の組合せ療法の療法(例えば、予防または治療剤)は周期的にも投与され得る。周期的(cycling)療法は、ある期間にわたる第1療法(例えば、第1の予防または治療剤)の投与、およびそれに続く、ある期間にわたる第2療法(例えば、第2の予防または治療剤)の投与、ならびにこの連続的投与の反復を含み、該周期は、それらの療法(例えば、剤)の1つに対する耐性の発生を低減するため、および/またはそれらの療法(例えば、剤)の1つの副作用を回避または低減するため、および/またはそれらの療法の効力を改善するためのものである。
本発明の組合せ療法の療法(例えば、予防または治療剤)は同時に対象に投与され得る。「同時」なる語は、厳密に同一時点での療法(例えば、予防または治療剤)の投与に限定されるものではなく、本発明の抗体がその他の療法と共に作用して、それらがそれ以外の様態で投与された場合に比べて増加した利益をもたらし得るように或る順序および時間間隔で、本発明の抗体を含む医薬組成物が対象に投与されることを意味する。例えば、各療法は、同時に、または異なる時点においていずれかの順序で連続的に対象に投与され得るが、それらは、所望の治療または予防効果が得られるよう時間的に十分に接近して投与されるべきである。各療法は、任意の適当な形態および任意の適当な経路で、別々に対象に投与されうる。種々の実施形態においては、該療法(例えば、予防または治療剤)は、15分未満を隔てて、30分未満を隔てて、1時間未満を隔てて、約1時間を隔てて、約1〜約2時間を隔てて、約2時間〜約3時間を隔てて、約3時間〜約4時間を隔てて、約4時間〜約5時間を隔てて、約5時間〜約6時間を隔てて、約6時間〜約7時間を隔てて、約7時間〜約8時間を隔てて、約8時間〜約9時間を隔てて、約9時間〜約10時間を隔てて、約10時間〜約11時間を隔てて、約11時間〜約12時間を隔てて、24時間を隔てて、48時間を隔てて、72時間を隔てて、または1週間を隔てて、対象に投与され得る。他の実施形態において、2以上の療法(例えば、予防または治療剤)は患者の同一来院時に投与され得る。
該組合せ療法の予防または治療剤は同一医薬組成物中で対象に投与され得る。あるいは、該組合せ療法の予防または治療剤は別々の医薬組成物中で同時に対象に投与され得る。該予防または治療剤は、同じまたは異なる投与経路により対象に投与され得る。
本発明は完全に説明され、さらに以下の実施例および請求項により例示されるが、これは一例であり、さらなる限定を意味するものではない。
方法および材料
1:パンニング、抗体同定および特性化
(a)パンニング
(i)HuCAL GOLD(登録商標)パンニング
ヒトLRP6を認識する抗体の選択のために、いくつかのパンニング戦略を応用した。ヒトLRP6タンパク質に対する治療的抗体を、抗体変異体タンパク質の源として、市販のファージディスプレイライブラリーであるMorphoSys HuCAL GOLD(登録商標)ライブラリーを用いて高結合親和性を有するクローンを選択することによって作出した。
ファージミドライブラリーは、HuCAL(登録商標)コンセプト(Knappik et al.,(2000) J Mol Biol 296:57−86)に基づくものであり、そして、ファージ表面上でFab提示するためのCysDisplayTM(LohningによるWO01/05950)を採用する。
詳細には、現在のプロジェクトにおいて用いられたHuCAL GOLD(登録商標)ライブラリーは、(Rothe et al.,(2007)J Mol Biol)に記載されている。ヘルパーファージVCSM13を用いて産生された、またはHyperファージを用いて産生されたファージミド(Rondot et al.,(2001)Nat Biotechnol 19:75−78)が抗−LRP6抗体の選択のために使用された。
(ii)LRP6に対する全体細胞パンニング
全体細胞パンニングのために、eGFPに融合したLRP6のアミノ末端断片(アミノ酸1−1482)を発現する細胞株HEK293−hLRP6ΔC−eGFPを用いた。特異的HuCAL GOLD(登録商標)抗体ファージミドを、培養後、LRP6を発現する細胞株を溶出し、続いて、HEK293−LRP5/6−shRNA細胞への後−吸着を行った。結果として生じたHuCALファージ−含有上清を、E.coli TG1細胞上にタイターし、そして、ヘルパーファージを用いたE.coli TG1細胞の感染の後に、レスキューした。ポリクローナル増幅ファージ出力を、再度タイターし、そして、連続的選択工程において使用した。
(iii)LRP6に対するFc捕獲パンニング
Fc捕獲パンニングについては、Fc−捕獲LRP6−Fcを用いてブロックしたファージを培養して、そして、異なる濃度のPBSTを、および異なる回数のPBSを用いて非特異的ファージを洗い流した。
残存するファージを、溶出し、そして、E.coli TG1細菌の感染のために直ちに使用した。増幅、ファージ生産、および出力タイター測定は、LRP6に対する全体細胞パンニングにおいて前述したように実施した。
(iv)LRP6に対する差次的全体細胞パンニング
HEK293−hLRP6ΔC−eGFP細胞上の抗体選択、および組換えヒトLRP6−Fc上の選択を用いる差次的全体細胞パンニングを、全体細胞パンニングについて、およびFc捕獲パンニングについて前述したように実施した。
選択プロセスの間、非特異的ファージを、異なる濃度のPBSを、および異なる期間のPBSTを用いて除去した。
E.coli TG1のファージ感染、増幅、ファージ生産、および出力タイター測定を、LRP6に対する全体細胞パンニングにおいて前述したように実施した。
(v)LRP6に対する半溶液パンニング
半溶液パンニングのために、組換えヒトLRP6−Fc、およびBSAを、トシル活性化M−280−Dynaビーズに共有結合した。
回転器上で、LRP6−被覆ビーズとともに、前処理したファージを培養した。ビーズを、次に、磁気選別機を用いて回収し、そして、PBSTおよびPBSで洗浄した。ビーズ−結合ファージを、溶出し、そして、直ちにE.coli TG1細菌の感染のために用いた。ファージ感染、増幅、ファージ生産、および出力タイター測定は、LRP6に対する全体細胞パンニングにおいて前述したように実施した。
(b)選択されたFab断片のマイクロ発現、およびサブクローニング
可溶性Fabの迅速な発現を促進するために、選択されたHuCAL GOLD(登録商標)ファージのFabをコードする挿入物を、発現ベクターpMORPH(登録商標)X9_FH、またはpMORPH(登録商標)X9_FSにサブクローン化した。TG1−Fの形質転換の後、HuCAL(登録商標)−Fab断片を含有するペリプラズム抽出物の単一クローン発現、および調製を、前述のようにして行った(Rauchenberger et al.,(2003))。
2:スクリーニング
(i)HEK293−hLRP6ΔC−eGFP細胞でのFACSスクリーニング
パンニング戦略全体細胞パンニング、差次的全体細胞パンニング、および半溶液パンニングによって選択されたクローンを、HEK293−hLRP6ΔC−eGFP細胞、およびHEK293−LRP5/6−shRNA細胞に対するフローサイトメトリーによって、カウンタースクリーニングのためにスクリーニングした。上記のFc捕獲パンニング戦略の第一次的ヒットも、フローサイトメトリーによって試験した。
細胞を、70〜80%密集度で採取し、FACS緩衝液中に再懸濁し、そして、96ウェルU−底マイクロタイタープレートにおいて細菌細胞溶解物で染色した。抗体結合を、蛍光色素−接合検出抗体で明らかにした。染色した細胞を二度洗浄し、そして、FACSArray機器(BectonDickinson)を用いて平均蛍光強度を、測定および分析した。
(ii)組換えヒトLRP6−Fc上でのFc−捕獲スクリーニング
Fc−捕獲パンニングにおいて選択されたクローンを、Fc−捕獲−ELISA装置においてスクリーニングした。
Maxisorp(Nunc,Rochester、NY、USA)384ウェルプレートを、ヤギ抗−ヒトIgG、Fc断片特異的抗体で被覆した。PBSTで洗浄し、ウェルをブロッキングした後、組換えヒトLRP6−Fcを添加した。被覆したプレートを洗浄した後、細胞溶解物を添加し、そして、基質Attophosを有するAP−接合ヤギIgG抗−ヒトIgGF(ab’)2を用いて結合Fab断片を検出した。蛍光を、Tecanプレートリーダーを用いて535nmで読み取った。
3:E.coliにおけるHuCAL(登録商標)−Fab抗体の発現、および精製
TG−1細胞におけるpMORPH(登録商標)X11_Fab_FHまたはpMORPH(登録商標)X9_Fab_FHによってコードされるFab断片の発現を、IPTGの添加によって誘導した。Ni−NTAクロマトグラフィー(Bio−Rad、ドイツ)によって単離したFab断片およびリゾチームを用いて細胞を、破壊した。タンパク質濃度を、UV−分光光度法によって測定した。HP−SECによって天然(native)状態で、およびSDS−PAGEを用いて変性し、還元した状態で、Fab断片の純度を分析した。
4:親和性決定
(i)表面プラズモン共鳴測定
KD値の測定のために、表面プラズモン共鳴技術を適用した。LRP6−Fc−融合物を捕獲するために、抗−ヒト−Fc−捕獲CM5チップ(Biacore、スウェーデン)を使用し、続いて、異なる濃度でリガンド(Fab)注入を行った。
(ii)Sector imager 6000(MSD)用いたKD決定のための溶液平衡滴定(SET)方法
溶液平衡滴定(SET)によるKD決定のために、抗体タンパク質のモノマー画分を使用した(分析的SECによる分析によって、少なくとも90%モノマー含有量;それぞれ、FabについてSuperdex75(Amersham Pharmacia)、またはIgGについてはTosoh G3000SWXL(Tosoh Bioscience))。
溶液における親和性決定は、基本的には、文献(Friguet et al.,(1985)J Immunol methods 77:305−319)において説明されたように行った。SET方法の感度および精度を向上させるために、伝統的なELISAからECLベースの技術(Haenel et al.,(2005)Anal Biochem.339:182−184)に、それを、移した。
特注フィティングモデルを適用するXLfit(IDBS)ソフトウェアでデータを評価した。Fab分子のKD決定のために、Abraham et al.(1996)Journal of Molecular Recognition 9:456−461に従い修正したフィットモデル(上記のHaenel et alによる)を用いた。
[Fab]t:適用した総Fab濃度
x:適用した総可溶性抗原濃度(結合部位)
Bmax:抗原なしのFabの最大シグナル
KD:親和性
5:親和性成熟後のスクリーニング
HEK293T/17細胞上のEC50決定
ACS測定において親HEK293T/17細胞についてEC50値を測定した。典型的な抗体滴定曲線は、10〜12の異なる抗体希釈を含有し、そして、約150〜200μg/mL(最終濃度)の濃度で、滴定は開始した。Accutaseを用いて細胞を採取し、FACS緩衝液中で再懸濁し、96ウェルプレートのウェルに撒き、そして、抗体希釈物で染色した。EC50値を、非線形回帰分析を用いるプログラムGraphPad Prismで決定した。
6:IgGへの変換
ヒトIgG2、ヒトIgG4、ヒトIgG4_Pro、およびヒトIgG1f LALAについて、全長IgGを発現させるために、重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメイン断片をFab発現ベクターから適切なpMORPH(登録商標)_hIgベクターにサブクローニングした。
7:ヒトIgGの一過的発現および精製
等量の、IgG(pMORPH4)の重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターDNA、またはIgG重鎖および軽鎖発現ベクター(pMORPH2)で真核性HKB11細胞をトランスフェクトした。除菌の後、溶液に、標準プロテインA親和性クロマトグラフィー(MabSelect SURE、GE Healthcare)を受けさせた。タンパク質濃度を、UV−分光光度法によって測定した。SDS−PAGEにおいて、変性、還元、および非還元条件下で、またはHP−SECによって、天然(native)状態で、かつ、Agilent BioAnalyzerを用いることによって、IgGの純度を、分析した。
8:Wntレポーター遺伝子分析
抗−LRP6抗体のWntシグナルを阻害する能力を、Wnt1およびWnt3a応答ルシフェラーゼレポーター遺伝子分析において試験した。Wnt3a調整培地で、または、Wnt1、Wnt3a、もしくは他のWnt発現プラスミドの共−トランスフェクションによって、細胞を、刺激した。
(i)調整培地でのWnt3aレポーター遺伝子分析
104HEK293−STF細胞/ウェルを、96ウェル組織培養プレートに撒き、そして、100μL培地において、37℃/5%CO2で一晩細胞を培養した。
次の日、純粋物において、またはWnt3a−調整培地における希釈物において、様々な抗−LRP6抗体希釈物、およびDKK1希釈物(陽性対照)を調製した。60μL/ウェルの上清を96ウェル組織培養プレートから除去し、そして、60μL/ウェルの調整培地/抗体希釈物で交換した。
37℃/5%CO2での16〜24時間の培養の後、100μL BrightGloルシフェラーゼ試薬(Promega)を、添加し、そして、プレートを、10分間、培養した。発光読み出し(Tecanプレートリーダー)のために、細胞溶解物を、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar,Cat#3917)に移した。
同様の分析は、Wnt3またはWnt3a過剰−発現細胞(たとえば、CHO−K1、TM3、LまたはHEK293細胞)の共培養を用いて行うこともできる。
(ii)一時的にトランスフェクトした細胞でのWnt1/Wnt3aレポーター遺伝子分析
3x104HEK293T/17細胞/ウェルを、96ウェル組織培養プレート(Costar)に撒き、そして、表3において説明したように、100μL培地において、37℃/5%CO2で細胞を、培養した。12〜16時間後、空ベクターWnt発現プラスミド1ng/ウェル;pTA−Luc−10xSTF(ホタルルシフェラーゼコンストラクト)50ng/ウェル;またはphRL−SV40(Renillaルシフェラーゼコンストラクト)0.5ng/ウェルで細胞をトランスフェクトした。
上で列挙したプラスミドおよび0.2μL FuGene6/ウェル(Roche)を含有するトランスフェクションプレミックス(10μL/ウェル)を調製した。トランスフェクションプレミックスを、RT(室温)で15分培養し、そして、ウェルに撒いた。プレートを、400rpmで2分間、RT(室温)で振盪し、そして、37℃/5%CO2で4時間、培養した。その間、抗体を、培地において希釈し、そして、トランスフェクトした細胞(75μL/ウェル)に添加した。
18〜24時間後、75μL/ウェルDualGloルシフェラーゼ試薬(Promega)を添加し、そして、ホタルルシフェラーゼ活性の読み出しの前の細胞溶解のためにプレートを10分間、振盪した。発光読み出しの後、75μL/ウェルDualGlo Stop&Glow試薬(Promega)を添加し、そして、Renillaルシフェラーゼ活性を決定するために発光を再度測定した。
分析のために、ホタルルシフェラーゼ活性およびRenillaルシフェラーゼ活性の間の比を計算した。抗−LRP6抗体のIC50−決定のために、相対的ルシフェラーゼ値を、GraphPad Prismを用いて分析した。
同様の分析は、Wnt1または他のWnt1クラスリガンド過剰発現細胞(例えば、CHO−K1、TM3、LまたはHEK293細胞)の共−培養を用いて行うこともできる。
9:FACS酵素反応性研究
ネズミおよびカニクイザルLRP6に対する交差−種反応性を、FACS分析によって、細胞で測定した。FACS染色は、本質的に上記のように行った。ヒトU266細胞(LRP6の非発現)を、陰性対照として用いた。
ネズミLRP6に対する交差反応性を、ネズミNIH−3T3細胞上で試験した。カニクイザル細胞株Cynom−K1上で、および一時的にトランスフェクトしたHEK293T/17細胞上で、カニクイザルLRP6に対する交差反応性を試験した。
ヒト細胞株HEK293T/17上でのカニクイザル交差反応性を試験するために、メーカーの使用説明書にしたがって、リポフェクタミン(Invitrogen)を用いて細胞を一時的にトランスフェクトした。ヒトLRP6発現プラスミドpCMV6_XL4_LRP6およびシャペロン−コードプラスミドpcDNA3.1−flag_MESDの混合物で、または、pcDNA3.1−nV5−DEST_cynoLRP6およびpcDNA3.1−flag_MESDの混合物(カニクイザルLRP6の過剰発現)で、細胞をトランスフェクトした。50μgのLRP6発現プラスミドおよび20μgのMESD発現プラスミドを、T175フラスコごとに用いた。24時間後、細胞を分離し、そして、ヤギ抗ヒトLRP6コントロール抗体(R&D Systems)で、および抗−LRP6 HuCAL抗体で染色した。模造−トランスフェクトHEK293T/17細胞を、陰性対照染色(低内因性LRP6発現)のために用いた。
10:バインダー最適化
親和性成熟ライブラリーの作出
選択した抗体断片の親和性および生物学的活性を増大させるために、トリヌクレオチド指向突然変異生成を用いるカセット突然変異生成によってL−CDR3およびHCDR2領域を、並行して最適化した。一方、フレームワーク領域は、一定を保持した。
標準クローニング手順、およびエレクトロコンピテントE.coli TOP10F細胞(Invitrogen)への多様化したクローンの形質転換によって、異なる親和性成熟ライブラリーを、作出した。ランダムにピックアップしたクローンの配列決定は、100%の多様性を示した。ピックアップしたクローンの内には、親バインダ−は、見出されなった。最後に、全てのライブラリーのファージを別異に調製した。
11:MMTV−Wnt1異種移植
MMTV−Wnt1トランスジェニックマウスからの腫瘍を、ヌードマウスの乳房脂肪体への移植に先立ち、FVBマウスの乳房脂肪体において、腫瘍片として、5代培養した。移植後11日、腫瘍が約110mm3の平均容量に到達したとき、マウスを、1群ごとに8マウスを有する3群に無作為に選択し、そして3日ごとに、服薬させた(DeAlmeida et al.(2007);Cancer Res.67:5371−9)。
12:生化学分析における阻害
10%ウシ胎仔血清を追加したD−MEMにおいて、37℃で5%CO2でHEK293細胞を増殖させた。細胞を、3x104/ウェルで96ウェル組織培養プレート(Costar)に撒き、そして、0.2μL/ウェルFuGene6(Roche)と混合した0.5ng/ml phRL−SV40(Promega)、50ng/ウェルSTFレポーター、および0.1ng/ウェルWnt発現プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの4時間後、抗体をPBSに希釈し、そして、トランスフェクトした細胞に添加した。18時間培養後、ホタルルシフェラーゼおよびRenillaルシフェラーゼ活性を、DualGloルシフェラーゼ試薬(Promega)用いて測定した。Renillaルシフェラーゼは、トランスフェクション効率を標準化するために用いた。
試験した全てのIgGフォーマットは、Wnt1(2、6、7A、7B、9、10A、10B)作出正準シグナルの強力かつ完全な阻害を有する。全ては、Wnt3/3A作出シグナルの存在下で、ベル型の相乗作用曲線を生じさせる。
13:FACS−ベースの競合分析
FACSベースの競合分析のために、抗−LRP6 Fabおよび陰性対照Fab MOR03207を、メーカーの使用説明書にしたがって、ECLタンパク質ビオチン化モジュール(GE Healthcare)を用いてビオチン化した。ビオチン化したFabをHEK293−hLRP6ΔC−eGFP細胞上のFACS染色に、一定のFab濃度(20nM最終濃度)で用いて、そして、100−倍モル過剰の非ラベルFabと競合させた。1時間、4℃でプレートシェーカー上で細胞を、Fab希釈物とともに培養した。細胞1xをFACS緩衝液で洗浄した後、それらを、暗闇下で、プレートシェーカー上で、4℃で1時間、PE−接合ストレプトアビジン(Dianova)とともに培養した。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、そして、FACS Array(BD)を用いて蛍光を測定した。同様に、非ビオチン化抗−LRP6 Fabを、100倍モル過剰のLRP6−結合タンパク質SOSTと競合させ、そして、細胞に対するFabの結合を、PE−接合抗ヒトIgG抗体(Dianova)によってモニターした。
14:免疫ブロット分析
総細胞溶解物を、RIPA緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1% NP−40、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、1mM EDTA)中で、調製した。溶解物を、タンパク質濃度について標準化し、SDS−PAGEによって分解し、ニトロセルロースメンブレンにトランスファーし、そして、指定の抗体でプローブした。pT1479 LRP6抗体は、満足のいく結果を達成するためには、メンブレン抽出物の作出を必要とする。メンブレン抽出物の作出のために、細胞を、4つの冷凍−解凍サイクルを行うことによって低張緩衝液(10mM Tris−HCl pH7.5、10mM KCl)において溶解し、そして、非可溶性メンブレン画分を、RIPA緩衝液を用いて可溶化した。プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)および1xホスファターゼインヒビターカクテル(Upstate)を、溶解緩衝液に添加した。ウェスタンブロット分析において用いられる市販の抗体は、ウサギ抗−LRP6、ウサギ抗−pT1479 LRP6、およびウサギ抗−pS1490 LRP6抗体(Cell Signaling Technology)を含む。
実施例1:FACSによる内因性LRP6に対する抗−LRP6抗体の特異的結合
LRP6の内因性細胞表面発現の検出は、抗−LRP6抗体およびFACS分析を用いて多数の腫瘍細胞について検討した。図1Aに示すように、PA1細胞は、LRP5およびLRP6 mRNAの両方を発現するのに対して、U266およびDaudi細胞は、LRP6 mRNAを発現しない。PA1細胞は、プロペラ1抗−LRP6 IgGでの有意な染色を示すが、U266およびDaudi細胞はそうではない。より重要なことに、U266細胞は、抗−LRP6抗体によって染色されないが、それらは、LRP6を発現し、抗−LRP6抗体の特異性を実証する。さらに、PA1細胞の抗−LRP6抗体染色は、LRP6 shRNAを用いた内因性LRP6の欠失に際して有意に減少しており、さらに、LRP6抗体の特異性を実証する。
さらなる研究において、PA1細胞におけるshRNAによるLRP6のノックダウンは、LRP6に対するProp1およびProp3抗体の特異性をさらに確認する(図1B参照)。ノックダウンは、LRP6に向けたショートヘアピンRNAをコードするレンチウイルスで細胞を感染させること、および感染した細胞の安定なプールを選択することによって、達成した。研究のために使用されたshRNA感染方法は、Wiederschainらによる2009 Cell Cycle 8:498−504 Epub 2009 Feb 25において説明されている。
実施例2:プロペラ1およびプロペラ3抗−LRP6 FabによるWnt1およびWnt3aレポーター遺伝子分析の差次的阻害
異なる抗−LRP6 FabをインビトロWntレポーター分析において試験した。Wnt1またはWnt3Aリガンドを、一時的に発現させ、HEK293T/17 STF細胞(遺伝子レポーター分析)そして、様々な濃度の抗−LRP6 Fab断片で処理した。STF分析は、Huang et al.(2009),Nature;461:614−20.Epub 2009 Sep 16によって説明されるプロトコルを用いて実施した。図2Aに見られるように、プロペラ1抗−LRP6 Fab(MOR08168、MOR08545、MOR06706)は、Wnt3A−依存性シグナリングに対する大きな効果なしに特異的にWnt1−依存性シグナリングを減少させた。逆に、図2Bに示されるように、プロペラ3抗−LRP6 Fab(MOR06475、MOR08193、MOR08473)は、Wnt1−依存性Wnt1−依存性シグナリングに対する有意な効果なしに特異的にWnt3A−依存性シグナリングを減少させた。結果は、Wnt1およびWnt3A活性が異なるLRP6 Fab断片(エピトープ)によって別々にブロックされることを実証する。
実施例3:異なる種のLRP6に対する抗−LRP6抗体の結合。
交差反応性を示すために、マウス起源(NIH 3T3)およびヒト(HEK293T/17)の内因性LRP6を発現する細胞、または、カニクイザルLRP6を発現する一時的にトランスフェクトしたHEK293/T17細胞を、処理し、そして、上記のようにしてフローサイトメトリーを受けさせた。図3は、結果の発見の結果を要約し、そして、全ての抗−LRP6抗体が、ヒト、マウス、およびカニクイザルLRP6に結合することを示す。
実施例4:プロペラ1およびプロペラ3抗−LRP6抗体に対するWntの感度に基づくそれらの分類。
Wntの感度に基づきそれらを評価するために、プロペラ1およびプロペラ3抗−LRP6抗体、様々なWntリガンドを、HEK293T/17 STF細胞(遺伝子レポーター分析)に一時的に発現させて、そして、プロペラ1またはプロペラ3抗−LRP6抗体で処理した。Huang et al.(2009),Nature;461:614−20.Epub 2009 Sep 16によって説明されたプロトコルを用いてSTF分析を実施した。結果を図4に示し、図4は、特定のWntの活性阻害が、LRP6の特異的プロペラ領域に対する抗体結合/ブロッキングに基づくことを示す。図4は、Wnt1、Wnt2、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt9、Wnt10A、Wnt10Bによって誘導されるシグナリングがプロペラ1抗−LRP6 Fabによって特異的に阻害されることができるが、一方、Wnt3およびWnt3Aによって誘導されるシグナリングは、プロペラ3抗−LRP6 Fabによって特異的に阻害されることができることを示す。
実施例5:Fab断片からIgGへのLRP6抗体の変換は、他のクラスのWntによって誘導されるWntシグナルを促進する。
かなり予想外の観察結果において、Fab断片からのLRP6抗体の、IgGへの変換は、Wntシグナルを促進する。293T/17 STFレポーター分析において、プロペラ1抗−LRP6 IgGは、Wnt1−依存性を阻害し、そして、Wnt3A−依存性シグナリングを促進する。同様に、図5に示されるように、プロペラ3抗−LRP6 IgGは、Wnt3A−依存性を阻害し、そして、Wnt1−依存性シグナリングを促進する。この発見は、Wntシグナル経路は、プロペラ1およびプロペラ3抗体を用いて、修飾、または「微調整」してもよいことを示唆する。同様の効果は、他の細胞背景(例えば、MDA−MB231、MDA−MB435、PA−1、TM3および3t3細胞−データは示さず)におけるSTFレポーター分析において観察された。
実施例6:Wnt1またはWnt3A−誘導LRP6リン酸化を特異的に阻害するプロペラ1またはプロペラ3抗−LRP6 Fab。
HEK293T/17細胞を、Wnt1またはWnt3A発現プラスミドで一時的にトランスフェクトし、そして、プロペラ1またはプロペラ3抗−LRP6 Fabで処理した。図6に示すように、プロペラ1抗−LRP6 Fabは、たとえば、T1479およびS1490部位のLRP6のWnt1−誘導リン酸化を特異的に阻害するが、プロペラ3抗体はそうではない。対照的に、プロペラ3抗−LRP6は、LRP6のWnt3A−誘導リン酸化を特異的に阻害するが、プロペラ1抗体はそうではない。これらの結果は、抗体は、LRP6の異なるプロペラドメインに結合し、特異的Wntリガンドをブロックすることを支持する。
実施例7:プロペラ1抗−LRP6 IgGを用いるMMTV−Wnt1腫瘍異種移植モデルにおけるWnt標的遺伝子の発現の阻害。
LRP6抗体は、広く認められているMMTV−Wnt1として知られる遺伝的に改変されたマウスモデル技術において、インビボで、さらに特性化された。IgGフォーマットにおける抗−LRP6抗体が、Wntシグナルおよびインビボの腫瘍増殖を阻害することができたかどうかを決定するために、実験を行った。MMTV−Wnt1トランスジェニックマウスに由来する乳房腫瘍は、Wnt1依存性であり;テトラサイクリン−制御システムを用いてWnt1発現を遮断すること(Gunther et al. (2003)、上記)またはFz8CRDFcを用いてWnt活性をブロッキングすること(DeAlmeida et al.(2007)Cancer Research 67:5371−5379)は、インビボで腫瘍増殖を阻害する。MMTV−Wnt1腫瘍におけるWntシグナルに対する抗−LRP6抗体の効果を測定するために、MMTV−Wnt1腫瘍を移植したマウスに、単回投与の5mg/kg Wnt1クラス−特異的拮抗抗−LRP6抗体を静脈注射投与した。抗体の血清濃度、ならびにβ−カテニン標的遺伝子Axin2のmRNA発現を、2週間以上の期間、分析した。LRP6抗体の消失β−相半減期は、約108時間であった。抗体注入に対応して、Axin2 mRNA発現の有意な減少が、腫瘍において観察され、そして、血清における抗体レベルが減少した際、Axin2発現は、抗体注入後1週間で次第に回復した。これらの結果は、Wnt1クラス−特異的抗−LRP6抗体がMMTV−Wnt1異種移植におけるWntシグナルを抑制すること、およびこの抑制が、血清におけるLRP6抗体の濃度と相関することを示唆する。腫瘍増殖に対する抗−LRP6抗体の効果を試験するために、マウスに、プロペラ1−、プロペラ3−特異的抗−LRP6抗体、またはアイソタイプ対応対照抗体を投与した。マウスに、20mg/kgの初回投与量を、続いて、3日ごとに、10mg/kgを、静脈投与した。この実験において、プロペラ3−特異的抗−LRP6抗体は、腫瘍回帰を引き起こさなかったが、プロペラ1は、引き起こした。合わせると、これらの結果は、プロペラ1−特異的抗−LRP6抗体が、MMTV−Wnt1異種移植の回帰を誘導することを実証する。
ヌードマウスにおけるMMTV−Wnt1腫瘍異種移植を、1時間〜14日の範囲の異なる時点でMOR08168、プロペラ1抗−LRP6 IgGで処理した。図7は、抗体のPK血清濃度およびWnt標的遺伝子Axin2のmRNA発現との逆相関を示す。腫瘍におけるAxin2遺伝子発現レベルは、MOR08168処理で阻害され、そして、血清から抗体が除去されるにつれて戻った。
Axin2に加えて、付加的な遺伝子の発現に対するMOR08168の効果を評価した。MOR08168(5mg/kg)の単回投与プラスまたはマイナスのMMTV−Wnt1同種移植片腫瘍の経時変化実験をプロファイルするためにAffymetrix Mouse 430 2.0 Arraysを、使用した。全部で6つの時点(0、1、3、8、24、336時間)があり、そして、時点ごとに3つの反復があった。抗体での処理でのAxinの最大阻害を実証するデータに基づき、推定上Wnt経路阻害に応答する差次的に発現した遺伝子を決定する最良の代表的時点として、8時間を選択した。R/Bioconductorフレームワークを、利用して、そして、0時間の時点および8時間の時点の間で差次的に発現した遺伝子を決定するために、Limma packageを採用した。.05の調整P−値が、差次的に発現した遺伝子のセットを決定するための閾値として使用された。このカットオフに基づき、972遺伝子にマップされ差次的に発現したと呼ばれる1270プローブセットがある。図8Aは、<0.01の調整P−値で>2倍上方制御された遺伝子を示す表であり、そして、図8Bは、<0.01の調整P−値で>2倍下方制御された遺伝子を示す表である。
実施例8:MMTV−Wnt1同種移植片モデルにおけるプロペラ1およびプロペラ3抗−LRP6抗体の抗−腫瘍活性。
LRP6プロペラ1および3抗体の抗−腫瘍活性が、MMTV−Wnt1同種移植片モデルにおいて評価された。MMTV−Wnt1腫瘍断片を、メスヌードマウスに、皮下(s.c.)移植した。移植の11日後、MMTV−Wnt1腫瘍を有するマウス(n=8、平均121mm3;範囲:100−147mm3)を、ビヒクルIgG(10mg/kg、静脈内投与(i.v.)、3日ごと(q3d))、LRP6−プロペラ1Ab MOR08168(10mg/kg、i.v.、q3d)、またはLRP6−プロペラ3Ab MOR06475(10mg/kg、i.v.、q3d)で処理し、そして、3日ごとに腫瘍を測った。LRP6−プロペラ1MOR08168Abは、腫瘍回帰を投与量−依存的に誘導した(−55%、p<0.05)(図9参照)。
実施例9:MMTV−Wnt3同種移植片モデルにおけるプロペラ1およびプロペラ3抗−LRP6抗体の抗−腫瘍活性。
LRP6プロペラ1および3抗体の抗−腫瘍活性を、MMTV−Wnt3同種移植片モデルにおいて評価した。MMTV−Wnt3腫瘍断片を、メスヌードマウスに皮下(s.c.)移植した。移植の15日後、MMTV−Wnt3腫瘍を有するマウス(n=6、平均209mm3;範囲:113−337mm3)をビヒクルIgG(10mg/kg、静脈内投与(i.v.)、1週間に2回(2qw))、MOR08168 LRP6−プロペラ1Ab(3mg/kg、i.v.、qw)、またはMOR06475 LRP6−プロペラ3Ab(10mg/kg、i.v.、2qw)で処理し、そして、腫瘍を1週間で2回測った。MOR06475 LRP6−プロペラ3Abは、抗腫瘍活性(T/C=34%、p<0.05)を実証した(図10参照)。
実施例10:インビボでWnt3Aを阻害するプロペラ1および3抗−LRP6抗体の能力の評価
Wnt3クラスWntシグナルをインビボで阻害するLRP6−プロペラ1および3抗体の能力を、Wnt3A分泌L細胞で共−移植したPA1−STFレポーター細胞からなる共−移植システムにおいて試験した。メスヌードマウスを、10x10e6 PA1−STF細胞および0.5x10e6 L−Wnt3A細胞で皮下移植し、そして、5の群に無作為抽出した。24時間後、ビヒクル、MOR08168 LRP6−プロペラ1Ab(10mg/kg)、またはMOR06475 LRP6−プロペラ3Ab(10mg/kg)の単一の静脈内投与をマウスに受けさせ、そして、6時間、24時間、48時間、72時間および168時間後に、Xenogenによってイメージングした。MOR06475は、少なくとも72時間、Wnt3a誘導シグナリングを阻害することができたのに対して、Mor08168は、Wnt3A誘導シグナリングを増大させた(図11)。
実施例11:HDx MSによるLRP6 PD3/4およびその抗体複合体のエピトープマッピング
プロペラ3のYWTD−EGF領域内の抗体結合部位を同定するために、水素重水素交換(HDx)質量分析(MS)を使用した。LRP6プロペラドメイン3−4(PD3/4)は、12のシステインおよび4N−結合グリコシル化部位を有する。全ての4N−結合グリコシル化部位は、プロペラ3ドメイン(631−932)に位置する。HDxMSによって、100%近くの範囲(タンパク質の量については、構造情報を得ることができた)をプロペラ4ドメインにおいて、そして、約70%範囲をプロペラ3ドメインにおいて、マッピングした。4グリコシル化部位を直接に囲む領域は、検出されないままである(図12A)。Fab06745の存在下で、2つの弱く溶媒保護したペプチドがプロペラ3において見出された。(Phe636−Leu647、Tyr844−Glu856;図11A)。このことは、エピトープに関与する残基、または残基の断片が、保護されたペプチド上であるか、または空間的に近傍にあることを示唆する。LRP6 PD34の結晶構造に基づき、溶媒保護領域は、Prop3のブレード1および6の間の凹面表面に相当する。
LRP6 PD34に対するScFv06475の相互作用を妨害する変異
ブレード1および6の縁が、Wnt3aシグナリングの抗体仲介阻害に関与することを確認するために、結合において、HDxによって含意される領域もおおよそカバーする一連のLRP6表面変異を、構築した(R638A、W767A、Y706A/E708A、W850A/S851A、R852/R853A、およびD874A/Y875A)。変異体タンパク質が確実に適切に折りたたまれるように、差次的静的光散乱(DSLS)熱融解分析を行った。温度変性実験は、野生型および変異体タンパク質の凝集温度、Tagg(50%のタンパク質が変性する温度)が類似していたことを示した。このように、変異は、タンパク質の折畳みまたは安定性に対する効果を有さなかった。
scFv MOR06475に対する変異体LRP6の結合能力をELISAによって測定した。HDxMS実験における溶媒保護を示したペプチドに位置する残基の変異(R638、W850/S851、およびR852/R853)は、抗体結合において劇的な減少を示した(図12B参照)。HDxにおいて溶媒保護を示さないペプチドに位置する残基の変異(Y706/E708)も、抗体結合能力において変化を示さなかった(図11B)。このように、結合分析データは、HDxMSによりマッピングされるように、結合界面と、十分に一致しており、残基R638、W850、S851、R852、およびR853がエピトープに直接的にかかわることを示唆する。
まとめると、これらの結果は、異なるWntタンパク質が、シグナリングのために、異なるLRP6のプロペラ領域を必要とすることを示している。Wnt1クラスのWntタンパク質(Wnt1、1、2、6、7A、7B、9、10A、10B)は、Wnt1シグナルのために、LRP6のプロペラ1を必要とし、そして、それらは、プロペラ1特異的抗−LRP6抗体によって阻害することができる。Wnt3AクラスのWntタンパク質(Wnt3およびWnt3a)は、Wnt3シグナリングのためにLRP6のプロペラ3を必要とし、そして、それらは、プロペラ3特異的抗−LRP6抗体によって阻害することができる(図13)。別の予想外の発見は、Wntリガンドの存在下での、二価IgGフォーマットにおける抗体のWnt−増強活性であった。IgGフォーマットにおいて試験された全ての抗体は、STF Lucレポーター遺伝子分析において、Wnt1またはWnt3Aシグナリングを増進した。興味深いことに、Wnt1を阻害し、そして、Wnt3A分析において不活性であった大半のFabは、いまだIgGとしてWnt1を阻害したが、Wnt3Aシグナリングを増強し、そして、逆の場合も同じであった。Wnt3Aを阻害した大半のFabは、IgGとしてWnt1活性を増強した。いくつかのフォーマットを試験したように(IgG1LALA、IgG2、IgG4、IgG4_Pro)効果は、IgGフォーマットと独立であった。これらのデータは、異なるWntタンパク質が、シグナリングのために、異なるLRP6のプロペラに結合することを示す。二価LRP6抗体を用いたLRP6の二量化は、それだけでWntシグナルを刺激するに十分ではないが、他のクラスのWntタンパク質によって開始するWntシグナルを増強することができる。これらの発見は、異なる正準Wntリガンドが、LRP6上の異なる結合部位を用いること、および全ての二価抗体が、非−ブロックWntFab(一本鎖抗体、ユニボディ)の存在下で、IgGフォーマットにおけるWnt活性を増進することを実証する。最終フォーマットとしての任意の種類の一価構造は、Wnt相乗作用を回避する。また、Wnt1−およびWnt3Aインヒビター活性の両方を有する二重特異性IgGまたはIgG−様分子のコンストラクトは、相乗作用を回避する。このように、LRP6抗体コンストラクト、Wnt経路を制御および「微調整」するように設計することができる。
実施例12:二パラトープLRP6抗体の作出
この実施例は、二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFv抗体の生産および特性化を説明する。異なるドメイン配向性(たとえば、VH−VLまたはVL−VH)を含有する様々な抗−LRP6 scFv’および異なるリンカー長(たとえば、(Gly4Ser)3または(Gly4Ser)4)を最初に発現させ、精製し、特性化した。scFv試験の結果に基づき、異なる二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFv’を調製し、さらに評価した。scFvは、CLまたはCH3のC−末端、およびVLまたはVHのN−末端を含むIgG内の様々な位置に置いてもよい。さらに、Gly4Serおよび(GlyGlySer)2を含むIgGにscFvを接続するために様々なリンカーを使用してもよい。
(a)材料および方法
(i)抗−LRP6 scFvの作出
全てのscFv−変異体をコードする遺伝子をGeneartによって合成した。両方の配向性において、scFvをコードするDNA−断片(N−末端シグナル配列およびC−末端6xHis−tagを有する、2つの異なるリンカー:(Gly4Ser)3および(Gly4Ser)4によって隔てられるVH−VLおよびVL−VH)を、NdeI/XbaIを介して、Geneartベクターから、ベクターpFAB15−FkpAに直接的にクローン化し、結果として得たコンストラクトを、pFab15−MOR06475−VH−(Gly4Ser)3−VL、pFab15−MOR06475−VH−(Gly4Ser)4−VL、pFab15−MOR06475−VL−(Gly4Ser)3−VH、pFab15−MOR06475−VL−(Gly4Ser)4−VH、pFab15−MOR08168−VH−(Gly4Ser)3−VL、pFab15−MOR08168−VH−(Gly4Ser)4−VL、pFab15−MOR08168−VL−(Gly4Ser)3−VH、pFab15−MOR08168−VL−(Gly4Ser)4−VH、pFab15−MOR08545−VH−(Gly4Ser)3−VL、pFab15−MOR08545−VH−(Gly4Ser)4−VL、pFab15−MOR08545−VL−(Gly4Ser)3−VH、およびpFab15−MOR08545−VL−(Gly4Ser)4−VHと呼んだ。
(ii)二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFvの作出
抗−LRP6 MOR08168 hIgG1LALA 6475scFv
コドン−最適化VH−配列を含有するベクターpRS5a MOR08168 hIgG1LALA(Geneartによって合成)を、二パラトープコンストラクトの作出のための源として用いた。最初に、QuickChange部位指定突然変異生成(Stratagene)によって、hIgG1LALA(プライマー番号1:5’−agcgtgatgcacgaagcgctgcacaaccactac−3’(配列番号:213)およびプライマー番号2:5’−gtagtggttgtgcagcgcttcgtgcatcacgctg−3’(配列番号;214))をコードする配列の3’−端にAfeI−部位を、導入した。MOR06475scFv((Gly4Ser)4−リンカーによって隔てられたVL−VH−配向性)をコードする遺伝子をGeneartによって合成した。AfeI−部位および(GlyGlySer)2−リンカーをコードする配列を含有する5’−プライマー、ならびに、AscI−部位を含有する3’−プライマーを、全体のMOR06475−scFv−遺伝子の増幅のために用いた(プライマー番号3:5’−tgatgcacgaagcgctgcacaaccactacacccagaagagcctgagcctgtcccccggcaagggcggctccggcggaagcgatatc−3’(配列番号:215)およびプライマー番号4:5’−gagcggccgcccggcgcgcctcatcagctggacactgtcaccaggg−3’(配列番号:216))。そして、PCR−産物を、AfeI/AscIを介して、ベクターpRS5a MOR08168 hIgG1LALAにクローニングして、結果として、最終コンストラクトpRS5a MOR08168 hIgG1LALA−6475sc−fvを得た。コドン−最適化VLのMOR08168をコードする遺伝子をGeneartによって合成した。AgeI−部位を含有する5’−プライマー、およびHindIII−部位を含有する3’−プライマーを、全体MOR08168−VL−遺伝子の増幅のために用いた(プライマー番号5:(5’−gcttccggacaccaccggtgacatcgagctgacccagcc−3’配列番号:217)およびプライマー番号6:5’−cagcacggtaagcttggtgcctccgccgaacaccag−3’(配列番号:218))。そして、PCR−産物を、AgeI/HindIIIを介してベクターpRS5a−hlambdaにクローニングして、結果として、最終コンストラクトpRS5a MOR08168 hlambdaを得た。
Lys(K)なしの抗−LRP6 MOR08168 hIgG1LALA 6475scFv
CH3におけるC−末端リシンの除去のために、ベクターpRS5a MOR08168hIgG1LALA−6475scFv(配列番号:165)を、鋳型DNAとして用いた。Quick Change XL部位指向性突然変異生成キット(Stratagene)を、次のプライマー、5’−ctgtcccccggcggcggctccggc−3’(配列番号:219)5’−gccggagccgccgccgggggacag−3’(配列番号:220)と組み合わせて用いた。部位指向性変異誘発を、Stratageneプロトコルにしたがって行い、結果として得た新コンストラクトを、pRS5a hIgG1LALA MOR08168opt 6475 scFv Kと呼んだ。
コドン−最適化VL−配列(Geneartによって合成)を含有するベクターpRS5a MOR08168 hlambda(作出は、抗−LRP6_MOR08168 hIgG1LALA_6475scFvについて説明される)を、LCの発現についていかなる変更もなしに用いた。
AspAlaに対する抗−LRP6_MOR08168 hIgG1LALA 6475scFv AspPro (DPからDAへ)
ベクターpRS5a MOR08168 hIgG1LALA−6475scFv(配列番号:165)を、scFvのVHにおけるDAへのDPの置換のための鋳型DNAとして使用した。Quick Change XL部位指向性突然変異生成キット(Stratagene)を、次のプライマーと組み合わせて使用した。5’−ccatgaccaacatggacgccgtggacaccgccacc−3’(配列番号:221)、5’−ggtggcggtgtccacggcgtccatgttggtcatgg−3’(配列番号:222)。部位指向性変異誘発を、Stratageneプロトコルにしたがって行い、結果として得た新コンストラクトを、pRS5a hIgG1LALA MOR08168opt 6475 scFv DPからDAへ、と呼んだ。
コドン−最適化VL−配列(Geneartによって合成)を含有するベクターpRS5a MOR08168 hlambda(作出は、抗−LRP6_MOR08168 hIgG1LALA_6475scFvについて説明される)を、LCの発現についていかなる変更もなしに用いた。
抗−LRP6 MOR08168 hIgG1LALA 6475scFv AspProからThrAlaへ(DPからTAへ)
ベクターpRS5a MOR08168 hIgG1LALA−6475scFv(配列番号:165)を、scFvのVHにおけるTAへのDPの置換のための鋳型DNAとして使用した。Quick Change XL部位指向性突然変異生成キット(Stratagene)を、次のプライマーと組み合わせて使用した。5’−caccatgaccaacatgaccgccgtggacaccgccacc−3’(配列番号:223)、5’−ggtggcggtgtccacggcggtcatgttggtcatggtg−3’(配列番号:224)。部位指向性変異誘発を、Stratageneプロトコルにしたがって行い、結果として得た新コンストラクトを、pRS5a hIgG1LALA MOR08168opt 6475 scFv DPからTAへ、と呼んだ。
コドン−最適化VL−配列(Geneartによって合成)を含有するベクターpRS5a MOR08168 hlambda(作出は、抗−LRP6_MOR08168 hIgG1LALA_6475scFvについて説明される)を、LCの発現についていかなる変更もなしに用いた。
抗−LRP6 MOR08168hIgG1 LALA 6475scFv at ValLeu (VL)
コドン−最適化VH−配列(Geneartによって合成)を含有するベクターpRS5a MOR08168 hIgG1LALAを、HCの発現についていかなる変更もなしに用いた。
コドン−最適化MOR06475scFvおよびMOR08168−VLをコードする遺伝子をDNA2.0によって合成し、そして、AgeI/HindIIIを介して、ベクターpRS5a hlambda MOR08168にクローニングした。結果として得たベクターを、pRS5a hlambda MOR08168 6475scFv at VLと呼んだ。
抗−LRP6 MOR06475hIgG1 LALA 8168scfv (VH−3−VL)、ここで、3は、VHおよびVL鎖の間の(Gly
4
Ser)
3
アミノ酸リンカーを表す。
MOR06475−VHを、次のプライマーでベクターpM2 hIgG1LALA MOR06475から増幅した。5’−gttcctggtcgcgatcctggaaggggtgcactgccaggtgcaattgaaagaaagcg−3’(配列番号:225)、5’−cttggtggaggctgagctaac−3’(配列番号: 226)。PCR−産物を、NruI/BlpIを介してベクターpRS5a hIgG1LALA MOR08168 6475scFvにクローニングし、結果として得たベクターを、pRS5a hIgG1LALA MOR06475 6475scFvと呼んだ。MOR08168scFvを、次のプライマーでベクターpRS5a MOR08168 scFv(VH−3−VL)から増幅した。5’−gcacgaagcgctgcacaaccactacacccagaagagcctgagcctgtcccccggcaagggcggctccggcggaagccaggttcaattggttgaaagc−3’(配列番号:227)、5’−gggccctctagagcggccgcccggcgcgcctcatcacagaacggtaagcttggtgcc−3’(配列番号:228)。PCR−産物を、AfeI/XbaIを介して、ベクターpRS5a hIgG1LALA MOR06475 6475scFvにクローニングし、結果として得た最終ベクターを、pRS5a hIgG1LALA MOR06475 8168scFv(VH−3−VL)と呼んだ。
次のプライマーを用いて、ベクターpM2 hkappa MOR06475から、MOR06475−VLを増幅した。5’−gacaccaccggtgatatcgtgctgacccagagc−3’(配列番号:229)、5’−gcagccaccgtacgtttaatttcaac−3’(配列番号:210)。PCR−産物を、AgeI/BsiWIを介してベクターpRS5a hkappa MOR06654にクローニングし、結果として得たベクターをpRS5a hkappa MOR06475と呼んだ。
抗−LRP6 MOR06475hIgG1 LALA 8168scfv (VH−4−VL)、ここで、4は、VHおよびVL鎖の間の(Gly
4
Ser)
4
アミノ酸リンカーを表す。
MOR06475−VHを、次のプライマーで、ベクターpM2 hIgG1LALA MOR06475から増幅した。5’−gttcctggtcgcgatcctggaaggggtgcactgccaggtgcaattgaaagaaagcg−3’(配列番号:211)、5’−cttggtggaggctgagctaac−3’(配列番号:212)。
PCR−産物を、NruI/BlpIを介してベクターpRS5a hIgG1LALA MOR08168 6475scFvにクローニングし、結果として得たベクターを、pRS5a hIgG1LALA MOR06475 6475scFvと呼んだ。MOR08168scFvを、次のプライマーで、ベクターpRS5a MOR08168 scFv(VH−4−VL)から増幅した。5’−gcacgaagcgctgcacaaccactacacccagaagagcctgagcctgtcccccggcaagggcggctccggcggaagccaggttcaattggttgaaagc−3’(配列番号:213)、5’−gggccctctagagcggccgcccggcgcgcctcatcacagaacggtaagcttggtgcc−3’(配列番号:214)。
MOR06475−VLを、次のプライマーを用いて、ベクターpM2 hkappa MOR06475から増幅した。5’−gacaccaccggtgatatcgtgctgacccagagc−3’(配列番号:215)、5’−gcagccaccgtacgtttaatttcaac−3’(配列番号:216)。
PCR−産物を、AgeI/BsiWIを介してベクターpRS5a hkappa MOR06654にクローニングし、結果として得たベクターをpRS5a hkappa MOR06475と呼んだ。
(iii)抗−LRP6−scFvの発現
電気的コンピテントE.coli細菌株W3110を、プラスミド−DNAで形質転換した。前培養物(500mlフラスコ中、12.5μgテトラサイクリン/mlおよび0.4%グルコースを含有する150mlLB−培地)に、単一コロニーを接種し、37℃/230rpmで一晩培養した。発現培養物(2Lフラスコ中、12.5μgテトラサイクリン/mlを含有する6x500mlSB−培地)に0.1のO.D600になるように前培養を接種し、そして、おおよそ0.6のO.D600になるまで25℃/230rpmで培養した。そして、IPTG(Roche)を、0.4mMの最終濃度にまで添加し、培養物を、25℃/230rpmで一晩培養した。細胞を、遠心分離(20分 4600rpm、4℃)によって採取し、そして、細胞沈殿物を、−20℃で冷凍した。
(iv)抗−LRP6−scFvの精製
3L発現物からの沈殿物を、50ml溶解−緩衝液(20mM NaH2PO4、20mM イミダゾール、500mM NaCl、pH7.4;50ml緩衝液ごとにEDTAなしで1タブレットComplete、Roche#11836170001、10mM MgSO4およびBenzonase)に再懸濁した。細胞懸濁液を、加圧型細胞破壊装置(French Press)(2x、1000barで)によって処理し、4℃、16000xgで30分間、遠心分離した。1ml HisTrap HPカラム(GE Helthcare)を、10ml溶解−緩衝液で平衡化した。上清を、Stericupろ過器(Millipore)を通じてろ過し、そして、平衡化カラム(1ml/分)にロードした。溶解緩衝液(20ml)でカラムを洗浄し、そして、結合したタンパク質を、3ml溶出緩衝液(250mMイミダゾールを除いて溶解緩衝液と同様)で溶出した。溶出液を、Superdex75−カラム(HiLoad16/60、GE−Healthcare)に直接ロードし、130ml PBS(1ml/分)で平衡化した。走行(Run)は、1ml/分でPBSを用いて行い、溶出液を、1.5ml分画において回収し、そして、10%Bis−Tris−Gel(NuPage、Invitrogen)上で分析した。適切な断片をプールし、0.2μmろ過器を通してろ過し、4℃で保存した。全ての精製タンパク質を、(酸化および還元化サンプルを用いて)LC−MSによって、およびSEC−MALS(凝集分析)によって分析した。
(v)二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFvの一過的発現
3.2L HEK293−6E細胞を、BioWave20において、振動10rpm、角度7°、エアレーション25L/時間、O225%、CO26%でM11V3培地:Lot#D07668Bに、2E6生存細胞/mLの密度にまで採種した。細胞を、1.8L DNA:PEI−MIX(プラスミド:pRS5a MOR08168 hIgG1 LALA−6475sc−Fv 5mg+pRS5a MOR08168 hlambda 5mg+20mgPEI)で一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、イーストレイトを有する5L Feeding media(Novartis):Lot#09−021を培養物に添加した。そして、細胞をさらに、振動24rpm、角度e:7°、エアレーション25L/時間、O225%、CO20〜6%で培養した。トランスフェクションの7日後、Freseniusろ過器0.2μmを用いる交差流ろ過法によって細胞を、除去した。その後、Freseniusからの10kDaカットオフろ過器を用いる交差流ろ過法で無細胞材料を、1.75Lに濃縮した。濃縮後、濃縮物を、stericupろ過器(0.22μm)を通して、滅菌ろ過した。滅菌上清を4℃で保存した。全ての説明した二パラトープ抗−LRP6−scFv変異体を、同様の様式で発現させた。
(vi)二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFvの精製
AEKTA 100 explorer Airクロマトグラフィーシステムで、6℃で、冷却キャビネットにおいて、25mlのself−packed MabSelect SuRe resin(全て、GE Healthcare)とともに新たに殺菌した(0.2M NaOH/30%イソプロパノール)XK16/20カラムを用いて二パラトープIgGの精製を行った。5barの圧力制限でのローディングを除き、全ての流動率は、3.5ml/分であった。カラムを、3CVのPBS(10x、Gibcoから作製)で平衡化し、そして、濃縮滅菌ろ過発酵上清(1.35L)を2.0ml/分、オーバーナイト(o/n)でロードした。カラムを8CVのPBSで洗浄した。そして、IgGを、50mMクエン酸塩、70mM NaCl、pH4.5で開始し、12CVにおいて、50mMクエン酸塩、70mM NaCl、pH2.5に直線的に下がるpH勾配で溶出し、続いて、同一のpH2.5緩衝液の2CV一定の工程を行った。二パラトープIgGは、おおよそpH3.8の単一の対称ピークにおける勾配の間で溶出し、そして、4ml画分に集められた。画分を、左の傾斜、主要ピーク、および右の傾斜の3つのプールにプールした。2M Tris、pH9.0を用いてゆっくりと、撹拌して、プールを、直ちにpH7.0に滴定した。プールを、滅菌ろ過し(Millipore steriflip、0.22μm)、OD280nmを、Lambda 35 Spectrometer(Perkin Elmer)で測定し、そして、タンパク質濃度を、配列データに基づき計算した。プールを、凝集(SEC−MALS)および純度(SDS−PAGEおよびMS)について別々に試験し、そして、結果に基づき、中央のプールのみ(35ml、2.55mg/mlタンパク質で)をさらに用いた。全ての説明した二パラトープ抗−LRP6−scFv変異体を同様の様式で精製した。
(vii)タンパク質マイクロアレイによる交差反応性分析
マイクロアレイは、Protagen AG(UNIchip(登録商標)AV−VAR−EP)によって製造された特注の高−密度タンパク質チップであり、ニトロセルロース被覆ガラススライド上で4通りにプリントされた384の前もって定め、そして、精製したヒトタンパク質を含有した。タンパク質は、遺伝子オントロジーに基づき、大腸菌(Escherichia coli)を用いてN−末端His−tag融合タンパク質として発現し、そして、固定した金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)を用いて精製される細胞外または分泌タンパク質として分類される。抗体のハイブリダイゼーションは、Protagen AGによって開発されたプロトコルでプログラムしたTECAN Hybridization Station HS400Proを用いて行った。第1の抗体を5μg/mlの最終濃度で試験した。Cy5−接合AffiniPureヤギ抗−hsIgG F(ab’)2、特異的断片(Jackson Immunoresearch、コード番号109−175−097)である第2の標識した抗体を、7.5μg/mlの最終濃度で用いた。マイクロアレイイメージ取得は、赤色レーザー(635nm)を備えたGenePix Professional 4200A蛍光マイクロアレイスキャナー(Axon Instruments、CA)を用いた行った。イメージ分析は、GenePix Pro v6.0ソフトウェアを用いた行った。データ分析は、Protagen UNIchip(登録商標)Data Analysis Tool v1.8を用いて行った。プリントされた抗原に直接的に対する第2の抗体の結合に由来する非特異的交差反応性を測定するために、第2の抗体も、第1の抗体の使用なしにUNIchip(登録商標)上で培養した。対応する抗原に標準化した交差反応性のレベルを測定するために、飽和濃度(20fmol/スポット)での蛍光シグナル強度値を100%として設定した。4%の抗原シグナルよりも多い所与のタンパク質についての全てのシグナル強度が、それらも、第2の標識した抗体のみとともに、それぞれのコントロールにおいても見出されなかった場合には、陽性ヒットと考えられた。
(viii)示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるコンフォメーションの安定性
深ウェルプレート自動サンプラーを備えたMicrocalからの毛細管細胞マイクロ熱量計VP−DSCを用いてDSCを測定した。ソフトウェア Origin 7.5でデータを分析した。サンプル(400μl)を、Nunc商標からの2ml深ウェルプレートに添加した。PBS pH7.0におけるサンプルを、1mg/mlで分析した。参照サンプルは、検体と同一の緩衝液、通常、PBS、400μlを含有した。3.3℃分−1の加熱率で、20℃および100℃の間で、熱変性に関連する熱変化を、測定した。見かけの融解温度(Tm)は、検体の50%が折りたたまれていない温度遷移中点に相当した。
(ix)血清安定性研究
精製したタンパク質を、35μlラット血清またはマウス血清(Gene Tex)に溶解し、結果として、0.3mg/mlの最終濃度とした。プレート培養器において、37℃でサンプルを、培養した。4μlそれぞれのサンプルを、異なる時点で取得し、10μlサンプル緩衝液(4x、NuPage、Invitrogen)および26μl水を、添加し、そして、サンプルを、−20℃に凍結した。12μlのそれぞれのサンプルを、12%Bis−Tris−Gel(NuPage、Invitrogen)にロードし、電気泳動を、35分間、200Vで行った。タンパク質転写を、1時間、30Vで、Borate緩衝液(50mM ホウ酸塩、50mM Tris)において、PVDF−メンブレン(Invitrogen)に対して行った。メンブレンを、TBST(10mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、0.1% Tween80)で少し洗浄し、そして、5%粉乳を含有するTBSTにおいて、RT/シェーカーで、2時間、培養した。メンブレンを、TBSTにおいて少し洗浄し、そして、1:10.000で希釈した、POD−接合ヤギ−抗−ヒトIgG、Fab特異的断片(Dianova)、または1:500で希釈した抗−His POD(Roche)を含有するTBSTにおいて、RT/シェーカーで、1時間、培養した。メンブレンを、TBSTにおいて、RT/シェーカーで、5分間、3回、洗浄した。シグナル検出は、BM Blue POD基質(Roche)またはECL/ECL Plus(GE−Healthcare)を用いて行った。
(b)結果
(i)抗−LRP6−scFvsの発現、精製および特性化
全てのscFv’を、E.coli W3110において、うまく発現させ、そして、親和性クロマトグラフィー、およびそれに続くサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。予想されたサイズ(MOR06475(Gly4Ser)3/(Gly4Ser)4:それぞれ26.74および27.06kDa、MOR08168(Gly4Ser)3/(Gly4Ser)4:それぞれ26.5および26.85kDa、MOR08545(Gly4Ser)3/(Gly4Ser)4:それぞれ25.99および26.31kDaを、還元化および酸化サンプルで行うLC−MS分析によって、およびSDS PAGEによって、全ての精製サンプルについて確認した。>95%の純度が得られた。図14は、1.5μgのそれぞれの精製タンパク質が10%Bis−Trisゲル(NuPage、Invitrogen)にローディングされた、SDS−PAGE分析の結果を示す。M:Marker See Blue Plus2(Invitrogen);(1):MOR06475−VH−(Gly4Ser)4−VL;(2)MOR06475−VL−(Gly4Ser)4−VH;(3)MOR08168−VH−(Gly4Ser)4−VL;(4)MOR08168−VL−(Gly4Ser)4−VH;(5)MOR08545−VH−(Gly4Ser)4−VL;(6)MOR08545−VL−(Gly4Ser)4−VH (7)MOR06475−VH−(Gly4Ser)3−VL;(8)MOR06475−VL−(Gly4Ser)3−VH (9)MOR08168−VH−(Gly4Ser)3−VL;(10)MOR08168−VL−(Gly4Ser)3−VH;(11)MOR08545−VH−(Gly4Ser)3−VL;(12)MOR08545−VL−(Gly4Ser)3−VH。
熱安定性を、DSCによって、全てのScFv’について比較した。融解温度(Tm)は、MOR06475変異体について、有意に高かった。最高のTm(64.7℃)は、MOR06475−VL−(Gly4Ser)4−VHについて観察され、したがって、この分子は、産生された他のコンストラクトよりも、潜在的に、より安定であると信じられる。
MOR06475、MOR08168、およびMOR08545 scFvおよびFabコンストラクト、ならびにいくつかの二パラトープフォーマットの活性を、HEK293STF分析において評価した(図17および18)。まとめると、データは、プロペラ1IgG(MOR08168)が、STF分析において、Wnt3などのプロペラ3リガンドを増強しながら、Wnt1などのプロペラ1リガンドを阻害することを示す。プロペラ3scFv6475は、Wnt1などのプロペラ1リガンドに対する活性がないながら、Wnt3などのプロペラ3リガンドを阻害する。さらに、MOR08168/6475二パラトープ抗体は、プロペラ1およびプロペラ3リガンドの両方に対する活性を有し、そして、HEK293 Wnt STF分析において、適用されるいかなる濃度においても、増強する活性を有さない。
(ii)二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFvの発現、精製、および特性化
この研究において産生される二パラトープ抗−LRP6 Ig−scFvフォーマットの略図は、図15に提示される。図15Aは、IgGのC−末端に付着するscFv scFvを表し;15Bは、FcのN−末端に付着したscFv scFvを;15Cは、FcのC−末端に付着するscFv scFvを表し;そして、15Dは、FcのN−およびC−末端に付着するscFv scFvを表す。
現実験における二パラトープ抗体は、hIgG1 LALA CH3のC−末端に融合したscFvを有する二パラトープ完全−IgGである。この特定の研究において、scFvは、完全−IgGからの(GlyGlySer)2−リンカーによって分離された。scFvは、(Gly4Ser)4リンカーを有するVL−VH配向性からなる。
二パラトープ抗−LRP6 IgG−scFv’を、HEK293−6E細胞において、一時的に発現し、そして、pH4.5から2.5への勾配溶出で、親和性クロマトグラフィーによって、精製した。予想されたサイズの197.4kDaを、LC−MS分析および97%を超える純度を有するSDS−PAGEによって決定した。SEC MALSによって決定される凝集は、5%より少なかった。図16は、精製二パラトープ抗−LRP IgG−scfVのSDS−Page分析である。サンプルを、12%Bis−Trisゲル(NuPage、Invitrogen)にロードした。Marker:Invitrogen Mark12;(1):非−還元化;(2):還元化。
二パラトープ抗−LRP6 IgG scFvおよび親抗−LRP6 IgGは、Biacoreによって測定して、それぞれ、0.021および0.023μMのKdで、pH6.0で、ヒトFcRnに結合した。両方のフォーマットは、pH7.4でのヒトFcRnに対する低レベルの結合を実証し、そのため、このBpAbは、インビボで標準IgGとして振舞うことが予想される(PK特性は、IgG1と同様)(図19参照)。
二パラトープ抗−LRP6 IgG scFvは、37℃でマウスおよびラットの両方の血清において、安定であり、336時間(データ示さず)まで試験し、そして、384精製細胞外または分泌タンパク質(データ示さず)を含有するcustom Protagen Unichip上で評価した場合、>4%結合を示さなかった。
(c)議論
様々な抗−LRP6 scFv’は、最終二パラトープ抗体の最適化を可能にするために、最初に特性化された。両配向性における、および2つの異なるリンカー長を有するScFv’をE.coliで発現した。抗−LRP6 MOR06475、8168および8545を、(Gly4Ser)3および(Gly4Ser)4リンカーとともに、VH−VLおよびVL−VH scFv’として発現した。全てのMOR06475およびMOR08168変異体を、うまく発現し、低レベル(<5%)の凝集体で精製した。予想されたサイズを有する正しく処理されたタンパク質が得られた。熱安定性データは、大半の安定なscFvフォーマットが、64.7℃のTmを有するMOR06475−VL−(Gly4Ser)4−VHであることを示した。全ての試験したMOR08168 scFvフォーマットは、50−52℃のTmで有意に減少した熱安定性を示した。
VLおよびCH3でのscFvを有する二パラトープ抗−LRP6 IgG’、ならびに修飾された変異体(CH3におけるC−末端Lys(K)なし、scFvのVHにおけるAspAla(DA)へのAspPro(DP)の、およびThrAla(TA)へのAspPro(DP)の置換あり)を、うまく発現させ、そして、細胞培養物から、低レベル(<5%)の凝集体で精製した。予想されたサイズの約197−198kDaを決定した。コンストラクト抗−LRP6 MOR08168 hIgG1LALA 6475scFv、および抗−LRP6 MOR08168hIgG1 LALA 6475scFv at VL、ならびに変異したコンストラクト(CH3におけるC−末端Lys(K)の欠失、およびAspPro(DP)からAspAla(DA)への、およびAspAla(DP)からThrAla(TA)への置換)は、VL−VH配向性を有するscFvからなり、そして、(Gly4Ser)4リンカーによって分離された。それぞれ、hIgG1 LALAのCH3ドメインに、およびhlambda のVLに、scFvを付着させるために、(GlyGlySer)2リンカーを用いた。しかしながら、前に議論したように、scFvは、代わりのリンカーによって分離されるVH−VLからなってもよく、さらに、scFvは、代わりのリンカーを用いて、CLのC−末端およびVHのN−末端を含むIgG内の別の位置に付着させてもよい。MOR08168scFvを有するコンストラクトは、VH−VL配向性を有するscFvからなるものであり、そして、(Gly4Ser)3および(Gly4Ser)4リンカーによって分離された。(GlyGlySer)2リンカーは、hIgG1 LALAのCH3ドメインにscFvを付着させるために用いた。
二パラトープ抗−LRP6 MOR08168 hIgG1LALA 6475 scFvは、血清中で安定であった(336時間まで試験した)。予想どおり、二パラトープは、pH6.0でヒトFcRnに結合し、低レベルの結合がpH7.4で見られた。親抗体は、同様の反応速度論で結合した。
実施例13:二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvのインビボ評価
二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvがWnt3クラスWntシグナルをインビボで阻害する能力を、Wnt3A分泌L細胞を共−移植したPA1−STFレポーター細胞からなる共−移植システムにおいて試験した。メスヌードマウスに、10x10e6 PA1−STF細胞および0.5x10e6 L−Wnt3A細胞を皮下移植し、そして、5の群に、無作為抽出した。24時間後、マウスに、単一静脈内投与のビヒクル、MOR08168 LRP6−プロペラ1Ab(10mg/kg)、MOR06475 LRP6−プロペラ3Ab(10mg/kg)、または二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv(1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kg)を、受けさせ、そして、6時間、24時間、48時間、72時間、および168時間後Xenogenによってイメージングした。二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvは、Wnt3A誘導シグナリングの投与量−関連性阻害を示し、1mg/kgで24時間で最大阻害を示し、48時間でベースラインに戻り、そして、3mg/kgおよび10mg/kgで、少なくとも72時間、継続的な阻害を示した。10mg/kgで投与されるMOR06475 LRP6−プロペラ3Abは、少なくとも72時間Wnt3a誘導シグナリングを阻害することができたのに対して、10mg/kgで投与されるMOR08168 LRP6−プロペラ1Abは、Wnt3a誘導シグナリングを増大させた(図20)。
MOR08168 LRP6−プロペラ1Abと比較した、MMTV−Wnt1腫瘍におけるWntシグナルに対する二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの効果を測定するために、MMTV−Wnt1腫瘍を移植したマウスに、5mg/kgの二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの単回投与、または5mg/kgのMOR08168 LRP6−プロペラ1抗体の単回投与を、静脈注射で投与した。二パラトープ抗体、およびプロペラ1抗体の血清濃度、ならびにβ−カテニン標的遺伝子Axin2のmRNA発現を、二週間の期間以上、分析した。二パラトープ抗体の最終β−相半減期は、おおよそ48時間であったのに対して、LRP6抗体のものは、約72時間であった。Axin2 mRNA発現の有意な減少が、二パラトープ抗体、またはプロペラ1抗体を投与したマウスから得られた腫瘍において観察され、そして、Axin2発現は、二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv、およびMOR08168 LRP6−プロペラ1抗体の間で観察される有意な相違がなく、次第に回復した(図21)。
二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの抗−腫瘍活性を、MMTV−Wnt1同種移植片モデルにおいて評価した。MMTV−Wnt1腫瘍断片を、メスヌードマウスに、皮下(s.c.)移植した。移植の7日後、MMTV−Wnt1腫瘍(n=8、平均137mm3;範囲:81−272mm3)を有するマウスを、ビヒクルIgG、MOR08168 LRP6−プロペラ1Ab(3mg/kg、i.v.、qw)、または二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv(3mg/kg、i.v.、2qw)で処理し、そして、腫瘍を、1週間に2回測った。MOR08168 LRP6−プロペラ1Abおよび二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv抗体の両方が、腫瘍回帰(それぞれ、−93%、p<0.05、および−91%、p<0.05)を誘導した(図22参照)。二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの投与量依存性を、評価し、図23に描く。
β−カテニンsiRNAまたは優性阻害のTCF−4による結腸直腸がん細胞におけるWntシグナルの阻害は、迅速な細胞周期停止を引き起こし、そして、腸分化プログラムを誘導する(van der Wetering et al.(2002),Cell,111,241−250;van der Wetering et al.(2003),EMBO Reports,4,609−615)。拮抗LRP6抗体によるWntシグナルの阻害が、ネズミMMTV−Wnt1乳房腫瘍において同様の帰結を有するかどうかを決定するために、ミルクの主要成分である脂質についてのOil Red O染色によって、分泌分化を、研究した。MMTV−Wnt1腫瘍関連マウスを、PBSの単回投与(コントロール)、または5mg/kg抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvで、処理し、処理の24時間、72時間、または5日後、冷凍ネズミ腫瘍同種移植片の切片を、5μmの厚さで切った。スライドを、30−60分間、室温で、空気乾燥し、そして、氷冷10%ホルマリン中で、5〜10分間、固定した。スライドを、直ちにdH20中で、3回すすいだ。Oil Red O染色キット(Poly Scientific R&D、Cat#k043)を用いて、Oil Red O染色を、行った。スライドを、ScanScope CS/GL scanner(Aperio Technologies)でスキャンし、そして、組織切片を、陽性−画素数でIHCカラーデコンボリューションアルゴリズムを用いてImageScope v10.2.1.2315ソフトウェア(Aperio Technologies)で分析した。Oil Red O染色の代表的画像を、図24Aに、そして、定量化を図24Bに示す。グラフは、平均±SEM値、72時間群におけるn=4、24時間群におけるn=3、5日群におけるn=2、およびPBS(コントロール)についてのn=1を表し、そして、実験の経時変化の間におけるOil Red O染色における増大を実証する。全体的に、これらの結果は、乳房腫瘍細胞におけるWntシグナルの阻害が、細胞周期停止、および分泌分化プログラムの誘導を引き起こすかもしれないことを示唆する。
二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの抗−腫瘍活性を、さらに、MDA−MB−231胸異種移植モデルにおいて評価した。50%マトリゲルにおける5x10e6 MDA−MB−231細胞を、メスヌードマウスに、皮下(s.c.)移植した。移植の31日後、MDA−MB−231腫瘍(n=7、平均165mm3;範囲99−238mm3)を有するマウスを、ビヒクル、または二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv(3mg/kg、i.v.、qw)で処理して、そして、腫瘍を、1週間に2回測った。毎週3mg/kg投与された二パラトープ抗体 抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv抗体は、腫瘍増殖を有意に、遅延させた(T/C=23%、p<0.05)(図25参照)。
実施例14:MMTV−Wnt1モデルにおける付加的二パラトープ抗体のインビボ評価
実施例10に説明されるように、プロペラ3抗体MOR06475およびプロペラ1MOR08168 scfvドメインからなる付加的抗−LRP6逆二パラトープ抗体を、作出した。MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvと比較したWnt1シグナルをインビボで阻害するこれら二パラトープ抗体(MOR06475hIgG1 LALA_8168scfv_(VH−3−VL)およびMOR06475hIgG1 LALA_8168scfv_(VH−4−VL)の能力を、MMTV−Wnt1モデルにおいて決定した。MMTV−Wnt1腫瘍を移植したマウスに、単回投与で上記抗体のそれぞれの5mg/kgを、i.v.で投与した。それぞれの抗体(MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv、MOR06475hIgG1 LALA_8168scfv_(VH−3−VL)、およびMOR06475hIgG1 LALA_8168scfv_(VH−4−VL)の血清濃度、ならびにβ−カテニン標的遺伝子Axin2のmRNA発現を、5日の期間を超えて、分析した(評価した時点は、0、2、7、24、72、および120時間であった)。逆二パラトープ抗体の両方が、MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvと同一の最大程度まで、axin2 mRNA発現における有意な減少を示した。しかしながら、axin2 mRNA発現の減少の期間は、MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvで観察されたものよりも少なく、シグナルは、逆二パラトープ分子の両方について、24時間の時点で、ベースラインに戻った。このことは、これら分子の減少した露出と整合的であり、血清レベルが、5μg/ml未満に落ちるのは、MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvについての120時間と比較して、24時間であった。
実施例15:組換えLRP6 PD1/2およびPD3/4に対する二パラトープ抗体の結合親和性
LRP6のプロペラドメイン1−2(PD1/2、アクセス番号NP002327のアミノ酸残基19〜629)およびLRP6のプロペラドメイン3−4(PD3/4、アクセス番号NP002327のアミノ酸631−1246)に対する抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv、MOR08168、およびMOR6475の結合親和性を、Biacore T−100(GE Healthcare)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)を介して評価した。親和性測定のために、抗−ヒトIgG Fcγ特異的抗体(#109−005−098、Jackson Immunology)を、10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)緩衝液に希釈し、そして、全ての4−フローセルについて、標準アミン結合化学を用いて〜2000RUの密度にまでCM4チップ(GE Healthcare、BR−1005−34)上に固定した。1:1比率の0.4M EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)および0.1M NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)の7分注入でカルボキシメチルデキストラン表面を、活性化した。過剰反応性エステルを、次に、1Mエタノールアミンでブロックした。抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvを、HBS−EP緩衝液(GE Healthcare)中で10μg/mlで調製し、そして、流動率10μl/分で〜70RUの密度まで、CM4チップの別個のフローセル上で捕獲した。PD1/2およびPD3/4を、50nMで開始する2倍濃度系列で調製し、そして、1分間、30μl/分で注入した。このことは、抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv−捕獲表面、および捕獲リガンドなしのコントロール表面上で、40分解離相を可能にした。次に、表面を、10mMグリシン(pH2.2)で2回、再生させた。抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv PD1/2およびPD3/4に対する二重結合分析のために、抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvを、抗−ヒトIgG Fcγ特異的抗体を固定したCM4チップ上に捕獲した。100nMの飽和濃度でのPD3/4を、次に、30分間、30μl/分の流動率で表面上を流した。飽和濃度の100nM PD1/2を、PD3/4の直後に注入した。解離定数(KD)、会合(kon)、および解離(koff)速度を、BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare)を用いてベースライン減算修正結合曲線から、計算した。
PD1/2およびPD3/4に対する抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv(二パラトープ抗体)結合を、MOR08168(プロペラ1抗体)およびMOR6475(プロペラ3抗体)のものと比較した。図26Aは、対応するLRP6受容体ドメインであるPD1/2およびPD3/4に対する分子の親和性を示す。PD1/2およびPD3/4に対する抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの決定したKDは、それぞれ、PD1/2に対するMOR08168およびPD3/4に対するMOR6475のものと同様であった。図26Bは、それぞれのタンパク質に対する抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfv結合の会合および解離相を示す。PD1/2に対する抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvの結合についてのオフ速度はPD3/4のものよりも遅い。PD1/2およびPD3/4が続いて注入されたことが実証されたさらなる研究は、予想どおり、抗−LRP6 MOR08168hIgG1LALA 6475 scfvが両方のプロペラドメインコンストラクトに対して結合することができることを示した(図26C)。
実施例16:scFv08168およびscFv06475の熱安定性を向上させるscFv変異
この実施例は、プロペラ1およびプロペラ3抗体のscFvsにおいて作られた変異、および熱安定性によって決定されるscFvの安定性に対する変異の個別および組み合わせの効果を記述する。scFvの安定性における向上は、変異scFvを含む抗体コンストラクトの全般的な安定性に言い換えることができる。
材料および方法
コンストラクト
IgGベースの二パラトープ分子について、図27(MOR08168IgG1LALA 6475 scfv)において「901」と表記される二パラトープ抗体を作るために、scFv06475を、GlyGlySerリンカーを介してMOR08168IgG1のC−末端に融合した、あるいは、図27において「902」と表記される二パラトープ抗体を作るために、scFv08168を、GGSリンカーを介してMOR06475 IgG1のC−末端に融合した。詳細な情報についてはこの特許出願の別の箇所を参照されたい。
scFv06475およびscFv08168についてのフォーカストライブラリーの理性的設計
点変異の選択のために、scFv06475およびscFv08168を安定化する2つの取り組み、配列コンセンサス分析およびMolecular Operating Environment(MOE)において相同性モデリングを用いる構造ベースの変異設計を用いた。
配列コンセンサス分析について、scFv06475のVHおよびVLドメインの、およびscFv08168のVHおよびVLドメインのアミノ酸配列を、NCBIの非冗長タンパク質配列データベースに対して、BLASTした。それぞれのBLASTランの後、クエリー配列、およびトップ250相同性配列を、clustalWプログラムによって、配列した。組織内コンピュータープログラムを、配列した配列のうちでの残基位置ごとにもっとも共通するアミノ酸を数えるために用いた。クエリー配列におけるアミノ酸が配列した配列プールにおける最も共通するアミノ酸と異なるそれぞれ位置において、その野生型アミノ酸から最も共通するアミノ酸に残基を変異させるように変異を設計した。
scFv06475の相同性モデルおよびscFv08168の相同性モデルをMOEにおいて構築した。まず、配列を、MOEの「配列エディター」モジュールに読み込んだ。相同性配列を有する既存のX線構造を、MOEの「抗体モデラー」において検索した。X線構造3L5Xおよび1W72が、MOEによって、それぞれscFv06475およびscFv08168のための相同性モデルを構築するための適した鋳型として同定された。次に、エネルギーを最小化するためにCHARMM27力場を用いてMOEによって、相同性モデルを、構築した。
MOEによって産生されたモデルに、NAMDにおけるMDシミュレーションおよびエネルギー最小化の5段階を受けさせた。全体モデルは、第1から第3段階における5000工程について、および原子の異なるセットに適用される30kcal/mol/A2の制限で、最小化したエネルギーであった。第1段階において、制限を、CDRにおける側鎖原子を除く全ての原子に適用した。第2段階において、制限を、CDRにおける残基を除く全ての原子に適用した。第3段階において、制限を骨格原子にのみ適用した。次に、モデルを、第4段階において、50Kで100psで真空において、骨格原子に対して適用される30kcal/mol/A2の制限で、シミュレーションした。最後および第5段階において、モデルは、骨格原子に適用される30kcal/mol/A2の制限で5000工程について最小化したエネルギーであった。MDシミュレーションおよび最小化のこれらの5段階の後のモデルを、構造ベースの変異設計のための相同性モデルとして捉えた。
野生型相同性モデルについて変異体モデルを構築した。VMDの「psfgen」モジュールの「変異」コマンドを、残基を設計したアミノ酸へ変異させるために用いた(William Humphrey et al.(1996)J. Molecular Graphics,14:33−38)。そして、変異モデルは、最小化した、および6段階でシミュレーションしたエネルギーであった。エネルギー最小化の5000工程を、第1から第4段階において行った。30kcal/mol/A2の制限を第1段階における変異した残基の側鎖を除く全ての原子に適用した。同一強度の制限を、第2段階における変異した残基を除く全ての原子に適用した。変異した残基に対する5Å内の残基の側鎖原子に対する制限を、第3段階において除去した。変異した残基に対する5Å内の残基の骨格原子に対する制限を、同様に、第4段階において、解除した。第4段階におけるものと同一の制限を適用して、変異したモデルを、50Kで100psで真空において、シミュレーションした。シミュレーション軌道の最後のスナップショットは、次に、第4階におけるものと同一の制限で再度、5000工程について最小化したエネルギーであった。これらの最小化モデルを、変異体の相同性モデルと捉えた。
E.coliシステムにおけるプレートベースのライブラリー構築、発現、および精製
QuikChange XL部位指向性突然変異生成キット(Stratagene)を用いてハイスループット突然変異生成を行った。プライマー設計ソフトウェアMutaprimerにしたがって、プライマーを設計し、そして、標準化した濃度を有する96ウェルフォーマットにおいてIDTから注文した。変異体ストランド合成反応量を、50から25μlにスケールダウンした。96ウェルPCRプレートにおいて、反応を行った。サイクルの後、0.5μlDpnI酵素を、それぞれの増幅反応物に添加し、そして、親dsDNAを消化するように37℃で2時間、培養した。96ウェルPCRプレートにおいて、20μl Acella化学コンピテント細胞に2μlのDpnI消化突然変異生成反応物を添加することによって、形質転換を行った。
発現および精製のために、3つの個別コロニーを、それぞれの形質転換プレートからピックアップした。自己誘導培地を用いて2つの96ウェル深−ウェルプレートにおいて発現を行った。細菌培養物のアリコートを、グリセロールストックとして保存し、シーケンシング分析のために送った。それぞれの個別コロニーについて2つのプレートから組み合わせた細菌沈殿物を、溶解し、そしてPromegaからのMagneHisタンパク質精製システムで精製した。KingFisher機器を、ハイスループット精製のために設置した。タンパク質純度を改善するために1M NaClを、溶解および洗浄緩衝液に添加した。タンパク質を、PBSにおける100μlの300mMイミダゾールで溶出した。示差走査蛍光法(DSF)に最適な量のタンパク質を決定するために、タンパク質の量を、Coomasie plus(Thermo)で少しチェックした。
DSFおよび示差走査熱量測定法(DSC)による熱安定性変異のスクリーニング
それぞれのサンプルについて精製されたタンパク質の量に依存して、通常10〜20μlの溶出物を、DSF分析に用いた。特に、10〜20μlのサンプルを、PBSにおいて、25μlの総量で、1:1000の最終希釈度でSypro Orange(Invitrogen)と混合した。サンプルを、BioRad CFX1000によって流した(25℃2分間、そして、30秒で増分0.5℃、25〜95℃)。ヒットを野生型scFvを超える2Cより上のTmと特定した。scFv結合活性を、一点ELISAによって測定した。
哺乳動物細胞におけるタンパク質生産
HisタグとともにscFv06475またはscFv08168を有する哺乳動物コンストラクトpRS5aに変異を導入した。コンストラクトを、50mlの293T懸濁液細胞に一時的に発現させた。手短にいえば、最適なトランスフェクション効率のために、PEIを、1:3でDNA50μgと混合した。mlごとに1.4 e6での細胞を、トランスフェクションに用いた。250mlのろ紙フラスコにおける80rpm振盪しながらのCO2チャンバーにおける6日の培養の後に、トランスフェクトした細胞を、回収した。最適なタンパク質回復のために、上清を約1mlに濃縮した。製造者の指示にしたがい、MagneHisキットによって、タンパク質を手動で精製した。緩衝液の変更をして一晩PBSにおいて精製タンパク質を透析した。透析の前または後のタンパク質サンプルをDSF分析に用いた。
scFvsについての親和性測定
LRP6タンパク質に対するscFvsの結合EC50をELISAによって測定した。Maxisorpプレートを、一晩4℃で3μg/mlでLRP6−Fc(R&D Sysytems、カタログ番号:1505−LR)で被覆した。プレートを、1時間、50μlの2%BSAでブロッキングし、そして、洗浄液で5回洗浄した。それに応じて、サンプルを、1%BSAで希釈した。プレートを、1時間、室温で、培養し、そして、3回洗浄した。検出を、1%BSAにおける1:2000希釈度の50μl pentaHis−HRP(Qiagen Mat.No.1014992)を添加し、1時間室温で培養し、3回洗浄するすることによって行った。50μlの基質試薬AプラスB(R&D systems)を添加し、そして、色に応じて、5〜20分間、培養した。反応を、25μlの停止溶液を添加することによって、停止し、続いて、450nmでプレート読み取りを行った。
反応速度論実験を、BioRadのProteon XPR36バイオセンサーを用いて行った。全ての実験を、泳動用緩衝液としてのPBST(0.05% Tween−20を有するリン酸塩緩衝生理食塩水)を用いて室温で行った。新たに調製したEDC(400mM)およびsNHS(100mM)の混合物を用いて、GLMチップ上の6つの垂直的経路の全てを、30μl/分の流動率で5分間、活性化した。抗−HisマウスIgG1(R&D Systems、カタログ番号:MAB050)を、10mM酢酸ナトリウム、PH5.0において、20μg/mlに希釈し、30μl/分の流動率で別個の垂直的経路に沿って、5分間チップに連結した。未反応のsNHS群を非活性化するために、30μl/分で5分間、1Mエタノールアミンを、注入した。そして、2μg/ml MOR08168 scFv野生型、または2μg/ml MOR08168 D1変異体を、100μl/分で15秒間、異なる垂直的経路上に固定し、続いて、水平方向に30μl/分で泳動用緩衝液の1分間注入を二度行った。6番目の垂直的経路を、チャネル参照として用いて、そして、このチャネル上には、リガンドを固定しなかった。360KDホモ二量体抗原LRP6−Fc(R&D systems、カタログ番号:1505−LR)の希釈系列を、300、100、33、11、および3.7nMの最終濃度で調製し、そして、それぞれの水平的経路に沿って、30μl/分で注入した。会合を、5分間、モニターし、解離を、20分間モニターした。リアルタイムベースラインドリフト補正のために列参照としての機能を果たすために緩衝液を、6番目経路に注入した。水平方向に18秒間、100μl/分で0.85%リン酸を適用し、続いて、垂直方向への同一の泳動条件を行うことによって、チップ表面を再生した。Proteon上の反応速度論分析を、Proteon Manager v.2.1.1において行った。リアルタイムベースラインドリフトを補正するために、それぞれの相互作用スポットデータを、チャネル参照、続いて、列参照によって減算した。加工したデータは、二価検体モデルに全体的に適合した。
結果
E.coliにおけるプレートベースの突然変異生成、発現および精製は、フォーカストライブラリーからのより効率的なスクリーニングを可能にした。
下流の分析を促進する高産生量を達成するために、発現に対するリーダー配列の効果を試験した。図28Aに示すように、試験したこれら7つのリーダーのうちの精製タンパク質の最大の量を、pelBを有するリーダーが、産生したことが示された。BL21(DE3)、XL−1 BlueおよびW3110を含むいくつかの細菌株を、IPTG誘導での発現について試験した。図28Bに示すように、BL21におけるscFv06475(DE3)の発現レベルは、XL−1 blueにおけるものよりも高く、そして、W3110におけるものよりもわずかに高かった。突然変異生成クローニング、形質転換および発現を促進するために、クローニングおよび発現が、高効率で同一の細菌株において行うことができるので、Acella(BL21の誘導体)を、全ての次の実験のために用いた。MagneHisキットを用いてKingFisherによって、細胞溶解物からタンパク質を精製した。scFv08168についての推測の産生量は、深ウェル培養プレートからの組み合わせたウェルサンプルごとに約10μgであり、その2μgをDSF熱安定性分析のために用いた。プレートベースのHTPスクリーニングは、プライマーから向上した熱安定性を有するヒットへ約1週間に有意に時間を短縮した。
フォーカストライブラリーからの単一点変異によるscFv熱安定性向上
向上した熱安定性のためのヒットを、一貫して野生型より少なくとも1℃上のTmの向上として特定した。scFv06475について、全部で51の配列確認変異体からの9のヒットがあり、そして、scFv08168について、全部で83の配列確認変異体からの15のヒットがあった。選択したヒットを、scFv06475について、図28に、scFv08168について、図29に示す。
scFv06475およびscFv08168を安定化する点変異の選択のために、2つの取り組み、配列コンセンサス分析および構造ベースの変異設計を用いた。scFv06475のVHドメインに相同性があるトップ250配列のうち、VH:34位置を、Met(45%)またはVal(48%)のいずれかに共通して連結した(テキストにおける全てのナンバリングシステムは、Kabatシステムからのものである)。しかし、この位置は、scFv06475の野生型配列におけるGly残基であった。その位置でのより一般的なアミノ酸に野生型アミノ酸を変異させるために、2つの変異体、VH:G34MおよびVH:G34Vを設計した。図28にリストされるように、2つの異なるプロトコルによって発現および精製した場合、VH:G34V変異体は、野生型scFv06475よりも一貫してより高い安定性を示した。おそらくPCR手順におけるエラーによって引き起こされた誤った配列によって、VH:G34M変異体は、細菌において十分に発現しなかった。
scFv08168における残基を、そのトップ250相同性配列におけるコンセンサスアミノ酸に変異させために、同一の配列コンセンサス分析に基づき、VH:I34M、VH:G50S、VH:W52aG、およびVH:H58Yの変異を設計した。図30に示すように、これらの変異は、それぞれ、7.5℃、3.0℃、7.0℃、および3.5℃、scFv08168のTmを向上させた。
構造ベースの取り組みにおいて、scFv06475の相同性モデル、およびscFv08168の相同性モデルを、まずMOEで、次に、NAMDで最小化したエネルギーで構築した。これらのモデルを、次に、局所的相互作用を増進する見込みのある変異について視覚的に調査した。タンパク質安定性の5つの生物物理学的理解に基づき、scFv06475およびscFv08168の様々な残基に対する変異を設計した。
第1の取り組みは、パッキングを向上させるタンパク質コアにおける側鎖のサイズを増大させることであった。タンパク質コアに面する側鎖を有する少しの疎水性残基を、これら残基の周りのパッキングを向上させるように、より大きい側鎖に変異させた。スクリーニングの後、この取り組みによって設計した3つの変異がscFv08168の安定性を向上させることが見出された。図30にリストするように、VH:I34F、VL:V47L、およびVL:G64V変異は、それぞれ、4.0℃、2.5℃、および2.0℃、scFv08168の融解温度を向上させた。
第2の取り組みは、pi−piスタッキング相互作用を形成する芳香族残基に疎水性残基を変異させることであった。野生型scFv06475相同性モデルにおいて、図33aに示すように、VH:I37残基の側鎖は、VH:W103およびVL:F98の2つの芳香族残基のすぐ近傍にあった。VH:I37の任意の非水素側鎖原子およびVH:W103の任意の非水素側鎖原子の間の最も近い距離は、3.82Aであった。VH:I37およびVL:F98の間の対応する距離は、3.77Åであった。図33bに示すように、Phe残基がVH:I37F変異を通してこの局所的領域に導入された場合に、2つの垂直pi−piスタッキング相互作用が、形成された:1つは、VH:F37およびVH:W103の間のもの、そして、もう1つは、VH:F37およびVL:F98の間のもの。scFv6475の融解温度は、この変異によって、61から64.5℃に向上しているので、新たに形成されたpi−piスタッキング相互作用は、この局在領域における当初の疎水性相互作用より強くなければならない(図28)。VH:M95F変異も、VH:W50およびVH:F100とpi−piスタッキング相互作用を形成することによって、scFv06475の安定性を向上させた(図29)。Tmは、61から64.5℃に向上した。
第3の取り組みは、塩橋を形成させるように非荷電残基を荷電残基に変異させることであった。scFv6475のVH:K43残基は、相同性モデルにおいて、隣接残基とともに塩橋を形成しなかった。scFv06475の相同性モデルにおいてVH:V85側鎖は、VH:K43に直接的に面しているので(図33e)、それは、VH:K43と塩橋を形成するように負荷電に変異させた。図33fに示すように、変異VH:E85側鎖非水素原子およびVH:K43側鎖非水素原子の間の距離は、2.61Åの短さであることができ、このことは、塩橋が、2つの残基の間で確立できたことを示唆した。図29にリストしたVH:V85E変異に対するscFv6475の向上した安定性は、確かに、この位置における設計理性的根拠を支持した。
第4の取り組みは、水素結合を確立するために、極性残基に疎水性残基を変異させることであった。図33cに説明するように、疎水性VH:V33残基は、scFv08168の相同性モデルにおいて、極性残基VH:N100aに近かった。VH:V33N変異を通してこの領域に極性残基を挿入した場合、余分な水素結合がVH:N33およびVH:N100aの間で形成することができた。相同性モデリングは、VH:N33のND2原子およびVH:N100aのOD原子の1つの間の距離が2.80Åの短さであることができたことを示唆し、図33dに示すように、これは、水素結合の範囲内であった。図29に示すように、このVH:V33N変異は、scFv08168の安定性を、2.0℃向上させた。同様に、scFv06475上のVL:D93N変異の安定性増進(図29参照)が、VL:Q27およびVL:Q90を有する向上した水素結合形状に起因すると考えることができた。
VL:T78およびVHS49の2つの極性残基が、いずれも、純粋に疎水性の側さによって囲まれているという、scFv08168の相同性モデルにおける驚くべき観察に基づき、そうでなければ疎水性環境において、2つの極性残基を非−極性残基に変異させるために、第5の取り組みを、活用した。VL:T78およびVH:S49の2つの極性残基は、いずれも、純粋に疎水性の側鎖によって囲まれていた。図29にリストされるように、VL:T78VおよびVH:S49A変異は、scFv08168の融解温度をそれぞれ、2.5℃および5.5℃に増大させた。
一点ELISAを、結合活性を評価するために行った。LRP6に対する結合活性の減少または喪失に起因して、特定のヒットを、除外した。たとえば、scFv08168の変異VH W052aGは、7℃、Tmを向上させたが、野生型scFv08168と比較して、より少ない結合活性を示した。したがって、それは、さらなる分析のためには選択しなかった。
溶出緩衝液における300mMイミダゾールの存在は、scFv06475において観察されるように、時に、DSFによるTmの全般的な変化を引き起こした。しかしながら、効果は、Tmの序列に影響を与えなかった。図28に示すように、scFv06475について、E.coliにおける場合と、哺乳動物細胞における場合とで産生されるタンパク質に相違もあった。それどころか図30および図31に示すように、イミダゾールの存在は、scFv8168のTmに対して最小の効果を有する。なお、図31に示すように、scFv08168について、E.coliから、または哺乳動物から産生されたタンパク質についてのTm値は、変化がないままであった。Tmにおける変化があろうとなかろうと、Tm序列は、同一のままであった。
哺乳動物細胞において産生されるタンパク質における熱安定性の効果を確認するために、これらの変異を、哺乳動物発現ベクターのためのコンストラクトに導入し、そして、293T懸濁液細胞において発現させた。それらを、MagneHisビーズによって精製した。Tmをチェックして、そして、ヒットを、scFv08168について、図31に示すように、哺乳動物細胞において発現するタンパク質における向上した熱安定性について、確認した。scFv08168についての最も高い熱安定性向上を有する単一点変異は、7.5℃の向上を有するVH:I34Mである。
熱安定性をさらに向上させる変異の組み合わせ
熱安定性をさらに向上させるために、scFvの熱安定性を向上させた単一変異を、scFv08168における二重変異を作成するために組み合わせた。図31に示すように、VH:I34MおよびVH:S49Aの2つの変異の組み合わせによる12.5℃の向上を示した、D1を含む大半の二重変異体について付加的な効果が、観察されたが、その一方、単一変異は、それぞれ、Tmにおいて、7.5および5.5℃増大をもたらした。
結合および機能活性について特性化した熱安定性変異体
親和性分析ELISA EC50を、scFv08168およびscFv06475野生型および変異体の両方について行った。図32に示すように、scFv08168について、二重変異体D1を含む、野生型よりも少し活性であるように見える少しの変異体とともに、野生型scFv08168とほとんど同等のEC50を、ヒットは示した。図32に示すように、このことは、Proteon親和性測定およびSTF細胞ベースの分析活性で確認した(この出願において、前に説明したように行った(材料および方法、セクション8))。scFv08168変異体のオクテットによる親和性序列は、それらが野生型(データは示さず)と同等であることを示した。Proteon反応速度論分析において、D1のKDは、2.55nMであり、一方、野生型のKDは3.82nMであった(図32)。
scFv06475について、ELISAおよびProteon反応速度論分析により検出されるように、活性に影響を与える2つの変異があった。特に、ELISAにおいて、VH:G34VおよびVH:I37Fは、野生型の0.76nMと比較して、それぞれEC50が27nMおよび4.3nMであることを示した。Proteon分析において、VH:G34VおよびVH:I39Fは、オフ速度における有意な降下を示した(データは示さず)。
二パラトープ分子の向上した熱安定性
IgGベースの融合分子902および変異体バージョン902Tについて、第1のTmピークは、47℃から62℃にシフトした。このピークは、scFv08168アンフォールディングに対応した。第2のピークは、72℃から76℃にシフトした。図34に示すように、このピークは、Fab06475に対応した。
議論
配列分析および相同性モデリングに基づく理性的設計は、scFvsについての熱安定性変異を産生した。最新の実施例において、ヒット率は、scFv08168およびscFv06475の両方について、約18%であった。最も有意な向上は、野生型に対して、scFv08168における単一点変異VH:I34Mによって、Tmにおいて7.5℃増大したことであった。配列の観点から、この位置は、Metに高度に保存されていた。構造的には、この位置におけるより大きい疎水性側鎖が、この残基の周囲のパッキングを向上させることができた。scFv08168変異体における別の点変異VH:S49Aは、Tmを5℃上昇させた。この変異は、相同性モデリングによって選定した。この位置は、AlaよりもSerに、より保存されているが、この残基の周囲に極性側鎖がないことによって、構造的には、Alaが、よりフィットするかもしれない。
相同性モデリングを用いる構造ベースの変異設計のために、機構の組み合わせを利用した。scFv06475およびscFv08168において、陽性ヒットは、5つの生物物理学的考慮のそれぞれによって発見された:パッキング向上、より多いPi−Piスタッキング、より多い水素結合、より多い塩橋、および埋もれた極性群の除去。図29および30にリストするような総計10の安定化変異が同定されたことは、機構のこの組み合わせによるものであった。
熱安定性を向上させることが同定された変異(「有益な変異」)の組み合わせは、それらが異なる領域に位置した場合には、さらに、熱安定性を向上させる。このことは、scFv08168の場合において、実証された。有益な変異VH:I34MおよびVH:S49Aが組み合わせられる際、Tmは、49℃での野生型に対して、62.5℃にさらに増大した。これは、野生型に対する13.5℃の増大であった、その一方、それぞれの個別の変異VHI34MおよびVH:S49Aは、それぞれ7.5℃および5℃Tmを上昇させた。このことは、相加効果についての明白な現れであった。
I34Mは、scFv08168のCDR1−Hに非常に近かったが、しかしながら、該変異は、多数の分析によって証明されるように、結合親和性に影響を与えなかった。CDRは、全般的なscFvまたは完全抗体安定性に役割を果たす。有意な向上は、変異が結合親和性および特異性に影響を与えない限り、説明された方法を用いてCDR領域に近い残基の設計を通して、達成されるかもしれない。
大半の安定化変異は、VH上に位置していた。図29および30にリストされた15の安定性変異のうち、11が、VHドメイン上で変異しており、その一方、4のみが、VLドメイン上であった。
IgGまたは他のフォーマット(例えば、血清アルブミン融合)に組み込まれる場合、安定化したVHおよびVLは、分子の熱安定性において、劇的な向上をもたらした。IgG融合について、より低いTmの47℃は、scFv08168のTmに対応したのに対して、最大のピークは、72であった。5℃は、CH2およびFab06475のTmに対応する。2つの変異VH:I34MおよびVH:S49Aの組込みは、47℃から62℃へscFv08168のTmを向上させたが、その一方、6475におけるVH:M95Fの組込みは、FabのTmを、72.5℃から76℃にさらに向上させた。向上は、scFv自体においてのみならず、VHおよびVLの向上した安定性によって、Fabにおいても、示された。このことは、全般的な抗体安定性を向上させるためのより一般的な戦略を提供するかもしれない。
E.coliシステムにおけるHTPスクリーニングを加味した理性的設計は、非常に迅速なターンアラウンドタイムおよび高ヒット率を提供した。E.coliからの材料で測定したTmは、哺乳動物からのものと、または、同一のままの序列と、相関した。このことは、スクリーニングプロセスを、E.coliにおいてHTPとして実行されるものに、非常に単純化した。プレートベースの突然変異生成、形質転換、発現および精製が、1週間よりも短いものへ時間を短縮した。本明細書において説明される方法を用いて、多数の変異が、scFvsまたは他の抗原結合断片において作成し、そして、熱安定性について、スクリーニングすることができる。そして、これらの変異したscFvsまたは抗原結合断片は、より大きい抗体コンストラクトにこのような安定性を与えるために、二パラトープ抗体などのより大きい抗体コンストラクトの成分として使用することができる。