以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[1]本発明の実施に適する複胴式印刷装置
[例1]
図1において、符号500は本発明に係る複胴式印刷装置を適用した複胴式孔版印刷装置を示す。符号501は複胴式孔版印刷装置500の装置本体としての本体フレームを示す。本体フレーム501は、略筐体状に配置されている。この複胴式孔版印刷装置500は、図1に示すように、印刷用紙22の搬送方向X(以下、「給紙方向X」という)の最上流側に配設された最上流位版胴としての第1版胴1a(以下、単に「版胴1a」というときがある)と、版胴1aから給紙方向Xの下流側に配設された下流位版胴群に属する第2版胴1b(以下、単に「版胴1b」というときがある)とを有している。
このように、2つの版胴1aおよび版胴1bは、給紙方向Xの上流側から下流側に沿って並設され、本体フレーム501に対してそれぞれ着脱自在になされていて、各マスタ33a,33bを各版胴1a,1bに巻き付け、各版胴1a,1b上のマスタ33a,33bにインキIa,Ibを供給して各版胴1a,1b上のマスタ33a,33bに印刷用紙22を押し付けることにより印刷用紙22に連続的に印刷を行って、同時多色印刷(この例1では同時2色印刷である)をすることが可能なように構成されている。
[例1]では、説明の簡明化のために、給紙方向Xに並んだ2つの版胴1a,1bについて説明するが、勿論、3つ以上の版胴を給紙方向Xに並設して多色(カラー)印刷を行うように構成することもできる。
複胴式孔版印刷装置500は、各版胴1a,1b毎に設けられた、各版胴1a,1bを本体フレーム501に対して着脱自在とするための図示しない着脱手段と、各版胴1a,1bの回転方向の位相を印刷用紙22に対して相対的に変えることにより、印刷用紙22に対する印刷画像位置の天地移動調整を各版胴1a,1b毎に個別に行うための図2に示す天地移動調整手段212と、複胴式孔版印刷装置500を操作するための図4に示す操作パネル170と、この操作パネル170に配設され、2つの版胴1a,1bのうち、給紙方向Xの最上流側に配設された版胴1aからのみ天地移動調整を可能とすべく天地移動調整可能状態を設定するための天地移動調整設定手段としての位置調整キー175と、この位置調整キー175からの信号に基づいて、版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく天地移動調整手段212の駆動部分を制御する制御手段としての図6に示す制御装置200とを具備していることを特徴とする。
各版胴1a,1bのホームポジションは、例えば図1において各版胴1a,1bの各クランパ5a,5bが略直上に位置する各版胴1a,1bの初期位置をいい、図1では版胴1aがホームポジションを占めている位置状態を符号H・Pで版胴1aの上部に示してある。
図1を参照して、まず、複胴式孔版印刷装置500の全体構成を説明した後、上記着脱手段、天地移動調整手段212、操作パネル170および制御装置200等の細部構成について説明する。版胴1aと版胴1bと、上記各着脱手段とは、それぞれ略同一の機能および構成を有する。これと同じように、版胴1aの内周部に配設された後述するインキ供給手段、製版装置および排版装置等と、版胴1bの内周部に配設された後述するインキ供給手段、製版装置および排版装置等とは、略同一の機能および構成を有しているので、それらを同一符号の末尾に符号aまたはbを付加することで区別する。
複胴式孔版印刷装置500は、上記した特徴的な構成を除き、従来の感熱デジタル製版一体型孔版印刷装置と略同じ構成を有している。すなわち、複胴式孔版印刷装置500は、図1に示すように、マスタ33aを外周面に巻き付ける版胴1aと、版胴1aの右上方に配置されマスタ33aを製版する製版装置41aと、製版装置41aの下方に配置され給紙トレイ21上に積載された印刷用紙22を給送する給紙装置20と、版胴1aの左上方に配置され使用済みのマスタ33aを版胴1aから剥ぎ取り排版する排版装置42aと、版胴1aの下方に配置され給送されてくる印刷用紙22を版胴1a上の製版済みのマスタ33aに押し付けることにより印刷を行う印圧装置32aと、印圧装置32aで印刷された印刷済みの印刷用紙22を版胴1aから分離・剥離するエアーナイフ7aと、マスタ33bを外周面に巻き付ける版胴1bと、版胴1bの左上方に配置されマスタ33bを製版する製版装置41bと、版胴1bの左方に配置され使用済みのマスタ33bを版胴1bから剥ぎ取り排版する排版装置42bと、版胴1bの下方に配置され給送されてくる印刷用紙22を版胴1b上の製版済みのマスタ33bに押し付けることにより印刷を行う印圧装置32bと、印圧装置32aと印圧装置32bとの間に配置され印圧装置32aで印刷された印刷済みの印刷用紙22を印圧装置32bに搬送する中間搬送装置17aと、印圧装置32bで印刷された印刷済みの印刷用紙22を版胴1bから分離・剥離するエアーナイフ7bと、排版装置42bの下方に配置され印圧装置32aおよび印圧装置32bで多色印刷された印刷済みの印刷用紙22を排紙トレイ37上に排出する上記エアーナイフ7bを含む排紙装置35とを具備する。
複胴式孔版印刷装置500の両製版装置41a,41bおよび排版装置42aの上方には、原稿の画像を読み取るための図示を省略した原稿読取装置と、図4に示す操作パネル170とがそれぞれ配設されている。
版胴1aは、周知の多孔性円筒状をなし、ドラム軸2aの周りに回動自在に支持されている。版胴1aは、ドラム軸2aの中心軸線方向に延在して設けられていて、図3に詳しく示すように、印刷インキ通過性の多数かつ微細な開孔部47aが形成された金属製の印刷ドラムと、その外周面に巻き付けられた樹脂もしくは金属製のメッシュスクリーン層47Bとの2層構造となっており、図3以外の各図においては1本の実線で示されている。印刷ドラム47Aには、クランパ5aの周辺を除くその円周上の所定の範囲にわたり開孔部47aが形成された印刷可能領域と、開孔部47aが形成されていない印刷インキ不通過性の非印刷領域とが形成されている。上記非印刷領域は印刷ドラム47Aの両側端縁部にも設けられている。
版胴1a外周部の一母線上には、図1ないし図3に示すように、マスタ33aの先端部をクランプする開閉自在なクランパ5aが設けられている。クランパ5aは、クランパ軸6aで版胴1a上に枢着されていて、版胴1aの外周部の適宜の位置に配設されている図示しない開閉手段により所定位置で開閉される。
版胴1aの両端には、図3に示すように、円板状の端板68がそれぞれ設けられている。版胴1aの両側端縁部は、両側の端板68の外周面上にネジで取り付けられていて、両側の端板68の中央部とドラム軸2aの外周面との間にそれぞれ介装された一対のころがり軸受69,69を介して、前フレーム(図示せず)および後フレーム56B内側のドラム軸2a上に回転可能に支持されている。図3に示すように、端板68中央の外端部には、ドラムギア67が一体形成されている。版胴1a、1bは、ベルト135を介して図2等に示すメインモータ131により回転される。
版胴1aの内部には、図1にのみ示すように、版胴1aの内周面から外周面に向けてインキを供給するためのインキ供給手段が配設されている。版胴1aにおけるインキ供給手段では1色目のインキとして例えばブラック(Bk)色(以下、「黒色」と言い替える)のインキが、版胴1bにおけるインキ供給手段では2色目のインキとして例えばマゼンタ(M)色(以下、「赤色」と言い替える)のインキがそれぞれ供給されるようになっている。版胴1aにおけるインキ供給手段は、版胴1aの内周面に黒色のインキを供給するインキローラ3aと、このインキローラ3aと僅かな間隙を置いて平行に配置され、インキローラ3aとの間にインキ溜りIaを形成するドクタローラ4aと、インキ溜りIaへインキを供給するドラム軸2aを兼ねるインキ供給管2aとから主に構成されている。
インキは、本体フレーム501に対して版胴1aを着脱自在とするために構成された図3に示す後述するドラムユニット100aに設けられたインキ容器(図示せず)からインキポンプ(図示せず)により圧送され、ドラム軸2を兼ねているインキ供給管2aを介してインキ溜りIaへ供給される。
インキローラ3aは、図示しないギヤ列により反時計回り方向に回転する。
マスタ33aとしては、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムに多孔質支持体(ベース)として和紙等を貼り合わせたマスタが用いられている。マスタ33aは、上記のものに限らず、非常に薄い実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものや、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ(その厚さが約1〜8μm)程ではないが、上記従来のマスタ33a(その厚さが約40〜50μm程度)よりも厚さが薄く(厚さ20〜30μm)、かつ、ベースにおける合成繊維の混抄率が高いマスタ、例えば極端に合成繊維の混抄率が高いポリエチレンテレフタレート(PET)100%からなるベースを有する合成繊維ベースマスタを用いることも可能である。
給紙装置20は、エレベータ方式の給紙トレイ21と、呼び出しコロ23および分離コロ24と、分離コロ24に圧接し印刷用紙22の重送を防止する分離コロ25と、印刷用紙22の先端を、版胴1aの外周面と押圧手段としてのプレスローラ9aとの間に向けて所定のタイミングで給送するレジスト手段としての上下一対のレジストローラ29,30と、印刷用紙22の先端を案内する上下一対のガイド板上28、ガイド板下27、上下一対のレジストガイド板31,31と、呼び出しコロ23および分離コロ24を回転するための、版胴1aを駆動する駆動系を構成するメインモータ131の回転駆動力とは独立して配設された給紙モータ52と、レジストローラ対29,30を回転するための、メインモータ131の回転駆動力とは独立して配設されたレジストモータ55と、分離コロ24とレジストローラ対29,30との間の用紙搬送路に配設され、印刷用紙22の先端を検知する用紙先端センサ56と、および圧胴20とレジストローラ対29,30との間の用紙搬送路に配設され、印刷用紙22の先端を検知する用紙先端検知手段としてのレジストセンサ57とを有している。なお、分離コロ24と分離コロ25とを総称して分離コロ対24,25という。
給紙トレイ21は、その上に印刷用紙22を積載され、印刷用紙22の増減に連動して図示しないモータ装置により上下動される。呼び出しコロ23と分離コロ対24,25とは、給紙トレイ21上の最上位の印刷用紙22と当接するように設けられており、分離コロ対24,25および分離板26は、その協働作用により呼び出しコロ23によって搬送されてきた印刷用紙22を1枚に分離する機能を有する。印刷用紙22を1枚ずつ分離してレジストローラ対29,30に向けて印刷用紙22の先端を給送する給紙手段は、ピックアップローラあるいはピックアップコロとも呼ばれている上記した呼び出しコロ23、分離コロ対24,25および分離板26から構成されている。
給紙モータ52は、ステッピングモータからなり、分離コロ24および呼び出しコロ23を回転する無端ベルト53を介して、分離コロ24に連結されている。分離コロ24は、給紙モータ52の回転駆動によって、時計回り方向に回転される。
レジストモータ55は、ステッピングモータからなり、下側のレジストローラ30を回転するレジスト駆動手段としての機能を有する。レジストモータ55は、レジストモータ55の出力軸に設けられた駆動プーリとレジストローラ30の軸に設けられたレジストプーリとの間に掛け渡された歯付の無端ベルト54を介して、レジストローラ30に連結されている。上側のレジストローラ29は、薄紙のシワを低減する目的でローラ軸に一体的に取り付けられた3個のこま切れ状ローラからなり、図示を省略したレジストローラ上下機構を介して5個のこま切れ状ローラからなるレジストローラ30に接離自在に配設されている。
用紙先端センサ56およびレジストセンサ57は、発光部および受光部を具備した反射型の光学センサからなる。用紙先端センサ56は、印刷用紙22の先端を検知することにより、上記した給紙手段を含む給紙方向Xの上流側で発生した印刷用紙22のジャムを検知するジャム検知機能を有する他、レジストローラ対29,30のニップ部直前の部位に印刷用紙22の先端を突き当てて湾曲たわみを形成する時のたわみ量調整の一部の機能をも有している。
レジストセンサ57は、印刷用紙22の先端を検知することにより、レジストローラ対29,30を含む給紙方向Xの上流側で発生した印刷用紙22のジャムを検知するジャム検知機能を有する他、印刷用紙22の種類に応じて変化するレジストローラ対29,30での印刷用紙22のスリップ量を補正するための印刷用紙22の先端検知信号を制御装置200へ送信するようになっている。
印圧装置32aは、上記したインキローラ3a、後述する、プレスローラ9a、プレスローラブラケット11a、プレスローラテンション13aおよびプレスローラカム12aから主に構成されている。
プレスローラ9aは、給送されてきた印刷用紙22を版胴1aに押し付けて印刷画像を印刷用紙22上に形成する押圧手段としての機能を有する。プレスローラ9aは、プレスローラブラケット11aの一方の揺動端において回転自在に支持されていて、版胴1aの外周面に接離自在に設けられている。版胴1aに対するプレスローラ9aの印圧は、プレスローラブラケット11aの他方の揺動端側に張設されたプレスローラテンション13a(引張バネ)によって加えられると共に、このプレスローラテンション13aの付勢力によってプレスローラブラケット11aの他方の揺動端は、扇状のプレスローラカム12aの輪郭周面に圧接している。
プレスローラカム12aは、メインモータ131駆動部によって給紙装置20からの印刷用紙22の給紙タイミングおよび版胴1aの回転に合わせて同期して回転されるようになっており、給紙装置20から印刷用紙22が給紙されないときには、その大径部をプレスローラブラケット11aの他方の揺動端に対向させている。プレスローラカム12aは、給紙装置20から印刷用紙22が給送されてくると回転して、その小径部をプレスローラブラケット11aの他方の揺動端に対向させ、プレスローラ9aを図において時計回り方向に揺動させるようになっている。
エアーナイフ7aは、印刷用紙22が版胴1aの外周面に貼り付いて巻き上がるのを防止するために、その先端部がノズルになっている。エアーナイフ7aのノズルからは、圧縮空気流が高速で吐出され、印刷用紙22の先端部に吹き付けられるようになっている。エアーナイフ7aは、エアーナイフ軸8aを中心に版胴1aの外周面に近接した位置と、離間した位置とに揺動可能となっている。エアーナイフ7aは、クランパ5aとエアーナイフ7aの先端が干渉しないように版胴1aの回転と同期して揺動する。一方、版胴1bにおけるエアーナイフ7bの左方には、送風ファン34が設けられていて、印刷用紙22の版胴1bへの巻き上がり防止のために、エアーナイフ7bによる印刷用紙22の分離・剥離作用を補助している。
中間搬送装置17aは、従動ローラ14aと駆動ローラ15aとの間に掛け渡された多孔性の搬送ベルト16aと、吸引用のファン18aと、ケーシング19とから主に構成されている。搬送ベルト16aによる印刷用紙22の左方向への進行速度は、版胴1aの回転周速度と同じである。
搬送ベルト16aは、版胴1aの周速度と同じかまたは僅かに速い搬送速度で版胴1aと同期して駆動される。これにより、印刷用紙22は図1の左方向へテンションが掛かった状態で搬送されることになる。ファン18aは、ケーシング19内に配置されていて、その回転によりケーシング19内に負圧状態を作り出す。
排紙装置35は、従動ローラ39と駆動ローラ38との間に掛け渡された多孔性の搬送ベルト40と、ジャンプ台40Aと、吸引用ファン36、ケーシング36A等とから主に構成されている。
図3において、符号100aは、本体フレーム501に対して上記着脱手段を介して版胴1aを着脱自在とするために構成されたドラムユニットを示す。符号100bは、本体フレーム501に対して上記着脱手段を介して版胴1bを着脱自在とするために構成されたドラムユニットを示す。本体フレーム501には、図3に示すように、各ドラム軸2a,2bの後端部を受け入れる軸受54Aと、版胴駆動機構230とが配設されている。
ドラムユニット100aは、版胴1a、端板68、ドラム軸2a、上記インキ供給手段、黒色のインキを貯蔵した上記インキ容器を収納するインキ容器収納装置(図示せず)、上記インキポンプ、前取っ手(図示せず)、上記前フレーム、後フレーム56Bおよび把持フレーム(図示せず)から主に構成される。ドラムユニット100bは、版胴1b、ドラム軸2b、端板68、上記インキ供給手段、赤色のインキを貯蔵した上記インキ容器を収納するインキ容器収納装置(図示せず)、上記インキポンプ、前取っ手(図示せず)、前フレーム(図示せず)、後フレーム56Bおよび把持フレーム(図示せず)から主に構成される。
図3に示すように、ドラム軸2aの両端部にはリング状の固定具56Aが固着されていて、その固定具56Aの内側には、ドラム軸2aを挿通した上記前フレームおよび後フレーム56Bがねじを介して締結されている。上記前フレームおよび後フレーム56Bの上端部は、上向きに開口部をもったチャンネル状の上記把持フレームの両端部に固設されている。
上記把持フレームの後端部には、コロ軸を介して回動自在に支持された上記一対のコロが設けられている。本体フレーム501における着脱口の上部には、上記把持フレームを着脱自在に保持するためのガイドレール(図示せず)が固設されている。上記ガイドレールは、下向きに開口をもつ略チャンネル状をなしていて、版胴1aの中心軸線方向に延在して設けられている。
上記ガイドレールの前側の入口部には、上記一対の導入コロがコロ軸をもって回動自在に取り付けられている。ドラムユニット100aは、上記一対の導入コロにより上記把持フレームの上記一対のコロを先頭にして上記ガイドレールに導入され、あるいは上記一対のコロを後端として引き出される。
このとき、ドラムユニット100aは、上記ガイドレールの上記開口部を挟んで形成された一対のレールフランジ(図示せず)上を上記一対のコロが転動することによって、上記把持フレームが上記ガイドレールの長さ方向に収納されると共に、ドラム軸2aの後端部が軸受54Aに嵌入して支持され、あるいは引き出されるようになっている。
図5において、各版胴1a,1bの図において奥側の端板68に対向した本体フレーム501の所定位置には、各版胴1a,1bがホームポジションを占めたときに、そのホームポジションを検知するためのホームポジションセンサ70a,70bがそれぞれ設けられている。ホームポジションセンサ70a,70bは、発光素子および受光素子を具備した光透過型の光学センサからなる。
各版胴1a,1bの奥側の端板68には、ホームポジションセンサ70a,70bと選択的に係合する遮光板71a,71bが外側に突出して設けられている。給版位置を検知する検知手段は、ホームポジションセンサ70a,70bを兼用・利用しており、各版胴1a,1bの離脱前天地移動位置、給版位置および排版位置は、各版胴1a,1bがホームポジションを占めたときにおけるホームポジションセンサ70a,70bからのオン信号出力時を起点として、図1および図3に示す各版胴1a,1bのドラムギヤ67近傍の端板68中央部に一体的に組み付けられたエンコーダ58a,58bにより各版胴1a,1bの回転量(回転角度)を検出することによって検知されるようになっている。
各エンコーダ58a,58bは、多数のスリットが外周部に放射状に並べられた1チャンネルのインクリメンタル型のフォトエンコーダである。各ドラムユニット100a,100bの奥側の後フレーム56Bには、各エンコーダ58a,58bの外周部を挟んで光透過型フォトセンサからなる版胴回転位置検知センサ59a,59bがそれぞれ取付けられている。なお、給版位置を検知する検知手段は、ホームポジションセンサ70a,70bをそれぞれ専用としてもよい。
上記のとおり、各版胴1a,1bの回転位置を検知する回転位置検知手段は、各ホームポジションセンサ70a,70b、遮光板71a,71b、各版胴回転位置検知センサ59a,59bおよび各エンコーダ58a,58bから構成されている。
なお、各エンコーダ58a,58bおよび各版胴回転位置検知センサ59a,59bの配設位置は、上記した位置に限らず、例えば図2に示す各版胴プーリ137a,137bに各エンコーダ58a,58bを組み付けると共に、本体フレーム501側に各版胴回転位置検知センサ59a,59bを各エンコーダ58a,58bに対応して取り付けてもよい。
図3において奥側の本体フレーム501内壁には電気用着脱コネクタ97Bが配置され、ドラムユニット100aの後フレーム56B外壁には電気用着脱コネクタ97Bと係合する電気用着脱コネクタ97Aが配置されている。電気用着脱コネクタ97Bは外部電源や後述する制御装置200(図6参照)等に接続されており、一方、電気用着脱コネクタ97Aは、版胴回転位置検知センサ59a,59b、上記インキ検知手段および上記インキポンプに接続されている。ドラムユニット100aが、上記着脱手段を介して本体フレーム501内に装着されたとき、電気用着脱コネクタ97Aが電気用着脱コネクタ97Bと結合して、上記電力の授受あるいは上記各信号の送受信が行われる。
版胴駆動機構230は、図2および図3に示すように、自身の出力軸131aに固設されたメイン駆動ギヤ231を有するメインモータ131と、奥側の本体フレーム501に軸受(図示せず)を介して回動自在に支持された駆動軸134aに電磁クラッチ232aを介して固設されメイン駆動ギヤ231と噛合すると共に、版胴1a側のドラムギヤ67と選択的に噛合する駆動ギヤ139aと、駆動軸134aを介して駆動ギヤ139aに一体的に形成された版胴プーリ137aと、奥側の本体フレーム501に軸受(図示せず)を介して回動自在に支持された駆動軸134bに電磁クラッチ232bを介して固設され版胴1b側のドラムギヤ67と選択的に噛合する駆動ギヤ139bと、駆動軸134bを介して駆動ギヤ139bに一体的に形成された版胴プーリ137bと、天地移動手段245を経由して版胴プーリ137aと版胴プーリ137bとの間に掛け渡されているベルト135とから主に構成されている。
メインモータ131は、奥側の本体フレーム501の不動部材に固設されていて、その出力軸131aは奥側の本体フレーム501に軸受(図示せず)を介して回動自在に支持されている。版胴駆動機構230および天地移動手段245を構成するベルト135は、歯付きベルトを用いており、また各版胴プーリ137a,137b,150、151,153,154,155,156等も歯付きプーリを用いている。なお、図3においては、ドラムギア67に対する各駆動ギヤ139a,139bおよび駆動軸134a,134b等の位置を略90度下方にずらせて描いてあり、これらの正規の位置関係は図2に示すとおりである。図2においては、奥側の本体フレーム501および軸受54A等をすべて省略して描いてある。
(天地移動調整手段の構成)
天地移動調整手段212は、最上流位版胴としての版胴1aについて配設された最上流位版胴天地移動調整手段と、版胴1bに配設された下流位版胴天地移動調整手段とからなる。上記最上流位版胴天地移動調整手段は、上記したレジストローラ対29,30と、上記したレジストモータ55と、版胴1aに対する天地移動量を設定するための上流位版胴天地移動量設定手段としての図4に示す天移動量設定キー191および地移動量設定キー192と、天移動量設定キー191や地移動量設定キー192からの信号に応じて、レジストローラ対29,30による印刷用紙22の先端を給送する給送タイミングを変えることにより、版胴1aに対して天地移動調整を行うべくレジストモータ55を制御する給送タイミング制御手段を兼ねている図6に示す制御装置200とを具備している。
上記下流位天地移動調整手段は、版胴1aと版胴1aとの間に設けられた版胴1bを印刷用紙22の天地方向に移動するための天地移動手段245と、版胴1aを除く版胴1bを選択してその天地移動手段245を起動設定するための版胴選択手段としての天地版胴選択キー190a,190bと、天地版胴選択キー190bにより選択された版胴1b([例1]では2つの版胴1a,1bしかないため)の天地移動量を設定するための天地移動量設定手段としての天移動量設定キー191および地移動量設定キー192と、天地版胴選択キー190bからの信号に基づいて選択された版胴1b([例1]では2つの版胴1a,1bしかないため)の天地移動手段245を起動させると共に、天移動量設定キー191や地移動量設定キー192からの信号に応じて、天地版胴選択キー190bにより選択された版胴1bを所定の天地移動量移動させるべくその天地移動手段245を制御する天地移動制御手段を兼ねている図6に示す制御装置200とを具備している。天地移動手段245は、換言すれば、版胴1bそのものの回転方向の位相を変えるものである。
天地移動手段245は、図2に示すように、上記した版胴プーリ137aと、上記した版胴プーリ137bと、版胴プーリ137aと版胴プーリ137bとの間に昇降自在に設けられたスライダアーム146と、奥側の本体フレーム501に回動自在に支持され天地駆動モータ148により駆動されるピニオン147と、このピニオン147と噛合するスライダアーム146の一側端に形成されたラック149と、スライダアーム146の上下端部に植設された各軸152を介して回動自在に取り付けられた一対の移動上プーリ150、移動下プーリ151と、奥側の本体フレーム501に植設された4つの支持軸157に回動自在に取り付けられスライダアーム146を挾んで上下にそれぞれ設けられた4つの固定プーリ153,154,155,156と、版胴プーリ137a、版胴プーリ137b、移動上プーリ150、移動下プーリ151および4つの固定プーリ153,154,155,156に掛け渡されたベルト135とから主に構成される。
スライダアーム146には2つの長孔146hが形成されている。スライダアーム146は、奥側の本体フレーム501に植設された上下一対の支持軸158を介してスライド可能に支持されると共に、奥側の本体フレーム501に固定されているガイド部材(図示しない)により昇降スライド可能に支持されている。
次に、図4を参照して操作パネル170の細部構成を説明する。この操作パネル170上には、複胴式孔版印刷装置500を操作するための各種キー、すなわち、製版スタートキー171a、印刷スタートキー171、テンキー173、位置調整キー175、天地版胴選択キー190a、190b、天移動量設定キー191、地移動量設定キー192および各種ディスプレイが配置されている。上記した各種キー以外のキーとしては、印刷された印刷用紙22の印刷画像位置の天地位置の確認、あるいは印刷画像品質等を確認するために試し刷り印刷動作の起動設定を行う試し印刷キー172が版付け印刷とは別の目的で設けられている。
ディスプレイ196は、印刷画像の天地移動量等を目視で確認するためのものであり、LED(発光ダイオード)で構成されている。ディスプレイ196は、版胴1a,1bが天寄りであることを示す発光部天197と、同地寄りであることを示す発光部地198と、2桁の数字で天地移動量をmm単位で表示する7セグメントの移動量表示部199とで構成されている。印刷画像位置が用紙22に対して設定された中央位置にある場合には発光部天197および発光部地198は点灯せず、7セグメントの移動量表示部199が0を示すように設定されている。
(制御装置の構成)
次に、図6を参照して制御装置200の要部の制御構成を簡単に述べる。制御装置200は、例えば信号バス(図示せず)によって互いに接続された、CPU201(中央処理装置)、RAM202(読み書き可能な記憶装置)、ROM203(読み出し専用記憶装置)およびI/O(入出力)ポート(図示せず)等を備えたマイクロコンピュータを具備している。
版胴回転位置検知センサ59a,59b、ホームポジションセンサ70a,70b、用紙先端センサ56およびレジストセンサ57からのデータ信号やオン/オフ信号は、制御装置200のCPU201に送信される。操作パネル170の各種キー、すなわち試し印刷キー172、天地版胴選択キー190a、190b、天移動量設定キー191、地移動量設定キー192および位置調整キー175からのオン/オフ信号やデータ信号は、制御装置200のCPU201に送信される。そして、制御装置200のCPU201からは、天地駆動モータ148、電磁クラッチ232a,232b、給紙モータ52、レジストモータ55、ディスプレイ196に各種指令信号が送信される。
制御装置200のCPU201(以下、単に「制御装置200」というときがある)は、上記したとおりの諸制御機能を具備しており、これらをまとめると以下のようである。第1に、制御装置200は、位置調整キー175からの信号に基づいて、版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく天地移動調整手段212の駆動部分を制御する制御手段として機能を有する。第2に、制御装置200は、天移動量設定キー191や地移動量設定キー192からの信号に応じて、レジストローラ対29,30による印刷用紙22の先端を給送する給送タイミングを変えることにより、版胴1aに対して天地移動調整を行うべくレジストモータ55を制御する給送タイミング制御手段の機能を有する。
第3に、制御装置200は、天地版胴選択キー190bからの信号に基づいて選択された版胴1b([例1]では2つの版胴1a,1bしかないため)の天地移動手段245を起動させると共に、天移動量設定キー191や地移動量設定キー192からの信号に応じて、天地版胴選択キー190bにより選択された版胴1bを所定の天地移動量移動させるべくその天地移動手段245を制御する天地移動制御手段の機能を有する。その他に、印刷枚数に応じて版胴の天地移動補正値を求め、この天地移動補正値で、印刷中に、天地移動調整手段を動作させて版胴の天地移動補正を行なうなど本発明に係る機能を有する。
また、制御装置200は、上記諸制御機能を有する他、以下の諸制御機能を具備している。制御装置200は、遮光板71aとホームポジションセンサ70aとの係合に基づく版胴1aのホームポジションおよびこのホームポジションを起点として版胴回転位置検知センサ59aから送信される出力パルス信号に基づいて版胴1aの回転位置を判断することにより、版胴1a上の製版済みのマスタ33aの製版画像の回転位置にタイミングを合わせて印刷用紙22の先端を給送すべくレジストモータ55を起動制御した後、レジストセンサ57からの出力信号に基づき、レジストローラ対29,30における印刷用紙22の滑りを補償(以下、単に「スリップ量補正」というときがある)すべくレジストローラ対29,30の回転速度を速めると共に回転量を増加するようにレジストモータ55を制御する機能を有する。
この時、制御装置200は、レジストモータ55へ出力される駆動パルス数およびそのパルス幅を変えることにより、レジストモータ55を制御する。さらに、制御装置200は、印刷用紙22のスリップ量補正後、版胴回転位置検知センサ59aからの出力パルス信号に応じながら、さらに駆動パルス幅を変えることにより、レジストモータ55をフィードバック制御する機能を有する。
ROM203には、天地駆動モータ148、電磁クラッチ232a,232b、給紙モータ52、レジストモータ55およびディスプレイ196を駆動制御するためのデータあるいは後述するフローチャートに示されている動作を行うためのプログラムが予め記憶されている。RAM202では、上記各センサ等からのデータ信号を一時記憶したりする。
(複胴式孔版印刷装置の動作)(試し刷り)
次に、複胴式孔版印刷装置500の動作を説明する。先ず、オペレータが、上記原稿読取装置の原稿受け台(図示せず)に印刷すべき原稿をセットし、製版を起動させるための図4に示す製版スタートキー171aを押下すると、排版工程が両版胴1a,1bにおいて同様に実行される。すなわち、各版胴1a,1bが回転して排版位置に停止し、版胴1aの外周面に巻装されていた使用済みのマスタ33aが版胴1aの外周面から漸次剥され搬送されつつ排版ボックス(図示せず)内へ排出されていわゆる排版が終了する。
次いで、版胴1aは、クランパ5aが図1における略右横に位置する給版位置に停止される。版胴1bは、クランパ5bが図1における略直上(ホームポジションでもある)に位置する給版位置に停止される。
排版工程と並行して、上記原稿読取装置が作動して原稿読み取りが行われる。この原稿読み取りに係る詳細な構成及び動作は、例えば公知の「縮小式の原稿読取方式」で行われるようになっており、原稿読み取りされた画像は最終的にCCD(電荷結合素子)等の光電変換素子からなる画像センサにより光電変換される。画像センサにより光電変換され電気信号は、図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に送信されることによりデジタル画像信号に変換される。
一方、上記原稿読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像信号に基づき、両製版装置41a,41bにおいて同様の製版・給版工程が行われる。マスタ33aが、製版装置41aに配設されている平面型のサーマルヘッドに押し付けられているプラテンローラ(共に図示せず)および送り出しローラ対(図示せず)の回転により、マスタ搬送路の下流側に搬送される。このように搬送されるマスタ33aに対して、上記サーマルヘッドの主走査方向に一列に配列された多数の微小な発熱素子が、上記A/D変換基板およびその後の製版制御基板(図示せず)で各種処理を施されて送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱素子に接触しているマスタ33aの熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。このようにして、画像情報に応じたマスタ33aの位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
画像情報が書き込まれて製版された製版済みのマスタ33aの先端は、上記送り出しローラ対の回転により版胴1aの外周部側へ向かって送り出され、給版ガイド板(図示せず)により進行方向を変えられ、クランパ5aが図1における略右横に位置する給版位置状態にある版胴1aの拡開したクランパ5aへ向かって垂れ下がる。このとき版胴1aは、排版工程により使用済みのマスタ33aを既に除去されている。一方、版胴1b側における製版済みのマスタ33bの先端は、送り出しローラ対の回転により版胴1b外周部側へ向かって送り出され、給版ガイド板(図示せず)により略水平方向に案内されつつ、クランパ5bが図1における略直上に位置する給版位置状態にある版胴1bの拡開したクランパ5bへ向かって挿入される。
そして、製版済みのマスタ33aの先端部が、一定のタイミングでクランパ5aによりクランプされると、版胴1aは図における時計回り方向に回転しつつ外周面に製版済みのマスタ33aを徐々に巻き付けていく。製版済みのマスタ33aの後端部は、製版完了後に製版装置41aに配設されている可動刃および固定刃等からなる切断手段の作動により一定の長さに切断されて、一版のマスタ33aが版胴1aの外周面に完全に巻装されると、いわゆる給版工程が終了する。一方、版胴1bも同様に給版される。
ここで、版胴1aの拡開したクランパ5aへ向かって搬送されてきた製版済みのマスタ33aの先端部がクランパ5aでクランプされるときに、製版済みのマスタ33aの先端の搬送がクランパ5aにおける所定のクランプ位置で停止してクランパ5aでクランプされればよいが、この製版済みのマスタ33aの先端の搬送停止位置がばらつくと、版胴1a上で巻装すべき製版済みのマスタ33aの位置もばらつくことになる。
この製版済みのマスタ33aの先端の搬送停止位置をばらつかないようにすることは、上記した給版ガイド板のみによって製版済みのマスタ33aの先端を版胴1aの拡開したクランパ5aへ向かって搬送するために、大変困難なことである。製版済みのマスタ33aの先端のマスタ搬送方向における搬送停止位置のばらつきにより、製版済みのマスタ33aの先端の搬送量がクランパ5aにおける所定のクランプ位置に対して足りない場合には、製版済みのマスタ33aの先端がクランパ5aに浅くクランプされることになる。また、製版済みのマスタ33aの先端が、マスタ幅方向(版胴1aの軸方向でもある)の左右にずれてクランパ5aでクランプされた場合には、クランパ5aの左右方向にずれてクランプされることになる。
このように各製版済みのマスタ33a,33bを各版胴1a,1bにそれぞれ巻き付ける際に、その各製版済みのマスタ33a,33bの各版胴1a,1bへの巻き付け位置が正規の位置よりも各版胴1a,1bの天地方向にずれたような場合に、そのままの状態で印刷を行うと、印刷画像が天地方向に位置ずれを生じ、これにより印刷画像の印刷ずれを起こしてしまうことになるため、後の動作で述べるように天地移動調整手段212によって天地方向の画像位置ずれを修正するための位置調整を行なうことができる。
一版の各製版済みのマスタ33a,33bが各版胴1a,1bの外周面にそれぞれ巻装されると製版・給版工程が終了し、印刷工程が開始される。この時、各版胴1a,1bは一度、図1に示す位置状態、すなわち版胴1aはホームポジションに、版胴1bはそのクランパ5bが略真下近傍に位置する状態になるまで回転してそれぞれ停止する。このように、[例1]では、各版胴1a,1bが本体フレーム501内にあるとき、版胴1aと版胴1bとの間には、予め初期位相差が設けられていることが一つの特徴となっている。
そして、印刷工程が始まる。給紙トレイ21上に積載された最上位の印刷用紙22を呼び出しコロ23に接触するまで給紙トレイ21を上昇させておく。呼び出しコロ23に接触している最上位の印刷用紙22が、呼び出しコロ23の回転動作により搬送されると共に、分離コロ対24,25および分離板26の協働作用により1枚に分離され、上下一対のガイド板上28およびガイド板下27に案内されつつレジストローラ対29,30に向けて用紙搬送方向Xに給送される。この時、搬送された印刷用紙22の先端は、レジストローラ対29,30のニップ部直前部位に当接し、ガイド板上28に沿ってその上方へ撓んだ状態で停止している。
一方、1色目の版胴1aは、印刷動作が始まると印刷の回転速度で回転され始める。版胴1aの内周側では、インキ供給ディストリビュータ(図示せず)からインキローラ3aとドクタローラ4aとの間に形成されたインキ溜りIaに黒色のインキが供給され、その黒色のインキはインキローラ3aとドクタローラ4aとが回転することによって混練され伸ばされると共に、インキローラ3aの外周面に均一に付着するようになる。インキの残量は、上記したインキ検知手段によって検知され、インキが少なくなったときには上記インキ供給ディストリビュータから補給される。こうして版胴1aの回転方向と同一方向に、かつ、版胴1aの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインキローラ3aにより、インキが版胴1aの内周側に供給される。
そして、印刷用紙22が、レジストローラ対29,30により版胴1aの回転と同期した所定のタイミングで印圧装置32aにおける版胴1aとプレスローラ9aとの間に給送されてくると、これに同期して版胴1aの外周面下方に離間していたプレスローラ9aが揺動・上昇されることにより、版胴1aの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33aに押し付けられる。これにより、版胴1aの開孔部47aから滲み出たインキの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33aが版胴1aの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33aの穿孔パターン部からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙22の表面に転移されて、1色目の所望の黒色の印刷画像が形成される。
黒色の印刷画像を形成された印刷用紙22は、その先端がエアーナイフ7aの先端近傍の所までくると、エアーナイフ7aが版胴1aの回転動作と同期してエアーナイフ軸8aを中心に回転して版胴1aの外周面に接近し、エアーナイフ7aの先端から吹き出る圧縮空気流によって、印刷用紙22の先端が版胴1aから分離・剥離される。エアーナイフ7aにより分離・剥離された印刷用紙22は、中間搬送装置17aによって給紙方向Xの下流側へとさらに搬送される。
上述のように搬送ベルト16aは図1の矢印方向へ回転し、ファン18aの作動によるケーシング19内の負圧作用により、印刷用紙22の先端は容易に搬送ベルト16aの上面に吸引され、この搬送ベルト16aの反時計回り方向の回転により、次の印圧装置32b部位へ向かって搬送される。
搬送ベルト16aの搬送速度(回転線速度)は、上述したように、版胴1aの周速度(回転線速度)と同じかまたは速く設定されていが、印刷用紙22の上流側は未だ版胴1aとプレスローラ9aとのニップ部で押さえられているので、印刷用紙22の左方向への進行速度は版胴1aの周速度と同じである。したがって、印刷用紙22は左方向へテンションが掛かった状態で搬送されることになる。
厳密には、搬送ベルト16aの搬送速度の方が印刷用紙22の進行速度より速いので、搬送ベルト16aと印刷用紙22とは滑りを生じていることになる。この時、2色目の版胴1bは、版胴1aと同期して印刷動作を始め、印刷の回転速度で回転され始める。版胴1bの内周側では、版胴1aと同様の構成および動作内容で版胴1bの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインキローラ3bにより、2色目の赤色インキが版胴1bの内周側に供給される。
また、版胴1aと版胴1bとは、黒と赤の画像の基準位置が印刷用紙22上で同じになるように予め初期位相差が設けられている。版胴1aと版胴1bとの間に予め上記初期位相差を設けた理由は、次のようなことによる。版胴1aと版胴1bとは、同じ周速度で回転するように上記した版胴駆動機構230を含む駆動経路によって連結されているため、黒と赤の画像の基準位置が印刷用紙22上で同じになるように予め初期位相差が設けられているのである。すなわち、図1に示すように、版胴1aと版胴1bのクランパ5a,5bの位置が異なっていて、その角度は、版胴1aの印刷部から版胴1bの印刷部までの印刷用紙22の搬送経路長さを、版胴1bの外周面上に取った場合に得られる中心角度に相当する。印刷用紙22の搬送経路長さとは、およそ、版胴1aと版胴1bの回転中心軸の間の距離に相当する。
このような初期位相差の設定理由を、各版胴1a,1b上に巻装された製版済みのマスタ33a,33bが同じ製版サイズであって、例えば各製版画像が全ベタ画像であるような場合に単純化して考えて見ると、次のようなことになる。すなわち、版胴1aと版胴1bとが同じ周速度で回転すべく連結されていて、かつ、版胴1aの印刷部から版胴1bの印刷部までの印刷用紙22の搬送経路長さがあることから、下流側の版胴1bの印刷部で印刷するとき、上流側の版胴1aの印刷部で印刷された全ベタ印刷画像を有する印刷用紙22上に、版胴1bの印刷部で印刷される全ベタ画像の全輪郭を給紙方向Xにずれること無く重なり合うような関係位置とするためには、版胴1bに対して搬送経路長さ分に相当する初期位相差を設けなければならないことは明らかである。
そして、印刷用紙22の先端部分が、搬送ベルト16aによって進行方向に牽引力を与えられながら、版胴1bの回転と同期した所定のタイミングで印圧装置32bにおける版胴1bとプレスローラ9bとの間に給送されてくると、これに同期して版胴1bの外周面下方に離間していたプレスローラ9bが揺動・上昇されることにより、プレスローラテンション13bによって印圧が加えられ、版胴1bの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33bに押し付けられる。これにより、版胴1bの開孔部47aから滲み出たインキの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33bが版胴1bの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33bの穿孔パターン部からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙22の表面に転移されて、2色目の赤色インキによる赤色の印刷画像が形成される。
以上の動作により、版胴1bとプレスローラ9bとの接触部では、先に黒色の印刷された画像位置と同じ位置関係で赤色の印刷がされることになる。なお、プレスローラ9bは、版胴1bの外周面上から突出しているクランパ5bとの干渉を避けるために、印刷中に版胴1bの外周面から離間するようになっているが、印刷用紙22の先端が印刷部へ進入する前には版胴1bの外周面に接触して押圧している状態となっている。
2色目の赤色の印刷画像を形成された印刷用紙22は、その先端がエアーナイフ7bの先端近傍の所までくると、エアーナイフ7bが版胴1bの回転動作と同期してエアーナイフ軸8bを中心に回転して版胴1bの外周面に接近すると同時に、エアーナイフ7bの先端から吹き出る圧縮空気流によって、印刷用紙22の先端が版胴1bから分離・剥離される。エアーナイフ7bにより分離・剥離された印刷済みの印刷用紙22は、排紙装置35によってさらに給紙方向Xの下流側に位置する排紙トレイ37へ搬送される。
上記した送風ファン34の回転により送られる空気は、エアーナイフ7bの左上方から印刷済みの印刷用紙22の表面へと吹き付けられる。これは、印刷済みの印刷用紙22の搬送ベルト40からの浮き上がり防止のためと印刷画像のインキ乾燥の促進のためでもある。ジャンプ台40Aは、印刷済みの印刷用紙22の中央部位を略U字状に撓ませて、いわゆる排紙の腰付けをして排紙トレイ37上に整然と排出積載する機能を有する。
エアーナイフ7bにより分離・剥離された印刷済みの印刷用紙22は、吸引用ファン36の作動により吸引されつつ、また送風ファン34の回転により送られる空気によって印刷済みの印刷用紙22の搬送ベルト40からの浮き上がり防止が図られながら搬送ベルト40に吸着され、この搬送ベルト40の反時計回り方向の回転により、またジャンプ台40Aによる排紙の腰付けがされながら排紙トレイ37上に順次整然と排出積載される。このようにしていわゆる「版付け」、あるいは「試し刷り」が終了する。
(天地移動調整手段の動作)
次に、天地移動調整手段212の動作を述べる。例えば、図7に示すように、版胴1a上に巻装されたマスタ33aの製版画像と、印刷物22の印刷画像22Gが印刷物22の天地方向(給紙方向Xの上流側である後方向および下流側である前方向)に対して中央に位置する状態、換言すれば印刷物22の前側でもある上余白と後側でもある下余白の長さとが等しい印刷状態のときには、移動量表示部199が0を示している状態にあるものとする。
図7ないし図9において、各版胴1a,1bの側面に表示してある半径状の線分は、各版胴1a,1bにおける印刷回転方向の位相状態を表すための画像領域先端1Gを示している。そして、試し印刷キー172を押下して試し印刷をして、その印刷物22を確認した結果、版胴1a側に対応する黒色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと5mm移動しなければいけないと共に、版胴1b側に対応する赤色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと7mm移動しなければいけないことがわかったとする。
この場合は、図11に示す画像位置合わせフローに係るプログラムにしたがって動作を行う。そして、上記したような印刷物22の確認結果から、版胴1a側に対応する黒色の1色目画像位置合わせ処理と、版胴1b側に対応する赤色の2色目画像位置合わせ処理とを行うことにより、上記したような印刷物22における天地方向の画像位置合わせでは、印刷用紙22に対して2色目の画像の位置合わせを行ってから、1色目(黒色)の版胴1aの天地移動調整を行った場合、先に画像の位置合わせを行った2色目(赤色)の画像位置が所望とする最初の画像位置合わせ位置からずれてしまうので、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく、先ず、位置調整キー175を押すことによって、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うことを可能とする状態を設定する。
すなわち、例えば1色目(黒色)の版胴1aの天地移動量が天移動量設定キー191や地移動量設定キー192により入力・設定される前に、天地版胴選択キー190bを押下したようなときには、制御装置200からの指令により、天地移動手段245の天地駆動モータ148を非起動設定状態とすると共に、その旨の警告報知が警告報知手段としての液晶表示部177になされる。その旨の警告報知としては、例えば「1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整ができます。1色目(黒色)の版胴1aの天地移動量を天移動量設定キー191や地移動量設定キー192により入力して下さい。」というような表示でなされる。
まず、1色目画像位置合わせ処理を行うために、図12に示すサブルーチンプログラムにしたがって動作が行われる。このとき、位置調整キー175が既に押されているので、天地版胴選択キー190aを押下して版胴1aを選択する必要はなく、レジストモータ55の給送タイミングは可変準備状態にある。次いで、1色目の版胴1aの天地移動設定により位相移動処理を行う。
すなわち、天移動量設定キー191を押すと、発光部天197が点灯して移動量表示部199が移動量をmm単位で表示するので、その表示が1から順に5になるまで押し続け、5になったら天移動量設定キー191から手を離せば、版胴1aの回転方向の位相が天方向へ位相移動する回転量に対応した分、レジストモータ55の給送タイミングを遅らすための入力・設定が終了すると同時に、1色目画像位置合わせが終了する。
次いで、図11および図13において、2色目画像位置合わせ処理が行われる。2色目画像位置合わせ処理では、上記したように、版胴1b側に対応する赤色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと7mm移動するために、まず、天地版胴選択キー190bを押下して版胴1bを選択した後、その天地移動手段145の天地駆動モータ148を起動設定状態とする。
次いで、2色目の版胴1bの天地移動設定により位相移動処理を行う。すなわち、天移動量設定キー191を押すと、発光部天197が点灯して移動量表示部199が移動量をmm単位で表示するので、その表示が1から順に7になるまで押し続け、7になったら天移動量設定キー191から手を離せば、版胴1bの天方向の移動が停止し、版胴1bは、図11に示すように天方向に7mm移動される。
上記過程において、天地移動調整手段212では次の制御動作が行われる。制御装置200のCPU201は、位置調整キー175からの設定信号に基づいて、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うことを可能とする状態を設定すると共に、天移動量設定キー191からの信号を受けたCPU201からの指令信号により、天移動量設定キー191が押されている間に設定された数値=5mmに対応してROM203に記憶されているレジストモータ55の給送タイミングを遅らすためのデータを呼び出して、レジストモータ55の起動タイミングを調整することとなる。
次いで、制御装置200のCPU201は、天地版胴選択キー190bからの信号に基づいて、天地移動手段145の天地駆動モータ148を起動させる。そして、制御装置200のCPU201は、天移動量設定キー191からの信号に基づいて、天移動量設定キー191が押されている間、天地駆動モータ148が回転駆動されることにより、図10に示されているように、その回転駆動力がピニオン147へ伝達され、ピニオン147の回転運動がスライダアーム146のラック149で直線運動に変換され、ラック149が矢印下方向Dに移動されることによってスライダアーム146、移動上プーリ150および移動下プーリ151もベルト135を介して矢印下方向Dに一緒に変位される。
これにより、ベルト135および版胴プーリ137bは反時計回り方向に回転され、ドラムギヤ67は時計回り方向に回転されるので、版胴1aの位相は印刷回転方向にその位相を進めた状態、すなわち天方向に移動され、印刷画像22G位置が印刷物の前側方向へ移動される。
このように天地移動手段245が動作しているとき、換言すれば天移動量設定キー191が押されていて天地駆動モータ148が回転駆動されている時、CPU201からの指令信号により、両電磁クラッチ232a,232bが共にオンして各版胴プーリ137a,137bと各駆動ギヤ139a,139bとが接続された状態にある。これにより、版胴1a側は、その版胴プーリ137a、駆動ギヤ139aおよびドラムギヤ67が接続されていて、しかもメインモータ131の電気的なロック状態によって、版胴1b側に対して相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、回転するようなことはなく、例えば図1、図2および図10等に示すホームポジションに保持されたままである。
上記移動量は、版胴1bの回転量を版胴回転位置検知センサ59bが検知してCPU201へその信号を送信し、CPU201はその信号に応じて印刷用紙22への印刷画像22Gの移動量であるmm単位に換算して移動量表示部199がそれを表示する。こうして、版胴1bの方が図10においてその印刷回転方向に位相を進めることになる。次いで、試し印刷キー172を押下して試し印刷を行って、印刷物22に対する印刷画像22Gの天方向への所望した移動内容を確かめる。
天地移動手段245を動作させるときには、図10に示すように、版胴1a側をホームポジションに停止させた位置状態で行うことが望ましいが、これに限らず、版胴1a側がどのような回転位置にあっても各版胴1a,1bの回転位置が検知されている状態にあっては行うことができる。
上記した例とは別に、版胴1a側に対応する黒色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと5mm移動しなければいけないと共に、版胴1b側に対応する赤色の印刷画像22Gを、今度は上記した例とは逆に版胴1b側に対応した印刷画像22Gを後側(地側でもある)にあと5mm移動しないといけないことがわかったとする。
この場合も、上記例と同様にして、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく、先ず、位置調整キー175を押すことによって、1色目(黒色)の版胴1aから天地移動調整を行った後で、2色目(赤色)の版胴1bの天地移動調整を行う。
すなわち、天地版胴選択キー190bを押下して版胴1bを選択した後、その天地移動手段145の天地駆動モータ148を起動設定状態とした後、2色目の版胴1bの天地移動設定により位相移動処理を行う。そして、今度は版胴1b側に対応した印刷画像22Gを後側(地側でもある)にあと5mm移動するために、地移動量設定キー192を押すと、発光部地198が点灯して移動量表示部199が移動量をmm単位で表示するので、その表示が1から順に5になるまで押し続け、5になったら地移動量設定キー192から手を離せば、版胴1bの地方向の移動が停止し、上記と同様の動作を経過して、版胴1bは、図10に示した反対の反時計回り方向に位相移動して、地方向に5mm移動される。
上記過程において、天地移動調整手段212では次の制御動作が行われる。天地版胴選択キー190bからの信号に基づいて、天地移動手段245の天地駆動モータ148を起動させると共に、地移動量設定キー192からの設定信号を受けたCPU201からの指令信号により、地移動量設定キー192が押されている間、天地駆動モータ148が回転駆動されることにより、その回転駆動力がピニオン147へ伝達され、ピニオン147の回転運動がスライダアーム146のラック149で直線運動に変換され、ラック149が矢印上方向Uに移動されることによってスライダアーム146、移動上プーリ150および移動下プーリ151もベルト135b介して矢印上方向Uに一緒に変位される。
これにより、ベルト135および版胴プーリ137は時計回り方向に回転され、ドラムギヤ67は反時計回り方向に回転されるので、版胴1bの位相は印刷回転方向にその位相を遅らせた状態、すなわち地方向に移動され、印刷画像22G位置が印刷物の後側方向へ 移動される。
この時、CPU201からの指令信号により、両電磁クラッチ232a,232bが共にオンして各版胴プーリ137a,137bと各駆動ギヤ139a,139bとが接続された状態にあることにより、版胴1a側は、その版胴プーリ137a、駆動ギヤ139aおよびドラムギヤ67が接続されていて、しかもメインモータ131の電気的なロック状態によって、版胴1b側に対して相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、上記例と同様に回転するようなことはない。
(複胴式孔版印刷装置の動作)(印刷)
次に、図4に示す操作パネル170のテンキー173で印刷枚数を設定し、印刷スタートキー171を押下すると上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷および排紙の各工程が設定した印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。
各版胴1a,1bの何れか一方のみの天地移動調整を行いたい場合には、それに対応する天地版胴選択キー190a,190bの何れか一方のみを押下してその版胴1aまたは1bを個別に選択することにより、天地移動調整を行えることはいうまでもない。制御装置200の機能は、上記した制御機能に限らず、次のようにしてもよい。例えば、版胴1a側に対応する黒色の1色目画像位置合わせ処理と、版胴1b側に対応する赤色の2色目画像位置合わせ処理とを行う場合であって、上記したように2つの天地版胴選択キー190a,190bを備えているときには、位置調整キー175を押すことに代えて(すなわち、位置調整キー175を押さないで)、先ず最初に、1色目画像位置合わせ処理を行うために、天地版胴選択キー190aを押下して版胴1aを選択することによって、以降の動作を上記した例と同様に行ってもよい。
[例2]
図15(a),(b)に[例2]の実施形態を示す。[例1]では、説明の簡単化のため、2つの版胴1a,1bで説明したが、図15(a)に示すように、3つの版胴1a,1b,1c(以下、説明の便宜上から、「第1版胴1a、第2版胴1b、第3版胴1c」というときがある)を有し、最上流位版胴としての第1版胴1aに対する天地移動調整が[例1]で説明したと同様にレジストモータ55による給送タイミングの可変によってなされる場合について説明する。
なお、図15(a)では、説明および図の簡明化を図るために、各版胴1a,1b,1cのドラムギヤ67を省略すると共に、各版胴プーリ137a,137b',137cを代表的に記載している。図15(a)に示すとおり、第1版胴1aと第2版胴1bとは、[例1]と同様の天地移動手段245によって直列的に連結されている。第3版胴1cは、第1版胴1aや第2版胴1bと同様の構成を有する。第2版胴1bと第3版胴1cとは、天地移動手段245と同様の構成の天地移動手段246によって直列的に連結されている。第2版胴1bの版胴プーリ137b'は2連の歯付きのプーリであり、この版胴プーリ137b'には、天地移動手段245側に掛け渡されている歯付きのベルト135と天地移動手段246側に掛け渡されている歯付きのベルト136とが同軸的に掛け渡されている。
図15(a)において、第1版胴1aから給紙方向Xの下流側に配設された下流位版胴群に属する第2版胴1b、第3版胴1cが、版胴1aに対して直列的な駆動連結状態にあるとき、制御装置200は、下流位版胴群の上流側から順に配設された第2版胴1b、第3版胴1cの各天地移動調整を上記順に行うべく各天地移動調整手段の天地移動手段245、246を制御するものである。
すなわち、図15(b)に示すように、先ず、第1版胴1aにおける1色目画像位置合わせ処理(図15(b)のフローチャートでは、第1版胴位置調整…と記載している以下第2版胴、第3版胴も同じ)を[例1]と同様に給送タイミングを可変することで行った後、次に第2版胴1bにおける2色目画像位置合わせ処理を天地移動手段245を用いて行い、最後に第3版胴1cにおける3色目画像位置合わせ処理を天地移動手段246を用いて行うものである。
ここで、天地移動手段246を動作させて第3版胴1cの回転方向の位相調整を行っている時、CPU201からの指令信号により、各電磁クラッチ(例えば第1版胴1aの電磁クラッチ232aと同様の電磁クラッチが第3版胴1cにも配設されているものとすると)が共にオンして各版胴プーリ137a,137b',137cと各駆動ギヤ(例えば第1版胴1aの駆動ギヤ139aと同様の駆動ギヤが第3版胴1cにも配設されているものとすると)とが接続された状態にある。
これにより、第1版胴1a側と直列状態で連結されている第2版胴1bは、メインモータ131の電気的なロック状態によって、第3版胴1cに対して相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、回転するようなことはなく、天地移動調整を確実に行える。
[例3]
図16(a),(b),(c),(d)に[例3]の実施形態を示す。[例2]と同様に、第1版胴1a、第2版胴1b、第3版胴1cを有し、最上流位版胴としての第1版胴1aに対する天地移動調整が実施形態1で説明したと同様にレジストモータ55による給送タイミングの可変によってなされる場合について説明する。
なお、図16(a),(b)では、説明および図の簡明化を図るために、各版胴1a,1b,1cのドラムギヤ67を省略すると共に、各版胴プーリ137a,137b,137cを代表的に記載している。図16(a),(b)に示すとおり、第1版胴1aに対して、第2版胴1bと第3版胴1cとは、[例1]と同様の天地移動手段245,247によって並列的に連結されている。
第3版胴1cは、第1版胴1aや第2版胴1bと同様の構成を有する。第2版胴1bと第3版胴1cとは、第1版胴1aを介してのみ駆動力伝達関係にあり、それ故に、互いに密接な駆動連結状態にはないと言える。第3版胴1cは、長い歯付きベルト135Aを備えた天地移動手段247を介して第1版胴1aに連結されている。天地移動手段247は、長い歯付きベルト135Aを用いている以外は天地移動手段245と同様の構成を有する。
図16(a),(b)において、第1版胴1aから給紙方向Xの下流側に配設された下流位版胴群に属する第2版胴1b、第3版胴1cが、版胴1aに対して並列的な駆動連結状態にあるとき、制御装置200は、下流位版胴群における上流側からの順位にかかわらず、第2版胴1b、第3版胴1cの各天地移動調整を行うべく各天地移動調整手段の天地移動手段245、246を制御するものである。
すなわち、図16(c)に示すように、先ず、第1版胴1aにおける1色目画像位置合わせ処理(図16(c)のフローチャートでは、第1版胴位置調整…と記載している以下第2版胴、第3版胴も同じ)を実施形態1と同様に給送タイミングを可変することで行った後、次に第2版胴1bにおける2色目画像位置合わせ処理を天地移動手段245を用いて行い、最後に第3版胴1cにおける3色目画像位置合わせ処理を天地移動手段247を用いて行うものである。
また、これに限らず、図16(d)に示すように、先ず、第1版胴1aにおける1色目画像位置合わせ処理を実施形態1と同様に給送タイミングを可変することで行った後、次に第3版胴1cにおける3色目画像位置合わせ処理を天地移動手段247を用いて行い、最後に第2版胴1bにおける3色目画像位置合わせ処理を天地移動手段245を用いて行うものである。
ここで、天地移動手段245を動作させて第2版胴1bの回転方向の位相調整を行っている時、第3版胴1cにおける天地移動手段247のベルト135Aが掛け渡されている第1版胴1aの版胴プーリ137aがメインモータ131の電気的なロック状態によって、第2版胴1bに対して相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、回転するようなことはなく、天地移動調整を確実に行える。この関係は、天地移動手段247を動作させて第3版胴1cの回転方向の位相調整を行っている時も同様である。
[例4]
図17に、[例4]にかかる実施形態を示す。この[例4]は、[例1]の版胴駆動機構230に代えて、版胴駆動機構130を有すること、および印刷用紙22の給送タイミングを可変する[例1]の上記最上流位版胴調整手段および天地移動手段245を備えた上記下流位版胴調整手段に代えて、天地移動調整手段113を有することが主に相違する。[例4]4は、[例1]ないし[例3]のようなレジスト精度の向上を望まなくてもよい場合に有効であり、印刷用紙22の給送制御方式としては従来のセクタギヤ方式を採用しているものである。
版胴駆動機構130は、給紙装置20近傍における奥側の本体フレーム501の不動部材に固設されたメインモータ131と、メインモータ131に連結されていて、奥側の本体フレーム501に軸受(図示せず)を介して回動自在に支持され給紙駆動機構を構成する給紙駆動軸141と、この給紙駆動軸141に電磁クラッチ133を介して取付けられた給紙プーリ143と、版胴1a側の駆動軸134aに電磁クラッチ232aを介して取付けられた2連の版胴プーリ138a'と、版胴1b側の駆動軸134bに電磁クラッチ232bを介して取付けられた版胴プーリ138bと、版胴1a側の天地移動手段160Aを経由して給紙プーリ143と版胴プーリ138a'との間に掛け渡されているベルト136と、版胴1b側の天地移動手段160Bを経由して版胴プーリ138a'と版胴プーリ138bとの間に掛け渡されているベルト135Aと、駆動軸134aの先端に固設されドラムユニット100aのドラムギア67と選択的に噛合する駆動ギア139aと、駆動軸134bの先端に固設されドラムユニット100bのドラムギア67と選択的に噛合する駆動ギア139bとから主に構成されている。奥側の本体フレーム501の下部には各駆動軸134a,134bを回転可能に支持する図3に示されていると同様の軸受140がそれぞれ設けられている。
版胴1a側の天地移動手段160Aは、実施形態1の天地移動手段245と比較して、給紙プーリ143と版胴1a側の版胴プーリ138a'との間に設けられていて、歯付きのベルト135に代えた歯付きのベルト136を備えていること、および天地駆動モータ148に代えて天地駆動モータ148Aを有することが相違する。版胴1b側の天地移動手段160Bは、天地移動手段160Aと比較して、版胴1a側の版胴プーリ138a'と版胴1b側の版胴プーリ138bとの間に設けられていて、歯付きのベルト136に代えた歯付きのベルト136Aを備えていること、および天地駆動モータ148Aに代えて天地駆動モータ148Bを有することが相違する。
次に、天地移動調整手段113の動作を述べる。例えば、図7ないし図9において、試し印刷キー172を押下して試し印刷をして、その印刷物22を確認した結果、版胴1a側に対応する黒色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと5mm移動しなければいけないと共に、版胴1b側に対応する赤色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと7mm移動しなければいけないことがわかったとする。
この場合は、図11に示す画像位置合わせフローに係るプログラムにしたがって動作を行う。そして、上記したような印刷物22における天地方向の画像位置合わせでは、印刷用紙22に対して2色目の画像の位置合わせを行ってから、1色目(黒色)の版胴1aの天地移動調整を行った場合、先に画像の位置合わせを行った2色目(赤色)の画像位置が所望とする最初の画像位置合わせ位置からずれてしまうので、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく、先ず、位置調整キー175を押すことによって、実施形態1と同様にして、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うことを可能とする状態を設定する。
まず、1色目画像位置合わせ処理を行うために、位置調整キー175が既に押されているので、天地移動手段160Aの天地駆動モータ148Aは起動設定状態にある。次いで、1色目の版胴1aの天地移動設定により位相移動処理を行う。すなわち、天移動量設定キー191を押すと、発光部天197が点灯して移動量表示部199が移動量をmm単位で表示するので、その表示が1から順に5になるまで押し続け、5になったら天移動量設定キー191から手を離せば、版胴1aの天方向の移動が停止し、版胴1aは、図11に示すように天方向に5mm移動される。
次いで、2色目画像位置合わせ処理が行われる。2色目画像位置合わせ処理では、上記したように、版胴1b側に対応する赤色の印刷画像22Gを印刷用紙22の前側(天側でもある)にあと7mm移動するために、まず、天地版胴選択キー190bを押下して版胴1bを選択した後、その天地移動手段160Bの天地駆動モータ148Bを起動設定状態とする。次いで、2色目の版胴1bの天地移動設定により位相移動処理を行う。
すなわち、天移動量設定キー191を押すと、発光部天197が点灯して移動量表示部199が移動量をmm単位で表示するので、その表示が1から順に7になるまで押し続け、7になったら天移動量設定キー191から手を離せば、版胴1bの天方向の移動が停止し、版胴1bは、図11に示すように天方向に7mm移動される。
上記過程において、天地移動調整手段113では次の制御動作が行われる。制御装置200のCPU201は、位置調整キー175からの設定信号に基づいて、1色目(黒色)の版胴1aからのみ天地移動調整を行うべく版胴駆動機構130および天地移動手段160Aを制御する。すなわち、制御装置200のCPU201は、電磁クラッチ133をオンすることでメインモータ131と給紙プーリ143とを接続し、電磁クラッチ232aをオンすることで版胴1aの駆動軸134aと版胴プーリ138a'とを接続し、さらに電磁クラッチ232bをオフすることで版胴1bの駆動軸134bと版胴プーリ138bとを非接続(断)状態にする。
そして、天移動量設定キー191が押されている間、天地移動手段160Aの天地駆動モータ148Aが回転駆動されることにより、その回転駆動力がピニオン147へ伝達され、ピニオン147の回転運動がスライダアーム146のラック149で直線運動に変換され、ラック149が矢印下方向Dに移動されることによってスライダアーム146、移動上プーリ150および移動下プーリ151もベルト135を介して矢印下方向Dに一緒に変位される。これにより、ベルト136および版胴プーリ138a'は反時計回り方向に回転され、ドラムギヤ67は時計回り方向に回転されるので、版胴1aの位相は印刷回転方向にその位相を進めた状態、すなわち天方向に移動され、印刷画像22G位置が印刷物の前側方向へ移動される。
次いで、制御装置200のCPU201は、天地版胴選択キー190bからの信号に基づいて、天地移動手段160Bの天地駆動モータ148Bを起動状態にする。そして、制御装置200のCPU201は、電磁クラッチ133を引き続きオンすることでメインモータ131と給紙プーリ143とを接続し、電磁クラッチ232aを引き続きオンすることで版胴1aの駆動軸134aと版胴プーリ138a'とを接続し、さらに電磁クラッチ232bをオンすることで版胴1bの駆動軸134bと版胴プーリ138bとを接続にする。制御装置200のCPU201は、天移動量設定キー191からの信号に基づいて、天移動量設定キー191が押されている間、天地駆動モータ148Bが回転駆動されることにより、上記したと同様にして、ラック149が矢印下方向Dに移動されることによってスライダアーム146、移動上プーリ150および移動下プーリ151もベルト135を介して矢印下方向Dに一緒に変位される。
これにより、ベルト136Aおよび版胴プーリ138bは反時計回り方向に回転され、ドラムギヤ67は時計回り方向に回転されるので、版胴1bの位相は印刷回転方向にその位相を進めた状態、すなわち天方向に移動され、印刷画像22G位置が印刷物の前側方向へ移動される。
このように版胴1a側の天地移動手段160Aを動作させる時、CPU201からの指令信号により、電磁クラッチ133をオンすることでメインモータ131と給紙プーリ143とを接続し、電磁クラッチ232aをオンすることで版胴1aの駆動軸134aと版胴プーリ138a'とを接続し、さらに電磁クラッチ232bをオフすることで版胴1bの駆動軸134bと版胴プーリ138bとを非接続(断)状態にするので、給紙駆動軸141に連結されたメインモータ131の電気的なロック状態によって、版胴1a側に対して相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、給紙プーリ143が回転するようなことはなく、かつ、版胴1bにはその駆動力が伝達されないので適宜の負荷により版胴1bは停止状態にあり、したがって、版胴1aのみが天地駆動モータ148Aの作動によって天地移動調整されることとなる。
これと同様に、版胴1b側の天地移動手段160Bを動作させる時、CPU201からの指令信号により、電磁クラッチ133をオンすることでメインモータ131と給紙プーリ143とを接続し、電磁クラッチ232aをオンすることで版胴1aの駆動軸134aと版胴プーリ138a'とを接続し、さらに電磁クラッチ232bをオンすることで版胴1bの駆動軸134bと版胴プーリ138bとを接続するので、給紙駆動軸141に連結されたメインモータ131の電気的なロック状態によって、給紙プーリ143が回転するようなことはなく、かつ、版胴1aに対しても相対的に負荷の大きいロック・固定状態となっているので、回転するようなことはなく、版胴1bのみが天地駆動モータ148Bの作動によって天地移動調整されることとなる。
[例4]においても、各版胴1a,1bの何れか一方のみの天地移動調整を行いたい場合には、それに対応する天地版胴選択キー190a,190bの何れか一方のみを押下してその版胴1aまたは1bを個別に選択することにより、天地移動調整を行えることはいうまでもない。制御装置200の機能は、上記した制御機能に限らず、次のようにしてもよい。例えば、版胴1a側に対応する黒色の1色目画像位置合わせ処理と、版胴1b側に対応する赤色の2色目画像位置合わせ処理とを行う場合であって、上記したように2つの天地版胴選択キー190a,190bを備えているときには、位置調整キー175を押すことに代えて(すなわち、位置調整キー175を押さないで)、先ず最初に、1色目画像位置合わせ処理を行うために、天地版胴選択キー190aを押下して版胴1aを選択することによって、以降の動作を上記した例と同様に各電磁クラッチの制御を含めて行ってもよい。
[例5]
図18に、[例5]にかかる実施形態を示す。この[例5]は、[例1]および[例4]と比較して、新たに2つの版胴1c,1dを付加したこと、およびこれに伴い版胴1c,1d周辺の装置、つまり図示を省略した製版装置および排版装置、中間搬送装置17b,17c、印圧装置32c,32d等が増加していることが主に相違する。各版胴1c,1dは、実施形態1の各版胴1a,1bと略同様の構成を有し、そのインキ供給手段により供給されるインキ色のみ異なるものであり、また各中間搬送装置17b,17cおよび各印圧装置32c,32dも実施形態1の各中間搬送装置17a,17bおよび各印圧装置32a,32bと同様の構成を有しているので、それらを同一符号の末尾に符号b、cまたはdを付加することで区別することとし、その説明を省略する。
[例5]にかかる複胴式孔版印刷装置において、[例1]と類似の天地移動調整手段を配設して動作させることが可能であることはいうまでもない。この天地移動調整手段は、上記実施形態1から容易に類推して実施することができるのでその説明を省略する。
[例1]のように2つの版胴1a,1bを備えた装置では、2色印刷が可能となり、[例5]のように4つの版胴1a,1b,1c,1dを備えたものでは、4色のカラーインキを用いると、4色カラー印刷が可能となる。また、4つの版胴1a,1b,1c,1dを備えたものでは、周知のフルカラー用のイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Br)のカラーインキを用いて周知のフルカラー印刷を行うことができる。さらに、[例5]のフルカラー印刷装置に、2色の特色カラーインキを供給することができる6つの版胴を備えた装置では、4色フルカラー印刷に2色の特色を重ねた印刷が可能となる。[例5]等におけるマスタ33a,33b,33c,33d等の製版は、それぞれに合った周知の色分解や色指定によって製版されるようになされていることはいうまでもない。
[例1]ないし[例5]における制御装置200の制御は、上記各制御に限定されず、位置調整キー175からの設定信号が出力されないとき、上記したように液晶表示部177にその旨の警告表示を行うと共に、各版胴における天地移動調整を禁止すべく各天地移動調整手段を制御するようにしてもよい。
[例1]ないし[例5]における制御装置200の制御は、上記各制御に限定されず、液晶表示部177あるいはブザーのような警告報知手段を具備していない場合には、位置調整キー175からの設定信号が出力されないとき、各版胴における天地移動調整を禁止すべく各天地移動調整手段を制御するようにしてもよい。
[例1]ないし[例5]において、位置調整キー175は必ずしも必要な構成ではなく、例えば、給紙方向Xの最上流側に配設された最上流位版胴1aからのみ天地移動調整を可能とすべく天地移動調整可能状態が予め設定されているような装置、換言すれば天地移動調整の順番が給紙方向Xの下流側に配設された下流位版胴からは実施不可能に構成された装置にあっては、各版胴の回転方向の位相を印刷用紙に対して相対的に変えることにより、印刷用紙に対する印刷画像位置の天地移動調整を各版胴毎に個別に行うための天地移動調整手段と、複数の版胴のうち、給紙方向の最上流側に配設された最上流位版胴からのみ天地移動調整を行うべく天地移動調整手段を制御する制御手段とを有していればよいと言える。
複胴式孔版印刷装置500は、上記したような感熱デジタル製版一体型孔版印刷装置を構成するものに限らず、例えば各版胴1a,1bが上記したようなドラムユニット100a,100bを構成していて本体フレーム501から着脱自在な構成を有するものにあっては、上記本体フレーム501と別体に配設された製版給版装置あるいは排版装置(共に図示せず)によってマスタを製版し給版したり、あるいは使用済みのマスタを各版胴1a,1bの外周面から剥離し排版したりしてもよく、各製版装置41a,41bおよび各排版装置42a,42bを上記本体フレーム501に必ずしも具備していなくてもよいといえる。また、製版するためのデータは、上記したように原稿読取装置で読み取ったデータでもあるいはコンピュータ等で作成されたデータであってもよい。
[2]印刷位置ずれを回避する手段
本発明にかかる印刷位置ずれ回避のための手段は、[1]で説明した複胴式印刷装置を用いて行うので、以下では、既に説明した図を適宜用い、また、新たに示す図を用いて説明する。
[例6]請求項1対応
図19は、これまで説明した複胴式印刷装置における版胴1aを説明用に取り出して拡大して示している。他の版胴1b、1c、1d等についても版胴1aに準ずるものとし、説明は省略する。図19において、印刷ドラム47Aのまわりにはマスタ33aが巻着されて版胴1aを構成している。版胴1aは印刷時において矢印で示すように時計回りの向きに回転駆動される。インキローラ3a、ドクタローラ4a、インキ溜りIaについては図1において説明したとおりである。マスタ33aの先端部は印刷ドラム47A上のクランパ軸6aで枢着された開閉自在なクランパ5aによって保持されている。図19ではマスタ33aが印刷ドラム47Aの周面にシワやたるみがない理想的で貼り付いた状態を示している。
図19に示したように、最終的にマスタ33aが印刷ドラム47Aの周面にシワやたるみがない状態で貼り付いたとしても、これに至る前には、図20、図21に示したように、印刷中にプレスローラ9aにより印圧がかかると、マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在する上、印刷時に印圧を加えるとマスタ33aを引っ張るために、どうしても初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の問に印刷位置ずれが発生してしまう。
図20、図21に示したように、印刷ドラム47A上での初期タワミ分566の位置は、開孔部47aが形成された開孔部領域470aでない範囲であるためにインキにより印刷ドラム47Aに貼り付いた状態になっていない。印刷枚数が増していくと、マスタ単体での初期伸び分が吸収されていくと、図19に示したように初期タワミ分566及びマスタ33aの初期伸び分が吸収され印刷ドラム47aの開孔部領域470aでのインキにより印刷ドラム569に張り付いた状態になる。
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かでも存在すると、印刷時にマスタ33aを引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間にマスタ位置ずれが発生し、その結果、印刷位置ずれを起こすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間に生ずるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係があることがわかっている。
図22に示したように、横軸に印刷枚数、縦軸に印刷枚数に応じた印刷位置ずれを無くすに必要な天地移動補正値(印刷に伴うマスタ位置ずれに起因する印刷位置ずれを無くすのに必要な補正値であって、初期タワミ分566及びマスタ初期伸び分との合計値を考慮した値)をとると、印刷の初期は印刷枚数が増すにつれて天地移動補正値(マスタ位置ずれ)も急速に増すが、その増し量は印刷枚数が増すにつれて次第に鈍化する傾向を示す。
このように、印刷枚数と天地移動補正値(マスタ位置ズレ)が一定の関係を示すことに着目して、印刷に際して予め複胴式印刷装置に印刷枚数を入力することで、印刷枚数に相応した補正値(マスタ位置ずれ)で、印刷中に、自動的に[1]で説明した天地移動調整手段212を駆動して補正を行うこととした。
その方法としては、図6に示した制御装置200のROM203のプログラムに予め図22に示したような、印刷枚数と補正値との関係を調べたデータを記憶させておく。印刷開始時にオペレータがテンキー173により天地移動補正を行う印刷枚数を入力する。その上で印刷を実行すると、印刷中、予め設定してある印刷枚数に達する毎にその印刷枚数に見合う天地移動補正手段212が駆動されて、各版胴の天地移動補正が行なわれる。
印刷枚数に応じた天地移動補正値(マスタ位置ずれ)のデータはマスタ種類、版胴の径等の要素別に、予め実験等により求めてROM203に記憶させておく。このように、印刷中に各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の天地移動補正値の調整機構により印刷位置が補正されて、複胴式印刷位置がずれることがない。本発明は、印刷中における天地移動補正であるので、前記[1]で説明した、試し刷りの過程で行う天地移動補正が不要となるわけではない。本例の実行に必要な、印刷枚数に応じた天地移動補正値(マスタ位置ずれ)のデータは、前記[1]で説明した、試し刷りの過程で行う天地移動補正を行った後の実験により得ることが好ましい。
本例による天地移動補正手順を説明する。天地移動補正は、制御手段としての制御装置200により行われる。図4に示した操作パネル170には、印刷中に天地移動補正を実行する印刷中補正モードを指令するためのモード指定キー(図示せず)が設けられている。オペレータにより、予め印刷に必要な条件である、印刷枚数、用紙サイズ、多色印刷、等が入力されているものとする。かつ、上記印刷中補正モードが選択されているものとする。
図23のフローチャートを参照して説明する。ステップP−1で、オペレータにより、天地移動を実行する補正実行枚数がテンキー173を用いて設定される。例えば、図22において総印刷枚数が1000枚、天地移動補正を実行する際の所定補正枚数(印刷枚数)を、100枚、500枚と設定したとする。
ステップP−2で印刷スタートキー171が押下され、ステップP−3で印刷が開始される。こうして印刷スタートキー171が押下された以後は最終印刷枚数の印刷が終了するまでは印刷中である。
ステップP−4で印刷枚数が所定補正枚数100枚に達すると、ステップP−5でROM203からデータが読み出され、例えば、図22における印刷枚数100枚に対応する天地移動補正値B1が決定される(ステップP−5)。ステップP−6で、各版胴について、回転中(但し、ニップ部に印刷用紙がないタイミング)に、それぞれの版胴の天地移動調整手段212が動作されて天地移動補正が実行される。この天地移動補正が実行された後、ステップP−7で残る印刷が実行され、ステップP−8で最終枚数(総印刷枚数1000枚)に達したかどうかがチェックされ、達していなければ、印刷が継続されて次の所定補正枚数500枚で上記同様の手順により天地移動補正値C1(図22)で天地移動補正が行われ、最終枚数に達したところで印刷中補正モードは終了する。
このように、予め設定してある印刷枚数に応じた天地移動補正値で、印刷中に天地移動補正が行われることにより、印刷枚数により変動する天地移動補正値で自動補正されることで従来よりも高精度に印刷位置ずれを回避し、無駄なマスタや用紙を少なくすることができる。
[例7]請求項2対応
図24は印刷ドラム47Aに巻装した製版済みマスタ33aの版胴33aに対するマスタの巻き付き方向(反時計回りの方向)でのマスタ後端部567の位置(マスタ後端位置)を検知するマスタ後端センサ600の配置を示した図である。マスタ後端センサ600はマスタ33aの後端部567を検知するためのセンサで反射型のフォトセンサなどが用いられる。
マスタ後端部567の位置について説明すると、マスタ33aは印刷ドラム47Aの開孔部領域470aの後端までの範囲では、該印刷ドラム47Aの周面にインキにより張り付いているが、開孔部領域470aの後端以降では、マスタ33aは印刷ドラムに張り付いていない。図20、図21、図24に示すように後端部567は印刷ドラム47Aの周面から離間している。
このマスタ後端部567の後端位置をマスタ後端センサ600で検知する。より詳しくは、印刷開始時に検知した各版胴のマスタ後端位置が、印刷枚数が増すにつれてマスタの初期タワミ分566及びマスタ初期伸び分との合計値分、変位するので、印刷中に、マスタ後端センサ600でマスタ後端を検知し、この検知信号を制御装置220へ送信することにより、印刷枚数に対応したマスタ後端位置の変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求めることができる。各版胴について同じようにしてそれぞれの天地移動補正値を求める。
さらに、それぞれの版胴について各天地移動調整手段212で、各版胴それぞれの上記天地移動補正値で天地移動補正を実行する。これら一連の補正手順は、制御装置200により、印刷中に実行される。マスタ後端センサの検知結果に基づいて個々の版胴について実測値に基づき印刷中に天地移動補正が行われることにより、高精度の位置ずれ防止となり、無駄なマスタや用紙を少なくすることと、作業時間の短縮、作業工数を減らすことができる。
[例8] 請求項3対応
図25は印刷ドラム47Aに巻装した製版済みマスタ33aの後端を検知するマスタ後端センサ600を版胴1aの印圧部とプレスローラ9aの接する位置(ニップ位置)に配置した図である。印刷ドラム47Aに巻装したマスタ33aの後端は図20、図21、図24に示したように印刷ドラム47Aから離反する方向に反った状態であるので、マスタ後端位置を正確に測定するためには、図25に示したようにマスタ後端センサ600を版胴1aの印圧部とプレスローラ9aの接する位置(ニップ位置)に配置する。このようにすれば、プレスローラ9aで印刷時に印圧をかける際にプレスローラ9aにより、印刷ドラム47Aから離反する方向に反った状態であるマスタ33aの後端567まで印圧をかけ引き伸ばした状態で後端検知できる。
このように印圧部と版胴の接する位置(ニップ位置)にマスタ後端センサ600を配置することによって、マスタ後端567が正確に測定できるようになる。これにより各版胴について、同様にマスタ後端をマスタ後端センサで検知し、印刷開始時に検知したマスタ後端位置と、予め定めた所定の印刷枚数に対応したマスタ後端位置との変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求めることができる。各版胴について同じようにしてそれぞれの天地移動補正値を求める。こうして印刷中に正確にマスタ後端位置のずれを測定でき、かつ、この測定値に基づき、各版胴について各天地移動調整手段212で天地移動補正を実行することができる。よって、マスタ後端位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構により印刷位置が補正され、複胴式印刷装置により印刷位置がずれることがない。
[例9] 請求項4対応
図26は印刷ドラム47Aに巻装したマスタ33aの後端を検知するマスタ後端センサ600を印刷ドラム47Aの開孔部領域470aより外側位置に配置した状態を排紙台側から見た透視図である。
図25に示したように、版胴の軸線方向から見た図の場合、マスタ後端センサ600を版胴の印圧部とプレスローラ9aの接する位置(ニップ位置)に配置すると、プレスローラ9aの位置とマスタ後端センサ600の位置とが重なってしまい、事実上このような配置ができないとも考えられ、かといってプレスローラ9aはマスタ後端まで印圧をかけなければならないので、印圧部とドラムの接する位置(ニップ位置)の前或いは後にマスタ後端センサ600を配置すれば、印刷用紙の搬送を考慮するとマスタ後端567の位置を正確に検知するのが難しくなる。
そこで本例では、図26に示したように、マスタの後端567を検知するマスタ後端センサ600を版胴1aを構成する印刷ドラム47Aの開孔部領域470aの外側位置、つまり、図21において印刷ドラム47Aの周面上であって印刷ドラムの軸線方向で開孔部領域470aの外側の円周面上に配置する。
これによってマスタ後端センサ600はニップ位置に配置可能であり、マスタ後端567をマスタ後端センサ600で正確に測定できるために、印刷開始時に検知したマスタ後端位置と、印刷枚数に対応したマスタ後端位置との変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求めることができる。各版胴について同じようにしてそれぞれの天地移動補正値を求める。この天地移動補正値を使用することにより、マスタ後端位置ずれが発生しても各版胴の天地移動調整手段により印刷位置が補正され、複胴式印刷装置における印刷位置がずれることがない。
[例10] 請求項5対応
本例では、予め補正をかける印刷枚数を設定しておき、印刷中に、前記予め設定した補正をかける印刷枚数に達する毎に、マスタ後端センサ600による後端検知を行い、天地移動調整手段を用いて補正を実行する。本例では、マスタ後端位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正により印刷位置が補正されて、複胴式印刷位置がずれることがない。また、補正をかける印刷枚数は、製版時にクリアされて次回の製版までクリアされることなく、印刷毎に加算される。追加印刷や、試し印刷時も加算することによって位置ずれの補正が正しく行える様になる。
[例11] 請求項6対応
製版済みマスタのマスタ後端部567の後端を検知するマスタ後端センサ600を用いて、印刷中に版胴が回転する毎にマスタ後端位置を検知して、そのデータを元に天地移動補正値として使用することによって転地移動調整手段により印刷位置が補正されて、複胴式印刷装置における印刷位置がずれることがない。
継続印刷からの印刷位置補正を行う場合には、継続時の印刷開始前の空回転時に各版胴のマスタ後端センサ600を用いて、印刷中にマスタ後端位置を検知して最初の1枚の印刷前に補正する。2枚目以降は版胴の回転毎にマスタ後端位置を検知して、マスタ後端位置の変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求め、天地移動調整手段で補正する。各版胴について同じようにして天地移動補正を行う。各版胴の印刷位置が補正されるので印刷位置がずれることがない。継続印刷からの印刷位置補正もできる。
[例12] 請求項7対応
製版後の印刷ドラムに巻装したマスタ後端位置を検知するために製版装置41a、41bに装着するマスターロールに予め、マスタ後端検知するためのマークを印刷してあるマスタを用いる。て、製版時にマーキング位置がマスタ後端に位置するように製版開始時にマスタセットする。
マスタセットは手動で位置合わせしても、自動でマーキング位置を検知してセットしてもよい。マスタの後端位置検知用のマークが印刷してあるマスタでは、製版長さに合わせて、マークが印刷してある。製版時はマスタを印刷ドラム47Aに巻装するがその際に、マーキング位置がマスタ後端に配置するように製版し各印刷ドラムに巻装する。製版済みのマスタにおけるマーク位置を各版胴に対応して設けたマーク位置検知センサ(図示しないが、前記マスタ後端センサ600に準じた配置)で検知できる様に当該センサ位置が定められて各版胴に配置されている。
印刷開始時に上記マーキング位置センサで検知したマスタ後端位置と、予め設定した補正印刷枚数におけるマスタ後端位置とから、必要な天地移動補正値を制御装置200求め、かつ、天地移動補正手段により、各版胴の天地移動補正を行なうことによって印刷位置ずれの補正を行う。マーク位置検知センサによるマスタのマーク位置の検知結果に基づいて印刷中に天地移動補正が行われることにより、補正が正しく行われ無駄なマスタや用紙を少なくすることと、作業時間の短縮、作業工数を減らすことができる。
[例13] 請求項8対応
製版後の印刷ドラム巻装したマスタの後端は、図24に示したマスタ後端部567のようになっているために、マスタ後端位置に印刷したマスタの後端位置検知用のマークを正確に測定するため、マーク位置検知センサは、図25で説明したマスタ後端センサ600のように印圧部と印刷ドラムの接する位置(ニップ位置)に配置する。このため印圧部と、印刷ドラムの接する位置(ニップ位置)に配置する。これにより、マスタの後端が正確に測定できるようになる。
これによりマスタ後端位置に印刷したマークを各版胴のマーク位置センサで検知するが、マスタ後端位置を正確に測定できるので、印刷開始時に検知したマスタ後端位置と、印刷枚数に対応したマスタ後端位置の変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求めることができる。各版胴について同じようにしてそれぞれの天地移動補正値を求める。これにより、各版胴のマスタマーク位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構により、各版胴の印刷位置が補正されて、印刷位置がずれることがない。
[例14] 請求項9対応
印刷ドラムに巻装したマスタ後端は図24のマスタ後端567のようになっているために、後端位置を正確に測定するためには、マーク位置センサをマーク後端センサ600で示すように印圧部と印刷ドラムの接する位置(ニップ位置)に配置すると、図25で示すようにプレスローラ9aは印刷時に印圧をかける際にマスタ後端まで印圧をかけることとなるため、印圧部と印刷ドラムの接する位置(ニップ位置)にマーク位置センサを配置することは、レイアウト的に難しく、ニップ位置の前後に配置することになってしまい、用紙搬送を考慮するとマスタ後端567を正確に長さ検知するのが難しいと考えられる。
そこで、マークを印刷してあるマスタ後端を検知するマーク位置センサを各印刷ドラム47Aの版胴開孔部の外側位置に配置する。図21において印刷ドラム47Aの周面上であって印刷ドラムの軸線方向で開孔部領域470aの外側の円周面上に配置する。
これによってマーク検知センサはニップ位置に配置可能であり、マスタ後端567をマーク検知センサで正確に測定できるために、印刷開始時に検知したマスタ後端位置と、印刷枚数に対応したマスタ後端位置との変位量を求めることができ、この変位量に基づき、天地移動補正値を求めることができる。各版胴について同じようにしてそれぞれの天地移動補正値を求める。この天地移動補正値を使用することにより、マスタ後端位置ずれが発生しても各版胴の天地移動調整手段により印刷位置が補正され、複胴式印刷装置における印刷位置がずれることがない
[例15] 請求項10対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ568を引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間にマスタ位置ずれが発生し、その結果、多色印刷における位置ずれ(色ずれ)や、両面印刷にあっては両面印刷位置ずれをおこすことになる。
そこで、本例では、印刷位置補正する印刷枚数を、複胴式印刷装置の図6に示した制御部のブロック図のROM203のプログラムに予め設定を記憶しておく。印刷時に設定された印刷枚数時に各版胴のマーク位置センサでマスタのマーク位置の長さを検知して、印刷位置補正の調整値と使用することにより、各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正されて、印刷位置がずれることがない。印刷時の印刷枚数は、製版時にクリアされて次回の製版までクリアされることなく、印刷毎に加算される。追加印刷や、試し印刷時も加算することによって位置ずれの補正が正しく行える様になる。
[例16] 請求項11対応
本例では、印刷時に各版胴毎に設けたマーク位置センサでマスタのマーク位置を版胴の回転毎に検知して、検知データを元に各版胴の印刷位置補正の調整値をして印刷位置補正に使用する。
これによって各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正されて、印刷位置がずれることがない。
継続印刷時の印刷位置補正を行う場合には、印刷開始前の空回転時にマーク位置センサでマスタのマーク位置を検知して最初の1枚の印刷前に補正する。2枚目以降は版胴の回転毎に検知して、印刷位置が補正されるので印刷位置がずれることがない。
[例17] 請求項12対応
図27は本例に係る製版部41aの構成図である。
前記した例[例12]では、マスタ後端位置を検知するために製版装置41a(製版装置41bについても同様であるので以下説明省略)に装着されるマスターロールに予め、マスタ後端検知するためのマークを印刷してあるマスタを用いて、製版時にマーク位置がマスタ後端に配置するように製版する必要があり、そのために製版開始時にマスタを所定の位置にセットするため手動または自動でセットしなければならない。またマスタには製版1版毎にマスタ後端検知するためのマークを印刷してあるが、製版ミスなどによって1版分送れなかった場合などには位置合わせのためにマスタをカットしなければならない。
そこで、本例では製版装置41aを以下のように構成した。先ず、一般的な構成部分を説明すると、マスターロール664aから繰り出されたマスタ33aがサーマルヘッド659とプラテンローラ644との間を通過する間に穿孔製版されるようになっていて、カッタユニット665によるカット後のマスタ33aは一対の送りローラ662、一対の給版ローラ663により、弛み部661を経て印刷ドラム47Aに向けて送り出されるようになっている。
次に特徴的な部分であるが、製版装置41a内に、製版終了時においてマスターカット前にマスタ後端位置にマーク印刷できる位置に、マスタ後端位置を検知するためのマーク印刷装置665を配置して、製版終了時に一対の刃物660a、660bからなるカッタユニット660によってマスターカットする前にマスタ後端位置にマークを印刷するようにしている。
製版済みのマスタ33a印刷ドラムに巻装されるが、この巻装されたマスタ33aのマーク位置を検知できる様にマーク位置検知センサ位置が配置されている。印刷開始時に各版胴のマーク位置センサで検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。
[例18] 請求項13対応
[例1]では、印刷枚数と天地移動補正値との関係を実験で求めたデータを図6に示した制御装置200のROM203のプログラムに予め設定を記憶しておき、印刷時に印刷枚数に応じた、天地移動補正値を補正に使用するが、図6に示したように印刷枚数に応じた天地移動補正値は1枚ごとのデータを持たないために段階的に補正するようになってしまう。
つまり、1枚から100枚までは補正値A1、101枚から500枚までは補正値B1、501枚から1000枚までは補正値C1、1001枚から2000枚までは補正値D1、2001枚から3000枚までは補正値E1というように枚数に幅をもってしまうために、かかる幅をもつ枚数のグループでは異なる印刷枚数でも同一の天地移動補正値になってしまう。
そこで本例では、上記のような印刷枚数に応じた天地移動補正値の調整値が枚数ごとのグループに割りついていても、枚数グループ中の個別の印刷枚数に応じた印刷位置補正の調整値を計算により求める。図24は印刷枚数に応じた印刷位置補正の調整値を計算により求める。
例えば、印刷枚数1500の場合の天地移動補正値を求める場合には、図22に示したように、「2000枚目と3000枚目の各補正値を直線で結び」、印刷枚数が1500枚の位置から立ち上げた線が「2000枚目と3000枚目の各補正値を直線で結んだ線」との交点を求め、この交点に対応する値F1が「印刷枚数1500の場合の天地移動補正値」である。かかる手順の実行は制御装置200に行わせることができる。
これによって、より細かい印刷枚数のレベルでも天地移動補正が行われるので、各版胴でのマスタ位置ずれが発生しても天地移動調整手段により印刷位置が補正されて、印刷位置ずれの問題が解消される。印刷時の印刷枚数は、製版時にクリアされて次回に製版までクリアされることなく、印刷毎に加算される。追加印刷や、試し印刷時も加算することによって位置ずれの補正が正しく行える様になる。
[例19] 請求項14対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ568を引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間にマスタ位置ずれが発生し、結果印刷位置ずれをおこすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間におけるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係がわかっている。しかし実際に印刷で使用する印刷ドラムの種類毎に印刷枚数とマスタ位置ずれの関係がちがっている。そこで印刷ドラムの種類毎に天地移動補正値を予め設定を記憶しておいて、印刷時のドラム種類によって選択するようにした。
印刷時のドラム種類はA3サイズの用紙に印刷するA3ドラム、A4サイズの用紙に印刷するA4ドラム、また、DLTドラムなど、製版サイズによって異なる種類の印刷ドラムがある。複胴式印刷装置において印刷ドラムの種類毎に天地移動補正値は異なる。そこで、異なる種類の印刷ドラム毎に、天地移動補正値を制御装置200のROM203のプログラムに予め設定を記憶しておく。
各版胴のドラム種類に応じた天地移動補正値のデータを用い、印刷開始時におけるマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正され、印刷位置がずれることがない。
[例20] 請求項15対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ33aを引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間にマスタ位置ずれが発生し、結果印刷位置ずれをおこすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間におけるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係がわかっている。しかし実際に印刷で使用するインキ色毎に印刷枚数とマスタ位置ずれの関係がちがっている。そこでインキ色毎に天地移動補正値を予め記憶しておいて印刷時のインキ色によって選択するようにした。
図示していないが版胴に使用するインキ色の識別機構はこれまで数多く発明されているのでここでは説明しない。複胴式印刷装置の制御装置200のROM203のプログラムに予めインキ色毎に印刷枚数に対応する天地移動補正値を記憶しておく。
各版胴のインキ色に応じた天地移動補正値のデータを用い、印刷開始時におけるマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正され、印刷位置がずれることがない。
[例21] 請求項16対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ33aを引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の問にマスタ位置ずれが発生し、結果印刷位置ずれをおこすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間におけるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係がわかっている。しかし実際に印刷で使用する印刷速度毎に印刷枚数とマスタ位置ずれの関係がちがっている。そこで印刷速度毎に印刷枚数に対応する天地移動補正値を記憶しておく。
各版胴の印刷速度に応じた天地移動補正値のデータを用い、印刷開始時におけるマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正され、印刷位置がずれることがない。
[例22] 請求項17対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ33aを引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の問にマスタ位置ずれが発生し、結果印刷位置ずれをおこすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間におけるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係がわかっている。しかし実際に印刷で使用する用紙種類毎に印刷枚数とマスタ位置ずれの関係がちがっている。そこで用紙種類毎に印刷枚数に対応する天地移動補正値を記憶しておく。
各版胴の用紙種類に応じた天地移動補正値のデータを用い、印刷開始時におけるマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正され、印刷位置がずれることがない。
[例23] 請求項18対応
マスタ巻装時の初期タワミ分566が僅かに存在し、印刷時にマスタ33aを引っ張るために、初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の問にマスタ位置ずれが発生し、結果印刷位置ずれをおこすことになる。この初期タワミ分とマスタ単体での初期伸び分が吸収される迄の間におけるマスタ位置ずれは実験により、印刷枚数との関係がわかっている。しかし実際に印刷で使用するインキ温度設定範囲毎に印刷枚数とマスタ位置ずれの関係がちがっている。そこでインキ温度設定範囲毎に印刷枚数に対応する天地移動補正値を記憶しておく。印刷時のインキ温度設定範囲によって天地移動補正値を選択するようにした。
インキ温度は、例えば印刷装置内の印刷ドラム内の温度をセンサで検知することによって代用する。複胴式印刷装置のため印刷ドラムが複数あるが、どの印刷ドラムを使用しても良い。また複胴式印刷装置の版胴毎にインキ温度を検知しても良い。
印刷ドラム内部のインキ温度に応じた天地移動補正値のデータを用い、印刷開始時におけるマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置と、予め定めた印刷枚数を印刷した時点でのマーク位置検知センサにより検知したマスタ後端位置とから、版胴の天地移動補正値が求められ、印刷中に自動的に天地移動補正が行なわれる。各版胴のマスタ位置ずれが発生しても各版胴の印刷位置補正の調整機構である天地移動調整手段212により印刷位置が補正され、印刷位置がずれることがない。
[例24] 請求項19対応
自動天地移動補正を実行した場合に印刷位置がうまく位置調整できない場合がある。
その場合に自動天地移動補正の有無設定をユーザが切替できるようにする。自動天地移動補正の有無設定を行うこと、つまりユーザが切り替えるようにする例としては、例えば初期設定などにおいてユーザが自分の好みに応じて設定を切替できるようにする。切替設定は、版胴ごとに設定を切りえるようにすると、ユーザの選択余地が広がり、ユーザは自分の好みに応じて設定することができるようになる。