JP4430160B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷用紙を搬送する中間搬送装置を備えた孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
用紙搬送方向に間隔を空けて複数の版胴が並設された孔版印刷装置では、用紙搬送方向の上流側に設けた版胴と用紙搬送方向の下流側に設けた版胴との間に、これら上流側版胴から下流側版胴へ向って印刷用紙を搬送する中間搬送装置が設けられている。
【0003】
中間搬送装置で搬送される印刷用紙は、上流側版胴を用いて印刷が行われる上流側印刷部を通過する際に、用紙搬送経路を挟んで上流側版胴と対向配置された印圧部材から印圧を受けることにより上流側版胴の外周面に巻装されたマスタからインキ画像を転写され、下流側版胴を用いて印刷が行われる下流側印刷部を通過する際に、用紙搬送経路を挟んで下流側版胴と対向配置された印圧部材から印圧を受けることにより下流側版胴の外周面に巻装されたマスタからインキ画像を転写されるようになっている。
【0004】
このような複数の版胴を備えた孔版印刷装置で、例えば2色の多色印刷を行うには、1色目の画像に対応した穿孔画像が製版されたマスタと、2色目の画像に対応した穿孔画像が製版されたマスタとを、上流側版胴及び下流側版胴の各外周面にそれぞれ巻装し、異なる色のインキを各版胴の内周面に供給するとともに、印刷用紙を給紙する給紙タイミングと各版胴とを同期して回転し、中間搬送装置によって印刷用紙を搬送する用紙搬送速度を、版胴が印刷時に回転する印刷回転速度と略等速として複数の色に対応する印刷を一回の給紙動作で行っている。
【0005】
同時多色印刷可能な孔版印刷装置で問題となるのは、上流側印刷部で印刷用紙に転移されたインキが下流側版胴のマスタに付着して、その付着したインキが次に搬送されてくる印刷用紙への印刷の際に転移する、所謂画像ダブリ印刷等が発生することにある。この現象は、版胴の印刷回転速度や中間搬送装置の用紙搬送速度の影響でそのダブリ量が変化するという特徴を持っている。
【0006】
また、孔版印刷の場合、印圧部材で印刷用紙を版胴に押圧してインキ画像を印刷用紙に転写しているので、インキ画像の大きさや印刷用紙のサイズによって画像領域の大きさが異なり、印刷用紙に転移するインキ量に変化がある。このため、インキの粘性によって印刷時に版胴に付着した印刷用紙の版胴から剥がれる時期が転移するインキ量に応じてバラツキ、中間搬送装置による印刷用紙の搬送開始位置がずれたり、印刷用紙が弛んでしまい、下流側印刷部への送り込みタイミングがずれてしまう。この送り込みタイミングのずれは、下流側版胴から印刷用紙への印刷タイミングのバラツキとなり、印刷画像ずれや画像ダブリ印刷等の問題を発生させてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、中間搬送装置の用紙搬送速度を版胴の印刷回転速度よりも速くして、用紙搬送速度と印刷回転速度とに速度差を意図的に発生させ、上流側印刷部を通過した印刷用紙を、この速度差を利用して中間搬送装置で引っ張りながら搬送することで、印刷用紙の弛みや中間搬送装置による印刷用紙の搬送開始位置ずれを抑制して、印刷画像ずれや画像ダブリ印刷等の発生を抑えた発明が本願出願人から提案されている。
【0008】
中間搬送装置の用紙搬送速度を版胴の印刷回転速度よりも速める場合、印刷用紙の長さが上流側版胴と下流側版胴との間隔よりも長いと、上流側印刷部を通過した印刷用紙は、その先端が下流側印刷部に到達しても、その後端が上流側印刷部に位置している。すなわち、用紙後端は、上流側版胴と印圧部材とによって挟まれた状態にあるので、下流側印刷部に用紙先端が到達した後に、中間搬送装置の用紙搬送速度が版胴の印刷回転速度より高速であっても印刷用紙は上流側版胴によって引っ張られた状態となる。このため、上流側版胴と下流側版胴との間隔よりも長い印刷用紙は、中間搬送装置上で滑ることになり、下流側版胴の手前で弛むことはなく、用紙搬送速度を切り替えなくて良い。
【0009】
しかしながら、印刷用紙の長さが上流側版胴と下流側版胴との間隔よりも短い場合、用紙後端が上流側印刷部を通過しても用紙先端は下流側印刷部に到達していないため、用紙搬送速度が高速のままであると、印刷用紙が下流側版胴に向って速く搬送されてしまい、下流側版胴から印刷用紙への印刷タイミングのバラツキとなって画像ずれが起こったり、下流側版胴の印刷回転速度と用紙搬送速度の速度差によって、印刷用紙が下流側版胴の手前で弛んでしまい、この弛んだ印刷用紙が下流側版胴に接触して画像汚れを招いてしまうおそれがある。
本発明は、このような問題点を鑑み、画像ダブリ印刷や印刷画像ずれや印刷用紙の汚れを少なくできる孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、用紙搬送方向の上流側に位置する版胴と用紙搬送方向の下流側に位置する版胴との間に設けられ、上流側版胴を用いた印刷が行われる上流側印刷部から下流側版胴を用いた印刷が行われる下流側印刷部へと印刷用紙を搬送する中間搬送装置を備えた孔版印刷装置において、上流側印刷部を通過する印刷用紙が上流側版胴と下流側版胴の間隔よりも短い時に、この印刷用紙の通過状態に応じて中間搬送装置の用紙搬送速度を切り替える切替手段を有することを特徴としている。中間搬送装置の用紙搬送速度が、上流側印刷部を通過する上流側版胴と下流側版胴の間隔よりも短い印刷用紙の通過状態に応じて制御されるので、上流側印刷部を通過した印刷用紙の中間搬送装置における搬送開始位置のバラツキが調整される。
【0011】
本発明において、印刷用紙が上流側印刷部を通過中のときは用紙搬送速度を上流側版胴の印刷回転速度よりも高速とし、印刷用紙が上流側印刷部を通過した後は用紙搬送速度を下流側版胴の印刷回転速度と略等速とするように、切替手段が切り替え制御を行うことを特徴としている。このため、上流側版胴と下流側版胴の間隔よりも短い印刷用紙が上流側印刷部を通過中の時は、中間搬送装置によって用紙先端が引っ張られて印刷用紙の搬送遅れや弛みがなくなる。印刷用紙が上流側印刷部を通過し終えると、用紙搬送速度が下流側版胴の印刷回転速度と略等速となるように減速されるので、短い印刷用紙が下流側印刷部に速く到達しなくなり下流側印刷部への搬送タイミングのずれが抑えられる。また、下流側版胴の印刷回転速度と中間搬送装置の用紙搬送速度との速度差がなくなるので、この速度差によって下流側版胴の手前で発生する印刷用紙の弛みが抑えられる。
【0013】
本発明は、印刷用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知手段と、上流側版胴または下流側版胴の回転角度を検知する角度検知手段とを有し、切替手段が、用紙サイズ検知手段で検知された用紙サイズと角度検知手段で検知された角度情報とに基づき印刷用紙の通過状態を判断して用紙搬送速度を切り替えることを特徴としている。このため、上流側印刷部で印刷された印刷用紙の下流側印刷部への送り込みタイミングが適切に調整されて、画像ダブリ印刷や印刷画像ずれが極めて少なくなるとともに、下流側版胴手前での印刷用紙の弛み発生が抑えられる。
【0014】
本発明は、印刷用紙の後端が上流側印刷部を通過する用紙サイズに応じた後端通過時間が設定された通過時間設定手段と、印刷用紙の用紙サイズを検知する用紙サイズ検知手段とを有し、切替手段が、用紙サイズ検知手段で検知された用紙サイズに基づき、通過時間設定手段から用紙サイズに応じた後端通過時間を選択するとともに、この選択された後端通過時間の経過後に用紙搬送速度を切り替えることを特徴としている。このため、印刷用紙の後端通過時間が、用紙サイズに基づき印刷開始前に設定されるため、印刷中における印刷用紙の通過状態を検知しなくて済み、搬送中の印刷用紙を検知する用紙検知手段が不要となって部品点数の低減を図れるとともに、用紙検知手段の不具合による用紙搬送速度の切り替え不良が低減される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる孔版印刷装置は、図1に示すように、用紙搬送方向Xの上流側に設けられ、製版済みのマスタ33aがその外周面(以下「版胴外周面1Aa」と記す)に巻装される版胴(以下、「上流側版胴1A」と記す)と、用紙搬送方向Xの下流側に設けられ、製版済みのマスタ33bがその外周面(以下「版胴外周面1Ba」と記す)に巻装される版胴(以下、「下流側版胴1B」と記す)とを、用紙搬送方向Xの上流側から下流側に向かって並設した所謂複胴式のもので、同時多色印刷を可能とし、さらに、上流側版胴1Aと下流側版胴1Bとの間に配設する中間搬送装置17の用紙搬送速度Vを切替可能としたものである。
【0016】
孔版印刷装置は、上流側版胴1A、下流側版胴1B、中間搬送装置17とともに、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bにそれぞれ対向配置された印圧部材としてのプレスローラ9a,9b、印刷用紙22を給紙する給紙部20、印刷を終えた印刷用紙22を排紙部としての排紙トレイ37に排紙する排紙装置35、製版給版部41A,41B、排版部42A,42Bを備えた周知の感熱デジタル製版一体型の孔版印刷装置である。
【0017】
製版給版部41A,41Bは、図示しないロール状に巻かれた未製版のマスタを、サーマルヘッドとプラテンーラとで挟持して、画像信号に応じた画像を製版しながら上流側版胴1A及び下流側版胴1Bに向ってそれぞれ搬送する周知の構成である。本形態において、製版給版部41Aは1色目の画像信号に応じた製版画像を形成し、製版給版部41Bは2色目の画像信号に応じた製版画像を形成するようになっている。製版に用いる画像信号としては、孔版印刷装置が原稿読取部を備えている場合には、原稿読取部にセットされた原稿を読み取った画像信号を用い、孔版印刷装置の外部から、例えばパソコン等の情報処理装置から入力される印刷すべき画像に対応する画像信号を用いても良く、あるいは、両者を適宜使い分けて用いるようにしても良い。
【0018】
排版部42A,42Bは、排版剥離ローラ対、排版搬送ベルト、排版コロ、排版ボックス、圧縮板等を備えた図示しない周知の構成からなり、版胴外周面1Aa,1Ba上の使用済みのマスタ33a,33bをそれぞれ剥離して廃棄する周知のものである。
【0019】
製版給版部41A,41Bによる製版給版動作及び排版部42A,42Bによる排版動作は、それぞれ図2に示す製版スタートキー72が操作されることで実行されるようになっている。
【0020】
上流側版胴1A及び下流側版胴1Bは、周知の多孔性円筒状をなし、インキ供給軸を兼ねたドラム軸2a,2bの周りに回動自在に支持されている。上流側版胴1A及び下流側版胴1Bは、図示しない動力伝達機構を介して、図2に示す駆動手段としての版胴駆動モータ63と連結され、印刷動作が始まると、それぞれ印刷時の印刷回転速度V1,V2で図1において時計周り方向に一定速度で回転するようになっている。
【0021】
版胴外周面1Aa,1Baの一母線上には、マスタ33a,33bの先端部をクランプする開閉自在なクランパ5a,5bがそれぞれ設けられている。クランパ5a,5bは、クランパ軸6a,6bで上流側版胴1A及び下流側版胴1B上にそれぞれ枢着されていて、図示しない開閉手段により所定位置で所定の時期に開閉されるようになっている。所定の時期とは、排版時や製版時においてマスタ33a,33bの先端部を開放あるいは挟持する時期のことである。
【0022】
上流側版胴1A及び下流側版胴1Bの内部には、版胴内周面1Ab,1Bbにインキを供給するインキ供給手段45A,45Bがそれぞれ配設されている。インキ供給手段45A,45Bは、ドラム軸2a,2bと、版胴内周面1Ab,1Bbに摺接してインキを供給するインキローラ3a,3bと、インキローラ3a,3bに対向配置されたドクタローラ4a,4bと、インキローラ3aとドクタローラ4a及びインキローラ3bとドクタローラ4bの間にそれぞれ形成されるくさび状のインキ溜りIa、Ibとを備え、ドラム軸2a,2bからインキがインキ溜りIa、Ibに供給される周知の構成となっている。本形態において、インキ溜りIaには、1色目のインキとして例えばマゼンタ色のインキが供給され、インキ溜りIbには、2色目のインキとして例えばブラック色のインキが供給されるようになっている。
【0023】
上流側版胴1Aの下方には、給紙部20から給送されてくる印刷用紙22を上流側版胴1Aの製版済みのマスタ33aに押し付ける印圧部材としてのプレスローラ9aが上流側版胴1Aと対向配置されている。プレスローラ9aと上流側版胴1Aとの間には、上流側版胴1Aを用いた印刷が行われる上流側印刷部E1が構成されている。下流側版胴1Bの下方には、上流側印刷部E1を通過した印刷用紙22を下流側版胴1Bの製版済みのマスタ33bに押し付ける印圧部材としてのプレスローラ9bが下流側版胴1Bと対向配置されている。プレスローラ9bと下流側版胴1Bとの間には、下流側版胴1Bを用いた印刷が行われる下流側印刷部E2が構成されている。
【0024】
給紙部20は、印刷用紙22を積載する給紙トレイ21と、この給紙トレイ21の上方に配置され、印刷用紙22を1枚ずつに分離して給紙する呼び出しコロ23と分離コロ対24,25及び分離板26とを備えており、呼び出しコロ23が時計周り方向に回転することで給紙トレイ21の最上位の印刷用紙22を送り出し、分離コロ対24,25及び分離板26の協働作用により1枚に分離して用紙搬送方向Xに給送する周知の構成である。給紙トレイ21には、印刷用紙22のサイズを検知する用紙サイズ検知手段として複数の用紙サイズ検知センサ46が設けられている。
【0025】
分離コロ対24,25と上流側印刷部E1との間には、給紙部20から給紙される印刷用紙22の、上流側印刷部E1に対する進入タイミングを調整するレジストローラ対29,30と、上下のガイド板27,28とが配置されている。給送された印刷用紙22は、ガイド板27,28の間に形成される用紙搬送経路を通ってレジストローラ対29,30に搬送され、このレジストローラ対29,30によって上流側版胴1A上の製版画像位置と印刷用紙22の位置とが上流側印刷部E1で一致するタイミングで給紙されるようになっている。
【0026】
プレスローラ9a,9bは、軸10a,10bで揺動自在に設けられたアーム部材11a,11bの一方の揺動端にそれぞれ回転自在に支持されていて、版胴外周面1Aa、1Baに接離自在に設けられている。アーム部材11a,11bには、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bに対してプレスローラ9a,9bによる印圧を与える引張バネ13a,13bが係止されている。アーム部材11a,11bの他方の揺動端は、引張バネ13a,13bの付勢力によってプレスローラカム12a,12bの輪郭周面にそれぞれ圧接している。プレスローラカム12a,12bは、図2に示す印圧系駆動部86によって給紙部20から給紙される印刷用紙22の給紙タイミングと、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bの回転に合せて同期して回転されるようになっており、クランパ5a,5bが上流側印刷部E1及び下流側印刷部E2を通過する時と印刷用紙22が給紙されない時に、プレスローラ9a,9bを上流側版胴1A及び下流側版胴1Bから離間するカムプロフィールとなっている。このため、上流側印刷部E1及び下流側印刷部E2では、版胴外周面1Aa,1Baに対してプレスローラ9a,9bが印刷用紙22を押圧することで印刷用紙22に印刷が行われる。
【0027】
上流側印刷部E1及び下流側印刷部E2の近傍には、上流側印刷部E1及び下流側印刷部E2で印刷された印刷用紙22を上流側版胴1A及び下流側版胴1Bからそれぞれ分離・剥離する周知のエアーナイフ7a,7bが配置されている。
【0028】
排紙装置35は、下流側印刷部E2と、用紙搬送方向Xの最下流に配置された排紙トレイ37との間に配置されている。排紙装置35は、一対のローラ38,39間に巻き掛けられた搬送ベルト40と、搬送ベルト40に吸着作用を与えるための吸着ファン36とを備えており、図2に示す排紙系駆動部87及びファン駆動部88を駆動制御することで搬送ベルト40を図1において反時計回り方向に回転するとともに、吸着ファン36を回転させて吸引力を発生させ、下流側印刷部E2を通過した印刷用紙22を搬送ベルト40に密着させて排紙トレイ37に向かって搬送するようになっている。搬送ベルト40は、上流側版胴1Aの印刷回転速度V1と略同じ搬送速度で上流側版胴1Aと同期して駆動されるようになっている。
【0029】
上流側版胴1Aと下流側版胴1Bとの間には、上流側印刷部E1から下流側印刷部E2へと印刷用紙22を搬送する中間搬送装置17が配置されている。中間搬送装置17は、上流側印刷部E1近傍に配置された従動ローラ14と下流側印刷部E2近傍に配置された駆動ローラ15とに、多孔性の搬送ベルト16が巻き掛けられていて、搬送ベルト16の下方には、吸引用のファン18が配置されている。中間搬送装置17は、図2に示す切替手段としての制御手段34の制御下におかれていて、この制御手段34を用いて上流側印刷部E1を通過する印刷用紙22の通過状態に応じた搬送ベルト16による印刷用紙22の用紙搬送速度Vが制御されるとともに、図2に示すファン駆動部88によってファン18を回転させて吸引力を発生させて、上流側印刷部E1を通過した印刷用紙22を搬送ベルト16に密着させて下流側印刷部E2に向かって搬送するようになっている。
【0030】
本発明にかかる孔版印刷装置は、図2に示す操作パネル70を備えている。操作パネル70には、印刷枚数を設定するためのテンキー71、製版,給版,版付けに至るまでの各動作を起動するための製版スタートキー72、印刷工程に至る各動作の起動を設定するための印刷スタートキー73、用紙サイズ設定手段となる用紙サイズ設定キー47、装置の動作状態や数値データを表示するデジタル表示装置74が備えられている。
【0031】
図2に示す切替手段としての制御手段34は、中央演算処理装置(以下「CPU」と記す)80、読み出し専用記憶装置(以下「ROM」と記す)81、読み書き可能な記憶装置(以下「RAM」と記す)82等を備え、それらが信号バスによって接続された周知のマイクロコンピュータからその主要部が構成されている。制御手段34には、操作パネル70の各キー、製版給版部41A,41Bを動作させる製版給版系駆動部83、排版部42A,42Bを動作させる排版系駆動部84、給紙部20を動作させる給紙系駆動部85、プレスローラ9a,9bを接離動作させる印圧系駆動部86、排紙装置35を動作させる排紙系駆動部87、ファン18を回転するファン駆動部88、用紙サイズ検知センサ46、搬送中の印刷用紙22を検知する用紙検知手段としての用紙通過センサ56、上流側版胴1Aの印刷回転速度V1を検知する版胴速度検知手段としての版胴速度検知センサ48、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを検知する搬送速度検知手段としてのベルト速度検知センサ49がそれぞれ接続されており、これらとの間で指令信号及びオン/オフ信号やデータ信号を送受信して装置動作全体のシステムを制御している。
【0032】
版胴駆動モータ63は、図示しない動力伝達手段を介して上流側版胴1A,1Bと連結していて、上流側版胴1Aと下流側版胴1Bとを同一回転速度で回転するようになっている。版胴速度検知センサ48は、版胴駆動モータ63の出力軸に設けられた周知のロータリエンコーダであり、上流側版胴1Aの印刷回転速度V1を検知し、その検知結果がパルス検知装置92を介して制御手段34に入力されるようになっている。
【0033】
ベルト速度検知センサ49は、図3に示すように、搬送ベルト16が巻き掛けられた駆動ローラ15を駆動する搬送駆動モータ57の出力軸57aに固設されたスリットを有する円板49aと、円板49aを挾んで設けられた光源及び受光素子を備えたフォトインタラプタ49bとを有するロータリエンコーダである。
【0034】
用紙通過センサ56は、従動ローラ14近傍に配置された透過型の光センサであって、印刷用紙22を検知しているときはオン状態にあり、印刷用紙22が通過して検知されなくなるとオフ状態となる。
【0035】
搬送駆動モータ57の出力軸57aには、駆動歯車59aが固定されている。駆動歯車59aと噛合する大径歯車59bは、プーリ61aが装着された支持軸60に固定されている。プーリ61aは、駆動ローラ15の軸150に固定されたプーリ61bと無端ベルト62を介して連結されている。このような伝達機構により搬送駆動モータ57の回転出力が軸150に伝達されている。搬送駆動モータ57には、ステッピングモータが用いられ、制御手段34からの制御信号に応じて同モータへの周波数を可変することでモータ回転数を変化させて搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを変更するようになっている。
【0036】
搬送駆動モータ57及び版胴駆動モータ63は、それぞれ駆動回路89,90を介して制御手段34と接続していて、その駆動状態、すなわち、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vと上流側版胴1Aの印刷回転速度V1をベルト速度検知センサ49及び版胴速度検知センサ48でそれぞれ検知し、その検知情報をパルス検知装置91,92を介して制御手段34に入力している。制御手段34では、各センサ類からの入力情報やCPU80での演算結果をRAM82に一時的に記憶させたり、適時その情報を読み出すようになっている。
【0037】
搬送ベルト16の用紙搬送速度Vは、上流側版胴1Aの印刷回転速度V1や下流側版胴1Bの印刷回転速度V2に対して約1.0〜1.2倍の範囲で速度制御されるようになっている。また、本形態では、上流側版胴1Aと下流側版胴1Bは同一の駆動手段となる版胴駆動モータ63で回転されるため、印刷回転速度V1,V2は、等速度となっており、版胴速度検知センサ48で印刷回転速度V1を検知することで、印刷回転速度V2を検知することができる。
【0038】
ROM81には、前記装置及び各駆動部の起動、停止及びタイミング等の動作に関するプログラムや必要なデータが予め記憶されているとともに、図4に示す中間搬送装置の速度制御プログラムが記憶されている。データ中には、図1に示す上流側版胴1Aと下流側版胴1Bとの間隔となるドラム軸2a,2b間距離(以下、「版胴間距離L」と記す)や図示しない印刷用紙22のサイズデータ等がある。
【0039】
本形態における中間搬送装置17の速度制御と、その時の印刷用紙22の状態を説明するが、既に排版、製版、給版等の各工程は終了しているものとして、印刷動作時における速度制御を中心に説明する。
【0040】
図4に示す中間搬送装置17の速度制御プログラムでは、ステップA1において、用紙サイズ検知センサ46や用紙サイズ設定キー47から印刷用紙22の用紙サイズ情報を取り込み、この情報から印刷用紙22の用紙サイズや向きが認識されてステップA2に進む。ステップA2では、印刷スタートキー73のオン/オフが判断され、印刷スタートキー73が押されてオン状態であるとステップA3に進む。ステップA3では、印刷用紙22の用紙搬送方向Xの長さを版胴間距離Lと比較して、印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも短いとステップA4に進み、印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも長いとステップA5に進む。
【0041】
ステップA4では、搬送駆動モータ57への周波数が可変されて出力制御(回転制御)がなされ、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度速くなるまで増速制御される。そして、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度(所定速度)速くなると、その状態が保持される。
【0042】
ここで印刷用紙22の状態について説明する。下流側印刷部E2に対する印刷用紙22の送り込みタイミングのずれは、主に上流側印刷部E1において印刷用紙22に印刷される印刷画像の大きさやサイズによる印刷用紙22へ付着するインキ量の増減によるものである。インキ量と搬送ベルト16の用紙搬送速度V及び上流側版胴1Aの印刷回転速度V1とのバランスが取れていれば、図5に示すように、上流側印刷部E1における印刷用紙22は、プレスローラ9aを通過した時点でエアーナイフ7aから噴射される空気の作用により上流側版胴1Aから剥がされ、搬送ベルト16に直ぐに吸着されて下流側印刷部E2に向かって搬送される。しかし、このバランスが崩れると、図6に示すように、上流側印刷部E1を通過しても印刷用紙22が上流側版胴1Aから直ぐに剥がされず、エアーナイフ7aの先端によって剥がされることになり、図7に実線で示すように印刷用紙22の先端が搬送ベルト16の上方で弛んでしまう。すると、印刷用紙22の、搬送ベルト16への着地点が、図7に破線で示すバランスの良い状態の時と異なってしまう。搬送ベルト16は、この時既に用紙搬送方向Xに駆動されているので、この着地点の違いは、下流側印刷部E2に対する送り込みタイミングが間隔Wだけ遅くなることになる。図7において符号22aは遅れを生じた印刷用紙22の先端を示し、符号22bは正常なタイミングで搬送される印刷用紙22の先端を示す。
【0043】
したがって、本形態のように、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1より1.2倍程度速くなるように制御すると、上流側印刷部E1で1色目のインク画像が印刷される画像領域が大きく上流側版胴1Aから剥がれるのが遅れた印刷用紙22の先端22aが下流側印刷部E2に向かって速く送られる。この時、印刷用紙22の後端は、今だ上流側印刷部E1においてプレスローラ9aと上流側版胴1Aとに挟持されて印刷状態にあるので、図8に示すように、その先端側が弛んだ印刷用紙22が引き伸ばされて搬送されることになる。このため、印刷用紙22先端の搬送位置のバラツキがなくなり、下流側印刷部E2への送り込みタイミングを補正でき、画像ダブリ印刷を解消することができる。
【0044】
このような用紙搬送速度Vの増速制御は、ステップA6で印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1で用紙通過センサ56により検知されるまで行われる。そして、図9に示すように印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過して、ステップA6において用紙通過センサ56が印刷用紙22の用紙後端通過を検知すると、ステップA7に進み、搬送駆動モータ57への周波数が再度可変されて出力制御(回転制御)がなされ、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となるまで減速制御される。そして、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となると、その状態が保持されリターンする。
【0045】
図9に示すように、印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも短い場合、印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過しても印刷用紙22の先端は下流側印刷部E2に到達していないため、用紙搬送速度Vが高速のままであると、印刷用紙22が下流側印刷部E2に向って速く搬送されてしまい、下流側版胴1Bからの印刷用紙22への印刷タイミングのバラツキとなって画像ずれが起こる。しかし、本形態では印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過すると、直ちに用紙搬送速度Vに対する減速制御が行われるので、上流側印刷部E1を通過した印刷用紙22が下流側印刷部E2に対して速く搬送されるのが抑えられ、画像ダブリ印刷や画像ずれを低減することができる。また、減速制御された用紙搬送速度Vは、下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度とされるので、用紙搬送速度Vと印刷回転速度V2との速度差によって発生していた、印刷用紙22の下流側版胴1Bの手前での弛みがなくなり、この弛んだ印刷用紙22が下流側版胴1Bに接触することにより発生していた画像汚れを低減することができる。
【0046】
下流側印刷部E2に搬送された印刷用紙22は、2色目のインキ画像が印刷され、エアーナイフ7bの作用により下流側版胴1Bから剥がされ、図9に破線で示すように、排紙装置35の搬送ベルト40に直ぐに吸着されて図1に示す排紙トレイ37に排紙される。
【0047】
一方、用紙搬送方向Xに対する印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも大きい場合には、ステップA5において、ステップA4と同様に、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度となるまで、搬送駆動モータ57の出力制御(回転制御)が行われ、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度(所定速度)速くなるとその状態が保持されて印刷が所定枚数行われる。
【0048】
版胴間距離Lよりも長い印刷用紙22は、その先端が下流側印刷部E2に到達しても、その後端は上流側印刷部E1に位置して上流側版胴1Aとプレスローラ9aとによって挟まれた状態にあるため、下流側印刷部E2に印刷用紙22の先端が到達した後において、用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1より高速であっても印刷用紙22は上流側版胴1Aによって引っ張られた状態となる。よって、版胴間距離Lよりも長い印刷用紙22は、搬送ベルト16上で滑ることになり、下流側版胴1Bの手前で弛むことはなく、用紙搬送速度Vを高速から低速に切り替えなくて良い。
【0049】
このように、印刷用紙22が版胴間距離Lよりも短く、上流側印刷部E1を通過中のときは用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも高速とし、この印刷用紙22が上流側印刷部E1を通過した後は用紙搬送速度Vを下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と略等速とする切り替え制御を行うことで、印刷用紙22の搬送遅れや、搬送ベルト16上や下流側印刷部E2手前での弛みの発生を抑制することができる。
【0050】
また、ステップA3における印刷用紙22のサイズは、用紙サイズ検知センサ46からの検知情報により制御手段34で自動判別されるので、用紙サイズを一々設定しなくて自動で用紙搬送速度Vの速度切り替えを行え操作性が良い。加えて、用紙サイズ設定キー47を備えているので、用紙サイズ検知センサ46が故障した場合、手動で印刷用紙22のサイズを設定することができ、装置の信頼性を高められる。
【0051】
図10は、中間搬送装置17の速度制御プログラムの別な形態を示す。この速度制御プログラムは、上流側版胴1Aの回転角度を検知して、用紙サイズ検知センサ46で検知された用紙サイズと上記検知された角度情報とに基づき印刷用紙22の通過状態を判断して用紙搬送速度Vを切り替えるもので、図4の中間搬送装置17の速度制御プログラムに替えて図2に示すROM81に記憶されている。上流側版胴1Aの回転角度を検知する角度検知手段としては、版胴速度検知センサ48を用いて上流側版胴1Aの回転角度を検知する。
【0052】
以下、図10に示す中間搬送装置17の速度制御プログラムによる用紙搬送速度Vの速度切り替え制御について説明するが、図4に示すプログラムと同一内容のステップについては詳細な説明を省略する。
【0053】
図10に示す中間搬送装置17の速度制御プログラムでは、ステップB1において用紙サイズ検知センサ46や用紙サイズ設定キー47から印刷用紙22の用紙サイズ情報を取り込み、ステップB2で印刷スタートキー73が押されてオン状態であるとステップB3に進む。ステップB3では、印刷用紙22の用紙搬送方向Xの長さを版胴間距離Lと比較して、印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも短いとステップB4に進む。ステップB4では、印刷スタートキー73がオンしてからの上流側版胴1Aの回転角度を版胴速度検知センサ48から取り込み、ステップB5において搬送駆動モータ57への周波数を可変して出力制御(回転制御)を行い、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度速くなるまで増速制御し、用紙搬送速度Vが1.2倍程度の速度(所定速度)となると、この状態がステップB7で印刷用紙22の後端通過時間相当の、上流側版胴1Aの回転角度となるまで継続される。
【0054】
そして、ステップB7においては、版胴速度検知センサ48で検知される版胴回転角度が、印刷用紙22の後端通過時間相当となると、印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過したものとしてステップB8に進み、搬送駆動モータ57への周波数が再度可変されて出力制御(回転制御)がなされ、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となるまで減速制御される。そして、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となると、その状態が保持されリターンする。
【0055】
一方、ステップB3で印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも長いとステップB6に進み、ステップB5と同様に、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度となるまで、搬送駆動モータ57の出力制御(回転制御)が行われ、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度(所定速度)速くなるとその状態が保持されてリターンする。
【0056】
このように、印刷用紙22が版胴間距離Lよりも短く、上流側印刷部E1を通過中のときは用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも高速とし、この印刷用紙22が上流側印刷部E1を通過した後は用紙搬送速度Vを下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と略等速とする切り替え制御を行うことで、印刷用紙22の搬送遅れや、搬送ベルト16上や下流側印刷部E2手前での弛みの発生を抑制することができる。また、本形態では、版胴速度検知センサ48から入力される版胴回転角度を用いて、上流側印刷部E1を印刷用紙22の後端が通過する通過時間、すなわち通過状態を判断するため、用紙通過センサ56が不要となり、部品点数を低減できて低コスト化を図れるとともに、用紙通過センサ56の不具合による用紙搬送速度Vの切り替え不良が低減される。
【0057】
図11は、中間搬送装置17の速度制御プログラムの別な形態を示す。この速度制御プログラムは、印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過する後端通過時間として、用紙サイズに応じて設定された通過時間設定手段から用紙サイズに基づき後端通過時間を選択するとともに、この選択された後端通過時間の経過後に用紙搬送速度Vを切り替えるもので、図4の中間搬送装置17の速度制御プログラムに替えて図2に示すROM81に記憶されている。通過時間設定手段は、用紙サイズに応じた最適な印刷用紙22の後端通過時間を予め実験などにより求めて記憶したマップであり、図2に示すROM81に記憶されている。
【0058】
以下、図11に示す中間搬送装置17の速度制御プログラムによる用紙搬送速度Vの速度切り替え制御について説明するが、図4に示す速度制御プログラムと同一内容のステップについては詳細な説明を省略する。
【0059】
図11に示す中間搬送装置17の速度制御プログラムでは、ステップC1において用紙サイズ検知センサ46や用紙サイズ設定キー47から印刷用紙22の用紙サイズ情報を取り込み、ステップC2で印刷スタートキー73が押されてオン状態であるとステップC3に進む。ステップC3では、印刷用紙22の用紙搬送方向Xの長さを版胴間距離Lと比較して、印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも短いとステップC4に進む。ステップC4では、図示しないマップから用紙サイズに応じた後端通過時間を選択しステップC5に進む。ステップC4において選択される後端通過時間とは、印刷スタートキー73がオンしてから上流側印刷部E1を印刷用紙22の後端が通過し終える時間である。
【0060】
ステップC5において、搬送駆動モータ57への周波数を可変して出力制御(回転制御)を行い、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度速くなるまで増速制御し、用紙搬送速度Vが1.2倍程度の速度となると、この状態がステップC7で選択された後端通過時間となるまで継続される。そして、ステップC7においては、図示しないタイマーで後端通過時間を計測し、選択された後端通過時間を経過すると、印刷用紙22の後端が上流側印刷部E1を通過したものとして、ステップC8に進み、搬送駆動モータ57への周波数が再度可変されて出力制御(回転制御)がなされ、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となるまで減速制御される。そして、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と等速度となると、その状態が保持されリターンする。
【0061】
一方、ステップC3で印刷用紙22の長さが版胴間距離Lよりも長いとステップC6に進み、ステップC5と同様に、搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度となるまで、搬送駆動モータ57の出力制御(回転制御)が行われ、ベルト速度検知センサ49からの信号で搬送ベルト16の用紙搬送速度Vが上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも1.2倍程度(所定速度)速くなるとその状態が保持されてリターンする。
【0062】
このように、印刷用紙22が版胴間距離Lよりも短く、上流側印刷部E1を通過中のときは用紙搬送速度Vを上流側版胴1Aの印刷回転速度V1よりも高速とし、この印刷用紙22が上流側印刷部E1を通過した後は用紙搬送速度Vを下流側版胴1Bの印刷回転速度V2と略等速とする切り替え制御を行うことで、印刷用紙22の搬送遅れや、搬送ベルト16上や下流側印刷部E2手前での弛みの発生を抑制することができる。また、本形態では、用紙サイズに応じた後端通過時間を予めマップとして記憶しておくことで、上流側印刷部E1を印刷用紙22の後端が通過する通過時間、すなわち通過状態を判断するため、用紙通過センサ56が不要となり、部品点数を低減でき、低コスト化を図れるとともに、用紙通過センサ56の不具合による用紙搬送速度Vの切り替え不良が低減される。
【0063】
上述した各形態では、用紙搬送速度Vを切り替えるのに搬送駆動モータ57へ供給する周波数を可変しているが、用紙搬送速度Vを切り替える手段としては、図3に示す搬送駆動モータ57と駆動ローラ15の軸150との間に、歯車列やプーリ群からなる変速手段を設け、印刷用紙22の用紙サイズに応じてそれら変速手段を駆動して変速比を変更して搬送ベルト16の用紙搬送速度Vを切り替えるようにしても良い。また、各形態においては、ドラム軸2a,2bの中心間距離を版胴間距離Lとして説明したが、上流側印刷部E1と下流側印刷部E2の中心間距離であっても良い。
【0064】
各形態においては、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bを共通の版胴駆動モータ63で回転させているが、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bをそれぞれ個別の版胴駆動モータを用いて回転するようにしても良い。この場合には、版胴速度検知センサ48を2つ設けて上流側版胴1A及び下流側版胴1Bの印刷回転速度V1,V2や、回転角度を検知すれば良い。
【0065】
上述した各形態では、多色印刷可能な孔版印刷装置として、上流側版胴1A及び下流側版胴1Bの2つの版胴を備えたものを例示したが、版胴の数は2つに限定されるものではなく、4つの版胴を用紙搬送方向Xの上流側から下流側に向かって並設し、各版胴に対して上流側から順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインキを供給するようにして、フルカラー印刷を可能な孔版印刷装置として構成してもよい。この場合においても、中間搬送装置21を隣接する版胴間にそれぞれ配置し、各中間搬送装置21の用紙搬送速度Vを、各中間搬送装置よりも上流側に位置する版胴によって印刷が行われる印刷部を印刷用紙22が通過しているときは、用紙搬送速度Vを印刷回転速度よりも速くし、各上流側印刷部を印刷用紙22の後端が通過すると、用紙搬送速度Vを各中間搬送装置よりも下流側に位置する版胴の印刷回転速度と略等速となるように速度切り替え制御を行うことで、上述の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
上述の各形態は、感熱デジタル製版一体型の孔版印刷装置を例に説明したが、本発明が適用される孔版印刷装置は、このような構成のものに限らず、例えば製版給版部41A,41B、排版部42A,42Bを持たず、孔版印刷装置本体と別体に配設された製版装置で製版したものを各版胴に巻装したり、印刷後に各版胴から使用済みのマスタ33a、33bを剥離する孔版印刷装置に適用しても無論構わない。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、中間搬送装置の用紙搬送速度が、上流側印刷部を通過する版胴間距離よりも短い印刷用紙の通過状態に応じて制御されるので、上流側印刷部を通過した印刷用紙の中間搬送装置における搬送開始位置のバラツキがカバーされ、特に画像ダブリ印刷を低減できる。
【0068】
本発明によれば、版胴間距離よりも短い印刷用紙が上流側印刷部を通過中においては、中間搬送装置によって印刷用紙の先端が引っ張られて用紙搬送遅れや印刷用紙の弛みがなくなり、上流側印刷部で印刷された印刷用紙の下流側印刷部への送り込みタイミングが適切に調整されて、画像ダブリ印刷や印刷画像ずれを少なくできる。上流側印刷部を印刷用紙が通過し終えると、用紙搬送速度が下流側版胴の印刷回転速度と略等速となるように減速されるので、印刷用紙が速く下流側印刷部に到達しなくなって下流側印刷部への搬送タイミングのずれが抑えられるとともに、下流側版胴の印刷回転速度と中間搬送装置の用紙搬送速度との速度差がなくなり、この速度差によって発生する下流側版胴の手前での印刷用紙の弛みが抑えられ、印刷用紙の汚れを低減することができる。
【0070】
本発明によれば、上流側印刷部を印刷用紙が通過する時期を用紙サイズと版胴の回転角度とで知ることができ、上流側版胴で印刷された印刷用紙の下流側印刷部への送り込みタイミングが適切に調整されて、画像ダブリ印刷や印刷画像ずれが極めて少なくなる。
【0071】
本発明によれば、印刷用紙の上流側印刷部を通過する通過時間が、印刷開始前に設定される用紙サイズに基づき印刷前に予め設定されたるため、印刷中の印刷用紙の通過状態を検知しなくて済み、搬送中の印刷用紙を検知する用紙検知手段が不要となって部品点数の低減を図りながら、用紙検知手段の不具合による用紙搬送速度の速度制御切り替え動作不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる孔版印刷装置の全体構成図である。
【図2】本発明にかかる切替手段の一構成例と、それにつながる各部の構成を示すブロック図である。
【図3】用紙搬送速度検知手段の構成と中間搬送装置の構成を示す部分拡大斜視図である。
【図4】中間搬送装置の速度制御の一形態を示すフローチャートである。
【図5】孔版印刷装置の動作と、印刷用紙が適切な状態で上流側版胴から剥がれる状態を示す側面図である。
【図6】孔版印刷装置の動作と、上流側版胴から印刷用紙の剥がれる時期が遅れた状態を示す側面図である。
【図7】中間搬送装置に対する印刷用紙の着地点の違いを示す拡大図である。
【図8】中間搬送装置による印刷用紙の搬送状態を示す側面図である。
【図9】印刷用紙の下流側印刷部への搬送状態と、下流側印刷部を通過時の状態を示す側面図である。
【図10】中間搬送装置の速度制御の別な形態を示すフローチャートである。
【図11】中間搬送装置の速度制御の別な形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1A 上流側版胴
1B 下流側版胴
17 中間搬送装置
22 印刷用紙
34 切替手段(制御手段)
46 用紙サイズ検知手段
48 角度検知手段(版胴速度検知手段)
56 用紙検知手段
E1 上流側印刷部
E2 下流側印刷部
L 上流側版胴と下流側版胴との間隔
V 用紙搬送速度
V1 上流側版胴の印刷回転速度
V2 下流側版胴の印刷回転速度
X 用紙搬送方向
Claims (3)
- 用紙搬送方向の上流側に位置する版胴と用紙搬送方向の下流側に位置する版胴との間に設けられ、上流側版胴を用いた印刷が行われる上流側印刷部から下流側版胴を用いた印刷が行われる下流側印刷部へと印刷用紙を搬送する中間搬送装置を備えた孔版印刷装置において、
印刷用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知手段と、上流側版胴または下流側版胴の回転角度を検知する角度検知手段と、
上流側印刷部を通過する印刷用紙が上流側版胴と下流側版胴の間隔よりも短い時に、この印刷用紙の通過状態に応じて上記中間搬送装置の用紙搬送速度を切り替える切替手段とを有し、
上記切替手段は、上記用紙サイズ検知手段で検知された用紙サイズと上記角度検知手段で検知された角度情報とに基づき上記印刷用紙の通過状態を判断して上記用紙搬送速度を切り替えることを特徴とする孔版印刷装置。 - 用紙搬送方向の上流側に位置する版胴と用紙搬送方向の下流側に位置する版胴との間に設けられ、上流側版胴を用いた印刷が行われる上流側印刷部から下流側版胴を用いた印刷が行われる下流側印刷部へと印刷用紙を搬送する中間搬送装置を備えた孔版印刷装置において、
印刷用紙の用紙サイズを検知する用紙サイズ検知手段と、
印刷用紙の後端が上流側印刷部を通過する用紙サイズに応じた後端通過時間が設定さねれた通過時間設定手段と、
上流側印刷部を通過する印刷用紙が上流側版胴と下流側版胴の間隔よりも短い時に、この印刷用紙の通過状態に応じて上記中間搬送装置の用紙搬送速度を切り替える切替手段とを有し、
上記切替手段は、上記用紙サイズ検知手段で検知された用紙サイズに基づき、上記通過時間設定手段から用紙サイズに応じた後端通過時間を選択するとともに、この選択された後端通過時間の経過後に上記用紙搬送速度を切り替えることを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1または2記載の孔版印刷装置において、
上記切替手段は、上記印刷用紙が上流側印刷部を通過中のときは上記用紙搬送速度を上流側版胴の印刷回転速度よりも高速とし、上記印刷用紙が上流側印刷部を通過した後は上記用紙搬送速度を下流側版胴の印刷回転速度と略等速とする切り替え制御を行うことを特徴とする孔版印刷装置。
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