JP3946823B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷装置に関し、詳しくは、版胴の側方に押圧手段を有する孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、孔版印刷装置としては、製版済みマスタを巻装する版胴と、版胴内に配置されインクを版胴に巻装されたマスタに供給するインク供給手段と、このインク供給手段に対向する位置で版胴に対し接離可能な押圧手段としてのプレスローラとを有し、版胴とプレスローラとが対向する印刷部で用紙に印刷を行い、印刷部が版胴の回転中心の略鉛直下方に位置するものが知られている。プレスローラは版胴外周面に向けて用紙を押圧して印刷を行うためのもので、通常直径20〜50mm程度のゴムローラが用いられている。版胴は製版済みマスタをクランパによって巻装しているため、版胴の回転によってクランパがプレスローラに対向する位置に来ると、プレスローラは版胴から離間してクランパとの干渉を避けるようになっている。またプレスローラは一般に印圧バネによって通常の状態では版胴に押圧されるようになっている。したがって、プレスローラは、版胴の一回転ごとに、クランパが近づくのに同期して離間され、クランパの通過後、印圧バネの付勢力によって版胴外周面に当接する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この当接の際、版胴に対する急激な当接により、騒音が発生し、また、プレスローラの版胴周面に対するバウンドに起因する画像ムラが生じることがある。このような不具合はプレスローラの質量と画像転写のための印圧との和によって発生するため、その対応策としては、プレスローラの質量を低減することが考えられる。しかし、プレスローラとしての機能を果たすためには材質、コスト等の面からゴムローラが適しているため、プレスローラの質量を低減することは容易でない。
【0004】
本発明は、プレスローラの版胴への当接に起因する騒音や、画像ムラを防止することができる孔版印刷装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、製版済みマスタを巻装する版胴と、
上記版胴内に配置されインクを上記版胴に巻装されたマスタに供給するインク供給手段と、上記インク供給手段に対向する位置で上記版胴に対し接離可能な押圧手段とを有し、上記版胴と上記押圧手段とが対向する印刷部で用紙に印刷を行う孔版印刷装置において、上記印刷部が、上記版胴の回転中心の側方に位置し、上記版胴を支持する版胴支持体と、この版胴支持体を、印刷可能な第1の態位と孔版印刷装置を開放する第2の態位の間において、上記版胴よりも上方で回動自在に支持する支持体支持手段と、上記版胴を上記版胴支持体に対して着脱自在に支持する着脱手段とを有し、上記着脱手段は、第1の態位において上記版胴支持体の開放側に位置し、上記第2の態位において上記版胴の回転中心の略鉛直上側に位置することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、上記版胴を一つ有することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、上記版胴を複数有し、
これら版胴が第1の態位で略鉛直方向に並設されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、上記印刷部を通過し、用紙を搬送する搬送ベルトを有することを特徴とする。
【0007】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の孔版印刷装置において、上記搬送ベルトが、用紙を静電吸着して搬送する静電吸着ベルトであることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の孔版印刷装置において、上記静電吸着ベルトを帯電するための帯電装置と上記静電吸着ベルトを除電するための除電装置とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、マスタを製版する製版装置と、使用済みマスタを排版する排版装置とを有し、上記製版装置及び上記排版装置が上記版胴とともに回動可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、印刷後の用紙を積載される排紙部と、印刷操作を行うための操作パネルとを有し、この操作パネルを上記排紙部近傍に配置したことを特徴とする。
【0010】
【実施例】
図1を参照して、本発明を適用した複胴式孔版印刷装置の全体構成を孔版印刷動作と共に説明する。
図1において、符号Aは本発明を適用した複胴式孔版印刷装置を示す。この複胴式孔版印刷装置Aは、図1に示すように、略鉛直方向に並設された2つの第1版胴1a(以下、単に「版胴1a」という)および第2版胴1b(以下、単に「版胴1b」という)を具備していて、同時多色印刷、この実施例では同時2色印刷をすることが可能なように構成されている。複数の版胴を鉛直方向に並設することにより、特開平5−254237号において開示されているように孔版印刷装置を複数台水平方向に連結させて同時多色印刷を行う場合よりも、設置面積を低減し、排出印刷画像を見て画像の位置合わせをする場合の作業者の移動距離を不要として作業性を向上している。印刷を行う印刷部61a、61bは版胴1a、1bの回転中心の側方に位置する。これら版胴1a、1bは略同一の機能および構成を有する。これと同じように、版胴1aの内外廻りに配設された後述するインク供給手段、製版装置および排版装置等と、版胴1bの内外廻りに配設された後述するインク供給手段、製版装置および排版装置等とは、略同一の機能および構成を有しているので、それらを同一符号の末尾に符号aまたはbを付加することで区別することとし、その一方を詳述した場合には重複説明を避けるため他方の説明をできるだけ省略する。
【0011】
複胴式孔版印刷装置Aは、周知の感熱デジタル製版一体型孔版印刷装置の構造を有している。複胴式孔版印刷装置Aは、製版済みマスタ33(図5参照)を外周面に巻き付ける版胴1aと、版胴1aの右方下側に配置されマスタ33を製版する製版装置41aと、版胴1aの右方上側に配置され使用済みのマスタを版胴1aから剥ぎ取り排版する排版装置42aと、製版装置41aの下方に配置され給紙トレイ21上に積載された印刷用紙22を給送する給紙装置20と、給紙装置20側から給送されてきた印刷用紙22を静電吸着して版胴1a、1bの順に搬送する搬送ベルトとしての無端状の静電吸着ベルト10と、版胴1aの左方に配置され給送されてくる印刷用紙22を版胴1a上の製版済みのマスタ33に押し付けることにより印刷を行う印圧装置32aと、製版済みマスタ33を外周面に巻き付ける版胴1bと、版胴1bの右方下側に配置されマスタ33を製版する製版装置41bと、版胴1bの右方上側に配置され使用済みのマスタを版胴1bから剥ぎ取り排版する排版装置42bと、版胴1bの左方に配置され給送されてくる印刷用紙22を版胴1b上の製版済みのマスタ33に押し付けることにより印刷を行う印圧装置32bと、複胴式孔版印刷装置Aの上方に配置され印圧装置32aおよび印圧装置32bで多色印刷された印刷済みの印刷用紙22を積載する排紙部としての排紙トレイ37とから主に構成されている。
【0012】
複胴式孔版印刷装置Aの上部には、原稿の画像を読み取るための原稿読取装置11が、排紙トレイ37の下方近傍には、複胴式孔版印刷装置Aを操作し印刷を行うための操作パネル12がそれぞれ配設されている。
【0013】
複胴式孔版印刷装置Aの動作を上記した各装置等の細部構成を含めて説明する。
版胴1aは、周知の多孔性円筒状をなし、ドラム軸2aの周りに回動自在に支持されている。版胴1aは、図示しないメインモータにより回転される。版胴1a外周部の一母線上には、マスタの先端部をクランプする開閉自在なクランパ5aが設けられている。図5に示すように、クランパ5aは、クランパ軸6aで版胴1a上に枢着されていて、版胴1aの外周廻りの適宜の位置に配設されている図示を省略した開閉手段により所定位置で開閉される。版胴1aの内部には、版胴1aの内周面から外周面に向けてインクを供給するためのインク供給手段が配設されている。版胴1aにおけるインク供給手段では1色目のインクとして例えばブラック(Bl)色のインクが、版胴1bにおけるインク供給手段では2色目のインクとして例えばマゼンタ(M)色のインクがそれぞれ供給されるようになっている。
【0014】
マスタ33としては、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムに多孔質の支持体として和紙等を貼り合わせたマスタが用いられている。マスタ33は、上記のものに限らず、非常に薄い実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものを用いることも可能である。
【0015】
先ず、オペレータが、原稿読取装置11の図示しない原稿受け台に印刷すべき原稿をセットし、製版を起動させるための操作パネル12上の図示しないスタートキーを押下すると、排版工程が両版胴1a、1bにおいて同様に実行される。
版胴1aが図中時計回り方向を示す矢印a方向と反対の反時計回り方向に回転し、版胴1aの外周面に巻装されていた使用済みのマスタが版胴1aの外周面から漸次剥され搬送されつつ排版装置42a、排版装置42bの各排版ボックス(図示せず)内へ排出されることにより排版工程が終了する。
【0016】
排版工程と並行して、原稿読取部11が作動して原稿読み取りが行われる。この原稿読み取りに係る詳細な構成及び動作は、例えば公知の「縮小式の原稿読取方式」で行われるようになっており、原稿読み取りされた画像は最終的にCCD(電荷結合素子)等の光電変換素子からなる画像センサにより光電変換される。
画像センサにより光電変換され電気信号は、図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に送信されることによりデジタル画像信号に変換される。
【0017】
なお、原稿読取部11には、多色重ね刷り印刷に必要な色分解のための諸機能を有する構成、例えば特開昭64−18682号公報記載の複数の色フィルターを切換可能に制御できるフィルターユニットと同様の機能及び構成を有するものが、ミラー群とレンズ(共に図示せず)との間の光路上に配設されていて、同公報記載と同様の自動製版・給版等の動作を行うようになっており、その詳しい説明は省略する。
【0018】
原稿読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像信号に基づき、両製版装置41a、41bにおいて同様の製版・給版工程が行われる。製版装置41aを代表して図5に示すように、平面型のサーマルヘッド13およびこれに押し付けられているプラテンローラ14および送り出しローラ対15の回転により、マスタ33がマスタ搬送路の下流側に搬送される。このように搬送されるマスタ33に対して、サーマルヘッド13の主走査方向に一列に配列された多数の微小な発熱素子が、上記A/D変換基板およびその後の製版制御基板(図示せず)で各種処理を施されて送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱素子に接触しているマスタ33の熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。このようにして、画像情報に応じたマスタ33の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。テンションローラ対19と送り出しローラ対15との間のマスタは弛んだ状態となるようにこれらローラによるマスタ33の送りが制御される。
【0019】
画像情報が書き込まれて製版された製版済みのマスタ33の先端は、送り出しローラ対15の回転により版胴1aの外周部側へ向かって送り出され、図示の給版位置状態にある版胴1aの拡開したクランパ5aへ向かって移動する。このとき版胴1aは、排版工程により使用済みのマスタ33を既に除去されている。一方、版胴1b側における製版済みのマスタ33の先端は、上記送り出しローラ対15の回転により版胴1b外周部側へ向かって送り出され、給版位置状態にある版胴1bの拡開したクランパ5bへ向かって挿入される。
【0020】
そして、製版済みのマスタ33の先端部が、一定のタイミングでクランパ5aによりクランプされると、版胴1aは図中矢印a方向に回転しつつ外周面に製版済みのマスタ33を徐々に巻き付けていく。テンションローラ対19と送り出しローラ対15との間のマスタ33は弛んだ状態となっているので、この巻き付け時に版胴1aの回転による過剰の張力がマスタ33へ作用することはない。製版済みのマスタ33の後端部は、製版完了後に製版装置41aに配設されている可動刃16および固定刃17からなる切断手段18の作動により一定の長さに切断されて、マスタ33が版胴1aの外周面に完全に巻装されると、いわゆる給版工程が終了する。
【0021】
このようにして製版済みのマスタ33が各版胴1a、1bの外周面にそれぞれ巻装されると製版・給版工程が終了し、印刷工程が開始される。給紙トレイ21上に積載された最上位の印刷用紙22を呼び出しコロ23に接触するまで給紙トレイ21を図示しない周知の手段により上昇させておく。呼び出しコロ23に接触している最上位の印刷用紙22が、呼び出しコロ23の回転動作により搬送されると共に、分離コロ対24、25により1枚に分離され、上下一対のガイド板上28およびガイド板下27に案内されつつレジストローラ対29、30に向けて給送される。このとき、搬送された印刷用紙22の先端は、レジストローラ対29、30のニップ部直前部位に当接し、ガイド板上28の一部に沿って撓んだ状態で停止している。
【0022】
静電吸着ベルト10は、PETフィルム製であって、プレスローラ9a、9b、駆動ローラ50、従動ローラ51、対向電極ローラ52、テンションローラ53の間に掛け渡されていて、印刷部61a、61bを通過するようになっている。対向電極ローラ52に対向する位置には帯電装置54が、駆動ローラ50の近傍には除電装置55が配置されている。
【0023】
帯電装置54は、コロナ放電を行う非接触方式のコロトロン方式のものが採用されており、帯電用の図示しない高圧電源に接続されている。この高圧電源は、帯電装置54に対して帯電バイアスを供給するもので、直流電源が用いられる。除電装置55は、コロナ放電を行う非接触方式のコロトロン方式のものが採用されており、帯電用の図示しない高圧電源に接続されている。この高圧電源は、帯電バイアスと逆極性の除電バイアスを供給する直流電源を用いている。
【0024】
静電吸着ベルト10は、版胴1aの周速度と略同じ搬送速度となるように駆動ローラ50によって駆動される。静電吸着ベルト10の材質はPETフィルムでなくとも帯電性の良い絶縁体であれば他の周知の材質とすることができる。また、搬送ベルトは、本実施例のように印刷部を通過し静電吸着により用紙を搬送する静電吸着ベルトでなく、周知の多孔性のベルトであって吸引用のファンによる空気の負圧により用紙を吸着して搬送する、印刷部の前後に設けられたものでも良い。
【0025】
給紙装置20側から供給されてきた印刷用紙22は、帯電装置54によって帯電された静電吸着ベルト10の静電気力によって静電的に吸着されるので、鉛直方向へ搬送されるにも拘らずはがれることなく搬送され、静電吸着ベルト10の反時計回り方向の回転により、印圧装置32aを経て次の印圧装置32b部位へ向かって搬送される。テンションローラ53は複胴式孔版印刷装置A本体側の固定部材57に一端を固定されたスプリング53aによって支持されているため、静電吸着ベルト10の張力は、プレスローラ9a、9bが版胴1a、1bに対して接離しても一定に保たれる。帯電装置54による帯電は、対向電極ローラ52が設けられているのでスムーズに行われる。
【0026】
1色目の版胴1aは、印刷動作が始まると印刷の回転速度で回転され始める。版胴1aの内周側では、インク供給ディストリビュータ(図示せず)からインク供給手段としてのインクローラ3aとドクタローラ4aとの間に形成されたインク溜りIaにブラック色のインクが供給され、そのブラック色のインクはインクローラ3aとドクタローラ4aとが回転することによって混練され伸ばされると共に、インクローラ3aの外周面に均一に付着するようになる。インクの残量は、インク検知手段(例えば特開平5−229243号公報の図2参照)によって検知され、インクが少なくなったときには上記インク供給ディストリビュータから補給される。こうして版胴1aの回転方向と同一方向に、かつ、版胴1aの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインクローラ3aにより、インクが版胴1aの内周側に供給される。
【0027】
印圧装置32aは、インクローラ3a、プレスローラ9a、プレスローラブラケット11a、図示しないバネからなるプレスローラテンションおよび図示しないプレスローラカムによって主に構成されている。プレスローラ9aは、静電吸着ベルト10によって給送されてきた印刷用紙22を静電吸着ベルト10とともに版胴1aに押し付けて印刷画像を印刷用紙22上に形成する押圧手段としての機能を有する。プレスローラ9aは、プレスローラブラケット11aの一方の揺動端において回転自在に支持されていて、プレスローラテンションおよびプレスローラカムからなる周知の機構により版胴1aの外周面に接離自在に設けられている。
【0028】
印刷用紙22が、レジストローラ対29、30により版胴1aの回転と同期した所定のタイミングで従動ローラ51と、押し付けローラ31との間へ搬送され、静電吸着ベルト10へ吸着される。さらに、印圧装置32aにおける版胴1aとプレスローラ9aとの間すなわち印刷部61aに給送されてくると、これに同期して版胴1aの外周面側方に離間していたプレスローラ9aが揺動されることにより、版胴1aの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33に押し付けられる。これにより、版胴1aの多孔部から滲み出たインクの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33が版胴1aの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33の穿孔パターン部からインクが滲み出し、この滲み出たインクが印刷用紙22の表面に転移されて、1色目の所望の印刷画像が形成される。プレスローラ9aの版胴1aへの当接は版胴1aの回転中心の側方から行われるので、プレスローラ9aの質量はその殆どがプレスローラブラケット11aにかかっており、版胴1aに対する衝撃は大幅に低減される。
【0029】
1色目の印刷画像が形成された印刷用紙22は、静電吸着ベルト10の反時計回り方向の回転により、次の印圧装置32b部位へ向かって搬送される。印刷中、版胴1a、1bは同期して回転している。版胴1bの内周側では、版胴1aと同様の構成および動作内容で版胴1bの回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインクローラ3bにより、2色目のインクが版胴1bの内周側に供給される。
【0030】
そして、印刷用紙22が、静電吸着ベルト10によって版胴1bの回転と同期した所定のタイミングで印圧装置32bにおける版胴1bとプレスローラ9bとの間すなわち印刷部61bに給送されてくると、これに同期して版胴1bの外周面側方に離間していたプレスローラ9bが揺動されることにより、版胴1bの外周面に巻装されている製版済みのマスタ33に押し付けられる。これにより、版胴1bの多孔部から滲み出たインクの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ33が版胴1bの外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ33の穿孔パターン部からインクが滲み出し、この滲み出たインクが印刷用紙22の表面に転移されて、2色目のインクによる印刷画像が形成される。
【0031】
2色目の印刷画像が形成された印刷用紙22は、その先端が除電装置55近傍の所までくると、除電装置55によって除電が行われ、印刷用紙22の静電吸着ベルト10に対する吸着が解除される。印刷用紙22の先端が駆動ローラ50の所に来ると、駆動ローラ50の曲率により静電吸着ベルト10から分離・剥離される。分離・剥離された印刷済みの印刷用紙22は、駆動ローラ50近傍のジャンプ台56によって排紙トレイ37上に飛翔し、排紙トレイ37上に積載される。駆動ローラ50を通過した静電吸着ベルト10は、クリーニングローラ58によってクリーニングされ、次の帯電に備える。このようにしていわゆる「版付け」、あるいは「試し刷り」が終了する。
【0032】
次に、操作パネル12上の図示しないテンキーで印刷枚数を設定し、再度スタートキーを押下すると上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷および排紙の各工程が設定した印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。排紙トレイ37は周知の機構により、積載された用紙厚さ等に応じて矢印bで示すように上下方向に移動可能であって、作業効率が向上されている。操作パネル12は排紙トレイ37の下方近傍に配置されている。符号59、60はそれぞれ複胴式孔版印刷装置Aが設置されている設置面、一般成人の頭部位置を示している。頭部位置60は排紙トレイ37の上部にあり、排紙トレイ37と操作パネル12とを同時に目視できるので、試し刷りにおいて画像位置の調整を行う必要がある場合等に作業性が向上する。操作パネル12の配置位置は、排紙トレイ37の近傍であれば下方に限らず、排紙トレイ37と同時に目視できる位置であれば良い。
【0033】
版胴1a、1b、製版装置41a、41b、排版装置42a、42b、後述する着脱手段62a、62bは、版胴支持体63に支持されている。版胴支持体63は、支持体支持手段64により版胴1a、1bよりも上方で複胴式孔版印刷装置A本体に対して回動自在に支持されている。支持体支持手段64は、図1に示す印刷可能な第1の態位と、図2に示す複胴式孔版印刷装置Aを開放する第2の態位の間で版胴支持体63を保持することができる。着脱手段62a、62bはそれぞれ、版胴1a、1bを版胴支持体63及び複胴式孔版印刷装置A本体に対して着脱自在に支持するものである。第2の態位において、着脱手段62a、62bはそれぞれ、版胴1a、1bの回転中心の略鉛直上側に位置する。
【0034】
着脱手段62a、62bは略同様の構成となっているので着脱手段62aを代表して図3、図4に示す。着脱手段62aは、ドラム軸2aの両端を回転自在に支持する支持板65、66と、支持板65、66の両上部を固定されたスライダ67と、版胴支持体63に固設されスライダ67をスライド自在に支持するガイドレール68とを有している。スライダ67とガイドレール68とが係合した状態では、スライダ67の端部に回転自在に設けられたローラ69がガイドレール68と一体の水平板70の上面に乗り、ガイドレール68の端部に回転自在に設けられたローラ71の上部にスライダ67の下面が乗る。その他着脱手段62a、62bに関する構成は実開昭61−85462号公報に記載されているので、その詳しい説明を省略する。
【0035】
第2の態位では、着脱手段62a、62bがそれぞれ版胴1a、1bの回転中心の略鉛直上側に位置するので、版胴1aはガイドレール68によりスライダ67等を介してぶら下げられた状態で支持され、ローラ69、71の回転によりスムーズにスライドが行われ、版胴1a、1bの交換が容易に行われる。
【0036】
版胴1aを装着する場合は、ドラム軸2aが、版胴支持体63に設けられたドラム軸受76に嵌合し、また、支持手段65に設けられた固定ピン72、73が、版胴支持体63の固定ピン72、73のそれぞれに対応する位置に設けられた図示しない固定孔及び固定孔75と嵌合する。すなわち、版胴1aの版胴支持体63への装着位置は、これらの固定ピンと固定孔とによって決まる。このことは、版胴1bについても同様である。
【0037】
かりに、版胴支持体63、支持体支持手段64を設けず、第2の態位が存在しない構成とすると、着脱手段62a、62bはそれぞれ版胴1a、1bの回転中心の側方に位置するので、版胴1a、1bをスライドさせようとしても、版胴1a、1bはぶら下げられた状態ではないため、スライドがうまく行われないし、また、着脱手段62a、62bをそれぞれ版胴1a、1bの回転中心の略鉛直上側に配置しても、版胴1a、1b内の回転中心の側方には比較的質量の大きなインク供給手段があるので、版胴1a、1bをぶら下げた状態において重心のバランスがとれず、やはりスライドがうまく行われないため、特別な構成の版胴やスライドレール等を新たに購入する等しなければならず、ユーザーの負担が大きくなる。
【0038】
しかし、本発明を適用した本実施例の複胴式孔版印刷装置Aでは、第2の態位において、インク供給手段が版胴1a、1bの回転中心の鉛直下側にあるため、従来の構成の版胴を用いても、重心のバランスがとれ、スライドがスムーズに行われるし、用紙搬送径路を解放することにより用紙のジャム等の問題にも対処できる。
【0039】
複胴式孔版印刷装置Aを構成する上記各装置等の構成およびその配置状態は、あくまでもその一例を示したものであり、他の周知の装置および種々の配置状態をもって構成してもよいことはいうまでもない。例えば、複胴式孔版印刷装置Aは、上記したような感熱デジタル製版一体型孔版印刷装置を構成するものに限らず、例えば装置本体と別体に配設された製版給版装置あるいは排版装置によってマスタを製版し給版したり、あるいは排版したりしてもよく、各製版装置41a、41bおよび各排版装置42a、42bを上記装置本体に必ずしも具備していなくてもよいといえる。また、製版するためのデータは、上記したように原稿読取装置で読み取ったデータでも、あるいはコンピュータ等で作成されたデータであってもよい。
【0040】
また、版胴の数を3つ以上としてフルカラー印刷を含む多色印刷を行うこともできるし、図6に示す単胴式孔版印刷装置Bのように、版胴を一つ有する孔版印刷装置とすることもできる。この単胴式孔版印刷装置Bが図1等に示した複胴式孔版印刷装置Aと異なるのは、版胴が一つのみである点、製版装置、排版装置が版胴の上方に位置している点であり、各構成の作用、機能等は複胴式孔版印刷装置Aと同様であるので、単胴式孔版印刷装置Bの各構成には、対応する複胴式孔版印刷装置Aの構成と同等の符号を付するにとどめ、説明を省略する。なお、押圧手段としては、本実施例ではプレスローラを用いたものを示したが、例えば特開平9−104158号号公報に記載の圧胴を用いても良い。
【0041】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、プレスローラの版胴への当接が版胴の回転中心の側方から行われるので、版胴に対するプレスローラの質量がキャンセルされ、版胴に対する衝撃が大幅に低減されるので、プレスローラの版胴への当接に起因する騒音や、画像ムラを防止することができる孔版印刷装置を提供できる。
また、請求項1記載の発明によれば、版胴を支持する版胴支持体が回動し、第2の態位で孔版印刷装置を開放するので、用紙搬送経路でジャムが生じた際のジャム紙の取り出し性、特に複胴式孔版印刷装置の版胴間でジャムが生じた際のジャム紙の取り出し性が向上し、また、着脱手段により版胴が孔版印刷装置本体に対して着脱自在とされた孔版印刷装置を提供することができる。
さらに、請求項1記載の発明によれば、着脱手段が、第1の態位において上記版胴支持体の開放側に位置し、第2の態位において版胴の回転中心の鉛直上側に位置するので、作業性が良く、従来の版胴及び着脱手段を用いて容易に版胴の着脱を行うことができ、部品の共通化によるコスト上昇の防止を図ることができる孔版印刷装置を提供することができる。
【0042】
請求項2記載の発明によれば、プレスローラの版胴への当接を版胴の回転中心の側方から行う単胴式孔版印刷装置を提供でき、本発明が適用される孔版印刷装置の設計上の自由度が増す。
【0043】
請求項3記載の発明によれば、複数の版胴が鉛直方向に並設されているので、多色印刷を行うために複数の孔版印刷装置を水平方向に連結する場合に比べ、設置面積を低減することができ、排出された印刷画像を見て画像の位置合わせをする際の作業者の移動距離を不要として作業性を向上できる孔版印刷装置を提供できる。
【0044】
請求項4記載の発明によれば、用紙が搬送ベルトに保持されたまま印刷部を通過することにより印刷を行うので、用紙搬送のための構成を簡単にすることができ、用紙搬送経路中の構成が単純化するので、ジャム等の用紙搬送中の不具合を低減することができる孔版印刷装置を提供できる。
【0045】
請求項5記載の発明によれば、用紙が静電吸着されるので、用紙をベルト上に確実に保持したまま搬送でき、印刷部における版胴への用紙の巻き上がりや滑りを防止できる孔版印刷装置を提供できる。
【0046】
請求項6記載の発明によれば、静電吸着ベルトが帯電および除電されるので、用紙のベルトに対する供給及び用紙のベルトからの離脱が確実に行われ、用紙搬送に関する不具合を防止することができる孔版印刷装置を提供することができる。。
【0049】
請求項7記載の発明によれば、製版装置、排版装置が版胴とともに回動されるので、製版装置、排版装置のメンテナンスが容易となり、また、版胴の周辺に位置する製版装置、排版装置を版胴とともに移動するので、回動を可能とするために生ずる装置の機構の複雑化を防止した孔版印刷装置を提供できる。
【0050】
請求項8記載の発明によれば、印刷操作を行う操作パネルを排紙部の近傍に配置したので、排出された印刷用紙上の印刷画像を見ながら画像位置調整等の印刷操作を行うことができ、作業性が良い孔版印刷装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された複胴式孔版印刷装置の概要を示す正面図である。
【図2】図1に示した複胴式孔版印刷装置の第2の態位を示す正面図である。
【図3】図1に示した複胴式孔版印刷装置の着脱手段の概要を示す斜視図である。
【図4】図1に示した複胴式孔版印刷装置の着脱手段の概要を示す側面図である。
【図5】図1に示した複胴式孔版印刷装置の製版装置の内部構成及びクランパの拡大正面図である。
【図6】本発明が適用された単胴式孔版印刷装置の概要を示す正面図である。
【符号の説明】
1、1a、1b 版胴
3、3a、3b インク供給手段としてのインクローラ
4、4a、4b インク供給手段としてのドクタローラ
9、9a、9b プレスローラ
10 搬送ベルト
12 操作パネル
22 用紙
37 排紙部としての排紙トレイ
41、41a、41b 製版装置
42、42a、42b 排版装置
54 帯電装置
55 除電装置
61、61a、61b 印刷部
62、62a、62b 着脱手段
63 版胴支持体
64 支持体支持手段
A、B 孔版印刷装置
Claims (8)
- 製版済みマスタを巻装する版胴と、上記版胴内に配置されインクを上記版胴に巻装されたマスタに供給するインク供給手段と、上記インク供給手段に対向する位置で上記版胴に対し接離可能な押圧手段とを有し、上記版胴と上記押圧手段とが対向する印刷部で用紙に印刷を行う孔版印刷装置において、
上記印刷部が、上記版胴の回転中心の側方に位置し、
上記版胴を支持する版胴支持体と、
この版胴支持体を、印刷可能な第1の態位と孔版印刷装置を開放する第2の態位の間において、上記版胴よりも上方で回動自在に支持する支持体支持手段と、
上記版胴を上記版胴支持体に対して着脱自在に支持する着脱手段とを有し、
上記着脱手段は、第1の態位において上記版胴支持体の開放側に位置し、上記第2の態位において上記版胴の回転中心の略鉛直上側に位置することを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1記載の孔版印刷装置において、上記版胴を一つ有することを特徴とする孔版印刷装置。
- 請求項1記載の孔版印刷装置において、上記版胴を複数有し、これら版胴が第1の態位で略鉛直方向に並設されていることを特徴とする孔版印刷装置。
- 請求項1ないし3の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、上記印刷部を通過し、
用紙を搬送する搬送ベルトを有することを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項4記載の孔版印刷装置において、上記搬送ベルトが、用紙を静電吸着して搬送する静電吸着ベルトであることを特徴とする孔版印刷装置。
- 請求項5記載の孔版印刷装置において、上記静電吸着ベルトを帯電するための帯電装置と上記静電吸着ベルトを除電するための除電装置とを有することを特徴とする孔版印刷装置。
- 請求項1ないし6の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、マスタを製版する製版装置と、使用済みマスタを排版する排版装置とを有し、上記製版装置及び上記排版装置が上記版胴とともに回動可能であることを特徴とする孔版印刷装置。
- 請求項1ないし7の何れか1つに記載の孔版印刷装置において、印刷後の用紙を積載される排紙部と、印刷操作を行うための操作パネルとを有し、この操作パネルを上記排紙部近傍に配置したことを特徴とする孔版印刷装置。
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