JP2008207095A - リン捕集装置ユニット及び該ユニットを用いたリン捕集・回収方法並びにリン捕集・回収装置 - Google Patents

リン捕集装置ユニット及び該ユニットを用いたリン捕集・回収方法並びにリン捕集・回収装置 Download PDF

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Abstract

【課題】再生使用可能なリン捕集剤を用いたリン捕集・回収装置を提供する。
【解決手段】リン捕集機能を有するZr化合物又はTi化合物の1種以上を高分子化合物と複合化させて不溶化してなる再生利用可能なリン捕集剤と該リン捕集剤を坦持した担体とから構成されたリン捕集部材(3)を、複数の隔壁材(1)間に配置して一体化してなるリン捕集装置ユニットと、これを反応槽(6)内に装着してリンの捕集と回収を行うリン捕集装置
【選択図】図8

Description

本発明は河川や湖沼、海水或いは生活排水や産業排水等の各種廃水中からリンを捕集すると共に、捕集したリンを回収するためのリン捕集装置ユニットと、この捕集装置ユニットを用いたリン捕集・回収捕集装置並びにリン捕集・回収捕集方法に関するものである。
リンは肥料や各種工業用原料として重要な材料であって、長年に亘って大量に使用され大量に排出されてきた。その結果として、河川や海洋が富栄養化して赤潮の大量発生や水域生態系の破壊等の環境問題を起こす原因となっているだけでなく、このまま放置すれば、近未来において、資源の枯渇が間違いなく現実的な問題となってくる。そこで、生活排水や産業排水等の各種廃水からのリンの回収が急務の課題として注目され、各方面で研究開発がなされているが、実用化には至っていない。
開発中のこれらのリン除去技術には、廃水中にリン酸或いは有機リン化合物として含有されている比較的高濃度のリン化合物を、微生物を用いて捕集する方法(HS法やMAP法)がある。この方法では、廃水中のリン化合物は、汚泥中に濃縮されて捕集されるが、この汚泥処理が新たな問題となっている。一方、河川や湖沼中の低濃度のリン化合物については、リン捕集剤を用いて捕集することにより、河川や湖沼の浄化を図る方法も提案されている。例えば、水酸化アルミニウム,水酸化鉄,リン鉱石等のリン捕集作用を有する物質とゼオライトとを水溶性高分子ゲル内に包括固定化してリン捕集材となし、これを用いて河川や湖沼中の低濃度のリンとアンモニアとを同時に除去する方法(特許文献1参照)や、リン捕集成分である炭酸カルシウムとベントナイト(粘土鉱物)とを水溶性高分子化合物と混合して乾燥することにより耐水性化してリン捕集材となし、これを用いて河川や湖沼中の低濃度のリンを除去する方法(特許文献2参照)がある。低濃度のリン捕集に関しては、環境水の浄化が目的であり、リンを回収して利用することは検討されていない。
一方、リンは前述の通り、各種工業原料として重要な物質であり、しかも、生物の営みに不可欠な物質であって、その重要性は年々増加の傾向にあるにも拘わらず、我が国は100%輸入に頼っている。しかるに、世界におけるリン可採埋蔵量は数十年で枯渇すると見積もられており、欧米諸国ではその資源確保が懸念され、既に米国では、リンの輸出を禁止している。
特開平7−8945号公報 特開平11−216479号公報
上記の廃水や河川,湖沼中のリン除去方法やリン捕集方法は、環境問題の観点からの廃水処理や河川,湖沼の浄化方法であって、資源問題の観点からのリン捕集方法ではない。従って、処理水の浄化は期待できるが、リン資源の回収の面では多くを期待し難いという問題がある。即ち、廃水処理設備から産出される汚泥にリンが濃縮されているとはいえ、リン以外の金属成分も多量に含まれており、工業原料としてのリン資源としては不適切である。従って、焼却処理されるか埋め立て処理されているのが現状である。一方、前記特許文献1及び2によると、捕集したリン化合物を含むリン捕集材を、肥料や土壌改良材として山林や畑に散布することがリンの回収利用方法として開示されているが、工業用原料としての回収には適していないことは明らかである。
そこで、上記現状に鑑み、本発明者等は、先に、リンを回収可能であり且つ再生使用可能なリン捕集材を開発し、特願2006−8120として出願をしている。
本発明は、係る背景の下になされたものであり、先に本発明者等によって開発された新規なリン捕集材を用いた合理的なリン捕集手段を提供するものであり、工場排水や生活排水中の比較的高濃度のリン含有廃水から、河川や湖沼、海水中の低濃度のリン含有水までを対象とし、これらの水中に溶解しているリン成分を効率よく且つ再利用可能な形で回収するためのリン捕集・回収手段を提供するものである。
本発明は、上述の通り、本発明者等による特願2006−8120の発明に係るリン捕集材を用いるものであり、具体的には、リン捕集機能を有するジルコニウム化合物(Zr化合物)又はチタン化合物(Ti化合物)の1種以上を高分子化合物とナノ複合化させて不溶化してなる新規なリン捕集剤を用いるリン捕集装置であって、更に具体的には、Zr化合物又はTi化合物の1種以上を高分子化合物と複合化させて不溶化してなる再生利用可能なリン捕集剤と該リン捕集剤を坦持した担体とから構成されたリン捕集部材を、複数の隔壁材間に配置して一体化してリン捕集装置ユニットとなすものである。
前記隔壁材としては、多数の開口を有するパンチングメタル等の平板が好ましく、これにより前記開口を通して被処理水が流通可能に構成されている。
前記リン捕集部材に用いる担体としては、平織金網,綾織金網,亀甲金網或いはパンチングメタル等の比較的平坦な表面を有し且つ多数の開口を有する平板状多穴体若しくは不織布シート等の非水溶性の多孔質シートを用いるものと、ラス金網,クリンプ金網,エキスパンドメタル或いは多孔波板等の表面に比較的大きな起伏を有し且つ多数の開口を有する板状多穴凹凸体を用いるものとがあり、前者の場合には、隔壁間の流通抵抗を小さくすることにより隔壁間隔を相対的に狭くして単位容積当たりのリン捕集材の量を多くすることが可能となり、後者の場合には、担体表面の起伏によってリン捕集部材の表面流を乱流となし、これによってリン捕集材表面のリン成分の拡散速度を大きくすることが可能となる。
又、前記高分子化合物で形成したシートの表面にZr化合物又はTi化合物の1種以上を複合化させて不溶化することにより前記高分子化合物自体を担体となし、その表面部にリン捕集剤層を形成してリン捕集部材を形成したものもある。更に、このリン捕集部材の多数を、多数の前記平板状隔壁材の間に夫々スペーサを介して配置し、これらをボルト等の締結手段によって一体化することにより、リン捕集装置ユニットとすることも可能である。
又、前記平板状隔壁材と前記リン捕集部材との間に、被処理水のジグザグ流路を形成する乱流形成部材、例えば表面に大きな起伏を有するラス金網やエキスパンドメタル或いは多孔波板を配置し、リン捕集部材表面に乱流を形成するようにしておくのもリン成分の拡散速度を向上させる有効な手段である。
又、前記リン捕集部材の他の形態としては、セラミックス又は金属の多孔質立体を担体とし、その表面部に前記リン捕集剤を坦持させたものがあり、これを前記平板状隔壁の前記開口に前記立体の一部を嵌入して保持させて一体化したものもある。
次に、上記した各種形態のリン捕集装置ユニットの1以上を内蔵させて反応槽を形成し、この反応槽により、被処理水中のリンの捕集と回収を行うリン捕集・回収装置を構成することも可能である。この場合には、前記反応槽を複数基並列配置してリンの捕集とリンの回収を交互に切り替えて行う様にするのが好ましい。具体的な方法としては、前記反応槽内にリン化合物を含む被処理水を連続供給して該反応槽内のリン捕集剤により所定量のリンを捕集させるリン捕集工程と、該リン捕集剤が所定量のリンを捕集したことを検知して前記被処理水の供給を停止しアルカリ水を供給することによって前記捕集されたリンをアルカリリン酸塩として溶出させるリン回収工程とを含み、このリン捕集工程とリン回収工程とを交互に繰り返すようにしてなるリン捕集・回収方法が最も好ましい形態である。
尚、前記リン捕集工程とリン回収工程との間に反応槽内を空気置換するエアパージ工程を設ける方法も好ましい方法であり、更に、前記リン捕集工程及びリン回収工程の終了時期を、前記反応槽出口に配置されたリン濃度計により水中リン濃度を検出し、該リン濃度を所定の閾値と比較して判断するようにして自動運転を行う様になすのも好ましい態様である。
本発明によると、Zr又はTiという容易にリン酸基化合物と結合すると共に、アルカリ洗浄することによって容易にリン酸を遊離してリン酸塩を生成分離させる物質をリン捕集剤として用いているので、リン捕集剤の再生とリン酸基の分離を容易に行うことが可能となる。これにより、リン捕集剤から分離回収され且つ元の廃水や河川や湖沼中のリン濃度から極めて高濃度に濃縮されたアルカリリン酸塩水溶液が得られるので、容易にリンの回収が可能となり、リン資源としての再利用が可能となる。
又、金網体や多孔質球状体或いは高分子化合物自体を担体とし、これにリン捕集剤を坦持させてリン捕集部材を形成し、このリン捕集部材の複数を平板状の複数の隔壁間に配置してリン捕集装置ユニットを構成しているので、リン捕集装置の製造や設置が容易となり、上記の新規なリン捕集剤の実用化を一気に促進することが可能となる。
以下に本発明について詳細に説明する。先ず本発明で使用するリン捕集剤について説明する。リン捕集剤としては、前記特許文献1には、水酸化アルミニウム,活性アルミナ,水酸化鉄,鉄粉,鹿沼土,アロフェーン,骨炭,リン鉱石及びマグネシウムが上げられており、又、特許文献2には、炭酸カルシウムが上げられている。これらに水中のリン捕集機能があるとしても、本発明では使用できない。本発明で使用するリン捕集機能を有する材料としては3つの機能が要求される。即ち、第1に高分子化合物との複合化による架橋反応性であり、第2に水溶性又は水分散性であり、第3に再生可能性である。第1の機能は、リン捕集物質を高分子化合物と化学的に結合させて安定して保持させるための必須の要件であり、単に吸着等による物理的保持では、繰り返し使用される過程で水中に放出されてリン吸収剤の性能低下を招くことになる。第2の機能は、リン捕集剤の製造上、水溶性高分子化合物と均一に混合させて、均一なリン捕集剤を製造するために必要な機能である。第3の機能は、本発明に要求される最も重要な機能であり、捕集したリンを回収してリン資源として再利用するために必要な機能である。上記特許文献1及び2に記載の物質は、一部に水溶性高分子との架橋性を有するものもあるが、全て非水溶性であって前記第2の機能を有しておらず、又、これらのリン酸化物は容易に元の状態に再生する事ができないので前記第3の機能を有していない。
上記第1〜第3の機能を満足し、これに経済性を加味して選択された物質が、本発明で使用される水溶性Zr又は水分散性の高いZr化合物と水溶性Ti又は水分散性の高いTi化合物である。係る観点から選定された本発明で使用するリン捕集剤原料としては、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル等の水溶性又は水分散性のジルコニウム化合物、三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾル等の水溶性又は水分散性のチタン化合物が上げられる。
次に水溶性高分子化合物について説明する。本発明で使用する高分子化合物としては、次の2つの機能が要求される。第1は水溶性であり、第2はジルコニウム化合物又はチタン化合物との複合化による架橋反応性である。第1の機能は、前述の通り水溶性又は水分散性のZr化合物やTi化合物と均一に混合させて均一なリン捕集材を製造するために必要な機能であり、第2の機能は、リン捕集機能を有するZr化合物やTi化合物を不溶化して安定化させるために必要な機能である。係る観点から本発明で使用される水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA),エチレンビニルアルコール(EVOH),ポリアクリル酸(PAA),ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース(CMC),これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーが上げられる。中でも架橋性と経済性を考慮すると、PVAが好ましい材料である。
次に、複合化(架橋反応)による不溶化について説明する。前述の水溶性高分子化合物に架橋剤としてZr化合物やTi化合物を添加すると共に加熱処理すると、ZrやTiが架橋点となってポリマー鎖のアルコール基やアミノ基,カルボン酸基と反応して架橋し,ポリマーの組織を三次元化して不溶化する。架橋反応による不溶化率は、Zr化合物やTi化合物と水溶性高分子材料の比率や加熱温度及びpH並びに化合物の組合せによって異なるので、高不溶化率を得るための最適条件は、試験等を通して適宜設定すればよい。一般には,室温から250℃の温度域で加熱することにより,不溶化できるが,好ましくは100−160℃の温度域を用いる。
尚、PVA短繊維を原料に作られたPVAシート(部分的なフォルマール化処理が施されて不溶化されている市販のPVA紙や不織布)等の高分子シートを、前記水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物の懸濁液内に浸漬して表面にZr化合物又はTi化合物を付着させ、これを前述の通り熱処理することにより、表面部で架橋反応を生じさせてリン捕集剤層を形成することも可能である。
次に、本発明においては、前記水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と水溶性高分子化合物の他に、層状珪酸塩を添加混合してこれら3物質間で架橋反応を生じさせたリン捕集剤もある。本発明で使用する層状珪酸塩は、天然に豊富に存在するモンモリロナイトやモンモリロナイトを主成分とするベントナイト等の粘土状鉱物が好適な原料である。これらは、スメクタイトに属する天然珪酸塩鉱物であるが、サポナイトやヘクトライト等の合成スメクタイトも使用可能である。これら3種の混合物の水溶液を用いる場合には、前記層状珪酸塩の層間に水酸化ジルコニウムや水酸化チタニウムポリカチオンが浸透して層状珪酸塩―Zr/Ti―高分子化合物の架橋体が得られるので、これを脱水したのち熱処理して固化させてリン捕集剤として使用する。
上記リン捕集剤は、そのままでは実用的でないので、このリン捕集剤を適当な形状に成形する必要がある。そこで、本発明では、担体に該リン捕集剤を坦持させてリン捕集部材を形成している。その担体としては、後述する通り金網,パンチングメタル,ラス網,エキスパンドメタル等の開口部を有する網状体或いはセラミックス粒や発泡金属粒等の多孔質の担体が用いられる。これらの担体を、前記水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と水溶性高分子化合物或いはこれらと層状珪酸塩を混合した粘凋質の懸濁液中に浸漬して、前記板状体の開口部或いは多孔質粒の表面部に塗膜を形成させた後に熱処理して固化(不溶化)することにより、板状体のリン捕集部材或いは粒状のリン捕集部材が得られる。尚、前記不溶化処理されたPVAシート等の事前に不溶化処理された高分子材料のシートを用いる場合には、前述のとおり、表面層にリン捕集剤層が形成され、高分子材料のシート自体が担体の役割をするので、シート状のリン捕集部材となる。
次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。先ず、本発明で使用するリン捕集剤の実施例について説明する。
〔リン捕集部材の製造〕
水溶性Zr化合物として塩化ジルコニル(ZrOCl・8HO)を用い、水溶性高分子化合物としてPVA(重合度1700,ケン化度98%)を用いた。先ず、0.5モル/L(リットル)の塩化ジルコニル水溶液40mL(ミリリットル)に10wt%のPVA水溶液160mLを混合撹拌して均一混合物を形成し、エバポレータを用いて50〜60℃の熱水浴で体積が約半分になるまで濃縮した。この濃縮して得られた粘凋液中に24メッシュのステンレス金網を3回浸漬して該金網面に膜状に粘凋液をコーティングし、これを50℃で乾燥させ、この乾燥物を0.05モル/Lの水酸化ナトリウムで洗浄し、乾燥物中に残留している塩素分を除去した後、更に150℃で1時間熱処理を行ってステンレス金網を担体とする膜状のリン捕集部材を形成した。尚、ZrとPVAの架橋反応は、前記50〜60℃での濃縮工程や50℃での乾燥工程及び150℃での熱処理工程のいずれでも進行している。
〔高濃度リン酸溶液を用いたリンの捕集工程とリン捕集部材の再生〕
0.1モル/Lのリン酸(HPO)水溶液中に、実施例1で製造したリン捕集部材を1時間浸漬し、これを十分に水洗して付着したリン酸水溶液を除去した後、0.05モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して捕集したリン酸をリン捕集部材から溶出させると共にリン捕集部材の再生を行った。リン捕集量は水酸化ナトリウム水溶液中のリン酸濃度をICP分析によって測定した。そして再生したリン捕集材は再び前記リン酸水溶液中に1時間浸漬し、前述の手順で捕集したリン酸の溶出とリン捕集部材の再生及びリン捕集量の測定を繰り返し実施した。図1に繰り返し回数とリン捕集量(リン捕集量)の関係を示す。尚、このリン捕集と溶出メカニズムは、リン捕集部材中の水酸化ジルコニウムがリン酸と反応してリン酸ジルコニウム〔Zr(HPO〕様の非晶質の化合物を生成することにより、リン酸水溶液中のリン酸を捕集し、これを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することによって、リン酸基はリン酸ナトリウム〔NaPOやNaHPO〕となって溶出し、Zr基は元の水酸化ジルコニウムに再生されると考えられる。
図1から明らかなように、製膜に用いたZr−PVA複合乾燥膜1g当たり、初期に1.6ミリ当量(meq/g)以上のリン酸捕集量を示し、リン捕集部材は10回の切り返し使用においても1.3meq/gの捕集量を維持していた。その後、引き続き、20回の繰り返し使用によってもこの捕集量を保持しており,充分に実用に耐えるリン捕集部材であることが確認された。
〔低濃度リン酸溶液を用いたリンの捕集〕
実施例1で製造したリン捕集部材を各種リン酸濃度の水溶液に浸漬してリン酸捕集量を実施例2と同様の方法によって測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2008207095
表1から明らかなように1ppmの低濃度のリン酸溶液からもリン酸の回収が可能なことが分かる。又、人工海水を用いて同様の試験を行ったが、繰り返し再生して使用しても捕集量に殆ど変化がなく、海水中からのリン回収の可能性も確認された。
〔層状珪酸塩を併用したリン捕集材の製造〕
層状珪酸塩としてNa型モンモリロナイト(イオン交換容量CEC=100meq/100g)に水とアセトン(水:アセトン=2:1)を添加混合して均一に分散させ1wt.%のNa型モンモリロナイト分散液(Na−Mont分散液)を調整した。この分散液中に、別途調整した10wt.%のPVA水溶液を重量比でPVA/Mont=0.5の量を添加すると共に、0.1モル/Lの塩化ジルコニル水溶液を過剰に添加して撹拌混合することにより、モンモリロナイトの層間にモンモリロナイトとZrとPVAの架橋体(Mont−Zr−PVA)を合成した。得られた懸濁液をアセトンにて洗浄しつつ遠心分離器にて固形分(Mont−Zr−PVA)を分離回収し、得られた固形分を120℃にて1時間加熱処理して不溶化した粉粒状のリン捕集剤を製造した。
〔Mont−Zr−PVAによるリンの捕集と再生使用〕
0.1モル/Lのオルトリン酸水溶液を調製し、これに実施例4で製造したリン捕集剤の粉粒状体を添加して数時間撹拌し、リンの捕集を行った後、遠心分離してリン捕集剤を回収し、充分水洗した後、0.05モル/LのNaOH水溶液を加えて撹拌し、リン捕集材の再生とリン酸の溶液中への溶出(リン酸の回収)試験を行った。溶液中に溶出したリン酸量はICPにより計測してリン捕集量を測定した。又、再生したリン捕集剤を用いて同様の試験を複数回繰り返した。その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、本発明で使用するリン捕集材剤、同図の線(b)に示されている様に、6回の再生使用にも拘わらず、ほぼ一定したリン捕集量を示している。このことから、本発明に係るリン捕集剤は、再生して繰り返し使用することが可能であることが分かる。因みに、同図の線(a)に示したデータは、実施例4におけるPVAを添加することなくMont−Zrの架橋体を合成して同様の手法で製造したMont−Zr架橋体によるリン捕集剤を用いた試験例であり、1回目は高いリン捕集量を示すが、2回目、3回目とリン捕集量は次第に低下し、再生利用が不可能であることを示している。
上記したモンモリロナイト(Mont)の層間における架橋体の形成とリン酸捕集等について説明する。Montの格子定数a×bは5.21Å×9.12Åであり、α−リン酸Zrの格子定数は5.30Å×9.08Åであって共に層状構造を有しており、面内での格子定数及び原子配列は酷似している。従って、Montの層間にリン酸Zr層を挿入して交互に積層複合化して架橋化することが可能である。図3のX線回折パターン図に示す通り、Na−Montの底面間隔は12.5Åである(図中(a)参照)が、この水酸化ジルコニウム架橋により底面間隔は約22Åに拡大している(図中(b)参照)。これにオルトリン酸を加えると底面間隔は19.4Åになり(図中(c)参照)、Zr−Mont架橋体にリン酸が反応していることが分かる。d=7.6Åの回折ピークは架橋体の結晶外部に生成したα−リン酸Zrによるものと考えられる。また、水洗の繰り返しにより底面間隔が12.6ÅのMontに戻っていること(図中(d)参照)から、層間のZrはリン酸Zrと共に溶出してしまい、Zr−Mont架橋体は水洗に対して不安定であるから再生使用には適さないことが分かる。このことは、前記図2の線(a)に示された試験結果とも一致している。
これに対しMontにPVAを添加したものでは、図4のX線回折パターン図に示す通り、Montの底面間隔12.5Åから25Å(図中(a)参照)に膨潤している。これに塩化ジルコニル水溶液を添加してMont−Zr−PVAの架橋体を形成したものでは、底面間隔は24.9Å(図中(b)参照)と殆ど変化していないが、結晶性は向上していた。このMont−Zr−PVAの架橋体に水洗を繰り返しても底面間隔に殆ど変化はなく、再生使用が可能であることは、前記図2の線(b)に示された試験結果とも一致している。
〔チタン化合物を用いるリン捕集材の製造と再生試験〕
チタンテトライソプロポキシド(Ti(OC3H7)4)14.3gを1モル/L濃度の塩酸溶液240mlに加え(モル比でHCl/Ti=5)、室温で数時間撹拌した。チタンイソプロポキシドは加水分解により、最初はゲル状の白色沈殿を生じるが、撹拌を続けると塩酸により解膠し、透明な溶液が得られた。PVA(重合度2000,ケン化度98%)を5wt%含む水溶液にチタンイソプロポキシド塩酸溶液を加え混合した。この時、Ti/PVA重量比が0.3(30wt%)となるように混合量を調整した。得られた混合溶液を実施例1と同様に、24メッシュのステンレス製金網を用いて成膜し、50℃で乾燥、0.05モル/LのNaOH水溶液で洗浄後、乾燥器を用いて100℃で30分、続いて120℃で1時間乾燥させた。同様にして、チタン含有量(Ti/PVA)を10wt%に調整した試料を合成した。30及び10wt%のTi含有試料をそれぞれ、Ti(30)−PVA及びTi(10)−PVAと標記する。次に、このステンレス製金網に成膜したTi―PVAリン捕集部材を用いてリン酸の捕集試験を行った。試験にはリン濃度300ppmのリン酸溶液を用い、該リン捕集部材を5時間浸漬した後、溶液の濃度変化から捕集量を測定した。その後、該リン捕集部材をよく水洗し、0.05モル/LのNaOH水溶液にリン捕集部材を3時間浸漬し、溶液に溶出するリン酸量から脱着量を測定した。リン酸濃度の測定には、IPCを用いた。繰り返し試験は良好で、リンの捕集(吸着)と脱着量はよく対応している。5回までの繰り返し試験におけるリン脱着量から求めたリン捕集量の測定結果を図5に示す。この結果は、Ti―PVAがZr含有試料と同様に、リンの吸脱着に繰り返し使用できることを示している。Ti含有量の多いTi(30)−PVAは、含有量の少ないTi(10)−PVAに比較して、リン捕集容量(吸着量)が3倍以上に大きいことが分かった。
〔PVA紙を用いるリン捕集材の製造〕
PVA短繊維を原料に作られたPVAシート(部分的なフォルマール化処理が施されて不溶化されている市販のPVA紙)を約3cm角に裁断し、これを0.05モル/LのZrOCl・8HO水溶液に浸し、約80℃で1時間加熱後、50℃で乾燥、0.05モル/LのNaOH水溶液で洗浄した。その後、120℃で1時間加熱処理を行い、Zr−PVA複合体を作製した。この合成ではPVAシートは部分的に膨潤するが、溶解せず、シート形状を保持している。Zrの含有量は、ZrOCl・8HOの浸漬量を調整して、Zr/PVA重量比が約0.1となるようにした。得られたZr−PVAシートを用いて、リン酸の吸脱着試験を行った。Zr−PVAシートを300ppmのリンを含有するリン酸水溶液に12時間浸漬してリン吸着を行った後、水洗し、0.05モル/LのNaOH水溶液に浸漬してリンを脱着した。リンの吸脱着量はICP及びイオンクロマトグラフを用いて測定した。その結果を図6に示す。5回までの吸脱着試験によって、吸着容量は約0.38meq/gであり、PVAを溶解して作製して金網に担持させた試料に比較して、容量は低いが、繰り返し特性は良好であり、PVAシートを用いても、性能のよい繰り返し利用可能なリン捕集部材が製造できることが分かった。
〔亜リン酸の吸脱着試験〕
実施例1と同様な方法で作製したZr−PVAのリン捕集剤を金網に担持させたリン捕集部材を用いて、亜リン酸の吸脱着試験を行った。比較のため、同一のリン捕集部材を用いて、リン酸の吸脱着試験を行った。溶液のリン濃度はリン酸、亜リン酸共に、約3,000ppmである。その結果を図7に示す。同図から明らかなように、リン酸および亜リン酸はよく似た吸脱着容量を示し、繰り返し使用できることが分かった。
以上の説明は、水溶性Zr化合物として塩化ジルコニルを用いた例であり、水溶性Ti化合物としてチタンテトライソプロポキシドを用いた例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述した通り、他の水溶性或いは水分散性のZr化合物やTi化合物の使用が可能である。同様に、水溶性高分子化合物としてもPVAによる試験例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述した通り、ZrやTiと架橋反応を生じる他の水溶性高分子化合物の使用も可能である。要は、リン捕集能とアルカリ洗浄によるリン離脱能を有するZr又はTiと、これと架橋反応を生じる高分子化合物との任意の組合せであればよく、その組合せも特に限定されるものではない。又、アルカリ洗浄によってリン酸を離脱させて得られたリン酸水溶液は、不純物を殆ど含有しないアルカリリン酸塩水溶液であるので、産業上利用可能な形態としてのリン化合物として容易に回収することが可能である。
次に、本発明に係るリン捕集装置について説明する。図8は、本発明に係るリン捕集装置ユニットUの一例を示す要部断面図であり、図9は、その上面図である。これらの図において、リン捕集装置ユニットUは、複数のリン捕集部材3を、複数の平板状隔壁材1の間に、スペーサ2を介して一定間隔で配置し、これらをボルト等の締結部材4によって一体化した構造となっている。前記隔壁材1は、図9の上面図に示す通り、一定間隔で開口1aが形成されており、該開口を通して被処理水が各隔壁材間を自由に流通できるようになっている。リン捕集部材3は、前述の実施例1に記載した要領で製造されたものであって、矩形の開口を有する平織金網(担体)3の開口部にリン捕集剤3aを保持させた構造となっている。これら平板状隔壁材1とリン捕集部材3とをスペーサ2を介して所定間隔で複数枚積層してリン捕集装置ユニットUを構成する。
ここで、前記平板状隔壁材1は、一定間隔で開口1aが形成されているもので、開口の大きさや形状は基本的には任意であるが、図9に示した如く矩形の開口を碁盤目状に配置したり、千鳥状に配置するのが一般的であり、その大きさは、5〜10mm角か5〜10mm径程度が好ましい。又、材質は、耐水性と耐蝕性が要求されるので、ステンレスのパンチングメタルか合成樹脂製が好ましく、その厚みは、材質によって適宜決定されるが、余り厚くする必要はない。
次に、リン捕集部材3は、前述の通り担体3bにリン捕集剤3aを坦持させたものであり、図8に示した板状の担体3bとしては、大別して表面が比較的平坦なものと、比較的大きな起伏を有するものとの2種に区分できる。前者に属するものとしては、図示した平織金網の他、綾織金網,亀甲金網及びパンチングメタル等の比較的平坦な表面を有し且つ多数の開口を有する平板状多穴体又は不織布シート等の非水溶性の多孔質シート或いは前記水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と架橋反応する高分子化合物のシート等(以下総称して単に「平滑担体」と記載する。)がある。次に、後者に属する担体としては、ラス金網,クリンプ金網,エキスパンドメタル或いは多孔波板等の表面に比較的大きな起伏を有し且つ多数の開口を有する板状多穴凹凸体がある。
尚、前述のZr化合物又はTi化合物と架橋反応する高分子化合物シートの場合は、表面部に架橋反応によってリン捕集剤層が形成され、中心部に未架橋の部分が存在するが、予めフォルマール化処理等によって不溶化されたPVAシートの如く不溶性である。従って、本発明のリン捕集剤製造原料の1つである高分子化合物自体を担体とするものである。更に、類似のものとして、PVA等の不織布シートを予めフォルマール化処理等によって不溶化した高分子シートを用いるものもある。即ち、該不織布シートを前記Zr化合物又はTi化合物の水溶液中に浸漬して表面にこれらの化合物を付着させた後に熱処理して架橋反応を生起させ不溶化したものである。この場合にも、不織布シート自体が担体となり該担体とリン捕集部材とが一体化したものといえる。
次に、前記平板状隔壁材1の間隔は、スペーサ2の高さhによって決められるが、このスペーサ2の高さhによって被処理水の流路面積が決まるので、hが小さいと流路断面積が小さくなって流路抵抗が大きくなるが、乱流となり易く水中のリンの拡散が促進されてリン捕集剤との反応も促進される効果が期待される。一方、このhが大きいと流路断面積が大きくなって流路抵抗は小さくなるが、層流が形成され易く水中のリンの拡散速度が遅くなりリン捕集剤との反応速度も遅くなって、リン捕集装置ユニットUの単位容積当たりのリン捕集量が小さくなり効率が低下するおそれがある。従って、この間隔hは、水量とから乱流になり易い条件下で選定するのが好ましいといえる。
尚、リン捕集剤と水中のリン化合物との反応は、水中のリンの拡散律速であるので、この拡散速度を高めることがリンの捕集効率を上げるのには有効な手段である。そこで、本発明では、前述の担体として平滑担体を用いる場合には、図10に要部断面図を示している如く、平板状隔壁材1とリン捕集部材3との間に、所定間隔で開口部5aを有する金属波板等の流路障害を形成して乱流を生成する乱流形成部材5を配置するのが好ましい。この場合には、被処理水は乱流形成部材5によってジグザグの流れとなり、いたる所に渦流が形成されてリン捕集部材3の表面の境膜が剥離更新されて水中のリンとリン捕集剤との接触を促進し、反応速度を向上させることになる。尚、前記乱流形成部材5としては、上記波状多孔板の他、ラス金網やエキスパンドメタル等の突起部を有する金網も使用可能である。この乱流形成部材5の材質としては、被処理水やアルカリ水に耐食性を有するステンレスやプラスチック材が好適である。
以上の説明においては、リン捕集部材3と乱流形成部材5とを別体とした場合の例であるが、これを一体とすることも可能である。即ち、ラス金網やエキスパンドメタルや多孔波板自体を担体として、これにリン捕集剤を保持させたものである。この場合には、リン捕集部材の表面に沿って流れる流体に、その表面の凹凸によって乱流が形成されて境膜が剥離更新されるので、水中のリンとリン捕集剤との接触が促進され、反応速度を向上させることになる。
以上は、シート状のリン捕集部材の構造について述べたが、本発明は、これに限定されるものではないので、他のリン捕集部材の例についても説明する。図11はリン捕集部材の他の実施例を示すリン捕集装置ユニットの要部断面図であり、図12は図11に使用された担体とリン捕集剤を示す断面図である。両図において、平板状隔壁材1には規則的に所定の開口1aが形成されており、該開口1aに嵌合する様に、球状体等の多孔質立体状のリン捕集部材3が多数配置された構造になっている。該リン捕集部材3は、図12に示している通り、セラミックス又は発泡アルミニウム等で形成した多孔質球状体を担体3bとするものであり、該球状体を前述のZr化合物又はTi化合物と前記高分子化合物との混合水溶液中に浸漬して、表面にこれらの化合物を付着させた後に熱処理して架橋反応を生起させ、不溶化して、該表面にリン捕集部材3aを形成したものである。尚、担体3bには、無数の開口3cが存在しているので、その一部にもリン捕集剤が生成しており、これが恰も表面のリン捕集剤層を支える根の如き役割をして、該リン捕集剤層の保持を強固にする役割を果たしている。
尚、図示の例は、多孔質球体の例であるが、多孔質担体の形状はこれに限られず、直方体や立方体又は角錐を2つ合わせたような多面体或いはコンペイ糖の如き異形状であっても構わないが、前記Zr化合物又はTi化合物と前記高分子化合物との混合水溶液が内部に浸透する程度の多孔性を有している多孔性立体であることが好ましい。
次に、上記リン捕集装置ユニットを用いたリン捕集装置とその操作方法について説明する。図13は、本発明のリン捕集装置ユニットを用いたリン捕集装置の一例を示すフロー図であり、2基の反応槽6A,6Bを用いてリンの捕集と回収を行う様にした装置である。該反応槽内には前述のリン捕集装置ユニットが内蔵されており、図14にその内蔵例を示している。即ち、図14において、該反応槽6内には、3基のリン捕集装置ユニットU1〜U3が、順次90度ずつ方向を変えて直列配置されている。尚、この配置要領は任意であり、同方向に直列配置したり、複数を並列配置したり、複数基を直列配置したものを複数系列並列配置することも可能である。
図13に示した装置の運転要領について、図15のタイムチャートを用いて説明する。時間t0から装置の運転を開始し、反応槽6Aによるリン捕集工程を開始する(この時点では反応槽6Bは全く何らの処理を行っていない新品の状態にある)。先ず、反応槽6Aに連通する被処理水供給系配管L1及び処理水排出系配管L2のバルブV1,V5及びV9が「開」とされ、被処理水はバルブV1,廃刊L1,バルブV5を経て反応槽6Aに供給され、前述のリン捕集部材と接触して、リンはZr又はTiのリン酸化合物として選択的に捕集され、リンの捕集された処理水は、バルブV9,配管L2を経て系外に排出される。このときのリン回収用アルカリ水供給配管L3のバルブV2,V6,V8及びリン回収水配管L4のバルブV10,V12並びに反応槽6Bに連通する被処理水供給配管のバルブV7,V11は全て「閉」の状態にある。この運転状態は、処理水排出系配管L2に配置されているリン濃度計C1で連続的に計測して制御装置7に送信し、該制御装置7で所定の演算を行って自動的に管理される仕組みになっている。この運転過程におけるリン濃度変化を図15に示している。図15において、時間t0からt1の間は運転の立ち上がりの状態であり、リンを含む処理水がリン濃度計C1で計測(左縦軸目盛)が開始され、時間t1以降のリン濃度はP1で安定している。この状態は、被処理水中のリンが一定の割合で捕集されていることを示している。時間t2に達すると以後は次第にリン濃度が高くなり、捕集率が低下してきていることを示している。そこで、予め設定した閾値濃度(排水限界濃度)P2に達すると(時間t3)、これを検知して制御装置7からの信号により、バルブV1を「閉」として被処理水の供給を止め、反応槽6Aによるリン捕集工程を終了する。
次に、空気配管L5のバルブV3を「開」として反応槽6A内に空気を送給して該層内を空気置換するエアパージ工程に移行する。ここで反応槽6A内の残留処理水が排出されると、リン濃度計C1のリン濃度はゼロとなるから(時間t4)、これを検出して制御装置7からの信号により空気配管L5のバルブV3を「閉」としてエアパージ工程を終了する。
続いて反応槽6Bによるリン捕集工程と反応槽6Aによるリン回収工程が開始される。即ち、エアパージ工程の完了を検知すると、被処理水供給系配管L1のバルブV1及び反応槽6Bの被処理水供給系バルブV7並びに処理水排出系廃刊のバルブV11が「開」となり、反応槽6Bに被処理水が供給されて、反応槽6Bによるリン捕集工程が開始される。因みに、このときの反応槽6Bに連結した配管のバルブV8,V12は「閉」となっている。尚、反応槽6Bにおけるリン捕集工程の処理水のリン濃度と経過時間の関係は、前述の反応槽6Aの場合と同一であるので、重複説明は省略する。
一方、反応槽6Aでは、時間t4でエアパージの完了が検出されると、リン回収用のアルカリ水供給配管L3のバルブV2とV6が「開」とされ、同時に、リン回収水配管L4のバルブV10が「開」とされ、アルカリ水タンク(図示せず)からリン回収用アルカリ水が反応槽6A内に供給され、リン捕集部材によってZr又はTiのリン酸化合物として捕集されているリンを、アルカリ成分と反応させてアルカリリン酸塩として溶出させ、アルカリリン酸塩水溶液としてリン回収水配管L4から回収タンク(図示せず)に送給する様にしている。この回収水中にリン濃度は、該配管L4に設置されているリン濃度計C2で常時検出されて、その信号は制御装置7に送信されて演算処理され、バルブ操作が自動的に行われるように構成されていることは前述の場合と同じである。
この反応の状況を図15によって説明する。アルカリ水の反応槽6Aへの供給が開始されると、リン回収水配管L4に設けられているリン濃度計C2の値(右縦軸目盛)は、溶出したアルカリリン酸塩としてのリンを検出して急速に上昇し、時間t5ではリン濃度P3に達し、時間t6までこの状態が継続する。この間は、リン溶出反応が定常に達していることを示しており、時間t6を過ぎると次第にリン濃度は低下し始める。溶出リン濃度が予め設定された閾値濃度P4に達すると、これ以上のリン回収操作は、回収水のリン濃度を低下させることになるので、この閾値濃度P4を検出すると(時間t8)、その検出信号によりアルカリ水配管のバルブV2を閉じ、反応槽6Aのリン回収工程を終了し、その状態を、リン捕集工程にある反応槽6Bの処理水中のリン濃度が上限閾値濃度(排水限界濃度)P2に達する時間t9まで維持する。このリン捕集工程における処理水中のリン濃度が上限閾値P2に達すると、前述の通りエアパージ工程に移行するから、この上限閾値P2の検知信号に基づき、制御装置7からの信号によって、反応槽A,B両槽のエアパージ工程が同時に開始される。即ち、被処理水配管L1のバルブV1が閉じられ、両反応槽のバルブの状態はそのまま(V6,V7,V10,V11は「開」、V5,V8,V9,V12は「閉」)で、空気配管L5のバルブV3,V4を「開」としてエアパージ工程を開始し、前記リン濃度計C1,C2のいずれもがリン濃度を検出しなくなった時点(反応槽A,B中残液の排出が完了した時点)t10でエアパージ工程を完了する。続いて、反応槽Aでは前述のリン捕集工程に移行し、反応槽Bでは前述のリン回収工程に移行する(図12中時間t10以降)。
上記説明において、リン捕集工程におけるリン濃度の検出値はPPMレベルであるのに対し、リン回収工程におけるリン濃度の検出値は%レベルであるので、両濃度計C1,C2は、工程に応じて感度の切替え可能な濃度計とするのが好ましいが、予め感度の異なる2種の濃度計を用意して工程毎に切替え使用することも可能である。この意味において、図12のリン捕集工程における処理水リン濃度を示す左縦軸の濃度はPPMレベルであるのに対し、リン回収工程における回収水リン濃度を示す右縦軸の濃度は%レベルである。
尚、上記説明では、リン捕集工程とリン回収工程における各反応槽に供給される被処理水とアルカリ水の流量は大きく異なるから、図15には、反応槽Bおけるリン捕集工程と反応槽Aにおけるリン回収工程とを同時に開始した場合には、リン回収工程が先に終了する様にアルカリ水の流量を設定してエアパージを同時に行えるようにした例を示しているが、本発明は、必ずしも本例に限定されるものではなく、複数の各反応槽毎に独立してリン捕集工程→エアパージ工程→リン回収工程→エアパージ工程の各工程が繰り返される様に制御回路7のプログラムを設定する方式もある。いずれを選択するかは、反応槽の容量と被処理水の量やリン濃度等に応じて個的な方法を採用すればよい。
本発明は、水溶性Zr化合物又は水溶性Ti化合物と水溶性高分子化合物とを原料として安価に且つ容易にリン捕集剤を製造することができ、しかも、従来のように使い捨てするものではなく再生使用可能なリン捕集剤であるので、再生の結果として回収されるリン酸塩は、他の不純物を含有していないので、新たなリン資源として有効に利用することができるから、廃水中からのリン回収、河川や湖沼からのリン回収、更には海洋からのリン回収等に使用できる。従って、単に従来の環境問題や生態系保全の問題だけでなく、100%輸入に頼っているリン資源の回収によるリサイクルシステムの確立が容易となる。この意味で、本発明は、我が国の資源戦略上からも極めて有用な発明であるので、その社会的影響は大なるものがあり、各方面での利用が期待される。
本発明に係るZr−PVA系のリン捕集剤の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 本発明に係るモンモリロナイト−Zr−PVA系リン捕集剤及び比較例としてのモンモリロナイト−Zr系リン捕集剤の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 モンモリロナイト及びモンモリロナイト−Zr系架橋体のX線回折パターン図である。 モンモリロナイト−PVA系及びモンモリロナイト−Zr−PVA系のX線回折パターン図である。 本発明に係るTi−PVA系のリン捕集剤の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の他の例を示すグラフである。 本発明に係るPVAシートを用いたリン捕集剤の再生利用回数とリン酸捕集量との関係の1例を示すグラフである。 本発明に係るZr−PVA系のリン捕集材による亜リン酸とリン酸の捕集量とリン捕集材の再生利用回数との関係の例を示すグラフである。 本発明に係るリン捕集装置ユニットの1実施例を示す要部断面図である。 図5のリン捕集装置ユニットの平面図である。 本発明に係るリン捕集装置ユニットの他の実施例を示す要部断面図である。 本発明に係るリン捕集装置ユニットの更に他の実施例を示す要部断面図である。 図11に示したリン捕集装置ユニットに用いられるリン捕集剤担体の例を示す概念図である。 本発明に係るリン捕集装置の1例を示す系統図である。 図13の装置に使用する反応槽の例を示す概念図である。 図13の装置の処理工程を示すタイムチャートである。
符号の説明
1 隔壁材
1a 開口
2 スペーサ
3 リン捕集部材
3a リン捕集剤
3b 担体
3c 開口
4 締結手段
5 乱流形成部材
5a 開口部
6、6A、6B 反応槽
7 制御装置
U リン捕集装置ユニット

Claims (18)

  1. 被処理水中のリン化合物を捕集するリン捕集装置のユニットであって、
    リン捕集機能を有するジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上を高分子化合物と複合化させて不溶化してなる再生利用可能なリン捕集剤(3a)と該リン捕集剤を坦持した担体(3b)とから構成されたリン捕集部材(3)を、複数の隔壁材(1)間に配置して一体化してなることを特徴とするリン捕集装置ユニット。
  2. 前記隔壁材(1)が多数の開口(1a)を有する平板であり、該開口を通して被処理水を流通可能にしてなる請求項1に記載のリン捕集装置ユニット。
  3. 前記リン捕集部材(3)が、平織金網,綾織金網,亀甲金網或いはパンチングメタル等の比較的平坦な表面を有し且つ多数の開口を有する平板状多穴体若しくは不織布シート等の非水溶性の多孔質シートを担体(3b)となし、該平板状多穴体又は多孔質シートに前記リン捕集剤(3a)を保持させてなる請求項1又は2に記載のリン捕集装置ユニット。
  4. 前記リン捕集部材(3)が、ラス金網,クリンプ金網,エキスパンドメタル或いは多孔波板等の表面に比較的大きな起伏を有し且つ多数の開口を有する板状多穴凹凸体を担体(3b)となし、該板状多穴凹凸体の開口部に前記リン捕集剤(3a)を保持させてなる請求項1又は2に記載のリン捕集装置ユニット。
  5. 前記リン捕集部材が、前記高分子化合物のシートの表面にジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上を複合化させて不溶化することにより、前記高分子化合物自体を担体となし、その表面部にリン捕集剤層が形成されてなるものである請求項1に記載のリン捕集装置ユニット。
  6. 多数の前記平板状隔壁材(1)間に夫々スペーサ(2)を介してリン捕集部材(3)を配置し、これらを締結手段(4)によって一体化してなる請求項2乃至5のいずれかに記載のリン捕集装置ユニット。
  7. 前記平板状隔壁材(1)とリン捕集部材(3)との間に、被処理水の流れに乱流を形成する乱流形成部材(5)を配置してなる請求項6に記載のリン捕集装置ユニット。
  8. 前記乱流形成部材(5)が、表面に大きな起伏を有するラス金網,エキスパンドメタル又は多孔波板である請求項7に記載のリン捕集装置ユニット。
  9. 前記リン捕集部材(3)が、セラミックッス又は金属の多孔質立体を担体(3b)とし、その表面部に前記リン捕集剤(3a)を坦持させたものであって、前記平板状隔壁(1)の前記開口(1a)に前記球状体の一部を嵌入して保持させてなる請求項2に記載のリン捕集装置ユニット。
  10. 前記リン捕集剤(3a)が、ジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上と前記高分子化合物とを膨潤性層状珪酸塩の層間に介在させると共に、ジルコニウム化合物又はチタン化合の一種以上と前記高分子化合物及び珪酸塩とを複合化させて不溶化してなるものである請求項1乃至9のいずれかに記載のリン捕集装置ユニット。
  11. 前記膨潤性層状珪酸塩が、モンモリロナイト,ヘクトライト等のスメクタイトに属する天然珪酸塩鉱物又は合成スメクタイトである請求項10に記載のリン捕集装置ユニット。
  12. 前記ジルコニウム化合物又はチタン化合物が、塩化ジルコニル,硫酸ジルコニル,硝酸ジルコニル,酢酸ジルコニル,炭酸ジルコニルアンモニウム,キレート系ジルコニウム,アミノカルボン酸系ジルコニウム,水酸化ジルコニウムゾル,ジルコニアゾル,三塩化チタン,四塩化チタン,硫酸チタン,酸塩化チタン,乳酸チタン,ペルオキソチタネート,キレート系チタネート,チタニアゾルの群から選ばれた水溶性又は水分散性のジルコニウム化合物又はチタン化合物の1種以上である請求項10又は11に記載のリン捕集装置ユニット。
  13. 前記高分子化合物が、ポリビニルアルコール,エチレンビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリアリルアミン及びカルボキシメチルセルロース,これらポリマーの共重合体及びブロックポリマーの群から選ばれた水溶性高分子化合物の1種以上である請求項10乃至12のいずれかに記載のリン捕集装置ユニット。
  14. 前記請求項1乃至13のいずれかに記載のリン捕集装置ユニットを1以上内蔵してなる反応槽により、被処理水中のリンの捕集と回収を行う様にしたことを特徴とするリン捕集・回収装置。
  15. 前記反応槽を複数基並列配置してリンの捕集とリンの回収を交互に切り替えて行う様にしてなる請求項14に記載のリン捕集・回収装置。
  16. 前記請求項14に記載の複数の反応槽(6A,6B)を用いて、被処理水中のリン化合物を捕集すると共に、これをリン酸塩として回収するリン捕集・回収方法であって、
    前記反応槽内にリン化合物を含む被処理水を連続供給して該反応槽内のリン捕集剤によって、所定量のリンを捕集するリン捕集工程と、
    該リン捕集剤が所定量のリンを捕集したことを検知して前記被処理水の供給を停止し、アルカリ水を供給することにより、前記捕集されたリンをアルカリリン酸塩として溶出させるリン回収工程とを含み、
    前記リン捕集工程とリン回収工程とを交互に繰り返すようにしてなることを特徴とするリン捕集・回収方法。
  17. 前記リン捕集工程とリン回収工程との間に、反応槽内を空気置換するエアパージ工程を設けてなる請求項16に記載のリン捕集・回収方法。
  18. 前記リン捕集工程及びリン回収工程の終了時期を、前記反応槽出口に配置されたリン濃度計により水中リン濃度を検出し、該リン濃度を所定の閾値と比較して判断するようにしてなる請求項16又は17に記載のリン捕集・回収方法。
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