JP2008198524A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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哲郎 南野
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Abstract

【課題】正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制でき、さらに、電池特性の優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、前記正極活物質は、その表面にフッ素置換炭化水素基を有し、前記非水電解質は、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含むことを特徴とする非水電解質二次電池を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関し、特に正極活物質及び非水電解質に関する。
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、及びPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯用電子機器の発展により、その主電源やバックアップ電源として用いられる電池として、高エネルギー密度を有する二次電池が求められている。リチウムイオン二次電池は、高電圧、及び高エネルギー密度を有している点からこのような用途に適した二次電池として注目を集めている。
また、携帯用電子機器の電源として用いられているリチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池が主流となっている。このような非水電解質二次電池は、一般に、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物を含む正極と、負極活物質として炭素材料等を含む負極とを、セパレータを介して対向させ、渦巻状に捲回または積層する等して電極群を構成し、これを非水電解質とともに電池ケース内に封入して、作製される。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等からなる多孔質フィルム等が用いられている。また、非水電解質は、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液が一般的である。非水溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステル等が用いられている。また、溶質(支持電解質)としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)及び四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)等のリチウム塩が用いられている。
さらに、エネルギー密度を高めるために、正極活物質を高電位まで充電し、放電容量を大きくする試みが提案されている。しかしながら、正極活物質を高電位まで充電すると、正極活物質の劣化、非水電解質への正極活物質の溶解、及び非水電解質の分解による充放電サイクル特性の低下が顕著になり、寿命特性が劣るという課題があった。
充放電サイクル特性の低下を抑える技術として、非水電解質二次電池を構成する正極及び非水電解質等の改良が試みられている。正極を主に改良した技術としては、以下のような技術が知られている。
LiとCoとを含有するCo系酸化物に、Mg、Al、Mn、Ti及びSrから選ばれる少なくとも1種を含有する正極活物質と、少なくとも表層に非晶質炭素層を有する導電材とを含む正極を備える非水電解質二次電池が知られている(例えば、特許文献1)。
正極活物質として、その電位曲線におけるLi基準電位4.0〜4.2Vの領域にステップ状の変曲点を有するものを用いた非水電解質二次電池が知られている(例えば、特許文献2)。
Liと、Co及びNiのうち少なくとも一方と、酸素とを含むリチウム複合酸化物を含む正極活物質を含有し、炭酸リチウムおよび硫酸リチウムの総量は、正極活物質に対して1.0質量%以下である正極と、プロトン性不純物の濃度が電解質に対する質量比でプロトンに換算して20ppm以下である電解質とを備えた非水電解質二次電池が知られている(例えば、特許文献3)。
表面にリチウム−ニッケル複合酸化物又はリチウム−ニッケルコバルト複合酸化物の被膜が形成されたリチウム−コバルト複合酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池が知られている(例えば、特許文献4)。
また、非水電解質を主に改良した技術としては、正極活物質として、LiCoOに亜鉛(Zn)を添加したものを用い、非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)比を、一般的に使用される3/7から1/9に低減させることが提案されている(例えば、非特許文献1)。
特開2001−167763号公報 特開2001−176511号公報 国際公開第03/019713号パンフレット 特開2000−195517号公報 第44回電池討論会 予稿集 282頁
特許文献1によれば、正極活物質の相転移に伴う正極活物質の劣化を抑制し、電解液の酸化分解を抑制できることが記載されている。また、特許文献2によれば、正極活物質の崩壊を抑制できることが開示されている。しかしながら、特許文献1及び特許文献2が提案する非水電解質二次電池では、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制することは困難である。
また、特許文献3によれば、高電圧下においても、金属の溶出を抑えることができる旨が記載されているが、不純物に起因する正極活物質の溶解を抑制する効果があったとしても、正極活物質の溶解を充分に抑えることはできない。
特許文献4によれば、リチウム−コバルト複合酸化物より溶解しにくいリチウム−ニッケル複合酸化物又はリチウム−ニッケルコバルト複合酸化物で表面に被膜を形成することにより、正極活物質の溶解、特に高温でのコバルトの溶出を抑制できることが開示されている。しかしながら、リチウム−ニッケル複合酸化物又はリチウム−ニッケルコバルト複合酸化物の皮膜を正極活物質の表面に形成させても、正極活物質の溶解を充分に抑えることができるとは言えない。
このように、特許文献1〜4に記載の非水電解質二次電池は、正極活物質の組成を変える等の改良がなされているが、いずれの非水電解質二次電池も、ECのような正極活物質への配位能力の高い高配位能溶媒が正極活物質に直接、接触することには変わりはないので、寿命特性が優れたものを得ることは困難である。
また、非特許文献1によれば、ECのような配位能力の高い高配位能溶媒の比率を低減することで、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制できることが開示されている。しかしながら、DEC等の配位能力の低い溶媒の比率を増加させると、支持電解質であるリチウム塩の解離度が低下し、非水電解質のリチウムイオン伝導性が低下してしまう。したがって、高率充放電特性が低下し、優れた電池特性を発揮できない。
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制でき、もって、電池特性の優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、前記正極活物質は、その表面にフッ素置換炭化水素基を有し、前記非水電解質は、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含むことを特徴とする非水電解質二次電池である。
正極活物質を溶解させやすい高配位能溶媒は、正極活物質表面上のフッ素置換炭化水素基がもつ撥水性及び撥油性によって、正極活物質に接触しにくくなる。これにより、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制できる。一方、高配位能溶媒中に添加されるフッ素含有化合物は、フッ素置換炭化水素基との親和性に優れるため、正極活物質表面に接近することができ、また、非水電解質中のリチウムイオンを溶媒和することでリチウムイオンの移動を促進させることができる。これにより、フッ素含有化合物によって、非水電解質中のリチウムイオンと正極活物質との電極反応が促進され、優れた電池特性を維持できる。
したがって、上記構成によれば、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制でき、さらに、電池特性の優れた非水電解質二次電池が得られる。
前記フッ素置換炭化水素基は、正極活物質の表面と化学的に結合されることが好ましい。上記構成によれば、フッ素置換炭化水素基が正極活物質の表面から容易には離脱しないので、正極活物質の溶解を抑制する効果をより長期間、発揮できる。
前記フッ素置換炭化水素基は、フッ素置換炭化水素基含有化合物が末端に有する反応性官能基を介して、前記正極活物質の表面と結合されることが好ましい。上記構成によれば、反応性官能基は正極活物質表面に存在する水酸基と反応するため、正極活物質の表面全体に均一に、フッ素置換炭化水素基が化学的に結合できる。また、前記反応性官能基が、アルコキシシラン基及びハロゲン化シラン基の少なくとも1種であることが、水酸基との反応性に優れ、取扱も比較的容易な点で好ましい。
前記フッ素含有化合物が、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を分子内に有するフッ素含有化合物であることが、非水電解質中のリチウムイオンと正極活物質との電極反応を促進する効果が高い点で好ましい。特に、フッ素含有化合物が、フッ素含有エーテル化合物及びフッ素含有エステル化合物の少なくとも1種である場合、リチウムイオンの溶媒和能に優れるため、好ましい。
前記高配位能溶媒が、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、環状スルホン及び鎖状スルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、正極活物質への配位能力が高いだけでなく、耐酸化性及び耐還元性に優れ、広い電位窓を有する点で好ましい。
前記正極活物質が、リチウム含有遷移金属複合酸化物であって、前記遷移金属が、コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。上記構成によれば、正極活物質表面のフッ素置換炭化水素基により、特にこれら遷移金属の非水電解質への溶解を抑制することができる。
前記正極活物質は、その表面に0.01〜2質量%の前記フッ素置換炭化水素基を有することが、正極活物質の充填性を低下させることなく、正極活物質の溶解を抑制できる点で、好ましい。
前記非水電解質は、リチウム塩を含み、前記リチウム塩の濃度が、1モル/L以上であることが、優れた電池特性を発揮する点で好ましい。
本発明によれば、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制でき、さらに、電池特性の優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、前記正極活物質は、その表面にフッ素置換炭化水素基を有し、前記非水電解質は、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含む。
本発明の正極活物質は、上述のように、その表面にフッ素置換炭化水素基を有するので、高配位能溶媒が、正極活物質に接触しにくくなる。このことは、フッ素置換炭化水素基は、撥水性・撥油性に優れるので、高配位能溶媒とフッ素置換炭化水素基との親和性が低いことによると考えられる。したがって、高配位能溶媒は、正極活物質に配位して正極活物質を溶解させやすいが、本発明においては、高配位能溶媒が正極活物質に接触しにくいので、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制できる。
前記フッ素置換炭化水素基は、炭化水素基の水素のうち少なくとも1つをフッ素に置換した官能基であればよく、炭化水素基の水素の一部をフッ素に置換した官能基であってもよいし、炭化水素基の全ての水素をフッ素に置換した官能基であってもよい。フッ素置換炭化水素基における炭化水素基は、脂肪族であっても脂環族であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖であっても分岐していてもよい。フッ素置換炭化水素基における好ましい炭化水素基は、炭素数10以下の直鎖飽和脂肪族アルキル基である。好ましいフッ素置換炭化水素基の具体例としては、例えば、トリデカフルオロオクチル(CF(CF(CH)基及びノナフルオロヘキシル(CF(CF(CH)基等が挙げられる。
前記フッ素置換炭化水素基は、正極活物質の表面に付着されていれば、正極活物質の溶解を抑制する効果を発揮できるが、正極活物質の表面と化学的に結合されていることが好ましい。フッ素置換炭化水素基が正極活物質の表面と化学的に結合されていると、ファンデルワールス力等の弱い分子間力で付着されているにすぎない場合と比較して、フッ素置換炭化水素基が正極活物質の表面から離脱しにくいので、正極活物質の溶解を抑制する効果をより長期間、発揮できる。
前記フッ素置換炭化水素基を正極活物質の表面に化学的に結合させる方法としては、フッ素置換炭化水素基を正極活物質の表面に化学的に結合できる表面処理であればよく、特に制限されない。好ましい方法の具体例としては、例えば、末端に反応性官能基を有するフッ素置換炭化水素基含有化合物を溶解又は分散させた溶媒に、正極活物質を添加し、攪拌する方法が挙げられる。攪拌する際、室温で行ってもよいし、加熱してもよい。このようにして得られた、フッ素置換炭化水素基含有化合物が末端に有する反応性官能基を介して、フッ素置換炭化水素基が正極活物質の表面に結合されている正極活物質は、正極活物質の表面全体に均一に、フッ素置換炭化水素基が化学的に結合されているので、好ましい。このことは、フッ素置換炭化水素基含有化合物を均一に付着した後に、フッ素置換炭化水素基が正極活物質表面の外側に、反応性官能基が表面側に配向するとともに、表面側に配向した反応性官能基が正極活物質表面にある水酸基等の官能基と反応することによって、フッ素置換炭化水素基が正極活物質の表面と共有結合を形成することによると考えられる。
また、前記反応性官能基としては、正極活物質の表面の水酸基等と化学反応して結合を形成する官能基であればよい。好ましい反応性官能基の具体例としては、例えば、チオール基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基及びハロゲン化シラン基等のシラン基、酸無水物、ハロゲン化ボラン基、ハロゲン化ホスフィノ基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシシラン基及びハロゲン化シラン基が、特に好ましい。また、アルコキシシラン基は、トリアルコキシシラン基であることが、ハロゲン化シラン基は、トリハロゲン化シラン基であることが、上述のような配向で結合しやすいため、特に好ましい。アルコキシシラン基を有するフッ素置換炭化水素基含有化合物の場合、アルコキシ基が加水分解してシラノール化されて、そのシラノール化されたフッ素置換炭化水素基含有化合物と、正極活物質の水酸基とが水素結合を形成すると考えられる。その後、フッ素置換炭化水素基含有化合物のシラノール基と正極活物質の水酸基とが、脱水縮合反応することにより、フッ素置換炭化水素基含有化合物がより強固に結合された正極活物質が得られると考えられる。また、ハロゲン化シラン基を有するフッ素置換炭化水素基含有化合物の場合も、アルコキシシラン基を有するフッ素置換炭化水素基含有化合物の場合と同様、ハロゲン基と正極活物質の水酸基とが脱ハロゲン化水素反応することにより、フッ素置換炭化水素基含有化合物がより強固に結合された正極活物質が得られると考えられる。このように、反応性官能基として、アルコキシシラン基及びハロゲン化シラン基は、水酸基との反応性に優れ、取扱も比較的容易であるという理由で好ましい。
末端に反応性官能基を有するフッ素置換炭化水素基含有化合物の好ましい具体例としては、例えば、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(CF(CF(CHSi(OMe))及びノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(CF(CF(CHSiCl)等が挙げられる。
前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な遷移金属複合酸化物であれば、公知のリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いることができるが、リチウム含有遷移金属複合酸化物の遷移金属が、コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この構成によれば、正極活物質表面のフッ素置換炭化水素基により、特にこれら遷移金属の非水電解質への溶解を抑制することができる。好ましい正極活物質の具体例としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−yMyO、LiMn、LiMn2−y、LiMPO、LiMPOF(式中、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBのうち少なくとも一種であることを示し、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3であることを示す。)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が挙げられる。上記x値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。正極活物質は、上記各正極活物質を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記正極活物質は、その表面に0.01〜2質量%の前記フッ素置換炭化水素基を有することが、正極活物質の充填性を低下させることなく、正極活物質の溶解を抑制できる点で、好ましい。フッ素置換炭化水素基の正極活物質に対する割合は、正極活物質の比表面積に依存するが、この範囲で付与されることが好適である。フッ素置換炭化水素基が少なすぎると、フッ素置換炭化水素基の撥水性及び撥油性に基づく効果が充分に発揮されない傾向があり、正極表面に高配位能溶媒が配位可能となって正極活物質の溶出が生じるおそれがある。一方、フッ素置換炭化水素基が多すぎると、活物質の充填性が低下するおそれがある。
非水電解質は、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含む。高配位能溶媒は、正極活物質に配位して正極活物質を溶解させやすいが、本発明では、上述のように、高配位能溶媒が正極活物質に接触しにくいので、正極活物質を高電位まで充電しても、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制できる。しかしながら、非水電解質二次電池は、充放電時に、非水電解質と電極との間でリチウムイオンが移動する電極反応が必要であるが、高配位能溶媒が正極活物質に接触しにくいと、高配位能溶媒と正極との間でリチウムイオンが移動する電極反応が起こりにくい。一方、フッ素含有化合物は、非水電解質中のリチウムイオンと正極活物質との電極反応を促進させることができる。このことは、フッ素含有化合物によりリチウムイオンが溶媒和されて正極表面に移動することができ、さらに、フッ素含有化合物とフッ素置換炭化水素との親和性が高いので、リチウムイオンが溶媒和されたフッ素含有化合物が正極活物質に接近可能であることによると考えられる。したがって、本発明の非水電解質二次電池は、高配位能溶媒と正極活物質表面とが接触しにくくても、優れた電池特性を維持できる。
さらに、フッ素含有化合物は、電子吸引基であるフッ素を有するので、電子密度が低く、耐酸化性に優れる。よって、フッ素含有化合物が正極と接触しても、フッ素含有化合物が酸化されたり、正極活物質を溶解させたりしないので、電池寿命及び保存性の優れたものが得られる。
前記フッ素含有化合物は、フッ素を含む溶媒であればよいが、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を分子内に有するフッ素含有化合物であることが、非水電解質中のリチウムイオンと正極活物質との電極反応を促進する効果が高い点で好ましい。特に、フッ素含有化合物が、フッ素含有エーテル化合物及びフッ素含有エステル化合物の少なくとも1種である場合、リチウムイオンの溶媒和能に優れるため、好ましい。これらのフッ素含有化合物は、電子密度は低下するものの、酸素の非共有電子対を用いてリチウムイオンと錯形成可能なため、充放電を速やかに進行させることができると考えられる。
前記フッ素含有化合物の好ましい具体例としては、例えば、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、n−ブチル−トリフルオロアセテート、ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、4−フルオロフェニルメチルスルホン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
前記高配位能溶媒としては、非共有電子対を有する原子を含む高配位能溶媒であることが、耐酸化性及び耐還元性に優れ、広い電位窓を有する点で好ましい。非共有電子対を有する原子とは、エステル基やカルボニル基中の酸素やアミン中の窒素等が挙げられる。
前記高配位能溶媒の好ましい具体例としては、例えば、環状炭酸エステル(環状カーボネート類)、鎖状炭酸エステル非環状カーボネート類)、環状カルボン酸エステル、環状スルホン及び鎖状スルホン等が挙げられる。環状炭酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。鎖状炭酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジプロピルカーボネート(DPC)等が挙げられる。環状カルボン酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)及びγ−バレロラクトン(GVL)等のラクトン類等が挙げられる。環状スルホンの具体例としては、例えば、スルホラン(SL)及び3−メチルスルホラン(3MeSL)等が挙げられる。鎖状スルホンの好ましい具体例としては、例えば、スルホン等が挙げられる。高配位能溶媒は、上記各高配位能溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非水電解質は、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質であればよく、液状、ゲル状又は固体(高分子固体電解質)状の電解質のいずれであっても用いることができる。
液状の非水電解質(非水電解液)は、上記フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより得られる。また、ゲル状非水電解質は、上記フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒と、この高配位能溶媒が保持される高分子材料とを含むものである。この高分子材料の好ましい具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
前記リチウム塩としては、公知のリチウム塩を用いることができる。このリチウム塩の好ましい具体例としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiOSOCF、LiOCOCF、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム及びビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等のホウ酸塩類、ビステトラフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CFSONLi)、テトラフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))及びビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((CSONLi)等のイミド塩類等を挙げることができる。これらの中でも、LiPFがより好ましい。リチウム塩は、上記各リチウム塩を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記非水電解質は、前記リチウム塩の濃度が、1モル/L以上であることが、優れた電池特性を発揮させる点で好ましい。
上記高配位能溶媒とリチウム塩との組み合わせは、特に限定されるものではないが、高配位能溶媒としてEC、PC、SLから選ばれる少なくとも一つを含み、リチウム塩としてLiPFを少なくとも含む非水電解液が好ましい。
また、前記非水電解質には、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルを含有させてもよい。炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルは、負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い皮膜を形成し、充放電効率が高くなると考えられる。
炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルは、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有していれば、公知の環状炭酸エステルを用いることができる。この環状炭酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記各環状炭酸エステルは、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
さらに、前記非水電解質には、過充電時に分解して電極上に皮膜を形成し、電池を不活性化する従来からよく知られているベンゼン誘導体を含有してもよい。前記ベンゼン誘導体は、フェニル基と、前記フェニル基に隣接する環状化合物基とからなることが好ましい。前記環状化合物基の好ましい具体例としては、例えば、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基等が挙げられる。ベンゼン誘導体の具体例としては、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、ベンゼン誘導体の含有率は、10体積%以下であることが好ましい。
前記正極は、正極集電体と、その上に形成された正極合剤層とからなるものである。正極合剤は、前述の正極活物質、必要により結着剤及び導電剤を混合して得られる。正極合剤は、例えば、溶剤を含むペースト状、及びスラリー状等の状態で得られる。正極は、例えば、ペースト状の正極合剤を正極集電体上に塗着させて得られる。
前記結着剤は、公知の樹脂結着剤を用いることができる。この結着剤の好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、アラミド樹脂、ポリアミド及びポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル及びポリメタクリル酸ヘキシルエステル等のアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルピロリドン等のビニル樹脂、ポリエーテル及びポリエーテルサルフォン等のポリエーテル、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヘキサフルオロポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等の含フッ素樹脂等が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸及びヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。これらの中でも、耐熱性及び耐薬品性が高いので、含フッ素樹脂が好ましく、PVDF、PTFEが特に好ましい。結着剤は、上記各結着剤を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記導電剤は、構成された電池において化学変化を起こさない導電剤であれば、公知の導電剤を用いることができる。この導電剤の好ましい具体例としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)及び人造黒鉛等の黒鉛類、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維及び金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、銅、ニッケル、アルミニウム及び銀等の導電性粉末類、酸化亜鉛及びチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物類、ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられる。これらの中でも、人造黒鉛及びアセチレンブラックが特に好ましい。導電剤は、上記各導電剤を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、導電剤を含むことは、非水電解液中のリチウムイオンと正極との電極反応を促進できる点で好ましい。
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、それぞれ正極活物質80〜97質量%、導電剤1〜20質量%、結着剤2〜7質量%であることが好ましい。
前記溶剤は、実質的に水を含んでいなければ、公知の溶剤を用いることができる。この溶剤の好ましい具体例としては、例えば、脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。実質的に水を含まない溶媒を用いる理由は、正極活物質が、水分に弱く、水によって分解されてフッ化水素等が発生するためである。
前記正極集電体は、公知の正極集電体を用いることができる。正極集電体としては、例えば、長尺の、多孔性構造の導電性基板であってもよいし、無孔の導電性基板であってもよい。この導電性基板に用いられる材料の好ましい具体例としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム及びチタン等が挙げられる。正極集電体の厚みは、特に限定されないが、極板の強度を維持しながら軽量化することができる点で、1〜500μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
負極は、負極集電体と、その上に形成された負極合剤層とからなるものである。負極合剤は、負極活物質、必要により結着剤及び導電剤を混合して得られる。負極合剤は、例えば、溶剤を含むペースト状、及びスラリー状等の状態で得られる。負極は、例えば、ペースト状の負極合剤を負極集電体に塗着させて得られる。
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能であれば、公知の負極活物質を用いることができる。負極活物質の好ましい具体例としては、例えば、珪素化合物、錫化合物、炭素材料、金属、金属繊維、酸化物、窒化物、各種合金等が挙げられる。これらの中では、珪素(Si)や錫(Sn)等の、単体、合金、化合物、又は固溶体等の珪素化合物や錫化合物が容量密度が大きい点から好ましく用いられ、炭素材料も好ましく用いられる。珪素化合物の好ましい具体例としては、例えば、Si、SiO(0.05<x<1.95)又はSiO中のSiの一部を、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N及びSnからなる群から選択される少なくとも1つ以上の元素で置換した合金、化合物及び固溶体等が挙げられる。また、錫化合物の好ましい具体例としては、例えば、NiSn、MgSn、SnO(0<x<2)、SnO、SnSiO及びLiSnO等が挙げられる。炭素材料の好ましい具体例としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)及び人造黒鉛等の黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラック等のカ−ボンブラック類、コークス、熱分解炭素類、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛化メソフェーズ小球体、気相成長炭素、ガラス状炭素類、炭素繊維(ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、セルロース系、気相成長炭素系)、不定形炭素、有機物の焼成された炭素材料、球状炭素、非晶質炭素等が挙げられる。負極活物質は、上記各負極活物質を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記負極合剤の結着剤は、前記正極合剤の結着剤と同様のものを用いることができる。また、前記負極合剤の導電剤は、前記正極合剤の導電剤と同様のものを用いることができる。
負極活物質及び結着剤の配合割合は、それぞれ負極活物質93〜99質量%、結着剤1〜7質量%であることが好ましい。
前記負極集電体は、公知の負極集電体を用いることができる。負極集電体としては、例えば、長尺の、多孔性構造の導電性基板であってもよいし、無孔の導電性基板であってもよい。この導電性基板に用いられる材料の好ましい具体例としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル及び銅等が挙げられる。負極集電体の厚みは、特に限定されないが、極板の強度を維持しながら軽量化することができる点で、1〜500μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
正極と負極との間には、セパレータが備えられる。セパレータとしては、大きなイオン透過度、及び所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。セパレータの具体例として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等が単独又は組み合わされたオレフィン系ポリマー、ポリアミド又はガラス繊維等からなるシート、不織布、及び織布等が挙げられる。セパレータは、一定温度、例えば、120℃以上で孔が閉塞し、抵抗を上げるシャットダウン性を有するものや、さらに高温、例えば、200℃以上になっても、融解して大きな穴が形成されない耐メルトダウン性を有するものが好ましい。セパレータの厚さは、特に制限されず、10〜300μmであることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、前述の正極及び負極をセパレータを介して捲回又は積層された電極群を電池ケースに挿入し、これに後述の非水電解液を注液して封口して組み立てられる。
本発明の非水電解質二次電池は、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型の電池あるいは電気自動車等に用いる大型電池等いずれの形状、大きさにも適用できる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に用いられるが、特にこれらに限定されない。
以上、本発明を詳細に説明したが、上記説明は、全ての局面において、例示であって、本発明がそれらに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
以下に、本発明に関する実施例が示されるが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
[実施例1]
(i)正極活物質の合成
CoとLiCOとを化学両論量(モル比Co:Li=1:1)混合し、900℃で反応させてLiCoOを合成した。合成したLiCoO10gを2質量%のGE東芝シリコーン社製トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(CF(CF(CHSi(OMe))を含むメタノール10gに投入し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、LiCoOを含む固形分を濾別し、アセトンで充分に洗浄を行った後、100℃で2時間乾燥させた。処理前後の質量変化から、LiCoOに対してトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランが反応して約0.5質量%の質量増加が見られた。これを正極活物質として用いた。
(ii)正極の作製
上記(i)で合成されたフッ素含有炭化水素基を有する正極活物質85質量部と、導電剤であるアセチレンブラック10質量部と、結着剤のポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部とを混合し、これらを脱水N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状の正極合剤を調製した。この正極合剤を厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延して、厚み約80μmのシート状の正極を得た。
(iii)非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とAldrich社製ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテルを体積比9:1で混合した後、LiPFを1.2mol/Lの濃度で溶解させて非水電解液とした。
(iv)負極の作製
人造黒鉛85質量部と、導電剤であるアセチレンブラック10質量部と、結着剤のポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部とを混合し、これらを脱水N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状の負極合剤を調製した。この負極合剤を厚み15μmの銅箔からなる負極集電体上に塗布し、乾燥後、圧延して、厚み約90μmのシート状の負極を得た。
(V)非水電解質二次電池の組み立て
正極および負極を35mmX35mmの大きさに切りだし、それぞれ、リード付きのアルミ板および銅板に超音波溶接した。ポリプロピレン製のセパレータを間に、各電極が対向するようにアルミ板および銅板をテープ固定して一体化した。次に、この一体化物を両端が空いている筒状のアルミラミネート袋に納め、リード部分において、袋の一方の開口部を溶着した。そして、他方の開口部から調製しておいた電解液を滴下した。
このようにして組み立てた非水電解質二次電池を、5.0mAの電流で1時間充電した後、10mmHgで10秒間、脱気し、さらに、注液した開口部を溶着により封止した。これを実施例1とする。
[実施例2]
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテルに代えて、Aldrich社製のn−ブチル−トリフルオロアセテートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。これを実施例2とする。
[実施例3]
非水電解液のLiPF濃度を2.0mol/Lにしたこと以外は実施例2と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。これを実施例3とする。
[実施例4]
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランに代えてGelest社製ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(CF(CF(CHSiCl)を用いて合成したフッ素含有炭化水素基を有する正極活物質を用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例4とする。
[実施例5]
非水電解液として、エチルメチルカーボネート(EMC)とビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン及びビニルエチレンカーボネート(VEC)を体積比89:10:1で混合した後、LiPFを0.8mol/L溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例5とする。
[実施例6]
非水電解液として、EMCとビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン及びVECを体積比89:10:1で混合した後、LiPFを1.0mol/L溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例6とする。
[実施例7]
CoとLiCOとを化学両論量混合し、900℃で反応させてLiCoOを合成した。合成したLiCoO10gを2質量%のトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランを含むメタノール40gに投入し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、LiCoOを含む固形分を濾別し、アセトンで充分に洗浄を行った後、100℃で2時間乾燥させた。処理前後の質量変化から、LiCoOに対してトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランが反応して約2質量%の質量増加が見られた。このようにして得られたLiCoOを正極活物質として用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例7とする。
[実施例8]
CoとLiCOとを化学両論量混合し、900℃で反応させてLiCoOを合成した。合成したLiCoO10gを2質量%のトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランを含むメタノール60gに投入し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、LiCoOを含む固形分を濾別し、アセトンで充分に洗浄を行った後、100℃で2時間乾燥させた。処理前後の質量変化から、LiCoOに対してトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランが反応して約3質量%の質量増加が見られた。このようにして得られたLiCoOを正極活物質として用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例8とする。
[実施例9]
CoとLiCOとを化学両論量混合し、900℃で反応させてLiCoOを合成した。合成したLiCoO10gを0.04質量%のトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランを含むメタノール10gに投入し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、LiCoOを含む固形分を濾別し、アセトンで充分に洗浄を行った後、100℃で2時間乾燥させた。処理前後の質量変化から、LiCoOに対してトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランが反応して約0.01質量%の質量増加が見られた。このようにして得られたLiCoOを正極活物質として用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例9とする。
[実施例10]
CoとLiCOとを化学両論量混合し、900℃で反応させてLiCoOを合成した。合成したLiCoO10gを0.02質量%のトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランを含むメタノール10gに投入し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、LiCoOを含む固形分を濾別し、アセトンで充分に洗浄を行った後、100℃で2時間乾燥させた。処理前後の質量変化から、LiCoOに対してトリデカフルオロオクチルトリメトキシシランが反応して約0.005質量%の質量増加が見られた。このようにして得られたLiCoOを正極活物質として用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例10とする。
[実施例11]
非水電解液として、スルホラン(SL)とAldrich社製の4−フルオロフェニルメチルスルホンを体積比9:1で混合した後、LiPFを1.2mol/L溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを実施例11とする。
[実施例12]
非水電解液として、プロピレンカーボネート(PC)とAldrich社製のヘキサフルオロベンゼンを体積比9:1で混合した後、LiPFを1.2mol/L溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして電池を作製した。これを実施例12とする。
[比較例1]
(i)正極活物質の合成
LiCOとCoとZrOとを、Li:Co:Zrのモル比が1:0.995:0.005となるようにしてボールミルにて混合した後、空気雰囲気中にて850℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均粒子径が13μmのリチウム含有遷移金属複合酸化物を得た。これを正極活物質として用いた。
(ii)正極の作製
上記で得た正極活物質に、導電剤としての炭素と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを、活物質と導電剤と結着剤の質量比が90:5:5の比率になるようにして加えた後に練合して、正極合剤を作製した。この正極合剤を用いて、実施例1の正極の作製と同様の方法でシート状の正極を得た。
(iii)非水電解液の調製
ECとジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:9で混合した溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を、濃度が1mol/Lとなるように溶解して、電解液を作製した。
(iv)負極の作製
実施例1の負極の作製と同様の方法でシート状の負極を得た。
(v)非水電解質二次電池の組み立て
上記正極、負極及び非水電解液を用い、実施例1の電池の組み立てと同様の方法で充電した非水電解質二次電池を得た。これを比較例1とする。
[比較例2]
(i)正極活物質の合成
LiCOとCoとAlとを、Li:Co:Alのモル比が1:0.97:0.015となるようにしてボールミルにて混合した後、空気雰囲気中にて850℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均粒子径が7μmのリチウム含有遷移金属複合酸化物LiCo0.97Al0.03を得た。これを正極活物質として用いた。
(ii)正極の作製
上記(i)で合成した正極活物質を用い、実施例1の正極の作製と同様の方法でシート状の正極を得た。
(iii)非水電解液の調製
ECとEMCを体積比1:2で混合した後、LiPFを1.4mol/Lの濃度で溶解させて非水電解液とした。
(iv)負極の作製
実施例1の負極の作製と同様の方法でシート状の負極を得た。
(v)非水電解質二次電池の組み立て
上記正極、負極及び非水電解液を用い、実施例1の電池の組み立てと同様の方法で充電した非水電解質二次電池を得た。これを比較例2とする。
[比較例3]
(i)正極活物質の合成
原料としてLiCOとCoとをモル比が3:2になるよう混合し、GeOをCoに対して0.005原子比置換させる量だけ加え、さらにアルコールと水の混合物(50:50)を加えてボールミル中で室温,15時間混合した。これを酸素雰囲気中で200℃,1時間、さらに、600℃で5時間保持した後、850℃で20時間焼成した。このようにしてリチウム含有遷移金属複合酸化物LiCo0.995Ge0.005を得た。これを正極活物質として用いた。
(ii)正極の作製
上記(i)で合成した正極活物質を用い、比較例1の正極の作製と同様の方法でシート状の正極を得た。
(iii)非水電解液の調製
ECとEMCを体積比1:2で混合した後、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させて非水電解液とした。
(iv)負極の作製
実施例1の負極の作製と同様の方法でシート状の負極を得た。
(v)非水電解質二次電池の組み立て
上記正極、負極及び非水電解液を用い、実施例1の電池の組み立てと同様の方法で充電した非水電解質二次電池を得た。これを比較例3とする。
[比較例4]
(i)正極活物質の合成
LiCO粉末とCoCO粉末とをモル比Li:Co=1:1となるように混合した後、これを空気中900℃で5時間焼成し、これを粉砕することによって平均粒径3.5μmのLiCoO粒子を得た。次いで、硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)と硝酸コバルト(Co(NO・6HO)の混合水溶液(モル比Ni:Co=4:1となるような割合で混合したもの)中に水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)を過剰添加し、平均粒径0.1μmの水酸化ニッケルコバルト(Ni0.8Co0.2(OH))の沈殿物を得た。こうして得られたLiCoO粒子とNi0.8Co0.2(OH)粉末とLiCO粉末とを、LiCoOのCoに対するNi0.8Co0.2(OH)のNi:Coのモル比2:8となるように混合し、LiCoO粒子表面をNiCo(OH)粉末微粒子とLiCO粉末微粒子が覆うような状態とし、これを空気中750℃で5時間焼成し、LiCoO粒子表面にLiNi0.8Co0.2の層が形成された平均粒径3.8μmの正極活物質を作製した。
(ii)正極の作製
上記(i)で合成した正極活物質を用い、実施例1の正極の作製と同様の方法でシート状の正極を得た。
(iii)非水電解液の調製
ECとDECを体積比1:1で混合した後、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させて非水電解液とした。
(iv)負極の作製
実施例1の負極の作製と同様の方法でシート状の負極を得た。
(v)非水電解質二次電池の組み立て
上記正極、負極及び非水電解液を用い、実施例1の電池の組み立てと同様の方法で充電した非水電解質二次電池を得た。これを比較例4とする。
[比較例5]
非水電解液として、ECとDECを体積比1:9で混合した後、LiPFを1.0mol/L溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。これを比較例5とする。
上記実施例1〜12及び比較例1〜5の正極活物質上のフッ素置換炭化水素基の有無、フッ素置換炭化水素基含有化合物(表面処理剤)、フッ素置換炭化水素基の付着量(質量%)、フッ素含有化合物、非水電解液の組成(体積比)及びLiPF濃度(mol/L)を、表1に示す。
Figure 2008198524
実施例1〜12及び比較例1〜5の各非水電解質二次電池を3セットずつ用意し、上限電圧4.2V、下限電圧2.5Vの間で、20時間率で5サイクル充放電を行い、その後、下記の評価(高率放電特性評価、寿命特性評価及び保存特性評価)を行った。
[高率放電特性]
実施例1〜12及び比較例1〜5の各非水電解質二次電池を、25℃雰囲気下にて上限電圧4.4Vまで10時間率にて充電を行った後、下限電圧2.5Vまで、10時間率、1時間率、0.5時間率にて放電を行い、それぞれの放電容量(mAh)を測定した。なお、各放電後には10時間率にて下限電圧2.5Vまで残存容量を放電させてから、次の充電を行った。高率放電特性(10時間率放電容量に対する1時間率放電容量の比、10時間率放電容量に対する0.5時間率放電容量の比)及び10時間率放電容量を、表2に示す。
Figure 2008198524
表2から、正極活物質として、表面にフッ素置換炭化水素基を有するものを用い、非水電解質として、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含む非水電解液を用いた実施例1〜12は、高率放電特性及び10時間率放電容量は、高く、各実施例がほぼ同じ値であることがわかる。これに対して、フッ素含有化合物を含まない非水電解液を用いた比較例5は、高率放電特性が低く、特に0.5時間率放電容量と10時間率放電容量の比が90%を下回り、実施例1〜12と比較して低いことがわかる。これらのことから、実施例1〜12は、高率放電特性が優れ、比較例5は、高率放電特性が劣ることが明らかである。
この理由として、正極活物質表面のフッ素置換炭化水素基と、非水電解液の溶媒であるEC及びDECとの親和性が低いため、正極活物質表面のフッ素置換炭化水素基でのリチウムイオンの移動が阻害されたものと考えられる。一方、フッ素含有化合物を含む実施例1〜12は、フッ素含有化合物がフッ素置換炭化水素基と高い親和性を有するため、このフッ素含有化合物が活物質表面でのリチウムイオンの授受を容易にしたと考えられ、高率放電特性が比較例5と比較して優れていると考えられる。
なお、フッ素置換炭化水素基を有していない正極活物質を用いた比較例1〜4は、実施例1〜12と同様、高率放電特性及び10時間率放電容量が高いことがわかる。このことは、フッ素置換炭化水素基が有していないので、高配位能溶媒にフッ素含有化合物が含まれていなくても、高率放電特性が低下しなかったためと考えられる。
さらに詳細にデータを比較すると、高配位能溶媒として環状カーボネートではなく鎖状カーボネート(EMC)を用いた実施例5と実施例6は、10時間率放電容量及び高率放電特性が、それぞれ他の実施例(例えば、実施例1)に比べて若干低くなった。このことは、溶媒に鎖状カーボネートであるEMCを用いたため、エチル基及びメチル基の分子運動によりカルボニル基のリチウムイオンへの配位能力が環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートに比べて低いため、リチウム塩の解離度が低下し、電解質のイオン導電率が低下したためであると考えられる。
また、フッ素置換炭化水素基が正極活物質に対して3質量%付着された実施例8は、10時間率放電容量及び高率放電特性が、それぞれ他の実施例(例えば、実施例1)に比べて若干低くなった。このことは、フッ素置換炭化水素基が多く付きすぎたため、正極活物質の充填性が悪化したものと考えられる。よって、実施例7のようにフッ素置換炭化水素基は正極活物質に対して2質量%を超えない程度で付着されることが好ましい。
フッ素含有化合物の組成に着目すると、フッ素含有スルホン化合物(4−フルオロフェニルメチルスルホン)を用いた実施例11及びフッ素含有炭化水素(ヘキサフルオロベンゼン)を用いた実施例12は高率放電特性が若干、他の実施例(例えば、実施例1)に比べて劣っている。これは、実施例11については、スルホンは他の実施例(実施例1〜10)で用いたフッ素含有エーテル化合物やフッ素含有エステル化合物に比べて粘性が高いためリチウムイオンの拡散性が低下したことが原因として考えられる。また、実施例12については、リチウムイオンと配位するための官能基がヘキサフルオロベンゼンには存在しないため、リチウムイオンと溶媒和せず、フッ素置換炭化水素基中のリチウムイオンの移動の改善効果が小さかったこと、がそれぞれ原因として考えられる。
以上の結果から、フッ素含有化合物を添加することで、高率放電特性が改善されることが明らかとなった。さらに、高配位能溶媒には鎖状カーボネートよりも環状カーボネートがより好ましいこと、フッ素置換炭化水素基は2重量%以下であることがより好ましいことが明らかとなった。また、フッ素含有化合物としてはフッ素含有エーテル化合物やフッ素含有エステルが好ましいことが示された。
[寿命特性]
実施例1〜12及び比較例1〜5の各非水電解質二次電池について、45℃雰囲気にて上限電圧4.4V、下限電圧2.5Vの間で、1時間率にて充放電を繰り返し行った。放電容量が1サイクル目の70%以下にまで低下したところで、電池寿命と判定した。実施例1〜12及び比較例1〜5の各非水電解質二次電池の電池寿命に達するまでの充放電のサイクル数を、表3に示す。
Figure 2008198524
表3から、正極活物質として、表面にフッ素置換炭化水素基を有するものを用い、非水電解質として、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含む非水電解液を用いた実施例1〜12は、310サイクル以上の寿命特性の優れたものであることがわかる。特に、実施例1〜4,6〜9,11,12は、500サイクル以上の特に優れた寿命特性を示すことがわかる。これに対して、フッ素置換炭化水素基を有さない比較例1〜4は、150〜300サイクル程度の寿命特性の劣ったものであることがわかる。これらのことから、実施例1〜12は、寿命特性が優れ、比較例1〜4は、寿命特性が劣ることが明らかである。なお、フッ素置換炭化水素基を有するものの、フッ素含有化合物を含まない比較例5は、電池特性が劣るので、充放電を過酷な条件でやらなければならず、電池寿命が実施例1〜12と比較して劣ると思われる。
さらに、以下のことが明らかである。比較例1のように、正極活物質として、LiCoOにZnを添加したものを用い、非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)比を、1/9に低減させても、電池寿命が低い。このことから、非特許文献1に記載の非水電解質二次電池では、本発明のような高寿命化を達成できないことが明らかである。
比較例2のように、LiとCoとを含有するCo系酸化物に、Alを含有する正極活物質と、少なくとも表層に非晶質炭素層を有する導電材とを含む正極を用いても、電池寿命が低い。このことから、特許文献1に記載の非水電解質二次電池では、本発明のような高寿命化を達成できないことが明らかである。
比較例3は、電位曲線におけるLi基準電位4.0〜4.2Vの領域にステップ状の変曲点を有する正極活物質であると特許文献2に記載されているLiCo0.995Ge0.005を用いても、電池寿命が低い。このことから、特許文献2に記載の非水電解質二次電池では、本発明のような高寿命化を達成できないことが明らかである。
比較例4のように、表面にリチウム−ニッケルコバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2)の被膜が形成されたリチウム−コバルト複合酸化物を正極活物質として用いても、電池寿命が低い。このことから、特許文献4に記載の非水電解質二次電池では、本発明のような高寿命化を達成できないことが明らかである。
以上より、非特許文献1及び特許文献1〜4に記載の非水電解質二次電池は、寿命特性が優れたものを得ることは困難であることが明らかである。このことは、いずれの非水電解質二次電池も、ECのような正極活物質への配位能力の高い高配位能溶媒が正極活物質に直接、接触することには変わりはないためであると考えられる。
さらに、詳細にデータを比較すると、フッ素置換炭化水素基が正極活物質質量に対して0.005質量%しか付着されていない実施例10は、310サイクルで寿命となり、他の実施例と比べて悪い結果となった。これは実施例10ではフッ素置換炭化水素基の量が少ないため、溶媒であるECと正極活物質とが反応し、副反応が生じたためであると考えられる。実施例9のように少なくとも0.01質量%以上のフッ素置換炭化水素基が形成されていることが好ましいと考えられる。
また、非水電解液中のリチウム塩(LiPF)濃度が0.8mol/Lと低かった実施例5については432サイクルで寿命となった。これは理由が定かではないが、リチウム塩濃度が高い方が寿命特性が改善されることを示しているものと考えられる。実施例6のように少なくとも1.0mol/L以上のリチウム塩濃度であるほうが好ましいと考えられる。
以上の結果から、本発明のように、フッ素置換炭化水素基を付与した正極活物質を用いると、従来技術に比べて電池の寿命特性を改善することが可能であることが明らかとなった。また、フッ素置換炭化水素基は活物質に対して0.005質量%を越える量、すなわち0.01質量%以上を付与することが望ましいことが示された。また、非水電解液中のリチウム塩濃度は0.8mol/Lを越える量、すなわち、少なくとも1.0mol/L以上であるが望ましいことが示された。
[保存特性]
実施例1〜12及び比較例1〜5の各非水電解質二次電池について、25℃雰囲気にて4.4Vから2.5Vの範囲で10時間率にて充放電を行った後、上限電圧4.4Vまで10時間率で充電した後、85℃にて3日間保存した。25℃雰囲気にて10時間率で2.5Vまで残存容量を放電し、再度、10時間率にて4.4から2.5Vの範囲で充放電を行った。この後、電池を分解して負極を取りだし、ジメチルカーボネートで洗浄した後、減圧乾燥を行った。負極を塩酸で処理して水溶液中のコバルト量、比較例4についてはコバルト量とニッケル量をICP発光分析にて定量した。これにより、正極から溶出した金属元素量を定量化することが可能である。保存前の放電容量に対する保存後に充放電を行った際の放電容量の比(容量回復率)と、負極に析出した金属析出量(コバルト量及びニッケル量)を表4に示す。
Figure 2008198524
表4から、正極活物質として、表面に化学的に結合されたフッ素置換炭化水素基を有するものを用い、非水電解質として、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含む非水電解液を用いた実施例1〜12は、容量回復率が85%以上であり、金属析出量が1ppm以下である優れた保存特性を有することがわかる。これに対して、フッ素置換炭化水素基を有さない比較例1〜4は、容量回復率が85%未満であり、金属析出量が1ppmを超えており、保存特性の劣ったものである。このことは、正極活物質の表面に、フッ素置換炭化水素基を有することによると考えられる。これらのことから、実施例1〜12は、保存特性が優れ、比較例1〜4は、保存特性が劣ることが明らかである。
さらに、上記のことから、非特許文献1及び特許文献1〜4に記載の非水電解質二次電池のように、高配位能溶媒が正極活物質に直接、接触する場合、電池寿命が優れたものを得ることが困難であるだけでなく、保存特性が優れたものを得ることも困難である。
さらに詳細にデータを比較すると、フッ素置換炭化水素基の付着量が0.005質量%と少なかった実施例10以外の実施例は、容量回復率が90%程度であり、金属析出量が0.2ppm程度であり、保存特性の非常に優れたものである。
このように負極に析出したコバルト及びニッケル量の分析結果から、明らかに本実施例において析出コバルト量が低減できたことが分かる。容量回復率と析出コバルト及びニッケル量の間に相関が見られることから、本発明の効果は正極の溶出を抑制したことに発現するものと考えられる。
以上より、本発明に係る非水電解質二次電池は、非水電解質への正極活物質の溶解を抑制でき、さらに、電池特性の優れたものである。

Claims (10)

  1. リチウムイオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、
    前記正極活物質は、その表面にフッ素置換炭化水素基を有し、
    前記非水電解質は、フッ素含有化合物を添加した高配位能溶媒を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記フッ素置換炭化水素基は、前記正極活物質の表面と化学的に結合される請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記フッ素置換炭化水素基は、反応性官能基を介して前記正極活物質の表面と結合される請求項2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記反応性官能基が、アルコキシシラン基及びハロゲン化シラン基の少なくとも1種である請求項3に記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記フッ素含有化合物が、酸素原子及び窒素原子の少なくとも1種を分子内に有するフッ素含有化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記フッ素含有化合物が、フッ素含有エーテル化合物及びフッ素含有エステル化合物の少なくとも1種である請求項5に記載の非水電解質二次電池。
  7. 前記高配位能溶媒が、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、環状スルホン及び鎖状スルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  8. 前記正極活物質が、リチウム含有遷移金属複合酸化物であって、
    前記遷移金属が、コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  9. 前記正極活物質は、その表面に0.01〜2質量%の前記フッ素置換炭化水素基を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  10. 前記非水電解質は、リチウム塩を含み、
    前記リチウム塩の濃度が、1モル/L以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
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