JP2008156907A - 地中空洞の施工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】大断面の地中空洞14を施工するに際し、施工領域の周囲に先行トンネル(ルーフシールドトンネル6)を配列して施工領域を取り囲む改良ゾーンを形成するとともに、施工領域の端部の位置にその横断面に沿う褄部凍結ゾーン10を形成する。その褄部凍結ゾーン10を施工領域の軸方向に間隔をおいて多重に形成してそれらの間に未凍結地山を残す。多重の褄部凍結ゾーンの間に残される未凍結地山を取り囲む周部凍結ゾーン11を褄部凍結ゾーン10と一体に形成するとともに、該周部凍結ゾーンを先行トンネルの外面に付着させた状態で形成する。
【選択図】図11
Description
すなわち、本線トンネルおよびランプトンネルはそれぞれ在来のシールド工法により地山を安定に支保し、また止水性を確保しつつ支障なく施工できるが、分岐合流部では断面を漸次変化させつつ双方のシールドトンネルどうしを接合する必要があることから、分岐合流部の施工に際しては在来のシールド工法をそのまま適用できるものではなく、何らかの補助工法の採用が不可欠である。
これは、施工するべき分岐合流部の外側に複数のルーフシールドトンネルを所定間隔で先行施工してシールドルーフ先受工を構築するとともに、それらルーフシールドトンネル間および施工領域の端部の地山に対して凍結工法あるいは薬液注入工法による改良ゾーンを形成して施工領域全体を改良ゾーンにより取り囲んだ後に、その内側を掘削して分岐合流部を施工するというものである。
すなわち、上記工法においては改良ゾーンの形成を凍結工法により行うことが好適であるとされ、ルーフシールドトンネル間にそれらを連結するように環状の凍結ゾーンを形成することは特に支障なく行い得るが、施工領域の端部に対してその横断面に沿うように凍結ゾーンを施工することは必ずしも容易ではない。
つまり、そのような凍結ゾーンを形成するためには、ルーフシールドトンネル内からその内側の地山に凍結管を打ち込んで施工領域の端部を閉塞し得る大断面の凍土壁を形成することになるのであるが、地山の状況によってはそのような凍土壁の所要壁厚は数mないし10mにも及ぶことが想定されることからそのために多大な手間と費用を要するばかりではなく、土質によってはその施工の際に過度の凍結膨張が生じることも想定され、それに起因して地山が凍結時に隆起したり解凍時に沈下する等の問題を生じる懸念もある。
なお、以上のことは上記のようなトンネル工法によって道路トンネルにおける分岐合流部を施工する場合のみならず、凍結工法による大規模な凍土壁や凍結ゾーンを地中に設ける場合一般に同様に生じる問題でもあり、そのような問題を解決し得る有効適切な手法の開発が急務とされている。
しかも、全体を1枚の凍土壁の形態で形成する場合に比べて個々の褄部凍結ゾーンの所要厚を小さくできるから、その点においても凍結膨張が生じ難いものであるし、その施工に際してはコスト削減と工期短縮を図ることができる。
本実施形態では、図1〜図2にその概要を示すように、本線シールドトンネル1とランプシールドトンネル2とをいずれも在来のシールド工法により施工するとともに、それらの分岐合流部には予めシールドルーフ先受工3と凍結ゾーン(改良ゾーン)8を施工したうえで本設覆工壁4を先行施工していき、その内側を掘削することで分岐合流部となる地中空洞を掘削することを主眼とするものである。
なお、本実施形態では本線シールドトンネル1の直径がたとえば16m程度、ランプシールドトンネル2の直径がたとえば11m程度であることを想定している。また、本実施形態における分岐合流部の全体の断面形状は、図2〜図3に示されるように手前側(図3(a)参照)から前方側(図3(b)参照)に向かって漸次縮小するような横長楕円形状とされ、上述のように本実施形態ではそのような分岐合流部の断面形状に合致する本設覆工壁4を内部の掘削に先立って先行施工することを主眼とするものである。
勿論、可能であれば全てのルーフシールドトンネル6をそれぞれ独立のルーフシールド機5により同時に施工することでも良いし、あるいは、分岐合流部の先端部に達したルーフシールド機5をそこからUターンさせて他のルーフシールドトンネル6を逆方向に連続的に施工することも考えられる。
また、ランプシールドトンネル2の側壁部からルーフシールド機5を発進させるための手法としては、在来のシールドトンネルの側壁部からのシールド機の発進手法、および在来のシールドトンネルどうしのT字接合技術をそのまま採用可能である。
その具体的な施工方法としては、各ルーフシールドトンネル6の内部からそれに隣り合っているルーフシールドトンネル6の上部および下部に向けてそれぞれ斜め後方(斜め前方でも良い)に長尺の放射凍結管9aをたとえば1m程度の間隔で密に多数打ち込むとともに、各ルーフシールドトンネル6内には埋込凍結管9bを取り付け、それらの凍結管によって周囲地山を凍結させることによって、シールドルーフ先受工3の内外の全体を覆うような凍結ゾーン8を形成する。凍結ゾーン8の厚みは地山状況やルーフシールドトンネル6間の間隔等を考慮して設定すれば良いが、たとえば1m程度で充分である。
凍結管9aを斜め方向に打設するのは、ルーフシールドトンネル6に対して直交方向に打設する場合に比して1本あたりの打設長さは長くなるが、一方でルーフシールドトンネル6からの打設間隔が大きくなるために打設本数が少なくなるので、結果的に施工効率が良くなりコスト低減が図れるからである。
なお、上記のような凍結工法による凍結ゾーン8を形成することに代えて、薬液注入による地盤改良による改良ゾーンを形成することでも良く、その場合には凍結管に代えて薬液注入管を打ち込めば良い。
なお、分岐合流部の前方側(小径側)の褄部に対しては、図3(b)に示したように上記の凍結ゾーン8を本線シールドトンネル1の周囲にも形成することで充分であるが、必要であればそこにも上記と同様に褄部凍結管9cを打ち込んで褄部凍結ゾーン10をさらに形成することでも良い。
そのような覆工体23を全てのルーフシールドトンネル6間に形成していき、ルーフシールドトンネル6間の覆工体23の形成が済んだところから順次、各ルーフシールドトンネル6の内部にも同様に鉄筋20を組み立てるとともに必要に応じて補剛材21を組み立てて覆工コンクリートを打設することによって同様の覆工体23を相互に連結しつつ形成していき、最終的には図8〜図9に示すように各ルーフシールドトンネル6間および各ルーフシールドトンネル6内に、全体として剛に連結されたリング状断面の一連の本設覆工壁4を施工する。
また、ルーフシールドトンネル6間の掘削は、ルーフシールドトンネル6内からその側方を掘削することで行えば良いが、分岐合流部の手前側ではルーフシールドトンネル6間に充分な間隔があるので、図1に示すようにそこでは簡易なルーフシールド35を設置してその内側を小形ロードヘッダー等の掘削機36を用いてオープンシールド工法の手法で掘進することも可能である。
いずれにしても、その掘削に際しては隣り合っているルーフシールドトンネル6自体を作業通路として有効に利用して資材や掘削土の搬送を効率的に行うことができ、ルーフシールドトンネル6内への覆工体23の施工はそのような作業通路としての供用が完了したものから順次行えば良い。
そして、図8に示すようにその内側全体を掘削して大断面の分岐合流部を完成させる。その掘削は、分岐合流部の内側を通過している本線シールドトンネル1のセグメントを解体してその周囲を拡幅していくことで行えば良く、その際には細かな加背割を行う必要はないので、大型重機を支障なく使用して効率的な掘削作業を行うことができる。
なお、分岐合流部を掘削することでその内面側に各ルーフシールドトンネル6のセグメントが露出することになるが、図8に示すようにそのセグメントは撤去して本設覆工壁4を露出させれば良く、それにより分岐合流部の内面を自ずと平坦面とすることができる。ただし、必ずしもそのようにする必要はなく、たとえばインバート部に位置するルーフシールドトンネル6はそのままにインバート部に埋め殺すことでも良く、その場合にはルーフシールドトンネル内全体に覆工コンクリートを充填してしまえば良い。
そして、最終的に分岐合流部の両端部に対して褄壁となる覆工壁を本設覆工壁4の内側にそれぞれ設け、手前側の褄壁には本線シールドトンネル1とランプシールドトンネル2とを接合し、前方側の褄壁には本線シールドトンネル1を接合すれば、分岐合流部の覆工全体の完成となる。
また、凍結ゾーン8の厚さの範囲内においてルーフシールドトンネル6間を掘削して覆工体23を施工するとともに、ルーフシールドトンネル6内にも同様の覆工体23を一体に連結して施工して、それら一連の覆工体23による本設覆工壁4を先行施工してからその内側を掘削するので、大規模な分岐合流部のような地中大空洞を掘削に際して万全の支保効果と止水効果が得られる。
さらに、本実施形態によれば、基本的にはいずれも多くの実績のある在来のシールド工法や凍結工法、掘削工法を有機的に組み合わせるものであるから、安全性や信頼性に優れるばかりでなく、比較的低コストでの施工が可能であり、特に都市圏における大深度・大断面の道路トンネルを施工する際に適用して最適な工法であるといえる。
図10(a)は図5におけるX−X線視断面図であって、2面の褄部凍結ゾーン10を間隔をおいて二重に形成してそれらの間に未凍結地山を残すようにしたものである。それら褄部凍結ゾーン10はそれぞれルーフシールドトンネル6内からその内側の地山に対して褄部凍結管9cが打ち込まれることで形成されるものである。また、ルーフシールドトンネル6内には埋込凍結管9bも設置されてそれによりルーフシールドトンネル6の外面に付着する状態で周部凍結ゾーン11も形成され、その周部凍結ゾーン11は前後の褄部凍結ゾーン10と一体となってそれらを連結するとともに、その内側に残される未凍結地山を取り囲むようになっている。
そして、そのような安定かつ頑強な大規模な凍土壁を設けるにも拘わらず、個々の褄部凍結ゾーン10や周部凍結ゾーン11に生じる凍結膨張はそれらの内側に残される未凍結地山により吸収されてしまうから、それらの全体を単なる1枚の凍土壁として形成する場合に比べて自ずと凍結膨張が生じ難いものとなり、したがって過度の凍結膨張に起因する地山の隆起や解凍時の沈下といった悪影響を効果的に防止することが可能である。
しかも、個々の褄部凍結ゾーン10や周部凍結ゾーン11の所要厚は、全体を1枚の凍土壁の形態で形成する場合に比べてそれぞれ小さくできるから、その点においても凍結膨張が自ずと生じ難いものとなるし、その施工に際してコスト削減と工期短縮を図ることも可能である。
また、本線シールドトンネル1が施工領域の内側を通過してから褄部凍結ゾーン10を形成することも考えられるが、その場合においては、褄部凍結管9cをルーフシールドトンネル6内から打ち込むことに代えて、あるいはそれに加えて、図10(b)に示すように本線シールドトンネル1内からその外側の地山に打ち込むようにしても良い。その際、ルーフシールドトンネル6内のみならず本線シールドトンネル1内にも埋込凍結管9bを設けてその外部にも周部凍結ゾーン11を付着させた状態で形成しても良く、その場合は褄部凍結ゾーン10のみならず周部凍結ゾーン11も二重に設けられてそれらの全体により未凍結地山が取り囲まれてより安定な凍結ゾーンを施工できる。
たとえば上記実施形態は未固結地盤の都市圏における大深度・大断面の道路トンネルへの適用例であるが、本発明はたとえば大規模な地中タンクや地下鉄の駅舎部をはじめとする様々な規模、用途、形態の地中空洞を施工する場合全般に広く適用できるものであるし、施工対象の地中空洞の規模や形態に応じて、また周辺環境等の諸条件を考慮して、たとえば以下に列挙するような様々な設計的変更が可能である。
すなわち、ルーフシールドトンネル6の本数やそれによるシールドルーフ先受工3全体の規模や形態は、所望の先受効果を確保できる範囲で適宜変更して良いし、シールドルーフ先受工3に一体に形成する凍結ゾーン8や褄部凍結ゾーン10の範囲、本設覆工壁4の形態やその施工方法、その他の各工程の細部についても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で最適設計すれば良く、必要に応じて適宜の補助工法を採用しても勿論良い。
また、ルーフシールド機5をランプシールドトンネル2や本線シールドトンネル1から発進させることに代えて、可能であれば別途設けた立坑から発進させたり、あるいはルーフシールド機5を発進させるための発進室を地中に設けて、そこからルーフシールド機5を発進させることも考えられる。
その場合の一般的な施工手順としては、地中空洞の空洞形成部の施工予定位置の外側に、上記実施形態と同様の複数のルーフシールドトンネルを所定間隔で配列して地中空洞の空洞形成部の施工予定位置を取り囲むシールドルーフ先受工を構築し、前記ルーフシールドトンネルの内側から隣り合うルーフシールドトンネル間接合予定位置に改良ゾーンを形成するとともに施工予定位置の端部には褄部凍結ゾーンを形成し、その内側に本設覆工壁を先行施工し、その後、本設覆工壁の内側を掘削して地中空洞を完成させることになる。そして、シールドルーフ先受工や改良ゾーン(凍結ゾーン)、本設覆工壁の施工方法については、施工すべき地中空洞の規模や形態、地山状況、その他の状況に応じて最適に設計すれば良いことは言うまでもない。
図11〜図12は本発明の他の実施形態を示すもので、これは複数(図示例では8本)の先行トンネル(ルーフシールドトンネル6)の内側を掘削してその内側に褄壁12と覆工壁13とを設けることによって各種用途の地中空洞14を施工するに際し、上記実施形態と同様に各ルーフシールドトンネル6間に凍結工法による環状の凍結ゾーン8(あるいは薬液注入工法による改良ゾーン)を形成するとともに、施工領域の端部には凍結工法による褄部凍結ゾーン10を間隔をおいて二重に形成してそれらの間に未凍結地山を残し、かつルーフシールドトンネル6に付着させた状態で形成した周部凍結ゾーン11によりそれら褄部凍結ゾーン10を連結したものであり、上記実施形態と同様に過度の凍結膨張を防止し得る大規模な凍土壁を支障なく形成でき、その内側への地中空洞14の施工を効率的かつ安全に実施できるものである。
なお、上記各実施形態においては、褄部凍結ゾーン10を二重に設けることに加えて先行トンネルの外部に周部凍結ゾーン11も形成し、その周部凍結ゾーン11によって二重の褄部凍結ゾーン10を連結するとともにその全体を先行トンネルに対して付着させるものとしたが、褄部凍結ゾーン10を二重に設けることのみで凍土壁としての充分な性能を確保できる場合には周部凍結ゾーン11の形成は必要に応じて行えば良く、地盤状況や土質によっては周部凍結ゾーン11の形成を省略して差し支えない。
さらになお、本発明においては褄部凍結ゾーン10を少なくとも二重に設ければ良く、必要であれば褄部凍結ゾーン10を適切な間隔をおいて三重以上のさらに多重に設けても良いことは言うまでもない。
2 ランプシールドトンネル
3 シールドルーフ先受工
4 本設覆工壁
6 ルーフシールドトンネル(先行トンネル)
8 凍結ゾーン(改良ゾーン)
9a 放射凍結管
9b 埋込凍結管
9c 褄部凍結管
10 褄部凍結ゾーン
11 周部凍結ゾーン
12 褄壁
13 覆工壁
14 地中空洞
Claims (2)
- 大断面の地中空洞を施工するに際して、施工するべき地中空洞の外側周囲にその軸方向に沿う複数の先行トンネルを所定間隔で配列した状態で先行施工し、該先行トンネル間の地山を改良して施工領域を取り囲む改良ゾーンを形成した後、該改良ゾーンの内側の地山を掘削して地中空洞を施工する地中空洞の施工方法であって、
前記改良ゾーンの内側の地山に対する掘削に先立って、該改良ゾーンの端部の内側地山に凍結管を打設して施工領域の端部の位置にその横断面に沿う褄部凍結ゾーンを形成するとともに、該褄部凍結ゾーンを施工領域の軸方向に間隔をおいて多重に形成してそれら多重の褄部凍結ゾーンの間に未凍結地山を残すことを特徴とする地中空洞の施工方法。 - 請求項1記載の地中空洞の施工方法であって、
多重の褄部凍結ゾーンを形成するに際しては、先行トンネル内に設けた凍結管によりその外部の地山を凍結させることによって、多重の褄部凍結ゾーンの間に残される未凍結地山を取り囲む周部凍結ゾーンをそれら褄部凍結ゾーンと一体に形成するとともに、該周部凍結ゾーンを先行トンネルの外面に付着させた状態で形成することを特徴とする地中空洞の施工方法。
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