JP4660822B2 - 分岐合流部における支保構造体の構築方法 - Google Patents

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本発明は、都市圏に大深度、大断面の道路トンネルを設ける場合に地下に構築される分岐合流部における支保構造体の構築方法に関する。
近年、大都市圏における新規道路の建設は、地上部の環境条件や用地問題などから、地下に建設される場合が多くなっている。しかし、地下の本線道路は、地上の既存幹線道路と接続する必要があり、この両者を接続する分岐合流部も地下に構築しなければならない現状があった。
一般的に、市街地における地下トンネルは、シールド工法あるいはNATM工法に補助工法を組み合わせた山岳トンネル工法で施工されている。そして、地下における分岐合流部は、例えば夫々のトンネルをなす二つのシールド掘削機同士を機械的に接続させる方法や、本線トンネルのシール掘削機からランプトンネルのシールド掘削機を分岐させる方法による実績がある。ところが、市街地の地下に例えば本線トンネルが3車線でランプトンネルが2車線で従来に比べて大断面の地下空間(以下、大断面地下空間とする)を有する分岐合流部を建設することは地表周辺部の住環境の保全や、地下水の低下を招き易いなど施工が困難となっていた。
これに対して大断面地下空間を構築する方法として、例えば特許文献1及び特許文献2に提案されている方法が開示されている。
特許文献1及び特許文献2は、例えば先行して施工された立坑からシールド掘削機を発進させ、その後方で組み立てられるセグメントで大断面地下空間の外殻(支保構造体)を形成させるものである。このときの掘進方向は略水平方向に掘削するものであって、このとき形成されるトンネル線形は環状あるいは螺旋状の略円形をなし、シールド掘削機を下方に向けて掘進させるなどして地下空間を構築するものであり、このような構築方法を地下における分岐合流部に採用することが可能である。
特公平6−13838号公報 特開平2−108798号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、シールド掘削機を略水平方向に掘進させるものである。したがって、分岐合流部のように延伸方向に長い大断面地下空間を、少なくとも天端部において剛性が高く安定したアーチ形状で構築することが困難であった。このため、分岐合流部をなす大断面地下空間の支保構造としては、十分な剛性が確保されず、構造的に強度が不足する可能性があり、分岐合流部の内側で掘削作業などを行う際に安全上の問題があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、土圧に耐えられる支保構造を構築し、大断面地下空間をなす分岐合流部を安全に掘削できるようにした分岐合流部における支保構造体の構築方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る分岐合流部における支保構造体の構築方法では、地下で分岐又は合流してなるトンネルについての分岐合流部における支保構造体の構築方法であって、分岐合流部は、本線トンネルと円形ランプシールドトンネルとからなり、分岐合流部の外側をトンネルの延伸方向に沿って螺旋状に掘進して螺旋トンネルを形成し、螺旋トンネルを形成するシールド掘削機は、掘進する際に、D型セグメントによる覆工体とその外側のシールド掘削機で切削可能な充填材を充填した切削可能領域とで円形としたランプシールドトンネルの、切削可能領域を切削して通過し、螺旋トンネルにおいて、分岐合流部の延伸方向に沿って分岐合流部と略同じ長さをなす支保構造体を構築するようにしたことを特徴としている。
本発明では、分岐合流部の外側に螺旋トンネルを形成することで、高剛性で安定した円形断面又は楕円断面をなす分岐合流部の支保構造体を構築することができる。このように、分岐合流部は周囲の土圧に耐えることができる構成であるため、支保構造体の内側の掘削等の作業を安全に行うことができる。
また、本発明に係る分岐合流部における支保構造体の構築方法では、螺旋トンネルがランプシールドトンネルを通過する箇所のD型セグメントには、ランプシールドトンネル内から螺旋トンネル内に資材搬入のための連絡口が設けられていることが好ましい。
本発明では、螺旋トンネルの切羽に最も近い通過箇所から掘進作業に必要な資材搬入が行えると共に、その通過箇所を使用して土砂の搬出を行うことができる。
本発明の分岐合流部における支保構造体の構築方法によれば、分岐合流部の外側に螺旋トンネルを形成することで、高剛性で安定した円形断面又は楕円断面をなす分岐合流部の支保構造体を構築することができる。このように、分岐合流部は周囲の土圧に耐えることができる構成であるため、支保構造体の内側の掘削等の作業を安全に行うことができる。
したがって、分岐合流部の支保構造体を大断面地下空間に適用できることから、例えば都市圏における大深度、大断面トンネルの施工に適用することができる。
以下、本発明の分岐合流部における支保構造体の構築方法の実施の形態について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による分岐合流部を示す平面図、図2は分岐合流部の螺旋トンネルを示す一部破断斜視図、図3は支保構造体を示す断面図、図4は図2の支保構造体を示すA−A線断面図、図5は支保構造体の構築方法を示す発進部分の図、図6は同じく掘進途中部分の図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態による分岐合流部における支保構造体の構築方法は、シールド工法により地下に施工された二本の道路トンネルが合流或いは一本のトンネルが分岐する分岐合流部3を構築するものである。
本実施の形態による分岐合流部3は、一方の道路トンネルが3車線を有する本線トンネル1をなし、他方が2車線を有するランプトンネル2をなす大断面地下空間からなる。ランプトンネル2は、地下本線トンネル1Aと地上本線トンネル1Bとを連絡するトンネルである。そして、分岐合流部3では、図1に示す平面視において地下本線トンネル1Aにランプトンネル2が徐々に接近して略Y字状に接続することになる。
図2に示すように、本線トンネル1は断面リング形状を形成する本線セグメント10を備え、ランプトンネル2は同じく断面リング形状を形成するランプセグメント20を備えたシールドトンネルである。
分岐合流部3は、少なくとも本線トンネル1及びランプトンネル2の各々の建築限界、即ち車両の通行部分を確保した大きさの円形断面をなし、延伸方向に連続した略筒形状の空間を形成している。
図3に示すように、分岐合流部3には、その外側を取り囲んで形成される支保構造体5が構築されている。この支保構造体5は、分岐合流部3を構築する際の支保効果を奏し、シールド掘削機6によって分岐合流部3の外側を延伸方向に沿って螺旋状に掘削して形成された螺旋トンネル7からなる。そして、シールド掘削機6が掘削した後方は、円形断面の外殻セグメント70が複数連続して設置され、ランプトンネル2の外側部分を通過する。
そして、図4に示すように、支保構造体5の支保構造は、分岐合流部3の延伸方向に隣り合う螺旋トンネル7同士を一部オーバーラップさせて形成するものである。具体的には、シールド掘削機6による掘削される径よりも所定寸法小さい径のセグメント5Aで螺旋トンネル7の内殻を形成し、その内殻外側と地山の掘削側面との間の空間に構造体とみなせる程度の強度を有する裏込材8を充填して螺旋トンネル7とする。そして、その螺旋トンネル7を分岐合流部3の外側で延伸方向に螺旋状に複数回周回させることで分岐合流部3の延伸方向で分岐合流部3の長さにほぼ相当する所定長の支保構造体5を形成する。そして、螺旋トンネル7を周回させる工程で、1周回前の隣の螺旋トンネル7の裏込材をシールド掘削機6によって切削しながら螺旋トンネル7同士を一部オーバーラップさせることで、連続した支保構造体5を形成することができる。
次に、実施の形態による分岐合流部における支保構造体の構築方法について図面に基づいて説明する。
図5及び図6に示すように、ランプトンネル2のランプセグメント20は、断面リング形状に設置される円形セグメント20aと、断面D型形状に設置されるD型セグメント20bとが螺旋トンネル7とからなる。主に分岐合流部3の施工範囲にD型セグメント20bが使用され、その他の部分に円形セグメント20aが使用されている。
先ず、図5に示すように、螺旋トンネル7を施工するにあたって、ランプトンネル2から発進するシールド掘削機6の発進準備を行う。このとき、シールド掘削機6の発進位置をなす発進室11は、設置された円形セグメント20aの略外側半分を使用する。そして、シールド掘削機6によってランプトンネル2を切削して発進する箇所には、発進口12が設けられている。この発進口12は、予めセグメント2aをシールド掘削機6のカッタで切削可能な部材、例えばコンクリート内の鉄筋を炭素繊維強化プラスチックなどで置き換えて形成しておく。
図5に示すように、発進室11には、先端を発進口12に向けるようにしてシールド掘削機6を設置する。そして、発進室11を取り囲むようにして仕切り壁13を設ける。仕切り壁13には、シールド掘削機6の後端部に連絡する開口部(図示省略)を形成しておき、仕切り壁13で仕切られた発進室11内をモルタル14などで埋め戻して発進準備が完了となる。
なお、シールド掘削機6は、例えば切羽を密閉方式による掘削方式で、カッタ、推進ジャッキ、スキンプレートなどを備えた従来と同様の機構を有し、計画される螺旋トンネル7の曲率線形に合わせて推進できるように方向制御させる。そして、資機材の搬入出、シールド掘削機6の駆動用の電線、送水管及び排土管などは、上述した開口部を使用する。また、シールド掘削機6は上下方向に向けた掘進となるため、排土には圧送ポンプを使用し、資材搬入出用に吊上げ式の搬送装置を適宜設けるようにすることが好ましい。
次に、図5に示すように、発進室11から発進したシールド掘削機6は、分岐合流部3の外側を螺旋トンネル7のトンネル線形として螺旋状に掘進する。そして、掘進と同時に、シールド掘削機6の後で外殻セグメント70を組み立てる。なお、螺旋トンネル7の発進時は、この発進室11を介して資材の搬入や掘削土砂の搬出などを行うことができる。
図6に示すように、ランプセグメント20において、D型セグメント20bの略左側の領域、即ちランプトンネル2の略左側半分には、シールド掘削機6で切削可能な低強度のモルタルなどの充填材を打設して閉塞した切削可能領域15を形成しておく。そして、シールド掘削機6は、螺旋状に掘進する際に一周毎にランプトンネル2の切削可能領域15を切削することでランプトンネル2の略左側半分の領域を通過する。
そして、各通過箇所におけるD型セグメント20bに、ランプトンネル2内から螺旋トンネル7の内部に資材等を投入するための連絡口16を設けておく。これにより、螺旋トンネル7の切羽に最も近い連絡口16から資材搬入や土砂搬出を行うことができる。
そして、螺旋トンネル7の掘進と同時に裏込材8を充填する(図4参照)。このときの充填範囲は、前述したとおりである。
分岐合流部3の範囲の掘進が終了した後、所定位置のランプトンネル2の内側からシールド掘削機6を搬出する。
このようにして、分岐合流部3の外側に円形断面が形成されるため、大断面の地下空間を確保可能な支保が構築されることになる。さらに、分岐合流部3内の本線トンネル1やランプトンネル2は、支保構造体5の構築後に解体、撤去する。そして、同時に支保構造体5で囲まれる内部の土砂4を取り除いて分岐合流部3の空間を形成させる(図3参照)。
なお、本線トンネル1は、螺旋トンネル7の施工中又は施工前にシールド工法によって施工される。
また、支保構造体5で囲まれた内部の土砂や、本線トンネル1、螺旋トンネル7の一部を撤去して、ひとつの分岐合流部構造体(図示省略)を支保構造体5で囲まれた内部に形成する。
上述した本実施の形態による分岐合流部における支保構造体の構築方法では、分岐合流部3の外側に螺旋トンネル7を形成することで、高剛性で安定した円形断面又は楕円断面をなす分岐合流部3の支保構造体5を構築することができる。このように、分岐合流部3は周囲の土圧に耐えることができる構成であるため、支保構造体5の内側の掘削等の作業を安全に行うことができる。したがって、分岐合流部3の支保構造体5を大断面地下空間に適用できることから、例えば都市圏における大深度、大断面トンネルの施工に適用することができる。
また、螺旋トンネル7は、周辺地山9に与える影響が少ないシールド工法によって構築され、さらに分岐合流部3の延伸方向に隣り合う螺旋トンネル7、7同士を一部オーバーラップさせることで、支保構造体5周囲の土圧を抑えることができ、地表面の地盤沈下の発生や地下水位の低下を防止することができる。
また、螺旋トンネル7を1台のシールド掘削機6で掘削できるため経済的である。
次に、本第一及び第二変形例について、図7、図8に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図7は本実施の形態の第一変形例による支保構造体を示す断面図である。
図7に示すように、第一変形例は、ランプトンネル2からシールド掘削機6を発進して形成される螺旋トンネル7が、ランプトンネル2の外側部分を通過せずに、ランプトンネル2の外方に螺旋トンネル7を構築するものである。この場合、支保構造体5の内側にランプトンネル2及び本線トンネル1が配置されることになる。第一変形例では、上記の実施の形態の螺旋トンネル7より一回り大きな断面となるが、ランプトンネル2に図6に示すD型セグメント20bを使用したり、切削可能領域15を構築したりする手間を省くことができる。
次に、図8は実施の形態の第二変形例による支保構造体を示す図であって、図4に対応する断面図である。
図8に示すように、本第二変形例が実施の形態と相違するところは、分岐合流部3の延伸方向に隣り合う螺旋トンネル7同士が離間して間隙地盤Rとなっていることである。そして、この間隙地盤Rに螺旋トンネル7内から凍結管17を挿入し、凍結工法により間隙地盤Rを凍結するものである。このように、隣り合う螺旋トンネル7間の間隙地盤Rが凍結により地盤改良されて地盤改良部Sとなり、この地盤改良部Sと螺旋トンネル7がほぼ一体となって支保構造体5が形成される。本第二変形例の効果は、上記の実施の形態と同様に支保構造体5の周囲の土圧を抑えることができ、地表面の地盤沈下の発生や地価水位の低下を防止することができる。
以上、本発明による分岐合流部における支保構造体の構築方法の実施の形態及び第一及び第二変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態及び第一及び第二変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態及び第一及び第二変形例では本線トンネル1及びランプトンネル2はシールド工法により施工されたものであるが、これに限定されることはなく、例えばNATMなどの山岳トンネル工法によって施工されたトンネルであっても構わない。
また、実施の形態及び第一及び第二変形例では支保構造体5の断面形状を円形としているが、この形状に限定されることはなく、例えば楕円断面や、断面上半が円形をなす断面であってもよい。要は、支保構造体5の上半断面或いは天端部分にアーチ形状が構築されていればよいのである。
本発明の実施の形態による分岐合流部を示す平面図である。 分岐合流部の螺旋トンネルを示す一部破断斜視図である。 支保構造体を示す断面図である。 図2の支保構造体を示すA−A線断面図である。 支保構造体の構築方法を示す発進部分の図である。 同じく構築方法を示す掘進途中部分の図である。 実施の形態の第一変形例による支保構造体を示す断面図である。 実施の形態の第二変形例による支保構造体を示す図であって、図4に対応する断面図である。
符号の説明
1 本線トンネル
2 ランプトンネル
3 分岐合流部
5 支保構造体
6 シールド掘削機
7 螺旋トンネル
8 裏込材
10 本線セグメント
11 発進室
12 発進口
13 仕切り壁
15 切削可能領域
20 ランプセグメント
70 外殻セグメント
R 間隙地盤
S 地盤改良部

Claims (2)

  1. 地下で分岐又は合流してなるトンネルについての分岐合流部における支保構造体の構築方法であって、
    前記分岐合流部は、本線トンネルと円形ランプシールドトンネルとからなり、前記分岐合流部の外側を前記トンネルの延伸方向に沿って螺旋状に掘進して螺旋トンネルを形成し、
    前記螺旋トンネルを形成するシールド掘削機は、掘進する際に、D型セグメントによる覆工体とその外側のシールド掘削機で切削可能な充填材を充填した切削可能領域とで円形とした前記ランプシールドトンネルの、前記切削可能領域を切削して通過し、
    前記螺旋トンネルにおいて、前記分岐合流部の延伸方向に沿って前記分岐合流部と略同じ長さをなす支保構造体を構築するようにしたことを特徴とする分岐合流部における支保構造体の構築方法。
  2. 前記螺旋トンネルが前記ランプシールドトンネルを通過する箇所の前記D型セグメントには、前記ランプシールドトンネル内から前記螺旋トンネル内に資材搬入のための連絡口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の分岐合流部における支保構造体の構築方法。
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