JP4327384B2 - 拡幅部を有するトンネル構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトンネル掘削機によって掘削されるトンネル内の所定区間にトンネル本体部の形成と共にトンネル拡幅部を形成する拡幅トンネルの構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネル掘削機によって地下トンネルを掘削する場合、トンネル内に道路部と共にこの道路部の側部にトンネル長さ方向に一定距離毎に該道路部を拡幅した非常駐車帯部や設備設置場所等の拡幅部を構築する必要がある。このような拡幅トンネルを構築する方法としては、従来から、大径のトンネル掘削機によって該トンネル拡幅部を包含する大径のトンネルを全長に亘って掘削し、拡幅部以外のトンネル部においては該拡幅部の幅寸法だけ小径のトンネル覆工をセグメントの組み立てによって形成すると共に拡幅部においてはその空間部を上記小径のトンネル覆工に連通させた状態にしてその他の部分を小径のトンネル覆工と同径のトンネル覆工を同じくセグメントを組み立てることによって形成し、大径のトンネル掘削壁面とトンネル覆工の外周面との間の空間部に土砂等の間詰め材を充填することによって構築する方法が開発されている。
【0003】
また、このようなトンネル拡幅部の構築方法以外に、トンネル断面方向に拡縮自在なスキンプレートを有するシールド掘削機を用いてトンネル本体部の側部における所定区間部分に拡幅部を構築する方法や、全線に亘ってトンネル本体部をを構築し、しかるのち、このトンネル本体部の側部に拡幅部を構築する方法も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の方法によれば、大径のトンネル掘削機によって全長に亘って拡幅部の径に等しいトンネルを掘削するものであるから、過大設計になって極めて不経済であるばかりでなくトンネルの掘削効率が低下するという問題点があり、その上、拡幅部以外のトンネル部においては該拡幅部の幅寸法だけ小径のトンネル覆工をセグメントの組み立てによって形成したのち、大径のトンネル掘削壁面とトンネル覆工の外周面との間の空間部に土砂等の間詰め材を充填しているため、多量の間詰め材を充填する必要があると共にその充填作業に長時間を要して施工期間が長期化し、工事費が高くつくという問題点がある。
【0005】
一方、後者におけるトンネル断面方向に拡縮自在なスキンプレートを有するシールド掘削機を用いて道路の側部における所定区間部分に拡幅部を構築する方法においては、構造上、スキンプレートの拡大、縮小幅に制約があり、その上、シールド掘削機全体の構造が複雑となってコストが高くなると共に、操作が煩雑化するという問題点がある。
【0006】
また、先にトンネル本体部を築造したのち、その側部に拡幅部を築造する方法においては、拡幅部の築造個所が多い場合には工程が長くなり、作業能率が低下すると共に長期間の工事を必要とするという問題点があった。
【0007】
上記のような問題点を解消するため、本願出願人等は特願2000−296924号に記載したように、トンネル本体部と拡幅部とを同時に築造し得るように構成しているトンネル掘削機によってトンネル全線に亘りトンネル本体部の断面形状の円形トンネル部と拡幅部の断面形状のトンネル部とを掘削していくと共に拡幅部を必要としない場合には、該拡幅部の断面形状のトンネル部を間詰めすることによってトンネル本体部のみを築造する方法を開発したが、この方法によると、トンネル本体部を築造するためのトンネル部の一側部に拡幅部の断面形状のトンネル部を一体に掘削していくものであるから、トンネル全線に亘ってトンネル掘削幅が大きくなり、このトンネル上方部の周辺地盤が緩む等の周辺地盤への影響が懸念され、特に、トンネル本体部のみを築造する際には、その側方において拡幅部築造用トンネル部を間詰めするので、周辺地盤が変形して地上側等に悪影響を及ぼす虞れがある。
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、周辺地盤に殆ど影響を及ぼすことなくトンネル本体部と所定の広さを有する拡幅部とを正確に且つ能率よく構築し得る拡幅トンネルの構築方法を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の拡幅部を有するトンネル構築方法は、請求項1に記載したように、トンネル本体部を掘削する掘削機本体とこの掘削機本体にトンネル拡幅部を掘削する拡幅形成部を一体に設けてなるシールド掘削機によってトンネル内の一部区間の側部に拡幅部を設ける拡幅トンネルの構築方法であって、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成することなくトンネル本体部のみを形成する際には、シールド掘削機をローリングさせて拡幅形成部を該掘削機本体の下方側に移動させ、この状態にしてシールド掘削機によりトンネル本体部とトンネル拡幅部を掘進すると共にトンネル本体部に覆工を施す一方、拡幅形成部により掘削されるトンネル拡幅部に間詰め材を充填し、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成する際には、拡幅形成部が掘削機本体の側部に位置するようにシールド掘削機をローリングさせ、この状態にしてシールド掘削機の掘進によりトンネル本体部とこのトンネル本体部の側部に連通したトンネル拡幅部とを掘削し、トンネル本体部からトンネル拡幅部の掘削壁面全面にトンネル覆工を施工することを特徴とするものである。
【0010】
上記拡幅部を有するトンネル構築方法において、請求項2に係る発明は、上記トンネル本体部の側部にトンネル拡幅部を形成する際に、該トンネル拡幅部の上方地盤の地盤改良を行うことを特徴とする。
【0011】
【作用】
シールド掘削機における掘削機本体によってトンネル本体部のみを構築する場合には、シールド掘削機における拡幅形成部を掘削機本体の下方側に位置させた状態でトンネル本体部とトンネル拡幅部とを同時に掘削する。この時、トンネル拡幅部がトンネル本体部の下方側に設けるので、トンネル全体の掘削幅が小さくなり、周辺地盤への影響範囲を低減させることができる。そして、シールド掘削機による一定長のトンネルが掘削される毎に、機内でトンネル本体部覆工用セグメントをリング状に組み立て、シールド掘削機を掘進に従ってこのリング状セグメントを後方に送り出すことにより外周面がトンネル本体部の掘削壁面に接したセグメント覆工部を形成する一方、このリング状セグメント覆工部の下周壁部によって隠蔽されている下方のトンネル拡幅部の空間部内に土砂等の間詰め材を充填する。
【0012】
シールド掘削機が拡幅部施工区間の近傍部に達すると、シールド掘削機をローリングさせて拡幅形成部を掘削機本体の一側部又は他側部にまで移動させ、この状態にして機内において掘削機本体の内周面から拡幅形成部の内周面に亘って連続したセグメントを組み立て、シールド掘削機により掘削されたトンネル本体部とトンネル拡幅部とにシールド掘削機の掘進に従って後方に送り出すことによりこれらのトンネル本体部とトンネル拡幅部との掘削壁面に沿って連続した拡幅トンネル覆工部を形成する。
【0013】
この拡幅トンネル覆工部の形成後、再びトンネル本体部のみの構築に移る場合には、トンネル掘削機をローリングさせてその拡幅形成部を上述したようにトンネル本体部の下方にまで移動させ、上記同様にトンネル本体部へのリング状セグメント覆工とトンネル拡幅部内への間詰め材の充填作業を行う。なお、シールド掘削機のローリングによって拡幅形成部が掘削機本体の下方側から側方側にまで、及び側方側から下方側にまで移動させる間においても、そのトンネル拡幅部の空間部内に間詰め材を充填する。また、トンネル拡幅部がトンネル全線ではなくトンネルの長さ方向に一定距離毎にトンネル本体部の側方に設けられてトンネル掘削幅が大きくなり、周辺地盤に地盤の緩み等の影響が生じる虞れがある場合には、トンネル掘削部の周辺地盤を補助工法により改良すればよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1〜図4は拡幅トンネルを構築するためのトンネル掘削機を示すもので、断面円形状のトンネル本体部T1を掘削する掘削機本体1と、この掘削機本体1の一部(図1においては下部)に全長に亘って一体に設けられたトンネル拡幅部T2を掘削するための拡幅形成部2とから構成している。
【0015】
掘削機本体1は、一定長さを有する円筒形状のスキンプレート11の開口前端部に隔壁12を一体に設けてこの隔壁12にスキンプレート11の開口前端に配設したカッターヘッド13を回転自在に支持させ、該隔壁12の後面に装着した駆動モータ14によってカッターヘッド13を回転させるように構成していると共にスキンプレート11の後部内周面に円環状のリブ15を固着してこのリブ15にスキンプレート11の内周面に沿って周方向に一定間隔毎に複数本の推進ジャッキ16を装着してあり、さらに、上記カッタヘッド13の後面と隔壁12の前面間で形成された土砂取込室17にスクリューコンベアからなる土砂排出手段18の開口前端部を連通させてある。
【0016】
上記円筒形状のスキンプレート11の外周一部(図においては下部)には、図3、図4に示すように外方(下方)に向かって凸円弧状に膨出した拡幅部形成用スキンプレート部21が全長に亘って一体に設けている。即ち、スキンプレート11の一部を上記トンネル拡幅部T2の形成に必要な円弧長だけ全長に亘って切除し、この切除部に外方に向かって凸円弧状に湾曲した断面C字状のスキンプレート部21の両側端を一体に連設してあり、該スキンプレート部21で囲まれた中空内部をスキンプレート11内と全面的に連通している上記拡幅形成部2に形成し、この拡幅形成部2の前端側にトンネル拡幅部T2を掘削するためのカッタヘッド23を配設している。
【0017】
このカッタヘッド23は図3に示すように、上記スキンプレート11の開口端に配設しているトンネル本体部掘削用カッタヘッド13よりも小径に形成されていると共に上記凸円弧状のスキンプレート部21の開口端にその外周一部を沿わせて該スキンプレート部21で囲まれた三日月形状の空間部、即ち、上記拡幅形成部2の開口前端からその一部を前方に露出させ且つ上記カッタヘッド13の背面部に大部分を重ね合わせた状態に配設して該小径カッタヘッド23の回転中心軸を隔壁12の一側部に回転自在に支持させていると共に該隔壁12の後面に装着した駆動モータ24によってこの小径カッタヘッド23を回転させるように構成している。
【0018】
また、上記隔壁12の外周一部(図においては下部)に凸円弧状スキンプレート部21で囲まれた空間部と同一形状の正面三日月形状の隔壁部22を一体に連設してこの隔壁部22の外周端面を上記スキンプレート部21の内周面に固着させてあり、さらに、この隔壁部22の前面と小径カッタヘッド23の後面間に上記土砂取込室17と連通した土砂取込室27を設けて該土砂取込室27にスクリューコンベアからなる土砂排出手段28の開口前端部を連通させてある。また、上記リブ15もその一部に凸円弧状スキンプレート部21で囲まれた空間部と同一形状の正面三日月形状のリブ部25を一体に連設して図1に示すように、その外周端面を上記スキンプレート部21の後部内周面に固着させてあり、さらに、図4に示すように、このリブ部25にスキンプレート部21の内周面に沿って周方向に一定間隔毎に複数本の拡幅用シールドジャッキ26を装着している。
【0019】
この拡幅用シールドジャッキ26は上記推進ジャッキ16と共に前後方向に向けて配設されてあり、そのピストンロッドの先端面(後端面)に妻型枠サポート部材3を介して拡幅形成部2の内部空間と同一断面形状、即ち、断面三日月形状の妻型枠4を着脱自在に連結している。この妻型枠4はその外周面をスキンプレート部21の内周面に前後摺動自在に摺接していると共に内周面にシール部材5Bを装着して該シール部材5Bをトンネル本体部T1内で円形リング状に組み立てられるセグメントaの外周面の一部、即ち、掘削機本体1から拡幅形成部2の臨むセグメントaの外周面に圧接させるように構成している。同様に、スキンプレート11とスキンプレート部21の後端部内周面にもシール部材5Aが装着されている。
【0020】
上記妻型枠4には前後方向に貫通した間詰め材注入孔31を設けていてこの開口前端部に機内側から間詰め材供給管32を着脱自在に連結、連通させてあり、この間詰め材供給管32は図5に示すように、機内から後方に延設され、既に施工したトンネル覆工A内にシールド掘削機と一体に移動する台車上の圧送ポンプ34に連結している。
【0021】
一方、上記スクリューコンベアからなる土砂排出手段18、28には該土砂排出手段18、28の土砂排出終端部から排出ポンプ19によって掘削土砂をトンネル後方に搬出する土砂搬出主管20を連結させていると共にこの土砂搬出主管20に掘削土砂の一部を土砂貯留槽35に供給する分岐管20a を連結、連通させている。土砂貯留槽35はその槽内の土砂をセメント系固化材槽36内のセメント系固化材と所定割合で混合して間詰め材Bを調製し、間詰め材貯留槽37内に貯留するように構成していると共にこの間詰め材貯留槽37内から上記圧送ポンプ34によって間詰め材Bを供給管32に送り出すように構成している。なお、土砂貯留槽35やセメント系固化材槽36及び間詰め材貯留槽37は上記圧送ポンプ34と同様にシールド掘削機と一体に移動する台車上に搭載されている。
【0022】
このように構成したシールド掘削機によって、道路部を築造するためのトンネル本体部T1と道路部の一側部に非常駐車帯部等の拡幅部T2を構築する方法について次に説明する。まず、トンネル本体部T1のみを築造するには図1、図3に示すように、小径カッタヘッド23を大径のカッタヘッド13の下方側、即ち、拡幅形成部2を掘削機本体1の下方側に位置させ、この状態で、図6に示すように、掘削機本体1の円筒状スキンプレート11の内周面に沿ってトンネル周方向に湾曲した複数個のセグメントaを順次連結することによって1リング分の円環状トンネル覆工部A1を組み立てる。この際、掘削機本体1の底面側においては拡幅形成部2に対向するセグメントaは妻型枠サポート部材3の内周面に沿って組み立てる。
【0023】
スキンプレート11内で組み立てたトンネル覆工部A1の後端面は、先に組み立てられて機内から後方に送り出された既設のトンネル覆工Aの前端面に突き合わせて一体に接続される。なお、既設のトンネル覆工Aの外周面に妻型枠4の内周面に装着しているシール部材5B及びスキンプレート11の内周面に装着しているシール部材5Aに圧接させた状態にして機内への地下水等の浸入を防止する。また、隣接するリング状トンネル覆工部の接合端面にはパッキン部材が装着されていて接合した際に互いに密着している。
【0024】
こうして組み立てたトンネル覆工部A1の前端面にスキンプレート11の後部内周面に装着している複数本の推進ジャッキ16のロッドを図7に示すように伸長させることにより当接させ、その状態からさらにこれらの推進ジャッキ16のロッドを伸長させることによってトンネル覆工Aに推進反力を支持させながらシールド掘削機全体を推進させると共にカッタヘッド13と小径カッタヘッド23とを互いに反対方向に回転駆動することによって掘削機全体がローリングするのを防止しながらカッタヘッド13により断面円形状の一定長のトンネル本体部T1を、カッタヘッド13の下方から突出した小径カッタヘッド23の一部によって該トンネル本体部T1の底部に連通した断面三日月形状のトンネル拡幅部T2(この場合は下方に拡大された拡幅部)を掘削する。さらに、シールド掘削機の掘進に応じて拡幅用シールドジャッキ26を伸長させることにより妻型枠サポート部材3を介して妻型枠4をトンネル拡幅部T2内に注入、充填された間詰め材Bを圧密状となるように押圧する。
【0025】
シールド掘削機の掘進に従って、上記トンネル覆工部A1は掘削されたトンネル本体部T1側に押し出され、該トンネル覆工部A1が妻型枠4の前端部上方位置まで送り出された時にシールド掘削機の掘進を停止させて図8に示すように推進ジャッキ16を収縮させることによりスキンプレート11の後部に次のセグメントaの組立空間部を設け、再び、上記同様にしてスキンプレート11の内周面に沿って1リング分の円環状トンネル覆工部を組み立てたのち、推進ジャッキ16のロッドを伸長させてこのトンネル覆工部をシールド掘削機によって掘削されたトンネル本体部T1側に送り出す。この作業を繰り返すことによってトンネル本体部T1のセグメント覆工部の底部によって下方のトンネル拡幅部T2を隠蔽している所定長のトンネル覆工Aを築造する。なお、このトンネル覆工Aの外周面とトンネル掘削壁面間の隙間に機内側からスキンプレートの外周面に沿って裏込め材を注入、充填する。
【0026】
このトンネル覆工Aの築造時において、機内で組み立てたトンネル覆工部A1をトンネル本体部T1側に送り出した時に、該トンネル覆工部A1の底部外周面と小径カッタヘッド23により掘削された掘削壁面間、即ち、トンネル拡幅部T2が未だ間詰め材Bをしていない空間部であり、この空間部内に先に注入、充填した間詰め材Bと連続するように間詰め材Bを注入、充填して硬化させる。
【0027】
間詰め材Bの充填は、トンネル覆工部内に配設している台車上に搭載された上記圧送ポンプ34によって行われる。即ち、間詰め材貯留槽37内の間詰め材Bから該圧送ポンプ34によって間詰め材Bを供給管32に送り出し、該供給管32から妻型枠サポート部材3の供給孔31とこの供給孔31に連通している妻型枠4の注入孔33を通じてトンネル拡幅部T2内の空間部に注入することによって行われる。
【0028】
こうして、図9に示すように、下方のトンネル拡幅部T2が間詰め材Bによって充填され且つトンネル本体部T1のみにトンネル覆工Aが施工されたトンネル部が構築される。ついで、このトンネル覆工されたトンネル本体部T1のみの築造に引き続いて、シールド掘削機が非常駐車帯部等の拡幅部築造計画位置の近傍部にまで達すると、シールド掘削機をトンネル本体部T1から拡幅部築造計画位置に向かって掘進させながらローリングさせて拡幅形成部2を掘削機本体1の底面側から一側方にまで移動させる。
【0029】
シールド掘削機をローリングさせるには、掘削機本体1の前端に配設している大径カッターヘッド13と拡幅形成部2の前端に配設している小径カッターヘッド23とを切羽面に圧着させた状態で両カッターヘッド13、23を同一方向に回転駆動させることによって行われるが、推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26とを周方向に傾動させてこれらのジャッキ16、26の推進力をローリング方向に分力させることにより行ってもよい。
【0030】
このようにシールド掘削機を徐々に周方向にローリングさせながら複数本の推進ジャッキ16のロッドを伸長させることにより既設のトンネル覆工Aに推進反力を支持させて両カッターヘッド13、23により図10、図11に示すように、上記同様にしてトンネル本体部T1とトンネル拡幅部T2とを掘削し、トンネル本体部T1にはリング状のトンネル覆工Aを施工すると共に下方から周方向に徐々に移動していくトンネル拡幅部T2内には間詰め材Bを充填する。
【0031】
なお、トンネル拡幅部T2がトンネル本体部T1の下方側から徐々に一側方に移動するに従って、トンネル本体部T1とトンネル拡幅部T2との全体の掘削幅(横幅)が大きくなり、そのため、間詰め材Bを充填されるトンネル拡幅部T2の上方地盤が該トンネル拡幅部T2の掘削及び間詰め材Bの充填によって緩みや変形が生じやすい弱体地盤部なり、地上側に悪影響を及ぼす虞れがあるので、特に、トンネル拡幅部T2がトンネル本体部T1の一側方に達した部分においては、図12に示すように、該トンネル拡幅部T2上方の周辺地盤に地盤改良剤を注入する等の補助工法を行って地盤改良部Dとしておく。
【0032】
このように、トンネル拡幅部T2が下方から周方向に移動してトンネル本体部T1の一側方に達するまでのトンネル掘削機の掘削距離は20〜30m程度であり、トンネル拡幅部T2を掘削する小径カッターヘッド23(拡幅形成部2)が図13に示すように、大径カッターヘッド13(掘削機本体1)の一側方にまで移動すれば、トンネル本体部T1と共にこのトンネル本体部T1の一側に連通したトンネル拡幅部T2の構築を開始する。
【0033】
このトンネル拡幅部T2の築造は、図14に示すように、掘削機本体1の側部の拡幅形成部2側において、拡幅用シールドジャッキ26のロッド端に連結している妻型枠サポート部材3を取り外し、妻型枠4を最前部のトンネル覆工部A1の一側部外周面上に残置させた状態で、取り外した妻型枠サポート部材3の空間部を利用して該空間部内にリング状に組立てた反力受けセグメント部材6の一側部を配設する。
【0034】
この反力受けセグメント部材6は、上記セグメントaと同一厚みで同一湾曲度を有し、且つトンネル長さ方向の幅が一定に形成された複数個のセグメント部材6aを掘削機本体1のスキンプレート11の内周面に沿ってリング状に組立てると共に、拡幅形成部2側においては、該拡幅形成部2内に向かって膨出する肉厚のセグメント部材6bを組み込むことによって外周面が拡幅形成部2のスキンプレート部21の内周面に沿った断面三日月形状のセグメント部に形成されている。
【0035】
この反力受けセグメント部材6における後端面内周部を上記最前部のトンネル覆工部A1の前端面にボルト等により一体に連結すると共に拡幅形成部2内に突出しているセグメント部6bの後端面外周部を上記妻型枠4の前端面に当接させる一方、前端面に推進ジャッキ16と拡幅シールドジャッキ26とのロッド端を当接させてこれらのジャッキ16、26を伸長させることによりシールド掘削機を推進させる共に大径のカッターヘッド13と小径のカッターヘッド23とを互いに反対方向に回転させながら切羽を掘削する。そして、このシールド掘削機の掘進によって掘削されたトンネル本体部T1とトンネル拡幅部T2の掘削壁面に向かって反力受けセグメント部材6の一部を送り出す。
【0036】
一定長のトンネルが掘削されると、推進ジャッキ16及び拡幅シールドジャッキ26を収縮させてその収縮により形成されたスキンプレート11及びスキンプレート部21内の空間部にこれらのスキンプレート11の内周からスキンプレート部21の内周面に沿って図15、図16に示すようにセグメントaを組み立て、拡幅形成部2のスキンプレート部21に沿って組み立てたセグメントaによる膨出覆工部A22 の上下端が掘削機本体1のスキンプレート11に沿って組み立てたセグメントaによる断面C字状の覆工部A21 の上下端面に連続したトンネル覆工部A2を形成する。
【0037】
このトンネル覆工部A2の後端面を上記反力受けセグメント部材6の前端面に当接させてボルト等により一体に連結すると共に、該トンネル覆工部A2の上記断面C状状の覆工部A21 の前端面と膨出覆工部A22 の前端面とに推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26とをそれぞれ当接させて伸長させることにより、シールド掘削機を掘進させる共に掘削されたトンネル本体部T1とトンネル拡幅部T2との掘削壁面側に反力受けセグメント部材6と該トンネル覆工部A2の後部を送り出す。なお、拡幅用シールドジャッキ26の内側方に配設している複数個の推進ジャッキ16はトンネル覆工部A2の前端面に対向していないから、収縮させた状態を維持する。
【0038】
シールド掘削機の掘進によって一定長のトンネルが掘削されると、その掘進を停止させ、推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26とを収縮させて1リング分のトンネル覆工部の組立用空間部を設け、該空間部に次の1リング分のトンネル覆工部A2をスキンプレート11及びスキンプレート部21の内周面に沿って組み立ててその後端面を先に組み立てた上記トンネル覆工部A2の前端面に接合、連結させ、再び、このトンネル覆工部A2の前端面に図17に示すように推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26とをそれぞれ当接させて伸長させることによりシールド掘削機後方の掘削壁面側に送り出す。
【0039】
以下、同様にして機内で組み立てたトンネル覆工部A2を順次トンネル長さ方向に接合、連結しながら掘削壁面に送り出して上記図16に示すように、トンネルの所定長さ区間の一側部にトンネル本体部T1側に向かって開口した非常駐車帯部等のトンネル拡幅部T2を覆工している一定長さのトンネル覆工A'を築造する。なお、このトンネル覆工A'の外周面とトンネル掘削壁面間の隙間に機内側からスキンプレートの外周面に沿って裏込め材を注入、充填する。
【0040】
こうして、所定長さのトンネル区間に道路部Cを築造するためのトンネル本体部T1と共に非常駐車帯部D等を築造するためのトンネル拡幅部T2を被覆したトンネル覆工A'を施工したのち、再び、道路のみを築造するための所定長のトンネル部を構築する。このトンネル部の構築方法は、シールド掘削機をローリングさせてその拡幅形成部2を掘削機本体1の一側部から徐々に下方に移動させながら一定長(20〜30m)掘進し、拡幅形成部2が掘削機本体1の底部側にまで移動すると、その状態を維持しながら上記同様に次のトンネル拡幅部形成位置の近傍部まで掘進すると共に、掘削されたトンネル本体部T1にはセグメント覆工A21 を施す一方トンネル拡幅部T2を間詰め材Bによって充填することにより行われる。
【0041】
このトンネル部の構築開始時においては、まず、図18に示すようにトンネル覆工A'の終端部前端面に上記反力受けセグメント部材6と同大、同形の反力受けセグメント部材6'の後端面を当接させて一体に連結し、この反力受けセグメント部材6'の前端面に推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26のロッド端を当接させて伸長させることによりシールド掘削機を一定長、掘進させると共に反力受けセグメント部材6'をその一部が機内から後方に送り出した状態にする。
【0042】
次いで、図19に示すように、推進ジャッキ16と拡幅用シールドジャッキ26とを収縮させて拡幅用シールドジャッキ26のロッド端に新たな妻型枠4を仮連結しておくと共に掘削機本体1の円筒状スキンプレート11の内周面と妻型枠4の内周面に沿って複数個のセグメントaを順次連結することによって1リング分の円環状トンネル覆工部A1を組み立てたのち、このトンネル覆工部A1の前端面に推進ジャッキ16を当接させて伸長させることによりシールド掘削機を一定長、掘進させると共にその掘進に従ってトンネル覆工部A1の後部を掘削壁面側に送り出す。
【0043】
しかるのち、推進ジャッキ16を収縮させてそのロッド端とトンネル覆工部A1の前端間の空間部を通じて上記拡幅用シールドジャッキ26のロッド端に連結している妻型枠4の連結を一旦解いて拡幅用シールドジャッキ26のロッド端と該妻型枠4との間に妻型枠サポート部材3を介在、連結させると共に図20に示すように、スキンプレート11の内周面とこの妻型枠サポート部材3の内周面に沿って複数個のセグメントaを連結することにより次のトンネル覆工部A1を組み立てたのち、推進ジャッキ16を該トンネル覆工部A1の前端面に当接させ、図21に示すように伸長させることによってシールド掘削機を一定長、掘進させると共に該トンネル覆工部A1を後方に送り出す。
【0044】
この時、シールド掘削機の掘進によって妻型枠4と反力受けセグメント部材6'間におけるトンネル拡幅部T2の掘削壁面とトンネル覆工部A1の外周面とで囲まれた部分に空間部が形成されるので、このトンネル拡幅部T2の空間部内に上記同様にして圧送ポンプ34により供給管32から妻型枠4の注入孔31を通じて間詰め材Bを注入、充填する。
【0045】
再び、上記同様にしてスキンプレート11の内周面に沿って1リング分の円環状トンネル覆工部A1を組み立てたのち、推進ジャッキ16のロッドを伸長させ且つ掘削機本体1をローリングさせながらこのトンネル覆工部A1をシールド掘削機によって掘削されたトンネル本体部T1側に送り出すと共に拡幅形成部2によって掘削されたトンネル拡幅部T2内に間詰め材Bを充填し、シールド掘削機の掘進に応じて拡幅用シールドジャッキ26を伸長させることによって間詰め材Bを圧密状態に押圧する。
【0046】
この作業を繰り返すことによって間詰め材Bを充填しているトンネル拡幅部T2を有し且つ該トンネル拡幅部T2をトンネル本体部T1の覆工部によって隠蔽している所定長のトンネル覆工Aを築造するものである。
【0047】
こうしてトンネル本体部T1の掘削壁面にトンネル拡幅部T2を隠蔽しているトンネル覆工Aを施工したのち、該トンネル覆工Aの下部に図22に示すように道路部Cを築造する一方、トンネル拡幅部T2をトンネル本体部T1の一側部に連通させた状態でこれらのトンネル本体部T1とトンネル拡幅部T2との掘削壁面に施工したトンネル覆工A'内においては、図23、図24に示すようにトンネル本体部T1の断面C状状の覆工部A21 の下部に上記道路部Cに連続する道路部Cを築造すると共にトンネル拡幅部T2の掘削壁面を被覆した膨出覆工部A22 で囲まれた下方空間部に上記道路部Cの側路となる非常駐車帯部や設備設置場所等の拡幅部Dを築造する。
【0048】
なお、以上の実施例においては、トンネル拡幅部T2を埋設状態にする場合、トンネル覆工Aによってトンネル本体部T1と遮断された該トンネル拡幅部T2の空間部内に掘削土砂の一部とセメント系固化材との混合物よりなる間詰め材Bを注入、充填しているが、このような間詰め材Bによることなく、既設の間詰め材を該トンネル拡幅部T2の空間部内に嵌合、介在させてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明の拡幅トンネルの構築方法によれば、トンネル本体部を掘削する掘削機本体とこの掘削機本体にトンネル拡幅部を掘削する拡幅形成部を一体に設けてなるシールド掘削機によってトンネル内の一部区間の側部に拡幅部を設ける拡幅トンネルの構築方法であって、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成することなくトンネル本体部のみを形成する際には、シールド掘削機をローリングさせて拡幅形成部を該掘削機本体の下方側に移動させ、この状態にしてシールド掘削機によりトンネル本体部とトンネル拡幅部を掘進すると共にトンネル本体部に覆工を施す一方、拡幅形成部により掘削されるトンネル拡幅部に間詰め材を充填するので、トンネル掘削幅がトンネル本体部の径に相当する幅のみとなり、且つこのトンネル本体部の下方側にトンネル拡幅部が位置するので、周辺地盤が緩みや崩壊するのを防止し得る等の周辺地盤への影響を小さくすることができると共にトンネル本体部の掘削やその掘削壁面に対するトンネル覆工、及びトンネル拡幅部内への間詰め材の充填作業が円滑且つ能率よく行うことができる。
【0050】
さらに、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成する際には、拡幅形成部が掘削機本体の側部に位置するようにシールド掘削機をローリングさせ、この状態にしてシールド掘削機の掘進によりトンネル本体部とこのトンネル本体部の側部に連通したトンネル拡幅部とを掘削し、トンネル本体部からトンネル拡幅部の掘削壁面全面にトンネル覆工を施工するものであるから、覆工されたトンネル本体部の築造に引き続いてこのトンネル本体部に連通したトンネル拡幅部を築造する場合には、シールド掘削機のローリング方向を変更することにより、トンネル本体部に対してトンネル拡幅部を左右どちらか一方の側部に連通するように任意に選択することができ、従って、トンネル本体部の両側にトンネル拡幅部をトンネル長さ方向に交互に配した拡幅トンネル等を構築することができる。
【0051】
また、トンネル本体部の掘削壁面からこの掘削壁面に連続するトンネル本体部の側部に形成されたトンネル拡幅部の掘削壁面に亘ってトンネル覆工を施工するものであるから、該トンネル覆工の外周面側に間詰め材を充填することなくトンネル本体部側に設けられる道路部の側部にトンネル拡幅部側に設けられる非常駐車帯部や設備設置場所等を幅方向に拡幅形成したトンネル区間部を容易に施工することができると共に、その区間部以外のトンネル内においては、トンネル本体部の掘削壁面にトンネル拡幅部を隠蔽したトンネル覆工を施工するものであるから、該トンネル本体部の全長に亘って一定幅を有する道路部を能率よく築造し得るものである。
【0052】
また、請求項2に係る発明によれば、トンネル本体部の側部にトンネル拡幅部を形成する際に、該トンネル拡幅部の上方地盤の地盤改良を行うことを特徴とするものであるから周辺地盤への影響を確実になくすることができるものであり、この地盤改良はトンネル全線ではなくトンネルの長さ方向にトンネル本体部の側部にトンネル拡幅部が一定距離毎に築造される部分のみでよいから、経済的であるばかでなく、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シールド掘削機の縦断側面図、
【図2】その横断面図、
【図3】カッタヘッドの配設状態を示す正面図、
【図4】推進ジャッキと拡幅用シールドジャッキとの配列状態を示す背面図、
【図5】間詰め材の供給手段を示す簡略側面図、
【図6】トンネル本体部の築造状態を示す簡略縦断側面図、
【図7】推進ジャッキを伸長させた状態の一部の縦断側面図、
【図8】セグメントの組立空間部を設けた状態の縦断側面図、
【図9】覆工したトンネル本体部の縦断正面図、
【図10】シールド掘削機をローリングさせている状態の簡略正面図、
【図11】この時の覆工したトンネル本体部と間詰めされた拡幅部との縦断正面図、
【図12】間詰めされた拡幅部をトンネル本体部の側部に設けた状態の縦断正面図、
【図13】この時のシールド掘削機の簡略正面図、
【図14】トンネル拡幅部の築造開始状態を示す横断面図、
【図15】セグメントを組み立てた状態の横断面図、
【図16】そのトンネル覆工部の縦断正面図、
【図17】次のトンネル覆工部を組み立てた状態の横断面図、
【図18】トンネル本体部の築造開始状態を示す横断面図、
【図19】セグメントを組み立てた状態の横断面図、
【図20】次のトンネル覆工部を組み立てた状態の横断面図、
【図21】推進ジャッキを伸長させた状態の横断面図、
【図22】道路部を築造した状態の縦断正面図、
【図23】道路部と拡幅部とを築造した状態の縦断正面図、
【図24】その簡略横断面図。
【符号の説明】
1 掘削機本体
2 拡幅形成部
4 妻型枠
11 スキンプレート
13 カッターヘッド
16 推進ジャッキ
21 スキンプレート部
26 拡幅用シールドジャッキ
a セグメント
A1〜A3 トンネル覆工部
A トンネル覆工
T1 トンネル本体部
T2 トンネル拡幅部
B 間詰め材
b 拡幅部材

Claims (2)

  1. トンネル本体部を掘削する掘削機本体とこの掘削機本体にトンネル拡幅部を掘削する拡幅形成部を一体に設けてなるシールド掘削機によってトンネル内の一部区間の側部に拡幅部を設ける拡幅トンネルの構築方法であって、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成することなくトンネル本体部のみを形成する際には、シールド掘削機をローリングさせて拡幅形成部を該掘削機本体の下方側に移動させ、この状態にしてシールド掘削機によりトンネル本体部とトンネル拡幅部を掘進すると共にトンネル本体部に覆工を施す一方、拡幅形成部により掘削されるトンネル拡幅部に間詰め材を充填し、トンネル本体部の側部に拡幅部を形成する際には、拡幅形成部が掘削機本体の側部に位置するようにシールド掘削機をローリングさせ、この状態にしてシールド掘削機の掘進によりトンネル本体部とこのトンネル本体部の側部に連通したトンネル拡幅部とを掘削し、トンネル本体部からトンネル拡幅部の掘削壁面全面にトンネル覆工を施工することを特徴とする拡幅部を有するトンネル構築方法。
  2. トンネル本体部の側部にトンネル拡幅部を形成する際に、該トンネル拡幅部の上方地盤の地盤改良を行うことを特徴とする請求項1に記載の拡幅部を有するトンネル構築方法。
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