以下、図面を参照して、地中壁構築方法の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る地中壁構築方法を、既設の本線シールドトンネルに新設の支線シールドトンネルを合流させるために、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルとの合流領域に本線シールドトンネル及び支線シールドトンネルの双方を囲む大断面トンネルを施工する方法に適用したものである。但し、本発明の地中壁構築方法は、このような大断面トンネルの施工方法及び大断面トンネルに適用されるものに限定されない。全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
まず、地下構造物について説明する。図1〜図4に示すように、本実施形態に係る地下構造物1は、水平方向に並設された本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との合流領域に施工された、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲む大断面トンネルである。地下構造物1の内部には、地下構造物1の軸線方向に延びる地下空洞4が形成されている。地下構造物1は、地下構造物1の一方端部1aに構築された円周状の周回構造物10と、周回構造物10から地下構造物1の他方端部1bまで延伸された複数のシールドトンネル11を連結してなる外郭躯体12と、外郭躯体12の一方側面を封止(止水)する一方側褄壁15と、外郭躯体12の他方側面を封止(止水)する他方側褄壁16と、を備えている。
周回構造物10は、水平方向に並設された本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との周囲に構築されている。周回構造物10は、シールドトンネル11を延伸する際の発進基地となる。周回構造物10は、例えば、周知の円周シールド掘進機により構築することができる。
シールドトンネル11は、公知のシールド掘進工法又はシールド推進工法により施工されたトンネルである。すなわち、シールドトンネル11は、シールド掘進機で地中を掘進しながら、シールド掘進機の後方でトンネルの壁面となるセグメントを組み立てていくことや、シールド掘進機を推進管により推力を得て掘進して、推進管を組み立てていくことにより構築されるトンネルである。つまり、シールドトンネル11は、シールド掘進機を掘進して組み立てられたセグメントや掘進に伴い組み立てられた推進管によりトンネル覆工体またはトンネル躯体を構築することで延伸される。地下構造物1では、地下構造物1の一方端部1a(図1における右上側の端部)と他方端部1b(図1における左下側の端部)との間において、軸方向に延伸される複数のシールドトンネル11が、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように、周方向に配置されている。
外郭躯体12は、地下空洞4の外郭を構成する略円弧状の躯体となる。外郭躯体12は、隣り合うシールドトンネル11を連結してなる。具体的には、外郭躯体12は、隣り合うシールドトンネル11に打設された鉄筋コンクリートによりなる。
一方側褄壁15は、地下構造物1の一方端部1aに構築されている。一方側褄壁15は、周回構造物10の内周側を封止する地中壁である。一方側褄壁15は、周回構造物10の内周側に打設された鉄筋コンクリート等により構築されている。
他方側褄壁16は、地下構造物1の他方端部1bに構築されている。他方側褄壁16は、外郭躯体12の端部の内周側を封止する地中壁である。他方側褄壁16は、外郭躯体12の端部の内周側に打設された鉄筋コンクリート等により構築されている。
そして、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部の土砂が掘削除去されることで、地下構造物1の内部に地下空洞4が形成されている。
次に、上述した地下構造物1の施工方法について説明する。本実施形態に係る地下壁構築方法は、地下構造物1の施工方法の一部を構成する。地下構造物の施工方法は、周回構造物構築工程(S1)と、シールドトンネル構築工程(S2)と、外郭躯体構築工程(S3)と、褄部凍土形成工程(S4)と、掘削工程(S5)と、地中壁構築工程(S6)と、を備える。
周回構造物構築工程(S1)では、図5及び図6に示すように、シールドトンネル11を延伸させるための発進基地21を構築する。発進基地21は、発進坑口22と、周回構造物23と、を備える。発進坑口22は、支線シールドトンネル3から支線シールドトンネル3の半径方向外周側に延びる。周回構造物23は、水平方向に並列される本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の周囲に構築される構造物であり、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように発進坑口22から円周状に延びる。発進坑口22は、周知のシールド掘進機により施工することができ、周回構造物23は、周知の円周シールド掘進機により施工することができる。
シールドトンネル構築工程(S2)では、図7〜図10に示すように、地下構造物1の施工予定領域である地下構造物予定領域(不図示)の一方端部1aと他方端部1bとの間において、軸方向に延伸する複数のシールドトンネル11を周方向に構築する。なお、地下構造物予定領域の一方端部1a及び他方端部1bは、地下構造物1の一方端部1a及び他方端部1bと同じである。
シールドトンネル構築工程(S2)では、複数のシールドトンネル11のうちの一部のシールドトンネルである先行シールドトンネル13を延伸する先行シールドトンネル構築工程(S21)と、隣り合う先行シールドトンネル13の間に、複数のシールドトンネル11のうちの残りのシールドトンネルである後行シールドトンネル14を延伸する後行シールドトンネル構築工程(S22)と、を行う。
先行シールドトンネル構築工程(S21)では、一方端部1aに施工された発進基地21の周回構造物23から他方端部1bまで複数の先行シールドトンネル13を延伸する。このとき、隣り合う先行シールドトンネル13を同時に延伸せずに、隣り合う先行シールドトンネル13のうち、一方の先行シールドトンネル13を先行して延伸した後に、他方の先行シールドトンネル13を後行して延伸することが好ましい。また、先行シールドトンネル13の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の先行シールドトンネル13を並行して延伸できる。
また、先行シールドトンネル構築工程(S21)では、一方端部1aから他方端部1bに向かうに従い、隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線が近接して行くように、複数の先行シールドトンネル13を延伸する。
後行シールドトンネル構築工程(S22)では、一方端部1aに施工された発進基地21の周回構造物23から他方端部1bまで複数の後行シールドトンネル14を延伸する。このとき、シールドトンネル11上部の土砂が弛み易い傾向にあることから、下方に配置される後行シールドトンネル14から順に延伸することが好ましい。また、先行シールドトンネル13の延伸と同様に、後行シールドトンネル14の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の後行シールドトンネル14を並行して延伸できる。
また、後行シールドトンネル構築工程(S22)では、一方端部1aから他方端部1bに向かうに従い、隣り合う後行シールドトンネル14の中心軸線が近接して行くとともに、隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線と後行シールドトンネル14の中心軸線とが近接して行くように、複数の後行シールドトンネル14を延伸する。これにより、地下空洞の断面積を、一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくすることができる。
なお、隣り合う先行シールドトンネル13が構築されていれば、全ての先行シールドトンネル13の延伸が終了する前に後行シールドトンネル構築工程(S22)を開始して、構築されている隣り合う先行シールドトンネル13の間に後行シールドトンネル14を延伸してもよい。
そして、後行シールドトンネル構築工程(S22)では、一方端部1aから他方端部1bの全域において、隣り合う先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とが重なるように、先行シールドトンネル13の一部を切削して後行シールドトンネル14を延伸する。
ここで、先行シールドトンネル13は、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削可能である部分を含む必要がある。このため、先行シールドトンネル13は、シールドトンネルの壁面となるセグメント又は推進管を組み立てる際に、切削される箇所のセグメント又は推進管を切削可能なものとする。切削可能なセグメント又は推進管としては、例えば、特許第4851133号や特許第4939803号に記載されたような繊維強化樹脂製の掘削可能セグメント又は切削可能推進管を用いる。
また、先行シールドトンネル13では、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機が先行シールドトンネル13と重なりながら掘進できるように、後行シールドトンネル14を延伸する前に、その内部を充填しておく必要がある。先行シールドトンネル13内に充填する充填物としては、シールド掘進機により切削可能である必要があるため、エアモルタル等の切削可能充填材を用いることが好ましい。しかしながら、先行シールドトンネル13の内部全体を切削可能充填材で充填すると、先行シールドトンネル13内に強固な外郭躯体12を構築することができない。
そこで、先行シールドトンネル13の内部領域の内、少なくとも後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削される切削予定領域に、切削可能充填材を充填し、その他の領域に、コンクリートを打設する。
先行シールドトンネル13へのコンクリート及び切削可能充填材の充填は、例えば、次のように行うことができる。先行シールドトンネル13の延伸が終了すると、シールド掘進機の残置物を先行シールドトンネル13の先端に残置し、シールド掘削機の回収物を当該先行シールドトンネル13から一方端部1aの発進基地21に回収する。その際、先行シールドトンネル13の先端から一方端部1aに向かって順にコンクリート及び切削可能充填材を充填してく。コンクリート及び切削可能充填材の充填は、先行シールドトンネル13を複数のスパンに区切り、これから充填しようとするスパンの一方端部1a側に隔壁を構築する。そして、当該スパンに、コンクリートを打設した後、切削可能充填材を充填する。シールド掘削機の回収物とは、例えば、カッターモータやシールドジャッキや電装品などが該当する。シールド掘進機の内、カッター部分、及び外周鋼殻部分等などのシールド掘進機の外郭をなして地中の土砂の流入を防止する機能を有する部分は、地中に残置物として残置する。
上述したように、隣り合う先行シールドトンネル13の間隔は、一方端部1a側よりも他方端部1b側の方が狭くなるため、一方端部1aから他方端部1bまでの全域において後行シールドトンネル14が同径であると、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14との重なる量が過大となる。
そこで、後行シールドトンネル構築工程(S22)では、一方端部1a側では後行シールドトンネル14を大径の第一後行シールドトンネル14Aとし、他方端部1b側では後行シールドトンネル14を小径の第二後行シールドトンネル14Bとする。これにより、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14との重なる量を小さくして、後行シールドトンネル14構築時の先行シールドトンネル13の切削量を低減することができる
第一後行シールドトンネル14A及び第二後行シールドトンネル14Bの延伸は、例えば、特開2005−194752号公報、特開平10−153083号公報、特開平10−096392号公報に記載された親子シールド機(親子シールド掘進機)を用いることで、容易に行うことができる。つまり、親子シールド機の親シールド機により第一後行シールドトンネル14Aを延伸し、その後、親子シールド機から子シールド機を発進させ、この子シールド機により第一後行シールドトンネル14Aの先端から第二後行シールドトンネル14Bを延伸する。
なお、本実施形態では、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地(内部空洞)が構築されていないが、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合は、他方端部1bに到達したシールド掘進機を、他方端部1bから一方端部1aに向けて掘進してもよい。この場合、シールド掘進機を他方端部1bから一方端部1aに移動する必要がなくなる。また、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合は、第二後行シールドトンネル構築工程(S22B)において、他方端部1bの到達基地から第一後行シールドトンネル14Aの先端に向けて第二後行シールドトンネル14Bを延伸してもよい。この場合、第一後行シールドトンネル14Aの延伸が終了する前に第二後行シールドトンネル14Bの延伸を開始することができる。
外郭躯体構築工程(S3)では、図11に示すように、複数のシールドトンネル11を連結してなる外郭躯体12を構築する。外郭躯体12の構築は、例えば、次のように行うことができる。まず、隣り合うシールドトンネル11を連通させる。なお、隣り合うシールドトンネル11は重なっているため、シールドトンネル構築工程(S2)において既に隣り合うシールドトンネル11が連通されている場合は、外郭躯体構築工程(S3)において隣り合うシールドトンネル11を連通させなくてもよい。そして、この連通したシールドトンネル11の内部空間に、鉄筋61を配設し、コンクリート62を打設する。これにより、外郭躯体12が、シールドトンネル11と、シールドトンネル11内の鉄筋コンクリート(鉄筋61及びコンクリート62)と、により構築される。
褄部地盤改良工程(S4)、掘削工程(S5)及び地中壁構築工程(S6)では、図12に示すように、外郭躯体12の内周側領域に地下空洞4を形成するとともに、外郭躯体12の一方端部1a及び他方端部1bに地中壁である一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築する。
褄部地盤改良工程(S4)では、一方端部1aの褄部を地盤改良する一方側地盤改良工程(S41)と、他方端部1bの褄部を地盤改良する他方側地盤改良工程(S42)と、を備える。本実施形態において地盤改良とは、地盤に凍土を形成することにより止水を行う凍結改良をいう。但し、褄部の止水を行うことができれば、如何なる地盤改良を行ってもよい。
一方側地盤改良工程(S41)では、周回構造物23の内周側を地盤改良することで外郭躯体12の一方端部1a側の褄部に仮設壁を形成する。一方側地盤改良工程(S41)は、支持構造体構築工程(S411)と、パイプ構築工程(S412)と、充填工程(S413)、地盤改良体形成工程(S414)と、を備える。
支持構造体構築工程(S411)では、図13及び図14に示すように、両端部が周回構造物23の内周壁に連結される支持構造体71を構築する。支持構造体71は、一方側褄壁15の施工予定領域である一方側褄壁予定領域の外側に構築する。支持構造体71としては、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の上方に位置する第一支持構造体71Aと、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の下方に位置する第二支持構造体71Bと、を構築する。なお、第一支持構造体71Aと第二支持構造体71Bとは、構築される位置を除いて同じものであるため、特に区別して説明する場合を除き、支持構造体71として纏めて説明する。
支持構造体構築工程(S411)で構築する支持構造体71は、公知の矩形掘進工法等により施工される中空構造の矩形管である。すなわち、支持構造体71は、矩形掘進機で周回構造物23の一方の内周壁から他方の内周壁まで地中を掘進しながら、矩形掘進機の後方で推進管の壁面となるセグメントを組み立てることにより構築される矩形推進管である。また、矩形掘進機の後部で矩形管の壁面となるセグメントを順次組立てていくことにより矩形管を構築してもよい。
このとき、後工程のパイプ構築工程(S412)で支持構造体71にパイプを貫通させるために、支持構造体71のパイプが貫通する領域に、エアモルタル等の切削可能充填材を充填しておくことが好ましい。切削可能充填材の充填は、例えば、図15及び図16に示すように、支持構造体71の内側に円筒状の型枠73を設置し、この型枠73内に切削可能充填材74を充填することにより行う。型枠73は、パイプが貫通する位置に設置するとともに、その両端が、支持構造体71の内壁面に当接するように設置する。これにより、支持構造体71のパイプが貫通する領域に、切削可能充填材を充填することができる。
また、後工程の地盤改良体形成工程(S414)で褄部の凍結改良を行うために、支持構造体71の内部に凍結管(不図示)を配設しておく。なお、支持構造体71の内部に凍結管を配設できるように、切削可能充填材が充填される型枠73と支持構造体71の内壁面との間に空間をあけておくことが好ましい。
そして、支持構造体構築工程(S411)では、支持構造体71を周回構造物23の一方の内周壁及び他方の内周壁に貫通させることで、支持構造体71の両端部を、周回構造物23の内周壁に連結する。これにより、支持構造体71の両端部は、周回構造物23の内周壁に支持された状態となる。
パイプ構築工程(S412)では、図17及び図18に示すように、支持構造体71に連結されるとともに少なくとも一端部が周回構造物23の内周壁に連結されるパイプ72を構築する。本実施形態では、パイプ構築工程(S412)において、一端部が周回構造物の内周壁に連結されるととともに、支持構造体71を貫通するパイプ72を構築する。パイプ72は、支持構造体71と同様に一方側褄壁予定領域の外側に構築する。パイプ72としては、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の上方に位置して第一支持構造体71Aを貫通する複数の第一パイプ72Aと、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の下方に位置して第二支持構造体71Bを貫通する複数の第二パイプ72Bと、を構築する。なお、第一パイプ72Aと第二パイプ72Bとは、構築される位置を除いて同じものであるため、特に区別して説明する場合を除き、パイプ72として纏めて説明する。
パイプ構築工程(S412)で構築するパイプ72は、公知の掘進工法等により施工される中空構造の円形管である。すなわち、パイプ72は、シールド掘進機で周回構造物23の一方の内周壁から支持構造体71に向けて地中を掘進しながら、シールド掘進機の後方で推進管の壁面となるセグメントを組み立てることにより構築される円形推進管である。そして、パイプ構築工程(S412)で用いられるパイプ推進工は、公知のパイプルーフ工法等を適用して、褄部に沿って垂直方向に複数のパイプ72を柱列状に構築する。また、シールド掘進機の後部で円形管の壁面となるセグメントを順次組立てていくことにより円形管を構築してもよい。
支持構造体71にパイプ72を貫通させる際は、図19に示すように、支持構造体71のセグメントを切削して型枠73に充填された切削可能充填材74を掘削していく。これにより、支持構造体71にパイプ72を貫通させることができる。
パイプ72が本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3に到達する場合は、図20に示すように、パイプ72の先端部を本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3のセグメントに貫通させる。このとき、パイプ72が貫通する箇所では、本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3の内壁面に筒状体75を設置しておき、この筒状体75の中で、セグメントを貫通させる。筒状体75自体は一端側が蓋により閉口していて、他端は開口している。他端を本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3に連結して、密閉空間78を形成している。そして、パイプ72の内部に配設された凍結管76によりパイプ72の周囲に凍土77を形成して、パイプ72と本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3のシールドとの間の隙間を遮蔽(止水)する。
一方、パイプ72が本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3に到達しない場合、つまり、パイプ72の推進先が本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との間である場合は、第一パイプ72Aと第二パイプ72Bとが互いに干渉し合わないように、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との間でパイプ72の推進を終了する。
また、後工程の地盤改良体形成工程(S414)で褄部の凍結改良を行うために、パイプ72の内部に凍結管(不図示)を配設する。なお、褄部の凍結改良を行うための凍結管は、パイプ72と本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3のシールドとの間の隙間を遮蔽(止水)する凍結管76と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
充填工程(S413)では、図21及び図22に示すように、支持構造体71及びパイプ72の内部空間と、周回構造物23の内部空間のうち一方側褄壁予定領域を囲む領域とに、コンクリートを打設する。なお、周回構造物23の内部空間のその他の領域は、作業スペースの空間として残しておく。
また、充填工程(S413)では、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との間のパイプ72が届かない領域に、仮設支持躯体79を構築する。仮設支持躯体79は、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との間において、第一支持構造体71Aを貫通する第一パイプ72Aと、第二支持構造体71Bを貫通する第二パイプ72Bとを接続する躯体である。仮設支持躯体79の構築は、例えば、本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3から、仮設支持躯体79の構築予定領域である仮設支持躯体予定領域を掘削し、掘削した仮設支持躯体予定領域に鉄筋コンクリートを打設することにより行う。
地盤改良体形成工程(S414)では、図23及び図24に示すように、パイプ72及び支持構造体71から周回構造物23の内周側を地盤改良して第一地盤改良体80を形成する。第一地盤改良体80は、一方側褄壁15の仮設壁であり、一方端部1a側の褄部を止水するとともに地山の土圧を支持する。
第一地盤改良体80の形成方法は、褄部を止水するとともに地山の土圧を支持することができれば特に限定されないが、本実施形態では、凍結工法等により地盤を凍結することにより行う。具体的には、パイプ72及び支持構造体71の内部に配設した凍結管により、パイプ72及び支持構造体71周囲の地盤を凍結することで、第一地盤改良体80を形成する。これにより、外郭躯体12の一方端部1a側の褄部が、第一地盤改良体80により封止(止水)される。
他方側地盤改良工程(S42)では、周回構造物23の内周側を地盤改良することで、外郭躯体12の他方端部1b側の褄部に、仮設壁である第二地盤改良体(不図示)を形成する。他方側地盤改良工程(S42)では、例えば、特許文献1又は2に記載された方法により第二地盤改良体を形成する。つまり、各シールドトンネル11から外郭躯体12の内周側に向けてパイプ(不図示)を掘進し、当該パイプの内部に配設した凍結管により、パイプ周囲の地盤を凍結することで、第二地盤改良体を形成する。他方側地盤改良工程(S42)で掘進するパイプは、一方側地盤改良工程(S41)で掘進するパイプ72と同じ構造とすることができる。
掘削工程(S5)では、図25に示すように、一方端部1aに形成された第一地盤改良体80及び他方端部1bに形成された第二地盤改良体に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削して地下空洞4を形成する。つまり、第一地盤改良体80及び第二地盤改良体に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削し、掘削した土砂を排出することで、外郭躯体12の内周側に地下空洞4を形成する。そして、掘削した土砂を、本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3から排出する。
地中壁構築工程(S6)では、図12及び図26に示すように、第一地盤改良体80の隣に、外郭躯体12の一方端部1a側の褄部を封止(止水)する一方側褄壁15を構築し、第二地盤改良体の隣に、外郭躯体12の他方端部1b側の褄部を封止(止水)する他方側褄壁16を構築する。具体的には、第一地盤改良体80の内側に鉄筋コンクリートを打設するとともに、第二地盤改良体の内側に鉄筋コンクリートを打設する。これにより、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築することができる。なお、上述したように、充填工程(S413)で、周回構造物23の一方側褄壁予定領域を囲む領域にコンクリートが打設されているため、第一地盤改良体80の強度が高まる。
以上説明したように、本実施形態では、両端部が周回構造物23の内周壁に連結される支持構造体71に、一端部が周回構造物23の内周壁に連結されるパイプ72を貫通し、このパイプ72から周回構造物23の内周側を地盤改良して第一地盤改良体80を形成する。これにより、パイプ72は、両端部が周回構造物23の内周壁に連結された支持構造体71によって支持されることで、第一地盤改良体80とともに地下構造物1の高い強度を有する一方側褄壁15として機能するため、地山の安定性が図れる。例えば、支持構造体71を構築しない場合に比べて、第一地盤改良体80を薄くしても、地山の安定性を図ることができる。
また、支持構造体71にパイプ72を貫通させることで、支持構造体71とパイプ72との連結強度、つまり支持構造体71に対するパイプ72の支持強度を向上させることができる。
また、パイプ72の周囲に凍土を形成することで、容易に強固な第一地盤改良体80を形成することができる。
また、パイプ推進工により複数のパイプ72を柱列状に構築することで、パイプ72から露出する地山の露出面積を小さく抑えることができる。
また、支持構造体71が矩形断面であるため、容易に支持構造体71を構築することができるとともに、容易に支持構造体71にパイプを貫通させることができる。
また、支持構造体71を中空構造にすることで、容易に支持構造体71を構築することができる。また、支持構造体71のパイプ72が貫通する領域に掘削可能な掘削可能充填材を充填することで、掘進機等で支持構造体71を掘削することが可能となるため、容易に支持構造体71にパイプ72を貫通させることができる。
ところで、水平方向に並設された本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の周囲に周回構造物23を構築すると、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の上方及び下方では、周回構造物23が本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3から離れていくため、パイプ72も長くなりやすい。そこで、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の上方と下方に支持構造体71を構築することで、パイプ72の支持剛性が低下するのを抑制することができる。
また、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の上方又は下方の何れか一方に構築された支持構造体71にパイプ72を貫通させることで、パイプ72が長すぎるのを抑制して、パイプ72の支持剛性が低下するのを抑制することができる。
また、第一地盤改良体80の隣に周回構造物23の内周側を封止する一方側褄壁15を構築するため、高い強度の一方側褄壁15を構築することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、シールドトンネルの形状、数、配置、位置関係等は、特に限定されるものではない。
また、外郭躯体は、シールドトンネル内の全領域に打設されたコンクリートにより形成されてもよく、シールドトンネル内の略円弧状(略円周状)の領域に打設されたコンクリートにより形成されてもよい。
また、各工程の一部を並行して行ってもよい。例えば、全ての先行シールドトンネルの構築が終了する前に後行シールドトンネルの構築を開始してもよい。同様に、シールドトンネル構築工程が終了する前に外郭躯体構築工程を開始してもよい。同様に、外郭躯体構築工程が終了する前に褄部地盤改良工程、掘削工程及び地中壁構築工程を開始してもよい。
また、支持構造体からは周回構造物の内周側を地盤改良しなくてもよい。この場合に地盤改良として凍結改良する場合は、パイプ内にのみ凍結管を配設し、支持構造体内には凍結管を配設しなくてもよい。
また、上記実施形態では、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との間にパイプ72の届かない(到達しない)領域を設けたが、第一支持構造体及び第二支持構造体のそれぞれから推進したパイプを地中で接合してもよいし、第一支持構造体又は第二支持構造体の何れかの支持構造体から他方の支持構造体まで推進して、パイプを第一支持構造体と第二支持構造体の間に架け渡してもよい。これらの場合、パイプの両端部が周回構造物の内周壁に連結されてもよい。