支線シールドトンネルは、本線シールドトンネルに徐々に合流していく。これに対し、特許文献1に記載された方法で施工された大断面トンネルは、一方端部から他方端部まで同じ断面となるため、大断面トンネルに無駄な領域が多く発生して、工期が長期化するという問題がある。
そこで、本発明は、効率的に躯体を形成することができる躯体の施工方法及び躯体を提供することを目的とする。
本発明に係る地下構造物の施工方法は、内部に地下空洞を形成する地下構造物の施工方法であって、地下構造物の施工予定領域である地下構造物予定領域の一方端部と他方端部との間において、軸方向に延伸する複数のシールドトンネルを周方向に構築するシールドトンネル構築工程と、複数のシールドトンネルを連結してなる地下構造物の外郭躯体を構築する外郭躯体構築工程と、外郭躯体の内周側領域を掘削して地下空洞を形成する掘削工程と、を備え、シールドトンネル構築工程は、複数のシールドトンネルのうちの一部のシールドトンネルである先行シールドトンネルを延伸する先行延伸工程と、隣り合う先行シールドトンネルの間に、複数のシールドトンネルのうちの残りのシールドトンネルである後行シールドトンネルを延伸する後行延伸工程と、を有し、後行延伸工程は、後行シールドトンネルとして、他方端部に向けて第一後行シールドトンネルを延伸する第一後行延伸工程と、後行シールドトンネルとして、第一後行シールドトンネルの先端と他方端部との間に、第一後行シールドトンネルよりも小径の第二後行シールドトンネルを延伸する第二後行延伸工程と、を有し、地下空洞の断面積を、一方端部から他方端部に向けて小さくする。
この地下構造の施工方法では、隣り合う先行シールドトンネルの間に後行シールドトンネルを延伸する後行延伸工程において、後行シールドトンネルとして、他方端部に向けて第一後行シールドトンネルを延伸するとともに、第一後行シールドトンネルの先端と他方端部との間に、第一後行シールドトンネルよりも小径の第二後行シールドトンネルを延伸する。このため、後行シールドトンネルを延伸する際の先行シールドトンネルの切削量を低減しつつ、地下空洞の断面積を一方端部から他方端部に向けて小さくすることができる。これにより、効率的に地下空洞を形成することができる。
第一後行延伸工程では、一方端部から第一後行シールドトンネルを延伸し、第二後行延伸工程では、第一後行シールドトンネルの先端から他方端部まで第二後行シールドトンネルを延伸してもよい。この地下構造物の施工方法では、一方端部から第一後行シールドトンネルを延伸するとともに第一後行シールドトンネルの先端から他方端部まで第二後行シールドトンネルを延伸することで、効率的に後行シールドトンネルを延伸することができる。
後行延伸工程では、一方端部から他方端部までの少なくとも一部において、先行シールドトンネルと後行シールドトンネルとが重なるように先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸してもよい。この地下構造物の施工方法では、一方端部から他方端部までの少なくとも一部において、先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸することで、外郭躯体を構築する際に隣り合うシールドトンネルを連結する作業を低減することができるため、先行シールドトンネルの切削量を低減しつつ、外郭躯体の構築を簡易化することができる。
後行延伸工程では、一方端部から他方端部までの全域において、先行シールドトンネルと後行シールドトンネルとが重なるように先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸してもよい。この地下構造物の施工方法では、一方端部から他方端部までの全域において先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸することで、外郭躯体を構築する際に隣り合うシールドトンネルを連結する作業を低減又は削減することができるため、外郭躯体の構築を簡易化することができる。
第一後行延伸工程では、第一シールド機により第一後行シールドトンネルを延伸し、第二後行延伸工程では、第二シールド機により第二後行シールドトンネルを延伸し、第二シールド機の外径は第一シールド機の外径より小さくてもよい。この地下構造物の施工方法では、外径の異なる第一シールド機及び第二シールド機を用いることで、容易に第一後行シールドトンネル及び第二後行シールドトンネルを延伸することができる。
第一シールド機と第二シールド機とは親子シールド機であり、親子シールド機の親シールド機により第一後行シールドトンネルを延伸し、親子シールド機の子シールド機により第二後行シールドトンネルを延伸してもよい。この地下構造物の施工方法では、後行延伸工程で親子シールド機を用いることで、容易に第一後行シールドトンネル及び第二後行シールドトンネルを延伸することができる。
本発明に係る地下構造物は、内部に地下空洞を形成する地下構造物であって、地下構造物の一方端部と他方端部との間に軸方向に延伸されるとともに周方向に配置された複数のシールドトンネルと、複数のシールドトンネルを連結してなる地下構造物の外郭躯体と、を備え、複数のシールドトンネルの一部は、一方端部と他方端部との間において複数の外径からなる異形シールドトンネルにより構成されており、異形シールドトンネルは、一方端部側の大径の第一シールドトンネルと、他方端部側の小径の第二シールドトンネルと、を有し、地下空洞の断面積は、一方端部から他方端部に向けて小さくなっている。
この地下構造物では、複数のシールドトンネルの一部が、一方端部と他方端部との間において複数の外径からなるとともに、一方端部側の大径の第一シールドトンネルと他方端部側の小径の第二シールドトンネルとを有する異形シールドトンネルにより構成されているため、一方端部から他方端部に向けて断面積が小さくなっている地下空洞を、効率的に形成することができる。
第一シールドトンネルは、一方端部から他方端部側に向けて延びており、第二シールドトンネルは、第一シールドトンネルの先端から他方端部まで延びていてもよい。この地下構造物では、第一シールドトンネルが一方端部から他方端部側に向けて延びており、第二シールドトンネルが第一シールドトンネルの先端から他方端部まで延びているため、効率的に異形シールドトンネルを延伸することができる。
隣り合うシールドトンネルは、一方端部から他方端部までの全域において重なっていてもよい。この地下構造物では、隣り合うシールドトンネルが一方端部から他方端部までの全域において重なっているため、外郭躯体を容易に構築することができるとともに、外郭躯体の強度を向上することができる。
本発明に係る躯体の施工方法は、地下の第一端部と第二端部との間において、軸方向に延伸する複数のシールドトンネルを構築するシールドトンネル構築工程と、複数のシールドトンネルを連結してなる躯体を構築する躯体構築工程と、を備え、シールドトンネル構築工程は、複数のシールドトンネルのうちの一部のシールドトンネルである先行シールドトンネルを延伸する先行延伸工程と、隣り合う先行シールドトンネルの間に、複数のシールドトンネルのうちの残りのシールドトンネルである後行シールドトンネルを延伸する後行延伸工程と、を有し、後行延伸工程は、後行シールドトンネルとして、第二端部に向けて第一後行シールドトンネルを延伸する第一後行延伸工程と、後行シールドトンネルとして、第一後行シールドトンネルの先端から第二端部に向けて、第一後行シールドトンネルよりも小径の第二後行シールドトンネルを延伸する第二後行延伸工程と、を有する。
第一後行延伸工程では、第一端部から第一後行シールドトンネルを延伸してもよい。
第二後行延伸工程では、第一後行シールドトンネルの先端から第二端部まで第二後行シールドトンネルを延伸してもよい。
後行延伸工程では、第一端部から第二端部までの少なくとも一部において、先行シールドトンネルと後行シールドトンネルとが重なるように先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸してもよい。
第一後行延伸工程では、第一シールド機により第一後行シールドトンネルを延伸し、第二後行延伸工程では、第二シールド機により第二後行シールドトンネルを延伸し、第二シールド機の外径は第一シールド機の外径より小さくてもよい。
第一シールド機と第二シールド機とは親子シールド機であり、親子シールド機の親シールド機により第一後行シールドトンネルを延伸し、親子シールド機の子シールド機により第二後行シールドトンネルを延伸してもよい。
本発明に係る躯体は、地下の第一端部と第二端部との間において軸方向に延伸された複数のシールドトンネルが連結されてなる躯体であって、複数のシールドトンネルの一部は、第一端部と第二端部との間において複数の外径からなる異形シールドトンネルにより構成されており、異形シールドトンネルは、第一端部側の大径の第一シールドトンネルと、第二端部側の小径の第二シールドトンネルと、を有し、第一シールドトンネル及び第二シールドトンネルのそれぞれは、隣り合うシールドトンネルと、第一端部から第二端部までの少なくとも一部において重なっている。
第一シールドトンネルは、第一端部から第二端部側に向けて延びていてもよい。
第二シールドトンネルは、第一シールドトンネルの先端から第二端部まで延びていてもよい。
隣り合うシールドトンネルは、第一端部から第二端部までの全域において重なっていてもよい。
本発明によれば、効率的に躯体を形成することができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る地下構造物の施工方法及び地下構造物の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る地下構造物の施工方法は、既設の本線シールドトンネルに新設の支線シールドトンネルを合流させるために、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルとの合流領域に本線シールドトンネル及び支線シールドトンネルの双方を囲む大断面トンネルを施工する方法である。また、本実施形態に係る地下構造物は、このような方法により施工される大断面トンネルである。但し、本発明の地下構造物の施工方法及び地下構造物は、このような大断面トンネルの施工方法及び大断面トンネルに限定されるものではない。全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
まず、地下構造物について説明する。図1〜図4に示すように、本実施形態に係る地下構造物1は、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との合流領域に施工された、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲む大断面トンネルである。地下構造物1の内部には、地下構造物1の軸線方向に延びる地下空洞4が形成されており、地下構造物1は、複数のシールドトンネル11を連結してなる地下空洞4の外郭躯体12を備えている。
シールドトンネル11は、公知のシールド掘進工法又はシールド推進工法により施工されたトンネルである。すなわち、シールドトンネル11は、シールド掘進機で地中を掘進しながら、シールド掘進機の後方でトンネルの壁面となるセグメントを組み立てていくことや、シールド掘進機を推進管により推力を得て掘進して、推進管を組み立てていくことにより構築されるトンネルである。つまり、シールドトンネル11は、シールド掘進機を掘進して組み立てられたセグメントや掘進に伴い組み立てられた推進管によりトンネル覆工体またはトンネル躯体を構築することで延伸される。地下構造物1では、地下構造物1の一方端部1a(図1における右上側の端部)と他方端部1b(図1における左下側の端部)との間において、軸方向に延伸される複数のシールドトンネル11が、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように、周方向に配置されている。
外郭躯体12は、地下空洞4の外郭を構成する略円弧状の躯体となる。外郭躯体12は、隣り合うシールドトンネル11が連結されることにより構築されている。外郭躯体12は、鉄筋コンクリートにより形成されている。本実施形態では、隣り合うシールドトンネル11が重なることで連結されており、この連結されたシールドトンネル11により外郭躯体12が形成されている。
地下構造物1の一方端部1aには、外郭躯体12の一方側面を封止(止水)する一方側褄壁15が構築されており、地下構造物1の他方端部1bには、外郭躯体12の他方側面を封止(止水)する他方側褄壁16が構築されている。
そして、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部の土砂が掘削除去されることで、地下構造物1の内部に地下空洞4が形成されている。
次に、上述した複数のシールドトンネル11について更に詳しく説明する。複数のシールドトンネル11の一部は、一方端部1aと他方端部1bとの間において複数の外径からなる異形シールドトンネルにより構成されている。そして、この異形シールドトンネルは、一方端部1a側の大径の第一シールドトンネルと、他方端部1b側の小径の第二シールドトンネルとを有する。つまり、異形シールドトンネルの外径は、一方端部1aから他方端部1bに向けて段階的に小さくなっている。
より具体的に説明すると、複数のシールドトンネル11は、複数のシールドトンネル11のうちの一部のシールドトンネル11である先行シールドトンネル13と、複数のシールドトンネル11のうちの残りのシールドトンネル11である後行シールドトンネル14と、により構成される。
先行シールドトンネル13は、一方端部1aから他方端部1bまで延伸されている。後行シールドトンネル14は、一方端部1aから他方端部1bまで延伸されている。つまり、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の両端は、一方端部1a及び他方端部1bに至っている。後行シールドトンネル14は、先行シールドトンネル13を延伸した後に延伸されるシールドトンネルであり、隣り合う先行シールドトンネル13の間に配置されている。
そして、隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線と後行シールドトンネル14の中心軸線との間隔が一方端部1aから他方端部1bに向けて狭くなることで、地下空洞4が本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の外形に沿うように、地下空洞4の断面積が一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくなっている。また、地下空洞4の断面積が一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくなるように、隣り合う先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とが重なるとともに、一方端部1aから他方端部1bに向かって、その重なり度合いが大きくなっている。隣り合う先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とは、一方端部1aから他方端部1bの全域において重なっている。
後行シールドトンネル14は、他方端部1bに向けて延伸された第一後行シールドトンネル14Aと、第一後行シールドトンネル14Aの先端と他方端部1bとの間に延伸された第二後行シールドトンネル14Bと、により構成されている。第一後行シールドトンネル14Aは、先行シールドトンネル13と同径のシールドトンネルであり、第二後行シールドトンネル14Bは、第一後行シールドトンネル14Aよりも小径のシールドトンネルである。第一後行シールドトンネル14Aは、一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸されており、第二後行シールドトンネル14Bは、第一後行シールドトンネル14Aの先端から他方端部1bまで延伸されている。このため、一本の後行シールドトンネル14のうち、一方端部1a側の部分が大径の第一後行シールドトンネル14Aとなり、他方端部1b側の部分が小径の第二後行シールドトンネル14Bとなる。つまり、第二後行シールドトンネル14Bの外径は、第一後行シールドトンネル14Aの外径より小さい。このため、後行シールドトンネル14は、一方端部1aと他方端部1bとの間において複数の外径からなる異形シールドトンネルとなり、第一後行シールドトンネル14Aは、異形シールドトンネルの第一シールドトンネルとなり、第二後行シールドトンネル14Bは、異形シールドトンネルの第二シールドトンネルとなる。
上述したように、隣り合う先行シールドトンネル13の間隔は、一方端部1a側よりも他方端部1b側の方が狭くなるため、一方端部1aから他方端部1bまでの全域において後行シールドトンネル14が同径であると、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14との重なる量が過大となる。そこで、一方端部1a側では後行シールドトンネル14を大径の第一後行シールドトンネル14Aとし、他方端部1b側では後行シールドトンネル14を小径の第二後行シールドトンネル14Bとすることで、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14との重なる量を小さくして、後行シールドトンネル14構築時の、先行シールドトンネル13の切削量を低減している。
具体的に説明すると、シールドトンネル11は、18本の先行シールドトンネル13と、18本の後行シールドトンネル14と、の合計36本により構成される。つまり、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とは、同数である。地下構造物1は、地下構造物1の一方端部1aから他方端部1bに向けて第一領域A1及び第二領域A2の2領域に分けられている。先行シールドトンネル13は、第一領域A1と第二領域A2とで、同じ径となっている。後行シールドトンネル14は、第一領域A1では大径の第一後行シールドトンネル14Aとなっており、第二領域A2では小径の第二後行シールドトンネル14Bとなっている。そして、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とが交互に配置されており、後行シールドトンネル14が、隣り合う先行シールドトンネル13の間に配置されている。
次に、上述した地下構造物1の施工方法について説明する。本実施形態に係る地下構造物の施工方法は、発進基地構築工程(S1)と、シールドトンネル構築工程(S2)と、外郭躯体構築工程(S3)と、褄壁構築工程(S4)と、掘削工程(S5)と、を備える。
発進基地構築工程(S1)では、図5及び図6に示すように、シールドトンネル11を延伸させるための発進基地21を構築する。発進基地21は、支線シールドトンネル3から支線シールドトンネル3の半径方向外周側に延びる発進坑口22と、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように発進坑口22から円周状に延びる円周シールドトンネル23と、を備える。発進坑口22は、周知のシールド掘進機により施工することができ、円周シールドトンネル23は、周知の円周シールド掘進機により施工することができる。
シールドトンネル構築工程(S2)では、図7〜図15に示すように、地下構造物1の施工予定領域である地下構造物予定領域(不図示)の一方端部1aと他方端部1bとの間において、軸方向に延伸する複数のシールドトンネル11を周方向に構築する。なお、地下構造物予定領域の一方端部1a及び他方端部1bは、地下構造物1の一方端部1a及び他方端部1bと同じである。
シールドトンネル構築工程(S2)では、複数のシールドトンネル11のうちの一部のシールドトンネルである先行シールドトンネル13を延伸する先行延伸工程(S21)と、隣り合う先行シールドトンネル13の間に、複数のシールドトンネル11のうちの残りのシールドトンネルである後行シールドトンネル14を延伸する後行延伸工程(S22)と、を行う。なお、隣り合う先行シールドトンネル13が構築されていれば、全ての先行シールドトンネル13の延伸が終了する前に後行延伸工程(S22)を開始して、構築されている隣り合う先行シールドトンネル13の間に後行シールドトンネル14を延伸してもよい。
先行延伸工程(S21)では、一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bまで先行シールドトンネル13を延伸する。そして、先行延伸工程(S21)では、一方端部1aから他方端部1bに向かうに従い、隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線が近接して行くように、複数の先行シールドトンネル13を延伸する。後行延伸工程(S22)では、一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bまで後行シールドトンネル14を延伸する。そして、後行延伸工程(S22)では、一方端部1aから他方端部1bに向かうに従い、隣り合う後行シールドトンネル14の中心軸線が近接して行くとともに、隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線と後行シールドトンネル14の中心軸線とが近接して行くように、複数の後行シールドトンネル14を延伸する。これにより、地下空洞の断面積を、一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくすることができる。
また、後行延伸工程(S22)では、一方端部1aから他方端部1bの全域において、隣り合う先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とが重なるように、先行シールドトンネル13の一部を切削して後行シールドトンネル14を延伸する。
ここで、先行シールドトンネル13は、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削可能である部分を含む必要がある。このため、先行シールドトンネル13は、シールドトンネルの壁面となるセグメント又は推進管を組み立てる際に、切削される箇所のセグメント又は推進管を切削可能なものとする。切削可能なセグメント又は推進管としては、例えば、特許第4851133号や特許第4939803号に記載されたような繊維強化樹脂製の掘削可能セグメント又は切削可能推進管を用いる。
また、先行シールドトンネル13では、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機が先行シールドトンネル13と重なりながら掘進できるように、後行シールドトンネル14を延伸する前に、その内部を充填しておく必要がある。先行シールドトンネル13内に充填する充填物としては、シールド掘進機により切削可能である必要があるため、エアモルタル等の切削可能充填材を用いることが好ましい。しかしながら、先行シールドトンネル13の内部全体を切削可能充填材で充填すると、先行シールドトンネル13内に強固な外郭躯体12を構築することができない。
そこで、図16及び図17に示すように、先行シールドトンネル13の内部領域の内、少なくとも後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削される領域に、切削可能充填材19Aを充填し、その他の領域に、コンクリート19を打設する。なお、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削される領域に切削可能充填材19Aを充填すれば、コンクリート19を打設する領域及び切削可能充填材19Aを充填する領域は特に限定されない。本実施形態では、作業容易性の観点から、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機により切削される領域を、切削可能充填材19Aを充填する領域とし、残りの領域を、コンクリート19を打設する領域とする。
先行シールドトンネル13へのコンクリート19及び切削可能充填材19Aの充填は、例えば、次のように行うことができる。先行シールドトンネル13の延伸が終了すると、シールド掘進機の残置物を先行シールドトンネル13の先端に残置し、シールド掘削機の回収物を当該先行シールドトンネル13から一方端部1aの発進基地21に回収する。その際、先行シールドトンネル13の先端から一方端部1aに向かって順にコンクリート19及び切削可能充填材19Aを充填してく。コンクリート19及び切削可能充填材19Aの充填は、先行シールドトンネル13を複数のスパンに区切り、これから充填しようとするスパンの一方端部1a側に隔壁を構築する。そして、当該スパンに、コンクリート19を打設した後、切削可能充填材19Aを充填する。シールド掘削機の回収物とは、例えば、カッターモータやシールドジャッキや電装品などが該当する。シールド掘進機の内、カッター部分、及び外周鋼殻部分等などのシールド掘進機の外郭をなして地中の土砂の流入を防止する機能を有する部分は、地中に残置物として残置する。
詳しく説明すると、先行延伸工程(S21)では、図7〜図10に示すように、18本の先行シールドトンネル13を、外郭躯体予定領域において、一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bまで延伸する。このとき、隣り合う先行シールドトンネル13を同時に延伸せずに、隣り合う先行シールドトンネル13のうち、一方の先行シールドトンネル13を先行して延伸した後に、他方の先行シールドトンネル13を後行して延伸することが好ましい。また、先行シールドトンネル13の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の先行シールドトンネル13を並行して延伸できる。
後行延伸工程(S22)では、図11〜図15に示すように、18本の後行シールドトンネル14を、外郭躯体予定領域において、一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bまで延伸する。このとき、シールドトンネル上部の土砂が緩みやすい傾向にあることから、上部を後からシールドトンネルで延伸するように、下方に配置される後行シールドトンネル14から順に延伸することが好ましい。また、先行シールドトンネル13の延伸と同様に、後行シールドトンネル14の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の後行シールドトンネル14を並行して延伸できる。
そして、後行延伸工程(S22)では、第一領域A1の後行シールドトンネル14として、他方端部1bに向けて第一後行シールドトンネル14Aを延伸する第一後行延伸工程(S22A)と、第二領域A2の後行シールドトンネル14として、第一後行シールドトンネル14Aの先端と他方端部1bとの間に、第一後行シールドトンネル14Aよりも小径の第二後行シールドトンネル14Bを延伸する第二後行延伸工程(S22B)と、を行う。第一後行延伸工程(S22A)では、一方端部1aから第一後行シールドトンネル14Aを延伸し、第二後行延伸工程(S22B)では、第一後行シールドトンネル14Aの先端から他方端部1bまで第二後行シールドトンネル14Bを延伸する。これにより、一方端部1aから他方端部1bに至る一本の後行シールドトンネル14を延伸する。
第一後行シールドトンネル14A及び第二後行シールドトンネル14Bの延伸は、例えば、特開2005−194752号公報、特開平10−153083号公報、特開平10−096392号公報に記載された親子シールド機(親子シールド掘進機)を用いることで、容易に行うことができる。つまり、第一後行延伸工程(S22A)では、親子シールド機の親シールド機により第一後行シールドトンネル14Aを延伸し、その後、親子シールド機から子シールド機を発進させ、この子シールド機により第一後行シールドトンネル14Aの先端から第二後行シールドトンネル14Bを延伸する。
なお、本実施形態では、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地(内部空洞)が構築されていないが、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合は、他方端部1bに到達したシールド掘進機を、他方端部1bから一方端部1aに向けて掘進してもよい。この場合、シールド掘進機を他方端部1bから一方端部1aに移動する必要がなくなる。
外郭躯体構築工程(S3)では、複数のシールドトンネル11を連結してなる地下構造物1の外郭躯体12を構築する。外郭躯体12の構築は、例えば、次のように行うことができる。まず、隣り合うシールドトンネル11を連通させる。なお、隣り合うシールドトンネル11は重なっているため、シールドトンネル構築工程(S2)において既に隣り合うシールドトンネル11が連通されている場合は、外郭躯体構築工程(S3)において隣り合うシールドトンネル11を連通させなくてもよい。そして、この連通したシールドトンネル11の内部空間に、鉄筋(不図示)を配設し、コンクリート19を打設する。これにより、外郭躯体12が、シールドトンネル11と、シールドトンネル11内の鉄筋コンクリート(鉄筋及びコンクリート19)と、により構築される。
褄壁構築工程(S4)では、図18に示すように、地下構造物1の一方端部1aに、外郭躯体12の一方側面を封止(止水)する一方側褄壁15を構築し、地下構造物1の他方端部1bに、外郭躯体12の他方側面を封止(止水)する他方側褄壁16を構築する。一方側褄壁15及び他方側褄壁16の構築は、例えば、地下構造物1の一方端部1a及び他方端部1bを凍結止水し、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築する領域を掘削して鉄筋コンクリートを打設する。これにより、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築することができる。
掘削工程(S5)では、図19に示すように、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削して地下空洞4を形成する。つまり、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削し、掘削した土砂を排出することで、外郭躯体12の内周側に地下空洞4を形成する。そして、掘削した土砂を、本線シールドトンネル2から排出する。
以上説明したように、本実施形態では、隣り合う先行シールドトンネル13の間に後行シールドトンネル14を延伸する後行延伸工程(S22)において、後行シールドトンネル14として、他方端部1bに向けて第一後行シールドトンネル14Aを延伸するとともに、第一後行シールドトンネル14Aの先端と他方端部1bとの間に、第一後行シールドトンネル14Aよりも小径の第二後行シールドトンネル14Bを延伸する。このため、後行シールドトンネル14を延伸する際の先行シールドトンネル13の切削量を低減しつつ、地下空洞4の断面積を一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくすることができる。これにより、効率的に地下空洞4を形成することができる。
また、一方端部1aから第一後行シールドトンネル14Aを延伸するとともに第一後行シールドトンネル14Aの先端から他方端部1bまで第二後行シールドトンネル14Bを延伸することで、効率的に後行シールドトンネル14を延伸することができる。
また、一方端部1aから他方端部1bまでの全域において先行シールドトンネル13の一部を切削して後行シールドトンネル14を延伸することで、外郭躯体12を構築する際に隣り合うシールドトンネル11を連結する作業を低減又は削減することができるため、外郭躯体12(地下構造物)の構築を簡易化することができる。
また、後行延伸工程(S22)で親子シールド機を用いることで、容易に第一後行シールドトンネル14A及び第二後行シールドトンネル14Bを延伸することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、後行延伸工程では、一方端部から他方端部までの少なくとも一部において、先行シールドトンネルと後行シールドトンネルとが重なるように先行シールドトンネルの一部を切削して後行シールドトンネルを延伸してもよい。これにより、外郭躯体を構築する際に隣り合うシールドトンネルを連結する作業を低減することができるため、先行シールドトンネルの切削量を低減しつつ、外郭躯体の構築を簡易化することができる。
また、後行延伸工程では、親子シールド機ではない別のシールド機により、第一後行シールドトンネル14Aと第二後行シールドトンネル14Bとを延伸してもよい。第一後行シールドトンネル14Aを延伸する第一シールド機の外径は、第二後行シールドトンネル14Bを延伸する第二シールド機の外径より小さい。この場合、第一後行シールドトンネル14Aと第二後行シールドトンネル14Bとの延伸順序は特に限定されるものではない。例えば、他方端部1bに一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合は、第二後行延伸工程(S22B)において、他方端部1bの到達基地から第一後行シールドトンネル14Aの先端に向けて第二後行シールドトンネル14Bを延伸してもよい。この場合、第一後行シールドトンネル14Aの延伸が終了する前に第二後行シールドトンネル14Bの延伸を開始することができ、更には、第一後行シールドトンネル14Aの延伸を開始する前に第二後行シールドトンネル14Bの延伸を開始することもできる。
また、各工程の一部を並行して行ってもよい。例えば、先行延伸工程が終了する前に後行延伸工程を開始してもよい。つまり、全ての先行シールドトンネルの延伸が終了する前に後行シールドトンネルの延伸を開始してもよい。また、第一後行延伸工程が終了する前に第二後行延伸工程を開始してもよい。つまり、全ての第一後行シールドトンネルの延伸が終了する前に第二後行シールドトンネルの延伸を開始してもよい。また、シールドトンネル構築工程が終了する前に外郭躯体構築工程を開始してもよい。また、外郭躯体構築工程が終了する前に掘削工程を開始してもよい。
また、シールドトンネルの断面形状、シールドトンネル、先行シールドトンネル及び後行シールドトンネルの本数等は特に限定されるものではない。
また、異形シールドトンネルは、先行シールドトンネルであってもよい。また、異形シールドトンネルは、一方端部1a側の大径の第一シールドトンネルと、他方端部1b側の小径の第二シールドトンネルとを有すれば、その外径の数は特に限定されず、3以上あってもよい。