以下、図面を参照して、本発明に係る地下構造物の施工方法及び地下構造物の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る地下構造物の施工方法は、既設の本線シールドトンネルに新設の支線シールドトンネルを合流させるために、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルとの合流領域に本線シールドトンネル及び支線シールドトンネルの双方を囲む大断面トンネルを施工する方法である。また、本実施形態に係る地下構造物は、このような方法により施工される大断面トンネルである。但し、本発明の地下構造物の施工方法及び地下構造物は、このような大断面トンネルの施工方法及び大断面トンネルに限定されるものではない。全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
(第一実施形態)
まず、地下構造物について説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態に係る地下構造物1は、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との合流領域に施工された、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲む大断面トンネルである。地下構造物1の内部には、地下構造物1の軸線方向に延びる地下空洞4が形成されており、地下構造物1は、複数のシールドトンネル11を連結してなる地下空洞4の外郭躯体12を備えている。
シールドトンネル11は、公知のシールド掘進工法又はシールド推進工法により施工されたトンネルである。すなわち、シールドトンネル11は、シールド掘進機で地中を掘進しながら、シールド掘進機の後方でトンネルの壁面となるセグメントを組み立てていくことや、シールド掘進機を推進管により推力を得て掘進して、推進管を組み立てていくことにより構築されるトンネルである。つまり、シールドトンネル11は、シールド掘進機を掘進して組み立てられたセグメントや掘進に伴い組み立てられた推進管によりトンネル覆工体を構築することで延伸される。そして、地下構造物1では、複数のシールドトンネル11が、地下構造物1の一方端部1a(図1における右上側の端部)と他方端部1b(図1における左下側の端部)との間において、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように、軸方向に延伸されるとともに周方向に配置されている。
外郭躯体12は、地下空洞4の外郭を構成する略円筒状の躯体である。外郭躯体12は、隣り合うシールドトンネル11が連結されることにより構築されている。具体的に説明すると、外郭躯体12では、隣り合うシールドトンネル11間には、両シールドトンネル11を連結する連結路17が構築されており、全てのシールドトンネル11及び連結路17に鉄筋コンクリート19が打設されている。なお、連結路17は、鉄筋コンクリート19に代えて、簡易な嵌合継手又は突合せ継手であってもよい。また、連結路を設けないで隣り合うシールドトンネル11を相互に隣接させて連結してもよい。更に、隣り合うシールドトンネル11について、後から延伸するシールドトンネル11(後行シールドトンネル)を掘進又は推進する際に、後から延伸するシールドトンネルよりも先に延伸したシールドトンネル11(先行シールドトンネル)のトンネル覆工体の一部を切削しながら相互に連結してもよい。
地下構造物1の一方端部1aには、外郭躯体12の一方側面を封止(止水)する一方側褄壁15が構築されており、地下構造物1の他方端部1bには、外郭躯体12の他方側面を封止(止水)する他方側褄壁16が構築されている。
そして、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部の土砂が掘削除去されることで、地下構造物1の内部に地下空洞4が形成されている。
次に、上述した複数のシールドトンネル11についてさらに詳しく説明する。複数のシールドトンネル11は、複数のシールドトンネル11のうちの一部のシールドトンネル11である全長シールドトンネル13と、複数のシールドトンネル11のうちの残りのシールドトンネル11である短尺シールドトンネル14と、により構成される。
全長シールドトンネル13は、他方端部1bまで延伸されている。つまり、全長シールドトンネル13は、外郭躯体12において一方端部1aから他方端部1bに至っている。一方、短尺シールドトンネル14は、他方端部1bまで延伸されていない。つまり、短尺シールドトンネル14は、外郭躯体12において一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸されて(延びて)いる。また、短尺シールドトンネル14は、他方端部1bに至っていない。つまり、短尺シールドトンネル14は、全長シールドトンネル13よりも短く、短尺シールドトンネル14の先端は、他方端部1bよりも一方端部1a側の一方端部1aから他方端部1bに至る途中の位置に位置している。このため、他方端部1bには、短尺シールドトンネル14が延伸されていない。そして、地下空洞4が本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の外形に沿うように、地下空洞4の断面積は、一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくなっている。一般的に、外郭躯体12は、所定の土圧に耐えられる構造である。このため、地下空洞4の断面積が一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくなるのに伴い、外郭躯体12の断面積も小さくなる。
具体的に説明すると、短尺シールドトンネル14の先端部14A(図2における左下の部分)は、外郭躯体12から外れている。つまり、短尺シールドトンネル14は、外郭躯体12において一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸されているが、その先端部14Aにおいて、外郭躯体12から外れている。なお、短尺シールドトンネル14は、一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸されているため、短尺シールドトンネル14の先端部14Aは、短尺シールドトンネル14の他方端部1b側の先端部分となる。
ここで、短尺シールドトンネル14の先端部14Aが外郭躯体予定領域12Aから外れるとは、外郭躯体予定領域12Aから完全に外れている場合と、外郭躯体予定領域12Aから一部のみが外れている場合と、の双方を意味する。外郭躯体予定領域12Aから完全に外れている場合とは、短尺シールドトンネル14の軸線方向に直交する断面において、先端部14Aの全ての部分が外郭躯体予定領域12Aにない場合をいう。外郭躯体予定領域12Aから一部のみが外れている場合とは、短尺シールドトンネル14の軸線方向に直交する断面において、先端部14Aの一部が外郭躯体予定領域12Aにあるが、先端部14Aの残りの部分が外郭躯体予定領域12Aにない場合をいう。
更に、短尺シールドトンネル14の先端部14Aは、外郭躯体12の外周側又は内周側に曲げられてその一部又は全部が外郭躯体12の構成要素ではなくなることで、外郭躯体12から外れている。外郭躯体12の外周側又は内周側とは、略円筒状に形成される外郭躯体12の半径方向における外周側又は内周側をいう。本実施形態では、全ての短尺シールドトンネル14は、その先端部14Aが外郭躯体12の外周側に外れている。
また、地下構造物1は、地下構造物1の一方端部1aから他方端部1bに向けて軸線方向に複数の領域に分けられており、各領域において、1又は複数の短尺シールドトンネル14の先端部14Aが外郭躯体12から外れている。
具体的に説明すると、シールドトンネル11は、12本の全長シールドトンネル13(13a〜13l)と、6本の短尺シールドトンネル14(14a〜14f)と、の合計18本により構成される。地下構造物1は、地下構造物1の一方端部1aから他方端部1bに向けて第一領域A1、第二領域A2、第三領域A3の3領域に分けられている。短尺シールドトンネル14は、その先端部14Aが第一領域A1において外郭躯体12から外れる2本の第一短尺シールドトンネル14a,14dと、その先端部14Aが第二領域A2において外郭躯体12から外れる2本の第二短尺シールドトンネル14b,14eと、その先端部14Aが第三領域A3において外郭躯体12から外れる2本の第三短尺シールドトンネル14c,14fと、で構成される。
第一短尺シールドトンネル14a,14dは、第一領域A1において、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体12から外れていき、その先端において外郭躯体12から完全に外れている。第二短尺シールドトンネル14b,14eは、第二領域A2において、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体12から外れていき、その先端において外郭躯体12から完全に外れている。第三短尺シールドトンネル14c,14fは、第三領域A3において、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体12から外れていき、その先端において外郭躯体12から完全に外れている。
一方端部1aにおいて、各シールドトンネル11は、以下のように配置されている。全長シールドトンネル13a〜13gは、この順で互いに隣り合っている。全長シールドトンネル13h〜13lは、この順で互いに隣り合っている。第一短尺シールドトンネル14a、第二短尺シールドトンネル14b及び第三短尺シールドトンネル14cは、この順で互いに隣り合うとともに、全長シールドトンネル13gと全長シールドトンネル13hとの間に配置されている。第一短尺シールドトンネル14d、第二短尺シールドトンネル14e及び第三短尺シールドトンネル14fは、互いに隣り合うとともに、全長シールドトンネル13lと全長シールドトンネル13aとの間に配置されている。そして、全長シールドトンネル13a〜13g及び全長シールドトンネル13h〜13l、それぞれ、地下構造物1の一方端部1aから他方端部1bに亘って、互いの間隔が略同じとなっている。なお、全長シールドトンネル13(13a〜13l)及び短尺シールドトンネル14(14a〜14f)は、互いに隣り合っていればよく、必ずしも上述した順に配列されていなくてもよい。
次に、上述した地下構造物1の施工方法について説明する。本実施形態に係る地下構造物の施工方法は、発進基地構築工程と、シールドトンネル構築工程と、外郭躯体構築工程と、褄壁構築工程と、掘削工程と、を備える。
発進基地構築工程では、図5及び図6に示すように、シールドトンネル11を延伸させるための発進基地21を構築する。発進基地21は、支線シールドトンネル3から支線シールドトンネル3の半径方向外周側に延びる発進坑口22と、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように発進坑口22から円周状に延びる円周シールド23と、を備える。発進坑口22は、周知のシールド掘進機により施工することができ、円周シールド23は、周知の円周シールド掘進機により施工することができる。
シールドトンネル構築工程では、図7〜図12に示すように、地下構造物1の施工予定領域である地下構造物予定領域(不図示)の一方端部1aと他方端部1bとの間において、軸方向に延伸する複数のシールドトンネル11を周方向に構築する。なお、地下構造物予定領域の一方端部1a及び他方端部1bは、地下構造物1の一方端部1a及び他方端部1bと同じである。
具体的に説明すると、まず、図7〜図9に示すように、12本の全長シールドトンネル13(13a〜13l)を、外郭躯体12の施工予定領域である外郭躯体予定領域12Aにおいて一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bまで延伸する。このとき、全長シールドトンネル13を、一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bに向けて延伸する。また、隣り合う全長シールドトンネル13を同時に延伸せずに、隣り合う全長シールドトンネル13のうち、一方の全長シールドトンネル13を先行して延伸した後に、他方の全長シールドトンネル13を後行して延伸する。このとき、例えば、全長シールドトンネル13の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の全長シールドトンネル13を並行して延伸できる。
全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すると、次に、図10〜図12に示すように、6本の短尺シールドトンネル14(14a〜14f)を、外郭躯体予定領域12Aにおいて一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bに向けて延伸するとともに、他方端部1bまでは延伸しない。このとき、隣り合う短尺シールドトンネル14を同時に延伸せずに、隣り合う短尺シールドトンネル14のうち、一方の短尺シールドトンネル14を先行して延伸した後に、他方の短尺シールドトンネル14を後行して延伸する。そして、短尺シールドトンネル14の先端部14Aを、外郭躯体予定領域12Aから外す。このとき、例えば、全長シールドトンネル13の延伸と同様に、短尺シールドトンネル14の掘進には、2機以上のシールド掘進機を使用することが好ましい。2機以上のシールド掘進機を使用することで、複数の短尺シールドトンネル14を並行して延伸できる。
具体的には、第一領域A1において、第一短尺シールドトンネル14a,14dを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aから外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aから完全に外す。そして、第一領域A1の他方端部1b側の端部において、第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸を終了する。このため、第二領域A2及び第三領域A3には、第一短尺シールドトンネル14a,14dが延伸されない。
また、第二領域A2において、第二短尺シールドトンネル14b,14eを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aから外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aから完全に外す。そして、第二領域A2の他方端部1b側の端部において、第二短尺シールドトンネル14b,14eの延伸を終了する。このため、第三領域A3には、第二短尺シールドトンネル14b,14eが延伸されない。
また、第三領域A3において、第三短尺シールドトンネル14c,14fを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aから外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aから完全に外す。そして、第三領域A3の他方端部1b側の端部が近づくと、第三短尺シールドトンネル14c,14fが他方端部1bまで延伸されないように、第三領域A3の他方端部1bから所定距離だけ手前の位置において、第三短尺シールドトンネル14c,14fの延伸を終了する。このため、他方端部1bには、第三短尺シールドトンネル14c,14fが延伸されない。
外郭躯体構築工程では、図13に示すように、複数のシールドトンネル11を連結してなる地下構造物1の外郭躯体12を構築する。外郭躯体12の構築は、例えば、次のように行うことができる。まず、凍結工法等によりシールドトンネル11の周囲に凍土18を造成し、シールドトンネル11の周囲を凍結止水する。次に、シールドトンネル11の壁面を構成するセグメント又は推進管を取り外した後、隣り合うシールドトンネル11間を掘削して、隣り合うシールドトンネル11を連結する連結路17を構築する。そして、図14に示すように、全てのシールドトンネル11及び連結路17に鉄筋コンクリート19を打設する。これにより、シールドトンネル11、連結路17及びシールドトンネル11、連結路17に打設された鉄筋コンクリート19を備える外郭躯体12が構築される。なお、連結路17は、鉄筋コンクリート19に代えて、簡易な嵌合継手又は突合せ継手であってもよい。シールドトンネル11の壁面を構成するセグメント又は推進管を取り外すのは、シールドトンネル11の軸線方向に所定の間隔をあけて取り外せばよい。シールドトンネル11を互いに隣接させて延伸した場合や、後行シールドトンネルを先行シールドトンネルのトンネル覆工体の一部を切削しながら相互に連結する場合は、連結路を構築して隣り合うシールドトンネル11を連結する必要はない。
そして、短尺シールドトンネル14と全長シールドトンネル13とが隣り合う部分では、図14に示すように、短尺シールドトンネル14(14f)が外郭躯体予定領域12Aにある箇所では、短尺シールドトンネル14(14f)と、この短尺シールドトンネル14(14f)と隣り合う全長シールドトンネル13(13a,13l)とを、連結路17により連結する。図15及び図16に示すように、短尺シールドトンネル14(14f)の一部のみが外郭躯体予定領域12Aから外れている箇所では、短尺シールドトンネル14(14f)と、この短尺シールドトンネル14(14f)と隣り合う全長シールドトンネル13(13a,13l)とを、連結路17により連結し、その後、この短尺シールドトンネル14(14f)と隣り合う全長シールドトンネル13(13a,13l)同士を、補強部20により連結する。
この際、隣り合う全長シールドトンネル13の間隔、隣り合う短尺シールドトンネル14の間隔、隣り合う全長シールドトンネル13と短尺シールドトンネル14との間隔を、それぞれ一定距離Lを保つことが好ましい。そして、短尺シールドトンネル14が外郭躯体予定領域12Aから外れて行くに従い、この短尺シールドトンネル14と隣り合う全長シールドトンネル13の間隔を狭めていく。つまり、図14〜図16においては、全長シールドトンネル13aと全長シールドトンネル13bとの間隔、全長シールドトンネル13kと全長シールドトンネル13lとの間隔、全長シールドトンネル13lと第三短尺シールドトンネル14fとの間隔、第三短尺シールドトンネル14fと全長シールドトンネル13aとの間隔を、それぞれ一定距離Lに保つ。そして、第三短尺シールドトンネル14fが外郭躯体予定領域12Aから外れて行くに従い、全長シールドトンネル13aと全長シールドトンネル13lとの間隔を狭めていく。
一方、図17に示すように、短尺シールドトンネル14の全体又は略全体が外郭躯体予定領域12Aから外れている箇所では、短尺シールドトンネル14(14f)を全長シールドトンネル13(13a,13l)に連結せずに、短尺シールドトンネル14(14f)を挟んでいた全長シールドトンネル13(13a,13l)同士を連結する。
この際、外郭躯体予定領域12Aから外れた短尺シールドトンネル14を除いて、隣り合う全長シールドトンネル13の間隔、隣り合う短尺シールドトンネル14の間隔、隣り合う全長シールドトンネル13と短尺シールドトンネル14との間隔を、それぞれ一定距離Lを保つことが好ましい。つまり、図17においては、全長シールドトンネル13aと全長シールドトンネル13bとの間隔、全長シールドトンネル13kと全長シールドトンネル13lとの間隔、全長シールドトンネル13lと全長シールドトンネル13aとの間隔を、それぞれ一定距離Lに保つ。
ところで、上述したように、シールドトンネル構築工程において、他方端部1bまで延伸されるシールドトンネル11は全長シールドトンネル13のみである。また、短尺シールドトンネル14は、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了した後に延伸される。このため、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すれば、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たなくても、他方端部1bから一方端部1aに向けて、外郭躯体12の構築を開始することができる。
なお、本実施形態では、他方端部1bに、一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地(内部空洞)が構築されていないが、他方端部1bにも、一方端部1aの発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合には、他方端部1bに到達したシールド掘進機を、他方端部1bから一方端部1aに向けて掘進してもよい。この場合、シールド掘進機を他方端部1bから一方端部1aに移動する必要がなくなる。
そこで、外郭躯体構築工程では、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すると、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了する前に、他方端部1bから一方端部1aに向けて、外郭躯体12の構築を開始する。なお、短尺シールドトンネル14が延伸される位置では、短尺シールドトンネル14の延伸が終了した後に、外郭躯体12の構築を開始する。これにより、シールドトンネル構築工程と外郭躯体構築工程とを並行して行うことができる。
具体的には、全ての全長シールドトンネル13の延伸及び第三短尺シールドトンネル14c、14fの延伸が終了すると、第二短尺シールドトンネル14b,14e及び第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸が終了するのを待たずに、第三領域A3における外郭躯体12の構築を開始する。その後、第二短尺シールドトンネル14b,14eの延伸が終了すると、第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸が終了するのを待たずに、第二領域A2における外郭躯体12の構築を開始する。その後、第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸が終了すると、第一領域A1における外郭躯体12の構築を開始する。
褄壁構築工程では、図18に示すように、地下構造物1の一方端部1aに、外郭躯体12の一方側面を封止(止水)する一方側褄壁15を構築し、地下構造物1の他方端部1bに、外郭躯体12の他方側面を封止(止水)する他方側褄壁16を構築する。一方側褄壁15及び他方側褄壁16の構築は、例えば、地下構造物1の一方端部1a及び他方端部1bを凍結止水し、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築する領域を掘削して鉄筋コンクリート19を打設する。これにより、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築することができる。
上述したように、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すれば、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たなくても、他方端部1bから一方端部1aに向けて、外郭躯体12の構築を開始することができる。このため、外郭躯体構築工程においても、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了し、他方端部1bにおける外郭躯体12の構築が終了すれば、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たなくても、他方側褄壁16の構築を開始することができる。
そこで、褄壁構築工程では、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了し、他方端部1bにおける外郭躯体12の構築が終了すると、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たずに、他方側褄壁16の構築を開始する。これにより、シールドトンネル構築工程と褄壁構築工程とを並行して行うことができる。
また、シールドトンネル構築工程では、短尺シールドトンネル14は、一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸される。このため、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が開始されれば、全ての短尺シールドトンネル14の延伸の終了を待たなくても、一方側褄壁15の構築を開始することができる。
そこで、褄壁構築工程では、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が開始されると、全ての短尺シールドトンネル14の延伸の終了を待たずに、一方側褄壁15の構築を開始する。これにより、シールドトンネル構築工程と褄壁構築工程とを並行して行うことができる。
掘削工程では、図1〜図4に示すように、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削して地下空洞4を形成する。つまり、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削し、掘削した土砂を排出することで、外郭躯体12の内周側に地下空洞4を形成する。そして、掘削した土砂を、本線シールドトンネル2から排出する。なお、地下空洞4に露出した本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3のトンネル覆工部分は、最終的には取り壊して掘削した土砂とともに排出する。
上述したように、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すれば、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たなくても、他方端部1bから一方端部1aに向けて外郭躯体12の構築を開始することができるとともに、他方側褄壁16の構築を開始することができる。このため、掘削工程においても、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了し、他方端部1bにおける外郭躯体12の構築が終了し、他方側褄壁16の構築が終了すると、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たなくても、他方端部1bから一方端部1aに向けて、外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始することができる。
そこで、掘削工程では、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了し、他方端部1bにおける外郭躯体12の構築が終了し、他方側褄壁16の構築が終了すると、全ての短尺シールドトンネル14の延伸が終了するのを待たずに、他方端部1bから一方端部1aに向けて、外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。これにより、シールドトンネル構築工程と掘削工程とを並行して行うことができる。なお、掘削に伴い外郭躯体12の内周側領域への止水が問題になる場合は、一方側褄壁15の構築が終了した後に、外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。
具体的には、全ての全長シールドトンネル13の延伸、第三短尺シールドトンネル14c、14fの延伸、他方端部における外郭躯体12の構築、他方側褄壁16及び一方側褄壁15の構築が終了すると、第二短尺シールドトンネル14b,14e及び第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸が終了するのを待たずに、第三領域A3における外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。なお、掘削に伴い外郭躯体12の内周側領域への止水が問題になる場合は、一方側褄壁15の構築が終了した後に、第三領域A3における外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。
その後、第二短尺シールドトンネル14b,14eの延伸が終了すると、第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸が終了するのを待たずに、第二領域A2における外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。なお、上記同様、掘削に伴い外郭躯体12の内周側領域への止水が問題になる場合は、一方側褄壁15の構築が終了した後に、第二領域A2における外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。
その後、第一短尺シールドトンネル14a,14dの延伸及び一方側褄壁15の構築が終了すると、第一領域A1における外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始する。なお、各短尺シールドトンネル14の延伸順序は、特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
以上説明したように、本実施形態では、全長シールドトンネル13を他方端部1bまで延伸するが、短尺シールドトンネル14を他方端部1bまで延伸せずに、外郭躯体予定領域12Aの断面積を一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくする。これにより、他方端部1bでは、短尺シールドトンネル14が外郭躯体予定領域12Aに構築されないため、短尺シールドトンネル14の延伸状況に拘らず、外郭躯体12を構築して当該外郭躯体12の内周側領域を掘削することができる。そこで、全ての全長シールドトンネル13の延伸が終了すると、他方端部1b側から一方端部1a側に向けて、外郭躯体12の構築及び外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始することで、短尺シールドトンネル14の延伸と、外郭躯体12の構築及び外郭躯体12の内周側領域の掘削とを、同じ時期に行うことができる。これにより、工期の短縮を図ることができる。
また、全長シールドトンネル13を、外郭躯体予定領域12Aにおいて一方端部1aから他方端部1bまで延伸し、短尺シールドトンネル14を、外郭躯体予定領域12Aにおいて一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸する。これにより、容易に、外郭躯体予定領域12Aの断面積を、一方端部1aから他方端部1bに向けて小さくすることができる。
また、全ての全長シールドトンネル13を延伸した後に短尺シールドトンネル14を延伸するため、外郭躯体12の構築及び外郭躯体12の内周側領域の掘削を、より早いタイミングで開始することができる。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態と同様であるが、短尺シールドトンネルの一部が、外郭躯体(外郭躯体予定領域)の内周側に外れている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
まず、地下構造物について説明する。図19〜図21に示すように、本実施形態に係る地下構造物31では、第一実施形態の短尺シールドトンネル14に対応する短尺シールドトンネル34が複数構築されている。短尺シールドトンネル34は、第一実施形態と同様に、外郭躯体12において一方端部1aから他方端部1bに向けて延伸されているが、他方端部1bまで延伸されていない。そして、複数の短尺シールドトンネル34のうちの一部のシールドトンネルである外周側短尺シールドトンネル341は、その先端部34Aが、外郭躯体予定領域12Aの外周側に外れている。一方、複数の短尺シールドトンネル34のうちの残りのシールドトンネルである内周側短尺シールドトンネル342は、その先端部34Aが、外郭躯体予定領域12Aの内周側に外れている。
具体的に説明すると、地下構造物31は、第一実施形態の第一短尺シールドトンネル14d、第二短尺シールドトンネル14b、14e、第三短尺シールドトンネル14c,14fと同様の、第一外周側短尺シールドトンネル341d、第二外周側短尺シールドトンネル341b,341e、第三外周側短尺シールドトンネル341c,341fを備えている。第一外周側短尺シールドトンネル341d、第二外周側短尺シールドトンネル341b,341e、第三外周側短尺シールドトンネル341c,341fは、その先端部34Aが、外郭躯体12の外周側に外れている。
また、地下構造物31は、第一実施形態の第一短尺シールドトンネル14aの代わりに、第一内周側短尺シールドトンネル342aを備えている。第一内周側短尺シールドトンネル342aは、その先端部34Aが、外郭躯体12の内周側に外れている。具体的には、第一内周側短尺シールドトンネル342aは、第一領域A1において、地下構造物31の一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体12の内周側に外れていき、その先端において外郭躯体12の内周側に完全に外れている。そして、第一内周側短尺シールドトンネル342aは、第一領域A1において外郭躯体12の内周側に外れたのち、外郭躯体12の内周側を通って、その先端が第三領域A3(又は、第二領域A2)まで延伸されている。
次に、上述した地下構造物31の施工方法について説明する。本実施形態に係る地下構造物の施工方法は、第一実施形態における地下構造物の施工方法と基本的に同様である。
シールドトンネル構築工程では、全ての全長シールドトンネル13の伸長が終了すると、6本の短尺シールドトンネル34(341a、342b〜342f)を、外郭躯体予定領域12Aにおいて一方端部1aに施工された発進基地21から他方端部1bに向けて延伸するとともに、他方端部1bまでは延伸しない。そして、短尺シールドトンネル34の先端部14Aを、外郭躯体予定領域12Aから外す。
具体的には、第一領域A1において、第一内周側短尺シールドトンネル342aを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aの内周側に外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aの内周側に完全に外す。そして、第一内周側短尺シールドトンネル342aを、外郭躯体予定領域12Aの内周側において第三領域A3(又は、第二領域A2)まで延伸し、第一内周側短尺シールドトンネル342aが他方端部1bまで延伸されないように、第三領域A3(又は、第二領域A2)において、第一内周側短尺シールドトンネル342aの延伸を終了する。
また、第一領域A1において、第一外周側短尺シールドトンネル341dを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aの外周側に外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aの外周側に完全に外す。そして、第一領域A1の他方端部1b側の端部において、第一外周側短尺シールドトンネル341dの延伸を終了する。
また、第二領域A2において、第二外周側短尺シールドトンネル341b,341eを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aの外周側に外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aの外周側に完全に外す。そして、第二領域A2の他方端部1b側の端部において、第二外周側短尺シールドトンネル341b,341eの延伸を終了する。
また、第三領域A3において、第三外周側短尺シールドトンネル341c,341fを、一方端部1aから他方端部1bに向けて徐々に外郭躯体予定領域12Aの外周側に外していき、その先端において外郭躯体予定領域12Aの外周側に完全に外す。そして、第三領域A3の他方端部1b側の端部に近づくと、第三外周側短尺シールドトンネル341c,341fが他方端部1bまで延伸されないように、第三領域A3の他方端部1bから所定距離だけ手前の位置において、第三外周側短尺シールドトンネル341c,341fの延伸を終了する。
ここで、第二領域A2及び第三領域A3(又は、第二領域A2)では、第一内周側短尺シールドトンネル342aが、外郭躯体予定領域12Aの内周側に配置されている。そこで、掘削工程では、他方端部1bから一方端部1aに向けて外郭躯体12の内周側領域の掘削を開始するとともに、第三領域A3及び第二領域A2(又は、第二領域A2)において掘削した土砂を、第一内周側短尺シールドトンネル342aから排出する。なお、掘削工程が他方端部1bから一方端部1aに進むに従い、適宜、第一内周側短尺シールドトンネル342aにおける外郭躯体12の内周側に外れている部分のトンネル覆工体を取り壊していく。
このように、本実施形態では、内周側短尺シールドトンネル342の先端部34Aを外郭躯体予定領域12Aの内周側に延伸し、掘削した土砂の少なくとも一部を内周側短尺シールドトンネル342から排出する。これにより、掘削工程において、外郭躯体12の内周側に土砂を排出するルートを確保しにくい場合にも、容易に土砂を排出することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、シールドトンネル構築工程において、全長シールドトンネルを、一方端部から他方端部に向けて延伸するものとして説明したが、シールドトンネル構築工程では、前述したとおり、他方端部に発進基地を構築する等して、全長シールドトンネルを、外郭躯体予定領域の他方端部から一方端部に向けて延伸するものとしてもよい。この地下構造物の施工方法では、全長シールドトンネルを、短尺シールドトンネルとは反対に、地下構造物予定領域の他方端部から一方端部に向けて延伸するため、全長シールドトンネルの施工と短尺シールドトンネルの施工とを独立して行うことができる。これによりシールドトンネル構築工程の作業効率を向上することができる。
また、上記実施形態では、先に全長シールドトンネルを延伸してから、その後、短尺シールドトンネルを延伸するものとして説明したが、先に短尺シールドトンネルを延伸してから、その後、全長シールドトンネルを延伸するものとしてもよい。
また、上記実施形態では、全ての短尺シールドトンネルの先端部を外郭躯体予定領域(外郭躯体)から外すものとして説明したが、一部又は全部の短尺シールドトンネルの先端部を外郭躯体予定領域から外さないものとしてもよい。この場合、短尺シールドトンネルの先端付近では、短尺シールドトンネルが無くなることによる全長シールドトンネルの間隔調整が必要となるが、このような場合であっても、上記実施形態と同様に、外郭躯体予定領域(外郭躯体)の断面積を一方端部から他方端部に向けて小さくすることができる。
また、上記実施形態では、全ての全長シールドトンネルの延伸が終了した後に、短尺シールドトンネルを延伸するものとして説明したが、一部又は全部の全長シールドトンネルの延伸が終了する前に、短尺シールドトンネルを延伸してもよい。
また、上記実施形態では、シールドトンネルの断面形状、シールドトンネル、全長シールドトンネル及び短尺シールドトンネルの本数、外郭躯体を分ける領域の数等を具体的に特定して説明したが、これらは特に限定されるものではない。