JP2008145823A - 中間転写ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置 - Google Patents

中間転写ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止した無端ベルト及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、当該無端ベルトを利用した中間転写ベルト、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】例えば無端ベルト50を、導電剤を含むポリイミド樹脂層から構成し、そして、無端ベルト50の外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率と共に表面抵抗率が異ならせる。外周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低くなることがよく、加えて、外周面における表面抵抗率が内周面より低くさせることがよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、無端ベルト及びその製造方法、中間転写ベルト、並びに、画像形成装置に関する。
電子写真装置では、まず、導電材料を用いた感光体上に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像として形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いで、このトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
ポリイミド材料に導電性を付与させる目的で、導電性を有するカーボンブラック粒子をポリイミド樹脂中に分散させることが行われている。カーボンブラックの分散性を上げることでポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制できることが、よく知られている。このカーボンブラック分散性を向上させて、成形されるポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制することを目的に、カーボンブラックを有機極性溶媒中に分散させた分散液中でテトラカルボン酸無水物とジアミン化合物とを反応させて、ポリアミック酸を重合させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液作製方法、並びに当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている(特許文献4)。
他方で、ポリイミド材料に導電性を付与させる目的に、ポリイミド樹脂中に導電材料としてポリアニリンを添加する方法が開示されている(特許文献5)。また、同様に導電材料にポリチオフェンを用いた方法について開示されている(特許文献6)。
このような導電材料を分散させたポリイミド無端ベルトを中間転写体として使用する場合、高画質な多色印字を行うためにベルト状中間表面層に高抵抗層を設けることが有効な手段とされている。
かかる高抵抗層を表面に設けたベルトを製造する場合、基材ベルトを形成した表面(外面)に基材に対して高抵抗となる表面層を設け、2層化する方式が提案されている(特許文献7)。
また、抵抗値の高い基材と抵抗の低い表面層とを形成することで画像の転写性、記録紙の剥離性が向上して中間転写ベルト又は転写搬送ベルトとしての機能が向上することが知られている(例えば、特許文献8参照)。
特開平5−200904号公報 特開平6−228335号公報 特開平6−149083号公報 特開2002−292656号公報 特開平8−259709 特開平2004−101548 特開平11−235765 特開2001−22189
本発明の課題は、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止した無端ベルト及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、当該無端ベルトを利用した中間転写ベルト、及び画像形成装置を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なることを特徴とする無端ベルトである。
請求項2に係る発明は、
外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項3に係る発明は、
外周面と内周面とで、表面抵抗率が異なることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項4に係る発明は、
外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項5に係る発明は、
単層構造であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項6に係る発明は、
前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項7に係る発明は、
前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項8に係る発明は、
前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項9に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なるポリイミド無端ベルトを有することを特徴とする中間転写ベルトである。
請求項10に係る発明は、
外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項11に係る発明は、
外周面と内周面とで、表面抵抗率が異なることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項12に係る発明は、
外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項13に係る発明は、
単層構造であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項14に係る発明は、
前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項15に係る発明は、
前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項16に係る発明は、
前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルトである。
請求項17に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なる中間転写ベルトを有することを特徴とする画像形成装置である。
請求項18に係る発明は、
ポリイミド樹脂を含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なることを特徴とする無端ベルトである。
請求項19に係る発明は、
金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂皮膜の一方の面に、加水分解処理を施す工程と、
を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
請求項20に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程が、前記ポリイミド樹脂皮膜の一方の面にアルカリ性溶液を接触させる工程である請求項19に記載の無端ベルトの製造方法である。
請求項21に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程の後、さらに、加水分解処理を施した面に酸性溶液を接触させる工程を有することを特徴とする請求項19に記載の無端ベルトの製造方法である。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項11に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項14に係る発明によれば、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項15に係る発明によれば、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項16に係る発明によれば、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項17に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項18に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、汚れが付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項19に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れが付着を防止できる無端ベルトが得られる、といった効果を奏する。
請求項20に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、簡易に処理可能、といった効果を奏する。
請求項21に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、表面抵抗率の低下やバラツキを効果的に防止できる、といった効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、機能・作用が共通する機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る無端ベルトにおける膜厚方向のポリイミド樹脂のイミド化率分布を示す概念図である。
第1実施形態に係る無端ベルト50は、図1に示すように、導電剤を含む単層のポリイミド樹脂層から構成されている。そして、無端ベルト50の外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率と共に表面抵抗率が異なっている。本実施形態では、外周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低くなっている。加えて、外周面における表面抵抗率が内周面より低くなっている。
本実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、膜厚の50%以下の範囲でベルトの外周面側から内周面側に向かってイミド化率が連続して増加している領域50Aと、その後、領域50Aから内周面に向かってイミド化率が一定となっている領域50Bとを有している。具体的には、ポリイミド樹脂のイミド化率は、例えば、図2に示すように、ベルトの外周面側から内周面側に向かって連続してイミド化率が増加し、その後一定となっている。
加えて、外周面と内周面とで、ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一となっている。
即ち、本実施形態に係る無端ベルト50は、ポリイミド樹脂のイミド化率及び表面抵抗率が互いに異なっても、単層構成で明確な界面を持っていない構成となっている。
ここで、「ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一である」こと、「テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一である」ことは、以下のようにして調べることができる。
かかるベルトより特定部位を切り出し、若しくは研磨して、試料片を作製する。この試料片を10倍量以上の強塩基水溶液中で加熱、加水分解処理を行う。ここで塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの強塩基を、水中に溶解させたて使用される。この強塩基水溶液の濃度としては、5質量%以上30質量%以下の範囲で適宜選択される。
加水分解後、ポリイミド樹脂は、ポリアミック酸さらにジアミン化合物とテトラカルボン酸に分解される。加水分解液よりクロロホルムを用いて、テトラカルボン酸とジアミン化合物とを液相抽出する。抽出液を液体クロマトグラフィにより、定性/定量分析を行い、対応するテトラカルボン酸と、ジアミン化合物の溶出ピークを基準としてこれと比較することで、ポリイミド樹脂中に含まれるジアミン化合物残基ならびにテトラカルボン酸残基の構造と含有率を算出することができる。
なお、「テトラカルボン酸残基」とは、4つのカルボン酸(或いはそれによる結合基)で連結された4価の有機基(例えば、後述する一般式(1)及び(2)におけるR、R、Rに相当)を示す。一方、「ジアミン化合物残基」は、「N」若しくは「NH」に連結した2価の有機基(例えば、後述する一般式(1)及び(2)におけるR、Rに相当)を示す。
外周面のポリイミド樹脂のイミド化率は、50%以上95%以下であることが望ましく、より望ましくは60%以上90%以下であり、さらに望ましくは70%以上85%以下である。一方、内周面のポリイミド樹脂のイミド化率は、60%以上100%以下であることが望ましく、より望ましくは70%以上100%以下であり、さらに望ましくは90%以上100%以下である。
外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率との差は、5%以上20%以下であることが望ましく、より望ましくは10%以上20%以下であり、さらに望ましくは15%以上20%以下である。
外周面から内周面に向かって、ポリイミド樹脂のイミド化率が変化する領域は外周面から膜厚の50%以下の領域であることが望ましく、より望ましくは膜厚の40%以下であり、さらに望ましくは膜厚の30%以下である。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂のイミド化率が変化する領域は、膜厚を100μmとしたときには、外周面から膜厚方向へ向かって50μm以下の深さであることが望ましく、より望ましくは40μm以下の深さであり、さらに望ましくは30μm以下の深さである。
一方、外周面の表面抵抗率と、内周面の表面抵抗率とは、互いに異なるが、常用対数値で9(logΩ)以上13(logΩ)以下であることが望ましく、より望ましくは11.5(logΩ)以上12.5(logΩ)以下であり、さらに望ましくは10(logΩ)以上12(logΩ)以下である。
また、外周面の表面抵抗率と、内周面の表面抵抗率との差は、常用対数値で0.5(logΩ)より大きいことが望ましく、より望ましくは1.0(logΩ)より大きいことがよい。この差の上限としては、4.0(logΩ)以下であることが望ましい。
以下、本実施形態に係る無端ベルト50の製造方法について説明する。
本実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、次のようにして作製することができる。金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、ポリイミド樹脂皮膜の一方の面に、加水分解処理を施す工程と、を経て無端ベルト50を製造することができる。詳細を以下に示す。
まず、ポリイミド前駆体について説明する。ポリイミド前駆体としては、例えば、以下に示すポリアミック酸組成物が挙げられる。ポリアミック酸組成物は、例えば、ポリアミック酸構造を含むポリマーと、塗工溶媒と、触媒としての3級アミンと、を含有して構成されている。また、必要に応じて、カルボン酸無水物、導電剤、分散剤などの添加物を含むこともできる。
なお、ポリイミド樹脂(その前駆体)の組成は、一例であり、これらに限定されるわけではない。例えば、ポリイミド樹脂類縁材料も用いることができる。このポリイミド樹脂類縁材料としては、イミド骨格を高分子主鎖構造中に含む高分子材料が使用できる。具体的には、後述する前駆体組成において、テトラカルボン酸に代えて、トリメリット酸を共重合させて高分子主鎖構造中に、アミド基とイミド基をあわせもたせたポリアミドイミド樹脂や、ポリアミック酸に対する反応条件を調整することでイミド化反応を部分的に行うことで、アミック酸残基を残したポリイミド−ポリアミック酸共重合体が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂を使用する場合、後述するテトラカルボン酸二無水物に代えて、例えば、無水トリメリット酸などのトリメロット酸誘導体を原料として使用する。一方、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体の場合は、後述するテトラカルボン酸二無水物を使用する。
以下、ポリアミック酸組成物ついてより詳細に説明する。
(ポリアミック酸構造を含むポリマー)
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、ポリイミド前駆体となり得るポリマーであり、ポリアミック酸、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が挙げられる。
ポリアミック酸としては、下記一般式(1)で表されるポリアミック酸が好適に挙げられる。また、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体としては、下記一般式(2)で表されるポリアミック酸−ポリイミド共重合体が好適に挙げられる。
Figure 2008145823
一般式(1)中、R1は4価の有機基を示し、R2は2価の有機基を示す。一方、一般式(2)中、R3は4価の有機基を示し、R4は2価の有機基を示し、R5は4価の有機基を示し、R6は2価の有機基を示す。
ここで、2価の有機基R2、R4、R6は、対応するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造として表される。また、4価の有機基R1、R3、R5は、対応するテトラカルボン酸化合物より4つのカルボニル基を除いたその残基として表される。
以下、ポリアミック酸、及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体をより詳細に説明する。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。また、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化反応を行い合成される。
−テトラカルボン酸二無水物−
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が好適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−ジアミン化合物−
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ−
ポリアミック酸としては、望ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンと含むものが好ましい。
−合成溶媒−
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
−ポリアミック酸重合時の固形分濃度−
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、例えば5質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに10質量%以上30質量%以下が好ましい。
−ポリアミック酸重合温度−
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、例えば0℃以上80℃以下の範囲で行われる。
−イミド化反応−
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、上記ポリアミック酸を加熱処理してイミド化する方法、又は脱水剤及び/又は触媒を作用させる化学的イミド化方法により、ポリアミック酸中のポリアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換して得られる。
加熱処理による方法における加熱温度は、例えば、通常60℃以上200℃以下とされ、望ましくは100℃以上170℃以下とされる。
一方、化学的イミド化方法は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができるが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この化学的イミド化反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、0/100(モル/モル)乃至80/20(モル/モル)であることが好ましい。イミド基とアミック酸基との組成比が、80/20(モル/モル)を超えると、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が不溶化する可能性がある。
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくとも良いが、以下の方法で除去しても良い。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、そのポリアミック酸組成物中の固形分濃度が、ベルト材料として所望の厚みを得る観点から10質量%以上であることが好ましい。この固形分濃度として望ましくは、15質量%以上であり、その上限は50質量%である。
(塗工溶剤)
塗工溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
塗工溶媒は、先のポリアミック酸合成時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
(ポリアミック酸組成物の固形分濃度)
ポリアミック酸組成物の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pa・s以上100Pa・s以下が望ましく、その粘度となる固形分濃度としては、塗工溶媒(例えば有機極性溶媒)100質量部に対して10質量%以上40質量%以下が望ましい。
(3級アミン)
3級アミンは、イミド化反応の触媒と働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用することができる。
3級アミンの含有率は、例えば、ポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1以上30質量部以下添加されうる。
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物は、イミド化反応時の脱水剤として働き、イミド化反応を促進するものである。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などが挙げられ、これらの中でも無水酢酸が好適である。これらは、1種類又は2種類以上用いてもよい。
カルボン酸無水物の含有率は、例えばポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下添加されうる。
(導電剤)
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子の粉末が好ましく、さらに望ましくは1次粒径が1μm以下の粒子の粉末)が使用でき、所望の電気抵抗を得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。これら中でも、pH5以下の酸性カーボンブラックを望ましくは添加することがよい。
また、導電剤としては、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子の添加も可能である。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。
ここで、導電剤として導電性高分子を使用する場合、含まれる導電性高分子は、例えば、有機極性溶媒中に溶解/又は分散された状態で存在する。また、分散している導電性高分子粒子の粒径は、10μm以下であることが望ましく、より望ましくは5μm、さらに望ましくは1μ以下が好適に使用される。
加えて、ポリアミック酸成分に対する導電性高分子の配合比率は特に規定されるものではないが、ポリアミック酸樹脂配合量を100質量部としたとき、導電性高分子配合量は、1質量部以上40質量部以下の範囲が特に望ましい。
―酸性カーボンブラック―
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造することができる。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20以上200℃以下)下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
酸性カーボンブラックのpH値は、例えば、pH5.0以下であるが、望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下である。
ここで、pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整することができる。
酸性カーボンブラックは、例えば、その揮発成分が1%以上25%以下、望ましくは2%以上20%以下、より望ましくは、3.5%以上15%以下含まれていることが好適である。
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、ポリアミック酸組成物中、ポリアミック酸100質量部に対して、20質量部以上40質量部以下配合されることが望ましい。
(分散剤)
分散剤としては、低分子量/高分子量又は、カチオン系/アニオン系/非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用することもできる。分散剤として非イオン系高分子を使用することが最も望ましい。
−非イオン系高分子−
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが望ましい。
ポリアミック酸組成物中、非イオン系高分子の配合量は、ポリアミック酸100質量部に対して、0.2質量部以上3質量部以下であることが望ましい。
以下、上記ポリイミド樹脂の前駆体としてのポリアミック酸組成物を用いたポリイミド樹脂層の形成方法の一例について詳細に説明する。
まず、例えば、上記ポリアミック酸組成物を次のようにして調整する。まず、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液をメタノールなどの貧溶媒中に添加してポリアミック酸を析出させ再沈殿精製する。析出したポリアミック酸ろ別した後、γ−ブチロラクトンなどの溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得る。
ポリアミック酸溶液に、所定量の3級アミン、必要に応じて無水カルボン酸を加えて攪拌溶解させ、ポリアミック酸組成物を得る。
次に、この溶液に、カーボンブラックなどの導電剤をポリアミック酸樹脂の乾燥質量100質量部に対して合計5質量部以上60質量部以下含有せしめる。
ここで、この導電剤を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
次に、この溶液を金型の内面もしくは外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みのバラツキをなくす。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
次に、ポリアミック酸溶液を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上望ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行なう。
更に、この金型を200℃以上450℃以下で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。部分的にイミド化されていないポリアミック酸溶液をイミド化した場合と、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液をイミド化した場合とを比較すると、該部分的イミド化率等によって異なるが、イミドの種類を同一とすると、概ね50℃以上200℃以下程度と低い温度でイミド化の完結が可能となる。
その後、金型から樹脂を取り外し、ポリイミド樹脂皮膜を得る。
得られたポリイミド樹脂皮膜の外周面又は内周面に対し(本実施形態では外周面)、加水分解処理を施す。具体的には、例えば、アルカリ溶液に接触させる。また、加水分解処理は、水蒸気を接触させることでも実施することができる。
アルカリ性溶液(塩基性水溶液)としては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ度類金属(マグネシウム、カルシウムなど)の水酸化物又は炭酸塩などの塩基性化合物を水に溶解させた水溶液が挙げられる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。アルカリ性溶液の塩基性化合物濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
アルカリ性溶液による加水分解処理の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。また、加水分解処理時間は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
これら処理により、これにより、処理面のイミド化率が低下すると共に、アルカリ溶液が処理面から染み込み、当該処理面から膜厚方向に向かって連続してイミド化率が増加するように処理される。加えて、ベルトの外周面と内周面とで、ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一な構成となる。したがって、ベルトに明確な界面が存在しない、単層構成のベルトとなる。
なお、イミド化率を低下する方法としては、上記加水分解に限られず、アミン触媒及び脱水触媒の少なくとも1種を接触させ処理させる方法も挙げられる。このアミン触媒としては、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。脱水触媒としては、無水フタル酸、プロピオン酸、ブタン酸などが挙げられる。
そして、アルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面に対し、酸性溶液を接触させることがよい。なお、酸性溶液による処理前に純水で洗浄してアルカリ溶液を除去することがよい。また、上記純水に加えてアルコール類など、水と混和しやすい溶媒を併用してもよい。
このアルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面には、ポリイミド樹脂が加水分解されてポリアミック酸の金属塩となっている。そこで、酸性溶液によりポリアミック酸金属塩をポリアミック酸に置換させる。
酸性溶液は、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸が使用される。酸性溶液の濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
酸性溶液による処理(アミック酸化処理)の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。一方、酸性溶液による処理(アミック酸化処理)は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
その後、ポリイミド樹脂皮膜表面を、純水で洗浄した後、水分の乾燥行い、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
このようにして、本実施形態に係る無端ベルト50を得ることができる。
以上、説明した本実施形態に係る無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における中間転写ベルト、転写搬送ベルトなど種々の用途に供することが可能である。
なお、本実施形態では、外周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が内周面より低くなっている形態を説明したが、これに限られず、外周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より高く、外周面における表面抵抗率が内周面より高くなっている形態であってもよい。この形態では、例えば、膜厚の50%以下の範囲でベルトの内周面側から外周面側に向かってイミド化率が増加している領域と、その後、この領域から外周面に向かってイミド化率が一定となっている領域とを有しており、例えば、上記加水分解処理をベルト内周面に対して行うことで実現することができる。
また、本実施形態では、単層構成の形態を説明したが、積層構成により無端ベルト50の外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率と共に表面抵抗率が異なる形態を実現してもよい。この形態は、まず、ポリイミド無端ベルト基材を作製し、当該ポリイミド無端ベルト基材に対してイミド化率及び表面抵抗率が異なるように、ポリイミド樹脂表面層を形成することで実現することができる。
また、本実施形態では、ベルトに導電剤を含む形態を説明したが、これに限られず、導電剤が含まれない形態であってもよい。このように、導電剤が含まれないベルトは、例えば、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における搬送ベルト、定着ベルト等の用途に供することが可能である。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第2実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第2実施形態に係る画像形成装置100は、図3に示すように感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成されるものであり。
そして、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲には、それぞれ、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
中間転写体102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回転する。
中間転写体102には、既述の第1実施形態に係るポリイミド無端ベルトが適用されている。
上記感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には中間転写体102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを防止するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置では2次転写ロール120と中間転写体102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写体102を挟んで配設されている。
送りローラ126によって所定のタイミングで給紙部113から搬出された記録媒体103は、この2次転写ロール120と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記2次転写ロール120とロール117との間に電圧を印加しており、中間転写体102に保持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に転写される。
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着器の加熱ロール127と加圧ロール128との間に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、2次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成とすることも可能である。
中間転写ベルト102は、ベルト用クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、中間転写体102から離間している。
なお、本実施形態に係る画像形成装置の構成としては、上記形態に限定されるわけではなく、例えば、像保持体、像保持体表面を帯電する帯電手段、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段、像保持体表面に形成された潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段、被転写材上のトナー像を転写する転写手段、被転写材上のトナー像を定着する定着手段、像保持体に付着したトナーやゴミ等を除去するクリーニング手段、像保持体表面に残留している静電潜像を除去する除電手段、など必要に応じて公知の方法で備えた画像形成装置であればよい。
この構成の画像形成装置において、中間転写ベルトを利用した2次転写方式の転写手段や、定着ベルトを利用したベルト方式の定着手段のベルトとして、上記第1実施形態に係る無端ベルトをその構成に応じて適用し得る。
ここで、第1の実施形態の無端ベルトをベルト方式の定着手段における定着ベルトに適用する場合、その装置構成は例えば、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルト(定着ベルト)と、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録媒体を加熱しながら前記圧接部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録媒体体表面に定着させる画像定着装置において、前記無端ベルトとして第1実施形態の無端ベルトを用いることが好ましい。
なお、定着手段は、上記に説明した構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
また、定着手段は、押圧部材により、圧接部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
なお、この圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述した筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮して圧接部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第3実施形態に係る画像形成装置は、転写搬送ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第3実施形態に係る画像形成装置200は、図4に示すように、ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録紙(被転写体)搬送用ベルト(転写搬送ベルト)206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録紙搬送ロール208と、定着手段209とを備えている。この記録紙(被転写体)搬送用ベルト206として、前記第1の実施形態の無端ベルトを備える。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転可能にそれぞれ像保持体である感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電手段202Y、202M、202C、202Bkと、露光手段203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像器(イエロー現像器204Y、マゼンタ現像器204M、シアン現像器204C、ブラック現像器204Bk)と、感光体クリーナー205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録紙搬送用ベルト206に対して4つ並列に、ユニット200Y、200M、200C、200Bkの順に配置されているが、ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
記録紙搬送用ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとそれぞれ接するように配置されている。記録紙搬送用ベルト206は、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkは、記録紙搬送用ベルト206の内側であって、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと、記録紙搬送用ベルト221を介してトナー画像を記録紙(被転写材)Pに転写する転写領域を形成している。
定着器209は、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送できるように配置されている。
記録紙搬送ロール208により、記録紙Pは記録紙搬送用ベルト206に搬送される。
ユニット200Yにおいては、感光体ドラム201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電手段202Yが駆動し、感光体ドラム201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201Yは、次に、露光手段203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
続いて該静電潜像は、イエロー現像器204Yによって現像される。すると、感光体ドラム201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
このトナー画像は、感光体ドラム201Yと記録紙搬送用ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録紙Pが静電的に記録紙搬送用ベルト221に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録紙Pの外周面に順次、転写される。
この後、感光体ドラム201Y上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナ205Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201Yは、次の転写サイクルに供される。
以上の転写サイクルは、ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkによってトナー画像を転写された記録紙Pは、さらに定着器209に搬送され、定着が行われる。以上により記録紙上に所望の画像が形成される。
第3の実施形態では、第1の実施形態における無端ベルトを転写搬送ベルトとして用い、記録紙などの被搬送体を搬送しているが、記録紙の搬送に限定されるものではなく、記録紙以外の被搬送体、例えば、プラスチックで出来た媒体(例えばOHPシートなど)、カード、板などの搬送にも無端ベルトをすることができる。
なお、上記実施形態では、第1実施形態に係る無端ベルトを画像形成装置用のベルト部材(中間転写ベルト、転写搬送ベルト等)に適用した形態を説明したが、これに限られず、例えばシート等の被搬送物を搬送するためのベルトを備えた搬送装置における、当該ベルトに適用することもできる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
<ポリアミック酸溶液の調製>
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略する場合も有る)1977.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1.0モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。
<カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)の調製>
ポリアミック酸溶液(PAA−1)500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製、Luvitec(R)K17:以下「PVP」と略する場合もある)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「CB」と略する場合もある)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラックの分散を行い、CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
<CB分散ポリアミック酸溶液(A−2)の調製>
CB配合量を変更した以外はCB分散ポリアミック酸溶液(A−1)の調整と同様にして、CB分散ポリアミック酸組成物(A−2)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック酸酸組成物(A−2)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :20.0g
<CB分散ポリアミック酸溶液(A−3)の調整>
CB配合量を変更した以外はCB分散ポリアミック酸溶液(A−1)と同様にして、CB分散ポリアミック酸組成物(A−3)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック酸酸組成物(A−3)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :30.0g
<実施例1>
−ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を、外径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表外面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト基材(B−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−1)を、外径90mmの円筒状樹脂製パイプの外面に設置した。ベルト端部より処理液の進入を防ぐため、ベルト端部をテープにて円筒状樹脂製パイプに貼り付けた。ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、円筒状樹脂製パイプを、70℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液(水100質量部に対して水酸化ナトリウム5質量部を配合した水酸化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分間加水分解処理を施した後、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、円筒状樹脂製パイプを水酸化ナトリウム水溶液中より取り出し、純水にて洗浄を行った。塩酸水溶液(水100質量部に対して塩化水素5質量部を配合した塩酸水溶液)中に浸漬して25℃で30分間処理を行った。塩酸水溶液より取り出して、純水にて洗浄を行った。円筒状樹脂パイプよりベルトを取り外した後、120℃乾燥機中で30分間乾燥して目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
<評価>
得られたポリイミド無端ベルト(C−1)につき、以下の評価を行った。結果を表1に示す。加えて、外周面と内周面のポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造と、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比と、を上述に従って調べたところ、同一であった。なお、後述するポリイミド無端ベルト(C−2)〜(C−6)も同様の結果が得られた。
(膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルト膜厚とした。
その結果、加水分解前のポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)の膜厚はそれぞれ80±5μm、80±5μm、と同じであった。
(耐折性の測定)
得られたポリイミド無端ベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。なお、ベルト膜厚については、塗工時に条件を様々制御して、80μmになるように調整した。
そして、JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
その結果、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)は、4500回と加水分解処理後もベルト用途として問題なく使用できる十分な強度としなやかさをもっていた。
(表面抵抗率)
得られたポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加して10秒後の電流値をアドバンテスト社製R8340Aを用いて測定し、その電流値からベルト外面/裏面の表面抵抗率(ρs)を算出し、その値から表面抵抗率の常用対数値(log(ρs)(logΩ))を算出した。
具体的には、表面抵抗率の測定は測定のための電極として上記円形電極を用い、JIS K6911(1995年)に従って測定することができる。
表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図5は、円形電極の概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図5に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極C及びリング状電極Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極Cとリング状電極Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω)を算出することができる。
ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極Dの内径を示し、πは円周率を示す。
表面抵抗率測定においては、電圧V(V)の印加10秒後の電流I(A)を測定する。
式(1): ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
その結果、ポリイミド無端ベルト(C−1)の加水分解処理を施した外周面の、ρsが未処理面より低くなっていた。
(イミド化率)
ポリイミド無端ベルトのイミド化率は、ポリイミド樹脂の赤外光吸収スペクトル測定により測定した。測定装置として、堀場製作所製顕微FT−IR FT−530を用い、ベルト試料の反射光スペクトルにて測定を行った。
測定された赤外吸収スペクトルで、テトラカルボン酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノ時フェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂の場合、1500cm−1のベンゼン環の吸光度(Abs1500)を内部標準として、これに対する1780cm−1イミド基由来のカルボニル基由来の吸光度(Abs1780)の比をもって以下に示す式(2)よりイミド化率を算出し得る。
式(2):(イミド化率)=(Abs1780)/(Abs1500)×K×100
ここで、式中、K:CBを含有しないポリアミック酸(A−1)をガラス基板上に塗布した後、120℃にて30分間乾燥した後、400℃にて1時間処理することで、イミド化反応を完終させたポリイミドフィルム試料の1780cm−1の吸光度と、1500cm−1の吸光度との比(K=Abs1780(400℃焼成)/Abs1500(400℃焼成)=0.27)を示す。なお、かかるK値が相当するポリイミド樹脂の100%イミド化物に相当する。
なお、化学組成の異なるポリイミド樹脂においても、かかる内部標準としてベンゼン環由来の吸光度と、イミド基由来の吸光度より、ポリイミド化学組成に対応するK値を求めた後、各ベルト作成条件でのイミド化率を先の例の同じく算出し得る。
そして、ポリイミド無端ベルトより100mm×100mmの試料片を切り出し、その外周面/内周面の両面のイミド化率を測定した。その後、ポリイミド無端ベルト外面を1000番サンドペーパーにより研磨する。研磨後の膜厚を測定して再度イミド化率の測定する。これを繰り返すことで、ベルト深さ方向のイミド化率のプロファイルを計測する。測定した結果を表1に示す。
その結果、ポリイミド無端ベルト(C−1)は、加水分解処理を施した外周面と、非処理面(内周面)とのイミド化率が異なり、処理面より深さ方向(膜厚方向)にイミド化率が連続して変化(増加)している様子が確認された。
(コピー画質)
富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に、中間転写ベルトとして得られたポリイミド無端ベルトを装着し、低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に5000枚出力し、5000枚面の画像について以下の基準で濃度ムラ及び斑点ディフェクトを目視で評価した。なお、各評価基準は以下の通りである。
−濃度ムラ−
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
△:濃度ムラが確認でき、やや問題のあるレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認でき、実用上問題のあるレベルである。
−斑点ディフェクト−
◎:斑点ディフェクトが確認されない。
○:斑点ディフェクトが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
△:斑点ディフェクトが確認でき、やや問題のあるレベルである。
×:斑点ディフェクトがはっきりと確認でき、実用上問題のあるレベルである。
その結果、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)は、濃度ムラ;◎、斑点ディフエクト;◎であった。
<実施例2>
−ポリイミド無端ベルト(C−2)の製造−
CB分散ポリアミック酸溶液(A−1)を用い、表1に示すように焼成時間を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−2)を作製した。これを用いた以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−2)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3〜4>
ポリイミド無端ベルト基材(B−1)を用い、表1〜2に示すように加水分解処理の時間を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト(C−3)、(C−4)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1〜2に示す。
<実施例5〜6>
CB分散ポリアミック酸溶液(A−2)、(A−3)を用いた以外は、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト基材(B−3)、(B−4)作製した。これを用いた以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−5)、(C−6)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。但し、ポリイミド無端ベルト(C−6)については、表2に示すように加水分解処理の時間を変更した。
<実施例7〜8>
−ポリイミド無端ベルト(C−7)、(C-8)の製造−
ポリイミド無端ベルト基材(B−1)を用い、表3に示すように加水分解処理の条件を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト(C−7)、(C−8)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
<実施例9>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−8)の製造、積層化されたポリイミド無端ベルト(C-9)の製造:積層ベルト−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を用いて、膜厚が50μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−8)を作製した。
さらに、その表面に表面層として30μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)塗工加工して、表4に示す焼成条件で焼成することで積層化されたポリイミド無端ベルト(C−9)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(C−9)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例1〜3>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4):単層ベルト−
実施例1、5、6で作製した単層ポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4)につき、実施例1と同様にして評価した。結果を表5に示す。
<比較例4>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−5)の製造、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)の製造:積層ベルト−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を用いて、膜厚が60μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−5)を作製した。
さらに、その表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−3)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−5)、ポリイミド無端ベルト(Y−1)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例5>
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−2)を用いて、膜厚が60μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−6)を作製した。
さらに、その表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−2)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−6)、ポリイミド無端ベルト(Y−2)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例6>
上記ポリイミド無端ベルト基材(B−6)表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−3)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−3)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト(Y−3)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例7>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−7)の製造−
内面に離型剤処理を施した内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型を用意し、実施例1で得られたCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を、内面に均一に塗布した。
次に、金型を室温で100rpmの速度で30分回転させることで遠心力により塗膜中のカーボンブラック表面(外面)偏在化を図った。しかる後、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト基材(B−7)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−7)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 2008145823
Figure 2008145823
Figure 2008145823
Figure 2008145823
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上記結果から、単層構造からなるポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4)は、イミド化率がベルト深さ方向で同じであり、良好な膜厚均一性、耐折れ性、表面抵抗値の電圧依存性を示すものの、ポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)に比べ、コピー画質が劣る傾向であった。
また、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)、(Y−2)、(Y−3)は、表面層の塗工の均一性がとれず、膜厚均一性の点で劣る結果であった。膜厚の不均一なポリイミド無端ベルト(Y−1)、(Y−2)、(Y−3)は、膜厚の薄い部分や積層界面部が破壊基点となってしまい、MIT耐揉疲労試験機MIT−DAによる折り曲げ回数が小さくなる傾向が見られた。また、電子写真装置に搭載した際に、界面部に電荷が蓄積するため、またに動作時のベルト/紙と間に生じる剥離放電現象で発生するために、濃度ムラ、斑点ディフェクトともポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)より劣る傾向が見られた。
また、得られたポリイミド無端ベルト基材(B−7)は、表面部にカーボンブラックが多くなるため、内周面に比べ外周面の表面抵抗値が小さくなるものの、面内均一性が劣る傾向が見られた。また、ベルト取扱い時に表面部にキズが生じやすくこれが電子写真装置搭載時に欠陥となって表れてしまった。
以上から、本実施例に係るポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)は、ポリイミド無端ベルト基材の外周面を加水分解処理を行った単層構造であり、ベルトとしての強度も高く、中間転写ベルトとしての所定の抵抗値を備え、電子写真装置に搭載した際に、濃度ムラ、斑点ディフェクトとも低減されるのがわかる。
従って、本実施例のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして使用した場合、動作時のベルト/紙と間に生じる剥離放電現象で発生するが電荷を速やかに解消することができることがわかる。そのため、剥離放電現象の繰り返しによって生じる経時的なベルト特性劣化を抑制することができ、かつ優れた印字画質を得られることがわかる。また、ベルト表面に静電気の蓄積を防ぐことで、塵などの付着を抑えて印字トラブルの防止を図ることができ、欠陥もない優れた複写画質を発現し得ることがわかる。
第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。 第1実施形態に係る無端ベルトにおける膜厚方向のポリイミド樹脂のイミド化率分布を示す概念図である。 第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
符号の説明
52 無端ベルト
101 感光体ドラム
102 中間転写体
103 記録媒体
105〜108 現像器
109 コロナ放電器
113 給紙部
115 搬送ベルト
116 クリーニング装置
117 ロール
120 2次転写ロール
121〜124 転写バッフル
126 送りローラ
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いことを特徴とする無端ベルトである。
請求項に係る発明は、
単層構造であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項に係る発明は、
前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項に係る発明は、
前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項に係る発明は、
前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項6に記載の発明は、
前記無端ベルトが電子写真方式の画像形成装置に用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無端ベルトである
請求項に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いポリイミド無端ベルトを有することを特徴とする中間転写ベルトである。
請求項に係る発明は、
単層構造であることを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトである。
請求項に係る発明は、
前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトである。
請求項10に係る発明は、
前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトである。
請求項11に係る発明は、
前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトである。
請求項12に係る発明は、
導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いポリイミド無端ベルトを有する中間転写ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、
金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂皮膜の外周面に、加水分解処理を施す工程と、
を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法である。
請求項14に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程が、前記ポリイミド樹脂皮膜の外周面にアルカリ性溶液を接触させる工程である請求項13に記載の無端ベルトの製造方法である。
請求項15に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程の後、さらに、加水分解処理を施した面に酸性溶液を接触させる工程を有することを特徴とする請求項13に記載の無端ベルトの製造方法である。
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止できる、といった効果を奏する。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項10に係る発明によれば、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項11に係る発明によれば、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項12に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項13に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れが付着を防止できる無端ベルトが得られる、といった効果を奏する。
請求項14に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、簡易に処理可能、といった効果を奏する。
請求項15に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、表面抵抗率の低下やバラツキを効果的に防止できる、といった効果を奏する。
本実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、次のようにして作製することができる。金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、ポリイミド樹脂皮膜の外周面に、加水分解処理を施す工程と、を経て無端ベルト50を製造することができる。詳細を以下に示す。
得られたポリイミド樹脂皮膜の外周面に対し、加水分解処理を施す。具体的には、例えば、アルカリ溶液に接触させる。また、加水分解処理は、水蒸気を接触させることでも実施することができる。
本発明は、中間転写ベルト及びその製造方法、並びに、画像形成装置に関する。
電子写真装置では、まず、導電材料を用いた感光体上に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像として形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いで、このトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
ポリイミド材料に導電性を付与させる目的で、導電性を有するカーボンブラック粒子をポリイミド樹脂中に分散させることが行われている。カーボンブラックの分散性を上げることでポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制できることが、よく知られている。このカーボンブラック分散性を向上させて、成形されるポリイミド無端ベルトの抵抗値の電圧変動を抑制することを目的に、カーボンブラックを有機極性溶媒中に分散させた分散液中でテトラカルボン酸無水物とジアミン化合物とを反応させて、ポリアミック酸を重合させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液作製方法、並びに当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている(特許文献4)。
他方で、ポリイミド材料に導電性を付与させる目的に、ポリイミド樹脂中に導電材料としてポリアニリンを添加する方法が開示されている(特許文献5)。また、同様に導電材料にポリチオフェンを用いた方法について開示されている(特許文献6)。
このような導電材料を分散させたポリイミド無端ベルトを中間転写体として使用する場合、高画質な多色印字を行うためにベルト状中間表面層に高抵抗層を設けることが有効な手段とされている。
かかる高抵抗層を表面に設けたベルトを製造する場合、基材ベルトを形成した表面(外面)に基材に対して高抵抗となる表面層を設け、2層化する方式が提案されている(特許文献7)。
また、抵抗値の高い基材と抵抗の低い表面層とを形成することで画像の転写性、記録紙の剥離性が向上して中間転写ベルト又は転写搬送ベルトとしての機能が向上することが知られている(例えば、特許文献8参照)。
特開平5−200904号公報 特開平6−228335号公報 特開平6−149083号公報 特開2002−292656号公報 特開平8−259709 特開平2004−101548 特開平11−235765 特開2001−22189
本発明の課題は、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止した中間転写ベルト及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、当該中間転写ベルトを利用した画像形成装置を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
特定の配合比率で導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が前記内周面より低く、前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であり、且つ単層構造であることを特徴とする中間転写ベルト。である。
請求項に係る発明は、
前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトである。
請求項3に係る発明は、
前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルトである。
請求項4に係る発明は、
特定の配合比率で導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低く、外周面における表面抵抗率が前記内周面より低く、前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であり、且つ単層構造であることを特徴とする中間転写ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項に係る発明は、
金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂皮膜の外周面に、加水分解処理を施す工程と、
を有し、請求項1に記載の中間転写ベルトを得ることを特徴とする中間転写ベルトの製造方法である。
請求項に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程が、前記ポリイミド樹脂皮膜の外周面にアルカリ性溶液を接触させる工程である請求項に記載の中間転写ベルトの製造方法である。
請求項7に係る発明は、
前記加水分解処理を施す工程の後、さらに、加水分解処理を施した面に酸性溶液を接触させる工程を有することを特徴とする請求項に記載の中間転写ベルトの製造方法である。
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、より効果的に、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れの付着を防止し、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期に渡り、高画質な画像を形成できる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、明確な界面を持つことなく、外部からの応力による剥離が防止され、電荷の滞留を防止し、表面抵抗率のベルト面内ムラが抑制されると共に、汚れが付着を防止できる中間転写ベルトが得られる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、簡易に処理可能、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、表面抵抗率の低下やバラツキを効果的に防止できる、といった効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、機能・作用が共通する機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る無端ベルトにおける膜厚方向のポリイミド樹脂のイミド化率分布を示す概念図である。
第1実施形態に係る無端ベルト50は、図1に示すように、導電剤を含む単層のポリイミド樹脂層から構成されている。そして、無端ベルト50の外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率と共に表面抵抗率が異なっている。本実施形態では、外周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低くなっている。加えて、外周面における表面抵抗率が内周面より低くなっている。
本実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、膜厚の50%以下の範囲でベルトの外周面側から内周面側に向かってイミド化率が連続して増加している領域50Aと、その後、領域50Aから内周面に向かってイミド化率が一定となっている領域50Bとを有している。具体的には、ポリイミド樹脂のイミド化率は、例えば、図2に示すように、ベルトの外周面側から内周面側に向かって連続してイミド化率が増加し、その後一定となっている。
加えて、外周面と内周面とで、ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一となっている。
即ち、本実施形態に係る無端ベルト50は、ポリイミド樹脂のイミド化率及び表面抵抗率が互いに異なっても、単層構成で明確な界面を持っていない構成となっている。
ここで、「ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一である」こと、「テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一である」ことは、以下のようにして調べることができる。
かかるベルトより特定部位を切り出し、若しくは研磨して、試料片を作製する。この試料片を10倍量以上の強塩基水溶液中で加熱、加水分解処理を行う。ここで塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの強塩基を、水中に溶解させたて使用される。この強塩基水溶液の濃度としては、5質量%以上30質量%以下の範囲で適宜選択される。
加水分解後、ポリイミド樹脂は、ポリアミック酸さらにジアミン化合物とテトラカルボン酸に分解される。加水分解液よりクロロホルムを用いて、テトラカルボン酸とジアミン化合物とを液相抽出する。抽出液を液体クロマトグラフィにより、定性/定量分析を行い、対応するテトラカルボン酸と、ジアミン化合物の溶出ピークを基準としてこれと比較することで、ポリイミド樹脂中に含まれるジアミン化合物残基ならびにテトラカルボン酸残基の構造と含有率を算出することができる。
なお、「テトラカルボン酸残基」とは、4つのカルボン酸(或いはそれによる結合基)で連結された4価の有機基(例えば、後述する一般式(1)及び(2)におけるR1、R3、R5に相当)を示す。一方、「ジアミン化合物残基」は、「N」若しくは「NH」に連結した2価の有機基(例えば、後述する一般式(1)及び(2)におけるR2、R6に相当)を示す。
外周面のポリイミド樹脂のイミド化率は、50%以上95%以下であることが望ましく、より望ましくは60%以上90%以下であり、さらに望ましくは70%以上85%以下である。一方、内周面のポリイミド樹脂のイミド化率は、60%以上100%以下であることが望ましく、より望ましくは70%以上100%以下であり、さらに望ましくは90%以上100%以下である。
外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率との差は、5%以上20%以下であることが望ましく、より望ましくは10%以上20%以下であり、さらに望ましくは15%以上20%以下である。
外周面から内周面に向かって、ポリイミド樹脂のイミド化率が変化する領域は外周面から膜厚の50%以下の領域であることが望ましく、より望ましくは膜厚の40%以下であり、さらに望ましくは膜厚の30%以下である。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂のイミド化率が変化する領域は、膜厚を100μmとしたときには、外周面から膜厚方向へ向かって50μm以下の深さであることが望ましく、より望ましくは40μm以下の深さであり、さらに望ましくは30μm以下の深さである。
一方、外周面の表面抵抗率と、内周面の表面抵抗率とは、互いに異なるが、常用対数値で9(logΩ)以上13(logΩ)以下であることが望ましく、より望ましくは11.5(logΩ)以上12.5(logΩ)以下であり、さらに望ましくは10(logΩ)以上12(logΩ)以下である。
また、外周面の表面抵抗率と、内周面の表面抵抗率との差は、常用対数値で0.5(logΩ)より大きいことが望ましく、より望ましくは1.0(logΩ)より大きいことがよい。この差の上限としては、4.0(logΩ)以下であることが望ましい。
以下、本実施形態に係る無端ベルト50の製造方法について説明する。
本実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、次のようにして作製することができる。金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、ポリイミド樹脂皮膜の外周面に、加水分解処理を施す工程と、を経て無端ベルト50を製造することができる。詳細を以下に示す。
まず、ポリイミド前駆体について説明する。ポリイミド前駆体としては、例えば、以下に示すポリアミック酸組成物が挙げられる。ポリアミック酸組成物は、例えば、ポリアミック酸構造を含むポリマーと、塗工溶媒と、触媒としての3級アミンと、を含有して構成されている。また、必要に応じて、カルボン酸無水物、導電剤、分散剤などの添加物を含むこともできる。
なお、ポリイミド樹脂(その前駆体)の組成は、一例であり、これらに限定されるわけではない。例えば、ポリイミド樹脂類縁材料も用いることができる。このポリイミド樹脂類縁材料としては、イミド骨格を高分子主鎖構造中に含む高分子材料が使用できる。具体的には、後述する前駆体組成において、テトラカルボン酸に代えて、トリメリット酸を共重合させて高分子主鎖構造中に、アミド基とイミド基をあわせもたせたポリアミドイミド樹脂や、ポリアミック酸に対する反応条件を調整することでイミド化反応を部分的に行うことで、アミック酸残基を残したポリイミド−ポリアミック酸共重合体が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂を使用する場合、後述するテトラカルボン酸二無水物に代えて、例えば、無水トリメリット酸などのトリメロット酸誘導体を原料として使用する。一方、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体の場合は、後述するテトラカルボン酸二無水物を使用する。
以下、ポリアミック酸組成物ついてより詳細に説明する。
(ポリアミック酸構造を含むポリマー)
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、ポリイミド前駆体となり得るポリマーであり、ポリアミック酸、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が挙げられる。
ポリアミック酸としては、下記一般式(1)で表されるポリアミック酸が好適に挙げられる。また、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体としては、下記一般式(2)で表されるポリアミック酸−ポリイミド共重合体が好適に挙げられる。
Figure 2008145823
一般式(1)中、R1は4価の有機基を示し、R2は2価の有機基を示す。一方、一般式(2)中、R3は4価の有機基を示し、R4は2価の有機基を示し、R5は4価の有機基を示し、R6は2価の有機基を示す。
ここで、2価の有機基R2、R4、R6は、対応するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造として表される。また、4価の有機基R1、R3、R5は、対応するテトラカルボン酸化合物より4つのカルボニル基を除いたその残基として表される。
以下、ポリアミック酸、及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体をより詳細に説明する。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。また、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化反応を行い合成される。
−テトラカルボン酸二無水物−
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3',4,4'−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が好適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−ジアミン化合物−
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3'−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4'−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノ−5,5'−ジメトキシビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3'−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4'−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4'−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2'−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ−
ポリアミック酸としては、望ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンと含むものが好ましい。
−合成溶媒−
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
−ポリアミック酸重合時の固形分濃度−
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、例えば5質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに10質量%以上30質量%以下が好ましい。
−ポリアミック酸重合温度−
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、例えば0℃以上80℃以下の範囲で行われる。
−イミド化反応−
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、上記ポリアミック酸を加熱処理してイミド化する方法、又は脱水剤及び/又は触媒を作用させる化学的イミド化方法により、ポリアミック酸中のポリアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換して得られる。
加熱処理による方法における加熱温度は、例えば、通常60℃以上200℃以下とされ、望ましくは100℃以上170℃以下とされる。
一方、化学的イミド化方法は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができるが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この化学的イミド化反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、0/100(モル/モル)乃至80/20(モル/モル)であることが好ましい。イミド基とアミック酸基との組成比が、80/20(モル/モル)を超えると、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が不溶化する可能性がある。
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくとも良いが、以下の方法で除去しても良い。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、そのポリアミック酸組成物中の固形分濃度が、ベルト材料として所望の厚みを得る観点から10質量%以上であることが好ましい。この固形分濃度として望ましくは、15質量%以上であり、その上限は50質量%である。
(塗工溶剤)
塗工溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
塗工溶媒は、先のポリアミック酸合成時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
(ポリアミック酸組成物の固形分濃度)
ポリアミック酸組成物の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pa・s以上100Pa・s以下が望ましく、その粘度となる固形分濃度としては、塗工溶媒(例えば有機極性溶媒)100質量部に対して10質量%以上40質量%以下が望ましい。
(3級アミン)
3級アミンは、イミド化反応の触媒と働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用することができる。
3級アミンの含有率は、例えば、ポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1以上30質量部以下添加されうる。
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物は、イミド化反応時の脱水剤として働き、イミド化反応を促進するものである。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などが挙げられ、これらの中でも無水酢酸が好適である。これらは、1種類又は2種類以上用いてもよい。
カルボン酸無水物の含有率は、例えばポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下添加されうる。
(導電剤)
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率107Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率107Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子の粉末が好ましく、さらに望ましくは1次粒径が1μm以下の粒子の粉末)が使用でき、所望の電気抵抗を得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。これら中でも、pH5以下の酸性カーボンブラックを望ましくは添加することがよい。
また、導電剤としては、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子の添加も可能である。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。
ここで、導電剤として導電性高分子を使用する場合、含まれる導電性高分子は、例えば、有機極性溶媒中に溶解/又は分散された状態で存在する。また、分散している導電性高分子粒子の粒径は、10μm以下であることが望ましく、より望ましくは5μm、さらに望ましくは1μ以下が好適に使用される。
加えて、ポリアミック酸成分に対する導電性高分子の配合比率は特に規定されるものではないが、ポリアミック酸樹脂配合量を100質量部としたとき、導電性高分子配合量は、1質量部以上40質量部以下の範囲が特に望ましい。
―酸性カーボンブラック―
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造することができる。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20以上200℃以下)下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
酸性カーボンブラックのpH値は、例えば、pH5.0以下であるが、望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下である。
ここで、pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整することができる。
酸性カーボンブラックは、例えば、その揮発成分が1%以上25%以下、望ましくは2%以上20%以下、より望ましくは、3.5%以上15%以下含まれていることが好適である。
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、ポリアミック酸組成物中、ポリアミック酸100質量部に対して、20質量部以上40質量部以下配合されることが望ましい。
(分散剤)
分散剤としては、低分子量/高分子量又は、カチオン系/アニオン系/非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用することもできる。分散剤として非イオン系高分子を使用することが最も望ましい。
−非イオン系高分子−
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N'−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することができる。本発明においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが望ましい。
ポリアミック酸組成物中、非イオン系高分子の配合量は、ポリアミック酸100質量部に対して、0.2質量部以上3質量部以下であることが望ましい。
以下、上記ポリイミド樹脂の前駆体としてのポリアミック酸組成物を用いたポリイミド樹脂層の形成方法の一例について詳細に説明する。
まず、例えば、上記ポリアミック酸組成物を次のようにして調整する。まず、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液をメタノールなどの貧溶媒中に添加してポリアミック酸を析出させ再沈殿精製する。析出したポリアミック酸ろ別した後、γ−ブチロラクトンなどの溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得る。
ポリアミック酸溶液に、所定量の3級アミン、必要に応じて無水カルボン酸を加えて攪拌溶解させ、ポリアミック酸組成物を得る。
次に、この溶液に、カーボンブラックなどの導電剤をポリアミック酸樹脂の乾燥質量100質量部に対して合計5質量部以上60質量部以下含有せしめる。
ここで、この導電剤を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
次に、この溶液を金型の内面もしくは外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みのバラツキをなくす。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
次に、ポリアミック酸溶液を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上望ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行なう。
更に、この金型を200℃以上450℃以下で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。部分的にイミド化されていないポリアミック酸溶液をイミド化した場合と、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液をイミド化した場合とを比較すると、該部分的イミド化率等によって異なるが、イミドの種類を同一とすると、概ね50℃以上200℃以下程度と低い温度でイミド化の完結が可能となる。
その後、金型から樹脂を取り外し、ポリイミド樹脂皮膜を得る。
得られたポリイミド樹脂皮膜の外周面に対し、加水分解処理を施す。具体的には、例えば、アルカリ溶液に接触させる。また、加水分解処理は、水蒸気を接触させることでも実施することができる。
アルカリ性溶液(塩基性水溶液)としては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ度類金属(マグネシウム、カルシウムなど)の水酸化物又は炭酸塩などの塩基性化合物を水に溶解させた水溶液が挙げられる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。アルカリ性溶液の塩基性化合物濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
アルカリ性溶液による加水分解処理の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。また、加水分解処理時間は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
これら処理により、これにより、処理面のイミド化率が低下すると共に、アルカリ溶液が処理面から染み込み、当該処理面から膜厚方向に向かって連続してイミド化率が増加するように処理される。加えて、ベルトの外周面と内周面とで、ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一な構成となる。したがって、ベルトに明確な界面が存在しない、単層構成のベルトとなる。
なお、イミド化率を低下する方法としては、上記加水分解に限られず、アミン触媒及び脱水触媒の少なくとも1種を接触させ処理させる方法も挙げられる。このアミン触媒としては、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。脱水触媒としては、無水フタル酸、プロピオン酸、ブタン酸などが挙げられる。
そして、アルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面に対し、酸性溶液を接触させることがよい。なお、酸性溶液による処理前に純水で洗浄してアルカリ溶液を除去することがよい。また、上記純水に加えてアルコール類など、水と混和しやすい溶媒を併用してもよい。
このアルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面には、ポリイミド樹脂が加水分解されてポリアミック酸の金属塩となっている。そこで、酸性溶液によりポリアミック酸金属塩をポリアミック酸に置換させる。
酸性溶液は、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸が使用される。酸性溶液の濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
酸性溶液による処理(アミック酸化処理)の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。一方、酸性溶液による処理(アミック酸化処理)は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
その後、ポリイミド樹脂皮膜表面を、純水で洗浄した後、水分の乾燥行い、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。得られたポリイミド無端ベルトには、更に必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
このようにして、本実施形態に係る無端ベルト50を得ることができる。
以上、説明した本実施形態に係る無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における中間転写ベルトの用途に供する。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第2実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第2実施形態に係る画像形成装置100は、図3に示すように感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成されるものであり。
そして、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲には、それぞれ、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
中間転写体102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回転する。
中間転写体102には、既述の第1実施形態に係るポリイミド無端ベルトが適用されている。
上記感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には中間転写体102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを防止するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置では2次転写ロール120と中間転写体102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写体102を挟んで配設されている。
送りローラ126によって所定のタイミングで給紙部113から搬出された記録媒体103は、この2次転写ロール120と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記2次転写ロール120とロール117との間に電圧を印加しており、中間転写体102に保持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に転写される。
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着器の加熱ロール127と加圧ロール128との間に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、2次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成とすることも可能である。
中間転写ベルト102は、ベルト用クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、中間転写体102から離間している。
なお、本実施形態に係る画像形成装置の構成としては、上記形態に限定されるわけではなく、例えば、像保持体、像保持体表面を帯電する帯電手段、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段、像保持体表面に形成された潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段、被転写材上のトナー像を転写する転写手段、被転写材上のトナー像を定着する定着手段、像保持体に付着したトナーやゴミ等を除去するクリーニング手段、像保持体表面に残留している静電潜像を除去する除電手段、など必要に応じて公知の方法で備えた画像形成装置であればよい。
ここで、定着手段の装置構成は例えば、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルト(定着ベルト)と、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録媒体を加熱しながら前記圧接部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録媒体体表面に定着させる画像定着装置が挙げられる。
なお、定着手段は、上記に説明した構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
また、定着手段は、押圧部材により、圧接部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
なお、この圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述した筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮して圧接部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
参考例
図4は、参考例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。参考例に係る画像形成装置は、転写搬送ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
参考例に係る画像形成装置200は、図4に示すように、ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録紙(被転写体)搬送用ベルト(転写搬送ベルト)206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録紙搬送ロール208と、定着手段209とを備えている。この記録紙(被転写体)搬送用ベルト206として、前記第1の実施形態の無端ベルトを備える。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転可能にそれぞれ像保持体である感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電手段202Y、202M、202C、202Bkと、露光手段203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像器(イエロー現像器204Y、マゼンタ現像器204M、シアン現像器204C、ブラック現像器204Bk)と、感光体クリーナー205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録紙搬送用ベルト206に対して4つ並列に、ユニット200Y、200M、200C、200Bkの順に配置されているが、ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
記録紙搬送用ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとそれぞれ接するように配置されている。記録紙搬送用ベルト206は、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkは、記録紙搬送用ベルト206の内側であって、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと、記録紙搬送用ベルト221を介してトナー画像を記録紙(被転写材)Pに転写する転写領域を形成している。
定着器209は、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送できるように配置されている。
記録紙搬送ロール208により、記録紙Pは記録紙搬送用ベルト206に搬送される。
ユニット200Yにおいては、感光体ドラム201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電手段202Yが駆動し、感光体ドラム201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201Yは、次に、露光手段203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
続いて該静電潜像は、イエロー現像器204Yによって現像される。すると、感光体ドラム201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
このトナー画像は、感光体ドラム201Yと記録紙搬送用ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録紙Pが静電的に記録紙搬送用ベルト221に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録紙Pの外周面に順次、転写される。
この後、感光体ドラム201Y上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナ205Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201Yは、次の転写サイクルに供される。
以上の転写サイクルは、ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkによってトナー画像を転写された記録紙Pは、さらに定着器209に搬送され、定着が行われる。以上により記録紙上に所望の画像が形成される。
参考例では、第1の実施形態における無端ベルトを転写搬送ベルトとして用い、記録紙などの被搬送体を搬送しているが、記録紙の搬送に限定されるものではなく、記録紙以外の被搬送体、例えば、プラスチックで出来た媒体(例えばOHPシートなど)、カード、板などの搬送にも無端ベルトをすることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
<ポリアミック酸溶液の調製>
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略する場合も有る)1977.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1.0モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。
<カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液(A−1)の調製>
ポリアミック酸溶液(PAA−1)500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製、Luvitec(R)K17:以下「PVP」と略する場合もある)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電剤としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「CB」と略する場合もある)25.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラックの分散を行い、CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
<CB分散ポリアミック酸溶液(A−2)の調製>
CB配合量を変更した以外はCB分散ポリアミック酸溶液(A−1)の調整と同様にして、CB分散ポリアミック酸組成物(A−2)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック組成物(A−2)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :20.0g
<CB分散ポリアミック酸溶液(A−3)の調整>
CB配合量を変更した以外はCB分散ポリアミック酸溶液(A−1)と同様にして、CB分散ポリアミック酸組成物(A−3)を得た。以下、その組成を示す。
−CB分散ポリアミック組成物(A−3)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :30.0g
<実施例1>
−ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を、外径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表外面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト基材(B−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−1)を、外径90mmの円筒状樹脂製パイプの外面に設置した。ベルト端部より処理液の進入を防ぐため、ベルト端部をテープにて円筒状樹脂製パイプに貼り付けた。ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、円筒状樹脂製パイプを、70℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液(水100質量部に対して水酸化ナトリウム5質量部を配合した水酸化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分間加水分解処理を施した後、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、円筒状樹脂製パイプを水酸化ナトリウム水溶液中より取り出し、純水にて洗浄を行った。塩酸水溶液(水100質量部に対して塩化水素5質量部を配合した塩酸水溶液)中に浸漬して25℃で30分間処理を行った。塩酸水溶液より取り出して、純水にて洗浄を行った。円筒状樹脂パイプよりベルトを取り外した後、120℃乾燥機中で30分間乾燥して目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
<評価>
得られたポリイミド無端ベルト(C−1)につき、以下の評価を行った。結果を表1に示す。加えて、外周面と内周面のポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造と、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比と、を上述に従って調べたところ、同一であった。なお、後述するポリイミド無端ベルト(C−2)〜(C−6)も同様の結果が得られた。
(膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルト膜厚とした。
その結果、加水分解前のポリイミド無端ベルト基材(B−1)と、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)の膜厚はそれぞれ80±5μm、80±5μm、と同じであった。
(耐折性の測定)
得られたポリイミド無端ベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。なお、ベルト膜厚については、塗工時に条件を様々制御して、80μmになるように調整した。
そして、JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
その結果、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)は、4500回と加水分解処理後もベルト用途として問題なく使用できる十分な強度としなやかさをもっていた。
(表面抵抗率)
得られたポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加して10秒後の電流値をアドバンテスト社製R8340Aを用いて測定し、その電流値からベルト外面/裏面の表面抵抗率(ρs)を算出し、その値から表面抵抗率の常用対数値(log(ρs)(logΩ))を算出した。
具体的には、表面抵抗率の測定は測定のための電極として上記円形電極を用い、JIS K6911(1995年)に従って測定することができる。
表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図5は、円形電極の概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図5に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極C及びリング状電極Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極Cとリング状電極Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω)を算出することができる。
ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極Dの内径を示し、πは円周率を示す。
表面抵抗率測定においては、電圧V(V)の印加10秒後の電流I(A)を測定する。
式(1): ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
その結果、ポリイミド無端ベルト(C−1)の加水分解処理を施した外周面の、ρsが未処理面より低くなっていた。
(イミド化率)
ポリイミド無端ベルトのイミド化率は、ポリイミド樹脂の赤外光吸収スペクトル測定により測定した。測定装置として、堀場製作所製顕微FT−IR FT−530を用い、ベルト試料の反射光スペクトルにて測定を行った。
測定された赤外吸収スペクトルで、テトラカルボン酸無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物として4,4'−ジアミノ時フェニルエーテルとからなるポリイミド樹脂の場合、1500cm-1のベンゼン環の吸光度(Abs1500)を内部標準として、これに対する1780cm-1イミド基由来のカルボニル基由来の吸光度(Abs1780)の比をもって以下に示す式(2)よりイミド化率を算出し得る。
式(2):(イミド化率)=(Abs1780)/(Abs1500)×K×100
ここで、式中、K:CBを含有しないポリアミック酸(A−1)をガラス基板上に塗布した後、120℃にて30分間乾燥した後、400℃にて1時間処理することで、イミド化反応を完終させたポリイミドフィルム試料の1780cm-1の吸光度と、1500cm-1の吸光度との比(K=Abs1780(400℃焼成)/Abs1500(400℃焼成)=0.27)を示す。なお、かかるK値が相当するポリイミド樹脂の100%イミド化物に相当する。
なお、化学組成の異なるポリイミド樹脂においても、かかる内部標準としてベンゼン環由来の吸光度と、イミド基由来の吸光度より、ポリイミド化学組成に対応するK値を求めた後、各ベルト作成条件でのイミド化率を先の例の同じく算出し得る。
そして、ポリイミド無端ベルトより100mm×100mmの試料片を切り出し、その外周面/内周面の両面のイミド化率を測定した。その後、ポリイミド無端ベルト外面を1000番サンドペーパーにより研磨する。研磨後の膜厚を測定して再度イミド化率の測定する。これを繰り返すことで、ベルト深さ方向のイミド化率のプロファイルを計測する。測定した結果を表1に示す。
その結果、ポリイミド無端ベルト(C−1)は、加水分解処理を施した外周面と、非処理面(内周面)とのイミド化率が異なり、処理面より深さ方向(膜厚方向)にイミド化率が連続して変化(増加)している様子が確認された。
(コピー画質)
富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に、中間転写ベルトとして得られたポリイミド無端ベルトを装着し、低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に5000枚出力し、5000枚面の画像について以下の基準で濃度ムラ及び斑点ディフェクトを目視で評価した。なお、各評価基準は以下の通りである。
−濃度ムラ−
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
△:濃度ムラが確認でき、やや問題のあるレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認でき、実用上問題のあるレベルである。
−斑点ディフェクト−
◎:斑点ディフェクトが確認されない。
○:斑点ディフェクトが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
△:斑点ディフェクトが確認でき、やや問題のあるレベルである。
×:斑点ディフェクトがはっきりと確認でき、実用上問題のあるレベルである。
その結果、加水分解後のポリイミド無端ベルト(C−1)は、濃度ムラ;◎、斑点ディフエクト;◎であった。
<実施例2>
−ポリイミド無端ベルト(C−2)の製造−
CB分散ポリアミック酸溶液(A−1)を用い、表1に示すように焼成時間を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−2)を作製した。これを用いた以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−2)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3〜4>
ポリイミド無端ベルト基材(B−1)を用い、表1〜2に示すように加水分解処理の時間を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト(C−3)、(C−4)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1〜2に示す。
<実施例5〜6>
CB分散ポリアミック酸溶液(A−2)、(A−3)を用いた以外は、ポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト基材(B−3)、(B−4)作製した。これを用いた以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−5)、(C−6)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。但し、ポリイミド無端ベルト(C−6)については、表2に示すように加水分解処理の時間を変更した。
<実施例7〜8>
−ポリイミド無端ベルト(C−7)、(C-8)の製造−
ポリイミド無端ベルト基材(B−1)を用い、表3に示すように加水分解処理の条件を変更した以外は、ポリイミド無端ベルト(C−1)と同様にして、それぞれポリイミド無端ベルト(C−7)、(C−8)を得て、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
<実施例9>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−8)の製造、積層化されたポリイミド無端ベルト(C-9)の製造:積層ベルト−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を用いて、膜厚が50μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−8)を作製した。
さらに、その表面に表面層として30μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)塗工加工して、表4に示す焼成条件で焼成することで積層化されたポリイミド無端ベルト(C−9)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(C−9)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例1〜3>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4):単層ベルト−
実施例1、5、6で作製した単層ポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4)につき、実施例1と同様にして評価した。結果を表5に示す。
<比較例4>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−5)の製造、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)の製造:積層ベルト−
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を用いて、膜厚が60μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−5)を作製した。
さらに、その表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−3)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−5)、ポリイミド無端ベルト(Y−1)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例5>
上記CB分散ポリアミック酸組成物(A−2)を用いて、膜厚が60μmとなること以外はポリイミド無端ベルト基材(B−1)と同様にしてポリイミド無端ベルト基材(B−6)を作製した。
さらに、その表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−2)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−6)、ポリイミド無端ベルト(Y−2)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例6>
上記ポリイミド無端ベルト基材(B−6)表面に表面層として20μm膜厚になるようにCB分散ポリアミック酸組成物(A−3)塗工加工して、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−3)を作製した。
得られたポリイミド無端ベルト(Y−3)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
<比較例7>
−ポリイミド無端ベルト基材(B−7)の製造−
内面に離型剤処理を施した内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型を用意し、実施例1で得られたCB分散ポリアミック酸組成物(A−1)を、内面に均一に塗布した。
次に、金型を室温で100rpmの速度で30分回転させることで遠心力により塗膜中のカーボンブラック表面(外面)偏在化を図った。しかる後、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト基材(B−7)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト基材(B−7)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 2008145823
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上記結果から、単層構造からなるポリイミド無端ベルト基材(B−1)、(B−3)、(B−4)は、イミド化率がベルト深さ方向で同じであり、良好な膜厚均一性、耐折れ性、表面抵抗値の電圧依存性を示すものの、ポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)に比べ、コピー画質が劣る傾向であった。
また、積層化されたポリイミド無端ベルト(Y−1)、(Y−2)、(Y−3)は、表面層の塗工の均一性がとれず、膜厚均一性の点で劣る結果であった。膜厚の不均一なポリイミド無端ベルト(Y−1)、(Y−2)、(Y−3)は、膜厚の薄い部分や積層界面部が破壊基点となってしまい、MIT耐揉疲労試験機MIT−DAによる折り曲げ回数が小さくなる傾向が見られた。また、電子写真装置に搭載した際に、界面部に電荷が蓄積するため、またに動作時のベルト/紙と間に生じる剥離放電現象で発生するために、濃度ムラ、斑点ディフェクトともポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)より劣る傾向が見られた。
また、得られたポリイミド無端ベルト基材(B−7)は、表面部にカーボンブラックが多くなるため、内周面に比べ外周面の表面抵抗値が小さくなるものの、面内均一性が劣る傾向が見られた。また、ベルト取扱い時に表面部にキズが生じやすくこれが電子写真装置搭載時に欠陥となって表れてしまった。
以上から、本実施例に係るポリイミド無端ベルト(C−1)〜(C−6)は、ポリイミド無端ベルト基材の外周面を加水分解処理を行った単層構造であり、ベルトとしての強度も高く、中間転写ベルトとしての所定の抵抗値を備え、電子写真装置に搭載した際に、濃度ムラ、斑点ディフェクトとも低減されるのがわかる。
従って、本実施例のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして使用した場合、動作時のベルト/紙と間に生じる剥離放電現象で発生するが電荷を速やかに解消することができることがわかる。そのため、剥離放電現象の繰り返しによって生じる経時的なベルト特性劣化を抑制することができ、かつ優れた印字画質を得られることがわかる。また、ベルト表面に静電気の蓄積を防ぐことで、塵などの付着を抑えて印字トラブルの防止を図ることができ、欠陥もない優れた複写画質を発現し得ることがわかる。
第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。 第1実施形態に係る無端ベルトにおける膜厚方向のポリイミド樹脂のイミド化率分布を示す概念図である。 第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 参考例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
符号の説明
52 無端ベルト
101 感光体ドラム
102 中間転写体
103 記録媒体
105〜108 現像器
109 コロナ放電器
113 給紙部
115 搬送ベルト
116 クリーニング装置
117 ロール
120 2次転写ロール
121〜124 転写バッフル
126 送りローラ

Claims (21)

  1. 導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なることを特徴とする無端ベルト。
  2. 外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  3. 外周面と内周面とで、表面抵抗率が異なることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  4. 外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  5. 単層構造であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  6. 前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  7. 前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  8. 前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  9. 導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なるポリイミド無端ベルトを有することを特徴とする中間転写ベルト。
  10. 外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  11. 外周面と内周面とで、表面抵抗率が異なることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  12. 外周面における表面抵抗率が前記内周面より低いことを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  13. 単層構造であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  14. 前記外周面と前記内周面とで、前記ポリイミド樹脂を構成するテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の分子構造が同一であると共に、当該テトラカルボン酸残基及びジアミン化合物残基の組成比が同一であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  15. 前記外周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率と、前記内周面における前記ポリイミド樹脂のイミド化率との差が5%以上20%以下であることを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  16. 前記外周面又は前記内周面におけるポリイミド樹脂のイミド化率が、ベルト面からベルト膜厚方向に向かって連続して変化してなる領域を有することを特徴とする請求項9に記載の中間転写ベルト。
  17. 導電剤とポリイミド樹脂とを含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なるポリイミド無端ベルトを有する中間転写ベルトを有することを特徴とする画像形成装置。
  18. ポリイミド樹脂を含み、外周面と内周面とでポリイミド樹脂のイミド化率が異なることを特徴とする無端ベルト。
  19. 金型にポリイミド前駆体を塗布して塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を乾燥後、焼成してポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、
    前記ポリイミド樹脂皮膜の一方の面に、加水分解処理を施す工程と、
    を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  20. 前記加水分解処理を施す工程が、前記ポリイミド樹脂皮膜の一方の面にアルカリ性溶液を接触させる工程である請求項19に記載の無端ベルトの製造方法。
  21. 前記加水分解処理を施す工程の後、さらに、加水分解処理を施した面に酸性溶液を接触させる工程を有することを特徴とする請求項19に記載の無端ベルトの製造方法。
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