JP2008105251A - 透明積層フィルムおよび透明積層体 - Google Patents

透明積層フィルムおよび透明積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】従来に比較して、耐久性に優れた透明積層フィルムを提供すること。
【解決手段】透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有する銀系薄膜とが積層されており、銀系薄膜の少なくとも一方面には、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されている透明積層フィルムとする。銀系薄膜は、0.01〜5原子%の範囲内でビスマス(Bi)を含有していると良い。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明積層フィルムおよび透明積層体に関し、さらに詳しくは、ディスプレイ表示やタッチパネルなどの透明電極、電磁波シールド、熱線カットなどの用途に好適に用いることが可能な透明積層フィルムおよび透明積層体に関するものである。
従来、例えば、透明電極、電磁波シールド、熱線カットなどの用途に用いることが可能な透明積層フィルムとして、透明高分子フィルム上に金属酸化物薄膜と金属薄膜とを交互に積層した、いわゆる多層膜タイプと呼ばれる透明積層フィルムが知られている。
例えば、特許文献1には、透明高分子よりなるシート状基材上に金属酸化物層と金属層とを交互に積層した選択光透過性積層体において、金属層として、銀層の両側に金属チタン層を形成したものを用いる点が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、基体上に、酸化物層と金属層とが交互に積層された多層構造の導電膜を有し、上記金属層が、Agを主成分とし、Biを含有しているプラズマディスプレイ用電磁波遮蔽シートが開示されている。
特公昭61−34384 特開2005−72255
しかしながら、従来知られる透明積層フィルムは、以下の点で問題があった。
すなわち、透明高分子フィルム上に金属酸化物薄膜と金属薄膜とを交互に積層した透明積層フィルムは、特に、加熱環境下に長期間曝されると、性能の劣化が生じ、耐久性が低下するといった問題があった。この原因の多くは、金属薄膜を構成する銀などの金属が、金属酸化物薄膜中に拡散するためである。
この点、特許文献1の技術、特許文献2の技術を適用しても、十分な耐久性を有する透明積層フィルムが得られていないのが現状である。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来に比較して、耐久性に優れた透明積層フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有する銀系薄膜とが積層されており、上記銀系薄膜の少なくとも一方面には、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されていることを要旨とする。
ここで、上記銀系薄膜は、0.01〜5原子%の範囲内でビスマス(Bi)を含有していることが好ましい。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜および上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物およびセリウムの酸化物から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜および上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、同一種であることが好ましい。
とりわけ、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜および上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物として、チタンの酸化物を好適に用いることができる。
この場合、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜における、チタンの酸化物の酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oは、1.0/4.0〜1.0/0.5の範囲内にあることが好ましい。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜の膜厚は、1.0〜20.0nmの範囲内にあることが好ましい。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、ゾル−ゲル法により形成されており、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜は、反応性スパッタリング法により形成されていることが好ましい。
一方、本発明に係る透明積層体は、透明支持基体の少なくとも一方面に、粘着剤層を介して、上記透明積層フィルムが積層されていることを要旨とする。
本発明に係る透明積層フィルムは、銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有する銀系薄膜を有している。そのため、銀系薄膜を構成する銀が凝集したり、有機分を含有する金属酸化物薄膜中へ銀が拡散したりし難くなる。これは、銀系薄膜の表面に、ビスマス酸化物薄膜が生成するためであると推察される。
そして、本発明に係る透明積層フィルムでは、上記銀系薄膜の少なくとも一方面に、さらに、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されている。
そのため、これによっても、有機分を含有する金属酸化物薄膜中への銀の拡散を抑制することができる。また、この金属酸化物薄膜は、当初より酸化物の形であることから、使用時に酸化され難く、初期の可視光透過率、表面抵抗値を維持しやすい。また、この金属酸化物薄膜は、有機分を含有する金属酸化物薄膜と銀系薄膜との密着性の向上にも寄与する。
したがって、本発明に係る透明積層フィルムによれば、銀系薄膜そのものによる耐久性の向上と、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜による耐久性の向上との相乗効果により、従来に比較して、優れた耐久性を発揮することができる。とりわけ、加熱・湿熱環境下に曝された場合に、その効果も大きくなる。
ここで、銀系薄膜が、0.01〜5原子%の範囲内でビスマス(Bi)を含有している場合には、耐久性、製造コストとのバランスに優れる。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜と、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜とをそれぞれ構成する金属酸化物が、同一種である場合には、両薄膜の密着性が向上し、耐久性を向上させる上で有利である。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜と、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜とをそれぞれ構成する金属酸化物が、上述した酸化物から選択される1種または2種以上よりなる場合には、可視光に対する透明性が良好である。とりわけ、チタンの酸化物を選択した場合には、高い屈折率を得やすくなる。
この場合、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜における、チタンの酸化物の酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oが、1.0/4.0〜1.0/0.5の範囲内にある場合、また、その膜厚が、1.0〜20.0nmの範囲内にある場合には、銀の拡散抑制効果に優れる。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜が、ゾル−ゲル法により形成されている場合には、原料、加工、設備投資などについてコスト的に有利である。加えて、薄膜中に有機分を含有させやすく、膜に柔軟性を付与しやすい利点もある。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が、反応性スパッタリング法により形成されている場合には、緻密で、銀の拡散抑制効果が高い膜質を得やすくなる。
一方、本発明に係る透明積層体は、上記透明積層フィルムを有しているので、耐久性に優れ、高い信頼性を有する。
本実施形態に係る透明積層フィルム(以下、「本フィルム」という。)、透明積層体(以下、「本積層体」という。)について詳細に説明する。
1.本フィルム
1.1 本フィルムの概略形態など
本フィルムは、透明高分子フィルムと、有機分を含有する金属酸化物薄膜(以下、「MO」と略表記することがある。)と、銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有する銀系薄膜(以下、「Ag−Bi」と略表記することがある。)と、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも厚みの薄い金属酸化物薄膜(以下、「B」と略表記することがある。)とを備えている。
本フィルムにおいて、上記各薄膜は、透明高分子フィルムの何れか一方面に積層されていても良いし、透明高分子フィルムの両面に積層されていても良い。
ここで、本フィルムにおいて、金属酸化物薄膜(MO)と銀系薄膜(Ag−Bi)とは、交互に積層されている。また、金属酸化物薄膜(B)は、銀系薄膜(Ag−Bi)の何れか一方面、または、銀系薄膜(Ag−Bi)の両面に形成されている。
したがって、本フィルムが有する積層構造の基本単位としては、具体的には、例えば、透明高分子フィルム側から、MO│B/Ag−Bi/B、MO│Ag−Bi/B、MO│B/Ag−Biといった第1基本単位、または、透明高分子フィルム側から、B/Ag−Bi/B│MO、Ag−Bi/B│MO、B/Ag−Bi│MOといった第2基本単位などを例示することができる。
本フィルムは、第1基本単位から選択される1または2以上の基本単位を単数または複数繰り返し積層した積層構造を有していても良いし、第2基本単位から選択される1または2以上の基本単位を単数または複数繰り返し積層した積層構造を有していても良い。
銀系薄膜を構成する銀は、透明高分子フィルム側とは反対側に拡散しやすい傾向が見られる。そのため、第1基本単位であれば、MO│B/Ag−Bi/B、MO│Ag−Bi/Bの単位を好適に選択することができる。また、第2基本単位であれば、B/Ag−Bi/B│MO、Ag−Bi/B│MOの単位を好適に選択することができる。
とりわけ、銀の拡散を抑制しやすいなどの観点から、第1基本単位であれば、MO│B/Ag−Bi/Bの単位を、第2基本単位であれば、B/Ag−Bi/B│MOの単位を最も好適に選択することができる。
なお、第1基本単位を用いる場合には、銀系薄膜を劣化し難くする、可視光に対する透明性を確保しやすいなどの観点から、透明高分子フィルムから最も遠い表面に、別途、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を積層するのが好ましい。
上記積層構造の積層数は、各薄膜の材料や膜厚、用途によって要求される光学特性、導電性などを考慮して異ならせることができる。上記積層数としては、2〜10層などが好ましく、3層、5層、7層、9層などの奇数層がより好ましい。
なお、上記積層数では、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を1層、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(B)含めた銀系薄膜(Ag−Bi)を1層として数えている。
本フィルムにおいて、各薄膜は、一度に形成されたものであっても良いし、分割形成されたものであっても良い。また、積層構造中に含まれる各薄膜のうち、一部または全部が分割形成されていても良い。各薄膜が、複数の分割層よりなる場合、その分割数は、各薄膜ごとに同じであっても良いし、異なっていても良い。なお、分割層は積層数として数えず、複数の分割層が集合して形成された1つの薄膜を1層として数える。
本フィルムにおいて、各薄膜の組成または材料は、それぞれ同一の組成または材料から形成されていても良いし、異なる組成または材料から形成されていても良い。なお、この点は、各薄膜が複数の分割層よりなる場合も同様である。
また、各薄膜の膜厚は、ほぼ同一であっても良いし、各膜ごとに異なっていても良い。
本フィルムは、概略、上述した積層構造を有している。以下、本フィルムが備える透明高分子フィルム、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)、銀系薄膜(Ag−Bi)、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(B)についてより詳細に説明する。
1.2 透明高分子フィルム
本フィルムにおいて、透明高分子フィルムは、上記積層構造を形成するためのベースとなるものである。その材料としては、可視光領域において透明性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成できるものであれば、何れのものでも用いることができる。
透明高分子フィルムの材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマーなどの高分子材料を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
これらのうち、とりわけ、透明性、耐久性、加工性などに優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマーなどを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
また、上記透明高分子フィルムの厚みは、用いる材料などを考慮して種々調節することができる。その好ましい下限値として、具体的には、例えば、10μm、25μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、500μm、250μmなどを例示することができる。
1.3 金属酸化物薄膜(MO)
本フィルムにおいて、金属酸化物薄膜(MO)は、可視光領域において透明性を有し、主として高屈折率層として機能するものである。ここで、高屈折率とは、633nmの光に対する屈折率が1.7以上ある場合をいう。
上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
上記金属酸化物としては、とりわけ、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、酸化チタン(IV)(TiO)、チタン酸塩、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
ここで、上記金属酸化物薄膜(MO)は、主成分として金属酸化物を含んでいるが、それ以外にも、有機分を含有している。この有機分を含有することで、本フィルムの柔軟性をより向上させることができる。この種の有機分としては、具体的には、例えば、金属酸化物薄膜(MO)の形成材料に由来する成分などを例示することができる。
上記有機分としては、より具体的には、例えば、上述した金属酸化物を構成する金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどといった有機金属化合物(その分解物なども含む)などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属酸化物薄膜(MO)中に含まれる有機分の含有量としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、3、5、10重量%などを例示することができる。
一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、30、20、15重量%などを例示することができる。
なお、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。
上記金属酸化物薄膜(MO)は、必要な屈折率を確保でき、可視光透過性などに悪影響を及ぼさない範囲内であれば、上記主成分や上記有機分以外にも、他の成分を含んでいても良い。
例えば、上記金属酸化物薄膜(MO)の形成時に使用した各種の添加剤、不可避不純物などの物質を1種または2種以上含んでいても良い。上記添加剤としては、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する化合物(後述する)などを例示することができる。
また、上記金属酸化物薄膜(MO)の膜厚は、透明性や色調などを考慮して種々調節することができる。上記金属酸化物薄膜(MO)の膜厚としては、具体的には、例えば、その好ましい下限値として、18nm、20nm、22nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、150nm、100nmなどを例示することができる。
以上のような構成を有する上記金属酸化物薄膜(MO)は、液相法により好適に形成することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れている。
上記液相法としては、有機分を残存させやすいなどの観点から、ゾル−ゲル法を好適に利用することができる。
上記ゾル−ゲル法としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の有機金属化合物を含有するコーティング液を層状にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜(MO)の前駆体膜を形成した後、この前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させ、有機金属化合物を構成する金属の酸化物を合成するなどの方法を例示することができる。これによれば、金属酸化物を主成分として含み、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を形成することができる。以下、上記方法について詳細に説明する。
上記コーティング液は、上記有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。この際、有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量としては、その好ましい上限値として、具体的には、例えば、20、15、10重量%などを例示することができる。これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値として、具体的には、例えば、1、3、5重量%などを例示することができる。
一方、上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記溶媒量としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、5、10倍量などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、50、30、20倍量などを例示することができる。
上記溶媒量が50倍量より多くなると、一回のコーティングで形成できる層厚が薄くなり、所望の厚みを得るために多数回のコーティングが必要となる傾向が見られる。一方、5倍量より少なくなると、層厚が厚くなり過ぎ、有機金属化合物の加水分解・縮合反応が十分に進行し難くなる傾向が見られる。したがって、上記溶媒量は、これらを考慮して選択すると良い。
また、上記コーティング液中には、ゾル−ゲル法による加水分解が促進され、高屈折率化が図りやすくなるなどの観点から、必要に応じて水が含まれていても良い。
この場合、上記コーティング液中に占める水分含有量は、好ましくは1重量%以上あると良い。
もっとも、上記水分含有量を過度に多くしても、屈折率の向上効果も頭打ちになるし、コーティングもやり難くなるなどの傾向が見られる。そのため、上記水分含有量の好ましい上限値として、具体的には、例えば、50、40、30、20、10重量%などを例示することができる。
なお、上記水分含有量は、カールフィッシャー水分計(容量滴定方式)により測定される値である。すなわち、カールフィッシャー水分計を用い、被測定対象であるコーティング液を脱水溶剤中に溶解または分散した後、カールフィッシャー試薬(滴定剤)にて滴定すれば、コーティング液中に占める水分含有量を求めることができる。
上記カールフィッシャー水分計は、例えば、京都電子工業(株)などにより上市されている。また、脱水溶剤、カールフィッシャー試薬についても、例えば、三菱化学(株)などにより、アクアミクロン(登録商標、以下省略)脱水溶剤GEX、アクアミクロン滴定剤SS−Zなどとして上市されている。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングされたコーティング液を乾燥する場合、公知の乾燥装置などを用いて乾燥させれば良く、この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線照射、電子線照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を透明高分子フィルムに与え難いからである。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
この際、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する紫外線の光量は、前駆体膜を主に形成している有機金属化合物の種類、コーティング層の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する紫外線の光量が過度に小さすぎると、金属酸化物薄膜(MO)の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する紫外線の光量が過度に大きすぎると、紫外線照射の際に生じる熱により透明高分子フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する紫外線の光量としては、具体的には、例えば、測定波長300〜390nmのとき、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、300mJ/cm、500mJ/cmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、8000mJ/cm、5000mJ/cmなどを例示することができる。
なお、前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、紫外線照射を用いる場合、上述したコーティング液中に、有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め紫外線吸収性キレートが形成されたところに紫外線照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜(MO)の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合としては、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、例えば、0.1〜2倍モルの範囲などを例示することができる。
1.4 銀系薄膜
本フィルムにおいて、銀系薄膜は、主として導電層として機能する。
ここで、上記銀系薄膜は、銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有している。
上記銀系薄膜は、銀(Ag)、ビスマス(Bi)以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Bi系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを1種または2種以上含有していても良い。
上記ビスマスの割合としては、銀とビスマスとの総量に対して、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.01原子%、0.05原子%などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、5原子%、2原子%などを例示することができる。
上記銀系薄膜が、上記範囲内のビスマスを含んだ銀−ビスマス系合金(Ag−Bi系合金)よりなる場合には、耐久性、製造コストとのバランスに優れる利点があるからである。
また、ビスマス含有量が0.01原子%より少なくとなると、その添加効果が小さくなる傾向が見られる。一方、ビスマス含有量が5原子%を越えると、例えば、薄膜形成時に用いるスパッタターゲットが製造し難くなり、入手も難しくなるなどの傾向が見られる。したがって、これらも考慮して、ビスマス含有量を選択すると良い。
なお、上記ビスマスの割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。
上記銀系薄膜の膜厚は、表面抵抗と可視光透過率とのバランスなどを考慮して種々調節することができる。銀系薄膜の膜厚が過度に厚すぎると、可視光透過率が低下する傾向が見られる。一方、その膜厚が過度に薄すぎると、表面抵抗値が増大する傾向が見られる。したがって、上記銀系薄膜の膜厚の選択には、これらに留意すると良い。
上記銀系薄膜の膜厚としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、5nm、10nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、30nm、20nmなどを例示することができる。
ここで、上記銀系薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD、プラズマCVDなどといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法、導電性ペーストを塗工し、焼結する方法などを例示することができる。上記積層構造中の各銀系薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
より具体的には、例えば、真空蒸着法を用いる場合には、蒸発源として所定の割合のBiを含むAg−Bi系合金を用い、抵抗加熱、レーザ加熱、電子ビーム加熱などにより、Ag−Bi系合金を加熱蒸着させて上記銀系薄膜を形成すれば良い。
また、例えば、スパッタリング法を用いる場合には、ターゲットとして所定の割合のBiを含むAg−Bi系合金を用いるとともに、スパッタリングガスとしてアルゴン、ネオンなどの不活性ガスを用い、ターゲットと透明高分子フィルムとの間に直流(DC)電圧(DCスパッタリング法)または高周波(RF)電圧(RFスパッタリング法)を印加し、銀系薄膜を形成すれば良い。成膜速度を速くする観点から、直流マグネトロンスパッタリング法や高周波マグネトロンスパッタリング法を用いても良い。
また、例えば、イオンプレーティング法を用いる場合には、蒸発源として所定の割合のBiを含むAg−Bi系合金を用い、真空蒸着装置内に低圧ガスを導入し電界をかけてプラズマを発生させ、蒸発源からの蒸発粒子をイオン化しながら蒸着させ、銀系薄膜を形成すれば良い。
1.5 金属酸化物薄膜(B)
本フィルムにおいて、金属酸化物薄膜(B)は、主として、上記銀系薄膜を構成する銀が、金属酸化物薄膜(MO)中へ拡散するのを抑制する機能を有している。また、銀系薄膜と金属酸化物薄膜(MO)との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与する。
なお、金属酸化物薄膜(B)は、連続的に層状に形成されていることが好ましいが、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
上記金属酸化物薄膜(B)は、主として金属酸化物より形成されている。上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、上記金属酸化物薄膜(B)は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
この際、上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物は、上記金属酸化物薄膜(MO)との密着性を一層向上させやすいなどの観点から、上記金属酸化物薄膜(MO)を構成する金属酸化物と同一種であると良い。
上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物としては、とりわけ、チタンの酸化物を好適に用いることができる。
ここで、上記金属酸化物薄膜(B)は、上記金属酸化物薄膜(MO)よりも膜厚が薄い。これは、銀系薄膜を構成する銀の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、本フィルムの製造コストの低減にも寄与することができる。
上記金属酸化物薄膜(B)の膜厚としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、1.0nm、1.5nm、2.0nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、16.0nm、13.0nm、10.0nm、8.0nmなどを例示することができる。
上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物として、チタンの酸化物を用いる場合、チタンの酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oとしては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、1.0/4.0、1.0/3.8、1.0/3.5、1.0/3.0、1.0/2.8などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、1.0/0.5、1.0/0.7、1.0/1.0、1.0/1.2、1.0/1.5、1.0/2.0などを例示することができる。Ti/O比がこの範囲内にあれば、膜質、界面の膜表面形状などに優れることから、銀系薄膜を構成する銀の拡散を抑制しやすいからである。
上記Ti/O比は、当該膜の組成から算出することができる。当該膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
具体的な組成分析方法について説明すると、先ず、超薄切片法(ミクロトーム)などを用いて、分析対象となる当該膜を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製する。次いで、断面方向から積層構造と当該膜の位置を、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認する。次いで、EDX装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となる当該膜の膜厚中央部近傍に入射させる。試験片表面から入射した電子は、ある深さまで入り込み、各種の電子線やX線を発生させる。この際の特性X線を検出して分析することで、当該膜の構成元素分析を行うことができる。
本フィルムにおいて、上記金属酸化物膜(B)の膜厚、Ti/O比は、基本的には、上記好ましい範囲内にあれば良いが、本フィルムの用途に応じて、適宜最適な範囲に設定しても良い。
すなわち、本フィルムでは、金属酸化物膜(B)の膜厚が厚くなるにつれて、銀系薄膜を構成する銀の拡散による移動距離が長くなるので、耐久性、耐熱性が増加する傾向が見られる。また、金属酸化物膜(B)の膜厚が薄くなるにつれて、銀系薄膜を構成する銀の拡散による移動距離が短くなるので、耐久性、耐熱性が減少する傾向が見られる。
一方、上記Ti/O比が大きくなるにつれて、金属チタンに近づくので、金属酸化物膜(B)が緻密化し、銀系薄膜を構成する銀が拡散し難くなって、耐久性、耐熱性が増すが、透明性が減少する傾向が見られる。
したがって、上記金属酸化物膜(B)の膜厚、Ti/O比は、本フィルムの用途に応じて要求される耐久性、耐熱性、透明性などを考慮し、上記範囲内から選択すると良い。
具体的には、例えば、表示装置など、画質向上の観点などから、とりわけ高い透明性などが要求される用途に本フィルムを適用する場合には、上記金属酸化物膜(B)の膜厚は、好ましくは1.0〜10.0nm、より好ましくは2.0〜8.0nmの範囲内から選択すると良い。また、上記Ti/O比は、好ましくは1.0/4.0〜1.0/1.0、より好ましくは1.0/3.5〜1.0/1.5、さらにより好ましくは1.0/3.0〜1.0/1.5、最も好ましくは1.0/2.8〜1.0/2.0の範囲内から選択すると良い。
他にも例えば、熱線カット機能を有する窓ガラスなど、表示装置ほどの透明性は必要でないが、より高い耐久性、耐熱性などが要求される用途に本フィルムを適用する場合には、上記バリア膜の膜厚は、好ましくは1.0〜20.0nm、より好ましくは2.0〜15.0nmの範囲内から選択すると良い。また、上記Ti/O比は、好ましくは1.0/4.0〜1.0/0.5、より好ましくは1.0/3.5〜1.0/1.0、さらにより好ましくは1.0/3.0〜1.0/1.2、最も好ましくは1.0/2.8〜1.0/1.5の範囲内から選択すると良い。
本フィルムにおいて、上記金属酸化物膜(B)は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法により好適に形成すると良い。
上記気相法としては、具体的には、例えば、上述した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD、プラズマCVDなどといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。もっとも、ここでは、上記金属酸化物を構成する金属をターゲット材料などに用いることになる。
この際、上記金属酸化物膜(B)は、主に金属酸化物より形成されているので、上記各薄膜形成法による成膜時には、その雰囲気中に酸素を含むガスを導入する必要がある。
なお、上記積層構造中に含まれる各金属酸化物膜(B)は、これら気相法のうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、上述したスパッタリング法を好適に用いることができる。
但し、スパッタリング法を用いる場合には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら金属酸化物薄膜(B)を形成することになる(反応性スパッタリング法)。
また、反応性スパッタリング法を用いて、例えば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得る場合、雰囲気中の酸素濃度(不活性ガスに対する酸素を含むガスの体積割合)は、上述した膜厚範囲を考慮して最適な割合を適宜選択すれば良い。
具体的には、膜厚を厚くするには、金属チタンターゲットへの投入電力、雰囲気中の酸素濃度などを増やせば良く、一方、膜厚を薄くするには、同投入電力、同酸素濃度などを減らせば良い。したがって、上述した最小膜厚値を選択した場合には、酸素濃度の好ましい下限値として、具体的には、例えば、2vol%などを例示することができる。一方、上述した最大膜厚値を選択した場合には、酸素濃度の好ましい上限値として、具体的には、例えば、35vol%などを例示することができる。酸素濃度がこの範囲にあれば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得ることができる。
なお、本フィルムが有する積層構造において、上記金属酸化物薄膜(MO)、および金属酸化物薄膜(B)の各材料は、必要に応じて上述したものから適宜選択して用いることができる。最も好適な膜材料の組み合わせとしては、上記金属酸化物薄膜(MO)および金属酸化物薄膜(B)における金属酸化物として、チタンの酸化物を好適に選択することができる。透明性、拡散抑制効果などに優れるなど、特性バランスが良いからである。
1.6 各薄膜の積層方法
上記積層構造を有する本フィルムを製造するにあたり、上記金属酸化物薄膜(MO)の形成方法と、銀系薄膜(Ag−Bi)の形成方法と、上記金属酸化物薄膜(B)の形成方法とを適宜組み合わせ、透明高分子フィルムの表面に、金属酸化物薄膜(MO)、銀系薄膜(Ag−Bi)、金属酸化物薄膜(B)を積層していく方法としては、具体的には、例えば、次のような方法を例示することができる。以下、透明高分子フィルムの表面に、MO│B/Ag−Bi/B│MOの積層構造を形成する場合を用いて説明する。
先ず、透明高分子フィルムの表面上に、上述したゾル−ゲル法などの液相法により金属酸化物薄膜(MO)を形成した後、これをロールに巻き取る。
次に、このロールを、上述した反応性スパッタリング法などの気相法による薄膜形成装置の成膜室内に装着し、ロールを繰り出しながら、酸素を含む雰囲気中で、金属酸化物薄膜(MO)の表面上に金属酸化物薄膜(B)を形成する。次いで、このフィルム体を他の成膜室に移動させ、引き続き、酸素を実質的に含まない雰囲気中で、金属酸化物薄膜(B)の表面上に銀系薄膜(Ag−Bi)を形成する。次いで、このフィルム体を他の成膜室に移動させ、上記と同様にして、酸素を含む雰囲気中で銀系薄膜(Ag−Bi)の表面上に金属酸化物薄膜(B)を形成し、これをロールに巻き取る。
次に、このロールを繰り出しながら、上記と同様にして、金属酸化物薄膜(B)の表面上に金属酸化物薄膜(MO)を形成し、これをロールに巻き取る。
基本的には、このような操作を行えば、本フィルムを連続的に製造することができる。なお、他の基本単位を含む積層構造を得るには、上記方法に準じて行えば良い。また、各薄膜を複数の分割層より形成する場合には、各操作を分割数だけ繰り返し行えば良い。
2.本積層体
本積層体は、本フィルムを用いている。すなわち、本積層体は、透明支持基体の少なくとも一方面に、粘着剤層を介して、本フィルムを積層した構成を有している。この際、本積層体において、本フィルムは、その積層構造面側が透明支持基体側となるように積層されていても良いし、透明高分子フィルム面側が透明支持基体側となるように積層されていても良い。
ここで、透明支持基体の材料は、透明性に優れ、十分な機械的強度を有するものであれば、特に限定されることなく使用することができる。具体的には、例えば、半強化ガラス、強化ガラスなどのガラスや、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの高分子材料などを例示することができる。例えば、本積層体に寸法安定性や強度などを付与したい場合などにはガラスなどを、本積層体の軽量化を図りたい場合などには高分子材料などを選択することができる。
また、透明支持基体の形状は、板状などの平面状が好ましい。また、透明支持基体の厚みは、機械的強度や剛性などを考慮して、種々調節することができる。一般的には、1.0〜5.0mmの範囲などを例示することができる。
また、粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。このうち、透明性および耐熱性に優れるなどの観点から、アクリル系粘着剤などを好適に用いることができる。また、粘着剤の形態としては、シート状、液状などを例示することができる。
また、粘着剤の厚みは、特に限定されるものではなく、一般的には、5〜100μmの範囲などを例示することができる。
そして、例えば、シート状の粘着剤を用いて本積層体を製造する場合には、透明支持基板および/または本フィルムにシート状の粘着剤を貼り付けた後、両者をラミネートするなどして貼り合わせれば良い。また、液状の粘着剤を用いて本積層体を製造する場合には、例えば、透明支持基板および/または本フィルムに粘着剤を塗布して両者を貼り合わせた後、室温に放置したり、加熱したりするなどして粘着剤を硬化させれば良い。
なお、液状の粘着剤を塗布する塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法などの塗布方法が挙げられ、粘着剤の種類、粘度、塗布量などを考慮して適宜選択することができる。
また、光学特性を著しく損なわない限度内で、必要に応じて、反射防止機能、防眩機能、衝撃吸収機能、耐環境機能、調色機能などの各種の機能を有する機能性フィルムを、本積層体の片面または両面に、上述した粘着剤層を介して1つまたは2つ以上さらに貼り合わせても良い。
3.本フィルム、本積層体の用途
本フィルム、本積層体の用途としては、具体的には、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのディスプレイ表示電極、タッチパネル電極、電磁波シールド、熱線カット、有機ELなどのガス(O、HO等)バリアフィルムなどの各種の用途を例示することができる。
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
例えば、本フィルム、本積層体の積層構造の最表面に、さらに、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂などよりなる透明高分子層を1または2以上積層しても良い。このような透明高分子層を設けた場合には、耐水性が向上するなど、外部環境からの影響を受け難くなり、長期耐久性に優れるなどの利点がある。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下における屈折率は、波長633nmのときの値である。
1.透明積層フィルム
初めに、実施例1〜16および比較例1〜3に係る透明積層フィルムとして、透明高分子フィルムの一方面に、7層の各種薄膜を積層した積層構造を有する各透明積層フィルムを作製した。また、実施例17に係る透明積層フィルムとして、透明高分子フィルムの一方面に、3層の各種薄膜を積層した積層構造を有する透明積層フィルムを作製した。
表1〜5に、後述する手順により作製した各透明積層フィルムの詳細な膜構成および膜厚を示す。表6に、各透明積層フィルム作製時における、反応性スパッタリング法によるチタン酸化物薄膜(B)(但し、比較例2は、スパッタリング法による金属チタン薄膜)の成膜条件を示す。表7に、各透明積層フィルム作製時における、スパッタリング法による銀系薄膜(Ag−Bi)(但し、比較例1および比較例2は、スパッタリング法による純銀薄膜)の成膜条件を示す。
Figure 2008105251
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以下、実施例1〜17および比較例1〜3に係る透明積層フィルムの具体的な作製手順を示す。
(実施例1〜16)
先ず、以下の手順により、チタン酸化物薄膜(MO)の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、有機チタン化合物を含むコーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75重量%/3.38重量%/59.87重量%/30.00重量%とした。
次に、透明高分子フィルムとして、易接着層が片面に形成された厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)を用い、このPETフィルムの易接着層面側とは反対側の面(PET面)側に、1層目として、TiO薄膜を以下の手順により成膜した。
すなわち、PETフィルムのPET面側に、ダイレクトグラビアコーターを用いて、線速3m/minで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させ、TiO薄膜の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を1.5秒間照射した。これによりPETフィルム上に、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(膜厚35nm、屈折率1.9)が形成されたロール状のサンプルを作製した。
なお、この薄膜中に含まれる有機分の含有量を、X線光電子分光法(XPS)により測定したところ、5wt%であった。
次に、2層目として、1層目のTiO薄膜上に、チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)を以下の手順により成膜した。なお、成膜条件は、上記表に示した通りである。
すなわち、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、先ず下側のチタン酸化物薄膜(B)を反応性スパッタにより成膜した。次いで、この下側のチタン酸化物薄膜(B)上に銀系薄膜(Ag−Bi)をスパッタリングにより成膜した。次いで、この銀系薄膜(Ag−Bi)上に上側のチタン酸化物薄膜(B)を成膜した。
次に、3層目として、2層目の上側のチタン酸化物薄膜(B)上に、TiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目と同じ成膜手順を2回繰り返し行った。
次に、4層目として、3層目のTiO薄膜上に、チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)を成膜した。ここでは、2層目と同じ成膜手順を1回行った。
次に、5層目として、4層目の上側のチタン酸化物薄膜(B)上に、TiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目と同じ成膜手順を2回繰り返し行った。
次に、6層目として、5層目のTiO薄膜上に、チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)を成膜した。ここでは、2層目と同じ成膜手順を1回行った。
次に、7層目として、この6層目の上側のチタン酸化物薄膜(B)上に、TiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目と同じ成膜手順を1回行った。
以上により、PETフィルムの表面に、TiO薄膜(1層目)│チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)(2層目)│TiO薄膜(3層目)│チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)(4層目)│TiO薄膜(5層目)│チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)(6層目)│TiO薄膜(7層目)の順で積層されてなる7層構造の実施例1〜16に係る透明積層フィルムを作製した。
(実施例17)
上記実施例1〜16に係る透明積層フィルムの作製において、3層目までの成膜とした点以外はほぼ同様にして、実施例17に係るに係る透明積層フィルムを作製した。したがって、実施例17に係る透明積層フィルムは、PETフィルムの表面に、TiO薄膜(1層目)│チタン酸化物薄膜(B)/銀系薄膜(Ag−Bi)/チタン酸化物薄膜(B)(2層目)│TiO薄膜(3層目)の順で積層されてなる3層構造の積層構造を有している。
(比較例1)
上記実施例1〜16に係る透明積層フィルムの作製において、チタン酸化物薄膜(B)を成膜しなかった点、Ag−Bi合金ターゲットに代えて純Agターゲットを用いて純銀薄膜を成膜した点以外はほぼ同様にして、比較例1に係る透明積層フィルムを作製した。したがって、比較例2に係る透明積層フィルムは、2層目、4層目、6層目が、それぞれ純銀薄膜単体になっている。
(比較例2)
上記実施例1〜16に係る透明積層フィルムの作製において、チタン酸化物薄膜(B)の成膜時に反応性ガスとして酸素を供給しなかった点、Ag−Bi合金ターゲットに代えて純Agターゲットを用いて純銀薄膜を成膜した点以外はほぼ同様にして、比較例2に係る透明積層フィルムを作製した。したがって、比較例2に係る透明積層フィルムは、2層目、4層目、6層目が、それぞれ金属チタン薄膜/純銀薄膜/金属チタン薄膜の構成になっている。
(比較例3)
上記実施例1〜16に係る透明積層フィルムの作製において、チタン酸化物薄膜(B)を成膜しなかった点以外はほぼ同様にして、比較例3に係る透明積層フィルムを作製した。したがって、比較例3に係る透明積層フィルムは、2層目、4層目、6層目が、それぞれ銀系薄膜(Ag−Bi)単体となっている。
2.透明積層体
次に、透明支持基体としてガラス板(厚み3mm)を用い、ガラス板の一方面に、粘着剤層(アクリル系接着テープ、日東電工(株)製、「CS9621」)(厚み25μm)を介して、必要な大きさに形成した実施例1〜17および比較例1〜3に係る透明積層フィルムの各種薄膜積層面側をそれぞれ貼り付けた。これにより実施例1B〜17Bおよび比較例1b〜3bに係る透明積層体を作製した。
3.各透明積層体(各透明積層フィルム)の評価
次に、実施例1B〜16Bおよび比較例1b〜3bに係る透明積層体について、その初期および100℃にて500時間加熱処理した後の各表面抵抗値、可視光透過率、可視光反射率、赤外光透過率を測定し、これらを相対評価した。また、実施例17Bに係る透明積層体について、上記と同様にして、表面抵抗値、可視光透過率、可視光反射率を測定した。また、実施例17に係る透明積層フィルムについて、その積層構造部分の接触抵抗を測定した。
この際、表面抵抗値の測定には、渦電流計(コペル電子(株)製、「非接触抵抗率計モデル717」)を用いた。可視光透過率および可視光反射率は、JIS R3106に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率および可視光反射率を計算することにより行った。赤外光透過率は、上記分光光度計を用いて求めた波長850nmの透過率である。
また、接触抵抗は、以下の通りにして測定した。すなわち、先ず、2枚の透明積層フィルムの各薄膜形成面を対向させてなる試験片(50mm×50mm)を、平滑な試験片固定治具上に固定した。次いで、各透明積層フィルムの薄膜形成面を抵抗測定用テスター(テストン(株)製、ディジタルトーキングテスタ「DM1060」)の端子と接触させた状態にした。次いで、この2枚のフィルム上から、直径10mmの丸棒を布で覆った治具を用いて約1kgの荷重を加え、上記テスターの抵抗値を読み取り、これを接触抵抗とした。
また、実施例1〜17に係る透明積層フィルム中の各チタン酸化物薄膜(B)について、EDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。
すなわち、実施例1〜17に係る透明積層フィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜(B)を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。
次いで、この試験片の断面(積層構造とチタン酸化物薄膜(B)の位置)を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。
次いで、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜(B)の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、各チタン酸化物薄膜(B)の構成元素分析を行った。
また、銀系薄膜のビスマス割合は、各成膜条件において、別途、基体上に銀系薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
表8に、各透明積層体(各透明積層フィルム)について得られた結果をまとめて示す。なお、実施例17Bに係る透明積層フィルムにおける積層構造部分の接触抵抗は、初期、加熱後ともに、1000Ω以下であった。
Figure 2008105251
上記表8によれば、次のことが分かる。
すなわち、比較例1bに係る透明積層体は、バリア機能を有するチタン酸化物薄膜(B)を全く有しておらず、純銀薄膜単体を有する比較例1に係る透明積層フィルムを用いている。そのため、比較例1bに係る透明積層体は、初期の表面抵抗値が極めて高いうえ、加熱前後の表面抵抗値の変動幅も極めて大きかった。また、初期の可視光透過率は、比較的高い値を示したが、加熱前後の可視光透過率の変動幅は極めて大きかった。また、加熱前後の赤外光透過率の変動も極めて大きかった。これらは、純銀薄膜を構成するAgが凝集したり、TiO薄膜中へAgが拡散したりしたことが主な原因であると推測される。
また、比較例2bに係る透明積層体は、純銀薄膜の両面に金属チタン薄膜を形成した比較例2に係る透明積層フィルムを用いている。そのため、比較例1bに係る透明積層体は、初期の表面抵抗値が比較的高く、加熱前後の表面抵抗値の変動幅も大きかった。また、初期の可視光透過率は、低い値に留まっており、加熱前後の可視光透過率の変動幅も比較的大きかった。これらは、金属チタン薄膜は可視光吸収率が大きく、さらに、金属チタンの酸化により膜質が変化したことなどが原因であると推測される。
また、比較例3bに係る透明積層体は、銀系薄膜を用いているが、その少なくとも片面に、バリア機能を有するチタン酸化物薄膜(B)を全く有していない比較例3に係る透明積層フィルムを用いている。そのため、比較例3bに係る透明積層体は、比較例1bと同様に、初期の表面抵抗が高く、加熱前後の表面抵抗値の変化幅も大きかった。また、初期の可視光透過率は、比較的高い値を示したが、加熱前後の可視光透過率の変動幅は大きかった。また、加熱前後の赤外光透過率の変動も大きかった。これらは、銀系薄膜単独では、TiO薄膜中へのAgの拡散を十分に抑制できなかったことが主な原因であると推測される。
このように、何れの比較例に係る透明積層フィルム、透明積層体も、耐久性に劣ることが分かる。
これらに対し、実施例1B〜16Bに係る透明積層体は、比較例1b〜3bに係る透明積層体に比較して、初期の表面抵抗値が低く、加熱前後の表面抵抗値の変動幅も小さかった。また、加熱前後の可視光透過率の変動幅も小さかった。
これらのことから、実施例1B〜16Bに係る透明積層体は、初期の可視光透過率に優れ、また、加熱処理後も、初期の可視光透過率や表面抵抗値が損なわれ難く、耐久性、耐熱性に極めて優れていることが確認できた。
また、実施例17Bに係る透明積層体は、上記実施例1B〜16Bに係る透明積層体よりも積層数が少ないが、これらと同様の傾向があり、耐久性、耐熱性に極めて優れていた。加えて、初期、加熱後ともに、接触抵抗が低かった。そのため、例えば、タッチパネル電極などに好適に用いることが可能である。

Claims (9)

  1. 透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、
    有機分を含有する金属酸化物薄膜と、
    銀(Ag)を主成分とし、ビスマス(Bi)を含有する銀系薄膜とが積層されており、
    前記銀系薄膜の少なくとも一方面には、前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されていることを特徴とする透明積層フィルム。
  2. 前記銀系薄膜は、0.01〜5原子%の範囲内でビスマス(Bi)を含有することを特徴とする請求項1に記載の透明積層フィルム。
  3. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜および前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物およびセリウムの酸化物から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明積層フィルム。
  4. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜および前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、同一種であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の透明積層フィルム。
  5. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜および前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の透明積層フィルム。
  6. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜における、チタンの酸化物の酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oは、1.0/4.0〜1.0/0.5の範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の透明積層フィルム。
  7. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜の膜厚は、1.0〜20.0nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の透明積層フィルム。
  8. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、ゾル−ゲル法により形成されており、
    前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜は、反応性スパッタリング法により形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の透明積層フィルム。
  9. 透明支持基体の少なくとも一方面に、粘着剤層を介して、請求項1から8の何れかに記載の透明積層フィルムが積層されていることを特徴とする透明積層体。
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