JP2008107549A - 調光フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】従来に比較して、調光性、可視光に対する透明性、可撓性に優れ、安価な調光フィルムを提供すること。
【解決手段】一対の透明電極フィルムの間に液晶層が挟持されてなる調光フィルムにおいて、透明高分子フィルムの液晶層側の面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜とが積層された透明電極を有しており、かつ、金属薄膜の少なくとも一方面には、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されている透明電極フィルムを用いる。
【選択図】図1
【解決手段】一対の透明電極フィルムの間に液晶層が挟持されてなる調光フィルムにおいて、透明高分子フィルムの液晶層側の面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜とが積層された透明電極を有しており、かつ、金属薄膜の少なくとも一方面には、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されている透明電極フィルムを用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、調光フィルムに関し、さらに詳しくは、液晶材を利用する調光フィルムに関するものである。
従来、2つの透明電極間に液晶層を挟み込み、その液晶材の配列を制御することにより、透過光量を調光できることが知られている。一般に、この種の調光は、次のような原理を利用している。
すなわち、2つの透明電極間に電圧をかけない状態(電圧無印加状態)では、一方の電極面から入射した光は、不規則に並んだ液晶分子により散乱される。そのため、他方の電極面は白濁した状態になる。これに対し、2つの透明電極間に電圧をかけた状態(電圧印加状態)では、不規則に並んだ液晶分子が電界方向に水平に配列する。そのため、一方の電極面から入射した光は透過し、他方の電極面は透明な状態になる。
上記調光を行うことが可能な調光部材として、例えば、特許文献1には、ガラス基板上にITOスパッタ薄膜を形成して得た2枚のITOガラス基板の間に、液晶層を挟持した調光ガラスが開示されている。
また、例えば、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にITOスパッタ薄膜を形成して得た2枚のITOフィルムの間に、液晶層を挟持した調光フィルムが開示されている。
また、例えば、特許文献3には、液晶ディスプレイ素子などに用いる透明電極として、銀合金スパッタ薄膜の両面に、酸化インジウムスパッタ薄膜を形成してなる3層の薄膜積層体が開示されている。
しかしながら、従来知られる調光部材は、以下の点で問題があった。
近年、調光部材は、大面積化が図られてきている。ところが、ITOスパッタ薄膜は、比較的、表面抵抗が大きい。そのため、特許文献1および特許文献2に記載されるように、ITOスパッタ薄膜単体を透明電極として使用した調光ガラス、調光フィルムでは、次のような現象が生じやすくなる。
すなわち、通常、透明電極には、これに電圧を印加するための取り出し電極が電気的に接続されている。調光部材の面積が大きくなると、この取り出し電極から相対的に遠い領域では、十分な電圧がかかり難くなる傾向がある。その結果、その領域において、液晶分子が規則的に配列せず、散乱により白濁を生じやすくなるといった問題があった。この種の問題は、とりわけ、調光部材の面積および透明電極の表面抵抗が大きくなるにつれて顕著に発生しやすくなる。
さらに、ITOスパッタ薄膜よりなる透明電極は、可視光透過率がそれほど高くない。そのため、可視光に対する透明性に劣る。また、特許文献1のように、ガラス基板を用いていては、可撓性に優れた調光部材を得ることはできない。
これに対し、特許文献3の透明電極は、銀合金スパッタ薄膜を使用している。そのため、上記に比較して、導電性を向上させる点で有利であると思われる。
しかしながら、この透明電極では、全ての薄膜をスパッタリングにより形成しなければならない。そのため、製造コストが高くなるといった問題があった。
さらに、銀合金スパッタ薄膜を構成する銀が、酸化インジウムスパッタ薄膜中に拡散することにより、可視光に対する透明性が低下するなどの問題も懸念される。
また、特許文献1のように、ガラス基板を用いているので可撓性にも劣る。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、従来に比較して、調光性、可視光に対する透明性、可撓性に優れ、安価な調光フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る調光フィルムは、一対の透明電極フィルムの間に液晶層が挟持されてなり、上記透明電極フィルムのうち、少なくとも一方は、透明高分子フィルムの上記液晶層側の面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜とが積層された透明電極を有しており、かつ、上記金属薄膜の少なくとも一方面には、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されていることを要旨とする。
ここで、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜および上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物およびセリウムの酸化物から選択される1種または2種以上であり、上記金属薄膜を構成する金属は、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウムおよびインジウムから選択される少なくとも1種の金属または上記金属を1種以上含む合金であると良い。
特には、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜および上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物であり、上記金属薄膜を構成する金属は、銀または銀合金であると良い。
また、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、液相法により形成されており、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜は、気相法により形成されていると良い。
本発明に係る調光フィルムは、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜とが積層された透明電極を有している。
この透明電極によれば、金属薄膜を用いているので、従来に比較して表面抵抗を低くすることができる。そのため、大面積化を図っても白濁が生じ難い。また、有機分を含有する金属酸化物薄膜を用いているので、可視光透過性、曲げたときの密着性にも優れる。
また、金属薄膜の少なくとも一方面には、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されている。そのため、金属薄膜を構成する金属が、有機分を含有する金属酸化物薄膜中へ拡散するのを十分に抑制することができる。それ故、可視光透過性を維持しやすく、耐久性も向上する。また、有機分を含有する金属酸化物薄膜と金属薄膜との密着性も向上する。
また、透明電極を形成する支持体として、透明高分子フィルムを用いているので、可撓性に優れる。また、金属酸化物薄膜中に有機分が存在しているので、これによっても可撓性を向上させやすい。
また、有機分を含有する金属酸化物薄膜は、液相法により好適に形成することができる。そのため、その分、製造コストを低減することができる。
ここで、有機分を含有する金属酸化物薄膜および有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物が、チタンの酸化物であり、金属薄膜を構成する金属が、銀または銀合金である場合には、導電性、可視光に対する透明性に優れる。
また、有機分を含有する金属酸化物薄膜が、液相法により形成されておれば、原料、加工、設備投資などについてコスト的にも有利である。加えて、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が、気相法により形成されておれば、薄くて緻密な膜質を得やすく、上記拡散抑制効果に優れる。
本実施形態に係る調光フィルム(以下、「本調光フィルム」という。)について詳細に説明する。
図1に例示するように、本調光フィルム10は、一対の透明電極フィルム12、12の間に、液晶層14が挟持されてなる。以下、構成部材ごとに分けて説明する。
1.透明電極フィルム
本調光フィルムにおいて、一対の透明電極フィルムは、ともに、図1に例示するように、透明高分子フィルム16の液晶層14側の面に透明電極18が形成されている。
本調光フィルムにおいて、一対の透明電極フィルムは、ともに、図1に例示するように、透明高分子フィルム16の液晶層14側の面に透明電極18が形成されている。
ここで、一対の透明電極フィルムのうち、少なくとも一方は、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜と、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも厚みの薄い金属酸化物薄膜とを備えた透明電極(以下、「特定透明電極」ということがある。)を有している。なお、図1では、両方の透明電極フィルムが、特定透明電極を有する場合を例示しているが、当該特定透明電極の詳細な積層構造は図示されていない。
また、一方の透明電極フィルムが特定透明電極を有している場合、他方の透明電極フィルムは、特定透明電極を有していても良いし、金属酸化物薄膜、金属薄膜、これらを積層したものなど、他の透明電極を有していても良い。
好ましくは、本調光フィルムが有する透明電極フィルムは、ともに、特定透明電極を有していると良い。品種が少なくなって製造コストの低減を図ることができる、調光性、可視光透過性などの向上に有利であるなどの利点があるからである。以下、特定透明電極を有する透明電極フィルムについて、詳細に説明する。
1.1 特定透明電極の積層構造
特定透明電極は、有機分を含有する金属酸化物薄膜(以下、「MO」と略表記することがある。)と、金属薄膜(以下、「M」と略表記することがある。)とが交互に積層されている。また、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(以下、「B」と略表記することがある。)は、金属薄膜の何れか一方面、または、金属薄膜の両面に形成されている。
特定透明電極は、有機分を含有する金属酸化物薄膜(以下、「MO」と略表記することがある。)と、金属薄膜(以下、「M」と略表記することがある。)とが交互に積層されている。また、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(以下、「B」と略表記することがある。)は、金属薄膜の何れか一方面、または、金属薄膜の両面に形成されている。
したがって、特定透明電極の積層構造の基本単位としては、具体的には、例えば、透明高分子フィルム側から、MO│B/M/B、MO│M/B、MO│B/Mといった第1基本単位、または、透明高分子フィルム側から、B/M/B│MO、M/B│MO、B/M│MOといった第2基本単位などを例示することができる。
特定透明電極は、第1基本単位から選択される1または2以上の基本単位を単数または複数繰り返し積層した積層構造を有していても良いし、第2基本単位から選択される1または2以上の基本単位を単数または複数繰り返し積層した積層構造を有していても良い。
金属薄膜を構成する金属は、透明高分子フィルム側とは反対側に拡散しやすい傾向が見られる。そのため、第1基本単位であれば、MO│B/M/B、MO│M/Bの単位を好適に選択することができる。また、第2基本単位であれば、B/M/B│MO、M/B│MOの単位を好適に選択することができる。
とりわけ、金属薄膜を構成する金属の拡散を抑制しやすいなどの観点から、第1基本単位であれば、MO│B/M/Bの単位を、第2基本単位であれば、B/M/B│MOの単位を最も好適に選択することができる。
なお、第1基本単位を用いる場合には、金属薄膜を劣化し難くする、可視光に対する透明性を確保しやすいなどの観点から、透明高分子フィルムから最も遠い表面に、別途、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を積層するのが好ましい。
特定透明電極の積層数は、各薄膜の材料や膜厚、要求される調光性、透明性、製造コストなどを考慮して異ならせることができる。上記積層数としては、2〜10層が好ましく、3層、5層、7層、9層などの奇数層がより好ましい。
なお、上記積層数では、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を1層、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(B)を含めた金属薄膜(M)を1層として数えている。
上記積層数としては、調光性、透明性、製造コストのバランスに優れるなどの観点から、MO│B/M/B│MO、MO│B/M│MO、MO│M/B│MOなどの3層が最も好ましい。
特定透明電極において、各薄膜は、一度に形成されたものであっても良いし、分割形成されたものであっても良い。また、特定透明電極中に含まれる各薄膜のうち、一部または全部が分割形成されていても良い。各薄膜が、複数の分割層よりなる場合、その分割数は、各薄膜ごとに同じであっても良いし、異なっていても良い。なお、分割層は積層数として数えず、複数の分割層が集合して形成された1つの薄膜を1層として数える。
各薄膜の組成または材料は、それぞれ同一の組成または材料から形成されていても良いし、異なる組成または材料から形成されていても良い。なお、この点は、各薄膜が複数の分割層よりなる場合も同様である。
また、各薄膜の膜厚は、ほぼ同一であっても良いし、各膜ごとに異なっていても良い。
透明電極フィルムは、概略、上述した積層構造の特定透明電極を有している。以下、透明高分子フィルム、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)、金属薄膜(M)、有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜(B)についてより詳細に説明する。
1.2 透明高分子フィルム
透明高分子フィルムは、特定透明電極を形成するためのベースとなるものである。また、本調光フィルムに可撓性を付与することにも寄与する。その材料としては、可視光領域において透明性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成できるものであれば、基本的には、何れのものでも用いることができる。
透明高分子フィルムは、特定透明電極を形成するためのベースとなるものである。また、本調光フィルムに可撓性を付与することにも寄与する。その材料としては、可視光領域において透明性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成できるものであれば、基本的には、何れのものでも用いることができる。
透明高分子フィルムの材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマーなどの高分子材料を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
これらのうち、とりわけ、透明性、耐久性、加工性などに優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマーなどを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
また、上記透明高分子フィルムの厚みは、用いる材料などを考慮して種々調節することができる。その好ましい下限値として、具体的には、例えば、10μm、25μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、500μm、250μmなどを例示することができる。
1.3 金属酸化物薄膜(MO)
金属酸化物薄膜(MO)は、可視光領域において透明性を有し、主として高屈折率層として機能するものである。ここで、高屈折率とは、633nmの光に対する屈折率が1.7以上ある場合をいう。
金属酸化物薄膜(MO)は、可視光領域において透明性を有し、主として高屈折率層として機能するものである。ここで、高屈折率とは、633nmの光に対する屈折率が1.7以上ある場合をいう。
上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
上記金属酸化物としては、とりわけ、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、酸化チタン(IV)(TiO2)、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
ここで、上記金属酸化物薄膜(MO)は、主成分として金属酸化物を含んでいるが、それ以外にも、有機分を含有している。この有機分を含有することで、本調光フィルムの可撓性をより向上させることができる。この種の有機分としては、具体的には、例えば、金属酸化物薄膜(MO)の形成材料に由来する成分などを例示することができる。
上記有機分としては、より具体的には、例えば、上述した金属酸化物を構成する金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどといった有機金属化合物(その分解物なども含む)などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属酸化物薄膜(MO)中に含まれる有機分の含有量としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、3、5、10重量%などを例示することができる。
一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、30、20、15重量%などを例示することができる。
なお、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。
上記金属酸化物薄膜(MO)は、必要な屈折率を確保でき、可視光透過性などに悪影響を及ぼさない範囲内であれば、上記主成分や上記有機分以外にも、他の成分を含んでいても良い。
例えば、上記金属酸化物薄膜(MO)の形成時に使用した各種の添加剤、不可避不純物などの物質を1種または2種以上含んでいても良い。上記添加剤としては、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する化合物(後述する)などを例示することができる。
また、上記金属酸化物薄膜(MO)の膜厚は、透明性や色調などを考慮して種々調節することができる。上記金属酸化物薄膜(MO)の膜厚としては、具体的には、例えば、その好ましい下限値として、18nm、20nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、150nm、100nmなどを例示することができる。
以上のような構成を有する上記金属酸化物薄膜(MO)は、液相法により好適に形成することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れている。
上記液相法としては、有機分を残存させやすいなどの観点から、ゾル−ゲル法を好適に利用することができる。
上記ゾル−ゲル法としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の有機金属化合物を含有するコーティング液を層状にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜(MO)の前駆体膜を形成した後、この前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させ、有機金属化合物を構成する金属の酸化物を合成するなどの方法を例示することができる。これによれば、金属酸化物を主成分として含み、有機分を含有する金属酸化物薄膜(MO)を形成することができる。以下、上記方法について詳細に説明する。
上記コーティング液は、上記有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。この際、有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量としては、その好ましい上限値として、具体的には、例えば、20、15、10重量%などを例示することができる。これら好ましい上限値と組み合わせ可能な好ましい下限値として、具体的には、例えば、1、3、5重量%などを例示することができる。
一方、上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記溶媒量としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、5、10倍量などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、50、30、20倍量などを例示することができる。
上記溶媒量が50倍量より多くなると、一回のコーティングで形成できる層厚が薄くなり、所望の厚みを得るために多数回のコーティングが必要となる傾向が見られる。一方、5倍量より少なくなると、層厚が厚くなり過ぎ、有機金属化合物の加水分解・縮合反応が十分に進行し難くなる傾向が見られる。したがって、上記溶媒量は、これらを考慮して選択すると良い。
また、上記コーティング液中には、ゾル−ゲル法による加水分解が促進され、高屈折率化が図りやすくなるなどの観点から、必要に応じて水が含まれていても良い。
この場合、上記コーティング液中に占める水分含有量は、好ましくは1重量%以上あると良い。
もっとも、上記水分含有量を過度に多くしても、屈折率の向上効果も頭打ちになるし、コーティングもやり難くなるなどの傾向が見られる。そのため、上記水分含有量の好ましい上限値として、具体的には、例えば、50、40、30、20、10重量%などを例示することができる。
なお、上記水分含有量は、カールフィッシャー水分計(容量滴定方式)により測定される値である。すなわち、カールフィッシャー水分計を用い、被測定対象であるコーティング液を脱水溶剤中に溶解または分散した後、カールフィッシャー試薬(滴定剤)にて滴定すれば、コーティング液中に占める水分含有量を求めることができる。
上記カールフィッシャー水分計は、例えば、京都電子工業(株)などにより上市されている。また、脱水溶剤、カールフィッシャー試薬についても、例えば、三菱化学(株)などにより、アクアミクロン(登録商標、以下省略)脱水溶剤GEX、アクアミクロン滴定剤SS−Zなどとして上市されている。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングされたコーティング液を乾燥する場合、公知の乾燥装置などを用いて乾燥させれば良い。この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線照射、電子線照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を透明高分子フィルムに与え難いからである。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
この際、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する紫外線の光量は、前駆体膜を主に形成している有機金属化合物の種類、コーティング層の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する紫外線の光量が過度に小さすぎると、金属酸化物薄膜(MO)の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する紫外線の光量が過度に大きすぎると、紫外線照射の際に生じる熱により透明高分子フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する紫外線の光量としては、具体的には、例えば、測定波長300〜390nmのとき、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、300mJ/cm2、500mJ/cm2などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、8000mJ/cm2、5000mJ/cm2などを例示することができる。
なお、前駆体膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、紫外線照射を用いる場合、上述したコーティング液中に、有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め紫外線吸収性キレートが形成されたところに紫外線照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜(MO)の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合としては、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、例えば、0.1〜2倍モルの範囲などを例示することができる。
1.4 金属薄膜
金属薄膜は、主として導電層として機能する。
金属薄膜は、主として導電層として機能する。
金属薄膜を主に構成する金属としては、具体的には、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属としては、導電性、積層時の可視光透過性などに優れるなどの観点から、銀および/または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、ビスマス、金、パラジウム、白金、銅などの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金である。特に好ましくは、銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの観点から、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)である。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの割合としては、銀とビスマスとの総量に対して、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.01原子%、0.05原子%などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、5原子%、2原子%などを例示することができる。なお、上記ビスマスの割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。
上記金属薄膜の膜厚は、表面抵抗と可視光透過率とのバランスなどを考慮して種々調節することができる。金属薄膜の膜厚が過度に厚すぎると、可視光透過率が低下する傾向が見られる。一方、その膜厚が過度に薄すぎると、表面抵抗値が増大する傾向が見られる。したがって、上記金属薄膜の膜厚の選択には、これらに留意すると良い。
上記金属薄膜の膜厚としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、5nm、8nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、30nm、20nmなどを例示することができる。
ここで、上記金属薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD、プラズマCVDなどといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法、導電性ペーストを塗工し、焼結する方法などを例示することができる。上記積層構造中の各金属薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
より具体的には、例えば、真空蒸着法を用いる場合には、蒸発源として所望の金属を用い、抵抗加熱、レーザ加熱、電子ビーム加熱などにより、金属を加熱蒸着させて金属薄膜を形成すれば良い。
また、例えば、スパッタリング法を用いる場合には、ターゲットとして所望の金属を用いるとともに、スパッタリングガスとしてアルゴン、ネオンなどの不活性ガスを用い、ターゲットと透明高分子フィルムとの間に直流(DC)電圧(DCスパッタリング法)または高周波(RF)電圧(RFスパッタリング法)を印加し、金属薄膜を形成すれば良い。成膜速度を速くする観点から、直流マグネトロンスパッタリング法や高周波マグネトロンスパッタリング法を用いても良い。
また、例えば、イオンプレーティング法を用いる場合には、蒸発源として所望の金属を用い、真空蒸着装置内に低圧ガスを導入し電界をかけてプラズマを発生させ、蒸発源からの蒸発粒子をイオン化しながら蒸着させ、金属薄膜を形成すれば良い。
1.5 金属酸化物薄膜(B)
金属酸化物薄膜(B)は、主として、上記金属薄膜(M)を構成する金属が、金属酸化物薄膜(MO)中へ拡散するのを抑制する機能を有している。また、金属薄膜(M)と金属酸化物薄膜(MO)との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与する。
金属酸化物薄膜(B)は、主として、上記金属薄膜(M)を構成する金属が、金属酸化物薄膜(MO)中へ拡散するのを抑制する機能を有している。また、金属薄膜(M)と金属酸化物薄膜(MO)との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与する。
なお、金属酸化物薄膜(B)は、連続的に層状に形成されていることが好ましいが、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
上記金属酸化物薄膜(B)は、主として金属酸化物より形成されている。上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、上記金属酸化物薄膜(B)は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
この際、上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物は、上記金属酸化物薄膜(MO)との密着性を一層向上させやすいなどの観点から、上記金属酸化物薄膜(MO)を構成する金属酸化物と同一種であると良い。
上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物としては、とりわけ、チタンの酸化物を好適に用いることができる。
ここで、上記金属酸化物薄膜(B)は、上記金属酸化物薄膜(MO)よりも膜厚が薄い。これは、上記金属薄膜(M)を構成する金属の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、本調光フィルムの製造コストの低減にも寄与することができる。
上記金属酸化物薄膜(B)の膜厚としては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、1.0nm、1.5nm、2.0nmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、15.0nm、10.0nm、8.0nmなどを例示することができる。
上記金属酸化物薄膜(B)を構成する金属酸化物として、チタンの酸化物を用いる場合、チタンの酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oとしては、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、1.0/4.0、1.0/3.8、1.0/3.5、1.0/3.0、1.0/2.8などを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、1.0/0.5、1.0/0.7、1.0/1.0、1.0/1.2、1.0/1.5、1.0/2.0などを例示することができる。Ti/O比がこの範囲内にあれば、膜質、界面の膜表面形状などに優れることから、金属薄膜(M)を構成する金属の拡散を抑制しやすくなるからである。
上記Ti/O比は、当該膜の組成から算出することができる。当該膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
具体的な組成分析方法について説明すると、先ず、超薄切片法(ミクロトーム)などを用いて、分析対象となる当該膜を含む透明電極の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製する。次いで、断面方向から積層構造と当該膜の位置を、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認する。次いで、EDX装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となる当該膜の膜厚中央部近傍に入射させる。試験片表面から入射した電子は、ある深さまで入り込み、各種の電子線やX線を発生させる。この際の特性X線を検出して分析することで、当該膜の構成元素分析を行うことができる。
上記金属酸化物薄膜(B)は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法により好適に形成すると良い。
上記気相法としては、具体的には、例えば、上述した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD、プラズマCVDなどといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。
この際、上記金属酸化物薄膜(B)は、主に金属酸化物より形成されているので、上記各薄膜形成法による成膜時には、その雰囲気中に酸素を含むガスを導入する必要がある。
なお、特定透明電極中に含まれる各金属酸化物薄膜(B)は、これら気相法のうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、上述したスパッタリング法を好適に用いることができる。
但し、スパッタリング法を用いる場合には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら金属酸化物薄膜(B)を形成することになる(反応性スパッタリング法)。
また、反応性スパッタリング法を用いて、例えば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得る場合、雰囲気中の酸素濃度(不活性ガスに対する酸素を含むガスの体積割合)は、上述した膜厚範囲を考慮して最適な割合を適宜選択すれば良い。
具体的には、膜厚を厚くするには、金属チタンターゲットへの投入電力、雰囲気中の酸素濃度などを増やせば良く、一方、膜厚を薄くするには、同投入電力、同酸素濃度などを減らせば良い。したがって、上述した最小膜厚値を選択した場合には、酸素濃度の好ましい下限値として、具体的には、例えば、2vol%などを例示することができる。一方、上述した最大膜厚値を選択した場合には、酸素濃度の好ましい上限値として、具体的には、例えば、35vol%などを例示することができる。酸素濃度がこの範囲にあれば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得ることができる。
なお、本調光フィルムが有する透明電極において、上記金属酸化物薄膜(MO)、金属薄膜(M)および金属酸化物薄膜(B)の各材料は、必要に応じて上述したものから適宜選択して用いることができる。最も好適な膜材料の組み合わせとしては、上記金属酸化物薄膜(MO)および金属酸化物薄膜(B)における金属酸化物として、チタンの酸化物、金属薄膜(M)における金属として、銀または銀合金を例示することができる。表面抵抗が低く、透明性に優れるなど、特性バランスが良いからである。
1.6 各薄膜の積層方法
上記特定透明電極を形成するにあたり、上記金属酸化物薄膜(MO)の形成方法と、上記金属薄膜(M)の形成方法と、上記金属酸化物薄膜(B)の形成方法とを適宜組み合わせ、透明高分子フィルムの表面に、金属酸化物薄膜(MO)、金属薄膜(M)、金属酸化物薄膜(B)を積層していく方法としては、具体的には、例えば、次のような方法を例示することができる。以下、透明高分子フィルムの表面に、MO│B/M/B│MOの積層構造を備えた特定透明電極を形成する場合を用いて説明する。
上記特定透明電極を形成するにあたり、上記金属酸化物薄膜(MO)の形成方法と、上記金属薄膜(M)の形成方法と、上記金属酸化物薄膜(B)の形成方法とを適宜組み合わせ、透明高分子フィルムの表面に、金属酸化物薄膜(MO)、金属薄膜(M)、金属酸化物薄膜(B)を積層していく方法としては、具体的には、例えば、次のような方法を例示することができる。以下、透明高分子フィルムの表面に、MO│B/M/B│MOの積層構造を備えた特定透明電極を形成する場合を用いて説明する。
先ず、透明高分子フィルムの表面上に、上述したゾル−ゲル法などの液相法により金属酸化物薄膜(MO)を形成した後、これをロールに巻き取る。
次に、このロールを、上述した反応性スパッタリング法などの気相法による薄膜形成装置の成膜室内に装着し、ロールを繰り出しながら、酸素を含む雰囲気中で、金属酸化物薄膜(MO)の表面上に金属酸化物薄膜(B)を形成する。次いで、このフィルム体を他の成膜室に移動させ、引き続き、酸素を実質的に含まない雰囲気中で、金属酸化物薄膜(B)の表面上に金属薄膜(M)を形成する。次いで、このフィルム体を他の成膜室に移動させ、上記と同様にして、酸素を含む雰囲気中で金属薄膜(M)の表面上に金属酸化物薄膜(B)を形成し、これをロールに巻き取る。
次に、このロールを繰り出しながら、上記と同様にして、金属酸化物薄膜(B)の表面上に金属酸化物薄膜(MO)を形成し、これをロールに巻き取る。
基本的には、このような操作を行えば、透明電極フィルムを連続的に製造することができる。なお、他の基本単位を含む透明電極を形成するには、上記方法に準じて行えば良い。また、各薄膜を複数の分割層より形成する場合には、各操作を分割数だけ繰り返し行えば良い。
2.液晶層
本調光フィルムにおいて、液晶層は、一対の透明電極フィルムの間に挟持されている。
本調光フィルムにおいて、液晶層は、一対の透明電極フィルムの間に挟持されている。
ここで、液晶層は、液晶分子を含んでおり、かつ、調光可能であれば、層全体が液晶分子で満たされていても良いし、液晶分子と高分子との混合物よりなっていても良い。後者の場合としては、具体的には、例えば、高分子中に液晶分子を分散したものなどを例示することができる。なお、図1の液晶層14は、高分子中に液晶分子14aが分散している場合を示している。
用いる液晶分子は特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ネマチック型、コレステリック型、スメチック型などの何れの液晶分子も適用可能である。好ましくは、ネマチック型液晶分子を含んでいると良い。これらは1種または2種以上混合して用いても良い。
ネマチック型液晶分子としては、具体的には、例えば、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−ベンズアミド)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)などの高分子液晶化合物、4’−メトキシベンジリデン−4’ブチルアニリン、4−シアノ−4’−ヘキソキシビフェニル、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルシクロヘキサン化合物、シアノシクロヘキシルシクロヘキサン化合物などを例示することができる。
コレステリック型液晶分子としては、具体的には、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチドなどを例示することができる。
スメクチック型液晶分子としては、具体的には、例えば、ポリエステルなどを例示することができる。
また、上記高分子としては、透明性を有し、液晶分子の配向に悪影響を及ぼさないものであれば、何れのものでも用いることができる。具体的には、例えば、ビニルエーテルアクリレート、ビニルエーテルアクリレートと他のモノマーとの共重合体などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、好ましくは、透明性に優れる、液晶分子との屈折率との関係が良好であるなどの観点から、ビニルエーテルアクリレート共重合体である。
また、液晶分子と高分子とを混合する場合、両者の割合は特に限定されるものではなく、調光性、コストなどを考慮して最適な割合を選択することができる。具体的には、例えば、液晶分子の割合としては、50〜90重量%、高分子の割合としては、10〜50重量%などを好ましい範囲として例示することができる。
なお、液晶層中には、必要に応じて、紫外線開始剤などの光開始剤、酸化防止剤などの添加剤が1種または2種以上含まれていてもよい。
上記液晶層の厚みは、調光性、透明性、可撓性などを考慮して種々調節することができる。上記液晶層の厚みとしては、具体的には、例えば、その好ましい下限値として、5μm、10μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、100μm、200μmなどを例示することができる。
なお、上記液晶層は、水分などを遮断する、液晶材の漏れを防ぐなどの観点から、例えば、調光領域の外周にシール材を設けることにより封止されていても良い。他にも、調光領域の外周に透明電極がない領域を形成し、2枚の透明高分子フィルム同士を熱融着して封止されていても良い。
この場合、上記シール材としては、具体的には、例えば、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂、これらの混合物などを例示することができる。
液晶層を形成する方法としては、具体的には、例えば、一対の透明電極フィルムの透明電極面を対向させ、所定の隙間を形成し、この隙間に液晶材を自然または真空注入する方法、一方の透明電極フィルムの透明電極面に液晶材を滴下または塗布し、その後、他方の透明電極フィルムの透明電極面を貼り合わせる方法などを例示することができる。なお、上記隙間を均一に形成するため、スペーサーなどを散布しても良い。
また、高分子を含む液晶層を形成する場合、液晶分子と高分子との混合物を当初より用い、これを上記隙間に注入などしても良いし、当該高分子を生成可能なモノマを上記隙間に注入などした後、熱や光などを用いて、上記モノマを重合させて高分子を生成させても良い。
低分子量であり、流動性が大きく、注入などを行いやすいなどの観点から、後者を好適に用いることができる。
3.本調光フィルムの用途
本調光フィルムは、例えば、各透明電極フィルムの調光領域の外周から、電圧を印加するための取り出し電極をそれぞれ取り出し、これを使用して透明電極間の電圧をオン・オフ制御することにより、調光動作をさせることができる。
本調光フィルムは、例えば、各透明電極フィルムの調光領域の外周から、電圧を印加するための取り出し電極をそれぞれ取り出し、これを使用して透明電極間の電圧をオン・オフ制御することにより、調光動作をさせることができる。
ここで、本調光フィルムの視認側(前面)となる透明電極フィルムの透明電極に、例えば、文字や絵などに対応したパターン(透明電極がない部分)を形成した場合には、電圧印加時に、そのパターンの部分では電圧無印加状態になり、液晶分子がランダムに配向したままとなる。そのため、本調光フィルムの非視認側(裏面)に設けた光源からの光は、上記パターン部分で散乱して白くなり、予め形成しておいた文字などの所望のパターンが浮き上がって表示される。
このように使用した場合には、例えば、広告やメッセージなどを表示させるのに有用である。
なお、上記パターン形成方法は、特に限定されるものではない。上記パターン形成方法としては、具体的には、例えば、レーザーエッチングなどにより、パターンに沿って透明電極を予め除去する方法などを例示することができる。
また、本調光フィルムの視認側(前面)となる透明電極フィルムの透明電極に、何らパターン(透明電極がない部分)を形成しない場合には、透明電極間に電圧印加状態にしたときに透明になり、電圧無印加状態にしたときに不透明(白色)になる。
そのため、例えば、プロジェクタのスクリーンなどとして利用することができる。他にも、本調光フィルムの少なくとも一方面に粘着剤を塗布し、窓ガラスやショーウインドウなどに貼り合わせるなどした場合には、電子カーテンやディスプレイ演出などとして利用することも可能である。
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、以下における屈折率は、波長633nmのときの値である。
1.透明電極フィルム、透明電極ガラス
<No.1〜No.3に係る透明電極フィルム>
初めに、実施例に係る調光フィルムに適用可能な透明電極フィルムとして、No.1〜No.3に係る透明電極フィルムを作製した。
<No.1〜No.3に係る透明電極フィルム>
初めに、実施例に係る調光フィルムに適用可能な透明電極フィルムとして、No.1〜No.3に係る透明電極フィルムを作製した。
ここで、各透明電極フィルムは、基本的には、それぞれ、PETフィルムの片面に、ゾル−ゲル法によるチタン酸化物薄膜(MO)│反応性スパッタリング法によるチタン酸化物薄膜(B)/銀薄膜(M)/反応性スパッタリング法によるチタン酸化物薄膜(B)│ゾル−ゲル法によるチタン酸化物薄膜(MO)の3層構造よりなる透明電極を有している。
表1に、後述する手順により作製したNo.1〜No.3に係る透明電極フィルムの透明電極の膜構成および膜厚を示す。また、表2に、反応性スパッタリング法によるチタン酸化物薄膜(B)の成膜条件を、表3に、銀薄膜(M)の成膜条件を示す。
以下、No.1〜No.3に係る透明電極フィルムの具体的な作製手順を示す。
(コーティング液)
以下の手順により、チタン酸化物薄膜(MO)の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、コーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75重量%/3.38重量%/59.87重量%/30.00重量%とした。
以下の手順により、チタン酸化物薄膜(MO)の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、コーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75重量%/3.38重量%/59.87重量%/30.00重量%とした。
(透明電極の作製)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)のPET面側に、ダイレクトグラビアコーターを用いて、線速3m/minで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させ、チタン酸化物薄膜(MO)の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を1.5秒間照射した。これによりPETフィルム上に、ゾル−ゲル法によるチタン酸化物薄膜(MO)が形成されたロール状のサンプルを作製した。
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)のPET面側に、ダイレクトグラビアコーターを用いて、線速3m/minで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させ、チタン酸化物薄膜(MO)の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を1.5秒間照射した。これによりPETフィルム上に、ゾル−ゲル法によるチタン酸化物薄膜(MO)が形成されたロール状のサンプルを作製した。
なお、作製した薄膜の屈折率を、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定したところ、測定波長633nmにおいて屈折率1.90であった。
また、この薄膜中に含まれる有機分の含有量を、X線光電子分光法(XPS)により測定したところ、5wt%であった。
次に、2層目として、1層目のチタン酸化物薄膜(MO)上に、チタン酸化物薄膜(B)/銀薄膜(M)/チタン酸化物薄膜(B)を以下の手順により成膜した。なお、成膜条件は、上記表に示した通りである。
すなわち、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、先ず、下側のチタン酸化物薄膜(B)を反応性スパッタにより成膜した。次いで、この下側のチタン酸化物薄膜(B)上に銀薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この銀薄膜上に上側のチタン酸化物薄膜(B)を反応性スパッタにより成膜した。
次に、3層目として、2層目の上側のチタン酸化物薄膜(B)上に、チタン酸化物薄膜(MO)を成膜した。ここでは、1層目と同じ成膜手順で行った。
その後、ロール状の透明電極フィルムから、50cm×10cm角の大きさのフィルムを切り出した。これにより、3層構造の透明電極を有するNo.1〜3に係る透明電極フィルムを作製した。
<No.比1>
50cm×10cm角の石英ガラスに、スパッタ蒸着法により、酸化インジウム・スズ(ITO)薄膜(膜厚30nm)を成膜した。これをNo.比1に係る透明電極ガラスとした。
50cm×10cm角の石英ガラスに、スパッタ蒸着法により、酸化インジウム・スズ(ITO)薄膜(膜厚30nm)を成膜した。これをNo.比1に係る透明電極ガラスとした。
<No.比2>
酸化インジウム・スズ(ITO)薄膜付きフィルム(トービ(株)製、「OTEC−230」)から、50cm×10cm角の大きさのフィルムを切り出した。これをNo.比2に係る透明電極フィルムとした。
酸化インジウム・スズ(ITO)薄膜付きフィルム(トービ(株)製、「OTEC−230」)から、50cm×10cm角の大きさのフィルムを切り出した。これをNo.比2に係る透明電極フィルムとした。
2.透明電極フィルム、透明電極ガラスの評価
次に、作製した各透明電極フィルム、透明電極ガラスについて、その初期および100℃にて125時間加熱処理した後の各表面抵抗値、可視光透過率を事前に評価した。
次に、作製した各透明電極フィルム、透明電極ガラスについて、その初期および100℃にて125時間加熱処理した後の各表面抵抗値、可視光透過率を事前に評価した。
また、表面抵抗値の測定には、渦電流計(コペル電子(株)製、「非接触抵抗率計モデル717」)を用いた。また、可視光透過率は、JIS R3106に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率を計算することにより行った。
また、各チタン酸化物薄膜(B)について、EDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。
すなわち、No.1〜3に係る透明電極フィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜(B)を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。
次いで、この試験片の断面(積層構造とチタン酸化物薄膜(B)の位置)を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。
次いで、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜(B)の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、各チタン酸化物薄膜(B)の構成元素分析を行った。
表4に、各透明電極フィルム、透明電極ガラスについて得られた結果をまとめて示す。
上記表4によれば、次のことが分かる。
すなわち、No.比1に係る透明電極ガラス、No.比2に係る透明電極フィルムは、ともに初期の表面抵抗値が極めて高いことが分かる。
これらに対し、No.1〜3に係る透明電極フィルムは、上記に比較して、初期、加熱後も表面抵抗値が低いことが分かる。また、No.1〜3に係る透明電極フィルムは、透明電極中に銀薄膜を有するにも関わらず、その加熱後も、可視光透過率がほとんど変動していないことが分かる。
これらのことから、No.1〜3に係る透明電極フィルムは、導電性、可視光に対する透明性に優れ、しかも、銀合金薄膜を構成する銀の拡散を抑制できており、耐久性、耐熱性に優れていることが確認できた。
4.調光フィルム、調光ガラスの作製
(実施例1)
次に、No.3に係る透明電極フィルムを2枚用い、これらフィルム間に液晶層を挟持し、実施例1に係る調光フィルムを作製した。
(実施例1)
次に、No.3に係る透明電極フィルムを2枚用い、これらフィルム間に液晶層を挟持し、実施例1に係る調光フィルムを作製した。
すなわち、先ず、液晶材(Merck(株)製、「ネマチック液晶TL213」)80重量部に、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート17.5重量部、ヘキサンジオールビニルエーテルアクリレート2.5重量部を加え、さらに、紫外線開始剤として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1重量部を添加し、液体状の液晶組成物を調製した。
次いで、2枚のNo.3に係る透明電極フィルムの透明電極面を対向させ、40μmの隙間を形成し、この隙間に、上記液晶組成物を自然注入した。その後、30mW/cm2の紫外線光を30秒間、面全体に均一に照射し、モノマーの重合を行った。
これにより、一対の透明電極フィルムの間に、液晶材と高分子との混合物よりなる液晶層を挟持してなる実施例1に係る調光フィルムを作製した。
(比較例1)
2枚のNo.比1に係る透明電極ガラスを用いた以外は、実施例1に係る調光フィルムと同様にして、比較例1に係る調光ガラスを作製した。
2枚のNo.比1に係る透明電極ガラスを用いた以外は、実施例1に係る調光フィルムと同様にして、比較例1に係る調光ガラスを作製した。
(比較例2)
2枚のNo.比2に係る透明電極フィルムを用いた以外は、実施例1に係る調光フィルムと同様にして、比較例2に係る調光フィルムを作製した。
2枚のNo.比2に係る透明電極フィルムを用いた以外は、実施例1に係る調光フィルムと同様にして、比較例2に係る調光フィルムを作製した。
5.調光性確認試験
各調光フィルム、調光ガラス(50cm×10cm)の短辺の一方から電極を取り出し、交流60Hz・12Vを印加するとともに、裏面からバックライトにより可視光を入射させ、前面に白濁が生じるか否かを確認した。
各調光フィルム、調光ガラス(50cm×10cm)の短辺の一方から電極を取り出し、交流60Hz・12Vを印加するとともに、裏面からバックライトにより可視光を入射させ、前面に白濁が生じるか否かを確認した。
その結果、比較例1に係る調光ガラス、比較例2に係る調光フィルムでは、取り出し電極から遠い領域は、十分透明にならず、白濁部が生じ、まだらとなった。
これに対し、実施例1に係る調光フィルムでは、前面全てが透明になり、白濁部は確認されなかった。
これらの結果から、本発明に係る調光フィルムによれば、従来に比較して、調光性、可視光に対する透明性、可撓性に優れ、安価な調光フィルムが得られることが確認できた。
10 調光フィルム
12 透明電極フィルム
14 液晶層
14a 液晶分子
16 透明高分子フィルム
18 透明電極
12 透明電極フィルム
14 液晶層
14a 液晶分子
16 透明高分子フィルム
18 透明電極
Claims (4)
- 一対の透明電極フィルムの間に液晶層が挟持されてなる調光フィルムであって、
前記透明電極フィルムのうち、少なくとも一方は、
透明高分子フィルムの前記液晶層側の面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と、金属薄膜とが積層された透明電極を有しており、かつ、
前記金属薄膜の少なくとも一方面には、前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜が形成されていることを特徴とする調光フィルム。 - 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜および前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物およびセリウムの酸化物から選択される1種または2種以上であり、
前記金属薄膜を構成する金属は、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウムおよびインジウムから選択される少なくとも1種の金属または前記金属を1種以上含む合金であることを特徴とする請求項1に記載の調光フィルム。 - 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜および前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜を構成する金属酸化物は、チタンの酸化物であり、
前記金属薄膜を構成する金属は、銀または銀合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の調光フィルム。 - 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、液相法により形成されており、
前記有機分を含有する金属酸化物薄膜よりも薄い金属酸化物薄膜は、気相法により形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の調光フィルム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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US10373732B2 (en) | 2015-07-16 | 2019-08-06 | Kaneka Corporation | Transparent electrode film, dimming element, and method for manufacturing transparent electrode film |
-
2006
- 2006-10-25 JP JP2006289871A patent/JP2008107549A/ja not_active Withdrawn
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