JP2011133721A - 透明積層フィルム - Google Patents

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哲也 竹内
Tetsuji Narasaki
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Masataka Inuzuka
正隆 犬塚
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【課題】意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性を兼ね備えた透明積層フィルムを提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決するため、本発明に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と金属薄膜とが積層されてなる積層構造を有し、可視光透過率が70%以上、日射透過率が50%以下、および、日射吸収率が40%以下である透明積層フィルムとする。上記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されたものであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明積層フィルムに関し、さらに詳しくは、熱線カット用途等に好適に用いることが可能な透明積層フィルムに関するものである。
従来、光学機能性フィルムとして、フィルム面に各種の機能性薄膜を積層した透明積層フィルムが知られている。
具体的には、例えば、特許文献1には、PETフィルム上に、酸化チタン薄膜層、金属チタン層、銀−銅合金薄膜層、金属チタン層、酸化チタン薄膜層を順次設けた積層構造を有する透明積層フィルムが開示されている。
特公昭61−34384号公報
しかしながら、従来の透明積層フィルムは、建築物や自動車等の窓ガラス等に貼り付けた際に、当該フィルムを貼り付けた箇所と当該フィルムを貼り付けていない箇所との差が目立ち、意匠性が低下することがあった。
また、従来の透明積層フィルムは、当該フィルムを介して太陽光を浴びた際に、透過した日射によるジリジリ感等を感じ、快適性に劣ることがあった。
また、建築物の窓ガラス等のガラスに貼り付けた際に、ガラス中央部が熱くなるとともに、ガラス縁部が冷たいままとなり、ガラス縁部から割れてしまうといった熱割れが発生することがあった。特に、この種の熱割れは、自動車等のような強化ガラスを用いていないビルや住宅向け等の建築物の窓ガラスにて発生しやすかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性を兼ね備えた透明積層フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、有機分を含有する金属酸化物薄膜と金属薄膜とが積層されてなる積層構造を有し、可視光透過率が70%以上、日射透過率が50%以下、および、日射吸収率が40%以下であることを要旨とする。
ここで、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されたものであることが好ましい。
また、上記透明積層フィルムは、水蒸気透過率が0.2g/m以上であることが好ましい。
また、上記透明高分子フィルムの厚みは100μm以下であることが好ましい。
また、上記積層構造の表面に直接または他の薄膜層を介して粘着層が形成されていることが好ましい。
また、上記積層構造の形成面とは反対側の透明高分子フィルムの表面には、ハードコート層が形成されていることが好ましい。
また、上記金属薄膜の少なくとも一方面には、金属酸化物より主に構成されるバリア薄膜が形成されていることが好ましい。
また、上記金属酸化物薄膜は、チタン酸化物薄膜であることが好ましい。
また、上記金属薄膜は、銀薄膜または銀合金薄膜であることが好ましい。
また、上記バリア薄膜は、チタン酸化物より主に構成されることが好ましい。
また、上記バリア薄膜は、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物薄膜が後酸化されて形成された薄膜であることが好ましい。
また、上記透明積層フィルムは、窓ガラスに貼り付けられるものであることが好ましい。
本発明に係る透明積層フィルムは、上述した特定の積層構造を有し、可視光透過率が70%以上である。そのため、建築物や自動車等の窓ガラス等に貼り付けた際に、当該フィルムを貼り付けた箇所と当該フィルムを貼り付けていない箇所との差を目立たなくすることが可能となり、意匠性に優れる。また、本発明に係る透明積層フィルムは、上述した特定の積層構造を有し、日射透過率が50%以下である。そのため、当該フィルムを介して太陽光を浴びた際に、透過した日射によるジリジリ感等を感じ難くなり、快適性に優れる。また、本発明に係る透明積層フィルムは、特定の積層構造を有し、日射吸収率が40%以下である。そのため、建築物の窓ガラス等のガラスに貼り付けた場合であっても、日射による熱割れが生じ難く、耐ガラス熱割れ性に優れる。
したがって、上記意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性に優れる本発明に係る透明積層フィルムは、窓ガラスに貼り付ける熱線カットフィルム等として有用である。
上記有機分を含有する金属酸化物薄膜がゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されたものである場合には、スパッタ等により形成した金属酸化物薄膜に比べ、粗な薄膜とすることができる。そのため、建築物や自動車等の窓ガラスに当該フィルムを水貼り施工した場合に、当該フィルムと窓ガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られる。そのため、当該フィルムの水貼り施工性を向上させることができる。特に、上記透明積層フィルムの水蒸気透過率が0.2g/m以上である場合には、上記水抜け性に優れる。
また、上記透明高分子フィルムの厚みが100μm以下である場合には、上記水抜け性に優れる。さらに、上記有機分を含有する金属酸化物薄膜がゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されたものである場合には、両者の相乗効果により一層水抜け性に優れる。
また、上記積層構造の表面に直接または薄膜層を介して粘着層が形成されている場合には、建築物や自動車等の窓ガラス等に貼り付ける際に、別途粘着層を形成する必要がない。そのため、施工性に優れる。
上記積層構造の形成面とは反対側の透明高分子フィルムの表面にハードコート層が形成されている場合には、上記積層構造の損傷を抑制することができる。そのため、上記意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性を長期にわたって維持しやすくなり、耐久性、信頼性の向上に寄与できる。
また、上記金属薄膜の少なくとも一方面に、金属酸化物より主に構成されるバリア薄膜が形成されている場合には、各金属薄膜を構成する金属元素の日射による拡散を抑制することができる。そのため、上記意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性を長期にわたって維持しやすくなり、耐久性、信頼性の向上に寄与できる。
また、上記金属酸化物薄膜がチタン酸化物薄膜である場合には、比較的高い屈折率が得やすくなるため、可視光透過率を向上させやすくなる。
また、上記金属薄膜が銀薄膜または銀合金薄膜である場合には、本発明で規定する可視光透過率、日射透過率、日射吸収率の範囲内でバランスに優れる。
また、上記バリア薄膜がチタン酸化物より主に構成される場合には、銀等の金属層の構成元素の日射による拡散を抑制しやすい。
また、上記バリア薄膜が、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物層が後酸化されて形成された薄膜である場合には、後酸化時に積層構造中に含まれていた吸着水や酸素が消費される。そのため、太陽光が当たった場合でも、有機分を含む金属酸化物薄膜の形状変化が抑制され、積層構造の剥離が生じ難くなり、日射に対する耐久性を向上させやすくなる。
本実施形態に係る透明積層フィルム(以下、「本フィルム」ということがある。)について詳細に説明する。
1.本フィルム
本フィルムは、透明高分子フィルムと積層構造とを少なくとも有している。積層構造は、透明高分子フィルムの何れか一方面に形成されていても良いし、透明高分子フィルムの両面に形成されていても良い。好ましくは、コスト等の観点から、透明高分子フィルムの片面に積層構造が形成されていると良い。
本フィルムにおいて、透明高分子フィルムは、積層構造を形成するためのベース基材となるものである。透明高分子フィルムの材料としては、可視光領域において透明性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成できるものであれば、何れのものでも用いることができる。
透明高分子フィルムの材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー等の高分子材料を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、2種以上の透明高分子を積層して用いることもできる。
これらのうち、とりわけ、透明性、耐久性、加工性等に優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマー等を好適なものとして例示することができる。
透明高分子フィルムは、片面または両面に易接着層等の表面処理層が形成されていても良い。
透明高分子フィルムの厚みは、本フィルムの用途、フィルム材料、光学特性、耐久性などを考慮して種々調節することができる。透明高分子フィルムの厚みの下限値は、加工時にしわが入り難い、破断し難いなどの観点から、好ましくは、15μm以上、より好ましくは、25μm以上であると良い。一方、透明高分子フィルムの厚みの上限値は、巻回容易性、経済性などの観点から、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、250μm以下であると良い。とりわけ、透明高分子フィルムの厚みの上限値が100μm以下である場合には、ガラスに当該フィルムを水貼り施工した場合に、当該フィルムとガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られ、当該フィルムの水貼り施工性を向上させることができる等の利点がある。上記水抜け性、水貼り施工性の観点から、透明高分子フィルムの厚みの上限値は、好ましくは、90μm以下、より好ましくは、75μm以下であると良い。
本フィルムにおいて、積層構造は、複数の薄膜層が積層されて形成されており、金属酸化物薄膜(以下、「MO」と略表記することがある。)と金属薄膜(以下、「M」と略表記することがある。)とを少なくとも含んでいる。金属薄膜(M)の何れか一方面または両面には、さらに、バリア薄膜(以下、「B」と略表記することがある。)が形成されていても良い。
積層構造の基本構造としては、金属酸化物薄膜(MO)と金属薄膜(M)とが交互に積層された積層構造等を例示することができる。
積層構造の基本単位としては、具体的には、例えば、透明高分子フィルム側から、MO│B/M/B、MO│M/B、MO│B/Mといった第1基本単位、または、透明高分子フィルム側から、B/M/B│MO、M/B│MO、B/M│MOといった第2基本単位などを例示することができる。なお、「│」が層の区切りを意味する。また、「/」は金属薄膜(M)にバリア薄膜(B)が付随していることを意味する。
積層構造は、第1基本単位から選択される1または2以上の基本単位が単数または複数繰り返し積層されていても良いし、第2基本単位から選択される1または2以上の基本単位が単数または複数繰り返し積層されていても良い。
これらのうち、金属薄膜(M)を構成する元素が金属酸化物薄膜(MO)中に拡散するのを抑制しやすく、耐久性の向上に寄与できるなどの観点から、第1基本単位であれば、MO│B/M/Bの単位を、第2基本単位であれば、B/M/B│MOの単位を好適に選択することができる。
第1の基本単位を単数または複数繰り返し積層した場合、最外層には、MOを配置することが好ましい。また、第2の基本単位を単数または複数繰り返し積層した場合、最外層には、B/M/B、B/M、M/B、Mを配置することが好ましい。より好ましくは、B/M/Bを配置すると良い。
積層構造の積層数は、可視光透過性、日射遮蔽性等の光学特性、耐ガラス熱割れ性、水抜け性、製造コストなどを考慮して異ならせることができる。上記積層数としては、2〜10層などが好ましく、3層、5層、7層、9層などの奇数層がより好ましい。さらに好ましくは、可視光透過性、日射遮蔽性、耐ガラス熱割れ性、水抜け性、製造コストなどの観点から、3層、5層、7層であると良い。
積層構造は、より具体的には、可視光透過性、日射遮蔽性、耐ガラス熱割れ性、水抜け性のバランスを取りやすい、製造コストの抑制などの観点から、透明高分子フィルム側から、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)などの3層積層構造、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)│B/M/B(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)│B/M(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)│M/B(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)│M(4層目)│MO(5層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)│MO(4層目)│B/M/B(5層目)などの5層積層構造、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)│B/M/B(4層目)│MO(5層目)│B/M/B(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)│B/M(4層目)│MO(5層目)│B/M(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)│M/B(4層目)│MO(5層目)│M/B(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)│M(4層目)│MO(5層目)│M(6層目)│MO(7層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)│MO(4層目)│B/M/B(5層目)│MO(6層目)│B/M/B(7層目)などの7層積層構造を好適な構造として例示することができる。
なお、本願における積層数は、バリア膜(B)が金属薄膜(M)に付随する薄膜であるため、バリア膜(B)を含めた金属薄膜(M)を1層、金属酸化物薄膜(MO)を1層として数えている。
本フィルムにおいて、各薄膜は、一度に形成されたものであっても良いし、分割形成されたものであっても良い。また、積層構造中に含まれる各薄膜のうち、一部または全部が分割形成されていても良い。各薄膜が、複数の分割層よりなる場合、その分割数は、各薄膜ごとに同じであっても良いし、異なっていても良い。なお、分割層は積層数として数えず、複数の分割層が集合して形成された1つの薄膜を1層として数える。
本フィルムにおいて、各薄膜の組成または材料は、それぞれ同一の組成または材料から形成されていても良いし、異なる組成または材料から形成されていても良い。なお、この点は、各薄膜が複数の分割層よりなる場合も同様である。
また、同種の各薄膜について、その膜厚は、ほぼ同一であっても良いし、異なっていても良い。
本フィルムは、概略、上述した積層構造を有している。ここで、本フィルムは、可視光透過率が70%以上、日射透過率が50%以下、日射吸収率が40%以下である。
本フィルムは、可視光透過率が70%以上であるため、建築物の窓ガラス等に貼り付けた際に、当該フィルムを貼り付けた箇所と当該フィルムを貼り付けていない箇所との差を目立たなくすることが可能となり、意匠性に優れる。可視光透過率が70%未満になると、当該フィルムを貼り付けた箇所と当該フィルムを貼り付けていない箇所との差が目立ち、意匠性が低下する。
本フィルムは、日射透過率が50%以下であるため、当該フィルムを介して太陽光を浴びた際に、透過した日射によるジリジリ感等を感じ難くなり、快適性に優れる。日射透過率が50%を越えると、当該フィルムを介して太陽光を浴びた際に、透過した日射によるジリジリ感等を感じやすくなり、快適性が低下する。
本フィルムは、日射吸収率が40%以下であるため、建築物の窓ガラス等のガラスに貼り付けた場合であっても、日射による熱割れが生じ難く、耐ガラス熱割れ性に優れる。日射吸収率が40%を越えると、建築物の窓ガラス等のガラスに貼り付けた際に、日射による熱割れが生じ易くなり、耐ガラス熱割れ性が低下する。
なお、上記可視光透過率、日射透過率、日射吸収率は、以下の手順により測定することができる。すなわち、本フィルムの薄膜積層面に、厚さ25μmのアクリル粘着シートを貼り付け、この粘着シートの粘着層を、厚さ3mmのフロートガラスの片面に貼り付けた測定サンプルを準備する。その後、可視光透過率については、JIS A5759に準拠し、分光光度計を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率を計算することにより求めるころができる。日射透過率については、JIS A5759に準拠し、分光光度計を用いて、波長300〜2500nmの透過スペクトルを測定し、日射透過率を計算することにより求めることができる。日射吸収率については、JIS A5759に準拠し、分光光度計を用いて、波長300〜2500nmの透過スペクトルを測定し、日射透過率および日射反射率を求め、100−日射透過率−日射反射率を計算することにより求めることができる。但し、特性測定時の測定光は、いずれもガラス面側から入射させる。
本フィルムは、その水蒸気透過率が0.2g/m以上であることが好ましい。建築物や自動車等の窓ガラスに本フィルムを水貼り施工した場合に、本フィルムと窓ガラスとの間に水が残ったときでも、優れた水抜け性が得られ、本フィルムの水貼り施工性を向上させることができるからである。
なお、上記水蒸気透過率は、JIS K7129 A法(感湿センサー法)に準じて測定することができる。
以下、本フィルムの積層構造を構成する金属酸化物薄膜(MO)および金属薄膜(M)、本フィルムの積層構造を任意に構成することがあるバリア薄膜(B)についてより詳細に説明する。
<金属酸化物薄膜>
本フィルムにおいて、金属酸化物薄膜は、可視光領域において透明性を有し、主として高屈折率層として機能しうるものである。ここで、高屈折率とは、633nmの光に対する屈折率が1.7以上ある場合をいう。
上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
上記金属酸化物としては、とりわけ、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、酸化チタン(TiO)、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
ここで、金属酸化物薄膜は、主として上述した金属酸化物より構成されているが、金属酸化物以外にも、有機分を含有していても良い。有機分を含有することで、本フィルムの柔軟性をより向上させることができるためである。この種の有機分としては、具体的には、例えば、ゾル−ゲル法の出発原料に由来する成分等、金属酸化物層の形成材料に由来する成分などを例示することができる。
上記有機分としては、より具体的には、例えば、上述した金属酸化物を構成する金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどといった有機金属化合物(その分解物なども含む)や、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する有機化合物(後述する)等の各種添加剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の下限値は、柔軟性を付与しやすいなどの観点から、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、7質量%以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の上限値は、高屈折率を確保しやくなる、耐溶剤性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下であると良い。
なお、上記有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。
金属酸化物薄膜の膜厚は、可視光透過性、日射遮蔽性などを考慮して調節することができる。
以上のような構成を有する金属酸化物薄膜は、気相法、液相法の何れでも形成することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れているので好適である。
上記液相法としては、有機分を残存させやすいなどの観点から、ゾル−ゲル法を好適に利用することができる。
上記ゾル−ゲル法としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の有機金属化合物を含有するコーティング液を薄膜状にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜の前駆体薄膜を形成した後、この前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させ、有機金属化合物を構成する金属の酸化物を合成するなどの方法を例示することができる。これによれば、金属酸化物を主成分として含み、有機分を含有する金属酸化物薄膜を形成することができる。以下、上記方法について詳細に説明する。
上記コーティング液は、上記有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。この際、有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。また、これらは単量体、多量体の何れであっても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量は、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは、3〜15質量%、さらに好ましくは、5〜10質量%の範囲内にあると良い。
また、上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記溶媒量は、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、5〜100倍量、より好ましくは、7〜30倍量、さらに好ましくは、10〜20倍量の範囲内であると良い。
上記溶媒量が100倍量より多くなると、一回のコーティングで形成できる膜厚が薄くなり、所望の膜厚を得るために多数回のコーティングが必要となる傾向が見られる。一方、5倍量より少なくなると、膜厚が厚くなり過ぎ、有機金属化合物の加水分解・縮合反応が十分に進行し難くなる傾向が見られる。したがって、上記溶媒量は、これらを考慮して選択すると良い。
また、上記コーティング液中には、ゾル−ゲル法による加水分解が促進され、高屈折率化が図りやすくなるなどの観点から、必要に応じて水が含まれていても良い。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングされたコーティング液を乾燥する場合、公知の乾燥装置などを用いて乾燥させれば良く、この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線、電子線、X線等の光エネルギーの照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、好ましくは、光エネルギーの照射、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を透明高分子フィルムに与え難いからである(とりわけ、紫外線照射の場合は、比較的簡易な設備で済む利点がある。)。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
さらには、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法を採用した場合には、スパッタ等により形成した金属酸化物薄膜に比べ、粗な金属酸化物薄膜とすることができる。そのため、建築物の窓ガラスに当該フィルムを水貼り施工した場合に、本フィルムと窓ガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られ、水貼り施工性を向上させることができるなどの利点があるからである。
この際、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する光エネルギーの光量は、前駆体薄膜を主に形成している有機金属化合物の種類、前駆体薄膜の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する光エネルギーの光量が過度に小さすぎると、金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する光エネルギーの光量が過度に大きすぎると、光エネルギーの照射の際に生じる熱により透明高分子フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する光エネルギーが紫外線である場合、その光量は、金属酸化物薄膜の屈折率、透明高分子フィルムが受けるダメージなどの観点から、測定波長300〜390nmのとき、好ましくは、300〜8000mJ/cm、より好ましくは、500〜5000mJ/cmの範囲内であると良い。
なお、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、光エネルギーの照射を用いる場合、上述したコーティング液中に、有機金属化合物と反応して光吸収性(例えば、紫外線吸収性)のキレートを形成する有機化合物等の添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め光吸収性キレートが形成されたところに光エネルギーの照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合としては、屈折率の上がりやすさ、塗膜状態での安定性などの観点から、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、好ましくは、0.1〜2倍モル、より好ましくは、0.5〜1.5倍モルの範囲内にあると良い。
<金属薄膜>
本フィルムにおいて、金属薄膜は、主として日射遮蔽層等として機能しうる。
上記金属としては、具体的には、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属としては、積層時の可視光透過性、熱線反射性などに優れるなどの観点から、銀または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金であると良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag−Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag−Ti系合金)等であると良い。銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの利点があるからである。
銅を含む銀合金を用いる場合、銀、銅以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Bi、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Cu系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
銅を含む銀合金を用いる場合、銅の含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、1原子%以上、より好ましくは、2原子%以上、さらに好ましくは、3原子%以上であると良い。一方、銅の含有量の上限値は、高透明性を確保しやすくなる、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、20原子%以下、より好ましくは、10原子%以下、さらに好ましくは、5原子%以下であると良い。
また、ビスマスを含む銀合金を用いる場合、銀、ビスマス以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Bi系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、ビスマスの含有量の上限値は、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、5原子%以下、より好ましくは、2原子%以下、さらに好ましくは、1原子%以下であると良い。
また、チタンを含む銀合金を用いる場合、銀、チタン以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pb、Biなど、Ag−Ti系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
チタンを含む銀合金を用いる場合、チタンの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、チタンの含有量の上限値は、膜にした場合、完全な固溶体が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、2原子%以下、より好ましくは、1.75原子%以下、さらに好ましくは、1.5原子%以下であると良い。
なお、上記銅、ビスマス、チタン等の副元素割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。また、上記金属層を構成する金属(合金含む)は、部分的に酸化されていても良い。
金属薄膜の膜厚の下限値は、可視光透過性、日射遮蔽性、水抜け性などの観点から、好ましくは、3nm以上、より好ましくは、5nm以上、さらに好ましくは、7nm以上であると良い。一方、金属薄膜の膜厚の上限値は、可視光の透明性、経済性などの観点から、好ましくは、30nm以下、より好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、15nm以下であると良い。
ここで、金属薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法などを例示することができる。金属薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
これら方法のうち、緻密な膜質が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、好ましくは、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、金属薄膜は、後述する後酸化等を受けて、金属薄膜の機能を損なわない範囲内で酸化されていても良い。
<バリア薄膜>
本フィルムにおいて、バリア薄膜は、主として、金属薄膜を構成する元素が、金属酸化物薄膜中へ拡散するのを抑制するバリア的な機能を有している。また、金属酸化物薄膜と金属薄膜との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与しうる。
なお、バリア薄膜は、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
バリア薄膜を構成する金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、バリア薄膜は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
ここで、バリア薄膜としては、金属薄膜を構成する金属の拡散抑制効果に優れる、密着性に優れるなどの観点から、金属酸化物薄膜中に含まれる金属の酸化物より主に構成されていると良い。
より具体的には、例えば、金属酸化物薄膜としてTiO薄膜を選択した場合、バリア薄膜は、TiO薄膜中に含まれる金属であるTiの酸化物より主に構成されるチタン酸化物薄膜であると良い。
また、バリア薄膜がチタン酸化物薄膜である場合、当該バリア薄膜は、当初からチタン酸化物として形成された薄膜であっても良いし、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物薄膜が後酸化されて形成された薄膜等であっても良い。
バリア薄膜は、金属酸化物薄膜と同じように主に金属酸化物から構成されるが、金属酸化物薄膜よりも膜厚が薄く設定される。これは、金属薄膜を構成する金属の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、本フィルムの製造コストの低減にも寄与することができる。
バリア薄膜の膜厚の下限値は、バリア性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、1nm以上、より好ましくは、1.5nm以上、さらに好ましくは、2nm以上であると良い。一方、バリア薄膜の膜厚の上限値は、経済性などの観点から、好ましくは、15nm以下、より好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、8nm以下であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの下限値は、バリア性などの観点から、1.0/4.0以上、より好ましくは、1.0/3.8以上、さらに好ましくは、1.0/3.5以上、さらにより好ましくは、1.0/3.0以上、最も好ましくは、1.0/2.8以上であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの上限値は、可視光の透明性などの観点から、好ましくは、1.0/0.5以下、より好ましくは、1.0/0.7以下、さらに好ましくは、1.0/1.0以下、さらにより好ましくは、1.0/1.2以下、最も好ましくは、1.0/1.5以下であると良い。
上記Ti/O比は、当該薄膜の組成から算出することができる。当該薄膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
具体的な組成分析方法について説明すると、先ず、超薄切片法(ミクロトーム)などを用いて、分析対象となる当該薄膜を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製する。次いで、断面方向から積層構造と当該薄膜の位置を、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認する。次いで、EDX装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となる当該薄膜の膜厚中央部近傍に入射させる。試験片表面から入射した電子は、ある深さまで入り込み、各種の電子線やX線を発生させる。この際の特性X線を検出して分析することで、当該薄膜の構成元素分析を行うことができる。
本フィルムにおいて、バリア薄膜は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法を好適に利用することができる。
上記気相法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、上記積層構造中に含まれうる各バリア層は、これら気相法のうち何れか1つの方法を利用して形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を利用して形成されていても良い。
また、上記バリア薄膜は、上述した気相法を利用し、当初から金属酸化物薄膜として成膜しても良いし、あるいは、一旦、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物層を成膜した後、これを事後的に酸化して形成することも可能である。なお、部分酸化された金属酸化物薄膜とは、さらに酸化される余地がある金属酸化物薄膜を指す。
当初から金属酸化物薄膜として成膜する場合、具体的には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら薄膜を形成すれば良い(反応性スパッタリング法)。反応性スパッタリング法を用いて、例えば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得る場合、雰囲気中の酸素濃度(不活性ガスに対する酸素を含むガスの体積割合)は、上述した膜厚範囲を考慮して最適な割合を適宜選択すれば良い。
一方、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を成膜した後、これを事後的に後酸化する場合、具体的には、透明高分子フィルム上に上述した積層構造を形成した後、積層構造中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を後酸化させる等すれば良い。なお、金属薄膜の成膜には、スパッタリング法等を、部分酸化された金属酸化物薄膜の成膜には、上述した反応性スパッタリング法等を用いれば良い。
また、後酸化手法としては、加熱処理、加圧処理、化学処理、自然酸化等を例示することができる。これら後酸化手法のうち、比較的簡単かつ確実に後酸化を行うことができるなどの観点から、加熱処理が好ましい。上記加熱処理としては、例えば、上述した積層構造を有する透明高分子フィルムを加熱炉等の加熱雰囲気中に存在させる方法、温水中に浸漬する方法、マイクロ波加熱する方法や、積層構造中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜等を通電加熱する方法などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。
上記加熱処理時の加熱条件としては、具体的には、例えば、好ましくは、30℃〜60℃、より好ましくは、32℃〜57℃、さらに好ましくは、35℃〜55℃の加熱温度、加熱雰囲気中に存在させる場合、好ましくは、5日間以上、より好ましくは、10日間以上、さらに好ましくは、15日間以上の加熱時間から選択すると良い。上記加熱条件の範囲内であれば、後酸化効果、透明高分子フィルムの熱変形・融着抑制等が良好だからである。
また、上記加熱処理時の加熱雰囲気は、大気中、高酸素雰囲気中、高湿度雰囲気中など酸素や水分の存在する雰囲気が好ましい。特に好ましくは、製造性、低コスト化等の観点から、大気中であると良い。
積層構造中に上述した後酸化薄膜を含んでいる場合には、後酸化時に、金属酸化物層中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、太陽光が当たっても金属酸化物薄膜が化学反応し難くなる。具体的には、例えば、金属酸化物薄膜がゾル−ゲル法により形成されている場合、後酸化時に、金属酸化物薄膜中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、金属酸化物薄膜中に残存していたゾル−ゲル法による出発原料(金属アルコキシド等)と水分(吸着水等)・酸素等とが、太陽光によってゾルゲル硬化反応し難くなる。そのため、硬化収縮等の体積変化によって生じる内部応力を緩和することが可能となり、積層構造の界面剥離等を抑制しやすくなる等、太陽光に対する耐久性を向上させやすくなる。
<粘着層>
本フィルムは、上記積層構造の表面に直接または薄膜層を介して粘着層が1層または2層以上形成されていても良い。粘着層が形成されている場合には、建築物の窓ガラス等に貼り付ける際に、別途粘着層を形成する必要がないため、施工性に優れるなどの利点がある。
上記粘着層を構成する主材料としては、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、好ましくは、コスト、透明性などの観点から、アクリル系樹脂などである。
上記粘着層の厚みの下限値は、粘着力確保などの観点から、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、15μm以上であると良い。一方、上記粘着層の厚みの上限値は、厚みムラによる景色の歪みをなくすなどの観点から、好ましくは、50μm以下、より好ましくは、40μm以下、さらに好ましくは、30μm以下であると良い。
上記粘着層を形成する方法としては、具体的には、例えば、上記主材料樹脂、および/または、上記主材料樹脂になりうるモノマー・オリゴマーと、必要に応じて添加される各種添加剤と、メチルエチルケトンなどの各種溶剤とを混合するなどして調製した塗工液を、本フィルムの積層構造の形成面側に塗工し、乾燥、必要に応じて重合させる方法などを例示することができる。
<ハードコート層>
本フィルムは、上記積層構造の形成面とは反対側の透明高分子フィルムの表面にハードコート層が1層または2層以上形成されていても良い。ハードコート層が形成されている場合には、上記積層構造の損傷を抑制することができる。そのため、意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性を長期にわたって維持しやすくなり、耐久性、信頼性の向上に寄与できるなどの利点がある。
上記ハードコート層を構成する主材料としては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、好ましくは、コスト、透明性などの観点から、アクリル樹脂などである。
上記ハードコート層の厚みの下限値は、耐擦傷性の確保などの観点から、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、2μm以上であると良い。一方、上記ハードコート層の厚みの上限値は、コスト、色ムラをなくすなどの観点から、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、10μm以下であると良い。
上記ハードコート層を形成する方法としては、具体的には、例えば、上記主材料樹脂、および/または、上記主材料樹脂になりうるモノマー・オリゴマーと、必要に応じて添加される各種添加剤と、メチルエチルケトンなどの各種溶剤とを混合するなどして調製した塗工液を、本フィルムの積層構造の形成面とは反対側の面に塗工し、乾燥、必要に応じて重合させる方法などを例示することができる。
2.本フィルムの用途
本フィルムの用途は、特に限定されるものではない。本フィルムは、熱線カット用途に好適に用いることができるが、他にも、合わせガラス、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのディスプレイ表示電極、タッチパネル電極、調光シート電極、電磁波シールド、有機ELなどのガス(O、HO等)バリアフィルムなどの各種の用途にも適用することができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
1.実施例および比較例の一部に係る透明積層フィルム
実施例および比較例の一部に係る透明積層フィルムとして、概略以下の7層積層構造を有する各透明積層フィルムを作製した。
すなわち、実施例1、2、3に係る透明積層フィルムは、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(1層目)│金属Ti薄膜/Ag−Cu合金薄膜/金属Ti薄膜が、後酸化されて形成された薄膜(2層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(3層目)│金属Ti薄膜/Ag−Cu合金薄膜/金属Ti薄膜が、後酸化されて形成された薄膜(4層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(5層目)│金属Ti薄膜/Ag−Cu合金薄膜/金属Ti薄膜が、後酸化されて形成された薄膜(6層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(7層目)が順に積層された積層構造を有している。
なお、上記金属Ti薄膜が後酸化されて形成されたものが、バリア薄膜に該当する。バリア薄膜は、合金薄膜に付随する薄膜層として、合金薄膜に含めて積層数を数えている。また、上記後酸化は、具体的には、熱酸化である。
また、実施例4に係る透明積層フィルムは、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(1層目)│Ag−Cu合金薄膜(2層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(3層目)│Ag−Cu合金薄膜(4層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(5層目)│Ag−Cu合金薄膜(6層目)│ゾル−ゲル法によるTiO薄膜(7層目)が順に積層された積層構造を有している。
なお、実施例4に係る透明積層フィルムは、2、4、6層目において、Ag−Cu合金薄膜の両面にバリア薄膜が形成されていない点で、実施例1、2、3に係る透明積層フィルムと大きく異なっている。
以下、実施例および比較例の一部に係る透明積層フィルムの具体的な作製手順を示す。
(コーティング液の調製)
先ず、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、コーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75質量%/3.38質量%/59.87質量%/30.00質量%とした。
(各薄膜の積層)
透明高分子フィルムとして、易接着層が片面に形成された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)を用い、このPETフィルムの易接着層面側とは反対側の面(PET面)側に、1層目として、TiO薄膜を以下の手順により成膜した。
すなわち、PETフィルムのPET面側に、マイクログラビアコーターを用いて、それぞれ所定の溝容積のグラビアロールで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させ、TiO薄膜の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を1.5秒間照射した。これにより各PETフィルム上に、ゾル−ゲル法による各TiO薄膜(1層目)を成膜した。
次に、1層目の上に、2層目を構成する各薄膜を成膜した。
すなわち、実施例1、2、3については、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTiO薄膜上に、下側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この下側の金属Ti薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、このAg−Cu合金薄膜上に、上側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。
この際、上側および下側の金属Ti薄膜の成膜条件は、Tiターゲット(純度4N)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)とするとともに、実施例1は、投入電力:1.5(kW)、成膜時間:1.1秒とし、実施例2は、投入電力:4.4(kW)、成膜時間:1.1秒とし、実施例3は、投入電力:0.7(kW)、成膜時間:1.1秒とした。
また、Ag−Cu合金薄膜の成膜条件は、Ag−Cu合金ターゲット(Cu含有量:4原子%)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)、投入電力:1.5(kW)、成膜時間:1.1秒とした。
実施例4については、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTiO薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜を上記成膜条件でスパッタリングにより成膜した。つまり、実施例4では、上述した上側および下側の金属Ti薄膜を成膜しなかった。
次に、3層目として、2層目の上に、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目に準じた成膜手順を2回行うことにより、所定の膜厚とした。
次に、4層目として、3層目の上に、4層目を構成する各薄膜を成膜した。ここでは、2層目に準じた成膜手順を行った。
但し、実施例1〜4については、Ag−Cu合金薄膜の成膜時に、上述した成膜条件を、Ag−Cu合金ターゲット(Cu含有量:4原子%)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)、投入電力:1.8(kW)、成膜時間:1.1秒と変更することで、膜厚を変化させた。
次に、5層目として、4層目の上に、3層目と同じ構成のゾル−ゲル法によるTiO薄膜を成膜した。
次に、6層目として、5層目の上に、2層目と同じ構成の各薄膜を成膜した。
次に、7層目として、6層目の上に、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目に準じた成膜手順を1回行うことにより、所定の膜厚とした。
その後、実施例1、2、3については、上記積層工程を経て得られた透明積層フィルムを、加熱炉内にて、40℃で300時間加熱処理することにより、積層構造中に含まれる金属Ti薄膜/Ag−Cu合金薄膜/金属Ti薄膜(実施例1、2、3の2、4、6層目)を後酸化させた。
以上により、実施例1〜4に係る透明積層フィルムを作製した。
なお、TiO薄膜の屈折率(測定波長は633nm)を、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定した。
また、TiO薄膜中に含まれる有機分の含有量を、X線光電子分光法(XPS)により測定した。
また、金属Ti薄膜を後酸化させて形成したチタン酸化物薄膜(実施例1、2、3)についてEDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。
すなわち、透明積層フィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。作製した試験片の断面を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。そして、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、チタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の構成元素分析を行った。
また、合金薄膜中の副元素(実施例1〜4:Cu)含有量を次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg−Cu合金薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
また、各薄膜の膜厚を、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
2.比較例の一部に係る透明積層フィルム
比較例1に係る透明積層フィルムとして市販の透明積層フィルム(NI帝人商事(株)製、「レフテルZH05G」)を準備した。当該透明積層フィルムは、PET系フィルムの片面に、スパッタ法によるAg合金スパッタ薄膜を1層含む積層構造を有している。
比較例2に係る透明積層フィルムとして市販の透明積層フィルム(NI帝人商事(株)製、「レフテルWH03」)を準備した。当該透明積層フィルムは、PET系フィルムの片面に、スパッタ法によるAg合金スパッタ薄膜を2層含む積層構造を有している。
比較例3に係る透明積層フィルムとして市販の透明積層フィルム(リンテック(株)製、「ヒートカットHCN−70B」)を準備した。当該透明積層フィルムは、PET系フィルムの片面に、赤外吸収材を含むポリマー層が積層されている。
表1に、作製した各透明積層フィルムの詳細な層構成を示す。
Figure 2011133721
3.各透明積層フィルムの特性
作製した各透明積層フィルムについて、以下の各特性を測定した。なお、測定サンプルには、透明積層フィルムの薄膜積層面に、厚さ25μmのアクリル粘着シート(日東電工(株)製、「CS9621」)を貼り付け、この粘着シートの粘着層を、厚さ3mmのフロートガラスの片面に貼り付けたものを用いた。また、特性評価時の測定光は、ガラス面側から入射させた。
(可視光透過率)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率を計算することにより求めた。
(日射透過率、日射吸収率)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜2500nmの透過スペクトルを測定し、日射透過率および日射反射率を計算することにより求めた。日射吸収率は、100−日射透過率−日射反射率を計算することにより求めた。
(水蒸気透過率)
各透明積層フィルムから50mm径のサンプルを切り出した。JIS K7129A法に準拠し、ガス透過率測定装置(GTRテック(株)製、「GTR−10XACT」)を用いて、水蒸気透過率(g/m・24hr・atm)を測定した。
なお、実施例で用いたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)の50μm厚品、100μm厚品についても、上記水蒸気透過率を同様にして測定したところ、 50μm厚品の水蒸気透過率は、5.00(g/m・24hr・atm)、100μm厚品の水蒸気透過率は、2.11(g/m・24hr・atm)であった。
4.評価
(意匠性)
各透明積層フィルムを窓ガラスに貼り付け、当該フィルムを貼り付けた箇所と当該フィルムを貼り付けていない箇所との差を目視により確認した(視認者とフィルムとの距離は、2m)。両者の差が目立たない場合を○、明らかに分かる場合を×と判断した。
(快適性)
各透明積層フィルムをフロートガラスに貼り付け、ガラスの後ろからハロゲンランプで照らし、フィルム側に20cm離して手をかざすことにより、ジリジリ感を確認した。ジリジリ感を感じない場合を○、ジリジリ感を感じる場合を×と判断した。
(耐ガラス熱割れ性)
耐ガラス熱割れ性は、想定される環境およびガラス、透明積層フィルムの条件から推定される発生熱応力と、ガラスエッジ許容応力値との比較から評価できる。発生熱応力が、ガラスエッジ許容応力値を越えると、熱割れが発生し、耐ガラス熱割れ性は「×」となる。一方、発生熱応力が、ガラスエッジ許容応力値以下ならば、耐ガラス熱割れ性は「○」となる。
発生熱応力σは以下の計算式にて算出することができる。
σ=k×k×k×k×f×(tg−ts)
但し、k:基本応力係数=0.47MPa・℃
:影係数
:カーテン係数
:面積係数
f :エッジ温度係数
tg:ガラス中央部温度
ts:サッシ温度
なお、以下の計算は、熱割れが最も発生しやすい冬期の晴れた日の午前中を想定している。また、熱割れが発生しやすい、日射吸収率の高い、厚みが10mmのフロートガラスに透明積層フィルムを使用した場合を想定している。
・ガラス中央部温度
単板ガラスの計算式
tg=(l×a+α×t+α×t)/(α+α)=15.1℃
・サッシ温度
サッシ温度の計算式
ts=(α×t+α×t)/(α+α)=4.1℃
但し、l:日射量 814W/m 冬期・南向き・垂直面
a:透明積層フィルム+ガラスの日射吸収率
α:室外側熱伝達係数 15.1W/m・K
α:室内側熱伝達係数 8.6W/m・K
:室外気温 −5℃
:室内気温 20℃
・影係数 クロスシャドー 1.6
・カーテン係数 ブラインド、ガラスからの距離100mm未満 1.5
・面積係数 2.0m 1.07
・エッジ温度係数 ゴム+弾性シーラント施工 0.80
この発生熱応力が、ガラスエッジ許容応力値(厚み10mmのフロートガラスの場合、17.7MPa)を上回る場合を×とし、下回る場合を○とした。
(水抜け性)
各透明積層フィルムを窓ガラスに水貼り施工し、1週間経過後のフィルムとガラスとの間の水の状態を調べることにより水抜け性を評価した。外観で、水のふくれがない場合を水抜け性が優れるとして「A」、水のふくれがある場合を「B」と相対評価した。
表2に、各透明積層フィルムについて測定した特性、評価結果をまとめて示す。
Figure 2011133721
表1、2によれば、次のことが分かる。すなわち、比較例1、2、3に係る透明積層フィルムは、可視光透過率、日射透過率、日射吸収率が本願で規定される範囲内にない。そのため、意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性のいずれかに劣ることが分かる。
また、比較例2に係る透明積層フィルムは、膜質が緻密であるので、水抜け性に劣ることが分かる。
これに対し、実施例1〜4に係る透明積層フィルムは、可視光透過率、日射透過率、日射吸収率が本願で規定される範囲内にあるため、意匠性、快適性、耐ガラス熱割れ性に優れていることが分かる。また、積層構造中における高屈折率層として機能する金属酸化物薄膜がゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されているので、膜質が粗となり、水抜け性に優れていることが分かる。そのため、実施例に係る透明積層フィルムによれば、水貼り施工性を向上させることができる。さらに、透明高分子フィルムの厚みを薄くすることにより、水抜け性を一層向上させることが可能なことも確認できた。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (12)

  1. 透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、
    有機分を含有する金属酸化物薄膜と金属薄膜とが積層されてなる積層構造を有し、
    可視光透過率が70%以上、
    日射透過率が50%以下、および、
    日射吸収率が40%以下であることを特徴とする透明積層フィルム。
  2. 前記有機分を含有する金属酸化物薄膜は、
    ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法により形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の透明積層フィルム。
  3. 水蒸気透過率が0.2g/m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明積層フィルム。
  4. 前記透明高分子フィルムの厚みが100μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  5. 前記積層構造の表面に直接または他の薄膜層を介して粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  6. 前記積層構造の形成面とは反対側の透明高分子フィルムの表面に、ハードコート層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  7. 前記金属薄膜の少なくとも一方面に、金属酸化物より主に構成されるバリア薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  8. 前記金属酸化物薄膜は、チタン酸化物薄膜であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  9. 前記金属薄膜は、銀薄膜または銀合金薄膜であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  10. 前記バリア薄膜は、チタン酸化物より主に構成されることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  11. 前記バリア薄膜は、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物薄膜が後酸化されて形成された薄膜であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
  12. 窓ガラスに貼り付けられることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の透明積層フィルム。
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