JP2012135888A - 透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法 - Google Patents

透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法 Download PDF

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哲也 竹内
Tetsuji Narasaki
徹司 楢崎
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Masataka Inuzuka
正隆 犬塚
Osamu Goto
修 後藤
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Abstract

【課題】室内の冷房電力および暖房電力の低減に効果的な、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを両立できる透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法を提供する。
【解決手段】透明積層フィルム10は、透明高分子フィルム12の少なくとも一方面に、金属酸化物薄膜と金属薄膜とが交互に積層されてなる透明積層部14と、透明積層部14に接して積層された保護層16とを有し、保護層16は、修正放射率が35%以下に設定されている。保護層16は、酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料により形成されていることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法に関し、さらに詳しくは、省エネ住宅等に好適な透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法に関するものである。
従来、光学機能性フィルムとして、フィルム面に各種の機能性薄膜を積層した透明積層フィルムが知られている。
例えば特許文献1には、透明樹脂フィルムの少なくとも片面に、金属薄膜層および/または金属酸化物薄膜層が必要に応じて高屈折率薄膜層と組み合わせて積層され、さらにその上に二層からなる保護層が順次積層されてなる透明積層フィルムが開示されている。
特公昭62−25096号公報
近年、環境意識の高まりから、省エネや二酸化炭素の排出量削減が叫ばれている。この問題に対応するため、ビル・一般住宅などの建築物や、自動車・鉄道などの車両などでは、夏場の暑い時期においては、室内の冷房電力を低減するため、窓ガラスを通じて入る日射を遮蔽したいといった要望がある。一方、冬場の寒い時期においては、室内の暖房電力を低減するため、室内で発生させた暖房熱が窓ガラスを通じて外へ逃げるのを抑えたいといった要望がある。
このため、省エネ効果を高めるための手段の一つとして、窓ガラスのガラス面に、各種の機能性薄膜を積層した透明積層フィルムを貼り付けることが行われている。しかしながら、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを高度に両立できる機能性の透明積層フィルムはないのが現状である。
本発明が解決しようとする課題は、室内の冷房電力および暖房電力の低減に効果的な、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを両立できる透明積層フィルムおよび透明積層フィルムの使用方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、材料の修正放射率が熱貫流率だけでなく日射遮蔽係数にも相関する点に着目し、室内側に配置される透明積層フィルムの保護層について、特定の修正放射率に設定することで、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを両立できることを見い出し、発明を完成する至った。
すなわち、本発明に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、金属酸化物薄膜と金属薄膜とが交互に積層されてなる透明積層部と、前記透明積層部に接して積層された保護層とを有し、前記保護層は、修正放射率が35%以下に設定されていることを要旨とするものである。
この際、上記保護層は、酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料により形成されていることが好ましい。そして、上記保護層の厚みは、0.3〜2μmの範囲内であることが好ましい。また、上記保護層は、上記酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料の硬化物であることが好ましい。
そして、本発明に係る透明積層フィルムの使用方法は、本発明に係る透明積層フィルムを、保護層が室内側に配置されるように窓ガラスに貼り付けることを要旨とするものである。
本発明に係る透明積層フィルムによれば、透明積層フィルムの保護層の修正放射率が35%以下に設定されていることから、日射遮蔽性および断熱性に優れる。
この際、上記保護層が酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料により形成されていると、保護層の修正放射率を低くできる。また、上記保護層の厚みが特定範囲まで薄いと、保護層の修正放射率を低くできる。そして、上記保護層が上記酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料の硬化物であると、耐擦傷性にも優れる。
そして、本発明に係る透明積層フィルムの使用方法によれば、本発明に係る透明積層フィルムを、保護層が室内側に配置されるように窓ガラスに貼り付けることから、日射遮蔽性および断熱性に優れる。
本実施形態に係る透明積層フィルムを模式的に示した図である。 本実施形態に係る他の透明積層フィルムを模式的に示した図である。 本実施形態に係る透明積層フィルムの使用方法を説明する模式図である。
本実施形態に係る透明積層フィルム(以下、「本積層フィルム」ということがある。)について詳細に説明する。
1.本積層フィルム
図1は、本積層フィルムを模式的に示したものである。図1に示すように、本積層フィルム10は、透明高分子フィルム12と、透明積層部14と、保護層16とがこの順で積層されたもので構成されている。
透明高分子フィルムの材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー等の高分子材料を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、2種以上の透明高分子を積層して用いることもできる。これらのうち、とりわけ、透明性、耐久性、加工性等に優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマー等を好適なものとして例示することができる。
透明高分子フィルムの厚みの下限値は、加工時にしわが入り難い、破断し難いなどの観点から、好ましくは、15μm以上、より好ましくは、25μm以上であると良い。一方、透明高分子フィルムの厚みの上限値は、巻回容易性、経済性などの観点から、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、250μm以下であると良い。
透明積層部は、金属酸化物薄膜(以下、「MO」と略表記することがある。)と金属薄膜(以下、「M」と略表記することがある。)とを少なくとも含んでいる。金属薄膜(M)の何れか一方面または両面には、さらに、バリア薄膜(以下、「B」と略表記することがある。)が形成されていても良い。金属薄膜(M)を構成する元素が金属酸化物薄膜(MO)中に拡散するのを抑制しやすく、耐久性の向上に寄与できるからである。
透明積層部の基本構造としては、金属酸化物薄膜(MO)と金属薄膜(M)とが交互に積層された積層構造等を例示することができる。
具体的には、可視光透過性、遠赤外線反射性などの観点から、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)、M(1層目)│MO(2層目)│M(3層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)、M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M(3層目)、M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M(3層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│M(3層目)、M(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)、M/B(1層目)│MO(2層目)│M(3層目)、M(1層目)│MO(2層目)│B/M(3層目)等の3層積層構造、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)│B/M/B(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)│B/M(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)│M/B(4層目)│MO(5層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)│M(4層目)│MO(5層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)│MO(4層目)│B/M/B(5層目)等の5層積層構造、MO(1層目)│B/M/B(2層目)│MO(3層目)│B/M/B(4層目)│MO(5層目)│B/M/B(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│B/M(2層目)│MO(3層目)│B/M(4層目)│MO(5層目)│B/M(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│M/B(2層目)│MO(3層目)│M/B(4層目)│MO(5層目)│M/B(6層目)│MO(7層目)、MO(1層目)│M(2層目)│MO(3層目)│M(4層目)│MO(5層目)│M(6層目)│MO(7層目)、B/M/B(1層目)│MO(2層目)│B/M/B(3層目)│MO(4層目)│B/M/B(5層目)│MO(6層目)│B/M/B(7層目)等の7層積層構造などを好適な構造として例示することができる。好ましくは、コスト、特性等の観点から、3層、5層、7層積層構造であると良い。また、これらのうちでは、可視光透過性により優れる、反射色を目立たなくして意匠性を向上しやすい、日射遮蔽性により優れるなどの理由で、7層積層構造がより好ましい。
さらには、これら積層構造のうち、透明積層部の保護層と接する部位に、金属酸化物薄膜が配置されている3層、5層、7層積層構造を好適なものとして用いることができる。例えば、後述するアクリル樹脂、シリコーン樹脂あるいは酸化ケイ素を含む保護層を透明積層部上に積層した場合に、金属酸化物薄膜中に含まれることがある水酸基等の官能基とアクリル樹脂、シリコーン樹脂あるいは酸化ケイ素とが反応し、透明積層部と保護層との密着性が高まり、密着性向上に有利となるからである。
なお、透明積層部の積層数は、透明積層部を支持する透明高分子フィルム側から数える。バリア薄膜(B)は金属薄膜(M)に付随する薄膜であるためバリア薄膜(B)を含めた金属薄膜(M)を1層、金属酸化物薄膜(MO)を1層として数える。「│」は層の区切りを意味し、「/」は金属薄膜(M)にバリア薄膜(B)が付随していることを意味する。2以上の金属酸化物薄膜(MO)、バリア薄膜(B)を有する場合、膜質、膜厚等は同じであっても異なっていても良い。
保護層は、上述の透明積層部の表面に接して積層され、透明積層部の表面に擦傷が生じるのを抑えるなどの機能を有する。透明積層フィルムを窓ガラスなどに貼った後に擦傷が生じるのを抑えるため、保護層は室内側に配置されることが好ましい。保護層の材料としてオレフィン系樹脂を用いた場合、オレフィン系樹脂は官能基を有しない、あるいは、官能基が少ないことから、保護層は赤外線を吸収しにくく、修正放射率は低いが、擦傷が生じるのを抑える効果が低い。このため、オレフィン系樹脂よりも硬い材料を用いる必要がある。このような材料には、官能基を有するものが多い。このため、擦傷を抑える材料は、赤外線を吸収しやすく、修正放射率が高い材料が多い。
ここで、本発明においては、保護層は修正放射率が35%以下に設定されている。これは、材料の修正放射率が熱貫流率だけでなく日射遮蔽係数にも相関するためである。すなわち、修正放射率を特定値以下とすることにより、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを両立できる。保護層の修正放射率としては、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。これらの好ましい範囲とすることにより、より一層、日射遮蔽性および断熱性に優れる。
保護層の修正放射率は、JIS R3106に準拠して測定される保護層の垂直放射率を、JIS A5759に記載されている係数で補正した値である。
保護層は、酸化ケイ素やシリコーン樹脂、アクリル樹脂を含む材料により形成されていることが好ましい。これにより、保護層の修正放射率を低くしやすいため、日射遮蔽性および断熱性を向上できる。また、アクリル樹脂は、透明積層部との密着性が良い点で好ましい。アクリル樹脂としては、例えば、アクリル・ウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂などを例示することができる。なお、保護層を形成する材料中には、弾性率を上げるなどの目的で、シリカ等の透明なフィラーを含有していても良い。
また、保護層は、酸化ケイ素やシリコーン樹脂、アクリル樹脂を含む材料の硬化物であることが好ましい。これにより、より一層、耐擦傷性に優れる。このとき、シリコーン樹脂やアクリル樹脂を含む材料は、熱硬化性であっても良いし、光硬化性であっても良いし、水硬化性であっても良い。
保護層を形成する材料は、酸化ケイ素を含むことがより好ましい。酸化ケイ素はアクリル樹脂やシリコーン樹脂よりも硬いため、保護層の厚みをより薄くしても耐擦傷性を確保できる。そして、保護層の厚みをより薄くすることにより、修正放射率をより低くすることができる。したがって、酸化ケイ素を用いることで、日射遮蔽性および断熱性をさらに向上させることができる。
酸化ケイ素は、シリコンアルコキシドからゾルゲル法により硬化させても良いし、シラザンから加水分解反応により硬化させても良い。これらのうち後者は、硬化収縮が小さく、透明積層部との密着性を維持する点で、より好ましい。
保護層の厚みとしては、0.3〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5〜1.5μmの範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.0μmの範囲内である。保護層の厚みが特定範囲よりも薄いと、耐擦傷性が低下しやすい。一方、保護層の厚みが特定範囲よりも厚いと、修正放射率が上昇して日射遮蔽性および断熱性を向上させる効果が低下しやすい。
保護層は、単層で構成されていても良いし、複数の層で構成されていても良い。保護層が複数の層で構成される場合には、複数の層は、異なる種類の樹脂を含む材料により形成されていても良いし、同種の樹脂を含む材料により形成されていても良い。また、保護層が複数の層で構成される場合には、複数の層は、弾性率の異なる材料により形成されていても良い。例えば、透明積層部の表面に接する層の弾性率が、この層の上に積層される層の弾性率よりも小さくなるように設定することで、透明積層部と保護層との物性が異なることで保護層に生じるおそれのある応力を緩和することができる。これにより、保護層にシワや亀裂などが発生するのを抑えることができる。なお、弾性率は、微小硬度計を用いて測定することができる。
保護層の鉛筆硬度はH以上であることが好ましい。耐擦傷性を向上させることができるため、窓ガラスに好適に適用しやすくなるからである。より好ましくは、2H以上、さらに好ましくは、3H以上であると良い。なお、上記鉛筆硬度は、JIS−K5400に準拠して測定される値である。
保護層は、例えば、材料を適当な溶剤に希釈し、塗工法を用いて透明積層部の上に層状にコーティングした後、必要に応じて、熱や光、水など、材料に応じた適当な硬化手段により硬化させることにより形成することができる。
以下、本積層フィルムの透明積層部を構成する金属酸化物薄膜(MO)、金属薄膜(M)、バリア薄膜(B)について詳細に説明する。
<金属酸化物薄膜>
本積層フィルムにおいて、金属酸化物薄膜は、可視光領域において透明性を有し、主として高屈折率層として機能しうるものである。ここで、高屈折率とは、633nmの光に対する屈折率が1.7以上ある場合をいう。
上記金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。
上記金属酸化物としては、とりわけ、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、酸化チタン(TiO)、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
ここで、金属酸化物薄膜は、主として上述した金属酸化物より構成されているが、金属酸化物以外にも、有機分を含有していても良い。有機分を含有することで、本積層フィルムの柔軟性をより向上させることができるためである。この種の有機分としては、具体的には、例えば、ゾル−ゲル法の出発原料に由来する成分等、金属酸化物薄膜の形成材料に由来する成分などを例示することができる。
上記有機分としては、より具体的には、例えば、上述した金属酸化物を構成する金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどといった有機金属化合物(その分解物なども含む)や、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する有機化合物(後述する)等の各種添加剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の下限値は、柔軟性を付与しやすいなどの観点から、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、7質量%以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の上限値は、高屈折率を確保しやすくなる、耐溶剤性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下であると良い。
なお、上記有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。
金属酸化物薄膜の膜厚の下限値は、可視光透過性、反射色などの観点から、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、20nm以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜の膜厚の上限値は、可視光透過性、反射色、膜の密着性などの観点から、好ましくは、80nm以下、より好ましくは、75nm以下、さらに好ましくは、70nm以下であると良い。
以上のような構成を有する金属酸化物薄膜は、気相法、液相法の何れでも形成することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れているので好適である。
上記液相法としては、有機分を残存させやすいなどの観点から、ゾル−ゲル法を好適に利用することができる。
上記ゾル−ゲル法としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の有機金属化合物を含有するコーティング液を薄膜状にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜の前駆体薄膜を形成した後、この前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させ、有機金属化合物を構成する金属の酸化物を合成するなどの方法を例示することができる。これによれば、金属酸化物を主成分として含み、有機分を含有する金属酸化物薄膜を形成することができる。以下、上記方法について詳細に説明する。
上記コーティング液は、上記有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。この際、有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。また、これらは単量体、多量体の何れであっても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量は、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは、3〜15質量%、さらに好ましくは、5〜10質量%の範囲内にあると良い。
また、上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記溶媒量は、上記有機金属化合物の固形分重量に対して、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、5〜100倍量、より好ましくは、7〜30倍量、さらに好ましくは、10〜20倍量の範囲内であると良い。
上記溶媒量が100倍量より多くなると、一回のコーティングで形成できる膜厚が薄くなり、所望の膜厚を得るために多数回のコーティングが必要となる傾向が見られる。一方、5倍量より少なくなると、膜厚が厚くなり過ぎ、有機金属化合物の加水分解・縮合反応が十分に進行し難くなる傾向が見られる。したがって、上記溶媒量は、これらを考慮して選択すると良い。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングされたコーティング液を乾燥する場合、公知の乾燥装置などを用いて乾燥させれば良く、この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線、電子線、X線等の光エネルギーの照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、好ましくは、光エネルギーの照射、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を透明高分子フィルムに与え難いからである(とりわけ、紫外線照射の場合は、比較的簡易な設備で済む利点がある。)。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
さらには、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法を採用した場合には、スパッタ等により形成した金属酸化物薄膜に比べ、粗な金属酸化物薄膜とすることができる。そのため、建築物の窓ガラスに本積層フィルムを水貼り施工した場合に、窓ガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られ、水貼り施工性を向上させることができるなどの利点があるからである。
この際、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する光エネルギーの光量は、前駆体薄膜を主に形成している有機金属化合物の種類、前駆体薄膜の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する光エネルギーの光量が過度に小さすぎると、金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する光エネルギーの光量が過度に大きすぎると、光エネルギーの照射の際に生じる熱により透明高分子フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する光エネルギーが紫外線である場合、その光量は、金属酸化物薄膜の屈折率、透明高分子フィルムが受けるダメージなどの観点から、測定波長300〜390nmのとき、好ましくは、300〜8000mJ/cm、より好ましくは、500〜5000mJ/cmの範囲内であると良い。
なお、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、光エネルギーの照射を用いる場合、上述したコーティング液中に、有機金属化合物と反応して光吸収性(例えば、紫外線吸収性)のキレートを形成する有機化合物等の添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め光吸収性キレートが形成されたところに光エネルギーの照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合としては、屈折率の上がりやすさ、塗膜状態での安定性などの観点から、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、好ましくは、0.1〜2倍モル、より好ましくは、0.5〜1.5倍モルの範囲内にあると良い。
<金属薄膜>
本積層フィルムにおいて、金属薄膜は、遠赤外線を反射する金属(合金含む)より形成されている。
上記金属としては、具体的には、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記金属としては、積層時の可視光透過性、遠赤外線反射性等に優れるなどの観点から、銀または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金であると良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag−Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag−Ti系合金)等であると良い。銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの利点があるからである。
銅を含む銀合金を用いる場合、銀、銅以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Bi、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Cu系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
銅を含む銀合金を用いる場合、銅の含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、1原子%以上、より好ましくは、2原子%以上、さらに好ましくは、3原子%以上であると良い。一方、銅の含有量の上限値は、高透明性を確保しやすくなる、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、20原子%以下、より好ましくは、10原子%以下、さらに好ましくは、5原子%以下であると良い。
また、ビスマスを含む銀合金を用いる場合、銀、ビスマス以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Bi系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、ビスマスの含有量の上限値は、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、5原子%以下、より好ましくは、2原子%以下、さらに好ましくは、1原子%以下であると良い。
また、チタンを含む銀合金を用いる場合、銀、チタン以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pb、Biなど、Ag−Ti系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
チタンを含む銀合金を用いる場合、チタンの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、チタンの含有量の上限値は、膜にした場合、完全な固溶体が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、2原子%以下、より好ましくは、1.75原子%以下、さらに好ましくは、1.5原子%以下であると良い。
なお、上記銅、ビスマス、チタン等の副元素割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。また、上記金属薄膜を構成する金属(合金含む)は、部分的に酸化されていても良い。
金属薄膜の膜厚の下限値は、遠赤外線反射性、耐久性などの観点から、好ましくは、3nm以上、より好ましくは、5nm以上、さらに好ましくは、7nm以上であると良い。一方、金属薄膜の膜厚の上限値は、可視光透過性、経済性などの観点から、好ましくは、30nm以下、より好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、15nm以下であると良い。
ここで、金属薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法などを例示することができる。金属薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
これら方法のうち、緻密な膜質が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、好ましくは、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、金属薄膜は、後述する後酸化等を受けて、本願における金属薄膜の機能を損なわない範囲内で酸化されていても良い。
<バリア薄膜>
本積層フィルムにおいて、バリア薄膜は、主として、金属薄膜を構成する元素が、金属酸化物薄膜中へ拡散するのを抑制するバリア的な機能を有している。また、金属酸化物薄膜と金属薄膜との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与しうる。
なお、バリア薄膜は、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
バリア薄膜を構成する金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、バリア薄膜は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
ここで、バリア薄膜としては、金属薄膜を構成する金属の拡散抑制効果に優れる、密着性に優れるなどの観点から、金属酸化物薄膜中に含まれる金属の酸化物より主に構成されていると良い。
より具体的には、例えば、金属酸化物薄膜としてTiO薄膜を選択した場合、バリア薄膜は、TiO薄膜中に含まれる金属であるTiの酸化物より主に構成されるチタン酸化物薄膜であると良い。
また、バリア薄膜がチタン酸化物薄膜である場合、当該バリア薄膜は、当初からチタン酸化物として形成された薄膜であっても良いし、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物薄膜が後酸化されて形成された薄膜等であっても良い。
バリア薄膜は、金属酸化物薄膜と同じように主に金属酸化物から構成されるが、金属酸化物薄膜よりも膜厚が薄く設定される。これは、金属薄膜を構成する金属の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、本積層フィルムの製造コストの低減にも寄与することができる。
バリア薄膜の膜厚の下限値は、バリア性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、0.5nm以上、より好ましくは、0.8nm以上、さらに好ましくは、1.0nm以上であると良い。一方、バリア薄膜の膜厚の上限値は、可視光透過性などの観点から、好ましくは、10nm以下、より好ましくは、8nm以下、さらに好ましくは、5nm以下であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの下限値は、バリア性などの観点から、1.0/4.0以上、より好ましくは、1.0/3.8以上、さらに好ましくは、1.0/3.5以上、さらにより好ましくは、1.0/3.0以上、最も好ましくは、1.0/2.8以上であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの上限値は、可視光透過性などの観点から、好ましくは、1.0/0.5以下、より好ましくは、1.0/0.7以下、さらに好ましくは、1.0/1.0以下、さらにより好ましくは、1.0/1.2以下、最も好ましくは、1.0/1.5以下であると良い。
上記Ti/O比は、当該薄膜の組成から算出することができる。当該薄膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
具体的な組成分析方法について説明すると、先ず、超薄切片法(ミクロトーム)などを用いて、分析対象となる当該薄膜を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製する。次いで、断面方向から積層構造と当該薄膜の位置を、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認する。次いで、EDX装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となる当該薄膜の膜厚中央部近傍に入射させる。試験片表面から入射した電子は、ある深さまで入り込み、各種の電子線やX線を発生させる。この際の特性X線を検出して分析することで、当該薄膜の構成元素分析を行うことができる。
本積層フィルムにおいて、バリア薄膜は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法を好適に利用することができる。
上記気相法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、上記積層構造中に含まれうる各バリア層は、これら気相法のうち何れか1つの方法を利用して形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を利用して形成されていても良い。
また、上記バリア薄膜は、上述した気相法を利用し、当初から金属酸化物薄膜として成膜しても良いし、あるいは、一旦、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物層を成膜した後、これを事後的に酸化して形成することも可能である。なお、部分酸化された金属酸化物薄膜とは、さらに酸化される余地がある金属酸化物薄膜を指す。
当初から金属酸化物薄膜として成膜する場合、具体的には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら薄膜を形成すれば良い(反応性スパッタリング法)。反応性スパッタリング法を用いて、例えば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得る場合、雰囲気中の酸素濃度(不活性ガスに対する酸素を含むガスの体積割合)は、上述した膜厚範囲を考慮して最適な割合を適宜選択すれば良い。
一方、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を成膜した後、これを事後的に後酸化する場合、具体的には、透明積層部付フィルムを形成した後、応力緩和層、保護層を形成する前または後に、透明積層部中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を後酸化させる等すれば良い。なお、金属薄膜の成膜には、スパッタリング法等を、部分酸化された金属酸化物薄膜の成膜には、上述した反応性スパッタリング法等を用いれば良い。
また、後酸化手法としては、加熱処理、加圧処理、化学処理、自然酸化等を例示することができる。これら後酸化手法のうち、比較的簡単かつ確実に後酸化を行うことができるなどの観点から、加熱処理が好ましい。上記加熱処理としては、例えば、透明積層フィルムを加熱炉等の加熱雰囲気中に存在させる方法、温水中に浸漬する方法、マイクロ波加熱する方法や、透明積層部中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜等を通電加熱する方法などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。
上記加熱処理時の加熱条件としては、具体的には、例えば、好ましくは、30℃〜60℃、より好ましくは、32℃〜57℃、さらに好ましくは、35℃〜55℃の加熱温度、加熱雰囲気中に存在させる場合、好ましくは、5日間以上、より好ましくは、10日間以上、さらに好ましくは、15日間以上の加熱時間から選択すると良い。上記加熱条件の範囲内であれば、後酸化効果が良好だからである。
また、上記加熱処理時の加熱雰囲気は、大気中、高酸素雰囲気中、高湿度雰囲気中など酸素や水分の存在する雰囲気が好ましい。特に好ましくは、製造性、低コスト化等の観点から、大気中であると良い。
透明積層部中に上述した後酸化薄膜を含んでいる場合には、後酸化時に、金属酸化物層中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、太陽光が当たっても金属酸化物薄膜が化学反応し難くなる。具体的には、例えば、金属酸化物薄膜がゾル−ゲル法により形成されている場合、後酸化時に、金属酸化物薄膜中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、金属酸化物薄膜中に残存していたゾル−ゲル法による出発原料(金属アルコキシド等)と水分(吸着水等)・酸素等とが、太陽光によってゾルゲル硬化反応し難くなる。そのため、透明積層部の形成時における硬化収縮等の体積変化によって生じる内部応力を緩和することが可能となり、透明積層部と透明高分子フィルムとの間の界面剥離等を抑制しやすくなる等、太陽光に対する耐久性を向上させやすくなる。
本積層フィルムは、透明高分子フィルムの両面に透明積層部を設けたものであっても良い。図2は、このような他の実施形態の本積層フィルムを模式的に示したものである。図2に示すように、本積層フィルム20は、透明高分子フィルム12の一方の面に、透明積層部14と、保護層16とがこの順で積層され、透明高分子フィルム12の他方の面に、透明積層部14が積層されたもので構成されている。
また、図1に示す構成の本積層フィルム10は、透明高分子フィルム12の透明積層部14が積層されていない面に、本積層フィルム10を窓ガラスなどに貼り付けるための粘着剤よりなる粘着剤層が形成されていても良い。また、図2に示す構成の本積層フィルム20は、保護層16が積層されていない透明積層部14における透明高分子フィルム12に接している面とは反対側の面に、本積層フィルム20を窓ガラスなどに貼り付けるための粘着剤よりなる粘着剤層が形成されていても良い。
2.本積層フィルムの製造方法
本積層フィルムは、例えば、以下のようにして製造することができる。透明高分子フィルム上に、所定の積層構造となるように各薄膜を上述した薄膜形成手法によって順次積み上げて透明積層部を形成する。その後、必要に応じて、後酸化等の熱処理を行う。その後、透明積層部の表面に、所定の塗工膜を形成するとともに、必要に応じて、形成した塗工膜に対して硬化処理を行い、保護層を形成する。基本的には、以上により本積層フィルムを得ることができる。なお、透明高分子フィルムの両面に透明積層部を設ける場合には、透明高分子フィルムの両面に、上記の方法に基づいて透明積層部を形成する。
3.本積層フィルムの使用方法
本積層フィルムは、ビル・一般住宅などの建築物や、自動車・鉄道などの車両の窓ガラスなどに貼る機能性フィルムとして好適に用いることができる。上述するように、本積層フィルムは、高い日射遮蔽性と高い断熱性とを高度に両立できる機能性フィルムであるため、夏場の暑い時期においては、窓ガラスを通じて入る日射を遮蔽する日射遮蔽効果により、室内の冷房電力を低減することができる。また、冬場の寒い時期においては、室内で発生させた暖房熱が窓ガラスを通じて外へ逃げるのを抑える断熱効果により、室内の暖房電力を低減することができる。
ここで、図3は、本積層フィルムの使用方法を説明するための模式図である。図3(a)は、図1に示す本積層フィルム10を用いた場合であり、図3(b)は、図2に示す本積層フィルム20を用いた場合である。図3(a)(b)において、30は窓ガラスを示し、窓ガラス30よりも右側Aを室内とし、左側Bを屋外として示す。
図3(a)に示すように、図1に示す本積層フィルム10は、粘着剤18を用い、窓ガラス30の室内側のガラス面に、透明高分子フィルム12の透明積層部14が積層されていない面で貼り付ける。また、図3(b)に示すように、図2に示す本積層フィルム20は、粘着剤18を用い、窓ガラス30の室内側のガラス面に、保護層16が積層されていない透明積層部14における透明高分子フィルム12に接している面とは反対側の面で貼り付ける。
このように、本積層フィルムは、保護層が室内側に配置されるように窓ガラスに貼り付ける。すなわち、修正放射率を低く設定した保護層が透明積層部よりも室内側に配置される。このような使用方法により、日射遮蔽効果および断熱効果に優れる。
このような使用方法において、可視光透過率は、60%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上である。また、日射遮蔽性を表す指標となる日射遮蔽係数は、0.75以下であることが好ましい。より好ましくは0.60以下である。また、断熱性を表す指標となる熱貫流率は、5.0W/mK以下であることが好ましい。より好ましくは4.5W/mK以下である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
1.透明積層フィルムの作製
<実施例1>
実施例1に係る透明積層フィルムとして、概略以下の3層積層構造からなる透明積層部と、この透明積層部に接して積層された保護層とを有する透明積層フィルムを作製した。
すなわち、実施例1に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの一方面に、ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(1層目)│チタン酸化物薄膜/Ag−Cu合金薄膜/チタン酸化物薄膜(2層目)│ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(3層目)が順に積層されてなる透明積層部を有している。
なお、チタン酸化物薄膜は、金属Ti薄膜が熱酸化されて形成されたものであり、これがバリア薄膜に該当する。このチタン酸化物薄膜は、Ag−Cu合金薄膜に付随する薄膜として、Ag−Cu合金薄膜に含めて積層数を数えている。
以下、具体的な作製手順を示す。
(コーティング液の調製)
先ず、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、コーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75質量%/3.38質量%/59.87質量%/30.00質量%とした。
(透明積層部の形成)
透明高分子フィルムとして、易接着層が片面に形成された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)を用い、このPETフィルムの易接着層面側とは反対側の面(PET面)側に、1層目として、TiO薄膜を以下の手順により成膜した。
すなわち、PETフィルムのPET面側に、マイクログラビアコーターを用いて、所定の溝容積のグラビアロールで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を100℃で80秒間乾燥させ、TiO薄膜の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を1.5秒間照射した。これによりPETフィルム上に、ゾルゲル硬化時に紫外線エネルギーを用いるゾル−ゲル法(以下、「(ゾルゲル+UV)」と省略することがある。)によるTiO薄膜(1層目)を成膜した。
次に、1層目の上に、2層目を構成する各薄膜を成膜した。すなわち、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTiO薄膜上に、下側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この下側の金属Ti薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、このAg−Cu合金薄膜上に、上側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。
この際、上側および下側の金属Ti薄膜の成膜条件は、Tiターゲット(純度4N)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)、投入電力:1.5(kW)、成膜時間:1.1秒とした。
また、Ag−Cu合金薄膜の成膜条件は、Ag−Cu合金ターゲット(Cu含有量:4原子%)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)、投入電力:1.5(kW)、成膜時間:1.1秒とした。
次に、3層目として、2層目の上に、(ゾルゲル+UV)によるTiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目に準じた成膜手順を2回行うことにより、所定の膜厚とした。
次に、得られた透明積層部付きフィルムを、加熱炉内にて、大気中、40℃で300時間加熱処理することにより、積層構造中に含まれる金属Ti薄膜を熱酸化させ、チタン酸化物薄膜とした。
(保護層の形成)
紫外線硬化性のアクリル樹脂(DICグラフィックス社製、「UCシーラーTE014」)を濃度20%となるようにMEKで希釈し、塗液を調製した。次に、上記透明積層部付きフィルムの透明積層部の表面に、調製した塗液を塗工し、100℃で2分間乾燥し、さらに400mJ/cmの紫外線を照射した。これにより、透明積層部の表面に、アクリル樹脂(硬化物)よりなる保護層を形成した。
以上により、実施例1に係る透明積層フィルムを作製した。なお、表1に、透明積層部の詳細な層構成を示す。
Figure 2012135888
TiO薄膜の屈折率(測定波長は633nm)を、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定した。
また、TiO薄膜中に含まれる有機分の含有量を、X線光電子分光法(XPS)により測定した。
また、金属Ti薄膜を熱酸化させて形成したチタン酸化物薄膜についてEDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。
すなわち、透明積層部付きフィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)を含む積層構造の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。作製した試験片の断面を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。そして、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、チタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の構成元素分析を行った。
また、合金薄膜中の副元素(Cu)含有量を次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg−Cu合金薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
また、各薄膜の膜厚を、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
<実施例2>
保護層の厚みを2μmにした以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る透明積層フィルムを作製した。
<実施例3>
実施例3に係る透明積層フィルムとして、概略以下の7層積層構造からなる透明積層部と、この透明積層部に接して積層された保護層とを有する透明積層フィルムを作製した。
すなわち、実施例3に係る透明積層フィルムは、透明高分子フィルムの一方面に、ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(1層目)│チタン酸化物薄膜/Ag−Cu合金薄膜/チタン酸化物薄膜(2層目)│ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(3層目)│チタン酸化物薄膜/Ag−Cu合金薄膜/チタン酸化物薄膜(4層目)│ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(5層目)│チタン酸化物薄膜/Ag−Cu合金薄膜/チタン酸化物薄膜(6層目)│ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(7層目)が順に積層されてなる透明積層部を有している。
透明積層部の3層目までは、実施例1と同様にして成膜した。以下、4層目以降の層についての成膜手順を説明する。
4層目として、3層目の上に、4層目を構成する各薄膜を成膜した。ここでは、2層目に準じた成膜手順を行った。但し、Ag−Cu合金薄膜の成膜条件は、Ag−Cu合金ターゲット(Cu含有量:4原子%)、真空到達圧:5×10−6(Torr)、不活性ガス:Ar、ガス圧:2.5×10−3(Torr)、投入電力:1.8(kW)、成膜時間:1.1秒とした。
5層目として、4層目の上に、3層目と同様にして(ゾルゲル+UV)によるTiO薄膜を成膜した。6層目として、5層目の上に、2層目と同様にして各薄膜を成膜した。7層目として、6層目の上に、(ゾルゲル+UV)によるTiO薄膜を成膜した。ここでは、1層目に準じた成膜手順を1回行うことにより、所定の膜厚とした。
次に、得られた透明積層部付きフィルムを、加熱炉内にて、大気中、40℃で300時間加熱処理することにより、積層構造中に含まれる金属Ti薄膜を熱酸化させ、チタン酸化物薄膜とした。
(保護層の形成)
パーヒドロポリシラザンのジブチルエーテル10%溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、「アクアミカ(登録商標)NL120A」)を透明積層部の表面に塗工し、100℃に加熱して溶剤を除去した後、温度80℃、相対湿度50%の条件下で72時間放置した。これにより、透明積層部の表面に、酸化ケイ素(硬化物)よりなる保護層を形成した。
以上により、実施例3に係る透明積層フィルムを作製した。なお、表2に、透明積層部の詳細な層構成を示す。
Figure 2012135888
<実施例4>
保護層の厚みを2μmにした以外は実施例3と同様にして、実施例4に係る透明積層フィルムを作製した。
<比較例1〜2>
保護層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る透明積層フィルムを作製した。また、透明高分子フィルムの厚みを100μmとし、保護層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る透明積層フィルムを作製した。表1に、透明積層部の詳細な層構成を示す。
2.透明積層フィルムの特性
各透明積層フィルムについて、以下の特性を測定した。この際、実施例の透明積層フィルムは、図3(a)に示すように、透明高分子フィルムの透明積層部が形成されていない面(透明高分子フィルム側の表面)に、厚さ25μmのアクリル粘着シート(日東電工(株)製、「CS9621」)を貼り付け、この粘着シートの粘着層を介して、厚さ3mmのフロートガラスの片面に貼り付けた。一方、比較例の透明積層フィルムは、透明積層部の透明高分子フィルムが形成されていない面(透明積層部側の表面)に、実施例と同様の厚さ25μmのアクリル粘着シートを貼り付け、この粘着シートの粘着層を介して、厚さ3mmのフロートガラスの片面に貼り付けた。すなわち、比較例では、透明高分子フィルムが保護層として機能する。なお、測定光は、透明積層フィルムを貼り付けていないガラス面側から入射させた。
(保護層の修正放射率)
保護層を有する透明積層フィルムをフロートガラス(50×60mm、3mm厚)に貼った状態で、JIS R3106に準拠して垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正した修正放射率を算出した。次いで、保護層を有しない点以外は同じ構成にした基準となる透明積層フィルムを同じくフロートガラス(50×60mm、3mm厚)に貼った状態で、JIS R3106に準拠して垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正した修正放射率を算出した。これらの修正放射率の差を、保護層の修正放射率とした。
(透明積層部の修正放射率)
JIS R3106に準拠して透明積層部の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して修正放射率を算出した。
(透明積層フィルム全体の修正放射率)
JIS R3106に準拠して透明積層フィルム全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して修正放射率を算出した。
(光学特性)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、可視光透過率を計算することにより求めた。
(遮熱性)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用い、波長300〜2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から日射遮蔽係数を計算することにより求めた。
(断熱性)
JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率を求めた。
表3に、各透明積層フィルムの概略構成と評価結果とをまとめて示す。
Figure 2012135888
実施例1〜2、比較例1〜2を見ると、保護層の修正放射率が下がるにつれて熱貫流率および日射遮蔽係数が下がっていることがわかる。すなわち、これらの結果を見れば、保護層の修正放射率と熱貫流率との間だけでなく、保護層の修正放射率と日射遮蔽係数との間にも相関関係があることがわかる。
そして、比較例1〜2では、保護層の修正放射率が特定範囲よりも大きい方に外れており、熱貫流率および日射遮蔽係数のいずれも高く、断熱性および日射遮蔽性のいずれも劣っている。これに対し、実施例1〜2では、保護層の修正放射率が特定範囲内にあり、熱貫流率および日射遮蔽係数のいずれも低く、断熱性および日射遮蔽性のいずれも優れることが確認できた。
実施例3〜4は、実施例1〜2とは透明積層部の層数が異なる。実施例3〜4においても、保護層の修正放射率が特定範囲内にあり、熱貫流率および日射遮蔽係数のいずれも低く、断熱性および日射遮蔽性のいずれも優れる。また、透明積層部が7層で構成される実施例3〜4は、実施例1〜2と比べても熱貫流率および日射遮蔽係数が低く、より一層、断熱性および日射遮蔽性に優れる。
実施例どうしを比較すると、保護層の厚みが薄くなるにつれて、保護層の修正放射率が下がっていることがわかる。また、実施例どうしを比較すると、アクリル樹脂に比べて酸化ケイ素は、耐擦傷性を維持した状態で、保護層の厚みを薄くできる。このため、より一層、断熱性および日射遮蔽性を向上できる。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10 透明積層フィルム
12 透明高分子フィルム
14 透明積層部
16 保護層

Claims (5)

  1. 透明高分子フィルムの少なくとも一方面に、金属酸化物薄膜と金属薄膜とが交互に積層されてなる透明積層部と、前記透明積層部に接して積層された保護層とを有し、前記保護層は、修正放射率が35%以下に設定されていることを特徴とする透明積層フィルム。
  2. 前記保護層は、酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明積層フィルム。
  3. 前記保護層の厚みは、0.3〜2μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明積層フィルム。
  4. 前記保護層は、前記酸化ケイ素またはアクリル樹脂を含む材料の硬化物であることを特徴とする請求項2または3に記載の透明積層フィルム。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の透明積層フィルムを、保護層が室内側に配置されるように窓ガラスに貼り付けることを特徴とする透明積層フィルムの使用方法。
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