JP2008031939A - 内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材、内燃機関冷却機構及び内燃機関冷却機構形成方法 - Google Patents

内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材、内燃機関冷却機構及び内燃機関冷却機構形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シリンダボア側に対する高精度な温度管理を容易とし、形成も容易な内燃機関冷却機構。
【解決手段】区画部材2の可撓性リップ部材6はエラストマーであるため、ウォータジャケット12への挿入時に撓むことで、大きな抵抗力をシリンダボア部14の外周面14aから受けることなく、しかも区画部材2全体を好適な位置に誘導しつつウォータジャケット12内に挿入でき、容易に内燃機関冷却機構が形成できる。挿入完了後においても可撓性リップ部材6は自身の撓み復元力により先端縁部6cがシリンダボア部14の外周面14aに接触し、ボア側流路12aと反ボア側流路12bとの冷却水流の独立性が十分に確保される。このため各流路12a,12bでの冷却水の流量管理をすることでシリンダボア14b側に対する高精度な温度管理が容易なものとなる。
【選択図】図4

Description

本発明は内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置されることで溝状冷却用熱媒体流路内を複数の流路に区画する内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材、及びこの内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材を用いた内燃機関冷却機構及び内燃機関冷却機構形成方法に関する。
シリンダブロックのボア壁温における温度分布を均一にするために、ウォータジャケットの底部に樹脂などで成形したスペーサを充填することにより、冷却水の流れ抵抗を調節する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このことによりシリンダボアを均一に冷却して燃費やエミッションを良好なものにしている。
特開2002−13440号公報(第3−4頁、図1)
このような特許文献1の技術ではスペーサをウォータジャケットの底部に充填することで冷却水の流れを調節する手法を採用しているため、水流がスペーサよりも上の通路に限定されることによる冷却水流の調節であるため、シリンダブロック、特にシリンダボア側に対する高精度な温度管理は困難である。
しかもウォータジャケットの底部に樹脂などで成形したスペーサを充填することが必要であるが、このような構成とするためには高い挿入加重が必要であり、このような内燃機関冷却機構は形成上も困難である。
本発明は、シリンダボア側に対する高精度な温度管理を容易とし、形成も容易な内燃機関冷却機構の実現を目的とするものである。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材は、内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置されることで該溝状冷却用熱媒体流路内を複数の流路に区画する流路区画部材であって、前記溝状冷却用熱媒体流路の深さに満たない高さに形成され、前記溝状冷却用熱媒体流路内をボア側流路と反ボア側流路とに分割する壁部となる流路分割部材と、前記流路分割部材から前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部方向に向けて形成され、かつ先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面を越えた形に可撓性材料で形成されていることにより、前記溝状冷却用熱媒体流路内への挿入完了後は自身の撓み復元力により前記先端縁部が前記内面に対して前記溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて接触することで前記ボア側流路と前記反ボア側流路とを分離する可撓性リップ部材とを備えたことを特徴とする。
流路分割部材については溝状冷却用熱媒体流路内をボア側流路と反ボア側流路とに分割する壁部であるため、溝状冷却用熱媒体流路の幅より薄く形成されており、溝状冷却用熱媒体流路内への配置は容易である。
可撓性リップ部材については可撓性材料にて、流路分割部材から溝状冷却用熱媒体流路の開口部方向に向けて形成され、かつ先端縁部が溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面を越えた形とされている。このため内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材がシリンダブロックの溝状冷却用熱媒体流路内に挿入される時には、可撓性リップ部材は撓むことにより溝状冷却用熱媒体流路内に収まる。そして溝状冷却用熱媒体流路の内面に接触状態で摺動しつつ、大きな抵抗力を溝状冷却用熱媒体流路の内面から受けることなく、流路分割部材と共に溝状冷却用熱媒体流路内に挿入できる。しかも可撓性リップ部材が溝状冷却用熱媒体流路の内面に接触しつつ、内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材全体が溝状冷却用熱媒体流路内に挿入されることから、内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材は溝状冷却用熱媒体流路内の好適な位置に自ずと誘導される。
そして挿入完了後も可撓性リップ部材は自身の撓み復元力により先端縁部が溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面に接触してボア側流路と反ボア側流路とを分離した状態を維持する。このように内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材は溝状冷却用熱媒体流路内に容易に挿入できるものであり、内燃機関冷却機構を容易に形成できる。
しかもこのように容易に形成された内燃機関冷却機構において、可撓性リップ部材の先端縁部は溝状冷却用熱媒体流路の内面に対して溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて接触している。このため溝状冷却用熱媒体流路の上下においてもボア側流路と反ボア側流路とに含まれる形で流路の分離が行われ、溝状冷却用熱媒体流路の上下にて流量調節や温度調節が可能となるので、シリンダボア側に対する高精度な温度管理も容易なものとなる。
請求項2に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材では、請求項1において、前記可撓性リップ部材はエラストマーにて形成され、前記流路分割部材は前記可撓性リップ部材よりも剛性の高い材質であることを特徴とする。
特に流路分割部材と可撓性リップ部材との材質を上述のごとく構成することにより、流路分割部材の剛性により内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材全体の形状が維持され、かつ可撓性リップ部材によりボア側流路と反ボア側流路との分離がなされる。したがって前記請求項1の作用効果が顕著なものとなる。
請求項3に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材では、請求項2において、前記可撓性リップ部材はオレフィン系エラストマーにて形成され、前記流路分割部材はオレフィン系樹脂にて形成されていることを特徴とする。
流路分割部材と可撓性リップ部材との材質としては上述した構成とすることができ、前記請求項2の作用効果を生じさせることができる。
請求項4に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材では、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記可撓性リップ部材は、前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部側における前記流路分割部材の縁部に設けられ、前記先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路のボア側内面を越えた形に形成され、前記流路分割部材は、前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部とは反対側の縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の底面への当接部とされていることを特徴とする。
このように構成することにより、シリンダボアの下方側をボア側流路による温度管理とし、シリンダボアの上方側を反ボア側流路による温度管理とするように溝状冷却用熱媒体流路内を分離できる。したがって請求項1にて述べたごとく内燃機関冷却機構を容易に形成できると共に、このように形成された内燃機関冷却機構は、シリンダボア側に対して上下方向での温度差を低減するための高精度な温度管理が容易なものとなる。
請求項5に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材では、請求項4において、前記当接部は、可撓性材料で形成されていることを特徴とする。
特に流路分割部材において可撓性リップ部材が設けられていない方の縁部である当接部を可撓性材料とすることにより、ボア側流路と反ボア側流路との分離がより十分なものとなる。このように可撓性材料で当接部を形成しても、当接部は溝状冷却用熱媒体流路の底面に当接する機能を果たせば良いので、形状も簡易で済み、製造コストアップを抑制できる。
請求項6に記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材では、請求項4又は5において、全構成が樹脂によるダイロータリー成形により一体成形されていることを特徴とする。
ダイロータリー成形(2色成形)により材質の異なる樹脂を一体化して形成することが可能であり、内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材自体の製造も容易となる。
請求項7に記載の内燃機関冷却機構は、請求項4〜6のいずれかに記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材が内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置され、冷却用熱媒体の供給口は前記反ボア側流路に開口していることを特徴とする。
このように冷却用熱媒体を反ボア側流路から導入することにより、特に溝状冷却用熱媒体流路の上部側では反ボア側流路はシリンダボア側内面に直接接触しているので、反ボア側流路に供給された冷却用熱媒体は直ちにシリンダボア側内面の上部側を冷却できる。下部側ではシリンダボア側内面はボア側流路に囲まれているので、直接冷却しない。このためシリンダボアの上部が冷却されやすく、下部が冷却されにくくなるので、シリンダボアの上下方向での温度差が減少する。このようにシリンダボア側に対する高精度な温度管理が容易にできる。
請求項8に記載の内燃機関冷却機構では、請求項7において、予備昇温時に予備昇温用熱媒体が前記溝状冷却用熱媒体流路内に導入されると共に、該予備昇温用熱媒体の供給口は前記ボア側流路に開口していることを特徴とする。
内燃機関を冷間始動直前に予備昇温させる場合には、上述したごとく予備昇温用熱媒体をボア側流路から溝状冷却用熱媒体流路内に導入することにより、予備昇温用熱媒体の流れはシリンダボア側内面、特に下方側の内面を十分に暖めるまで溝状冷却用熱媒体流路内にて分散せずにボア側流路内に維持される。したがって予備昇温用熱媒体がボア側流路内を流れる間に予備昇温用熱媒体からシリンダボア側へ効率的に伝熱することができる。
このことにより溝状冷却用熱媒体流路に予備昇温用熱媒体を大量に導入しなくても予備昇温用熱媒体によるシリンダボアの予備昇温を効果的に行うことができる。
請求項9に記載の内燃機関冷却機構形成方法は、請求項4〜6のいずれかに記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材を、シリンダブロックの溝状冷却用熱媒体流路のデッキ面開口部から、前記当接部を前記溝状冷却用熱媒体流路の底面に当接するまで挿入することを特徴とする。
このように流路分割部材の当接部を溝状冷却用熱媒体流路の底面に当接するまで挿入することで、容易に、溝状冷却用熱媒体流路内に内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材を所望の位置に正確に配置できる。そして同時に可撓性リップ部材の先端縁部を、溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて内面に接触させることができる。このように効率的に内燃機関冷却機構を形成できる。
[実施の形態1]
図1に上述した発明が適用された内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材(以下「区画部材」と略す)2の構成を示す。図1の(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は斜視図、(E)は左側面図、(F)は右側面図である。図2の斜視図は区画部材2の構成を分解して示している。図3の斜視図及び図4,5の縦断面図は区画部材2を内燃機関に適用した状態を示している。
ここで区画部材2は、流路分割部材基部4、可撓性リップ部材6及び当接用可撓性部材8を備えている。
流路分割部材基部4は、区画部材2全体の形状を維持している部分であり、可撓性リップ部材6よりも高剛性の材質ここではオレフィン系樹脂にて形成されている。そして流路分割部材基部4の形状は、車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型シリンダブロック10に設けられているウォータジャケット(溝状冷却用熱媒体流路に相当)12内に挿入して配置できるように形成されている。すなわちウォータジャケット12の幅より薄い板状であり、ウォータジャケット12に適合させて円筒を気筒数(ここでは#1〜#4からなる4気筒)分、接続した環状形状に形成されている。尚、ウォータジャケット12の幅とはシリンダボア部14の外周面14aとシリンダブロック10の外周壁16の内周面16aとの間の距離である。これら外周面14aと内周面16aとが請求項における溝状冷却用熱媒体流路の内面に相当する。
このような形状とすることにより、図4,5に示したごとく区画部材2がウォータジャケット12内に配置されると、流路分割部材基部4は、当接用可撓性部材8と共にウォータジャケット12内をボア側流路12aと反ボア側流路12bとに分割する壁部として機能する。
流路分割部材基部4は、#1気筒側の一部領域にて、ウォータジャケット12の深さに相当する高さに形成された誘導壁4aが設けられている。この誘導壁4aは、シリンダブロック10側であるウォータジャケット12からシリンダヘッド側のウォータジャケットへ冷却水を誘導する機能を果たす。
更に誘導壁4aには閉塞壁部4bが一体に形成されている。この閉塞壁部4bは、ウォータジャケット12内にて、シリンダブロック10に形成された冷却水導入用の開口部10a(図3)に隣接した位置で反ボア側流路12b側を閉塞するように、外向きに突出した状態で形成されている。
流路分割部材基部4において誘導壁4a及び閉塞壁部4b以外の部分については、ウォータジャケット12の深さに満たない高さ、ここではウォータジャケット12の深さの約2/3程度の高さに一律形成されており、この部分の上端面4cに可撓性リップ部材6が接合されている。
誘導壁4aとは反対側、すなわち#4気筒側には貫通孔4dが水平に流路分割部材基部4を貫通している。そして貫通孔4dの周りを囲むようにゴム状弾性体からなるシールリング4eが流路分割部材基部4の外周面に接合されている。このシールリング4eは区画部材2がウォータジャケット12内に配置されると、ボア配列方向での切断面である図5に示すごとく、外周壁16の内周面16aに密着する。このシールリング4eのシール効果により、外周壁16を貫通している温水導入用開口部10bから、反ボア側流路12bには温水が漏れないようにして、直接、ボア側流路12aへ温水を導入できる。
可撓性リップ部材6はオレフィン系エラストマーからなり、誘導壁4a及び閉塞壁部4bの部分を除いて流路分割部材基部4の上端面4cに沿って長尺板状形状に形成されている。可撓性リップ部材6は、流路分割部材基部4の上端面4cに接合している基部6aとこの基部6aから内側に向けて斜め上方に形成されたリップ部6bとから構成されている。リップ部6bの先端縁部6cは、区画部材2をウォータジャケット12内に配置したとした場合に、ウォータジャケット12の一方の内面(ここではシリンダボア部14の外周面14a)を越えた形に形成されている。すなわちリップ部6bの先端縁部6cより内部の領域は、シリンダボア部14の水平断面形状が占める領域よりも狭い。したがって区画部材2をウォータジャケット12内に実際に挿入する場合、可撓性材料のリップ部6bは容易に撓み、シリンダボア部14の外周面14aにより容易に押し広げられる。このことにより、大きな抵抗力をシリンダボア部14の外周面14aから受けることはない。
しかも可撓性リップ部材6がシリンダボア部14の外周面14aに接触しつつ、区画部材2全体がウォータジャケット12内に挿入されることから、区画部材2はウォータジャケット12内の好適な位置に自ずと誘導されることになる。
ウォータジャケット12内への挿入完了後においてもリップ部6b自身の撓み復元力によりリップ部6bの先端縁部6cがシリンダボア部14の外周面14aに接触する状態を維持する。このことにより流路分割部材基部4により分割されているボア側流路12aと反ボア側流路12bとを分離した状態を維持する。しかもリップ部6bの先端縁部6cが斜め上方を向いているので挿入後の区画部材2はウォータジャケット12から抜けにくくなっている。
そしてリップ部6bの先端縁部6cが、外周面14aに深さ方向の中間位置に接触していることにより、ウォータジャケット12の上部領域12cは反ボア側流路12bの一部に含まれることになる。したがって反ボア側流路12bは、外周壁16の内周面16aは全面を流路壁面としているが、上部領域12cにおいてはシリンダボア部14の外周面14aの上部側も流路壁面としている。
当接用可撓性部材8は流路分割部材基部4の下端面4fと同形状であるが幅は狭く形成され、可撓性リップ部材6と同一の可撓性材料にて形成されている。このことにより区画部材2とウォータジャケット12の底面12dとの密着性を向上することができる。尚、この当接用可撓性部材8と、誘導壁4a及び閉塞壁部4bを除いた部分の流路分割部材基部4との組み合わせが、請求項における流路分割部材に相当する。
流路分割部材基部4に対する可撓性リップ部材6及び当接用可撓性部材8の接合は、各構成を別体に成形しておいて接着や溶着あるいは機械的な嵌合によって接合することで一体化しても良いが、図6に示すごとくのダイロータリー成形(2色成形)により上記接合も含めて区画部材2を一体成形することができる。
図6の例では、まず第1工程(A)にてコア型D1、流路分割部材成形用キャビティ型D2及び流路分割部材成形用スライド型D3,D4により流路分割部材基部4の部分をオレフィン系樹脂にて射出成形する。次に第2工程(B)にてコア型D1以外の型を外し、第3工程(C)にて可撓部成形用キャビティ型D5、可撓部成形用スライド型D6,D7を、流路分割部材基部4が形成されたままのコア型D1に組み合わせる。そして第4工程(D)にて、コア型D1、可撓部成形用キャビティ型D5及び可撓部成形用スライド型D6,D7の組み合わせにより形成された、可撓性リップ部材6と当接用可撓性部材8との成形スペースを用いてオレフィン系エラストマーにて射出成形する。このことにより流路分割部材基部4に対して可撓性リップ部材6と当接用可撓性部材8とが接合状態で成形されて、区画部材2が完成する。尚、ここではシールリング4eについても可撓性リップ部材6及び当接用可撓性部材8と共に射出成形されているものとする。
このように製造した区画部材2を、図7に示すごとくシリンダブロック10のウォータジャケット12内に挿入し、シリンダヘッドを取り付ける。このことで誘導壁4aの上端がシリンダヘッド(あるいはガスケット)に当接し、区画部材2はウォータジャケット12内にて固定される。
内燃機関の運転時には冷却用ウォータポンプからの冷却水は冷却水導入用の開口部10a(図3)からウォータジャケット12内に流入する。流入した冷却水は反ボア側流路12bを流れるが、特に上部領域12cの流路断面積が大きいので、主として上部領域12cを流れる。閉塞壁部4bの存在により冷却水は、上から見て反時計回りに流れて、誘導壁4aに到達し、この誘導壁4aと閉塞壁部4bとに誘導されてシリンダヘッド側のウォータジャケットへと流出する。
このように内燃機関運転中は、反ボア側流路12bの内でも上部領域12cに多量に冷却水が流れ、ボア側流路12aは直接的に冷却水が導入されず冷却水の流れはほとんどないので、上部領域12cの冷却効率がボア側流路12aよりも高まる。このためシリンダボア14bの上下方向での温度差が減少される。
内燃機関の冷間始動時においては、始動に先立って予め蓄熱部に貯蔵されていた高温状態の冷却水、すなわち温水(予備昇温用熱媒体に相当)が温水導入用開口部10bからシールリング4e及び貫通孔4dを介してボア側流路12aに直接導入される。このことにより内燃機関の予備昇温がなされる。この予備昇温時はボア側流路12aにてシリンダボア部14の下側から伝熱されるので、効率的な伝熱がなされて、早期かつ均一にシリンダボア14bの昇温を行うことができる。
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前述したごとく流路分割部材基部4については、区画部材2全体の形状を維持するために可撓性リップ部材6よりも剛性の高い材質としているが、前述した形状によりウォータジャケット12内に挿入して配置することは容易である。当接用可撓性部材8の部分についても、流路分割部材基部4の下端面4fにてウォータジャケット12の底面12dに当接する当接部としての役割を果たせばよいので、流路分割部材基部4の下端面4fの幅より狭く、ウォータジャケット12内に配置することは容易である。可撓性リップ部材6については可撓性材料であり、前述したごとくの形状であるため、ウォータジャケット12への挿入時に大きな抵抗力をシリンダボア部14の外周面14aから受けることはない。したがって本実施の形態の区画部材2は小さい摺動抵抗力のみでウォータジャケット12内に挿入でき、ボア側流路12aと反ボア側流路12bとを分離して独立させることができる。しかも挿入時に区画部材2全体をウォータジャケット12内の好適な位置に誘導する役目も果たす。更に挿入後に区画部材2を抜けにくくする効果もある。
したがって当接用可撓性部材8がウォータジャケット12の底面12dに当接するまで区画部材2をデッキ面開口部から挿入することで、容易に内燃機関冷却機構を形成でき、ウォータジャケット12内への区画部材2の配置作業が効率的にできる。
そして区画部材2の挿入完了後において、可撓性リップ部材6は自身の撓み復元力により先端縁部6cがシリンダボア部14の外周面14aに接触した状態を維持する。流路分割部材基部4の下端面4fについては当接用可撓性部材8が設けられているので区画部材2とウォータジャケット12の底面12dとの密着性は高められている。このためボア側流路12aと反ボア側流路12bとの冷却水流の独立性が十分に確保される。したがって本実施の形態の内燃機関冷却機構では、内燃機関運転時にはシリンダブロック10に形成されている冷却水導入用の開口部10aから冷却水を反ボア側流路12bに導入することでシリンダボア14bの上下での温度差を低減できる。更に予備昇温時には温水導入用開口部10b、シールリング4e及び貫通孔4dを介して温水をボア側流路12aに導入することで効率的にシリンダボア14bを昇温できる。このようにそれぞれの状況下でシリンダボア14b側に対する高精度な温度管理が容易なものとなる。
(ロ).特にダイロータリー成形(2色成形)により、エラストマーからなる可撓性リップ部材6及び当接用可撓性部材8と、これとは高剛性で材質の異なる樹脂からなる流路分割部材基部4とを一体化して形成することが可能であり、区画部材2自体の製造も容易である。
[実施の形態2]
図8に本実施の形態の区画部材102の構成を示し、図9にシリンダブロック110のウォータジャケット112内への区画部材102の配置状態を示している。本実施の形態の区画部材102は、流路分割部材基部104の構成が異なり、可撓性リップ部材106及び当接用可撓性部材108の構成は前記実施の形態1と同一形状及び材質である。シリンダブロック110側の構成については前記実施の形態1と同一である。
流路分割部材基部104は、前記実施の形態1と同様に#1気筒側に誘導壁104a及び閉塞壁部104b、#4気筒側に貫通孔104c及びシールリング104dを備えている。ただしこれ以外の流路分割部材基部104の本体部分が、環状壁部104e、上枠部104f、下枠部104g及び中間枠部104hから構成されている。上枠部104f、下枠部104g及び中間枠部104hは環状壁部104eを補強するリブの役目を果たしていると共に、上枠部104fは可撓性リップ部材106を上面に接合させ、下枠部104gは下面に当接用可撓性部材108を接合させて区画部材102として一体化させる役目を果たしている。尚、上枠部104f、下枠部104g及び中間枠部104hについては外周に行くほど薄く形成されている。これは後述するごとく成形型にて一体成形するために抜き勾配が必要なためである。尚、当接用可撓性部材108についても下端縁側が薄くなるように抜き勾配を形成しても良い。
更に閉塞壁部104bに隣接して斜めに形成された誘導スロープ104iが環状壁部104eに設けられている。区画部材102がウォータジャケット112内に配置された場合に、閉塞壁部104bと誘導スロープ104iの斜面との間に冷却水が導入される。このため前記実施の形態1の場合と同じく閉塞壁部104bにより冷却水は上から見て反時計回りに流動するが、この時に誘導スロープ104iの斜面により反ボア側流路112bの一部であるウォータジャケット112の上部領域112cに水流が円滑に導かれる。
この区画部材102の形成については、前記実施の形態1と同様である。すなわち流路分割部材基部104に対する可撓性リップ部材106及び当接用可撓性部材108の接合は、接着や溶着あるいは機械的な嵌合による接合でも良いし、図10に示すごとくのダイロータリー成形により上記接合も含めて区画部材2を一体成形しても良い。この工程手順も前記実施の形態1の場合と同様に、まず第1工程(A)にてコア型D11、流路分割部材成形用キャビティ型D12及び流路分割部材成形用スライド型D13,D14により流路分割部材基部104の部分をオレフィン系樹脂にて射出成形する。次に第2工程(B)にてコア型D11以外の型を外し、第3工程(C)にて可撓部成形用キャビティ型D15、可撓部成形用スライド型D16,D17を、流路分割部材基部104が形成されたままのコア型D11に組み合わせる。そして第4工程(D)にて、コア型D11、可撓部成形用キャビティ型D15及び可撓部成形用スライド型D16,D17の組み合わせにより形成された、可撓性リップ部材106と当接用可撓性部材108との成形スペースを用いてオレフィン系エラストマーにて射出成形する。このことにより流路分割部材基部104に対して可撓性リップ部材106と当接用可撓性部材108とが接合されて一体化された区画部材102が完成する。
このように製造した区画部材102を、図9に示すごとくシリンダブロック110のウォータジャケット112内に挿入し、シリンダヘッドを取り付けることで誘導壁104aの上端がシリンダヘッド(あるいはガスケット)に当接する。このことで区画部材102はウォータジャケット112内にて固定される。
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1にて説明した効果が生じると共に、流路分割部材基部104が薄肉化されているので、内燃機関としても重量増加を抑制できる。更に誘導スロープ104iの形成により、円滑に冷却水を誘導できるので、シリンダボア114b側の上下方向の温度差も更に減少させやすくなる。
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態1(図1)において、誘導壁4aは冷却水の誘導と共に、区画部材2全体の位置固定を確実にするために設けられていた。更に強固な固定とするために、図11に示すごとく#1気筒側の誘導壁204aと共に、#4気筒側にも流路分割部材基部204に、誘導壁204aと同一高さの突出部204f,204gを形成して、#4気筒側でも区画部材202全体を位置固定するようにしても良い。このことは前記実施の形態2においても同じである。
(b).区画部材の他の実施の形態を図12,13に示す。図12の(A)に示す区画部材302は、前記実施の形態1の区画部材に比較して当接用可撓性部材が存在しない。シリンダブロック310のウォータジャケット312の底面312dにはオレフィン系樹脂で形成されている流路分割部材基部304が直接当接する。このように可撓性リップ部材306よりも高剛性の流路分割部材基部304がウォータジャケット312の底面312dに当接することで区画部材302とウォータジャケット312の底面312dとの密着性は少し低下するが、ボア側流路312aと反ボア側流路312bとの間の冷却水流の独立性は十分ある。したがって前記実施の形態1に準じる効果を生じさせることができ、エラストマーが少ないだけ材料コストも製造コストも低減できる。
図12の(B)では、流路分割部材基部404の上縁部に設けた可撓性リップ部材406と同様な形状に、下縁部に設けた当接用可撓性部材408が形成されている。すなわちリップ部408aがウォータジャケット412の開口部方向に向けて、かつ先端縁部408bがウォータジャケット412の一方の内面416aを越えた形とされている。
このことによりウォータジャケット412の底面412dの平面度が著しく低くても、ウォータジャケット412の一方の内面416aにリップ部408aが接触することにより区画部材402の下方側での密着度を高めることができる。したがって前記実施の形態1に準じる効果を生じさせることができる。更に本例では流路分割部材基部404が薄い分、内燃機関の軽量化に貢献できる。
図13の(A)では、流路分割部材基部504が同形状の小流路分割部材基部504a,504bを重ねたものとして構成されている。各小流路分割部材基部504a,504bは図12の(A)と同構成であるが、高さが約半分に形成されている。この小流路分割部材基部504a,504bをウォータジャケット512内に重ねた状態に配置することにより、ボア側流路512a,513aと反ボア側流路512bとを区画できる。尚、温水は、ボア側流路512a,513aの一方に流しても良く、両方に流しても良い。このことにより前記実施の形態1に準じる効果を生じさせることができると共に、一つの成形型により、リップ部506b,507bに囲まれたボア側流路512aの密閉性を高めることができる。
尚、小流路分割部材基部504a,504bの間に高さに差を設けて、ボア側流路512a,513aの流路断面積を調節しても良い。
図13の(B)では、可撓性リップ部材と当接用可撓性部材とを一体化した可撓性部材606としている。すなわち可撓性部材606は流路分割部材基部604の側面に一体成形されており、流路分割部材基部604よりも上下に飛び出た状態に形成されることにより、リップ部606aと当接部606bとが形成されている。このことにより前記実施の形態1に準じる効果を生じさせることができる。
(c).前記各実施の形態では、可撓性リップ部材のリップ部はシリンダボア部の外周面側に接触するように形成されていた。予備昇温のために温水を流さない構成であれば、図14に示すごとく可撓性リップ部材706のリップ部706aをシリンダブロック710の外周壁716の内周面716a側に接触するように形成しても良い。このことによっても流路分割部材基部704に区画されたボア側流路712aと反ボア側流路712bとを分離した状態を形成できることから、ボア側流路712aと反ボア側流路712bとでの冷却水の独立性が確保される。したがって内燃機関冷却機構が容易に形成でき、シリンダボア714b側に対する高精度な温度管理が容易なものとなる。すなわちシリンダボア部714の上部側での冷却水流量が下部側よりも多くなり、しかも下部側では区画部材702の存在により外部側に対して放熱しにくくなることから、シリンダボア714bの上下での温度差を低減させることができる。
実施の形態1の区画部材の構成説明図。 上記区画部材の分解説明図。 上記区画部材をウォータジャケットに配置したシリンダブロックの斜視図。 ウォータジャケット内への上記区画部材の挿入と配置後の状態を示す縦断面図。 上記区画部材をウォータジャケットに配置したシリンダブロックのボア配列方向での縦断面図。 実施の形態1の内燃機関冷却機構形成方法を示す工程説明図。 ウォータジャケット内への上記区画部材の挿入状態を示す斜視図。 実施の形態2の区画部材の構成説明図。 ウォータジャケット内への上記区画部材の挿入と配置後の状態を示す縦断面図。 実施の形態2の内燃機関冷却機構形成方法を示す工程説明図。 区画部材の他の実施の形態を示す斜視図。 他の実施の形態の区画部材の挿入と配置後の状態を示す縦断面図。 他の実施の形態の区画部材の挿入と配置後の状態を示す縦断面図。 他の実施の形態の区画部材の挿入と配置後の状態を示す縦断面図。
符号の説明
2…区画部材、4…流路分割部材基部、4a…誘導壁、4b…閉塞壁部、4c…上端面、4d…貫通孔、4e…シールリング、4f…下端面、6…可撓性リップ部材、6a…基部、6b…リップ部、6c…先端縁部、8…当接用可撓性部材、10…シリンダブロック、10a…冷却水導入用の開口部、10b…温水導入用開口部、12…ウォータジャケット、12a…ボア側流路、12b…反ボア側流路、12c…上部領域、12d…底面、14…シリンダボア部、14a…外周面、14b…シリンダボア、16…外周壁、16a…内周面、102…区画部材、104…流路分割部材基部、104a…誘導壁、104b…閉塞壁部、104c…貫通孔、104d…シールリング、104e…環状壁部、104f…上枠部、104g…下枠部、104h…中間枠部、104i…誘導スロープ、106…可撓性リップ部材、108…当接用可撓性部材、110…シリンダブロック、112…ウォータジャケット、112b…反ボア側流路、112c…上部領域、114b…シリンダボア、202…区画部材、204…流路分割部材基部、204a…誘導壁、204f,204g…突出部、302…区画部材、304…流路分割部材基部、306…可撓性リップ部材、310…シリンダブロック、312…ウォータジャケット、312a…ボア側流路、312b…反ボア側流路、312d…底面、402…区画部材、404…流路分割部材基部、406…可撓性リップ部材、408…当接用可撓性部材、408a…リップ部、408b…先端縁部、412…ウォータジャケット、412d…底面、416a…内面、504…流路分割部材基部、504a,504b…小流路分割部材基部、506b,507b…リップ部、512…ウォータジャケット、512a,513a…ボア側流路、512b…反ボア側流路、604…流路分割部材基部、606…可撓性部材、606a…リップ部、606b…当接部、702…区画部材、704…流路分割部材基部、706…可撓性リップ部材、706a…リップ部、710…シリンダブロック、712a…ボア側流路、712b…反ボア側流路、714…シリンダボア部、714b…シリンダボア、716…外周壁、716a…内周面、D1…コア型、D2…流路分割部材成形用キャビティ型、D3,D4…流路分割部材成形用スライド型、D5…可撓部成形用キャビティ型、D6,D7…可撓部成形用スライド型、D11…コア型、D12…流路分割部材成形用キャビティ型、D13,D14…流路分割部材成形用スライド型、D15…可撓部成形用キャビティ型、D16,D17…可撓部成形用スライド型。

Claims (9)

  1. 内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置されることで該溝状冷却用熱媒体流路内を複数の流路に区画する流路区画部材であって、
    前記溝状冷却用熱媒体流路の深さに満たない高さに形成され、前記溝状冷却用熱媒体流路内をボア側流路と反ボア側流路とに分割する壁部となる流路分割部材と、
    前記流路分割部材から前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部方向に向けて形成され、かつ先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面を越えた形に可撓性材料で形成されていることにより、前記溝状冷却用熱媒体流路内への挿入完了後は自身の撓み復元力により前記先端縁部が前記内面に対して前記溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて接触することで前記ボア側流路と前記反ボア側流路とを分離する可撓性リップ部材と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  2. 請求項1において、前記可撓性リップ部材はエラストマーにて形成され、前記流路分割部材は前記可撓性リップ部材よりも剛性の高い材質であることを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  3. 請求項2において、前記可撓性リップ部材はオレフィン系エラストマーにて形成され、前記流路分割部材はオレフィン系樹脂にて形成されていることを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記可撓性リップ部材は、前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部側における前記流路分割部材の縁部に設けられ、前記先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路のボア側内面を越えた形に形成され、前記流路分割部材は、前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部とは反対側の縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の底面への当接部とされていることを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  5. 請求項4において、前記当接部は、可撓性材料で形成されていることを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  6. 請求項4又は5において、全構成が樹脂によるダイロータリー成形により一体成形されていることを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材が内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置され、冷却用熱媒体の供給口は前記反ボア側流路に開口していることを特徴とする内燃機関冷却機構。
  8. 請求項7において、予備昇温時に予備昇温用熱媒体が前記溝状冷却用熱媒体流路内に導入されると共に、該予備昇温用熱媒体の供給口は前記ボア側流路に開口していることを特徴とする内燃機関冷却機構。
  9. 請求項4〜6のいずれかに記載の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材を、シリンダブロックの溝状冷却用熱媒体流路のデッキ面開口部から、前記当接部を前記溝状冷却用熱媒体流路の底面に当接するまで挿入することを特徴とする内燃機関冷却機構形成方法。
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