JP2008030062A - 高Al鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Al含有量が0.1%以上であるような高Al鋼を連続鋳造によって製造する場合でも、凹みや鋳片の割れの発生を防止して、表面品質に優れた鋳片を製造できる連続鋳造方法を提供すること。
【解決手段】所定の化学成分組成を有する溶鋼を連続鋳造する際に、T−CaO:35〜60%、SiO2:5〜20%、Al23:15〜30%、MgO:0.2〜1.0%、Li2O:7〜13%、F:7.0〜13%、C:10.5〜14%および不可避不純物からなり、式:2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0の関係を満たすモールドパウダーを用いると共に、鋳型内の湯面レベル変動速度、鋳型幅方向への溶鋼の吐出角度、振幅のストローク、所定の関係式で定められるネガティブストリップ時間tN、および鋳型内電磁撹拌の際の磁束密度の条件を制御しつつ操業する連続鋳造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶存Al量が0.1質量%以上である溶鋼から連続鋳造法によって高Al鋼を製造する方法に関するものであり、特に表面品質が良好な鋳片を製造するための連続鋳造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造では、良好な表面品質の鋳片を製造するために、モールドパウダーが鋳型内の溶鋼表面上に添加される。これは、溶鋼からの熱で滓化溶融し、溶融スラグ層を形成し、順次鋳型と凝固シェルとの隙間に流入して、消費される。モールドパウダーは、主にCaOとSiO2とからなり、さらに溶融スラグの粘度や凝固温度を調整するためにAl23、MgO、Na2O、FやLi2Oなど、またスラグの溶融速度を調整するためにCなどが加えられている。このモールドパウダーの主な作用としては、(ア)鋳型および凝固シェル間の潤滑性を確保すること、および(イ)凝固シェルから鋳型への抜熱速度を抑えて緩冷却させることなどが挙げられる。
まず上記(ア)で挙げた鋳型および凝固シェル間の潤滑性を確保するためには、鋳型および凝固シェルの隙間にモールドパウダーから得られる溶融スラグが適正量流入するように、その粘度および凝固温度を適正に設定することが重要である。一般的に高速鋳造となるほど、溶融スラグの流入量を確保するため、低粘度のものが使用される。
また上記(イ)の緩冷却は、得られる鋳片の表面品質に直結するため重要である。亜包晶鋼のように鋳片表面割れの発生しやすい鋼種では、特に緩冷却が必要とされる。緩冷却のためには、モールドパウダーから得られるスラグフィルム中、特にその鋳型側表面に結晶を晶出させることが有効である。スラグフィルムの鋳型側表面に結晶が晶出すると、フィルムと鋳型との間に凹凸が形成され、この凹凸に含まれる空気層が断熱層として作用するからである。このための結晶として、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)が、一般的に利用されている。
しかし溶存Al量が0.1%以上であるような高アルミニウム鋼の連続鋳造では、(ア)の潤滑性の確保、および(イ)の緩冷却が困難となる。なぜなら高アルミニウム鋼の連続鋳造では、下記式(6):
4Al+3SiO2 → 2Al23+3Si … (6)
で表される化学反応により、SiO2が消費されるからである。そのため溶融スラグ中において塩基度[CaO]/[SiO2]が上昇し、その結果、凝固温度が著しく上昇する。そして鋳型壁面にスラグベアが形成され、溶融スラグの流入が阻害される。そのため潤滑性が損なわれて、凝固シェルと鋳型とが焼き付き、ブレークアウトが発生してしまう。なおスラグベアは、一般に、溶融スラグが冷却され凝固して形成された部分と、溶融スラグないしモールドパウダーが焼結した層が団子状に固まって形成された部分とから構成される。
上記式(6)の化学反応により引き起こされる溶融スラグの組成変動は、鋳片の表面品質を悪化させ得る。そこで特許文献1は、連続鋳造用フラックス中において、あらかじめSiO2量を極力低下させ、Al23を適量に調整することより、上記式(6)の反応を抑制して、組成変動を防ぐことを提案している(特許請求の範囲、段落[0009])。しかしSiO2量が少ないと、カスピダインを生成させることが難しく、緩冷却の達成が困難となる。
また高アルミニウム鋼の連続鋳造では溶融スラグの組成が変動するため、カスピダインを安定して生成させることが困難である。高アルミニウム鋼の連続鋳造においてカスピダインの結晶を晶出させるために、特許文献2は、CaO、SiO2 、Li2O、F、Na2O、K2OおよびAl23含有率が所定の式を満たすような特定の組成を有するモールドパウダーを提案している(特許請求の範囲、段落[0011]および[0017])。
他方、特許文献3は、カスピダインとは異なる複合結晶を生じさせて緩冷却を達成するために、周期律表IA族に属する元素の酸化物を2種類以上含有するモールドパウダーを開示している(特許請求の範囲および段落[0013])。なお特許文献3の発明では、想定する複合結晶として、LiCa2FSiO4やNaCa2FSiO4などを開示しているが、実施例で用いられている周期律表IA族に属する元素の酸化物の中では、Na2O量が最も多いことから、メインの複合結晶としてNaCa2FSiO4を想定していると考えられる(段落[0020]および[0030])。また特許文献3の発明は、モールドパウダーの軟化温度を低減させることが目的であるため、周期律表IA族に属する元素の酸化物を2種類以上含有させることを特徴としている(段落[0024])。
しかし高Al鋼でも、特に包晶反応またはδ/γ変態量が多いような組成域の鋼では、上記のようなモールドパウダーを用いても、得られる鋳片の表面に変態収縮に伴うディプレッション(凹み)や割れが発生しやすいという問題がある。こうした鋼種は亜包晶鋼と呼ばれており、一般的にはFe−CまたはFe−Fe23二元系平衡状態図に基づき、C含有量[C]によってその化学成分組成範囲が決定される。その範囲は概ねC:0.09〜0.18%であるとされている。
ところが、合金鋼の場合には、添加元素の影響により状態図そのものが変化し、δ相の最大固溶C濃度、包晶点ともに移動するので、C含有量のみで亜包晶鋼の組成範囲を一律に規定できないという事情がある。こうしたことから、高Al鋼でも特に包晶反応またはδ/γ変態量が多いような組成については、Si、Mn、Al、Ni、CrおよびMo等の合金元素の影響を考慮し、平衡熱力学計算に基づいて下記式(1)〜(3)のように規定することが知られている(非特許文献1)。なお、これらの式の対象となる亜包晶鋼は、Si、Mn、Al、Ni、CrおよびMoの基本成分の含有量は、それぞれ4.0%以下(0%を含まない)であることを想定したものであり、Alの含有量は0.1〜3.0%である。
f1−0.10≦[C]≦f2+0.05 … (1)
f1=0.0828[Si]−0.01951[Mn]+0.07398[Al]
−0.04614[Ni]+0.02447[Cr]+0.01851[Mo]
+0.090 … (2)
f2=0.2187[Si]−0.03291[Mn]+0.2017[Al]
−0.06715[Ni]+0.04776[Cr]+0.04601[Mo]
+0.173 … (3)
〔式中、[Si]、[Mn]、[Al]、[Ni]、[Cr]および[Mo]は、それぞれ、鋼中のSi、Mn、Ni、CrおよびMoの含有量(質量%)を表す。〕
特開平9−85404号公報(特許請求の範囲、段落[0009]) 特開2002−346708号公報(特許請求の範囲、段落[0011]および[0017]) 特開平10−216907号公報(特許請求の範囲、段落[0013]、[0020]、[0024]および[0030]) 「凝固」−373(1985) 日本学術振興会 製鋼第19委員会第3分科会 凝固現象協議会 10670
上記式(1)〜(3)で規定される亜包晶鋼のように、鋳片表面割れの発生しやすい鋼種では、割れを抑制するために、抜熱速度を低下させて、緩冷却することが重要である。そのため従来では、一般的に、モールドパウダーから得られるスラグフィルム中にカスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)を晶出させて、その鋳型表面に凹凸(空気による断熱層)を形成させることにより、緩冷却を達成していた。しかし高Al鋼の場合は、組成変動のために、カスピダインを安定して生成させることが困難である。
また、上記のような鋼種を表面品質を良好に維持しつつ製造するには、適切なモールドパウダーを用いることも重要であるが、連続鋳造における条件も適切に制御する必要がある。しかしAl含有量が0.1%以上である高Al鋼を連続鋳造する場合における最適な鋳造条件について、確立されているとはいえないのが実情である。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、Al含有量が0.1%以上であるような高Al鋼を連続鋳造によって製造する場合でも、凹みや鋳片の割れの発生を防止して、表面品質に優れた鋳片を製造できる連続鋳造方法を提供することにある。
上記目的を達することのできた本発明の連続鋳造方法とは、モールドパウダーを用いる高Al鋼の連続鋳造方法であって、
Al含有量が0.1〜3.0%(質量%の意味、以下同じ)であると共に、Si、Mn、Ni、CrおよびMoを、それぞれ4.0%以下(0%を含まない)含み、且つC含有量[C]が下記式(1)〜(3):
f1−0.10≦[C]≦f2+0.05 … (1)
f1=0.0828[Si]−0.01951[Mn]+0.07398[Al]
−0.04614[Ni]+0.02447[Cr]+0.01851[Mo]
+0.090 … (2)
f2=0.2187[Si]−0.03291[Mn]+0.2017[Al]
−0.06715[Ni]+0.04776[Cr]+0.04601[Mo]
+0.173 … (3)
〔式中、[Si]、[Mn]、[Al]、[Ni]、[Cr]および[Mo]は、それぞれ、鋼中のSi、Mn、Ni、CrおよびMoの含有量(質量%)を表す。〕
の関係を満たす溶鋼を連続鋳造するに際して、
T−CaO:35〜60%、SiO2:5〜20%、Al23:15〜30%、MgO:0.2〜1.0%、Li2O:7〜13%、F:7.0〜13%、C:10.5〜14%および不可避不純物からなり、下記式(4):
2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0 … (4)
〔式中、[T−CaO]および[SiO2]は、それぞれ、モールドパウダー中のT−CaOおよびSiO2の含有量(質量%)を表す。〕
の関係を満たすモールドパウダーを用いると共に、
鋳型内の湯面レベル変動速度を14mm/秒以下とし、鋳型幅方向に溶鋼を吐出させると共に、その吐出角度が水平に対して下向き0°以上、55°以下の浸漬ノズルを用い、
更に振幅のストロークを2mm超、8mm以下とし、下記式(5):
N=(1/π×f)cos-1(Vc/π×f×s) … (5)
〔式中、fは鋳型振動数(Hz)であり、sは鋳型振動時の鋳型の上止点および下止点間の距離(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(mm/秒)である。〕
で定められるネガティブストリップ時間tNが0.25秒以下となるような鋳型振動を付与し、且つ1200ガウス以下の磁束密度で鋳型内電磁攪拌を行いつつ操業することを特徴とするものである。
ここで「1200ガウス以下の磁束密度で鋳型内電磁攪拌を行う」との要件は、電磁撹拌を行う際の磁束密度の上限を1200ガウスに制限することを意図し、本発明の範囲には、磁束密度が0である場合、即ち鋳型内電磁撹拌を行わない場合も包含される。また本発明の方法において、300ガウス以上の磁束密度で鋳型内電磁攪拌を行いつつ操業することが好ましい。
本発明によれば、適正に調整された組成を有するモールドパウダーを用いると共に、連続鋳造の操業条件を適切に制御することによって、鋳片表面の凹みや割れが防止されて表面品質に優れた高Al鋼を製造することができる。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、適正に調整された組成を有するモールドパウダーを用いると共に、連続鋳造条件を適切に制御することによって、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。まず、本発明で用いるモールドパウダーについて説明する。
従来提案されているモールドパウダーでは、高Al鋼に適用したときには、組成変動のために、カスピダインを安定して生成させることが困難である。そこで本発明者らは、スラグフィルム中に、カスピダインに代わる結晶を生成させることを検討した。
しかし緩冷却のために、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)およびゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)といった結晶を晶出させると、鋳型銅板温度の変動が大きくなる問題があり、また鋳片の凹みや割れの防止にも有効ではない。これらは、粗大な結晶としてスラグフィルム中で不均一に晶出するため、鋳型側の表面に不均一な凹凸(空気層)を形成し、その結果、抜熱速度にバラツキが生ずる。そうすると凝固シェルの厚みが不均一になるため、変態収縮で、鋳片表面に凹みや割れが発生すると考えられる。
そこで鋭意検討した結果、カスピダインの代わりに、LiAlO2をスラグフィルム中に晶出させることで、鋳片の凹みや割れを有効に防止できることを見出した。LiAlO2を晶出させることにより、鋳片の凹みや割れを防止できる正確なメカニズムは不明であるが、次のように推定できる。
LiAlO2は、スラグフィルムの鋳型側表面に、微細な結晶として均一に晶出するため、均一な空気層が形成される。その結果、均一な抜熱が達成され、鋳型銅板温度の変動が小さく、また均一な緩冷却により均一な厚みの凝固シェルが形成されて、変態収縮による鋳片の凹凸や割れも抑制されると考えられる。但し、本発明はこのような推定メカニズムに限定されない。
本発明のモールドパウダーは、カスピダインの代わりにLiAlO2を晶出させるために、各成分量および塩基度[T−CaO]/[SiO2]が、適正範囲に調整されていることを特徴とする。さらに溶融スラグ(モールドパウダー)の凝固温度を適正範囲に調整して、潤滑性を確保するという観点から、各成分組成が適正範囲に調整されていることも、本発明のモールドパウダーの特徴である。以下、本発明のモールドパウダー中の各成分量、および塩基度[T−CaO]/[SiO2]を、それぞれ説明する。
〈T−CaO:35〜60%〉
本発明において「T−CaO」とは、モールドパウダー中に含まれる全てのCaを、CaOに換算した際のCaO量(質量%)を表す。モールドパウダー中のT−CaO量は、35%以上、好ましくは38%以上、より好ましくは40%以上であり、60%以下、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。T−CaO量が35%未満であると、相対的にSiO2量が増加し、LiAlO2よりもゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)が生成しやすくなる。逆にT−CaO量が60%を超えると、相対的にLi2O量が低下してLiAlO2が生成しにくくなり、またメイエナイト(12CaO・7Al23)の粗大な結晶が優先的に晶出する。さらに溶融スラグの凝固温度が高くなりすぎるおそれがある。
〈SiO2:5〜20%〉
SiO2量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上であり、20%以下、好ましくは17%以下、より好ましくは14%以下である。ガラス形成化合物であるSiO2量が少ないと、液相の溶融スラグから粗大な結晶が晶出しやすくなる。そしてLiAlO2は、一般に介在物の融点を低下させるLiO2から構成されることから、メイエナイト(12CaO・7Al23)などと比べて、その融点はかなり低いと推定される。そのためSiO2量が5質量%未満であると、LiAlO2よりも融点が高く、且つSiO2を含まないメイエナイトの粗大な結晶が優先的に生成し、その結果、スラグフィルムの鋳型側表面に不均一な凹凸が形成されると考えられる。また凝固温度も上昇し、潤滑性が損なわれて、スラグベアが生成しやすくなる。逆にSiO2量が20%を超えても、SiO2から構成されるゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)やダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)が多く生成する。
〈Al23:15〜30%〉
Al23量は、15%以上、好ましくは16%以上、より好ましくは17%以上であり、30%以下、好ましくは28%以下、より好ましくは26%以下である。Al23を15%以上という高濃度で含有させておくことにより、LiAlO2が形成されやすくなる。またモールドパウダー中のAl23量が15%以上であると、溶融スラグ中のAl23濃度は飽和状態に近くなり、上記式(6)の反応を抑制して、溶融スラグの組成、殊にSiO2量を適正範囲に維持することができる。なおAl23量が15%未満であると、Al23成分を含まないダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)の粗大な結晶が形成されやすくなり、抜熱速度にバラツキが生じて、鋳片表面の品質に悪影響を及ぼすことがある。しかし逆にAl23量が30%を超えると、メイエナイト(12CaO・7Al23)が生成しやすくなり、また溶融スラグの凝固温度が上昇しすぎて、適正な潤滑性を確保することが困難になる。
〈MgO:0.2〜1.0%〉
MgO量は、0.2%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上であり、1.0%以下、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。MgOは、スラグフィルム中で結晶が晶出するための核として作用する。そのためMgO量が1.0%を超えると、核が多くなりすぎて結晶の晶出を適切に制御できなくなり、殊にモールドパウダー組成によっては、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)などが優先的に晶出する場合がある。一方、MgO量が0.2%未満であると、結晶の核が少なすぎるため、低温の平衡温度に達するまでは結晶が充分に晶出せず、殊に溶鋼が高温である鋳型メニスカス直下では、緩冷却が達成されにくくなる。また平衡温度に達すると、粗大な結晶が一度に晶出するため、抜熱速度にバラツキが生じる。
〈Li2O:7〜13%〉
Li2O量は、7%以上、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8.0%以上であり、13%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下である。Li2O量が7%未満であると、充分な量のLiAlO2を晶出させることが難しく、また溶融スラグの凝固温度および粘度が上昇して、充分な潤滑性を確保できない場合がある。逆にLi2O量が13%を超えても、LiAlO2が晶出する最適範囲から外れて、その晶出量が低下し、緩冷却が達成されない場合がある。さらに溶融スラグの粘度が大きく低下して、溶融スラグが局所的に過剰流入したり、脈動が生じて、連続鋳造の安定操業に悪影響を及ぼすことがある。
〈F:7.0〜13%〉
F量は、7.0%以上、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8.0%以上であり、13%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下である。F量が7%未満であると、溶融スラグの凝固温度および粘度が上昇し、潤滑性を確保できなくなる場合がある。一方、Fは結晶晶出を抑制する作用を有するため、F量が過剰であると、溶融スラグの鋳型側表面に充分な結晶を晶出させることができず、緩冷却を達成することが困難になる。殊にF量が13%を超えると、LiAlO2の晶出量が急激に低減する。
〈C:10.5〜14%〉
本発明で規定するC量は、モールドパウダー中に含まれる全てのC量を表す。即ち本発明のC量は、モールドパウダーの原料として添加されるような、単体の炭素量(遊離C量)と、例えばLi2O原料として添加されるLi2CO3などの化合物中の炭素量との合計を表す。モールドパウダー中のC量は、10.5%以上、好ましくは11.0%以上、より好ましくは11.5%以上であり、14%以下、好ましくは13.5%以下、より好ましくは13%以下である。C量が10.5%未満であると、モールドパウダーの溶融速度が大きくなりすぎて、流入過多となり、不均一流入が生ずる。その結果、鋳片の縦割れが発生しやすくなる。逆にC量が14%を超えると、溶融速度が小さくなりすぎて、充分なスラグフィルムの厚みが確保できなくなる。その結果、工業生産上で不可避的に発生する鋳型内の湯面変動の際に、スラグフィルムの膜切れを起こし、焼付きや、溶鋼が直接鋳型に接することによる急冷のために、鋳片の表面品質が劣化する。
本発明のモールドパウダーは、上記成分および不可避不純物からなる。なお一般的なモールドパウダーには、粘度や凝固温度を低減させるために、Na2OやK2Oが添加されているが、本発明のモールドパウダーは、これらを含有しないことも特徴とする。なぜなら高アルミニウム鋼の連続鋳造では、下記の反応式(7)および(8):
2Al+3Na2O → Al23+6Na … (7)
2Al+3K2O → 2Al23+6K … (8)
で示される化学反応が起こるため、Na2OやK2Oが消費されて、これらの作用が充分に発揮されず、逆に本発明が想定する以上のAl23が生成して、溶融スラグの凝固温度などに悪影響を及ぼすからである。またNa2OやK2Oを添加すると、モールドパウダーの軟化開始温度から溶融温度までの差が広がるため、溶融スラグないしモールドパウダーの焼結層が形成され易くなり、その結果、スラグベアの生成が助長される。さらにNa2Oが存在すると、Na−Al−O結晶が不均一に晶出して、スラグフィルムの凹凸(空気層)にバラツキが生ずることがある。
〈2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0〉
塩基度[T−CaO]/[SiO2]は、2.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上であり、12.0以下、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下である。塩基度が2.5未満であると、相対的にSiO2量が増加し、LiAlO2よりもダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)やゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)が生成しやすくなる。逆に塩基度が12.0を超えても、相対的に、ガラス形成化合物であるSiO2量が減少し、LiAlO2よりも融点が高いと考えられるダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)やゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)の粗大な結晶が優先的に生成する。また塩基度が高すぎると、凝固温度が高くなって潤滑性に悪影響を及ぼし得る。
本発明のモールドパウダー(溶融スラグ)の凝固温度は、好ましくは1050〜1220℃、より好ましくは1050〜1190℃である。凝固温度が1050℃未満であると、結晶が晶出しにくくなり、緩冷却の効果を充分に発揮させることができないおそれがある。一方、凝固温度が1220℃を超えると、スラグベアが生成し、スラグベアによる不均一流入のために、ブレークアウトや鋳片表面の割れが生ずる場合がある。
連続鋳造する鋼の溶存Al量(溶鋼中のAl含有量)は、本発明のモールドパウダーの効果を充分に発揮させるために、0.1%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上であり、2.5%以下、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.7%以下である。ここで鋼の溶存Al量とは、連続鋳造に用いる溶鋼中に溶けているAlの量を表し、この量には、Al23等の化合物として存在しているAl量は含まれない。
また、本発明方法で対象とする亜包晶鋼では、Si、Mn、Al、Ni、CrおよびMoの基本成分の含有量は、それぞれ4.0%以下(0%を含まない)であることを想定したものであり、上記式(1)〜(3)を満足するものである。上記成分の他は、実質的に鉄からなるものであるが、S、P、Cu等の不可避不純物も含有し得る。
本発明において、上記目的を達成するためには、連続鋳造の操業条件も適切に制御する必要があるが、次にこれらの条件について説明する。
〈鋳型内の湯面レベル変動速度:14mm/秒以下〉
鋳型内の湯面レベル変動速度は、モールドパウダー溶融プールの安定を維持するために適切な範囲に制御する必要がある。この変動速度が14mm/秒を超えると、モールドパウダー溶融プールが切れて溶鋼が鋳型銅板に直接接触し、鋳型抜熱速度が不均一となる。その結果、鋳型熱電対温度変動が大きくなって凹みや割れが発生しやすくなる。なお、この変動速度は、好ましくは10mm/秒以下とするのが良い。また、鋳型内の湯面レベル変動速度を上記の範囲に制御するには、鋳造条件に応じて、ノズル詰まり防止用Arガス流量を最適化し、浸漬ノズルの吐出孔形状を最適化すれば良い。
〈鋳型幅方向に溶鋼を吐出させると共に、その吐出角度が水平に対して下向き0°以上、55°以下の浸漬ノズルを用いる〉
鋳型内で使用する浸漬ノズルは、その溶鋼吐出方向が鋳型の幅方向である必要がある。溶鋼吐出方向が厚み方向であると、鋳型広面側凝固シェルの特定部位に溶鋼吐出流が当り、該当部位の抜熱状況が他の部位と異なり、変態収縮の大きい該鋼種では凹みや割れの起点となり易い。このときの浸漬ノズルの吐出角度(吐出方向角度)は水平方向に対して下向き0°以上、55°以下とするのが良い。浸漬ノズルの吐出角度が0°未満(即ち、上向き)となると、吐出溶鋼が溶融モールドパウダーと溶鋼浴面の界面に直接向かうため、界面が高温かつ攪拌される状態となり、溶鋼中の溶存Alとモールドパウダー中のSiO2との間で起こる上記式(6)の反応が激しく進行し、適切なモールドパウダー組成に維持できない。また、浸漬ノズルの吐出角度が水平方向下向き55°を超えると、高温の溶鋼吐出流が鋳型下方に向かう流れが中心となり、鋳型内溶鋼浴面温度が低下し過ぎることなる。こうした場合には、スラグベアが発生し、モールドパウダーの流入不均一を起こし、縦割れを発生させることがある。
〈振幅のストローク:2mm超、8mm以下、下記式(5)で定められるネガティブストリップ時間tN:0.25秒以下〉
連続鋳造を行う場合には、鋳型を振動しながら鋳片を下方に引き抜くのが一般的であるが、この鋳型振動条件としては、鋳型の上止点と下止点間の距離で定められる振幅のストロークを2mm超、8mm以下の範囲に制御した上で、下記式(5)で定められるネガティブストリップ時間tNが0.25秒以下となるような鋳型振動を付与しつつする必要がある。
N=(1/π×f)cos-1(Vc/π×f×s) … (5)
〔式中、fは鋳型振動数(Hz)であり、sは鋳型振動時の鋳型の上止点および下止点間の距離(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(mm/秒)である。〕
上記ストロークが2mm以下になると、モールドパウダーの流入量が極端に減少し、鋳型−鋳片間の焼き付き頻度が増加し、ブレークアウトの危険性が増加するため安定鋳造が実現し難くなる。また、ストロークが8mmを超えると、オッシレーションマークの間隔が広くなり、鋳造初期の収縮応力が分散されず、オッシレーションマーク部に集中し、凹みを引き起こすことになる。
上記式(5)で定められるネガティブストリップ時間tNは、振幅も考慮に入れたオッシレーションマーク深さを示す指標として知られているものであり(例えば「第3版 鉄鋼便覧 II 製鉄・製鋼」(日本鉄鋼協会編)、p.638)、この値が小さいほどオッシレーションマーク深さは小さくなるとされているものである(例えば「鉄と鋼」、67(1981)、p.1190)。また、通常の鋼材を連続鋳造するときには、上記ネガティブストリップ時間tNは0.35秒程度以下に設定されることになる。本発明者らが検討したところによれば、本発明で対象とする高Al鋼を連続鋳造するには、上記式(5)で定められるネガティブストリップ時間tNを0.25秒以下に制御する必要がある。即ち、このネガティブストリップ時間tNが0.25秒よりも大きな値となると、鋳型の下向きの運動エネルギーがパウダーにより伝達され、メニスカスのパウダーに圧力が発することに起因してオッシレーションマークの深さが大きくなり、オッシレーションマークの谷間部に凝固、変態に伴う変形応力が集中し、横割れが発生することになる。なお、ネガティブストリップ時間tNの好ましい上限は0.23秒である。
本発明方法における基本的な鋳造条件は上記の通りであるが、必要によって鋳型内電磁攪拌を行なうことも有効である。電磁攪拌を行うことによって、鋳型内の溶鋼流動が均一化され、凝固シェルへ衝突する溶鋼温度が均一化されるため、鋳片の幅方向への入熱量が均一化され、均一な凝固シェルが得られ、凹み・縦割れが防止できることになる。こうした効果を発揮させるためには、電磁攪拌を行なうときの磁束密度を300ガウス(gauss)以上とすることが好ましく、より好ましくは500ガウス以上である。但し、磁束密度が大きくなり過ぎると、溶鋼湯面の溶鋼流速が速くなり過ぎて、上記式(6)で示した反応が激しく進行し、適切なモールドパウダー組成に維持できないことがあるので、1200ガウス以下とする必要がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〈実施例1〉
垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、1ヒート240トンの溶鋼を鋳造した。この実施例では、下記表1に示す化学成分組成の溶鋼(鋼種)を用いると共に、下記表2に示す化学成分組成のモールドパウダーを用いた。連続鋳造におけるモールドサイズは240×1230mmであり、鋳造速度は1.4m/分である。
モールドパウダー(溶融スラグ)の潤滑性の指針として、その凝固温度を算出した。凝固温度(℃)は、溶融スラグの粘度ηおよび温度Tから算出した。具体的には振動片法により、昇温しながら溶融スラグの粘度ηを連続的に測定し、粘度ηの対数logηをY軸に、粘度の測定温度Tの逆数1/Tを横軸にとったグラフを作成し、このグラフの変曲点に対応する温度Tを凝固温度として求めた。この結果も、下記表2に示す。
Figure 2008030062
Figure 2008030062
各試験で使用した鋼種、モールドパウダー、および操業条件(鋳型内の湯面レベル変動速度、浸漬ノズルの吐出角度、電磁攪拌の磁束密度、鋳型の振幅ストローク、ネガティブストリップ時間tN)を、下記表3に示す。また下記表3には、以下のようにして測定したスラグフィルム中に存在する結晶のX線回折強度、鋳型熱流束、鋳型銅板の温度変動、鋳片表面の凹みおよび割れの結果も示す。
モールドパウダーから得られるスラグフィルム中に存在するLiAlO2、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)、ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO2)、メイエナイト(12CaO・7Al23)およびゲーレナイト(2CaO・SiO2・Al23)の量を調べるために、鋳造終了後に鋳型内からスラグフィルムを採取し、X線回折(Cu管球40kV、200mA)で、それぞれの結晶のX線回折強度を測定した。
緩冷却の指針として、鋳型熱流束(MW/m2)を算出した。鋳型熱流束は、鋳型冷却水の流量と入口出口の温度差とから、鋳型での総抜熱量を求め、これを、鋳型銅板と鋳片との接触面積で割ることにより算出した。熱流束値が1.5MW/m2以上のものを「強冷却」、1.5MW/m2未満のものを「緩冷却」と判定した。
連続鋳造の安定操業の指針として、鋳型銅板に埋設した熱電対を用いて、一定速度で鋳造した一定区間における温度変動(℃)を測定した。なお、連続鋳造では、温度変動が15℃を超えると、鋳造速度の減速措置、それでも変動が収まらない場合は鋳造停止措置を行う場合がある。
鋳片の表面品質の指針として、凹みおよび割れを評価した。鋳片表面の凹みは、定常状態で鋳造できた部位のスラブを1ヒートから2枚任意に抜き取りし、スラブ広面の表裏面を目視検査して、凹みが認められた部位について凹み深さを測定し、深さが2mm超の凹みがあるものを、「凹み有り」と評価した。鋳片表面の割れは、鋳片の広面の表面および裏面を目視観察し、長さ100mm以上の割れが1つでも存在するものを、「割れ有り」と評価した。
Figure 2008030062
Figure 2008030062
これらの結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(試験No.1〜10)では、そのスラグフィルム中にカスピダインが形成されなくとも、緩冷却を実現でき、凹みや割れの無い表面品質に優れた鋳片を製造することができる。試験No.1〜10での緩冷却は、スラグフィルム中のLiAlO2により達成されると考えられる。また試験No.1〜10では、温度変動が少なく、安定に操業することができる。さらに試験No.1〜10で用いたモールドパウダーNo.1〜10は、その凝固温度が適正範囲内にあり、適正な潤滑性を有していることが分かる。
一方、本発明で規定する要件を欠くモールドパウダーNo.11〜25を用いた試験No.11〜25では、以下に記載する理由により、凹みや割れの有る鋳片しか得られなかった。
試験No.11のものでは、SiO2量が少ないため、メイエナイトが優先的に晶出し、鋳片の割れが発生した。また凝固温度の上昇から、溶融スラグの潤滑性が損なわれて、温度変動も大きくなった。
試験No.12のものでは、SiO2量が多いため、ゲーレナイトが多く晶出し、均一な緩冷却が達成できず、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.13のものでは、CaO量が少ないため、ゲーレナイトが多く晶出し、均一な緩冷却が達成できず、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.14のものでは、CaO量が多いため、メイエナイトが多く晶出し、鋳片の割れが発生した。また凝固温度の上昇から、溶融スラグの潤滑性が損なわれて、温度変動も大きくなった。
試験No.15のものでは、Al23量が多くて、メイエナイトなどの粗大な結晶が多く形成されたため、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.16のものでは、Al23量が少なくて、ダイカルシウムシリケートの粗大な結晶が多く形成されたため、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.17のものでは、Li2Oが多いため、LiAlO2晶出の最適範囲から外れて充分な量のLiAlO2が晶出されなかったこと、および溶融スラグの粘度低下により、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.18のものでは、Li2O量が少ないため、LiAlO2が晶出せず、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.19のものでは、F量が多くて、充分な結晶が晶出されず緩冷却できなかったため、また粘度低下による過剰流入のため、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.20のものでは、F量が低いため、溶融スラグの凝固温度が上昇し、スラグベアが発生した。その結果、不均一流入により鋳片の縦割れが発生した。
試験No.21のものでは、MgO量が少なくて粗大な結晶が晶出して、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.22のものでは、MgO量が多くて、ダイカルシウムシリケートの粗大な結晶が多く形成されたため、抜熱速度にバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
試験No.23のものでは、Na2OおよびK2Oが存在するため、溶融スラグないしモールドパウダーが焼結した層が多く生成し、その結果、スラグベアが生成した。またNa−Al−O結晶が不均一に晶出したため、抜熱速度のバラツキが生じ、鋳片表面に凹みや割れが生じた。
試験No.24のものでは、C量が多くて、溶融速度が不充分であるため、スラグフィルムが充分に形成されない部分が生じ、その部分が急冷されて、鋳片表面に割れが発生した。
試験No.25のものでは、C量が少なくて、溶融速度が増大したため、流入過多および不均一流入が生じ、鋳片表面に凹みや割れが発生した。
〈実施例2〉
垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、1ヒート240トンの溶鋼を鋳造した。この実施例では、上記表1に示す化学成分組成の溶鋼(鋼種No.CおよびD)を用いると共に、上記表2に示す化学成分組成のモールドパウダー(モールドパウダーNo.5〜8)を用いた。連続鋳造におけるモールドサイズは240×1230mmであり、鋳造速度は1.4m/分である。
各試験で使用した鋼種、モールドパウダー、および連続鋳造条件(鋳型内の湯面レベル変動速度、浸漬ノズルの吐出角度、電磁攪拌の磁束密度、鋳型の振幅ストローク、ネガティブストリップ時間tN)を、下記表4に示す。また下記表4には、実施例1と同様にして測定した鋳型熱流束、鋳型銅板の温度変動、鋳片表面の凹みおよび割れの結果も示す。
Figure 2008030062
Figure 2008030062
これらの結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するもの(試験No.26〜37)では、緩冷却および鋳型銅板の温度変動の安定化が実現でき、凹みや割れの無い表面品質に優れた鋳片を製造することができる。これに対して、本発明で規定する操業条件を外れるもの(試験No.38〜44)では、以下に記載する理由により、凹みや割れの有る鋳片しか得られなかった。
試験No.38および39のものでは、鋳型内湯面レベル変動速度が大きいため、抜熱速度が不均一となり、その結果、鋳型銅板の温度変動が大きくなって凹みや割れが発生した。
試験No.40のものでは、浸漬ノズル吐出角度が−5°であるため、抜熱速度が不均一となり、その結果、鋳型銅板の温度変動が大きくなって凹みおよび割れが発生した。
試験No.41のものでは、電磁攪拌における磁束密度が大きくなっており、抜熱速度が不均一となり、その結果、鋳型熱電対温度変動が大きくなって凹みおよび割れが発生した。
試験No.42のものでは、振幅ストロークが小さいため、流入不足で割れが発生した。
試験No.43は、振幅ストロークが大きく、オッシレーションマーク間隔が大きいため、オッシレーションマークに沿った凹みおよび割れが発生した。
試験44のものでは、ネガティブストリップ時間tNが大きく、オッシレーションマーク深さが大きいため、オッシレーションマークに沿った凹みおよび割れが発生した。

Claims (1)

  1. モールドパウダーを用いる高Al鋼の連続鋳造方法であって、
    Al含有量が0.1〜3.0%(質量%の意味、以下同じ)であると共に、Si、Mn、Ni、CrおよびMoを、それぞれ4.0%以下(0%を含まない)含み、且つC含有量[C]が下記式(1)〜(3):
    f1−0.10≦[C]≦f2+0.05 … (1)
    f1=0.0828[Si]−0.01951[Mn]+0.07398[Al]
    −0.04614[Ni]+0.02447[Cr]+0.01851[Mo]
    +0.090 … (2)
    f2=0.2187[Si]−0.03291[Mn]+0.2017[Al]
    −0.06715[Ni]+0.04776[Cr]+0.04601[Mo]
    +0.173 … (3)
    〔式中、[Si]、[Mn]、[Al]、[Ni]、[Cr]および[Mo]は、それぞれ、鋼中のSi、Mn、Ni、CrおよびMoの含有量(質量%)を表す。〕
    の関係を満たす溶鋼を連続鋳造するに際して、
    T−CaO:35〜60%、SiO2:5〜20%、Al23:15〜30%、MgO:0.2〜1.0%、Li2O:7〜13%、F:7.0〜13%、C:10.5〜14%および不可避不純物からなり、下記式(4):
    2.5≦[T−CaO]/[SiO2]≦12.0 … (4)
    〔式中、[T−CaO]および[SiO2]は、それぞれ、モールドパウダー中のT−CaOおよびSiO2の含有量(質量%)を表す。〕
    の関係を満たすモールドパウダーを用いると共に、
    鋳型内の湯面レベル変動速度を14mm/秒以下とし、鋳型幅方向に溶鋼を吐出させると共に、その吐出角度が水平に対して下向き0°以上、55°以下の浸漬ノズルを用い、更に振幅のストロークを2mm超、8mm以下とし、下記式(5):
    N=(1/π×f)cos-1(Vc/π×f×s) … (5)
    〔式中、fは鋳型振動数(Hz)であり、sは鋳型振動時の鋳型の上止点および下止点間の距離(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(mm/秒)である。〕
    で定められるネガティブストリップ時間tNが0.25秒以下となるような鋳型振動を付与し、且つ1200ガウス以下の磁束密度で鋳型内電磁攪拌を行いつつ操業することを特徴とする高Al鋼の連続鋳造方法。
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