JP4749997B2 - 連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造方法に関し、より詳しくは、ブルーム又はビレットを連続的に鋳造する技術に係る。
この種の技術として、特許文献1及び特許文献2は、異なるテーパを有する鋳型を開示している。この特許文献1によれば、鋳型を多段テーパにすることで、モールドパウダの消費量が増大し、その結果、パウダの潤滑機能が十分に発揮されるので、ブレークアウト(以降、略してBOとも称する。)や鋳片割れが防止できるとされる。特許文献2には、いわゆるビレットの鋳造に多段テーパ鋳型を使用する点が開示されている。
一方、特許文献3及び特許文献4には、モールドパウダに関する技術が開示されている。特許文献3は、過包晶中炭素鋼の連続鋳造方法に関するものである。当該特許文献3によれば、モールドパウダの化学組成や物性を適正化することで、当該炭素鋼を低速で鋳造する際に発生しやすい拘束性(凝固シェルが鋳型に焼き付くこと)ブレークアウトを防止できるとされる。特許文献4も、上記特許文献3同様、モールドパウダの好適な化学組成を開示している。当該モールドパウダの主成分はCaOやSiO、Alとされ、塩基度に関しても言及されている。
特開2003−305542号公報 特開2002−35896号公報 特開2004−98092号公報 特開2000−158106号公報
しかし、上記特許文献1〜4は何れも、鋳片の表面品質を悪化させる複数の原因の中から特定のものに着目して個別的に対策を講じたに過ぎず、未だ包括的な対策がとられていないのが現状である。
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、特に鋳片の角部における凝固遅れを抑制可能な連続鋳造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
断面略矩形状の鋳片であって、断面外周を構成する辺の長さは何れも120mm以上であり、縦横比は1.0以上2.0以下であるものを連続的に鋳造する連続鋳造方法において、鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上2.0[m/min]以下とし、鋳型内に添加されるモールドパウダの、CaO成分及びSiO成分の合計含有量を50wt%以上とし、F成分の含有量を0wt%より大きく11wt%以下とする。鋳型の内面に上方から下方へ向かって順に、傾斜率の異なる第1傾斜面及び第2傾斜面を設ける。前記モールドパウダの塩基度が1.1未満のとき、または、当該モールドパウダの凝固温度が1100℃未満のときは、前記第1傾斜面の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面の傾斜率(TRd:[%/m])を下記式(1)及び(2)を満足する範囲内とし、前記モールドパウダの塩基度が1.1以上のとき、かつ、当該モールドパウダの凝固温度が1100℃以上のときは、前記第1傾斜面の傾斜率及び前記第2傾斜面の傾斜率を下記式(3)及び(4)を満足する範囲内とする。前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界位置を、前記鋳型の上端を基準とし下方へ向かって0.1m以上かつ0.4m以下に存在させることとする。前記鋳型に溶鋼を注湯するための浸漬ノズルの下端部に溶鋼吐出孔を2つ穿孔し、前記溶鋼吐出孔の孔面積を2500mm以上6400mm未満とする。前記鋳造速度が0.7[m/min]以下のときは、前記溶鋼吐出孔の吐出角を、水平を基準として、斜め上向きに0度以上5度以下、または、斜め下向きに0度以上35度以下とし、前記鋳造速度が0.7[m/min]より大きいときは、前記溶鋼吐出孔の吐出角を、水平を基準として、斜め下向きに10度以上35度以下とする。
4.4−1.95×Vc≦TRu≦6.06−2.5×Vc・・・(1)
0.92−0.3×Vc≦TRd≦1.18−0.4×Vc・・・(2)
2.23−1.05×Vc≦TRu≦3.18−1.4×Vc・・・(3)
0.55−0.2×Vc≦TRd≦0.77−0.25×Vc・・・(4)
上記の連続鋳造方法によれば、シェル厚のムラ、より具体的には、特に鋳片の角部における凝固遅れを抑制できる。従って、鋳片の角部における縦割れを抑制できる。
なお、前述の『塩基度』とは、前記モールドパウダ中の総Ca含有量をCaO含有量[wt%]に換算した値を、総Si含有量をSiO含有量[wt%]に換算した値で除した値[−]をいう。
また、前述の『凝固温度』とは、前記モールドパウダが液相から固相へと変化する温度である。
また、前述の『傾斜率』とは、下記式(A)に基づいて求められるものである。
(傾斜率)=((W入口−W出口)/W出口)/H×100・・・(A)
ただし、Wは鋳型幅を表し、W入口は当該傾斜面の上端における鋳型幅であり、W出口は当該傾斜面の下端における鋳型幅であり、Hは当該傾斜面の鉛直方向距離である。
また、前述の『溶鋼吐出孔の孔面積』とは、前記溶鋼吐出孔の穿孔方向からみた当該溶鋼吐出孔の開口面積である(図3参照)。
また、前述の『溶鋼吐出孔の吐出角』とは、前記溶鋼吐出孔の中心線の傾きであって水平を基準とするものである。
鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上1.5[m/min]以下とし、異なる複数の鋳造条件における連続鋳造を単一の鋳型を用いて実施する場合において、前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在するときは、前記第1傾斜面又は前記第2傾斜面の傾斜率を当該重複範囲内とする。一方、前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在しないときは、前記第1傾斜面又は前記第2傾斜面の傾斜率のとり得る範囲として、前記第1傾斜面の傾斜率(TRu:[%/m])は、式(1)を満足する範囲よりも式(3)を満足する範囲を優先するものとする。また、前記第2傾斜面の傾斜率(TRd:[%/m])は、式(2)を満足する範囲よりも式(4)を満足する範囲を優先するものとする。これによれば、特に鋳片の角部における凝固遅れを極力抑制しつつも、鋳片の前記鋳型に対する引抜抵抗や、当該鋳型の摩耗、鋳片の角部におけるカギ割れなどを抑制できる。
図4は従来から使用されているブルーム鋳型の縦断面図であり、図5は図4におけるA−A線断面図である。図4に示すように従来の鋳型80の内面には下方に向かって狭まる一様な傾斜面が形成されており、例えば、鉛直方向長さは900mmと、長辺方向長さは上端において600mm、下端において596mmとなっている。また、短辺長さは上端において380mm、下端において377mmとなっている(図5参照)。これにより、鋳型80の内面が凝固収縮する鋳片の外面に極力密着できるようになっている。
しかし、実際には、鋳型80の内面を鋳片の外面に満遍なく密着させることは困難であった。確かに、上記の如く鋳型80の内面には一様な傾斜面が形成され、且つ溶鋼の静圧作用によって、鋳片の外面は大部分が鋳型80の内面と密着していたが、図5に示す如く特に角部においては、鋳片と鋳型80との間に隙間が発生していた。そして、この隙間により当該角部において鋳片−鋳型80間の熱伝達が著しく低下することで凝固遅れが生じ、その結果、所謂コーナ割れなどの表面品質欠陥が発生してしまっていた。
ところで、鋼種は、大別すると、炭素含有量が約0.17wt%未満の亜包晶鋼と、同じく炭素含有量が約0.17wt%以上の過包晶鋼に分けられる。上記の品質欠陥は、何れの鋼種においても発生していたが、とりわけ亜包晶鋼においては頻繁に発生していた。これは、当該亜包晶鋼は、過包晶鋼とは異なり、大きな体積変化を伴うδ→γ変態が完全凝固後の強度のあるシェル内において発生するので、変態がシェルの大きな収縮を引き起こすからだと考えられる。
その他にも上記の不具合は、鋳造速度の低い鋳造条件ほど、および/または、鋳片断面寸法が大きくなるほど、より頻繁に発生していた。これは、鋳造速度の低い鋳造条件ほど、あるいは、鋳片断面寸法が大きいほど凝固収縮量が増大するからだと考えられる。それなのに、従来の鋳型設計においては、凝固収縮量の相違が殆ど反映されていなかった。
そこで、本発明の発明者は、上記の問題点を解決し、鋳片の表面品質を向上することを目的として鋭意試験研究を重ねた結果、相互に密接に関連し合う以下の事項に着目した。
第1は、鋳型の内面形状である。具体的には、鋳型の内面形状を、従来のような一様な傾斜面から、複数段の傾斜面へと改めた。図6は、従来の鋳型内面の傾斜の様子(破線)と、鋳片幅の収縮の様子(鎖線)とを示す図である。本図によれば、鋳片幅の収縮量は、断熱作用のあるシェルが成長する(厚くなる)に連れて変化(鈍化)する性質を有し、従来鋳型の内面のようには決して一様な変化とはならない。そこで、鋳片幅の実際の収縮態様に鋳型の内面の傾斜が極力一致するよう、当該内面形状を複数段の傾斜面へと変更したのである。
第2は、連続鋳造に使用するモールドパウダの成分である。第3は、当該モールドパウダの種別や鋳造速度などの鋳造条件と、上記傾斜面の傾斜率との関連性である。第4は、溶鋼湯面近傍に熱を供給する役割を有すると共に、当該溶鋼湯面を変動させてしまう性質をも有する溶鋼の反転流である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。図1は鋳型の縦断面図であり、図2は鋳型の平面図である。
本実施形態において鋳型1が対象とする鋳片は、断面略矩形状であって、断面外周を構成する片の長さが何れも120mm以上であり、縦横比が1.0以上2.0以下のもの(所謂ブルームやビレットなどと称されるもの)である。これら鋳片の形状・大きさは、何れも実操業上の事情により決められたものである。
上記第1の観点から、図1に示すように鋳型1の内面には、上方から下方へ向かって順に、傾斜率の異なる第1傾斜面2及び第2傾斜面3が形成されている。これにより、図6に示す如く鋳型1の内面を、凝固収縮が一様とはならない鋳片の外面に密着させ易くなっている。なお、傾斜率に関しては、後述する。
また、図1に示す如く鋳型1は、第1傾斜面2と第2傾斜面3との境界位置4が、後述する理由から、鋳型上端1uを基準とし下方へ向かって0.4m以下に存在するように構成されている(図6も併せて参照)。なお、当該境界位置4において第1傾斜面2と第2傾斜面3とは滑らかに若干の丸みを帯びて接続されていることが好ましい。
また、本実施形態において鋳型1は、所謂2段テーパ鋳型だが、例えば第3の傾斜面が追加された構成も考えられる。しかし、鋳型加工費用や維持管理などの実操業上の事情から、2段テーパ鋳型が最も好ましい。
また、鋳型1は、その内部に順次蓄えられる溶鋼が電磁力の作用によって攪拌されるように構成されている。これにより、後述する溶鋼の反転流が澱みなく鋳型1内を循環することができるので、溶鋼湯面全体に満遍なく熱が供給され、その結果、後述するモールドパウダが安定して滓化(溶融)できるようになっている。
また、前記の鋳型1内には、浸漬ノズル5を介して溶鋼が注湯されるように構成されている。この浸漬ノズル5の下端部には溶鋼吐出孔5aが2つ穿孔されている。
また、鋳型1内の溶鋼の湯面には、適宜のモールドパウダ6が添加されている。これにより、溶鋼に接する部分ではモールドパウダ6が溶融して液相のパウダフィルム7(以下、単に液相パウダ7とも称する。)が形成され、鋳型1に接する部分では凝固して固相のパウダフィルム8(以下、単に固相パウダ8とも称する。)が形成される。このモールドパウダ6(7・8)は、鋳型内潤滑、鋳型内冷却制御(溶鋼抜熱制御)、溶鋼の保温・酸化防止、非金属介在物の除去、などの機能を発揮するものである。
本実施形態において添加される前記モールドパウダ6は、CaO成分及びSiO成分の合計含有量が50wt%以上であって、F(フッ素)成分の含有量が11wt%以下となるように、予め成分調整されている(第2の観点)。
上述の如く、CaO成分及びSiO成分の合計含有量を50wt%以上としたのは、当該モールドパウダ6が、前記の液相パウダ7や固相パウダ8を形成した状態において、溶鋼の保温、酸化防止、溶鋼中の気泡または介在物の吸収、及び鋳型内壁とシェルとの潤滑性の確保を促進する上で好ましい作用を奏するからである。
熱制御にはパウダー中へのカスピダイン(3CaO、2SiO、CaF)の結晶析出を用いており、この組成単味であれば液相から直接カスピダインが晶出して熱制御には有利であるが、液相中に固相が混在するため潤滑性に問題が残る。このため純カスピダイン組成中のF含有量より低くするため、F含有量は11%以下とした。またこれよりF含有量が高くなるとCaFの初晶域に入り、熱制御という観点から好ましい結晶とはいえない。またF含有量が高すぎると連鋳機の設備等の腐食にとって不利、あるいは環境面からもフッ素の溶出が高くなる等のデメリットもある。
なお、モールドパウダ6は、溶融速度を調整する機能を有するC成分を1.5%〜10%程度含有していてもよい。また、モールドパウダ6は、例えば、NaOやLiO、KOなどのアルカリ金属酸化物やAlなどを含有するものであってもよい。当該アルカリ金属酸化物などは、モールドパウダ6の粘度や凝固温度を調整する機能を有するものである。
また本実施形態では、実操業上の理由から、鋳片の鋳造速度(Vc)を0.5[m/min]以上2.0[m/min]以下に設定する。当該鋳造速度の下限を0.5[m/min]としたのは、例えば生産性の都合からであり、同じく上限を2.0[m/min]としたのは、ブレークアウト(溶鋼漏れ)の防止の観点から、鋳型1内で十分な厚みのシェルを確実に形成させるためである。
また、鋳片の収縮態様は、鋳造速度のみならず、使用するモールドパウダ6の抜熱特性によっても大きく変化する。従って、前記第1傾斜面2の傾斜率と前記第2傾斜面3の傾斜率は、使用するモールドパウダ6に応じて場合分けするのが合理的である。
即ち、鋳造時に添加される前記モールドパウダ6を、塩基度が1.1未満の、または、凝固温度が1100℃未満のものとするときは、前記第1傾斜面2の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面3の傾斜率(TRd:[%/m])を下記式(1)及び(2)を満足する範囲内に設定する。
4.4−1.95×Vc≦TRu≦6.06−2.5×Vc・・・(1)
0.92−0.3×Vc≦TRd≦1.18−0.4×Vc・・・(2)
一方、前記モールドパウダ6を、塩基度が1.1以上の、かつ、凝固温度が1100℃以上のものとするときは、前記第1傾斜面2の傾斜率及び前記第2傾斜面3の傾斜率を下記式(3)及び(4)を満足する範囲内に設定する。
2.23−1.05×Vc≦TRu≦3.18−1.4×Vc・・・(3)
0.55−0.2×Vc≦TRd≦0.77−0.25×Vc・・・(4)
なお、前述の『塩基度』とは、前記モールドパウダ中の総Ca含有量をCaO含有量[wt%]に換算した値を、総Si含有量をSiO含有量[wt%]に換算した値で除した値[−]をいう。
また、前述の『凝固温度』とは、前記モールドパウダが液相から固相へと変化する温度である。
なお、シェルは、上記『塩基度』及び『凝固温度』が低ければ低いほど、固相パウダ8中に析出する結晶が減少し、伝熱抵抗が減少する結果、急冷却(急抜熱)されることとなる。一方、当該『塩基度』及び『凝固温度』が高ければ高いほど、結晶を有する固相パウダ8の厚さが増加し、潤滑性のよい液相パウダ7が不足して、伝熱抵抗が増大する結果、シェルは緩冷却(緩抜熱)されることとなる。従って、本明細書では以降、塩基度が1.1未満の、または、凝固温度が1100℃未満のモールドパウダ6を急冷パウダ6fと称し、塩基度が1.1以上の、かつ、凝固温度が1100℃以上のモールドパウダ6を緩冷パウダ6sと称する。なお、一般に、当該急冷パウダ6fは低炭素鋼および過包晶鋼の鋳造に使用され、一方、当該緩冷パウダ6sは、亜包晶鋼の鋳造に使用される。
なお、溶鋼湯面直下における急冷パウダ6fの局所熱流束は、例えば鋳造速度が1.5m/minのときは、2.0MW/mよりも大きくなる。一方、溶鋼湯面直下における緩冷パウダ6sの局所熱流束は、例えば鋳造速度が1.5m/minのときは、2.0MW/m以下となる。
また、前述の『傾斜率』とは、下記の式(A)に基づいて求められるものである。
(傾斜率)=((W入口−W出口)/W出口)/H×100・・・(A)
ただし、Wは鋳型幅を表し、W入口は当該傾斜面の上端における鋳型幅であり、W出口は当該傾斜面の下端における鋳型幅であり、Hは当該傾斜面の鉛直方向距離である。
従って、前記第1傾斜面2の傾斜率(TRu:[%/m])は、下記式により求められる(図1参照)。
TRu=((Wu/Wm)−1)/H1×100
ただし、Wuは鋳型1の上端における鋳型幅であり、Wmは前述の境界位置4における鋳型幅であり、H1は第1傾斜面2の鉛直方向距離である。
同様に、前記第2傾斜面3の傾斜率(TRd:[%/m])は、下記式により求められる。
TRd=((Wm/Wd)−1)/H2×100
ただし、Wdは鋳型1の下端における鋳型幅であり、H2は第2傾斜面3の鉛直方向距離である。
以上説明したように本実施形態において前記の第1傾斜面2及び第2傾斜面3の傾斜率のとり得る範囲は、使用するモールドパウダ6の種類(急冷パウダ6fまたは緩冷パウダ6s)と、鋳造速度に基づいて設定される。
次に、前記浸漬ノズル5に関して説明する。図3は浸漬ノズルの縦断面図である。
本図に示すように前記溶鋼吐出孔5a・5aは、断面略矩形状であって、所定の吐出角θを有するように穿孔されている。なお、『吐出角θ』とは、当該溶鋼吐出孔5a・5aの中心線Cの傾きであって水平を基準とするものであり、特記なき場合、水平方向を0度(基準)とし、鉛直方向下向きを正と、上向きを負とする。
前記溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θは、より具体的には、前記鋳造速度が0.7[m/min]以下のときは、マイナス5度以上35度以下に設定される。換言すれば、この場合、前記溶鋼吐出孔5a・5aは、水平を基準として、斜め上向きに0度以上5度以下、または、斜め下向きに0度以上35度以下に傾斜させて穿孔される。
一方、前記鋳造速度が0.7[m/min]より大きいときは、10度以上35度以下に設定される。換言すれば、この場合、前記溶鋼吐出孔5a・5aは、水平を基準として、斜め下向きに10度以上35度以下に傾斜させて穿孔される。
また、前記溶鋼吐出孔5a・5aの孔面積Sは、2500mm以上6400mm未満に設定される。なお、『孔面積』とは、図3に示す如く前記溶鋼吐出孔5a・5aの穿孔方向からみた当該溶鋼吐出孔5a・5aの開口面積である。
上記の溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θ及び孔面積Sは、図1において曲線矢印で示すような溶鋼の反転流と密接な関係を有する。より具体的には、前記吐出角θが小さい程、及び/又は、前記孔面積Sが小さい程、当該反転流の吐出方向が溶鋼湯面側に近づき、及び/又は、当該反転流の吐出時流速が増大することにより、溶鋼湯面により多くの熱が供給され、一方で、当該溶鋼湯面をより激しく変動させてしまう。同様に、前記吐出角θが大きい程、及び/又は、前記孔面積Sが大きい程、当該反転流の吐出方向が溶鋼湯面側から離れ、及び/又は、当該反転流の吐出時流速が減少することにより、湯面変動の少ない穏やかな溶鋼湯面となるが、一方で、溶鋼湯面に供給される熱が減少してしまう。また、当該湯面変動や後述するディッケル(凝固物・塊状物)の形成が上述した凝固遅れに大きな影響を与えることが後述する本発明の発明者による検証試験(表5〜7)により明らかとなっている。従って、当該吐出角θ及び孔面積Sは、ディッケルの形成の防止を目的として溶鋼湯面近傍に十分な熱が供給されるよう、またそれと同時に、溶鋼湯面の変動が過大とならないよう、上記の如く合理的に設定されるのである。
次に、本実施形態の作動を説明する。
図1に示す如く浸漬ノズル5を介して鋳型1内に連続的に注湯される溶鋼は、鋳型1内面の冷却作用によりその周囲から凝固し始めシェルを形成すると共に下方に一定の鋳造速度で引き抜かれていく。前述したモールドパウダ6(液相パウダ7及び固相パウダ8)は、鋳型1とシェルとの間に入り込んで、潤滑作用等の機能を発揮する。この際、鋳片の鋳型1に対する焼付きを防止し、安定した鋳造作業を継続するために、鋳型1には適宜のオシレーション(振動)を付加して操業される。このため、鋳造された鋳片には、略周期的にオシレーション痕が残る。
〔0.4m以内とする根拠〕
ところで、図6において鎖線で示すように、鋳造初期の段階(鋳型の上端側)では、シェルが未だ相当薄いので鋳型1による抜熱が激しいから鋳片は急激に収縮する。この急激な凝固収縮は、シェルの成長に伴いやがて落ち着く(鈍化する)。
また、操業条件の変化で鋳型内の湯面が下がり、凝固の開始点が前記の第1傾斜面2と第2傾斜面3との境界位置4から外れてしまうと急な熱収縮が生じる位置が急な傾斜面で設定されている第1傾斜面2の領域から外れてしまい、鋳片と鋳型1との間に、凝固遅れの原因である前述した隙間が生じてしまう(図5も併せて参照)。
一方、溶鋼の湯面高さは、浸漬ノズル5の局所的な溶損を回避するために意図的に昇降され(図1符号P参照)、又は、湯面変動に起因して昇降するので、これに連動するように、上記の急激な凝固収縮が落ち着く地点も同様に昇降することとなる。
そこで、上記の急激な凝固収縮を境界位置4に到達する前に確実に落ち着かせるために、当該境界位置4は、鋳型上端1uを基準としてテーパの大きくなる位置(境界位置4)を上記変動を吸収できる0.4mと設定している。上記変動の小さい場合は、境界位置4はもっと上方に設定しても収縮の大きな位置は第一テーパ部(第1傾斜面2)に入り凝固遅れは解消される。
前記の境界位置4を鋳型上端1uを基準とし下方へ向かって0.4m以下に存在するようにした根拠を別の視点から更に説明する。ここで、図12を参照されたい。図12は、鋳型上端からの距離と、幅収縮量と、の関係に関する説明図である。本図において一点鎖線は、鋳片の幅収縮量をイメージするものである。
即ち、本図において符号aで示すように境界位置4が0.4mを(越えて鋳型上端から)離れすぎると上記(1)、(2)式、(3)、(4)式で規定されるテーパ量にすると鋳型の絞り込み量が大きくなってしまい、引き抜き抵抗の増大、鋳型摩耗の増大、鋳造不能に至る懸念がある。一方、本図において符号bで示すように鋳型出口(鋳型下端)の収縮量を合わせるようにして境界位置4を0.4m以上にして2段テーパで近似すると初期凝固の段階でエアーギャップ量が大きくなり(本図における一点鎖線と、符号bの線と、の差異)、凝固遅れの改善に対して効果が無くなる。そこで、本図において符号cで示すように境界位置4を0.4m以内に設定し、上記(1)、(2)式、(3)、(4)式で規定されるテーパ量にすると鋳型の形状と鋳片収縮形状との乖離を小さくでき、凝固遅れの改善、鋳造の安定性の両方の観点から良好な結果が得られる。
〔0.1m以上とする根拠〕
鋳型内メニスカス(溶鋼界面)の上部には通常、パウダー溶融層、パウダー焼結層、パウダー層が存在し、通常操業においては各層厚みは0.01〜0.02m程度有する。従ってメニスカス位置はパウダー上面から0.03m〜0.06mの位置に存在する。メニスカス湯面変動(長周期の振動、短周期の振動)は約±0.02m程度存在する。湯面オーバーフローの防止に+α(0.02m)必要である。鋳型の最上端部は構造上、冷却が弱く、最適な冷却になっていない。上記理由に基づき、メニスカス位置は鋳型上端から0.1m以上とな
次に、本発明の実施例を説明する。上述した各数値範囲は、下記の実施例1〜3により合理的に裏付けられている。
〔実施例1〕
本実施例は、前述した第3の観点を検証するために実施された試験である。第3の観点とは、モールドパウダ6の種別や鋳造速度などの鋳造条件と、上記傾斜面の傾斜率との関連性に係るものである。
本実施例において鋳型1の上端における鋳型幅(図2及び図5参照)は、600mm×380mmとした。従って、鋳造される鋳片の断面の縦横比は、およそ1.6程度となる。また、鋳型1内の溶鋼湯面には、急冷パウダ6fを添加した。当該急冷パウダ6fは、塩基度が0.6よりも大きく1.1よりも小さくなるように、あるいは、凝固温度が900℃よりも大きく1100℃よりも小さくなるように予め成分調整しておいた。また、鋳造する鋼種は、C成分の含有量が約0.12wt%の亜包晶鋼とした。
また、浸漬ノズル5の溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θは、20度とした。つまり、水平を基準として、下向きに20度の方向へ当該溶鋼吐出孔5a・5aを穿孔したのである。また、当該溶鋼吐出孔5a・5aの孔面積Sは、3600mmとした。また、浸漬ノズル5の溶鋼に対する浸漬深さは、80〜130mm程度とした。
さらに、鋳型1に注湯される溶鋼を当該注湯前に一時的に保持するタンディッシュ内における溶鋼の温度と、液相線温との差は、約5〜25℃とした。加えて、鋳型1は、当該鋳型1内の溶鋼を攪拌するための図略の電磁攪拌手段(コイル等)を備えるものとし、当該電磁攪拌手段の攪拌動力は、空の鋳型1の内面での磁束密度が400〜800Gaussとなる程度とした。更には、前記の境界位置4は、鋳型上端から0.2mとした。表1は鋳型1の広面側に係り、表2は同じく狭面側に係るものである。
Figure 0004749997
Figure 0004749997
なお、上記表1及び表2において『評価』とは、凝固遅れの程度に基づいてなされたものである。具体的には、本実施例では凝固遅れ度(%)を下記の如く定義し、当該凝固遅れ度に基づいて各試験を評価した。
〔凝固遅れ度の定義〕
まず、鋳造後の鋳片を長手方向に対して垂直に切断し、図7に示す如く断面に現れたシェルの成長痕の、一の辺からの距離を測定する。より具体的には、当該シェルの成長痕が当該一の辺に最も接近する箇所(符号XX)における距離Xと、当該一の辺上であって、当該箇所XXに最も近い角部Zから75mm離れた地点(符号YY)における距離Yと、を測定する。そして、前記凝固遅れ度(%)を、下記式により定義する。
凝固遅れ度(%)=100×(Y−X)/Y
〔評価の判断基準〕
上記の凝固遅れ度が10%以下だった場合は、鋳片の角部における縦割れ(以下、コーナ縦割れとも称する。)の懸念が殆どないので、評価を◎とした。また、10〜20%だった場合は、1mm未満の微細なコーナ縦割れの懸念はあるとして、評価を○とした。また、20〜30%だった場合は、1mm以上のコーナ縦割れの懸念があるとして、評価を△とした。また、30%以上だった場合は、1mm以上のコーナ縦割れが発生する蓋然性が高くなる場合である。また、傾斜面の角度が大きい場合は、鋳型に対する鋳片の引抜抵抗が大きく、又は、オシレーション痕の角部における所謂コーナカギ割れの懸念があるとして、評価を×とした。
図8は表1及び表2を第1傾斜面にのみ着目してグラフ化したものであり、同様に図9は表1及び表2を第2傾斜面にのみ着目してグラフ化したものである。これら図8及び図9によれば、急冷パウダ6fを用いた場合は、前記第1傾斜面2の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面3の傾斜率(TRd:[%/m])が下記式(1)及び(2)を満足する範囲内であることが好ましいことが判る。
4.4−1.95×Vc≦TRu≦6.06−2.5×Vc・・・(1)
0.92−0.3×Vc≦TRd≦1.18−0.4×Vc・・・(2)
なお、図8及び図9には、同一の鋳造速度、同一の傾斜率に基づいてなされた複数の試験のうち、最も評価の高かった試験の当該評価が代表してプロットされている。
〔実施例2〕
本実施例に係る検証試験は、上述した実施例1に係るものと略同様であるが、鋳型1内の溶鋼湯面には、急冷パウダ6fに代えて、緩冷パウダ6sを添加した。なお、当該緩冷パウダ6sは、塩基度が1.1以上となるように、かつ、凝固温度が1100℃以上となるように予め成分調整しておいた。表3は鋳型1の広面側に係り、表4は同じく狭面側に係るものである。
Figure 0004749997
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図10は表3及び表4を第1傾斜面にのみ着目してグラフ化したものであり、同様に図11は表3及び表4を第2傾斜面にのみ着目してグラフ化したものである。これら図10及び図11によれば、緩冷パウダ6sを用いた場合は、前記第1傾斜面2の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面3の傾斜率(TRd:[%/m])が下記式(3)及び(4)を満足する範囲内であることが好ましいことが判る。
2.23−1.05×Vc≦TRu≦3.18−1.4×Vc・・・(3)
0.55−0.2×Vc≦TRd≦0.77−0.25×Vc・・・(4)
なお、図10及び図11にも、同一の鋳造速度、同一の傾斜率に基づいてなされた複数の試験のうち、最も評価の高かった試験の当該評価が代表してプロットされている。
〔実施例3〕
本実施例は、前述した第4の観点を検証するために実施された試験である。第4の観点とは、溶鋼湯面近傍に熱を供給する役割を有すると共に、当該溶鋼湯面を変動させてしまう性質をも有する溶鋼の反転流に係るものである。
本実施例に係る検証試験では、上述した実施例1に係るものと略同様であるが、鋳型1内の溶鋼湯面には、急冷パウダ6fを添加するのに代えて、緩冷パウダ6sを添加した。なお、当該緩冷パウダ6sは、塩基度が1.1よりも大きく2.5よりも小さくなるように、かつ、凝固温度が1100℃よりも大きく1270℃よりも小さくなるように予め成分調整しておいた。本実施例において鋳造される鋼種は、上述した実施例1と同様、C成分の含有量が約0.12wt%の亜包晶鋼とした。
表5は図10及び図11に示される好適な傾斜率の範囲の略中央値を、表6は同範囲の上限値を、表7は同範囲の下限値を、前記第1傾斜面2及び第2傾斜面3の傾斜率として設定して実施された試験に係るものである。
Figure 0004749997
Figure 0004749997
Figure 0004749997
なお、上記表5〜7の『湯面変動・偏流』欄を「○印」とした試験は、1分間の湯面変動量が±5mm未満であり且つ湯面の平面度が常に10mm未満だったものであり、一方、「×印」とした試験は、当該湯面変動量が±5mm未満ではなかったか、又は、当該湯面の平面度が常には10mm未満ではなかったものである。
また、上記表5〜7の『ディッケル』欄を「×印」とした試験は、溶鋼湯面近傍において溶鋼が凝固して凝固物が生成されたものか、あるいは、当該凝固物が生成され且つ当該溶鋼湯面近傍においてモールドパウダ6が十分に滓化(溶融)されなかった結果、前記凝固物と結合してディッケル(塊状物)が形成されたものである。一方、「○印」とした試験は、前記凝固物も、前記ディッケルも、何れも形成されなかったものである。なお、溶鋼湯面近傍において溶鋼が凝固したり、モールドパウダ6が十分には滓化(溶融)されなかったのは、当該溶鋼湯面近傍に十分な熱が供給されなかったからだと考えられる。
また、上記表5〜7の『総合評価』とは、上記『湯面変動・偏流』に関する評価や、『ディッケル』等の生成の有無、加えて、前述の凝固遅れ度やコーナ縦割れなどを総合的に評価したものである。
また、上記表5〜7に示す通り、鋳造速度が0.5[m/min]、0.6[m/min]、0.7[m/min]、0.9[m/min]、1.0[m/min]、1.5[m/min]のすべて場合において、広範囲に且つ詳細に調査した。
上記の表5〜7によれば、前記鋳造速度が0.7[m/min]以下のときは、前記溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θを、水平を基準として、斜め上向きに0度以上5度以下、または、斜め下向きに0度以上35度以下とし、且つ、当該溶鋼吐出孔5a・5aの孔面積Sを2500mm以上6400mm未満とすることが好ましいことが判る。同様に前記鋳造速度が0.7[m/min]より大きいときは、前記溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θを、水平を基準として、斜め下向きに10度以上35度以下とし、且つ、当該溶鋼吐出孔5a・5aの孔面積Sを2500mm以上6400mm未満とすることが好ましいことが判る。
また、上記の表5〜7によれば、(1)鋳型形状(2段テーパ)と、(2)モールドパウダ6の抜熱特性に応じた傾斜面2・3の傾斜率と、(3)浸漬ノズル5の形状と、のすべてを同時に配慮すれば、コーナ縦割れの原因である凝固遅れを抑制できることが判る。
また、上記表5〜7によれば、これによっても、前記の第1傾斜面2及び第2傾斜面3の夫々の傾斜率の好適な範囲を表す上記の式(3)及び(4)が合理的に裏付けられることが判る。なぜなら、上記式(3)及び(4)で示される範囲の上限値と下限値が、表6及び7に示す如く夫々検証されており、それらの総合評価が良好だったことが明らかとされたからである。なお、上記の式(1)及び(2)に関しては、表5〜7と同じ検証試験がなされており、それによっても、当該式(1)及び(2)が合理的に裏付けられている。
〔実施例4〕
本実施例は、前記境界位置4を鋳型上端から0.4m以内と設定することの技術的効果を確認するものである。本実施例の実施条件は以下の通りである(ただし、上記実施例1と同一の条件についてはその記載を省略する。)。本実施例は、端的に言えば、凝固遅れを改善可能な2段テーパ率の範囲内を固定して、境界位置を変更した鋳型を用いて鋳造テストを実施したものである。
・鋳造速度Vc[m/min]:0.7
・モールドパウダの塩基度C/S[-]:1.1〜2.5
・モールドパウダの凝固温度[℃]:1100〜1270
・第1傾斜面の傾斜率TRu[%/m]:2.0
・第2傾斜面の傾斜率TRd[%/m]:0.5
・溶鋼吐出孔の孔面積[mm2]:3600
・溶鋼吐出孔の吐出角:水平を基準とし、斜め下向きに10度
・鋳造対象鋼種のC含有量[wt%]:0.12
下記表8に、本実施例の実施結果を示す。なお、下記表8において「鋳型摩耗状況」の評価は以下のように行われたものである。即ち、評価を「○」としたのは、鋳型内面のCu地露出が1000chを過ぎても認められなかったものを意味する。評価を「△」としたのは、700ch以上1000ch未満でメッキ摩耗による鋳型内面のCu地露出が認められたものを意味する。評価を「×」としたのは、700chに達する前に鋳型内面の全面に亘ってCu地露出が認められたものを意味する。
Figure 0004749997
上記表8によれば、鋳型上端から下方へ向かって0.4mの位置よりも更に下方に前記の境界位置を設定すると、鋳型摩耗が大きくなることが判る。これは、境界位置が0.4mを超えると鋳型の全絞り込み量が鋳片収縮量を超えるということを意味している。
以上説明したように上記実施形態においては、以下のような方法で連続鋳造が行われている。
即ち、鋳造する鋳片は、断面略矩形状であって、断面外周を構成する辺の長さは何れも120mm以上であり、縦横比は1.0以上2.0以下であるものとする。また、鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上2.0[m/min]以下とする。鋳型1内に添加されるモールドパウダ6の、CaO成分及びSiO成分の合計含有量を50wt%以上とし、F成分の含有量を0wt%より大きく11wt%以下とする。
鋳型1の内面に上方から下方へ向かって順に、傾斜率の異なる第1傾斜面2及び第2傾斜面3を設ける。前記モールドパウダ6の塩基度が1.1未満のとき、または、当該モールドパウダ6の凝固温度が1100℃未満のときは、前記第1傾斜面2の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面3の傾斜率(TRd:[%/m])を下記式(1)及び(2)を満足する範囲内とする。
4.4−1.95×Vc≦TRu≦6.06−2.5×Vc・・・(1)
0.92−0.3×Vc≦TRd≦1.18−0.4×Vc・・・(2)
一方、前記モールドパウダ6の塩基度が1.1以上のとき、かつ、当該モールドパウダ6の凝固温度が1100℃以上のときは、前記第1傾斜面2の傾斜率及び前記第2傾斜面3の傾斜率を下記式(3)及び(4)を満足する範囲内とする。
2.23−1.05×Vc≦TRu≦3.18−1.4×Vc・・・(3)
0.55−0.2×Vc≦TRd≦0.77−0.25×Vc・・・(4)
前記第1傾斜面2と前記第2傾斜面3との境界位置4を、前記鋳型1の上端を基準とし下方へ向かって0.1m以上かつ0.4m以下に存在させることとする。前記鋳型1に溶鋼を注湯するための浸漬ノズル5の下端部に溶鋼吐出孔5aを2つ穿孔し、当該溶鋼吐出孔5a・5aの孔面積Sを2500mm以上6400mm未満とする。前記鋳造速度が0.7[m/min]以下のときは、前記溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θを、水平を基準として、斜め上向きに0度以上5度以下、または、斜め下向きに0度以上35度以下とする。一方、前記鋳造速度が0.7[m/min]より大きいときは、前記溶鋼吐出孔5a・5aの吐出角θを、水平を基準として、斜め下向きに10度以上35度以下とする。上記の連続鋳造方法によれば、シェル厚のムラ、より具体的には、鋳片の角部における凝固遅れを抑制できる。従って、鋳片の角部における縦割れの発生を抑制できる。
なお、鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上1.5[m/min]以下とし、異なる複数の鋳造条件における連続鋳造を単一の鋳型1を用いて実施する場合には、上記連続鋳造は、実操業上、以下の方法で行うことが好ましい。即ち、前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在するときは、前記第1傾斜面2又は前記第2傾斜面3の傾斜率を当該重複範囲内とする。
一方、前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在しないときは、前記第1傾斜面2又は前記第2傾斜面3の傾斜率のとり得る範囲として、前記第1傾斜面の傾斜率(TRu:[%/m])は、式(1)を満足する範囲よりも式(3)を満足する範囲を優先(採用)するものとし、前記第2傾斜面の傾斜率(TRd:[%/m])は、式(2)を満足する範囲よりも式(4)を満足する範囲を優先(採用)するものとする。要するに、鋳片収縮が最も小さくなる条件に基づいて、前記傾斜率を設定するのである。
これによれば、鋳片の角部における凝固遅れの抑制を極力確保しつつも、鋳片の前記鋳型1に対する引抜抵抗や、当該鋳型1の摩耗、鋳片の角部におけるコーナカギ割れを抑制できる。なお、これら引抜抵抗や摩耗、コーナカギ割れは、互いに密接に関連し合うものである。
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
◆ 例えば、前記鋳型1を、その鋳型幅Wu・Wm・Wdを随時変更できるような所謂鋳型幅随時可変型に構成してもよい。これによれば、様々な鋳造条件に対してより柔軟に対応できるようになる(上記式(1)〜(4)等参照)。
◆ また、上記実施形態では、前記鋳型1の内面を構成する前記第1傾斜面2(4面)のすべてを同一の傾斜率に設定することを前提に説明したが、これに限るものではなく、図8や図10に表されている好適な傾斜率の範囲内であれば、互いに相違するものであっても勿論よい。前記第2傾斜面3に関しても同様である(図9及び図11参照)。
鋳型の縦断面図。 鋳型の上面図。 浸漬ノズルの縦断面図。 従来から使用されているブルーム鋳型の縦断面図。 図4におけるA−A線断面図。 鋳型内面の傾斜の様子(破線)と、鋳片幅の収縮の様子(鎖線)とを示す図。 鋳片の断面図。 表1及び表2を第1傾斜面にのみ着目してグラフ化した図。 表1及び表2を第2傾斜面にのみ着目してグラフ化した図。 表3及び表4を第1傾斜面にのみ着目してグラフ化した図。 表3及び表4を第2傾斜面にのみ着目してグラフ化した図。 図6に類似する図。
符号の説明
1 鋳型
2 第1傾斜面
3 第2傾斜面
4 境界位置
5 浸漬ノズル
5a 溶鋼吐出孔
6 モールドパウダ

Claims (2)

  1. 断面略矩形状の鋳片であって、断面外周を構成する辺の長さは何れも120mm以上であり、縦横比は1.0以上2.0以下であるものを連続的に鋳造する連続鋳造方法において、
    鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上2.0[m/min]以下とし、
    鋳型内に添加されるモールドパウダの、CaO成分及びSiO成分の合計含有量を50wt%以上とし、F成分の含有量を0wt%より大きく11wt%以下とし、
    鋳型の内面に上方から下方へ向かって順に、傾斜率の異なる第1傾斜面及び第2傾斜面を設け、
    前記モールドパウダの塩基度が1.1未満のとき、または、当該モールドパウダの凝固温度が1100℃未満のときは、前記第1傾斜面の傾斜率(TRu:[%/m])及び前記第2傾斜面の傾斜率(TRd:[%/m])を下記式(1)及び(2)を満足する範囲内とし、
    前記モールドパウダの塩基度が1.1以上のとき、かつ、当該モールドパウダの凝固温度が1100℃以上のときは、前記第1傾斜面の傾斜率及び前記第2傾斜面の傾斜率を下記式(3)及び(4)を満足する範囲内とし、
    前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界位置を、前記鋳型の上端を基準とし下方へ向かって0.1m以上かつ0.4m以下に存在させることとし、
    前記鋳型に溶鋼を注湯するための浸漬ノズルの下端部に溶鋼吐出孔を2つ穿孔し、
    前記溶鋼吐出孔の孔面積を2500mm以上6400mm未満とし、
    前記鋳造速度が0.7[m/min]以下のときは、前記溶鋼吐出孔の吐出角を、水平を基準として、斜め上向きに0度以上5度以下、または、斜め下向きに0度以上35度以下とし、
    前記鋳造速度が0.7[m/min]より大きいときは、前記溶鋼吐出孔の吐出角を、水平を基準として、斜め下向きに10度以上35度以下とする、ことを特徴とする連続鋳造方法。
    4.4−1.95×Vc≦TRu≦6.06−2.5×Vc・・・(1)
    0.92−0.3×Vc≦TRd≦1.18−0.4×Vc・・・(2)
    2.23−1.05×Vc≦TRu≦3.18−1.4×Vc・・・(3)
    0.55−0.2×Vc≦TRd≦0.77−0.25×Vc・・・(4)
  2. 鋳造速度(Vc:[m/min])を0.5[m/min]以上1.5[m/min]以下とし、
    異なる複数の鋳造条件における連続鋳造を単一の鋳型を用いて実施する場合において、
    前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在するときは、前記第1傾斜面又は前記第2傾斜面の傾斜率を当該重複範囲内とし、
    前記複数の鋳造条件の夫々に基づいて個別に求められる前記傾斜率の範囲群に重複する範囲が存在しないときは、前記第1傾斜面又は前記第2傾斜面の傾斜率のとり得る範囲として、
    前記第1傾斜面の傾斜率(TRu:[%/m])は、
    式(1)を満足する範囲よりも式(3)を満足する範囲を優先するものとし、
    前記第2傾斜面の傾斜率(TRd:[%/m])は、
    式(2)を満足する範囲よりも式(4)を満足する範囲を優先するものとする、
    ことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造方法。
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