しかしながら、上記従来の構成では、膜厚が均一なバリアメタル膜を形成することが困難であるという問題を生じる。
例えば、特許文献1に記載の半導体装置では、プラズマ熱処理によって改質層を形成するとき、処理室(チャンバー)内における半導体基板の中心部と周辺部とでは照射されるプラズマ量が異なるため、配線溝内の空孔の収縮量が半導体基板上の位置によって異なる。その結果、配線溝の幅および多孔質膜の厚さなどが、半導体基板上の位置によって異なり、その結果、配線層間で電気抵抗が異なったり、バリアメタル膜の信頼性の確保が難しくなるという問題点を有している。
また、特許文献2に記載の半導体装置では、無機系のSi3N4(比誘電率=6.5〜7.5)、SiO2(比誘電率=3.9〜4.1)、P−Si(比誘電率=〜11.9)をサイドウォールの材料として用いている。それ故、配線容量の大部分を占める線間容量の増加を招き、その結果、信号遅延が生じるという問題点を有している。また、バリアメタル膜は、成膜したあとでエッチバック処理を行うことによって形成される。それ故、サイドウォールとしてSiO2膜を用いるときには、O(酸素)がCu膜中に拡散する。また、サイドウォールとしてP−Si膜を用いるときには、CuとSiとがCuSiを形成する。それらの結果、下層配線との接続抵抗値を上昇させるという問題点を有している。また、サイドウォールとしてTiN膜を用いるときには、TiNが導電体であるため、空孔内に入り込んで突起状となっている部分も導電体材料配線の一部となる。その結果、不均一に発熱して配線信頼性に影響が生じるという問題点を有している。また、配線間幅が小さくなり、その結果、耐圧の低下またはリーク電流の増加が生じるという問題点をも有している。
また、特許文献3に記載の半導体の製造方法では、バリアメタル膜と、Si・C・Hの化合物膜とに対して連続したエッチバック処理を行うので、トータルのエッチバック量が多くなる。そして、バリアメタル膜とSi・C・Hの化合物膜とのエッチングによって生じた反応副生成物が配線溝の表面に多く付着し、接続孔の開口径の縮小および配線溝幅の縮小を招き、その結果、配線抵抗の上昇とバラツキが生じるという問題点を有している。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、Cuなどの導電体材料配線材料が、バリアメタル膜、多孔質層間絶縁膜および非多孔質層間絶縁膜(例えば、SiO2膜、SiOF(またはFSG)膜、SiOCH膜)内を拡散することを防ぐことのできる半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、半導体基板上に形成される半導体素子と、半導体素子上に積層される複数の絶縁膜と、複数の絶縁膜内に埋め込まれた状態で形成され半導体素子を電気的に接続する埋込配線とを備えており、さらに、上記複数の絶縁膜には多孔質絶縁膜が含まれるとともに、上記埋込配線には、少なくとも多孔質絶縁膜に形成される配線溝に配線材料を埋め込んで形成される溝埋込型配線が含まれている半導体装置の製造方法において、上記配線溝の内壁となる多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で埋め込む誘電体埋込工程と、当該誘電体埋込工程の後に、無酸素雰囲気下で配線溝の内壁にバリアメタル層を形成するバリアメタル形成工程とを含むことを特徴としている。
上記構成によれば、配線溝の内壁に露出した多孔質絶縁膜の表面に存在する多孔に誘電体材料を埋め込むことによって、多孔質絶縁膜の表面に存在する凹凸を平坦化することができる。そして、誘電体材料によって平坦化された面上にバリアメタル層を形成することによって、膜厚が均一なバリアメタル膜を形成することができる。バリアメタル膜の膜厚が均一であれば、溝埋込型配線(例えば、Cu配線)から多孔質絶縁膜などの中にCuなどが拡散することを防止することができる。その結果、配線間のリークを抑制することによって信頼性の高い配線を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体埋込工程は、少なくとも配線溝の内壁に誘電体膜(炭素含有膜)を形成する誘電体膜形成工程と、形成された誘電体膜をエッチバックして膜厚を減少させる誘電体膜エッチバック工程との2つの工程を含んでいることが好ましい。
上記構成によれば、多孔質絶縁膜の表面に存在する多孔を誘電体によって埋め込むことができるとともに、バリアメタル膜が形成される面を平坦化することができる。また、エッチングによって誘電体膜の膜厚を減少させるため、配線溝の内壁に形成される誘電体膜の膜厚を薄くすることができる。その結果、上記配線溝の内部に形成される埋込配線の断面積を広くすることができる。そして、埋込配線の断面積が広くなれば、当該埋込配線の抵抗を低く抑えることができるので、その結果、信号遅延を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに誘電体膜エッチバック工程とバリアメタル形成工程とは連続して無酸素雰囲気下で行われることが好ましい。
上記構成によれば、溝埋込型配線(例えば、Cu配線)と酸素とが接触することがない。したがって、溝埋込型配線が酸化されることがないので、上記溝埋込型配線の抵抗の上昇を抑制することができる。その結果、溝埋込型配線の信頼性を向上させることができる。例えば、複数の溝埋込型配線(例えば、多段構造の溝埋込型配線)を形成する場合、先に形成した溝埋込型配線が酸素と接触することを防ぐことができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体膜形成工程では、配線溝を含む絶縁膜表面全体に誘電体膜を積層するとともに、上記誘電体膜エッチバック工程では、絶縁膜表面の誘電体膜が除去され、かつ、配線溝の内壁には誘電体膜(サイドウォール)が残存するようにエッチバック処理を行うことが好ましい。
上記構成によれば、配線溝の内部に、所望の厚さでありかつ表面が平坦な誘電体膜を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記配線溝の内壁に残存する誘電体膜の膜厚を10nm以下とすることが好ましい。
上記構成によれば、多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で均一かつ十分に埋め込むことができるとともに、配線溝の内部に形成される埋込配線の断面積を広くすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体膜形成工程で積層される誘電体膜は、1nm〜10nmの範囲内の膜厚を有していることが好ましい。
上記構成によれば、多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で均一かつ十分に埋め込むことができるとともに、上記誘電体膜エッチバック工程によってエッチバックされる誘電体膜の量を少なくすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体膜エッチバック工程では、形成された誘電体膜の膜厚を1nm〜30nmの範囲内で除去することが好ましい。
上記構成によれば、エッチバックによって生じる副生成物の量を低く抑えることができる。その結果、エッチバック工程の後の上記副生成物を除去する処理がなくても、誘電体膜上に、膜厚が均一なバリアメタル膜を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体膜エッチバック工程は、周期表0族の希ガスを少なくとも1種含む不活性雰囲気で行われることが好ましい。
また、本発明の半導体装置の製造方法では、上記不活性雰囲気に用いられる希ガスは、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記構成によれば、上記誘電体膜エッチバック工程を不活性雰囲気下にて行うことによって、誘電体膜の物性を安定に保持したままで、当該誘電体膜をエッチバックすることができる。このとき、仮に反応性が高いガス(活性ガス)を用いた場合、誘電体膜と活性ガスとが反応して化合物などが形成されることによって、膜の密着性の低下、および開口径の縮小という問題が生じる。そして、上記構成によれば、膜の密着性の低下、および開口径の縮小を抑えることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体膜エッチバック工程において、エッチバック後の誘電体膜表面における凹凸の段差が5nm以下となるように、上記誘電体膜がエッチバックされることが好ましい。
上記構成によれば、誘電体膜表面における凹凸の段差が5nm以下であるので、更に、上記誘電体膜上にバリアメタル膜を形成した場合、膜厚が均一になるようにバリアメタル膜を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに、少なくともエッチングを行うことで上記配線溝を形成する配線溝形成工程と、上記エッチングにより配線溝の内壁に堆積した副生成物を、誘電体埋込工程の前に除去する副生成物除去工程とを含むことが好ましい。
上記構成によれば、所望の配線溝を形成することができるとともに、配線溝形成工程において生成された副生成物を除去することができる。上記副生成物を除去すれば、配線溝の表面は平坦になり、それ故、当該配線溝の表面に、不純物を含まずかつ膜厚の均一な誘電体膜を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体材料は、アモルファス状態で配線溝の内壁に形成されることが好ましい。
上記構成によれば、誘電体材料がアモルファス状態であれば、上記誘電体材料が、多孔質絶縁膜上の多孔の内部に容易に入り込むことができる。その結果、多孔質絶縁膜の表面に存在する多孔を、均一かつ十分に、誘電体材料にて埋め込むことができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに、バリアメタル形成工程の後に、配線溝に配線材料を埋め込んで溝埋込型配線を形成する配線形成工程を含むことが好ましい。
上記構成によれば、半導体素子を電気的に接続することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記配線形成工程は、バリアメタル層の上に配線材料のシード膜を形成するシード膜形成工程と、絶縁膜表面のシード膜およびバリアメタル層を除去して絶縁層表面を露出させ、かつ、配線溝に埋め込まれた配線材料を残存させることで溝埋込型配線を形成する表面層除去工程との2つの工程を含んでいることが好ましい。
上記構成によれば、配線溝内のみに溝埋込型配線を形成することができ、当該溝埋込型配線を絶縁膜によって絶縁することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに、配線形成工程の後に、溝埋込型配線および露出する絶縁層表面を覆うように、配線材料の拡散を防止する拡散防止膜を形成する拡散防止膜形成工程を含むことが好ましい。
上記構成によれば、配線材料が拡散することを防止することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体材料および拡散防止膜の少なくとも一方として、炭素(C)を含み酸素を含まない材料が用いられることが好ましい。
また、本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体材料には、さらにシリコン(Si)が含まれることが好ましい。
また、本発明の半導体装置の製造方法では、上記誘電体材料には、さらに水素(H)および窒素(N)の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
上記構成によれば、溝埋込型配線に対して酸素が拡散することを防止することができる。その結果、配線間容量の増加および接続抵抗の上昇を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記配線材料として銅が用いられることが好ましい。
上記構成によれば、溝埋込型配線は銅によって形成される。銅配線は、例えばアルミニウム合金配線に比べて電気抵抗が約3分の2であり、配線抵抗を低減することができる。その結果、信号遅延を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記埋込配線には、溝埋込型配線と半導体素子とを接続する接続プラグが含まれているとともに、さらに、基板上に形成された半導体素子を覆うように基板表面に非多孔質絶縁膜を積層する非多孔質絶縁膜形成工程と、当該非多孔質絶縁膜に上記半導体素子を電気的に接続するための接続孔を形成する接続孔形成工程と、当該接続孔に配線材料を埋め込む接続プラグ形成工程とを含むことが好ましい。
上記構成によれば、半導体素子を絶縁膜によって絶縁することができるとともに、溝埋込型配線と半導体素子とを電気的に接続することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに、接続プラグ形成工程の後に、非多孔質絶縁膜の上に多孔質絶縁膜およびシリコン系酸化膜をこの順で積層する絶縁膜積層工程と、積層された多孔質絶縁膜およびシリコン系酸化膜に対して配線溝を形成する配線溝形成工程とを含むことが好ましい。
上記構成によれば、絶縁膜中に配線溝中に形成される溝埋込型配線を絶縁することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記シリコン系酸化膜として、SiO2、SiOF、SiCOHの少なくとも何れかが用いられることが好ましい。
上記構成によれば、配線溝中に形成される溝埋込型配線を絶縁することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに、拡散防止膜形成工程の後に、非多孔質絶縁膜形成工程から配線形成工程を少なくとも1回繰り返すことにより、基板の上下方向に互いに接続する複数の溝埋込型配線を形成することが好ましい。
上記構成によれば、互いに接続する溝埋込型配線を形成することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、先に形成された溝埋込型配線の表面を還元処理する配線表面還元工程を含むことが好ましい。
上記構成によれば、配線表面を還元処理することで、溝埋込型配線の表面に酸化膜等が形成されていたとしても、このような膜を除去して配線表面を露出させることができるので、電機導電性の低下や断線のおそれを回避することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、上記配線表面還元工程では、アンモニア(NH3)または水素(H2)を含む還元性ガスを用いることが好ましい。
上記構成によれば、還元性ガスとしてアンモニアまたは水素を用いるため、配線表面の還元処理をより確実に行うことができる。
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、半導体基板上に形成される半導体素子と、上記半導体素子上に積層される複数の絶縁膜と、上記複数の絶縁膜内に埋め込まれた状態で形成され、半導体素子を電気的に接続する埋込配線とを備えており、上記複数の絶縁膜には多孔質絶縁膜が含まれるとともに、上記埋込配線には、少なくとも多孔質絶縁膜に形成される配線溝に配線材料を埋め込んで形成される溝埋込型配線が含まれている半導体装置において、上記配線溝の内壁となる多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で埋め込んで誘電体膜が形成されているとともに、上記誘電体膜上にバリアメタル層が形成されていることを特徴としている。
上記構成によれば、配線溝の内壁に露出した多孔質絶縁膜の表面に存在する多孔が誘電体材料によって埋め込まれているので、多孔質絶縁膜の表面に存在する凹凸が平坦化されている。そして、誘電体材料によって平坦化された面上にバリアメタル層が形成されているので、当該バリアメタル膜の膜厚を均一にすることができる。バリアメタル膜の膜厚が均一であれば、溝埋込型配線(例えば、Cu配線)から多孔質絶縁膜などの中にCuなどが拡散することを防止することができる。その結果、配線間のリークを抑制することによって信頼性の高い配線を形成することができる。
本発明の半導体装置では、上記誘電体膜の膜厚が10nm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で均一かつ十分に埋め込むことができるとともに、配線溝の内部に形成される埋込配線の断面積を広くすることができる。
本発明の半導体装置では、上記誘電体膜表面の凹凸の段差が5nm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、誘電体膜表面における凹凸の段差が5nm以下であるので、当該誘電体膜上に形成されるバリアメタル層の膜厚を均一にすることができる。
本発明の半導体装置では、上記誘電体膜は、アモルファス状態で形成されることが好ましい。
上記構成によれば、誘電体材膜がアモルファス状態で形成されれば、誘電体材料が、多孔質絶縁膜上の多孔の内部に容易に入り込むことができる。その結果、多孔質絶縁膜の表面に存在する多孔を、均一かつ十分に、誘電体材料にて埋め込むことができる。
本発明の半導体装置では、上記誘電体材料は、炭素(C)を含み酸素を含まない材料であることが好ましい。
また、本発明の半導体装置では、上記誘電体材料には、さらにシリコン(Si)が含まれることが好ましい。
また、本発明の半導体装置では、上記誘電体材料には、さらに水素(H)および窒素(N)の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
上記構成によれば、溝埋込型配線に対して酸素が拡散することを防止することができる。その結果、配線間容量の増加および接続抵抗の上昇を抑制することができる。
本発明の半導体装置では、上記配線材料として銅が用いられることが好ましい。
上記構成によれば、溝埋込型配線は銅によって形成される。銅配線は、例えばアルミニウム合金配線に比べて電気抵抗が約3分の2であり、配線抵抗を低減することができる。その結果、信号遅延を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、以上のように、配線溝の内壁となる多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で埋め込む誘電体埋込工程と、当該誘電体埋込工程の後に、無酸素雰囲気下で配線溝の内壁にバリアメタル層を形成するバリアメタル形成工程とを含む。
また、本発明の半導体装置は、以上のように、上配線溝の内壁となる多孔質絶縁膜表面の多孔を誘電体材料で埋め込んで誘電体膜が形成されているとともに、当該誘電体膜上にバリアメタル層が形成されている。
それ故、誘電体材料によって配線溝の内部に露出した多孔質絶縁膜の表面を覆い、当該多孔質層間絶縁膜上に膜厚が均一なバリアメタル膜を形成することができる。その結果、Cuなどの導電体材料配線材料が、バリアメタル膜、多孔質層間絶縁膜および非多孔質層間絶縁膜内を拡散することを防ぐことができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図1ないし図12に基づいて説明すれば、以下の通りである。
〔実施の形態1〕
本実施形態の半導体装置は、図1に示すように、半導体基板1上に半導体素子4が形成されるとともに、複数の絶縁膜を含む各種の層が形成され、さらに半導体素子4に導電体材料配線15が接続されている構成を有している。
具体的には、半導体基板1の表面(半導体素子4や各種層の形成面)には、ソース・ドレイン領域2および素子分離領域3が形成されている。ソース・ドレイン領域2は、半導体素子4のソース電極やドレイン電極となる領域であり、素子分離領域3は、隣接する半導体素子4のソース・ドレイン領域2を電気的に分離するための領域である。
上記半導体素子4は、半導体基板1のソース・ドレイン領域2に形成される。そして、ソース・ドレイン領域2上にはゲート8が形成されている。半導体素子4の具体的な種類は特に限定されるものではなく、本実施形態の半導体装置の用途に応じて適切な素子を選択すればよい。
半導体基板1の表面は、非多孔質絶縁膜5により覆われているが、半導体素子4の上には、接続孔が形成され、ここにプラグ6が設けられている。このプラグ6は、半導体素子4の上方に設けられる導電体材料配線15と半導体素子4とを接続する部材である。プラグ6として用いられる材料は特に限定されるものではないが、導電体材料配線を形成する導電体とは異なるものであることが好ましい。例えば、プラグ6として用いられる材料としては、W(タングステン)を用いることが好ましい。プラグ6は、導電体材料配線15と比較して微細な構造であるので、W(タングステン)を用いたCVD法によって容易に形成することができる。また、接続孔およびプラグ6の形成方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
非多孔質絶縁膜5の上には、多孔質層間絶縁膜10およびシリコン酸化膜(SiO2膜)11がこの順で積層されているとともに、半導体素子4およびプラグ6の上には、導電体材料配線15が設けられている。さらに、半導体装置の上面、すなわち、SiO2膜11および導電体材料配線15の上方には、拡散防止膜16が形成されている。本発明に係る半導体装置に形成される各種の層としては、上記非多孔質絶縁膜5、多孔質層間絶縁膜10、SiO2膜11、拡散防止膜16等に限定されるものではなく、半導体装置の目的や機能等に応じて適切な層を形成すればよい。
ただし、本発明では、各種の層に複数の絶縁膜が含まれており、さらにそのうちの1つの絶縁膜が多孔質絶縁膜(本実施形態では、多孔質層間絶縁膜10)となっている。一般に半導体装置では、信号遅延を抑制するために配線容量の減少が図られているが、配線容量を減少させる方法の1つとして、配線間の比誘電率を低減させることが好ましく用いられる。この方法によれば、配線のデザインに影響されずに配線容量を減少させることができる。
上記各種の層のうち、非多孔質絶縁膜5は、半導体基板1の表面を覆って絶縁でき、かつ、多孔質の構造となっていない絶縁膜であれば特に限定されるものではない。本実施形態では、例えばSiO2等のCVD層間絶縁膜が好適に用いられるが、公知の他の絶縁膜であってもよい。また、その膜厚についても特に限定されるものではなく、絶縁が可能な膜厚であればよい。本実施形態では、例えば100〜500nmの範囲内を挙げることができる。
また、上記多孔質層間絶縁膜10は、非多孔質絶縁膜5の上に形成され、かつ、膜中に配線溝を形成する絶縁膜であり、多孔質構造として絶縁膜そのものを低密度化することにより層間絶縁膜としての誘電率をより低くしている。ここで、本発明に係る半導体装置には、少なくとも半導体素子4を電気的に接続するための埋込配線が含まれていればよいが、特に、低密度化された多孔質絶縁膜(多孔質層間絶縁膜10)に形成される配線溝に配線材料を埋め込んで形成される溝埋込型配線が含まれている。図1に示す構成では、導電体材料配線15が溝埋込型配線に相当する。したがって上記多孔質層間絶縁膜10はこの溝埋込型配線(導電体材料配線15)を他の導電性構造と絶縁できるような材料や膜厚を有していればよい。
具体的には、上記多孔質層間絶縁膜10は低誘電率の絶縁膜であればよく、その材料は特に限定されない。本実施形態では、例えば、SiOCH膜またはSiOC膜を好ましく挙げることができる。上記多孔質層間絶縁膜10の厚さも特に限定されないが、本実施形態では、50nm〜200nmであることが好ましい。また、上記多孔質層間絶縁膜10は、プラズマCVD法によって形成される非多孔質の層間絶縁膜であるSiO2膜、SiOF膜(またはFSG膜)またはSiOCH膜であってもよい。この場合、多孔質層間絶縁膜10中には、積極的に孔を形成することはない。したがって、多孔質層間絶縁膜10の表面には、孔由来の大きな凹凸は存在しないが、多孔質層間絶縁膜10の形成過程で生じる小さな凹凸が存在している。この場合、上記多孔質層間絶縁膜10の厚さは特に限定されないが、90nm〜300nmであることが好ましい。多孔質層間絶縁膜10の膜厚が上記範囲未満であれば層間絶縁効果が十分に得られない可能性があるとともに、十分な深さの配線溝を形成できなくなる可能性もある。一方、多孔質層間絶縁膜10の膜厚が上記範囲を超えると、層間絶縁効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記SiO2膜11は、CMP(化学機械研磨)のときに研磨領域層として機能する。その材料は特に限定されないが、SiO2であることが好ましい。また、上記SiO2膜11は、非多孔質膜であることが好ましい。本実施形態の半導体装置は、SiO2膜11を備えることによって、多孔質層間絶縁膜10の表面に露出した孔内へ、フォト工程のレジストやCMPにおける研磨ガスなどが入り込むことを防ぐことができる。その結果、多孔質層間絶縁膜10の表面での電流のリークを防ぐことができる。また、SiO2膜11の膜厚は特に限定されるものではないが、40nm〜100nmであることが好ましい。SiO2膜11の膜厚が上記範囲未満であれば十分な不動体化の効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、不動体化の効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記拡散防止膜16は、半導体装置の表面、すなわちSiO2膜11で覆われた多孔質層間絶縁膜10と導電体材料配線15とを覆う膜であり、導電体材料配線15に用いられる導電体材料の拡散を防止するための膜である。したがって拡散防止膜16の材料は、拡散防止効果の得られる材料であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、1)、C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)、C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、拡散防止膜16は、O(酸素)を含まないことが好ましい。上記拡散防止膜16は、例えば、SiC膜、SiCN膜、これらの膜とSiCO膜の積層膜、またはSiCH膜であることが好ましい。上記拡散防止膜16として、SiC膜、SiCN膜およびSiCO膜の積層膜を用いる場合には、SiCO膜が導電体材料配線15と接することがないように積層することが好ましい。つまり、導電体材料配線15と直接接する側には、SiC膜またはSiCN膜を形成すればよい。上記拡散防止膜16の膜厚も特に限定されないが、5nm〜50nmであることが好ましい。拡散防止膜16の膜厚が上記範囲未満であれば、十分な拡散防止効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、拡散防止効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記導電体材料配線15は、多孔質層間絶縁膜10に形成された配線溝に導電体材料を埋め込むことにより形成されており、さらに、多孔質層間絶縁膜10との界面にはバリアメタル層14が形成されている。加えて、バリアメタル層14と多孔質層間絶縁膜10との間には誘電体膜からなるサイドウォール12aが形成されている。言い換えれば、導電体材料配線15を形成するための配線溝の内壁には、バリアメタル層14とサイドウォール12aとが設けられている。このサイドウォール12aは、多孔質層間絶縁膜10の表面の多孔を誘電体材料で埋め込むものである。
本発明では、配線溝の内壁に露出した多孔質層間絶縁膜10の表面に存在する多孔を、誘電体材料(サイドウォール12a)によって埋め込んでいる。それゆえ、多孔質層間絶縁膜10の表面に存在する凹凸を平坦化し、その平坦面の上にバリアメタル層14を形成することになる。それゆえ、当該バリアメタル膜14の膜厚を均一にすることができる。バリアメタル膜14の膜厚が均一であれば、導電体材料配線15から多孔質層間絶縁膜10などの中に導電体配線材料などが拡散することを防止することができる。その結果、配線間のリークを抑制することによって信頼性の高い配線を形成することができる。
上記導電体材料配線15は、多孔質層間絶縁膜10の配線溝内に溝埋込型配線として形成され、かつ、半導体素子4と電気的に接続される配線であればよく、その具体的な構成や材料は特に限定されない。本実施形態では、導電性材料として銅(Cu)を用いているが、これ以外に、例えば、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Au(金)またはAg(銀)などを用いることが好ましい。これらを導電性材料として用いれば、導電体材料配線15の電気抵抗を低くすることができる。上述したように、信号遅延は、配線抵抗と、配線間の絶縁膜によって形成される配線間容量によって影響を受ける。半導体装置の微細化が進むと配線間が狭くなり、それに伴って配線間容量が増大する。このとき、導電体材料として上記構成を選択すれば、配線抵抗を低くすることができる。そして、その結果、信号遅延を低く抑えることができる。なお、銅配線は、例えばアルミニウム合金配線に比べて電気抵抗が約3分の2であり、配線抵抗を低減することができる。本発明では信号遅延を抑制することが重要な目的の1つであるので、導電体材料配線15としては、配線抵抗を低減して信号遅延を抑制できる銅配線を用いることが最も好ましい。
なお、上記導電体材料配線15の厚みは、基本的には多孔質層間絶縁膜10の膜厚に依存する。一方、導電体材料配線15の幅は、20〜300nmの範囲内であることが好ましい。導電体材料配線15の幅が上記範囲未満であれば十分な配線幅を確保できない可能性があり、断線等の原因となるおそれがある。一方、配線幅が上記範囲を超えると、幅が広くなりすぎて半導体装置の高密度化に影響を生じるおそれがある。
上記バリアメタル層14は、導電体材料配線15の導電体材料が周囲(特に多孔質層間絶縁膜10)に拡散することを防止する膜であり、材料は特に限定されない。一般には、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等を含有する膜が用いられるが、本実施形態では、例えば、バリアメタル膜14として、Ta(タンタル)およびTaN(窒化タンタル)の積層膜を好適に用いることもできる。もちろん単層の膜であってもよいことは言うまでもない。また、上記バリアメタル膜14の厚さも特に限定されないが、10nm〜50nmであることが好ましい。バリアメタル層14の膜厚が上記範囲未満であれば、十分な拡散防止効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、拡散防止効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記サイドウォール12aは、前述したように、多孔質層間絶縁膜10の表面の多孔を誘電体材料で埋め込む誘電体膜であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。その材料も誘電体材料であればよいが、本実施形態では、炭素を含有する材料が用いられることが好ましい。後述するように、サイドウォール12aは、まず前駆膜としての炭素含有膜12が形成され、この炭素含有膜12をエッチングする(後述する誘電体膜エッチバック工程)ことによって形成されるものである。この炭素含有膜12の材料は特に限定されず、1)Cuの拡散防止効果を有する、2)誘電率が低い、3)膜厚均一性、膜厚制御性および被覆性に優れている、および4)Arなどのバイアススパッタエッチによって除去できる、という性質を備えたものであればよい。
具体的な材料としては、1)C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、炭素含有膜12は、O(酸素)を含まないことが好ましい。炭素含有膜12がO(酸素)を含めば、当該O(酸素)が、多孔質層間絶縁膜10中に拡散して当該多孔質層間絶縁膜12を酸化する恐れがあるので、炭素含有膜12は、O(酸素)を含まないことが好ましい。例えば、炭素含有膜12として、SiC膜、SiCH膜、SiCN膜などを用いることができる。SiC膜およびSiCH膜は誘電率が4.0〜4.5であって、誘電率が7であるP−SiN膜と比較して配線間容量の上昇を防ぐことができ、その結果、RC配線遅延を抑制することができる。また、SiCN膜は誘電率が5.2〜5.8であって、SiC膜およびSiCH膜と比較して誘電率が高くなり、その結果、配線間容量の上昇を防ぐ効果はSiC膜およびSiCH膜よりも低くなるが、本実施の形態において炭素含有膜12として用いることができる。
さらに、上記炭素含有膜12すなわちサイドウォール12aを形成する誘電体材料はアモルファス状態となっていることが好ましい。つまり、サイドウォール12aはアモルファス状態の誘電体膜であることが好ましい。これにより、誘電体材料が、多孔質層間絶縁膜10上の多孔の内部に容易に入り込むことができる。その結果、多孔質層間絶縁膜10の表面に存在する多孔を、均一かつ十分に、誘電体材料にて埋め込むことができる。
ここで、上記サイドウォール12aの膜厚は、前駆膜である炭素含有膜12の膜厚と、この炭素含有膜12のエッチング量との均衡により決定されるものであり、特に限定されるものではない。なお、上記炭素含有膜12の膜厚については、後述の製造方法(誘電体膜形成工程)にて詳述する。
ただし、本実施形態では、サイドウォール12a表面の凹凸の段差は5nm以下となっていることが好ましい。これにより、サイドウォール12a上に形成されるバリアメタル層の膜厚を均一にすることができる。この点を考慮すれば、前駆膜である炭素含有膜12をエッチングして得られるサイドウォール12aの膜厚は10nm以下であることが好ましい。この膜厚を有していれば、多孔質層間絶縁膜10表面の多孔をサイドウォール12aで均一かつ十分に埋め込むことができるとともに、配線溝の内部に形成される導電性材料配線15の断面積を広くすることができる。
次に、本発明に係る半導体装置の製造方法について、上記構成の半導体装置を製造する場合を例に挙げて説明する。図2に示すように、本実施形態の製造方法では、15工程を経ることにより図1に示す半導体装置を製造する。
なお、図2に例示する工程とは、本発明に係る半導体装置の製造方法をより具体的かつ明確に説明するために、半導体装置の構造を基準として製造方法を工程分けしたものである。したがって、本発明は、図2に示す工程数や工程順、あるいは工程区分に限定されるものではなく、半導体装置の構成に応じて一部の工程を実施しなくてもよいし、半導体装置の分野で公知の他の工程を追加してもよいし、一部の工程を適宜繰り返したり順序を入れ替えたりしてもよいし、さらには、図2における複数の工程をまとめて1つの工程と見なしたり、逆に1つの工程を複数の工程に区分したりしてもよいことは言うまでも無い。
本実施形態の半導体装置の製造方法では、半導体基板加工工程、半導体素子形成工程、非多孔質絶縁膜形成工程、接続孔形成工程、接続プラグ形成工程、絶縁膜積層工程、配線溝形成工程、副生成物除去工程、誘電体埋込工程、バリアメタル形成工程、配線形成工程、配線表面還元工程、および拡散防止膜形成工程をこの順で行うことにより、図1に示す半導体装置を製造する。本実施形態では、上記工程のうち、誘電体埋込工程は、誘電体膜形成工程および誘電体膜エッチバック工程からなり、配線形成工程は、シード膜形成工程および表面層除去工程からなっている。
なお、本発明に係る製造方法では、バリアメタル形成工程の前に誘電体埋込工程を実施することが重要となっているので、本実施形態では、説明の便宜上、誘電体埋込工程より前の工程群を基礎構造形成工程群と称する一方、バリアメタル形成工程以降の工程群を配線構造形成工程群と称するものとし、基礎構造形成工程群、誘電体埋込工程、および配線構造形成工程群のそれぞれについて図面に基づいて説明する。
図3(a)〜(c)は、基礎構造形成工程群に相当する、図2に示す半導体基板加工工程から副生成物除去工程までの工程を、半導体装置の断面構造に基づいて概略説明する工程図である。
まず、図3(a)に示すように、半導体基板1中に、ソース・ドレイン領域2および素子分離領域3が形成される(半導体基板加工工程)。上記ソース・ドレイン領域2および素子分離領域3の形成方法やその条件等は特に限定されず、適宜公知の方法や条件を用いて形成することができる。上記半導体基板1上には半導体素子4が形成され(半導体素子形成工程)、当該半導体素子4上に非多孔質絶縁膜5が形成される(非多孔質絶縁膜形成工程)。
次に、半導体素子4上に形成された非多孔質絶縁膜5の一部が除去されて孔(接続孔)が形成され(接続孔形成工程)、当該接続孔に導電体を埋め込むことによってプラグ6が形成される(接続プラグ形成工程)。上記プラグ6によって、半導体素子4と導電体材料配線15とが接続される。なお、上記接続孔の形成方法およびプラグ6の形成方法、あるいはこれらの形成条件等については何れも限定されず、適宜公知の方法や条件を用いることができる。次に、上記非多孔質絶縁膜5およびプラグ6の表面を平坦化する。上記平坦化する方法やその条件は特に限定されず、例えば、CMP(化学的機械研磨)処理などによって行うことができる。
次いで、図3(b)に示すように、上記非多孔質絶縁膜5上およびプラグ6上に、上記多孔質層間絶縁膜10(多孔質絶縁膜)が形成される。この多孔質層間絶縁膜10の形成方法は特に限定されず、適宜公知の方法を用いて形成することができる。例えば、MSQ(Methyl Silses Quioxane:メチルシルセスキオキサン)などに代表されるシロキサン系材料や、それに、有機系の添加材などを添加した材料を、非多孔質絶縁膜5上および接続孔6上に塗布した後、例えば、以下の1)〜3)のいずれかの方法によって多孔質膜を成膜することができる。1)400℃までの温度にてベーク処理を行う方法、2)紫外線を照射する方法、3)電子線を照射する方法。
また、MSQなどに代表されるシロキサン系材料に、TMCTS(Tetramethylcyclo Tetrasiloxane)等の低誘電率膜の形成に用いられる有機ソースとメチルなどを含む有機性の添加材とを加えた後、当該材料を用いてプラズマCVD法によって成膜することにより、多孔質層間絶縁膜10を形成することもできる。
上記多孔質層間絶縁膜10上には、更に、SiO2膜(シリコン酸化膜)11が形成される。上記SiO2膜11の形成方法は特に限定されず、適宜公知の方法を用いて形成することができる。例えば、P−CVD法(プラズマCVD法)またはSOG(塗布)などによって形成することができる。このSiO2膜11は、後述の表面層除去工程でエッチングされ、その結果、前述したように好ましくは40〜100nmの範囲内の膜厚となればよいので、研磨除去のマージンを考慮して100〜400nmの範囲内で形成されることがより好ましい。
次いで、図3(c)に示すように、リソグラフィー工程の後、ドライエッチによって多孔質層間絶縁膜10とSiO2膜11とに、後述する導電体材料配線を形成するための配線溝7が形成される(配線溝形成工程)。なお、このとき、上記エッチングによって、副生成物(ポリマーなど)が産出される。当該副生成物は、以後の工程において好ましくない影響を及ぼす場合がある。したがって、本実施形態では、上記副生成物を除去する工程(副生成物除去工程)を含むことが好ましい。副生成物の除去方法としては特に限定されないが、アッシング法よって行われることが好ましい。また、上記アッシング法に用いられる気体も特に限定されないが、Ar、Xe、Ne、He、または少なくともこれらの2種類のガスからなる混合ガスであることが好ましい。また、上記気体としてH2を用いることもできる。このような気体は半導体基板などと反応することがないので、半導体基板などを劣化させることなく副生成物を除去することができる。なお、上記気体のみでは、副生成物を十分に除去できない場合には、更に薬液を用いた処理によって副生成物を除去することができる。
このようにして、半導体基板1上に半導体素子4や絶縁膜等の各種の層を形成し、さらに、配線溝7を形成することによって、誘電体埋込工程を実施する前の基礎構造が形成される。なお、上述した基礎構造形成工程群は、上記の工程例に限定されないことは言うまでもない。
次に、図3(c)に示す基礎構造において、上記配線溝7の内壁となる多孔質層間絶縁膜10の表面に存在する多孔を誘電体材料にて埋め込む誘電体埋込工程を実施する。図4(a)〜(c)は、誘電体埋込工程に相当する、図2に示す誘電体膜形成工程および誘電体膜エッチバック工程を、半導体装置の断面構造に基づいて概略説明する工程図である。
まず、図4(a)に示すように、上記配線溝7内面および上記SiO2膜11の表面上に、サイドウォール12aの前駆膜である炭素含有膜12が形成される(誘電体膜形成工程)。上記工程によって、多孔質層間絶縁膜10の表面に露出した凹凸を、炭素含有膜12によって埋め込むことができる。上記炭素含有膜12は、プラズマCVD法、またはスパッタリング法によって形成される。例えば、酸素を含まない有機ソースガス(例えば、TMS(Trimethylsilane)とH2、無機のSiH4とCF4、またはC2F6のCXFY系ガス)を用いたプラズマCVD法によって形成され得る。更に具体的には、例えば、H2またはNH3を含むプラズマ処理によって上記配線溝内部の還元処理を実施した後、酸素を含まないソースガスとNH3とを導入したCVD装置にてSiCN膜を形成することができる。
プラズマCVD法によって炭素含有膜12を形成する場合、膜の形成温度は特に限定されないが、100℃〜400℃の条件下にて形成することが好ましい。また、スパッタリング法によって炭素含有膜12を形成する場合も、膜の形成温度は特に限定されないが、25℃〜300℃の条件下にて形成することが好ましい。上記温度条件下において炭素含有膜12を形成することによって、アモルファス状態の炭素含有膜12を、配線溝内部などに形成することができる。炭素含有膜12が多結晶状態であるよりもアモルファス状態である方が、配線溝の側面にある凹部の中にまで炭素含有膜12が形成される。その結果、配線溝の側面の凹部を十分に被覆することができる。
さらに、プラズマCVD法またはスパッタリング法によって炭素含有膜12を形成する場合に、上記温度範囲よりも高い温度にて形成すれば、膜中ストレスが高くなることや、多結晶化が進むことによって、炭素含有膜12の表面の凹凸が大きくなる。逆に上記温度範囲よりも低い温度にて炭素含有膜12を形成すれば、炭素含有膜12の安定性が低下し、その結果、当該炭素含有膜12による配線溝内部などの被覆性が劣化する。したがって、上記温度範囲において炭素含有膜12を形成することが好ましい。
ここで、上記炭素含有膜12の厚さは特に限定されないが、前述したようにサイドウォール12a(誘電体膜)表面の凹凸の段差は5nm以下となっていることが好ましく、具体的な膜厚は10nm以下となっていることが好ましい。そこで、次の誘電体膜エッチバック工程による膜厚の減少を考慮すれば、炭素含有膜12の厚さは1nm〜30nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましく、8nmであることが最も好ましい。炭素含有膜12の厚さが1nmよりも薄くなれば配線溝7内の凹部が十分に被覆されないために、後の工程にて形成されるバリアメタル膜14の厚さが十分には得られず、導電性材料(例えばCu)の多孔質層間絶縁膜10中への拡散を防止することができない。一方、炭素含有膜12の厚さが30nmよりも厚くなれば、後の工程にて、配線溝7の底面に形成された炭素含有膜12をエッチングにて除去しようとした場合、エッチングの制御が困難になる。その結果、配線溝7の底面に炭素含有膜12が残存してしまい、導電体材料配線15の幅が狭くなって配線抵抗が上昇してしまう。
上述した構成の炭素含有膜12を形成するためには、膜厚および均一性制御が原子レベルで制御できる成膜装置を用いて成膜することが好ましい。具体的には、例えばALD(Atomic Layer Deposition)CVD装置などの原子層単位での成膜が可能なCVD装置を用いることが好ましい。
次いで、図4(b)に示すように、不活性ガス13を用いたバイアススパッタ法によって、上記炭素含有膜12に対してエッチバック処理が行われる(誘電体膜エッチバック工程)。上記エッチバック処理は、例えば、バリアメタル成膜装置であるスパッタ装置内の逆スパッタチャンバー内にて行うことができる。不活性ガス13としては、周期表0族の希ガスを少なくとも1種含むことが好ましい。例えば、不活性ガス13としては、Ar、He、XeまたはNeの少なくとも一つを含んでいればよい。また、エッチバックされる炭素含有膜12の厚さは特に限定されないが、配線溝の底面上、およびSiO2膜11の表面上に形成された炭素含有膜12が除去され、かつ上記配線溝7の側面上に形成された炭素含有膜12が配線溝7の側面を覆って残存するようにエッチバックすればよい。例えば、SiやCを含む炭素含有膜12のArによるスパッタ除去レートから換算して1nm〜30nmの範囲で除去することが好ましい。
このようにして、図4(c)に示すように、配線溝7の側面を覆うように残された炭素含有膜12によってサイドウォール12aが形成される。上記サイドウォール12aの厚さは前述したように特に限定されず、配線溝7の側面にある凹部の中にまで炭素含有膜12が形成されて、配線溝の内面の凹凸が解消されて平坦となっていれば、サイドウォール12aの厚さに依存せず、同等の効果を得ることができる。
このようにして、配線溝7を含む基礎構造の表面に誘電体膜を形成してエッチバックすることにより、誘電体埋込工程が実施される。なお、上述した誘電体埋込工程の具体例は、上記の工程例に限定されないことは言うまでもない。
次に、図4(c)に示す誘電体埋込工程後の基礎構造において、配線溝7に溝埋込型配線(導電性材料配線15)を形成して拡散防止膜16で表面を覆う、配線構造形成工程群を実施する。図5(a)〜(d)は、配線構造形成工程群に相当する、図2に示すバリアメタル形成工程から拡散防止膜形成工程までの工程を、半導体装置の断面構造に基づいて概略説明する工程図である。
まず、図5(a)に示すように、配線溝7の内面上、およびSiO2膜11の表面上に、バリアメタル膜14が形成される(バリアメタル形成工程)。上記バリアメタル膜14の形成方法は特に限定されず、適宜公知の形成方法を用いることができる。例えばスパッタ法やCVD法によって形成することができる。
なお、上記バリアメタル形成工程と、その前段の誘電体膜エッチバック工程とにおいて、工程を実施する雰囲気に酸素が存在すれば、溝埋込型配線を酸化し、その結果、当該溝埋込型配線の抵抗を上昇させるという悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上記誘電体膜エッチバック工程とバリアメタル形成工程とは、連続して無酸素雰囲気下にて行われることが好ましい。上記工程を無酸素雰囲気下で行う方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を用いて行うことができる。例えば、真空ポンプを有するトランスファーチャンバによって、上記工程を無酸素雰囲気下にて行うことができる。
次いで、上記配線溝7内に、導電体材料配線15(溝埋込型配線)が形成される(配線形成工程)。図5(b)に示すように、配線形成工程では、まず、配線溝7内を含むバリアメタル膜14上に導電体材料配線15となる前駆配線層15aが形成される。上記前駆配線層15aの形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性材料としてCuを用いる場合には、スパッタ法によってCuのシード膜を形成し(シード膜形成工程)、当該シード膜を電解メッキ法によって配線溝7内に埋め込むことによって前駆配線層15aが形成される。
次いで、図5(c)に示すように、SiO2膜11が表面に露出し、かつ導電体材料配線15が所望の高さに至るまで研磨処理が行われる(表面層除去工程)。上記研磨処理の方法は特に限定されず、適宜公知の方法によって行うことができる。例えば、CMP(化学機械研磨装置)によって行うことができる。また、上記研磨処理の後、導電体材料配線15の表面を洗浄して、CMP処理などによって付着した不純物を除去することが好ましい。
次いで、図5(d)に示すように、まず、上記導電体材料配線15の表面に対して還元処理が行われる(配線表面還元工程)。上記還元処理の方法は特に限定されないが、例えば、CVD装置内にて、H2またはNH3を含むガスによって還元処理が行われることが好ましい。上記還元処理の後、導電体材料配線15上およびSiO2膜11上に、拡散防止膜16が形成される(拡散防止膜形成工程)上記拡散防止膜16の形成方法も特に限定されず、例えば、プラズマCVD法によって形成することができる。上記拡散防止膜16の膜厚も特に限定されないが、5nm〜50nmであることが好ましい。
このようにして、配線溝7に導電体材料配線15を形成して拡散防止膜16で覆うことにより、図1に示す、本実施形態の半導体装置を製造することができる。なお、上述した配線構造形成工程群の具体例は、上記の工程例に限定されないことは言うまでもない。
以上のようにして形成されるサイドウォール12aの利点を、図6(a)〜(e)を用いて更に詳細に説明する。図6(a)は、本実施の形態の半導体装置の製造方法にて、導電体材料配線15が形成された直後の半導体装置の断面図である。また、図6(b)〜(e)は、図6(a)において円にて囲んだ領域の拡大図である。更に詳細には、図6(b)は、炭素含有膜12が形成されなかった場合の上記領域の拡大図であり、図6(c)は、炭素含有膜12表面の凹凸の段差が大きい場合の上記領域の拡大図であり、図6(d)は、炭素含有膜12表面の凹凸の段差が小さい場合の上記領域の拡大図であり、図6(e)は、多孔質層間絶縁膜10表面の空孔中のみに炭素含有膜12が形成された場合の上記領域の拡大図である。
本願発明の半導体装置の製造方法とは異なり、炭素含有膜12を形成しない場合、図6(b)に示すように、多孔質層間絶縁膜10表面の空孔中には、膜厚が不均一なバリアメタル膜18が形成される。したがって、多孔質層間絶縁膜10と導電体材料配線15とが直接接触する領域が形成される。そして、当該領域を介して、導電体材料配線15の材料(例えば、Cuなど)が多孔質層間絶縁膜10中に拡散してしまう。一方、本願発明のように炭素含有膜12を形成すれば、当該炭素含有膜12上に膜厚が均一なバリアメタル膜を形成することができる。
また、図6(c)示すように、本願発明の半導体装置の製造方法のように炭素含有膜12を形成したとしても、形成された炭素含有膜12表面の凹凸の段差aが大きければ(例えば、a>5nm)、当該炭素含有膜12上をバリアメタル膜14にて覆うために、膜厚の大きなバリアメタル膜を形成する必要がある。バリアメタル膜14の膜厚が小さければ、図6(c)に示すように、炭素含有膜12と導電体材料配線15とが直接接触する領域が形成される。そして、当該領域を介して、導電体材料配線15の材料が多孔質層間絶縁膜10中に拡散してしまう。したがって、膜厚の大きなバリアメタル膜が形成される必要がある。しかしながら、この場合、導電体材料配線15の断面積が小さくなるので、その結果、導電体材料配線15の抵抗が大きくなってしまう。したがって、バリアメタル膜14は、必要以上に厚く形成しないことが好ましい。
そこで、本願発明の半導体装置の製造方法では、形成された炭素含有膜12表面の凹凸の段差aが小さいことが好ましい。例えば、a≦5nmであることが好ましい。図6(d)に示すように、炭素含有膜12表面の凹凸の段差aが小さければ、たとえバリアメタル膜14を薄く形成したとしても、当該バリアメタル膜14の膜厚を均一にすることができる。また、本願発明の半導体装置の製造方法では、図6(e)に示すように、少なくとも多孔質層間絶縁膜10表面の空孔17中に炭素含有膜12が形成されればよい。このとき、上記段差aは、0である。
なお、炭素含有膜12表面の凹凸の段差aの値は、例えば、多孔質層間絶縁膜10表面の空孔17の直径bに依存する。一般に、上記直径bは、2〜6nmであるが、その値が大きいほど段差aも大きくなる。そして、段差aは、誘電体膜エッチバック工程にて炭素含有膜12を除去するときに調節され得る。
なお、上記炭素含有膜12表面の凹凸aは、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)によって測定することが可能である。
〔実施の形態2〕
本実施の形態の半導体装置は、実施の形態1にて説明した半導体装置の上に、さらにもう一つの導電体材料配線を含む第2層目の配線構造が形成された半導体装置である。以下に、本実施の形態の半導体装置およびその製造方法について説明する。なお、上記実施の形態1と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、本実施の形態の半導体装置では、拡散防止膜16の上には、多孔質層間絶縁膜20およびシリコン酸化膜(SiO2膜)21がこの順で積層されているとともに、上記層中には、導電体材料配線25および接続配線27が設けられている。さらに、半導体装置の上面、すなわち、SiO2膜21および導電体材料配線25の上方には、拡散防止膜26が形成されている。
上記多孔質層間絶縁膜20は、拡散防止膜16の上に形成され、かつ、膜中に配線溝および接続孔を形成する絶縁膜であり、多孔質構造として絶縁膜そのものを低密度化することにより層間絶縁膜としての誘電率をより低くしている。上記多孔質層間絶縁膜20は溝埋込型配線(導電体材料配線25)を他の導電性構造と絶縁できるような材料や膜厚を有していればよい。具体的には、上記多孔質層間絶縁膜20は低誘電率の絶縁膜であればよく、その材料は特に限定されない。本実施形態では、例えば、SiOCH膜またはSiOC膜を好ましく挙げることができる。上記多孔質層間絶縁膜20の厚さも特に限定されないが、本実施形態では、50nm〜200nmであることが好ましい。また、上記多孔質層間絶縁膜10は、プラズマCVD法によって形成される非多孔質の層間絶縁膜であるSiO2膜、SiOF膜(またはFSG膜)またはSiOCH膜であってもよい。この場合、多孔質層間絶縁膜20中には、積極的に孔を形成することはない。したがって、多孔質層間絶縁膜20の表面には、孔由来の大きな凹凸は存在しないが、多孔質層間絶縁膜20の形成過程で生じる小さな凹凸が存在している。この場合、上記多孔質層間絶縁膜20の厚さは特に限定されないが、90nm〜300nmであることが好ましい。多孔質層間絶縁膜20の膜厚が上記範囲未満であれば層間絶縁効果が十分に得られない可能性があるとともに、十分な深さの配線溝を形成できなくなる可能性もある。一方、多孔質層間絶縁膜20の膜厚が上記範囲を超えると、層間絶縁効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記SiO2膜21は、CMP(化学機械研磨)のときに研磨領域層として機能する。その材料は特に限定されないが、SiO2であることが好ましい。また、上記SiO2膜21は、非多孔質膜であることが好ましい。本実施形態の半導体装置は、SiO2膜21を備えることによって、多孔質層間絶縁膜20の表面に露出した孔内へ、フォト工程のレジストやCMPにおける研磨ガスなどが入り込むことを防ぐことができる。その結果、多孔質層間絶縁膜20の表面での電流のリークを防ぐことができる。また、SiO2膜21の膜厚は特に限定されるものではないが、40nm〜100nmであることが好ましい。SiO2膜21の膜厚が上記範囲未満であれば十分な不動体化の効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、不動体化の効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記拡散防止膜26は、半導体装置の表面、すなわちSiO2膜21で覆われた多孔質層間絶縁膜20と導電体材料配線25とを覆う膜であり、導電体材料配線25に用いられる導電体材料の拡散を防止するための膜である。したがって拡散防止膜26の材料は、拡散防止効果の得られる材料であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、1)、C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)、C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、拡散防止膜16は、O(酸素)を含まないことが好ましい。上記拡散防止膜26は、例えば、SiC膜、SiCN膜、これらの膜とSiCO膜の積層膜、またはSiCH膜であることが好ましい。上記拡散防止膜26として、SiC膜、SiCN膜およびSiCO膜の積層膜を用いる場合には、SiCO膜が導電体材料配線25と接することがないように積層することが好ましい。つまり、導電体材料配線25と直接接する側には、SiC膜またはSiCN膜を形成すればよい。上記拡散防止膜26の膜厚も特に限定されないが、5nm〜50nmであることが好ましい。拡散防止膜26の膜厚が上記範囲未満であれば、十分な拡散防止効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、拡散防止効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記導電体材料配線25および接続配線27は、それぞれ多孔質層間絶縁膜20に形成された配線溝および接続孔に導電体材料を埋め込むことにより形成されており、さらに、多孔質層間絶縁膜20との界面にはバリアメタル層24が形成されている。加えて、バリアメタル層24と多孔質層間絶縁膜20との間には誘電体膜からなるサイドウォール22aが形成されている。言い換えれば、導電体材料配線25および接続配線27を形成するための配線溝および接続孔の内壁には、バリアメタル層24とサイドウォール22aとが設けられている。このサイドウォール22aは、多孔質層間絶縁膜20の表面の多孔を誘電体材料で埋め込むものである。
本発明では、配線溝および接続孔の内壁に露出した多孔質層間絶縁膜20の表面に存在する多孔を、誘電体材料(サイドウォール22a)によって埋め込んでいる。それゆえ、多孔質層間絶縁膜20の表面に存在する凹凸を平坦化し、その平坦面の上にバリアメタル層24を形成することになる。それゆえ、当該バリアメタル膜24の膜厚を均一にすることができる。バリアメタル膜24の膜厚が均一であれば、導電体材料配線25および接続配線27から多孔質層間絶縁膜20などの中に導電体配線材料などが拡散することを防止することができる。その結果、配線間のリークを抑制することによって信頼性の高い配線を形成することができる。
上記導電体材料配線25は、多孔質層間絶縁膜20の配線溝内に溝埋込型配線として形成され、かつ、半導体素子4と電気的に接続される配線であればよく、その具体的な構成や材料は特に限定されない。本実施形態では、導電性材料として銅(Cu)を用いているが、これ以外に、例えば、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Au(金)またはAg(銀)などを用いることが好ましい。これらを導電性材料として用いれば、導電体材料配線15の電気抵抗を低くすることができる。上述したように、信号遅延は、配線抵抗と、配線間の絶縁膜によって形成される配線間容量によって影響を受ける。半導体装置の微細化が進むと配線間が狭くなり、それに伴って配線間容量が増大する。このとき、導電体材料として上記構成を選択すれば、配線抵抗を低くすることができる。そして、その結果、信号遅延を低く抑えることができる。
上記バリアメタル層24は、導電体材料配線25および接続配線27の導電体材料が周囲(特に多孔質層間絶縁膜20)に拡散することを防止する膜であり、材料は特に限定されない。一般には、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等を含有する膜が用いられるが、本実施形態では、例えば、バリアメタル膜24として、Ta(タンタル)およびTaN(窒化タンタル)の積層膜を好適に用いることもできる。もちろん単層の膜であってもよいことは言うまでもない。また、上記バリアメタル膜24の厚さも特に限定されないが、10nm〜50nmであることが好ましい。バリアメタル層24の膜厚が上記範囲未満であれば、十分な拡散防止効果が見込めない場合があり、また膜厚が上記範囲を超えると、例えば、拡散防止効果に対して膜厚が大きすぎて膜形成の効率が低下する場合がある。
上記サイドウォール22aは、前述したように、多孔質層間絶縁膜20の表面の多孔を誘電体材料で埋め込む誘電体膜であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。その材料も誘電体材料であればよいが、本実施形態では、炭素を含有する材料が用いられることが好ましい。後述するように、サイドウォール22aは、まず前駆膜としての炭素含有膜22が形成され、この炭素含有膜22をエッチングする(後述する誘電体膜エッチバック工程)ことによって形成されるものである。この炭素含有膜22の材料は特に限定されず、1)Cuの拡散防止効果を有する、2)誘電率が低い、3)膜厚均一性、膜厚制御性および被覆性に優れている、および4)Arなどのバイアススパッタエッチによって除去できる、という性質を備えたものであればよい。
具体的な材料としては、1)C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、炭素含有膜12は、O(酸素)を含まないことが好ましい。炭素含有膜12がO(酸素)を含めば、当該O(酸素)が、多孔質層間絶縁膜20中に拡散して当該多孔質層間絶縁膜20を酸化する恐れがあるので、炭素含有膜22は、O(酸素)を含まないことが好ましい。例えば、炭素含有膜22として、SiC膜、SiCH膜、SiCN膜などを用いることができる。SiC膜およびSiCH膜は誘電率が4.0〜4.5であって、誘電率が7であるP−SiN膜と比較して配線間容量の上昇を防ぐことができ、その結果、RC配線遅延を抑制することができる。また、SiCN膜は誘電率が5.2〜5.8であって、SiC膜およびSiCH膜と比較して誘電率が高くなり、その結果、配線間容量の上昇を防ぐ効果はSiC膜およびSiCH膜よりも低くなるが、本実施の形態において炭素含有膜22として用いることができる。
さらに、上記炭素含有膜22すなわちサイドウォール22aを形成する誘電体材料はアモルファス状態となっていることが好ましい。つまり、サイドウォール22aはアモルファス状態の誘電体膜であることが好ましい。これにより、誘電体材料が、多孔質層間絶縁膜20上の多孔の内部に容易に入り込むことができる。その結果、多孔質層間絶縁膜20の表面に存在する多孔を、均一かつ十分に、誘電体材料にて埋め込むことができる。
ここで、上記サイドウォール22aの膜厚は、前駆膜である炭素含有膜22の膜厚と、この炭素含有膜22のエッチング量との均衡により決定されるものであり、特に限定されるものではない。なお、上記炭素含有膜22の膜厚については、後述の製造方法(誘電体膜形成工程)にて詳述する。
ただし、本実施形態では、サイドウォール22a表面の凹凸の段差は5nm以下となっていることが好ましい。これにより、サイドウォール22a上に形成されるバリアメタル層の膜厚を均一にすることができる。この点を考慮すれば、前駆膜である炭素含有膜22をエッチングして得られるサイドウォール22aの膜厚は10nm以下であることが好ましい。この膜厚を有していれば、多孔質層間絶縁膜20表面の多孔をサイドウォール22aで均一かつ十分に埋め込むことができるとともに、配線溝の内部に形成される導電性材料配線25の断面積を広くすることができる。
以下に、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。本実施形態の半導体装置の製造方法では、図2に示すように、上記実施の形態1にて拡散防止膜形成工程を行ったあと、絶縁膜積層工程、配線溝形成工程、副生成物除去工程、誘電体埋込工程、バリアメタル形成工程、配線形成工程、配線表面還元工程、および拡散防止膜形成工程をこの順で行うことにより、2層目の配線構造を有する半導体装置を製造することができる。なお、以下には、2層目の配線構造を有する半導体装置について説明するが、上記絶縁膜積層工程〜拡散防止膜形成工程を繰り返すことによって、所望の数の層構造を有する半導体装置を形成し得ることは、当業者であれば容易に理解するであろう。
まず、図8(a)に示すように、実施の形態1にて説明した製造方法によって製造される半導体装置の拡散防止膜16上に、多孔質層間絶縁膜20が形成される。上記多孔質層間絶縁膜20は低誘電率の絶縁膜であればよく、特に限定されない。例えば、SiOCH膜またはSiOC膜であることが好ましい。上記多孔質層間絶縁膜20の厚さも特に限定されないが、200nm〜500nmであることが好ましい。
また、上記多孔質層間絶縁膜20は、プラズマCVD法によって形成される、非多孔質の層間絶縁膜であるSiO2膜、SiOF膜(またはFSG膜)またはSiOCH膜であってもよい。この場合、上記多孔質層間絶縁膜20の厚さは特に限定されないが、200nm〜500nmであることが好ましい。上記多孔質層間絶縁膜20の形成方法も特に限定されず、適宜公知の方法を用いて形成することができる。例えば、MSQなどに代表されるシロキサン系材料や、それに添加材を添加した材料を、拡散防止膜16上に塗布した後、例えば、以下の1)〜3)の方法のいずれかによって多孔質膜を成膜することができる。1)400℃までの温度にてベーク処理を行う方法、2)紫外線を照射する方法、3)電子線を照射する方法。また、MSQなどに代表されるシロキサン系材料に、TMCTS等の低誘電率膜の形成に用いられる有機ソースとメチルなどを含む有機性の添加材を加えた後、当該材料を用いてプラズマCVD法によって成膜することにより、多孔質層間絶縁膜20を形成することもできる。
上記多孔質層間絶縁膜20上には、更に、SiO2膜(シリコン酸化膜)21が形成される。上記SiO2膜21の形成方法は特に限定されず、適宜公知の方法を用いて形成することができる。例えば、P−CVD法(プラズマCVD法)またはSOG(塗布)などによって形成することができる。このSiO2膜21は、後述の表面層除去工程でエッチングされ、その結果、50〜100nmの範囲の膜厚となればよいので、研磨除去のマージンを考慮して100〜400nmの範囲内で形成されることがより好ましい。
次いで、図8(b)に示すように、リソグラフィー工程の後、レジストをマスクとして用いたドライエッチによって、多孔質層間絶縁膜20およびSiO2膜21に、後述する導電体材料配線25を形成するための配線溝28、および当該導電体材料配線25と上記導電体材料配線15とを接続するための接続配線27を形成するための接続孔29が形成される。この後、拡散防止膜16をドライエッチによって開口する。なお、このとき、上記エッチングによって、C(炭素)やF(フッ素)などを含有する副生成物(ポリマーなど)が産出される。当該副生成物は、以後の工程において好ましくない影響を及ぼす場合がある。したがって、本実施形態では、上記副生成物は除去されることが好ましい。除去方法としては特に限定されないが、アッシング法よって行われることが好ましい。また、上記アッシング法に用いられる気体も特に限定されないが、Ar、Xe、Ne、He、または少なくともこれらの2種類のガスからなる混合ガスであることが好ましい。また、上記気体としてH2を用いることもできる。このような気体は半導体基板などと反応することがないので、半導体基板などを劣化させることなく副生成物を除去することができる。なお、上記気体のみでは、副生成物を十分に除去できない場合には、更に薬液を用いた処理によって副生成物を除去することができる。
次に、図8(b)に示す構造において、上記配線溝28および接続孔29の内壁となる多孔質層間絶縁膜20の表面に存在する多孔を誘電体材料にて埋め込む誘電体埋込工程を実施する。図9(a)〜(c)は、誘電体埋込工程に相当する、図2に示す誘電体膜形成工程および誘電体膜エッチバック工程を、半導体装置の断面構造に基づいて概略説明する工程図である。
まず、図9(a)に示すように、上記配線溝28および接続孔29の内面、ならびにSiO2膜21の表面上に、サイドウォール22aの前駆膜である炭素含有膜22が形成される(誘電体膜形成工程)。上記炭素含有膜22は特に限定されず、1)Cuの拡散防止効果を有する、2)誘電率が低い、3)膜厚均一性、膜厚制御性および被覆性に優れている、および4)Arなどのバイアススパッタエッチによって除去できる、という性質を備えたものであればよい。炭素含有膜22は、1)C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、炭素含有膜22は、O(酸素)を含まないことが好ましい。炭素含有膜22がO(酸素)を含めば、当該O(酸素)が、多孔質層間絶縁膜20中に拡散して当該多孔質層間絶縁膜20を酸化する恐れがあるので、炭素含有膜22は、O(酸素)を含まないことが好ましい。例えば、炭素含有膜22として、SiC膜、SiCH膜、SiCN膜などを用いることができる。SiC膜およびSiCH膜は誘電率が4.0〜4.5であって、誘電率が7であるP−SiN膜と比較して配線間容量の上昇を防ぐことができ、その結果、RC配線遅延を抑制することができる。また、SiCN膜は誘電率が5.2〜5.8であって、SiC膜およびSiCH膜と比較して誘電率が高くなり、配線間容量の上昇を防ぐ効果は低くなるが、本実施の形態において炭素含有膜22として用いることができる。
上記炭素含有膜22は、プラズマCVD法、またはスパッタリング法によって形成される。例えば、酸素を含まない有機ソースガス(例えば、TMSとH2、無機のSiH4とCF4、またはC2F6のCXFY系ガス)を用いたプラズマCVD法によって形成され得る。更に具体的には、例えば、H2またはNH3を含むプラズマ処理によって上記配線溝内部の還元処理を実施した後、酸素を含まないソースガスとNH3とを導入したCVD装置にてSiCN膜を形成することができる。
プラズマCVD法によって炭素含有膜22を形成する場合、膜の形成温度は特に限定されないが、100℃〜400℃の条件下にて形成することが好ましい。また、スパッタリング法によって炭素含有膜22を形成する場合も、膜の形成温度は特に限定されないが、25℃〜300℃の条件下にて形成することが好ましい。上記温度条件下において炭素含有膜22を形成することによって、アモルファス状態の炭素含有膜22を、配線溝や接続孔内部などに形成することができる。炭素含有膜22が多結晶状態であるよりもアモルファス状態である方が、配線溝および接続孔の側面にある凹部の中にまで炭素含有膜22が形成される。その結果、配線溝および接続孔の側面の凹部を十分に被覆することができる。プラズマCVD法またはスパッタリング法によって炭素含有膜22を形成する場合に、上記温度範囲よりも高い温度にて形成すれば、膜中ストレスが高くなることや、多結晶化が進むことによって、炭素含有膜22の表面の凹凸が大きくなる。逆に上記温度範囲よりも低い温度にて炭素含有膜22を形成すれば、炭素含有膜22の安定性が低下し、その結果、当該炭素含有膜22による配線溝および接続孔内部などの被覆性が劣化する。したがって、上記温度範囲において炭素含有膜22を形成することが好ましい。
ここで、上記炭素含有膜22の厚さは特に限定されないが、前述したようにサイドウォール22a(誘電体膜)表面の凹凸の段差は5nm以下となっていることが好ましく、具体的な膜厚は10nm以下となっていることが好ましい。そこで、次の誘電体膜エッチバック工程による膜厚の減少を考慮すれば、炭素含有膜22の厚さは1nm〜30nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましく、8nmであることが最も好ましい。炭素含有膜22の厚さが1nmよりも薄くなれば配線溝28および接続孔29内の凹部が十分に被覆されないために、後の工程にて形成されるバリアメタル膜24の厚さが十分には得られず、導電性材料(例えばCu)の多孔質層間絶縁膜20中への拡散を防止することができない。一方、炭素含有膜22の厚さが30nmよりも厚くなれば、後の工程にて、接続孔29の底面に形成された炭素含有膜22をエッチングにて除去しようとした場合、エッチングの制御が困難になる。その結果、接続孔29の底面に炭素含有膜22が残存してしまい、後に形成される接続配線27および導電体材料配線25の幅が狭くなって配線抵抗が上昇してしまう。
以上のような炭素含有膜22を形成するためには、膜厚および均一性制御が原子レベルで制御できる成膜装置を用いて成膜することが好ましい。
次いで、図9(b)に示すように、不活性ガス23を用いたバイアススパッタ法によって、上記炭素含有膜22に対してエッチバック処理が行われる。上記エッチバック処理は、例えば、バリアメタル成膜装置であるスパッタ装置内の逆スパッタチャンバー内にて行うことができる。不活性ガス23としては、周期表0族の希ガスを少なくとも1種含むことが好ましい。例えば、不活性ガス23としては、Ar、He、XeまたはNeの少なくとも一つを含んでいればよい。また、エッチバックされる炭素含有膜22の厚さは特に限定されないが、配線溝および接続孔の底面上、ならびにSiO2膜21の表面上に形成された炭素含有膜22が除去され、かつ上記配線溝28および配線孔29の側面上に形成された炭素含有膜22が配線溝28の側面を覆って残存するようにエッチバックすればよい。例えば、SiやCを含む炭素含有膜12のArによるスパッタ除去レートから換算して1nm〜30nmの範囲で除去することが好ましい。
このようにして、図9(c)に示すように、配線溝28および接続孔29の側面を覆うように残された炭素含有膜22によってサイドウォール22aが形成される。上記サイドウォール22aの厚さは特に限定されず、配線溝28および接続孔29の側面にある凹部の中にまで炭素含有膜22が形成されて、配線溝の内面の凹凸が解消されて平坦となっていれば、サイドウォールの厚さに依存せず、同等の効果を得ることができる。
このようにして、配線溝28および接続孔29を含む構造の表面に誘電体膜を形成してエッチバックすることにより、誘電体埋込工程が実施される。なお、上述した誘電体埋込工程の具体例は、上記の工程例に限定されないことは言うまでもない。
次いで、図10(a)に示すように、配線溝28および接続孔29の内面上、およびSiO2膜21の表面上に、バリアメタル膜24が形成される(バリアメタル形成工程)。上記バリアメタル膜24の形成方法は特に限定されず、適宜公知の形成方法を用いることができる。例えばスパッタ法やCVD法によって形成することができる。また、上記バリアメタル膜24の材料も特に限定されず、適宜公知の材料によって形成することができる。例えば、バリアメタル膜24は、Ta(タンタル)およびTaN(窒化タンタル)の積層膜として形成することができる。また、上記バリアメタル膜24の厚さも特に限定されないが、10nm〜50nmであることが好ましい。
なお、上記バリアメタル形成工程と、その前段の誘電体膜エッチバック工程とにおいて、工程を実施する雰囲気に酸素が存在すれば、溝埋込型配線を酸化し、その結果、当該溝埋込型配線の抵抗を上昇させるという悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上記誘電体膜エッチバック工程とバリアメタル形成工程とは、連続して無酸素雰囲気下にて行われることが好ましい。上記工程を無酸素雰囲気下で行う方法は、特に限定されず、適宜公知の方法を用いて行うことができる。例えば、真空ポンプを有するトランスファーチャンバによって、上記工程を無酸素雰囲気下にて行うことができる。
次いで、図10(b)に示すように、不活性ガス23を用いたバイアススパッタ法によって、上記バリアメタル膜24に対してエッチバック処理が行われる。上記エッチバック処理は、例えば、バリアメタル成膜装置であるスパッタ装置内の逆スパッタチャンバー内にて行うことができる。不活性ガス23としては、周期表0族の希ガスを少なくとも1種含むことが好ましい。例えば、不活性ガス23としては、Ar、He、XeまたはNeの少なくとも一つを含んでいればよい。また、エッチバックされるバリアメタル膜24の厚さは特に限定されないが、配線溝および接続孔の底面上、ならびにSiO2膜21の表面であって多孔質層間絶縁膜20と反対側の面上に形成されたバリアメタル膜24が除去され、かつ上記配線溝および配線孔の側面上に形成されたバリアメタル膜24が配線溝および接続孔の側面を覆って残存するようにエッチバックすればよい。
次いで、接続孔29および配線溝28内に、それぞれ接続配線27、導電体材料配線25が形成される(配線形成工程)。図11(a)に示すように、配線形成工程では、まず、配線溝28および接続孔29内を含むバリアメタル膜24上に導電体材料配線25となる前駆配線層25aが形成される。上記前駆配線層25aの材料としては特に限定されず、適宜公知の材料を用いることができる。例えば、銅(Cu)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)、Au(金)またはAg(銀)などを用いることが好ましい。これらを前駆動配線層25aの材料として用いれば、導電体材料配線25の電気抵抗を低くすることができる。上述したように、信号遅延は、配線抵抗と、配線間の絶縁膜によって形成される配線間容量によって影響を受ける。半導体装置の微細化が進むと配線間が狭くなり、それに伴って配線間容量が増大する。このとき前駆動配線層25aの材料として上記構成を選択すれば、配線抵抗を低くすることができる。その結果、信号遅延を低く抑えることができる。上記前駆配線層25aの形成方法は特に限定されないが、例えば、導電性材料としてCuを用いる場合には、スパッタ法によってCuのシード膜を形成し(シード膜形成工程)、当該シード膜を電解メッキ法によって配線溝28および接続孔29内に埋め込むことによって前駆配線層25aが形成される。
次いで、図11(b)に示すように、SiO2膜21が表面に露出し、かつ導電体材料配線25が所望の高さに至るまで研磨処理が行われる(表面層除去工程)。上記研磨処理の方法は特に限定されず、適宜公知の方法によって行うことができる。例えば、CMP(化学機械研磨装置)によって行うことができる。また、上記研磨処理の後、導電体材料配線25の表面を洗浄して、CMP処理などによって付着した不純物を除去することが好ましい。
次いで、図11(c)に示すように、まず、上記導電体材料配線25表面に対して還元処理が行われる(配線表面還元工程)。上記還元処理の方法は特に限定されないが、例えば、CVD装置内にて、H2またはNH3を含むガスによって還元処理が行われることが好ましい。上記還元処理の後、導電体材料配線25上およびSiO2膜21上に、拡散防止膜26が形成される(拡散防止膜形成工程)。上記拡散防止膜26は、1)C(炭素)、Si(珪素)およびH(水素)を含有する膜、または2)C(炭素)、Si(珪素)、H(水素)およびN(窒素)を含有する膜、であることが好ましい。このとき、拡散防止膜26は、O(酸素)を含まないことが好ましい。例えば、SiC膜、SiCN膜、これらの膜とSiCO膜の積層膜、またはSiCH膜であることが好ましい。上記拡散防止膜26として、SiC膜、SiCN膜およびSiCO膜の積層膜を用いる場合には、SiCO膜が導電体材料配線25と接することがないように積層することが好ましい。つまり、導電体材料配線25と直接接する側には、SiC膜またはSiCN膜を形成すればよい。上記拡散防止膜26の形成方法も特に限定されず、例えば、プラズマCVD法によって形成することができる。上記拡散防止膜26の膜厚も特に限定されないが、5nm〜50nmであることが好ましい。
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置では、接続配線27によって、導電体材料配線15と導電体材料配線25とが接続されている。そして、図12に示すように、上記接続配線27を形成している接続孔の表面にも、多孔質層間絶縁膜20上にサイドウォール22aおよびバリアメタル膜24が形成されている。本実施形態の半導体装置の製造方法にてサイドウォール22aおよびバリアメタル膜24を形成すれば、ビア開口部の縮小を抑制することが出来るので、接続配線27の抵抗上昇を防止することができる。つまり、ビアを開口後に、多孔質層間絶縁膜20表面の凹部を埋め込むのに必要な最小限の膜厚の炭素含有膜(例えば、10nm以下)を形成するため、ビア開口部の縮小は最低限に抑制できるので、接続配線27の抵抗上昇を防止することができる。またスパッタエッチによって炭素含有膜表面の凹凸の段差を小さく(例えば5nm以下)にすることにより配線抵抗上昇を更に抑制できる。また、バリアメタル形成装置内でスパッタエッチを行えば、エッチ量が少ないため、チャンバー内への負担が少ない。また、本実施の形態の製造方法では、バリアメタル膜形成後、ビア底部のバリアメタル膜はスパッタによって除去されるため、ビア底部に位置するサイドウォール22aおよびバリアメタル膜24には境界が生じない。その結果、接続抵抗の上昇のみならず、ストレスマイグレーションおよびエレクトロマイグレーションを防ぐことが可能になる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。