従来、光ディスク装置においては、記録媒体としての光ディスクに対して音楽、映像、或いは各種データ等の情報を記録し、また当該光ディスクから当該情報を読み出して再生するようになされたものが広く普及している。
かかる光ディスク装置においては、光ディスクを回転させ、当該光ディスク上の所望トラックに対して光ビームの焦点を合わせるよう照射することにより情報の記録を行い、また当該光ビームが反射されてなる反射光ビームを読み取ることにより情報の再生を行うようになされている。
例えば図11に示すように、光ディスク装置1は、制御部2の制御に基づき、光ピックアップ3のレーザダイオード4から光ビームL1を発射し、コリメータレンズ5、偏光ビームスプリッタ6、立ち上げミラー7、1/4波長板8、対物レンズ9を順次介して、当該光ビームL1を光ディスク10の信号記録面10Aに合焦させる。
また光ディスク装置1は、光ビームL1が光ディスク10の信号記録面10Aで反射されてなる反射光ビームL2を、対物レンズ9、1/4波長板8、立ち上げミラー7を順次介して偏光ビームスプリッタ6へ入射させる。
続いて光ディスク装置1は、偏光ビームスプリッタ6の偏光面6Aにおいて当該反射光ビームL2を反射させ、さらにコリメータレンズ11、ホログラム12を順次介して、当該反射光ビームL2をフォトディテクタ13に照射させる。ここで光ディスク装置1は、フォトディテクタ13により検出する反射光ビームL2の光量に応じた検出信号を生成し、所定の信号処理を施すことにより情報を再生する。
ところで光ディスク装置1は、光ディスク10毎の個体差やいわゆる面ブレ等により、対物レンズ9と当該光ディスク10との距離が様々に変化する可能性がある。これを換言すれば、対物レンズ9が光ビームL1を光ディスク10の信号記録面10Aに合焦させる位置(以下、これを合焦位置JFと呼ぶ)は、光ディスク10毎の個体差や1枚の光ディスク10における信号記録面10A上の位置等に応じて変動することになる。
そこで光ディスク装置1では、対物レンズ9をアクチュエータ14によって当該光ディスクに近接又は離隔させる方向に駆動させ、当該対物レンズ9と当該光ディスク10との距離を一定に保つようサーボ制御することにより、光ディスク10の信号記録面10Aに対して光ビームL1を合焦させ続けるようになされている(いわゆるフォーカシング)。
実際上、光ディスク装置1は、フォトディテクタ13により反射光ビームL2の光量を複数の検出領域により検出して複数の検出信号を生成し、これらを制御部2へ送出する。
制御部2は、エラー信号生成部21において、複数の検出信号を用いた演算処理を行うことによりフォーカスエラー信号SFEを生成し、これをサーボ制御部22へ供給する。
ここで、対物レンズ9と光ディスク10との距離とフォーカスエラー信号SFEとの関係は、図13(A)及び(B)に示すように、略S字状の特性曲線Q1となる。
この特性曲線Q1は、図12にも示されているように、対物レンズ9が合焦位置JFの近傍にあるときのみ、当該合焦位置JFからの距離とフォーカスエラー信号SFEの信号レベルとが比例関係にあると見なすことができる(以下、特性曲線Q1がほぼ直線状であると見なし得る領域を検出領域ADと呼ぶ)。
そこで制御部2の不揮発性メモリ(図示せず)には、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルと合焦位置JFからの距離との関係を表す係数COEが予め記憶されている。
実際上、サーボ制御部22は、対物レンズ9が合焦位置の近傍(すなわち検出領域AD内)にあるとき、係数COEを用いた演算に基づいて対物レンズ9から合焦位置JFまでの距離を算出した上で、フォーカスエラー信号SFEを値0に近づけさせるような制御信号SCを生成し、これをアクチュエータ駆動部23へ供給する。
アクチュエータ駆動部23は、制御信号SCに基づいてアクチュエータ駆動信号SAを生成し、これをアクチュエータ14に供給する。これに応じて光ピックアップ3は、アクチュエータ駆動信号SAに基づきアクチュエータ14を駆動する(すなわちサーボ制御する)。
このように制御部2は、フォトディテクタ13からの検出信号に基づいてフォーカスエラー信号SFEを生成し、当該フォーカスエラー信号SFEを基にアクチュエータ駆動信号SAを生成してアクチュエータ14を駆動させ対物レンズ9を合焦位置JFに移動させる、といったフィードバック制御を行うようになされている。
以下では、フォトディテクタ13、制御部2及びアクチュエータ14により形成される閉ループをフォーカスサーボ制御系と呼び、フォーカスエラー信号SFEに応じたアクチュエータ14のフィードバック制御をフォーカスサーボ制御とも呼ぶ。
ところで光ディスク装置1の制御部2は、光ディスク10が装填または排出される場合等、当該光ディスク10と対物レンズ9との接触による破損を防止する等の観点から、当該対物レンズ9を当該光ディスク10から離隔させ、検出領域ADの外側まで遠ざけるようになされている。
このため制御部2は、光ディスク10が装填されると、まずアクチュエータ14により対物レンズ9を当該光ディスク10に近接させ、大雑把に合焦位置JFの近傍(すなわち検出領域AD内)まで移動させる、いわゆる引き込み動作を行ってからフォーカスサーボ制御を開始するようになされている。
具体的に制御部2は、アクチュエータ駆動部23を介してアクチュエータ14を制御すると共に、フォーカスエラー信号検出回路21を介して得られるフォーカスエラー信号SFEを監視しながら、対物レンズ9を一定の速度で光ディスク10に近接させていく。
続いて制御部2は、図13に示すように、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルがほぼ0からある程度の信号レベルまで上昇した後に0未満の開始レベルLsまで低下したことを検出した時点で(以下、この時点を時刻0とする)、対物レンズ9が合焦位置JFを僅かに通過した、すなわち高い確度で検出領域AD内に位置していると判断し、アクチュエータ14に対するフォーカスサーボ制御を開始する。
ところで制御部2では、引き込み動作をできるだけ短い時間で完了することにより、光ディスク10に対する情報の記録や再生を素早く開始したいといった要望がある。すなわち光ディスク装置1では、例えば図13に破線で示したように、フォーカスサーボ制御の開始以降(すなわち時刻0以降)、対物レンズ9ができるだけ短い時間で合焦位置JFに収束すること、換言すれば良好な過渡応答が得られることが望ましい。
ここで、光ディスク装置1のフォーカスサーボ制御系をモデル化すると、図14に示すようなブロック線図として表すことができる。
一般に光ディスク装置の制御器では、低域強調フィルタと高域位相進みフィルタから成る2次フィルタが用いられる。これに応じてフォーカスサーボ制御系30の制御器30Kは、低域フィルタ値fc1及び高域フィルタ値fc2といった2つの状態変数を有している。一方、制御対象30Pは、アクチュエータ14と対応しており、位置x及び速度vといった2つの状態変数を有している。
光ディスク装置1では、図13に示したように、対物レンズ9の移動中に合焦位置JF以外の位置からフォーカスサーボ制御を開始することになる。このことを踏まえ、ここではフォーカスサーボ制御を開始するタイミング(すなわち時刻0)において制御対象の位置x及び速度vが0以外の値であった場合の応答、いわゆる初期値応答について検討する。
図14のブロック線図を状態空間表現により表すと、図15に示すようなブロック線図となる。この図15において、フォーカスサーボ制御系31の状態は、次に示す(1)式のように、低域フィルタ値fc1、高域フィルタ値fc2、位置x及び速度vといった4つの状態変数により表すことができる。
時刻0(図14)以降の時刻tにおけるフォーカスサーボ制御系31の出力y(t)は、ラプラス逆変換を用いることにより、次に示す(2)式のように表すことができる。因みにこの出力y(t)は、合焦位置JFを基準とした対物レンズ9の位置に相当する値である。
この(2)式において、状態X(0)はフォーカスサーボ制御系31全体の初期値を表していることから、この状態X(0)に応じて出力y(t)が変化することがわかる。
このようなフォーカスサーボ制御系31において、制御器31Kの制御器初期値f(0)、すなわち低域フィルタ値fc1(0)及び高域フィルタ値fc2(0)は、一般的に値「0」とされている。
ここで、フォーカスサーボ制御系31のように表される光ディスク装置1において、フォーカスサーボ制御を開始したときのプルイン信号SPIを図16(A)に、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルを図16(B)に、実際にアクチュエータ14に与えられる駆動信号の信号レベルを図16(C)に示す。
因みにプルイン信号SPIは、フォトディテクタ13(図11)における全ての検出信号の和を表しており、合焦位置JFの近傍のみで0より大きい値となるため、対物レンズ9が合焦位置JFの近傍に位置しているか否かを検出する際に用いられるようになされている。
光ディスク装置1は、図16(B)に示すように、時刻0においてフォーカスサーボ制御を開始した場合、いわゆるオーバーシュートが発生しており、対物レンズ9を合焦位置JF(すなわちフォーカスエラー信号SFEが値0となる位置)に収束させるまでに時間を要する結果となっている。
これに対して、制御器31Kの初期値を適切な値に設定することにより、出力y(t)が短時間に収束するような良好な応答を得る、いわゆる初期値補償法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、制御部2のフォーカスサーボ制御回路23においてディジタル演算処理が行われることを考慮し、光ディスク装置1のフォーカスサーボ制御系をディジタルフィルタにより構成すると、図17のようになる。
この図17において、フォーカスサーボ制御系32では、低域フィルタ部32Lのレジスタ32RL及び高域フィルタ部32Hのレジスタ32RHに対して、初期値として低域フィルタ値fc1(0)及び高域フィルタ値fc2(0)がそれぞれ与えられることになる。
初期値補償法では、次に示す(3)式のように、制御器の初期値(すなわち低域フィルタ値fc1(0)及び高域フィルタ値fc2(0))が制御対象の初期値(すなわち位置x(0)及び速度v(0))の関数として与えられるものとしている。
ここで、制御対象の位置xに関しては、上述したようにフォーカスエラー信号SFE及び係数COEを基に算出することができる。また速度vに関しては、制御対象の位置xを時間の経過と共に連続的に算出し、その変化量及び経過時間を基に算出することができる。
すなわち、制御対象の初期値である位置x(0)及び速度v(0)は、時刻0における対物レンズ9の位置x及び速度vとして、フォーカスエラー信号SFEを基に算出することができる。
また(3)式の行列αは、光ディスク装置1におけるアクチュエータ14の応答特性や対物レンズ9の質量等に応じて定められ、評価値関数最小による設計法や零点指定による設計法等を用いることにより算出することができる。
すなわち初期値補償法では、フォーカスサーボ制御を開始するタイミングにおける位置x(0)及び速度v(0)を用いて(3)式に従った演算処理を行うことにより、出力y(t)が最も良好となるような低域フィルタ値f
c1(0)及び高域フィルタ値f
c2(0)を算出することができる。
特許第2685622号公報(第4〜5頁)
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)本発明の基本原理
まず、本発明の基本原理について、図11との対応部分に同一符号を付した図1に示す光ディスク装置40を例に説明する。
(1−1)光ディスク装置の構成
図1において光ディスク装置40は、光ディスク装置1(図11)と同様、光ディスク10に対して情報の記録又は再生を行い得るようになされている。
この光ディスク装置40は、光ディスク装置1の制御部2と対応する制御部41により全体を統括制御するようになされている。制御部41は、制御部2と比較してサーボ制御部22に代えてサーボ制御部42を有している点が異なっているものの、他は当該制御部2と同様に構成されている。
因みにアクチュエータ14は、いわゆる2軸アクチュエータとなっており、対物レンズ9をフォーカス方向及びトラッキング方向の2軸方向へ駆動し得るようになされている。
制御部41は、フォトディテクタ13から供給される検出信号に基づいてフォーカスエラー信号SFEを生成し、サーボ制御部42により当該フォーカスエラー信号SFEを基にアクチュエータ駆動信号SAを生成して、アクチュエータ14をフィードバック制御する(すなわちフォーカスサーボ制御する)ようになされている。
またサーボ制御部42は、ディジタル制御によるフォーカスサーボ制御を行っている。このため、光ディスク装置40におけるフォーカスサーボ制御系の基本的な構成は、図2に示すブロック線図のように、加算器50A、制御器50K及び制御対象50Pを有するフォーカスサーボ制御系50として表すことができる。
フォーカスサーボ制御系50では、加算器50Aにおいて、所定位置を基準とした対物レンズ9の位置を表す出力yと、当該対物レンズ9光が本来あるべき目標値r(対物レンズ9の合焦位置JFに相当する)との差が誤差信号e(フォーカスエラー信号SFEに相当する)として算出され、制御器50Kに入力される。
制御器50Kは、フォーカスサーボ制御回路43に対応しており、入力された誤差信号eに応じて制御器出力u(アクチュエータ駆動信号SAに相当する)を生成し、これを基にアクチュエータ14に対応する制御対象50Pを制御する。
実際上、フォーカスサーボ制御系50では、誤差信号eが値「0」となるように制御対象50Pを制御することにより、出力yを目標値rに近づけていく。
因みにこのことは、光ディスク装置40において、フォーカスエラー信号SFEを値「0」とするようにアクチュエータ駆動信号SAを生成し、対物レンズ9を合焦位置JFに近づけていくことを表している。
ここで制御器50Kは、状態変数Acz、Bcz、Ccz及びDcz並びにディジタル制御系におけるクロックkを用いた状態空間表現により、次に示す(4)式及び(5)式のように表すことができる。
また制御対象50Pは、状態変数Apz、Bpz及びCpz並びにクロックkを用いた状態空間表現により、次に示す(6)式及び(7)式のように表すことができる。
さらにフォーカスサーボ制御系50は、同様の状態空間表現により、これらの(4)〜(7)式を組み合わせた(8)式及び(9)式のように表すことができる。
この(8)式及び(9)式を基に、状態空間表現によるブロック線図を構成すると、図3に示すように、制御器51C及び制御対象51Pを有するフォーカスサーボ制御系51として表すことができる。
因みに、状態変数Acz、Bcz、Ccz及びDcz、並びに状態変数Apz、Bpz及びCpzの具体的な値は、アクチュエータ14の各種特性値や対物レンズ9の質量等によって定まるものであり、例えば光ディスク装置40の設計時等に算出され、不揮発性メモリ(図示せず)に予め記憶されるようになされている。
(1−2)初期値補償法の適用
次に、上述した初期値補償法をフォーカスサーボ制御系51に対して適用することを検討する。ここでは、非特許文献1に記載されている「零点指定による初期値補償サーボ系の設計」を基にしている。
山口高司、他2名,「磁気ディスク装置ヘッド位置決めサーボ系におけるサーボモード切り替え時の初期値補償問題の基礎検討」,計測自動制御学会論文集Vol.29,No.7,p792-799,1993年
まず、フォーカスサーボ制御系51における出力yは、クロックk=0としたときの初期値(Xcz(0),Xpz(0))と所定の伝達関数とを用いることにより、次に示す(10)式のように表すことができる。
因みに(10)式では、フォーカスサーボ制御系51がディジタル制御系であり離散時間による制御を行うことから、z変換が用いられている。
一方、初期値補償法では、次に示す(11)式のように、制御器51Cの初期値Xc(0)が制御対象51Pの初期値Xp(0)の関数として与えられるものと定義する。
ところで、ディスク装置における制御器では、上述したように低域強調フィルタと高域位相進み位相フィルタからなる2次フィルタが用いられる。また、制御対象であるアクチュエータ14(図1)の状態は、クロックkを用いて対物レンズ9の位置x(k)及び速度v(k)により表される。
ここで、制御器51Cにおける各フィルタのレジスタ値を低域フィルタ値fL(k)及び高域フィルタ値fH(k)とし、光ディスク装置40におけるフォーカスサーボ制御系に合わせて(11)式の各項を適宜置き換えると、4つの係数k11、k12、k21及びk22を用いて、次に示す(12)式のように表すことができる。
また、(10)式の伝達関数は、(11)式を用いることにより、次に示す(13)式のように表すことができる。
ここで、4つの係数ω1(z)、ω2(z)、ω3(z)及びω4(z)を用いることにより(12)式の一部を、次に示す(14)式のように定義する。
この(13)式及び(14)式を用いることにより、(6)式に示した出力yは、次に示す(15)式のように表すことができる。
この(15)式において伝達関数が分数の形となっていることから、出力yの初期値に相当する初期値応答は、制御系の極である分母式の根と、当該(15)式の零点に相当する分子式の根とによって決まることがわかる。
このことを踏まえ、初期値補償法では、基本的な方針として、行列αを表す係数k11、k12、k21及びk22を適宜変化させて零点の位置を変更することにより、良好な初期値応答を得ることを考える。一般的には、いわゆる遅い極又は振動的な極を零点により相殺するような係数k11、k12、k21及びk22を算出する。
ここでは、所望の零点を実現する係数k11、k12、k21及びk22を算出する。指定する零点をそれぞれ零点z1及びz2とすると、(15)式の分子式より、次に示す(16a)式及び(16b)式、(17a)式及び(17b)式のような2組の連立方程式を得ることができる。
(16a)式及び(16b)式の連立方程式を解くことにより、次の(18)式及び(19)式のように係数k21及びk11をそれぞれ求めることができる。
同様に(17a)式及び(17b)式の連立方程式を解くことにより、次の(20)式及び(21)式のように係数k22及びk12をそれぞれ求めることができる。
因みに係数k11、k12、k21及びk22は、(18)〜(21)式に示されているように、フォーカスサーボ制御系における各値が定まることにより予め算出し得る値であるため、(18)〜(21)式に従って算出された上で、予め不揮発性メモリ(図示せず)に記憶されるようになされている。
初期値補償法では、このように(18)〜(21)式に従って求められる係数k11、k12、k21及びk22と、サーボ制御を開始するタイミング(すなわち時刻0)における対物レンズ9の位置x(0)及び速度v(0)とを(12)式に代入することにより、時刻0における制御器51Cの低域フィルタ値fL(0)及び高域フィルタ値fH(0)(以下、これらを制御器初期値f(0)と呼ぶ)を算出する。
フォーカスサーボ制御系51では、このように初期値補償法に従って算出された制御器初期値を制御器51Cに与えてフォーカスサーボ制御を開始することにより、対物レンズ9が短時間で合焦位置JFに収束するような、良好な応答を得ることができる。
(1−3)フォーカスエラー信号に基づいた初期値
ところで、光ディスク装置40(図1)には、対物レンズ9の位置x及び速度vを測定するためのセンサ等が設けられていないため、当該位置x及び速度vを直接的に得ることができない。
しかしながら光ディスク装置40では、光ディスク装置1(図11)と同様、図12(A)及び(B)に示したように、検出領域AD内において、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルと対物レンズ9の合焦位置JFからの距離とがほぼ比例関係にある。
そこで光ディスク装置40では、このような関係を利用し、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルが、合焦位置JFを基準とした位置xを表しているものと見なす。便宜上、以下ではフォーカスエラー信号SFEの信号レベルを換算位置e(k)とする。
また、次の(22)式のように、クロックk毎の換算位置e(k)の差を、1クロック毎の時間間隔であるサンプリング時間Tによって除算することにより、換算速度ev(k)を算出することができる。
この換算速度ev(k)は、対物レンズ9が図12(B)における検出領域AD内にある場合、当該対物レンズ9の速度vを表していると見なすことができる。
ここで(12)式における位置xを換算位置e(k)に置き換え、速度vを換算速度ev(k)に置き換えることにより、次に示す(23)式が得られる。
ところで、クロック0において制御器51C(図3)から出力される制御器出力(すなわち制御器出力初期値)u(0)は、低域フィルタ値fL(0)及び高域フィルタ値fH(0)を用いることにより、次に示す(24)式のように表される。
ここで、制御対象51Pの状態を位置x(k)及び速度v(k)により表すとCpz=(1 0)となることを踏まえ、Ccz=(Ccz1 Ccz2)と定義し、さらに(23)式の関係を用いることにより、(24)式を換算位置e(k)及び換算速度ev(k)についてまとめると、次に示す(25)式のようになる。
すなわち光ディスク装置40(図1)に対応したフォーカスサーボ制御系51(図3)では、この(25)式からわかるように、フォーカスエラー信号SFEの信号レベルに基づいた換算位置e(k)及び換算速度ev(k)を基に、制御器出力初期値u(0)を算出することができる。
(1−4)初期値設定部を有するフォーカスサーボ制御系の構成
ところで光ディスク装置40は、フォーカス引き込み動作を行う際、アクチュエータ14により与え得る推力に上限があることが考慮された上で、フォーカスサーボ制御を開始するようになされている。
光ディスク装置40におけるフォーカスサーボ制御系のブロック線図を詳細に表すと、図2と対応する図4に示すフォーカスサーボ制御系60となる。このフォーカスサーボ制御系60は、図2に示したフォーカスサーボ制御系50と比較して、制御器50Kに初期値を設定する初期値設定部61が付加されている点が異なっている。
実際上、光ディスク装置40(図1)は、フォーカス引き込み動作を行う際、アクチュエータ14により対物レンズ9を所定の一定速度で当該光ディスク10に近接させていく。
このとき光ディスク装置40の制御部42は、フォーカスエラー信号SFEを監視し、当該フォーカスエラー信号SFEの信号レベルがある程度の信号レベルまで上昇した後に0未満の開始レベルLsに達したことを検出すると、対物レンズ9が特性曲線Q1(図12(B))の検出領域ADに相当する範囲に入ったものと見なし、この時点を時刻0として、フォーカスサーボ制御系60(図4)におけるフォーカスサーボ制御を開始する。
これに応じてフォーカスサーボ制御系60の初期値設定部61は、加算器50Aにより算出される誤差信号e(すなわち換算位置e(k))を取得して換算速度算出部62へ供給する。換算速度算出部62は、(22)式に従い、換算位置e(k)を基に換算速度ev(k)を逐次算出し、これを制御器初期値算出部63へ供給する。
制御器初期値算出部63は、換算位置e(k)及び換算速度ev(k)と、(18)〜(21)式に従い算出された係数k11、k12、k21及びk22とを(23)式に代入することにより、フォーカスサーボ制御を開始する時点における制御器50Kの制御器初期値f(0)、すなわち制御器50Kの低域フィルタ値fL(0)及び高域フィルタ値fH(0)を算出し、これらを当該制御器50Kに供給する。
これに応じて制御器50Kは、制御器初期値f(0)を用いて(25)式に従い制御器出力初期値u(0)を算出し、これを制御対象50Pへ出力することにより、フォーカスサーボ制御のループ処理を開始する。
このとき初期値設定部61は、制御器50Kにより算出された制御器出力初期値u(0)を飽和検出部64へ供給する。
飽和検出器64は、制御対象50Pが制御器出力u(k)に応じた正しい出力y(k)を出力し得る、すなわち当該制御対象50Pが正常に応答し得る制御器出力u(k)の上限値として、出力上限値ulを記憶している。この出力上限値ulは、アクチュエータ駆動部23から供給し得る電流やアクチュエータ14(図1)を構成するコイルに流し得る電流の上限値を基に、予め定められた値である。
因みに、制御器出力u(k)が出力上限値ul以上であった場合、アクチュエータ14において推力の飽和が生じることになるため、制御対象50Pは、初期値補償法による制御器初期値f(0)を基に算出された制御器出力u(k)ではなく、出力上限値ulが供給された場合に相当する出力y(k)を出力することになる。この場合、光ディスク装置40は、初期値補償法の前提が崩れることになるため、その後の応答が悪化することになる。
飽和検出部64は、制御器出力u(k)をこの出力上限値ulと比較し、当該制御器出力u(k)が当該出力上限値ul以上であった場合、再算出指示CRを制御器初期値算出部63へ送出する。
制御器初期値算出部63は、1クロックが経過した時点で再度時刻0に設定し、このときの(23)式に従い制御器50Kの制御器初期値f(0)を再度算出し、これを制御器50Kに供給する。
制御器50Kは、新たな制御器初期値f(0)を基に新たな制御器出力u(0)を算出し、これを制御対象50Pへ供給することにより、フォーカスサーボ制御のループ処理を開始し直す。
その後フォーカスサーボ制御系60は、制御器出力u(0)が出力上限値ul以上となる間、1クロック毎に換算位置e(k)及び換算速度ev(k)を少しずつ変化させながら、フォーカスサーボ制御を開始し直す処理を繰り返し、制御器出力u(0)が出力上限値ul未満となった時点でフォーカスサーボ制御をそのまま継続する。
すなわち制御器初期値算出部63は、フォーカスサーボ制御を開始するべく制御器50Kに対して制御器初期値f(0)を設定した際、当該制御器50Kから出力された制御器出力uが出力上限値ul以上であった場合、その次のクロックkにおいて、当該クロックkにおける換算位置e(k)及び換算速度ev(k)を用いて制御器初期値f(0)を再度算出するようになされている。
このことを換言すれば、フォーカスサーボ制御系60は、フォーカスサーボ制御を開始する際に、初期値補償法に従い算出した制御器初期値f(0)に基づく制御器出力u(0)が出力上限値ul以上であった場合、初期値補償法の前提が崩れ良好な応答が得られない状態であると見なし、次のクロックにおいて、更新された換算位置e(k)及び換算速度ev(k)(すなわち対物レンズ9の位置x及び速度v)に応じた新たな制御器初期値f(0)を再度算出することにより、初期値補償法を適用させるべくフォーカスサーボ制御を開始し直すことになる。
その後フォーカスサーボ制御系60は、制御器出力u(0)が出力上限値ul未満となった段階で、初期値補償法に基づく良好な応答を得られる状態になったものと見なし、直前のクロックにおいて開始したフォーカスサーボ制御をそのまま継続することにより、初期値補償法に基づいた良好な応答を得ることができる。
このようにフォーカスサーボ制御系60は、フォーカスサーボ制御を開始する際、初期値設定部61により制御器50Kに対して初期値補償法に基づいた制御器初期値f(0)を設定し、このときの制御器出力u(0)が出力上限値ul以上であった場合、制御器初期値f(0)を制御器50Kに対して設定し直すことにより、初期値補償法による良好な応答を得るようになされている。
(2)ビデオカメラレコーダの構成
次に、本発明の一実施形態として、本発明を適用したビデオカメラレコーダについて説明する。
(2−1)外観構成
図5に示すように、ビデオカメラレコーダ70は、筐体71の内部に各種部品が組み込まれており、ユーザにより当該筐体71とストラップ72との間に指や手の甲が差し込まれた上で当該筐体71が把持される等して、様々な場所に持ち運ばれ得るようになされている。
ビデオカメラレコーダ70は、映像を撮像するための撮像レンズ73や撮像した映像を映像信号に変換する撮像素子(後述する)を有すると共に、当該映像信号を記録する光ディスク(後述する)を装填するための光ディスク装填部74を有し、さらに図示しない操作部、表示部、バッテリー等を有している。
因みにビデオカメラレコーダ70は、映像を撮像する場所まで持ち運ばれるだけでなく、撮像しながら移動され、或いは方向や傾きが変更されることも考慮されている。
ところでビデオカメラレコーダ70は、図1との対応部分に同一符号を付した図6に示すような回路構成を有しており、統括制御部75によって全体を統括制御するようになされている。
例えばユーザによる撮像操作を受け付けた場合、統括制御部75は、撮像レンズ72を介して撮像素子76により映像を撮像させ、その映像に応じた映像信号を生成して映像信号処理回路77へ供給させる。映像信号処理回路77は、映像信号に対して所定の映像処理や圧縮符号化処理等を施すことにより映像データを生成し、これをバッファメモリ78に一時記憶させる。
記録信号生成回路79は、バッファメモリ78から適宜映像データを読み出し、当該映像データに対して所定の変調処理等を施すことにより光ディスク10への記録に適した記録データを生成し、これを光ピックアップ3のレーザダイオード4へ供給する。これに応じて光ピックアップ3は、当該記録データに応じた光ビームを光ディスク10の信号記録面10Aに照射し、当該記録データを記録する。
このようにビデオカメラレコーダ70は、撮像レンズ72を介して撮像した映像を記録データとして光ディスク10に記録し得るようになされている。
(2−2)フォーカスサーボ制御部の回路構成
ビデオカメラレコーダ70は、光ディスク装置40と同様のサーボ制御部42を有しており、そのフォーカスサーボ制御系をモデル化すると、当該光ディスク装置40と同様のフォーカスサーボ制御系60(図4)となる。
実際上、このサーボ制御部42は、図7に示すような回路構成を有している。サーボ制御部42は、エラー信号生成部21から供給されるプルイン信号SPI、フォーカスエラー信号SFE及びトラックエラー信号STEをそれぞれアナログ・ディジタル(A/D)変換器42AによりそれぞれディジタルデータでなるプルインデータDPI、フォーカスエラーデータDFE及びトラックエラーデータDTEに変換する。
またサーボ制御部42は、フォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部42B及びトラックサーボ制御を行うトラックサーボ制御部42Cを有している。
例えばビデオカメラレコーダ70(図5)は、光ディスク装填部74に新たな光ディスク10が装填された場合や映像の記録を開始する場合等に、光ディスク10の回転を開始した後、フォーカス引き込み動作を行ってからフォーカスサーボ制御を開始するようになされている。
この場合、フォーカスサーボ制御部42Bのフォーカスサーボモードコントローラ81は、マルチプレクサ83を切換制御し、駆動信号生成部82により生成される“Search Wave”と呼ばれる引込用の波形でなるフォーカスサーボデータDFSを、当該マルチプレクサ83からディジタル・アナログ(D/A)変換器42Dへ供給する。
このときディジタル・アナログ変換器42Dは、フォーカスサーボデータDFSをアナログ信号でなるフォーカスサーボ信号SFSに変換し、これをアクチュエータ駆動部23へ供給する。これに応じてアクチュエータ駆動部23は、フォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを生成してアクチュエータ14へ供給することにより、対物レンズ9(図6)を光ディスク10の遠方から一定速度で近接させる。
フォーカスサーボモードコントローラ81は、フォーカスエラーデータDFEを監視しており、例えば図8(B)に示すように、フォーカスエラーデータDFE(すなわちフォーカスエラー信号SFE)の信号レベルがほぼ0からある程度の信号レベルまで上昇した後に0未満の開始レベルLsまで低下したことを検出した時点で、フォーカスサーボ制御を開始すべきと判断し、この時点を時刻0としてフィルタ初期値算出部85に対してフィルタ初期値の算出指示を供給する。
速度算出部84は、フォーカスサーボ制御系60(図4)における換算速度算出部62に対応しており、1クロック毎のフォーカスエラーデータDFEの差分値を基にフォーカス速度データDVFを随時算出し、これをフィルタ初期値算出部85へ供給する。
フィルタ初期値算出部85は、フォーカスサーボ制御系60(図4)における制御器初期値算出部63に対応しており、フォーカスエラーデータDFEを換算位置e(k)とみなすと共にフォーカス速度データDVFを換算速度ev(k)とみなし、(23)式に従ってフィルタ初期値FF0(すなわち低域フィルタ値fL(0)及び高域フィルタ値fH(0))を算出し、これらをフィルタ部86のフィルタ値記憶部86Mに記憶させる。
フィルタ部86は、フォーカスエラーデータDFE及びフィルタ初期値FF0を用いて(24)式に従った演算を行うことにより、制御器出力u(0)に相当するフィルタ出力データDFUを算出し、これをマルチプレクサ83及び飽和検出部87へ供給する。
フォーカスサーボモードコントローラ81は、マルチプレクサ83を切換制御することにより、フィルタ出力データDFUをフォーカスサーボデータDFSとしてディジタル・アナログ変換器42Dへ供給し、フォーカスサーボ信号SFSに変換させる。これに応じてアクチュエータ駆動部23は、当該フォーカスサーボ信号SFSに基づいたフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを生成してアクチュエータ14へ供給し、対物レンズ9を駆動させる。
ところでアクチュエータ駆動部23は、上述したようにアクチュエータ14に対して供給し得る駆動信号に上限値がある。このためアクチュエータ駆動部23は、フィルタ出力データDFUが当該上限値に応じたしきい値(すなわち出力上限値ULF)以上であった場合、例えば図8(C)に示すように、当該フィルタ出力データDFUではなく、当該出力上限値ULFに応じたフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを生成することになる。
一方、飽和検出部87は、フォーカスサーボ制御系60(図4)における飽和検出器64に対応しており、予め記憶している出力上限値ULFとフィルタ出力データDFUとを比較する。ここで飽和検出部87は、フィルタ出力データDFUが出力上限値ULF以上であった場合、再度フィルタ初期値を算出させる指示である再算出指示CRをフィルタ初期値算出部85へ供給する。
フィルタ初期値算出部85は、再算出指示CRを供給された場合、次のクロックにおいて、(23)式に従ってフィルタ初期値FF0を再度算出し、これらをフィルタ部86のフィルタ値記憶部86Mに記憶させる。
フィルタ部86は、フォーカスサーボ制御を開始し直すべく、この時点(クロック)におけるフォーカスエラーデータDFEを用いて(24)式に従った演算を行うことにより、フィルタ出力データDFUを再度算出し、これをマルチプレクサ83及び飽和検出部87へ再度供給する。マルチプレクサ83は、フィルタ出力データDFUをフォーカスサーボデータDFSとしてディジタル・アナログ変換器42Dへ再度供給し、フォーカスサーボ信号SFSに変換させる。
この結果、アクチュエータ駆動部23は、当該フォーカスサーボ信号SFSに基づいたフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを生成してアクチュエータ14へ供給し、対物レンズ9を駆動させる。
その後、サーボ制御部42のフォーカスサーボ制御部42Bは、フィルタ出力データDFUが出力上限値ULF以上となる間、1クロック毎にフォーカスエラーデータDFE及びフォーカス速度DVFを少しずつ変化させながら、フィルタ初期値FF0を算出し直してフォーカスサーボ制御を開始し直す処理を繰り返し、フィルタ出力データDFUが出力上限値ULF未満となった時点でフォーカスサーボ制御をそのまま継続する。
この結果、フォーカスサーボ制御部42Bは、図8(B)に示したように、フォーカスエラー信号SFEにおいてオーバーシュートを殆ど生じることなく、短い時間で値「0」に収束させることができ、すなわち対物レンズ9を短い時間で合焦位置JFに収束させることができる。
(2−3)フォーカスサーボ制御開始処理手順
次に、ビデオカメラレコーダ70のフォーカスサーボ制御部42Bがフォーカスサーボ制御を開始する際のフォーカスサーボ制御開始処理手順RT1について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。
実際上フォーカスサーボ制御部42Bは、光ディスク装填部74(図5)に光ディスク10が新たに装填され回転が開始される等して統括制御部75(図6)からフォーカス引き込み動作を行う指示を受けると、フォーカスサーボ制御開始処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。
ステップSP1においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカスサーボモードコントローラ81の制御によってマルチプレクサ83の出力を切り換えさせることにより、フォーカスサーボデータDFSを駆動信号生成部82からディジタル・アナログ変換器42Dへ供給させ、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカスサーボデータDFSをディジタル・アナログ変換したフォーカスサーボ信号SFSを基にアクチュエータ駆動部23を介してアクチュエータ14を駆動させ、対物レンズ9を光ディスク10の遠方から一定の速度で当該光ディスク10に近接させていき、次のステップSP3へ移る。
このときフォーカスサーボ制御部42Bは、1クロックごとにアナログ・ディジタル変換器42Aから供給されるフォーカスエラーデータDFEを基に、速度算出部84によりフォーカス速度データDVFを算出し、これをフィルタ初期値算出部85へ供給する。
ステップSP3においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカスサーボモードコントローラ81により、1クロックごとにアナログ・ディジタル変換器42Aから供給されるフォーカスエラーデータDFEの信号レベルがほぼ0からある程度の信号レベルまで上昇した後に0未満の開始レベルLsまで低下したか否かを判定する。
ここで否定結果が得られると、このことは対物レンズ9が未だ合焦位置JFの近傍に到達していないことを表しており、このときフォーカスサーボ制御部42Bは再度ステップSP2へ戻り、当該対物レンズ9が合焦位置JFの近傍に到達するのを待ち受ける。
これに対して肯定結果が得られると、このことは対物レンズ9が合焦位置JFの近傍に到達したためフォーカスサーボ制御を開始すべきであることを表しており、このときフォーカスサーボ制御部42Bは次のステップSP4へ移る。
ステップSP4においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フィルタ初期値算出部85によって、フォーカスエラーデータDFE及びフォーカス速度データDVFを用いてフィルタ初期値FF0を算出し、次のステップSP5へ移る。
ステップSP5においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フィルタ初期値FF0をフィルタ部86へ供給してフィルタ値記憶部86Mに記憶させ、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカスサーボモードコントローラ81によってマルチプレクサ83の出力を切り換えさせることにより、フィルタ部86から供給されるフィルタ出力データDFUをフォーカスサーボデータDFSとして出力させるようにし、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7においてフォーカスサーボ制御部42Bは、フィルタ部86によってフィルタ初期値FF0及びフォーカスエラーデータDFEを用いて(25)式に従った演算を行うことにより、フィルタ出力データDFUを算出し、これをマルチプレクサ83及び飽和検出部87へ供給して、次のステップSP8へ移る。
ステップSP8においてフォーカスサーボ制御部42Bは、飽和検出部87により、フィルタ出力データDFUが予め記憶している出力上限値ULFを超えたか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはフィルタ出力データDFUがアクチュエータ駆動部23における上限を超えた値に相当するものであり、当該アクチュエータ駆動部23からは当該フィルタ出力データDFUではなく出力上限値ULFに相当するフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAが出力されており、対物レンズ9に対して初期値補償法に基づかないフォーカスサーボ制御が行われることになる。
このときフォーカスサーボ制御部42Bは、次のクロックにおいて初期値補償法に基づいた初期値を算出し直すことによってフォーカスサーボ制御を開始し直すべく、ステップSP4へ戻る。
一方、ステップSP8において否定結果が得られると、このことはフィルタ出力データDFUに相当するフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAがアクチュエータ駆動部23から正しく出力されており、対物レンズ9に対して初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御が行われることになる。
このときフォーカスサーボ制御部42Bは、現在のフィルタ初期値FF0を用いてフォーカスエラーデータDFEを基にフィルタ出力データDFUを算出し、これを基に生成されるフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAによって対物レンズ9を駆動するといった一連の処理を繰り返すべく、再度ステップSP7へ戻る。
その後フォーカスサーボ制御部42Bは、ステップSP7−SP8の処理を繰り返すことにより、初期値補償法に基づく正常なフォーカスサーボ制御を行うようになされている。
(2−4)トラックサーボ制御部の回路構成
ところでサーボ制御部42(図7)のトラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボ制御部42Bと対応した回路構成を有しており、アナログ・ディジタル変換器42Aにおいてトラックエラー信号STEがディジタル信号に変換されたトラックエラーデータDTEを基にトラックサーボ制御を行うようになされている。
因みにトラックエラー信号STEは、フォーカスエラー信号SFEと類似した信号特性を有しており、オントラック(すなわち対物レンズ9から照射される光ビームが光ディスク10の所望トラック上に照射される)位置の近傍においてのみ、当該オントラック位置からの距離に応じた信号レベルを示すようになされている。
実際上トラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボモードコントローラ81と対応するトラックサーボモードコントローラ91によってマルチプレクサ93を切換制御し、駆動信号生成部92により生成されるトラック引き込み用の「トラックブレーキ」に対応したトラックサーボデータDTSを、当該マルチプレクサ93からディジタル・アナログ変換器42Dへ供給する。
因みにトラックブレーキとは、トラバース速度(光ディスク10に照射する光ビームのスポットがトラック(ランド/グルーブ)を横切る速度)の極性が判別可能である場合に、所定のトラックブレーキ電圧によってトラックアクチュエータ(図示せず)を駆動させておき、トラックエラー信号のゼロクロス周期が所定のしきい値以上となり、且つゼロクロス時における当該トラックエラーデータDTEの極性(すなわち増加又は減少)が所望の極性と一致することを検出した時点で、トラックサーボ制御を開始する制御手法である。トラックサーボ制御部42Cでは、このトラックブレーキを用いることにより、トラックサーボ制御の開始時にトラバース速度を所定値以下に抑えて光ディスク10のランド/グルーブを正しく判定し得るようになされている。
ディジタル・アナログ変換器42Dは、トラックサーボデータDTSをアナログ信号でなるトラックサーボ信号STSに変換し、これをアクチュエータ駆動部23へ供給する。これに応じてアクチュエータ駆動部23は、トラックアクチュエータ駆動信号STAを生成してアクチュエータ14へ供給することにより、対物レンズ9(図6)を光ディスク10の径方向(すなわち外周側又は内周側)に移動させる。
トラックサーボモードコントローラ91は、トラックエラーデータDTEを監視しており、当該トラックエラーデータDTEのゼロクロス周期が所定のしきい値以上となり、且つゼロクロス時における当該トラックエラーデータDTEの極性が所望の極性と一致することを検出した時点で、トラックサーボ制御を開始すべきであると判断し、この時点を時刻0としてフィルタ初期値算出部95に対してフィルタ初期値FT0の算出指示を供給する。
速度算出部94は、速度算出部84に対応しており、1クロック毎のトラックエラーデータDTEの差分値を基にトラック速度データDVTを随時算出し、これをフィルタ初期値算出部95へ供給する。
フィルタ初期値算出部95は、フィルタ初期値算出部85に対応しており、トラックエラーデータDTEを換算位置e(k)とみなすと共にトラック速度データDVTを換算速度ev(k)とみなし、(24)式に従ってフィルタ初期値FT0を算出し、これらをフィルタ部96のフィルタ値記憶部96Mに記憶させる。
因みにフィルタ初期値算出部95は、トラックサーボ制御系の各値に応じて(18)〜(21)式により予め算出されたトラックサーボ制御用の(すなわちフォーカスサーボ制御用とは異なる)係数k11、k12、k21及びk22を記憶しており、これらを用いてフィルタ初期値FT0を算出するようになされている。
フィルタ部96は、トラックエラーデータDFEを用いて(24)式に従った演算を行うことにより、制御器出力u(0)に相当するフィルタ出力データDTUを算出し、これをマルチプレクサ93及び飽和検出部97へ供給する。
トラックサーボモードコントローラ91は、マルチプレクサ93を切換制御することにより、フィルタ出力データDTUをトラックサーボデータDTSとしてディジタル・アナログ変換器42Dへ供給し、トラックサーボ信号STSに変換させる。これに応じてアクチュエータ駆動部23は、当該トラックサーボ信号STSに基づいたトラックアクチュエータ駆動信号STAを生成してアクチュエータ14へ供給し、対物レンズ9を光ディスク10の径方向へ移動させる。
一方、飽和検出部97は、飽和検出部87に対応しており、フィルタ出力データDTUが出力上限値ULT以上であった場合、再度フィルタ初期値FT0を算出させる指示である再算出指示CRをフィルタ初期値算出部95へ供給する。
フィルタ初期値算出部95は、再算出指示CRを供給された場合、次のクロックにおいてフィルタ初期値を再度算出し、これらをフィルタ部96のフィルタ値記憶部96Mに記憶させる。フィルタ部96は、この時点におけるトラックエラーデータDTE及びフィルタ初期値を用いてフィルタ出力データDTUを再度算出し、これをマルチプレクサ93及び飽和検出部97へ再度供給する。
この結果、アクチュエータ駆動部23は、トラックサーボ信号STSに基づいたトラックアクチュエータ駆動信号STAを生成してトラックアクチュエータ(図示せず)へ供給し、対物レンズ9を光ディスク10の径方向へ移動させる。
その後、サーボ制御部42のトラックサーボ制御部42Cは、フィルタ出力データDTUが出力上限値ULT以上となる間、1クロック毎にトラックエラーデータDTE及びトラック速度DVTを少しずつ変化させながら、トラックサーボ制御を開始し直す処理を繰り返し、フィルタ出力データDTUが出力上限値ULT未満となった時点でトラックサーボ制御をそのまま継続する。
この結果、トラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボ制御部42Bの場合と同様に、トラックエラー信号STEにおいてオーバーシュートを殆ど生じることなく、短い時間で値「0」に収束させることができ、すなわち対物レンズ9を短い時間でトラック(ランド/グルーブ)に追従させることができる。
(2−5)トラックサーボ制御開始処理手順
ここで、ビデオカメラレコーダ70のトラックサーボ制御部42Cがトラックサーボ制御を開始する際のトラックサーボ制御開始処理手順RT2について、図9と対応する図10に示すフローチャートを用いて説明する。
因みにトラックサーボ制御部42Cでは、フォーカスサーボ制御系と異なるトラックサーボ制御系における状態定数Ccz及びDczが予め算出され、(18)〜(21)式に従い係数k11、k12、k21及びk22がいずれも算出された上で、それぞれ不揮発性メモリ(図示せず)に記憶されている。
実際上トラックサーボ制御部42Cは、光ディスク装填部74(図5)に光ディスク10が新たに装填される等して統括制御部75(図6)からトラック引き込み動作を行う指示を受けると、トラックサーボ制御開始処理手順RT2を開始し、ステップSP11へ移る。
ステップSP11においてトラックサーボ制御部42Cは、トラックサーボモードコントローラ91の制御によってマルチプレクサ93の出力を切り換えさせることにより、トラックサーボデータDTSを駆動信号生成部92からディジタル・アナログ変換器42Dへ供給させ、次のステップSP12へ移る。
ステップSP12においてトラックサーボ制御部42Cは、トラックサーボデータDTSをディジタル・アナログ変換したトラックサーボ信号STSを基にアクチュエータ駆動部23を介してアクチュエータ14を駆動させることによりトラックブレーキをかけ、次のステップSP13へ移る。
このときトラックサーボ制御部42Bは、1クロックごとにアナログ・ディジタル変換器42Aから供給されるトラックエラーデータDTEを基に、速度算出部94によりトラック速度データDVTを算出し、これをフィルタ初期値算出部95へ供給する。
ステップSP13においてトラックサーボ制御部42Cは、トラックサーボモードコントローラ91により、1クロックごとにトラック引き込み条件が成立したか否か、すなわちアナログ・ディジタル変換器42Aから供給されるトラックエラーデータDTEのゼロクロス周期が所定のしきい値以上となり、且つ当該トラックエラーデータDTEの極性が所望の極性と一致しているか否かを判定する。
ここで否定結果が得られると、このことはトラック引き込みをまだ開始すべきでないことを表しており、このときトラックサーボ制御部42Cは再度ステップSP12へ戻り、トラック引き込み条件が成立するのを待ち受ける。
これに対して肯定結果が得られると、このことはトラック引き込み動作を行いトラックサーボ制御を開始すべきであることを表しており、このときトラックサーボ制御部42Cは次のステップSP14へ移る。
ステップSP14においてトラックサーボ制御部42Cは、フィルタ初期値算出部95によって、トラックエラーデータDTE及びトラック速度データDVTを用いてフィルタ初期値FT0を算出し、次のステップSP15へ移る。
ステップSP15においてトラックサーボ制御部42Cは、フィルタ初期値FT0をフィルタ部96へ供給してフィルタ値記憶部96Mに記憶させ、次のステップSP16へ移る。
ステップSP16においてトラックサーボ制御部42Cは、トラックサーボモードコントローラ91によってマルチプレクサ93の出力を切り換えさせることにより、フィルタ部96から供給されるフィルタ出力データDTUをトラックサーボデータDTSとして出力させるようにし、次のステップSP17へ移る。
ステップSP17においてトラックサーボ制御部42Cは、フィルタ部96によってフィルタ初期値FT0及びトラックエラーデータDTEを用いてフィルタ出力データDFUを算出し、これをマルチプレクサ93及び飽和検出部97へ供給して、次のステップSP18へ移る。
ステップSP18においてトラックサーボ制御部42Cは、飽和検出部97により、フィルタ出力データDTUが予め記憶している出力上限値ULTを超えたか否かを判定する。
ここで肯定結果が得られると、このことはフィルタ出力データDTUがアクチュエータ駆動部23における上限を超えた値に相当するものであり、当該アクチュエータ駆動部23からは当該フィルタ出力データDTUではなく出力上限値ULTに相当するトラックアクチュエータ駆動信号STAが出力されており、対物レンズ9に対して初期値補償法に基づかないトラックサーボ制御が行われることになる。
このときトラックサーボ制御部42Cは、次のクロックにおいて初期値補償法に基づいた初期値を算出し直すことによってトラックサーボ制御を開始し直すべく、ステップSP14へ戻る。
一方、ステップSP18において否定結果が得られると、このことはフィルタ出力データDTUに相当するトラックアクチュエータ駆動信号STAがアクチュエータ駆動部23から正しく出力されており、対物レンズ9に対して初期値補償法に基づいたトラックサーボ制御が行われることになる。
このときトラックサーボ制御部42Cは、現在のフィルタ初期値FT0を用いてトラックエラーデータDTEを基にフィルタ出力データDTUを算出し、これを基に生成されるトラックアクチュエータ駆動信号STAによって対物レンズ9を駆動するといった一連の処理を繰り返すべく、再度ステップSP17へ戻る。
その後トラックサーボ制御部42Cは、ステップSP17−SP18の処理を繰り返すことにより、初期値補償法に基づく正常なトラックサーボ制御を行う。
このようにビデオカメラレコーダ70のトラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボ制御におけるフォーカスサーボ制御開始処理手順RT1の場合と同様に、トラックサーボ制御開始処理手順RT2に従い、フィルタ出力データDTUが出力上限値ULTを超えなくなるまでフィルタ部96の初期値を算出し直すことにより、最終的に初期値補償法に基づいたトラックサーボ制御を開始するようになされている。
(3)動作及び効果
以上の構成において、ビデオカメラレコーダ70のフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカス引き込み動作を行う際、フォーカスエラーデータDFE(すなわちフォーカスエラー信号SFE)の信号レベルがほぼ0からある程度の信号レベルまで上昇した後に0未満の開始レベルLsまで低下したことを検出した時点でフォーカスサーボ制御を開始すべきであると判断し、フォーカスエラーデータDFEを換算位置e(k)とみなすと共にフォーカス速度データDVFを換算速度ev(k)とみなし、(23)式に従ってフィルタ初期値FF0を算出して、フォーカスサーボ制御を開始させる。
ここでフォーカスサーボ制御部42Bは、飽和検出部87によってフィルタ出力データDFUが出力上限値ULF以上であること、すなわちアクチュエータ14における推力の飽和を検出した場合、当該フィルタ出力データDFUが当該出力上限値ULF未満となるまで、フィルタ初期値FF0を算出しフォーカスサーボ制御を開始し直す処理を繰り返す。
従ってフォーカスサーボ制御部42Bは、初期値補償法に基づきフィルタ86のフィルタ初期値FF0を算出した上で、アクチュエータ14における推力の飽和を検出しなくなるまで当該フィルタ初期値の算出及びフォーカスサーボ制御の開始をやり直すことができるので、最終的に初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始することができ、対物レンズ9を短時間で合焦位置JFに収束させるような、良好な応答を得ることができる(図8(B))。
すなわちフォーカスサーボ制御部42Bは、単純に初期値補償法に基づいてフィルタ86のフィルタ初期値FF0を一回算出しただけではアクチュエータ14における推力の飽和により良好な応答を得られなかったことに対し(図18(B))、対物レンズ9の位置が少しずつ変わる度に当該フィルタ初期値FF0を算出し直すことにより、アクチュエータ14における推力の飽和が生じなくなるタイミングから初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始することができる。
この場合、フォーカスサーボ制御部42Bは、図8(C)に示したように、フォーカスサーボ制御を開始する時刻0から最終的に初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始するまでの間、アクチュエータ駆動部23から出力上限値ULFに応じたフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを供給し続けることになる。
これを換言すれば、フォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカスサーボ制御を開始してから対物レンズ9に対して最大推力を与え続け、初期値補償法に基づいたフォーカスアクチュエータ駆動信号SFAを実際に供給し得るようになった時点で、初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始することになる。
すなわちフォーカスサーボ制御部42Bは、アクチュエータ14による最大推力を加え続け、初期値補償法による(正常な)フォーカスサーボ制御を開始し得る最も早いタイミングで当該初期値補償法によるフォーカスサーボ制御を開始することになる。このためフォーカスサーボ制御部42Bは、アクチュエータ駆動部23における出力上限値ULFが定められた条件下において、最短時間で良好な応答を得ることができる。
またフォーカスサーボ制御部42Bでは、初期値補償法によるフィルタ初期値の算出を1回のみ行う場合と比較して、結果的にフォーカス引き込み動作における失敗の可能性を大幅に低下することが期待できる。
ところで、アクチュエータ14における推力の飽和を防ぐには、例えば引き込み動作時のみ一時的にフォーカスサーボ制御を弱める(すなわちアクチュエータ14の推力を抑える)といった手法も考えられる。
しかしながらビデオカメラレコーダ70は、ユーザの手に把持されたまま光ディスク10に対する情報の記録を行うことになるため、記録中や引き込み動作中にユーザの不注意やアクシデント等により外部から衝撃が加わることが想定される。
このような場合、引き込み動作時のみフォーカスサーボ制御を弱める手法では、引き込み動作中に外部からの衝撃等によって対物レンズ9の位置がずれてしまった場合、いずれも引き込み動作の再開に時間を要することになってしまう。
これに対してビデオカメラレコーダ70のサーボ制御部42は、常に強いフォーカスサーボ制御を行うことができるため、引き込み動作中に外部からの衝撃等を受けたとしても、強いフォーカスサーボ制御によって「フォーカスサーボを外れ難くする」ことができると共に、仮にフォーカスサーボが外れた場合であっても比較的短い時間で引き込み動作を再開することができる。
また、光ディスク装置においては、引き込み動作時に一時的に光ディスクの回転数を下げ、結果的に弱いフォーカスサーボ制御によりアクチュエータにおける推力の飽和を防止する、といった手法も取り得る。しかしながら、光ディスクの回転速度を変更するには、ある程度の時間を要することになってしまう。
一方、ビデオカメラレコーダ70は、一度撮像した映像を撮像し直す機会は無いと考えられるため、生成した映像データを漏れなく光ディスク10に記録する必要がある。このためビデオカメラレコーダ70は、バッファメモリ78を設けることにより映像データをある程度蓄積しておくことができるものの、その容量には限りがある。
このため光ディスク装置を搭載したビデオカメラレコーダは、引き込み動作時に光ディスクの回転速度を下げるなどして時間を要してしまった場合、映像データをバッファメモリから溢れさせる危険性があり、この場合、当該バッファメモリから溢れた分の映像データを失うことになってしまう。
これに対してビデオカメラレコーダ70では、光ディスク10の回転速度を低下させることなく引き込み動作を行っているため、アクチュエータ14における推力の飽和状態を利用しながら初期値補償法により短い時間で当該引き込み動作を完了することができ、撮像した映像データを光ディスク10に記録できずに失ってしまう危険性を極めて低く抑えることができる。
また、トラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボ制御部42Bと同様、トラックアクチュエータにおける推力の飽和を検出した場合、フィルタ出力データDTUが出力上限値ULT未満となるまで、フィルタ初期値FT0を算出しトラックサーボ制御を開始し直す処理を繰り返す。
この結果、トラックサーボ制御部42Cは、フォーカスサーボ制御部42Bと同様に、最終的に初期値補償法に基づいた正常なトラックサーボ制御を開始することができ、このとき最短時間で良好な応答を得ることができる。
以上の構成によれば、ビデオカメラレコーダ70のフォーカスサーボ制御部42Bは、フォーカス引き込み動作を行う際、フィルタ初期値FF0を算出して初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始し、フィルタ出力データDFUと出力上限値ULFとを比較することによってアクチュエータ14における推力の飽和を検出した場合、フィルタ出力データDFUが出力上限値ULF未満となるまで、フィルタ初期値FF0を算出しフォーカスサーボ制御を開始し直す処理を繰り返すことにより、最終的に初期値補償法に基づいたフォーカスサーボ制御を開始することができ、対物レンズ9を短時間で合焦位置JFに収束させるような、良好な応答を得ることができる。
(4)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、非特許文献1に記載されている「零点指定による初期値補償サーボ系の設計」を基に係数k11、k12、k21及びk22を算出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば当該非特許文献1に記載されている「評価関数最小化による設計法」等、種々の算出方法に従って当該係数k11、k12、k21及びk22を算出するようにしても良い。
また上述した実施の形態においては、フォーカスエラー信号SFEの特性曲線Q1が図12(B)に示したような「S字曲線」を描く場合について述べたが、本発明はこれに限らず、検出領域ADがほぼ直線となっていれば、他の部分におけるフォーカスエラー信号SFEの特性曲線が種々の形状を描くようになっていても良い。
さらに上述した実施の形態においては、フィルタ初期値算出部85(図7)において(23)式に4つの係数k11、k12、k21及びk22並びに換算位置e(k)及び換算速度ev(k)を代入する、いわゆる初期値補償法に従ってフィルタ初期値FF0を算出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フォーカスエラーデータDFE及び所定の係数等を用いた他の演算手法によりフィルタ部86に設定すべきフィルタ初期値FF0を算出するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、フォーカスサーボ制御を開始した後、飽和検出部87によって1クロックごとに出力上限値ULFとフィルタ出力データDFUとを比較するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該出力上限値ULFと当該フィルタ出力データDFUとの比較を数クロックごと等の所定間隔ごとに行うようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、本発明をビデオカメラレコーダ70のフォーカスサーボ制御系において、光ディスク10が装填され回転が開始された後にフォーカス引き込み動作を行う際に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光ディスク10が2層以上の信号記録層を有する場合の、フォーカスを合わせる信号記録層を切り換える、いわゆるフォーカスジャンプを行った後のフォーカス引き込み動作を行う際に適用し、或いはディフェクト(光ディスク10上の異物や傷)等により一時的にプルイン信号SPIの信号レベルが下がった際にフォーカスサーボ制御を一時的に中断する、いわゆるサーボミュートの後にフォーカス引き込み動作を行う際に適用する等、種々の要因に応じてフォーカス引き込み動作を行う際に適用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、本発明を光ディスク装置40におけるトラックサーボ制御系において、光ディスク10の回転開始後にトラック引き込み動作を行う際に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光ディスク10におけるトラックを切り換える場合の、切換後のトラックに光ビームを追従させる、いわゆるトラックジャンプを行った後のトラック引き込み動作を行う際に適用し、或いはディフェクト(光ディスク10上の異物や傷)等により一時的にプルイン信号SPIの信号レベルが下がった際にトラックサーボ制御を一時的に中断する、いわゆるサーボミュートの後にトラック引き込み動作を行う際に適用する等、種々の要因に応じてトラック引き込み動作を行う際に適用するようにしても良い。
さらには、光ディスク装置40におけるフォーカスサーボ制御系又はトラッキングサーボ制御系に限らず、磁気ディスク装置におけるヘッド位置決めサーボ制御系、或いは種々のサーボ制御系において初期値を算出した上でサーボ制御を開始するような場合に本発明を適用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、誤差信号生成部としてのエラー信号生成部21と、初期値算出部としてのフィルタ初期値算出部85と、駆動信号生成部としてのフィルタ部86及びアクチュエータ駆動部23と、検出部及び再算出指示部としての飽和検出部87とによってサーボ制御装置としての制御部41を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる誤差信号生成部と、初期値算出部と、駆動信号生成部と、検出部と、再算出指示部とによってサーボ制御装置を構成するようにしても良い。
1、40……光ディスク装置、2、42……サーボ制御部、3……光ピックアップ、9……対物レンズ、10……光ディスク、10A……信号記録面、13……フォトディテクタ、14……アクチュエータ、21……エラー信号生成部、22、42……サーボ制御部、23……アクチュエータ駆動部、30、31、32、50、51……フォーカスサーボ制御系、42B……フォーカスサーボ制御部、42C……トラックサーボ制御部、50A……加算器、50K……制御器、50P……制御対象、61……初期値設定部、62……換算速度算出部、63……制御器初期値算出部、64……飽和検出部、70……ビデオカメラレコーダ、72……撮像レンズ、76……撮像素子、84、94……速度算出部、85、95……フィルタ初期値算出部、86、96……フィルタ部、87、97……飽和検出部、SFE……フォーカスエラー信号、DFE……フォーカスエラーデータ、STE……トラックエラー信号、DTE……トラックエラーデータ、FF0、FT0……フィルタ初期値、DFU、DTU……フィルタ出力データ、JF……合焦位置。