JP2007332191A - セルロース誘導体、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤、並びにそれらを用いたセルロース体フィルム、偏光板保護膜、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

セルロース誘導体、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤、並びにそれらを用いたセルロース体フィルム、偏光板保護膜、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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考浩 加藤
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Abstract

【課題】光学補償フィルム等を形成する高分子化合物と良好な相溶性を示し、簡便な製造工程で製造することができ、優れた光学特性を有するフィルムとすることができるセルロース誘導体、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤を提供する。
【解決手段】セルロースアセテートオリゴマーを芳香族カルボン酸又はヘテロ芳香族カルボン酸によってエステル化して得られるセルロース誘導体、並びに当該誘導体を含む高分子組成物の光学フィルムとしての利用。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース誘導体、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤、並びにそれらを用いたセルロース体フィルム、偏光板保護膜、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料に関する。詳しくは、高分子化合物と良好な相溶性を有し、光学異方性の値と波長分散を制御することができるセルロース誘導体、それを含有する光学補償フィルム用改質剤、およびそれらを用いたセルロース体フィルム、偏光板保護膜、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料に関する。
液晶表示装置に用いられる位相差板は、各種表示モードのカラーTFT液晶表示装置等において広視野角での高コントラスト比と色シフトとを改善する目的で広く使用されている。この位相差板の種類には、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板(以下、「1/4λ板」という。)、および直線偏光の偏光振動面を90°変換する1/2波長板(以下、「1/2λ板」という。)等がある。しかし、従来の位相差板は、単色光に対しては、光線波長の1/4λまたは1/2λの位相差に調整可能であるが、可視光域の光線が混在している合成波である白色光に対しては、各波長での偏光状態に分布が生じ、有色の偏光に変換されるという問題がある。これは、位相差板を構成する材料が、位相差について波長分散性(本発明において「波長分散性」とは、各波長の光線における偏光状態(複屈折に起因する進相軸と遅相軸とでの位相差)のばらつきの度合をいい、そのばらつきが大きいとき波長分散性が高いという。)を有することに起因する。
この様な問題を解決するため、広い波長域の光に対して均一な位相差を与え得る広帯域位相差板が種々検討されている。例えば、複屈折光の位相差が1/4波長である1/4波長板と、複屈折光の位相差が1/2波長である1/2波長板とを、それぞれの光軸が交差した状態で貼り合わせた位相差板が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、光学的位相差値が160〜320nmである位相差板を少なくとも2枚、それぞれの遅相軸が互いに平行でも直交でもない角度で積層してなる位相差板が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記の位相差板を製造するには、二枚の高分子フィルムの光学的向き(光軸や遅相軸)を調節するという煩雑な工程が必要になる。高分子フィルムの光学的向きは、一般にシート状あるいはロール状フィルムの縦方向または横方向に相当する。シートあるいはロールの斜め方向に光軸や遅相軸を有する高分子フィルムは、工業的に大量に生産するのが困難である。さらに、二つの高分子フィルムの光学的向きを平行でも直交でもない角度に設定する必要がある。従って、これらの位相差板を製造するためには、二種類の高分子フィルムを所定の角度にカットしてチップを得、このチップを貼り合わせる工程を経て製造しなければならない。チップの貼り合わせ工程等は、操作が煩雑であり、軸ズレによる品質低下が起きやすい。また、歩留まりが低くなり、コストが増大し、汚染による劣化も起きやすい。さらに、高分子フィルムの光学的位相差値を厳密に調節することも困難であり、品質の低下等がより起きやすい。
このような問題を解決するために、位相差板を積層しない、一枚の位相差板での広帯域λ/4板の作製方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
この方法は、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の複屈折性を有するモノマー単位を共重合させた高分子フィルムを用い一軸延伸によって作製するものである。この延伸した高分子フィルムは逆波長分散性(本発明において「逆波長分散性」とは、特定の波長の光線における面内レターデーション(Re1)と長波長の光線における面内レターデーション(Re2)の絶対値が共に正であって、Re1をRe2で除した値(Re1/Re2)が1.0未満となる性質をいう。)を有するために、一枚の位相差フィルムで広帯域λ/4板を作製することができ、上記のような問題点を解決できるが、得られる位相差値の範囲が狭いため何層もフィルムを積層しなければ十分な光学特性が得られない。その結果、偏光板が分厚く重くなる。また、フィルムを積層する工程で光軸ズレの発生や異物混入等の発生を防止する必要があり、製造が煩雑であるという問題もある。
また、セルロース体フィルムの上層に重合性液晶化合物を塗布、乾燥、重合し、この硬化膜を剥離後セルロース体フィルムのみを150℃にて20%延伸することで逆波長分散フィルムが作製されている(特許文献4)。しかし、この方法においても、製造が煩雑であるという問題は解消できない。
特開平10−68816号公報 特開平10−90521号公報 国際公開第00/2675号パンフレット 特開2005−242293号公報
上記問題点に鑑み本発明の目的は、光学補償フィルム等を形成する高分子化合物と良好な相溶性を示し、簡便な製造工程で製造することができ、優れた光学特性を有するフィルムとすることができるセルロース誘導体(例えば、所望の逆波長分散性を有する位相差板を作製することができるセルロース誘導体)、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤を提供することにある。また、このセルロース誘導体を用いた、上記のような優れた光学特性を有するセルロース体フィルム及び偏光板保護膜、さらにそれらを用いた液晶表示装置を提供することにある。さらには、上記のセルロース体フィルムを用いたハロゲン化銀写真感光材料の提供を目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の剤をフィルムに添加し延伸することにより、該フィルムにおける波長分散を逆分散とすることができることを見いだし本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1) 下記一般式(I)で表されることを特徴とするセルロース誘導体、
一般式(I)
Figure 2007332191
[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。L、LおよびLはそれぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−NR−(Rは脂肪族基または芳香族基を表す。)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表し、nは5以上50以下の自然数を表す。ただし、セルロース誘導体分子中にn個づつ存在する置換基−L−R、−L−Rまたは−L−Rは構成単位ごとに異なっていてもよく、セルロース誘導体分子中の−L−R、−L−Rおよび−L−Rの3n個の置換基の少なくとも一つが、HO−L−R、HO−L−RまたはHO−L−Rとした場合のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値が2000以上となる置換基である。]
(2) 前記モル吸光係数の最大値が5000以上である前記(1)記載のセルロース誘導体、
(3) セルロース誘導体分子中に存在するR、RおよびRの3n個の置換基の少なくとも一つが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜42の芳香族基(Ar)、または下記一般式(III)もしくは(IV)で表される基である(1)または(2)記載のセルロース誘導体、
Figure 2007332191
[式中、XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、または−NR−(Rは水素原子または炭素原子数1〜6の低級アルキル基を表す。)を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。pは0〜4の整数であり、Rが複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。]
Figure 2007332191
[式中、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。qは0〜3の整数、rは0〜4の整数であり、R10またはR11が複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。]
(4) 前記nが5以上40以下の自然数である(1)〜(3)のいずれか一項に記載のセルロース誘導体、
(5) 前記L、LおよびLが、それぞれ独立して、単結合または−CO−である(1)〜(4)のいずれか一項に記載のセルロース誘導体、
(6) 前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のセルロース誘導体と、高分子化合物とを含有させたことを特徴とする高分子組成物、
(7) 前記高分子化合物としてセルロース化合物を含有させた(6)記載の高分子組成物、
(8) 前記セルロース化合物がセルロースアシレートである(7)に記載の高分子組成物、
(9) 前記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の高分子組成物からなることを特徴とするセルロース体フィルム、
(10) 配向処理により、配向方向に対する550nmにおける面内レターデーション(Re(550))を正とし、かつ特定波長における面内レターデーション(Re(λ))の比について下記数式(I)および(II)を満足させた(9)に記載のセルロース体フィルム、
数式(I) 0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(II) 1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
(11) 前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のセルロース誘導体からなるセルロース体フィルム用改質剤、
(12) 前記(9)または(10)に記載のセルロース体フィルムよりなる偏光板保護膜、
(13) 前記(9)または(10)に記載のセルロース体フィルムを備えた液晶表示装置、及び
(14) 前記(9)または(10)に記載のセルロース体フィルムを有するハロゲン化銀写真感光材料
を提供するものである。
本発明のセルロース誘導体は光学補償フィルム等を形成する高分子化合物と良好な相溶性を示し、フィルム製造に用いることにより、これまで困難であり複雑な製造工程でしかなしえなかった所望の逆波長分散性のフィルムを簡便に製造しうるという優れた効果を奏する。また、本発明のセルロース誘導体、それを含有する高分子組成物及びセルロース体フィルム用改質剤によれば、上記のような優れた光学特性を有するセルロース体フィルム、偏光板保護膜、及び液晶表示装置、さらにはハロゲン化銀写真感光材料とすることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセルロース誘導体(本発明において、「セルロース誘導体」とは、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に目的の置換基を導入して得られたセルロース骨格を有する化合物をいい、「セルロースオリゴマー誘導体」ということもある。)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
Figure 2007332191
以下、一般式(I)で表されるセルロース誘導体について詳細に説明する。
上記一般式(I)において、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。セルロース誘導体分子中にn個づつ存在する置換基−L−R、−L−Rまたは−L−Rは構成単位ごとに異なっていてもよく、セルロース誘導体分子中の−L−R、−L−Rおよび−L−Rの3n個の置換基の少なくとも一つが、HO−L−R、HO−L−RおよびHO−L−Rとした場合のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値が2000以上となる置換基である。当該モル吸光係数の最大値は、好ましくは5000以上であり、より好ましくは5000〜100000、最も好ましくは7000〜30000である。本発明の効果を得る上で、モル吸光係数は大きい方が好ましいが、着色を避けるため、可視域(波長420〜700nmの領域)でのモル吸光係数の最大値が1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。
上記一般式(I)において、R、RおよびRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。このときR、RおよびRの組み合わせとして、水素原子/芳香族基の2元系、または水素原子/脂肪族基/芳香族基の3元系の組み合わせからなることが好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。
、LおよびLはそれぞれ独立に単結合、−CH=CH−、―C≡C―、−O−、−CO−、−NR−(Rは脂肪族基または芳香族基を表す。)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表す。それぞれのL、LおよびLが、−CH=CH−、―C≡C―、−O−、−CO−および−NR−の組み合わせである場合、その組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR−および−O−から選ばれるものの組み合わせが好ましい。なかでも、L、LおよびLが、単結合または−CO−であるものが好ましい。nは5以上50以下の自然数を表す。nは5〜40が好ましく、20〜40がより好ましい。
以下に前述の脂肪族基について詳細に説明する。
脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜12のものが好ましく、1〜8のものがより好ましく、1〜5のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル、tert−ブチル基、アミル基、iso−アミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。
以下に前述の芳香族基について詳細に説明する。
芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、シンナモイル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。芳香族ヘテロ環基について、ヘテロ環の具体例としていえば、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ベンゾジチオール類などが挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、中でもピリジル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
また、以下に前述の置換基Tに関して詳細に説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明のセルロース誘導体においては、一般式(I)で表される化合物中、R、RおよびRの3n個の置換基の少なくとも1つが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜42の芳香族炭化水素基(Ar)、または下記一般式(III)及び(IV)のいずれかで表される基であることが好ましい。
炭素原子数6〜42の芳香族基(Ar)としては、特に制限されないが、例えば、5員環の芳香族複素環基、6員環の芳香族複素環基および芳香族炭化水素基ならびにその組み合わせを好適に挙げることができる。なお、その組み合わせとは、単結合により結合したもの(例えば、ビフェニル等)や縮合(例えば、ナフチル等)を意味する。好ましくは、5員環および6員環を1〜3つ有する芳香族基である。例えば、5員環の芳香族複素環基としては、フラン、ピロール、チオフェン、およびそれらを構成する炭素原子を窒素原子に置換したものを、6員環の芳香族複素環基としては、ピリジン環を、6員環の芳香族炭化水素基はベンゼン環を挙げることができる。芳香族基(Ar)の具体的としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、オキサゾリル基、およびそれらの組み合わせ等を好適に挙げることができ、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、オキサゾリル基、およびそれらの組み合わせである。置換基として好ましいのは前述の置換基Tと同様であり、中でもシアノ基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)が好ましく、シアノ基、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)がより好ましい。
Figure 2007332191
式中、XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、または−NR−(Rは水素原子または炭素原子数1〜6の低級アルキル基を表す。)を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。置換基として好ましいのは前述の置換基Tと同様であり、中でもシアノ基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)が好ましく、シアノ基、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)がより好ましい。pは0〜4の整数であり、好ましくは0〜2、より好ましくは1〜2である。pが2以上である場合は、Rはそれぞれ独立である。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。
Figure 2007332191
式中、R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。置換基として好ましいのは前述の置換基Tと同様であり、中でもアシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、が好ましく、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)がより好ましい。qは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2、より好ましくは0または1である。qが2以上である場合は、R10はそれぞれ独立である。rは0〜4の整数であり、好ましくは0〜2、より好ましくは1〜2である。rが2以上である場合は、R11はそれぞれ独立である。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。
一般式(I)で表されるセルロース誘導体の還元性末端である1位に結合する末端基、及び非還元性末端である4位に結合する末端基は、特に制限されるものではない。ただし、合成上、および本発明の効果を得る上で、前記一般式中、非還元性末端である4位に結合する末端基としては、−O−L−R、−O−L−Rまたは−O−L−Rと同様の基を好ましく挙げることができ、前記一般式中、還元性末端である1位に結合する末端基としては、−L−R、−L−Rまたは−L−Rと同様の基を好ましく挙げることができる。
本発明のセルロース誘導体は、全置換度が2.0〜3.0であることが好ましく、2.2〜2.8であることがより好ましい(本発明において全置換度とは、セルロース誘導体の構成単位あたり、その2位、3位および6位のいずれかがエステル化している割合を表し、0〜3の範囲の数値となる。)。
また、前記のHO−L−R、HO−L−RまたはHO−L−Rとした場合のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値が2000以上となる置換基(上記置換基(Ar)または一般式(III)もしくは(IV)で表される基が好ましい。)の置換度は、0.05〜0.6が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.2〜0.4が特に好ましい(本発明において置換度とは、セルロース誘導体の構成単位あたり、2位、3位および6位のいずれかに目的の置換基が置換している割合を表し、0〜3の範囲の数値となる。)。
本発明のセルロース誘導体の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお下記化学式中、Rは一般式(I)の−L−R、−L−R、および−L−Rを表す。「置換基1」「置換基2」は2位、3位、及び6位のいずれかに導入した置換基Rを識別する番号である。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、*の部分は酸素原子との結合手を表す。
Figure 2007332191
Figure 2007332191
Figure 2007332191
本発明のセルロース誘導体の合成は、セルロースもしくはセルロースアシレートを原料として、通常の方法で行うことができる。
<高分子組成物>
本発明の高分子組成物は本発明のセルロース誘導体と高分子化合物(重量平均分子量50000〜500000のものが好ましい。)とを含有してなる。本発明の高分子組成物に含まれる高分子化合物は通常用いられる高分子化合物であれば特に制限はない。例えば、エステル、カーボネート、オレフィン、アセチレン、シクロオレフィン、ノルボルネンなどからなる高分子化合物またはセルロース化合物(本発明において「セルロース化合物」とはセルロースを含み、一般式(I)で表される化合物以外のセルロース誘導体をいう。)が挙げられ、好ましくはセルロース化合物である。
本発明の高分子組成物からフィルムを作製するとき、一般式(I)で表される化合物を光学フィルム用のレターデーション制御剤(特に、レターデーション上昇および波長分散制御剤)として機能させることができ、セルロース体フィルム用改質剤として用いることができる(本発明において「剤」とは単一化合物及び組成物を含む意味に用い、本発明のセルロース体フィルム用改質剤は一般式(I)で表される化合物単体で用いてもよく、例えば、A12、A15、A18などと混合した組成物として用いてもよい。改質剤を組成物とするとき改質剤の混合量は特に限定されないが、例えば一般式(I)で表される化合物を0.5〜15質量%含有させることが好ましい。)。特に延伸によるRe発現性および波長分散に優れたフィルムを得るためのレターデーション制御剤として、本発明のセルロース誘導体を用いることが好ましい。
本発明の高分子組成物における、一般式(I)で表される化合物の含有量は、高分子化合物(例えば、後述するセルロースアシレート等のセルロース化合物)の総量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、5〜15質量部であることが特に好ましい。
本発明の高分子組成物は、上述のとおり一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種と、高分子化合物とを含有させたものであり、その高分子化合物がセルロース化合物であることが好ましい。セルロース化合物として好ましいものはセルロースエステルであり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である(本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いてもよい。)。以下、このセルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロース体フィルムに対しては特に限定されるものではない。
前記の特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基へのアシル置換度が下記数式(III)及び数式(IV)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(III):2.0≦A+B≦3.0
数式(IV):0<B
上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基のアシル置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基のアシル置換度を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部を、アシル基によってエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、セルロースの構成単位あたり、2位、3位及び6位の水酸基のいずれかが目的のアシル基でエステル化されている割合を意味し、0〜3.0の範囲の数値となる。
[セルロースアシレートの重合度]
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、セルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、セルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。通常のセルロースアシレートは、2.5〜5質量%の割合で含水していることが知られている。このような場合、上記本発明において好ましい含水率にするため、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥方法は目的とする含水率とすることができる方法であれば特に限定されない。
また、セルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
[添加剤]
本発明の高分子組成物を製造する際に、例えばセルロースアシレート溶液に、上記一般式(I)で表される化合物のほか、種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等)を加えることができる。また、一般式(I)で表される化合物および他の添加剤の添加時期は、ドープ作製工程の何れにおいて添加してもよく、また、ドープ調製工程の最後に調製工程としてこれらの添加剤を添加してもよい。
これらの添加剤は、固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、20℃以下の紫外線吸収剤と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができる。具体的には、特開2001−151901号公報に記載の方法を採用できる。
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾエート化合物、シアノアクリレート化合物、ニッケル錯塩等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸エステル化合物である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、上述のベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
また紫外線吸収剤は、セルロースアシレート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。
[劣化防止剤]
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止するために添加してもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステルおよび/またはカルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
[剥離促進剤]
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
[染料]
本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロース体フィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
[マット剤微粒子]
本発明のセルロース体フィルムには、マット剤として微粒子を加えてもよい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次/2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)社製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子サイズの小さな粒子を有するセルロース体フィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、二酸化ケイ素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1mあたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[化合物添加の比率]
本発明のセルロース体フィルムにおいては、分子量が30000以下の化合物(但し、一般式(I)で表される化合物を除く。)の総量は、セルロース化合物(例えば、セルロースアシレート)の重量に対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などである。これら化合物の総量を5質量%以上とすることにより、セルロースアシレート単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなる。またこれら化合物の総量を45質量%以下とすることにより、セルロース体フィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(フィルムからの泣き出し)が抑止される傾向にあり好ましい。
<セルロース体フィルム>
[有機溶媒]
本発明のセルロース体フィルムは上述の高分子組成物からなるものであり、ソルベントキャスト法によりセルロース体フィルムを製造することが好ましく、例えば、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造されることが好ましい。その主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、およびエーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン、およびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
以上、本発明のセルロース体フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、例えば公開技法(公開技報2001−1745、12頁〜16頁、2001年発行、発明協会)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよい。
その他、セルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許文献に開示されているものを、好ましい態様としてあげることができる。
特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号の各公報
これらの特許文献によると本発明のセルロース体フィルムの製造に好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、それらも好ましい態様として挙げられる。
[セルロース体フィルムの製造工程]
(溶解工程)
セルロース化合物(例えば、セルロースアシレート)の溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法または高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。例えば、セルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。セルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることが好ましい。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、商品名、島津製作所社製)で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出する。
(流延、乾燥、巻き取り工程)
次に、セルロース化合物(例えば、セルロースアシレート)の溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。セルロース体フィルムを製造する方法及び設備は、例えば、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を広く採用することができる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。セルロース体フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
[延伸処理]
本発明のセルロース体フィルムは、延伸処理によりレターデーション値を調整することが好ましい。特に、セルロース体フィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。フィルムは、1〜200%の延伸を行うことが好ましく、1〜100%の延伸を行うことがより好ましく、1〜50%の延伸を行うことがさらに好ましい。
上記偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するためには、偏光膜の透過軸とセルロース体フィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光膜の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光膜とロールフィルム状のセルロース体フィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
乾燥後得られる、本発明に好ましく用いられるセルロース体フィルムの厚さは、使用目的によって異なり、5〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜300μmの範囲であることがより好ましく、30〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロース体フィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
[光学特性]
(Re(λ)及びRth(λ)の測定方法)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRにおいて算出される。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRにおいて算出される。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
Figure 2007332191
式(1)中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Figure 2007332191
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)又は各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
(フィルムの光学特性)
本発明のセルロース体フィルムにおいては、配向方向に対してRe(550nm)が正でありかつ特定波長におけるReが下記数式(I)及び(II)の範囲にあることが好ましい。
数式(I) 0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(II) 1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
このような光学特性の波長分散性を発現させるために、配向方向(以下、TD方向と示す)とそれに直交する方向(以下、MD方向と示す)における吸収波長と遷移モーメントの方向を上手く配置することが好ましい。
ReはTD方向の屈折率からMD方向の屈折率を差し引いた値であるため、TD方向の屈折率の波長分散性よりも、MD方向の波長分散性が、より右肩下がり(右を長波長側、左を短波長側とおいたときのReの傾き)であれば、その差し引いた値は、式(I)を満足する。レターデーションの波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収に密接な関係にあるため、MD方向の波長分散性をより右肩下がりにするためには、TD方向に比較してMD方向の吸収遷移波長をより長波化できれば、式(I)を満たすフィルムを設計することができる。例えば延伸処理を行ったポリマー材料では、MD方向は分子の鎖に直交方向である。そのような高分子幅方向の吸収遷移波長を長波化することは高分子材料としては非常に困難である。一方で高分子材料に対して良好に相溶するセルロースオリゴマー誘導体を添加し配向させ、セルロースオリゴマー誘導体の側鎖の吸収遷移波長が高分子幅方向(MD方向)に長波であれば、式(I)を満たすフィルムを設計することができる。また、セルロースオリゴマー誘導体の屈折率の大きさがMD方向と比べてTD方向に大きければ、フィルムとしてTD方向に対してRe(550nm)が正であることに問題がないが、逆にセルロースオリゴマー誘導体の屈折率の大きさがTD方向に比べてMD方向に大きくても高分子材料の屈折率がTD方向に大きく、フィルムとしてRe(550nm)が正であれば問題ない。
フィルムの幅方向のRe(590)値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
Re(λ)値、Rth(λ)値は、それぞれ、以下の数式(V)、(VI)を満たすことが、液晶表示装置、特にVAモード、OCBモード液晶表示装置の視野角を広くするために好ましい。また特にセルロース体フィルムが、偏光板の液晶セル側の保護膜に用いられる場合に好ましい。
数式(V):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(VI):0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
さらに好ましくは、
数式(V−I):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(VI−I):30nm≦Rth(590)≦300nm
本発明のセルロース体フィルムをVAモード、OCBモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
[フィルムの透湿度]
光学補償シートに用いるとき、本発明のセルロース体フィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m・24hであることが好ましい。500〜1800g/m・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m・24hであることが特に好ましい。2000g/m・24h以下とすることにより、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。また、本発明のセルロース体フィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロース体フィルムの透湿度を400g/m・24h以上とすることにより、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロース体フィルムによって接着剤が乾燥しにくくなり、接着不良を生じにくくできる。
セルロース体フィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる傾向にある。そこで、本発明における透湿度は、膜厚を80μmに換算した値として述べている。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロース体フィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
[フィルムの残留溶剤量]
本発明のセルロース体フィルムにおいては、残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明のセルロース体フィルムを支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明のセルロース体フィルムの吸湿膨張係数は30×10−5/%RH以下とすることが好ましく、15×10−5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10−5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10−5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロース体フィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
[表面処理]
セルロース体フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロース体フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、セルロース体フィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロース体フィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロース体フィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロース体フィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
[機能層]
本発明のセルロース体フィルムは、その用途として例えば光学用途と写真感光材料とに適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
前述の光学用途に本発明のセルロース体フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロース体フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
<偏光板保護膜>
本発明のセルロース体フィルムの用途についてさらに説明する。
本発明のセルロース体フィルムは特に偏光板保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロース体フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロース体フィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが特に好ましい。
<光学補償フィルム>
本発明のセルロース体フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
<液晶表示装置>
セルロース体フィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、セルロース体フィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、および該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。具体的には、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、本発明のセルロースフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)の記載に従って作製することができる。
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロース体フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のセルロース体フィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)の記載に従って作製することができる。
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO9848320号パンフレット、特許登録第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00−65384号の記載に従って作製することができる。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロース体フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089(1998))の記載に従って作製することができる。
<ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム>
本発明のセルロース体フィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明のセルロース体フィルムを好ましく用いることができる。
<写真フィルム支持体>
さらに、本発明のセルロース体フィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。具体的には、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載に従って、本発明のセルロースフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法に従って、作製することができる。
<透明基板>
本発明のセルロース体フィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持たせることもできることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロース体フィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロース体フィルムの少なくとも片面にSiO等を蒸着したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロース体フィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明のセルロース体フィルムのRe値とRth値をそれぞれ好ましい範囲に制御するためには、使用する一般式(I)で表される化合物(レターデーション制御剤)の種類および添加量、ならびにフィルムの延伸倍率を適宜調整することも好ましい。特に、一般式(I)で表される化合物の中で、所望のRth値を達成し得るレターデーション制御剤を選択し、かつ、所望のRe値が得られるように、該レターデーション制御剤の添加量およびフィルムの延伸倍率を適宜設定することにより、所望のRe値およびRth値を有するセルロースフィルムを得ることも好ましい。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定的に解釈されるものではない。
n=40およびn=30の本発明のセルロース誘導体は、アルドリッチ社製微結晶セルロースを出発原料とし、下記合成例1および2に記載の方法に従って合成したセルロースアセテートオリゴマーB1およびB2からそれぞれ合成例4〜7のようにして誘導することで得た。また、n=15およびn=7のセルロース誘導体は、アルドリッチ社製微結晶セルロースを出発原料とし、下記合成例3に従い加水分解することでセルロースオリゴマーを合成し、これらから例えば合成例4〜7のようにして誘導することで得ることができる。
[合成例1:セルロースアセテートオリゴマーB1(n=40)の合成]
セルロース(アルドリッチ製微結晶セルロース)50質量部に酢酸50質量部を噴霧し、室温で3時間放置した。別途、アシル化剤として酢酸319質量部、無水酢酸331質量部、硫酸2.5質量部の混合物を作製し、−10℃に冷却した後に、反応容器にて前記の前処理を行ったセルロースとアシル化剤を攪拌して混合した。1時間経過後、内部温度を50℃まで上昇させ、30℃で測定した溶液粘度が30cPになるまで攪拌を続けた。
反応容器を0℃の氷水浴にて冷却し、0℃に冷却した50%酢酸水溶液183質量部を添加した。内温を60℃に昇温し、さらに5時間攪拌した。
次いで反応容器に、酢酸マグネシウム4水和物8.7質量部、酢酸8.7質量部、水8.7質量部の混合溶液を添加し、60℃で2時間攪拌した。酢酸と水の混合物を徐々に水の比率を上昇させながら、合計で酢酸2500質量部、水6500質量部を加えてセルロースアセテートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートの沈殿は75℃の温水にて、洗浄液を交換しながら4時間洗浄を行った。洗浄後、0.002質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で真空乾燥させた。得られたセルロースアセテートB1は、アセチル置換度2.6、数平均分子量20500、重量平均分子量35500、粘度平均重合度40であった。
[合成例2:セルロースアセテートオリゴマーB2(n=30)の合成]
セルロース(アルドリッチ製微結晶セルロース)50質量部に酢酸50質量部を噴霧し、室温で3時間放置した。別途、アシル化剤として酢酸319質量部、無水酢酸331質量部、硫酸2.5質量部の混合物を作製し、−10℃に冷却した後に、反応容器にて前記の前処理を行ったセルロースとアシル化剤を攪拌して混合した。1時間経過後、内部温度を50℃まで上昇させ、30℃で測定した溶液粘度が20cPになるまで攪拌を続けた。
反応容器を0℃の氷水浴にて冷却し、0℃に冷却した50%酢酸水溶液183質量部を添加した。内温を80℃に昇温し、さらに8時間攪拌した。
次いで反応容器に、酢酸マグネシウム4水和物8.7質量部、酢酸8.7質量部、水8.7質量部の混合溶液を添加し、60℃で2時間攪拌した。酢酸と水の混合物を徐々に水の比率を上昇させながら、合計で酢酸2500質量部、水6500質量部を加えてセルロースアセテートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートの沈殿は75℃の温水にて、洗浄液を交換しながら4時間洗浄を行った。洗浄後、0.002質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で真空乾燥させた。
得られたセルロースアセテートB2は、アセチル置換度2.0、数平均分子量18700、重量平均分子量27900、粘度平均重合度30であった。
[合成例3:セルロースオリゴマー(n=7および15)の合成]
木材学会誌(339−344、1991年)に記載された手法に従い、1.0kgの微結晶セルロース(アルドリッチ)を出発原料とした85%リン酸加水分解により、目的のセルロースオリゴマー中間体をそれぞれ100g(灰色粉体、n=7)、38g(灰色粉体、n=15)得た。
[合成例4:例示化合物A1の合成]
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに先の反応で得られたセルロースオリゴマーB1(n=40)10g、ピリジン14.0ml、塩化メチレン100mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに20gのアサロニルクロリドの塩化メチレン溶液(150ml)をゆっくりと滴下し、添加後さらに50℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の例示化合物(A1)を白色粉体として得た(12.3g、収率95%)。置換基2の*に−OHが結合した化合物のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長308nmの時に7300であり、可視域でのモル吸光係数の最大値は30であった。
[合成例5:例示化合物A7の合成]
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコにセルロースアセテートオリゴマー(B2)10.0g、ピリジン100mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに3.8gのナフタレンカルボン酸クロリドをゆっくりと添加し、添加後さらに60℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の例示化合物(A7)を白色粉体として得た(10.0g、収率88%)。置換基2の*に−OHが結合した化合物のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長282nmのときに7500であり、可視域でのモル吸光係数の最大値は30であった。
[合成例6:例示化合物A15の合成]
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに先の反応で得られたセルロースオリゴマーB2(n=30)10g、ピリジン70mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに10gの[4−(6−メチル−ベンゾオキサゾル−2−イル)]ベンゼンカルボン酸クロリドを添加し、添加後さらに50℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の例示化合物(A15)を白色粉体として得た(12.3g、収率97%)。置換基2の*に−OHが結合した化合物のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長319nmのときに25000であり、可視域でのモル吸光係数の最大値は300であった。
[合成例7:例示化合物A18の合成]
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに先の反応で得られたセルロースオリゴマーB2(n=30)10g、ピリジン200mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに10gの、シアノ[4、6−ジ(2−メトキシブチルオキシ)−ベンゾ[1,3]ジチオール−2−イリデン]酢酸クロリドを添加し、添加後さらに50℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の例示化合物(A18)を白色粉体として得た(15.7g、収率93%)。置換基2の*に−OHが結合した化合物のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長369nmのときに28000であり、可視域でのモル吸光係数の最大値は150であった。
[実施例1]
セルロースアセテートフィルムの作製
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
別のミキシングタンクに、例示化合物A1、例示化合物A15、例示化合物A18、比較化合物1、および比較化合物2のそれぞれと、メチレンクロライド87質量部と、メタノール13質量部とを投入し、加熱しながら攪拌して、各改質剤溶液を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に上記調製した改質剤溶液を36質量部混合し、充分に攪拌してドープを調製した。なお、改質剤溶液において、例示化合物A1、A15、A18、比較化合物1、または比較化合物2の量は、それぞれセルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加するように、各改質剤溶液を調製した。
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、150℃の条件で、自由端一軸延伸で15%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nにおけるRe値を、上述の(Re(λ)及びRth(λ)の測定方法)の項に記載の方法により測定した。結果を表2に示す。なお、表1の試料1は改質剤溶液を加えない以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。
Figure 2007332191
Figure 2007332191
Figure 2007332191
式中、Rはアセチル基(置換度:2.6)および水素原子(置換度:0.4)を表す。
Rに−OHが結合した化合物(酢酸)のジクロロメタン溶媒中での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長270nmのときに10未満である。
Figure 2007332191
式中、Rはアセチル基(置換度:2.0)、ベンゾイル基(置換度:0.4)および水素原子(置換度:0.6)を表す。
Rに−OHが結合した化合物(安息香酸)のジクロロメタン溶媒中での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値は、波長273nmのときに930である。
表1の結果から、本発明のセルロース誘導体(例示化合物A1、A15、A18)は波長270〜380nmの領域にモル吸光係数2000以上を示す置換基を有し、それを添加したフィルムは下記数式(I)および(II)を共に満たすことが分かる。
一方、比較化合物1もしくは比較化合物2を添加したフィルムは、本発明の例示化合物と同重量を添加したにも拘わらず下記数式を満たさないことが分かる。また、比較化合物3はセルロース骨格を有する化合物であるにも拘わらず、270〜380nmに2000以上のモル吸光係数を示す置換基を有さず、下記数式を満たさないことが分かる。
数式(I) 0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(II) 1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
さらに、本発明の例示化合物は可視域に目的としない吸収を示さず良好なフィルムとすることができることが分かる。また、本発明の例示化合物A18については添加量が増すにつれてRe(550nm)を増大させることができることが分かる(試料4、5)。
これらの結果より、本発明のセルロース誘導体は、セルロース体フィルムに添加したとき、波長分散制御剤として優れた効果を奏することが分かる。

Claims (14)

  1. 下記一般式(I)で表されることを特徴とするセルロース誘導体。
    一般式(I)
    Figure 2007332191
    [式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。L、LおよびLはそれぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−NR−(Rは脂肪族基または芳香族基を表す。)およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる2価の連結基を表し、nは5以上50以下の自然数を表す。ただし、セルロース誘導体分子中にn個づつ存在する置換基−L−R、−L−Rまたは−L−Rは構成単位ごとに異なっていてもよく、セルロース誘導体分子中の−L−R、−L−Rおよび−L−Rの3n個の置換基の少なくとも一つが、HO−L−R、HO−L−RまたはHO−L−Rとした場合のジクロロメタン溶液での270〜380nmにおけるモル吸光係数の最大値が2000以上となる置換基である。]
  2. 前記モル吸光係数の最大値が5000以上である請求項1記載のセルロース誘導体。
  3. セルロース誘導体分子中に存在するR、RおよびRの3n個の置換基の少なくとも一つが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜42の芳香族基(Ar)、または下記一般式(III)もしくは(IV)で表される基である請求項1または2記載のセルロース誘導体。
    Figure 2007332191
    [式中、XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、または−NR−(Rは水素原子または炭素原子数1〜6の低級アルキル基を表す。)を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。pは0〜4の整数であり、Rが複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。]
    Figure 2007332191
    [式中、R10およびR11はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。qは0〜3の整数、rは0〜4の整数であり、R10またはR11が複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、*の部分はL、L、もしくはLとの結合手を表す。]
  4. 前記nが5以上40以下の自然数である請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース誘導体。
  5. 前記L、LおよびLが、それぞれ独立して、単結合または−CO−である請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース誘導体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース誘導体と、高分子化合物とを含有させたことを特徴とする高分子組成物。
  7. 前記高分子化合物としてセルロース化合物を含有させた請求項6記載の高分子組成物。
  8. 前記セルロース化合物がセルロースアシレートである請求項7に記載の高分子組成物。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の高分子組成物からなることを特徴とするセルロース体フィルム。
  10. 配向処理により、配向方向に対する550nmにおける面内レターデーション(Re(550))を正とし、かつ特定波長における面内レターデーション(Re(λ))の比について下記数式(I)および(II)を満足させた請求項9に記載のセルロース体フィルム。
    数式(I) 0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
    数式(II) 1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
  11. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロース誘導体からなるセルロース体フィルム用改質剤。
  12. 請求項9または10に記載のセルロース体フィルムよりなる偏光板保護膜。
  13. 請求項9または10に記載のセルロース体フィルムを備えた液晶表示装置。
  14. 請求項9または10に記載のセルロース体フィルムを有するハロゲン化銀写真感光材料。
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