JP4749499B2 - セルロース体組成物 - Google Patents
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Description
そこで、光学異方性が小さくかつ高温、高湿下での透湿性の低いセルロースアシレートフィルムおよびその改質剤の開発が切望されている。
本発明の第2の目的は、高温高湿下において低い透湿性を有するセルロース体フィルムを用いて作製した偏光板保護膜、液晶表示装置、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体を提供することにある。
(1)セルロース体と、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有するセルロース体組成物。
一般式(1)
(2)前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であるセルロース体組成物。
一般式(2)
一般式(1)
(4)前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物である(3)に記載のセルロース体フィルム。
一般式(3)
(5)前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(4)で表される化合物である(3)に記載のセルロース体フィルム。
一般式(4)
(6)前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物である(3)に記載のセルロース体フィルム。
一般式(5)
(7)前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(6)で表される化合物である(3)に記載のセルロース体フィルム。
一般式(6)
(9)前記セルロースアシレートのアシル置換度が2.60〜3.00である(8)に記載のセルロース体フィルム。
(10)前記セルロースアシレートのアシル置換度が2.80〜2.95である(8)に記載のセルロース体フィルム。
(11)前記セルロースアシレートにおける、アセチル基で置換されている置換度が2.60〜3.00である(8)〜(10)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
(12)前記セルロースアシレートの炭素原子数が3〜22のアシル基で置換されている置換度が0.00〜0.80である(8)〜(11)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
(13)前記セルロースアシレートが、アセチル基と炭素原子数が3〜22のアシル基とで置換されており、炭素原子数が3〜22のアシル基の30%以上が6位水酸基の置換基として存在している(8)〜(12)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
(14)前記セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.80〜1.00である(8)〜(13)のいずれかに記載のセルロース体フィルム。
(15)前記セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.85〜1.00である(8)〜(13)のいずれかに記載のセルロース体フィルム。
(16)前記セルロース体と、セルロース体の2〜30質量%の量の上記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含む(8)〜(15)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
(17)前記セルロース体が、250〜550の粘度平均重合度を有する(8)〜(16)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
一般式(1)
(19)(3)〜(8)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルムを有する偏光板保護膜。
(20)(3)〜(8)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルムを有する液晶表示装置。
(21)(3)〜(8)のいずれか1項に記載のセルロース体フィルムを有するハロゲン化銀写真感光材料。
以下、本発明一般式(1)で表される化合物について説明する。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X1、X2、X3およびX4は、それぞれ、単結合、−CO−、−NR5(−R5は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X1、X2、X3およびX4の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR5−(から選ばれるのがより好ましい。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。a+b+c+dは、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Q1は(a+b+c+d)価の有機基を表す。Q1の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
有機基とは、有機化合物からなる基をいう。但し、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。
上記一般式(2)において、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X11、X12、X13およびX14はそれぞれ独立に単結合、−CO−、−NR15−(R15は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X11、X12、X13およびX14の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR15−から選ばれるのがより好ましい。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+n=2、3または4である。Q1は2〜4価の有機基を表す。Q1の価数は2または3がより好ましい。
上記一般式(3)において、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Y1およびY2はそれぞれ独立に−CONR23−または−NR24CO−を表し、R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。L1は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR25−、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。L1の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR25−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(4)において、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L2は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR35−(R35は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L2の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR35−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(5)において、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L3は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR45−(R45は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L3の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR45−、およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(6)において、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L4は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR55−(R55は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L4の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR55−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、特に限定されるものではないが、例えば、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあげられ、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報(公開技報2001−1745、7頁〜8頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のセルロースを用いることができる。
数式(4):2.0≦A+B≦3.0
数式(5):0<B
ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
本発明で用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700が好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム作製がしやすくなる。重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度をより良好なものとすることができる。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著,「繊維学会誌」,第18巻,第1号,105〜120頁,1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において本発明の透湿性を低下する化合物以外にも用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良い。また、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、本発明に用いられる可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5〜45%であることが好ましい。より好ましくは10〜40%であり、さらに好ましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が好ましく、2000以下がより好ましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
(溶解工程)
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
本明細書において、Reλ、Rthλは、それぞれ波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Reλは"KOBRA 21ADH"{王子計測機器(株)製}において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定される。Rthλは、前記Reλ、面内の遅相軸("KOBRA 21ADH"により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に"KOBRA 21ADH"が算出する。
ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
数式(2):0nm≦Re590≦200nm
数式(3):0nm≦Rth590≦400nm
[式中、Re590、Rth590は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。]
2枚型の場合、Re590は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth590については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re590は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth590については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを超えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明のセルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μmとして求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
本発明のセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明に用いる透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。
アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0〜150nmとし、Rthレターデーション値を70〜400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20〜70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のリターデーションの値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公開技報2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
さらに本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、該特許文献に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報などに公開されている。
A−1の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた200mlの三ツ口フラスコに14.6gのアジピン酸を量り取り、47.6gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で1時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに24.9gのN−メチルシクロヘキシルアミン、22.3gのトリエチルアミンおよび200mlのテトラヒドロフラン(THF)を量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4.5時間反応させた。得られた反応混合物を水1Lへ激しく攪拌しながら投入すると白色結晶が析出した。結晶を濾別後、50℃で終夜乾燥することで目的の化合物A−1を15.1g得た(収率45%)。
A−2の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに71.3gの3,3'−チオジプロピオン酸を量り取り、104.7gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で2時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに92.1gのN−メチルシクロヘキシルアミン、82.3gのトリエチルアミンおよび500mlのTHFを量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4時間反応させた。得られた反応混合物に水500mlを投入し、500mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を500mlの1N塩酸、500mlの飽和重曹水および500mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して黄色油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−2を120.1g得た(収率81%)。
A−3の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに40.4gのジシクロヘキシルアミン、22.6gのトリエチルアミンおよび150mlのTHFを量り取り、氷冷下、19.4gのアジピン酸クロリドをゆっくりと滴下した後、室温で2時間反応させた。得られた反応混合物に水300mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−3を30.0g得た(収率60%)。
A−4の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに25.0gの3−メチルアジピン酸を量り取り、40.9gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で2時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに27.3gのN−メチルシクロヘキシルアミン、24.3gのトリエチルアミンおよび100mlのTHFを量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4時間反応させた。得られた反応混合物に水300mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−4を25.3g得た(収率47%)。
A−5の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに20.2gのセバシン酸を量り取り、47.6gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で2時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに24.9gのN−メチルシクロヘキシルアミン、22.3gのトリエチルアミンおよび200mlのTHFを量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4時間反応させた。得られた反応混合物を水1Lへ投入したところ白色結晶が析出した。結晶を濾別後、50℃で終夜乾燥することで目的の化合物A−5を19.9g得た(収率84%)。
A−8の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに20.2gのセバシン酸を量り取り、47.6gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で2時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに39.9gのジシクロヘキシルアミン、22.3gのトリエチルアミンおよび200mlのTHFを量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4時間反応させた。得られた反応混合物を水1Lへ投入したところ白色結晶が析出した。結晶を濾別後、50℃で終夜乾燥することで目的の化合物A−8を25.4g得た(収率48%)。
A−13の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに28.4gのジ−sec−ブチルアミン、22.6gのトリエチルアミンおよび150mlのTHFを量り取り、氷冷下、18.3gのアジピン酸クロリドをゆっくりと滴下した後、室温で2時間反応させた。得られた反応混合物に水300mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−13を22.1g得た(収率60%)。
A−16の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに16.1gのジエチルアミン、22.6gのトリエチルアミンおよび150mlのTHFを量り取り、氷冷下、23.9gのセバシン酸クロリドをゆっくりと滴下した後、室温で2時間反応させた。得られた反応混合物に水300mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−16を19.9g得た(収率64%)。
A−20の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた500mlの三ツ口フラスコに28.4gのジ−sec−ブチルアミン、22.6gのトリエチルアミンおよび150mlのTHFを量り取り、氷冷下、23.9gのセバシン酸クロリドをゆっくりと滴下した後、室温で2時間反応させた。得られた反応混合物に水300mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物A−20を29.7g得た(収率70%)。
A−22の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに20.2gのセバシン酸を量り取り、47.6gの塩化チオニルをゆっくりと滴下した後、80℃で2時間反応させた。反応液が均一になったのを確認した後、アスピレーターを用いて反応系をそのまま濃縮し、過剰量の塩化チオニルを留去することで油状生成物を得た。新たにメカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに22.3gのジイソプロピルアミン、22.3gのトリエチルアミンおよび200mlのTHFを量り取り、氷冷下、上記反応で得られた油状物をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温に戻してさらに4時間反応させた。得られた反応混合物を水1Lへ投入したところ白色結晶が析出した。結晶を濾別後、50℃で終夜乾燥することで目的の化合物A−22を29.9g得た(収率81%)。
B−1の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた300mlの三ツ口フラスコに10.0gのN,N'−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、20.8gのトリエチルアミンおよび100mlのTHFを量り取り、氷冷下、29.6gのシクロヘキサンカルボニルクロリドをゆっくりと滴下した後、室温に戻し、さらに室温で2時間反応させた。得られた反応混合物に水200mlを投入し、300mlの酢酸エチルで分液・抽出した。得られた有機層を300mlの1N塩酸、300mlの飽和重曹水および300mlの水で2回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して透明油状物を得た。得られた油状物を室温で真空乾燥することにより目的の化合物B−1を27.7g得た(収率47%)。
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
攪拌羽根を有する5Lのガラス容器に、下記の溶媒混合溶液によく攪拌・分散しつつ、下記記述のセルローストリアセテート粉体A(フレーク)を徐々に添加し、全体が2kgになるように仕込んだ。なお、溶媒である酢酸メチル、アセトンおよびエタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体を投入し窒素ガスを封入して、ディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有する攪拌機で30分間分散した。分散の開始温度は30℃であった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2体積%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.2質量%以下であることを確認した。セルロースアシレート溶液の組成は以下の通りである。
得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液はステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し均一溶液とした後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
ろ過済みの50℃のセルローストリアセテート溶液を、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の温度は5℃であり、流延スピードは3m/分でその塗布幅は30cmとした。室温で1分放置し、その後に乾燥のために55℃の乾燥風を送風した。5分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り後、133℃で27分乾燥して、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
得られたセルローストリアセテートフィルムについて、透湿度、熱揮散性およびRth試験を行った。本実施例において、セルローストリアセテートフィルムの透湿度、熱揮散性およびRth試験は以下のように行った。
塩化カルシウムを入れたカップを、各々のフィルム試料を用いて蓋をし、かつ、密閉したものを、60℃および95%RHの条件で、24時間放置した前後の重量変化(g/(m2・day))から、塩化カルシウムの吸湿性に基づくセルローストリアセテートフィルムの透湿度を評価した。結果を表1に示す。
セイコーインスツルメンツ(株)製TG/DTA同時測定装置(TG/DTA6200、商品名)を用いて、133℃、1時間保持したときのフィルムの重量減少を測定し、低分子成分である可塑剤および本発明の改質剤の熱揮散性を評価した。なお、重量減少の数値は小数点以下第2位を四捨五入して算出した。結果を表1に示す。
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Reは自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)社製)において波長589nmの光をフイルム法線方向に入射させて測定した。また、Rthは前記Reと、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°としてサンプルを10°ごとに50°まで傾斜させて波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。
実施例1と同様の方法で下記の組成物を用いてセルロースアシレートフィルムを作製した。
セルローストリアセテート(酢化度60.9%)(100質量部)
酢酸メチル(522.0質量部)
アセトン(48.0質量部)
エタノール(30.0質量部)
実施例1記載の試料102〜116で用いた改質剤(11.7質量部)
この場合も実施例1と同様に、本発明のセルロース体フィルムにおいては良好な結果が得られた。
実施例1の試料102〜116、および、実施例2の試料202〜216を用いて、特開平11−316378号公報の実施例1に記載の方法により、楕円偏光板試料3102〜3116および試料3202〜3216を作製して評価した。本発明のセルロース体フィルムにより得られた楕円偏光板の光学特性は優れたものであった。また、試料3104〜3116に関しては、経時での耐久性も比較試料3102より得られた保護膜と比較して特に問題なかった。
実施例1の試料102〜116、および、実施例2の試料202〜216を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置を作製し、評価した。本発明のセルロース体フィルムを用いて得られた装置では、いずれの場合においても良好な性能が得られた。
実施例1の試料102〜116、および、実施例2の試料202〜216を用いて、その膜厚を120μmにする以外は実施例1、または実施例3と同様にして、試料5102〜5116、および、試料5202〜5216を作製した。得られたフィルムの一方の面に特開平4−73736号公報の実施例1記載の第1層および第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作成した。さらに、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対面に、特開平11−38568号公報の実施例1に記載の試料105と同じ組成を有する各層を塗布し、ハロゲン化銀写真感光材料を作製した。本発明のセルロース体フィルムを用いて得られたハロゲン化銀写真感光材料は、いずれも優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
Claims (11)
- R41、R42、R43およびR44は、それぞれ、炭素数1〜25の脂肪族基を表す、請求項1に記載のセルロース体組成物。
- R41、R42、R43およびR44は、それぞれ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基である、請求項1または2に記載のセルロース体組成物。
- L3はアルキレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
- セルロース体に対して、一般式(5)で表される化合物を1〜30質量%の割合で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
- セルロース体が、セルロースアシレートである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロース体組成物からなるセルロース体フィルム。
- 請求項8に記載のセルロース体フィルムを有する偏光板保護膜。
- 請求項8に記載のセルロース体フィルムを有する液晶表示装置。
- 請求項8に記載のセルロース体フィルムを有するハロゲン化銀写真感光材料。
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