JP2008101176A - 組成物及び該組成物からなるフィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルムならびに液晶表示装置 - Google Patents

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Masaki Okazaki
正樹 岡崎
Takayasu Yasuda
貴康 保田
Naoyuki Nishikawa
尚之 西川
Tetsuo Kono
哲夫 河野
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Abstract

【課題】光学異方性を自在に制御できる新規な組成物、及び光学補償シート等として有用なフィルムを提供する。
【解決手段】無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子、好ましくはさらに高分子材料との親和性を有する置換基を有する分子を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを少なくとも含有する組成物、及び前記組成物から形成されたフィルムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、ディスプレイ分野、オプトエレクトロニクス分野、フォトニクス分野において有用な新規な組成物及びフィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルムならびに液晶表示装置に関する。
高度な情報化社会の進展に伴い、情報の伝送、処理、及び記録に対して光技術を用いる試みが多数なされている。そのような状況において、分子の配向状態の変化を利用することにより光を自在にマニピュレートできる液晶は、極めて有用な材料として多くの注目が集まっている。
液晶を利用した光学素子としては、文字や画像を表示するためのディスプレイが代表的なものであるが、その他にも、空間光変調器、調光材料、光学補償板、非線形光学材料等が知られており、また、光学機能の他にも特異な物性を反映して、導電性材料、光伝導性材料、高強度材料、トライボロジー材料、電気粘性流体等への応用が期待されている(非特許文献1参照)。
また高分子材料は、従来より産業の広い領域において極めて有用なものとして活用されている。近年、画像を表示するためのディスプレイ分野においては、フラットパネルディスプレイ(FPD)と呼ばれる、液晶表示素子(LCD)、プラズマ表示素子(PDP)が広く用いられるようになってきた。液晶表示装置においては、その軽量化、製造コスト低減のために液晶セルの薄膜化やセル内の液晶の改良が行われている。そのために光学補償シートをはじめとする光学フィルムの重要性が増し、光学フィルムの性能発現のために、光学的異方性(Re:フィルム面内のレターデーション値、Rth:フィルム厚み方向におけるレターデーション値)をコントロールする必要性が生じている。LCDの画質に対する要求が高まるにつれ、さらにより広い領域(例えば、より高いReとより低いRth)を自在にコントロールすることが可能な方法が必要とされるようになってきた。
そのような要求に応じて、特許文献1及び2などに、光学フィルムのレターデーション上昇剤等が開示されているが、更なる優れた方法の実現が求められている。
欧州特許公開EP0911656A2号公報 特開2003−344655号公報 「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 編 (丸善 2000年刊)
本発明は、光学異方性を自在に制御可能であり、種々の光学材料の原料として有用な、新規な組成物を提供することを課題とする。特に、ディスプレイ分野において有用な、組成物及びかかる組成物から作製されたフィルム、ならびにかかるフィルムを有する液晶表示装置を提供することを課題とする。また、本発明は、新規な高分子フィルム用レターデーション制御剤を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1]無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを少なくとも含有する組成物。
[2]前記分子が液晶分子である[1]に記載の組成物。
[3]前記分子が、前記高分子材料と親和性を有する置換基をさらに有する[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、カルボキシル基もしくはその塩である[1]〜[3]のいずれかの組成物。
[5] 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表されるホスホン酸基もしくはその塩、又は下記一般式(2)で表されるリン酸モノエステル基もしくはその塩である[1]〜[3]のいずれかの組成物:
一般式(1)
−PO3m
一般式(2)
−OPO3m
式中、Xはそれぞれ独立に、水素原子、あるいは1価もしくは2価の有機又は無機カチオンを表し、mは1又は2であるが、mが1の場合は、Xは2価の有機又は無機カチオンであり、mが2の場合は、2個のXはそれぞれ水素原子あるいは1価の有機又は無機カチオンである。
[6] 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、下記一般式(3)で表される基である[1]〜[3]のいずれかの組成物:
一般式(3)
−Si(R13-n(OR2n
式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。
[7] 前記無機粒子が形状異方性を有する粒子である[1]〜[6]のいずれかの組成物。
[8] 前記無機粒子が形状異方性および複屈折性を有する粒子である[7]のいずれかの組成物。
[9] 前記無機粒子が、金属酸化物の粒子である[1]〜[8]のいずれかの組成物。
[10] 前記無機粒子が炭酸ストロンチウムの粒子である[1]〜[8]のいずれかの組成物。
[11] 前記高分子材料が、セルロースアシラート系ポリマーである[1]〜[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12] 前記分子が、棒状分子である[1]〜[11]のいずれかの組成物。
[13] [1]〜[12]のいずれかの組成物から形成されたフィルム。
[14] さらに延伸された[13]のフィルム。
[15] [13]又は[14]のフィルムを用いることを特徴とする偏光板保護フィルム。
[16] [13]又は[14]のフィルムを用いることを特徴とする光学補償フィルム。
[17] [15]の偏光板保護フィルム及び/又は[16]の光学補償フィルムを用いることを特徴とする液晶表示装置。
[18] 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを少なくとも含有する組成物からなるフィルムを形成することを含む光学フィルムの製造方法。
[19] 前記組成物から形成されたフィルムをさらに延伸することを含む[18]の方法。
[20] 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子からなる高分子フィルム用レターデーション制御剤。
本発明では、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子、好ましくは、高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する分子、を無機微粒子に吸着した状態で高分子材料中に存在させて、異方性に由来して発現する配向性を利用することにより、従来の技術と比較してより自在に光学異方性を制御することを可能にしている。即ち、本発明によれば、光学異方性を広範囲に制御可能な組成物を提供することができる。本発明の組成物を用いることにより、所望の光学特性を示すフィルムを容易に作製することができ、かかるフィルムは、光学異方性フィルムとしてディスプレイ用途に有用である。また、本発明によれば、新規な高分子フィルム用レターデーション制御剤を提供することができる。
発明の実施の形態
以下に本発明の組成物について詳しく説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明は、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子、好ましくは、高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する分子、を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを含有する組成物に関する。本発明の組成物では、高分子材料中に、無機微粒子に吸着した状態の液晶性化合物のコア部となり得る基を存在させて、その異方性に由来して発現する配向性を利用して、光学異方性を制御している。その結果、例えば、芳香族環を含む有機化合物等を添加して光学異方性を制御する従来の技術(例えば、上記特許文献1及び2)と比較して、より自在に光学異方性を制御することが可能であり、光学異方性を広範囲に制御可能である。
本発明の組成物は、所定の基を有する有機化合物及び無機化合物の両者を一体化した形で同時に含むので、それぞれ単独で含む組成物(無機微粒子と、該無機微粒子に吸着していない状態の所定の基を有する有機化合物とを含有する組成物)と比較して、それらの組合せによる組合せ後の異方性が明確化でき、より多様な屈折率異方性、屈折率(差)波長分散を発現可能である。所望の屈折率異方性、屈折率波長分散性を発現するために、無機微粒子の形状、それに吸着した分子の形状、吸着の態様、無機微粒子とそれに吸着した分子の屈折率や屈折率波長分散の大小関係等を、選択して組み合わせる。
例えば、本発明の組成物の一例として、前記所定の基を有する棒状分子を吸着させた棒状の無機微粒子と、高分子材料とを含有する組成物が挙げられる。前記棒状分子は、その分子末端で、無機微粒子の棒側面に吸着しているのが好ましい。無機微粒子の長軸方向の屈折率がそれと直交する方向の屈折率よりも大きく、無機微粒子の屈折率異方性が吸着している棒状分子の屈折率異方性よりも充分に大きく、且つ無機微粒子の屈折率の波長分散が、吸着している棒状分子のそれよりも充分に小さい組み合わせであるとする。この態様の組成物を用いてフィルムを作製すると、作製されるフィルムの面内レターデーションRe及び厚さ方向のレターデーションRthのいずれも正であり、且つRe及びRthの波長分散を逆波長分散に制御可能であると考えられる。
また、本発明の組成物の他の例として、前記所定の基を有する円盤状分子を吸着させた棒状の無機微粒子と、高分子材料とを含有する組成物が挙げられる。前記円盤状分子は、その分子面で、無機粒子の棒側面に吸着しているのが好ましく、その場合、この態様の組成物を用いてフィルムを作製すると、作製されるフィルムのReを正、その波長分散は順分散、Rthをほぼ0に制御可能であると考えられる。
また、円盤状又は平板状の無機微粒子を用いた場合には、吸着させる分子の形状や、双方の屈折率異方性の大小関係を選択すること等により、作製するフィルムがCプレートとしての性質を満足したものとすることもできるし、又はCプレートとしての正負、波長分散の順逆を制御可能であると考えられる。さらに、吸着の面選択性技術を利用して、Reは正でその波長分散は逆分散、Rthは正でその波長分散は順分散のものを形成することも可能になると考えられる。
以下、本発明の組成物の調製に用いられる種々の材料について説明する。
[無機微粒子]
本発明に用いる無機微粒子は、粒径が一般にnm〜μmのオーダーのものが好ましい。より具体的には、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径が5〜500nmであるのがより好ましく、8〜300nmであるのがさらに好ましい。粒径分布及び/又は形状の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは100nm以下であるのが好ましく、より好ましくは75nm以下である。形状には異方性があることが好ましく、針状あるいは棒状であることがより好ましい。針状及び棒状の微粒子は、一般的には、アスペクト比が3〜20であり、5〜15であるのがより好ましい。また、円盤状又は平板状の無機微粒子を用いてもよく、これらの形状は、アスペクト比で示すと、一般的にはアスペクト比2〜50であり、好ましくは5〜20となる粒子である。
また、無機微粒子としては形状異方性を有するのが好ましく、さられに加えて複屈折性を有することがより好ましく、長軸方向(無機粒子の最も長い方向)と短軸方向(長軸方向と垂直な軸のうち最も短い方向)の屈折率差としては、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。
無機微粒子としては、金、銀、白金、パラジウム、シリコン、ゲルマニウムのような単体金属、III−V系化合物半導体、金属のカルコゲナイド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物、又はそれらの複合物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等)、リン酸塩(第三リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カルシウム、第一リン酸アルミニウム、ホスフィン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウム等)、金属フッ化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等)等を使用することができる。
好ましい金属のカルコゲナイドとして、アルミニウム、珪素、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物;カドミウム又は鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物;等が挙げられる。さらには、Mxyz又はM1 x2 yz(M、M1及びM2はそれぞれ金属元素、Oは酸素、x、y及びzは価数が中性になる組み合わせの数を表す)の様な複合物も好ましく用いることができる。また、好ましい化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物;銅−インジウムの硫化物;等が挙げられる。
本発明に用いる無機微粒子の好ましい具体例は、Si、SiC、BeO、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、CdS、ZnS、PbS、Bi23、CdSe、CdTe、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、CaF2、MgF2、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、KH2PO4等の微粒子であり、より好ましくはSiC、BeO、Al23、TiO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25、ZnS、PbS、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、CaF2、MgF2、InP、GaAs又はKH2PO4の微粒子である。
さらに、複屈折性が顕著である点でより好ましい無機微粒子の具体例としては、SiC、BeO、Al23、TiO2、SnO2、ZnS、PbS、As2Se3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SrCO3、MgF2又はKH2PO4の微粒子が挙げられる。特に、コランダムのAl23、ルチル型或いはアナタ−ゼ型のTiO2、アンチモンをドープしたSnO2、LiNbO3、BaTiO3、SrCO3又はKH2PO4の微粒子が好ましい。
これらのうち、例えば、アナタ−ゼ型の針状TiO2微粒子を用いた場合には、長軸方向がそれと直交する方向の屈折率よりも大きいために、TiO2微粒子を面内配向させることにより、厚み方向のレターデーション(Rth)を増加させることが可能であり、ある一軸方向に配向させることにより、その方向の屈折率を増加することが可能である。また、例えば、針状SrCO3微粒子を用いた場合には、長軸方向がそれと直交する方向の屈折率よりも小さいために、SrCO3微粒子を面内配向させることにより、厚み方向のレターデーション(Rth)を減少させることが可能であり、ある一軸方向に配向させることにより、その方向の屈折率を減少させることが可能である。ここで、粒子をある一軸方向に配向させるための手段としては、後述するフィルムの延伸処理が好ましい例として挙げられる。
無機微粒子の種類も異なる2種以上の混合であってもよい。2種以上の微粒子を混合して使用する場合、1種はTiO2、ZnO、Nb25、SrCO3、及びSrTiO3から選択されるのが好ましい。また、他の1種はSnO2、Fe23及びWO3から選択されるのが好ましい。さらに好ましい組み合わせとしては、ZnOとSnO2、ZnOとWO3又はZnO、SnO2とWO3などの組み合わせを挙げることができる。2種以上の微粒子を混合して用いる場合、それぞれの粒径及び/又は形状が異なっていてもよい。
本発明に用いる無機微粒子の調製方法については特に限定されないが、ゾル−ゲル法又はゲル−ゾル法により作製された微粒子であるのが好ましい。中でも、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法;杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)に記載のゲル−ゾル法;が好ましい。またDegussa社が開発した、塩化物を酸水素炎中で高温加水分解することにより酸化物の微粒子を作製する方法も好ましい。
無機微粒子が酸化チタン(TiO2)の場合、上記ゾル−ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素炎中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法及び塩素法を用いることもできる。さらにゾル−ゲル法として、Barbeらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、Burnsideらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
[無機粒子に吸着させる有機化合物]
本発明の組成物は、有機化合物の分子を吸着させた無機微粒子を含有する。ここで、無機粒子に吸着している分子は有機化合物の分子であって、吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する。該有機化合物の例には、液晶性化合物が含まれるとともに、液晶形成をしない、即ち非液晶性化合物であっても、液晶化合物の分子のコア部となり得る部分構造を有している化合物も含まれる。
液晶化合物の分子のコア部を形成し得る基についてさらに説明する。本発明において、液晶分子のコア部とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基であり、一般的に、メソゲンとも称される構造のことをいう。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。前記液晶分子のコア部を形成し得る基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁〜第16頁の記載、及び、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。好ましくは、サーモトロピック液晶の残基であり、さらに好ましくは、棒状液晶及びディスコティック液晶の残基である。棒状液晶ではネマティック相及びスメクティックA相を示す液晶の残基がより好ましく、ディスコティック液晶ではディスコティックネマティック相を示す液晶の残基がより好ましい。
ディスコティック液晶の残基の好ましい例には、ベンゼン、トリフェニレン、トルキセン、トリオキサトルキセン、アントラキノン、フタロシアニンまたはポリフィリン、マクロサイクレン、ビス(1,3−ジケトン)銅錯体、テトラアリールビピラニリデン、テトラチアフルバレン、及びイノシトールが含まれる。
液晶化合物の分子のコア部を形成し得る基は、棒状液晶の残基であるのがより好ましい。棒状液晶のメソゲン基あるいはコア部と呼ばれる剛直な液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格としては、一般式(I)で示される基が挙げられる。
一般式(I)
Figure 2008101176
上記一般式(I)中、L1およびL2は単結合または二価の連結基を表す。二価の連結基としては−O−、−S−、−CO−、−NR−(Rは水素原子(H)、メチル基及びエチル基より選ばれる置換基を表す)、−CH=N−、−N=N−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
二価の鎖状基としては、アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基が好ましい。これらは分岐または置換基を有していてもよい。より好ましい炭素数としては2〜8であり、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチル−テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−ブテニレン基、2−ブチニレン基が好適な例として挙げられる。
二価の環状基の例としては、後述するCy1〜Cy3と同様である。
上記一般式(I)中、Cy1、Cy2およびCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表す。5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。単環でも縮合環でもよく、単環が好ましい。芳香族環、脂肪族環および複素環のいずれでもよい。このうち、芳香族環としては、ベンゼン環(特に1,4−フェニレン基)、ナフタレン環(特にナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基)が好ましい例として挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環(特に1,4−シクロへキシレン基)、ビシクロ[2.2.2]オクタン環が好ましい例として挙げられ、複素環としては、ピリジン環(特にピリジン−2,5−ジイル基)、ピリミジン環(特にピリミジン−2,5−ジイル基)、チオフェン環(特にチオフェン−2,5−ジイル基)、ジオキサン環が好ましい例として挙げられる。また、Cy1、Cy2およびCy3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数が2〜6のアシルアミノ基が挙げられる。
上記一般式(I)中、mは0〜2の整数を表す。mが2の場合、2つのL2及びCy2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
棒状液晶の残基の好ましい例には、ビフェニル基、フェニレンカルボニルオキシビフェニル基、カルボニルオキシビフェニル基、ターフェニル基、ナフチレンカルボニルオキシフェニル基、フェニレンエテニレンカルボニルオキシビフェニル基、フェニレンエチニレンフェニル基、安息香酸フェニルエステル基、ベンジリデンアニリン基、アゾベンゼン基、アゾキシベンゼン基、スチルベン基、フェニレンエチニレンカルボニルオキシビフェニル基、ナフチレンビフェニル基、及びそれらのベンゼン環が飽和になったものあるいは複素環に置き換わったものが含まれる。
本発明では、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子は、無機微粒子に吸着した状態で組成物中に含有される。従って、該分子が有する前記吸着基は、無機微粒子に容易に吸着し得る官能基であるのが好ましい。この官能基の好ましい例は、無機微粒子の種類(金属種)等により異なるが、例えば、無機微粒子が金を含む材料からなる場合は、メルカプト基、ジスルフィド基が好ましい例として挙げられる。また、無機微粒子が酸化物(例えば金属酸化物)からなる場合は、COOH基、OH基、SO3H基、及び後述する一般式(1)又は(2)で表される基のような酸性基、アミノ基あるいはオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート又はα−ケトエノレートのようなキレート化基、後述する一般式(3)で表される基、及び後述する一般式(4)、(5)又は(6)で表される基が好ましい例として挙げられ、COOH基またはその塩及び後述する一般式(1)、(2)、又は(3)で表される基がより好ましい例として挙げられる。また、無機微粒子が金属炭酸塩からなる場合は、吸着基は、後述する一般式(4)、(5)又は(6)で表される基、COOH基またはその塩、或いは後述する一般式(1)又は(2)で表される基が好ましい例として挙げられ、COOH基またはその塩、或いは後述する一般式(1)又は(2)で表される基がより好ましい例として挙げられる。
好ましい吸着基の例として、下記一般式(1)で表されるホスホン酸基もしくはその塩、下記一般式(2)で表されるリン酸モノエステル基もしくはその塩、又は下記一般式(3)で表される基が挙げられる。
一般式(1)
−PO3m
一般式(2)
−OPO3m
一般式(3)
−Si(R13-n(OR2n
上記一般式(1)及び(2)中、Xはそれぞれ独立に、水素原子、あるいは1価もしくは2価の有機又は無機カチオンを表し、mは1又は2であるが、mが1の場合は、Xは2価の有機又は無機カチオンであり、mが2の場合は、2個のXはそれぞれ水素原子あるいは1価の有機又は無機カチオンである。
前記式中、mが2であり、2つのXがともに1価の有機又は無機カチオンの場合、双方は同一であっても異なっていてもよいが、コスト上、同一のものが好ましい。
1価の有機又は無機カチオンとしては、リン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の有機カチオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、ジ(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオンなどが例として挙げられ、この中でもテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオンが好ましく、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンが更に好ましい。また、1価の無機カチオンとしては、アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが例として挙げられ、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオンが更に好ましい。
2価の有機又は無機カチオンとしては、リン酸の塩を形成し得るものであればよく、2価の有機カチオンとしては、上記有機アンモニウムがメチレン基、アルキルエーテル等の連結基で連結したものが例として挙げられる。また、2価の無機カチオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオンなどが例として挙げられ、この中でもカルシウムイオンが好ましい。
上記一般式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。前記アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基及びn−ブチル基が含まれる。nは2又は3が好ましく、3であることがより好ましい。
前記吸着基が上記一般式(3)で表される基である場合、無機微粒子としては金属のカルコゲナイドであることが、高い吸着性を示すという点で好ましい。金属のカルコゲナイドの好ましい例としては前記した通りである。金属のカルコゲナイドの中でも特に金属酸化物(SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、Fe23、WO3、ZnO、Nb25等)がより好ましい。金属酸化物として、好ましくは、SiO2、Al23、TiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、Nb25、より好ましくは、TiO2、ZrO2、SnO2、ZnO、Nb25、更に好ましくはTiO2、ZrO2、ZnOである。
また、下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される吸着基も好ましい。
Figure 2008101176
式(4)〜(6)中、*は、液晶のコア部となり得る基に直接又は連結基を介して結合する部位を示す。
上記一般式(4)中、R3は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。前記アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基及びn−ブチル基が含まれ、i−プロピル基がよりさらに好ましい。
前記吸着基と、液晶化合物のコア部を形成し得る基との間に連結基が存在してもよい。連結基としては、例えば、炭素数1〜18、好ましくは1〜6の置換もしくは無置換の直鎖あるいは分岐アルキレン;炭素数1〜18、好ましくは1〜6のエーテル結合が介在する直鎖あるいは分岐アルキレン;炭素数6〜18、好ましくは6〜12の置換もしくは無置換のアリーレン;O、NH、S、CONH、NHCO、及び5又は6員複素環が挙げられる。
前記無機微粒子に吸着させる分子は、高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有しているのが好ましい。該置換基と高分子材料との親和性については、高分子材料と該置換基のそれぞれの溶解度パラメータ(SP値)を参考に推測することができ、sp値がお互いに近いことが好ましい。ここで、sp値の計算は例えばJournal of Paint Technology誌,42巻,76頁,1970年に記載のHoyらによる方法を参照することができる。また、高分子材料のSP値は、以下の式
SP=a1×SP1+a2×SP2+a3×SP3+…
に従い計算により求めることができる。ここで、式中のSP1、SP2およびSP3は各重合体の単量体成分に含まれる単量体を単独で重合した際に得られるそれぞれのホモポリマーのSP値を表し、「POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION」に記載されている値を引用した値である。また、上記式中のa1、a2およびa3は各重合体を形成するのに用いた単量体成分に含まれる単量体のそれぞれの質量分率を表す。
該置換基の好ましい例は、当然のことながら用いる高分子材料によって異なる。多くの場合、直鎖あるいは分岐アルキル基が有効に機能する場合が多いが、例えばPMMAなどのアクリル系ポリマーの場合には、CO基、COO基を置換基として有するものが好ましく、セルロースアシラート系ポリマーの場合には、エーテル基を置換基として有するもの(好ましくはアルコキシアルキルオキシ基、特に好ましくは3−メトキシブトキシ)、糖誘導体を置換基として有するものが好ましい。
以下に本発明に用いられる、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する有機化合物の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらのみに限られるものではない。なお、下記には、前記有機化合物の具体例として、液晶性化合物とともに、例示化合物C−4及びC−5のように非液晶性化合物も例示する。
Figure 2008101176
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[吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子]
本発明において、吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子の無機微粒子への吸着の態様については限定されず、物理的吸着及び化学的吸着の双方の態様、及びその中間的な態様のいずれも含まれる。中でも、化学的吸着が好ましい。該化合物を吸着させた無機微粒子は、具体的には、無機微粒子と該化合物とを混合して、接触させ、結果として該化合物を無機微粒子に物理吸着及び/又は化学吸着させることによって得られる。混合及び接触の際には溶媒を用いることもでき、また、下記高分子ドープ液の状態で行うことができる。無機微粒子の該化合物の吸着の有無については、紫外可視吸収スペクトル、赤外吸収スペクトル、熱分析を測定することにより確認できる。無機微粒子に対する該化合物の吸着は、単層での被覆であることが好ましい。吸着量は、粒子のサイズにより単位質量当りの表面積が変化するので、好ましい量はそれに依存して変化するが、10〜300質量%であるのが好ましく、20〜150質量%であるのがより好ましい。
なお、本発明の組成物をドープや塗布液等として調製し、異方性フィルム等の形成に用いる場合は、ドープ及び塗布液中において有機化合物の分子が無機微粒子に吸着していなくてもよく、例えば、ドープを流延又は塗布液を塗布等した後、乾燥する過程において、有機化合物の分子の無機微粒子への吸着が進行してもよい。
なお、前記所定の基を有する分子を無機微粒子に吸着させる際に、分子の特定位置に吸着基を導入することにより、無機微粒子上に端部で吸着する、あるいは、面で吸着することを制御することができる。また吸着基種と粒子面の特性とを組み合わせることにより無機粒子の特定部位に分子を吸着させることもできる。
本発明の組成物における、所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の好ましい含有量は、組成物の用途によって変動するが、光学フィルムを作製する場合は、良好な成型性及び光学異方性の発現の観点から、一般的には、組成物中に0.5〜20質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
[高分子材料]
本発明において「高分子材料」の用語は、天然高分子及び合成高分子のいずれも含む意味で用いる。本発明の組成物からフィルムを作製する場合は、フィルム状に成型可能な高分子材料を用いるのが好ましい。フィルム状に成型可能な高分子材料としては、例えば、セルロース誘導体、ポリカーボナート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、シンジオタクチックポリステレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリラート、ポリエステルスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン系樹脂、ブロム化フェノキシ樹脂等が挙げられる。中でも、COC、COPと呼ばれる環状ポリオレフィン系樹脂、及びセルロース誘導体が好ましい。特に好ましくは、セルロースアシラートである。
以下、セルロースアシラートついて、詳細に説明する。
[セルロースアシラート]
本発明に高分子材料として使用可能なセルロースアシラートとしては、例えば、セルローストリアシラート、セルロースアセタートプロピオナートが挙げられる。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース化合物を混合して用いてもよい。
以下、セルロースアシラートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
[セルロースアシラート原料綿]
本発明に使用可能なセルロースアシラート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシラートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、特に限定されるものではない。
前記の特定のセルロースアシラートは、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)及び(II)を満足するセルロースアシラートであることが好ましい。
式(I) :2.0≦A+B≦3.0
式(II) :0<B
上記式中、Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基の置換度を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシラートは、これらの水酸基の一部又は全部を、アシル基によってエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
[セルロースアシラートの重合度]
セルロースアシラートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセタートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシラートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシラートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシラートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシラートは、通常の方法で合成したセルロースアシラートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシラートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシラートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシラートを合成することができる。セルロースアシラートは、使用時にはその含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。通常のセルロースアシラートは、2.5〜5質量%の割合で含水していることが知られている。このような場合、上記好ましい含水率にするため、セルロースアシラートを乾燥することが好ましい。乾燥方法については、目的とする含水率にすることができる方法であれば特に限定されない。
また、本発明に使用可能なセルロースアシラートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
本発明の組成物は、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子、好ましくはさらに高分子材料との親和性を有する置換基を有する分子を吸着させた無機微粒子の少なくとも一種と、高分子材料の少なくとも一種とを含むことは必須であるが、これらを二種以上含むことは勿論、該組成物の所望の物性発現を損なわない限り、以下の他の添加剤を含んでいてもよい。また、光感応性異性化基を有する化合物を含むことも可能である。これらについては、高分子、41(12)、(1992年)p884、「クロミック材料と応用」(シーエムシー刊)p221、「メカノケミストリー」(丸善刊)p21、「高分子論文集147巻10号」(1991年)p771等にも具体的に記載されている。
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、所望により、所定の機能を付与し得る添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子(所定の基を有する分子が吸着していない微粒子)及び光学特性調整剤等が含まれる。
[紫外線吸収剤]
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。本発明の組成物を液晶表示装置の光学フィルム等の部材の原料として用いる場合は、紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、上述のベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、高分子材料(好ましくはセルロースアシラート)に対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であれば、例えば、本発明の組成物からフィルムを作製した場合に、フィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
[劣化防止剤]
本発明の組成物は劣化防止剤を含有していてもよい。前記劣化防止剤は、セルロースアシラート等の高分子材料が劣化及び分解するのを防止する目的で添加されてもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
[可塑剤]
本発明の組成物は、可塑剤を含有していてもよい。前記可塑剤としては、リン酸エステル及び/又はカルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
[剥離促進剤]
本発明の組成物は、用途に応じて剥離促進剤を含有していてもよい。前記剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
本発明の組成物は、用途に応じて赤外吸収剤を含有していてもよい。前記赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
[染料]
本発明の組成物は、色相調整のための染料を含有していてもよい。染料の含有量は、セルロースアシラート等の高分子材料に対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。この様に染料を含有させることにより、例えば、本発明の組成物からフィルムを作製した場合に、ライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。
[マット剤微粒子]
本発明の組成物を、例えばフィルムの作製に用いる場合は、マット剤として微粒子を加えてもよい。マット剤として使用可能な微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが、濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができ、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
なお、本発明の組成物は、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する分子、好ましくは高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する分子、を吸着させた無機微粒子を含有するので、かかる無機微粒子がマット剤としても機能する場合は、別途マット剤を添加しなくても、同様の効果が得られる場合もある。
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次/2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
[化合物添加の比率]
本発明の組成物からフィルムを作製する場合は、組成物中における分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシラート等の高分子材料の質量に対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述した無機微粒子に吸着した所定の基を有する化合物、及び所望により添加される、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などである。さらに、分子量が2000以下の化合物の総量が上記範囲内であることがより好ましい。これら化合物の総量を5質量%以上とすることにより、セルロースアシラート等の高分子材料単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなる。またこれら化合物の総量を45質量%以下とすることにより、セルロースアシラートフィルム等の高分子フィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(フィルムからの泣き出し)が抑止される傾向にあり好ましい。
なお、本発明の組成物中に、所望により添加される添加剤は、固体でもよく油状物でもよい。その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、20℃以下の紫外線吸収剤と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができる。具体的には、特開2001−151901号公報に記載の方法を採用できる。
[本発明の組成物の調製例]
高分子材料としてセルロースアシラートを用いる場合、本発明の組成物は、例えば、以下の方法により調製できる。まず、セルロースアシラートの溶液を調製し、該溶液に、前記所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子を添加する。その他、必要に応じて、種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等)を添加することができる。前記所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子、及び他の添加剤の添加時期については特に限定されない。同時に添加してもよいし、いずれかを先に添加してもよい。
本発明の組成物をドープとして調製し、ソルベントキャスト法によりフィルムを作製してもよい。以下、セルロースアシラートを用いてソルベントキャスト法によりフィルムを作製する例について説明する。
まず、セルロースアシラートの溶液を調製する。ドープの調製に用いる主溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、及び炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
また、塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、例えば公開技法(公開技報2001−1745、12頁〜16頁、2001年発行、発明協会)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよい。
その他、ソルベントキャスト法に用いられるセルロースアシラート溶液の調製方法、例えば、用いる溶媒種、その溶解方法等については、以下の特許文献に開示されているものを、好ましい態様として挙げることができる。
特開2000−95876号、特開平12−95877号、特開平10−324774号、特開平8−152514号、特開平10−330538号、特開平9−95538号、特開平9−95557号、特開平10−235664号、特開平12−63534号、特開平11−21379号、特開平10−182853号、特開平10−278056号、特開平10−279702号、特開平10−323853号、特開平10−237186号、特開平11−60807号、特開平11−152342号、特開平11−292988号、特開平11−60752号、特開平11−60752号の各公報。
これらの特許文献には、セルロースアシラート溶液の調製に用いる好ましい溶媒についてだけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、それらも、本発明においても好ましい態様である。
ドープ中には、前記所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子、及び所望により添加される添加剤を添加する。これらの剤は、ドープ調製工程のいずれの時期に添加してもよく、ドープ調製工程の最後にこれらの添加剤を添加してもよい。
例えば、紫外線吸収剤は、セルロースアシラート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。また、フィルム中に染料を含有させる場合も同様に、セルロースアシラート溶液の調製の際に、セルロースアシラートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
また、フィルム中に微粒子を含有させる場合は、2次平均粒子サイズの小さな粒子を有するセルロースアシラートフィルムを得るためには、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシラート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシラートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化ケイ素微粒子の分散性がよく、二酸化ケイ素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシラートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
[セルロースアシラートフィルムの製造工程]
(溶解工程)
セルロースアシラート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法又は高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシラート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
セルロースアシラート溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、商品名、島津製作所)で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシラート溶液の透明度を算出する。
(流延、乾燥、巻き取り工程)
次に、調製したセルロースアシラート溶液を流延して、フィルム状に成型する。セルロースアシラートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセタートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を広く採用することができる。具体的には、まず、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシラート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
例えば、作製したセルロースアシラートフィルムを、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる場合には、通常の溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
[延伸処理]
上記方法により作製したセルロースアシラートフィルムが、所望の光学特性を有する場合は、そのまま所定の用途に供することができる。さらに、延伸処理を施してレターデーション値を調整してもよい。特に、セルロースアシラートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。フィルムは、1〜200%の延伸を行うことが好ましく、1〜100%の延伸を行うことがより好ましく、1〜50%の延伸を行うことがさらに好ましい。
上記方法により作製されたセルロースアシラートフィルムを、偏光膜の保護膜等として偏光板の一部材として利用する場合は、作製される偏光板を斜めから見たときの光漏れの抑制のためには、偏光膜の透過軸とセルロースアシラートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光膜の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光膜とロールフィルム状のセルロースアシラートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
乾燥後得られるセルロースアシラートフィルムの厚さは、使用目的によって異なり、5〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜300μmの範囲であることがより好ましく、30〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシラートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
フィルムの幅方向のRe
(590)値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
本発明の組成物から形成されたフィルムのRe値とRth値をそれぞれ好ましい範囲に制御するためには、使用する無機微粒子に吸着させた前記所定の基を有する分子の種類及び添加量、ならびにフィルムの延伸倍率を適宜調整することが好ましい。特に、本発明では、無機微粒子に吸着させた前記分子の中から、所望のRth値を達成し得るレターデーション制御剤を選択し、かつ、所望のRe値が得られるように、該レターデーション制御剤の添加量及びフィルムの延伸倍率を適宜設定することにより、所望のRe値及びRth値を有するフィルムを得ることができる。
以下、本発明の組成物から形成されたフィルムの特性について、用途に応じて好ましい範囲を説明する。
〔フィルムの光学特性〕
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
Figure 2008101176
式(2)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
注記:
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明の組成物から形成されたフィルムを、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置の視野角を広くするための光学フィルムとして使用する場合は、フィルムのRe(λ)値及びRth(λ)値は、それぞれ、以下の式(a)及び(b)を満たすのが好ましい。また特に前記フィルムが、偏光板の液晶セル側の保護膜に用いられる場合に好ましい。
式(a): 0nm≦Re(590)≦200nm
式(b): 0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
下記式(a−1)及び(b−1)を満たすのが、さらに好ましい。
式(a−1): 30nm≦Re(590)≦150nm
式(b−1): 30nm≦Rth(590)≦300nm
本発明の組成物から形成されたフィルムをVAモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
[フィルムの透湿度]
本発明の組成物から形成されたフィルムを液晶表示装置の光学補償シートとして用いる場合は、フィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24h以下とすることにより、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。また、前記フィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えにくくなり、好ましい。また、前記フィルムの透湿度を400g/m2・24h以上とすることにより、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、前記フィルムによって接着剤が乾燥しにくくなり、接着不良を生じにくくできる。
フィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる傾向にある。そこで、本発明における透湿度は、膜厚を80μmに換算した値として述べている。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、フィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後重量−調湿前重量で求める。
[フィルムの残留溶剤量]
本発明では、フィルム中の残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。前記フィルムを液晶性組成物からなる光学異方性層の支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
[フィルムの吸湿膨張係数]
前記フィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、前記フィルムを光学補償フィルムの支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
[表面処理]
前記フィルムに、所望により表面処理を行って、フィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着性を改善してもよい。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[アルカリ鹸化処理]
アルカリ鹸化処理は、フィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法、又は鹸化液をフィルムに塗布する方法により実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をフィルムに対して塗布するために、濡れ性がよく、また鹸化液溶媒によってフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
[機能層]
本発明の組成物から形成されたフィルムは、光学用途と写真感光材料に用いられるのに適する。特に光学用途として、液晶表示装置の部材として用いられるのが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、及び該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VA及びHANが好ましい。
前述の光学用途に前記フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与するのが好ましい。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。これらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
[用途(偏光板)]
本発明の組成物から形成されたフィルムの用途について説明する。
本発明の組成物から形成されたフィルム、特にセルロースフィルムは、偏光板保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたフィルム(好ましくはセルロースフィルム)をアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、前記フィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが得に好ましい。
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の組成物から形成されたフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
[液晶表示装置]
本発明の組成物から形成した前記フィルム(好ましくはセルロースフィルム)を光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、前記フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、一般的に、二枚の電極基板の間に液晶を挟んでなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、及び該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。本発明の組成物からなる前記フィルムを、この光学補償フィルムとして組み込んでもよいし、偏光膜の保護膜として組み込んでもよい。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明の組成物から形成されたフィルムは、様々な表示モードの液晶表示装置の光学部材(例えば、光学補償フィルム及び偏光膜の保護膜等)として用いることができる。具体的には、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、前記フィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
(TN型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)を、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)の記載に従って作製することができる。
(STN型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)を、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
(VA型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
(IPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、IPSモード及びECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置及びECB型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体、又は偏光板の保護膜としても有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において前記フィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に前記フィルムを用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
(OCB型液晶表示装置及びHAN型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートとして、その一部の支持体として、又は偏光板の保護膜としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質及び光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)の記載に従って作製することができる。
(反射型液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シート等としても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO98/48320号パンフレット、特許登録第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00/65384号パンフレットの記載に従って作製することができる。
(その他の液晶表示装置)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シート等としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))の記載に従って作製することができる。
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の組成物から形成されたフィルム(好ましくはセルロースアシラートフィルム)は、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、前記フィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、前記フィルムを好ましく用いることができる。
本発明の組成物は、上記用途に限定されず、ディスプレイ材料を始め、オプトエレクトロニクス材料、フォトニクス材料等の作製に用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
(針状二酸化チタン粒子の製造)
J.Am.Chem.Soc誌、第125巻、10518頁、2003年に記載の方法(ゾル−ゲル法)に順じて、針状二酸化チタンの粒子を形成した。粒子の粒子サイズ、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から求めた。その結果、粒子サイズは300nm、アスペクト比は5であった。
[実施例2]
(異方性炭酸塩粒子の製造)
金属イオン源としての0.2mol/Lの水酸化ストロンチウム懸濁液1,000mL(水600mL、メタノール400mL)に、炭酸源としての0.1mol/Lの炭酸アンモニウム水溶液600mLを攪拌混合して反応させた。反応液中のpHは12.7であった。
次いで、反応液を攪拌しながら、炭酸源としての炭酸ガスを、金属イオン源より過剰に供給し、反応液中に白色沈殿を形成した。
この反応液に対して濾過および十分な水洗を行った。得られた沈殿は、乾燥後、メノウ乳鉢でこれを粉砕させて、異方性無機粒子としての炭酸ストロンチウム結晶T−1を得た。粒子の粒子サイズ、アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から求めた。その結果、粒子サイズは300nm、アスペクト比は5であった。
[実施例3]
(所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の調製−1)
表1に示す試料No.4〜8のレターデーション制御剤として、等質量の無機微粒子(実施例1に従って形成した針状TiO2、アスペクト比5)、及び無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する化合物、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物(例示化合物C−1、C−4、又はC−11)とを、100倍容量部のメタノールに分散し、30分間超音波処理した。得られた分散物を減圧濃縮し溶媒を除去し、前記それぞれの化合物の分子が吸着した無機微粒子を得た。前記化合物の分子の吸着の有無は、紫外可視吸収スペクトルにより確認した。
(所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の調製−2)
表1に示す試料No.9〜10のレターデーション制御剤として、等質量の無機微粒子(実施例1に従って形成した針状TiO2、アスペクト比5)、及び無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する化合物、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物(例示化合物C−51)を、100倍容量部のアセトニトリルに分散し、30分間超音波処理した。得られた分散物を減圧濃縮し溶媒を除去し、前記化合物の分子が吸着した無機微粒子を得た。前記化合物の分子の吸着の有無は、紫外可視吸収スペクトルにより確認した。
(セルロースアセテートフィルムの作製−1)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分を、ミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート(重合度:300)100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
別のミキシングタンクに、表1に示すレターデーション制御剤のそれぞれと、メチレンクロライド87質量部と、メタノール13質量部とを投入し、加熱しながら攪拌して、各レターデーション制御剤溶液を調製した。
レターデーション制御剤溶液36質量部にセルロースアセテート溶液474質量部を徐々に添加、混合させ、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション制御剤の量は、セルロースアセテート100質量部に対して表1に記載の質量部を添加するように、各レターデーション制御剤溶液を調製した。
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、160℃の条件で、テンターを用いて15%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表1に示す。なお、表1のNo.1はレターデーション制御剤溶液を加えない以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。また、表1中のフィルムNo.4〜10についての添加量とは、所定の有機化合物が吸着した針状TiO2の添加量である。
Figure 2008101176
針状TiO2のみの添加の場合はドープへの分散が極めて不十分なため実験できなかった。
比較化合物(1)
Figure 2008101176
表1の結果から分かるように、本発明の実施例(No.4〜10)においては、比較例に対し作製されるフィルムのRe(590)、Rth(590)の発現における優位性が認められた。特に、吸着基として一般式(3)で表される基を有する化合物で処理した針状TiO2を添加した場合(No.9及び10)には顕著な優位性が認められた。
[実施例4]
(所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の調製−3及びセルロースアセテートフィルムの作製−2)
実施例3で用いたのと同様の無機粒子と、下記の例示化合物を用いて、吸着無機微粒子を調製した。
具体的には、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する化合物、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物として、表2に示す例示化合物C−16又はC−19を用いた以外は、実施例3と同様に、所定の例示化合物の分子が吸着した無機微粒子を調製した。
この所定の例示化合物の分子が吸着した無機微粒子(レターデーション制御剤)の量が、セルロースアセテート100質量部に対して表2に示す添加量となるように、それぞれの吸着無機微粒子とセルロースアセテートとを混合して組成物を調製し、160℃の条件での横延伸しなかった以外は、実施例3と同様にして、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。なお、表2のNo.1はレターデーション制御剤溶液を加えない以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。また、表2中のフィルムNo.2及び3についての添加量とは、所定の有機化合物が吸着した針状TiO2の添加量である。
Figure 2008101176
針状TiO2のみの添加の場合はドープへの分散が極めて不十分なため実験できなかった。
表2の結果から分かるように、本発明の実施例(表2中のNo.2〜3)においては、比較例に対し作製されるフィルムのRth(590)発現における優位性が認められた。
[実施例5]
(所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子の調製−4)
表3に示す試料No.3〜8のレターデーション制御剤として、実施例2記載の方法で調製した無機微粒子(針状SrCO3、アスペクト比5)、及び無機粒子への吸着基と液晶性化合物のコア部を形成し得る基を有する、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物(例示化合物C−4、C−5、C−31、C−36、C−41又はC−44)を、無機微粒子100質量部に対して該化合物が5質量部の割合で、100倍容量部のメタノールに分散し、30分間超音波処理した。得られた分散物を減圧濃縮し溶媒を除去し、前記化合物の分子が吸着した無機微粒子を得た。前記化合物の吸着の有無は、紫外可視吸収スペクトルにより確認した。
(セルロースアセテートフィルムの作製−3)
実施例3と同様にして、セルロースアセテート溶液、及び、表3に示す各レターデーション制御剤を含むドープを調製した。得られたドープを、バンド流延機を用いて流延し、160℃の条件での横延伸をせずに、セルロースアセテートフィルム(厚さ:80μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表3に示す。なお、表3のNo.1はレターデーション制御剤溶液を加えない以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。また、表3中のフィルムNo.3〜8についての添加量とは、所定の有機化合物が吸着した針状SrCO3の添加量である。
Figure 2008101176
なお、上記と同様にしてセルロースアセテート溶液を調製し、針状SrCO3のみを添加してドープを調製することを試みたが、溶液への針状SrCO3の分散が極めて不十分なため実験できなかった。
比較化合物(2)
Figure 2008101176
本発明の実施例(No.3〜8)においては、添加量の効果を含め、比較例に対し作製されるフィルムのRth(590)発現抑制効果における優位性が認められた。特に、吸着基として一般式(1)又は(2)で表される基を有する化合物で処理した針状SrCO3を添加した場合には顕著な優位性が認められた。
[実施例6]
(環状ポリオレフィンP−1の合成)
Makromol.Chem.誌,193巻,2915頁,1992年に記載の方法に準じて、環状ポリオレフィンP−1(Mw=88,000)を合成した。ここで、MwはTSK Gel GMHxL、TSK Gel G4000 HxL、TSK Gel G2000 HxL (いずれも東ソー(株)の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した質量平均分子量である。
Figure 2008101176
(環状ポリオレフィンフィルムの作製−1)
下記環状ポリオレフィン溶液組成の各成分を、ミキシングタンクに投入し、攪拌しながら各成分を溶解し、環状ポリオレフィン溶液を調製した。
(環状ポリオレフィン溶液組成)
環状ポリオレフィン(Mw=88,000) 100質量部
メチレンクロライド 400質量部
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が10質量%のフィルムを、140℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸して、環状ポリオレフィンフィルム(厚さ:80μm)を製造した。作製した環状ポリオレフィンフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表4(No.1)に示す。
(環状ポリオレフィンフィルムの作製−2)
表4に示す試料No.3〜6のレターデーション制御剤として、所定の基を有する分子を吸着させた無機微粒子を下記のように調製した。
実施例2記載の方法で調製した無機微粒子(針状SrCO3、アスペクト比5)、及び無機粒子への吸着基と液晶性化合物のコア部を形成し得る基を有する、又は高分子材料との親和性を有する置換基をさらに有する化合物(例示化合物C−4、C−10、C−31、又はC−44)を、無機微粒子100質量部に対して該化合物が5質量部の割合で、100倍容量部のメタノールに分散し、30分間超音波処理した。得られた分散物を減圧濃縮し溶媒を除去し、前記化合物の分子が吸着した無機微粒子を得た。前記化合物の吸着の有無は、紫外可視吸収スペクトルにより確認した。
この所定の例示化合物の分子が吸着した無機微粒子(レターデーション制御剤)の量が、環状ポリオレフィン 100質量部に対して表2 No.3〜6に示す添加量となるように、上述の(環状ポリオレフィンフィルムの作製−1)と同様の方法により、それぞれの吸着無機微粒子と環状ポリオレフィンとを混合して組成物を調製し、さらに、環状ポリオレフィンフィルム(厚さ:80μm)を製造した。作製したポリオレフィンフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表4に示す。
(環状ポリオレフィンフィルムの作製−3)
表4に示す試料No.2、および7〜10のレターデーション制御剤として、例示化合物C−4、C−10、C−31、又はC−44を環状ポリオレフィン100質量部に対して表2に示す添加量となるように用いた以外は、上述の(環状ポリオレフィンフィルムの作製−1)と同様の方法により、それぞれの吸着無機微粒子と環状ポリオレフィンとを混合して組成物を調製し、さらに、環状ポリオレフィンフィルム(厚さ:80μm)を製造した。作製したポリオレフィンフィルムについて、波長590nmにおけるRe(590)値及びRth(590)値を、上述の方法により測定した。結果を表4に示す。
Figure 2008101176
本発明の実施例(No.3〜6)においては、添加量の効果を含め、比較例に対し作製されるフィルムのRth(590)発現抑制効果における優位性が認められた。
これらのことから、無機粒子への吸着基と液晶化合物のコア部を形成し得る基とを有する有機化合物の分子、好ましくはさらに高分子材料との親和性を有する置換基を有する有機化合物の分子を吸着させた無機微粒子を添加した高分子組成物を用いることにより、かかる無機微粒子を添加しない高分子組成物を用いた場合、公知のレターデーション制御剤である円盤状化合物(比較化合物(1)や比較化合物(2))を添加した高分子組成物を用いた場合、又は該有機化合物を無機粒子に吸着させないで添加した高分子組成物を用いた場合に作製したフィルムでは実現できなかった、Re(590)及びRth(590)を有する新規なセルロースアシラートフィルムを作製できることが確認された。
また、前記レターデーション制御剤、即ち、所定の基を有する分子が吸着した無機微粒子は、セルロースアシレートフィルム及び環状ポリオレフィンフィルムのRth抑制効果にも優れていることが確認された。
以上記載した通り、本発明の組成物は、フィルム状に成型した場合には、液晶表示装置用光学フィルムとして、特に光学補償シートとして好適に用いることができる。

Claims (20)

  1. 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを少なくとも含有する組成物。
  2. 前記分子が液晶分子である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記分子が、前記高分子材料と親和性を有する置換基をさらに有する請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、カルボキシル基もしくはその塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表されるホスホン酸基もしくはその塩、又は下記一般式(2)で表されるリン酸モノエステル基もしくはその塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物:
    一般式(1)
    −PO3m
    一般式(2)
    −OPO3m
    式中、Xはそれぞれ独立に、水素原子、あるいは1価もしくは2価の有機又は無機カチオンを表し、mは1又は2であるが、mが1の場合は、Xは2価の有機又は無機カチオンであり、mが2の場合は、2個のXはそれぞれ水素原子あるいは1価の有機又は無機カチオンである。
  6. 前記無機粒子への吸着基の少なくとも一種が、下記一般式(3)で表される基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物:
    一般式(3)
    −Si(R13-n(OR2n
    式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。
  7. 前記無機粒子が形状異方性を有する粒子である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 前記無機粒子が形状異方性および複屈折性を有する粒子である請求項7に記載の組成物。
  9. 前記無機粒子が、金属酸化物の粒子である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記無機粒子が、炭酸ストロンチウムの粒子である請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記高分子材料が、セルロースアシラート系ポリマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 前記分子が、棒状分子である請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物から形成されたフィルム。
  14. さらに延伸された請求項13に記載のフィルム。
  15. 請求項13又は14記載のフィルムを用いることを特徴とする偏光板保護フィルム。
  16. 請求項13又は14記載のフィルムを用いることを特徴とする光学補償フィルム。
  17. 請求項15記載の偏光板保護フィルム及び/又は請求項16記載の光学補償フィルムを用いることを特徴とする液晶表示装置。
  18. 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子と、高分子材料とを少なくとも含有する組成物からなるフィルムを形成することを含む光学フィルムの製造方法。
  19. 前記組成物から形成されたフィルムをさらに延伸することを含む請求項18に記載の方法。
  20. 無機粒子への吸着基及び液晶化合物のコア部を形成し得る基を有する分子を吸着させた無機微粒子からなる高分子フィルム用レターデーション制御剤。
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