JP5330061B2 - セルロースエステルフィルム、位相差板、偏光板、ならびに液晶表示装置 - Google Patents
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Description
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求がきわめて厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。
具体的には、光学特性の異なる2種類の位相差層を用いることにより斜め方向から見ても黒の表示が鮮明で無彩色のVAモード液晶表示装置を得る方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、上記方法では偏光板を作製した後に位相差フィルムを貼り合わせる工程が必要である。このため、製造工程が煩雑となり、生産性が低く、製造コストが高いという問題を有しており、その改良が求められていた。
特許文献3では、シクロヘキシル環とベンゼン環をエステル結合によって連結した棒状化合物がレターデーション発現剤として用いられているが、ここで用いられている以外の公知の液晶性棒状化合物については、逆分散剤とともにセルロースフィルムに添加した際のレターデーション発現性に関する知見は知られていない。特許文献4では、ある種のセルロースエステルフィルムの透湿性改良添加剤としてシクロヘキシル環とベンゼン環をエステル結合によって連結した化合物を用いることができることが開示されているが、そのレターデーション発現性については知られていない。
<1>下記一般式(I)で表される液晶化合物の少なくとも一種を含有し、さらに下記一般式(II)または(III)で表される化合物の少なくとも一種を含有し、配向方向に対して複屈折率Δn(550nm)が0より大きく、かつ下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
数式(1): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(2): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
<2>前記一般式(II)においてA1、A2、B1 およびB2が、それぞれ独立して、単結合または−COO−である化合物を含有することを特徴とする<1>に記載のセルロースエステルフィルム。
<3>前記一般式(II)においてM1 およびM 2 が、それぞれ独立して、置換されていてもよい下記の複屈折性付与基から選ばれる化合物を含有することを特徴とする<1>または<2>に記載のセルロースエステルフィルム。
<5>セルロースのエステル基の総置換度が2.40以上2.45未満であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
<6>フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
<7><1>〜<5>のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムからなることを特徴とする位相差板。
<8>前記<7>に記載の位相差板を含んでなることを特徴とする偏光板。
<9>前記<7>に記載の位相差板または<8>に記載の偏光板を含んでなることを特徴とする液晶表示装置。
<10>VAモードであることを特徴とする<9>に記載の液晶表示装置。
本発明一般式(I)で表わされる化合物について説明する。
一般式(I)で表される化合物は、液晶性化合物としては公知であり、例えば米国特許4,519,936号明細書、米国特許4,659,499号明細書、特開昭61−26898号公報、特開昭56−158739号公報などにその合成方法および液晶相転移温度、誘電異方性などについての記載がある。
L1およびL2は、好ましくは、単結合または、(*がシクロヘキシル環に連結する方向として)*−O−、*−CH2O−、*−C(=O)O−、*−OC(=O)−、*−NH−、*−NHC(=O)−、*−CH2−NH−、*−CH2NHC(=O)−であり、もっとも好ましくは単結合または、*−O−、*−C(=O)O−である。
Y1およびY2として好ましくは、炭素原子数12以下の置換もしくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは8以下の無置換のアルキル基である。
m1、m2は0から10までの整数である。m1、m2は0から2までの整数であることが好ましく、0であることがもっとも好ましい。mは0から4までの整数であり、0から2までの整数であることが好ましい。
一般式(I)中の二つのシクロヘキサン環について、シクロヘキサン環はシス体およびトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては限定されず、両者の混合物でも良い。液晶性の観点からは好ましくはトランス-シクロヘキサン環である。
以下に、式(I)で表される化合物の具体例を示す。
以下の化合物において、n=1〜8の整数、好ましくは、2,3,4,5であり、k=1〜8の整数、好ましくは、2,3,4,5である。
本発明で用いる一般式(I)で表される化合物の合成は既知の方法で行うことができる。合成方法はたとえば、特開昭61−26898号公報、特開昭56−158739号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明における、一般式(I)で表される化合物の含有量は、セルロース化合物100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.25〜20質量部であることがより好ましく、0.25〜10質量部であることがさらに好ましく、0.25〜5質量部であることが最も好ましい。
以下に、一般式(II)で表される化合物について詳細に説明する。
M1、M2は、それぞれ独立して、複屈折性付与基を示す。複屈折性付与基としては、200nm以上の波長域において、250〜400nmの間に吸収極大を持つ基を示し、好ましくは280〜380nmの間に吸収極大を持つ基を示す。好ましい例として下記に示す基を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、ハロゲン基等をあげることができる。
以下に、一般式(II)で表される化合物の好ましい例を具体的に示す。
以下に、一般式(III)で表される化合物について詳細に説明する。
A1、およびA2は単結合、―COO−基、二価の鎖状基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。B1、およびB2は単結合、―COO−基、二価の鎖状基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
以下に、一般式(III)で表される化合物の好ましい例を具体的に示す。
一般式(I)で表される化合物は、光学フィルム用のレターデーション制御剤(特に、レターデーション上昇)としての役割を果たす。特に延伸によるRe発現性および波長分散に優れたフィルムを得るためのレターデーション制御剤として好適な役割を果たす。一般式(II)、および一般式(III)で表される化合物は、光学フィルム用のレターデーション制御剤(特に、レターデーション上昇剤および波長分散制御剤)としての役割を果たす。特に延伸によるRe発現性に優れたフィルムを得るためのレターデーション制御剤として好適な役割を果たす。
光学フィルムのΔnについて説明する。
Δnは配向方向(以下TD方向と示す。)の屈折率から配向方向と直交する方向(以下MD方向と示す。)の屈折率を差し引いた値であるため、TD方向の屈折率の波長分散性よりも、MD方向の波長分散性が、より右肩下がり(左を短波長側、右を長波長側とおいたときのΔnの傾き)であれば、その差し引いた値は、
数式(1): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(2): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
を満足する。屈折率の波長分散性は、Lorentz−Lorenzの式で表されているように、物質の吸収に密接な関係にあるため、MD方向の波長分散性をより右肩下がりにするためには、TD方向に比較してMD方向の吸収遷移波長をより長波化できれば、数式(1)及び(2)を満たすフィルムを設計することができる。例えば延伸処理を行ったポリマー材料では、MD方向は分子の鎖に直交方向である。そのような高分子幅方向の吸収遷移波長を長波化することは高分子材料としては非常に困難である。
低分子化合物の屈折率の大きさがMD方向に比べてTD方向に大きければ、フィルムとしてTD方向に対して複屈折Δn(550nm)が正であることに問題がないが、逆に低分子化合物の屈折率の大きさがTD方向に比べてMD方向に大きくても高分子材料の屈折率がTD方向に大きく、フィルムとして複屈折Δn(550nm)が正であれば問題ない。
すなわち、本発明の一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種含有するセルロースフィルムは、配向処理されたのち、配向方向に対して屈折率Δn(550nm)が0より大きく、かつ、上記数式(1)、(2)を満たすものである。
本発明において、「セルロースエステルフィルム」とは、セルロースエステルを主成分とする組成物(以下、セルロース組成物とする。)から形成されるフィルムを意味する。本発明においては異なる2種類以上のセルロースエステルを混合して用いてもよい。セルロースエステルは、好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。以下、セルロースエステルとしてセルロースアシレートを例にして、本発明の好ましい態様を説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤・宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7〜8頁)に記載されており、本発明に対しては特に限定されるものではない。
数式(3): 2.0≦A+B≦3.0
数式(4): 0<B
(上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素原子数3以上のアシル基の置換度を表す。)
尚、セルロースアシレートがセルロースアセテートの場合、工業的に一般に用いられる酢化度とセルロースのエステル基の総置換度との関係は、下記式で表される。
エステル基の総置換度 =
(酢化度 × 162)/(6005− 酢化度 × 42)
本発明におけるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫・斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるセルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
本発明のセルロース組成物(以下、セルロースアシレート溶液もしくはドープともいう)には、上記一般式(I)で表される化合物のほか、種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤、染料、マット剤微粒子、赤外線吸収剤など光学特性調整剤等)を加えることができる。また、一般式(I)で表される化合物および他の添加剤の添加時期は、ドープ作製工程の何れにおいて添加してもよく、また、ドープ調製工程の最後に調製工程としてこれらの添加剤を添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止するために添加してもよい。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物を用いることができる。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル、多価アルコールの脂肪酸エステル類、および/または、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体(以下、炭水化物系可塑剤という)であることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。
また、多価アルコールの脂肪酸エステル類としては、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
炭水化物系可塑剤としては、キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネートなどが好ましい。
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が好ましい例として挙げられる。
(赤外吸収剤)
赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載のものが好ましい。
本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがさらに好ましい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
セルロースアシレート溶液にマット剤として微粒子を加え、本発明のセルロースアシレートフィルムに含有させてもよい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点でより好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45質量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線吸収剤、可塑剤、劣化防止剤、剥離促進剤、染料、マット剤微粒子、赤外吸収剤など光学特性調整剤である。さらに、分子量が2000以下の化合物の総量が上記範囲内であることがより好ましい。これら化合物の総量を5質量%以上とすることにより、セルロースアシレート単体の性質が出にくくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しにくくなる。またこれら化合物の総量を45質量%以下とすることにより、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムの白濁(ブリードアウト)が抑止される傾向にあり好ましい。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造されることが好ましい。主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
これらの特許文献によると本発明において好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、それらも、本発明においても好ましい態様である。
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来周知のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を広く採用することができる。
<セルロースアシレートフィルムの製造工程>
(溶解工程)
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法または高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、22頁〜25頁、2001年3月15日発行、発明協会)にて詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等の塗布層を、フィルムの表面加へ塗布形成(塗布加工)するために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、25頁〜30頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーション値を調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
[フィルムのレターデーション]
(Re、Rthの測定)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(商品名、王子計測機器(株)社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(21)及び式(22)よりRthを算出することもできる。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
数式(5):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(6):0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
さらに好ましくは、以下の数式(5−1)、(6−1)を満たすことである。
数式(5−1):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(6−1):30nm≦Rth(590)≦300nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、式(5)、(6)におけると同義である。)
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明の位相差板(光学補償シート)に用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z 0208をもとに、温度60℃、湿度95%RH(相対湿度)の条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることが好ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4,共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
本発明では、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明のセルロースアシレートフィルムを支持体に用いる場合、残留溶剤量を該範囲内とすることでカールをより抑制できる。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましく、15×10-5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、下限値は特に定めるものではなく、吸湿膨張係数は小さい方が好ましい傾向にあるが、より好ましくは、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルム支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、30頁〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)が好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースエステルフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、32頁〜45頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの用途について説明する。
偏光板は、一般的に、偏光膜及びその表面を保護する保護膜で構成されているが、本発明のセルロースエステルフィルムは特に偏光板保護膜用として有用である。偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製(準備)することができる。得られたセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護膜処理面と偏光膜を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は、上記したように、偏光膜及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロースフィルムを適用した偏光板保護膜はどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護膜には透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護膜をこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
<一般的な液晶表示装置の構成>
本発明のセルロースエステルフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光膜の透過軸と、セルロースフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光膜、および該液晶セルと該偏光膜との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースエステルフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。具体的には、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、VA、ECB、およびHAN等の表示モードが挙げられる。また、上記表示モードを配向分割した表示モードにおいても用いることができる。また、本発明のセルロースフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、また、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムに好ましく用いることができる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースエステルフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、54頁〜57頁、2001年3月15日発行、発明協会)に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムを好ましく用いることができる。
さらに、本発明のセルロースエステルフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用できる。具体的には、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載に従って、本発明のセルロースフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法に従って、作製することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持たせることもできることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースエステルフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15質量%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079号公報や特開2000−227603号公報に記載の方法を用いることができる。
[合成例1−1][例示化合物(101−3)(式(101−n)において、n=3の化合物)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(101−3)を合成した。
1H−NMR(CDCl3)δ0.90(t、3H),0.98(m、2H),1.10−1.32(m,5H),1.55(m、2H),1.85(d、2H),2.11(d,2H),2.45(m,1H),7.04(s,4H)
合成した例示化合物(101−3)の相転移温度を測定したところ、融点は89℃で、相転移温度は Cr−126℃→N−218℃→Iso であった。なお、Crは結晶相、Nはネマチック相、Isoは等方相を示す。
例示化合物(101−4)の相転移温度を測定したところ、相転移温度は Cr−128℃→N−210℃→Iso であった。
1H−NMR(CDCl3)δ0.86(t、3H),0.98(m、2H),1.20−1.30(m,5H),1.53(m、2H),1.86(d、2H),2.12(s,3H),2.11(d,2H),2.47(m,1H),6.92(m,3H)
例示化合物(103−3)の相転移温度を測定したところ、相転移温度は Cr−102℃→N−190℃→Iso であった。
(セルロースアセテートフィルム101の作製)
(ドープ調製)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
糖誘導体1(可塑剤) 3.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
(レターデーション発現剤溶液)
例示化合物(II−1) 14.0質量部
例示化合物(101−3) 11.7質量部
メチレンクロライド 87質量部
メタノール 13質量部
得られたドープを、ガラス板上に流延して、室温にて1分間乾燥後、45℃にて5分間乾燥させた。セルロースアセテートフィルムをガラス板から剥離し、100℃で30分間乾燥させ、130℃で20分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの溶媒残存量は、0.5質量%であった。フィルムを適当な大きさに切断した後、130℃で流延方向と平行な方向に1.20倍の長さに延伸した。延伸方向と垂直な方向は自由に収縮できるようにした。流延後そのままの状態で室温まで冷却し、延伸フィルムを取り出した。延伸後のフィルムの溶媒残存量は、0.1質量%であった。このようにして得られたフィルムの厚さは、53μmであった。このフィルムをフィルム101とした。
フィルム101のレターデーション発現剤溶液が表1に示す組成となるように、化合物の種類と添加量を調整し、フィルム101と同様に製膜・延伸を行いフィルム102〜106、100を作製した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)社製)において各波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した。結果を表1に示す。なお、表1中のNo.100は、レターデーション制御剤を加えないこと以外は同様にして製造されたセルロースアセテートフィルムである。表中、ReおよびRthは波長550nmにおける値(nm)である。
なお、評価の基準は以下の通りである。
Re発現性
○:550nmにおけるReが50nm以上。
△:550nmにおけるReが25nm以上、50nm未満。
×:550nmにおけるReが25nm未満。
Re逆分散性
○:630nmにおけるReと450nmにおけるReの差が5nm以上。
△:630nmにおけるReと450nmにおけるReの差が3nm以上、5nm未満。
×:630nmにおけるReと450nmにおけるReの差が3nm未満。
(フィルム110〜113の作製)
酢化度60.9%のセルロースアセテートを酢化度55.1%(総置換度 2.42)のセルロースアセテートに換え、後は実施例1と同様にしてフィルム110〜113を作製した。
(Re、Rthの測定)
実施例1と同様にして測定した結果を表2に示した。
Claims (10)
- 下記一般式(I)で表される液晶化合物の少なくとも一種を含有し、さらに下記一般式(II)または(III)で表される化合物の少なくとも一種を含有し、配向方向に対して複屈折率Δn(550nm)が0より大きく、かつ下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
数式(1): 1>|Δn(450nm)/Δn(550nm)|、および
数式(2): 1<|Δn(630nm)/Δn(550nm)|
- 前記一般式(II)において、A1、A2、B1 およびB2が、それぞれ独立して、単結合または−COO−である化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- セルロースのエステル基の総置換度が2.30以上2.55未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- セルロースのエステル基の総置換度が2.40以上2.45未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- フィルムを延伸する延伸工程と収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムからなることを特徴とする位相差板。
- 請求項7に記載の位相差板を含んでなることを特徴とする偏光板。
- 請求項7に記載の位相差板または請求項8に記載の偏光板を含んでなることを特徴とする液晶表示装置。
- VAモードであることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
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