JP2010031132A - セルロースエステルフィルム、それを用いた位相差フィルム、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(I)で表される重量平均分子量700以上1500以下の重縮合体を少なくとも一種と、少なくとも2つの芳香環を有する化合物とを含有するセルロースエステルフィルム。
一般式(I) M−(G−A)n−G−M
(一般式(I)中、Aは芳香族ジカルボン酸に由来する基を表し、Gは炭素数の平均が2.0〜3.0の脂肪族ジオールに由来する基を表し、Mは脂肪族モノカルボン酸残基を表し、同一でも異なっていても良い。nは1以上の整数を表す。)
【選択図】なし
Description
VAモードに適した光学特性の調整には、セルロースエステルフィルムを加熱かつ延伸処理を行う必要があり、この際揮散した油分が製造時設備に付着し、フィルムの面状故障となる場合があり、対策が強く求められていた。
本発明の他の目的は、上記セルロースエステルフィルムを用いた、面状が良好で、Re値およびRth値を所望の値に制御できる位相差フィルム及び偏光板を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記偏光板を用いた表示品質の良好な液晶表示装置を提供することにある。
1. 下記一般式(I)で表される重量平均分子量700以上1500以下の重縮合体を少なくとも一種と、少なくとも2つの芳香環を有する化合物とを含有するセルロースエステルフィルム。
一般式(I) M−(G−A)n−G−M
(一般式(I)中、Aは芳香族ジカルボン酸に由来する基を表し、Gは炭素数の平均が2.0〜3.0の脂肪族ジオールに由来する基を表し、Mは脂肪族モノカルボン酸残基を表し、同一でも異なっていても良い。nは1以上の整数を表す。)
2. 前記一般式(I)におけるMのうち少なくとも1つが、酢酸エステル残基である上記1に記載のセルロースエステルフィルム。
3. 前記セルロースエステルフィルムが、アシル置換度が2.00〜2.95であるセルロースアシレートを含む上記1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
4. 前記セルロースエステルフィルムが、アシル基の総置換度が2.10〜2.90であり、かつプロピオニル基の置換度が0.5〜1.5であるセルロースアセテートプロピオネートを含む上記1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
5. 上記1〜4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムを延伸して得られるフィルムであって、該延伸倍率が、搬送方向に対して垂直な方向(幅方向)に5%以上100%以下であるセルロースエステルフィルム。
6. 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされた偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも1枚が上記1〜5のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムである偏光板。
7. 液晶セル及び該液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が上記6に記載の偏光板である液晶表示装置。
8. 前記液晶セルが、垂直配向モードの液晶セルである上記7に記載の液晶表示装置。
一般式(I) M−(G−A)n−G−M
(一般式(I)中、Aは芳香族ジカルボン酸に由来する基を表し、Gは炭素数の平均が2.0〜3.0の脂肪族ジオールに由来する基を表し、Mは脂肪族モノカルボン酸残基を表し、同一でも異なっていても良い。nは1以上の整数を表す。)
一般式(I)で表される重量平均分子量700以上1500以下の重縮合体は、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオールとから得られる。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールを用いるか、エタンジオールとともに1種または2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸としては炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
以下の表1に重縮合体の具体例を記すが、これらに限定されるものではない。
本発明のセルロースエステルフィルムは、少なくとも2つの芳香環を有する化合物を含有する。
少なくとも2つの芳香環を有する化合物の分子量は、300〜1200であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。
セルロースエステルとしては、セルロースエステル化合物、および、セルロースを原料として生物的或いは化学的に官能基を導入して得られるエステル置換セルロース骨格を有する化合物が挙げられる。
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明において好適なセルロースアシレートについて記載する。
本発明に用いられるセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、好ましくは、その置換基はアシル基の炭素数が2のアセチル基から炭素数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおける、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されない。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTM D−817−91に準じて実施することができる。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が該上限値以下であれば、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎることがなく流延によるフィルム作製が容易にできるので好ましい。重合度が該下限値以上であれば、作製したフィルムの強度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定できる。この方法は特開平9−95538号公報にも詳細に記載されている。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000であることが好ましく、50000〜200000であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量計(DSC)による測定によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保持する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
本発明において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されない(風速が0.5m/s未満である)ことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が、バンド上の場合に10秒未満(ドラム上の場合に1秒未満)であると、添加剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると(ドラム上の場合10秒を超えると)乾燥不十分で剥ぎ取られことになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、は不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は20μm〜180μmが好ましく、30μm〜160μmがより好ましく、40μm〜120μmがさらに好ましい。膜厚が20μm以上であれば偏光板等に加工する際のハンドリング性や偏光板のカール抑制の点で好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚むらは、搬送方向および幅方向のいずれも0〜2%であることが好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%であることが特に好ましい。
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、効果の発現及びフィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)の抑制の観点から、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾールが好ましく、具体的にはTINUVIN328、TINUVIN326、TINUVIN329、TINUVIN571、アデカスタブLA−31等が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対して質量比で10%以下が好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下0.05%以上が最も好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、マット剤として微粒子を含有することが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。積極的に幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
セルロースエステルフィルムのアルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオン濃度は0.1乃至3.0モル/リットルの範囲にあることが好ましく、0.5乃至2.0モル/リットルの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースエステルフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
本明細書において、Re、Rthは各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、セルロースエステルフィルムの好ましい光学特性は液晶モードによって異なる。
TNモード用としてはReは0〜100のものが好ましく、20〜90のものがより好ましく、50〜80のものがさらに好ましい。Rthは20〜200のものが好ましく、30〜150のものがより好ましく、40〜120のものがさらに好ましい。
TNモード用では前記レターデーション値を有するセルロースエステルフィルム上に光学異方性層を塗布して位相差フィルムとして使用できる。
本発明のセルロースエステルフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらに好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明のセルロースエステルフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定した。
セルロースエステルフィルムの試料13mm×40mmを、25℃、60%RHで分光光度計“U−3210”{(株)日立製作所}にて、波長300〜450nmにおける透過率を測定した。傾斜幅は72%の波長−5%の波長で求めた。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表した。吸収端は、透過率0.4%の波長で表す。これより380nm及び350nmの透過率を評価した。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムの光弾性係数は60×10−8cm2/N以下が好ましく、20×10−8cm2/N以下がさらに好ましい。光弾性係数はエリプソメーターにより求めることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムのガラス転移温度は120℃以上が好ましく、更に140℃以上が好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で測定したときにフィルムのガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めることができる。
また、ガラス転移温度の測定は、以下の動的粘弾性測定装置を用いて求めることもできる。本発明のセルロースエステルフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜250℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とする。
本発明のセルロースエステルフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。平衡含水率が4%以下であれば、光学補償フィルムの支持体として用いる際に、レターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがなく好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースエステルフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
フィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、60℃、95%RHの条件において測定される。
透湿度は、セルロースエステルフィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこで膜厚の異なるサンプルでは、基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、下記数式に従って行うことができる。
数式:80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚(μm)/80(μm)。
本発明のセルロースエステルフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率、及び90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率が、いずれも0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。
数式(15):60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率={|L0−L1|/L0}×100、
数式(16):90℃、5%RH(高温)の寸度変化率={|L0−L2|/L0}×100。
本発明のセルロースエステルフィルムの弾性率は、200〜500kgf/mm2であることが好ましい、より好ましくは240〜470kgf/mm2であり、さらに好ましくは270〜440kgf/mm2である。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン(株)製万能引っ張り試験機“STM T50BP”を用い、23℃、70RH%雰囲気中、引張速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
フィルムの引裂き強度は、JIS K−7128−2:1998の引裂き試験方法に基づく方法(エルメンドルフ引裂き法)により測定される。本発明のセルロースエステルフィルムの引裂き強度は、膜厚20〜80μmの範囲において2g以上であることが好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。また60μm換算では8g以上であることが好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、セルロースエステルフィルム試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
本発明のセルロースエステルフィルムは単層構造であっても複数層から構成されていても良いが、単層構造であることが好ましい。ここで、「単層構造」のフィルムとは、複数のフィルム材が貼り合わされているものではなく、一枚のセルロースエステルフィルムを意味する。そして、複数のセルロースエステル溶液から、逐次流延方式や共流延方式を用いて一枚のセルロースエステルフィルムを製造する場合も含む。
本発明のセルロースエステルフィルムには、適宜、表面処理を行なうことにより、各機能層(例えば、下塗層、バック層、光学異方性層)の接着を改善することが可能となる。前記表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、鹸化処理(酸鹸化処理、アルカリ鹸化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリ鹸化処理が好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、位相差板、光学補償フィルム、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、位相差フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明の透明セルロースエステルフィルムを用いることで、Re値およびRth値を自在に制御した位相差フィルムを容易に作製することができる。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
本発明において前記液晶性化合物として使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(例えば、C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
本発明において前記液晶性化合物として使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。また、前記棒状液晶性化合物としては、以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムまたは位相差フィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明フィルム)からなり、本発明のセルロースエステルフィルムまたは位相差フィルムは少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明のセルロースエステルフィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、または、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、本発明のセルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルがセルロースアシレートの場合には、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルム、位相差フィルムおよび偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明のセルロースエステルフィルム、位相差フィルムおよび偏光板は特にVAモードおよびIPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号および特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)の積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。これらの態様において本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラスの良化に寄与する。
本発明のセルロースエステルフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の位相差フィルムや位相差フィルムの支持体、または偏光板の保護フィルムとして特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラスの良化に寄与する。
本発明のセルロースエステルフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置或いはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が位相差フィルムの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体の配置により決定される。OCB型液晶表示装置或いはHAN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の位相差フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くからよく知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置とについては、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID 98 Digest 1089(1998))に記載がある。
本発明のセルロースエステルフィルムは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明セルロースエステルフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムにおいても好ましく用いることができる
セルロースエステルフィルム試料101の作製
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃で約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
セルロースアシレート 100.0質量部
(アセチル置換度2.86、平均重合度310)
前記重縮合体P−1 12.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液A−1 10.3質量部
下記例示化合物A 15.0質量部
下記例示化合物B 5.0質量部
メチレンクロライド 63.5質量部
メタノール 9.5質量部
セルロースアシレート溶液A−1 14.0質量部
支持体として長さが100mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。前記流延ダイ及び支持体などが設けられている流延室の温度は、35℃に保った。製膜用ドープ(1)中の溶剤比率が乾量基準で45質量%になった時点で流延支持体からフィルムとして剥離した。この時の剥離テンションは8kgf/mであり、支持体速度に対して剥ぎ取り速度(剥取りロールドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に剥ぎ取れるように設定した。剥ぎ取られたフィルムは、クリップを有したテンターで両端を固定しながらテンターの乾燥ゾーン内を搬送し、テンター内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃、100℃、110℃とし、残留溶剤量が1%未満のセルロースアシレートフィルムを製造した。
残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%
尚、残存揮発分質量はフィルムを115℃で1時間加熱処理したとき、加熱処理前のフィルム質量から加熱処理後のフィルム質量を引いた値である。
次に、得られたフィルムを170℃の条件でテンターを用いて33%の延伸倍率まで、30%/分の延伸速度で搬送方向に対して垂直な方向(幅方向)に延伸した。出来上がったセルロースアシレートフィルムの膜厚は40μmであった。このフィルムをセルロースエステルフィルム試料101とした。
下記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を15℃から75℃まで昇温した後、温度を75℃に保ったままで4時間攪拌を行って、セルロースエステルを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を45℃まで下げた。このセルロースエステル溶液を濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して2回濾過しセルロースエステル溶液A−2を得た。尚、酸化ケイ素微粒子は添加する溶媒及び樹脂の一部で分散して添加した。
セルロースエステル
(セルロースアセテートプロピオネート;アセチル基置換度1.7、プロピオニル基置換度0.9、Mw/Mn2.2)
前記重縮合体P−1
下記例示化合物C
“AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製
溶剤(メチレンクロライド 400質量部、エタノール 75質量部)
このとき、添加剤(例示化合物C、重縮合体P−1)は表3に示す組成となるように、AEROSIL R972はセルロースエステル100質量部あたり0.2質量部となるように調整した。
使用した重縮合体の加熱減量を熱天秤法で測定した。140℃、60分間加熱したときの質量減少率を重縮合体の加熱減量として表3に示す。値が大きいとセルロースアシレートウェブの乾燥時に重縮合体が揮散し、製造装置に付着してフィルムを汚し、面状故障の原因となる場合がある。
得られたセルロースエステルフィルム試料をロール状に巻き取り、この元巻きから100mm×100mmのサイズを裁断し、偏光顕微鏡を用いてクロスニコル下で倍率30倍で観察し、異物発生箇所の個数で下記の評価を行った。ここで異物とはブリードアウト成分、表面の汚れ、あるいはフィルム内部または表面の析出物により、偏光顕微鏡下で輝点として観察される。
◎:異物の個数0〜4個
○:異物の個数5〜10個
△:異物の個数11〜50個
×:異物の個数51個以上
Re、及びRthは前記方法により自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)を用い、測定波長590nm、25℃60%RHで測定した。
また、ジオールの平均炭素数が3を超える場合(試料111)や、重縮合体の末端が芳香族カルボン酸エステルである場合、重縮合体に含有される低分子成分がフィルム製造の各過程で揮発し、装置への付着を通じて、フィルムを汚してしまい面状故障を起こしやすい。
一般式(I)で表される重縮合体と2つ以上芳香環を有する化合物を用いれば、面状故障による得率を損なうことなく、高いRe、Rth有し位相差フィルムに好適なセルロースアセテートフィルムを得ることができる。
下記の偏光板保護フィルムを作製し、これを用いて偏光板を作成し、偏光板の性能試験を行った。
[セルロースアシレート溶液A−3の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液A−3を調製した。
セルロースアシレート 100質量部
(アセチル置換度2.86、平均重合度310)
前記重縮合体P−1 12質量部
メチレンクロライド 384質量部
メタノール 69質量部
ブタノール 9質量部
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液B−2を調製した。
シリカ粒子分散液(平均粒径16nm) 10.0質量部
“AEROSIL R972”、日本アエロジル(株)製
メチレンクロライド 72.8質量部
メタノール 3.9質量部
ブタノール 0.5質量部
セルロースアシレート溶液A−3 10.3質量部
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液C−2を調製した。
紫外線吸収剤(UV−1) 10.0質量部
紫外線吸収剤(UV−2) 10.0質量部
メチレンクロライド 55.7質量部
メタノール 10質量部
ブタノール 1.3質量部
セルロースアシレート溶液A−3 12.9質量部
セルロースエステルフィルム試料201の作製において重縮合体P−1を用いる代わりに、表4に示す組成となるように前記表1及び表2の重縮合体を使用してドープを調整し、セルロースアシレートフィルム試料202〜205を作製した。
実施例1と同様に評価した。
1)フィルムのケン化
得られたフィルムを、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(ケン化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、さらに水洗浴を30秒流水下で通して、フィルムを中性にした状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、ケン化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて厚み20μmの偏光膜を作製した。
3)貼り合わせ
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片側に実施例1のセルロースエステルフィルム試料105、もう一方に作製したセルロースエステルフィルム試料201を貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。得られた偏光板を偏光板201とした。同様にしてセルロースエステルフィルム試料202〜205を用いて、偏光板202〜205を作製した。
前記偏光板のセルロースエステルフィルム105側を粘着剤でガラス板に貼り合わせたサンプルを二組作製し、これをクロスニコルに配置して透過率を測定した(初期透過率、25℃60%RHにて測定)。さらに上記サンプルを60℃相対湿度90%の条件で1000時間放置し、その後さらに、25℃60%RHで5時間以上放置した後、再度クロスニコルに配置して透過率を測定した(経時透過率)。初期透過率と経時透過率の波長400nm〜700nmの範囲での最大変化幅に100を乗じた値を偏光板経時変化の指標とした。
透過率測定には分光光度計“U−3210”{(株)日立製作所}を用いた。結果を表4に示す。
実施例1で示したように、加熱減量はジカルボン酸が脂肪族ジカルボン酸である重縮合体においても十分小さく、含有成分に由来する面状故障は少ない。しかし、一般的に用いられている低分子の紫外線吸収剤と併用した場合、紫外線吸収剤の揮発が促進され、面状故障が起こる場合があった。また、該脂肪族ジカルボン酸からなる重縮合体は偏光板として液晶セルとは反対側(本実施例ではガラス板に貼り付けられていない側)に用いると、経時変化が極めて不十分であることが分かった。
本発明のジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸からなる重縮合体を用いれば、紫外線吸収機能と偏光板の経時性能、及び面状故障の低減を達成できる。
(VAモード液晶表示装置への実装実験)
セルロースエステルフィルム試料105とセルロースエステルフィルム試料203からなる実施例2で作製した偏光板203を、偏光膜の透過軸と上記のように作製した位相差フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。偏光膜の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
上記の垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板と、下側偏光板(バックライト側)に上記位相差フィルム105を備えた偏光板203を2枚用いて、位相差フィルム105が液晶セル側となるように設置した。上側偏光板および下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
液晶セルに55Hzの矩形波電圧を印加した。白表示5V、黒表示0Vのノーマリーブラックモードとした。黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示透過率(%)及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを求めた。
また、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比として、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までの8段階で視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)を測定した。
作製した液晶表示装置を観察した結果、本発明のフィルムを用いた液晶パネルは正面方向および視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現できていた。
また、視野角(コントラスト比が10以上で黒側の階調反転のない極角範囲)は上下左右で極角80°以上であり、黒表示時の色ずれも0.02未満であり良好な結果を得た。
Claims (8)
- 下記一般式(I)で表される重量平均分子量700以上1500以下の重縮合体を少なくとも一種と、少なくとも2つの芳香環を有する化合物とを含有するセルロースエステルフィルム。
一般式(I) M−(G−A)n−G−M
(一般式(I)中、Aは芳香族ジカルボン酸に由来する基を表し、Gは炭素数の平均が2.0〜3.0の脂肪族ジオールに由来する基を表し、Mは脂肪族モノカルボン酸残基を表し、同一でも異なっていても良い。nは1以上の整数を表す。) - 前記一般式(I)におけるMのうち少なくとも1つが、酢酸エステル残基である請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、アシル置換度が2.00〜2.95であるセルロースアシレートを含む請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、アシル基の総置換度が2.10〜2.90であり、かつプロピオニル基の置換度が0.5〜1.5であるセルロースアセテートプロピオネートを含む請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムを延伸して得られるフィルムであって、該延伸倍率が、搬送方向に対して垂直な方向(幅方向)に5%以上100%以下であるセルロースエステルフィルム。
- 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされた偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムである偏光板。
- 液晶セル及び該液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が請求項6に記載の偏光板である液晶表示装置。
- 前記液晶セルが、垂直配向モードの液晶セルである請求項7に記載の液晶表示装置。
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