JP2017128630A - セルロース製剤 - Google Patents
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Abstract
Description
セルロースI型結晶から構成されるミクロフィブリルは、機械的特性に優れ、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率、ガラスファイバー以下の線膨張係数を有することが知られている。また、セルロースI型結晶は、真密度が1.56g/cm3であり、熱可塑性樹脂の補強材として汎用されるガラス(密度2.4〜2.6g/cm3)や、タルク(密度2.7g/cm3)と比べて圧倒的に軽い材料である。そのため、高L/D(長径/短径比)のセルロースI型結晶をミクロフィブリル状で樹脂マトリクスに分散できれば、それらが樹脂中でネットワークを形成し、それにより結晶セルロースが有する機械的特性を樹脂に付与できるものと期待される。
しかしながら、樹脂にセルロース系物質(ミクロフィブリルの凝集体)を分散する場合、乾燥状態で添加するとミクロフィブリル同士の結合が強いため樹脂中で分散が進まず、また、湿潤状態で添加するとミクロフィブリル表面の水の撥水性のため樹脂との親和性が悪くなり、分散しにくいという課題があった。
例えば、特許文献1には、平均粒径が6μm以下であり、20μm以上の粒子の含有量が10質量%未満であり、かつ粒子の長径/短径比が4以上の棒状粒子からなる結晶セルロースの微粉末と、分散剤と、熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂100質量部に対し、植物性繊維5〜150質量部、ロジン系樹脂1〜40質量部、および植物性油0〜40質量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
さらに、特許文献3には、セルロース繊維100質量部、よう素価50以上の油脂成分0.1〜5質量部、シランカップリング剤0.5〜5質量部、および少量のラジカル発生剤、15質量部以下のエラストマー、ポリエチレン5〜28質量部を含むセルロース繊維添加用マスターバッチが記載されている。
加えて、特許文献4には、セルロースの水酸基の一部がロジン系化合物の酸無水物とエステル結合してなるロジン変性セルロースが、特定の変性率において合成樹脂中で分散されることが記載されている。
特許文献2には、木粉等のセルロースと他の成分を撹拌混合して熱可塑性樹脂組成物を得ることが記載されている。特許文献3には、粉末セルロースと紙粉に、各種添加剤を混練してオレフィン組成物を得ることが記載されている。しかしながら、これらに用いられるセルロースは加水分解されていないため、最初から粒子が粗く、通常の機械処理では樹脂中にミクロフィブリル状に分散できない。
特許文献4には、予めミクロフィブリル化されたセルロースの表面に無水ロジンをエステル結合させることで、樹脂中にセルロースミクロフィブリルが分散されやすくなることが記載されている。しかしながら、変性セルロースの疎水基を外側(樹脂側)に向け、親水基を内側に向けて凝集した形で分散するため、樹脂中でのセルロースのネットワーク形成が不十分となり、樹脂の機械的特性が不足するという問題がある。
[1]
平均重合度が500以下のセルロースと、
溶解パラメータ(SP値)が7.25以上であり、水よりも高い沸点を有する有機成分と、
を含む、セルロース製剤。
[2]
前記セルロースは結晶セルロースである、上記[1]記載のセルロース製剤。
[3]
前記セルロースを30〜99質量%、前記有機成分を1〜70質量%含む、上記[1]又は[2]に記載のセルロース製剤。
[4]
前記有機成分はロジン誘導体である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロース製剤。
[5]
前記有機成分はロジンエトキシエステルである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のセルロース製剤。
[6]
平均重合度が500以下のセルロースと、ロジンエトキシエステルと、を含むセルロース製剤。
[7]
前記セルロースは結晶セルロースである、上記[6]記載のセルロース製剤。
[8]
前記セルロースを30〜99質量%、前記ロジンエトキシエステルを1〜70質量%含む、上記[6]又は[7]に記載のセルロース製剤。
[9]
上記[1]〜[8]のいずれかに記載のセルロース製剤を1質量%以上含有する樹脂組成物。
本実施形態において「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。セルロースの原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料としては、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用してもよい。
<セルロースの平均重合度>
本実施形態におけるセルロースの平均重合度は、500以下である。平均重合度が500以下であれば、有機成分との複合化の工程において、セルロースが攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなる。セルロースの平均重合度は、好ましくは400以下、より好ましくは350以下、さらに好ましくは300以下、さらにより好ましくは250以下、特に好ましくは200以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
セルロースの平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程中等の、セルロースと有機成分に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、有機成分との複合化の制御が容易になる。
本実施形態におけるセルロース製剤中のセルロースは、結晶セルロースであることが好ましく、セルロースI型結晶を含有し、結晶化度が10%以上であることがより好ましい。結晶化度が10%以上であると、セルロース粒子自体の力学物性(強度、寸法安定性)が高まるため、樹脂に分散した際に、樹脂コンパウンドの強度、寸法安定性が高くなる傾向にある。結晶化度は、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、特に好ましくは70%以上である。上限は特に制限されないが、90%以下であることが好ましい。
結晶化度(%)=((2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度)−(2θ/deg.=18の非晶質に起因する回折強度))/(2θ/deg.=22.5の(200)面に起因する回折強度)x100
本実施形態におけるセルロース製剤中のセルロースは、微細な粒子状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、セルロース(加水分解後のウェットケークが好ましい)を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」、処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測した際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
本実施形態におけるセルロースは、コロイド状セルロースを含むことが好ましい。コロイド状セルロースの含有量が高いほど、該セルロースを用いたセルロース製剤を樹脂中に分散させた際に、分散が進み、表面積が高いネットワークを形成できるため、樹脂の強度および寸法安定性が向上する傾向にある。セルロース中のコロイド状セルロースの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。コロイド状セルロースの含有量の上限は特に制限されず、理論上の上限は100質量%である。
本実施形態におけるセルロースは、粒子径が小さいほど好ましい。粒子径が小さいほど、該セルロースを用いたセルロース製剤を樹脂中に分散させた際に、分散が進み、表面積が高いネットワークを形成できるため、樹脂の強度および寸法安定性が向上する傾向にある。セルロースの粒子径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.3μ以下であることが特に好ましい。粒子径の下限としては特に制限されないが、現実的には0.05μm以上である。
本実施形態における有機成分とは、炭素原子を骨格とし、水素、酸素、窒素、塩素、硫黄、リン等から構成される官能基を有するものである。分子中に上述の構造を有していれば、無機化合物と上記官能基が化学結合したものも、本実施形態における有機成分に含まれる。
溶解パラメータ(SP値)は、以下の方法で測定することができる。溶解パラメータ(SP値)は、Fodersの文献(R.F.Foders:Polym.Eng.Sci.,12(10)、p.2359−2370(1974))によると、物質の凝集エネルギー密度とモル分子量の両方が、置換基の種類および数に依存していると考えられ、上田らの文献(塗料の研究 No.152 Oct.2010)によると、後述する実施例に示す既存の主要な溶剤についてのSP値(cal/cm3)1/2が公開されている。
動植物油としては、例えば、テルピン油、トール油、ロジン、白絞油、コーン油、大豆油、ごま油、菜種油(キャノーラ油)、こめ油、糠油、椿油、サフラワー油(ベニバナ油)、ヤシ油(パーム核油)、綿実油、ひまわり油、エゴマ油(荏油)、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、魚油、鯨油、鮫油、肝油、カカオバター、ピーナッツバター、パーム油、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、兎脂、羊脂、馬脂、シュマルツ、乳脂(バター、ギー等)、硬化油(マーガリン、ショートニングなど)、ひまし油(植物油)等が挙げられる。また、鉱物油としては、例えば、流動パラフィン、シリコンオイルや、カルシウム石鹸基グリース、カルシウム複合石鹸基グリース、ナトリウム石鹸基グリース、アルミニウム石鹸基グリース、リチウム石鹸基グリース、非石鹸基グリース、シリコングリース等のグリース類;ナフテン系およびパラフィン系鉱物油;鉱物油や高度水素分解油にPAOやエステル(あるいは水素化分解油)を混合し得られる部分合成油;PAO(ポリアルファオレフィン)等の化学合成油・全合成油・合成油等が挙げられる。
飽和脂肪酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸 、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、例えば、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等のω-3脂肪酸;リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等のω-6脂肪酸;パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸等のω-7脂肪酸;オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のω-9脂肪酸が挙げられる。
アシルグタミン酸塩等のアシルアミノ酸塩、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩等のアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化(N,N‘−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピチジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体等のカチオン性界面活性剤;2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホバタイン等のベタイン系両性界面活性剤等の両性界面活性剤、ソルビタンノモオレエート、ソルビタンモノモイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、パンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビタンテトラオレエート等のポリオキシエチレン−ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレン−ソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレン−ソルビットモノステアレート、ポリオキシエチレン−グリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン−グリセリントリイソステアレート等のポリオキシエチレン−グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油トリイソステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸等のポリオキシエチレンヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
本実施形態におけるセルロース製剤は、セルロースを30〜99質量%、及び有機成分を1〜70質量%含むことが好ましい。セルロースと有機成分との複合化によって、有機成分がセルロース粒子の表面を水素結合、分子間力等の非共有の化学結合により被覆し、その結果、樹脂中へのセルロースの分散が促進される。セルロースと有機成分の含有量を上記範囲にすることで、複合化がより促進される。
次に、本実施形態におけるセルロース製剤の製造方法について説明する。
本実施形態におけるセルロース製剤は、セルロースと有機成分とを混練することによって製造することができる。具体的には、混練工程において、セルロースと有機成分に機械的せん断力を与え、セルロースを微細化させると共にセルロース表面に有機成分を複合化させることによって得ることができる。また、この混練工程では、有機成分以外の親水性物質、及びその他の添加剤等を添加してもよい。混練工程後、必要に応じて、乾燥してもよい。本実施形態におけるセルロース製剤としては、混練工程後、未乾燥のものでも、その後乾燥したものでもよい。
本実施形態におけるセルロース製剤は、セルロースと有機成分が共有結合せず、過度に水素結合、分子間結合していないことが好ましい。これにより樹脂中に分散した際に、有機成分がセルロース表面から樹脂中に遊離、脱離し、セルロース本来の表面が発現する。その結果、セルロース粒子同志の結合が促進され、樹脂中で強固なネットワークを形成する。
セルロース製剤粉末を250μmの篩を通るように粉砕し、それを1g採取する。このサンプルをエタノール10mLに入れ、スターラー撹拌下で60分間、室温で撹拌する。エタノールを目開き0.4μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過し、ろ液からエタノールを気化させる。ろ液から採取された残渣の質量を求め、以下の式から結合率を算出する。
結合率(%)=(1−(残渣の質量(g)/セルロース製剤中の有機成分量(g)))/100
(ここで、セルロース製剤中の有機成分量は、製造時の配合量から得られる理論値を用いても、NMR、IR、X線回折等の化学分析から求めたものを用いてもよい。)
結合率は、90%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。結合率が低いほどセルロース製剤の樹脂への分散性および分散後の力学特性が高まるため、下限は特に制限されないが、理論上は0%以上である。
本実施形態におけるセルロース製剤は、樹脂中に分散させて樹脂組成物とする。セルロース製剤を分散させる樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これにより、本来、熱可塑性を有さないセルロースを用いて、熱可塑性の樹脂組成物を得ることが可能になる。熱可塑性樹脂としては、樹脂組成物の製造時や成形品の製造時におけるセルロース微粒子の分解による褐変化や凝集を防ぐ観点から、250℃以下の温度で溶融混練/押し出しできるものが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ABS、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレンゴム等のエラストマー類;さらにはこれらの変性樹脂等が挙げられる。
樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して70質量%以上98質量%以下であることが好ましい。樹脂の含有量が70質量%以上である場合、十分な成形性と熱可塑性を有する傾向にあり、98質量%以下である場合、結晶セルロース微粉末の分散性が良好となる傾向にある。樹脂の含有量は、より好ましくは75質量%以上90質量%以下である。
樹脂組成物におけるセルロース製剤の含有量は、樹脂組成物に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。セルロース製剤の含有量が1質量%以上である場合、得られる成形品の強度と耐衝撃性が良好となる傾向にある。また、50質量%以下である場合、得られる成形品の強度と弾性率が良好となる傾向にある。セルロース製剤の含有量の上限は、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下であり、さらにより好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。
本実施形態における樹脂組成物は、界面活性剤、表面処理剤、無機充填剤等の分散剤が含まれていてもよい。分散剤は、セルロース製剤と樹脂との間を取り持って、両者の相溶性を向上させる機能を有する。つまり、セルロース粒子が樹脂組成物中で凝集せずに樹脂と良く混合させ、樹脂組成物全体を均一にする機能を有する。従って、樹脂組成物中でセルロース微粒子を均一に分散できるものであれば、特に制限なく使用することができる。分散剤は、少なくともセルロース粒子と樹脂の両者に親和性を有しており、このような分散剤としては、例えば、界面活性剤、表面処理剤、無機充填剤等を用いることができる。
樹脂組成物中には、セルロース製剤や樹脂、さらには分散剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の成分を加えてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、無機リン系化合物、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等)、フッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ガラス繊維、カーボン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ウィスカー、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等を添加してもよい。他の成分の含有量は、樹脂組成物全体に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物の製造方法としては、樹脂を加熱溶融し、そこにセルロース製剤と分散剤とを加えてから一緒に溶融混練する方法が挙げられる。あるいは押出機に樹脂の原料を供給して溶融させ、他方、押出機の中間口よりセルロース製剤と分散剤を供給することで、押出機中で混合分散する方法が挙げられる。押出機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられる。中でも、二軸押出機を用いた溶融混練方法が、混練が十分となる観点から好ましい。
樹脂組成物から得られる好適な成形品としては、例えば、自動車部品や電気機器の内外装部品が挙げられる。自動車部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装品や、インストルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品等が挙げられる。電気機器の内外装部品としては、例えば、各種コンピュータおよびその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤ等のキャビネット、冷蔵庫等の部品等が挙げられる。
各物性等の測定方法は以下のとおりに行った。
<セルロースの平均重合度>
「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定した。
X線回折装置(株式会社リガク製 多目的X線回折装置)で粉末法にて回折像を測定(常温)し、Segal法で結晶化度を算出した。
セルロース(加水分解後のウェットケーク)を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%まで純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾したものを、原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)を求め、100個〜150個の粒子の平均値として算出した。
各セルロースを固形分40質量%として、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練し、次いで、固形分が0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みに残存する固形分を絶乾法で測定し、質量百分率を算出した。
セルロースを固形分40質量%として、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)中において、126rpmで、室温常圧下で30分間混練し、次いで0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取した。この上澄み液を用いて、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)を測定した。
有機成分のSP値は、各1mLをSP値が既知の下表の溶剤10mLに室温で滴下し、スターラーで1時間撹拌した後、相分離なく溶解した溶剤のSP値の範囲から求めた。
セルロース製剤を固形分で1g、エタノール10mLに入れ、スターラー撹拌下で60分間、室温で撹拌し、溶媒を目開き0.4μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過し、ろ液からエタノール、その他溶剤を気化させた。ろ液から採取された残渣の質量を求め、以下の式から結合率を算出した。
結合率(%)=(1−(残渣の質量(g)/セルロース製剤中の有機成分量(g)))/100
透過光にてマイクロスコープ(KEYENCE製 商品名「VHX−1000」、倍率200倍)で観察し、短径100μm以上の粗大粒子の個数を計測した。評価は以下のとおりに行った。
2000μmx2000μmの視野に、短径100μm以上の粒子が、
◎ 10個以下
○ 10個を超え20個以下
△ 20個を超えて50個以下
× 50個を超える。
目視で観察した。評価は以下のとおりに行った。
◎ 無色透明
○ 薄い橙色
△ 濃い橙色
× 濃い橙色から茶褐色
市販のDPパルプ(平均重合度1600)を細断後、2.5mol/L塩酸中、105℃で15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーク状のセルロースを作製した(平均重合度220、結晶化度78%、粒子L/D1.6、コロイド状セルロース含有量55質量%、粒子径0.2μm)。次に、ウェットケーク状のセルロースを単独で密閉式プラネタリーミキサー(株式会社小平製作所製 商品名「ACM−5LVT」、撹拌羽根はフック型)中、70rpmで20分間、常温常圧で摩砕処理し、その後、ロジンエチレンオキサイド付加物(ロジン−ポリエチレングリコールエステル、ハリマ化成株式化一社製 商品名「REO−15」、SP値7.25以上、常圧下沸点100℃超)を、セルロース/ロジンエチレンオキサイド付加物が80/20(質量比)となるように投入し、常温常圧下70rpmで60分間摩砕処理し、最後に減圧(−0.1MPa)し、40℃の温浴をセットし、307rpmで2時間、コーティングおよび減圧乾燥処理を行い、セルロース製剤Aを得た(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)。
実施例1のセルロース製剤の製法において、セルロース/ロジンエチレンオキサイド付加物の配合割合を95/5(質量比)としたこと以外は、実施例1と同様の方法によりセルロース製剤Bを得た(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、セルロース/ロジンエチレンオキサイド付加物の配合割合を50/50(質量比)としたこと以外は、実施例1と同様の方法によりセルロース製剤Cを得た(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、セルロース/ロジンエチレンオキサイド付加物の配合割合を99/1(質量比)としたこと以外は、実施例1と同様の方法によりセルロース製剤Dを得た(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、有機成分をトール油脂肪酸(ハリマ化成株式会社製 商品名「ハートールSR−30」、SP値7.25以上、沸点100℃以上)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法によりセルロース製剤E(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)を得た。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、セルロース/ロジンエチレンオキサイド付加物/トール油の配合割合を80/10/10(質量比)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法によりセルロース製剤Fを得た。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、有機成分をテルピン油(ヤスハラケミカル株式会社製 商品名「ターピネオール」、SP値7.25以上、沸点100℃以上)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法によりセルロース製剤G(水分2質量%、有機成分の結合率5%以下)を得た。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロースを有機成分と複合化せずに用いた(セルロースH)。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、加水分解を経た結晶セルロースの代わりに、微細繊維状セルロース(ダイセルファインケム株式会社製 商品名「セリッシュKY−100G」、平均重合度500超、固形分10質量%、コロイド状セルロースの含有量50質量%未満、粒子径1μm超、常圧下沸点100℃超)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法によりセルロース製剤Iを得た。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1のセルロース製剤の製法において、有機成分をエタノール(和光純薬株式会社製、SP値12.58、沸点100℃未満)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、セルロース製剤J(水分2質量%)を得た。
実施例1と同様の方法によりHDPEと混合し、評価を行った。結果を表1に示した。
Claims (9)
- 平均重合度が500以下のセルロースと、
溶解パラメータ(SP値)が7.25以上であり、水よりも高い沸点を有する有機成分と、
を含む、セルロース製剤。 - 前記セルロースは結晶セルロースである、請求項1記載のセルロース製剤。
- 前記セルロースを30〜99質量%、前記有機成分を1〜70質量%含む、請求項1又は2に記載のセルロース製剤。
- 前記有機成分はロジン誘導体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース製剤。
- 前記有機成分はロジンエトキシエステルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース製剤。
- 平均重合度が500以下のセルロースと、ロジンエトキシエステルと、を含むセルロース製剤。
- 前記セルロースは結晶セルロースである、請求項6記載のセルロース製剤。
- 前記セルロースを30〜99質量%、前記ロジンエトキシエステルを1〜70質量%含む、請求項6又は7に記載のセルロース製剤。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロース製剤を1質量%以上含有する樹脂組成物。
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